JP2005194242A - グリコール酸エステルの製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを蒸留により分離して、グリコール酸エステルを製造する方法を提供する。
【解決手段】グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを含む混合物からグリコール酸エステルを蒸留精製によって製造するに当たり、水の共存下で蒸留する。
【選択図】 なし
【解決手段】グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを含む混合物からグリコール酸エステルを蒸留精製によって製造するに当たり、水の共存下で蒸留する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、グリコール酸エステルの製造法に関する。グリコール酸エステルは、例えば、ポリグリコール酸等の各種の合成樹脂の原料として利用され、またボイラー等の洗浄剤、エッチング剤等として、工業的に有用な化合物である。
グリコール酸エステルの製造法としては、これまでに様々な方法が開発されており、例えば、シュウ酸ジエステルを水素化する方法(例えば、特許文献1参照)やエチレングリコールとアルコールを酸素の存在下で酸化的エステル化する方法(例えば、特許文献2参照)等が製造法として知られている。
シュウ酸ジエステルを水素化する方法では、反応生成物はグリコール酸エステルと未反応のシュウ酸ジエステルを含む。またエチレングリコールを酸化的エステル化する方法では、反応生成物はグリコール酸エステルと、エチレングリコールの両末端が酸化的エステル化反応して生成する副生成物であるシュウ酸ジエステルを含む。
上記反応生成物の場合、シュウ酸ジエステルとグリコール酸エステルのエステル基は同じものであり、その場合グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルは沸点が近く、またグリコール酸エステルが高濃度の領域では、気液平衡組成が近接しており、蒸留でグリコール酸エステルを高純度化することが困難である。そこで、カルボン酸ジエステルを共存させることで、グリコール酸エステルの相対揮発度を高めて分離する方法(例えば、特許文献3参照)や、アンモニアを添加して、シュウ酸ジエステルをオキサミド酸エステルやオキサミドにして分離する方法(例えば、特許文献4参照)等が開発されている。
しかしこれらの方法は、操作が複雑になったり、有害なアンモニアを扱う必要がある等、必ずしも工業化に適した方法とはいえず、より容易に高純度のグリコール酸エステルを製造する方法が求められている。
本発明は、グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを含む混合物からシュウ酸ジエステルの含有量の低いグリコール酸エステルを容易に得る方法を提供するものである。
本願発明者等は、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを含む混合物からグリコール酸エステルを蒸留精製によって製造するに当たり、水の共存下で蒸留することで、シュウ酸ジエステルの含有量を著しく低減したグリコール酸エステルを得ることができることを見いだして、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを含む混合物からグリコール酸エステルを蒸留精製によって製造するに当たり、水の共存下で蒸留することを特徴とするグリコール酸エステルの製造法に関する。
さらに本発明は、前記蒸留精製を行う蒸留塔から主成分として水を含む留分を抜き出す位置の温度が20℃以上であることを特徴としている。
さらに本発明は、前記蒸留精製を行う蒸留塔から主成分として水を含む留分を抜き出す位置の温度が20℃以上であることを特徴としている。
また本発明は、さらにシュウ酸ジエステルのエステル基に対応するアルコールとは異なるアルコールの存在下で蒸留精製を行うことを特徴とするグリコール酸エステルの製造法に関する。
また本発明は、グリコール酸エステルとシュウ酸エステルが同じエステル基を有していることを特徴としている。
さらに本発明は、グリコール酸エステル、シュウ酸ジエステル及び水を含む混合物であって、グリコール酸エステルの含有量が90質量%以上であり、かつ、シュウ酸ジエステルと水のモル比が、5/1〜1/20であることを特徴とする安定化されたグリコール酸エステル組成物に関する。
本発明によれば、工業的に有用なグリコール酸エステルを、蒸留によって容易にシュウ酸ジエステルから分離することができ、純度の高いグリコール酸エステルを製造することができる。
以下、本発明にかかるグリコール酸エステルの製造法について詳細に説明する。本発明で使用するグリコール酸エステルは特に限定されず、一般式(1)
(式中R1は炭素数1〜30のアルキル基を表す。)の形で表される。R1は炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、1〜10のアルキル基がより好ましい。
従ってエステル基(−COOR1)としては例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステルのような非環式アルキルエステル、シクロヘキシルエステル、メチルシクロヘキシルエステルのような環状アルキルエステル、フェニルエステル、トルイルエステルのような芳香族エステル等が例示できる。
またシュウ酸ジエステルも特に限定されず、一般式(2)
(式中R2、R3はそれぞれ炭素数1〜30のアルキル基を表す。R2とR3は異なっていても良い。)の形で表される。R1、R2は炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、1〜10のアルキル基がより好ましい。
従ってエステル基(−COOR2又は−COOR3)としては前述したグリコール酸エステルのエステル基と同様の例が挙げられる。またシュウ酸ジエステルの2つのエステル基は同じものであっても良いし、異なるものでも良い。
本発明においては、グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルの混合物を取り扱うが、グリコール酸エステルのエステル基とシュウ酸ジエステルのエステル基は同じものであっても良いし、異なるものでも良い。ただし、グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを構成するエステル基の炭素数が近いものほど分離が困難であり、エステル基が同じものである場合が最も分離が困難である。
従って本発明のグリコール酸エステルの製造法は、グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを構成するエステル基の炭素数が近い場合や、グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルが同じエステル基を有する場合に効果的であり、特にグリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルの2つのエステル基が全て同じ場合(R1=R2=R3)に最も効果的である。またアルキル基の中でもメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルのような非環式アルキルエステルの場合が効果的であり、さらにはメチルエステルの場合がより効果的である。
本発明の製造法における原料としては、シュウ酸ジエステルとグリコール酸エステルを含んでいれば良く、両者のみの混合物を用いても良いし、他の成分を含んでいても良い。他の成分とは例えば溶剤や、グリコール酸エステルを製造する際の反応液に含まれる未反応原料や副生成物等が挙げられる。
グリコール酸エステルを製造する際の反応液としては、例えばシュウ酸ジエステルの水素化反応によって得られた反応液や、酸素の存在下エチレングリコールとアルコールから酸化的エステル化反応によって得られた反応液が例示できる。中でも、酸素の存在下エチレングリコールとアルコールから酸化的エステル化反応によって得られた反応液を用いることが好ましい。
原料中のシュウ酸ジエステルとグリコール酸エステルの比は特に限定されないが、シュウ酸ジエステルのグリコール酸エステルに対するモル比は0.3以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下が一層好ましく、0.03以下がより一層好ましい。下限値は必要とされるグリコール酸エステルの純度にもよるが、0.0001以上が好ましく、0.0005以上がより好ましい。
本発明においては、グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを含む混合物を水の存在下で蒸留を行う。使用する水の量はシュウ酸ジエステルに対して、1重量倍以上が好ましく、3重量倍以上がより好ましく、5重量倍以上が一層好ましい。水の量がシュウ酸ジエステルの前記重量倍以上であると、シュウ酸ジエステルとグリコール酸エステルの分離効率が向上する。また、使用する水の量はシュウ酸ジエステルに対して、1000重量倍以下が好ましく、500重量倍以下がより好ましく、100重量倍以下が一層好ましい。1000重量倍を超えると水を留去するために必要な用役費が高くなる傾向がある。
また本発明においては、シュウ酸ジエステルのエステル基に対応するアルコールとは異なるアルコール(以下、他のアルコールと表記することがある)の存在下で蒸留を行うことで、さらにグリコール酸エステルの精製を効果的に行うことができる。シュウ酸ジエステルのエステル基に対応するアルコールとは、シュウ酸ジエステルを加水分解したときに遊離するアルコールのことであり、例えばシュウ酸ジメチルではメタノール、シュウ酸ジエチルではエタノールのことを指す。
他のアルコールのシュウ酸ジエステルに対するモル比は1以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が一層好ましい。他のアルコールはあまりに過剰に存在すると、装置が大きくなったり用役費が高くなるため、モル比は1000以下が好ましく500以下がより好ましい。
本発明においては、蒸留方式は特に限定されない。バッチ式、半回分式、連続式いずれも好適に実施できる。
多段式の蒸留塔を用いる場合、その蒸留塔の段数は特に限定されるものではないが、塔頂(最上段)と塔底(最下段)とを除いた段数が1段以上であることが好ましい。このような蒸留塔としては、例えば、ラシヒリング、ポールリング、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、スルーザーパッキング等の充填物が充填された充填塔;泡鐘トレイ、シーブトレイ、バルブトレイ等のトレイ(棚段)を使用した棚段塔等、一般に用いられている蒸留塔が使用できる。また、棚段と充填物層とを併せ持つ複合式の蒸留塔や塔内に仕切を有する結合式蒸留塔も用いることができる。尚、上記の段数とは、棚段塔においては棚段の数を示し、充填塔においては理論段数を示す。
また連続蒸留の原料にグリコール酸エステルよりも軽沸点成分と高沸点成分が含まれる場合、蒸留で精製を行う際には蒸留塔の数は、特に限定されない。2本の蒸留塔を用いて、1塔目で軽沸点成分を除去した後、2塔目でグリコール酸エステルを留出させてもよいし、1塔目で高沸点成分を除去した後、2塔目で軽沸点成分を留去し、グリコール酸エステルを塔底から抜き出してもよい。また1本の蒸留塔を用いて、グリコール酸エステルを塔の中段からサイドカットにより抜き出してもよい。
また、水や他のアルコールを追加して蒸留する場合、予め原料と混合してから蒸留塔に供給しても良いし、原料とは別の位置に供給しても良い。
グリコール酸エステルは、過度の熱履歴によって蒸留塔内でオリゴマー化等の副反応を起こす場合があるため、なるべく熱履歴を低減することが好ましい。そのため、液を加熱するための装置として、液膜式リボイラのような熱履歴を小さくできる装置を使用することができる。
蒸留塔における操作圧力は、反応液の組成、加熱源・冷却源の温度等によって適宜決定されるものであり、特に制限されるものではないが、蒸留塔内での副反応を抑制するために、減圧下で操作することで塔内の液温を低下させて蒸留することが好ましい。圧力としては、塔頂圧力が900hpa以下が好ましく、800hpa以下がより好ましい。また、蒸留塔の塔頂における還流比は限定的ではないが、好ましくは0.1〜100、より好ましくは0.2〜70とすればよい。その他の操作条件は、一般的な蒸留における適切な条件に従えばよい。
本発明においては、グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを含む混合物を、水の存在下で蒸留することで、シュウ酸ジエステルの含有量の低いグリコール酸ステルを得ることができる。
この理由としてひとつにシュウ酸ジエステルが水と共沸することが挙げられる。グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルの混合物を水の存在下で蒸留を行うと、蒸留塔の中でシュウ酸ジエステルは水と共沸混合物を形成し、バッチ蒸留の場合は共沸混合物がグリコール酸エステルよりも先に留出し、連続蒸留の場合には共沸混合物がグリコール酸エステルよりも塔内の上方に分布し、効率的に分離することができる。その結果、水が存在しない場合よりもシュウ酸ジエステルの含有量の低いグリコール酸エステルを得ることができる。
さらにシュウ酸ジエステルはグリコール酸エステルよりも非常に加水分解しやすく、水の存在下で蒸留を行うと、シュウ酸ジエステルが蒸留塔内で加水分解を起こしてシュウ酸モノエステル、シュウ酸となることを見出した。シュウ酸モノエステル、シュウ酸はカルボキシル基を有するため沸点が高く、グリコール酸エステルとの沸点差が大きくなるため、蒸留によりシュウ酸ジエステルの含有量の低いグリコール酸エステルを得ることができる。
シュウ酸ジエステルの加水分解によって、蒸留塔内のシュウ酸ジエステルの濃度が低下し、共沸混合物を形成するのに必要な水の量を低減する効果をも有する。蒸留塔内でシュウ酸ジエステルが加水分解を起こすためには、蒸留塔から主成分として水を含む留分を抜き出す位置の温度が20℃以上であることが好ましく、25℃以上がより好ましい。また150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。20℃以上とすることで加水分解の速度を早くすることができ分離の効率を挙げることができる。また150℃以下とすることで塔内でのグリコール酸エステルの副反応を抑制することができる。
また、主成分として水を含む留分とは、水を50質量%以上含む留分のことである。さらに水を含む留分を抜き出す位置の温度とは、連続蒸留の場合には、主成分として水を含む留分を塔頂から抜き出すときは塔頂の温度を指し、サイドカットにより抜き出すときは、サイドカット部の塔内温度を指す。またバッチ蒸留の場合には、塔頂からの留分中の水の含有量が50質量%を超えているときの塔頂温度を指す。
このようにシュウ酸ジエステルは、蒸留塔内で水と共沸混合物を形成し水と共に留去される部分と、水により加水分解を受け、高沸点物として塔底より抜き出される部分があり、それらの相乗効果によりグリコール酸エステルとの分離が容易になると考えられる。
さらにシュウ酸ジエステルはグリコール酸エステルよりも、エステル基を構成するアルコールとは異なるアルコール(以下、他のアルコールと表記することがある)とのエステル交換反応を起こしやすく、他のアルコールの共存下で蒸留を行うと、シュウ酸エステルは容易に他のアルコールのエステルとなる。他のアルコールがエステル基を構成するアルコールよりも沸点が低い場合、エステル交換によって生成したシュウ酸ジエステルは元のシュウ酸ジエステルよりも沸点が低くなり、グリコール酸エステルとの分離が容易になる。逆に他のアルコールがエステル基を構成するアルコールよりも沸点が高い場合、エステル交換によって生成したシュウ酸ジエステルは元のシュウ酸ジエステルよりも沸点が高くなり、グリコール酸エステルとの分離が容易になる。
また他のアルコールが存在すると、上記の加水分解にて生成したシュウ酸モノエステルやシュウ酸と蒸留塔内でエステル化反応を行い、他のアルコールのエステルとなる。この場合、蒸留塔内でシュウ酸モノエステルやシュウ酸といったカルボン酸の濃度が低くなるため、それらのカルボン酸による装置の腐食が抑えられるという効果もある。
本発明の製造方法について例を挙げてより具体的に説明する。例えば酸素の存在下メタノールとエチレングリコールからの酸化的エステル化によりグリコール酸メチルを合成した反応生成物を蒸留精製することによりグリコール酸エステルを製造する例を挙げる。
この反応生成物中には目的生成物であるグリコール酸メチルの他に、未反応原料であるメタノールとエチレングリコール、副生成物であるシュウ酸ジメチルと水を含んでいる。この反応生成物をそのまま蒸留しても良いし、シュウ酸ジメチルの分離が効率的になるように水や他のアルコールであるエチレングリコールの濃度を調整してから蒸留しても良い。
この反応生成物をバッチ蒸留した場合、まず最も蒸気圧の高いメタノールが留出する。次に水が留出するがその際に、水と共沸混合物を形成するシュウ酸ジメチルも水と共に留出する。その後シュウ酸ジメチルの含有量の低いグリコール酸メチルが留出する。グリコール酸メチルの留出が終わった後のボトム液中には、エチレングリコールの他に、塔内で加水分解したシュウ酸モノメチルやシュウ酸、シュウ酸類やシュウ酸ジメチルとエチレングリコールがエステル化やエステル交換することによって生成するシュウ酸2−ヒドロキシエチルメチル、シュウ酸ビス(2−ヒドロキシエチル)やシュウ酸モノ(2−ヒドロキシエチル)といった高沸点物が含まれることになる。
また連続蒸留を行った場合、シュウ酸ジメチルの一部は水と共沸することにより、グリコール酸エステルより軽い留分として分離される。また一部のシュウ酸ジメチルは蒸留塔内で加水分解を受け、シュウ酸モノメチルやシュウ酸となり、グリコール酸エステルよりも重い成分となり塔底から抜き出される。またシュウ酸類やシュウ酸ジメチルとエチレングリコールとの反応で生成するシュウ酸2−ヒドロキシエチルメチル、シュウ酸ビス(2−ヒドロキシエチル)やとシュウ酸モノ(2−ヒドロキシエチル)のような高沸点物はグリコール酸メチルよりも沸点が高く塔底から抜き出されることになる。
本発明のグリコール酸エステルの製造法によって、グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを含む混合物から、高純度のグリコール酸エステルを製造することができる。この結果、グリコール酸エステルの純度を向上させることができ、得られたグリコール酸エステルにおける、シュウ酸ジエステルのグリコール酸エステルに対する比を大きく低減することができる。
上記の方法によってグリコール酸エステルを高純度化できるが、水の存在下で蒸留するため、得られたグリコール酸エステル中に水を含む場合がある。また、グリコール酸エステルを保管、貯蔵中に空気中の水分を吸湿することもある。これらの水により、グリコール酸エステルが保管、貯蔵中に徐々に加水分解し、純度が経時的に低下する場合がある。
その際、グリコール酸エステルと水の組成物にシュウ酸ジエステルが共存していると保管、貯蔵時のグリコール酸エステル純度が安定的に保てることを本発明者は見出した。グリコール酸エステルよりも加水分解しやすいシュウ酸ジエステルを特定の割合で組成物中に共存させることで、グリコール酸エステルの経時的な純度低下を抑制していると推察している。この効果は、シュウ酸ジエステルと水のモル比が5/1〜1/20の範囲で顕著である。
従ってグリコール酸エステルを90質量%以上、より好ましくは92質量%以上、更に好ましくは95質量%以上に高純度化しており、かつシュウ酸ジエステルと水のモル比が5/1〜1/20(下限値は、好ましくは1/18、より好ましくは1/15、上限値は、好ましくは4/1、より好ましくは3/1)となるような組成に調整することで、保管、貯蔵時にも純度低下の少ない、高純度でかつ安定化されたグリコール酸エステル組成物を得ることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例1
グリコール酸メチル94.8質量%、シュウ酸ジメチル5.0質量%の組成の混合物1654g及び水827gを、住友/スルザーラボパッキングを層長90cmに充填した蒸留塔を備えた、3Lのガラス製フラスコに仕込み、バッチ蒸留を行った。仕込み原料中の水は、シュウ酸ジメチルの10質量倍であった。
グリコール酸メチル94.8質量%、シュウ酸ジメチル5.0質量%の組成の混合物1654g及び水827gを、住友/スルザーラボパッキングを層長90cmに充填した蒸留塔を備えた、3Lのガラス製フラスコに仕込み、バッチ蒸留を行った。仕込み原料中の水は、シュウ酸ジメチルの10質量倍であった。
塔頂圧力40hPa、還流比1にて蒸留を行い、初留を985g留出させた。その後、グリコール酸メチルの留分を1025g留出させた。この留分をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、グリコール酸メチル99.6質量%、シュウ酸ジメチル0.1質量%.水0.2質量%であった。シュウ酸ジメチルのグリコール酸メチルに対するモル比は、原料中では0.040であったものが、蒸留精製によって製造されたグリコール酸エステル中では0.001にまで低減することができた。初留のうち水の割合が50質量%を超えていたときの塔頂温度は29℃〜43℃の範囲であった。
比較例1
グリコール酸メチル94.8質量%、シュウ酸ジメチル5.0質量%の組成の混合物2236gを、住友/スルザーラボパッキングを層長90cmに充填した蒸留塔を備えた、3Lのガラス製フラスコに仕込み、バッチ蒸留を行った
塔頂圧力40hPa、還流比1にて蒸留を行い、1701g留出させた。留分をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、グリコール酸メチル95.2質量%、シュウ酸ジメチル4.1質量%であった。シュウ酸ジメチルのグリコール酸メチルに対するモル比は、原料中では0.040であり、蒸留精製によって製造されたグリコール酸エステル中では0.033であった。
グリコール酸メチル94.8質量%、シュウ酸ジメチル5.0質量%の組成の混合物2236gを、住友/スルザーラボパッキングを層長90cmに充填した蒸留塔を備えた、3Lのガラス製フラスコに仕込み、バッチ蒸留を行った
塔頂圧力40hPa、還流比1にて蒸留を行い、1701g留出させた。留分をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、グリコール酸メチル95.2質量%、シュウ酸ジメチル4.1質量%であった。シュウ酸ジメチルのグリコール酸メチルに対するモル比は、原料中では0.040であり、蒸留精製によって製造されたグリコール酸エステル中では0.033であった。
参考例(グリコール酸メチルの製造)
共沈法により調製されたTiO2−SiO2(モル比TiO2/SiO2=5/95 、焼成温度600℃、50〜250メッシュ)を担体として用いた。
共沈法により調製されたTiO2−SiO2(モル比TiO2/SiO2=5/95 、焼成温度600℃、50〜250メッシュ)を担体として用いた。
金として0.33質量%含むテトラクロロ金酸水溶液970kgを、70℃で15質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7に調節した。この水溶液に上記TiO2−SiO2担体31.9kgを攪拌下に投入し、温度65〜70℃に保ちながら1時間攪拌を続けた。その後、濾過して得られた固体にイオン交換水100Lを加えて室温で5分間攪拌した後、上澄み液を除去するという洗浄工程を5回繰り返した。最後に濾過により得られた固体を、150℃で12時間乾燥し、さらに空気中400℃で3時間焼成することにより、TiO2−SiO2担体上に金が担持された触媒(Au/TiO2−SiO2)を得た。
この触媒における金の担体に対する担持量は6.6質量%であった。また、金粒子の粒子径を観察したところ、ほとんど全て6nm以下の粒径で高分散しており、2〜3nm付近に極大を持つ狭い粒子径分布を持ち、平均粒子径は6nm以下であった。
上記で得られたAu/TiO2−SiO2触媒を用いて、グリコール酸メチルの合成を行った。回転式攪拌機及びコンデンサを備えた500Lの連続式槽型反応器2器に、それぞれエチレングリコール89.4kg、メタノール230.6kg及び上記触媒16.0kgを仕込み、窒素で1.5MPaまで加圧した。その後内温を110℃まで昇温し、圧力が1.9MPaになるように調整した。圧力を1.9MPaに保ったまま、空気を30kg/hrの流量で液中に吹き込み、110℃で6時間バッチ反応を行った。その後、1槽目にエチレングリコール12.5kg/hr、メタノール32.2kg/hr、空気16.6kg/hrの速度で原料を供給し、1槽目から流出した反応液は引き続き2槽目に供給し、さらに空気を12.0kg/hrで供給して、連続反応を行った。
2槽目から得られた反応液をガスクロマトグラフィー、液クロマトグラフィー及びカールフィッシャー水分計で分析した。反応液中にはグリコール酸メチル9.8質量%、シュウ酸ジメチル0.5質量%、エチレングリコール15.6質量%、メタノール56.1質量%、水13.4質量%含まれていた。
実施例2
内径250mm、理論段数42段の蒸留塔を用いて参考例1の反応液(グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを含む混合物)の蒸留精製を行った。塔頂圧力400hPa、還流比2.5に制御し、上記反応液を45kg/hrで蒸留塔の35段目に連続的に供給を行った。この原料中には、水がシュウ酸ジメチルの27重量倍含まれており、また他のアルコールであるエチレングリコールが、シュウ酸ジメチルの59モル倍含まれている。塔頂からはメタノールが主成分の留分を25.1kg/hrで抜き出し、9段目から水を主成分とする留分を6.7kg/hrでサイドカットにより抜き出し、27段目からグリコール酸メチルを主成分とする留分を3.9kg/hrでサイドカットにより抜き出した。塔底からは、塔底の液面が一定となるように塔底液を抜き出した。27段目から抜き出した留分をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、グリコール酸メチル98.5質量%、シュウ酸ジメチル0.8質量%、水0.4質量%であった。また水を主成分とする留分を抜き出した9段目の温度は75℃であった。シュウ酸ジメチルのグリコール酸メチルに対するモル比は、参考例1の反応液中では0.039であったものが、蒸留精製によって製造されたグリコール酸エステル中では0.006にまで低減することができた。
内径250mm、理論段数42段の蒸留塔を用いて参考例1の反応液(グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを含む混合物)の蒸留精製を行った。塔頂圧力400hPa、還流比2.5に制御し、上記反応液を45kg/hrで蒸留塔の35段目に連続的に供給を行った。この原料中には、水がシュウ酸ジメチルの27重量倍含まれており、また他のアルコールであるエチレングリコールが、シュウ酸ジメチルの59モル倍含まれている。塔頂からはメタノールが主成分の留分を25.1kg/hrで抜き出し、9段目から水を主成分とする留分を6.7kg/hrでサイドカットにより抜き出し、27段目からグリコール酸メチルを主成分とする留分を3.9kg/hrでサイドカットにより抜き出した。塔底からは、塔底の液面が一定となるように塔底液を抜き出した。27段目から抜き出した留分をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、グリコール酸メチル98.5質量%、シュウ酸ジメチル0.8質量%、水0.4質量%であった。また水を主成分とする留分を抜き出した9段目の温度は75℃であった。シュウ酸ジメチルのグリコール酸メチルに対するモル比は、参考例1の反応液中では0.039であったものが、蒸留精製によって製造されたグリコール酸エステル中では0.006にまで低減することができた。
この蒸留精製によって製造されたグリコール酸エステル組成物(グリコール酸エステル純度=98.5%、シュウ酸ジエステルと水のモル比=0.3)をステンレス製容器に1ヶ月保存(室温)した後のグリコール酸エステル純度は、変化がなく、安定化されていることが判った。
グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを含む混合物を、水の存在下に蒸留することによって、工業的に有用なグリコール酸エステル高純度化でき、より高純度が必要な用途へ広く適用できる。
Claims (4)
- グリコール酸エステルとシュウ酸ジエステルを含む混合物からグリコール酸エステルを蒸留精製によって製造するに当たり、水の共存下で蒸留することを特徴とするグリコール酸エステルの製造法。
- 前記蒸留精製を行う蒸留塔から主成分として水を含む留分を抜き出す位置の温度が20℃以上であることを特徴とする請求項1記載のグリコール酸エステルの製造法。
- さらにシュウ酸ジエステルのエステル基に対応するアルコールとは異なるアルコールの存在下で蒸留精製を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のグリコール酸エステルの製造法。
- グリコール酸エステル、シュウ酸ジエステル及び水を含む混合物であって、グリコール酸エステルの含有量が90質量%以上であり、かつ、シュウ酸ジエステルと水のモル比が、5/1〜1/20であることを特徴とする安定化されたグリコール酸エステル組成物。
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JP2004003553A JP2005194242A (ja) | 2004-01-09 | 2004-01-09 | グリコール酸エステルの製造法 |
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CN112521265A (zh) * | 2020-12-09 | 2021-03-19 | 浙江联盛化学股份有限公司 | 一种连续化生产乙醇酸的方法 |
CN113754539A (zh) * | 2021-10-11 | 2021-12-07 | 天津博创工程科技有限公司 | 一种草酸二甲酯的纯化脱色方法 |
CN117304030A (zh) * | 2023-11-27 | 2023-12-29 | 太原理工大学 | 一种乙二醇氧化酯化法一步合成高纯度乙醇酸甲酯工艺 |
-
2004
- 2004-01-09 JP JP2004003553A patent/JP2005194242A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN112521265A (zh) * | 2020-12-09 | 2021-03-19 | 浙江联盛化学股份有限公司 | 一种连续化生产乙醇酸的方法 |
CN113754539A (zh) * | 2021-10-11 | 2021-12-07 | 天津博创工程科技有限公司 | 一种草酸二甲酯的纯化脱色方法 |
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CN117304030A (zh) * | 2023-11-27 | 2023-12-29 | 太原理工大学 | 一种乙二醇氧化酯化法一步合成高纯度乙醇酸甲酯工艺 |
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