JP2004329129A - きのこ栽培用添加剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】きのこの人工栽培において収量を増加し得る、新たな培地資材あるいは栄養剤を提供すること。
【解決手段】カカオ豆殻を培地資材として用いること。栄養成分としてカカオ豆殻を含むきのこ栽培用培地を用いることにより、より高い収率で安定した品質のきのこをより早く収穫できる。
【選択図】 なし
【解決手段】カカオ豆殻を培地資材として用いること。栄養成分としてカカオ豆殻を含むきのこ栽培用培地を用いることにより、より高い収率で安定した品質のきのこをより早く収穫できる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、きのこ栽培用の培地、および該培地を用いるきのこ栽培方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
食用きのこ、例えば、エノキダケ、ブナシメジ、ヒラタケ、ナメコ、シイタケ、マイタケ、エリンギ、マッシュルーム類などの人工菌床による栽培は、近年急速に拡大している。きのこの人工菌床には、一般的に、オガクズ、フスマ、コーンコブ、大豆皮、オカラ、生米糠などの培地資材を混合し、水を加えて水分調整したきのこ栽培用培地が用いられている。
【0003】
このようなきのこの人工菌床の培地資材については、種々の資材が検討されている。例えば、米糠は、培地の蛋白源(栄養剤)として、きのこの人工栽培に古くから使用されており、きのこの栽培に欠くことのできない培地資材である。しかし、生米糠の供給は不安定であるため、きのこ栽培用の栄養剤の安定な供給が望まれている。近年、このような栄養剤として、綿実殻を用いることが報告されており(特許文献1〜3)、収量を増加させている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−127163号公報
【特許文献2】
特開2000−316377号公報
【特許文献3】
特許第3229287号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、きのこの人工栽培において収量を増加し得る、新たな培地資材あるいは栄養剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
カカオ豆殻は、チョコレートなどの原料となるカカオ脂の製造の際に生じる産業廃棄物である。リグニン含量が比較的多いため、家畜の飼料として利用されることが少ない。発酵させて土壌改良剤として用いられることもあるが、現在のところ、有効利用されているとはいえない。
【0007】
そこで、きのこの人工栽培用の培地として利用したところ、収量を増やすことができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、カカオ豆殻を含有する、きのこ栽培用培地を提供する。
【0009】
本発明はまた、きのこを、カカオ豆殻を含有するきのこ栽培用培地で栽培する工程を含む、きのこの栽培方法を提供する。
【0010】
好適な実施態様では、上記きのこは、ブナシメジ(シロタモギタケともいう)、エノキダケ、ナメコ、エリンギ、およびヒラタケからなる群より選択される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるカカオ豆殻は、カカオ脂製造工程において生じるカカオ豆の皮、すなわち、カカオ豆を焙焼した後、粉砕・風篩によって回収された殻の部分である。これは、カカオハスク、ココハスク、カカオカス、カカオ豆稈などとも呼ばれている。このカカオ豆殻は、カカオの種子の外種皮、内種皮、果肉粕などが混在していてもよい。カカオ豆殻は、粉状、フレーク状、ペレット状、顆粒状、または粒状などの形状に加工されていてもよい。
【0012】
本発明に用いられるカカオ豆殻には、重量%で、水分8.0〜13.0%、粗蛋白質12.0〜22.0%、粗脂肪5.0〜11.0%、粗繊維12.0〜19.5%、粗灰分5.5〜8.5%、および可溶無窒素物38.0〜49.0%が含まれている。これらは、目安であり、原料となるカカオ種子およびカカオ豆殻の製造工程により変動することがある。従来からきのこの培養に用いられている生米糠は、水分約12%、粗蛋白質約15%、粗脂肪約19%、粗繊維約8%、および粗灰分約9%を含む。したがって、カカオ豆殻は、従来から用いられている培地成分と比べて、粗脂肪含量が低く、粗繊維含量が高いことが特徴である。
【0013】
本発明のきのこ栽培用培地は、上記カカオ豆殻を含有し、そして木質成分と、必要に応じて、他の栄養剤成分とを含む。また、適切な量の水分を含む。
【0014】
カカオ豆殻の含有量は、培養するきのこの種類によって異なり、培地全体の乾燥重量に対して、約0.5重量%〜約60重量%の割合で含む。好ましくは、約1重量%〜約40重量%、より好ましくは、約1重量%〜約25重量%、さらに好ましくは約5重量%〜約15重量%の割合である。なお、乾燥重量は、105℃、5時間乾燥後の重量をいう。
【0015】
木質成分とは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなどを含む資材をいう。例えば、オガクズ、木材チップ、コーンコブ粉砕物、モミ殻、綿実殻、バガス、コットンリンターなどが挙げられる。これらの木質成分は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。木質成分は、培地全体の乾燥重量に対して、約10重量%〜約80重量%の割合で含有される。その割合は、目的とするきのこの種類により異なるので、目的に応じて当業者が適宜決定すればよい。
【0016】
他の栄養剤成分としては、大麦粉砕物、コーンジャム粕、トウモロコシ糠、ムギ糠、米糠、フスマ、オカラ、豆皮、グルテンフィード(トウモロコシ皮)などが挙げられる。これらの他の栄養剤成分は単独で添加してもよいし、2種以上組み合わせて添加してもよい。カカオ豆殻と他の栄養剤成分とは、合計で、窒素として、0.1〜4重量%含むように培地に含有することが好ましい。その割合は、目的とするきのこの種類により異なるので、目的に応じて当業者が適宜決定すればよい。
【0017】
本発明のきのこ栽培用培地は、カカオ豆殻、木質成分、および必要に応じて栄養剤および/または水を混合することによって調製される。水を加える場合、水分量は、約50重量%〜約80重量%が好ましく、約60重量%〜約70重量%がさらに好ましい。水分量が調節された培地は、培養容器に充填して培養基とし、滅菌処理を施した後、きのこの栽培に用いられる。
【0018】
きのこの栽培に用いられる容器は、その形状、大きさ、材料などは特に制限されない。滅菌処理に耐える容器であることが好ましく、目的とするきのこの種類により適宜選択される。本発明においては、800ml、口径52mmの容器を使用した例を示すが、これに限定されないことはいうまでもない。他の菌床栽培用容器、例えば袋栽培用の袋を使用することもできる。
【0019】
充填される培地の量は、培養容器の大きさを考慮して決定される。800ml、口径52mmの容器を使用した例では、培地内水分64%に調整時に約550g〜580g位である。
【0020】
培養基の滅菌処理の方法および条件は、当業者が一般的に用いる滅菌処理の方法および条件の範囲内であれば特に限定されない。例えば、高圧蒸気滅菌、常圧蒸気滅菌などが挙げられる。特に121℃、約20分〜約60分程度、好ましくは約30分〜約60分程度の高圧蒸気滅菌が好ましい。大量に蒸気滅菌を行う場合は、滅菌処理の時間を長くすることが好ましい。
【0021】
本発明において栽培されるきのこは、本発明の培地を含む培養基で栽培できるきのこであれば、特に限定されない。栽培可能なきのこの例として、ブナシメジ(別名:シロタモギタケ)、エノキダケ、ナメコ、エリンギ、ヒラタケなどが挙げられる。
【0022】
栽培に用いるきのこの種菌は、市販のきのこもしくは天然に生じる子実体から採取した菌糸または組織、あるいは、例えば、寄託機関もしくは研究機関に保存されている菌株を入手して培養して得られた菌糸または組織から、作製される。
【0023】
種菌は、当業者が通常用いる方法によって作製される。例えば、目的のきのこの子実体から菌糸または組織の一部を切り取り、例えば、麦芽0.5g、リン酸一カリウム0.03g、リン酸二カリウム0.03g、硫酸マグネシウム0.03g、ペプトン0.5g、ショ糖5g、および寒天3gを水100mlに溶解した寒天培地上で菌糸を増殖させる。あるいは、子実体から胞子を採取し、麦芽5gおよび寒天1.5gを水100mlに溶解した麦芽寒天培地上で発芽させて、菌糸を増殖させる。次いで、増殖して得られた菌糸を、種菌作製培地に接種する。接種後、約18℃〜約25℃で約20〜60日間培養することにより種菌が得られる。
【0024】
次いで、得られた種菌の小塊を、滅菌処理を施した本発明の培地を含む培養基に接種し、培養を行い、培養基全体に菌糸を生育させ、菌回りを完了させる。菌糸生育の条件は、きのこの種類によって、当業者が適宜決定すればよい。菌回りが完了した後、必要に応じて、さらに数日間培養を続け、菌糸を熟成させ、子実体の発生を促進する(菌糸の熟成)。菌糸の熟成を行う場合、熟成期間は、きのこの種類、ならびに温度、湿度などの環境条件によって適宜設定され、一般的には、約5日〜約60日、好ましくは約5日〜約40日である。なお、種菌の接種から菌回り完了または熟成期間終了までを培養期間という。この期間は、通常、出荷時期を考慮して適宜設定され得る。
【0025】
菌回りの完了後または熟成後、すなわち、培養期間の後、芽出し操作を行う。芽出し操作の前に、菌かきを行ってもよい。菌かきは、子実体の形態を整え、そして成長を揃える目的で行われる。菌かきを行わない場合は、菌回りの完了後または熟成後の培養物をそのまま、菌かきを行う場合は、芽出しさせる培養物に菌かきを行った後、以下の芽出し条件で栽培する。菌かきは、当業者が通常用いる方法により行われる。
【0026】
芽出し条件は、種菌接種後の培養条件よりも低温および高湿度であることが好ましい。芽出しは、肉眼で幼子実体の形成が認められるまで行うことができる。
【0027】
幼子実体の形成が認められた後、幼子実体をさらに生育させる。生育条件は、当業者が通常行う条件であり、特に限定されない。生育工程では、光照射を行うことが好ましい。生育を行う日数は、生育条件によって変化し得る。きのこの子実体が所望の大きさに生育したら、子実体の収穫を行う。このようにして、きのこが栽培される。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0029】
(実施例1:ブナシメジの栽培−1)
オガクズ(杉)、米糠、コーンコブ、コットンリンター(岡村製油株式会社製)、豆皮、カカオ豆殻(江崎グリコ製)、および菌糸活性剤を、表1に示す割合で混合し、水分量が全培地の重量の65.0%となるように水を加えて培地を調製した。この培地を、容量800ml、口径52mmのプラスチック瓶に入れて培養基を16本作成した。培養基を121℃、60分間、高圧蒸気滅菌した後、冷却した。この各培養基に、通常の方法で調製したブナシメジ(シロタモギタケ)B19菌系の種菌10gを接種した。これを、温度22℃、湿度50%の条件下、87日間培養した。この間にブナシメジの菌回りが34日で完了し、菌糸が熟成した(表1)。熟成後、整形法により菌かきを行った。菌かき後の培養基を、温度15℃、湿度95%の条件下で栽培し、芽出しおよびその後の幼子実体の生育を行った。菌かき後22日目に子実体を収穫した。結果を表1に示す。
【0030】
(実施例2:ブナシメジの栽培−2)
培養日数を94日間としたこと以外は、実施例1と同様にブナシメジを栽培した。結果を表1に示す。
【0031】
(実施例3:ブナシメジの栽培−3)
表1に記載の割合で培養資材を含む培地を調製し、さらに培養日数を89日間としたこと以外は、実施例1と同様にブナシメジを栽培した。結果を表1に示す。
【0032】
(実施例4:ブナシメジの栽培−4)
表1に記載の割合で培養資材を含む培地を調製し、ブナシメジF19菌系を用いたこと以外は、実施例1と同様にブナシメジを栽培した。結果を表1に示す。
【0033】
(実施例5:ブナシメジの栽培−5)
表1に記載の割合で培養資材を含む培地を調製し、ブナシメジF19菌系を用い、そして培養日数を94日間としたこと以外は、実施例1と同様にブナシメジを栽培した。結果を表1に示す。
【0034】
(比較例1:ブナシメジの栽培)
表1に記載の割合でカカオ豆殻以外の培養資材を含む培地を調製し、ブナシメジF19菌系を用い、さらに培養日数を89日間としたこと以外は、実施例1と同様にブナシメジを栽培した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
カカオ豆殻を含む培地で栽培したブナシメジは、菌回りの日数が、カカオ豆殻を使用しなかった比較例よりも早かった。通常行われている栽培では、菌回りは36日〜38日であるので、実施例ではいずれもやや短い傾向にある。これは、培地の保水性や内部の空隙が、菌が生育しやすい状態になっているためと考えられる。また、90日前後の培養日数で約200gの平均収量が達成でき、形状も良好であり、安定した収穫が可能であった。一般的に行われているブナシメジの栽培では、培養日数は95日〜105日であり、収量は180g〜190gである。このように、カカオ豆殻を含む培地を用いると、ブナシメジが良好に発育し得ることがわかった。
【0037】
(実施例6:エリンギの栽培)
オガクズ(杉)、米糠、コットンリンター(岡村製油株式会社製)、カカオ豆殻(江崎グリコ製)、フスマ、および菌糸活性剤を、表2に記載の割合で混合し、水分量が全培地の重量の65%となるように水を加えて培地を調製した。この培地を、容量800ml、口径52mmのプラスチック瓶に入れて培養基を16本作成した。培養基を121℃、60分間、高圧蒸気滅菌した後、冷却した。この各培養基に、通常の方法で調製したエリンギ G26菌系の種菌10gを接種した。これを、温度22℃、湿度50%の条件下、41日間培養した。この間にエリンギの菌回りが27日で完了し、菌糸が熟成した。熟成後、ひらかき法により菌かきを行った。菌かき後の培養基を、温度15℃、湿度95%の条件下で栽培し、芽出しおよびその後の幼子実体の生育を行った。菌かき後17日目に子実体を収穫した。結果を表2に示す。
【0038】
(比較例2:エリンギの栽培)
表2に記載の割合でカカオ豆殻を含まない培地を調製したこと以外は、実施例6と同様にしてエリンギを栽培した。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
カカオ豆殻を含む培地で栽培したエリンギは、菌回りの日数が、カカオ豆殻を使用しなかった比較例よりも2日遅かった。しかし、その後の芽出しおよび生育工程については、特に問題なく生育した。実施例のエリンギの収量は、比較例よりも約10g以上多かった。また、商品として有効な茎数についても、実施例のエリンギのほうがやや多かった。このように、カカオ豆殻を含む培地を用いると、収穫が2日ほど遅れる可能性があるが、エリンギが良好に発育し得ることがわかった。
【0041】
(実施例7:エノキダケの栽培)
オガクズ(杉)、米糠、およびカカオ豆殻(江崎グリコ製)を、表3に記載の割合で混合し、適量の水を加えて培地を調製した。この培地を、容量800ml、口径52mmのプラスチック瓶に入れて培養基を16本作成した。培養基を121℃、60分間、高圧蒸気滅菌した後、冷却した。この各培養基に、通常の方法で調製したエノキダケ FL1菌系の種菌10gを接種した。温度17℃、湿度50%の条件下、23日間の培養により、菌回りが完了した。その後、ひらかき法により菌かきを行った。菌かき後の培養基を、温度15℃、湿度95%の条件下で栽培し、芽出しおよびその後の幼子実体の生育を行った。菌かき後27日目に子実体を収穫した。結果を表3に示す。
【0042】
(比較例3:エノキダケの栽培)
表3に記載の割合でカカオ豆殻を含まない培地を調製したこと以外は、実施例7と同様にしてエノキダケを栽培した。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
カカオ豆殻を含む培地で栽培したエノキダケは、菌回りの日数は、カカオ豆殻を使用しなかった比較例と同じであったが、生育日数が2日長く、収量もやや低かった。しかし、収量および品質とも、商品として十分なレベルを満たしていた。なお、上記実施例7と比較例3とでは、培地の水分量が大きく異なるため、直接的な比較はできないが、カカオ豆殻が、エノキダケ栽培用の培地として使用可能であることがわかる。
【0045】
(実施例8:ナメコの栽培)
オガクズ(広葉)、フスマ、カカオ豆殻(江崎グリコ製)、およびホミニフィード(コーン粉砕物)を、表4に記載の割合で混合し、適量の水を加えて培地を調製した。この培地を、容量800ml、口径52mmのプラスチック瓶に入れて培養基を16本作成した。培養基を121℃、60分間、高圧蒸気滅菌した後、冷却した。この各培養基に、通常の方法で調製したナメコ N006菌系の種菌10gを接種した。これを、温度18℃、湿度50%の条件下、55日間培養した。この間にナメコの菌回りが20日で完了し、菌糸が熟成した。熟成後、ひらかき法により菌かきを行った。菌かき後の培養基を、温度15℃、湿度95%の条件下で栽培し、芽出しおよびその後の幼子実体の生育を行った。菌かき後16日目に子実体を収穫した。結果を表4に示す。
【0046】
(比較例4:ナメコの栽培)
表4に記載の割合でカカオ豆殻を含まない培地を調製したこと以外は、実施例8と同様にしてナメコを栽培した。結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
カカオ豆殻を含む培地で栽培したナメコは、菌回りの日数および生育日数とも、カカオ豆殻を使用しなかった比較例と同じであったが、収量はやや低かった。実施例8における傘の筋状の形状の発生については、通常の栽培時にも生じることがあり、原因は特定されていない。しかし、商品価値としては問題がない程度であった。このことから、カカオ豆殻が、ナメコ栽培用の培地として使用し得る可能性があることがわかる。
【0049】
(実施例9:ヒラタケの栽培)
オガクズ(杉)、米糠、カカオ豆殻(江崎グリコ製)、豆乳、フスマ、および菌糸活性剤を、表5に記載の割合で混合し、適量の水を加えて培地を調製した。この培地を、容量800ml、口径52mmのプラスチック瓶に入れて培養基を16本作成した。培養基を121℃、60分間、高圧蒸気滅菌した後、冷却した。この各培養基に、通常の方法で調製したヒラタケ ヒG−42菌系の種菌10gを接種した。これを、温度22℃、湿度50%の条件下、33日間培養した。この間にヒラタケの菌回りが15日で完了し、菌糸が熟成した。熟成後、ひらかき法により菌かきを行った。菌かき後の培養基を、温度15℃、湿度95%の条件下で栽培し、芽出しおよびその後の幼子実体の生育を行った。菌かき後9日目に子実体を収穫した。結果を表5に示す。
【0050】
【表5】
【0051】
カカオ豆殻を含む培地で栽培したヒラタケは、菌回りの日数が15日であった。通常行われている栽培では18日前後なので、短くなっていた。収量は、通常の栽培と比較して多くはないが、商品として使用可能な品質を保っていた。このことから、カカオ豆殻が、ヒラタケの栽培用の培地として使用可能であることがわかる。
【0052】
【発明の効果】
カカオ豆殻は、一般的に入手可能である。これは、通常の培地調製工程によって培地を調製でき、培養環境も通常と同様に行うことができる。カカオ豆殻を含む培地で培養すると、特にブナシメジでは、菌回りが早く、安定した収量および安定した品質のきのこを栽培できる。したがって、カカオ豆殻は、きのこ栽培用の新たな栄養剤として利用し得る。
【発明の属する技術分野】
本発明は、きのこ栽培用の培地、および該培地を用いるきのこ栽培方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
食用きのこ、例えば、エノキダケ、ブナシメジ、ヒラタケ、ナメコ、シイタケ、マイタケ、エリンギ、マッシュルーム類などの人工菌床による栽培は、近年急速に拡大している。きのこの人工菌床には、一般的に、オガクズ、フスマ、コーンコブ、大豆皮、オカラ、生米糠などの培地資材を混合し、水を加えて水分調整したきのこ栽培用培地が用いられている。
【0003】
このようなきのこの人工菌床の培地資材については、種々の資材が検討されている。例えば、米糠は、培地の蛋白源(栄養剤)として、きのこの人工栽培に古くから使用されており、きのこの栽培に欠くことのできない培地資材である。しかし、生米糠の供給は不安定であるため、きのこ栽培用の栄養剤の安定な供給が望まれている。近年、このような栄養剤として、綿実殻を用いることが報告されており(特許文献1〜3)、収量を増加させている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−127163号公報
【特許文献2】
特開2000−316377号公報
【特許文献3】
特許第3229287号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、きのこの人工栽培において収量を増加し得る、新たな培地資材あるいは栄養剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
カカオ豆殻は、チョコレートなどの原料となるカカオ脂の製造の際に生じる産業廃棄物である。リグニン含量が比較的多いため、家畜の飼料として利用されることが少ない。発酵させて土壌改良剤として用いられることもあるが、現在のところ、有効利用されているとはいえない。
【0007】
そこで、きのこの人工栽培用の培地として利用したところ、収量を増やすことができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、カカオ豆殻を含有する、きのこ栽培用培地を提供する。
【0009】
本発明はまた、きのこを、カカオ豆殻を含有するきのこ栽培用培地で栽培する工程を含む、きのこの栽培方法を提供する。
【0010】
好適な実施態様では、上記きのこは、ブナシメジ(シロタモギタケともいう)、エノキダケ、ナメコ、エリンギ、およびヒラタケからなる群より選択される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるカカオ豆殻は、カカオ脂製造工程において生じるカカオ豆の皮、すなわち、カカオ豆を焙焼した後、粉砕・風篩によって回収された殻の部分である。これは、カカオハスク、ココハスク、カカオカス、カカオ豆稈などとも呼ばれている。このカカオ豆殻は、カカオの種子の外種皮、内種皮、果肉粕などが混在していてもよい。カカオ豆殻は、粉状、フレーク状、ペレット状、顆粒状、または粒状などの形状に加工されていてもよい。
【0012】
本発明に用いられるカカオ豆殻には、重量%で、水分8.0〜13.0%、粗蛋白質12.0〜22.0%、粗脂肪5.0〜11.0%、粗繊維12.0〜19.5%、粗灰分5.5〜8.5%、および可溶無窒素物38.0〜49.0%が含まれている。これらは、目安であり、原料となるカカオ種子およびカカオ豆殻の製造工程により変動することがある。従来からきのこの培養に用いられている生米糠は、水分約12%、粗蛋白質約15%、粗脂肪約19%、粗繊維約8%、および粗灰分約9%を含む。したがって、カカオ豆殻は、従来から用いられている培地成分と比べて、粗脂肪含量が低く、粗繊維含量が高いことが特徴である。
【0013】
本発明のきのこ栽培用培地は、上記カカオ豆殻を含有し、そして木質成分と、必要に応じて、他の栄養剤成分とを含む。また、適切な量の水分を含む。
【0014】
カカオ豆殻の含有量は、培養するきのこの種類によって異なり、培地全体の乾燥重量に対して、約0.5重量%〜約60重量%の割合で含む。好ましくは、約1重量%〜約40重量%、より好ましくは、約1重量%〜約25重量%、さらに好ましくは約5重量%〜約15重量%の割合である。なお、乾燥重量は、105℃、5時間乾燥後の重量をいう。
【0015】
木質成分とは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなどを含む資材をいう。例えば、オガクズ、木材チップ、コーンコブ粉砕物、モミ殻、綿実殻、バガス、コットンリンターなどが挙げられる。これらの木質成分は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。木質成分は、培地全体の乾燥重量に対して、約10重量%〜約80重量%の割合で含有される。その割合は、目的とするきのこの種類により異なるので、目的に応じて当業者が適宜決定すればよい。
【0016】
他の栄養剤成分としては、大麦粉砕物、コーンジャム粕、トウモロコシ糠、ムギ糠、米糠、フスマ、オカラ、豆皮、グルテンフィード(トウモロコシ皮)などが挙げられる。これらの他の栄養剤成分は単独で添加してもよいし、2種以上組み合わせて添加してもよい。カカオ豆殻と他の栄養剤成分とは、合計で、窒素として、0.1〜4重量%含むように培地に含有することが好ましい。その割合は、目的とするきのこの種類により異なるので、目的に応じて当業者が適宜決定すればよい。
【0017】
本発明のきのこ栽培用培地は、カカオ豆殻、木質成分、および必要に応じて栄養剤および/または水を混合することによって調製される。水を加える場合、水分量は、約50重量%〜約80重量%が好ましく、約60重量%〜約70重量%がさらに好ましい。水分量が調節された培地は、培養容器に充填して培養基とし、滅菌処理を施した後、きのこの栽培に用いられる。
【0018】
きのこの栽培に用いられる容器は、その形状、大きさ、材料などは特に制限されない。滅菌処理に耐える容器であることが好ましく、目的とするきのこの種類により適宜選択される。本発明においては、800ml、口径52mmの容器を使用した例を示すが、これに限定されないことはいうまでもない。他の菌床栽培用容器、例えば袋栽培用の袋を使用することもできる。
【0019】
充填される培地の量は、培養容器の大きさを考慮して決定される。800ml、口径52mmの容器を使用した例では、培地内水分64%に調整時に約550g〜580g位である。
【0020】
培養基の滅菌処理の方法および条件は、当業者が一般的に用いる滅菌処理の方法および条件の範囲内であれば特に限定されない。例えば、高圧蒸気滅菌、常圧蒸気滅菌などが挙げられる。特に121℃、約20分〜約60分程度、好ましくは約30分〜約60分程度の高圧蒸気滅菌が好ましい。大量に蒸気滅菌を行う場合は、滅菌処理の時間を長くすることが好ましい。
【0021】
本発明において栽培されるきのこは、本発明の培地を含む培養基で栽培できるきのこであれば、特に限定されない。栽培可能なきのこの例として、ブナシメジ(別名:シロタモギタケ)、エノキダケ、ナメコ、エリンギ、ヒラタケなどが挙げられる。
【0022】
栽培に用いるきのこの種菌は、市販のきのこもしくは天然に生じる子実体から採取した菌糸または組織、あるいは、例えば、寄託機関もしくは研究機関に保存されている菌株を入手して培養して得られた菌糸または組織から、作製される。
【0023】
種菌は、当業者が通常用いる方法によって作製される。例えば、目的のきのこの子実体から菌糸または組織の一部を切り取り、例えば、麦芽0.5g、リン酸一カリウム0.03g、リン酸二カリウム0.03g、硫酸マグネシウム0.03g、ペプトン0.5g、ショ糖5g、および寒天3gを水100mlに溶解した寒天培地上で菌糸を増殖させる。あるいは、子実体から胞子を採取し、麦芽5gおよび寒天1.5gを水100mlに溶解した麦芽寒天培地上で発芽させて、菌糸を増殖させる。次いで、増殖して得られた菌糸を、種菌作製培地に接種する。接種後、約18℃〜約25℃で約20〜60日間培養することにより種菌が得られる。
【0024】
次いで、得られた種菌の小塊を、滅菌処理を施した本発明の培地を含む培養基に接種し、培養を行い、培養基全体に菌糸を生育させ、菌回りを完了させる。菌糸生育の条件は、きのこの種類によって、当業者が適宜決定すればよい。菌回りが完了した後、必要に応じて、さらに数日間培養を続け、菌糸を熟成させ、子実体の発生を促進する(菌糸の熟成)。菌糸の熟成を行う場合、熟成期間は、きのこの種類、ならびに温度、湿度などの環境条件によって適宜設定され、一般的には、約5日〜約60日、好ましくは約5日〜約40日である。なお、種菌の接種から菌回り完了または熟成期間終了までを培養期間という。この期間は、通常、出荷時期を考慮して適宜設定され得る。
【0025】
菌回りの完了後または熟成後、すなわち、培養期間の後、芽出し操作を行う。芽出し操作の前に、菌かきを行ってもよい。菌かきは、子実体の形態を整え、そして成長を揃える目的で行われる。菌かきを行わない場合は、菌回りの完了後または熟成後の培養物をそのまま、菌かきを行う場合は、芽出しさせる培養物に菌かきを行った後、以下の芽出し条件で栽培する。菌かきは、当業者が通常用いる方法により行われる。
【0026】
芽出し条件は、種菌接種後の培養条件よりも低温および高湿度であることが好ましい。芽出しは、肉眼で幼子実体の形成が認められるまで行うことができる。
【0027】
幼子実体の形成が認められた後、幼子実体をさらに生育させる。生育条件は、当業者が通常行う条件であり、特に限定されない。生育工程では、光照射を行うことが好ましい。生育を行う日数は、生育条件によって変化し得る。きのこの子実体が所望の大きさに生育したら、子実体の収穫を行う。このようにして、きのこが栽培される。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0029】
(実施例1:ブナシメジの栽培−1)
オガクズ(杉)、米糠、コーンコブ、コットンリンター(岡村製油株式会社製)、豆皮、カカオ豆殻(江崎グリコ製)、および菌糸活性剤を、表1に示す割合で混合し、水分量が全培地の重量の65.0%となるように水を加えて培地を調製した。この培地を、容量800ml、口径52mmのプラスチック瓶に入れて培養基を16本作成した。培養基を121℃、60分間、高圧蒸気滅菌した後、冷却した。この各培養基に、通常の方法で調製したブナシメジ(シロタモギタケ)B19菌系の種菌10gを接種した。これを、温度22℃、湿度50%の条件下、87日間培養した。この間にブナシメジの菌回りが34日で完了し、菌糸が熟成した(表1)。熟成後、整形法により菌かきを行った。菌かき後の培養基を、温度15℃、湿度95%の条件下で栽培し、芽出しおよびその後の幼子実体の生育を行った。菌かき後22日目に子実体を収穫した。結果を表1に示す。
【0030】
(実施例2:ブナシメジの栽培−2)
培養日数を94日間としたこと以外は、実施例1と同様にブナシメジを栽培した。結果を表1に示す。
【0031】
(実施例3:ブナシメジの栽培−3)
表1に記載の割合で培養資材を含む培地を調製し、さらに培養日数を89日間としたこと以外は、実施例1と同様にブナシメジを栽培した。結果を表1に示す。
【0032】
(実施例4:ブナシメジの栽培−4)
表1に記載の割合で培養資材を含む培地を調製し、ブナシメジF19菌系を用いたこと以外は、実施例1と同様にブナシメジを栽培した。結果を表1に示す。
【0033】
(実施例5:ブナシメジの栽培−5)
表1に記載の割合で培養資材を含む培地を調製し、ブナシメジF19菌系を用い、そして培養日数を94日間としたこと以外は、実施例1と同様にブナシメジを栽培した。結果を表1に示す。
【0034】
(比較例1:ブナシメジの栽培)
表1に記載の割合でカカオ豆殻以外の培養資材を含む培地を調製し、ブナシメジF19菌系を用い、さらに培養日数を89日間としたこと以外は、実施例1と同様にブナシメジを栽培した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
カカオ豆殻を含む培地で栽培したブナシメジは、菌回りの日数が、カカオ豆殻を使用しなかった比較例よりも早かった。通常行われている栽培では、菌回りは36日〜38日であるので、実施例ではいずれもやや短い傾向にある。これは、培地の保水性や内部の空隙が、菌が生育しやすい状態になっているためと考えられる。また、90日前後の培養日数で約200gの平均収量が達成でき、形状も良好であり、安定した収穫が可能であった。一般的に行われているブナシメジの栽培では、培養日数は95日〜105日であり、収量は180g〜190gである。このように、カカオ豆殻を含む培地を用いると、ブナシメジが良好に発育し得ることがわかった。
【0037】
(実施例6:エリンギの栽培)
オガクズ(杉)、米糠、コットンリンター(岡村製油株式会社製)、カカオ豆殻(江崎グリコ製)、フスマ、および菌糸活性剤を、表2に記載の割合で混合し、水分量が全培地の重量の65%となるように水を加えて培地を調製した。この培地を、容量800ml、口径52mmのプラスチック瓶に入れて培養基を16本作成した。培養基を121℃、60分間、高圧蒸気滅菌した後、冷却した。この各培養基に、通常の方法で調製したエリンギ G26菌系の種菌10gを接種した。これを、温度22℃、湿度50%の条件下、41日間培養した。この間にエリンギの菌回りが27日で完了し、菌糸が熟成した。熟成後、ひらかき法により菌かきを行った。菌かき後の培養基を、温度15℃、湿度95%の条件下で栽培し、芽出しおよびその後の幼子実体の生育を行った。菌かき後17日目に子実体を収穫した。結果を表2に示す。
【0038】
(比較例2:エリンギの栽培)
表2に記載の割合でカカオ豆殻を含まない培地を調製したこと以外は、実施例6と同様にしてエリンギを栽培した。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
カカオ豆殻を含む培地で栽培したエリンギは、菌回りの日数が、カカオ豆殻を使用しなかった比較例よりも2日遅かった。しかし、その後の芽出しおよび生育工程については、特に問題なく生育した。実施例のエリンギの収量は、比較例よりも約10g以上多かった。また、商品として有効な茎数についても、実施例のエリンギのほうがやや多かった。このように、カカオ豆殻を含む培地を用いると、収穫が2日ほど遅れる可能性があるが、エリンギが良好に発育し得ることがわかった。
【0041】
(実施例7:エノキダケの栽培)
オガクズ(杉)、米糠、およびカカオ豆殻(江崎グリコ製)を、表3に記載の割合で混合し、適量の水を加えて培地を調製した。この培地を、容量800ml、口径52mmのプラスチック瓶に入れて培養基を16本作成した。培養基を121℃、60分間、高圧蒸気滅菌した後、冷却した。この各培養基に、通常の方法で調製したエノキダケ FL1菌系の種菌10gを接種した。温度17℃、湿度50%の条件下、23日間の培養により、菌回りが完了した。その後、ひらかき法により菌かきを行った。菌かき後の培養基を、温度15℃、湿度95%の条件下で栽培し、芽出しおよびその後の幼子実体の生育を行った。菌かき後27日目に子実体を収穫した。結果を表3に示す。
【0042】
(比較例3:エノキダケの栽培)
表3に記載の割合でカカオ豆殻を含まない培地を調製したこと以外は、実施例7と同様にしてエノキダケを栽培した。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
カカオ豆殻を含む培地で栽培したエノキダケは、菌回りの日数は、カカオ豆殻を使用しなかった比較例と同じであったが、生育日数が2日長く、収量もやや低かった。しかし、収量および品質とも、商品として十分なレベルを満たしていた。なお、上記実施例7と比較例3とでは、培地の水分量が大きく異なるため、直接的な比較はできないが、カカオ豆殻が、エノキダケ栽培用の培地として使用可能であることがわかる。
【0045】
(実施例8:ナメコの栽培)
オガクズ(広葉)、フスマ、カカオ豆殻(江崎グリコ製)、およびホミニフィード(コーン粉砕物)を、表4に記載の割合で混合し、適量の水を加えて培地を調製した。この培地を、容量800ml、口径52mmのプラスチック瓶に入れて培養基を16本作成した。培養基を121℃、60分間、高圧蒸気滅菌した後、冷却した。この各培養基に、通常の方法で調製したナメコ N006菌系の種菌10gを接種した。これを、温度18℃、湿度50%の条件下、55日間培養した。この間にナメコの菌回りが20日で完了し、菌糸が熟成した。熟成後、ひらかき法により菌かきを行った。菌かき後の培養基を、温度15℃、湿度95%の条件下で栽培し、芽出しおよびその後の幼子実体の生育を行った。菌かき後16日目に子実体を収穫した。結果を表4に示す。
【0046】
(比較例4:ナメコの栽培)
表4に記載の割合でカカオ豆殻を含まない培地を調製したこと以外は、実施例8と同様にしてナメコを栽培した。結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
カカオ豆殻を含む培地で栽培したナメコは、菌回りの日数および生育日数とも、カカオ豆殻を使用しなかった比較例と同じであったが、収量はやや低かった。実施例8における傘の筋状の形状の発生については、通常の栽培時にも生じることがあり、原因は特定されていない。しかし、商品価値としては問題がない程度であった。このことから、カカオ豆殻が、ナメコ栽培用の培地として使用し得る可能性があることがわかる。
【0049】
(実施例9:ヒラタケの栽培)
オガクズ(杉)、米糠、カカオ豆殻(江崎グリコ製)、豆乳、フスマ、および菌糸活性剤を、表5に記載の割合で混合し、適量の水を加えて培地を調製した。この培地を、容量800ml、口径52mmのプラスチック瓶に入れて培養基を16本作成した。培養基を121℃、60分間、高圧蒸気滅菌した後、冷却した。この各培養基に、通常の方法で調製したヒラタケ ヒG−42菌系の種菌10gを接種した。これを、温度22℃、湿度50%の条件下、33日間培養した。この間にヒラタケの菌回りが15日で完了し、菌糸が熟成した。熟成後、ひらかき法により菌かきを行った。菌かき後の培養基を、温度15℃、湿度95%の条件下で栽培し、芽出しおよびその後の幼子実体の生育を行った。菌かき後9日目に子実体を収穫した。結果を表5に示す。
【0050】
【表5】
【0051】
カカオ豆殻を含む培地で栽培したヒラタケは、菌回りの日数が15日であった。通常行われている栽培では18日前後なので、短くなっていた。収量は、通常の栽培と比較して多くはないが、商品として使用可能な品質を保っていた。このことから、カカオ豆殻が、ヒラタケの栽培用の培地として使用可能であることがわかる。
【0052】
【発明の効果】
カカオ豆殻は、一般的に入手可能である。これは、通常の培地調製工程によって培地を調製でき、培養環境も通常と同様に行うことができる。カカオ豆殻を含む培地で培養すると、特にブナシメジでは、菌回りが早く、安定した収量および安定した品質のきのこを栽培できる。したがって、カカオ豆殻は、きのこ栽培用の新たな栄養剤として利用し得る。
Claims (3)
- カカオ豆殻を含有する、きのこ栽培用培地。
- きのこを、カカオ豆殻を含有するきのこ栽培用培地で栽培する工程を含む、きのこの栽培方法。
- 前記きのこが、ブナシメジ、エノキダケ、ナメコ、エリンギ、およびヒラタケからなる群より選択される、請求項2に記載のきのこの栽培方法。
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JP2009510104A (ja) * | 2005-10-01 | 2009-03-12 | イーエルシー マネージメント エルエルシー | シロタモギタケ(Hypsizygusulmarius)抽出物を含んでなる組成物 |
JPWO2011118687A1 (ja) * | 2010-03-26 | 2013-07-04 | 日清オイリオグループ株式会社 | カカオハスク焼成物 |
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-
2003
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