JP2004330972A - 車両の走行安全装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両が先行車と接触するのを回避すべく安全装置作動制御手段M2がドライバーに一次警報および二次警報を発してから所定時間以内に、ドライバーが減速操作あるいは操向操作を行ったことを挙動検知手段M3が検知すれば、ドライバーが警報に基づいて先行車との接触可能性を認識して減速操作あるいは操向操作を行ったことになり、レーダー装置Saおよび安全装置11が正常に作動していると判定することができる。挙動検知手段M3がドライバーの接触回避操作を検知しない事態が所定回数以上繰り返されると、判定手段M4が異常判定してレーダー装置Saおよび安全装置11の作動を停止する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に設けた物体検知手段で物体を検知し、その物体に車両が接触する可能性がある場合に、安全装置を作動させて接触を回避する車両の走行安全装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーダー装置で自車の進行方向に存在する物体を検知し、自車と物体との車幅方向のオーバーラップ量(ステアリング回避量)に基づいて物体との接触可能性の有無を判定し、接触可能性があると判定された場合に警報や自動制動を実行して物体との接触を回避するものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
この種のレーダー装置の検知軸の方向が車体に対して正しく調整されていないとシステムが正常に作動しない可能性があるため、車両がほぼ直進走行しているときに、路側にある標識等をレーダー装置が検知した位置と車両の走行軌跡とを比較することで、レーダー装置の検知軸のずれを検知して調整するものが、下記特許文献2により公知である。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−23705号公報
【特許文献2】
特開平11−14748号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記特許文献2に記載されたものは、車両がほぼ直進走行しているときにしかレーダー装置の検知軸を調整できない問題があり、しかも検知軸のずれを検知して調整するまでに比較的に長い時間を要するため、その間にシステムが不要な作動をする可能性があった。またレーダー装置が正常であっても、レーダー装置の検知結果に基づいて作動する警報装置、減速装置、操向装置に異常がある場合にも、それを検知できないためにシステムが不要な作動をする可能性があった。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両の走行安全装置の異常を速やかに検知できるようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車両の進行方向に存在する物体を検知する物体検知手段と、物体検知手段の検知結果に基づいて車両と物体との相対位置を含む相対関係を算出する相対関係算出手段と、相対関係算出手段で算出した相対関係に基づいて車両と物体との接触可能性の有無を判定し、接触可能性がある場合に車両に設けた安全装置の作動を制御する安全装置作動制御手段とを備えた車両の走行安全装置において、安全装置の作動後のドライバーの挙動および車両の挙動の少なくとも一方を検知する挙動検知手段と、挙動検知手段の検知結果に基づいて物体検知手段の作動および安全装置の作動の少なくとも一方の作動が正常であるか否かを判定する判定手段とを備えたことを特徴とする車両の走行安全装置が提案される。
【0008】
上記構成によれば、車両が物体と接触するのを回避するために安全装置を作動させた後に、接触回避のためのドライバーの挙動、あるいは前記ドライバーの挙動の結果として発生する車両の挙動が検知されるか否かに基づいて、物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動しているか否かを的確に判定することができる。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、安全装置はドライバーに警報を発するものであり、判定手段は、安全装置の作動後の所定時間内に挙動検知手段がドライバーの減速操作および操向操作の少なくとも一方を検知したときに正常であると判定することを特徴とする車両の走行安全装置が提案される。
【0010】
上記構成によれば、安全装置が警報を発してから所定時間内にドライバーが減速操作あるいは操向操作を行えば、ドライバーが警報に基づいて物体との接触可能性を認識して減速操作あるいは操向操作を行ったことになり、物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動していると判定することができる。
【0011】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、安全装置はドライバーに警報を発するものであり、判定手段は、安全装置の作動後の所定時間内に挙動検知手段が車両の減速挙動および旋回挙動の少なくとも一方を検知したときに正常であると判定することを特徴とする車両の走行安全装置が提案される。
【0012】
上記構成によれば、安全装置が警報を発してから所定時間内に車両の減速挙動あるいは旋回挙動が検知されれば、ドライバーが警報に基づいて物体との接触可能性を認識して減速操作あるいは操向操作を行ったことになり、物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動していると判定することができる。
【0013】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、安全装置は減速手段および操向手段の何れかであり、判定手段は、安全装置の作動後の所定時間内に挙動検知手段がドライバーの減速操作および操向操作の少なくとも一方を検知したときに正常であると判定することを特徴とする車両の走行安全装置が提案される。
【0014】
上記構成によれば、安全装置が減速手段あるいは操向手段を作動させてから所定時間内にドライバーが減速操作あるいは操向操作を行えば、ドライバーが減速手段あるいは操向手段の作動に基づいて物体との接触可能性を認識して減速操作あるいは操向操作を行ったことになり、物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動していると判定することができる。
【0015】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、安全装置は減速手段および操向手段の何れかであり、判定手段は、安全装置の作動後の所定時間内に挙動検知手段が該安全装置の作動による車両の減速挙動および旋回挙動の少なくとも一方を上回る車両の減速挙動および旋回挙動の少なくとも一方を検知したときに正常であると判定することを特徴とする車両の走行安全装置が提案される。
【0016】
上記構成によれば、安全装置が減速手段あるいは操向手段を作動させてから所定時間内にドライバーが減速操作あるいは操向操作を行い、安全装置の作動による車両の減速挙動あるいは旋回挙動を上回る車両の減速挙動あるいは旋回挙動が検知されれば、ドライバーが減速手段あるいは操向手段の作動に基づいて物体との接触可能性を認識して減速操作あるいは操向操作を行ったことになり、物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動していると判定することができる。
【0017】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項2〜請求項5の何れか1項の構成に加えて、安全装置は、一次安全装置と、該一次安全装置よりも接触可能性が高いときに作動する二次安全装置とからなり、前記所定時間は、一次安全装置の作動後のものより二次安全装置の作動後のものの方が短く設定されていることを特徴とする車両の走行安全装置が提案される。
【0018】
上記構成によれば、接触可能性が高いときに作動する二次安全装置は、その作動後の前記所定時間が短く設定されるので、接触回避の緊急度が高い場合に物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動しているか否かを速やかに判定することができる。
【0019】
また請求項7に記載された発明によれば、請求項2〜請求項6の何れか1項の構成に加えて、判定手段は、正常と判定されない回数が所定回数以上となったときに異常と判定することを特徴とする車両の走行安全装置が提案される。
【0020】
上記構成によれば、物体検知手段あるいは安全装置が正常と判定されない回数が所定回数以上となったときに異常と判定するので、特殊な状況でたまたま正常と判定されない場合があっても、それにより異常と誤判定されるのを防止することができる。
【0021】
また請求項8に記載された発明によれば、請求項7の構成に加えて、安全装置は、一次安全装置と、該一次安全装置よりも接触可能性が高いときに作動する二次安全装置とからなり、前記所定回数は、一次安全装置の作動に関するものより二次安全装置の作動に関するものを少なく設定したことを特徴とする車両の走行安全装置が提案される。
【0022】
上記構成によれば、接触可能性が高いときに作動する二次安全装置は、異常を判定する前記所定回数が少なく設定されるので、接触回避の緊急度が高い場合に物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動しているか否かを速やかに判定することができる。
【0023】
また請求項9に記載された発明によれば、請求項1〜請求項8の何れか1項の構成に加えて、判定手段が異常と判定したとき、物体検知手段による物体の検知および安全装置作動制御手段による安全装置の作動の少なくとも一方を中止することを特徴とする車両の走行安全装置が提案される。
【0024】
上記構成によれば、物体検知手段あるいは安全装置に異常があるとその作動を中止するので、異常が発生した状態で物体検知手段あるいは安全装置が不適切に作動するのを防止することができる。
【0025】
尚、実施例の先行車V1は本発明の物体に対応し、実施例のレーダー装置Saは本発明の物体検知手段に対応する。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0027】
図1〜図4は本発明の一実施例を示すもので、図1は走行安全装置を備えた車両の全体構成図、図2は車両の制動系のブロック図、図3は走行安全装置の制御系のブロック図、図4は走行安全装置の正常・異常判定のフローチャートである。
【0028】
図1および図2に示すように、本実施例の走行安全装置を搭載した四輪の車両(自車)Vは、エンジンEの駆動力がトランスミッションTを介して伝達される駆動輪たる左右の前輪WFL,WFRと、車両Vの走行に伴って回転する従動輪たる左右の後輪WRL,WRRとを備える。ドライバーにより操作されるブレーキペダル1は、電子制御負圧ブースタ2を介してマスタシリンダ3に接続される。電子制御負圧ブースタ2は、ブレーキペダル1の踏力を機械的に倍力してマスタシリンダ3を作動させるとともに、自動制動時にはブレーキペダル1の操作によらずに電子制御ユニットUからの制動指令信号によりマスタシリンダ3を作動させる。ブレーキペダル1に踏力が入力され、かつ電子制御ユニットUから制動指令信号が入力された場合、電子制御負圧ブースタ2は両者のうちの何れか大きい方に合わせてブレーキ油圧を出力させる。尚、電子制御負圧ブースタ2の入力ロッドはロストモーション機構を介してブレーキペダル1に接続されており、電子制御負圧ブースタ2が電子制御ユニットUからの信号により作動して前記入力ロッドが前方に移動しても、ブレーキペダル1は初期位置に留まるようになっている。
【0029】
マスタシリンダ3の一対の出力ポート8,9は、前輪WFL,WFRおよび後輪WRL,WRRにそれぞれ設けられたブレーキキャリパ5FL,5FR,5RL,5RRに油圧制御装置4を介して接続される。油圧制御装置4は4個のブレーキキャリパ5FL,5FR,5RL,5RRに対応して4個の圧力調整器6…を備えており、それぞれの圧力調整器6…は電子制御ユニットUに接続されて前輪WFL,WFRおよび後輪WRL,WRRに設けられたブレーキキャリパ5FL,5FR,5RL,5RRの作動を個別に制御する。
【0030】
電子制御ユニットUには、レーザーレーダー装置あるいはミリ波レーダー装置よりなる物体検知手段としてのレーダー装置Saと、車輪速に基づいて車速を検出する車速センサSb…と、車両Vのヨーレートを検出するヨーレートセンサScと、ステアリングホイール7の操舵トルクを検出する操舵トルクセンサSdと、ブレーキペダル1に入力される踏力を検出する踏力センサSeと、スピーカよりなる警報手段10とが接続される。
【0031】
しかして、電子制御ユニットUは、レーダー装置Sa、車速センサSb…、ヨーレートセンサSc、操舵トルクセンサSdおよび踏力センサSeの出力に基づいて、警報手段10、電子制御負圧ブースタ2および油圧制御装置4の作動を制御する。即ち、電子制御ユニットUからの指令で警報手段10が作動すると、警報音あるいは音声によりドライバーに警報が発せられ、また電子制御ユニットUからの指令で電子制御負圧ブースタ2が作動すると、マスタシリンダ3が発生したブレーキ油圧が油圧制御装置4で調圧されてブレーキキャリパ5FL,5FR,5RL,5RRに伝達され、前輪WFL,WFRおよび後輪WRL,WRRの制動力が各輪毎に独立に制御される。
【0032】
図3に示すように、電子制御ユニットUには、相対関係算出手段M1と、安全装置作動制御手段M2と、挙動検知手段M3と、判定手段M4とが設けられる。相対関係算出手段M1にはレーダー装置Sa、車速センサSb…およびヨーレートセンサScが接続され、相対関係算出手段M1に接続された安全装置作動制御手段M2には、本発明の安全装置11を構成する警報手段10、電子制御負圧ブースタ2および油圧制御装置4が接続される。挙動検知手段M3には、車速センサSb…、ヨーレートセンサSc、操舵トルクセンサSdおよび踏力センサSeが接続され、また挙動検知手段M3に接続された判定手段M4には安全装置作動制御手段M2およびレーダー装置Saに接続される。
【0033】
次に、上記構成を備えた実施例の作用を、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
先ず、電子制御ユニットUの相対関係算出手段M1が、ステップS1で車速センサSb…で検出した車速と、ヨーレートセンサScで検出した自車Vのヨーレートとを読み込み、ステップS2で車速およびヨーレートに基いて自車Vの将来の進路を予測する。直線走行時の自車Vの予測進路は直線になるが、右旋回時の予測進路は右にカーブし、左旋回時の予測進路は左にカーブするものであり、その曲率はヨーレートが大きいほど、またヨーレートを一定とすれば車速が小さいほど大きくなる。
【0035】
続くステップS3で、相対関係算出手段M1がレーダー装置Saの出力に基づいて自車Vの予測進路に存在する先行車V1のような物体の相対位置(方向および相対距離)と相対速度とを算出する。レーダー装置Saがミリ波レーダー装置であれば、物体の相対速度を直ちに求めることができ、レーダー装置Saがレーザーレーダー装置であれば、物体の相対速度を物体の相対距離の時間変化率として求めることができる。
【0036】
更にステップS3で、安全装置作動制御手段M2が、前記相対位置および前記相対速度に基づいて、自車Vが先行車V1に接触する可能性の有無を判定する。その結果、ステップS4で接触可能性がある場合には、ステップS5で接触可能性の大小を判定する。即ち、自車Vの予測進路に先行車V1が存在し、その先行車V1の相対距離ΔLを相対速度ΔVで除算した接触までの時間T(=ΔL/ΔV)が、大きい方の第1の所定値T1を下回ったときに、つまり接触可能性が小さいときに、ステップS6で安全装置作動制御手段M2が警報手段10を作動させて一次警報を出力する。また接触までの時間T(=ΔL/ΔV)が、小さい方の第2の所定値T2を下回ったときに、つまり接触可能性が大きいときに、ステップS6′で安全装置作動制御手段M2が警報手段10を作動させて二次警報を出力する。
【0037】
前記第1、第2の所定値T1,T2の大小関係は、T1>T2であり、大きい方の第1の所定値T1を接触までの時間Tが下回ったときには、接触可能性が小さくて緊急度が低く、小さい方の第2の所定値T2を接触までの時間Tが下回ったときには、接触可能性が大きくて緊急度が高いことになる。
【0038】
本実施例の一次警報は、警報手段10を作動させて警報音を発するものであり、また二次警報は、電子制御負圧ブースタ2および油圧制御装置4を作動させて警報としての弱い制動力を発生させるものである。何れの場合にも、ドライバーに先行車V1との接触可能性があることを警報して、接触回避のための自発的なブレーキ操作やステアリング操作を促すためのものである。
【0039】
このようにして一次、二次警報が発せられると、ステップS7,S7′で挙動検知手段M3および判定手段M4により、その警報が正常警報であるか否かを判定する。
【0040】
ステップS7において、一次警報が発せられてから二次警報が発せられるまでの間にΔT1が経過した時点で(T1<T1+ΔT1<T2)、ドライバーが先行車V1を回避するブレーキ操作やステアリング操作を行わなかったことを挙動検知手段M3が検知した場合、つまりドライバーがステアリングホイール7を所定値以上の操舵トルクで操作したことを操舵トルクセンサSdが検知せず、かつドライバーがブレーキペダル1を所定値以上の強さで踏み込んだことを踏力センサSeが検知しない場合、判定手段M4は前記一次警報が正常警報ではない異常警報と判定する。
【0041】
なぜならば、正常な一次警報が発せられていれば、ドライバーは先行車V1との接触を回避するためにステアリング操作かブレーキ操作を行うはずであり、それが行われないのは、一次警報が発せられていないか、一次警報が発せられていても、ドライバーは接触を回避するためのブレーキ操作やステアリング操作が不要と判断し、その警報を異常警報と認識して無視しているからである。従って、前記時間ΔT1は、一次警報が発せられてからドライバーがステアリングホイール7あるいはブレーキペダル1を操作するのに充分な時間として設定する必要がある。
【0042】
同様にして、ステップS7′において、二次警報が発せられてからΔT2が経過した時点で、ドライバーが先行車V1を回避する操作を行わなかったことを挙動検知手段M3が検知した場合、つまりドライバーがステアリングホイール7を所定値以上の操舵トルクで操作したことを操舵トルクセンサSdが検知せず、かつドライバーがブレーキペダル1を所定値以上の強さで踏み込んだことを踏力センサSeが検知しない場合、判定手段M4は前記二次警報が正常警報ではない異常警報と判定する。
【0043】
尚、二次警報後の時間ΔT2は、一次警報後の時間ΔT1よりも短くすることが望ましい。その理由は、二次警報が発せられるのは接触可能性が高い場合であるため、早めの判定が必要となるからである。
【0044】
以上のようにして一次警報あるいは二次警報が異常警報であると判定されると、ステップS8,S8′で異常警報カウンタを1ずつインクリメントし、ステップS9,S9′で異常警報カウンタのカウント数がそれぞれN1およびN2以上になると、ステップS10,S10′でレーダー装置Saおよび安全装置作動制御装置M2の作動を停止させることで、それ以上の異常警報が発せられるのを防止する。
【0045】
実施例では、一次警報の異常警報カウンタのカウント数の閾値N1は10回とされ、二次警報の異常警報カウンタのカウント数の閾値N2は3回とされる。このように、複数回の異常警報が検知された場合にシステムを停止させるので、先行車V1が急加速して接触の可能性がなくなったためにドライバーが接触回避操作を行わないような場合に、即座に異常判定がなされてシステムが停止する不具合を解消することができる。また二次警報の閾値N2を一次警報の閾値N1よりも小さくしたのは、接触の可能性が高い場合に発せられる二次警報が異常警報である場合に、早めにシステムを停止させる必要があるからである。
【0046】
尚、異常警報カウンタはイグニッションスイッチがオンされたときに0にリセットされ、次にイグニッションスイッチがオフするまでカウント値を積算する。カウント中に正常判定が行われても、それによりカウント値が変化することはない。また連続で数秒間(例えば、2〜3秒間)二次警報が発せられてもドライバーの回避操作が検知されない場合に、即座にシステムを停止することもできる。この判定条件は異常警報のカウント数がN2以上になったときにシステムを停止する判定条件に対してOR条件である。つまり、その何れか一方が成立したときにシステムが停止される。
【0047】
また実施例では、一次、二次警報の後にドライバーが接触回避操作を行ったか否かを、操舵トルクセンサSdや踏力センサSeの出力に基づいて判定しているが、車速センサSb…やヨーレートセンサScの出力に基づいて判定することができる。即ち、ドライバーが接触回避のためにブレーキ操作を行うと車速センサSb…が検出する車速が減少し、ドライバーが接触回避のためにステアリング操作を行うとヨーレートセンサScが検出するヨーレートが増加するからである。
【0048】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0049】
例えば、一次警報および二次警報は、警報手段10よる警報音や、電子制御負圧ブースタ2および油圧制御装置4による弱い制動力の発生に限定されず、ブザー、チャイム、ランプ、LED等による音や光、あるいはステアリングホイール7を振動させる等の手段を採用することができる。
【0050】
またドライバーのステアリング操作を、操舵トルクセンサSdに代えて図示せぬ周知の操舵角センサで検知しても良い。この場合、操舵角センサにより所定値以上の舵角変化や所定値以上の舵角速度が検知されることにより、ドライバーのステアリング操作が行われたことを検知することができる。
【0051】
また一次警報および二次警報に代えて、電子制御負圧ブースタ2および油圧制御装置4を作動させる自動制動よりなる一次制動および二次制動を行ったり、電動パワーステアリング装置のアクチュエータを作動させて接触を回避する自動操舵よりなる一次操舵および二次操舵を行うこともできる。この場合、一次制動の制動力に対して二次制動の制動力は強く設定され、一次操舵の操舵トルクに対して二次操舵の操舵トルクは強く設定される。
【0052】
自動制動や自動操舵を行う場合、一次、二次制動あるいは一次、二次操舵が行われた結果、所定時間以内に操舵トルクセンサSdが接触回避のためのステアリング操作を検知するか、踏力センサSeが接触回避のためのブレーキ操作を検知すれば、正常な自動制動や自動操舵が行われたと判定することができる。また上記判定に際して、操舵トルクセンサSdあるいは踏力センサSeの出力に代えて、車速センサSb…やヨーレートセンサScの出力を使用することができる。なぜならば、自動制動の開始後にドライバーがブレーキ操作を行えば、車速センサSb…が自動制動による減速を上回る減速を検出し、自動操舵の開始後にドライバーがステアリング操作を行えば、ヨーレートセンサScが自動操舵によるヨーレートを上回るヨーレートを検出するからである。
【0053】
また、音や光による一次警報と、自動制動よりなる二次制動や自動操舵よりなる二次操舵とを組み合わせることもできる。
【0054】
また自動制動は実施例の油圧ブレーキに限定されず、エンジンブレーキであっても良い。この場合、一次制動でトランスミッションTを1段シフトダウンし、二次制動でトランスミッションTを2段シフトダウンすることができる。
【0055】
また本発明の物体は先行車V1に限定されず、対向車、路側の固定物、路上の落下物等であっても良い。
【0056】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、車両が物体と接触するのを回避するために安全装置を作動させた後に、接触回避のためのドライバーの挙動、あるいは前記ドライバーの挙動の結果として発生する車両の挙動が検知されるか否かに基づいて、物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動しているか否かを的確に判定することができる。
【0057】
また請求項2に記載された発明によれば、安全装置が警報を発してから所定時間内にドライバーが減速操作あるいは操向操作を行えば、ドライバーが警報に基づいて物体との接触可能性を認識して減速操作あるいは操向操作を行ったことになり、物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動していると判定することができる。
【0058】
また請求項3に記載された発明によれば、安全装置が警報を発してから所定時間内に車両の減速挙動あるいは旋回挙動が検知されれば、ドライバーが警報に基づいて物体との接触可能性を認識して減速操作あるいは操向操作を行ったことになり、物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動していると判定することができる。
【0059】
また請求項4に記載された発明によれば、安全装置が減速手段あるいは操向手段を作動させてから所定時間内にドライバーが減速操作あるいは操向操作を行えば、ドライバーが減速手段あるいは操向手段の作動に基づいて物体との接触可能性を認識して減速操作あるいは操向操作を行ったことになり、物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動していると判定することができる。
【0060】
また請求項5に記載された発明によれば、安全装置が減速手段あるいは操向手段を作動させてから所定時間内にドライバーが減速操作あるいは操向操作を行い、安全装置の作動による車両の減速挙動あるいは旋回挙動を上回る車両の減速挙動あるいは旋回挙動が検知されれば、ドライバーが減速手段あるいは操向手段の作動に基づいて物体との接触可能性を認識して減速操作あるいは操向操作を行ったことになり、物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動していると判定することができる。
【0061】
また請求項6に記載された発明によれば、接触可能性が高いときに作動する二次安全装置は、その作動後の前記所定時間が短く設定されるので、接触回避の緊急度が高い場合に物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動しているか否かを速やかに判定することができる。
【0062】
また請求項7に記載された発明によれば、物体検知手段あるいは安全装置が正常と判定されない回数が所定回数以上となったときに異常と判定するので、特殊な状況でたまたま正常と判定されない場合があっても、それにより異常と誤判定されるのを防止することができる。
【0063】
また請求項8に記載された発明によれば、接触可能性が高いときに作動する二次安全装置は、異常を判定する前記所定回数が少なく設定されるので、接触回避の緊急度が高い場合に物体検知手段あるいは安全装置が正常に作動しているか否かを速やかに判定することができる。
【0064】
また請求項9に記載された発明によれば、物体検知手段あるいは安全装置に異常があるとその作動を中止するので、異常が発生した状態で物体検知手段あるいは安全装置が不適切に作動するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】走行安全装置を備えた車両の全体構成図
【図2】車両の制動系のブロック図
【図3】走行安全装置の制御系のブロック図
【図4】走行安全装置の正常・異常判定のフローチャート
【符号の説明】
11 安全装置
M1 相対関係算出手段
M2 安全装置作動制御手段
M3 挙動検知手段
M4 判定手段
Sa レーダー装置(物体検知手段)
V 車両
V1 先行車(物体)
Claims (9)
- 車両(V)の進行方向に存在する物体(V1)を検知する物体検知手段(Sa)と、
物体検知手段(Sa)の検知結果に基づいて車両(V)と物体(V1)との相対位置を含む相対関係を算出する相対関係算出手段(M1)と、
相対関係算出手段(M1)で算出した相対関係に基づいて車両(V)と物体(V1)との接触可能性の有無を判定し、接触可能性がある場合に車両(V)に設けた安全装置(11)の作動を制御する安全装置作動制御手段(M2)と、
を備えた車両の走行安全装置において、
安全装置(11)の作動後のドライバーの挙動および車両(V)の挙動の少なくとも一方を検知する挙動検知手段(M3)と、
挙動検知手段(M3)の検知結果に基づいて物体検知手段(Sa)の作動および安全装置(11)の作動の少なくとも一方の作動が正常であるか否かを判定する判定手段(M4)と、
を備えたことを特徴とする車両の走行安全装置。 - 安全装置(11)はドライバーに警報を発するものであり、判定手段(M4)は、安全装置(11)の作動後の所定時間内に挙動検知手段(M3)がドライバーの減速操作および操向操作の少なくとも一方を検知したときに正常であると判定することを特徴とする、請求項1に記載の車両の走行安全装置。
- 安全装置(11)はドライバーに警報を発するものであり、判定手段(M4)は、安全装置(11)の作動後の所定時間内に挙動検知手段(M3)が車両(V)の減速挙動および旋回挙動の少なくとも一方を検知したときに正常であると判定することを特徴とする、請求項1に記載の車両の走行安全装置。
- 安全装置(11)は減速手段および操向手段の何れかであり、
判定手段(M4)は、安全装置(11)の作動後の所定時間内に挙動検知手段(M3)がドライバーの減速操作および操向操作の少なくとも一方を検知したときに正常であると判定することを特徴とする、請求項1に記載の車両の走行安全装置。 - 安全装置(11)は減速手段および操向手段の何れかであり、
判定手段(M4)は、安全装置(11)の作動後の所定時間内に挙動検知手段(M3)が該安全装置(11)の作動による車両(V)の減速挙動および旋回挙動の少なくとも一方を上回る車両(V)の減速挙動および旋回挙動の少なくとも一方を検知したときに正常であると判定することを特徴とする、請求項1に記載の車両の走行安全装置。 - 安全装置(11)は、一次安全装置と、該一次安全装置よりも接触可能性が高いときに作動する二次安全装置とからなり、
前記所定時間は、一次安全装置の作動後のものより二次安全装置の作動後のものの方が短く設定されていることを特徴とする、請求項2〜請求項5の何れか1項に記載の車両の走行安全装置。 - 判定手段(M4)は、正常と判定されない回数が所定回数以上となったときに異常と判定することを特徴とする、請求項2〜請求項6の何れか1項に記載の車両の走行安全装置。
- 安全装置(11)は、一次安全装置と、該一次安全装置よりも接触可能性が高いときに作動する二次安全装置とからなり、
前記所定回数は、一次安全装置の作動に関するものより二次安全装置の作動に関するものを少なく設定したことを特徴とする、請求項7に記載の車両の走行安全装置。 - 判定手段(M4)が異常と判定したとき、物体検知手段(Sa)による物体の検知および安全装置作動制御手段(M2)による安全装置(11)の作動の少なくとも一方を中止することを特徴とする、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の車両の走行安全装置。
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