JP2004330604A - ノズルプレートの撥液膜形成方法及びノズルプレート並びにインクジェットプリンタヘッド - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インクジェットプリンタヘッド10に備えられるノズルプレート18であって、金属板の表面を撥液膜16で被覆されるノズルプレート18では、前記金属板である金属母材28をSUSとする。前記金属母材28であるSUSの全表面をプラズマ重合によるシリコーン樹脂重合膜で被覆する。さらに、前記シリコーン樹脂重合膜は撥液性を備えており、そのままでは、組立て等の際に接着性が悪くなる。このため、接着を必要とする箇所には濡れ性を付与するために、撥液膜16の表面をSiO2化する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノズルプレートの撥液膜形成方法及びノズルプレート並びにインクジェットプリンタヘッドに係り、特にインク成分に顔料を使用する場合にインクジェットプリンタヘッドのノズルプレートが、撥水性に加え溶媒に含まれる薬品に対する耐薬品性も必要とする場合に好適なノズルプレートの撥液膜形成方法及びノズルプレート並びにインクジェットプリンタヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェットプリンタヘッドのノズルプレートは、インク滴を安定して生産し、規定の穴から垂直に飛翔させるために撥液性を有することが要求される。このため、ノズルプレート表面に撥液膜を被覆するという手段がとられている。ノズルプレートの表面に撥液膜を形成することには、吐出するインク滴のメニスカスの崩れを防ぎ、吐出の安定性を図り、飛翔したインク滴の残留液がノズルプレート表面に付着して、印刷時に悪影響を及ぼすことを防止する役割がある。
【0003】
このような撥液膜の形成方法として、従来は、耐薬品性等に優れた金属にシリコンやフッ素を含む膜を形成するようにしていた。しかし、インク成分に顔料を含むものにあっては、インク成分を染料とするものに比べ撥液性が悪い。また、顔料は粒子が大きく硬いため、成膜面に対しては研磨材的作用がある。このため、成膜面をエラストマー等の板でワイピングを重ねると前記成膜面が削られ、撥液性が著しく低下したり、撥液膜自体が剥離してしまうということがある。
【0004】
上記現象に対して顔料を含むインクに対する撥インク性とワイピングに対する耐摩擦性の向上を図った膜を形成することが特許文献1に記載されている。
引用文献1は、撥液膜をパーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシシラン基を有する化合物により形成するようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−19803号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に記載のノズルプレートのように撥液性、耐摩擦性に優れた撥液膜を形成したものであっても、被覆した撥液膜が金属母材から剥離してしまうという問題が生じる。これは、図4に示すように、ノズルプレート4の撥液膜3が形成されていない箇所では、撥液膜と金属母材との境界層が薬品によりエッチングされてしまい、撥液膜3が剥れてしまうという現象である。原因としては、一般に金属は大気に晒されると表面に酸化膜が形成されるということにある。これは、金属母材2にステンレス等の耐薬品性に優れた金属を使用する場合であっても同様であり、当該酸化鉄1の層が薬品によりエッチングされ、金属母材2と撥液膜3との間に隙間ができてしまうということからである。
【0007】
本発明では、上記問題点を解決し、撥液性、耐薬品性に優れ、形成が容易であり、かつ形成した被膜が剥離することの無いノズルプレートの撥液膜形成方法及びノズルプレート並びにインクジェットプリンタヘッドを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係るノズルプレートの撥液膜形成方法は、ノズルプレートの表面に撥液膜を形成する方法において、金属母材の表面全体に撥液膜を形成する成膜工程と、金属母材の他部材との接合部に濡れ性を付与する親液処理工程とを有することを特徴とする。
【0009】
金属母材の表面全体を緻密な撥液膜で被覆するようにすることで、薬品が酸化膜層に接することがなくなる。また、被覆作業は部材の浸漬によって行うことも可能となり生産性が増す。さらに、接合を必要とする箇所に濡れ性を付与するように親液処理を施すようにすることにより、金属母材に薬品が接することを防ぎつつ、接合等を必要とする場合には、接着性を良好にすることができる。
【0010】
また、前記親液処理は、撥液膜にプラズマ、もしくは紫外光を照射して行うようにすると良い。前記プラズマは、アルゴンや窒素、酸素等のプラズマを用いることができる。また、プラズマは、真空プラズマでも大気圧プラズマでも良い。また、一つの膜の一部を改質する方法であることにより、金属母材に別の膜を形成する必要が無い。それにより各膜間に隙間ができて剥離の原因となることもない。
【0011】
他の撥液膜形成方法として、ノズルプレートの表面に撥液膜を形成する方法において、金属母材の表面で撥液性を必要とする箇所を不動態化する不動態処理工程と、不動態化した金属母材の表面に撥液膜を形成する成膜工程とを有することを特徴とするようにしてもよい。
【0012】
この方法によれば、金属母材に僅かに形成された薬品に弱い酸化膜層を不動態処理により予めエッチングし、前記酸化膜層をエッチングした箇所に撥液膜を形成するようにしているので、撥液膜の下に新たな酸化膜層が形成されることがなく、薬品が撥液膜と母材との間に浸潤し、エッチングされ、被覆した撥液膜が容易に剥離することがなくなる。
【0013】
また、前記不動態処理は、金属母材の表面にアルゴンや窒素のプラズマ、もしくは紫外光を照射して行うようにすると良い。これにより酸化膜が除去され、金属母材が不動態化される。また、プラズマの照射により金属母材の表面をエッチングすることで、複雑な形状等であっても容易に表面処理が可能となる。
【0014】
また、上記発明の撥液膜は、シリコーン樹脂などの有機ケイ素化合物またはパーフルオロカーボン(PFC)であるフロリナートなどの有機フッ素化合物をプラズマ重合したシリコーン樹脂重合膜またはフッ素樹脂重合膜であるようにすると良い。これにより、薬品に対して十分な耐薬品性を有する撥液膜を形成することができる。
【0015】
また、上記発明の撥液膜は、フッ素を含む長鎖高分子化合物を有する金属アルコキシドの単分子膜であっても良い。長鎖高分子が絡み合うためにインク成分が膜内に浸透しにくい。
さらに、金属アルコキシドの単分子膜は、所定温度に加熱した金属母材を金属アルコキシド含む溶液に浸漬した後、乾燥して形成するようにすると良い。この方法によれば、従来よりも金属アルコキシドの単分子膜を金属表面に密着性良く成膜が可能で、短時間の浸漬で成膜が可能となる。
【0016】
以上のようなノズルプレートの撥液膜形成方法では、金属母材は、ステンレスであるようにすると良い。ステンレスは、耐薬品性に優れ、かつ安価で加工も容易であるため、ノズルプレートの量産性向上及び低価格化をすることができる。
【0017】
本願発明に係るノズルプレートは、上記のノズルプレートの撥液膜形成方法によって形成する撥液膜を有することを特徴とする。このような構成のノズルプレートでは、上記方法の作用を奏することができる。
さらに、本願発明のインクジェットプリンタヘッドは、上記のノズルプレートを備えることを特徴とする。上記作用を奏するノズルプレートを備えるため、長期使用が可能となり、インクジェットプリンタヘッドを長期間交換しなくとも撥液性を良好に保つことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係るノズルプレート及びインクジェットプリンタヘッドの実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のインクジェットプリンタヘッド10に係る実施形態の基本構成を示す断面図である。インクジェットプリンタヘッド10の基本的構成は、一般的なインクジェットプリンタヘッドと同様で、インク溜り14を有するヘッド本体24と、前記ヘッド本体24の上部に位置し、圧力室22を有する加圧部26と、耐薬品性を有する撥液膜16を備えるノズルプレート18とから構成される。
【0019】
前記インクジェットプリンタヘッド10は、インク導入口12から供給されたインクをインク溜り14に貯留する。圧力室22に電気的信号により、又は物理的に圧力が加えられると、前記インク溜り14に貯留されたインクは当該圧力室22を通過し、インク吐出口20よりインク滴25として吐出される。
【0020】
前記ノズルプレート18には、インク吐出口20でのメニスカス形成を安定させて液滴生成の安定化を図るため、またはノズルプレート18の表面をインクや紙粉の汚れから防ぐために、図2に示すような撥液膜16が形成されている。図2(A)は本発明の第1の実施形態に係るノズルプレートを示す図である。第1の実施形態は、金属母材28の全表面に撥液膜16を被覆した構成としている。
【0021】
前記金属母材28には、ノズル加工を終了したステンレス鋼(SUS)を使用する。SUSは基本的に薬品等の耐薬品性に優れた性質であるが、大気中に放置して(晒して)おくと、一般的な金属と同様に、表面に酸化膜層である酸化鉄層30が析出する。当該酸化鉄層30は、酸性等に対する耐薬品性が弱い。このため、単に金属母材28の表面の一部に撥液膜16を形成しただけでは、薬品が金属母材28と撥液膜16との間に析出した酸化鉄層30をエッチングした場合、密着性が無くなった撥液膜16は容易に剥離してしまうこととなる。しかし、本実施形態のように、金属母材28の全表面を撥液膜16によって被覆することで、例え金属母材28の表面に酸化鉄層30が析出していたとしても、前記酸化鉄層30が薬品によりエッチングされること防ぐことができる。本実施形態の撥液膜16は、プラズマ重合により金属母材28の表面にシリコーン樹脂重合膜を形成することで成膜することができる。また、シリコーン樹脂重合膜は、撥液性を有するので、組立て等を行う際には接合が不安定となることがある。このような場合、接合面に濡れ性を付与するようにすれば良好な接合度を得ることができる。接合等を行うために濡れ性が必要な場合、例えばノズルプレートの裏側の面等には、表面にプラズマもしくは紫外光を照射することで、表面をSiO2化することができ、耐薬品性を保持したまま、シリコーン樹脂重合膜の表面に濡れ性を付与することができる。このため、接合を必要とする箇所では良好な接着性を有するようにすることができる。
【0022】
上記のプラズマ重合による成膜処理を詳細に説明すると、例えば図3に示す成膜処理装置40によって行われる。前記成膜処理装置40は、真空ポンプ52を備える真空チャンバ42を主要部とする。前記真空チャンバ42の内部には、その下面に金属母材28を載置する処理ステージ50が備えられる。当該処理ステージ50は、温度調節可能に形成されることが好ましい。また、真空チャンバ42の上面には絶縁体44を介して高周波電極46が備えられる。なお、前記高周波電極46は、高周波電源48に接続される。
【0023】
さらに、真空チャンバ42には成膜原料を供給する原料ガス供給手段70と、成膜を促進させるためのガス、例えばアルゴンガスを供給するアルゴンガス供給手段54とが接続される。原料ガス供給手段70は、原料58を収納する容器56と、前記容器56を加熱するヒータ60とから成り、流量制御弁62を介在させる原料供給経路66により真空チャンバ42に接続される。また、アルゴンガス供給手段54は、流量制御弁62を介在させるアルゴンガス供給経路64により真空チャンバ42に接続されている。
【0024】
このような成膜処理装置40による成膜処理は、まず金属母材28を処理ステージ50の上に配置する。この時処理ステージ50の温度調節が可能であれば、金属母材28を室温以上に保持するようにして、シリコーン樹脂の重合を促進させるようにすると良い。次にシリコーン樹脂の重合反応を良好に促進させ、かつ当該重合反応以外の反応を抑制させるために真空チャンバ42の内部を真空引きする。前記真空引きは、例えば0.133Pa程度とすると良い。
【0025】
上記環境中でプラズマ重合反応による成膜を行う。シリコーン樹脂の成膜を行う場合であれば、原料58として常温で液体として存在するヘキサメチルジシロキサン等を使用すると良い。前記原料58をヒータ60で加熱することによりガス化させ負圧となった真空チャンバ42に導入させる。前記ガス化した原料を真空チャンバ42に導入させる際原料供給経路66に図示しないヒータを設け、再び加熱した後に導入させるようにしても良い。同時にアルゴンガスも真空チャンバ42へ導入させる。
【0026】
その後高周波電極46により真空チャンバ42の内部に高周波電圧を印加させることによりヘキサメチルジロキサンが電離してプラズマ化され、金属母材28の表面で重合することで、撥液性を有するシリコーン樹脂重合膜の成膜が成される。このようにプラズマ重合により撥液膜16の成膜を行うようにすることで、微細なインキ吐出口や複雑な形状の部位にまで、撥液膜16を形成することができる。
【0027】
上記のようにして形成されたシリコーン樹脂重合膜は、N2雰囲気中にて300℃〜400℃程度でアニール処理を行うことにより、成膜されたシリコーン樹脂の内部に含まれる原料等が蒸発してシリコーン樹脂重合膜を硬化させ、ワイピング等に対する耐摩擦性を更に向上させることができる。なお、アルゴンガスと共に少量の四フッ化炭素(CF4)を添加することにより、シリコーン樹脂重合膜にフッ素が取り込まれるため、撥液膜16の撥液性をより高めることができる。
【0028】
さらに、ヘッド本体24との接合部等のように、前記シリコーン樹脂重合膜の一部に親液処理を施す場合には、前記成膜処理装置にて原料58を真空チャンバ42内に導入させずに高周波電圧を印加させ、アルゴンプラズマを照射させるようにする。
【0029】
この方法により、シリコーン樹脂重合膜に撥液性を付与しているメチル基(CH3基)が、プラズマ粒子により切断され、当該表面のシリコーン樹脂重合膜はOH基が形成されて親液性を付与される。メチル基が切断された後のシリコーン樹脂重合膜は、大気中に放置または酸素を供給されることにより表面がSiO2化され、安定状態となる。なお、親液化のためのプラズマ処理は、窒素プラズマや酸素プラズマ等の任意のプラズマを用いることができる。また、プラズマは、真空プラズマでも大気圧プラズマでも良い。
【0030】
このような構成からなる第1の実施形態のノズルプレート18は、金属母材28と撥液膜16であるシリコーン樹脂重合膜との境界面が外部に露出していないので、金属母材28の表面に酸化鉄層30が析出していた場合であっても、当該酸化鉄層30が薬品によりエッチングされ、撥液膜16が剥離してしまうことがない。よって、様々な種類のインクに対応して耐薬品性を持ったノズルプレート18とすることができる。
また、表側の面は撥液性を有しつつ、裏側の面は濡れ性を付与された構成としているので、図1に示すように接合を必要とする場合であっても、組立て時等の接合性を良好にすることができる。
【0031】
図2(B)は本発明の第2の実施形態に係るノズルプレートを示す図である。本実施形態では、金属母材28の撥液性を必要とする箇所のみに撥液膜16を形成する構成としている。この構成を採用するために、第1の実施形態で説明した、撥液膜16が金属母材28から剥離する原因となる酸化鉄層30を除去するようにした。
【0032】
本実施形態では、金属母材28を使用するノズルプレート18において表側の面となる箇所及びインク吐出穴となる箇所に、撥液膜16を被覆することとする。金属母材28の表面で撥液膜16を被覆する箇所を、真空あるいは、大気圧でアルゴンプラズマ・窒素プラズマ等によりエッチングし、該当箇所の表面に析出した酸化鉄層30を除去する。酸化鉄層30を除去した後、金属母材28であるSUS表面にプラズマ重合により撥液膜16であるシリコーン樹脂重合膜を形成するようにする。これにより、金属母材28と撥液膜16との間に、耐薬品性の弱い酸化鉄層30を介在させることがなくなるため、薬品により酸化鉄層30がエッチングされ、撥液膜16が剥離してしまうということがない。
【0033】
このような構成からなる第2の実施形態のノズルプレート18は、表側の面はシリコーン樹脂重合膜により被覆されているため、第1の実施形態と同様に優れた撥液性を有する。また、裏側の面は被覆を行っていないので、本来の金属母材(SUS)28の特性を出すことができるため、組立て時の接合性等に問題をきたすことがない。
【0034】
また、撥液膜16の被覆時に金属母材28の表面に析出した酸化鉄層30を、エッチングにより除去し、撥液膜16を被覆するようにしたため、金属母材28と撥液膜16との間に酸化鉄層30が存在しない。さらに、酸化鉄層30をエッチングした箇所には、直後に撥液膜16による被覆を行うため、当該表面が大気にさらされることがない。よって、金属母材28と撥液膜16との間に再び酸化鉄層30が析出することがないので、両部材の境界で薬品によりエッチングされる層が無く、撥液膜16が剥離してしまうということがない。
【0035】
上述した2つの実施形態では、いずれも撥液膜16としてプラズマ重合によりシリコーン樹脂重合膜を形成するようにしているが、これに限るものではない。例えば、フッ素系不活性液体であるフロリナート溶液をプラズマ重合により被覆するようにしてフッ素樹脂重合膜を形成するようにしても良い。フロリナート溶液は、完全に不活性であるために、被覆する金属等を侵すことがなく、自らの表面張力は非常に弱いため、極薄膜での形成が可能である。さらに強酸・強アルカリを問わず様々な溶液に対して耐薬品性に優れている。
【0036】
また、撥液膜16の被覆方法は、プラズマ重合に限らず、溶液に直接浸漬することによって行うものでも良い。浸漬による成膜が有効な撥液膜16としては、フッ素を含む長鎖高分子化合物を有する金属アルコキシドの単分子膜等がある。前記金属アルコキシドとしては、例えばTi、Li、Si、Na、K、Mg、Ca、St、Ba、Al、In、Ge、Bi、Fe、Cu、Y、Zr、Ta等を使用する様々なものがあるが、ケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等が一般的に用いられる。本実施形態ではケイ素を用いた物を使用し、フッ素化合物の微粒子を含有させるようにして、フルオロアルキルシラン化合物を生成して使用する。フッ化炭素基はアルキル基より表面自由エネルギーが小さいため、金属アルコキシドにフッ素化合物を含有させることにより、形成する撥液膜の撥液性を向上させることができると共に、耐薬品性、耐候性、耐摩擦性等の特性も向上させることができる。
また、フルオロアルキル基としては、長鎖構造が長いものが、より撥液性を持続させることができる。
【0037】
上記のフルオロアルキルシラン化合物の成膜方法としては、金属母材28を300℃程度まで加熱し、溶液に0.5秒程度浸漬した後2mm/sec.程度の速度で引き上げ乾燥させる。なお、乾燥工程において余剰な水やアルコール成分を揮発させる際、被膜表面に亀裂を発生させないように注意する。
【0038】
上記実施形態のようなノズルプレート18及びインクジェットプリンタヘッド10は、ノズルプレート18の表面に撥液膜16を形成する方法として、金属母材28の表面全体に撥液膜16を形成する成膜工程と、金属母材28の他部材との接合部に濡れ性を付与する親液処理工程とを有するようにしたことにより、薬品が酸化鉄層30に接することがなくなり、撥液膜16の剥離原因となるエッチングが無くなる。また、被覆作業は部材の浸漬によって行うことも可能となり生産性が増す。さらに、接合を必要とする箇所に濡れ性を付与するように親液処理を施すようにすることにより、金属母材28への薬品の浸潤を防ぎつつ、接合等を必要とする場合には、接着性を良好にすることができる。
【0039】
また、前記親液処理は、撥液膜16にプラズマを照射して行うようにしたことで、切れ目の無い撥液膜16の一部を改質する方法となるので、金属母材28に別の膜を形成する必要が無い。よって、複数形成した薄膜間に隙間が生じて剥離酸化鉄層30をエッチングされる原因となることがない。
【0040】
また、金属母材28の表面で撥液性を必要とする箇所を不動態化する不動態処理工程と、不動態化した金属母材28の表面に撥液膜16を形成する成膜工程とを有することを行うようにすることで、金属母材28に僅かに形成された薬品に弱い酸化膜鉄30を不動態処理により除去し、前記酸化鉄層30を除去した箇所に撥液膜16を形成するようにしているので、撥液膜16の下に新たな酸化鉄層が形成されることがなく、薬品が撥液膜16と金属母材28との間に浸潤し、酸化鉄層30をエッチングされる虞がない。よって、被覆した撥液膜が容易に剥離することがない。
【0041】
また、前記不動態処理は、金属母材28の表面にプラズマを照射して金属母材28の表面をエッチングするようにしたことで、複雑な形状等であっても容易に表面処理が可能となる。
また、前記撥液膜16を、有機ケイ素化合物または有機フッ素化合物をプラズマ重合したシリコーン樹脂重合膜またはフッ素樹脂重合膜であるようにすることで、薬品に対して十分な耐薬品性を有する撥液膜16を形成することができる。
【0042】
また、撥液膜16を、フッ素を含む長鎖高分子化合物を有する金属アルコキシドの単分子膜であるようにすることで、長鎖高分子が絡み合うためにインク成分が膜内に浸透しにくく、長期に亙り良好な撥液性を維持することができると共に、耐薬品性、耐候性、耐摩擦性等の特性も向上させることができる。
【0043】
さらに、金属アルコキシドの単分子膜は、所定温度に加熱した金属母材28を金属アルコキシドを含む溶液に浸漬した後、乾燥して形成するようにしたことで、従来よりも金属アルコキシドの単分子膜を金属母材28の表面に緻密に形成することができると共に密着性が良く、短時間の浸漬で成膜が可能となる。
【0044】
以上のようなノズルプレート18の撥液膜16の形成方法で、金属母材28を、ステンレス(SUS)であるようにすることで、耐薬品性に優れ、かつ安価で加工も容易であるため、ノズルプレートの量産性向上及び低価格化をすることができる。
【0045】
製品としてインクジェットプリンタヘッド10を製作する場合には、上記作用を備えたノズルプレート18を備えるようにすると良い。これにより、耐薬品性に優れたインクジェットプリンタヘッド10とすることができる。
実施形態においては、いずれのノズルプレート18も撥液膜16を1層で構成していたが、これに限らず2層構造等としても良い。
【0046】
例えば、図2(C)のものでは、第1の実施形態のプラズマ重合によるシリコーン樹脂重合膜を下地層34とし、その表面の全てをSiO2化し、ノズルプレート18の表側の面には表面層32としてフルオロアルキルシラン化合物の薄膜を被覆した。この構成によれば、吸着性が良くかつ耐薬品性を備えたシリコーン樹脂重合膜で金属母材28を覆うことで、ノズルプレート18全体に耐薬品性を持たせることができる。また、表側の面に、フッ素を含む長鎖高分子膜を備えることにより、表側の面の撥液性をさらに高めることができると共に、吸着性の良いシリコーン樹脂重合膜を下地層34としているので表面層32である長鎖高分子膜が剥離する虞がない。なお、上記のようにシリコーン樹脂重合膜の上にフルオロアルキルシラン化合物の膜を形成する場合には、フルオロアルキルシラン化合物を成膜する際に金属母材28を加熱しなくとも良い。
【0047】
また、実施形態では、プラズマ重合による成膜としてシリコーン樹脂についてのみ例を示したが、原料58を変えることで他の物質の成膜にも対応することができる。
さらに、実施形態では金属母材28にSUSを使用しているが、これに限定することはない。第2の実施形態では、金属母材28が耐薬品性に優れていることが条件となるが、第1の実施形態においては、金属母材28を全て覆ってしまうので、略全ての金属を金属母材として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェットプリンタヘッドに係る実施形態の断面図である。
【図2】本発明のノズルプレートに係る実施形態のノズル部分の断面図である。
【図3】本発明におけるプラズマ重合による成膜を行う成膜処理装置を示す図である。
【図4】従来のノズルプレートの撥液膜の被覆状態を示す図である。
【符号の説明】
10………インクジェットプリンタヘッド、16………撥液膜、18………ノズルプレート、28………金属母材、30………酸化鉄層。
Claims (10)
- ノズルプレートの表面に撥液膜を形成する方法において、金属母材の表面全体に撥液膜を形成する成膜工程と、金属母材の他部材との接合部に濡れ性を付与する親液処理工程とを有することを特徴とするノズルプレートの撥液膜形成方法。
- 前記親液処理は、撥液膜にプラズマ、もしくは紫外光を照射して行うことを特徴とする請求項1に記載のノズルプレートの撥液膜形成方法。
- ノズルプレートの表面に撥液膜を形成する方法において、金属母材の表面で撥液性を必要とする箇所を不動態化する不動態処理工程と、不動態化した金属母材の表面に撥液膜を形成する成膜工程とを有することを特徴とするノズルプレートの撥液膜形成方法。
- 前記不動態処理は、金属母材の表面にプラズマ、もしくは紫外光を照射して行うことを特徴とする請求項3に記載のノズルプレートの撥液膜形成方法。
- 撥液膜は、有機ケイ素化合物または有機フッ素化合物をプラズマ重合したシリコーン樹脂重合膜またはフッ素樹脂重合膜であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のノズルプレートの撥液膜形成方法。
- 撥液膜は、フッ素を含む長鎖高分子化合物を有する金属アルコキシドの単分子膜であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のノズルプレートの撥液膜形成方法。
- 金属アルコキシドの単分子膜は、所定温度に加熱した金属母材を金属アルコキシドを含む溶液に浸漬した後、乾燥して形成することを特徴とする請求項6に記載のノズルプレートの撥液膜形成方法。
- 金属母材は、ステンレスであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のノズルプレートの撥液膜形成方法。
- 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のノズルプレートの撥液膜形成方法によって形成する撥液膜を有することを特徴とするノズルプレート。
- 請求項9に記載のノズルプレートを備えることを特徴とするインクジェットプリンタヘッド。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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GB2438195A (en) * | 2006-05-20 | 2007-11-21 | P2I Ltd | Coated ink jet nozzle plate |
JP2012106364A (ja) * | 2010-11-16 | 2012-06-07 | Seiko Epson Corp | シリコンノズル基板及びその製造方法 |
JP2012206419A (ja) * | 2011-03-30 | 2012-10-25 | Seiko Epson Corp | ノズル基板、液滴吐出ヘッド、および液滴吐出装置 |
JP2013193289A (ja) * | 2012-03-19 | 2013-09-30 | Ricoh Co Ltd | ノズル板、液体吐出ヘッド、画像形成装置、ノズル板の製造方法 |
CN112743985A (zh) * | 2019-10-29 | 2021-05-04 | 松下知识产权经营株式会社 | 液体喷出头及喷墨装置 |
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2003
- 2003-05-07 JP JP2003129260A patent/JP4200484B2/ja not_active Expired - Fee Related
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