JP2004331558A - 歯科用セメント組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】歯質への接着性や、硬化速度、初期強度に優れ、経時的な物性低下のない歯科用セメント組成物を提供する。
【解決手段】金属酸化物またはガラスの粉末と、下記の有機重合体とを含有する歯科用セメント組成物。
(置換)カルボキシ基含有ユニット(A)と、(置換)カルバモイル基含有ユニット(B)とを含み、(A)、(B)両ユニットの合計が全ユニット中20モル%以上を占めるとともに、ユニット(A)とユニット(B)の比率が0.6/1.0〜1.0/0.6の割合であり、(A)、(B)両ユニット中で少ない方のユニットの存在量を100モル%としたとき、その70モル%以上において、前記ユニット(A)の(置換)カルボキシ基に結合する炭素と前記ユニット(B)の(置換)カルバモイル基に結合する炭素が、直接、またはメチレン基あるいはエチレン基を介して隣接している有機重合体。
【選択図】 なし
【解決手段】金属酸化物またはガラスの粉末と、下記の有機重合体とを含有する歯科用セメント組成物。
(置換)カルボキシ基含有ユニット(A)と、(置換)カルバモイル基含有ユニット(B)とを含み、(A)、(B)両ユニットの合計が全ユニット中20モル%以上を占めるとともに、ユニット(A)とユニット(B)の比率が0.6/1.0〜1.0/0.6の割合であり、(A)、(B)両ユニット中で少ない方のユニットの存在量を100モル%としたとき、その70モル%以上において、前記ユニット(A)の(置換)カルボキシ基に結合する炭素と前記ユニット(B)の(置換)カルバモイル基に結合する炭素が、直接、またはメチレン基あるいはエチレン基を介して隣接している有機重合体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は歯科用セメント組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
歯科用セメントとしては多くの種類のものが知られているが、現在最も好ましいものとして汎用されているものは、フルオロアルミノシリケートガラス粉末等のガラスとポリカルボン酸との反応を利用したグラスアイオノマーセメントである。すなわち、水の存在下で酸の作用を受けることによりガラス中の金属イオンがガラスから放出され、この金属イオンとポリカルボン酸のカルボキシル基とがイオン反応をおこし、硬化するものである。
このグラスアイオノマーセメントは、生体親和性、歯質に対する接着性、口腔内での耐久性に優れると共に、硬化体が半透明で審美性にも優れているなど、多くの特長を有しているため、インレー、クラウン等の合着、う蝕窩洞内の充填、裏装、小窩洞溝への予防填塞など、幅広く活用されている。
【0003】
しかしながら、グラスアイオノマーセメントの最大の欠点は、練和直後の硬化初期に唾液等の水分に触れると硬化反応が阻害され、最終的に物性が劣化することである。即ちグラスアイオノマーセメントは、ポリカルボン酸とフルオロアルミノシリケートガラス等の無機化合物から生じる多価金属とのキレート形成反応によって水の存在下で硬化反応をおこすものであり、従ってその反応には、金属イオンを放出させる為の水を必須とする反面、硬化系もしくは硬化物内に存在する水は、硬化速度や初期強度を高めるうえでマイナスにも作用する。
そのため、歯質との初期接着性が低く、また経時的にその他の物性もさらに低下する。
また、グラスアイオノマーセメントはコンポジットレジンやレジンセメントに比べ、特に靱性に劣る。
【0004】
上記欠点を改良するため、、接着性レジンセメントのように象牙質面にハイブリッド層をつくり、安定した接着を示すようなセメントの開発が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
このレジン強化型グラスアイオノマーセメントはフルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリカルボン酸、水、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、架橋剤などからなり、フルオロアルミノシリケートガラスとポリカルボン酸との酸−塩基反応が始まるとともに、レドックス触媒または光重合触媒によるHEMA重合体とポリカルボン酸塩が水素結合で絡み合った硬化体を形成し、高分子物質特有の靭性が付与される。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−255515号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このレジン強化型グラスアイオノマーセメントはその歯質に対するイオン反応性が従来のグラスアイオノマーセメントよりも低いため、充分な接着力を有するとは言い難い。また、操作が煩雑で歯科医の技量による性能差が出やすい。
このような状況に鑑み、より歯質への接着性に優れ、煩雑な操作を必要としないグラスアイオノマーセメントが要望されている。
本発明はこの様な従来のグラスアイオノマーセメントの欠点を改良し、歯質への接着性や、硬化速度、初期強度に優れ、かつ、経時的な物性低下のない歯科用セメント組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の歯科用セメント組成物は、多価金属化合物を含有する無機粉末と、水と、下記の有機重合体とを含有することを特徴とする。
下記式(I)で示される(置換)カルボキシ基含有ユニット(A)と、下記式(II)で示される(置換)カルバモイル基含有ユニット(B)とを含む重合体であり、(A)、(B)両ユニットの合計が重合体を形成する全ユニット中20モル%以上を占めるとともに、ユニット(A)とユニット(B)は(A)/(B)が0.6/1.0〜1.0/0.6の割合で存在しており、ユニット(A)とユニット(B)のうち重合体中で少ない方のユニットの存在量を100モル%としたとき、その70モル%以上において、前記ユニット(A)の(置換)カルボキシ基に結合する炭素と前記ユニット(B)の(置換)カルバモイル基に結合する炭素が、直接、またはメチレン基あるいはエチレン基を介して隣接している有機重合体
【0008】
【化3】
【0009】
[式(I)において、nは0又は1を示し、Xは水素原子、−NH4、又は1/mM(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、Zn、Cdから選ばれる金属原子を示し、mはその金属の価数を示す。)を示し、R1は水素原子又はメチル基を示す。]
【0010】
【化4】
【0011】
[式(II)において、nは0又は1を示し、R2は水素原子又はメチル基を示し、R3は水素、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示す。]
【0012】
なお、本発明において、(置換)カルボキシ基とは、カルボキシ基および/または水素原子が−NH4、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、Zn、Cdから選ばれる金属原子で置換されたカルボキシ基をいい、(置換)カルバモイル基とは、カルバモイル基または、一方の水素が炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基で置換されたカルバモイル基をいう。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の歯科用セメント組成物は歯質への接着成分として、従来のポリカルボン酸のかわりに(置換)カルボキシ基含有ユニット(A)と(置換)カルボキシ基含有ユニット(A)とが隣接して結合したユニットを有する新規な有機重合体を使用することにその特長を有する。
【0014】
本発明の歯科用セメント組成物に用いられる有機重合体は、(A)、(B)両ユニットの合計が重合体を形成する全ユニット中20モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上を占めるものであり、(A)、(B)両ユニットのみからなる重合体が最も好ましい。
(A)、(B)両ユニットの合計が100%未満である時に、該有機重合体に含有されていてもよいユニットは特に限定されるものではないが、このようなユニットとしてはアルキル基、芳香族基、アルキルオキシカルボニル基を側鎖を有していてもよいアルキレンユニット、シクロアルキレンユニット、アミド結合を有するユニット(−R−CONH−または−R−NHCO−、但しRはアルキレン基を示す)等を挙げることができる。
【0015】
このユニット(A)とユニット(B)は、(A):(B)が、0.6:1.0〜1.0:0.6の割合で存在していることが必要である。
ユニット(A)とユニット(B)の合計の重合体に占める比率が20モル%以上であって、(A):(B)が上記範囲にあると、下記式(III)に示すような、前記ユニット(A)の(置換)カルボキシ基に結合する炭素と前記ユニット(B)の(置換)カルバモイル基に結合する炭素が、直接、またはメチレン基を介して隣接している構造(C)を効率よく形成できる。
この構造(C)が形成されると、有機重合体と無機化合物との結合が強固になるため、この重合体を含有する歯科用セメント組成物は歯質との接着が強固となる。この構造(C)をより多く形成するためには、重合体中の両ユニットの存在量が同等レベルであることが好ましい。(A):(B)は、0.7:1.0〜1.0:0.7が好ましく、0.8:1.0〜1.0:0.8がより好ましい。
【0016】
【化5】
【0017】
[式(III)において、pは0、1又は2を示し、Xは水素原子、−NH4、又は1/mM(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、Zn、Cdから選ばれる金属原子を示し、mはその金属の価数を示す。)を示し、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は水素原子又はメチル基を示し、R3は炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示す。]
【0018】
さらに、ユニット(A)とユニット(B)のうち重合体中での存在量が少ない方のユニットの存在量を100モル%としたとき、その70モル%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくはその100%において、ユニット(A)のカルボキシ基に結合した炭素とユニット(B)のカルバモイル基に結合した炭素が直接またはメチレン基もしくはエチレン基を介して結合した構造(C)を形成していなければならない。
例えば、重合体を構成するすべてのユニット100モル%のうち、ユニット(A)が40モル%を占め、ユニット(B)が30モル%を占めている場合、存在量が少ないユニット(B)の存在量を基準として、このうちの70モル%以上(すなわち、全構成ユニット中では、21モル%以上)が、ユニット(A)と隣り合って存在して構造(C)を形成していなければならないということである。
構造(C)が上記の量形成されていると、この重合体を用いた歯科用セメント組成物の歯質との接着が強固になる。
【0019】
また、本発明において用いる有機重合体は、重合体中の一部に構造(C)がかたまって存在して、他の部分では全く存在していないといった不規則な存在形態を採るのではなく、後述する製造方法の採用によって、構造(C)がポリマー分子鎖の中で、比較的均一に分布していることが好ましい。
このように均一に分布していると、この有機重合体を用いた歯科用セメント組成物が歯質とより強固に接着すると考えられる。この有機重合体を後述の方法で製造すると、構造(C)がポリマー分子の中で比較的均一に分散したものとなる。
上記構造(C)では、(置換)カルボキシル基の−C=Oの酸素原子と(置換)カルバモイル基中の水素原子が分子内水素結合を形成する。この水素結合の存在によって、カルボキシル基の酸強度が強くなり、歯質中のカルシウムと強固に結合すると考えられる。
すなわち、カルボキシル基の近傍にカルバモイル基がない安息香酸の例として、2,2−ジメチルプロパノイルアミノ安息香酸のpKaが5.4であり、立体障害を有する2,4,6−トリメチル安息香酸のpKaが4.8であるのに対し、カルボキシル基の近傍にカルバモイル基を有する2−(2,2−ジメチルプロパノイル)−6−メチル安息香酸ではpKaが3.9と酸強度が強くなり、カルボキシ基の両側にカルバモイル基を有する2,6−ジ(2,2−ジメチルプロパノイル)メチル安息香酸ではpKaが3.1と、更に酸強度が強くなる。このことは、カルボキシル基の近傍にカルバモイル基が存在すると、分子内水素結合を形成し、この水素結合の形成によって、カルボキシル基の酸強度が強くなることを示していると考えられる。
なお、水素結合を促進させ、酸強度を高める点からR3は、アルキル基か、アルケニル基か、アラルキル基であることが好ましい。
【0020】
上記の分子内水素結合の形成のし易さの点からは、p=0(ユニット(A)の(置換)カルボキシ基に結合する炭素とユニット(B)の(置換)カルバモイル基に結合する炭素が、直接隣接)またはp=1(ユニット(A)の(置換)カルボキシ基に結合する炭素とユニット(B)の(置換)カルバモイル基に結合する炭素が、メチレン基を介して隣接)していることが好ましい。なお、1つの有機重合体分子中にp=0の構造と、p=1の構造と、p=2の構造が混在していてもよい。
【0021】
有機重合体の重合度は5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、50以上が更に好ましく、100以上が最も好ましい。
重合度が高いほうが歯質と接着して接着層を形成した時、それが強靭な樹脂層となって生体組織とその上に補綴される人工物との境界で外来の刺激を遮断する保護層の働きをする上に有利となる。また、歯科用セメントの調製のし易さ、施工性から、有機重合体の重合度は10000以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の歯科用セメント組成物に用いられる有機重合体は、以下の方法で製造できる。
まず、カルボキシル基含有モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸を用いて、重合体を構成する全ユニット中の20モル%以上が(メタ)アクリル酸ユニットであるカルボキシル基含有重合体を定法で製造する。
次いで、得られたカルボキシル基含有重合体を脱水剤で処理し、隣接する2個のカルボキシル基を酸無水物化して、酸無水物基が導入された重合体とする。
そしてこの酸無水物基を、アンモニアや、アルキルアミン等のアミド化剤を用いて、公知の条件で開環付加させてモノアミド化することにより、(置換)カルボキシル基に結合する炭素と(置換)カルバモイル基に結合する炭素が直接、または、メチレン基あるいはエチレン基を介して結合した構造(C)を有する有機重合体を得ることができる。
【0023】
なお、上記のように、例えば(メタ)アクリル酸の様なカルボキシル基含有モノマーを重合してから構造(C)を形成する際に、重合時に、いわゆる頭頭(尾尾)結合をするケースと、頭尾結合をするケース両方があり得ることを考慮したものであり、pが0または2の場合が頭頭(尾尾)結合をした場合となり、pが1の場合は頭尾結合をした場合である。
【0024】
また、無水マレイン酸を用いて公知の方法で重合体を形成し、次いで、得られた重合体中の酸無水物基を、アンモニア、アミン等のアミド化剤を用いて公知の条件で開環付加させることにより、本発明の歯科用セメント組成物に用いられる有機重合体を得ることもできる。
【0025】
この有機重合体は、専ら無水マレイン酸のような酸無水物基を有するモノマーから合成されるため、上記構造(C)においてpが0、すなわち(置換)カルボキシル基に結合した炭素原子と、(置換)カルバモイル基に結合した炭素原子がポリマー主鎖中で必ず直接結合した形態となる。
従って、有機重合体を合成する際に、酸無水物基を有するモノマーさえ用いれば、確実にpが0の構造(C)を形成することができる。
【0026】
酸無水物基を有するモノマーの重合にあたっては、無水マレイン酸と共重合可能な他のモノマーを用いてもよい。
無水マレイン酸を用いた重合体は、無水マレイン酸ユニットがユニット(C)そのものとなるので、重合体中の無水マレイン酸が70%以上であれば、ランダム共重合体であってもいい。しかし、無水マレイン酸が40〜70%未満であれば、構造(C)を均一に分散させるために、交互共重合体を形成することが好ましい。
交互共重合体は、無水マレイン酸と電子供与性モノマーをラジカル重合することにより得られる。
電子供与性モノマーとは、モノマーの固有値であるe値が負のモノマーであり、例えば、アリルアルコール等のアリルモノマー類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテルモノマー類、p−ジオキセン等の環状エーテルモノマー類、酢酸ビニル等のビニルエステルモノマー類、プロピレン等のαーオレフィン類、スチレン類等があげられる。
【0027】
本発明の歯科用セメント組成物は上記の有機重合体とともに、多価金属化合物を含有する無機粉末を含有する。この多価金属化合物としては、多価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、珪酸塩等を挙げることができる。多価金属の酸化物としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム等を用いることができる。多価金属の水酸化物としては、例えば水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等を挙げることができる。多価金属の炭酸塩としては、例えば炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム等を挙げることができる。多価金属の硫酸塩としては、例えば石膏、硫酸バリウム等を挙げることができる。多価金属のリン酸塩としては、例えばリン酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、珪酸塩類としては、例えば珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、ホウ珪酸アルミニウムなどが例示される。これらの中でも特に好ましいのは、珪酸塩類に属する多価金属イオン浸出性ガラスであり、このようなガラスとしては、アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラスを例示できるが、これに限定されるものではない。多価金属化合物を含有する無機粉末を用いると、粉末中のアルミニウムやカルシウムなどの金属が有機重合体中の、分子内水素結合により強められた酸強度を有するカルボキシル基が配位して強固な結合を形成する。
多価金属化合物を含有する無機粉末の質量平均粒径は10μm以下であることが好ましい。
接着成分が上記有機重合体のみからなる場合は、該有機重合体を水または水と有機溶媒の混合溶媒に溶解した溶液として用いることができ、
【0028】
本発明の歯科用セメント組成物は更に(メタ)アクリレート系重合性単量体および重合触媒を含有してもよい。
(メタ)アクリレート系重合性単量体を含有する場合は、例えば有機重合体、重合触媒等をこの(メタ)アクリレート系重合性単量体に溶解した溶液として用いることができる。有機溶媒としては、エチルアルコール、プロピルアルコール、アセトン等を挙げることができる。
メタアクリレート系重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、あるいは(メタ)アクリル酸のモノ、ジ−グリセリンエステル、(メタ)アクリル酸のモノ、ジ、トリ−ペンタエリスリトールエステル、(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸、(メタ)アクリロイルオキシプロピルリン酸、(メタ)アクリロイルオキシブチルリン酸、テトラ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロリン酸、メチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2−ビス[(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン等を例示できる。
【0029】
重合触媒としては光重合触媒、レドックス重合触媒を用いることができ、この両者を併用することもできる。
光重合触媒としては、カンファーキノン、ナフトキノン、ベンジル、ビアセチル等を例示できる。
レドックス重合触媒としては、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキシだ、t−ブチルハイドロパーオキシド、過硫酸カリ、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等の公知のラジカル重合開始剤と還元剤の併用系を挙げることができ、還元剤としては、N,N−ジメチルアミノ−p−トルイジン、ブチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、ジメチルアミノ安息香酸等のアミン系還元剤を挙げることができる。
【0030】
本発明の歯科用セメント組成物は、上述の有機重合体と、多価金属化合物を含有する無機粉末と水を含有する。多価金属化合物を含有する無機粉末からは水の存在下で多価金属イオンが表面に溶出する。この有機重合体はカルボキシル基の酸強度が強いので、この多価金属イオンと強固に結合し、この結合を介して該無機粉末と強固に結合し、更に歯質中のカルシウムとも強固に結合する。したがって、本発明の歯科用セメント組成物は歯質表面を接着のための前処理をせずとも歯質に強固に接着するので、充填、合着時の操作ステップが少なくてすむ。
【0031】
更に、重合性単量体と重合触媒を含有すると、これを歯質に適用すると、重合性単量体が前記有機重合体と絡み合った状態で重合し、歯科用セメント組成物の硬化物に靭性が付与されるので好ましい。
【0032】
本発明の歯科用セメント組成物は、インレー、クラウン、ブリッジ等の歯科用補綴物と歯質の合着、矯正装置と歯質の合着、う蝕窩洞溝の充填、裏装、小窩洞溝の予防填塞等に好適に用いられる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例、比較例で得た歯科用セメント組成物の混和物の評価は以下の手順に従って行った。
【0034】
[牛歯象牙質への接着強度]
牛前歯をワックスに埋め込んだ後、エメリーペーパー#600で研磨し、牛歯象牙質面を露出させた。象牙質面に直径4mmの穴をあけたテープを貼付して、接着面積を規定した。この穴の部分に、混和した歯科用セメント組成物を塗布した後、予め接着試験用フックを埋設し硬化させた直径6mm、長さ12mmのセメント硬化体丸棒を突き合わせて、光照射器により20秒間光照射して試験体を作製した。この試験体を37℃、RH100%の雰囲気中に1時間放置した後、37℃の水中に24時間浸漬した。この試験体をオートグラフAGS−500(島津製作所製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/分で引っ張り試験を行い、接着強度を測定した。
【0035】
[圧縮強度]
混和した歯科用セメント組成物を所定のポリテトラフルオロエチレン製の鋳型に充填し、そのまま室温中30分硬化させ、直径6mm、長さ12mmの圧縮試験用試験片を作成した。この試験片を37℃の水中に48時間浸漬した後に、オートグラフクロスヘッドスピード2mm/分で圧縮試験を行った。
【0036】
(実施例1)
ポリアクリル酸(Mw:450,000)21.6gを1lのメタノールに溶解し、室温でトリ−n−ブチルアミン55.6gを撹拌下混合し、さらに12時間撹拌した。その後、エバポレーターを用い、50℃、減圧条件下で、メタノールを除去した後、2lのジクロルメタンに溶解した。この溶液に30℃で環状窒化塩化リン三量体52.1gを撹拌下混合し、12時間撹拌した。引き続きこの溶液にジエチルエーテル2lを加えて、固体を析出させた。
濾過により固体を分離し、少量のジクロルメタンで洗浄後、乾燥して、16gのポリアクリル酸無水物が得られた。IRで、下記の通り、酸無水物基の生成を確認した。
IR(in KBr):1804cm−1(C=O)、1760cm−1(C=O)、1030cm−1(CO−O−CO)
【0037】
t−ブチルアミン87.8gに室温で上記ポリアクリル酸無水物6.4gを加え、12時間撹拌した。エバポレーターで蒸発乾固させた後、100gの水に溶解した。この溶液に濃塩酸を滴下し、pH2〜3にした。析出した固体を濾別し、ジエチルエーテルで洗浄した。元素分析、1H−NMR分析結果は以下の通りである。
元素分析:(C10H17NO3)
計算値:C60.28モル%、N7.03モル%、H8.60モル%
測定値:C60.52モル%、N7.12モル%、H7.82モル%
1H−NMR(DMSO−d6):12.00ppm(COOH)、6.9ppm(CONH)、1.17ppm(CH3)
これらから、アクリル酸ユニットとN−t−ブチルアクリルアミドユニットが交互に並んでいる有機重合体Aが得られたと判断された。
1H−NMRチャートの積分値から−COOHと−CONHの比率は1.00:0.88であることがわかった。また、この反応条件では、重合体A中のアミド系ユニットは、100モル%の割合で構造(C)を形成していると考えられる。
【0038】
フルオロアルミノシリケートガラス粉末50gに、ジメチルアミノ安息香酸エチル0.1gを加えて混合し、セメント粉末とした。
一方、上記で得られた有機重合体Aの5gを2−ヒドロキシエチルメタクリレート20gと水1gの混合液に溶解して溶液とし、この溶液にカンファーキノン0.1gを均一に溶解してセメント液とした。
このセメント液1.0gを上記セメント粉末1.8gに加えて30秒間混和して、混和歯科用セメント組成物を得た。
この混和歯科用セメント組成物を用いて対牛歯象牙質接着強度と圧縮強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同様にして得た有機重合体Aの40質量%水溶液を調製し、セメント液とした。
このセメント液1.0gを実施例1と同様にして得たセメント粉末1.8gに加えて30秒間混和して、混和歯科用セメント組成物を得た。
この混和歯科用セメント組成物を用いて対牛歯象牙質接着強度と圧縮強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0040】
(比較例1)
アクリル酸/アクリロイルオキシエチルリン酸=95/5(質量比)のモノマー混合物8gに過硫酸アンモニウム0.36gとハイドロキノン50mgを加えたものをガラス管に入れ、窒素置換後に封管して、80℃で15時間重合した。
得られた共重合体を透析、凍結乾燥、粉砕して共重合体粉末とした。
得られた共重合体粉末5gを2−ヒドロキシエチルメタクリレート20gに溶解した溶液に、過硫酸アンモニウム0.1gを均一に溶解してセメント液とした。
このセメント液1.0gを実施例1と同様にして得たセメント粉末1.8gに加えて30秒間混和して、混和歯科用セメント組成物を得た。
この混和歯科用セメント組成物を用いて対牛歯象牙質接着強度と圧縮強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0041】
(比較例2)
比較例1で得たと同様の共重合体粉末を水に溶解して40質量%の水溶液を得た。これをセメント液として、その1.0gを実施例1と同様にして得たセメント粉末1.8gに加えて30秒間混和しして、混和歯科用セメント組成物を得た。
この混和歯科用セメント組成物を用いて対牛歯象牙質接着強度と圧縮強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から、有機重合体として、アクリル酸/アクリロイルオキシエチルリン酸共重合体を用いた従来タイプのグラスアイオノマーセメントに比べて、特定の有機重合体を用いた本発明の歯科用セメント組成物は歯質に対して高い接着性を示すことがわかる。また、圧縮強度試験結果からわかるように靭性にも優れており、また、耐水耐久性にも優れることがわかる。
【0044】
【発明の効果】
本発明により、アクリル酸とアクリロイルオキシ基含有単量体の共重合体や、ポリアクリル酸を用いた従来のグラスアイオノマーセメントに比べて、歯質への接着性や、硬化速度、初期強度に優れ、かつ、経時的な物性低下のない歯科用セメント組成物を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は歯科用セメント組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
歯科用セメントとしては多くの種類のものが知られているが、現在最も好ましいものとして汎用されているものは、フルオロアルミノシリケートガラス粉末等のガラスとポリカルボン酸との反応を利用したグラスアイオノマーセメントである。すなわち、水の存在下で酸の作用を受けることによりガラス中の金属イオンがガラスから放出され、この金属イオンとポリカルボン酸のカルボキシル基とがイオン反応をおこし、硬化するものである。
このグラスアイオノマーセメントは、生体親和性、歯質に対する接着性、口腔内での耐久性に優れると共に、硬化体が半透明で審美性にも優れているなど、多くの特長を有しているため、インレー、クラウン等の合着、う蝕窩洞内の充填、裏装、小窩洞溝への予防填塞など、幅広く活用されている。
【0003】
しかしながら、グラスアイオノマーセメントの最大の欠点は、練和直後の硬化初期に唾液等の水分に触れると硬化反応が阻害され、最終的に物性が劣化することである。即ちグラスアイオノマーセメントは、ポリカルボン酸とフルオロアルミノシリケートガラス等の無機化合物から生じる多価金属とのキレート形成反応によって水の存在下で硬化反応をおこすものであり、従ってその反応には、金属イオンを放出させる為の水を必須とする反面、硬化系もしくは硬化物内に存在する水は、硬化速度や初期強度を高めるうえでマイナスにも作用する。
そのため、歯質との初期接着性が低く、また経時的にその他の物性もさらに低下する。
また、グラスアイオノマーセメントはコンポジットレジンやレジンセメントに比べ、特に靱性に劣る。
【0004】
上記欠点を改良するため、、接着性レジンセメントのように象牙質面にハイブリッド層をつくり、安定した接着を示すようなセメントの開発が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
このレジン強化型グラスアイオノマーセメントはフルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリカルボン酸、水、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、架橋剤などからなり、フルオロアルミノシリケートガラスとポリカルボン酸との酸−塩基反応が始まるとともに、レドックス触媒または光重合触媒によるHEMA重合体とポリカルボン酸塩が水素結合で絡み合った硬化体を形成し、高分子物質特有の靭性が付与される。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−255515号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このレジン強化型グラスアイオノマーセメントはその歯質に対するイオン反応性が従来のグラスアイオノマーセメントよりも低いため、充分な接着力を有するとは言い難い。また、操作が煩雑で歯科医の技量による性能差が出やすい。
このような状況に鑑み、より歯質への接着性に優れ、煩雑な操作を必要としないグラスアイオノマーセメントが要望されている。
本発明はこの様な従来のグラスアイオノマーセメントの欠点を改良し、歯質への接着性や、硬化速度、初期強度に優れ、かつ、経時的な物性低下のない歯科用セメント組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の歯科用セメント組成物は、多価金属化合物を含有する無機粉末と、水と、下記の有機重合体とを含有することを特徴とする。
下記式(I)で示される(置換)カルボキシ基含有ユニット(A)と、下記式(II)で示される(置換)カルバモイル基含有ユニット(B)とを含む重合体であり、(A)、(B)両ユニットの合計が重合体を形成する全ユニット中20モル%以上を占めるとともに、ユニット(A)とユニット(B)は(A)/(B)が0.6/1.0〜1.0/0.6の割合で存在しており、ユニット(A)とユニット(B)のうち重合体中で少ない方のユニットの存在量を100モル%としたとき、その70モル%以上において、前記ユニット(A)の(置換)カルボキシ基に結合する炭素と前記ユニット(B)の(置換)カルバモイル基に結合する炭素が、直接、またはメチレン基あるいはエチレン基を介して隣接している有機重合体
【0008】
【化3】
【0009】
[式(I)において、nは0又は1を示し、Xは水素原子、−NH4、又は1/mM(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、Zn、Cdから選ばれる金属原子を示し、mはその金属の価数を示す。)を示し、R1は水素原子又はメチル基を示す。]
【0010】
【化4】
【0011】
[式(II)において、nは0又は1を示し、R2は水素原子又はメチル基を示し、R3は水素、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示す。]
【0012】
なお、本発明において、(置換)カルボキシ基とは、カルボキシ基および/または水素原子が−NH4、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、Zn、Cdから選ばれる金属原子で置換されたカルボキシ基をいい、(置換)カルバモイル基とは、カルバモイル基または、一方の水素が炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基で置換されたカルバモイル基をいう。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の歯科用セメント組成物は歯質への接着成分として、従来のポリカルボン酸のかわりに(置換)カルボキシ基含有ユニット(A)と(置換)カルボキシ基含有ユニット(A)とが隣接して結合したユニットを有する新規な有機重合体を使用することにその特長を有する。
【0014】
本発明の歯科用セメント組成物に用いられる有機重合体は、(A)、(B)両ユニットの合計が重合体を形成する全ユニット中20モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上を占めるものであり、(A)、(B)両ユニットのみからなる重合体が最も好ましい。
(A)、(B)両ユニットの合計が100%未満である時に、該有機重合体に含有されていてもよいユニットは特に限定されるものではないが、このようなユニットとしてはアルキル基、芳香族基、アルキルオキシカルボニル基を側鎖を有していてもよいアルキレンユニット、シクロアルキレンユニット、アミド結合を有するユニット(−R−CONH−または−R−NHCO−、但しRはアルキレン基を示す)等を挙げることができる。
【0015】
このユニット(A)とユニット(B)は、(A):(B)が、0.6:1.0〜1.0:0.6の割合で存在していることが必要である。
ユニット(A)とユニット(B)の合計の重合体に占める比率が20モル%以上であって、(A):(B)が上記範囲にあると、下記式(III)に示すような、前記ユニット(A)の(置換)カルボキシ基に結合する炭素と前記ユニット(B)の(置換)カルバモイル基に結合する炭素が、直接、またはメチレン基を介して隣接している構造(C)を効率よく形成できる。
この構造(C)が形成されると、有機重合体と無機化合物との結合が強固になるため、この重合体を含有する歯科用セメント組成物は歯質との接着が強固となる。この構造(C)をより多く形成するためには、重合体中の両ユニットの存在量が同等レベルであることが好ましい。(A):(B)は、0.7:1.0〜1.0:0.7が好ましく、0.8:1.0〜1.0:0.8がより好ましい。
【0016】
【化5】
【0017】
[式(III)において、pは0、1又は2を示し、Xは水素原子、−NH4、又は1/mM(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、Zn、Cdから選ばれる金属原子を示し、mはその金属の価数を示す。)を示し、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は水素原子又はメチル基を示し、R3は炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示す。]
【0018】
さらに、ユニット(A)とユニット(B)のうち重合体中での存在量が少ない方のユニットの存在量を100モル%としたとき、その70モル%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくはその100%において、ユニット(A)のカルボキシ基に結合した炭素とユニット(B)のカルバモイル基に結合した炭素が直接またはメチレン基もしくはエチレン基を介して結合した構造(C)を形成していなければならない。
例えば、重合体を構成するすべてのユニット100モル%のうち、ユニット(A)が40モル%を占め、ユニット(B)が30モル%を占めている場合、存在量が少ないユニット(B)の存在量を基準として、このうちの70モル%以上(すなわち、全構成ユニット中では、21モル%以上)が、ユニット(A)と隣り合って存在して構造(C)を形成していなければならないということである。
構造(C)が上記の量形成されていると、この重合体を用いた歯科用セメント組成物の歯質との接着が強固になる。
【0019】
また、本発明において用いる有機重合体は、重合体中の一部に構造(C)がかたまって存在して、他の部分では全く存在していないといった不規則な存在形態を採るのではなく、後述する製造方法の採用によって、構造(C)がポリマー分子鎖の中で、比較的均一に分布していることが好ましい。
このように均一に分布していると、この有機重合体を用いた歯科用セメント組成物が歯質とより強固に接着すると考えられる。この有機重合体を後述の方法で製造すると、構造(C)がポリマー分子の中で比較的均一に分散したものとなる。
上記構造(C)では、(置換)カルボキシル基の−C=Oの酸素原子と(置換)カルバモイル基中の水素原子が分子内水素結合を形成する。この水素結合の存在によって、カルボキシル基の酸強度が強くなり、歯質中のカルシウムと強固に結合すると考えられる。
すなわち、カルボキシル基の近傍にカルバモイル基がない安息香酸の例として、2,2−ジメチルプロパノイルアミノ安息香酸のpKaが5.4であり、立体障害を有する2,4,6−トリメチル安息香酸のpKaが4.8であるのに対し、カルボキシル基の近傍にカルバモイル基を有する2−(2,2−ジメチルプロパノイル)−6−メチル安息香酸ではpKaが3.9と酸強度が強くなり、カルボキシ基の両側にカルバモイル基を有する2,6−ジ(2,2−ジメチルプロパノイル)メチル安息香酸ではpKaが3.1と、更に酸強度が強くなる。このことは、カルボキシル基の近傍にカルバモイル基が存在すると、分子内水素結合を形成し、この水素結合の形成によって、カルボキシル基の酸強度が強くなることを示していると考えられる。
なお、水素結合を促進させ、酸強度を高める点からR3は、アルキル基か、アルケニル基か、アラルキル基であることが好ましい。
【0020】
上記の分子内水素結合の形成のし易さの点からは、p=0(ユニット(A)の(置換)カルボキシ基に結合する炭素とユニット(B)の(置換)カルバモイル基に結合する炭素が、直接隣接)またはp=1(ユニット(A)の(置換)カルボキシ基に結合する炭素とユニット(B)の(置換)カルバモイル基に結合する炭素が、メチレン基を介して隣接)していることが好ましい。なお、1つの有機重合体分子中にp=0の構造と、p=1の構造と、p=2の構造が混在していてもよい。
【0021】
有機重合体の重合度は5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、50以上が更に好ましく、100以上が最も好ましい。
重合度が高いほうが歯質と接着して接着層を形成した時、それが強靭な樹脂層となって生体組織とその上に補綴される人工物との境界で外来の刺激を遮断する保護層の働きをする上に有利となる。また、歯科用セメントの調製のし易さ、施工性から、有機重合体の重合度は10000以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の歯科用セメント組成物に用いられる有機重合体は、以下の方法で製造できる。
まず、カルボキシル基含有モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸を用いて、重合体を構成する全ユニット中の20モル%以上が(メタ)アクリル酸ユニットであるカルボキシル基含有重合体を定法で製造する。
次いで、得られたカルボキシル基含有重合体を脱水剤で処理し、隣接する2個のカルボキシル基を酸無水物化して、酸無水物基が導入された重合体とする。
そしてこの酸無水物基を、アンモニアや、アルキルアミン等のアミド化剤を用いて、公知の条件で開環付加させてモノアミド化することにより、(置換)カルボキシル基に結合する炭素と(置換)カルバモイル基に結合する炭素が直接、または、メチレン基あるいはエチレン基を介して結合した構造(C)を有する有機重合体を得ることができる。
【0023】
なお、上記のように、例えば(メタ)アクリル酸の様なカルボキシル基含有モノマーを重合してから構造(C)を形成する際に、重合時に、いわゆる頭頭(尾尾)結合をするケースと、頭尾結合をするケース両方があり得ることを考慮したものであり、pが0または2の場合が頭頭(尾尾)結合をした場合となり、pが1の場合は頭尾結合をした場合である。
【0024】
また、無水マレイン酸を用いて公知の方法で重合体を形成し、次いで、得られた重合体中の酸無水物基を、アンモニア、アミン等のアミド化剤を用いて公知の条件で開環付加させることにより、本発明の歯科用セメント組成物に用いられる有機重合体を得ることもできる。
【0025】
この有機重合体は、専ら無水マレイン酸のような酸無水物基を有するモノマーから合成されるため、上記構造(C)においてpが0、すなわち(置換)カルボキシル基に結合した炭素原子と、(置換)カルバモイル基に結合した炭素原子がポリマー主鎖中で必ず直接結合した形態となる。
従って、有機重合体を合成する際に、酸無水物基を有するモノマーさえ用いれば、確実にpが0の構造(C)を形成することができる。
【0026】
酸無水物基を有するモノマーの重合にあたっては、無水マレイン酸と共重合可能な他のモノマーを用いてもよい。
無水マレイン酸を用いた重合体は、無水マレイン酸ユニットがユニット(C)そのものとなるので、重合体中の無水マレイン酸が70%以上であれば、ランダム共重合体であってもいい。しかし、無水マレイン酸が40〜70%未満であれば、構造(C)を均一に分散させるために、交互共重合体を形成することが好ましい。
交互共重合体は、無水マレイン酸と電子供与性モノマーをラジカル重合することにより得られる。
電子供与性モノマーとは、モノマーの固有値であるe値が負のモノマーであり、例えば、アリルアルコール等のアリルモノマー類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテルモノマー類、p−ジオキセン等の環状エーテルモノマー類、酢酸ビニル等のビニルエステルモノマー類、プロピレン等のαーオレフィン類、スチレン類等があげられる。
【0027】
本発明の歯科用セメント組成物は上記の有機重合体とともに、多価金属化合物を含有する無機粉末を含有する。この多価金属化合物としては、多価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、珪酸塩等を挙げることができる。多価金属の酸化物としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム等を用いることができる。多価金属の水酸化物としては、例えば水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等を挙げることができる。多価金属の炭酸塩としては、例えば炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム等を挙げることができる。多価金属の硫酸塩としては、例えば石膏、硫酸バリウム等を挙げることができる。多価金属のリン酸塩としては、例えばリン酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、珪酸塩類としては、例えば珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、ホウ珪酸アルミニウムなどが例示される。これらの中でも特に好ましいのは、珪酸塩類に属する多価金属イオン浸出性ガラスであり、このようなガラスとしては、アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラスを例示できるが、これに限定されるものではない。多価金属化合物を含有する無機粉末を用いると、粉末中のアルミニウムやカルシウムなどの金属が有機重合体中の、分子内水素結合により強められた酸強度を有するカルボキシル基が配位して強固な結合を形成する。
多価金属化合物を含有する無機粉末の質量平均粒径は10μm以下であることが好ましい。
接着成分が上記有機重合体のみからなる場合は、該有機重合体を水または水と有機溶媒の混合溶媒に溶解した溶液として用いることができ、
【0028】
本発明の歯科用セメント組成物は更に(メタ)アクリレート系重合性単量体および重合触媒を含有してもよい。
(メタ)アクリレート系重合性単量体を含有する場合は、例えば有機重合体、重合触媒等をこの(メタ)アクリレート系重合性単量体に溶解した溶液として用いることができる。有機溶媒としては、エチルアルコール、プロピルアルコール、アセトン等を挙げることができる。
メタアクリレート系重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、あるいは(メタ)アクリル酸のモノ、ジ−グリセリンエステル、(メタ)アクリル酸のモノ、ジ、トリ−ペンタエリスリトールエステル、(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸、(メタ)アクリロイルオキシプロピルリン酸、(メタ)アクリロイルオキシブチルリン酸、テトラ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロリン酸、メチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2−ビス[(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン等を例示できる。
【0029】
重合触媒としては光重合触媒、レドックス重合触媒を用いることができ、この両者を併用することもできる。
光重合触媒としては、カンファーキノン、ナフトキノン、ベンジル、ビアセチル等を例示できる。
レドックス重合触媒としては、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキシだ、t−ブチルハイドロパーオキシド、過硫酸カリ、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等の公知のラジカル重合開始剤と還元剤の併用系を挙げることができ、還元剤としては、N,N−ジメチルアミノ−p−トルイジン、ブチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、ジメチルアミノ安息香酸等のアミン系還元剤を挙げることができる。
【0030】
本発明の歯科用セメント組成物は、上述の有機重合体と、多価金属化合物を含有する無機粉末と水を含有する。多価金属化合物を含有する無機粉末からは水の存在下で多価金属イオンが表面に溶出する。この有機重合体はカルボキシル基の酸強度が強いので、この多価金属イオンと強固に結合し、この結合を介して該無機粉末と強固に結合し、更に歯質中のカルシウムとも強固に結合する。したがって、本発明の歯科用セメント組成物は歯質表面を接着のための前処理をせずとも歯質に強固に接着するので、充填、合着時の操作ステップが少なくてすむ。
【0031】
更に、重合性単量体と重合触媒を含有すると、これを歯質に適用すると、重合性単量体が前記有機重合体と絡み合った状態で重合し、歯科用セメント組成物の硬化物に靭性が付与されるので好ましい。
【0032】
本発明の歯科用セメント組成物は、インレー、クラウン、ブリッジ等の歯科用補綴物と歯質の合着、矯正装置と歯質の合着、う蝕窩洞溝の充填、裏装、小窩洞溝の予防填塞等に好適に用いられる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例、比較例で得た歯科用セメント組成物の混和物の評価は以下の手順に従って行った。
【0034】
[牛歯象牙質への接着強度]
牛前歯をワックスに埋め込んだ後、エメリーペーパー#600で研磨し、牛歯象牙質面を露出させた。象牙質面に直径4mmの穴をあけたテープを貼付して、接着面積を規定した。この穴の部分に、混和した歯科用セメント組成物を塗布した後、予め接着試験用フックを埋設し硬化させた直径6mm、長さ12mmのセメント硬化体丸棒を突き合わせて、光照射器により20秒間光照射して試験体を作製した。この試験体を37℃、RH100%の雰囲気中に1時間放置した後、37℃の水中に24時間浸漬した。この試験体をオートグラフAGS−500(島津製作所製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/分で引っ張り試験を行い、接着強度を測定した。
【0035】
[圧縮強度]
混和した歯科用セメント組成物を所定のポリテトラフルオロエチレン製の鋳型に充填し、そのまま室温中30分硬化させ、直径6mm、長さ12mmの圧縮試験用試験片を作成した。この試験片を37℃の水中に48時間浸漬した後に、オートグラフクロスヘッドスピード2mm/分で圧縮試験を行った。
【0036】
(実施例1)
ポリアクリル酸(Mw:450,000)21.6gを1lのメタノールに溶解し、室温でトリ−n−ブチルアミン55.6gを撹拌下混合し、さらに12時間撹拌した。その後、エバポレーターを用い、50℃、減圧条件下で、メタノールを除去した後、2lのジクロルメタンに溶解した。この溶液に30℃で環状窒化塩化リン三量体52.1gを撹拌下混合し、12時間撹拌した。引き続きこの溶液にジエチルエーテル2lを加えて、固体を析出させた。
濾過により固体を分離し、少量のジクロルメタンで洗浄後、乾燥して、16gのポリアクリル酸無水物が得られた。IRで、下記の通り、酸無水物基の生成を確認した。
IR(in KBr):1804cm−1(C=O)、1760cm−1(C=O)、1030cm−1(CO−O−CO)
【0037】
t−ブチルアミン87.8gに室温で上記ポリアクリル酸無水物6.4gを加え、12時間撹拌した。エバポレーターで蒸発乾固させた後、100gの水に溶解した。この溶液に濃塩酸を滴下し、pH2〜3にした。析出した固体を濾別し、ジエチルエーテルで洗浄した。元素分析、1H−NMR分析結果は以下の通りである。
元素分析:(C10H17NO3)
計算値:C60.28モル%、N7.03モル%、H8.60モル%
測定値:C60.52モル%、N7.12モル%、H7.82モル%
1H−NMR(DMSO−d6):12.00ppm(COOH)、6.9ppm(CONH)、1.17ppm(CH3)
これらから、アクリル酸ユニットとN−t−ブチルアクリルアミドユニットが交互に並んでいる有機重合体Aが得られたと判断された。
1H−NMRチャートの積分値から−COOHと−CONHの比率は1.00:0.88であることがわかった。また、この反応条件では、重合体A中のアミド系ユニットは、100モル%の割合で構造(C)を形成していると考えられる。
【0038】
フルオロアルミノシリケートガラス粉末50gに、ジメチルアミノ安息香酸エチル0.1gを加えて混合し、セメント粉末とした。
一方、上記で得られた有機重合体Aの5gを2−ヒドロキシエチルメタクリレート20gと水1gの混合液に溶解して溶液とし、この溶液にカンファーキノン0.1gを均一に溶解してセメント液とした。
このセメント液1.0gを上記セメント粉末1.8gに加えて30秒間混和して、混和歯科用セメント組成物を得た。
この混和歯科用セメント組成物を用いて対牛歯象牙質接着強度と圧縮強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同様にして得た有機重合体Aの40質量%水溶液を調製し、セメント液とした。
このセメント液1.0gを実施例1と同様にして得たセメント粉末1.8gに加えて30秒間混和して、混和歯科用セメント組成物を得た。
この混和歯科用セメント組成物を用いて対牛歯象牙質接着強度と圧縮強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0040】
(比較例1)
アクリル酸/アクリロイルオキシエチルリン酸=95/5(質量比)のモノマー混合物8gに過硫酸アンモニウム0.36gとハイドロキノン50mgを加えたものをガラス管に入れ、窒素置換後に封管して、80℃で15時間重合した。
得られた共重合体を透析、凍結乾燥、粉砕して共重合体粉末とした。
得られた共重合体粉末5gを2−ヒドロキシエチルメタクリレート20gに溶解した溶液に、過硫酸アンモニウム0.1gを均一に溶解してセメント液とした。
このセメント液1.0gを実施例1と同様にして得たセメント粉末1.8gに加えて30秒間混和して、混和歯科用セメント組成物を得た。
この混和歯科用セメント組成物を用いて対牛歯象牙質接着強度と圧縮強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0041】
(比較例2)
比較例1で得たと同様の共重合体粉末を水に溶解して40質量%の水溶液を得た。これをセメント液として、その1.0gを実施例1と同様にして得たセメント粉末1.8gに加えて30秒間混和しして、混和歯科用セメント組成物を得た。
この混和歯科用セメント組成物を用いて対牛歯象牙質接着強度と圧縮強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から、有機重合体として、アクリル酸/アクリロイルオキシエチルリン酸共重合体を用いた従来タイプのグラスアイオノマーセメントに比べて、特定の有機重合体を用いた本発明の歯科用セメント組成物は歯質に対して高い接着性を示すことがわかる。また、圧縮強度試験結果からわかるように靭性にも優れており、また、耐水耐久性にも優れることがわかる。
【0044】
【発明の効果】
本発明により、アクリル酸とアクリロイルオキシ基含有単量体の共重合体や、ポリアクリル酸を用いた従来のグラスアイオノマーセメントに比べて、歯質への接着性や、硬化速度、初期強度に優れ、かつ、経時的な物性低下のない歯科用セメント組成物を提供することができる。
Claims (2)
- 多価金属化合物を含有する無機粉末と、水と、下記の有機重合体とを含有する歯科用セメント組成物。
下記式(I)で示される(置換)カルボキシ基含有ユニット(A)と、下記式(II)で示される(置換)カルバモイル基含有ユニット(B)とを含む重合体であり、(A)、(B)両ユニットの合計が重合体を形成する全ユニット中20モル%以上を占めるとともに、ユニット(A)とユニット(B)は(A)/(B)が0.6/1.0〜1.0/0.6の割合で存在しており、ユニット(A)とユニット(B)のうち重合体中で少ない方のユニットの存在量を100モル%としたとき、その70モル%以上において、前記ユニット(A)の(置換)カルボキシ基に結合する炭素と前記ユニット(B)の(置換)カルバモイル基に結合する炭素が、直接、またはメチレン基あるいはエチレン基を介して隣接している有機重合体
- 更に(メタ)アクリレート系重合性単量体と、重合触媒とを含有することを特徴とする請求項1記載の歯科用セメント組成物。
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