JP2004329040A - ポリセラーゼ−i及びその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】プロテアーゼによるタンパク質プロセッシングは、多様なプロセスにおいて生物学的及び生理学的現象の様々な段階で重要な働きをしている。相同性(ホモロジー)に基づく分子クローニング法を使用し、多様なプロテアーゼ関与の現象・機構を解明することは、正常や病的なプロセスの解明に有用である。
【解決手段】デグラドームを完全に得ることを目指しセリンプロテアーゼ類に着目し研究を行った結果、一連のプロテアーゼが一列に緊密に配置された遺伝子を同定した。該遺伝子並びにそれでコードされるタンパク質「ポリセラーゼ−I」構造の解明により、遺伝子組換え技術などを利用し該タンパクの測定が可能となり、その生理学的・生物学的活性などを解明する手段が入手でき、該タンパクに起因する生理現象、関連疾患の診断、原因究明、予知などに利用可能である。
【選択図】 なし
【解決手段】デグラドームを完全に得ることを目指しセリンプロテアーゼ類に着目し研究を行った結果、一連のプロテアーゼが一列に緊密に配置された遺伝子を同定した。該遺伝子並びにそれでコードされるタンパク質「ポリセラーゼ−I」構造の解明により、遺伝子組換え技術などを利用し該タンパクの測定が可能となり、その生理学的・生物学的活性などを解明する手段が入手でき、該タンパクに起因する生理現象、関連疾患の診断、原因究明、予知などに利用可能である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規に同定されたポリヌクレオチド(あるいは核酸)及びポリペプチド(あるいはタンパク質)(又はその一部)あるいはその塩;該ポリヌクレオチド(あるいは核酸)及びポリペプチド(あるいはタンパク質)のホモログを含む変異体及び誘導体;該ポリヌクレオチド(あるいは核酸)及びポリペプチド(あるいはタンパク質)、並びにそれらのホモログを含む変異体及び誘導体の製造法;該ポリペプチド(あるいはタンパク質)の阻害剤、アゴニスト及びアンタゴニスト;該ポリペプチド(あるいはタンパク質)に対する抗体、特にはモノクローナル抗体;並びに該ポリヌクレオチド(あるいは核酸)、ポリペプチド(あるいはタンパク質)、ホモログ、変異体、誘導体、阻害剤、アゴニスト及びアンタゴニストの用途に関するものである。
本発明はタンパク質分解活性といった生物学的過程(プロセス)に関するものである。そういった生物学的過程としては、排卵、受精、妊娠、骨形成、創傷治癒、再生プロセス、神経成長、抗原提示などの免疫応答、血管新生、凝固のような生理学的状態に関連しているものが挙げられ、さらに癌細胞の浸潤、転移、関節炎、リウマチあるいは心臓血管におけるプロセス、血液学的なプロセス及び神経退化のプロセスのような生理学的状態に関連したものが挙げられる。特に本発明は複数のセリンプロテアーゼを単一の遺伝子産物として生成せしめる能力を有する遺伝子に関連した技術・知識を提供するものであり、ヒトポリプロテアーゼタンパク質を発見且つ確認することに関し、また本タンパク質をエンコードしている遺伝子にも関し、さらには、それらの可能な阻害剤にも関し、また、その構造分析、及び正常や病的なプロセスにおける関連した事項に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロテアーゼは、構造的及び機能的に異なっている様々なタンパク質のグループを含んでおり、共通した能力、すなわちペプチド結合を加水分解する能力を持っている (非特許文献1: Barrett, A. J. et al., Handbook of proteolytic enzymes, Academic Press, San Diego, 1998)。現在まで、500 を越える互いに異なるヒトのプロテアーゼ及びホモログが分子レベルで同定され特徴づけられている (非特許文献2: Lopez−Otin, C. et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 3: 509−519, 2002) 。酵素のこの大きなグループを含んでの機能についての研究は、そもそもは、タンパク質異化作用に関連した非特異的な反応におけるそれらの役割を解析することを目標にしていた。しかしながら、最近では、タンパク質分解というものが、細胞の生死がそれに依存するといった多くの出来事を制御するための基本メカニズムを表わしているということが広く認識されるに至ってきている。したがって、プロテアーゼは、特定の基質を高度に選択的且つ限定して開裂せしめるといったそれらの能力を介して、多数のタンパク質の細胞内外での適切な局在化、膜結合タンパク質からの外部ドメイン(エクトドメイン, ectodomain)のシェディング、さらにはサイトカイン、成長因子(増殖因子)及びペプチド・ホルモンの活性化並びに不活性化をコントロールしている (非特許文献2) 。
【0003】
これらのタンパク質分解プロセッシングというものは、細胞周期の進行、形態形成及び組織リモデリングを含む不可欠な生物学的プロセス、細胞増殖、転移、血管新生やアポトーシスに影響を及ぼすことが見出されてきている。プロテアーゼを媒介とした機能は、例えば、排卵、受精、妊娠、骨形成、創傷治癒、神経成長及び抗原提示のような生理的なプロセスの中心をなすものである。更に、プロテアーゼの構造、機能及び制御における変化は、例えば、癌、関節炎、心血管の障害及び神経変性病のようなヒトの疾病の根底に横たわるものでもある (非特許文献3: Southan, C., FEBS Lett., 498: 214−218, 2001; 非特許文献4: Lin, C. Y. et al., J. Biol. Chem., 274: 18231−18236, 1999; 非特許文献5: Egeblad, M., et al., Nature Rev. Cancer, 2: 161−174, 2002)。ヒトのタンパク質分解システムがより複雑なものであることが判明してくるにしたがい、プロテアーゼの分野で生じた多数の疑問点をを明らかにしていくためのグローバル化した概念やアプローチを導入することが必要とされている。こうしたことから、本発明者等は、細胞、組織若しくは生物体により、特定の瞬間又は状況の下で発現されるプロテアーゼの完全なセットを明らかにするために、用語、デグラドーム(degradome) を創り出した (非特許文献2) 。そして、デグラドームを完全に得ようとすることに焦点を置いた研究は、このヒトのタンパク質分解システムの複雑さを解明していくことを目的としているものである。
【0004】
【非特許文献1】
Barrett, A. J. et al., Handbook of proteolytic enzymes, Academic Press, San Diego, 1998
【非特許文献2】
Lopez−Otin, C. et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 3: 509−519, 2002
【非特許文献3】
Southan, C., FEBS Lett., 498: 214−218, 2001
【非特許文献4】
Lin, C. Y. et al., J. Biol. Chem., 274: 18231−18236, 1999
【非特許文献5】
Egeblad, M., et al., Nature Rev. Cancer, 2: 161−174, 2002
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ヒトの組織中で存在する、そして重要で且つ多様な生理的及び生物学的働きを持つと思われる、単一の翻訳物から、独立したプロテアーゼ領域を産生するポリプロテアーゼタンパク質を捜し出すことは、ヒトのデグラドームの複雑性を解明する上で大きな意味がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、デグラドームに立脚し、相同性(ホモロジー)を利用してある種の特徴配列、例えばプロテアーゼタンパク質の特徴配列と類似性を示す遺伝子配列のフラグメントをデータベース上で探索し、それに基づいて分子クローニング法を駆使した系統的な研究を広範に進める中で、代表的なプロテアーゼであるセリンプロテアーゼ構造に関連して、ユニークな構造を有する遺伝子を発見することに成功した。そして該新しく予測される遺伝子を、ヒト組織のRNAやcDNAライブラリーを利用し、PCR増幅により、さらには増幅されたフラグメントを使用したハイブリダイゼーション技術、RACEを繰り返し行い、5’端と3’端方向に伸張するなどの手法により、ターゲット遺伝子をクローニングし、ヒトクローンの配列決定(シークエンシング)及び特性決定を行い、モザイクタンパク質をコードする遺伝子を取得することに成功した。
【0007】
本発明は、次のものを提供している。
〔1〕 (i) ポリセラーゼ−Iタンパク質、
(ii) (a) セラーゼ−1タンパク質、(b) セラーゼ−2タンパク質、(c) セラーゼ−3タンパク質、(d) セラーゼ−1及びセラーゼ−2を共に含有しているタンパク質、(e) セラーゼ−1、セラーゼ−2及びセラーゼ−3を共に含有しているタンパク質、及び(f) セラーゼ−2及びセラーゼ−3を共に含有しているタンパク質から成る群から選ばれたタンパク質、
(iii) (A) 配列番号:13又は図1〜2のヌクレオチド配列及び(B) その多形型配列、オールターナティブスプライシング産物、変異体、ホモログ、誘導体配列あるいは部分配列であって且つタンパク分解活性を持つ酵素をコードするかあるいは細胞の変化、ホメオスタシスあるいは血管新生のプロセスに関与するもの、
から成る群から選ばれたヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列の全部あるいはその一部を有するポリペプチド、
(iv) 配列番号:14又は図1〜2のアミノ酸配列、配列番号:15のアミノ酸配列及び配列番号:16のアミノ酸配列から成る群から選ばれた配列からなるポリペプチドあるいはその一部の配列からなるポリペプチド、
(v) (a)配列番号:14のGlu190〜Glu433のポリペプチド、(b) 配列番号:14 のGlu491〜Glu733のポリペプチド、(c) 配列番号:14のAsp816〜Gln1055のポリペプチド、(d) 配列番号:14のGlu190〜Glu433の配列及びGlu491〜Glu733の配列を共に有するポリペプチド、(e) 配列番号:14のGlu190〜Glu433の配列、Glu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するポリペプチド、(f) 配列番号:14のGlu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するポリペプチドから成る群から選ばれたポリペプチドあるいはその一部の配列からなるポリペプチド、
(vi) 前記(i)又は(ii)のタンパク質並びに(iii)〜(v)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列のいずれか一において、1個以上のアミノ酸あるいは1若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ(i)又は(ii)のタンパク質の示す生物学的活性を有するか、あるいは(iii)〜(v)のいずれかのポリペプチドの示す生物学的活性を有するポリペプチド、及び
(vii) 配列番号:14又は図1〜2のアミノ酸配列、配列番号:15のアミノ酸配列及び配列番号:16のアミノ酸配列から成る群から選ばれた配列に存在する各ドメインのいずれか一に対し少なくとも50% 以上、あるいは60% 以上、又は少なくとも70% より高い相同性を有しているもの、あるいはそれに対し、80% あるいは90% 以上の相同アミノ酸配列を有するポリペプチド
から成る群から選ばれたものであることを特徴とするタンパク質若しくはポリペプチド又はその塩、あるいは
(viii) 前記 (i)〜(vii)のいずれか一記載のタンパク質若しくはポリペプチドの部分ペプチド又はその塩。
【0008】
〔2〕 (i) ポリセラーゼ−Iタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(ii) (a) セラーゼ−1タンパク質、(b) セラーゼ−2タンパク質、(c) セラーゼ−3タンパク質、(d) セラーゼ−1及びセラーゼ−2を共に含有しているタンパク質、(e) セラーゼ−1、セラーゼ−2及びセラーゼ−3を共に含有しているタンパク質、及び(f) セラーゼ−2及びセラーゼ−3を共に含有しているタンパク質から成る群から選ばれたタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(iii) 配列番号:14又は図1〜2のアミノ酸配列、配列番号:15のアミノ酸配列及び配列番号:16のアミノ酸配列からなるポリペプチドあるいはその一部の配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(iv) (A) 配列番号:13又は図1〜2のヌクレオチド配列及び (B)その多形型配列、オールターナティブスプライシング産物、変異体、ホモログ、誘導体配列あるいは部分配列であって且つタンパク分解活性を持つ酵素をコードするかあるいは細胞の変化、ホメオスタシスあるいは血管新生のプロセスに関与するもの、
から成る群から選ばれた配列からなるポリヌクレオチド、
(v) (a) 配列番号:14のGlu190〜Glu433のポリペプチド、(b) 配列番号:14 のGlu491〜Glu733のポリペプチド、(c) 配列番号:14のAsp816〜Gln1055のポリペプチド、(d) 配列番号:14のGlu190〜Glu433の配列及びGlu491〜Glu733の配列を共に有するポリペプチド、(e) 配列番号:14のGlu190〜Glu433の配列、Glu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するポリペプチド及び(f) 配列番号:14のGlu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するポリペプチドから成る群から選ばれたポリペプチドあるいはその一部の配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(vi) (i)又は(ii)のタンパク質のアミノ酸配列あるいは(ii)のアミノ酸配列又は(v)のポリペプチドにおけるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸あるいは1若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ(i)又は(ii)のタンパク質の示す生物学的活性を有するか、あるいは(iii)〜(v)のいずれかのポリペプチドの示す生物学的活性又は(iv)で言及した生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(vii) 配列番号:13又は図1〜2からなるDNA から選択された10個又は15個以上の連続した塩基配列を有するヌクレオチド配列と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ(i)又は(ii)のタンパク質の示す生物学的活性を有するか、あるいは(iii)〜(v)のいずれかのポリペプチドの示す生物学的活性又は(iv)で言及した生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び
(viii) 配列番号:13又は図1〜2の配列のCDS に対して少なくとも 50%以上、さらには60% 以上、好ましくは70% 以上、さらに好ましくは80% 以上、あるいは90% 以上の相同性を有し且つ(i)又は(ii)のタンパク質の示す生物学的活性を有するか、あるいは(iii)〜(v)のいずれかの示す生物学的活性又は(iv)で言及した生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
から成る群から選ばれたものであることを特徴とするポリヌクレオチド。
【0009】
〔3〕 上記〔2〕記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とする組換えベクター。
〔4〕 上記〔2〕記載のポリヌクレオチド又は上記〔3〕記載のベクターで宿主細胞を形質転換されて得られたことを特徴とする形質転換された宿主細胞。
〔5〕 上記〔4〕記載の宿主細胞を培養条件下に維持して、上記〔1〕記載のタンパク質又はポリペプチドを発現せしめ、得られた発現ポリペプチドを分離することを特徴とする上記〔1〕記載のタンパク質又はポリペプチドの製造方法。
〔6〕 上記〔1〕記載の(i) 〜(vi)のいずれか一記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩に特異的に結合することを特徴とする抗体。
〔7〕 抗体が、モノクローナル抗体であることを特徴とする上記〔6〕記載の抗体。
【0010】
〔8〕 (i) 上記〔6〕記載の抗体又は(ii)上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩を含むことを特徴とする上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩の免疫学的測定試薬。
〔9〕 上記〔6〕記載の抗体を測定試薬として用いることを特徴とする上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩の免疫学的測定方法。
〔10〕 (1) 上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩、(2) 上記〔6〕記載の抗体、(3) 上記〔2〕記載のポリヌクレオチド、(4) 上記〔3〕記載の組換えベクター及び(5) 上記〔4〕記載の形質転換された細胞から成る群から選ばれたものを含むことを特徴とする組成物。
〔11〕 上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩、その一部のペプチドまたはそれらの塩;あるいは上記〔2〕記載のポリヌクレオチド;あるいは上記〔6〕記載の抗体を含有していることを特徴とする医薬。
〔12〕 上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩、その一部のペプチドまたはそれらの塩の、生物学的活性を促進または阻害する化合物またはその塩を含有していることを特徴とする医薬。
〔13〕 上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩、その一部のペプチドまたはそれらの塩の、生物学的活性を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法及びスクリーニングキット。
【0011】
〔14〕 組換えあるいは合成タンパク質又はポリペプチド生産のための、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。
〔15〕 抗体作製のための、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。
〔16〕 ポリセラーゼ−I活性, セラーゼ−1活性, セラーゼ−2活性, セラーゼ−3、ポリセラーゼ−I膜貫通(TM)及びポリセラーゼ−I 低密度リポプロテイン・レセプター・ドメイン・クラスA (LDLR)活性から成る群から選ばれた活性に対する阻害剤をデザインするための、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。
〔17〕 ポリセラーゼ−Iに関する活性を持っているタンパク質及び/又は該ポリセラーゼ−Iをコードする遺伝子を検出するためのシステムを構築するための、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。
〔18〕 ポリセラーゼ−Iに関して及び/又は該ポリセラーゼ−Iをコードする遺伝子に関してメディエートされる病気発生プロセスを処置するための活性化合物を製造するための、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。
〔19〕 ポリセラーゼ−Iタンパク質又はそれをコードする遺伝子配列を同定する方法であって、
(i) オリゴヌクレオチドプライマーを使用する核酸のPCRによる増幅、又は
(ii) cDNA のライブラリーとハイブリダイズするプローブの使用
を含み、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用を含むことを特徴とする方法。
〔20〕 ポリセラーゼ−Iタンパク質が、ヒト由来、マウス由来又はラット由来のものであることを特徴とする上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチド又はその部分ペプチドあるいはその塩。
〔21〕 ポリセラーゼ−Iタンパク質が、ヒト由来、マウス由来又はラット由来のものであることを特徴とする上記〔2〕記載のポリヌクレオチド。
〔22〕 ポリセラーゼ−Iが、ヒト由来、マウス由来又はラット由来のものであることを特徴とする上記〔14〕〜〔18〕のいずれかに記載の使用。
〔23〕 ポリセラーゼ−Iタンパク質が、ヒト由来、マウス由来又はラット由来のものであることを特徴とする上記〔19〕記載の方法。
〔24〕 上記〔1〕(vii) のドメインが、セラーゼ−1、セラーゼ−2、セラーゼ−3、ポリセラーゼ−I TM 及びポリセラーゼ−I LDLR から成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチド又はその部分ペプチドあるいはその塩。
【0012】
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例などの記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本明細書において「ポリセラーゼI」(又はポリセラーゼI タンパク質あるいはポリセラーゼI ポリペプチド)とは、それぞれ既知のセリンプロテアーゼに類似した複数の酵素活性ドメインを複雑な構成で一つの遺伝子上に保有しているペプチドであって、本発明で開示されている新規なペプチドを指している。本明細書で開示し説明してある特徴的な領域(ドメイン) の全部あるいはその一部をその一体性を損なわない範囲で保有するものは、本発明で意図するポリセラーゼI タンパク質又はそのホモログの範囲内にあると考えてよい。該ポリセラーゼI は、そのN端側より膜貫通(transmembrane, TM)ドメイン、低密度リポプロテイン・レセプター(low density lipoprotein receptor, LDLR)ドメイン、セラーゼ−1、セラーゼ−2、そしてセラーゼ−3が線型に配置された構造を有している。かくして、本発明のタンパク質としては、ポリセラーゼI に関連するもの、例えばセラーゼ−1、セラーゼ−2、そしてセラーゼ−3のそれぞれ、セラーゼ−1・ドメインとセラーゼ−2・ドメインとを共に持つもの、セラーゼ−2・ドメインとセラーゼ−3・ドメインとを共に持つもの、セラーゼ−1・ドメインとセラーゼ−2・ドメインとセラーゼ−3・ドメインとを共に持つものが含められる。該タンパク質としては、配列表の配列番号:14 のGlu190〜Glu433、Glu491〜Glu733又はAsp816〜Gln1055を有するもの、配列番号:14 のGlu190〜Glu433の配列及びGlu491〜Glu733の配列を共に有するもの、配列番号:14 のGlu190〜Glu433の配列、Glu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するもの、配列番号:14 のGlu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するものなども含められる。該タンパク質としては、配列番号:14 のArg202、Arg503又は Arg826 の後に位置するトリプシン様プロテアーゼのコンセンサス活性化部位を有するもの、セリンプロテアーゼにおけるコンセンサス・モチーフ Gly−Asp−Ser−Gly−Gly(例えば、配列番号:14 の385〜389位、685 〜689 位)及びそれに相当する変異部位Gly−Asp−Ala−Gly−Gly(例えば、配列番号:14 の1007〜1011位)から成る群から選ばれたものモチーフの複数を線型にある間隔をおいて配置して含有するもの、配列Ser−Trp−Gly (例えば、配列番号:14 の407〜409位、707〜709位及び1029〜1031位)を複数有するもの、触媒活性に必要なHis 残基及びAsp 残基(例えば、配列番号:14 のHis243とAsp292、His544とAsp592、そしてHis868とAsp915)を複数有するもの、触媒領域の3個のS−S 結合の形成に関与する6個のCys 残基(例えば、配列番号:14 のCys228−Cys244, Cys358−Cys372及びCys383−Cys412 のセット、Cys529−Cys545, Cys658−Cys672及びCys682−Cys712 のセット、そしてCys853−Cys869, Cys980−Cys994及びCys1005−Cys1034 のセット)を有するものなどが挙げられる。
本発明の代表的なポリセラーゼI タンパク質としては、配列表の配列番号:13(図1〜2) のDNA でコードされて産生されるポリペプチド、例えば配列表の配列番号:14(図1〜2) のアミノ酸配列またはそれと実質的に同等なアミノ酸配列を有するポリペプチド(ホモログ)(例えば配列表の配列番号:15 又は16のアミノ酸配列を有するポリペプチドなど) が挙げられ、例えば、配列番号:14 のアミノ酸配列のうちの少なくとも 5〜1059個の連続したアミノ酸残基を有し且つ酵素活性あるいは同等の抗原性などといった実質的に同等の生物学的活性を有するもの、あるいはそれらの特徴を有し且つ配列表の配列番号:14 の各ドメイン(TMドメイン、LDLRドメイン、セラーゼ−1ドメイン、セラーゼ−2ドメイン、セラーゼ−3ドメイン)のいずれか一つと少なくとも50% より高い相同性、あるいは少なくとも60% より高い相同性、あるいは少なくとも70% より高い相同性、あるいは少なくとも80% より高い相同性、あるいは少なくとも90% より高い相同性、あるいは少なくとも95% 以上の相同性、あるいは少なくとも98% 以上の相同性を有するものなどで、新規なものが挙げられる。
【0014】
本発明のポリセラーゼI ポリペプチドとしては、配列番号:14(図1〜2)、配列番号:15又は配列番号:16のアミノ酸配列の全部又は一部を含む連続したアミノ酸残基、あるいは該配列番号:14(図1〜2)、配列番号:15又は配列番号:16のアミノ酸配列のアミノ酸配列のうちの連続したアミノ酸残基5個以上、好ましくは10個以上、また好ましくは20個以上、さらに好ましくは30個以上、より好ましくは40個以上、また好ましくは50個以上、さらに好ましくは60個以上、もっと好ましくは70個以上、また好ましくは80個以上、さらに好ましくは90個以上、もっとも好ましくは100 個以上、また好ましくは110 個以上を有するものが挙げられる。本発明のポリセラーゼI 関連ポリペプチドとしては、配列番号:14(図1〜2) 及び図3から成る群から選ばれたアミノ酸配列の一部または全部を有していてもよい(開始コドンに対応するMetを欠いていてもよい) 。こうした配列を有するものはすべて包含されてよい。
【0015】
本発明の当該ポリセラーゼI タンパク質、セラーゼ−1タンパク質、セラーゼ−2タンパク質、ポリセラーゼI TMタンパク質、ポリセラーゼI LDLRタンパク質、又はポリペプチドをコードする核酸は、代表的には配列表の配列番号:14(又は図1〜2) 又は図3で表されるペプチド及びその一部の連続したアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するもの、例えば、配列表の配列番号:13 又は図1〜2で表される塩基配列の少なくともペプチドコード領域により構成される塩基配列を含有するもの(各特徴的なドメインのみをコードするものも包含する)、コード配列に開始コドン (Met をコードするコドン) 及び終止コドンを付加したもの、また、該塩基配列がコードするタンパク質と少なくとも50%の相同性を有するアミノ酸配列を持ち且つ配列番号:14 、又は図1〜2あるいは図3のアミノ酸配列のうちの少なくとも特徴的な連続したアミノ酸残基を有し、尚且つ酵素活性あるいは同等の抗原性などのそれと実質的に同等の生物学的活性を有するペプチドをコードするといったそれと同効の塩基配列を含有するものであれば如何なるものであってもよい。当該タンパク質をコードする核酸は、一本鎖DNA 、二本鎖DNA 、RNA 、DNA:RNA ハイブリッド、合成DNA などの核酸であり、またヒトゲノムDNA 、ヒトゲノミックDNA ライブラリー、ヒト組織・細胞由来のcDNA、合成DNA のいずれであってもよい。当該タンパク質をコードする核酸の塩基配列は、修飾(例えば、付加、除去、置換など)されることもでき、そうした修飾されたものも包含されてよい。さらには、以下説明するように、本発明の核酸は、本発明のペプチドあるいはその一部をコードするものであってよく、好ましいものとしてはDNA が挙げられる。また上記「同効の塩基配列」とは、例えばストリンジェントな条件で配列表の配列番号:13 、あるいは図1〜2の塩基配列又は図3に示されたアミノ酸配列をコードする塩基配列のうちの5個以上の連続した塩基を持つ配列、好ましくは10個以上の塩基を持つ配列、より好ましくは15個以上の塩基を持つ配列、さらに好ましくは20個以上の塩基を持つ配列とハイブリダイズし、当該タンパク質と実質的に同等のアミノ酸配列をコードするものなどが挙げられる。
【0016】
本発明では、「遺伝子組換え技術」を利用して所定の核酸を単離・配列決定したり、組換え体を作製したり、所定のペプチドを得ることができる。本明細書中使用できる遺伝子組換え技術としては、当該分野で知られたものが挙げられ、例えば J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis, ”Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition (1989), 3rd Edition (2001)”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York; D. M. Glover et al. ed., ”DNA Cloning”, 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995); 日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法II」、東京化学同人 (1986);日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸 III(組換えDNA 技術)」、東京化学同人 (1992); R. Wu ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 68 (Recombinant DNA), Academic Press, New York (1980); R. Wu et al. ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 100 (Recombinant DNA, Part B) & 101 (Recombinant DNA, Part C), Academic Press, New York (1983); R. Wu et al. ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 153 (Recombinant DNA, Part D), 154 (Recombinant DNA, Part E) & 155 (Recombinant DNA, Part F), Academic Press, New York (1987); J. H. Miller ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 204, Academic Press, New York (1991); R. Wu et al. ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 218, Academic Press, New York (1993)などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法あるいはそれらと実質的に同様な方法や改変法が挙げられる(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる) 。
【0017】
本明細書中、「相同性」とは、ポリペプチド配列(あるいはアミノ酸配列)又はポリヌクレオチド配列(あるいは塩基配列)における2本の鎖の間で該鎖を構成している各アミノ酸残基同志又は各塩基同志の互いの適合関係において同一であると決定できるようなものの量(数)を意味し、二つのポリペプチド配列又は二つのポリヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味するものである。相同性は容易に算出することができる。二つのポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列間の相同性を測定する方法は数多く知られており、「相同性」(「同一性」とも言われる)なる用語は、当業者には周知である (例えば、Lesk, A. M. (Ed.), Computational Molecular Biology, Oxford University Press, New York, (1988); Smith, D. W. (Ed.), Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Academic Press, New York, (1993); Grifin, A. M. & Grifin, H. G. (Ed.), Computer Analysis of Sequence Data: Part I, Human Press, New Jersey, (1994); von Heinje, G., Sequence Analysis in Molecular Biology, Academic Press, New York, (1987); Gribskov, M. & Devereux, J. (Ed.), Sequence Analysis Primer, M−Stockton Press, New York, (1991) など) 。二つの配列の相同性を測定するのに用いる一般的な方法には、Martin, J. Bishop (Ed.), Guide to Huge Computers, Academic Press, San Diego, (1994); Carillo, H. & Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988) などに開示されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。相同性を測定するための好ましい方法としては、試験する二つの配列間の最も大きな適合関係部分を得るように設計したものが挙げられる。このような方法は、コンピュータープログラムとして組み立てられているものが挙げられる。二つの配列間の相同性を測定するための好ましいコンピュータープログラム法としては、GCG プログラムパッケージ (Devereux, J. et al., Nucleic Acids Res., 12: 387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA (Atschul, S. F. et al., J. Mol. Biol., 215: 403 (1990)) などが挙げられるが、これらに限定されるものでなく、当該分野で公知の方法を使用することができる。
【0018】
本明細書で用いる用語「ポリペプチド」としては、以下に記載するような如何なるポリペプチドを指すものであってもよい。ポリペプチドの基本的な構造は周知であり、当該技術分野において非常に数多くの参考書及びその他の刊行物に記載がある。こうしたことに鑑み、本明細書で用いる用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合又は修飾したペプチド結合により互いに結合しているような2個又はそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又は任意のタンパク質を意味する。本明細書で用いる用語「ポリペプチド」としては、当該分野において、例えばペプチド、オリゴペプチドあるいはペプチドオリゴマーとも称せられる短い鎖のもの、及びタンパク質と一般的に言われ、多くの形態のものが知られている長い鎖のものの両方を通常意味してよい。ポリペプチドは、しばしば、通常、天然型アミノ酸(天然に存在しているアミノ酸: あるいは遺伝子でコードされるアミノ酸)と称されるアミノ酸以外のアミノ酸を含有していてもよい。ポリペプチドは、また末端アミノ酸残基を含めて、その多くのアミノ酸残基が翻訳された後にプロセッシング及びその他の改変(あるいは修飾)されるといった天然の工程によるのみならず、当業者に周知の化学的改変技術によっても、上記のポリペプチドはそれが改変(修飾)できることは理解されよう。該ポリペプチドに加えられる改変(修飾)については、多くの形態のものが知られており、それらは当該分野の基礎的な参考書及びさらに詳細な論文並びに多数の研究文献にも詳しく記載されており、これらは当業者に周知である。幾つかのとりわけ常套的な改変・修飾としては、例えば酸化、還元、メチル化などのアルキル化、ホルミル化やアセチル化などのアシル化、エステル化、アミド化、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、リン酸化、グルタミン酸残基のγ−カルボキシル化、水酸化及びADP−リボシル化などが挙げられ、例えばT. E. Creighton, Proteins−Structure and Molecular Properties, Second Edition, W. H. Freeman and Company, New York, (1993); B.C.Johnson (Ed.), Posttranslational Covalent Modification of Proteins, Academic Press, New York, (1983) (Wold, F., ”Posttranslational Protein Modifications: Perspective and Prospects”, pp.1−12); Seifter et al., ”Analysis for Protein Modifications and nonprotein cofactors”, Methods in Enzymology, 182: 626−646 (1990); Rattan et al., ”Protein Synthesis: Posttranslational Modification and Aging”, Ann. N. Y. Acad. Sci., 663: p.48−62 (1992)などの記載を参照できる。
【0019】
本明細書中、「ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(polymerase chain reaction)」又は「PCR」とは、一般的に、H. A. Erlich ed., PCR Technology, Stockton Press, 1989などに記載されたような方法を指し、例えば、所望のヌクレオチド配列をインビトロで酵素的に増幅するための方法を指している。一般に、PCR 法は、鋳型核酸と優先的にハイブリダイズすることのできる2個のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、プライマー伸長合成を行うようなサイクルを繰り返し行うことを含むものである。典型的には、PCR 法で用いられるプライマーは、鋳型内に存在するヌクレオチド配列に対して相補的なプライマーを使用することができ、例えば、ターゲットのヌクレオチド配列とその両端において相補的であるか、あるいは該増幅されるべきターゲットヌクレオチド配列に隣接しているものを好ましく使用することができる。5’端側のプライマーとしては、少なくとも開始コドンを含有するか、あるいは該開始コドンを含めて増幅できるように選択し、また3’端側のプライマーとしては、少なくともストップコドンを含有するか、あるいは該ストップコドンを含めて増幅できるように選択することが好ましいが、それには限定されない。プライマーは、好ましくは 5個又は10個以上の塩基、さらに10個又は15個以上の塩基からなるオリゴヌクレオチド、15〜35個の塩基、より好ましくは18〜25個の塩基からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。本PCR 法には、逆転写PCR (polymerase chain reaction coupled reverse transcription; RT−PCR)、RACE (cDNA末端の迅速増幅; rapid amplification of cDNA ends) 、逆PCR (reverse PCR) などの技術も含まれる。
【0020】
PCR 反応は、当該分野で公知の方法あるいはそれと実質的に同様な方法や改変法により行うことができるが、例えば上記文献(Erlich ed.)に加え、R. Saiki, et al., Science, 230: 1350, 1985; R. Saiki, et al., Science, 239: 487, 1988 ; D. M. Glover et al. ed., ”DNA Cloning”, 2nd ed., Vol. 1, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995) ; M. A. Innis et al. ed., ”PCR Protocols: a guide to methods and applications”, Academic Press, New York (1990)); M. J. McPherson, P. Quirke and G. R. Taylor (Ed.), PCR: a practical approach, IRL Press, Oxford (1991); M. A. Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998−9002 (1988); 米国特許第 4,683,195号明細書などに記載された方法あるいはそれを修飾したり、改変した方法に従って行うことができる。また、PCR 法は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。RACEは、例えば、M. A. Innis et al. ed., ”PCR Protocols” (M. A. Frohman, ”a guide to methods and applications”), pp.28−38, Academic Press, New York (1990) などに記載された方法に従って行うことができる。
【0021】
PCR 反応は、代表的な場合には、例えば鋳型(例えば、染色体DNAあるいはmRNAを鋳型にして合成されたDNA; 1st strand DNA)と該遺伝子などのターゲットに基づいてデザインされたプライマーとを、10×反応緩衝液 (Taq DNA ポリメラーゼに添付されている) 、dNTPs ( デオキシヌクレオシド三リン酸dATP, dGTP, dCTP, dTTPの混合物)、Taq DNA ポリメラーゼ及び脱イオン蒸留水と混合する。混合物を、例えば、GeneAmp 2400 PCR system, Perkin−Elmer/Cetus社などの自動サーマルサイクラーを用いて一般的なPCR サイクル条件下にそのサイクルを25〜60回繰り返すが、増幅のためのサイクル数は適宜目的に応じて適当な回数とすることができる。PCR サイクル条件としては、例えば、変性90〜95℃ 5〜100 秒、アニーリング40〜60℃ 5〜150 秒、伸長65〜75℃ 30 〜300 秒のサイクル、好ましくは変性 94 ℃ 15 秒、アニーリング 58 ℃ 15 秒、伸長 72 ℃ 45 秒のサイクルが挙げられるが、アニーリングの反応温度及び時間は適宜実験によって適当な値を選択できるし、変性反応及び伸長反応の時間も、予想されるPCR 産物の鎖長に応じて適当な値を選択できる。アニーリングの反応温度は、通常プライマーと鋳型DNA とのハイブリッドのTm値に応じて変えることが好ましい。伸長反応の時間は、通常1000bpの鎖長当たり1 分程度がおおよその目安であるが、より短い時間を選択することも場合により可能である。
【0022】
本明細書中、「オリゴヌクレオチド」とは、比較的短い一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドで、好ましくはポリデオキシヌクレオチドが挙げられ、J. W. Engels, et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., Vol.28, p.716−734 (1989) に記載されているような既知の方法、例えば、フォスフォトリエステル法、フォスフォジエステル法、フォスファイト法、フォスフォアミダイト法、フォスフォネート法などの方法により化学合成されることができる。通常合成は、修飾された固体支持体上で合成を便利に行うことができることが知られており、例えば、自動化された合成装置を用いて行うことができ、該装置は市販されている。該オリゴヌクレオチドは、一つ又はそれ以上の修飾された塩基を含有していてよく、例えば、イノシンなどの天然においては普通でない塩基あるいはトリチル化された塩基などを含有していてよいし、場合によっては、マーカーの付された塩基を含有していてよい。
【0023】
所定の核酸を同定したりするには、ハイブリダイゼーション技術を利用することができる。該ハイブリダイゼーションは、上記「遺伝子組換え技術」を開示する文献記載の方法あるいはそれと実質的に同様な方法や改変法により行うことができる。例えば、ハイブリダイゼーションは、DNA などの核酸を含有しているサンプルをナイロンフィルターなどの膜を含めた担体に転写せしめ、必要に応じ変成処理、固定化処理、洗浄処理などを施した後、その担体(例えば、膜など)に転写せしめられたものを、必要に応じ変成させた標識プローブDNA 断片と、ハイブリダイゼーション用緩衝液中で反応させて行われる。
【0024】
ハイブリダイゼーション処理は、普通約35〜約80℃、より好適には約50〜約65℃で、約15分間〜約36時間、より好適には約1〜約24時間行われるが、適宜最適な条件を選択して行うことができる。例えば、ハイブリダイゼーション処理は、約55℃で約18時間行われる。ハイブリダイゼーション用緩衝液としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、例えば、Rapid hybridization buffer(Amersham社)などを用いることができる。転写した担体(例えば、膜など)の変成処理としては、アルカリ変性液を使用する方法が挙げられ、その処理後中和液や緩衝液で処理するのが好ましい。また担体(例えば、膜など)の固定化処理としては、普通約40〜約 100℃、より好適には約70〜約90℃で、約15分間〜約24時間、より好適には約1〜約4時間ベーキングすることにより行われるが、適宜好ましい条件を選択して行うことができる。例えば、フィルターなどの担体を約80℃で約2 時間ベーキングすることにより固定化が行われる。転写した担体(例えば、膜など)の洗浄処理としては、当該分野で普通に使用される洗浄液、例えば1M NaCl 、1mM EDTA及び 0.1% sodium dodecyl sulfate (SDS) 含有 50mM Tris−HC1緩衝液,pH8.0 などで洗うことにより行うことができる。ナイロンフィルターなどの膜を含めた担体としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができる。
【0025】
上記アルカリ変性液、中和液、緩衝液としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、アルカリ変性液としては、例えば、0.5M NaOH 及び1.5M NaCl を含有する液などを挙げることができ、中和液としては、例えば、1.5M NaCl 含有 0.5M Tris−HCl 緩衝液,pH8.0 などを挙げることができ、緩衝液としては、例えば、 2×SSPE(0.36M NaCl、20mM NaH2PO4及び2mM EDTA)などを挙げることができる。またハイブリダイゼーション処理に先立ち、非特異的なハイブリダイゼーション反応を防ぐために、必要に応じて転写した担体(例えば、膜など)はプレハイブリダイゼーション処理することが好ましい。このプレハイブリダイゼーション処理は、例えば、プレハイブリダイゼーション溶液[50% formamide、 5×Denhardt’s溶液(0.2 %ウシ血清アルブミン、0.2 % polyvinyl pyrrolidone)、 5×SSPE、0.1 % SDS、100 μg/ml 熱変性サケ精子DNA ]などに浸し、約35〜約50℃、好ましくは約42℃で、約 4〜約24時間、好ましくは約 6〜約8 時間反応させることにより行うことができるが、こうした条件は当業者であれば適宜実験を繰り返し、より好ましい条件を決めることができる。ハイブリダイゼーションに用いる標識プローブDNA 断片の変性は、例えば、約70〜約100 ℃、好ましくは約100 ℃で、約1〜約60分間、好ましくは約 5分間加熱するなどして行うことができる。なお、ハイブリダイゼーションは、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で行うことができるが、本明細書でストリンジェントな条件とは、例えばナトリウム濃度に関し、約15〜約50mM、好ましくは約19〜約40mM、より好ましくは約19〜約20mMで、温度については約35〜約85℃、好ましくは約50〜約70℃、より好ましくは約60〜約65℃の条件を示す。
【0026】
ハイブリダイゼーション完了後、フィルターなどの担体を十分に洗浄処理し、特異的なハイブリダイゼーション反応をした標識プローブDNA 断片以外の標識プローブを取り除くなどしてから検出処理をすることができる。フィルターなどの担体の洗浄処理は、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いて行うことができ、例えば、0.1 % SDS含有 0.5×SSC ( O.15M NaCl、15mM クエン酸)溶液などで洗うことにより実施できる。
ハイブリダイズした核酸は、代表的にはオートラジオグラフィーにより検出することができるが、当該分野で用いられる方法の中から適宜選択して検出に用いることもできる。検出したシグナルに相当する核酸バンドを、適切な緩衝液、例えば、SM溶液(100mM NaCl 及び10mM MgSO4含有50mM Tris−HCl 緩衝液、pH7.5 )などに懸濁し、ついでこの懸濁液を適度に希釈して、所定の核酸を単離・精製、そしてさらなる増幅処理にかけることができる。
【0027】
ハイブリダイゼーション処理により遺伝子ライブラリーやcDNAライブラリーなどを含めた核酸サンプルから目的核酸をスクリーニングする処理は、繰り返して行うことができる。クローニングされているヒト由来のcDNAライブラリー、例えば種々のヒト由来の組織あるいは培養細胞(特には、ヒトの腎臓、脳、松果体、下垂体後葉、神経細胞、網膜、網膜血管細胞、網膜神経細胞、胸腺、血管、内皮細胞、血管平滑筋細胞、血液細胞、マクロファージ、リンパ球、精巣、卵巣、子宮、腸、心臓、肝臓、膵臓、小腸、大腸、歯肉関連細胞、皮膚関連細胞、糸球体細胞、尿細管細胞、結合組織細胞などの組織・細胞、さらには各種腫瘍組織、ガン細胞など)cDNAライブラリーを使用できる。さらに鋳型などとして用いるcDNAライブラリーは、市販の種々の組織由来cDNAライブラリーを直接使用することもでき、例えばStratagene社, Invitrogen社, Clontech社などから市販されたcDNAライブラリーを用いることができる。典型的な例では、ヒト組織・細胞から調製した遺伝子ライブラリー、例えばヒトP1 artificial chromosome ゲノミックライブラリー(Human Genome Mapping Resource Center)、ヒト組織cDNAライブラリー (例えば、Clontech社などから入手可能) を用いることができる。種々のヒト組織あるいは培養細胞などから構築されたヒトゲノミック DNAライブラリーあるいはヒト由来cDNAライブラリーをプローブを使用してスクリーニングできる。プローブなどを放射性同位体などによって標識するには、市販の標識キット、例えばランダムプライム DNAラベリングキット (Boehringer Mannheim社) などを使用して行うことができる。例えば、random−primingキット (Pharmacia LKB社, Uppsala)などを使用して、プローブ用DNA を [α−32P]dCTP (Amersham社)などで標識し、放射活性を持つプローブを得ることができる。
【0028】
所定の核酸を保有する、ファージ粒子、組換えプラスミド、組換えベクターなどは、当該分野で普通に使用される方法でそれを精製分離することができ、例えば、グリセロールグラジエント超遠心分離法(Molecular Cloning, a laboratory manual, ed. T. Maniatis, Cold Spring Harbor Laboratory, 2nd ed. 78, 1989)、電気泳動法などにより精製することができる。ファージ粒子などからは、当該分野で普通に使用される方法でDNA を精製分離することができ、例えば、得られたファージなどをTM溶液(10mM MgSO4含有50mM Tris−HCl 緩衝液、pH7.8 )などに懸濁し、DNase I 及びRNase A などで処理後、20mM EDTA 、50μg/ml Proteinase K 及び0.5 %SDS 混合液などを加え、約65℃、約1 時間保温した後、これをフェノール抽出ジエチルエーテル抽出後、エタノール沈殿によりDNA を沈殿させ、次に得られたDNA を70%エタノールで洗浄後乾燥し、TE溶液(10mM EDTA 含有10mM Tris−HC1 緩衝液、pH8.0 )に溶解するなどして得られる。また、目的としているDNA は、サブクローニングなどにより大量に得ることも可能であり、例えばサブクローニングは、宿主として大腸菌を用いプラスミドベクターなどを用いて行うことができる。こうしたサブクローニングにより得られたDNA も、上記と同様にして遠心分離、フェノール抽出、エタノール沈殿などの方法により精製分離できる。
【0029】
本明細書において、核酸(又はポリヌクレオチド) は、一本鎖DNA 、二本鎖DNA 、RNA 、DNA:RNA ハイブリッド、合成DNA などの核酸であり、またヒトゲノムDNA 、ヒトゲノミックDNA ライブラリー、ヒト組織・細胞由来のcDNA、合成DNA 、mRNAのいずれであってもよい。核酸の塩基配列は、修飾(例えば、付加、除去、置換など)されることもでき、そうした修飾されたもの、さらにはそのホモログも包含されてよい。核酸は、本発明で記載するペプチド又はペプチド群あるいはその一部をコードするものであってよく、好ましいものとしてはDNA が挙げられる。また核酸は、対象ポリペプチド(タンパク質)、例えばセラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I, ポリセラーゼ−I内の膜貫通(TM)ドメイン及び低密度リポプロテイン・レセプター・クラスA (LDLレセプター・クラスA; LDLR)ドメインのそれぞれ、あるいはそれらの部分配列と同等の抗原性などのそれと実質的に同等の生物学的活性を有するペプチド(それと実質的に同一のアミノ酸配列を含有するものを含むし、それと高い相同性を有するものも含まれてよい)をコードするといったそれと同効の塩基配列を含有するもの(ホモログを含む)であれば如何なるものであってもよい。ヒト、チンパンジー、サル、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギなどの哺乳動物由来のものも包含されてもよい。本明細書で「高い相同性」といった場合当該対象配列の長さにもよるが、例えば 50%以上、さらには60% 以上、好ましくは70% 以上、さらに好ましくは80% 以上、そして特定の場合には95% 以上で、特に好ましくは97% 以上の相同性を示すものを指すものであってよい。該「同効の塩基配列」とは、例えばストリンジェントな条件で問題の配列を有するものにハイブリダイズするものであってよく、例えば当該塩基配列のうちの連続した5又は10個以上の塩基配列、好ましくは10又は15個以上の塩基配列、より好ましくは15個以上の塩基配列、さらに好ましくは20個以上の塩基配列とハイブリダイズし、当該ポリペプチドと実質的に同等のアミノ酸配列をコードするものなどが挙げられる。核酸は、化学合成によって得ることも可能である。その場合断片を化学合成し、それらを酵素により結合することによってもよい。
【0030】
本明細書において、得られたPCR産物などの核酸(DNAを含む)は、通常 1〜2% アガロースゲル電気泳動にかけて、特異なバンドとしてゲルから切り出し、例えば、gene clean kit (Bio 101)などの市販の抽出キットを用いて抽出する。抽出されたDNA は適当な制限酵素で切断し、必要に応じ精製処理したり、さらには必要に応じ5’末端をT4ポリヌクレオチドキナーゼなどによりリン酸化した後、pUC18 などのpUC 系ベクターといった適当なプラスミドベクターにライゲーションし、適当なコンピテント細胞を形質転換する。クローニングされたPCR 産物はその塩基配列を解析される。PCR 産物のクローニングには、例えば、p−Direct (Clontech社), pCR−ScriptTM SK(+) (Stratagene社), pGEM−T (Promega社), pAmpTM (Gibco−BRL社) などの市販のプラスミドベクターを用いることが出来る。宿主細胞の形質転換をするには、例えばファージベクターを使用したり、カルシウム法、ルビジウム/カルシウム法、カルシウム/マンガン法、TFB 高効率法、FSB 凍結コンピテント細胞法、迅速コロニー法、エレクトロポレーションなど当該分野で知られた方法あるいはそれと実質的に同様な方法で行うことができる(D. Hanahan, J. Mol. Biol., 166: 557, 1983 など)。目的とするDNA を単離するためには、逆転写PCR 、RACEを適用することが出来る。
【0031】
DNA は、必要に応じてクローニングでき、例えば、プラスミド、λファージ、コスミド、P1ファージ、F因子、YAC などが利用できる。好ましくはλファージ由来のベクターが挙げられ、例えばCharon 4A 、Charon 21A、λgt10、λgt11、λDASHII、λFIXII 、λEMBL3 、λZAPII TM (Stratagene社) などが利用できる。また、得られたDNA を、下記で詳しく説明するような適当なベクター、例えば、プラスミドpEX 、pMAMneo 、pKG5などのベクターに組込み、下記で詳しく説明するような適当な宿主細胞、例えば、大腸菌、酵母、CHO 細胞、COS 細胞などで発現させることができる。また、該DNA 断片は、そのままあるいは適当な制御配列を付加したDNA 断片として、または適当なベクターに組込み、そして動物に導入して、所定の遺伝子を発現するトランスジェニック動物を作成することができる。動物としては、哺乳動物が挙げられ、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ウシなどが挙げられる。好ましくは、マウスなどの動物の受精卵に該DNA 断片を導入して、トランスジェニック動物を作成することができる。所定の遺伝子産物の確認を、当該外来遺伝子をトランスフェクションした、293T細胞、COS−1 細胞などのそれに適した動物細胞などを用いて行うことができる。
外来遺伝子を哺乳動物などの動物細胞に導入する方法としては当該分野で知られた方法あるいはそれと実質的に同様な方法で行うことができ、例えばリン酸カルシウム法(例えば、F. L. Graham et al., Virology, 52: 456, 1973など)、DEAE−デキストラン法(例えば、D. Warden et al., J. Gen. Virol., 3: 371, 1968など)、カチオン性脂質複合体形成法などのリボソーム法、エレクトロポレーション法(例えば、E. Neumann et al., EMBO J, 1: 841, 1982 など)、マイクロインジェクション法、biolistic 粒子導入法、ウイルス感染法、ファージ粒子法などが挙げられる。核酸導入法は、トランスフェクションにより効率的に行い得るような技術的改良が図られており、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、例えばInvitrogen社、QIAGEN社などのキット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。こうして所定の遺伝子をトランスフェクションされた動物細胞の産生する遺伝子産物は、それを解析することもできる。
【0032】
所定の遺伝子など(本発明で得られたDNAなど)を組込むプラスミドとしては遺伝子工学的に常用される宿主細胞(例えば、大腸菌、枯草菌などの原核細胞宿主、酵母、293T細胞、CHO細胞、COS細胞などの真核細胞宿主、Sf21などの昆虫細胞宿主)中で該DNAが発現できるプラスミドであればどのようなプラスミドでもよい。もちろん、市販のキットや試薬に添付のものから選んで使用することもできる。こうした配列内には、例えば選択した宿主細胞で発現するのに好適に修飾されたコドンが含まれていることができるし、制限酵素部位が設けられていることもできるし、目的とする遺伝子の発現を容易にするための制御配列、促進配列など、目的とする遺伝子を結合するのに役立つリンカー、アダプターなど、さらには抗生物質耐性などを制御したり、代謝を制御したりし、選別などに有用な配列(ハイブリドタンパク質や融合タンパク質をコードするものも含む)などを含んでいることができる。好ましくは、適当なプロモーター、例えば大腸菌を宿主とするプラスミドでは、トリプトファンプロモーター(trp) 、ラクトースプロモーター(lac) 、トリプトファン・ラクトースプロモーター(tac) 、リポプロテインプロモーター(lpp) 、λファージ PL プロモーターなどを、動物細胞を宿主とするプラスミドでは、SV40レートプロモーター、MMTV LTRプロモーター、RSV LTR プロモーター、CMV プロモーター、SRαプロモーターなどを、酵母を宿主とするプラスミドでは、GAL1、GAL10 プロモーターなどを使用し得る。さらにCYC1, HIS3, ADH1, PGK, PHO5, GAPDH, ADC1, TRP1, URA3, LEU2, EN0, TP1, AOX1などの制御系を使用することもできる。
【0033】
所望ポリペプチドをコードするDNA のトランスクリプションを促進するためエンハンサーをベクターに挿入することができ、そうしたエンハンサーとしてはプロモーターに働いてトランスクリプションを促進する作用を持つ、通常約10〜100 bpの cis作用を持つエレメントのものが挙げられる。多くのエンハンサーが、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、インシュリンなどの哺乳動物遺伝子から知られている。代表的には、真核細胞感染性ウイルスから得られるエンハンサーが好適に使用でき、例えばレプリケーションオリジンのレート領域にあるSV40エンハンサー (100−270 bp), サイトメガロウイルスの初期プロモーターのエンハンサー, ポリオーマのレプリケーションオリジンのレート領域にあるエンハンサー, アデノウイルスのエンハンサーなどの例が挙げられる。また、必要に応じて、宿主にあったシグナル配列を付加することもでき、それらは当業者によく知られているものを使用できる。
大腸菌を宿主とするプラスミドとしては、例えばpBR322、pUC18, pUC19, pUC118, pUC119, pSP64, pSP65, pTZ−18R/−18U, pTZ−19R/−19U, pGEM−3, pGEM−4, pGEM−3Z, pGEM−4Z, pGEM−5Zf(−), pBluescript KSTM (Stratagene社) などが挙げられる。大腸菌での発現に適したプラスミドベクターとしては、例えばpAS, pKK223 (Pharmacia社), pMC1403, pMC931, pKC30, pRSET−B (Invitrogen社) なども挙げられる。動物細胞を宿主とするプラスミドとしては、例えばSV40ベクター、ポリオーマ・ウイルスベクター、ワクシニア・ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられ、具体的にはpcD, pcD−SRα, CDM8, pCEV4, pME18S, pBC12BI, pSG5 (Stratagene社) などが挙げられる。酵母を宿主とするプラスミドとしては、YIp型ベクター、YEp型ベクター、YRp型ベクター、YCp型ベクターなどが挙げられ、例えばpGPD−2などが挙げられる。
【0034】
宿主細胞としては、宿主細胞が大腸菌の場合、例えば大腸菌K12 株に由来するものが挙げられ、例えばNM533, XL1−Blue, C600, DH1, DH5, DH11S, DH12S, DH5α, DH10B, HB101, MC1061, JM109, STBL2, B834株由来としては、BL21(DE3)pLysSなどが挙げられる。宿主細胞が酵母の場合、例えば Saccharomyces cerevisiae, Schizosaccharomyces prombe, Pichia pastoris, Kluyveromyces 株, Candida, Trichoderma reesia, その他の酵母株などが挙げられる。
宿主細胞が動物細胞の場合、例えばアフリカミドリザル線維芽細胞由来のCOS−7 細胞、COS−1 細胞、CV−1細胞、ヒト腎細胞由来 293細胞、ヒト表皮細胞由来A431細胞、ヒト結腸由来 205細胞、マウス線維芽細胞由来のCOP 細胞、MOP 細胞、WOP 細胞、チャイニーズ・ハムスター細胞由来のCHO 細胞、CHO DHFR− 細胞、ヒトHeLa細胞、マウス細胞由来C127細胞、マウス細胞由来NIH 3T3 細胞、マウスL 細胞、9BHK、HL−60 、U937、HaK 、Jurkat細胞、その他の形質転換されて得られたセルライン、通常の二倍体細胞、インビトロの一次培養組織から誘導された細胞株などが挙げられる。昆虫細胞としては、カイコ核多角体病ウイルス (Bombyx mori nuclear polyhedrosis virus) 、それに由来するものあるいはその他の適切なものをベクターとし、Spodoptera frugiperda (caterpillar), Aedes aegypti (mosquito), Aedes albopictus (mosquito), Drosophila melangaster (fruitfly), カイコ幼虫あるいはカイコ培養細胞、例えばBM−N細胞などを用いることが挙げられる (例えば、Luckow et al., Bio/Technology, 6, 47−55 (1988); Setlow, J. K. et al. (eds.), Genetic Engineering, Vol. 8, pp.277−279, Plenum Publishing, 1986; Maeda et al., Nature, 315, pp.592−594 (1985))。 Agrobacterium tumefaciensなどを利用して、植物細胞を宿主細胞として使用することも可能であり、それに適するベクターと共に、それらは当該分野で広く知られている。
【0035】
本発明の遺伝子工学的手法においては、当該分野で知られたあるいは汎用されている制限酵素、逆転写酵素、DNA 断片をクローン化するのに適した構造に修飾したりあるいは変換するための酵素であるDNA 修飾・分解酵素、DNA ポリメラーゼ、末端ヌクレオチジルトランスフェラーゼ、DNA リガーゼなどを用いることが出来る。制限酵素としては、例えば、R. J. Roberts, Nucleic Acids Res., 13: r165, 1985; S. Linn et al. ed. Nucleases, p. 109, Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, New York, 1982; R. J. Roberts, D. Macelis, Nucleic Acids Res., 19: Suppl. 2077, 1991などに記載のものが挙げられる。
本発明に従い、ポリペプチド(又はタンパク質)をコードする核酸を含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体は、必要に応じて適当な選択マーカーを用い、繰り返しクローニングを行うことにより、高い発現能を安定して有する細胞株を得ることができる。例えば、宿主細胞として動物細胞を用いた形質転換体において、dhfr遺伝子を選択マーカーとして利用した場合、メトトレキサート(MTX) 濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、本発明のポリペプチドをコードするDNA を増幅させ、より高い発現を得られる細胞株を得ることができる。本発明の形質転換体は、本発明のポリペプチドをコードする核酸が発現可能な条件下で培養し、目的物を生成、蓄積せしめることができる。該形質転換体は、当該分野で汎用されている培地中で培養することができる。例えば、大腸菌、枯草菌などの原核細胞宿主、酵母などを宿主としている形質転換体は、液体培地を好適に使用することができる。培地中には、該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えばグルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、麦芽エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては,例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。また、酵母、ビタミン類、カザミノ酸、生長促進因子などを添加してもよい。また、必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリル アクリル酸のような薬剤を加えることができる。培地のpHは約5〜約8が望ましい。
【0036】
培養は、例えば大腸菌では通常約15〜約45℃で約3〜約75時間行い、必要により、通気や攪拌を加えることもできる。宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば約5〜約20%の胎児牛血清を含むMEM 培地、PRMI1640培地、DMEM培地などが用いられる。pHは約6〜約8であるのが好ましい。培養は通常約30〜約40℃で約15〜約72時間行い、必要に応じて通気や攪拌を加える。所定の遺伝子産物を発現している形質転換体はそのまま利用可能であるが、その細胞ホモジュネートとしても利用できるが、所定の遺伝子産物を単離して用いることもできる。上記培養細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチーム及び/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過により粗抽出液を得る方法などを適宜用いることができる。緩衝液の中には尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトン X−100(商品名)、ツウィーン−20 (商品名)などの界面活性剤を加えてあってもよい。培養液中に目的生成物が分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる目的生成物は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせてその精製を行なうことができ、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、例えばジエチルアミノエチル基あるいはカルボキシメチル基などを持つ担体などを用いたイオン交換クロマトグラフィー法、例えばブチル基、オクチル基、フェニル基など疎水性基を持つ担体などを用いた疎水性クロマトグラフィー法、色素ゲルクロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製して得ることができる。好ましくは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、抗体又はリガンドなどを固定化したアフィニティー・クロマトグラフィーなどで処理し精製分離処理できる。例えば、ゼラチン−アガロース・アフィニティー・クロマトグラフィー、ヘパリン−アガロース・クロマトグラフィー、モノクローナル抗体結合アフィニティー・クロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0037】
さらに、本発明に係わる遺伝子の塩基配列を基に遺伝子工学的に常用される方法を用いることにより、所定の核酸の塩基配列に適宜、1個ないし複数個以上の塩基(ヌクレオチド塩基)の置換、欠失、挿入、転移あるいは付加したごとき変異を導入した核酸(ホモログを含む)としたり、所定のポリペプチドのアミノ酸配列中に適宜、1個ないし複数個以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入、転移あるいは付加したごとき変異を導入した相当するポリペプチド(ホモログを含む)を製造することができる。こうした変異・変換・修飾法としては、例えば日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法 II 」、p105(広瀬進)、東京化学同人(1986); 日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸 III(組換えDNA 技術)」、p233(広瀬進)、東京化学同人(1992); R. Wu, L. Grossman, ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 154, p. 350 & p. 367, Academic Press, New York (1987); R. Wu, L. Grossman, ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 100, p. 457 & p. 468, Academic Press, New York (1983); J. A. Wells et al., Gene, 34: 315, 1985; T. Grundstroem et al., Nucleic Acids Res., 13: 3305, 1985; J. Taylor et al., Nucleic Acids Res., 13: 8765, 1985; R. Wu ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 155, p. 568, Academic Press, New York (1987); A. R. Oliphant et al., Gene, 44: 177, 1986 などに記載の方法が挙げられる。例えば合成オリゴヌクレオチドなどを利用する位置指定変異導入法(部位特異的変異導入法) (Zoller et al., Nucleic Acids Res., 10: 6487, 1987; Carter et al., Nucleic Acids Res., 13: 4331, 1986), カセット変異導入法 (cassette mutagenesis: Wells et al., Gene, 34: 315, 1985), 制限部位選択変異導入法 (restriction selection mutagenesis: Wells et al., Philos. Trans. R. Soc. London Ser A, 317: 415, 1986),アラニン・スキャンニング法 (Cunningham & Wells, Science, 244: 1081−1085, 1989), PCR 変異導入法, Kunkel法, dNTP[αS]法(Eckstein),亜硫酸や亜硝酸などを用いる領域指定変異導入法などの方法が挙げられる。
【0038】
また、遺伝子組換え法で製造する時に融合ポリペプチド(融合タンパク質)として発現させ、生体内あるいは生体外で、所望のポリペプチドと実質的に同等の生物学的活性を有しているものに変換・加工してもよい。遺伝子工学的に常用される融合産生法を用いることができるが、こうした融合ポリペプチドはその融合部を利用してアフィニティクロマトグラフィーなどで精製することも可能である。こうした融合ポリペプチドとしては、ヒスチジンタグに融合せしめられたもの、あるいは、β−ガラクトシダーゼ(β−gal) 、マルトース結合タンパク (MBP),グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、チオレドキシン (TRX)又は Cre Recombinaseのアミノ酸配列に融合せしめられたものなどが挙げられる。同様に、ポリペプチドは、ヘテロジーニアスなエピトープのタグを付加され、該エピトープに特異的に結合する抗体を用いてのイムノアフィニティ・クロマトグラフィーによる精製をなし得るようにすることもできる。より適した実施態様においては、ポリヒスチジン(poly−His)又はポリヒスチジン−グリシン(poly−His−Gly)タグ、また該エピトープタグとしては、例えば AU5, c−Myc, CruzTag 09, CruzTag 22, CruzTag 41, Glu−Glu, HA, Ha.11, KT3, FLAG (registered trademark, Sigma−Aldrich), Omni−probe, S−probe, T7, Lex A, V5, VP16, GAL4, VSV−G などが挙げられる (Field et al., Mol. Cell. Biol., 8: pp.2159−2165 (1988); Evan et al., Mol. Cell. Biol., 5: pp.3610−3616 (1985); Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6): pp.547−553 (1990); Hopp et al., BioTechnology, 6: pp.1204−1210 (1988); Martin et al., Science, 255: pp.192−194 (1992); Skinner et al., J. Biol. Chem., 266: pp.15163−15166 (1991); Lutz−Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: pp.6393−6397 (1990) など) 。酵母を利用した two−hybrid 法も利用できる。
【0039】
さらに融合ポリペプチドとしては、検出可能なタンパク質となるようなマーカーを付されたものであることもできる。より好適な実施態様においては、該検出可能なマーカーは、ビオチン/ストレプトアビジン系のBiotin Avi Tag、螢光を発する物質などであってよい。該螢光を発する物質としては、オワンクラゲ (Aequorea victorea)などの発光クラゲ由来の緑色螢光タンパク質(green fluorescent protein: GFP)、それを改変した変異体(GFPバリアント) 、例えば、EGFP (Enhanced−humanized GFP), rsGFP (red−shift GFP), 黄色螢光タンパク質 (yellow fluorescent protein: YFP), 緑色螢光タンパク質 (green fluorescent protein: GFP),藍色螢光タンパク質 (cyan fluorescent protein: CFP), 青色螢光タンパク質 (blue fluorescent protein: BFP), ウミシイタケ (Renilla reniformis) 由来のGFP などが挙げられる(宮脇敦史編、実験医学別冊ポストゲノム時代の実験講座3−GFPとバイオイメージング、羊土社 (2000年))。また、上記融合タグを特異的に認識する抗体(モノクローナル抗体及びそのフラグメントを含む)を使用して検出を行うこともできる。こうした融合ポリペプチドの発現及び精製は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。
得られたタンパク質(ペプチドあるいはポリペプチドを包含していてよい)は、それを酵素免疫測定法など知られた手法で、適当な担体あるいは固相に結合せしめて固相化することができる。固相化タンパク質、固相化ペプチドは、便利に結合アッセイや物質のスクリーニングに使用できる。
【0040】
得られた本発明のポリペプチド(又はタンパク質)は、化学的な手法でその含有されるアミノ酸残基を修飾することもできるし、ペプチダーゼ、例えばペプシン、キモトリプシン、パパイン、ブロメライン、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼなどの酵素を用いて修飾したり、部分分解したりしてその誘導体などにすることができる。本発明のポリペプチドは、C 末端が通常カルボキシル基(−COOH) またはカルボキシレート (−COO− ) であるが、C 末端がアミド(−CONH2)またはエステル(−COOR) であってもよい。ここでエステルにおけるR としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2 アルキル基などのC7−14 アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。本発明のタンパク質が C末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のポリペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC 末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明のポリペプチド(又はタンパク質)には、上記したポリペプチドにおいて、N 末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC1−5アルキル−カルボニル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、N 端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミル化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH 、−COOH 、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
【0041】
ポリペプチドやタンパク質の構造の修飾・改変などは、例えば日本生化学会編、「新生化学実験講座1、タンパク質 VII、タンパク質工学」、東京化学同人(1993)を参考にし、そこに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法、さらにはそれらと実質的に同様な方法で行うことができる。また下記するようにその生物学的活性のうちには、免疫的に活性、例えば抗原性を有するということも含まれてよい。該修飾・改変のうちには、脱アミノ化、ヒドロキシル化、カルボキシル化、リン酸化、硫酸化、メチル化などのアルキル化、アセチル化などのアシル化、エステル化、アミド化、開環、閉環、グリコシル化、含有糖鎖の種類を違うものに変えること、含有糖鎖の数を増減すること、脂質結合、D−体アミノ酸残基への置換などであってもよい。それらの方法は、当該分野で知られている(例えば、T. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, pp.79−86 W.H. Freeman & Co., San Francisco, USA (1983) など) 。
【0042】
本発明のヒト由来のペプチドあるいはポリペプチド(又はタンパク質)は、1個以上のアミノ酸残基が同一性の点で天然のものと異なるもの、1個以上のアミノ酸残基の位置が天然のものと異なるものであってもよい。本発明のヒト由来のペプチドは、ヒトポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインから成る群から選ばれたタンパク質に特有なアミノ酸残基が1個以上(例えば、1〜80個、好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個、特には1〜10個など)欠けている欠失類縁体、特有のアミノ酸残基の1個以上(例えば、1〜80個、好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個、特には1〜10個など)が他の残基で置換されている置換類縁体、1個以上(例えば、1〜80個、好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個、特には1〜10個など)のアミノ酸残基が付加されている付加類縁体も包含する。
【0043】
天然のヒトポリセラーゼ−I、天然のセラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインから成る群から選ばれたタンパク質の特徴であるドメイン構造あるいは基質結合能が維持されていれば、上記のごとき変異体は、全て本発明に包含される。また本発明のペプチドあるいはポリペプチドは天然のヒトヒトポリセラーゼ−I、天然のセラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインから成る群から選ばれたタンパク質と実質的に同等の一次構造コンフォメーションあるいはその一部を有しているものも含まれてよいと考えられ、さらに天然のものと実質的に同等の生物学的活性を有しているものも含まれてよいと考えられる。さらに天然に生ずる変異体の一つであることもできる。本発明のヒト由来のタンパク質(又はペプチドあるいはポリペプチド)は、例えば、配列表の配列番号:14 又は図1〜2、あるいは図3のアミノ酸配列に対し、60% 、場合によっては70% より高い相同性を有しているものが挙げられ、より好ましくはそれに対し、80% あるいは90% 以上の相同アミノ酸配列を有するものが挙げられる。本発明のヒト由来のタンパク質の一部のものとは、該ヒト由来のタンパク質の一部のペプチド(すなわち、該タンパク質の部分ペプチド)であって、本発明の、ヒトポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインから成る群から選ばれたタンパク質と実質的に同等な活性を有するものであればいずれのものであってもよい。例えば、該本発明のタンパク質の部分ペプチドは、該ヒトポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン又はポリセラーゼ−I内のLDLRドメインの構成アミノ酸配列のうち少なくとも5個以上、好ましくは20個以上、さらに好ましくは50個以上、より好ましくは70個以上、もっと好ましくは100 個以上、ある場合には200 個以上のアミノ酸配列を有するペプチドが挙げられ、好ましくはそれらは連続したアミノ酸残基に対応するものであるか、あるいは、例えば、配列番号:14 又は図1〜2、あるいは図3で示されるアミノ酸配列のうち対応する領域に対する相同性に関して、上記と同様の相同性を有するものが挙げられる。
【0044】
本明細書において、「実質的に同等」とはタンパク質の活性、例えば、酵素活性、生理的な活性、生物学的な活性が実質的に同じであることを意味する。さらにまた、その用語の意味の中には、実質的に同質の活性を有する場合を包含していてよく、該実質的に同質の活性としては、細胞に変化をもたらす活性、細胞外タンパク分解活性などを挙げることができる。該実質的に同質の活性とは、それらの活性が性質的に同質であることを示し、例えば、生理的に、薬理学的に、あるいは生物学的に同質であることを示す。例えば、酵素活性などの活性が、同等 (例えば、約 0.001〜約1000倍、好ましくは約0.01〜約100 倍、より好ましくは約 0.1〜約20倍、さらに好ましくは約 0.5〜約2 倍) であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的な要素は異なっていてもよい。次に、アミノ酸の置換、欠失、あるいは挿入は、しばしばポリペプチドの生理的な特性や化学的な特性に大きな変化を生ぜしめないし、こうした場合、その置換、欠失、あるいは挿入を施されたポリペプチドは、そうした置換、欠失、あるいは挿入のされていないものと実質的に同一であるとされるであろう。該アミノ酸配列中のアミノ酸の実質的に同一な置換体としては、そのアミノ酸が属するところのクラスのうちの他のアミノ酸類から選ぶことができうる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、トリプトファン、メチオニンなどが挙げられ、極性(中性)としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンなどが挙げられ、陽電荷をもつアミノ酸(塩基性アミノ酸)としては、アルギニン、リジン、ヒスチジンなどが挙げられ、陰電荷をもつアミノ酸(酸性アミノ酸)としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
【0045】
本発明のタンパク質及びその一部のペプチドの合成には、当該ペプチド合成分野で知られた方法、例えば液相合成法、固相合成法などの化学合成法を使用することができる。こうした方法では、例えばタンパク質あるいはペプチド合成用樹脂を用い、適当に保護したアミノ酸を、それ自体公知の各種縮合方法により所望のアミノ酸配列に順次該樹脂上で結合させていく。縮合反応には、好ましくはそれ自体公知の各種活性化試薬を用いるが、そうした試薬としては、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドなどカルボジイミド類を好ましく使用できる。生成物が保護基を有する場合には、適宜保護基を除去することにより目的のものを得ることができる。
本発明のペプチド(又はポリペプチド)は、それが遊離型のものとして得られた場合には、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で塩に変換することができ、またそれらは塩として得られた場合には、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で遊離型のものあるいは他の塩に変換することができる。
本発明のペプチド(又はポリペプチド)の塩としては、生理的に許容されるものあるいは医薬として許容されるものが好ましいが、これらに限定されない。こうした塩としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸との塩、例えば酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマール酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩などが挙げられる。さらに該塩としては、アンモニウム塩、例えばエチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ヒドロキシエチルアミンなどの有機塩基との塩なども挙げられる。
【0046】
本明細書中で開示したポリセラーゼ−I及びそれに関連したタンパク質、そのフラグメント、さらにはDNA を含めた核酸(mRNA やオリゴヌクレオチドを含む) は、それらを単独あるいは有機的に使用し、更には以下で説明する技術(アンチセンス法、モノクローナル抗体を含めた抗体、トランスジェニク動物など)とも適宜組合わせて、ゲノミックス及びプロテオミックス技術に応用できる。例えば、本発明の各ポリセラーゼ−I変異体(セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインのそれぞれ変異体を含む)は、ドミナントネガティブ効果を利用した機能解析にも利用可能である。また、二本鎖RNA (dsRNA) を使用してのRNAi (RNA interference) 技術への応用の途もある。かくして、一塩基多型(SNP; single nucleotide polymorphisms)を中心とした遺伝子多型解析、核酸アレイ、タンパク質アレイを使用した遺伝子発現解析、遺伝子機能解析、タンパク質間相互作用解析、関連疾患解析、疾患治療薬解析をすることが可能となる。例えば、核酸アレイ技術では、cDNAライブラリーを使用したり、PCR 技術で得たDNA を基板上にスポッティング装置で高密度に配置して、ハイブリダイゼーションを利用して試料の解析が行われる。該アレイ化は、針あるいはピンを使用して、あるいはインクジェトプリンティング技術などでもって、スライドガラス、シリコン板、プラスチックプレートなどの基板のそれぞれ固有の位置にDNA が付着せしめられることによりそれを実施することができる。該核酸アレイ上でのハイブリダイゼーションの結果得られるシグナルを観察してデータを取得する。該シグナルは、螢光色素などの標識(例えば、Cy3, Cy5, BODIPY, FITC, Alexa Fluor dyes(商品名), Texas red(商品名) など) より得られるものであってよい。検知にはレーザースキャナーなどを利用することもでき、得られたデータは適当なアルゴリズムに従ったプログラムを備えたコンピューターシステムで処理されてよい。また、タンパク質アレイ技術では、タグを付された組換え発現タンパク質産物を利用してよく、二次元電気泳動(2−DE)、酵素消化フラグメントを含めての質量分析 (MS)(これにはエレクトロスプレーイオン化法(electrospray ionization: ESI), マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(matrix−assisted laser desorption/ionization: MALDI)などの技術が含まれ、MALDI−TOF 分析計、ESI−3 連四重極分析計、ESI−イオントラップ分析計などを使用してよい) 、染色技術、同位体標識及び解析、画像処理技術などが利用されることができる。したがって、本発明には上記で得られるあるいは利用できるポリセラーゼ−I(セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインのそれぞれを含む)及びそれに対する抗体に関連したソフトウエア、データベースなども含まれてよい。
【0047】
本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及びその変異体、修飾体、誘導体などは、上記で説明したような分離・精製処理を施すことができる。本発明では、「断片」、「誘導体」及び「類縁体」なる用語は、配列番号:14 又は図1〜2、あるいは図3のポリペプチド、配列番号:13 の配列あるいは図1〜2のヌクレオチド配列から転写され且つスプライシングされていないか又は特異的にスプライシングされた hnRNA又はmRNAによりコードされるポリペプチド、又はゲノミックDNA によりコードされるポリペプチドに関連して、その「断片」、「誘導体」又は「類縁体」と称した場合、このようなポリペプチドと本質的に同一の生物学的機能又は活性を有しているポリペプチドを意味してよい。従って、類縁体又は類似体(ホモログ)にはプロタンパク質部分が切断されて活性成熟ポリペプチドを産生するような、活性化できるプロタンパク質などが包含される。本発明のポリペプチドは組換えポリペプチド、天然ポリペプチド又は合成ポリペプチドでよい。特定の好ましい態様では、これは組換えポリペプチドである。
【0048】
一方では、本発明は上記したポリペプチドをコードするDNA 配列、そして天然の特性の全部あるいは一部を有する当該ポリセラーゼ−Iタンパク質のポリペプチド、さらにその類縁体(ホモログを含む)あるいは誘導体をコードするDNA 配列も包含する。本発明のポリヌクレオチドは、アミノ末端に付加アミノ酸又はカルボキシル末端に付加アミノ酸を加えた成熟タンパク質、又は成熟タンパク質に内在するポリペプチド (例えば、成熟形態で一つ以上のポリペプチド鎖を有する場合) のアミノ酸をコードしているものであることができる。このような配列は、前駆体から成熟形態のタンパク質へのプロセッシングにおいても何らかの働きをなすものであってよく、例えば、タンパク質の酵素活性を発現させたり、タンパク質の移動や輸送を促進したり、タンパク質の半減期を延長もしくは短縮したり、又はタンパク質を操作してその検出もしくは産生を容易にすることができるもの、さらには、ドミナント・ネガティブ効果を示すものであってよい。一般的には、例えば、付加アミノ酸は、細胞酵素によりプロセッシングされ、成熟タンパク質から取り除かれる。1又はそれ以上のプロ配列と融合した成熟形態ポリペプチドを有する前駆タンパク質は、不活性形態ポリペプチドであることができる。プロ配列が除去されると、このような不活性前駆体は、通常活性化される。プロ配列のいくつか又は全ては、活性化の前に除去できる。通常、このような前駆体はプロタンパク質と称される。本発明のポリペプチドは、成熟タンパク質、リーダー配列を付加してある成熟タンパク質 (プレタンパク質と称することができる) 、プレタンパク質のリーダー配列ではない1又はそれ以上のプロ配列を有する成熟タンパク質の前駆体、又はリーダー配列及び1又はそれ以上のプロ配列を有するプロタンパク質の前駆体であるプレプロタンパク質であってよい。また、該プロ配列は通常活性形態ポリペプチド及び成熟形態ポリペプチドを産み出すようなプロセッシングの段階で除去され得る。本発明のポリセラーゼ−Iにおいては、スプライシングバリアントの存在も考えられるが、そうしたスプライシングバリアントがある場合も本明細書で解明された技術に従う限り、本発明の範囲内のものである。さらに、ドミナント・ネガティブ効果を示すものや構成ドメインのそれぞれが担う活性を示すもの、例えば各ドメインからなるものあるいは該ドメインの複数が組み合わされたものなどであってもよい。
【0049】
本発明では当該ポリセラーゼ−I遺伝子(当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及びその変異体(ホモログを含む)、修飾体、誘導体などの関連遺伝子を含む) あるいはポリセラーゼ−I、その一部又はホモログを発現できる組換えDNA 分子を宿主に移入し、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質、ホモログ又はその一部を発現させ、目的とする当該ポリセラーゼ−Iタンパク質を得る方法が提供される。こうして本発明によれば、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質又はホモログの遺伝子を実質的に発現する組換え体あるいはトランスフェクタント及びその製造法、さらにはその用途も提供される。本発明のポリセラーゼ−I, セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン又はポリセラーゼ−I内のLDLRドメインあるいはその塩は、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質無形成症、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質発現不全症、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質遺伝子欠損症など病状を呈する当該ポリセラーゼ−Iタンパク質関連機能不全疾患の治療に有用であると考えられる。すなわち、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質、変異体(ホモログを含む)、修飾体、誘導体を含有する医薬を用いれば、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質による活性が不充分であることに起因する疾患患者を健常な状態にすることが可能である。例えば、生体内において当該ポリセラーゼ−Iタンパク質又はその誘導産物が減少あるいは欠損しているために、細胞における当該生物学的活性が十分に得られていないか、あるいは正常でない症状の患者の場合には、(A) 本発明のタンパク質などを該患者に投与することによるか、(B) 本発明のDNA などの核酸を該患者に投与して、生体内で本発明のタンパク質などを発現させることによるか、(C) 本発明のDNA などの核酸を発現可能に導入した細胞を該患者に移植することによって、生体内に本発明のタンパク質などを補充するなどして、該患者における当該症状を改善したりする。
【0050】
別の面では、本発明はポリセラーゼ−Iタンパク質、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン又はポリセラーゼ−I内のLDLRドメインの天然型(ネイティブ)のタンパク質(特には、内在性(endogenous)ポリセラーゼ−Iタンパク質) に関し、各ポリセラーゼ−Iタンパク質に関連付けられる活性(例えば、細胞の変化の誘導あるいはプロテアーゼ活性など)を有し且つ配列番号:14 のアミノ酸配列、図1〜2のアミノ酸配列、図3のアミノ酸配列及びその一部から成る群から選ばれた配列のうちの、(1) ポリセラーゼ−Iの少なくとも 1〜1059個、(2) セラーゼ−1、(3) セラーゼ−2、(4) セラーゼ−3、(4) TMドメイン又はLDLRドメイン、の連続したアミノ酸残基を有するポリペプチドの一種であり且つ天然の当該ヒトタンパク質と実質的に同等な活性を有することを特徴とするポリペプチドまたはその塩、より好ましくは当該タンパク質またはその塩と、実質的に同等な活性を有するか、あるいは実質的に同等の一次構造コンフォメーションを持つ該タンパク質の少なくとも一部あるいは全部を有するポリペプチドを、大腸菌などの原核生物あるいは哺乳動物細胞などの真核生物で発現させることを可能にするDNA やRNA などの核酸に関する。またこうした核酸、特にはDNA は、(a) 配列表の配列番号:14 のアミノ酸配列、図1〜2ののアミノ酸配列及び図3のアミノ酸配列から成る群から選ばれた配列をコードできる配列あるいはそれと相補的な配列、(b) 該(a) のDNA 配列またはその断片とハイブリダイズすることのできる配列、及び(c) 該(a) 又は(b) の配列にハイブリダイズすることのできる縮重コードを持った配列であることができる。ここでハイブリダイズの条件としては、ストリンジェントな条件であることができる。こうした核酸で形質転換され、本発明の該ポリペプチドを発現できる大腸菌などの原核生物あるいは哺乳動物細胞などの真核生物も本発明の特徴をなす。
【0051】
本発明のDNA 配列は、これまで知られていなかった哺乳動物のタンパク質のアミノ酸配列に関する情報を提供しているから、こうした情報を利用することも本発明に包含される。こうした利用としては、例えば当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及び関連タンパク質をコードする哺乳動物、特に好ましくはヒトの、ゲノムDNA 及びcDNAの単離及び検知のためのプローブの設計などが挙げられる。
本発明のDNA 配列は、例えば当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及び関連タンパク質をコードする哺乳動物、特に好ましくはマウス、ラットやヒトの、ゲノムDNA 及びcDNAの単離及び検知のためのプローブとして有用である。プローブは、必要に応じて、抗体に関連して挙げられている標識を付与しておくことができる。遺伝子の単離にあたっては、PCR 法、さらには逆転写酵素 (RT) を用いたPCR 法 (RT−PCR) を利用することが出来る。当該ポリセラーゼ−Iタンパク質 cDNA 及びその関連DNA は、クローニングされ、配列決定された当該ポリセラーゼ−Iタンパク質 cDNA 配列から推定されるアミノ酸配列に基づき特徴的な配列領域を選び、DNA プライマーをデザインして化学合成し、得られたDNA プライマーを用いて、PCR 法、RT−PCR、その他の方法を用いて当該ポリセラーゼ−Iタンパク質関連遺伝子の単離、検出などに利用することが出来る。例えば、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質 mRNA のヒト組織中での発現を各種の組織由来poly (A)+ RNA に対するノーザンブロット分析により検討することができる。本発明のcDNAをプローブとして用いれば、例えばノーザン・ブロティング、サザン・ブロティング、in situ ハイブリダイゼーションなどによりヒト組織中での当該ポリセラーゼ−Iタンパク質 mRNA の発現や当該ポリセラーゼ−Iタンパク質遺伝子自体などを検出・測定でき、ヒト組織における細胞内タンパク質代謝、ホルモン前駆体の活性化、及び組織マトリックスや骨の改変を含む、多くの正常な細胞のプロセスに関与する当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の役割、その酵素活性の役割、また細胞変化や組織リモデリングといった生物学的過程(プロセス)に関する現象、さらには、免疫応答、血管新生、凝固、創傷治癒、再生プロセス、胚移植あるいは胎児発達のような生理学的条件に関連して生起する生物学的過程(プロセス)、さらに癌細胞の浸潤、転移、関節炎、リウマチあるいは心臓血管におけるプロセス、血液学的なプロセス及び神経退化のプロセスのような生理学的条件に関連した生物学的過程(プロセス)、特に細胞の変化やセリンプロテアーゼ活性に関連したがんの浸潤・転移の様な多くの疾患などの研究の発展に貢献できる。当該ポリセラーゼ−Iタンパク質に関連した疾患の遺伝子診断にも利用できる。そうした診断は、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及び関連タンパク質をコードする核酸の異常、例えば損傷、突然変異、発現低下、発現過多などを診断するものであることができる。
【0052】
こうして典型的には本発明は、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質遺伝子、それから誘導されたプローブを用い、あるいはさらに必要に応じ、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質に対する阻害物質を用い、被検試料中の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質あるいはその遺伝子、さらには産生細胞を検知・分別定量する優れた方法及びその為の試薬キットを提供する。本発明はこうした当該ポリセラーゼ−Iタンパク質あるいはその遺伝子、さらには産生細胞を検知・分別定量することのできる試薬キットのうちの各試薬をすべてその実施態様のうちに含むと理解される。さらに本発明の目的は、上記方法を用いて当該ポリセラーゼ−Iタンパク質あるいはその遺伝子、さらには産生細胞を検知・分別定量することにより、細胞内タンパク質代謝、ホルモン前駆体の活性化、及び組織マトリックスあるいは骨の改変など、多くの正常な細胞のプロセスに関与する各ポリセラーゼ−Iタンパク質の役割、動脈硬化症、血栓症、高脂血症、アレルギー疾患、炎症性疾患、神経変性疾患及びがんの浸潤・転移の様な多くの疾患などをモニターし得る方法並びに試薬あるいは診断剤を提供する。したがって、医学的・生理学的分野における上記試薬の各種利用、各ポリセラーゼ−Iタンパク質の作用に起因する応答・症状・疾患の研究・解析・測定、診断、予防、治療などの目的で上記試薬を使用することは、すべて本発明のその実施態様のうちに含まれると理解される。
【0053】
本発明に従えば、ヒトポリセラーゼ−I、ヒトポリセラーゼ−I由来セラーゼ−1、ヒトポリセラーゼ−I由来セラーゼ−2、ヒトポリセラーゼ−I由来TM及びヒトポリセラーゼ−I由来LDLR, マウスやラットの対応するポリセラーゼ−Iから成る群から選ばれたタンパク質又はそれをコードする遺伝子配列を同定する方法が提供される。該同定方法は、典型的な場合、
a) ポリセラーゼ−Iタンパク質中の保存領域のヌクレオチド配列を発現遺伝子のデータバンクで見つかったヌクレオチドの部分配列と比較すること;
b) ポリセラーゼ−Iに対するホモロジー(同一性)を保持しているフラグメントの同定並びに該フラグメント配列が発現されているヒト組織の全RNA 又は鋳型サンプルを用いてのPCRによる増幅;
c) ヒトcDNAのライブラリーとハイブリダイズするプローブとして、該増幅されたフラグメントを使用することあるいは取得配列を5’または3’末端に向けて伸張するための該増幅されたフラグメントを使用すること; 及び
d) 得られたcDNAクローンを単離し、該ヌクレオチドの完全な配列を決定すること
からなる群から選ばれた処理を行うことを特徴とする。
【0054】
本発明に従えば、本発明の当該ポリセラーゼ−Iの遺伝子診断法(検出方法)が提供できる。該遺伝子診断法では、(a) 核酸試料を得る工程、(b) 工程(a) にて得られた核酸試料を、例えばPCR 法、RNA ポリメラーゼを利用した核酸増幅法、鎖置換増幅法などで遺伝子増幅し、例えば該当該ポリセラーゼ−Iタンパク質遺伝子に存在しうる変異部位などを含む領域が増幅された核酸断片を得る工程、及び(c) 工程(b) の核酸断片について変異の存在を調べる工程を含む態様が挙げられる。増幅の対象となる、変異部位を含む領域としては、本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の遺伝子の塩基配列のうち、疾患の原因となる変異を含んでいる領域であれば特に限定されず、例えば、配列表の配列番号:13 あるいは図1〜2に示される塩基配列の中の任意の位置の塩基を含む領域が挙げられる。上記工程(c) においては、当該分野で当業者に知られている変異の存在の検出方法の中から適切な方法を選んでそれを適用でき、特には限定されないが、例えばASPCR (allele−specific PCR) 法により得られたDNA 断片長を調べることにより検出することができる。DNA 断片長を調べる方法は、特に限定されるものではないが、例えば螢光DNA シークエンサーなどを使用して行うことができる。本工程で使用される変異検出法としては、例えば制限酵素断片長多型 (restriction fragment length polymorphism: RFLP) を検出して調べる方法などが挙げられる。また、変異の検出には、例えば変異部位を含む適当なDNA 片をプローブに用いるハイブリダイゼーション法や、SSCP法(単鎖高次構造多型)のような公知の変異検出法を使用してよい。本発明の遺伝子診断に従い、本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質に関係した遺伝子診断が可能である。例えば各種疾患、がんなどへの罹患抵抗性・感受性決定の一素因と考えられる本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の発現や多型を遺伝子診断し、さらに、当該診断結果に基づき関連疾患罹病へのリスクを下げるような遺伝子治療を行うことが可能となる。
【0055】
本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質などのポリペプチドなどは、本発明で同定された当該ポリセラーゼ−Iタンパク質などの、生物学的活性などの機能(例えば、細胞の変化、プロテアーゼ活性など)を促進する化合物(アゴニスト)や阻害する化合物(アンタゴニスト)又はそれらの塩をスクリーニングするための試薬として有用である。かくして、本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質などのポリペプチド、その一部のペプチド又はそれらの塩を用いた、本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質といったタンパク質、その一部のペプチド又はそれらの塩などの生物学的活性などの機能(例えば、細胞の変化、プロテアーゼ活性など)を促進する化合物(アゴニスト)や阻害する化合物(アンタゴニスト)又はそれらの塩のスクリーニング方法も提供される。
該スクリーニングでは、例えば(i) 本発明のタンパク質、その一部のペプチド又はそれらの塩(該タンパク質を発現する形質転換体を含んでいてもよい、以下同様)などに適当な基質あるいはリガンドを接触させた場合と、(ii)本発明のタンパク質、その一部のペプチド又はそれらの塩などに基質あるいはリガンド及び試験試料を接触させた場合との比較を行う。具体的には、上記スクリーニングでは、当該生物学的活性(例えば、各ポリセラーゼ−Iタンパク質と生体成分との間の相互作用に関連した活性、タンパク分解活性など)を測定して、比較する。
基質としては、各ポリセラーゼ−Iタンパク質の基質となることのできるものであれば何れのものであってよい。例えば、公知のポリセラーゼ−Iタンパク質の基質として知られているものの中から選んで用いることができるが、好ましくは合成された化合物などを使用できる。基質は、そのまま使用できるが、好ましくはフルオレッセインなどの蛍光、酵素や放射性物質で標識したものを使用できる。
【0056】
試験試料としては、例えばタンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、植物抽出物、動物などの組織抽出物、細胞抽出物などが挙げられる。試験試料に使用される試験化合物の例には、好ましくは抗ポリセラーゼ−I抗体、酵素阻害剤、サイトカイン、各種インヒビター活性を有する化合物、特には合成化合物などを含んでいてよい。これら化合物は、新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。該スクリーニングは、通常の結合活性あるいは酵素活性の測定法に準じて実施することができ、例えば当該分野で公知の方法などを参考にして行うことができる。また、各種標識、緩衝液系その他適当な試薬などを使用したり、そこで説明した操作などに準じて行うことができる。使用ペプチドなどは、活性化剤で処理したり、その前駆体あるいは潜在型のものを活性型のものに予め変換しておくこともできる。測定は通常Tris−HCl緩衝液、リン酸塩緩衝液などの反応に悪影響を与えないような緩衝液などの中で、例えば、pH約4〜約10 (好ましくは、pH約6〜約8)において行うことができる。これら個々のスクリーニングにあたっては、それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質あるいはそれと実質的に同等な活性を有するポリペプチドあるいはペプチドに関連した測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、Methods in Enzymology, Academic Press 社 (USA)発行) など参照〕。
【0057】
本発明のスクリーニング方法又はスクリーニングキットを用いて得られる化合物又はその塩は、上記した試験化合物、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などから選ばれた化合物であり、本発明のタンパク質などの機能を促進あるいは阻害する化合物である。該化合物の塩としては、例えば、薬学的に許容される塩などが挙げられる。例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。無機塩基との塩の好適な例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、並びにアルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’− ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質(セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン又はポリセラーゼ−I内のLDLRドメインを含む)の生物学的活性などの機能(例えば、プロテアーゼ活性あるいは細胞の変化誘導活性など)を促進する化合物(アゴニスト、あるいは促進剤)又はその塩は、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質機能不全症状などの各種の疾病の治療及び/又は予防剤として有用な医薬として使用できる。一方、本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質(セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン又はポリセラーゼ−I内のLDLRドメインを含む)の生物学的活性などの機能(例えば、プロテアーゼ活性あるいは細胞変化誘導活性など)を阻害する化合物(アンタゴニスト、あるいは阻害剤)又はその塩は、過ポリセラーゼ−Iタンパク質機能症に起因した疾患や病気、がん(浸潤・転移を含む) などの各種の疾病の治療及び/又は予防剤などの医薬として使用できる。
【0058】
本発明で同定されたDNA (例えば、ポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びポリセラーゼ−I内のLDLRドメインのそれぞれをコードするDNA)を対象動物に転移させるにあたっては、それをDNA 断片としてあるいは該DNA を動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合して用いるのが一般に有利である。例えば、マウスに当該DNA を導入する場合、これと相同性が高い動物由来の当該DNA を動物細胞で発現させうる各種プロモーターの下流に結合した遺伝子コンストラクトを、対象動物の受精卵、例えばマウス受精卵へマイクロインジェクションすることによってそのタンパク質を高産生する遺伝子導入(トランスジェニック)マウスを作出できる。マウスとしては、特に純系のマウスに限定されないが、例えば、C57BL/6 、Balb/C、C3H 、(C57BL/6×DBA/2)F1(BDF1)などが挙げられる。このプロモーターとしては、例えばウイルス由来プロモーター、メタロチオネインなどのユビキタスな発現プロモーターなどが好ましく使用しうる。また該DNA を導入する場合、組換えレトロウイルスに組み換えて、それを用いて行うこともできる。好適には対象DNA を導入されたマウス受精卵は、例えば、ICR のような仮親のマウスを使用して生育せしめることができる。
受精卵細胞段階における本発明で同定された特徴あるDNA(例えば、ポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインのそれぞれをコードするDNA)の転移は、対象動物の胚芽細胞及び体細胞の全てに存在するように確保される。DNA 転移後の作出動物の胚芽細胞において当該タンパク質をコードするDNA が存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞及び体細胞の全てに該ターゲットをコードするDNA を有することを意味する。遺伝子を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞及び体細胞の全てにおいて、該ターゲットタンパク質を発現できる可能性を有している。
該ターゲットDNA 導入動物は、交配により遺伝子を安定に保持することを確認して、該DNA 保有動物として通常の飼育環境で飼育継代を行うことができる。さらに、目的DNA を保有する雌雄の動物を交配することにより、導入遺伝子を相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNA を有するように繁殖継代することができる。該ターゲットDNA が導入された動物は、該タンパク質が高発現させられているので、該タンパク質に対する阻害剤(インヒビター)のスクリーニング用の動物などとして有用である。また当該ポリセラーゼ−I遺伝子あるいはその他の関連遺伝子の発現を阻害することのできるアンチセンス オリゴヌクレオチド、例えば、アンチセンスDNA などのスクリーニング用の動物などとして有用である。
【0059】
この遺伝子導入動物を、組織培養のための細胞源として使用することもできる。例えば、遺伝子導入マウスの組織中のDNA もしくはRNA を直接分析するかあるいは遺伝子により発現されたタンパク質・組織を分析することにより、ポリセラーゼ−Iに関連したタンパク質について分析することができる。該ターゲットタンパク質を産生する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、例えば脳、胸腺、血管内皮細胞などの血管細胞、血液細胞、精巣、脳、腸、腎臓やその他の組織由来の細胞についてその機能を研究することができる。また、その細胞を用いることにより、例えば各種組織の機能を高めるような医薬開発に資することも可能である。また、高発現細胞株があれば、そこから、当該ターゲットタンパク質を単離精製することも可能である。トランスジェニック マウスなどに関連した技術は、例えば、Brinster, R. L., et al.,; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 4438, 1985; Costantini, F. & Jaenisch, R. (eds.): Genetic manipulation of the early mammalian embryo, Cold Spring Harbor Laboratory, 1985 などの文献に記載の方法あるいはそこに引用された文献に記載の方法、さらにはそれらの改変法により行うことができる。
【0060】
本発明で同定された遺伝子(例えば、ヒトポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメインあるいはLDLRドメインのそれぞれに相当するマウスタンパク質をコードするDNA)に変異をもち、マウスの当該タンパク質を全く発現しない変異マウス(ノックアウトマウス)を作出することができる。例えば、該遺伝子の翻訳開始コドンの前後4kb を含むおよそ8kb のゲノムDNA の中央近傍に位置し翻訳開始コドンに近いエキソンにneo 耐性遺伝子−polyA付加シグナルからなる遺伝子カセットを挿入した変異遺伝子を持つターゲティングベクターを構築することができる。挿入する遺伝子カセットはneo 耐性遺伝子カセット以外にDT−Aカセット、tkカセット、lacZカセットなどが挙げられる。ターゲティングベクターを直鎖状に開き、樹立したマウス胚性幹細胞(embryonic stem cells: ES細胞)にエレクトロポレーションなどで導入、さらに培養してneo 耐性を獲得したES細胞を選別する。ES細胞は129 、C57BL/6 、F1(C57BL/6×CBA)マウスなどのマウス系統から選択して調製することができる。neo 耐性を獲得したES細胞は、マウスの当該ポリセラーゼ−I遺伝子領域において遺伝子カセットを挿入したターゲティングベクターと相同組換えを起こしていると想定され、少なくともマウスの該ポリセラーゼ−I遺伝子アレルのうち一つは破壊され、マウスの該タンパク質を正常に発現できなくなる。選別には挿入した遺伝子カセットによりそれぞれ適当な方法が選択され、また、変異の導入はPCR 、サザン・ハイブリダイゼーションあるいはノーザン・ハイブリダイゼーションなどの方法を用いて確認することができる。
【0061】
変異を導入したES細胞は、C57BL/6 、BALB/c、ICR マウスなどから取り出した8細胞期胚に注入、1日培養し胚盤胞に発生したものをICR のような仮親に移植することで個体まで生育させることができる。生まれる子マウスは変異をもつES細胞と正常な宿主胚に由来するキメラマウスで、ES細胞に由来する細胞がどの程度含まれるかは個体の毛色で判断する。従って、ES細胞と宿主胚は毛色の異なった系統の組合わせが望ましい。得られたキメラマウスの変異はヘテロであり、これらを適宜交配することでホモ変異マウスを得ることができる。このようにして得られたホモ変異マウスは生殖細胞及び体細胞の全てにおいて、マウスの当該ターゲット遺伝子のみが破壊され、マウスの対応ポリセラーゼ−Iを全く発現せず、繁殖継代される子孫もまた同様の表現系をもつ。
このノックアウトマウスは正常マウスとの比較において、発生、成長、生殖、老化及び死など個体のライフサイクルにおける当該ポリセラーゼ−Iの役割や各臓器、組織における該ポリセラーゼ−Iの機能を解析するのに有用である。また、ポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインのそれぞれの生物活性に関連した医薬品開発にも応用できる。ノックアウトマウスはこれらモデル動物としてだけではなく、組織培養のための細胞源として使用することもでき、細胞レベルでの当該ポリセラーゼ−Iの機能解析などに供することができる。ノックアウトマウスなどに関連した技術は、例えば、Mansour, S. L. et al., Nature, 336: 348−352, 1988; Joyner, A. L. ed., Gene targeting, IRL Press, 1993;相沢慎一, ジーンターゲティングES細胞を用いた変異マウスの作成,羊土社,1995; Pinkert, Carl A. ed., Transgenic Animal Technology: a Laboratory Handbook, Academic Press (2nd Edition, 2003) などの文献に記載の方法あるいはそこに引用された文献に記載の方法、さらにはそれらの改変法により行うことができる。
【0062】
本発明に従えば、当該ポリセラーゼ−I遺伝子の発現を阻害することのできるアンチセンス・オリゴヌクレオチド(核酸)を、クローン化したあるいは決定された当該ポリセラーゼ−IをコードするDNA の塩基配列情報に基づき設計し、合成することができる。そうしたオリゴヌクレオチド(核酸)は、対象ポリセラーゼ−I遺伝子のmRNAとハイブリダイズすることができ、該mRNAの機能を阻害することができるか、あるいは対象ポリセラーゼ−I関連mRNAとの相互作用などを介して当該ポリセラーゼ−I遺伝子の発現を調節・制御することができる。対象ポリセラーゼ−I関連遺伝子の選択された配列に相補的なオリゴヌクレオチド、及び対象ポリセラーゼ−I関連遺伝子と特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドは、生体内及び生体外で当該ポリセラーゼ−I遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、またそれに関連した病気などの治療又は診断に有用である。当該遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF 翻訳開始コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、及び3’端ヘアピンループは、好ましい対象領域として選択しうるが、当該遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。
【0063】
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的なオリゴヌクレオチドとの関係は、対象物とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドとの関係を意味し、それは、「アンチセンス」であるということができる。アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリデオキシヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリデオキシヌクレオチド、プリン又はピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸及び合成配列特異的な核酸ポリマー)又は特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNA やRNA 中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA,1本鎖DNA,2本鎖RNA,1本鎖RNA,さらにDNA:RNA ハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド又は非修飾オリゴヌクレオチド、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合又は硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」及び「核酸」とは、公知のプリン及びピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリン及びピリミジン、アシル化されたプリン及びピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオシド及び修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
【0064】
本発明のアンチセンス核酸は、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。
こうした修飾は当該分野で数多く知られており、例えばJ. Kawakami et al., Pharm Tech Japan, 8: 247, 1992; 8: 395, 1992; S. T. Crooke et al. ed.,Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993などに開示がある。本発明のアンチセンス核酸は、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうした付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピッド、コレステロールなど)といった疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNase などのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンス核酸の阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、あるいはポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びポリセラーゼ−I内のLDLRドメインのそれぞれの生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。該核酸それ自体公知の各種の方法で細胞に適用できる。
【0065】
本明細書中、「抗体」との用語は、広義の意味で使用されるものであってよく、所望の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質ポリペプチド及び関連ペプチド断片(セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン、ポリセラーゼ−I内のLDLRドメイン及びそれらのペプチドフラグメントも含む)に対するモノクローナル抗体の単一のものや各種抗原決定基(エピトープ)に対する特異性を持つ抗体組成物であってよく、また1価抗体または多価抗体並びにポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含むものであり、さらに天然型(intact)分子並びにそれらのフラグメント及び誘導体も表すものであり、F(ab’)2, Fab’ 及びFab といったフラグメントを包含し、さらに少なくとも二つの抗原又はエピトープ (epitope)結合部位を有するキメラ抗体若しくは雑種抗体、又は、例えば、クワドローム(quadrome), トリオーム(triome)などの二重特異性組換え抗体、種間雑種抗体、抗イディオタイプ抗体、さらには化学的に修飾あるいは加工などされてこれらの誘導体と考えられるもの、公知の細胞融合又はハイブリドーマ技術や抗体工学を適用したり、合成あるいは半合成技術を使用して得られた抗体、抗体生成の観点から公知である従来技術を適用したり、DNA 組換え技術を用いて調製される抗体、本明細書で記載し且つ定義する標的抗原物質あるいは標的エピトープに関して中和特性を有したりする抗体又は結合特性を有する抗体を包含していてよい。特に好ましい本発明の抗体は、天然型の当該ポリセラーゼ−Iポリペプチドを特異的に識別できるものであり、例えば、公知のセリンプロテアーゼ類タンパク質とは区別してそれを認識できるものである。本発明のポリセラーゼ−Iの特徴的な配列、例えばSEQ ID NO:14のアミノ酸配列のうちに存在する連続したアミノ酸配列、例えば5〜10個あるいは7〜15個、あるいはそれ以上の数のアミノ酸残基からなる、連続したアミノ酸配列、該特徴的な配列を実質的に維持しているものなどを、特異的に認識できる抗体なども挙げられる。該特徴的な配列は、前記した相同性の説明で言及したように、データベースと適切な検索プログラムを使用して決定できる。
【0066】
抗原物質に対して作製されるモノクローナル抗体は、培養中の一連のセルラインにより抗体分子の産生を提供することのできる任意の方法を用いて産生される。修飾語「モノクローナル」とは、実質上均質な抗体の集団から得られているというその抗体の性格を示すものであって、何らかの特定の方法によりその抗体が産生される必要があるとみなしてはならない。個々のモノクローナル抗体は、自然に生ずるかもしれない変異体が僅かな量だけ存在しているかもしれないという以外は、同一であるような抗体の集団を含んでいるものである。モノクローナル抗体は、高い特異性を持ち、それは単一の抗原性をもつサイトに対して向けられているものである。異なったエピトープに対して向けられた種々の抗体を典型的には含んでいる通常の(ポリクローナル)抗体調製物と対比すると、それぞれのモノクローナル抗体は当該抗原上の単一の抗原決定基に対して向けられているものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養により合成され、他のイムノグロブリン類の夾雑がないあるいは少ない点でも優れている。モノクローナル抗体は、ハイブリッド抗体及びリコンビナント抗体を含むものである。それらは、所望の生物活性を示す限り、その由来やイムノグロブリンクラスやサブクラスの種別に関わりなく、可変領域ドメインを定常領域ドメインで置き換えたり(例えば、ヒト化抗体) 、あるいは軽鎖を重鎖で置き換えたり、ある種の鎖を別の種の鎖でもって置き換えたり、あるいはヘテロジーニアスなタンパク質と融合せしめたりして得ることができる(例えば、米国特許第4816567 号; Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.79−97, Marcel Dekker, Inc., New York, 1987 など) 。
【0067】
モノクローナル抗体を製造する好適な方法の例には、ハイブリドーマ法 (G. Kohler and C. Milstein, Nature, 256, pp.495−497 (1975)); ヒトB細胞ハイブリドーマ法 (Kozbor et al., Immunology Today, 4, pp.72−79 (1983); Kozbor, J. Immunol., 133, pp.3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51−63, Marcel Dekker, Inc., New York (1987);トリオーマ法; EBV−ハイブリドーマ法 (Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77−96 (1985))(ヒトモノクローナル抗体を産生するための方法);米国特許第4946778 号 (単鎖抗体の産生のための技術) が挙げられる他、抗体に関して以下の文献が挙げられる: S. Biocca et al., EMBO J, 9, pp.101−108 (1990); R.E. Bird et al., Science, 242, pp.423−426 (1988); M.A. Boss et al., Nucl. Acids Res., 12, pp.3791−3806 (1984); J. Bukovsky et al., Hybridoma, 6, pp.219−228 (1987); M. DAINO et al., Anal. Biochem., 166, pp.223−229 (1987); J.S. Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, pp.5879−5883 (1988); P.T. Jones et al., Nature, 321, pp.522−525 (1986); J.J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 121 (Immunochemical Techniques, Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies), Academic Press, New York (1986); S. Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, pp.6851−6855 (1984); V.T. Oi et al., BioTechniques, 4, pp.214−221 (1986); L. Riechmann et al., Nature, 332, pp.323−327 (1988); A. Tramontano et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, pp.6736−6740 (1986); C. Wood et al., Nature, 314, pp.446−449 (1985); Nature, 314, pp.452−454 (1985) あるいはそこで引用された文献(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる) 。
【0068】
本発明に係るモノクローナル抗体は、それらが所望の生物活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種から誘導される又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一又はホモローガスであるが、一方、鎖の残部は、別の種から誘導される又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一又はホモローガスである、「キメラ」抗体(免疫グロブリン) を特に包含する(米国特許第4816567 号明細書; Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, pp.6851−6855 (1984)) 。以下、モノクローナル抗体を例に挙げて、抗体の作製につき詳しく説明する。本発明のモノクローナル抗体は、ミエローマ細胞を用いての細胞融合技術(例えば、G. Kohler and C. Milstein, Nature, 256, pp.495−497 (1975))など) を利用して得られたモノクローナル抗体であってよく、例えば次のような工程で作製できる。
1.免疫原性抗原の調製
2.免疫原性抗原による動物の免疫
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
6.モノクローナル抗体の製造
【0069】
1.免疫原性抗原の調製
抗原としては、上記で記載してあるように、当該ポリセラーゼ−Iポリペプチド又はそれから誘導された断片を単離したものを用いることもできるが、決定された当該ポリセラーゼ−Iタンパク質のアミノ酸配列情報を基に、適当なオリゴペプチドを化学合成しそれを抗原として利用することができる。代表的には配列表の配列番号:14 (図1及び2)に存在するアミノ酸残基のうちの連続した少なくとも5個のアミノ酸を有するペプチドが挙げられる。
抗原は、そのまま適当なアジュバントと混合して動物を免疫するのに使用できるが、免疫原性コンジュゲートなどにしてもよい。例えば、免疫原として用いる抗原は、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質を断片化したもの、あるいはそのアミノ酸配列に基づき特徴的な配列領域を選び、ポリペプチドをデザインして化学合成して得られた合成ポリペプチド断片であってもよい。また、その断片を適当な縮合剤を介して種々の担体タンパク質類と結合させてハプテン−タンパク質の如き免疫原性コンジュゲートとし、これを用いて特定の配列のみと反応できる(あるいは特定の配列のみを認識できる)モノクローナル抗体をデザインするのに用いることもできる。デザインされるポリペプチドには予めシステイン残基などを付加し、免疫原性コンジュゲートの調製を容易にできるようにしておくことができる。担体タンパク質類と結合させるにあたっては、担体タンパク質類はまず活性化されることができる。こうした活性化にあたり活性化結合基を導入することが挙げられる。
活性化結合基としては、(1) 活性化エステルあるいは活性化カルボキシル基、例えばニトロフェニルエステル基、ペンタフルオロフェニルエステル基、1−ベンゾトリアゾールエステル基、N−スクシンイミドエステル基など、(2) 活性化ジチオ基、例えば2−ピリジルジチオ基などが挙げられる。担体タンパク質類としては、キーホール・リンペット・ヘモシアニン (KLH)、牛血清アルブミン (BSA)、卵白アルブミン、グロブリン、ポリリジンなどのポリペプタイド、細菌菌体成分、例えばBCG などが挙げられる。
【0070】
2.免疫原性抗原による動物の免疫
免疫は、当業者に知られた方法により行うことができ、例えば村松繁、他編、実験生物学講座 14 、免疫生物学、丸善株式会社、昭和60年、日本生化学会編、続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、東京化学同人、1986年、日本生化学会編、新生化学実験講座 12 、分子免疫学 III、抗原・抗体・補体、東京化学同人、1992年などに記載の方法に準じて行うことができる。免疫化剤を(必要に応じアジュバントと共に)一回又はそれ以上の回数哺乳動物に注射することにより免疫化される。代表的には、該免疫化剤及び/又はアジュバントを哺乳動物に複数回皮下注射あるいは腹腔内注射することによりなされる。免疫化剤は、上記抗原ペプチドあるいはその関連ペプチド断片を含むものが挙げられる。免疫化剤は、免疫処理される哺乳動物において免疫原性であることの知られているタンパク質(例えば上記担体タンパク質類など)とコンジュゲートを形成せしめて使用してもよい。アジュバントとしては、例えばフロイント完全アジュバント、リビ(Ribi)アジュバント、百日咳ワクチン、BCG 、リピッドA、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカなどが挙げられる。免疫は、例えばBALB/cなどのマウス、ハムスター、その他の適当な動物を使用して行われる。抗原の投与量は、例えばマウスに対して約1〜約400 μg/動物で、一般には宿主動物の腹腔内や皮下に注射し、以後1〜4週間おきに、好ましくは1〜2週間ごとに腹腔内、皮下、静脈内あるいは筋肉内に追加免疫を2〜10回程度反復して行う。免疫用のマウスとしてはBALB/c系マウスの他、BALB/c系マウスと他系マウスとのF1マウスなどを用いることもできる。必要に応じ、抗体価測定系を調製し、抗体価を測定して動物免疫の程度を確認できる。本発明の抗体は、こうして得られ免疫された動物から得られたものであってよく、例えば、抗血清、ポリクローナル抗体などを包含する。
【0071】
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
細胞融合に使用される無限増殖可能株(腫瘍細胞株)としては免疫グロブリンを産生しない細胞株から選ぶことができ、当該分野で知られたものから選択することができ、例えば P3−NS−1−Ag4−1 (NS−1, Eur. J. Immunol., 6: 511−519, 1976) 、SP−2/0−Ag14 (SP−2, Nature, 276: 269−270, 1978)、マウスミエローマ MOPC−21セルライン由来のP3−X63−Ag8−U1 (P3U1, Curr. Topics Microbiol. Immunol., 81: 1−7, 1978 )、P3−X63−Ag8 (X63, Nature, 256: 495−497, 1975 ) 、P3−X63−Ag8−653 (653, J. Immunol., 123: 1548−1550, 1979) などを用いることができる。8−アザグアニン耐性のマウスミエローマ細胞株はダルベッコMEM 培地 (DMEM培地) 、RPMI−1640 培地などの細胞培地に、例えばペニシリン、アミカシンなどの抗生物質、牛胎児血清(FCS) などを加え、さらに8−アザグアニン(例えば5〜45μg/ml) を加えた培地で継代されるが、細胞融合の2〜5日前に正常培地で継代して所要数の細胞株を用意することができる。また使用細胞株は、凍結保存株を約37℃で完全に解凍したのち RPMI−1640培地などの正常培地で3回以上洗浄後、正常培地で培養して所要数の細胞株を用意したものであってもよい。
【0072】
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合
上記〔2.免疫原性抗原による動物の免疫〕の工程に従い免疫された動物、例えばマウスは最終免疫後、2〜5日後にその脾臓が摘出され、それから脾細胞懸濁液を得る。脾細胞の他、生体各所のリンパ節細胞を得て、それを細胞融合に使用することもできる。こうして得られた脾細胞懸濁液と上記3.の工程に従い得られたミエローマ細胞株を、例えば最小必須培地(MEM培地) 、DMEM培地、RPMI−1640 培地などの細胞培地中に置き、細胞融合剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)を添加する。細胞融合剤としては、この他各種当該分野で知られたものを用いることができ、この様なものとしては不活性化したセンダイウイルス(HVJ: Hemagglutinating Virus of Japan)なども挙げられる。好ましくは、例えば30〜60%のポリエチレングリコールを 0.5〜2ml加えることができ、分子量が 1,000〜8,000 のポリエチレングリコールを用いることができ、さらに分子量が 1,000〜4,000 のポリエチレングリコールがより好ましく使用できる。融合培地中でのポリエチレングリコールの濃度は、例えば30〜60%となるようにすることが好ましい。必要に応じ、例えばジメチルスルホキシドなどを少量加え、融合を促進することもできる。融合に使用する脾細胞(リンパ球): ミエローマ細胞株の割合は、例えば 1:1〜20:1とすることが挙げられるが、より好ましくは 4:1〜7:1 とすることができる。
融合反応を1〜10分間行い、次にRPMI−1640 培地などの細胞培地を加える。融合反応処理は複数回行うこともできる。融合反応処理後、遠心などにより細胞を分離した後選択用培地に移す。
【0073】
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
選択用培地としては、例えばヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む、FCS 含有MEM 培地、RPMI−1640 培地などの培地、所謂 HAT培地が挙げられる。選択培地交換の方法は、一般的には培養プレートに分注した容量と等容量を翌日加え、その後1〜3日ごとに HAT培地で半量ずつ交換するというように処理することができるが、適宜これに変更を加えて行うこともできる。また融合後8〜16日目には、アミノプテリンを除いた、所謂HT培地で1〜4日ごとに培地交換をすることができる。フィーダーとして、例えばマウス胸腺細胞を使用することもでき、それが好ましい場合がある。
ハイブリドーマの増殖のさかんな培養ウェルの培養上清を、例えば放射免疫分析(RIA) 、酵素免疫分析(ELISA) 、蛍光免疫分析(FIA) などの測定系、あるいは蛍光惹起細胞分離装置(FACS)などで、所定の断片ペプチドを抗原として用いたり、あるいは標識抗マウス抗体を用いて目的抗体を測定するなどして、スクリーニングしたりする。
目的抗体を産生しているハイブリドーマをクローニングする。クローニングは、寒天培地中でコロニーをピック・アップするか、あるいは限界希釈法によりなされうる。限界希釈法でより好ましく行うことができる。クローニングは複数回行うことが好ましい。
【0074】
6.モノクローナル抗体の製造
得られたハイブリドーマ株は、FCS 含有MEM 培地、RPMI−1640 培地などの適当な増殖用培地中で培養し、その培地上清から所望のモノクローナル抗体を得ることが出来る。大量の抗体を得るためには、ハイブリドーマを腹水化することが挙げられる。この場合ミエローマ細胞由来の動物と同系の組織適合性動物の腹腔内に各ハイブリドーマを移植し、増殖させるか、あるいは例えばヌード・マウスなどに各ハイブリドーマを移植し、増殖させ、該動物の腹水中に産生されたモノクローナル抗体を回収して得ることが出来る。動物はハイブリドーマの移植に先立ち、プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)などの鉱物油を腹腔内投与しておくことができ、その処理後、ハイブリドーマを増殖させ、腹水を採取することもできる。腹水液はそのまま、あるいは従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製してモノクローナル抗体として用いることができる。好ましくは、モノクローナル抗体を含有する腹水は、硫安分画した後、DEAE−セファロースの如き、陰イオン交換ゲル及びプロテインAカラムの如きアフィニティ・カラムなどで処理し精製分離処理できる。特に好ましくは抗原又は抗原断片(例えば合成ペプチド、組換え抗原タンパク質あるいはペプチド、抗体が特異的に認識する部位など)を固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、プロテインAを固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト・クロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0075】
また、トランスジェニックマウス又はその他の生物、例えば、その他の哺乳動物は、本発明の免疫原ポリペプチド産物に対するヒト化抗体などの抗体を発現するのに用いることができる。
またこうして大量に得られた抗体の配列を決定したり、ハイブリドーマ株から得られた抗体をコードする核酸配列を利用して、遺伝子組換え技術により抗体を作製することも可能である。当該モノクローナル抗体をコードする核酸は、例えばマウス抗体の重鎖や軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用するなどの慣用の手法で単離し配列決定することができる。一旦単離されたDNA は、上記したようにして発現ベクターに入れ、CHO, COSなどの宿主細胞に入れることができる。該DNA は、例えばホモジーニアスなマウスの配列に代えて、ヒトの重鎖や軽鎖の定常領域ドメインをコードする配列に置換するなどして修飾することが可能である (Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6581, 1984)。かくして所望の結合特異性を有するキメラ抗体やハイブリッド抗体も調製することが可能である。また、抗体は、下記するような縮合剤を用いることを含めた化学的なタンパク質合成技術を適用して、キメラ抗体やハイブリッド抗体を調製するなどの修飾をすることも可能である。
ヒト化抗体は、当該分野で知られた技術により行うことが可能である(例えば、Jones et al., Nature, 321: pp.522−525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332: pp.323−327 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239: pp.1534−1536 (1988))。ヒトモノクローナル抗体も、当該分野で知られた技術により行うことが可能で、ヒトモノクローナル抗体を生産するためのヒトミエローマ細胞やヒト・マウスヘテロミエローマ細胞は当該分野で知られている (Kozbor, J. Immunol., 133, pp.3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51−63, Marcel Dekker, Inc., New York (1987)) 。バイスペシフィックな抗体を製造する方法も当該分野で知られている (Millstein et al., Nature, 305: pp.537−539 (1983); WO93/08829; Traunecker et al., EMBO J., 10: pp.3655−3659 (1991); Suresh et al., ”Methods in Enzymology”, Vol. 121, pp.210 (1986)) 。
さらにこれら抗体をトリプシン、パパイン、ペプシンなどの酵素により処理して、場合により還元して得られるFab 、Fab’、F(ab’)2 といった抗体フラグメントにして使用してもよい。
【0076】
抗体は、既知の任意の検定法、例えば競合的結合検定、直接及び間接サンドイッチ検定、及び免疫沈降検定に使用することができる(Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147−158 (CRC Press, Inc., 1987) 。
抗体を検出可能な原子団にそれぞれコンジュゲートするには、当分野で知られる任意の方法を使用することができ、例えば、David et al., Biochemistry, 13巻, 1014−1021 頁(1974); Pain et al, J. Immunol. Meth., 40: pp.219−231 (1981);及び ”Methods in Enzymology”, Vol. 184, pp.138−163 (1990) により記載の方法が挙げられる。標識物を付与する抗体としては、IgG 画分、更にはペプシン消化後還元して得られる特異的結合部Fab’を用いることができる。これらの場合の標識物の例としては、下記するように酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼあるいはβ−D− ガラクトシダーゼなど)、化学物質、蛍光物質あるいは放射性同位元素などがある。
【0077】
本発明での検知・測定は、イムノ染色、例えば組織あるいは細胞染色、イムノアッセイ、例えば競合型イムノアッセイまたは非競合型イムノアッセイで行うことができ、ラジオイムノアッセイ、ELISA などを用いることができ、B−F分離を行ってもよいし、あるいは行わないでその測定を行うことができる。好ましくは放射免疫測定法や酵素免疫測定法であり、さらにサンドイッチ型アッセイが挙げられる。例えばサンドイッチ型アッセイでは、一方を本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及びその関連ペプチド断片に対する抗体とし、他方を当該ポリセラーゼ−Iタンパク質に対する別の種類の抗体とし、そして一方を検出可能に標識化する。同じ抗原を認識できる他の抗体を固相に固定化する。検体と標識化抗体及び固相化抗体を必要に応じ順次反応させるためインキュベーション処理し、ここで非結合抗体を分離後、標識物を測定する。測定された標識の量は抗原、すなわち当該ポリセラーゼ−Iポリペプチド断片抗原の量と比例する。このアッセイでは、不溶化抗体や、標識化抗体の添加の順序に応じて同時サンドイッチ型アッセイ、フォワード(forward)サンドイッチ型アッセイあるいは逆サンドイッチ型アッセイなどと呼ばれる。例えば洗浄、撹拌、震盪、ろ過あるいは抗原の予備抽出などは、特定の状況のもとでそれら測定工程の中で適宜採用される。特定の試薬、緩衝液などの濃度、温度あるいはインキュベーション処理時間などのその他の測定条件は、検体中の抗原の濃度、検体試料の性質などの要素に従い変えることができる。当業者は通常の実験法を用いながら各測定に対して有効な最適の条件を適宜選定して測定を行うことが出来る。
【0078】
抗原あるいは抗体を固相化できる多くの担体が知られており、本発明ではそれらから適宜選んで用いることができる。担体としては、抗原抗体反応などに使用されるものが種々知られており、本発明においても勿論これらの公知のものの中から選んで使用できる。特に好適に使用されるものとしては、例えばガラス、例えば活性化ガラス、多孔質ガラス、シリカゲル、シリカ−アルミナ、アルミナ、磁化鉄、磁化合金などの無機材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミド、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体など、架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、アガロース、架橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートなどの天然または変成セルロース、架橋デキストラン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂などの有機高分子物質、さらにそれらを乳化重合して得られたもの、細胞、赤血球などで、必要に応じ、シランカップリング剤などで官能性基を導入してあるものが挙げられる。
さらに、ろ紙、ビーズ、試験容器の内壁、例えば試験管、キュベット、タイタープレート、タイターウェル、ガラスセル、合成樹脂製セルなどの合成材料からなるセル、ガラス棒、合成材料からなる棒、末端を太くしたりあるいは細くしたりした棒、末端に丸い突起をつけたりあるいは偏平な突起をつけた棒、薄板状にした棒などの固体物質(物体)の表面などが挙げられる。
【0079】
これら担体へは、抗体を結合させることができ、好ましくは本発明で得られる抗原に対し特異的に反応するモノクローナル抗体を結合させることができる。担体とこれら抗原抗体反応に関与するものとの結合は、吸着などの物理的な手法、あるいは縮合剤などを用いたり、活性化されたものなどを用いたりする化学的な方法、さらには相互の化学的な結合反応を利用した手法などにより行うことが出来る。
標識としては、酵素、酵素基質、酵素インヒビター、補欠分子類、補酵素、酵素前駆体、アポ酵素、蛍光物質、色素物質、化学ルミネッセンス化合物、発光物質、発色物質、磁気物質、金属粒子、例えば金コロイドなど、放射性物質などを挙げることができる。酵素としては、脱水素酵素、還元酵素、酸化酵素などの酸化還元酵素、例えばアミノ基、カルボキシル基、メチル基、アシル基、リン酸基などを転移するのを触媒する転移酵素、例えばエステル結合、グリコシド結合、エーテル結合、ペプチド結合などを加水分解する加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼなどを挙げることができる。酵素は複数の酵素を複合的に用いて検知に利用することもできる。例えば酵素的サイクリングを利用することもできる。
代表的な放射性物質の標識用同位体元素としては、[32P], [125I], [131I],[3H],[14 C],[35S] などが挙げられる。
【0080】
代表的な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP) などのペルオキシダーゼ、大腸菌β−D−ガラクトシダーゼなどのガラクトシダーゼ、マレエート・デヒドロゲナーゼ、グルコース−6−フォスフェート・デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、カタラーゼ、ウシ小腸アルカリホスファターゼ、大腸菌アルカリホスファターゼなどのアルカリフォスファターゼなどが挙げられる。
アルカリホスファターゼを用いた場合、4−メチルウンベリフェリルフォスフェートなどのウンベリフェロン誘導体、ニトロフェニルホスフェートなどのリン酸化フェノール誘導体、NADPを利用した酵素的サイクリング系、ルシフェリン誘導体、ジオキセタン誘導体などの基質を使用したりして、生ずる蛍光、発光などにより測定できる。ルシフェリン、ルシフェラーゼ系を利用したりすることもできる。カタラーゼを用いた場合、過酸化水素と反応して酸素を生成するので、その酸素を電極などで検知することもできる。電極としてはガラス電極、難溶性塩膜を用いるイオン電極、液膜型電極、高分子膜電極などであることもできる。
【0081】
酵素標識は、ビオチン標識体と酵素標識アビジン(ストレプトアビジン)に置き換えることも可能である。標識は、複数の異なった種類の標識を使用することもできる。こうした場合、複数の測定を連続的に、あるいは非連続的に、そして同時にあるいは別々に行うことを可能にすることもできる。
本発明においては、信号の形成に4−ヒドロキシフェニル酢酸、1,2−フェニレンジアミン、テトラメチルベンジジンなどとHRP 、ウンベリフェリルガラクトシド、ニトロフェニルガラクトシドなどとβ−D−ガラクトシダーゼ、グルコース−6−リン酸・デヒドロゲナーゼなどの酵素試薬の組合わせも利用でき、ヒドロキノン、ヒドロキシベンゾキノン、ヒドロキシアントラキノンなどのキノール化合物、リポ酸、グルタチオンなどのチオール化合物、フェノール誘導体、フェロセン誘導体などを酵素などの働きで形成しうるものが使用できる。
蛍光物質あるいは化学ルミネッセンス化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート、例えばローダミンBイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネートなどのローダミン誘導体、ダンシルクロリド、ダンシルフルオリド、フルオレスカミン、フィコビリプロテイン、アクリジニウム塩、ルミフェリン、ルシフェラーゼ、エクォリンなどのルミノール、イミダゾール、シュウ酸エステル、希土類キレート化合物、クマリン誘導体などが挙げられる。
【0082】
標識するには、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応などを利用して行うことができ、公知の方法あるいは当該分野の当業者が容易になしうる方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。また上記免疫原性複合体作製に使用されることのできる縮合剤、担体との結合に使用されることのできる縮合剤などを用いることができる。
縮合剤としては、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N’−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1− カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシンイミジル (4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル 4−(1− マレイミドフェニル)ブチレート、 N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)コハク酸イミド(EMCS), イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4’−ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4−メルカプトブチリルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S−アセチルメルカプトアセテートなどが挙げられる。
【0083】
本発明の測定法によれば、測定すべき物質を酵素などで標識したモノクローナル抗体などの標識抗体試薬と、担体に結合された抗体とを順次反応させることができるし、同時に反応させることもできる。試薬を加える順序は選ばれた担体系の型により異なる。感作されたプラスチックなどのビーズを用いた場合には、酵素などで標識したモノクローナル抗体などの標識抗体試薬を測定すべき物質を含む検体試料と共に最初適当な試験管中に一緒に入れ、その後該感作されたプラスチックなどのビーズを加えることにより測定を行うことができる。
本発明の定量法においては、免疫学的測定法が用いられるが、その際の固相担体としては、抗体などタンパク質を良く吸着するポリスチレン製、ポリカーボネイト製、ポリプロピレン製あるいはポリビニル製のボール、マイクロプレート、スティック、微粒子あるいは試験管などの種々の材料及び形態を任意に選択し、使用することができる。
測定にあたっては至適pH、例えばpH約4〜約9に保つように適当な緩衝液系中で行うことができる。特に適切な緩衝剤としては、例えばアセテート緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、フォスフェート緩衝剤、トリス緩衝剤、トリエタノールアミン緩衝剤、ボレート緩衝剤、グリシン緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、Tris−HCl緩衝剤などが挙げられる。緩衝剤は互いに任意の割合で混合して用いることができる。抗原抗体反応は約0〜約60℃の間の温度で行うことが好ましい。
酵素などで標識されたモノクローナル抗体などの抗体試薬及び担体に結合せしめられた抗体試薬、さらには測定すべき物質のインキュベーション処理は、平衡に達するまで行うことができるが、抗原抗体反応の平衡が達成されるよりもずっと早い時点で固相と液相とを分離して限定されたインキュベーション処理の後に反応を止めることができ、液相又は固相のいずれかにおける酵素などの標識の存在の程度を測ることができる。測定操作は、自動化された測定装置を用いて行うことが可能であり、ルミネセンス・ディテクター、ホト・ディテクターなどを使用して基質が酵素の作用で変換されて生ずる表示シグナルを検知して測定することもできる。
【0084】
抗原抗体反応においては、それぞれ用いられる試薬、測定すべき物質、さらには酵素などの標識を安定化したり、抗原抗体反応自体を安定化するように適切な手段を講ずることができる。さらに、非特異的な反応を除去し、阻害的に働く影響を減らしたり、あるいは測定反応を活性化したりするため、タンパク質、安定化剤、界面活性化剤、キレート化剤などをインキュベーション溶液中に加えることもできる。キレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩 (EDTA) がより好ましい。
当該分野で普通に採用されていたりあるいは当業者に知られた非特異的結合反応を防ぐためのブロッキング処理を施してもよく、例えば、哺乳動物などの正常血清タンパク質、アルブミン、スキムミルク、乳発酵物質、コラーゲン、ゼラチンなどで処理することができる。非特異的結合反応を防ぐ目的である限り、それらの方法は特に限定されず用いることが出来る。
本発明の測定方法で測定される試料としては、あらゆる形態の溶液やコロイド溶液、非流体試料などが使用しうるが、好ましくは生物由来の試料、例えば胸腺、睾丸、腸、腎臓、脳、乳癌、卵巣癌、結腸・直腸癌、血液、血清、血漿、関節液、脳脊髄液、膵液、胆汁液、唾液、羊水、尿、その他の体液、細胞培養液、組織培養液、組織ホモジュネート、生検試料、組織、細胞などが挙げられる。
これら個々の免疫学的測定法を含めた各種の分析・定量法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作などの設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該対象物質あるいはそれと実質的に同等な活性を有する物質に関連した測定系を構築すればよい。
【0085】
これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江 寛編,「ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和49年発行;入江 寛編,「続ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和54年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」,医学書院,昭和53年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第2版),医学書院,昭和57年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第3版),医学書院,昭和62年発行;H. V. Vunakis et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 70 (Immunochemical Techniques, Part A), Academic Press, New York (1980); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 73 (Immunochemical Techniques, Part B), Academic Press, New York (1981); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 74 (Immunochemical Techniques, Part C), Academic Press, New York (1981); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 84 (Immunochemical Techniques, Part D: Selected Immunoassays), Academic Press, New York (1982); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 92 (Immunochemical Techniques, Part E: Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods), Academic Press, New York (1983); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 121 (Immunochemical Techniques, Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies), Academic Press, New York (1986); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 178 (Antibodies, Antigens, and Molecular Mimicry), Academic Press, New York (1989); M. Wilchek et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 184 (Avidin−Biotin Technology), Academic Press, New York (1990); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 203 (Molecular Design and Modeling: Concepts and Applications, Part B: Anibodies and Antigens, Nucleic Acids, Polysaccharides, and Drugs), Academic Press, New York (1991) などあるいはそこで引用された文献 (それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる) 〕。
【0086】
本発明の抗ポリセラーゼ−I抗体(抗ヒトセラーゼ−1, −2又は −3 抗体、抗ヒトポリセラーゼ−I TM ドメイン抗体、抗ヒトポリセラーゼ−I LDLRドメイン抗体及び抗ヒトポリセラーゼ−Iペプチドフラグメント抗体を含む)、特にモノクローナル抗体を用いて、エピトープマッピングを行うこともでき、各エピトープを認識する抗体を用いれば当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及びその関連ペプチド断片などの検知・測定を行うことができる。
当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及びその関連ペプチド断片に対する抗体は、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質によるタンパク質分解、さらには細胞外マトリックス成分の分解、ガンを含めた腫瘍の進行、転移、ホメオスタシスあるいは血管新生などのプロセスへの制御あるいは促進または抑制などの現象の検出及び/又は測定、さらには当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の過剰あるいは減少により生ずる各種の生理活性物質あるいは生理現象又は生物現象の検出及び/又は測定、また、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質産生を制御する因子や機構の研究・開発などに有用である。該抗体、特にモノクローナル抗体は、(i) 当該ポリセラーゼ−Iタンパク質とその基質あるいは制御因子との間での相互作用に起因する組織あるいは細胞が関連する障害、異常及び/又は疾患を検出したり、(ii)当該ポリセラーゼ−Iタンパク質とその基質あるいは制御因子との間での相互作用に起因する細胞の変化、細胞の腫瘍化、細胞の移動、浸潤、遊走及び/又は転移あるいはその可能性を検出したり、(iii) 当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の酵素活性に関連して生ずる障害、異常及び/又は疾患あるいはその可能性を検出したり、(iv)当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の発現量を測定したり、(v) 活性化されたセラーゼタンパク質の変化を検出及び/又は測定したり、(vi)当該ポリセラーゼ−Iタンパク質産生を制御する化合物などの探索をしたり、及び/又は(vii) 該当該ポリセラーゼ−Iタンパク質産生を制御する化合物の活性の検知及び/又は測定をしたりなどするのに有用である。免疫応答、血管新生、血液凝固、創傷治癒、再生プロセス、胚着床、胎児発達などのプロセス、癌細胞の浸潤、転移、関節炎、リウマチあるいは心臓血管におけるプロセス、血液学的なプロセス及び神経退化のプロセス、細胞の異常、組織の異常、がんの移動性、浸潤性、走化性及び/又は転移性の程度を知るのに使用できると期待される。
本発明に従えば、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質による様々な生理活性あるいは生物活性による現象・作用の促進活性あるいは抑制・阻害活性を検出及び/又は測定し、組織の疾患予防・治療剤、抗炎症剤、抗がん剤、がん転移阻害剤、動脈硬化症治療剤、関節破壊治療剤、抗アレルギー剤及び/又は免疫抑制剤の効果判定モニターとして使用することが可能となる。
また、本発明では、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質による組織・細胞あるいはタンパク質の異常化現象の検出及び/又は測定方法やそのための試薬が提供できる。
【0087】
本発明の活性成分〔例えば、(a) 当該ポリセラーゼ−Iポリペプチド、その一部のペプチドまたはそれらの塩、それに関連するペプチド(ホモログを含む)など、(b) 該当該ポリセラーゼ−Iタンパク質あるいは当該ポリセラーゼ−IポリペプチドをコードするDNA などの核酸など、(c) 本発明の抗体、その一部断片(モノクローナル抗体を包含する) またはその誘導体、(d) 当該ポリセラーゼ−Iタンパク質(セラーゼ−1やセラーゼ−2も含む)の活性を制御する化合物(当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の活性を促進したりあるいは抑制・阻害するなどの現象、あるいは組織あるいはタンパク質の変質・過剰生産あるいは分解現象といった生物学的活性を促進あるいは抑制及び/又は阻害する化合物)またはその塩、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質産生を制御する化合物またはその塩、(e) 本発明のDNA などの核酸に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドなど、(f) 本発明を使用して見出された活性物質など〕を医薬として用いる場合、例えば当該ポリセラーゼ−I(セラーゼ−1やセラーゼ−2も含む)の酵素活性阻害剤またはそれらの塩などは、通常単独或いは薬理的に許容される各種製剤補助剤と混合して、医薬組成物又は医薬調製物などとして投与することができる。好ましくは、経口投与、局所投与、または非経口投与などの使用に適した製剤調製物の形態で投与され、目的に応じていずれの投与形態(吸入法、あるいは直腸投与も包含される)によってもよい。
また、本発明の活性成分は、各種医薬、例えば抗腫瘍剤(抗がん剤)、腫瘍移転阻害剤、血栓形成阻害剤、関節破壊治療剤、鎮痛剤、消炎剤及び/又は免疫抑制剤と配合して使用することもでき、それらは、有利な働きを持つものであれば制限なく使用でき、例えば当該分野で知られたものの中から選択することができる。
【0088】
そして、非経口的な投与形態としては、局所、経皮、静脈内、筋肉内、皮下、皮内もしくは腹腔内投与を包含し得るが、患部への直接投与も可能であり、またある場合には好適でもある。好ましくはヒトを含む哺乳動物に経口的に、あるいは非経口的(例、細胞内、組織内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、胸腔内、脊髄腔内、点滴法、注腸、経直腸、点耳、点眼や点鼻、歯、皮膚や粘膜への塗布など)に投与することができる。具体的な製剤調製物の形態としては、溶液製剤、分散製剤、半固形製剤、粉粒体製剤、成型製剤、浸出製剤などが挙げられ、例えば、錠剤、被覆錠剤、糖衣を施した剤、丸剤、トローチ剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、マイクロカプセル剤、埋込剤、粉末剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、注射剤、液剤、エリキシル剤、エマルジョン剤、灌注剤、シロップ剤、水剤、乳剤、懸濁剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、スプレー剤、吸入剤、噴霧剤、軟膏製剤、硬膏製剤、貼付剤、パスタ剤、パップ剤、クリーム剤、油剤、坐剤(例えば、直腸坐剤)、チンキ剤、皮膚用水剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、塗布剤、輸液剤、注射用液剤などのための粉末剤、凍結乾燥製剤、ゲル調製品などが挙げられる。
医薬用の組成物は通常の方法に従って製剤化することができる。例えば、適宜必要に応じて、生理学的に認められる担体、医薬として許容される担体、アジュバント剤、賦形剤、補形剤、希釈剤、香味剤、香料、甘味剤、ベヒクル、防腐剤、安定化剤、結合剤、pH調節剤、緩衝剤、界面活性剤、基剤、溶剤、充填剤、増量剤、溶解補助剤、可溶化剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤、硬化剤、吸収剤、粘着剤、弾性剤、可塑剤、崩壊剤、噴射剤、保存剤、抗酸化剤、遮光剤、保湿剤、緩和剤、帯電防止剤、無痛化剤などを単独もしくは組合わせて用い、それとともに本発明のタンパク質などを混和することによって、一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態にして製造することができる。
【0089】
非経口的使用に適した製剤としては、活性成分と、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る媒体との無菌性溶液、または懸濁液剤など、例えば注射剤などが挙げられる。一般的には、水、食塩水、デキストロース水溶液、その他関連した糖の溶液、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類が好ましい注射剤用液体担体として挙げられる。注射剤を調製する際は、蒸留水、リンゲル液、生理食塩液のような担体、適当な分散化剤または湿化剤及び懸濁化剤などを使用して当該分野で知られた方法で、溶液、懸濁液、エマルジョンのごとき注射しうる形に調製する。
注射用の水性液としては、例えば生理食塩液、ブドウ糖やその他の補助薬(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)を含む等張液などが挙げられ、薬理的に許容される適当な溶解補助剤、例えばアルコール(例えばエタノールなど)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えばポリソルベート 80 TM, HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)又は浸透圧調節のための試薬、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、アスコルビン酸などの酸化防止剤、吸収促進剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
【0090】
非経口投与には、界面活性剤及びその他の薬学的に許容される助剤を加えるか、あるいは加えずに、水、エタノール又は油のような無菌の薬学的に許容される液体中の溶液あるいは懸濁液の形態に製剤化される。製剤に使用される油性ベヒクルあるいは溶剤としては、天然あるいは合成あるいは半合成のモノあるいはジあるいはトリグリセリド類、天然、半合成あるいは合成の油脂類あるいは脂肪酸類が挙げられ、例えばピーナッツ油、トウモロコシ油、大豆油、ゴマ油などの植物油が挙げられる。例えば、この注射剤は、通常本発明化合物を0.1 〜10重量%程度含有するように調製されることができる。
局所的、例えば口腔、又は直腸的使用に適した製剤としては、例えば洗口剤、歯磨き剤、口腔噴霧剤、吸入剤、軟膏剤、歯科充填剤、歯科コーティング剤、歯科ペースト剤、坐剤などが挙げられる。洗口剤、その他歯科用剤としては、薬理的に許容される担体を用いて慣用の方法により調製される。口腔噴霧剤、吸入剤としては、本発明化合物自体又は薬理的に許容される不活性担体とともにエアゾール又はネブライザー用の溶液に溶解させるかあるいは、吸入用微粉末として歯などへ投与できる。軟膏剤は、通常使用される基剤、例えば、軟膏基剤(白色ワセリン、パラフィン、オリーブ油、マクロゴール400 、マクロゴール軟膏など)などを添加し、慣用の方法により調製される。
歯、皮膚への局所塗布用の薬品は、適切に殺菌した水または非水賦形剤の溶液または懸濁液に調剤することができる。添加剤としては、例えば亜硫酸水素ナトリウムまたはエデト酸二ナトリウムのような緩衝剤;酢酸または硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウムまたはクロロヘキシジンのような殺菌及び抗真菌剤を含む防腐剤及びヒプロメルローズのような濃厚剤が挙げられる。
坐剤は、当該分野において周知の担体、好ましくは非刺激性の適当な補形剤、例えばポリエチレングリコール類、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセライドなどの、好ましくは常温では固体であるが腸管の温度では液体で直腸内で融解し薬物を放出するものなどを使用して、慣用の方法により調製されるが、通常本発明化合物を0.1 〜95重量%程度含有するように調製される。使用する賦形剤及び濃度によって薬品は、賦形剤に懸濁させるかまたは溶解させることができる。局部麻酔剤、防腐剤及び緩衝剤のような補助薬は、賦形剤に溶解可能である。
【0091】
経口的使用に適した製剤としては、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、トローチのような固形組成物や、液剤、シロップ剤、懸濁剤のような液状組成物などが挙げられる。製剤調製する際は、当該分野で知られた製剤補助剤などを用いる。錠剤及び丸剤はさらにエンテリックコーティングされて製造されることもできる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。
また、活性成分がタンパク質やポリペプチドである場合、ポリエチレングリコール(PEG)は、哺乳動物中で極めて毒性が低いことから、それを結合させることは特に有用である。また、PEG を結合せしめると、異種性化合物の免疫原性及び抗原性を効果的に減少せしめることができる場合がある。該化合物は、マイクロカプセル装置の中に入れて与えてもよい。PEG のようなポリマーは、アミノ末端のアミノ酸のα−アミノ基、リジン側鎖のε−アミノ基、アスパラギン酸又はグルタミン酸側鎖のカルボキシル基、カルボキシ末端のアミノ酸のα−カルボキシル基、又はある種のアスパラギン、セリン又はトレオニン残基に付着したグリコシル鎖の活性化された誘導体に、簡便に付着させることができる。
タンパク質との直接的な反応に適した多くの活性化された形態のPEG が知られている。タンパク質のアミノ基と反応させるのに有用なPEG 試薬としては、カルボン酸、カルボネート誘導体の活性エステル、特に、脱離基がN−ヒドロキシスクシンイミド、p−ニトロフェノール、イミダゾール、又は1−ヒドロキシ−2−ニトロベンゼン−4−スルフォネートであるものが挙げられる。同様に、アミノヒドラジン又はヒドラジド基を含有するPEG 試薬は、タンパク質中の過ヨウ素酸酸化によって生成したアルデヒドとの反応に有用である。
【0092】
さらに、本発明のDNA などの核酸を上記したような治療及び/又は予防剤として用いる場合、該核酸はそれを単独で用いることもできるし、あるいは上記したような遺伝子組換え技術で使用される適当なベクター、例えばレトロウイルス由来ベクターなどウイルス由来のベクターなどに結合させるなどして用いることができる。本発明のDNA などの核酸は通常の知られた方法で投与でき、そのままで、あるいは、例えば細胞内への摂取が促進されるように、適当な補助剤あるいは生理的に許容される担体などと共に、製剤化されて用いることができ、上記したような、医薬組成物又は医薬調製物などとして投与することができる。また遺伝子治療として知られた方法を適用することもできる。遺伝子治療技術は、当該分野で知られた手法を適用でき、例えば、Peter J. Quesenberry (Ed.), Stem Cell Biology and Gne Therapy, WileyEurope (1998) などに開示してあり、その内容(そこで引用された文献記載の内容も含まれる)はそれらを参照することにより本明細書にすべて含められるものである。
本発明の活性成分は、その投与量を広範囲にわたって選択して投与できるが、その投与量及び投与回数などは、処置患者の性別、年齢、体重、一般的健康状態、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組み合わせ、患者のその時に治療を行なっている病状の程度に応じ、それらあるいはその他の要因を考慮して決められる。
医薬品製造にあたっては、その添加剤などや調製法などは、例えば日本薬局方解説書編集委員会編、第十四改正 日本薬局方解説書、平成13年6月27日発行、株式会社廣川書店;一番ヶ瀬 尚 他編 医薬品の開発12巻(製剤素剤〔I〕)、平成2年10月15日発行、株式会社廣川書店;同、医薬品の開発12巻(製剤素材〔II〕)平成2年10月28日発行、株式会社廣川書店などの記載を参考にしてそれらのうちから必要に応じて適宜選択して適用することができる。
【0093】
本発明の活性成分は、当該ポリセラーゼ−Iの活性(例えば、ヒトセラーゼ−1, −2, −3、ヒトポリセラーゼ−I内のTMドメイン及び/又はヒトポリセラーゼ−I内のLDLRドメインの生物活性など)を制御(促進あるいは抑制・阻害)するといった生物学的活性をもつものであれば特に限定されないが、好ましくは有利な作用を持つものが挙げられる。本発明の活性成分は、例えば、(a) 当該ポリセラーゼ−Iタンパク質、その変異体ポリペプチド(ホモログを含む)、その一部のペプチドまたはそれらの塩など、(b) 該当該ポリセラーゼ−Iタンパク質をコードするDNA 、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質変異体ポリペプチドをコードするDNA などの核酸など、(c) 本発明の抗体、その一部断片(モノクローナル抗体を包含する) またはその誘導体、(d) 当該ポリセラーゼ−Iタンパク質による生体成分との間の相互作用を制御(促進あるいは抑制・阻害)するといった生物学的活性に有利な作用をもつ化合物またはその塩などが包含される。
本発明の活性成分は、当該ポリセラーゼ−I(ヒトセラーゼ−1, −2, −3、ヒトポリセラーゼ−I内のTMドメイン及び/又はヒトポリセラーゼ−I内のLDLRドメインなど)と生体成分との間の相互作用に起因する各種組織あるいは細胞における変化を制御(促進あるいは抑制・阻害)するのに有用と期待される。また、該活性成分は、当該ポリセラーゼ−Iの活性発現の制御(促進あるいは抑制・阻害)に有用であり、当該ポリセラーゼ−Iと生体成分との間の相互作用に起因する障害、異常及び/又は疾患の予防あるいは治療に有用である。また、当該ポリセラーゼ−I(ヒトセラーゼ−1, −2, −3、ヒトポリセラーゼ−I内のTMドメイン及び/又はヒトポリセラーゼ−I内のLDLRドメインなど)が関与する腫瘍細胞などの移動、浸潤、遊走及び/又は転移の制御、例えば抑制に有用であると期待される。
本発明の活性成分(当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及びその関連ペプチドを含む)は、悪性腫瘍、すなわち、がんの移動、浸潤及び/又は転移の阻止及び/又は抑制するのに有用で、血管形成・新生阻害剤、抗腫瘍剤及び/又はがん転移抑制剤として期待できる。また、血液系細胞の、該ポリセラーゼ−Iが関与した障害、異常及び/又は疾患の予防あるいは治療にも有用で、動脈硬化症治療・予防剤、血栓症治療・予防剤、消炎剤及び/又は免疫抑制剤としても期待できる。さらに、抗リウマチ剤、関節破壊治療剤などとしても期待できる。
【0094】
さらに、本発明では、(a) 当該ポリセラーゼ−Iタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号:14 のアミノ酸配列)に基づいて分子設計を施して、当該ポリセラーゼ−Iと生体成分との間の相互作用を制御(促進あるいは抑制・阻害)する活性を有する物質を得るのに使用できる。こうして得られる物質も本発明の思想の範囲内のものであるし、本発明の活性成分として扱うことができる。該配列から特定の特徴部分を選択し、(i) そのうちの薬理作用団をイソスターで置き換えることによりなされるか、(ii) 構成アミノ酸残基の少なくとも1個をD体のアミノ酸残基に置き換えるか、(iii) アミノ酸残基の側鎖を修飾するか、(iv) 該配列に存在するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を配置して連結するか、(v) 立体構造を解析してmimic 体をデザインすることなど、当該分野で採用される技術を駆使して行うことができる(例えば、首藤 紘一 編 医薬品の開発7巻(分子設計)、平成2年6月25日発行、株式会社廣川書店及びそこで引用している文献や論文など) 。そうした技術の一部は、上記で説明したものを含んでいる。
【0095】
明細書及び図面において、用語は、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるか、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。代表的な用語の意味を以下に示す。
アミノ酸配列に関しては:
A:アラニン (Ala) M:メチオニン (Met)
C:システイン (Cys) N:アスパラギン (Asn)
D:アスパラギン酸 (Asp) P:プロリン (Pro)
E:グルタミン酸(Glu) Q:グルタミン (Gln)
F:フェニルアラニン(Phe) R:アルギニン (Arg)
G:グリシン(Gly) S:セリン (Ser)
H:ヒスチジン(His) T:スレオニン (Thr)
I:イソロイシン(Ile) V:バリン (Val)
K:リジン(Lys) W:トリプトファン (Trp)
L:ロイシン(Leu) Y:チロシン (Tyr)
ヌクレオチド配列に関しては:
A,a:アデニン G,g: グアニン
C,c:シトシン T,t: チミン
【0096】
【実施例】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。以下の実施例における通常慣用されるDNAクローニングを含めた技術としては、標準的な実験マニュアル、例えば J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989) & J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd Edition), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2001)に記載されるように実施できる。また特にPCR 法では、R. Saiki et al., Science, 230: 1350, 1985; R. Saiki et al., Science, 239: 487, 1988; H. A. Erlich (ed.), PCR Technology, Stockton Press, 1989 ; D. M. Glover et al. (ed.), ”DNA Cloning”, 2nd ed., Vol. 1, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995); M. A. Innis et al. (ed.), ”PCR Protocols: a guide to methods and applications”, Academic Press, New York (1990)); M. J. McPherson, P. Quirke and G. R. Taylor (ed.), PCR: a practical approach, IRL Press, Oxford (1991) などに記載の方法に準じて行っているし、また市販の試薬あるいはキットを用いている場合はそれらに添付の指示書(protocols) や添付の薬品などを使用している。
【0097】
実施例1
実施例1 ポリセラーゼ−I 分子クローニング
(1)方法
BLAST プログラムを使用してヒトゲノムデータベースのコンピューター・サーチを行った結果、ヒトのDNA コンテイグ(contig) NT 011245(染色体 19p13)の中に3つの領域を同定した。概念上の翻訳をしてみると、セリンプロテアーゼ類と構造的に認めるに足る特徴の存在を示していた。次に、これらのプロテアーゼ類のcDNAをクローン化するため、PCR に基づいたアプローチを設計した。この戦略では、最初に、該クラスターの中に存在する中央のプロテアーゼ遺伝子と推定される遺伝子から誘導される特異的オリゴヌクレオチドを使用することを含んでいる。デザインしたプライマーの配列は、
【0098】
Polys2f : 5’−GTCGTGGGCGGGTTCGGAGCT 〔配列番号:1〕
Polys2f−nd:5’−CTTCTGCGGAGCAACTGTGGT 〔配列番号:2〕
Polys2r : 5’−CAGGAAGCCTGCGCAGATCAT 〔配列番号:3〕
Polys2r−nd: 5’−CTGCGCAGATCATGCGGTCTG 〔配列番号:4〕
【0099】
(上記中、「f」はフォアード(forward)を示し、「r」はリバース(reverse)を示し、そして「nd」はネスティッド(nested)オリゴヌクレオチドであることを示す)である。PCR 反応は、変性(94℃、20秒)、アニーリング(64℃、15秒)、伸張(68℃、60秒)を40サイクル行うもので、GeneAmp 2400 PCRシステム(PerkinElmer Life Sciences) を使用して行った。市販されて利用可能である異なるcDNAライブラリーとExpand High Fidely PCRシステム(Roche Molecular Biochemicals)を使用した。ヒトのcDNAライブラリーから増幅されたPCR 産物 (439 bp) をクローニングし、自動的DNAシークエンサー ABI−PRISM 310(PerkinElmer Life Sciences) で配列解析した。クローン化されたcDNAの5’末端と3’末端は、MarathonTM cDNA 増幅キット(Clontech)を使用し、ヒトの肝臓からのRNA を用いたRACE (Rapid Amplification of cDNAs Ends)の連続操作により伸張した。各サイクルでそれぞれのエンドあたり約300 bpの伸張ができた。RACEで伸張されたcDNAクローンを配列解析した結果、NT 011245 DNA コンテイグの中央のプロテアーゼ遺伝子の5’−端と3’−端に存在する2つの更なるプロテアーゼ遺伝子が、実際のところ、3つのプロテアーゼ様のドメインを持ったタンパク質と推定されるものをコードしていることのできる単一の遺伝子の部分であることが解明できた。この大きな遺伝子の開始コドン及び終止コドンの位置を同定できたことから、
【0100】
プライマー
PolysATG:5’−ATGGAGCCCACTGTGGCTGAC 〔配列番号:5〕
と
polysEND:5’−CTCCTGGATGTGCTGTCCTAT 〔配列番号:6〕
を用いたPCR によって全長のcDNAを得ることができた。PCR 条件は上記のように行ったが、但し、伸張は180 秒で行った。PCR 産物をクローンニングし、その同一性はヌクレオチドシークエンシングによって確認した。
【0101】
(2)結果
新規プロテアーゼ遺伝子を捜し出すためのヒトゲノムデータベースのサーチにより、新しいセリンプロテアーゼ類をコードしていると推定される3個の領域を含んでいるDNA contig(シークエンス済みの巨大ゲノミックDNA)を同定することができた。しかしながら、これら3個の領域を詳細に配列解析してみると、それらはお互い密に配置されており、異なったプロテアーゼ・モジュールを含んでいる単一の遺伝子の一部であることを示唆するものであることが示された。この可能性をさらに探究するために、本発明者等は、中央部のプロテアーゼ・モジュールから導かれた特異オリゴヌクレオチドを使用してのPCR 増幅を実施し、次に5’− 及び3’−RACE 増幅を行った。こうした手法により最終的に3180bpのcDNAを作り出し、クローニング及び配列決定をした後、3個のセリンプロテアーゼ・ドメインと予測されるドメインに関するコード情報を保持する単一のRNA 転写物が存在することを明らかにした(図1及び2)。
【0102】
この全長cDNA配列をコンピューター解析した結果、114,020 の分子量と計算されるところの1059個のアミノ酸よりなるタンパク質をコードしていることが示された(配列表の配列番号:13 及び14)。TMHMM (transmembrane helics Markov model) プログラムを用いてのSMART 解析によると、本タンパク質は28番目の残基〜50番目の残基間のII型膜貫通(type II transmembrane)セグメントと、 154番目の位置〜189 番目の位置の間の低密度リポプロテイン・レセプター・ドメイン・クラスA (LDL レセプターA (LDLR)) とを保有持していることが示された。このLDL レセプターA モジュールに引き続いては、3個のプロテアーゼ・ドメインが容易に認識されるものであった。すなわち、Arg202の後にトリプシン様プロテアーゼのコンセンサス活性化部位を持っている 190〜433 位にあるセラーゼ−1 (serase−1; serine protease−1)、Arg503の後のトリプシン様プロテアーゼのコンセンサス活性化部位を持っている 491〜733 位にあるセラーゼ−2 (serase−2) 及びArg826の後のタンパク質分解により活性化する816 〜1055位にあるセラーゼ−3(serase−3)である。また配列の一直線上にある並びより、セラーゼ−1とセラーゼ−2とはコンセンサス・モチーフ Gly−Asp−Ser−Gly−Gly の内に推定される触媒活性のSer残基を含有している(各々385〜389 位と 685〜689 位)ことが示されている。一方、セラーゼ−3は、その活性部位にそのSer残基の代わりに Ala残基(Gly−Asp−Ala−Gly−Gly, 1007〜1011位)を含有していることから、該第3のモジュールは触媒的に不活性であるに違いないことが示されている。更に、セリンプロテアーゼ類であることを構造的に示している特徴が、その同定されたセラーゼ類にも保存されている。
【0103】
かくして、適切な配向をした切れやすい結合に関して基質の側鎖と相互作用をするようにされている配列Ser−Trp−Gly が、該3個のセラーゼ中に存在する(それぞれ、407〜409位、707〜709位及び1029〜1031位)。また触媒活性に必要なHis 残基及びAsp 残基も保存されている(それぞれ、His243とAsp292、His544とAsp592、そしてHis868とAsp915)。また同様に触媒領域の3個のS−S 結合の形成に関与する6個のCys 残基も保存されている(セラーゼ−1では、Cys228−Cys244, Cys358−Cys372及びCys383−Cys412 、セラーゼ−2では、Cys529−Cys545, Cys658−Cys672及びCys682−Cys712 、そしてセラーゼ−3では、Cys853−Cys869, Cys980−Cys994及びCys1005−Cys1034 )。他のセリンプロテアーゼ類と同様に、第4のS−S 結合はセラーゼ−1のプロドメインに位置するCys191と本ドメインの触媒ドメインのCys312との間に形成されることが予想される。同様な結合は、セラーゼ−2のCys492とCys612との間に、そしてセラーゼ−3のCys817とCys935との間に形成されるであろう。これら推定されるS−S 結合の最初のものが形成されることにより、該ポリプロテアーゼの触媒ドメインは活性化部位での開裂の後でさえ細胞表面に依然結合したままで残存するであろうことが暗示されるのである。
【0104】
本同定されたヒトタンパク質中にある全てのこれらの構造的特徴は、その推定されるところのマウスやラットのオルソログ(orthologs, 類似遺伝子) 中でも保持されているのであって、それらの配列はマウスやラットのゲノムデータベースの中において、該同定されたヒトの配列をクエリーとして使用することにより、推測された(図3)。ラットのオルソログをコードする遺伝子はクロモゾーム7 の中に位置しており、マウスポリプロテインをコードする遺伝子はクロモゾ−ム10の中に位置しており、それらのクロモゾ−ム領域は、ヒト遺伝子が位置しているクロモゾ−ム19p13 にシンテニーな(syntenic)領域の中のものである。
【0105】
さらに該推定される配列を解析すると、最高の相同性(同一性)パーセンテージを与えるものとしては、マトリプターゼ(matriptase; セラーゼ−1とは46% 、セラーゼ−2とは43% 、そしてセラーゼ−3とは48% の相同性を有する)並びにマトリプターゼ 2(matriptase 2; セラーゼ−1とは45% 、セラーゼ−2とは40% 、そしてセラーゼ−3とは48% の相同性を有する)が挙げられる。この両者は膜セリンプロテアーゼであるTTSP (type II transmembrane serine proteinase)ファミリー(a subfamily of serine protease)のメンバーである。本構造解析によれば、該クローン化されたヒト肝臓cDNAはセリンプロテアーゼと推定される3個のモジュールを持っている新規な膜結合ポリプロテイン(membrane−bound polyprotein)をコードしていると結論づけることができ、該新規な膜結合ポリプロテインを、ポリセラーゼ−I (polyserase−I: polyserine protease−I より)(EMBL accession number AJ488946)と呼ぶこととした。また注目すべきこととしては、ヒトポリセラーゼ−I遺伝子の最後のエクソン(該cDNAの3050位で始まる)は、ヒト難聴異緊張症 (human deafness dystonia syndrome, Roesch, K. et al., Hum. Mol. Genet., 11: 477−486, 2002) に関与することが見出されているミトコンドリア内膜13(mitochondrial inner membrane 13, TIMM13) 遺伝子のトランスロカーゼ(translocase) の 3’−非翻訳領域の一部とアンチセンス配向でオーバラップしている。
【0106】
実施例2 ポリセラーゼ−Iの解析
(a) 組換えセラーゼ−1ドメイン及び組換えセラーゼ−2ドメインの産生と精製
該クローン化されたcDNAの中の第1番目のセリンプロテアーゼ・ドメインをコードするcDNAコンストラクト又は該クローン化されたcDNAの中の第2番目のセリンプロテアーゼ・ドメインをコードするcDNAコンストラクトといった、2つのcDNAコンストラクトは、次なるオリゴヌクレオチドを使用して、PCR 増幅によって作製した。
【0107】
第1のプロテアーゼ・ドメイン用として
mod1f :5’−ATCGTGGGCGGCATGGAAGCA 〔配列番号:7〕
及び
mod1r :5’−CTCCAGGATCCAGTCACGTAG 〔配列番号:8〕、
第2のプロテアーゼ・ドメイン用として
mod2f :5’−GTCGTGGGCGGGTTCGGAGCT 〔配列番号:9〕
及び
mod2r :5’−CTCCAGGATCCAGCCCTTTAG 〔配列番号:10〕。
【0108】
PCR 増幅は、変性(95℃、15秒)、アニーリング(59℃、10秒)及び伸張(68℃、50秒)を25サイクル行うもので、ExpandTM High Fidelity PCR system を使用して行った。PCR 産物は、発現ベクターpGEX−3X (Amersham Biosciences)のSmaIサイトにクローン化した。得られたベクター(pGEX−3X−serase 1 及びpGEX−3X−serase 2)を、コンペテントな大腸菌細胞 BL21(DE3)pLysE へ導入し、0.5mM IPTGで発現誘導を行った。細胞を遠心分離して集め、洗浄し、PBS 中へ再懸濁した。次に、細胞は超音波処理で可溶化し、4℃、20分間、20,000×g で遠心分離した。可溶化画分はグルタチオン−セファロース 4B カラム(Amersham Biosciences)を使用して、精製した。グルタチオンS−トランスフェラーゼ GST−serase 1 融合タンパク質及びグルタチオンS−トランスフェラーゼ GST−serase−2 融合タンパク質を、20 mM 還元型グルタチオンで溶出し、酵素活性分析に使用した。
【0109】
(b) 酵素活性分析
(1) 方法
組換えGST−serase−1タンパク質及び組換えGST−serase−2タンパク質につきその推定上の酵素活性を、合成蛍光基質N−t−Boc−Gln−Ala−Arg−AMC 、N−t−Boc−Gln−Gly−Arg−AMC 、N−t−Boc−Ala−Pro−Ala−AMC 及びN−t−Boc−Ala−Phe−Lys−AMC を使用してアッセイした。通常のアッセイを、50mM Tris−HCl, pH8.0, 20mM NaCl, 2.5% Me2SO 含有アッセイ緩衝液中、37℃で行った。蛍光測定は、MPF−44A PerkinElmer 分光蛍光計(λex=360nm及びλem=460nm)で行った。阻害活性アッセイは、異なる阻害剤と該組換えタンパク質とを37℃、15分間プレインキュベーションし、その後、上記の条件でインキュベーションを行った。I型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン及びフィブリノーゲンを分解処理し、SDS−PAGEで調べた。すべてのアッセイは上記のアッセイ緩衝液中37℃で4〜12時間インキュベーションし、1/100 の酵素/ 基質比率(w/w) で行った。
【0110】
(2) 結果
セラーゼ−1及びセラーゼ−2の酵素学的諸性質の解析のため、微生物細胞中で本膜結合ポリプロテアーゼの2個の触媒活性ドメインと推定されるドメインを発現させた。この目的のため、これらのドメインのそれぞれをコードするcDNAを、発現ベクターpGEX−3X 中にサブクローニングし、得られたプラスミドでもって大腸菌(E.coli) BL21(DE3)pLysS 株を形質転換せしめた。形質転換体微生物の発現誘導は、IPTGで行われ、期待されたサイズのタンパク質のバンド(それぞれ、52 kDa及び51 kDa) が微生物タンパク質抽出物をSDS−PAGE分析して検出された(図4A)。これら組換え融合タンパク質はグルタチオン(GST)−セファロースクロマトグラフィーで精製され、アフィニティーカラム溶出可溶性GST−serase−1タンパク質及びGST−serase−2タンパク質は直接酵素活性分析に供された。他のGST−融合タンパク質に関して以前に記載してあるように、該融合タンパク質は37℃でのインキュベーション後、明らかに自動的に活性化され、各タンパク質で更なる約26kDa のバンドが生ずるのが見られた。これは、GST 部分がタンパク質分解により遊離された後の各触媒活性ドメインに相応するように思われる。
【0111】
組換え酵素のタンパク質分解活性を、セリンプロテアーゼ類のアッセイに通常用いられている合成消光蛍光ペプチドをパネルとして用いて分析した。両酵素は非常に似た活性を示し、ペプチドN−t−Boc−Gln−Ala−Arg−AMC 及びN−t−Boc−Gln−Gly−Arg−AMC が加水分解された。N−t−Boc−Ala−Phe−Lys−AMC やN−t−Boc−Ala−Pro−Ala−AMC を含む他のペプチド類は該組換えタンパク質によっては有意には加水分解されなかった(図4B)。この2種の組換えセラーゼの触媒活性はセリンプロテアーゼ阻害剤フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)や4−(2−アミノエチル)−ベンゾイルスルホニルフルオリド(AEBSF) によって実質的に消失せしめられたが、EDTAでは消失しなかった(図4C)。またこれらの酵素がセリンプロテアーゼの中のTTSPファミリーの他のメンバー(Lin, C. et al.,J. Biol. Chem., 274: 18231−18236, 1999; Roesch, K. et al., Hum. Mol. Genet., 11: 477−486, 2002, Hooper, J. D. et al., J. Biol. Chem., 276: 857−860, 2001) により標的とされることのできる各種マトリックスや基底膜のタンパク質成分を分解するかもしれないという可能性につきそれを評価した。当該反応を行った後、SDS−PAGE分析をした。図5に示されているように、該タンパク質の双方は、I型コラーゲン(type I collagen) 、フィブロネクチン(fibronectin) 、ラミニン(laminin) 、そしてフィブリノーゲン(fibrinogen)を分解することができた。これら基質に対する両プロテアーゼの加水分解活性はPMSFで阻害された(図5)。このことはこれら酵素がセリンプロテアーゼであるとの提案をより支持するものである。
【0112】
(c) ヒト組織中でのポリセラーゼ−I発現解析
(1) 方法
種々のヒト組織を使用してノーザン・ブロット解析を行った。種々のヒト組織(心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、筋肉、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、腸、大腸及び白血球)の poly(A)+ RNA を2μg 含んでいるナイロン・フィルターを使用し、該ナイロン・フィルターを、50% のフォルムアミド、5X SSPE (1X SSPE=150 nM NaCl, 10mM NaH2PO4, 1mM EDTA, pH 7.4)、10X Denhardt’s溶液、2% SDS及び100 μg/ml変性ニシン精子DNA 中で42℃、3時間プレハイブリダイズせしめた。ハイブリダイゼーション処理は、次なるオリゴヌクレオチド
northF:5’−CTTGCAGCCTGCCTGGAGGAT 〔配列番号:11〕
及び
northR:5’−CCTTGAGGTAGCCCCAGCCTG 〔配列番号:12〕
を用いてcDNAクローンからPCR 増幅して得られた、放射性ラベルした0.5kb のプローブでもって行った。プレハイブリダイズと同条件で20時間のハイブリダイゼーション処理した後に、フィルターは、0.1%SDS 含有0.1X SSCで50℃、2時間洗浄し、オートラジオグラフィーに供した。アクチンプローブによるハイブリダイゼーションを行ってRNAの真正性(RNA integrity)についての評価を行った。
【0113】
(2) 結果
ヒト組織中でのポリセラーゼ−I発現パターンを研究するため、いろいろな組織及び腫瘍細胞株から調製した poly(A)+ を含有する試料につきノーザン・ブロットを行い、該同定されたcDNAの5’末端に対応するプローブとハイブリダイズさせた。腎臓、肝臓、肺及び脳を含むヒト胎児組織(human fetal tissues) のパネル中や腫瘍細胞株A549(肺癌)、Raji(バーキットリンパ腫)、MOLT−4(リンパ芽球白血病)、 K−562(慢性脊髄白血病)及びHeLa(頚管上皮癌)を含む各種腫瘍細胞株(tumor cell lines)中で約5.4kb の1個のバンドが検出された(図6)。また、成人組織(human adult tissues) 中、主として膵臓、筋肉、肝臓、心臓及び精巣中で3.8kb と2.4kb のマイナーな転写物が検出された。5.4kb の主バンドはポリセラーゼ−Iに関して記載されている全長cDNAを含んでいる転写物に相当すると推測される。一方、マイナーな転写物は本発明の中で見つけられたオールターナティブ・スプライシング(それはポリプロテアーゼのより短い形態のもの(EMBL accession number AJ488947)に導く)により誘導されたと推測される。
【0114】
(d) ポリセラーゼ−Iの翻訳後のプロセシングの解析
(1) 方法
5’末端にFLAGエピトープを持ち、3’末端にHAエピトープを持つベクターpcDNA3のEcoRV サイトに全長cDNAをクローン化し、得られた構築物(pcDNA3−polys)をLipofectAMINE 試薬(Life Technologies, Inc.社) を用いて、HeLa及びCOS−7 細胞へ導入した。
大腸菌で産生された第1と第2のプロテアーゼ・モジュールに対するポリクローナル抗体は、標準の方法でもってウサギで作製された。さらに、第3のプロテアーゼ・モジュールから導かれた合成ペプチド(FDVYGDPKQWAAF; 870−882位) にマレイミド−活性化キーホールリンペット・ヘモシアニンを結合し、それに対するウサギ・ポリクローナル抗体を作製した。タンパク質のウエスタン・ブロット解析は、サンプルを12%SDS−PAGE ゲルで分離し、Hybond ECLニトロセルロース膜(Amersham Bioscience社) に転写して行った。ウエスタン・ブロットは 1μg/mlの各々の抗体、若しくは抗FLAG M2 抗体(Scientific Imaging Systems, Eastman Kodak社) 及び抗HA抗体(Roche社) と共にインキュベーションし、続いて、HRP 結合2次抗体(Santa Cruz Biotech 社) を1:10000 に稀釈し用いた。細胞膜リッチ画分を得るために、HeLa及びCOS−7 細胞をプレートから掻き取り、以前に報告(Velasco, G., et al., J. Biol. Chem., 277: 37637−37646, 2002)したようにして、細胞膜画分を調製した。
【0115】
(2) 結果
3個のプロテアーゼ・モジュールに対して作製されたポリクローナル抗体をHeLa細胞中のポリセラーゼ−Iの検出に用いた。図7で見られるように約55 kDaと約32 kDaの2つのバンドが抗セラーゼ−1抗体でHeLa細胞抽出物中に検出された。55 kDaのセラーゼ−1免疫反応性バンドは、LDLRと膜貫通・ドメイン(推定値 56.1kDa)を伴っている第1のプロテアーゼ・モジュールを含有しているタンパク質種に相当するものであるかもしれない。一方、32kDa のタンパク質は、Arg202の部位でトリプシン様プロテアーゼにより消化された後の活性型セラーゼ−1(推定値 33.9kDa)に相当するものであるかもしれない。抗セラーゼ−2抗体は、35kDa のバンドを検出したが、それはArg503の活性化部位で切断された後のセラーゼ−2のプロセスを受けた形態のもの(推定値 34.8kDa)に相当するものであるかもしれない。最後に、抗セラーゼ−3抗体は約25kDa のバンドを認識した。本約25kDa のバンドはArg826でのプロセス化を受けた後の予想されたサイズの該ドメイン(推定値 25.7kDa)によく一致したものであった。これらの抗体は他のより高分子のバンドも検出したが、それらは部分的にプロセス化を受けた形態のものに相当するものであるのかもしれないし、あるいは、全長タンパク質に相当するものであるのかもしれない。特異セラーゼ免疫反応性バンドのいずれもポリセラーゼ−I非発現のSW480 細胞中では存在しておらず、本明細書における実験では陰性コントロ−ルとして該細胞を使用した(図7)。
【0116】
推定されるポリセラーゼ−Iのプロセッシングのメカニズムを更に研究するため、タンパク質の N末端にFLAGエピトープ及び C末端にHAエピトープをそれぞれ有している本酵素を発現する真核生物発現ベクターを調製した。構築物はCOS−7細胞及びHeLa細胞をそれぞれトランスフェクトするために使用した。抗FLAG抗体あるいは抗HA抗体を用いてポリセラーゼ−Iの内因性のものとポリセラーゼ−Iのトランスフェクト型との区別を可能にした。トランスフェクトされたCOS−7細胞の膜リッチな画分を抗FLAG抗体でウエスタン・ブロット解析すると、タンパク質の大部分はインタクト(115kDa)として残っていたが、更なるバンド、すなわち、90 kDa(膜貫通部+LDLR+セラーゼ−1+ セラーゼ−2)、55 kDa(膜貫通部+LDLR+セラーゼ−1)及び21kDa のバンドも検出された。この最後の21kDa のシグナルはセラーゼ−1がArg202の後でトリプシン様プロテアーゼにより除去されてしまったもの(推定値22.2 kDa)で、膜貫通部とLDLRのモチーフに相当するものかもしれない。同じ実験で、膜リッチ画分をアルカリ/EDTA 処理すると、抗HA抗体で115kDaのバンド(全長タンパク質)が検出される。さらなるバンドが、115kDaのタンパク質のプロセッシングから誘導でき、約100kDa、55 kDa及び25 kDaの3個のより強いバンドはそれぞれセラーゼ−1+ セラーゼ−2+ セラーゼ−3(推定値94 kDa)、セラーゼ−2+ セラーゼ−3(推定値60.5 kDa)及びセラーゼ−3モジュール(推定値25.7 kDa)に相当するものである(図8)。55 kDa及び25 kDaの分子量の2個のバンドが、膜リッチ画分を使用し高塩濃度(350mM) とβ−メルカプトエタノール(5mM)で抽出すると、その上清中に検出された。トランスフェクトされたHeLa細胞あるいは個々のセラーゼ・モジュールに対する抗体を使用すると、同様な結果が得られた。こうしたことを考え併せると、これらデータはポリセラーゼ−Iが膜結合性タンパク質であり、本タンパク質は3個の明確に異なっているプロテアーゼ・ユニットの遊離をもたらす一連の連続したタンパク質分解プロセッシングを受けることを示している。これらのタンパク質はプロドメインに位置しているCys 残基と各セラーゼ・ドメインの触媒ドメインとの間に形成されるS−S 結合により細胞膜に結合して残っているようである。
【0117】
実施例3 モノクローナル抗体の作製
免疫に用いる抗原としては、ヒトポリセラーゼ−Iの全長、実施例2で得られた精製した融合組換えGST−serase−1若しくはGST−serase−2又はプロテアーゼ・モジュールの合成ペプチド(FDVYGDPKQWAAF、870−882 位) にマレイミド−活性化キーホールリンペット・ヘモシアニンを結合したものを使用することができる。また、配列番号:14に記載したヒトポリセラーゼ−Iのアミノ酸配列中より他のセリンプロテアーゼと相同性が低く、ヒトポリセラーゼ−Iに特徴的な配列を選択し、合成することができる。これらの抗原タンパク質は、イオン交換、ゲルろ過、抗体アフィニティークロマトグラフィー又はそれ以外の各種クロマトグラフィーによって精製できる。精製した免疫用抗原を一般的な方法で免疫し、抗体産生細胞を誘導、細胞融合によりハイブリドーマとして抗体産生細胞を得ることができる。さらに免疫用抗原に対する反応性に基づいてクローニングを行いモノクローナル抗体産生ハイブリドーマとして株化できる。ただし、GST 融合組換えserase−1若しくはGST 融合組換えserase−2を免疫源として得られたハイブリドーマの場合には、GST に対する抗体産生株を含んでいるので、GST に反応する抗体産生ハイブリドーマを除去しなければならない。また、ヒトポリセラーゼ−I特異的モノクローナル抗体を得るための免疫源としては、ヒトポリセラーゼ−Iに特徴的なアミノ酸配列を持つ合成ペプチドにキャリアータンパク質を結合させたものが使用できる。例えば、第190−433 位のセラーゼ−1の活性部位、第491−733 位のセラーゼ−2の活性部位、第816−1055位のセラーゼ−3の活性部位を含む領域から、他のセリンプロテアーゼには見られない特異的で、疎水性の低い可溶性ペプチド配列を選択し使用することができる。これらのヒトポリセラーゼ−Iの全長若しくは一部の領域の融合組換えタンパク質若しくはポリペプチドを免疫原として作製する抗体をここでは抗ヒトポリセラーゼ−I抗体とする。
【0118】
(a) 抗原ポリペプチドの調製
前述のようなポリペプチドは、ペプチド合成機(ペプチドシンセサイザー9600、MilliGen/Biosearch)を使用して、Fmoc−bop法で合成する。ポリペプチドの N末端あるいは C末端にはシステインを導入する。合成したペプチドはμBondasphere, C18カラム(Waters)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより精製する。
(b) ポリペプチドとウシ血清アルブミン(BSA) の複合体の調製
システイン残基を介してBSA と結合させ、抗原コンジュゲートとする。BSA を 0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) に溶解したものとN−(6−maleimidecaproyloxy)−succinimide (EMCS)をジメチルホルムアミドに溶解したものと混合し、30℃、30分間反応させ、ついで、上記の混合液を 0.1M リン酸緩衝液(pH7.0) で平衡化した PD−10(Pharmacia) でゲルろ過する。マレイミド結合BSA を分取し、1.5ml 以下に濃縮する。前記(a) で合成したそれぞれのポリペプチドを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0) に溶解し、マレイミド結合BSA に対し50倍モル量となるようにそれぞれ混合し、4℃、20時間インキュベートし、BSA−ポリペプチド複合体を調製する。
【0119】
(c) 抗体産生細胞の調製
前記(b) で調製したBSA−ポリペプチド複合体、 200μg を完全フロインドアジュバントと共に8週令Balb/c雌マウスに腹腔内投与し、初回免疫する。19日目と34日目に 0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) に溶解した複合体 200μg を初回免疫したマウスに腹腔内投与し、追加免疫する。さらに69日目に複合体 200μg を静脈内投与し、最終免疫とする。その3日後に脾臓を摘出し、脾細胞懸濁液を調製する。
【0120】
(d) 細胞融合
(1) 以下の材料及び方法を用いる。RPMI−1640 培地:RPMI−1640 (Flow Lab.) に重炭酸ナトリウム (24mM) 、ピルビン酸ナトリウム (1mM)、ペニシリンG カリウム (50U/ml) 、硫酸アミカシン(100μg/ml) を加え、ドライアイスでpHを7.2 に調整し、 0.2μm 東洋メンブレンフィルターで除菌ろ過する。NS−1培地:上記RPMI−1640 培地に除菌ろ過したウシ胎児血清 (FCS, M.A. Bioproducts)を15%(v/v)の濃度になるように加える。PEG−4000溶液:RPMI−1640 培地にポリエチレングリコール−4000(PEG−4000, Merk & Co.) を50%(w/w)になるように加えた無血清培地を調製する。8−アザグアニン耐性ミエローマ細胞 SP−2 (SP−2/0−Ag14) との融合は、Selected methods in cellular immunology, pp. 351−371 (ed. B. B. Mishell and S. M. Shiigi), W. H. Freeman and Company (1980) に記載のOi & Herzenberg の方法を若干改変して行う。
(2) 前記(c) で調製した有核脾細胞(生細胞率 100% )とミエローマ細胞(生細胞率 100% )とを5:1 の比率で以下の手順で融合した。それぞれのポリペプチド免疫脾細胞懸濁液とミエローマ細胞をそれぞれ RPMI1640 培地で洗浄する。次に同じ培地に懸濁し、融合させるために有核脾細胞とミエローマ細胞を混合する。次に遠心分離により細胞を沈殿させ、上清を完全に吸引除去する。沈殿した細胞に37℃に加温したPEG−4000溶液を1分間で滴下し、1分間撹拌し、細胞を再懸濁、分散させる。次に37℃に加温したRPMI1640培地を2分間で滴下した後、同培地を2〜3分間で常に撹拌しながら滴下し、細胞を分散させる。これを遠心分離し、上清を完全に吸引除去する。次にこの沈殿した細胞に37℃に加温したNS−1培地を速やかに加え、大きい細胞塊を注意深くピペッティングで分散する。さらに同培地64mlを加えて希釈し、ポリスチレン製96穴マイクロウェルにウェル当り 6.0×105 個/0.1mlの細胞を加える。細胞を加えた上記マイクロウェルを7%炭酸ガス/93%空気中で温度37℃、湿度100%で培養する。
【0121】
(e) 選択培地によるハイブリドーマの選択的増殖
(1) 使用した培地は以下の通りである。
HAT 培地:前記(d) 項(1) で述べたNS−1培地に更にヒポキサンチン(H、100 μM)、アミノプテリン(A、0.4 μM)及びチミジン(T、16μM)を加える。HT培地:A を除去した以外は上記HAT 培地と同一組成のものである。
(2) 前記(d) 項の培養開始後翌日(1日目)、細胞にパスツールピペットでHAT 培地2滴(約 0.1ml)を加える。2、3、5、8日目に培地の半分(約 0.1ml)を新しい HAT培地で置き換え、11日目に培地の半分を新しいHT培地で置き換える。14日目にハイブリドーマの生育が肉眼にて認められた全ウエルについて固相−抗体結合テスト法(ELISA) により陽性ウエルを調べる。すなわち、ポリスチレン製96穴プレートを抗原としたそれぞれのポリペプチドでコートし、次に洗浄用 PBS(0.05% Tween20 含有) を用いて洗浄して未吸着のペプチドを除く。さらに各ウエルの未コート部分を1% BSAでブロックする。この各ウエルにハイブリドーマの生育が確認されたウエルの上清 0.1mlを添加し、室温で約1時間静置する。2次抗体としてHRP 標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン (Cappele Lab.) を加え、さらに室温で約1時間静置する。次に基質であるTMB 溶液(Calbiochem)をウェル当たり 100μl 加え、発色の程度をマイクロプレート用吸光度測定器(MRP−A4、東ソー社)を用いて 492nmの吸光度で測定する。ポリスチレン製96穴プレートに固相化する抗原としては、前述の精製した各種組換えヒトセラーゼ−1若しくはヒトセラーゼ−2も使用できる。
【0122】
(f) ハイブリドーマのクローニング
上記(e) 項で得られた抗原ペプチドに対する陽性ウエル中のハイブリドーマを、限界希釈法を用いてモノクローン化する。すなわち、NS−1培地1ml 当りフィーダーとして 107個のマウス胸腺細胞を含むクローニング培地を調製し、96穴マイクロウエルにハイブリドーマをウエル当り5個、1個、0.5 個になるように希釈し、それぞれ36穴、36穴、24穴に加える。5日目、12日目に全ウエルに約 0.1mlのNS−1培地を追加する。クローニング開始後約2週間で、肉眼的に十分なハイブリドーマの生育を認め、コロニー形成陰性ウエルが50% 以上である群について(e) 項に記載したELISA を行う。調べた全ウエルが陽性でない場合、抗体陽性ウエル中のコロニー数が1個のウエルを4〜6個選択し、再クローニングを行う。最終的にそれぞれのポリペプチドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。
【0123】
(g) ハイブリドーマの培養とモノクローナル抗体の精製
得られたハイブリドーマ細胞をNS−1培地で培養し、その上清から濃度10〜100 μg/mlのモノクローナル抗体を得ることができる。また、得られたハイブリドーマ107 個を予め1週間前にプリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン、Aldrich chemicals )を腹腔内投与したマウス(Balb/c系、雌、6週齢)に同じく腹腔内投与し、1〜2週間後、腹水中からも 4〜7mg/mlのモノクローナル抗体を含む腹水を得ることができる。得られた腹水を40% 飽和硫酸アンモニウムで塩析後、IgG クラスの抗体をプロテインA アフィゲル (Bio−Rad)に吸着させ、0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.0) で溶出することにより精製する。
(h) モノクローナル抗体のクラス、サブクラスの決定
前述したELISA に従い、それぞれのポリペプチドをコートしたポリスチレン製96穴プレートに、(f) 項で得られたハイブリドーマの上清を加える。次にPBS で洗浄後、アイソタイプ特異的ウサギ抗マウスIgG 抗体 (Zymed Lab.) を加える。PBS により洗浄後、HRP 標識ヤギ抗ウサギIgG (H+L) を加え、基質として過酸化水素及び 2,2’−アジノ− ジ(3−エチルベンゾチアゾリン酸)を用いてクラス、サブクラスを決定する。
【0124】
実施例4 サンドイッチEIA
実施例3で調製した抗ヒトポリセラーゼ−I抗体から少なくとも1種を選択し、抗ヒトポリセラーゼ−I抗体の適当な2種の組み合わせによってヒトポリセラーゼ−Iを特異的に検出・測定するサンドイッチEIA 系が構成できる。EIA 系は1ステップ法、2ステップ法のいずれも可能であり、標識抗体はFab’−HRPに限定されない。各反応緩衝液の組成や反応条件は測定の目的に応じて短縮あるいは延長など調整できる。また、標準品となるヒトポリセラーゼ−Iタンパク質は、組織培養上清、細胞培養上清又は本明細書記載或いはそれ以外の方法で発現した組換え体から精製することができる。精製にはイオン交換、ゲルろ過、当該ヒトポリセラーゼ−Iモノクローナル抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーまたそれ以外の各種アフィニティークロマトグラフィーの組み合わせによって達成される。
【0125】
(a) 標識抗体の調製
抗ヒトポリセラーゼ−Iモノクローナル抗体を0.1M NaCl 含有 0.1M 酢酸緩衝液 (pH4.2)に抗体量の2%(W/W) のペプシンを加え、37℃、24時間消化する。消化物に3M Tris−HCl 緩衝液(pH7.5) を添加し、反応を停止する。 0.1M リン酸緩衝液 (pH7.0)で平衡化したウルトロゲルAcA54 カラムによるゲルろ過でF(ab’)2 画分を分取する。このF(ab’)2 画分に最終濃度 0.01Mとなるようにシステアミン塩酸塩を添加し、37℃、1.5 時間還元し、5mM EDTA含有 0.1M リン酸緩衝液(pH6.0) で平衡化したウルトロゲルAcA54 カラムによるゲルろ過でFab’画分を分取する。上記の操作とは別にHRP を 0.1M リン酸緩衝液(pH7.0) に溶解、HRP の25倍モル量のEMCSをDMF 溶液として加え、30℃、30分間反応させる。これを 0.1M リン酸緩衝液 (pH6.0)で平衡化した NICK−5 カラム (Pharmacia)でゲルろ過し、マレイミド標識 HRP画分を分取する。Fab’画分とマレイミド標識 HRPを等モルとなるように両画分を混合し4℃、20時間反応させた後、Fab’の10倍モル量のN−エチルマレイミドで未反応のチオール基をブロックする。これを 0.1M リン酸緩衝液 (pH6.5)で平衡化したウルトロゲルAcA54 カラムでゲルろ過し、Fab’−HRP標識抗体を分取する。これに0.1% BSA及び0.001%クロルヘキシジンを添加して4℃で保存する。
【0126】
(b) モノクローナル抗体結合担体の調製
抗ヒトポリセラーゼ−Iモノクローナル抗体を 0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) に溶解し、50μg/mlの濃度に調製する。このモノクローナル抗体溶液を96穴マイクロプレートにウエルあたり 100μl ずつ加え、4℃、18時間静置する。モノクローナル抗体溶液を除去し、生理食塩液で1回、0.05% Tween20 、0.1M NaCl 、5mM CaCl2 含有Tris−HCl緩衝液(pH8.0) で3回洗浄後、1% BSA、0.1M NaCl 、5mM CaCl2 含有Tris−HCl緩衝液(pH8.0) を加えブロッキングする。
【0127】
(c) 1ステップサンドイッチEIA 法
精製したヒトポリセラーゼ−I画分を標準抗原としてヒトポリセラーゼ−I定量用標準曲線を作成する。1% BSA、0.05% Brij35、0.05% Tween20 、0.1M NaCl 、5mM CaCl2 含有Tris−HCl緩衝液(pH8.0) で段階希釈した標準ヒトポリセラーゼ−Iを60μl ずつ分注、それぞれに1% BSA、0.05% Brij35、0.05% Tween20 、0.1M NaCl 、5mM CaCl2 含有Tris−HCl緩衝液(pH8.0) で100ng/50μl に調整した標識抗体Fab’−HRPを60μl ずつ添加し十分混和する。調製した抗体結合マイクロプレートを0.05% Tween20 、0.1M NaCl 、5mM CaCl2 含有Tris−HCl緩衝液(pH8.0) で3回洗浄し、標準抗原と標識抗体混合液を 100μl/ウエルずつ添加する。室温で1時間反応した後0.05% Tween20 、0.1M NaCl 、5mM CaCl2 含有Tris−HCl緩衝液(pH8.0) で3回洗浄する。次に、TMB 溶液(Calbiochem)をウエルあたり 100μl 添加し、室温で20分間反応後、2N硫酸を 100μl 添加し反応を停止する。この反応混液のA492をマイクロプレートリーダーを用いて測定し、標準曲線を求める。測定検体は、ヒト血清、脊髄液、血漿、関節液、尿及び唾液などのヒトに由来する体液成分、各種ヒト組織の抽出液、ヒト由来あるいは組換え体など各種培養細胞の細胞抽出液、培養上清などから調製される。それぞれの測定検体は、標準ヒトポリセラーゼ−Iにかえて上記1ステップサンドイッチEIA に供し、標準ヒトポリセラーゼ−Iと同時に反応を進行させる。測定検体から得られたA492の値を得られた標準曲線にあてはめ、測定検体に含まれるヒトポリセラーゼ−Iの量を算出する。
【0128】
〔考察〕
本発明者等は、1個のモザイクタンパク質(mosaic protein)をコードするcDNAをクローニングすることに成功した。該モザイクタンパク質は1個のII型膜貫通領域と、1個のLDL 受容体ドメインと、3個のセリンプロテアーゼ・モジュールとを含んでいる複雑な構成(complex organization)を示すものである。構造的、機能的特徴からは、本複合体タンパク質(complex protein)は膜結合セリンプロテアーゼのTTSPファミリーの新メンバーである。そして本発明者等は、本複合体タンパク質を「ポリセラーゼ−I」と名付けた。
1個の単一のポリペプチド鎖に埋め込まれている数種の触媒ユニットが存在しているということは、大変に異常なものである。これに関連し、本発明者等は、2種のヒトプロテアーゼがさらにあるということは知っている。それらはポリセラーゼ−Iとそのドメイン構築の点でいくらか類似しているところを示してはいるが、しかし、翻訳後のプロセッシングの点で著しく異なっている。その2種のヒトプロテアーゼとは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)とカルボキシペプチダーゼDである。
【0129】
ACE は、レニン−アンジオテンシンシステムにおいてキーとなる機能のゆえに、そして心臓脈管疾患における治療上の標的としての関連性から広く研究されている I型膜メタロプロテアーゼである。本ACE酵素は先祖の遺伝子から複製によって生じたもので2個のメタロプロテアーゼ−ドメインを含んでいる遺伝子によってコードされているものである。該2個のACE ドメインは、酵素学的には活性であるが、異なる触媒定数とパターンのクロライド活性化反応性を示し、さらにいくつかの競合阻害剤と異なった相互作用を示す(Wei, L. et al., J. Biol. Chem., 266: 9002−9008, 1991; Wei, L. et al., J. Biol Chem., 267: 13398−13405, 1992) 。カルボキシペプチダーゼD はI型膜結合酵素であり、該酵素は、3個のメタロプロテアーゼ・ドメインを含んでおり、そのうちの2個は、触媒的に活性があり、かつ補体活性を示すものである。該第一のドメインは pH6.3〜7.5 において至適なもので、該第2番目のドメインは pH5.0〜6.5 において至適性がある。それ故、本カルボキシペプチダーゼD 酵素は広範囲な基質に対して広い活性を示すことになる(Novikova, E.G. et al., J. Biol. Chem.,274: 28887−28892, 1999)。両ケース共に、ACE やカルボキシペプチダーゼD 中に存在するプロテアーゼユニットは、完全多領域(マルチドメイン, multidomain)構造の必須部分にあり、ユニークな翻訳産物から遊離されたものではない。
【0130】
対照的に、ポリセラーゼ−Iは、一連のタンパク質分解プロセッシングを受けて、それにより3個の独立したプロテアーゼユニットの形成が誘導される。これらセリンプロテアーゼ・ドメインのうちの2個はタンパク質分解活性を持ち、セリンプロテアーゼ類をアッセイするのに使用される合成基質に対して、さらにI型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンやフィブロンーゲンのような内因性タンパク質に対して強い加水分解活性を示す。そのうちの第3のセリンプロテアーゼ・ドメインは、決定的に重要な活性部位域内に位置している特別なアミノ酸残基に変化が生じていることから、非プロテアーゼ・ホモログのカテゴリーに属するとされるものである。該不活性プロテアーゼ・ホモログというものは、不活性な触媒ドメインを介して基質を結合することによりドミナントネガテイブとして働き、制御活性を有する分子あるいは阻害活性を有する分子としてその役割を果たすとの推測により、デグラドミックス(degradomics) において益々その興味が持たれつつあるものである。従って、該ポリセラーゼ−Iの第3のセリンプロテアーゼ・モジュールは本プロテアーゼの2個の触媒活性ドメインの活性を、幾分か、制御することができるものであるかもしれない。
【0131】
本明細書で開示のポリセラーゼ−Iのプロセッシングは単一の翻訳産物から独自のプロテアーゼ・ドメインを産生する能力を持っているといったヒトポリプロテアーゼの最初の例を提示しているのである。こういったことは、他の生物では先例がないものであるが、最近類似したことが見出されている。それは、Xenopus laevisからのオボキマーゼ(ovochymase)に関して記載されているものである。すなわち、3個のセリンプロテアーゼ・ドメインを有する別の複合モザイクタンパク質で、それは単一のポリタンパク質産物の翻訳後遊離されるものである(Lindsay L.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96: 11253−11258, 1999)。同様に、Xenopus laevisやBufo japonicus中で同定されたオビダクチン(oviductin) は、2個のセリンプロテアーゼ・ドメインを含んでおり(Lindsay, L.L. et al., Biol. Reprod., 60: 989−995, 1999; Hiyoshi, M, et al., Dev. Biol., 243: 176−184, 2002)、それらの1個は触媒的に不活性で、それはさらに翻訳後タンパク質分解プロセッシングを受けて独自のユニットを生成する。オボキマーゼとオビダクチンの双方は、受精過程に関与するポリプロテアーゼである。しかし、それらは膜貫通ドメインを含有してはいないし、それゆえに、ポリセラーゼ−Iの場合のようには、TTSPファミリーに属すものではない。今日まで、オボキマーゼ様プロテアーゼやオビダクチン様プロテアーゼはヒトでは報告されていない。しかしながら、我々による最近の世界的なヒトデグラドーム(degradome) 分析は、これらの活性の候補遺伝子の存在を示してきている。予備的な結果は推定されるヒトオビダクチンプロテアーゼは1個のセリンプロテアーゼ・ドメインを、そしてオボキマーゼプロテアーゼは3個のセリンプロテアーゼ・ドメインを含有していることを示している。従って、このオボキマーゼプロテアーゼはヒト組織によって産生されるところの第2のポリセラーゼを表しているのかも知れないという可能性への途を開くものである。
【0132】
本明細書において、さらに、ポリセラーゼ−Iの生理学的役割を解明する試みの前段階として、本発明者等は、ヒト組織中でのポリセラーゼ−Iの発現パターンについて調べた。ポリセラーゼ−Iの発現は各種のヒト組織で検出されているが、殆どの場合低レベルである。また、オルターナティブ・スプライシングにより創り出される更なる転写物についての証明もあり、そのことによりポリセラーゼ−Iの多様性を創出する更なる機構が提供せしめられている。ポリセラーゼ−Iプロテアーゼ・ドメインのうちの2個は細胞外マトリックス成分を分解することができるとの発見は、本酵素がその発現が検出されたところの正常及び腫瘍組織中で起こるマトリックス分解プロセスに関与するかも知れないことを示唆している。このように、ポリセラーゼ−Iは膜結合プロテアーゼであるTTSPファミリーに最も近い親類であるマトリプターゼ (matriptase) やマトリプターゼ−2 (matriptase−2) に関して先に示唆されているのと類似した機能上の役割を果たすものであるかもしれない(Egeblad, M. et al., Nature Rev. Cancer, 2: 161−174, 2002; Roesch, K. et al., Hum. Mol. Genet., 11: 477−486, 2002)。ヒトポリセラーゼ−Iのネズミにおける類似遺伝子を同定できれば、本ポリプロテアーゼを欠損する変異マウス作製の可能性という問題を提起しよう。本進行中のプロジェクトにより、ポリセラーゼ−Iが関与している、癌の進行を含めた生理学的・病理学的過程に関する興味ある情報が得られ可能性がある。
【0133】
【発明の効果】
本発明では、新規ポリセラーゼ−Iタンパク質を確認同定できたことから、この情報を利用して該タンパク質を測定することが可能となり、その生理学的活性や生物学的活性などを解明する手段が入手でき、さらに該タンパク質に起因する生理現象、関連疾患の診断、原因究明、リスク予知などに有用である。当該ヒトポリセラーゼ−Iタンパク質に対するモノクローナル抗体を始めとした抗体などの活性物質を作製し、これを用いた当該タンパク質の測定系を開発することが可能で、タンパク質分解現象や組織リモデリングといった生物学的過程(プロセス)、例えば、免疫応答、血管新生、凝固、創傷治癒、再生プロセス、胚着床あるいは胎児発達のような生理学的条件の解明・研究、さらに癌細胞の浸潤、転移、関節炎、リウマチあるいは心臓血管におけるプロセス、血液学的なプロセス及び神経退化のプロセスのような生理学的条件に関連した正常あるいは病的な現象の検出・測定・予知などに役立つ。また、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の産生を制御する化合物の開発も可能となるし、がんの転移、浸潤の診断などにも有用である。
本発明により、当該ポリセラーゼ−Iポリペプチド若しくはその塩、さらにはそれを基礎とした変異体(ホモログを含む) 、修飾体、誘導体などをデザインして得ることが可能となり、またそれらをコードする核酸、該核酸を有するベクター、該ベクターで形質転換された宿主細胞が提供でき、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質に関連した疾患、例えば老化に付随した各種疾患、動脈硬化症、生体内タンパク質の関係した疾患あるいは病気の発症及び/又は進展、及び腫瘍の浸潤又は拡散などの病的な状態あるいは症状の研究に役立つし、医薬品、診断薬、さらには遺伝子診断や遺伝子治療の途を開くと期待できる。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【0134】
<配列表フリーテキスト>
SEQ ID NO: 1, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 2, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 3, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 4, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 5, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 6, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 7, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 8, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 9, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 10, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 11, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 12, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
【0135】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ヒトポリセラーゼ−Iのヌクレオチド配列と推定アミノ酸配列を示す。図1の配列は図2に連続する。アミノ酸配列はヌクレオチド配列の下に一文字アルファベット表記で示した。膜貫通・モチーフは灰色で、またLDLRは黒塗りで示した。3個のセリンプロテアーゼ・ドメインはアンダーラインしてある。活性化部位は矢印で示した。
【図2】図1は、ヒトポリセラーゼ−Iのヌクレオチド配列と推定アミノ酸配列を示す。図2の配列は図1の続きである。アミノ酸配列はヌクレオチド配列の下に一文字アルファベット表記で示した。3個のセリンプロテアーゼ・ドメインはアンダーラインしてある。活性化部位は矢印で示した。
【図3】図3は、ヒト、マウス及びラットポリセラーゼのアミノ酸配列アライメントとドメイン構成を示す。A :同定されたポリセラーゼ−Iの配列(ヒト)及び推定されたポリセラーゼ−Iの配列(マウスとラット)で、異なるドメインが示されており、矢印は活性化部位を示す。B :ポリセラーゼ−Iのドメイン構造を示す。
【図4】図4は、組換えセラーゼ−1及び組換えセラーゼ−2の産生並びにそれらの酵素活性の解析結果を示す。A :pGEX−3X (レーン2)、pGEX−3X−serase−1(レーン3)又はpGEX−3X−serase−2(レーン5)で形質転換されたバクテリア抽出液(5μl)及び精製セラーゼ類(各レーン4、6)をSDS−PAGEで分析した。電気泳動の写真を示す。分子量マーカー類(MWM 、レーン1)のサイズは左に示した。B :蛍光ペプチドを精製セラーゼ類とインキュベートし、その蛍光を360nm(λex)と460nm(λem) で測定した。セラーゼ−1は白棒、セラーゼ−2は黒塗り棒で示す。C :2mM PMSF、2.5mM EDTA若しくは2mM AEBSF 存在又は非存在下での精製セラーゼ類の阻害活性のアッセイ結果を示す。
【図5】図5は、タンパク質基質上でのセラーゼ−1及びセラーゼ−2の酵素活性分析の結果を示す。フィブロネクチン、 I型コラーゲン、ラミニン及びフィブリノーゲンは単独 (C−) あるいは組換えセラーゼ−1及びセラーゼ−2の存在下でインキュベーションを行った。各々の分解フラグメントを示す。阻害活性分析では2mM PMSF存在下でインキュベーションした。それぞれ電気泳動の写真を示す。
【図6】図6は、ヒト組織及び腫瘍細胞株でのポリセラーゼ−I発現分析の結果を示す。ヒト胎児及び成人組織並びに腫瘍細胞株中ポリセラーゼ−I発現のノーザン・ブロット分析を示す。そこに示した組織及び細胞ラインの約 2μg ポリアデニール化RNA をポリセラーゼ−I全長cDNAの5’−プローブとハイブリダイズさせ分析に供した。RNA サイズマーカーの位置が示してある。フィルターはヒトアクチン・プローブとハイブリダイズさせ、異なる組織間でのRNA装填の差を確認した。それぞれ電気泳動の写真を示す。
【図7】図7は、ポリセラーゼ−Iの翻訳後のプロセッシングの解析の結果を示す。SW480 細胞及びHeLa細胞の抽出液を用いて、そこに示した抗セラーゼ抗体で標識したウエスタン・ブロットを示す。電気泳動の写真である。タンパク質抽出液は電気泳動前に2−メルカプトエタノール処理した。各免疫反応性バンドの位置は右側に図示、分子量マーカーはブロットの左側に表示した。
【図8】図8は、ポリセラーゼ−Iの翻訳後のプロセッシングの解析の結果を示す。トランスフェクトされたCOS−7細胞の膜リッチ画分の抗FLAGあるいは抗HA抗体で標識したウエスタン・ブロットを示す。電気泳動の写真である。タンパク質抽出液は電気泳動前に2−メルカプトエタノール処理した。各免疫反応性バンドの位置は右側に図示、分子量マーカーはブロットの左側に表示した。P は全長cDNAポリセラーゼ−Iでトランスフェクトされた細胞を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規に同定されたポリヌクレオチド(あるいは核酸)及びポリペプチド(あるいはタンパク質)(又はその一部)あるいはその塩;該ポリヌクレオチド(あるいは核酸)及びポリペプチド(あるいはタンパク質)のホモログを含む変異体及び誘導体;該ポリヌクレオチド(あるいは核酸)及びポリペプチド(あるいはタンパク質)、並びにそれらのホモログを含む変異体及び誘導体の製造法;該ポリペプチド(あるいはタンパク質)の阻害剤、アゴニスト及びアンタゴニスト;該ポリペプチド(あるいはタンパク質)に対する抗体、特にはモノクローナル抗体;並びに該ポリヌクレオチド(あるいは核酸)、ポリペプチド(あるいはタンパク質)、ホモログ、変異体、誘導体、阻害剤、アゴニスト及びアンタゴニストの用途に関するものである。
本発明はタンパク質分解活性といった生物学的過程(プロセス)に関するものである。そういった生物学的過程としては、排卵、受精、妊娠、骨形成、創傷治癒、再生プロセス、神経成長、抗原提示などの免疫応答、血管新生、凝固のような生理学的状態に関連しているものが挙げられ、さらに癌細胞の浸潤、転移、関節炎、リウマチあるいは心臓血管におけるプロセス、血液学的なプロセス及び神経退化のプロセスのような生理学的状態に関連したものが挙げられる。特に本発明は複数のセリンプロテアーゼを単一の遺伝子産物として生成せしめる能力を有する遺伝子に関連した技術・知識を提供するものであり、ヒトポリプロテアーゼタンパク質を発見且つ確認することに関し、また本タンパク質をエンコードしている遺伝子にも関し、さらには、それらの可能な阻害剤にも関し、また、その構造分析、及び正常や病的なプロセスにおける関連した事項に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロテアーゼは、構造的及び機能的に異なっている様々なタンパク質のグループを含んでおり、共通した能力、すなわちペプチド結合を加水分解する能力を持っている (非特許文献1: Barrett, A. J. et al., Handbook of proteolytic enzymes, Academic Press, San Diego, 1998)。現在まで、500 を越える互いに異なるヒトのプロテアーゼ及びホモログが分子レベルで同定され特徴づけられている (非特許文献2: Lopez−Otin, C. et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 3: 509−519, 2002) 。酵素のこの大きなグループを含んでの機能についての研究は、そもそもは、タンパク質異化作用に関連した非特異的な反応におけるそれらの役割を解析することを目標にしていた。しかしながら、最近では、タンパク質分解というものが、細胞の生死がそれに依存するといった多くの出来事を制御するための基本メカニズムを表わしているということが広く認識されるに至ってきている。したがって、プロテアーゼは、特定の基質を高度に選択的且つ限定して開裂せしめるといったそれらの能力を介して、多数のタンパク質の細胞内外での適切な局在化、膜結合タンパク質からの外部ドメイン(エクトドメイン, ectodomain)のシェディング、さらにはサイトカイン、成長因子(増殖因子)及びペプチド・ホルモンの活性化並びに不活性化をコントロールしている (非特許文献2) 。
【0003】
これらのタンパク質分解プロセッシングというものは、細胞周期の進行、形態形成及び組織リモデリングを含む不可欠な生物学的プロセス、細胞増殖、転移、血管新生やアポトーシスに影響を及ぼすことが見出されてきている。プロテアーゼを媒介とした機能は、例えば、排卵、受精、妊娠、骨形成、創傷治癒、神経成長及び抗原提示のような生理的なプロセスの中心をなすものである。更に、プロテアーゼの構造、機能及び制御における変化は、例えば、癌、関節炎、心血管の障害及び神経変性病のようなヒトの疾病の根底に横たわるものでもある (非特許文献3: Southan, C., FEBS Lett., 498: 214−218, 2001; 非特許文献4: Lin, C. Y. et al., J. Biol. Chem., 274: 18231−18236, 1999; 非特許文献5: Egeblad, M., et al., Nature Rev. Cancer, 2: 161−174, 2002)。ヒトのタンパク質分解システムがより複雑なものであることが判明してくるにしたがい、プロテアーゼの分野で生じた多数の疑問点をを明らかにしていくためのグローバル化した概念やアプローチを導入することが必要とされている。こうしたことから、本発明者等は、細胞、組織若しくは生物体により、特定の瞬間又は状況の下で発現されるプロテアーゼの完全なセットを明らかにするために、用語、デグラドーム(degradome) を創り出した (非特許文献2) 。そして、デグラドームを完全に得ようとすることに焦点を置いた研究は、このヒトのタンパク質分解システムの複雑さを解明していくことを目的としているものである。
【0004】
【非特許文献1】
Barrett, A. J. et al., Handbook of proteolytic enzymes, Academic Press, San Diego, 1998
【非特許文献2】
Lopez−Otin, C. et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 3: 509−519, 2002
【非特許文献3】
Southan, C., FEBS Lett., 498: 214−218, 2001
【非特許文献4】
Lin, C. Y. et al., J. Biol. Chem., 274: 18231−18236, 1999
【非特許文献5】
Egeblad, M., et al., Nature Rev. Cancer, 2: 161−174, 2002
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ヒトの組織中で存在する、そして重要で且つ多様な生理的及び生物学的働きを持つと思われる、単一の翻訳物から、独立したプロテアーゼ領域を産生するポリプロテアーゼタンパク質を捜し出すことは、ヒトのデグラドームの複雑性を解明する上で大きな意味がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、デグラドームに立脚し、相同性(ホモロジー)を利用してある種の特徴配列、例えばプロテアーゼタンパク質の特徴配列と類似性を示す遺伝子配列のフラグメントをデータベース上で探索し、それに基づいて分子クローニング法を駆使した系統的な研究を広範に進める中で、代表的なプロテアーゼであるセリンプロテアーゼ構造に関連して、ユニークな構造を有する遺伝子を発見することに成功した。そして該新しく予測される遺伝子を、ヒト組織のRNAやcDNAライブラリーを利用し、PCR増幅により、さらには増幅されたフラグメントを使用したハイブリダイゼーション技術、RACEを繰り返し行い、5’端と3’端方向に伸張するなどの手法により、ターゲット遺伝子をクローニングし、ヒトクローンの配列決定(シークエンシング)及び特性決定を行い、モザイクタンパク質をコードする遺伝子を取得することに成功した。
【0007】
本発明は、次のものを提供している。
〔1〕 (i) ポリセラーゼ−Iタンパク質、
(ii) (a) セラーゼ−1タンパク質、(b) セラーゼ−2タンパク質、(c) セラーゼ−3タンパク質、(d) セラーゼ−1及びセラーゼ−2を共に含有しているタンパク質、(e) セラーゼ−1、セラーゼ−2及びセラーゼ−3を共に含有しているタンパク質、及び(f) セラーゼ−2及びセラーゼ−3を共に含有しているタンパク質から成る群から選ばれたタンパク質、
(iii) (A) 配列番号:13又は図1〜2のヌクレオチド配列及び(B) その多形型配列、オールターナティブスプライシング産物、変異体、ホモログ、誘導体配列あるいは部分配列であって且つタンパク分解活性を持つ酵素をコードするかあるいは細胞の変化、ホメオスタシスあるいは血管新生のプロセスに関与するもの、
から成る群から選ばれたヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列の全部あるいはその一部を有するポリペプチド、
(iv) 配列番号:14又は図1〜2のアミノ酸配列、配列番号:15のアミノ酸配列及び配列番号:16のアミノ酸配列から成る群から選ばれた配列からなるポリペプチドあるいはその一部の配列からなるポリペプチド、
(v) (a)配列番号:14のGlu190〜Glu433のポリペプチド、(b) 配列番号:14 のGlu491〜Glu733のポリペプチド、(c) 配列番号:14のAsp816〜Gln1055のポリペプチド、(d) 配列番号:14のGlu190〜Glu433の配列及びGlu491〜Glu733の配列を共に有するポリペプチド、(e) 配列番号:14のGlu190〜Glu433の配列、Glu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するポリペプチド、(f) 配列番号:14のGlu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するポリペプチドから成る群から選ばれたポリペプチドあるいはその一部の配列からなるポリペプチド、
(vi) 前記(i)又は(ii)のタンパク質並びに(iii)〜(v)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列のいずれか一において、1個以上のアミノ酸あるいは1若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ(i)又は(ii)のタンパク質の示す生物学的活性を有するか、あるいは(iii)〜(v)のいずれかのポリペプチドの示す生物学的活性を有するポリペプチド、及び
(vii) 配列番号:14又は図1〜2のアミノ酸配列、配列番号:15のアミノ酸配列及び配列番号:16のアミノ酸配列から成る群から選ばれた配列に存在する各ドメインのいずれか一に対し少なくとも50% 以上、あるいは60% 以上、又は少なくとも70% より高い相同性を有しているもの、あるいはそれに対し、80% あるいは90% 以上の相同アミノ酸配列を有するポリペプチド
から成る群から選ばれたものであることを特徴とするタンパク質若しくはポリペプチド又はその塩、あるいは
(viii) 前記 (i)〜(vii)のいずれか一記載のタンパク質若しくはポリペプチドの部分ペプチド又はその塩。
【0008】
〔2〕 (i) ポリセラーゼ−Iタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(ii) (a) セラーゼ−1タンパク質、(b) セラーゼ−2タンパク質、(c) セラーゼ−3タンパク質、(d) セラーゼ−1及びセラーゼ−2を共に含有しているタンパク質、(e) セラーゼ−1、セラーゼ−2及びセラーゼ−3を共に含有しているタンパク質、及び(f) セラーゼ−2及びセラーゼ−3を共に含有しているタンパク質から成る群から選ばれたタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(iii) 配列番号:14又は図1〜2のアミノ酸配列、配列番号:15のアミノ酸配列及び配列番号:16のアミノ酸配列からなるポリペプチドあるいはその一部の配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(iv) (A) 配列番号:13又は図1〜2のヌクレオチド配列及び (B)その多形型配列、オールターナティブスプライシング産物、変異体、ホモログ、誘導体配列あるいは部分配列であって且つタンパク分解活性を持つ酵素をコードするかあるいは細胞の変化、ホメオスタシスあるいは血管新生のプロセスに関与するもの、
から成る群から選ばれた配列からなるポリヌクレオチド、
(v) (a) 配列番号:14のGlu190〜Glu433のポリペプチド、(b) 配列番号:14 のGlu491〜Glu733のポリペプチド、(c) 配列番号:14のAsp816〜Gln1055のポリペプチド、(d) 配列番号:14のGlu190〜Glu433の配列及びGlu491〜Glu733の配列を共に有するポリペプチド、(e) 配列番号:14のGlu190〜Glu433の配列、Glu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するポリペプチド及び(f) 配列番号:14のGlu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するポリペプチドから成る群から選ばれたポリペプチドあるいはその一部の配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(vi) (i)又は(ii)のタンパク質のアミノ酸配列あるいは(ii)のアミノ酸配列又は(v)のポリペプチドにおけるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸あるいは1若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ(i)又は(ii)のタンパク質の示す生物学的活性を有するか、あるいは(iii)〜(v)のいずれかのポリペプチドの示す生物学的活性又は(iv)で言及した生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(vii) 配列番号:13又は図1〜2からなるDNA から選択された10個又は15個以上の連続した塩基配列を有するヌクレオチド配列と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ(i)又は(ii)のタンパク質の示す生物学的活性を有するか、あるいは(iii)〜(v)のいずれかのポリペプチドの示す生物学的活性又は(iv)で言及した生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び
(viii) 配列番号:13又は図1〜2の配列のCDS に対して少なくとも 50%以上、さらには60% 以上、好ましくは70% 以上、さらに好ましくは80% 以上、あるいは90% 以上の相同性を有し且つ(i)又は(ii)のタンパク質の示す生物学的活性を有するか、あるいは(iii)〜(v)のいずれかの示す生物学的活性又は(iv)で言及した生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
から成る群から選ばれたものであることを特徴とするポリヌクレオチド。
【0009】
〔3〕 上記〔2〕記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とする組換えベクター。
〔4〕 上記〔2〕記載のポリヌクレオチド又は上記〔3〕記載のベクターで宿主細胞を形質転換されて得られたことを特徴とする形質転換された宿主細胞。
〔5〕 上記〔4〕記載の宿主細胞を培養条件下に維持して、上記〔1〕記載のタンパク質又はポリペプチドを発現せしめ、得られた発現ポリペプチドを分離することを特徴とする上記〔1〕記載のタンパク質又はポリペプチドの製造方法。
〔6〕 上記〔1〕記載の(i) 〜(vi)のいずれか一記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩に特異的に結合することを特徴とする抗体。
〔7〕 抗体が、モノクローナル抗体であることを特徴とする上記〔6〕記載の抗体。
【0010】
〔8〕 (i) 上記〔6〕記載の抗体又は(ii)上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩を含むことを特徴とする上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩の免疫学的測定試薬。
〔9〕 上記〔6〕記載の抗体を測定試薬として用いることを特徴とする上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩の免疫学的測定方法。
〔10〕 (1) 上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩、(2) 上記〔6〕記載の抗体、(3) 上記〔2〕記載のポリヌクレオチド、(4) 上記〔3〕記載の組換えベクター及び(5) 上記〔4〕記載の形質転換された細胞から成る群から選ばれたものを含むことを特徴とする組成物。
〔11〕 上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩、その一部のペプチドまたはそれらの塩;あるいは上記〔2〕記載のポリヌクレオチド;あるいは上記〔6〕記載の抗体を含有していることを特徴とする医薬。
〔12〕 上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩、その一部のペプチドまたはそれらの塩の、生物学的活性を促進または阻害する化合物またはその塩を含有していることを特徴とする医薬。
〔13〕 上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩、その一部のペプチドまたはそれらの塩の、生物学的活性を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法及びスクリーニングキット。
【0011】
〔14〕 組換えあるいは合成タンパク質又はポリペプチド生産のための、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。
〔15〕 抗体作製のための、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。
〔16〕 ポリセラーゼ−I活性, セラーゼ−1活性, セラーゼ−2活性, セラーゼ−3、ポリセラーゼ−I膜貫通(TM)及びポリセラーゼ−I 低密度リポプロテイン・レセプター・ドメイン・クラスA (LDLR)活性から成る群から選ばれた活性に対する阻害剤をデザインするための、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。
〔17〕 ポリセラーゼ−Iに関する活性を持っているタンパク質及び/又は該ポリセラーゼ−Iをコードする遺伝子を検出するためのシステムを構築するための、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。
〔18〕 ポリセラーゼ−Iに関して及び/又は該ポリセラーゼ−Iをコードする遺伝子に関してメディエートされる病気発生プロセスを処置するための活性化合物を製造するための、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。
〔19〕 ポリセラーゼ−Iタンパク質又はそれをコードする遺伝子配列を同定する方法であって、
(i) オリゴヌクレオチドプライマーを使用する核酸のPCRによる増幅、又は
(ii) cDNA のライブラリーとハイブリダイズするプローブの使用
を含み、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用を含むことを特徴とする方法。
〔20〕 ポリセラーゼ−Iタンパク質が、ヒト由来、マウス由来又はラット由来のものであることを特徴とする上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチド又はその部分ペプチドあるいはその塩。
〔21〕 ポリセラーゼ−Iタンパク質が、ヒト由来、マウス由来又はラット由来のものであることを特徴とする上記〔2〕記載のポリヌクレオチド。
〔22〕 ポリセラーゼ−Iが、ヒト由来、マウス由来又はラット由来のものであることを特徴とする上記〔14〕〜〔18〕のいずれかに記載の使用。
〔23〕 ポリセラーゼ−Iタンパク質が、ヒト由来、マウス由来又はラット由来のものであることを特徴とする上記〔19〕記載の方法。
〔24〕 上記〔1〕(vii) のドメインが、セラーゼ−1、セラーゼ−2、セラーゼ−3、ポリセラーゼ−I TM 及びポリセラーゼ−I LDLR から成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔1〕記載のタンパク質若しくはポリペプチド又はその部分ペプチドあるいはその塩。
【0012】
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例などの記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本明細書において「ポリセラーゼI」(又はポリセラーゼI タンパク質あるいはポリセラーゼI ポリペプチド)とは、それぞれ既知のセリンプロテアーゼに類似した複数の酵素活性ドメインを複雑な構成で一つの遺伝子上に保有しているペプチドであって、本発明で開示されている新規なペプチドを指している。本明細書で開示し説明してある特徴的な領域(ドメイン) の全部あるいはその一部をその一体性を損なわない範囲で保有するものは、本発明で意図するポリセラーゼI タンパク質又はそのホモログの範囲内にあると考えてよい。該ポリセラーゼI は、そのN端側より膜貫通(transmembrane, TM)ドメイン、低密度リポプロテイン・レセプター(low density lipoprotein receptor, LDLR)ドメイン、セラーゼ−1、セラーゼ−2、そしてセラーゼ−3が線型に配置された構造を有している。かくして、本発明のタンパク質としては、ポリセラーゼI に関連するもの、例えばセラーゼ−1、セラーゼ−2、そしてセラーゼ−3のそれぞれ、セラーゼ−1・ドメインとセラーゼ−2・ドメインとを共に持つもの、セラーゼ−2・ドメインとセラーゼ−3・ドメインとを共に持つもの、セラーゼ−1・ドメインとセラーゼ−2・ドメインとセラーゼ−3・ドメインとを共に持つものが含められる。該タンパク質としては、配列表の配列番号:14 のGlu190〜Glu433、Glu491〜Glu733又はAsp816〜Gln1055を有するもの、配列番号:14 のGlu190〜Glu433の配列及びGlu491〜Glu733の配列を共に有するもの、配列番号:14 のGlu190〜Glu433の配列、Glu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するもの、配列番号:14 のGlu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するものなども含められる。該タンパク質としては、配列番号:14 のArg202、Arg503又は Arg826 の後に位置するトリプシン様プロテアーゼのコンセンサス活性化部位を有するもの、セリンプロテアーゼにおけるコンセンサス・モチーフ Gly−Asp−Ser−Gly−Gly(例えば、配列番号:14 の385〜389位、685 〜689 位)及びそれに相当する変異部位Gly−Asp−Ala−Gly−Gly(例えば、配列番号:14 の1007〜1011位)から成る群から選ばれたものモチーフの複数を線型にある間隔をおいて配置して含有するもの、配列Ser−Trp−Gly (例えば、配列番号:14 の407〜409位、707〜709位及び1029〜1031位)を複数有するもの、触媒活性に必要なHis 残基及びAsp 残基(例えば、配列番号:14 のHis243とAsp292、His544とAsp592、そしてHis868とAsp915)を複数有するもの、触媒領域の3個のS−S 結合の形成に関与する6個のCys 残基(例えば、配列番号:14 のCys228−Cys244, Cys358−Cys372及びCys383−Cys412 のセット、Cys529−Cys545, Cys658−Cys672及びCys682−Cys712 のセット、そしてCys853−Cys869, Cys980−Cys994及びCys1005−Cys1034 のセット)を有するものなどが挙げられる。
本発明の代表的なポリセラーゼI タンパク質としては、配列表の配列番号:13(図1〜2) のDNA でコードされて産生されるポリペプチド、例えば配列表の配列番号:14(図1〜2) のアミノ酸配列またはそれと実質的に同等なアミノ酸配列を有するポリペプチド(ホモログ)(例えば配列表の配列番号:15 又は16のアミノ酸配列を有するポリペプチドなど) が挙げられ、例えば、配列番号:14 のアミノ酸配列のうちの少なくとも 5〜1059個の連続したアミノ酸残基を有し且つ酵素活性あるいは同等の抗原性などといった実質的に同等の生物学的活性を有するもの、あるいはそれらの特徴を有し且つ配列表の配列番号:14 の各ドメイン(TMドメイン、LDLRドメイン、セラーゼ−1ドメイン、セラーゼ−2ドメイン、セラーゼ−3ドメイン)のいずれか一つと少なくとも50% より高い相同性、あるいは少なくとも60% より高い相同性、あるいは少なくとも70% より高い相同性、あるいは少なくとも80% より高い相同性、あるいは少なくとも90% より高い相同性、あるいは少なくとも95% 以上の相同性、あるいは少なくとも98% 以上の相同性を有するものなどで、新規なものが挙げられる。
【0014】
本発明のポリセラーゼI ポリペプチドとしては、配列番号:14(図1〜2)、配列番号:15又は配列番号:16のアミノ酸配列の全部又は一部を含む連続したアミノ酸残基、あるいは該配列番号:14(図1〜2)、配列番号:15又は配列番号:16のアミノ酸配列のアミノ酸配列のうちの連続したアミノ酸残基5個以上、好ましくは10個以上、また好ましくは20個以上、さらに好ましくは30個以上、より好ましくは40個以上、また好ましくは50個以上、さらに好ましくは60個以上、もっと好ましくは70個以上、また好ましくは80個以上、さらに好ましくは90個以上、もっとも好ましくは100 個以上、また好ましくは110 個以上を有するものが挙げられる。本発明のポリセラーゼI 関連ポリペプチドとしては、配列番号:14(図1〜2) 及び図3から成る群から選ばれたアミノ酸配列の一部または全部を有していてもよい(開始コドンに対応するMetを欠いていてもよい) 。こうした配列を有するものはすべて包含されてよい。
【0015】
本発明の当該ポリセラーゼI タンパク質、セラーゼ−1タンパク質、セラーゼ−2タンパク質、ポリセラーゼI TMタンパク質、ポリセラーゼI LDLRタンパク質、又はポリペプチドをコードする核酸は、代表的には配列表の配列番号:14(又は図1〜2) 又は図3で表されるペプチド及びその一部の連続したアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するもの、例えば、配列表の配列番号:13 又は図1〜2で表される塩基配列の少なくともペプチドコード領域により構成される塩基配列を含有するもの(各特徴的なドメインのみをコードするものも包含する)、コード配列に開始コドン (Met をコードするコドン) 及び終止コドンを付加したもの、また、該塩基配列がコードするタンパク質と少なくとも50%の相同性を有するアミノ酸配列を持ち且つ配列番号:14 、又は図1〜2あるいは図3のアミノ酸配列のうちの少なくとも特徴的な連続したアミノ酸残基を有し、尚且つ酵素活性あるいは同等の抗原性などのそれと実質的に同等の生物学的活性を有するペプチドをコードするといったそれと同効の塩基配列を含有するものであれば如何なるものであってもよい。当該タンパク質をコードする核酸は、一本鎖DNA 、二本鎖DNA 、RNA 、DNA:RNA ハイブリッド、合成DNA などの核酸であり、またヒトゲノムDNA 、ヒトゲノミックDNA ライブラリー、ヒト組織・細胞由来のcDNA、合成DNA のいずれであってもよい。当該タンパク質をコードする核酸の塩基配列は、修飾(例えば、付加、除去、置換など)されることもでき、そうした修飾されたものも包含されてよい。さらには、以下説明するように、本発明の核酸は、本発明のペプチドあるいはその一部をコードするものであってよく、好ましいものとしてはDNA が挙げられる。また上記「同効の塩基配列」とは、例えばストリンジェントな条件で配列表の配列番号:13 、あるいは図1〜2の塩基配列又は図3に示されたアミノ酸配列をコードする塩基配列のうちの5個以上の連続した塩基を持つ配列、好ましくは10個以上の塩基を持つ配列、より好ましくは15個以上の塩基を持つ配列、さらに好ましくは20個以上の塩基を持つ配列とハイブリダイズし、当該タンパク質と実質的に同等のアミノ酸配列をコードするものなどが挙げられる。
【0016】
本発明では、「遺伝子組換え技術」を利用して所定の核酸を単離・配列決定したり、組換え体を作製したり、所定のペプチドを得ることができる。本明細書中使用できる遺伝子組換え技術としては、当該分野で知られたものが挙げられ、例えば J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis, ”Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition (1989), 3rd Edition (2001)”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York; D. M. Glover et al. ed., ”DNA Cloning”, 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995); 日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法II」、東京化学同人 (1986);日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸 III(組換えDNA 技術)」、東京化学同人 (1992); R. Wu ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 68 (Recombinant DNA), Academic Press, New York (1980); R. Wu et al. ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 100 (Recombinant DNA, Part B) & 101 (Recombinant DNA, Part C), Academic Press, New York (1983); R. Wu et al. ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 153 (Recombinant DNA, Part D), 154 (Recombinant DNA, Part E) & 155 (Recombinant DNA, Part F), Academic Press, New York (1987); J. H. Miller ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 204, Academic Press, New York (1991); R. Wu et al. ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 218, Academic Press, New York (1993)などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法あるいはそれらと実質的に同様な方法や改変法が挙げられる(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる) 。
【0017】
本明細書中、「相同性」とは、ポリペプチド配列(あるいはアミノ酸配列)又はポリヌクレオチド配列(あるいは塩基配列)における2本の鎖の間で該鎖を構成している各アミノ酸残基同志又は各塩基同志の互いの適合関係において同一であると決定できるようなものの量(数)を意味し、二つのポリペプチド配列又は二つのポリヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味するものである。相同性は容易に算出することができる。二つのポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列間の相同性を測定する方法は数多く知られており、「相同性」(「同一性」とも言われる)なる用語は、当業者には周知である (例えば、Lesk, A. M. (Ed.), Computational Molecular Biology, Oxford University Press, New York, (1988); Smith, D. W. (Ed.), Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Academic Press, New York, (1993); Grifin, A. M. & Grifin, H. G. (Ed.), Computer Analysis of Sequence Data: Part I, Human Press, New Jersey, (1994); von Heinje, G., Sequence Analysis in Molecular Biology, Academic Press, New York, (1987); Gribskov, M. & Devereux, J. (Ed.), Sequence Analysis Primer, M−Stockton Press, New York, (1991) など) 。二つの配列の相同性を測定するのに用いる一般的な方法には、Martin, J. Bishop (Ed.), Guide to Huge Computers, Academic Press, San Diego, (1994); Carillo, H. & Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988) などに開示されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。相同性を測定するための好ましい方法としては、試験する二つの配列間の最も大きな適合関係部分を得るように設計したものが挙げられる。このような方法は、コンピュータープログラムとして組み立てられているものが挙げられる。二つの配列間の相同性を測定するための好ましいコンピュータープログラム法としては、GCG プログラムパッケージ (Devereux, J. et al., Nucleic Acids Res., 12: 387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA (Atschul, S. F. et al., J. Mol. Biol., 215: 403 (1990)) などが挙げられるが、これらに限定されるものでなく、当該分野で公知の方法を使用することができる。
【0018】
本明細書で用いる用語「ポリペプチド」としては、以下に記載するような如何なるポリペプチドを指すものであってもよい。ポリペプチドの基本的な構造は周知であり、当該技術分野において非常に数多くの参考書及びその他の刊行物に記載がある。こうしたことに鑑み、本明細書で用いる用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合又は修飾したペプチド結合により互いに結合しているような2個又はそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又は任意のタンパク質を意味する。本明細書で用いる用語「ポリペプチド」としては、当該分野において、例えばペプチド、オリゴペプチドあるいはペプチドオリゴマーとも称せられる短い鎖のもの、及びタンパク質と一般的に言われ、多くの形態のものが知られている長い鎖のものの両方を通常意味してよい。ポリペプチドは、しばしば、通常、天然型アミノ酸(天然に存在しているアミノ酸: あるいは遺伝子でコードされるアミノ酸)と称されるアミノ酸以外のアミノ酸を含有していてもよい。ポリペプチドは、また末端アミノ酸残基を含めて、その多くのアミノ酸残基が翻訳された後にプロセッシング及びその他の改変(あるいは修飾)されるといった天然の工程によるのみならず、当業者に周知の化学的改変技術によっても、上記のポリペプチドはそれが改変(修飾)できることは理解されよう。該ポリペプチドに加えられる改変(修飾)については、多くの形態のものが知られており、それらは当該分野の基礎的な参考書及びさらに詳細な論文並びに多数の研究文献にも詳しく記載されており、これらは当業者に周知である。幾つかのとりわけ常套的な改変・修飾としては、例えば酸化、還元、メチル化などのアルキル化、ホルミル化やアセチル化などのアシル化、エステル化、アミド化、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、リン酸化、グルタミン酸残基のγ−カルボキシル化、水酸化及びADP−リボシル化などが挙げられ、例えばT. E. Creighton, Proteins−Structure and Molecular Properties, Second Edition, W. H. Freeman and Company, New York, (1993); B.C.Johnson (Ed.), Posttranslational Covalent Modification of Proteins, Academic Press, New York, (1983) (Wold, F., ”Posttranslational Protein Modifications: Perspective and Prospects”, pp.1−12); Seifter et al., ”Analysis for Protein Modifications and nonprotein cofactors”, Methods in Enzymology, 182: 626−646 (1990); Rattan et al., ”Protein Synthesis: Posttranslational Modification and Aging”, Ann. N. Y. Acad. Sci., 663: p.48−62 (1992)などの記載を参照できる。
【0019】
本明細書中、「ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(polymerase chain reaction)」又は「PCR」とは、一般的に、H. A. Erlich ed., PCR Technology, Stockton Press, 1989などに記載されたような方法を指し、例えば、所望のヌクレオチド配列をインビトロで酵素的に増幅するための方法を指している。一般に、PCR 法は、鋳型核酸と優先的にハイブリダイズすることのできる2個のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、プライマー伸長合成を行うようなサイクルを繰り返し行うことを含むものである。典型的には、PCR 法で用いられるプライマーは、鋳型内に存在するヌクレオチド配列に対して相補的なプライマーを使用することができ、例えば、ターゲットのヌクレオチド配列とその両端において相補的であるか、あるいは該増幅されるべきターゲットヌクレオチド配列に隣接しているものを好ましく使用することができる。5’端側のプライマーとしては、少なくとも開始コドンを含有するか、あるいは該開始コドンを含めて増幅できるように選択し、また3’端側のプライマーとしては、少なくともストップコドンを含有するか、あるいは該ストップコドンを含めて増幅できるように選択することが好ましいが、それには限定されない。プライマーは、好ましくは 5個又は10個以上の塩基、さらに10個又は15個以上の塩基からなるオリゴヌクレオチド、15〜35個の塩基、より好ましくは18〜25個の塩基からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。本PCR 法には、逆転写PCR (polymerase chain reaction coupled reverse transcription; RT−PCR)、RACE (cDNA末端の迅速増幅; rapid amplification of cDNA ends) 、逆PCR (reverse PCR) などの技術も含まれる。
【0020】
PCR 反応は、当該分野で公知の方法あるいはそれと実質的に同様な方法や改変法により行うことができるが、例えば上記文献(Erlich ed.)に加え、R. Saiki, et al., Science, 230: 1350, 1985; R. Saiki, et al., Science, 239: 487, 1988 ; D. M. Glover et al. ed., ”DNA Cloning”, 2nd ed., Vol. 1, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995) ; M. A. Innis et al. ed., ”PCR Protocols: a guide to methods and applications”, Academic Press, New York (1990)); M. J. McPherson, P. Quirke and G. R. Taylor (Ed.), PCR: a practical approach, IRL Press, Oxford (1991); M. A. Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998−9002 (1988); 米国特許第 4,683,195号明細書などに記載された方法あるいはそれを修飾したり、改変した方法に従って行うことができる。また、PCR 法は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。RACEは、例えば、M. A. Innis et al. ed., ”PCR Protocols” (M. A. Frohman, ”a guide to methods and applications”), pp.28−38, Academic Press, New York (1990) などに記載された方法に従って行うことができる。
【0021】
PCR 反応は、代表的な場合には、例えば鋳型(例えば、染色体DNAあるいはmRNAを鋳型にして合成されたDNA; 1st strand DNA)と該遺伝子などのターゲットに基づいてデザインされたプライマーとを、10×反応緩衝液 (Taq DNA ポリメラーゼに添付されている) 、dNTPs ( デオキシヌクレオシド三リン酸dATP, dGTP, dCTP, dTTPの混合物)、Taq DNA ポリメラーゼ及び脱イオン蒸留水と混合する。混合物を、例えば、GeneAmp 2400 PCR system, Perkin−Elmer/Cetus社などの自動サーマルサイクラーを用いて一般的なPCR サイクル条件下にそのサイクルを25〜60回繰り返すが、増幅のためのサイクル数は適宜目的に応じて適当な回数とすることができる。PCR サイクル条件としては、例えば、変性90〜95℃ 5〜100 秒、アニーリング40〜60℃ 5〜150 秒、伸長65〜75℃ 30 〜300 秒のサイクル、好ましくは変性 94 ℃ 15 秒、アニーリング 58 ℃ 15 秒、伸長 72 ℃ 45 秒のサイクルが挙げられるが、アニーリングの反応温度及び時間は適宜実験によって適当な値を選択できるし、変性反応及び伸長反応の時間も、予想されるPCR 産物の鎖長に応じて適当な値を選択できる。アニーリングの反応温度は、通常プライマーと鋳型DNA とのハイブリッドのTm値に応じて変えることが好ましい。伸長反応の時間は、通常1000bpの鎖長当たり1 分程度がおおよその目安であるが、より短い時間を選択することも場合により可能である。
【0022】
本明細書中、「オリゴヌクレオチド」とは、比較的短い一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドで、好ましくはポリデオキシヌクレオチドが挙げられ、J. W. Engels, et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., Vol.28, p.716−734 (1989) に記載されているような既知の方法、例えば、フォスフォトリエステル法、フォスフォジエステル法、フォスファイト法、フォスフォアミダイト法、フォスフォネート法などの方法により化学合成されることができる。通常合成は、修飾された固体支持体上で合成を便利に行うことができることが知られており、例えば、自動化された合成装置を用いて行うことができ、該装置は市販されている。該オリゴヌクレオチドは、一つ又はそれ以上の修飾された塩基を含有していてよく、例えば、イノシンなどの天然においては普通でない塩基あるいはトリチル化された塩基などを含有していてよいし、場合によっては、マーカーの付された塩基を含有していてよい。
【0023】
所定の核酸を同定したりするには、ハイブリダイゼーション技術を利用することができる。該ハイブリダイゼーションは、上記「遺伝子組換え技術」を開示する文献記載の方法あるいはそれと実質的に同様な方法や改変法により行うことができる。例えば、ハイブリダイゼーションは、DNA などの核酸を含有しているサンプルをナイロンフィルターなどの膜を含めた担体に転写せしめ、必要に応じ変成処理、固定化処理、洗浄処理などを施した後、その担体(例えば、膜など)に転写せしめられたものを、必要に応じ変成させた標識プローブDNA 断片と、ハイブリダイゼーション用緩衝液中で反応させて行われる。
【0024】
ハイブリダイゼーション処理は、普通約35〜約80℃、より好適には約50〜約65℃で、約15分間〜約36時間、より好適には約1〜約24時間行われるが、適宜最適な条件を選択して行うことができる。例えば、ハイブリダイゼーション処理は、約55℃で約18時間行われる。ハイブリダイゼーション用緩衝液としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、例えば、Rapid hybridization buffer(Amersham社)などを用いることができる。転写した担体(例えば、膜など)の変成処理としては、アルカリ変性液を使用する方法が挙げられ、その処理後中和液や緩衝液で処理するのが好ましい。また担体(例えば、膜など)の固定化処理としては、普通約40〜約 100℃、より好適には約70〜約90℃で、約15分間〜約24時間、より好適には約1〜約4時間ベーキングすることにより行われるが、適宜好ましい条件を選択して行うことができる。例えば、フィルターなどの担体を約80℃で約2 時間ベーキングすることにより固定化が行われる。転写した担体(例えば、膜など)の洗浄処理としては、当該分野で普通に使用される洗浄液、例えば1M NaCl 、1mM EDTA及び 0.1% sodium dodecyl sulfate (SDS) 含有 50mM Tris−HC1緩衝液,pH8.0 などで洗うことにより行うことができる。ナイロンフィルターなどの膜を含めた担体としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができる。
【0025】
上記アルカリ変性液、中和液、緩衝液としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、アルカリ変性液としては、例えば、0.5M NaOH 及び1.5M NaCl を含有する液などを挙げることができ、中和液としては、例えば、1.5M NaCl 含有 0.5M Tris−HCl 緩衝液,pH8.0 などを挙げることができ、緩衝液としては、例えば、 2×SSPE(0.36M NaCl、20mM NaH2PO4及び2mM EDTA)などを挙げることができる。またハイブリダイゼーション処理に先立ち、非特異的なハイブリダイゼーション反応を防ぐために、必要に応じて転写した担体(例えば、膜など)はプレハイブリダイゼーション処理することが好ましい。このプレハイブリダイゼーション処理は、例えば、プレハイブリダイゼーション溶液[50% formamide、 5×Denhardt’s溶液(0.2 %ウシ血清アルブミン、0.2 % polyvinyl pyrrolidone)、 5×SSPE、0.1 % SDS、100 μg/ml 熱変性サケ精子DNA ]などに浸し、約35〜約50℃、好ましくは約42℃で、約 4〜約24時間、好ましくは約 6〜約8 時間反応させることにより行うことができるが、こうした条件は当業者であれば適宜実験を繰り返し、より好ましい条件を決めることができる。ハイブリダイゼーションに用いる標識プローブDNA 断片の変性は、例えば、約70〜約100 ℃、好ましくは約100 ℃で、約1〜約60分間、好ましくは約 5分間加熱するなどして行うことができる。なお、ハイブリダイゼーションは、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で行うことができるが、本明細書でストリンジェントな条件とは、例えばナトリウム濃度に関し、約15〜約50mM、好ましくは約19〜約40mM、より好ましくは約19〜約20mMで、温度については約35〜約85℃、好ましくは約50〜約70℃、より好ましくは約60〜約65℃の条件を示す。
【0026】
ハイブリダイゼーション完了後、フィルターなどの担体を十分に洗浄処理し、特異的なハイブリダイゼーション反応をした標識プローブDNA 断片以外の標識プローブを取り除くなどしてから検出処理をすることができる。フィルターなどの担体の洗浄処理は、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いて行うことができ、例えば、0.1 % SDS含有 0.5×SSC ( O.15M NaCl、15mM クエン酸)溶液などで洗うことにより実施できる。
ハイブリダイズした核酸は、代表的にはオートラジオグラフィーにより検出することができるが、当該分野で用いられる方法の中から適宜選択して検出に用いることもできる。検出したシグナルに相当する核酸バンドを、適切な緩衝液、例えば、SM溶液(100mM NaCl 及び10mM MgSO4含有50mM Tris−HCl 緩衝液、pH7.5 )などに懸濁し、ついでこの懸濁液を適度に希釈して、所定の核酸を単離・精製、そしてさらなる増幅処理にかけることができる。
【0027】
ハイブリダイゼーション処理により遺伝子ライブラリーやcDNAライブラリーなどを含めた核酸サンプルから目的核酸をスクリーニングする処理は、繰り返して行うことができる。クローニングされているヒト由来のcDNAライブラリー、例えば種々のヒト由来の組織あるいは培養細胞(特には、ヒトの腎臓、脳、松果体、下垂体後葉、神経細胞、網膜、網膜血管細胞、網膜神経細胞、胸腺、血管、内皮細胞、血管平滑筋細胞、血液細胞、マクロファージ、リンパ球、精巣、卵巣、子宮、腸、心臓、肝臓、膵臓、小腸、大腸、歯肉関連細胞、皮膚関連細胞、糸球体細胞、尿細管細胞、結合組織細胞などの組織・細胞、さらには各種腫瘍組織、ガン細胞など)cDNAライブラリーを使用できる。さらに鋳型などとして用いるcDNAライブラリーは、市販の種々の組織由来cDNAライブラリーを直接使用することもでき、例えばStratagene社, Invitrogen社, Clontech社などから市販されたcDNAライブラリーを用いることができる。典型的な例では、ヒト組織・細胞から調製した遺伝子ライブラリー、例えばヒトP1 artificial chromosome ゲノミックライブラリー(Human Genome Mapping Resource Center)、ヒト組織cDNAライブラリー (例えば、Clontech社などから入手可能) を用いることができる。種々のヒト組織あるいは培養細胞などから構築されたヒトゲノミック DNAライブラリーあるいはヒト由来cDNAライブラリーをプローブを使用してスクリーニングできる。プローブなどを放射性同位体などによって標識するには、市販の標識キット、例えばランダムプライム DNAラベリングキット (Boehringer Mannheim社) などを使用して行うことができる。例えば、random−primingキット (Pharmacia LKB社, Uppsala)などを使用して、プローブ用DNA を [α−32P]dCTP (Amersham社)などで標識し、放射活性を持つプローブを得ることができる。
【0028】
所定の核酸を保有する、ファージ粒子、組換えプラスミド、組換えベクターなどは、当該分野で普通に使用される方法でそれを精製分離することができ、例えば、グリセロールグラジエント超遠心分離法(Molecular Cloning, a laboratory manual, ed. T. Maniatis, Cold Spring Harbor Laboratory, 2nd ed. 78, 1989)、電気泳動法などにより精製することができる。ファージ粒子などからは、当該分野で普通に使用される方法でDNA を精製分離することができ、例えば、得られたファージなどをTM溶液(10mM MgSO4含有50mM Tris−HCl 緩衝液、pH7.8 )などに懸濁し、DNase I 及びRNase A などで処理後、20mM EDTA 、50μg/ml Proteinase K 及び0.5 %SDS 混合液などを加え、約65℃、約1 時間保温した後、これをフェノール抽出ジエチルエーテル抽出後、エタノール沈殿によりDNA を沈殿させ、次に得られたDNA を70%エタノールで洗浄後乾燥し、TE溶液(10mM EDTA 含有10mM Tris−HC1 緩衝液、pH8.0 )に溶解するなどして得られる。また、目的としているDNA は、サブクローニングなどにより大量に得ることも可能であり、例えばサブクローニングは、宿主として大腸菌を用いプラスミドベクターなどを用いて行うことができる。こうしたサブクローニングにより得られたDNA も、上記と同様にして遠心分離、フェノール抽出、エタノール沈殿などの方法により精製分離できる。
【0029】
本明細書において、核酸(又はポリヌクレオチド) は、一本鎖DNA 、二本鎖DNA 、RNA 、DNA:RNA ハイブリッド、合成DNA などの核酸であり、またヒトゲノムDNA 、ヒトゲノミックDNA ライブラリー、ヒト組織・細胞由来のcDNA、合成DNA 、mRNAのいずれであってもよい。核酸の塩基配列は、修飾(例えば、付加、除去、置換など)されることもでき、そうした修飾されたもの、さらにはそのホモログも包含されてよい。核酸は、本発明で記載するペプチド又はペプチド群あるいはその一部をコードするものであってよく、好ましいものとしてはDNA が挙げられる。また核酸は、対象ポリペプチド(タンパク質)、例えばセラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I, ポリセラーゼ−I内の膜貫通(TM)ドメイン及び低密度リポプロテイン・レセプター・クラスA (LDLレセプター・クラスA; LDLR)ドメインのそれぞれ、あるいはそれらの部分配列と同等の抗原性などのそれと実質的に同等の生物学的活性を有するペプチド(それと実質的に同一のアミノ酸配列を含有するものを含むし、それと高い相同性を有するものも含まれてよい)をコードするといったそれと同効の塩基配列を含有するもの(ホモログを含む)であれば如何なるものであってもよい。ヒト、チンパンジー、サル、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギなどの哺乳動物由来のものも包含されてもよい。本明細書で「高い相同性」といった場合当該対象配列の長さにもよるが、例えば 50%以上、さらには60% 以上、好ましくは70% 以上、さらに好ましくは80% 以上、そして特定の場合には95% 以上で、特に好ましくは97% 以上の相同性を示すものを指すものであってよい。該「同効の塩基配列」とは、例えばストリンジェントな条件で問題の配列を有するものにハイブリダイズするものであってよく、例えば当該塩基配列のうちの連続した5又は10個以上の塩基配列、好ましくは10又は15個以上の塩基配列、より好ましくは15個以上の塩基配列、さらに好ましくは20個以上の塩基配列とハイブリダイズし、当該ポリペプチドと実質的に同等のアミノ酸配列をコードするものなどが挙げられる。核酸は、化学合成によって得ることも可能である。その場合断片を化学合成し、それらを酵素により結合することによってもよい。
【0030】
本明細書において、得られたPCR産物などの核酸(DNAを含む)は、通常 1〜2% アガロースゲル電気泳動にかけて、特異なバンドとしてゲルから切り出し、例えば、gene clean kit (Bio 101)などの市販の抽出キットを用いて抽出する。抽出されたDNA は適当な制限酵素で切断し、必要に応じ精製処理したり、さらには必要に応じ5’末端をT4ポリヌクレオチドキナーゼなどによりリン酸化した後、pUC18 などのpUC 系ベクターといった適当なプラスミドベクターにライゲーションし、適当なコンピテント細胞を形質転換する。クローニングされたPCR 産物はその塩基配列を解析される。PCR 産物のクローニングには、例えば、p−Direct (Clontech社), pCR−ScriptTM SK(+) (Stratagene社), pGEM−T (Promega社), pAmpTM (Gibco−BRL社) などの市販のプラスミドベクターを用いることが出来る。宿主細胞の形質転換をするには、例えばファージベクターを使用したり、カルシウム法、ルビジウム/カルシウム法、カルシウム/マンガン法、TFB 高効率法、FSB 凍結コンピテント細胞法、迅速コロニー法、エレクトロポレーションなど当該分野で知られた方法あるいはそれと実質的に同様な方法で行うことができる(D. Hanahan, J. Mol. Biol., 166: 557, 1983 など)。目的とするDNA を単離するためには、逆転写PCR 、RACEを適用することが出来る。
【0031】
DNA は、必要に応じてクローニングでき、例えば、プラスミド、λファージ、コスミド、P1ファージ、F因子、YAC などが利用できる。好ましくはλファージ由来のベクターが挙げられ、例えばCharon 4A 、Charon 21A、λgt10、λgt11、λDASHII、λFIXII 、λEMBL3 、λZAPII TM (Stratagene社) などが利用できる。また、得られたDNA を、下記で詳しく説明するような適当なベクター、例えば、プラスミドpEX 、pMAMneo 、pKG5などのベクターに組込み、下記で詳しく説明するような適当な宿主細胞、例えば、大腸菌、酵母、CHO 細胞、COS 細胞などで発現させることができる。また、該DNA 断片は、そのままあるいは適当な制御配列を付加したDNA 断片として、または適当なベクターに組込み、そして動物に導入して、所定の遺伝子を発現するトランスジェニック動物を作成することができる。動物としては、哺乳動物が挙げられ、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ウシなどが挙げられる。好ましくは、マウスなどの動物の受精卵に該DNA 断片を導入して、トランスジェニック動物を作成することができる。所定の遺伝子産物の確認を、当該外来遺伝子をトランスフェクションした、293T細胞、COS−1 細胞などのそれに適した動物細胞などを用いて行うことができる。
外来遺伝子を哺乳動物などの動物細胞に導入する方法としては当該分野で知られた方法あるいはそれと実質的に同様な方法で行うことができ、例えばリン酸カルシウム法(例えば、F. L. Graham et al., Virology, 52: 456, 1973など)、DEAE−デキストラン法(例えば、D. Warden et al., J. Gen. Virol., 3: 371, 1968など)、カチオン性脂質複合体形成法などのリボソーム法、エレクトロポレーション法(例えば、E. Neumann et al., EMBO J, 1: 841, 1982 など)、マイクロインジェクション法、biolistic 粒子導入法、ウイルス感染法、ファージ粒子法などが挙げられる。核酸導入法は、トランスフェクションにより効率的に行い得るような技術的改良が図られており、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、例えばInvitrogen社、QIAGEN社などのキット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。こうして所定の遺伝子をトランスフェクションされた動物細胞の産生する遺伝子産物は、それを解析することもできる。
【0032】
所定の遺伝子など(本発明で得られたDNAなど)を組込むプラスミドとしては遺伝子工学的に常用される宿主細胞(例えば、大腸菌、枯草菌などの原核細胞宿主、酵母、293T細胞、CHO細胞、COS細胞などの真核細胞宿主、Sf21などの昆虫細胞宿主)中で該DNAが発現できるプラスミドであればどのようなプラスミドでもよい。もちろん、市販のキットや試薬に添付のものから選んで使用することもできる。こうした配列内には、例えば選択した宿主細胞で発現するのに好適に修飾されたコドンが含まれていることができるし、制限酵素部位が設けられていることもできるし、目的とする遺伝子の発現を容易にするための制御配列、促進配列など、目的とする遺伝子を結合するのに役立つリンカー、アダプターなど、さらには抗生物質耐性などを制御したり、代謝を制御したりし、選別などに有用な配列(ハイブリドタンパク質や融合タンパク質をコードするものも含む)などを含んでいることができる。好ましくは、適当なプロモーター、例えば大腸菌を宿主とするプラスミドでは、トリプトファンプロモーター(trp) 、ラクトースプロモーター(lac) 、トリプトファン・ラクトースプロモーター(tac) 、リポプロテインプロモーター(lpp) 、λファージ PL プロモーターなどを、動物細胞を宿主とするプラスミドでは、SV40レートプロモーター、MMTV LTRプロモーター、RSV LTR プロモーター、CMV プロモーター、SRαプロモーターなどを、酵母を宿主とするプラスミドでは、GAL1、GAL10 プロモーターなどを使用し得る。さらにCYC1, HIS3, ADH1, PGK, PHO5, GAPDH, ADC1, TRP1, URA3, LEU2, EN0, TP1, AOX1などの制御系を使用することもできる。
【0033】
所望ポリペプチドをコードするDNA のトランスクリプションを促進するためエンハンサーをベクターに挿入することができ、そうしたエンハンサーとしてはプロモーターに働いてトランスクリプションを促進する作用を持つ、通常約10〜100 bpの cis作用を持つエレメントのものが挙げられる。多くのエンハンサーが、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、インシュリンなどの哺乳動物遺伝子から知られている。代表的には、真核細胞感染性ウイルスから得られるエンハンサーが好適に使用でき、例えばレプリケーションオリジンのレート領域にあるSV40エンハンサー (100−270 bp), サイトメガロウイルスの初期プロモーターのエンハンサー, ポリオーマのレプリケーションオリジンのレート領域にあるエンハンサー, アデノウイルスのエンハンサーなどの例が挙げられる。また、必要に応じて、宿主にあったシグナル配列を付加することもでき、それらは当業者によく知られているものを使用できる。
大腸菌を宿主とするプラスミドとしては、例えばpBR322、pUC18, pUC19, pUC118, pUC119, pSP64, pSP65, pTZ−18R/−18U, pTZ−19R/−19U, pGEM−3, pGEM−4, pGEM−3Z, pGEM−4Z, pGEM−5Zf(−), pBluescript KSTM (Stratagene社) などが挙げられる。大腸菌での発現に適したプラスミドベクターとしては、例えばpAS, pKK223 (Pharmacia社), pMC1403, pMC931, pKC30, pRSET−B (Invitrogen社) なども挙げられる。動物細胞を宿主とするプラスミドとしては、例えばSV40ベクター、ポリオーマ・ウイルスベクター、ワクシニア・ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられ、具体的にはpcD, pcD−SRα, CDM8, pCEV4, pME18S, pBC12BI, pSG5 (Stratagene社) などが挙げられる。酵母を宿主とするプラスミドとしては、YIp型ベクター、YEp型ベクター、YRp型ベクター、YCp型ベクターなどが挙げられ、例えばpGPD−2などが挙げられる。
【0034】
宿主細胞としては、宿主細胞が大腸菌の場合、例えば大腸菌K12 株に由来するものが挙げられ、例えばNM533, XL1−Blue, C600, DH1, DH5, DH11S, DH12S, DH5α, DH10B, HB101, MC1061, JM109, STBL2, B834株由来としては、BL21(DE3)pLysSなどが挙げられる。宿主細胞が酵母の場合、例えば Saccharomyces cerevisiae, Schizosaccharomyces prombe, Pichia pastoris, Kluyveromyces 株, Candida, Trichoderma reesia, その他の酵母株などが挙げられる。
宿主細胞が動物細胞の場合、例えばアフリカミドリザル線維芽細胞由来のCOS−7 細胞、COS−1 細胞、CV−1細胞、ヒト腎細胞由来 293細胞、ヒト表皮細胞由来A431細胞、ヒト結腸由来 205細胞、マウス線維芽細胞由来のCOP 細胞、MOP 細胞、WOP 細胞、チャイニーズ・ハムスター細胞由来のCHO 細胞、CHO DHFR− 細胞、ヒトHeLa細胞、マウス細胞由来C127細胞、マウス細胞由来NIH 3T3 細胞、マウスL 細胞、9BHK、HL−60 、U937、HaK 、Jurkat細胞、その他の形質転換されて得られたセルライン、通常の二倍体細胞、インビトロの一次培養組織から誘導された細胞株などが挙げられる。昆虫細胞としては、カイコ核多角体病ウイルス (Bombyx mori nuclear polyhedrosis virus) 、それに由来するものあるいはその他の適切なものをベクターとし、Spodoptera frugiperda (caterpillar), Aedes aegypti (mosquito), Aedes albopictus (mosquito), Drosophila melangaster (fruitfly), カイコ幼虫あるいはカイコ培養細胞、例えばBM−N細胞などを用いることが挙げられる (例えば、Luckow et al., Bio/Technology, 6, 47−55 (1988); Setlow, J. K. et al. (eds.), Genetic Engineering, Vol. 8, pp.277−279, Plenum Publishing, 1986; Maeda et al., Nature, 315, pp.592−594 (1985))。 Agrobacterium tumefaciensなどを利用して、植物細胞を宿主細胞として使用することも可能であり、それに適するベクターと共に、それらは当該分野で広く知られている。
【0035】
本発明の遺伝子工学的手法においては、当該分野で知られたあるいは汎用されている制限酵素、逆転写酵素、DNA 断片をクローン化するのに適した構造に修飾したりあるいは変換するための酵素であるDNA 修飾・分解酵素、DNA ポリメラーゼ、末端ヌクレオチジルトランスフェラーゼ、DNA リガーゼなどを用いることが出来る。制限酵素としては、例えば、R. J. Roberts, Nucleic Acids Res., 13: r165, 1985; S. Linn et al. ed. Nucleases, p. 109, Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, New York, 1982; R. J. Roberts, D. Macelis, Nucleic Acids Res., 19: Suppl. 2077, 1991などに記載のものが挙げられる。
本発明に従い、ポリペプチド(又はタンパク質)をコードする核酸を含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体は、必要に応じて適当な選択マーカーを用い、繰り返しクローニングを行うことにより、高い発現能を安定して有する細胞株を得ることができる。例えば、宿主細胞として動物細胞を用いた形質転換体において、dhfr遺伝子を選択マーカーとして利用した場合、メトトレキサート(MTX) 濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、本発明のポリペプチドをコードするDNA を増幅させ、より高い発現を得られる細胞株を得ることができる。本発明の形質転換体は、本発明のポリペプチドをコードする核酸が発現可能な条件下で培養し、目的物を生成、蓄積せしめることができる。該形質転換体は、当該分野で汎用されている培地中で培養することができる。例えば、大腸菌、枯草菌などの原核細胞宿主、酵母などを宿主としている形質転換体は、液体培地を好適に使用することができる。培地中には、該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えばグルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、麦芽エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては,例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。また、酵母、ビタミン類、カザミノ酸、生長促進因子などを添加してもよい。また、必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリル アクリル酸のような薬剤を加えることができる。培地のpHは約5〜約8が望ましい。
【0036】
培養は、例えば大腸菌では通常約15〜約45℃で約3〜約75時間行い、必要により、通気や攪拌を加えることもできる。宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば約5〜約20%の胎児牛血清を含むMEM 培地、PRMI1640培地、DMEM培地などが用いられる。pHは約6〜約8であるのが好ましい。培養は通常約30〜約40℃で約15〜約72時間行い、必要に応じて通気や攪拌を加える。所定の遺伝子産物を発現している形質転換体はそのまま利用可能であるが、その細胞ホモジュネートとしても利用できるが、所定の遺伝子産物を単離して用いることもできる。上記培養細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチーム及び/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過により粗抽出液を得る方法などを適宜用いることができる。緩衝液の中には尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトン X−100(商品名)、ツウィーン−20 (商品名)などの界面活性剤を加えてあってもよい。培養液中に目的生成物が分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる目的生成物は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせてその精製を行なうことができ、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、例えばジエチルアミノエチル基あるいはカルボキシメチル基などを持つ担体などを用いたイオン交換クロマトグラフィー法、例えばブチル基、オクチル基、フェニル基など疎水性基を持つ担体などを用いた疎水性クロマトグラフィー法、色素ゲルクロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製して得ることができる。好ましくは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、抗体又はリガンドなどを固定化したアフィニティー・クロマトグラフィーなどで処理し精製分離処理できる。例えば、ゼラチン−アガロース・アフィニティー・クロマトグラフィー、ヘパリン−アガロース・クロマトグラフィー、モノクローナル抗体結合アフィニティー・クロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0037】
さらに、本発明に係わる遺伝子の塩基配列を基に遺伝子工学的に常用される方法を用いることにより、所定の核酸の塩基配列に適宜、1個ないし複数個以上の塩基(ヌクレオチド塩基)の置換、欠失、挿入、転移あるいは付加したごとき変異を導入した核酸(ホモログを含む)としたり、所定のポリペプチドのアミノ酸配列中に適宜、1個ないし複数個以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入、転移あるいは付加したごとき変異を導入した相当するポリペプチド(ホモログを含む)を製造することができる。こうした変異・変換・修飾法としては、例えば日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法 II 」、p105(広瀬進)、東京化学同人(1986); 日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸 III(組換えDNA 技術)」、p233(広瀬進)、東京化学同人(1992); R. Wu, L. Grossman, ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 154, p. 350 & p. 367, Academic Press, New York (1987); R. Wu, L. Grossman, ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 100, p. 457 & p. 468, Academic Press, New York (1983); J. A. Wells et al., Gene, 34: 315, 1985; T. Grundstroem et al., Nucleic Acids Res., 13: 3305, 1985; J. Taylor et al., Nucleic Acids Res., 13: 8765, 1985; R. Wu ed., ”Methods in Enzymology”, Vol. 155, p. 568, Academic Press, New York (1987); A. R. Oliphant et al., Gene, 44: 177, 1986 などに記載の方法が挙げられる。例えば合成オリゴヌクレオチドなどを利用する位置指定変異導入法(部位特異的変異導入法) (Zoller et al., Nucleic Acids Res., 10: 6487, 1987; Carter et al., Nucleic Acids Res., 13: 4331, 1986), カセット変異導入法 (cassette mutagenesis: Wells et al., Gene, 34: 315, 1985), 制限部位選択変異導入法 (restriction selection mutagenesis: Wells et al., Philos. Trans. R. Soc. London Ser A, 317: 415, 1986),アラニン・スキャンニング法 (Cunningham & Wells, Science, 244: 1081−1085, 1989), PCR 変異導入法, Kunkel法, dNTP[αS]法(Eckstein),亜硫酸や亜硝酸などを用いる領域指定変異導入法などの方法が挙げられる。
【0038】
また、遺伝子組換え法で製造する時に融合ポリペプチド(融合タンパク質)として発現させ、生体内あるいは生体外で、所望のポリペプチドと実質的に同等の生物学的活性を有しているものに変換・加工してもよい。遺伝子工学的に常用される融合産生法を用いることができるが、こうした融合ポリペプチドはその融合部を利用してアフィニティクロマトグラフィーなどで精製することも可能である。こうした融合ポリペプチドとしては、ヒスチジンタグに融合せしめられたもの、あるいは、β−ガラクトシダーゼ(β−gal) 、マルトース結合タンパク (MBP),グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、チオレドキシン (TRX)又は Cre Recombinaseのアミノ酸配列に融合せしめられたものなどが挙げられる。同様に、ポリペプチドは、ヘテロジーニアスなエピトープのタグを付加され、該エピトープに特異的に結合する抗体を用いてのイムノアフィニティ・クロマトグラフィーによる精製をなし得るようにすることもできる。より適した実施態様においては、ポリヒスチジン(poly−His)又はポリヒスチジン−グリシン(poly−His−Gly)タグ、また該エピトープタグとしては、例えば AU5, c−Myc, CruzTag 09, CruzTag 22, CruzTag 41, Glu−Glu, HA, Ha.11, KT3, FLAG (registered trademark, Sigma−Aldrich), Omni−probe, S−probe, T7, Lex A, V5, VP16, GAL4, VSV−G などが挙げられる (Field et al., Mol. Cell. Biol., 8: pp.2159−2165 (1988); Evan et al., Mol. Cell. Biol., 5: pp.3610−3616 (1985); Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6): pp.547−553 (1990); Hopp et al., BioTechnology, 6: pp.1204−1210 (1988); Martin et al., Science, 255: pp.192−194 (1992); Skinner et al., J. Biol. Chem., 266: pp.15163−15166 (1991); Lutz−Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: pp.6393−6397 (1990) など) 。酵母を利用した two−hybrid 法も利用できる。
【0039】
さらに融合ポリペプチドとしては、検出可能なタンパク質となるようなマーカーを付されたものであることもできる。より好適な実施態様においては、該検出可能なマーカーは、ビオチン/ストレプトアビジン系のBiotin Avi Tag、螢光を発する物質などであってよい。該螢光を発する物質としては、オワンクラゲ (Aequorea victorea)などの発光クラゲ由来の緑色螢光タンパク質(green fluorescent protein: GFP)、それを改変した変異体(GFPバリアント) 、例えば、EGFP (Enhanced−humanized GFP), rsGFP (red−shift GFP), 黄色螢光タンパク質 (yellow fluorescent protein: YFP), 緑色螢光タンパク質 (green fluorescent protein: GFP),藍色螢光タンパク質 (cyan fluorescent protein: CFP), 青色螢光タンパク質 (blue fluorescent protein: BFP), ウミシイタケ (Renilla reniformis) 由来のGFP などが挙げられる(宮脇敦史編、実験医学別冊ポストゲノム時代の実験講座3−GFPとバイオイメージング、羊土社 (2000年))。また、上記融合タグを特異的に認識する抗体(モノクローナル抗体及びそのフラグメントを含む)を使用して検出を行うこともできる。こうした融合ポリペプチドの発現及び精製は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。
得られたタンパク質(ペプチドあるいはポリペプチドを包含していてよい)は、それを酵素免疫測定法など知られた手法で、適当な担体あるいは固相に結合せしめて固相化することができる。固相化タンパク質、固相化ペプチドは、便利に結合アッセイや物質のスクリーニングに使用できる。
【0040】
得られた本発明のポリペプチド(又はタンパク質)は、化学的な手法でその含有されるアミノ酸残基を修飾することもできるし、ペプチダーゼ、例えばペプシン、キモトリプシン、パパイン、ブロメライン、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼなどの酵素を用いて修飾したり、部分分解したりしてその誘導体などにすることができる。本発明のポリペプチドは、C 末端が通常カルボキシル基(−COOH) またはカルボキシレート (−COO− ) であるが、C 末端がアミド(−CONH2)またはエステル(−COOR) であってもよい。ここでエステルにおけるR としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2 アルキル基などのC7−14 アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。本発明のタンパク質が C末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のポリペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC 末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明のポリペプチド(又はタンパク質)には、上記したポリペプチドにおいて、N 末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC1−5アルキル−カルボニル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、N 端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミル化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH 、−COOH 、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
【0041】
ポリペプチドやタンパク質の構造の修飾・改変などは、例えば日本生化学会編、「新生化学実験講座1、タンパク質 VII、タンパク質工学」、東京化学同人(1993)を参考にし、そこに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法、さらにはそれらと実質的に同様な方法で行うことができる。また下記するようにその生物学的活性のうちには、免疫的に活性、例えば抗原性を有するということも含まれてよい。該修飾・改変のうちには、脱アミノ化、ヒドロキシル化、カルボキシル化、リン酸化、硫酸化、メチル化などのアルキル化、アセチル化などのアシル化、エステル化、アミド化、開環、閉環、グリコシル化、含有糖鎖の種類を違うものに変えること、含有糖鎖の数を増減すること、脂質結合、D−体アミノ酸残基への置換などであってもよい。それらの方法は、当該分野で知られている(例えば、T. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, pp.79−86 W.H. Freeman & Co., San Francisco, USA (1983) など) 。
【0042】
本発明のヒト由来のペプチドあるいはポリペプチド(又はタンパク質)は、1個以上のアミノ酸残基が同一性の点で天然のものと異なるもの、1個以上のアミノ酸残基の位置が天然のものと異なるものであってもよい。本発明のヒト由来のペプチドは、ヒトポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインから成る群から選ばれたタンパク質に特有なアミノ酸残基が1個以上(例えば、1〜80個、好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個、特には1〜10個など)欠けている欠失類縁体、特有のアミノ酸残基の1個以上(例えば、1〜80個、好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個、特には1〜10個など)が他の残基で置換されている置換類縁体、1個以上(例えば、1〜80個、好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個、特には1〜10個など)のアミノ酸残基が付加されている付加類縁体も包含する。
【0043】
天然のヒトポリセラーゼ−I、天然のセラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインから成る群から選ばれたタンパク質の特徴であるドメイン構造あるいは基質結合能が維持されていれば、上記のごとき変異体は、全て本発明に包含される。また本発明のペプチドあるいはポリペプチドは天然のヒトヒトポリセラーゼ−I、天然のセラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインから成る群から選ばれたタンパク質と実質的に同等の一次構造コンフォメーションあるいはその一部を有しているものも含まれてよいと考えられ、さらに天然のものと実質的に同等の生物学的活性を有しているものも含まれてよいと考えられる。さらに天然に生ずる変異体の一つであることもできる。本発明のヒト由来のタンパク質(又はペプチドあるいはポリペプチド)は、例えば、配列表の配列番号:14 又は図1〜2、あるいは図3のアミノ酸配列に対し、60% 、場合によっては70% より高い相同性を有しているものが挙げられ、より好ましくはそれに対し、80% あるいは90% 以上の相同アミノ酸配列を有するものが挙げられる。本発明のヒト由来のタンパク質の一部のものとは、該ヒト由来のタンパク質の一部のペプチド(すなわち、該タンパク質の部分ペプチド)であって、本発明の、ヒトポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインから成る群から選ばれたタンパク質と実質的に同等な活性を有するものであればいずれのものであってもよい。例えば、該本発明のタンパク質の部分ペプチドは、該ヒトポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン又はポリセラーゼ−I内のLDLRドメインの構成アミノ酸配列のうち少なくとも5個以上、好ましくは20個以上、さらに好ましくは50個以上、より好ましくは70個以上、もっと好ましくは100 個以上、ある場合には200 個以上のアミノ酸配列を有するペプチドが挙げられ、好ましくはそれらは連続したアミノ酸残基に対応するものであるか、あるいは、例えば、配列番号:14 又は図1〜2、あるいは図3で示されるアミノ酸配列のうち対応する領域に対する相同性に関して、上記と同様の相同性を有するものが挙げられる。
【0044】
本明細書において、「実質的に同等」とはタンパク質の活性、例えば、酵素活性、生理的な活性、生物学的な活性が実質的に同じであることを意味する。さらにまた、その用語の意味の中には、実質的に同質の活性を有する場合を包含していてよく、該実質的に同質の活性としては、細胞に変化をもたらす活性、細胞外タンパク分解活性などを挙げることができる。該実質的に同質の活性とは、それらの活性が性質的に同質であることを示し、例えば、生理的に、薬理学的に、あるいは生物学的に同質であることを示す。例えば、酵素活性などの活性が、同等 (例えば、約 0.001〜約1000倍、好ましくは約0.01〜約100 倍、より好ましくは約 0.1〜約20倍、さらに好ましくは約 0.5〜約2 倍) であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的な要素は異なっていてもよい。次に、アミノ酸の置換、欠失、あるいは挿入は、しばしばポリペプチドの生理的な特性や化学的な特性に大きな変化を生ぜしめないし、こうした場合、その置換、欠失、あるいは挿入を施されたポリペプチドは、そうした置換、欠失、あるいは挿入のされていないものと実質的に同一であるとされるであろう。該アミノ酸配列中のアミノ酸の実質的に同一な置換体としては、そのアミノ酸が属するところのクラスのうちの他のアミノ酸類から選ぶことができうる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、トリプトファン、メチオニンなどが挙げられ、極性(中性)としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンなどが挙げられ、陽電荷をもつアミノ酸(塩基性アミノ酸)としては、アルギニン、リジン、ヒスチジンなどが挙げられ、陰電荷をもつアミノ酸(酸性アミノ酸)としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
【0045】
本発明のタンパク質及びその一部のペプチドの合成には、当該ペプチド合成分野で知られた方法、例えば液相合成法、固相合成法などの化学合成法を使用することができる。こうした方法では、例えばタンパク質あるいはペプチド合成用樹脂を用い、適当に保護したアミノ酸を、それ自体公知の各種縮合方法により所望のアミノ酸配列に順次該樹脂上で結合させていく。縮合反応には、好ましくはそれ自体公知の各種活性化試薬を用いるが、そうした試薬としては、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドなどカルボジイミド類を好ましく使用できる。生成物が保護基を有する場合には、適宜保護基を除去することにより目的のものを得ることができる。
本発明のペプチド(又はポリペプチド)は、それが遊離型のものとして得られた場合には、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で塩に変換することができ、またそれらは塩として得られた場合には、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で遊離型のものあるいは他の塩に変換することができる。
本発明のペプチド(又はポリペプチド)の塩としては、生理的に許容されるものあるいは医薬として許容されるものが好ましいが、これらに限定されない。こうした塩としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸との塩、例えば酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマール酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩などが挙げられる。さらに該塩としては、アンモニウム塩、例えばエチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ヒドロキシエチルアミンなどの有機塩基との塩なども挙げられる。
【0046】
本明細書中で開示したポリセラーゼ−I及びそれに関連したタンパク質、そのフラグメント、さらにはDNA を含めた核酸(mRNA やオリゴヌクレオチドを含む) は、それらを単独あるいは有機的に使用し、更には以下で説明する技術(アンチセンス法、モノクローナル抗体を含めた抗体、トランスジェニク動物など)とも適宜組合わせて、ゲノミックス及びプロテオミックス技術に応用できる。例えば、本発明の各ポリセラーゼ−I変異体(セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインのそれぞれ変異体を含む)は、ドミナントネガティブ効果を利用した機能解析にも利用可能である。また、二本鎖RNA (dsRNA) を使用してのRNAi (RNA interference) 技術への応用の途もある。かくして、一塩基多型(SNP; single nucleotide polymorphisms)を中心とした遺伝子多型解析、核酸アレイ、タンパク質アレイを使用した遺伝子発現解析、遺伝子機能解析、タンパク質間相互作用解析、関連疾患解析、疾患治療薬解析をすることが可能となる。例えば、核酸アレイ技術では、cDNAライブラリーを使用したり、PCR 技術で得たDNA を基板上にスポッティング装置で高密度に配置して、ハイブリダイゼーションを利用して試料の解析が行われる。該アレイ化は、針あるいはピンを使用して、あるいはインクジェトプリンティング技術などでもって、スライドガラス、シリコン板、プラスチックプレートなどの基板のそれぞれ固有の位置にDNA が付着せしめられることによりそれを実施することができる。該核酸アレイ上でのハイブリダイゼーションの結果得られるシグナルを観察してデータを取得する。該シグナルは、螢光色素などの標識(例えば、Cy3, Cy5, BODIPY, FITC, Alexa Fluor dyes(商品名), Texas red(商品名) など) より得られるものであってよい。検知にはレーザースキャナーなどを利用することもでき、得られたデータは適当なアルゴリズムに従ったプログラムを備えたコンピューターシステムで処理されてよい。また、タンパク質アレイ技術では、タグを付された組換え発現タンパク質産物を利用してよく、二次元電気泳動(2−DE)、酵素消化フラグメントを含めての質量分析 (MS)(これにはエレクトロスプレーイオン化法(electrospray ionization: ESI), マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(matrix−assisted laser desorption/ionization: MALDI)などの技術が含まれ、MALDI−TOF 分析計、ESI−3 連四重極分析計、ESI−イオントラップ分析計などを使用してよい) 、染色技術、同位体標識及び解析、画像処理技術などが利用されることができる。したがって、本発明には上記で得られるあるいは利用できるポリセラーゼ−I(セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインのそれぞれを含む)及びそれに対する抗体に関連したソフトウエア、データベースなども含まれてよい。
【0047】
本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及びその変異体、修飾体、誘導体などは、上記で説明したような分離・精製処理を施すことができる。本発明では、「断片」、「誘導体」及び「類縁体」なる用語は、配列番号:14 又は図1〜2、あるいは図3のポリペプチド、配列番号:13 の配列あるいは図1〜2のヌクレオチド配列から転写され且つスプライシングされていないか又は特異的にスプライシングされた hnRNA又はmRNAによりコードされるポリペプチド、又はゲノミックDNA によりコードされるポリペプチドに関連して、その「断片」、「誘導体」又は「類縁体」と称した場合、このようなポリペプチドと本質的に同一の生物学的機能又は活性を有しているポリペプチドを意味してよい。従って、類縁体又は類似体(ホモログ)にはプロタンパク質部分が切断されて活性成熟ポリペプチドを産生するような、活性化できるプロタンパク質などが包含される。本発明のポリペプチドは組換えポリペプチド、天然ポリペプチド又は合成ポリペプチドでよい。特定の好ましい態様では、これは組換えポリペプチドである。
【0048】
一方では、本発明は上記したポリペプチドをコードするDNA 配列、そして天然の特性の全部あるいは一部を有する当該ポリセラーゼ−Iタンパク質のポリペプチド、さらにその類縁体(ホモログを含む)あるいは誘導体をコードするDNA 配列も包含する。本発明のポリヌクレオチドは、アミノ末端に付加アミノ酸又はカルボキシル末端に付加アミノ酸を加えた成熟タンパク質、又は成熟タンパク質に内在するポリペプチド (例えば、成熟形態で一つ以上のポリペプチド鎖を有する場合) のアミノ酸をコードしているものであることができる。このような配列は、前駆体から成熟形態のタンパク質へのプロセッシングにおいても何らかの働きをなすものであってよく、例えば、タンパク質の酵素活性を発現させたり、タンパク質の移動や輸送を促進したり、タンパク質の半減期を延長もしくは短縮したり、又はタンパク質を操作してその検出もしくは産生を容易にすることができるもの、さらには、ドミナント・ネガティブ効果を示すものであってよい。一般的には、例えば、付加アミノ酸は、細胞酵素によりプロセッシングされ、成熟タンパク質から取り除かれる。1又はそれ以上のプロ配列と融合した成熟形態ポリペプチドを有する前駆タンパク質は、不活性形態ポリペプチドであることができる。プロ配列が除去されると、このような不活性前駆体は、通常活性化される。プロ配列のいくつか又は全ては、活性化の前に除去できる。通常、このような前駆体はプロタンパク質と称される。本発明のポリペプチドは、成熟タンパク質、リーダー配列を付加してある成熟タンパク質 (プレタンパク質と称することができる) 、プレタンパク質のリーダー配列ではない1又はそれ以上のプロ配列を有する成熟タンパク質の前駆体、又はリーダー配列及び1又はそれ以上のプロ配列を有するプロタンパク質の前駆体であるプレプロタンパク質であってよい。また、該プロ配列は通常活性形態ポリペプチド及び成熟形態ポリペプチドを産み出すようなプロセッシングの段階で除去され得る。本発明のポリセラーゼ−Iにおいては、スプライシングバリアントの存在も考えられるが、そうしたスプライシングバリアントがある場合も本明細書で解明された技術に従う限り、本発明の範囲内のものである。さらに、ドミナント・ネガティブ効果を示すものや構成ドメインのそれぞれが担う活性を示すもの、例えば各ドメインからなるものあるいは該ドメインの複数が組み合わされたものなどであってもよい。
【0049】
本発明では当該ポリセラーゼ−I遺伝子(当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及びその変異体(ホモログを含む)、修飾体、誘導体などの関連遺伝子を含む) あるいはポリセラーゼ−I、その一部又はホモログを発現できる組換えDNA 分子を宿主に移入し、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質、ホモログ又はその一部を発現させ、目的とする当該ポリセラーゼ−Iタンパク質を得る方法が提供される。こうして本発明によれば、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質又はホモログの遺伝子を実質的に発現する組換え体あるいはトランスフェクタント及びその製造法、さらにはその用途も提供される。本発明のポリセラーゼ−I, セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン又はポリセラーゼ−I内のLDLRドメインあるいはその塩は、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質無形成症、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質発現不全症、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質遺伝子欠損症など病状を呈する当該ポリセラーゼ−Iタンパク質関連機能不全疾患の治療に有用であると考えられる。すなわち、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質、変異体(ホモログを含む)、修飾体、誘導体を含有する医薬を用いれば、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質による活性が不充分であることに起因する疾患患者を健常な状態にすることが可能である。例えば、生体内において当該ポリセラーゼ−Iタンパク質又はその誘導産物が減少あるいは欠損しているために、細胞における当該生物学的活性が十分に得られていないか、あるいは正常でない症状の患者の場合には、(A) 本発明のタンパク質などを該患者に投与することによるか、(B) 本発明のDNA などの核酸を該患者に投与して、生体内で本発明のタンパク質などを発現させることによるか、(C) 本発明のDNA などの核酸を発現可能に導入した細胞を該患者に移植することによって、生体内に本発明のタンパク質などを補充するなどして、該患者における当該症状を改善したりする。
【0050】
別の面では、本発明はポリセラーゼ−Iタンパク質、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン又はポリセラーゼ−I内のLDLRドメインの天然型(ネイティブ)のタンパク質(特には、内在性(endogenous)ポリセラーゼ−Iタンパク質) に関し、各ポリセラーゼ−Iタンパク質に関連付けられる活性(例えば、細胞の変化の誘導あるいはプロテアーゼ活性など)を有し且つ配列番号:14 のアミノ酸配列、図1〜2のアミノ酸配列、図3のアミノ酸配列及びその一部から成る群から選ばれた配列のうちの、(1) ポリセラーゼ−Iの少なくとも 1〜1059個、(2) セラーゼ−1、(3) セラーゼ−2、(4) セラーゼ−3、(4) TMドメイン又はLDLRドメイン、の連続したアミノ酸残基を有するポリペプチドの一種であり且つ天然の当該ヒトタンパク質と実質的に同等な活性を有することを特徴とするポリペプチドまたはその塩、より好ましくは当該タンパク質またはその塩と、実質的に同等な活性を有するか、あるいは実質的に同等の一次構造コンフォメーションを持つ該タンパク質の少なくとも一部あるいは全部を有するポリペプチドを、大腸菌などの原核生物あるいは哺乳動物細胞などの真核生物で発現させることを可能にするDNA やRNA などの核酸に関する。またこうした核酸、特にはDNA は、(a) 配列表の配列番号:14 のアミノ酸配列、図1〜2ののアミノ酸配列及び図3のアミノ酸配列から成る群から選ばれた配列をコードできる配列あるいはそれと相補的な配列、(b) 該(a) のDNA 配列またはその断片とハイブリダイズすることのできる配列、及び(c) 該(a) 又は(b) の配列にハイブリダイズすることのできる縮重コードを持った配列であることができる。ここでハイブリダイズの条件としては、ストリンジェントな条件であることができる。こうした核酸で形質転換され、本発明の該ポリペプチドを発現できる大腸菌などの原核生物あるいは哺乳動物細胞などの真核生物も本発明の特徴をなす。
【0051】
本発明のDNA 配列は、これまで知られていなかった哺乳動物のタンパク質のアミノ酸配列に関する情報を提供しているから、こうした情報を利用することも本発明に包含される。こうした利用としては、例えば当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及び関連タンパク質をコードする哺乳動物、特に好ましくはヒトの、ゲノムDNA 及びcDNAの単離及び検知のためのプローブの設計などが挙げられる。
本発明のDNA 配列は、例えば当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及び関連タンパク質をコードする哺乳動物、特に好ましくはマウス、ラットやヒトの、ゲノムDNA 及びcDNAの単離及び検知のためのプローブとして有用である。プローブは、必要に応じて、抗体に関連して挙げられている標識を付与しておくことができる。遺伝子の単離にあたっては、PCR 法、さらには逆転写酵素 (RT) を用いたPCR 法 (RT−PCR) を利用することが出来る。当該ポリセラーゼ−Iタンパク質 cDNA 及びその関連DNA は、クローニングされ、配列決定された当該ポリセラーゼ−Iタンパク質 cDNA 配列から推定されるアミノ酸配列に基づき特徴的な配列領域を選び、DNA プライマーをデザインして化学合成し、得られたDNA プライマーを用いて、PCR 法、RT−PCR、その他の方法を用いて当該ポリセラーゼ−Iタンパク質関連遺伝子の単離、検出などに利用することが出来る。例えば、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質 mRNA のヒト組織中での発現を各種の組織由来poly (A)+ RNA に対するノーザンブロット分析により検討することができる。本発明のcDNAをプローブとして用いれば、例えばノーザン・ブロティング、サザン・ブロティング、in situ ハイブリダイゼーションなどによりヒト組織中での当該ポリセラーゼ−Iタンパク質 mRNA の発現や当該ポリセラーゼ−Iタンパク質遺伝子自体などを検出・測定でき、ヒト組織における細胞内タンパク質代謝、ホルモン前駆体の活性化、及び組織マトリックスや骨の改変を含む、多くの正常な細胞のプロセスに関与する当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の役割、その酵素活性の役割、また細胞変化や組織リモデリングといった生物学的過程(プロセス)に関する現象、さらには、免疫応答、血管新生、凝固、創傷治癒、再生プロセス、胚移植あるいは胎児発達のような生理学的条件に関連して生起する生物学的過程(プロセス)、さらに癌細胞の浸潤、転移、関節炎、リウマチあるいは心臓血管におけるプロセス、血液学的なプロセス及び神経退化のプロセスのような生理学的条件に関連した生物学的過程(プロセス)、特に細胞の変化やセリンプロテアーゼ活性に関連したがんの浸潤・転移の様な多くの疾患などの研究の発展に貢献できる。当該ポリセラーゼ−Iタンパク質に関連した疾患の遺伝子診断にも利用できる。そうした診断は、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及び関連タンパク質をコードする核酸の異常、例えば損傷、突然変異、発現低下、発現過多などを診断するものであることができる。
【0052】
こうして典型的には本発明は、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質遺伝子、それから誘導されたプローブを用い、あるいはさらに必要に応じ、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質に対する阻害物質を用い、被検試料中の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質あるいはその遺伝子、さらには産生細胞を検知・分別定量する優れた方法及びその為の試薬キットを提供する。本発明はこうした当該ポリセラーゼ−Iタンパク質あるいはその遺伝子、さらには産生細胞を検知・分別定量することのできる試薬キットのうちの各試薬をすべてその実施態様のうちに含むと理解される。さらに本発明の目的は、上記方法を用いて当該ポリセラーゼ−Iタンパク質あるいはその遺伝子、さらには産生細胞を検知・分別定量することにより、細胞内タンパク質代謝、ホルモン前駆体の活性化、及び組織マトリックスあるいは骨の改変など、多くの正常な細胞のプロセスに関与する各ポリセラーゼ−Iタンパク質の役割、動脈硬化症、血栓症、高脂血症、アレルギー疾患、炎症性疾患、神経変性疾患及びがんの浸潤・転移の様な多くの疾患などをモニターし得る方法並びに試薬あるいは診断剤を提供する。したがって、医学的・生理学的分野における上記試薬の各種利用、各ポリセラーゼ−Iタンパク質の作用に起因する応答・症状・疾患の研究・解析・測定、診断、予防、治療などの目的で上記試薬を使用することは、すべて本発明のその実施態様のうちに含まれると理解される。
【0053】
本発明に従えば、ヒトポリセラーゼ−I、ヒトポリセラーゼ−I由来セラーゼ−1、ヒトポリセラーゼ−I由来セラーゼ−2、ヒトポリセラーゼ−I由来TM及びヒトポリセラーゼ−I由来LDLR, マウスやラットの対応するポリセラーゼ−Iから成る群から選ばれたタンパク質又はそれをコードする遺伝子配列を同定する方法が提供される。該同定方法は、典型的な場合、
a) ポリセラーゼ−Iタンパク質中の保存領域のヌクレオチド配列を発現遺伝子のデータバンクで見つかったヌクレオチドの部分配列と比較すること;
b) ポリセラーゼ−Iに対するホモロジー(同一性)を保持しているフラグメントの同定並びに該フラグメント配列が発現されているヒト組織の全RNA 又は鋳型サンプルを用いてのPCRによる増幅;
c) ヒトcDNAのライブラリーとハイブリダイズするプローブとして、該増幅されたフラグメントを使用することあるいは取得配列を5’または3’末端に向けて伸張するための該増幅されたフラグメントを使用すること; 及び
d) 得られたcDNAクローンを単離し、該ヌクレオチドの完全な配列を決定すること
からなる群から選ばれた処理を行うことを特徴とする。
【0054】
本発明に従えば、本発明の当該ポリセラーゼ−Iの遺伝子診断法(検出方法)が提供できる。該遺伝子診断法では、(a) 核酸試料を得る工程、(b) 工程(a) にて得られた核酸試料を、例えばPCR 法、RNA ポリメラーゼを利用した核酸増幅法、鎖置換増幅法などで遺伝子増幅し、例えば該当該ポリセラーゼ−Iタンパク質遺伝子に存在しうる変異部位などを含む領域が増幅された核酸断片を得る工程、及び(c) 工程(b) の核酸断片について変異の存在を調べる工程を含む態様が挙げられる。増幅の対象となる、変異部位を含む領域としては、本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の遺伝子の塩基配列のうち、疾患の原因となる変異を含んでいる領域であれば特に限定されず、例えば、配列表の配列番号:13 あるいは図1〜2に示される塩基配列の中の任意の位置の塩基を含む領域が挙げられる。上記工程(c) においては、当該分野で当業者に知られている変異の存在の検出方法の中から適切な方法を選んでそれを適用でき、特には限定されないが、例えばASPCR (allele−specific PCR) 法により得られたDNA 断片長を調べることにより検出することができる。DNA 断片長を調べる方法は、特に限定されるものではないが、例えば螢光DNA シークエンサーなどを使用して行うことができる。本工程で使用される変異検出法としては、例えば制限酵素断片長多型 (restriction fragment length polymorphism: RFLP) を検出して調べる方法などが挙げられる。また、変異の検出には、例えば変異部位を含む適当なDNA 片をプローブに用いるハイブリダイゼーション法や、SSCP法(単鎖高次構造多型)のような公知の変異検出法を使用してよい。本発明の遺伝子診断に従い、本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質に関係した遺伝子診断が可能である。例えば各種疾患、がんなどへの罹患抵抗性・感受性決定の一素因と考えられる本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の発現や多型を遺伝子診断し、さらに、当該診断結果に基づき関連疾患罹病へのリスクを下げるような遺伝子治療を行うことが可能となる。
【0055】
本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質などのポリペプチドなどは、本発明で同定された当該ポリセラーゼ−Iタンパク質などの、生物学的活性などの機能(例えば、細胞の変化、プロテアーゼ活性など)を促進する化合物(アゴニスト)や阻害する化合物(アンタゴニスト)又はそれらの塩をスクリーニングするための試薬として有用である。かくして、本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質などのポリペプチド、その一部のペプチド又はそれらの塩を用いた、本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質といったタンパク質、その一部のペプチド又はそれらの塩などの生物学的活性などの機能(例えば、細胞の変化、プロテアーゼ活性など)を促進する化合物(アゴニスト)や阻害する化合物(アンタゴニスト)又はそれらの塩のスクリーニング方法も提供される。
該スクリーニングでは、例えば(i) 本発明のタンパク質、その一部のペプチド又はそれらの塩(該タンパク質を発現する形質転換体を含んでいてもよい、以下同様)などに適当な基質あるいはリガンドを接触させた場合と、(ii)本発明のタンパク質、その一部のペプチド又はそれらの塩などに基質あるいはリガンド及び試験試料を接触させた場合との比較を行う。具体的には、上記スクリーニングでは、当該生物学的活性(例えば、各ポリセラーゼ−Iタンパク質と生体成分との間の相互作用に関連した活性、タンパク分解活性など)を測定して、比較する。
基質としては、各ポリセラーゼ−Iタンパク質の基質となることのできるものであれば何れのものであってよい。例えば、公知のポリセラーゼ−Iタンパク質の基質として知られているものの中から選んで用いることができるが、好ましくは合成された化合物などを使用できる。基質は、そのまま使用できるが、好ましくはフルオレッセインなどの蛍光、酵素や放射性物質で標識したものを使用できる。
【0056】
試験試料としては、例えばタンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、植物抽出物、動物などの組織抽出物、細胞抽出物などが挙げられる。試験試料に使用される試験化合物の例には、好ましくは抗ポリセラーゼ−I抗体、酵素阻害剤、サイトカイン、各種インヒビター活性を有する化合物、特には合成化合物などを含んでいてよい。これら化合物は、新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。該スクリーニングは、通常の結合活性あるいは酵素活性の測定法に準じて実施することができ、例えば当該分野で公知の方法などを参考にして行うことができる。また、各種標識、緩衝液系その他適当な試薬などを使用したり、そこで説明した操作などに準じて行うことができる。使用ペプチドなどは、活性化剤で処理したり、その前駆体あるいは潜在型のものを活性型のものに予め変換しておくこともできる。測定は通常Tris−HCl緩衝液、リン酸塩緩衝液などの反応に悪影響を与えないような緩衝液などの中で、例えば、pH約4〜約10 (好ましくは、pH約6〜約8)において行うことができる。これら個々のスクリーニングにあたっては、それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質あるいはそれと実質的に同等な活性を有するポリペプチドあるいはペプチドに関連した測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、Methods in Enzymology, Academic Press 社 (USA)発行) など参照〕。
【0057】
本発明のスクリーニング方法又はスクリーニングキットを用いて得られる化合物又はその塩は、上記した試験化合物、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などから選ばれた化合物であり、本発明のタンパク質などの機能を促進あるいは阻害する化合物である。該化合物の塩としては、例えば、薬学的に許容される塩などが挙げられる。例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。無機塩基との塩の好適な例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、並びにアルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’− ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質(セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン又はポリセラーゼ−I内のLDLRドメインを含む)の生物学的活性などの機能(例えば、プロテアーゼ活性あるいは細胞の変化誘導活性など)を促進する化合物(アゴニスト、あるいは促進剤)又はその塩は、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質機能不全症状などの各種の疾病の治療及び/又は予防剤として有用な医薬として使用できる。一方、本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質(セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン又はポリセラーゼ−I内のLDLRドメインを含む)の生物学的活性などの機能(例えば、プロテアーゼ活性あるいは細胞変化誘導活性など)を阻害する化合物(アンタゴニスト、あるいは阻害剤)又はその塩は、過ポリセラーゼ−Iタンパク質機能症に起因した疾患や病気、がん(浸潤・転移を含む) などの各種の疾病の治療及び/又は予防剤などの医薬として使用できる。
【0058】
本発明で同定されたDNA (例えば、ポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びポリセラーゼ−I内のLDLRドメインのそれぞれをコードするDNA)を対象動物に転移させるにあたっては、それをDNA 断片としてあるいは該DNA を動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合して用いるのが一般に有利である。例えば、マウスに当該DNA を導入する場合、これと相同性が高い動物由来の当該DNA を動物細胞で発現させうる各種プロモーターの下流に結合した遺伝子コンストラクトを、対象動物の受精卵、例えばマウス受精卵へマイクロインジェクションすることによってそのタンパク質を高産生する遺伝子導入(トランスジェニック)マウスを作出できる。マウスとしては、特に純系のマウスに限定されないが、例えば、C57BL/6 、Balb/C、C3H 、(C57BL/6×DBA/2)F1(BDF1)などが挙げられる。このプロモーターとしては、例えばウイルス由来プロモーター、メタロチオネインなどのユビキタスな発現プロモーターなどが好ましく使用しうる。また該DNA を導入する場合、組換えレトロウイルスに組み換えて、それを用いて行うこともできる。好適には対象DNA を導入されたマウス受精卵は、例えば、ICR のような仮親のマウスを使用して生育せしめることができる。
受精卵細胞段階における本発明で同定された特徴あるDNA(例えば、ポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインのそれぞれをコードするDNA)の転移は、対象動物の胚芽細胞及び体細胞の全てに存在するように確保される。DNA 転移後の作出動物の胚芽細胞において当該タンパク質をコードするDNA が存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞及び体細胞の全てに該ターゲットをコードするDNA を有することを意味する。遺伝子を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞及び体細胞の全てにおいて、該ターゲットタンパク質を発現できる可能性を有している。
該ターゲットDNA 導入動物は、交配により遺伝子を安定に保持することを確認して、該DNA 保有動物として通常の飼育環境で飼育継代を行うことができる。さらに、目的DNA を保有する雌雄の動物を交配することにより、導入遺伝子を相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNA を有するように繁殖継代することができる。該ターゲットDNA が導入された動物は、該タンパク質が高発現させられているので、該タンパク質に対する阻害剤(インヒビター)のスクリーニング用の動物などとして有用である。また当該ポリセラーゼ−I遺伝子あるいはその他の関連遺伝子の発現を阻害することのできるアンチセンス オリゴヌクレオチド、例えば、アンチセンスDNA などのスクリーニング用の動物などとして有用である。
【0059】
この遺伝子導入動物を、組織培養のための細胞源として使用することもできる。例えば、遺伝子導入マウスの組織中のDNA もしくはRNA を直接分析するかあるいは遺伝子により発現されたタンパク質・組織を分析することにより、ポリセラーゼ−Iに関連したタンパク質について分析することができる。該ターゲットタンパク質を産生する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、例えば脳、胸腺、血管内皮細胞などの血管細胞、血液細胞、精巣、脳、腸、腎臓やその他の組織由来の細胞についてその機能を研究することができる。また、その細胞を用いることにより、例えば各種組織の機能を高めるような医薬開発に資することも可能である。また、高発現細胞株があれば、そこから、当該ターゲットタンパク質を単離精製することも可能である。トランスジェニック マウスなどに関連した技術は、例えば、Brinster, R. L., et al.,; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 4438, 1985; Costantini, F. & Jaenisch, R. (eds.): Genetic manipulation of the early mammalian embryo, Cold Spring Harbor Laboratory, 1985 などの文献に記載の方法あるいはそこに引用された文献に記載の方法、さらにはそれらの改変法により行うことができる。
【0060】
本発明で同定された遺伝子(例えば、ヒトポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメインあるいはLDLRドメインのそれぞれに相当するマウスタンパク質をコードするDNA)に変異をもち、マウスの当該タンパク質を全く発現しない変異マウス(ノックアウトマウス)を作出することができる。例えば、該遺伝子の翻訳開始コドンの前後4kb を含むおよそ8kb のゲノムDNA の中央近傍に位置し翻訳開始コドンに近いエキソンにneo 耐性遺伝子−polyA付加シグナルからなる遺伝子カセットを挿入した変異遺伝子を持つターゲティングベクターを構築することができる。挿入する遺伝子カセットはneo 耐性遺伝子カセット以外にDT−Aカセット、tkカセット、lacZカセットなどが挙げられる。ターゲティングベクターを直鎖状に開き、樹立したマウス胚性幹細胞(embryonic stem cells: ES細胞)にエレクトロポレーションなどで導入、さらに培養してneo 耐性を獲得したES細胞を選別する。ES細胞は129 、C57BL/6 、F1(C57BL/6×CBA)マウスなどのマウス系統から選択して調製することができる。neo 耐性を獲得したES細胞は、マウスの当該ポリセラーゼ−I遺伝子領域において遺伝子カセットを挿入したターゲティングベクターと相同組換えを起こしていると想定され、少なくともマウスの該ポリセラーゼ−I遺伝子アレルのうち一つは破壊され、マウスの該タンパク質を正常に発現できなくなる。選別には挿入した遺伝子カセットによりそれぞれ適当な方法が選択され、また、変異の導入はPCR 、サザン・ハイブリダイゼーションあるいはノーザン・ハイブリダイゼーションなどの方法を用いて確認することができる。
【0061】
変異を導入したES細胞は、C57BL/6 、BALB/c、ICR マウスなどから取り出した8細胞期胚に注入、1日培養し胚盤胞に発生したものをICR のような仮親に移植することで個体まで生育させることができる。生まれる子マウスは変異をもつES細胞と正常な宿主胚に由来するキメラマウスで、ES細胞に由来する細胞がどの程度含まれるかは個体の毛色で判断する。従って、ES細胞と宿主胚は毛色の異なった系統の組合わせが望ましい。得られたキメラマウスの変異はヘテロであり、これらを適宜交配することでホモ変異マウスを得ることができる。このようにして得られたホモ変異マウスは生殖細胞及び体細胞の全てにおいて、マウスの当該ターゲット遺伝子のみが破壊され、マウスの対応ポリセラーゼ−Iを全く発現せず、繁殖継代される子孫もまた同様の表現系をもつ。
このノックアウトマウスは正常マウスとの比較において、発生、成長、生殖、老化及び死など個体のライフサイクルにおける当該ポリセラーゼ−Iの役割や各臓器、組織における該ポリセラーゼ−Iの機能を解析するのに有用である。また、ポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びLDLRドメインのそれぞれの生物活性に関連した医薬品開発にも応用できる。ノックアウトマウスはこれらモデル動物としてだけではなく、組織培養のための細胞源として使用することもでき、細胞レベルでの当該ポリセラーゼ−Iの機能解析などに供することができる。ノックアウトマウスなどに関連した技術は、例えば、Mansour, S. L. et al., Nature, 336: 348−352, 1988; Joyner, A. L. ed., Gene targeting, IRL Press, 1993;相沢慎一, ジーンターゲティングES細胞を用いた変異マウスの作成,羊土社,1995; Pinkert, Carl A. ed., Transgenic Animal Technology: a Laboratory Handbook, Academic Press (2nd Edition, 2003) などの文献に記載の方法あるいはそこに引用された文献に記載の方法、さらにはそれらの改変法により行うことができる。
【0062】
本発明に従えば、当該ポリセラーゼ−I遺伝子の発現を阻害することのできるアンチセンス・オリゴヌクレオチド(核酸)を、クローン化したあるいは決定された当該ポリセラーゼ−IをコードするDNA の塩基配列情報に基づき設計し、合成することができる。そうしたオリゴヌクレオチド(核酸)は、対象ポリセラーゼ−I遺伝子のmRNAとハイブリダイズすることができ、該mRNAの機能を阻害することができるか、あるいは対象ポリセラーゼ−I関連mRNAとの相互作用などを介して当該ポリセラーゼ−I遺伝子の発現を調節・制御することができる。対象ポリセラーゼ−I関連遺伝子の選択された配列に相補的なオリゴヌクレオチド、及び対象ポリセラーゼ−I関連遺伝子と特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドは、生体内及び生体外で当該ポリセラーゼ−I遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、またそれに関連した病気などの治療又は診断に有用である。当該遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF 翻訳開始コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、及び3’端ヘアピンループは、好ましい対象領域として選択しうるが、当該遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。
【0063】
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的なオリゴヌクレオチドとの関係は、対象物とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドとの関係を意味し、それは、「アンチセンス」であるということができる。アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリデオキシヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリデオキシヌクレオチド、プリン又はピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸及び合成配列特異的な核酸ポリマー)又は特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNA やRNA 中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA,1本鎖DNA,2本鎖RNA,1本鎖RNA,さらにDNA:RNA ハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド又は非修飾オリゴヌクレオチド、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合又は硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」及び「核酸」とは、公知のプリン及びピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリン及びピリミジン、アシル化されたプリン及びピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオシド及び修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
【0064】
本発明のアンチセンス核酸は、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。
こうした修飾は当該分野で数多く知られており、例えばJ. Kawakami et al., Pharm Tech Japan, 8: 247, 1992; 8: 395, 1992; S. T. Crooke et al. ed.,Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993などに開示がある。本発明のアンチセンス核酸は、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうした付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピッド、コレステロールなど)といった疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNase などのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンス核酸の阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、あるいはポリセラーゼ−I、セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン及びポリセラーゼ−I内のLDLRドメインのそれぞれの生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。該核酸それ自体公知の各種の方法で細胞に適用できる。
【0065】
本明細書中、「抗体」との用語は、広義の意味で使用されるものであってよく、所望の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質ポリペプチド及び関連ペプチド断片(セラーゼ−1, −2, −3, ポリセラーゼ−I内のTMドメイン、ポリセラーゼ−I内のLDLRドメイン及びそれらのペプチドフラグメントも含む)に対するモノクローナル抗体の単一のものや各種抗原決定基(エピトープ)に対する特異性を持つ抗体組成物であってよく、また1価抗体または多価抗体並びにポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含むものであり、さらに天然型(intact)分子並びにそれらのフラグメント及び誘導体も表すものであり、F(ab’)2, Fab’ 及びFab といったフラグメントを包含し、さらに少なくとも二つの抗原又はエピトープ (epitope)結合部位を有するキメラ抗体若しくは雑種抗体、又は、例えば、クワドローム(quadrome), トリオーム(triome)などの二重特異性組換え抗体、種間雑種抗体、抗イディオタイプ抗体、さらには化学的に修飾あるいは加工などされてこれらの誘導体と考えられるもの、公知の細胞融合又はハイブリドーマ技術や抗体工学を適用したり、合成あるいは半合成技術を使用して得られた抗体、抗体生成の観点から公知である従来技術を適用したり、DNA 組換え技術を用いて調製される抗体、本明細書で記載し且つ定義する標的抗原物質あるいは標的エピトープに関して中和特性を有したりする抗体又は結合特性を有する抗体を包含していてよい。特に好ましい本発明の抗体は、天然型の当該ポリセラーゼ−Iポリペプチドを特異的に識別できるものであり、例えば、公知のセリンプロテアーゼ類タンパク質とは区別してそれを認識できるものである。本発明のポリセラーゼ−Iの特徴的な配列、例えばSEQ ID NO:14のアミノ酸配列のうちに存在する連続したアミノ酸配列、例えば5〜10個あるいは7〜15個、あるいはそれ以上の数のアミノ酸残基からなる、連続したアミノ酸配列、該特徴的な配列を実質的に維持しているものなどを、特異的に認識できる抗体なども挙げられる。該特徴的な配列は、前記した相同性の説明で言及したように、データベースと適切な検索プログラムを使用して決定できる。
【0066】
抗原物質に対して作製されるモノクローナル抗体は、培養中の一連のセルラインにより抗体分子の産生を提供することのできる任意の方法を用いて産生される。修飾語「モノクローナル」とは、実質上均質な抗体の集団から得られているというその抗体の性格を示すものであって、何らかの特定の方法によりその抗体が産生される必要があるとみなしてはならない。個々のモノクローナル抗体は、自然に生ずるかもしれない変異体が僅かな量だけ存在しているかもしれないという以外は、同一であるような抗体の集団を含んでいるものである。モノクローナル抗体は、高い特異性を持ち、それは単一の抗原性をもつサイトに対して向けられているものである。異なったエピトープに対して向けられた種々の抗体を典型的には含んでいる通常の(ポリクローナル)抗体調製物と対比すると、それぞれのモノクローナル抗体は当該抗原上の単一の抗原決定基に対して向けられているものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養により合成され、他のイムノグロブリン類の夾雑がないあるいは少ない点でも優れている。モノクローナル抗体は、ハイブリッド抗体及びリコンビナント抗体を含むものである。それらは、所望の生物活性を示す限り、その由来やイムノグロブリンクラスやサブクラスの種別に関わりなく、可変領域ドメインを定常領域ドメインで置き換えたり(例えば、ヒト化抗体) 、あるいは軽鎖を重鎖で置き換えたり、ある種の鎖を別の種の鎖でもって置き換えたり、あるいはヘテロジーニアスなタンパク質と融合せしめたりして得ることができる(例えば、米国特許第4816567 号; Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.79−97, Marcel Dekker, Inc., New York, 1987 など) 。
【0067】
モノクローナル抗体を製造する好適な方法の例には、ハイブリドーマ法 (G. Kohler and C. Milstein, Nature, 256, pp.495−497 (1975)); ヒトB細胞ハイブリドーマ法 (Kozbor et al., Immunology Today, 4, pp.72−79 (1983); Kozbor, J. Immunol., 133, pp.3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51−63, Marcel Dekker, Inc., New York (1987);トリオーマ法; EBV−ハイブリドーマ法 (Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77−96 (1985))(ヒトモノクローナル抗体を産生するための方法);米国特許第4946778 号 (単鎖抗体の産生のための技術) が挙げられる他、抗体に関して以下の文献が挙げられる: S. Biocca et al., EMBO J, 9, pp.101−108 (1990); R.E. Bird et al., Science, 242, pp.423−426 (1988); M.A. Boss et al., Nucl. Acids Res., 12, pp.3791−3806 (1984); J. Bukovsky et al., Hybridoma, 6, pp.219−228 (1987); M. DAINO et al., Anal. Biochem., 166, pp.223−229 (1987); J.S. Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, pp.5879−5883 (1988); P.T. Jones et al., Nature, 321, pp.522−525 (1986); J.J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 121 (Immunochemical Techniques, Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies), Academic Press, New York (1986); S. Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, pp.6851−6855 (1984); V.T. Oi et al., BioTechniques, 4, pp.214−221 (1986); L. Riechmann et al., Nature, 332, pp.323−327 (1988); A. Tramontano et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, pp.6736−6740 (1986); C. Wood et al., Nature, 314, pp.446−449 (1985); Nature, 314, pp.452−454 (1985) あるいはそこで引用された文献(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる) 。
【0068】
本発明に係るモノクローナル抗体は、それらが所望の生物活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種から誘導される又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一又はホモローガスであるが、一方、鎖の残部は、別の種から誘導される又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一又はホモローガスである、「キメラ」抗体(免疫グロブリン) を特に包含する(米国特許第4816567 号明細書; Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, pp.6851−6855 (1984)) 。以下、モノクローナル抗体を例に挙げて、抗体の作製につき詳しく説明する。本発明のモノクローナル抗体は、ミエローマ細胞を用いての細胞融合技術(例えば、G. Kohler and C. Milstein, Nature, 256, pp.495−497 (1975))など) を利用して得られたモノクローナル抗体であってよく、例えば次のような工程で作製できる。
1.免疫原性抗原の調製
2.免疫原性抗原による動物の免疫
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
6.モノクローナル抗体の製造
【0069】
1.免疫原性抗原の調製
抗原としては、上記で記載してあるように、当該ポリセラーゼ−Iポリペプチド又はそれから誘導された断片を単離したものを用いることもできるが、決定された当該ポリセラーゼ−Iタンパク質のアミノ酸配列情報を基に、適当なオリゴペプチドを化学合成しそれを抗原として利用することができる。代表的には配列表の配列番号:14 (図1及び2)に存在するアミノ酸残基のうちの連続した少なくとも5個のアミノ酸を有するペプチドが挙げられる。
抗原は、そのまま適当なアジュバントと混合して動物を免疫するのに使用できるが、免疫原性コンジュゲートなどにしてもよい。例えば、免疫原として用いる抗原は、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質を断片化したもの、あるいはそのアミノ酸配列に基づき特徴的な配列領域を選び、ポリペプチドをデザインして化学合成して得られた合成ポリペプチド断片であってもよい。また、その断片を適当な縮合剤を介して種々の担体タンパク質類と結合させてハプテン−タンパク質の如き免疫原性コンジュゲートとし、これを用いて特定の配列のみと反応できる(あるいは特定の配列のみを認識できる)モノクローナル抗体をデザインするのに用いることもできる。デザインされるポリペプチドには予めシステイン残基などを付加し、免疫原性コンジュゲートの調製を容易にできるようにしておくことができる。担体タンパク質類と結合させるにあたっては、担体タンパク質類はまず活性化されることができる。こうした活性化にあたり活性化結合基を導入することが挙げられる。
活性化結合基としては、(1) 活性化エステルあるいは活性化カルボキシル基、例えばニトロフェニルエステル基、ペンタフルオロフェニルエステル基、1−ベンゾトリアゾールエステル基、N−スクシンイミドエステル基など、(2) 活性化ジチオ基、例えば2−ピリジルジチオ基などが挙げられる。担体タンパク質類としては、キーホール・リンペット・ヘモシアニン (KLH)、牛血清アルブミン (BSA)、卵白アルブミン、グロブリン、ポリリジンなどのポリペプタイド、細菌菌体成分、例えばBCG などが挙げられる。
【0070】
2.免疫原性抗原による動物の免疫
免疫は、当業者に知られた方法により行うことができ、例えば村松繁、他編、実験生物学講座 14 、免疫生物学、丸善株式会社、昭和60年、日本生化学会編、続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、東京化学同人、1986年、日本生化学会編、新生化学実験講座 12 、分子免疫学 III、抗原・抗体・補体、東京化学同人、1992年などに記載の方法に準じて行うことができる。免疫化剤を(必要に応じアジュバントと共に)一回又はそれ以上の回数哺乳動物に注射することにより免疫化される。代表的には、該免疫化剤及び/又はアジュバントを哺乳動物に複数回皮下注射あるいは腹腔内注射することによりなされる。免疫化剤は、上記抗原ペプチドあるいはその関連ペプチド断片を含むものが挙げられる。免疫化剤は、免疫処理される哺乳動物において免疫原性であることの知られているタンパク質(例えば上記担体タンパク質類など)とコンジュゲートを形成せしめて使用してもよい。アジュバントとしては、例えばフロイント完全アジュバント、リビ(Ribi)アジュバント、百日咳ワクチン、BCG 、リピッドA、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカなどが挙げられる。免疫は、例えばBALB/cなどのマウス、ハムスター、その他の適当な動物を使用して行われる。抗原の投与量は、例えばマウスに対して約1〜約400 μg/動物で、一般には宿主動物の腹腔内や皮下に注射し、以後1〜4週間おきに、好ましくは1〜2週間ごとに腹腔内、皮下、静脈内あるいは筋肉内に追加免疫を2〜10回程度反復して行う。免疫用のマウスとしてはBALB/c系マウスの他、BALB/c系マウスと他系マウスとのF1マウスなどを用いることもできる。必要に応じ、抗体価測定系を調製し、抗体価を測定して動物免疫の程度を確認できる。本発明の抗体は、こうして得られ免疫された動物から得られたものであってよく、例えば、抗血清、ポリクローナル抗体などを包含する。
【0071】
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
細胞融合に使用される無限増殖可能株(腫瘍細胞株)としては免疫グロブリンを産生しない細胞株から選ぶことができ、当該分野で知られたものから選択することができ、例えば P3−NS−1−Ag4−1 (NS−1, Eur. J. Immunol., 6: 511−519, 1976) 、SP−2/0−Ag14 (SP−2, Nature, 276: 269−270, 1978)、マウスミエローマ MOPC−21セルライン由来のP3−X63−Ag8−U1 (P3U1, Curr. Topics Microbiol. Immunol., 81: 1−7, 1978 )、P3−X63−Ag8 (X63, Nature, 256: 495−497, 1975 ) 、P3−X63−Ag8−653 (653, J. Immunol., 123: 1548−1550, 1979) などを用いることができる。8−アザグアニン耐性のマウスミエローマ細胞株はダルベッコMEM 培地 (DMEM培地) 、RPMI−1640 培地などの細胞培地に、例えばペニシリン、アミカシンなどの抗生物質、牛胎児血清(FCS) などを加え、さらに8−アザグアニン(例えば5〜45μg/ml) を加えた培地で継代されるが、細胞融合の2〜5日前に正常培地で継代して所要数の細胞株を用意することができる。また使用細胞株は、凍結保存株を約37℃で完全に解凍したのち RPMI−1640培地などの正常培地で3回以上洗浄後、正常培地で培養して所要数の細胞株を用意したものであってもよい。
【0072】
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合
上記〔2.免疫原性抗原による動物の免疫〕の工程に従い免疫された動物、例えばマウスは最終免疫後、2〜5日後にその脾臓が摘出され、それから脾細胞懸濁液を得る。脾細胞の他、生体各所のリンパ節細胞を得て、それを細胞融合に使用することもできる。こうして得られた脾細胞懸濁液と上記3.の工程に従い得られたミエローマ細胞株を、例えば最小必須培地(MEM培地) 、DMEM培地、RPMI−1640 培地などの細胞培地中に置き、細胞融合剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)を添加する。細胞融合剤としては、この他各種当該分野で知られたものを用いることができ、この様なものとしては不活性化したセンダイウイルス(HVJ: Hemagglutinating Virus of Japan)なども挙げられる。好ましくは、例えば30〜60%のポリエチレングリコールを 0.5〜2ml加えることができ、分子量が 1,000〜8,000 のポリエチレングリコールを用いることができ、さらに分子量が 1,000〜4,000 のポリエチレングリコールがより好ましく使用できる。融合培地中でのポリエチレングリコールの濃度は、例えば30〜60%となるようにすることが好ましい。必要に応じ、例えばジメチルスルホキシドなどを少量加え、融合を促進することもできる。融合に使用する脾細胞(リンパ球): ミエローマ細胞株の割合は、例えば 1:1〜20:1とすることが挙げられるが、より好ましくは 4:1〜7:1 とすることができる。
融合反応を1〜10分間行い、次にRPMI−1640 培地などの細胞培地を加える。融合反応処理は複数回行うこともできる。融合反応処理後、遠心などにより細胞を分離した後選択用培地に移す。
【0073】
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
選択用培地としては、例えばヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む、FCS 含有MEM 培地、RPMI−1640 培地などの培地、所謂 HAT培地が挙げられる。選択培地交換の方法は、一般的には培養プレートに分注した容量と等容量を翌日加え、その後1〜3日ごとに HAT培地で半量ずつ交換するというように処理することができるが、適宜これに変更を加えて行うこともできる。また融合後8〜16日目には、アミノプテリンを除いた、所謂HT培地で1〜4日ごとに培地交換をすることができる。フィーダーとして、例えばマウス胸腺細胞を使用することもでき、それが好ましい場合がある。
ハイブリドーマの増殖のさかんな培養ウェルの培養上清を、例えば放射免疫分析(RIA) 、酵素免疫分析(ELISA) 、蛍光免疫分析(FIA) などの測定系、あるいは蛍光惹起細胞分離装置(FACS)などで、所定の断片ペプチドを抗原として用いたり、あるいは標識抗マウス抗体を用いて目的抗体を測定するなどして、スクリーニングしたりする。
目的抗体を産生しているハイブリドーマをクローニングする。クローニングは、寒天培地中でコロニーをピック・アップするか、あるいは限界希釈法によりなされうる。限界希釈法でより好ましく行うことができる。クローニングは複数回行うことが好ましい。
【0074】
6.モノクローナル抗体の製造
得られたハイブリドーマ株は、FCS 含有MEM 培地、RPMI−1640 培地などの適当な増殖用培地中で培養し、その培地上清から所望のモノクローナル抗体を得ることが出来る。大量の抗体を得るためには、ハイブリドーマを腹水化することが挙げられる。この場合ミエローマ細胞由来の動物と同系の組織適合性動物の腹腔内に各ハイブリドーマを移植し、増殖させるか、あるいは例えばヌード・マウスなどに各ハイブリドーマを移植し、増殖させ、該動物の腹水中に産生されたモノクローナル抗体を回収して得ることが出来る。動物はハイブリドーマの移植に先立ち、プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)などの鉱物油を腹腔内投与しておくことができ、その処理後、ハイブリドーマを増殖させ、腹水を採取することもできる。腹水液はそのまま、あるいは従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製してモノクローナル抗体として用いることができる。好ましくは、モノクローナル抗体を含有する腹水は、硫安分画した後、DEAE−セファロースの如き、陰イオン交換ゲル及びプロテインAカラムの如きアフィニティ・カラムなどで処理し精製分離処理できる。特に好ましくは抗原又は抗原断片(例えば合成ペプチド、組換え抗原タンパク質あるいはペプチド、抗体が特異的に認識する部位など)を固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、プロテインAを固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト・クロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0075】
また、トランスジェニックマウス又はその他の生物、例えば、その他の哺乳動物は、本発明の免疫原ポリペプチド産物に対するヒト化抗体などの抗体を発現するのに用いることができる。
またこうして大量に得られた抗体の配列を決定したり、ハイブリドーマ株から得られた抗体をコードする核酸配列を利用して、遺伝子組換え技術により抗体を作製することも可能である。当該モノクローナル抗体をコードする核酸は、例えばマウス抗体の重鎖や軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用するなどの慣用の手法で単離し配列決定することができる。一旦単離されたDNA は、上記したようにして発現ベクターに入れ、CHO, COSなどの宿主細胞に入れることができる。該DNA は、例えばホモジーニアスなマウスの配列に代えて、ヒトの重鎖や軽鎖の定常領域ドメインをコードする配列に置換するなどして修飾することが可能である (Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6581, 1984)。かくして所望の結合特異性を有するキメラ抗体やハイブリッド抗体も調製することが可能である。また、抗体は、下記するような縮合剤を用いることを含めた化学的なタンパク質合成技術を適用して、キメラ抗体やハイブリッド抗体を調製するなどの修飾をすることも可能である。
ヒト化抗体は、当該分野で知られた技術により行うことが可能である(例えば、Jones et al., Nature, 321: pp.522−525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332: pp.323−327 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239: pp.1534−1536 (1988))。ヒトモノクローナル抗体も、当該分野で知られた技術により行うことが可能で、ヒトモノクローナル抗体を生産するためのヒトミエローマ細胞やヒト・マウスヘテロミエローマ細胞は当該分野で知られている (Kozbor, J. Immunol., 133, pp.3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51−63, Marcel Dekker, Inc., New York (1987)) 。バイスペシフィックな抗体を製造する方法も当該分野で知られている (Millstein et al., Nature, 305: pp.537−539 (1983); WO93/08829; Traunecker et al., EMBO J., 10: pp.3655−3659 (1991); Suresh et al., ”Methods in Enzymology”, Vol. 121, pp.210 (1986)) 。
さらにこれら抗体をトリプシン、パパイン、ペプシンなどの酵素により処理して、場合により還元して得られるFab 、Fab’、F(ab’)2 といった抗体フラグメントにして使用してもよい。
【0076】
抗体は、既知の任意の検定法、例えば競合的結合検定、直接及び間接サンドイッチ検定、及び免疫沈降検定に使用することができる(Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147−158 (CRC Press, Inc., 1987) 。
抗体を検出可能な原子団にそれぞれコンジュゲートするには、当分野で知られる任意の方法を使用することができ、例えば、David et al., Biochemistry, 13巻, 1014−1021 頁(1974); Pain et al, J. Immunol. Meth., 40: pp.219−231 (1981);及び ”Methods in Enzymology”, Vol. 184, pp.138−163 (1990) により記載の方法が挙げられる。標識物を付与する抗体としては、IgG 画分、更にはペプシン消化後還元して得られる特異的結合部Fab’を用いることができる。これらの場合の標識物の例としては、下記するように酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼあるいはβ−D− ガラクトシダーゼなど)、化学物質、蛍光物質あるいは放射性同位元素などがある。
【0077】
本発明での検知・測定は、イムノ染色、例えば組織あるいは細胞染色、イムノアッセイ、例えば競合型イムノアッセイまたは非競合型イムノアッセイで行うことができ、ラジオイムノアッセイ、ELISA などを用いることができ、B−F分離を行ってもよいし、あるいは行わないでその測定を行うことができる。好ましくは放射免疫測定法や酵素免疫測定法であり、さらにサンドイッチ型アッセイが挙げられる。例えばサンドイッチ型アッセイでは、一方を本発明の当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及びその関連ペプチド断片に対する抗体とし、他方を当該ポリセラーゼ−Iタンパク質に対する別の種類の抗体とし、そして一方を検出可能に標識化する。同じ抗原を認識できる他の抗体を固相に固定化する。検体と標識化抗体及び固相化抗体を必要に応じ順次反応させるためインキュベーション処理し、ここで非結合抗体を分離後、標識物を測定する。測定された標識の量は抗原、すなわち当該ポリセラーゼ−Iポリペプチド断片抗原の量と比例する。このアッセイでは、不溶化抗体や、標識化抗体の添加の順序に応じて同時サンドイッチ型アッセイ、フォワード(forward)サンドイッチ型アッセイあるいは逆サンドイッチ型アッセイなどと呼ばれる。例えば洗浄、撹拌、震盪、ろ過あるいは抗原の予備抽出などは、特定の状況のもとでそれら測定工程の中で適宜採用される。特定の試薬、緩衝液などの濃度、温度あるいはインキュベーション処理時間などのその他の測定条件は、検体中の抗原の濃度、検体試料の性質などの要素に従い変えることができる。当業者は通常の実験法を用いながら各測定に対して有効な最適の条件を適宜選定して測定を行うことが出来る。
【0078】
抗原あるいは抗体を固相化できる多くの担体が知られており、本発明ではそれらから適宜選んで用いることができる。担体としては、抗原抗体反応などに使用されるものが種々知られており、本発明においても勿論これらの公知のものの中から選んで使用できる。特に好適に使用されるものとしては、例えばガラス、例えば活性化ガラス、多孔質ガラス、シリカゲル、シリカ−アルミナ、アルミナ、磁化鉄、磁化合金などの無機材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミド、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体など、架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、アガロース、架橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートなどの天然または変成セルロース、架橋デキストラン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂などの有機高分子物質、さらにそれらを乳化重合して得られたもの、細胞、赤血球などで、必要に応じ、シランカップリング剤などで官能性基を導入してあるものが挙げられる。
さらに、ろ紙、ビーズ、試験容器の内壁、例えば試験管、キュベット、タイタープレート、タイターウェル、ガラスセル、合成樹脂製セルなどの合成材料からなるセル、ガラス棒、合成材料からなる棒、末端を太くしたりあるいは細くしたりした棒、末端に丸い突起をつけたりあるいは偏平な突起をつけた棒、薄板状にした棒などの固体物質(物体)の表面などが挙げられる。
【0079】
これら担体へは、抗体を結合させることができ、好ましくは本発明で得られる抗原に対し特異的に反応するモノクローナル抗体を結合させることができる。担体とこれら抗原抗体反応に関与するものとの結合は、吸着などの物理的な手法、あるいは縮合剤などを用いたり、活性化されたものなどを用いたりする化学的な方法、さらには相互の化学的な結合反応を利用した手法などにより行うことが出来る。
標識としては、酵素、酵素基質、酵素インヒビター、補欠分子類、補酵素、酵素前駆体、アポ酵素、蛍光物質、色素物質、化学ルミネッセンス化合物、発光物質、発色物質、磁気物質、金属粒子、例えば金コロイドなど、放射性物質などを挙げることができる。酵素としては、脱水素酵素、還元酵素、酸化酵素などの酸化還元酵素、例えばアミノ基、カルボキシル基、メチル基、アシル基、リン酸基などを転移するのを触媒する転移酵素、例えばエステル結合、グリコシド結合、エーテル結合、ペプチド結合などを加水分解する加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼなどを挙げることができる。酵素は複数の酵素を複合的に用いて検知に利用することもできる。例えば酵素的サイクリングを利用することもできる。
代表的な放射性物質の標識用同位体元素としては、[32P], [125I], [131I],[3H],[14 C],[35S] などが挙げられる。
【0080】
代表的な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP) などのペルオキシダーゼ、大腸菌β−D−ガラクトシダーゼなどのガラクトシダーゼ、マレエート・デヒドロゲナーゼ、グルコース−6−フォスフェート・デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、カタラーゼ、ウシ小腸アルカリホスファターゼ、大腸菌アルカリホスファターゼなどのアルカリフォスファターゼなどが挙げられる。
アルカリホスファターゼを用いた場合、4−メチルウンベリフェリルフォスフェートなどのウンベリフェロン誘導体、ニトロフェニルホスフェートなどのリン酸化フェノール誘導体、NADPを利用した酵素的サイクリング系、ルシフェリン誘導体、ジオキセタン誘導体などの基質を使用したりして、生ずる蛍光、発光などにより測定できる。ルシフェリン、ルシフェラーゼ系を利用したりすることもできる。カタラーゼを用いた場合、過酸化水素と反応して酸素を生成するので、その酸素を電極などで検知することもできる。電極としてはガラス電極、難溶性塩膜を用いるイオン電極、液膜型電極、高分子膜電極などであることもできる。
【0081】
酵素標識は、ビオチン標識体と酵素標識アビジン(ストレプトアビジン)に置き換えることも可能である。標識は、複数の異なった種類の標識を使用することもできる。こうした場合、複数の測定を連続的に、あるいは非連続的に、そして同時にあるいは別々に行うことを可能にすることもできる。
本発明においては、信号の形成に4−ヒドロキシフェニル酢酸、1,2−フェニレンジアミン、テトラメチルベンジジンなどとHRP 、ウンベリフェリルガラクトシド、ニトロフェニルガラクトシドなどとβ−D−ガラクトシダーゼ、グルコース−6−リン酸・デヒドロゲナーゼなどの酵素試薬の組合わせも利用でき、ヒドロキノン、ヒドロキシベンゾキノン、ヒドロキシアントラキノンなどのキノール化合物、リポ酸、グルタチオンなどのチオール化合物、フェノール誘導体、フェロセン誘導体などを酵素などの働きで形成しうるものが使用できる。
蛍光物質あるいは化学ルミネッセンス化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート、例えばローダミンBイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネートなどのローダミン誘導体、ダンシルクロリド、ダンシルフルオリド、フルオレスカミン、フィコビリプロテイン、アクリジニウム塩、ルミフェリン、ルシフェラーゼ、エクォリンなどのルミノール、イミダゾール、シュウ酸エステル、希土類キレート化合物、クマリン誘導体などが挙げられる。
【0082】
標識するには、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応などを利用して行うことができ、公知の方法あるいは当該分野の当業者が容易になしうる方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。また上記免疫原性複合体作製に使用されることのできる縮合剤、担体との結合に使用されることのできる縮合剤などを用いることができる。
縮合剤としては、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N’−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1− カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシンイミジル (4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル 4−(1− マレイミドフェニル)ブチレート、 N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)コハク酸イミド(EMCS), イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4’−ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4−メルカプトブチリルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S−アセチルメルカプトアセテートなどが挙げられる。
【0083】
本発明の測定法によれば、測定すべき物質を酵素などで標識したモノクローナル抗体などの標識抗体試薬と、担体に結合された抗体とを順次反応させることができるし、同時に反応させることもできる。試薬を加える順序は選ばれた担体系の型により異なる。感作されたプラスチックなどのビーズを用いた場合には、酵素などで標識したモノクローナル抗体などの標識抗体試薬を測定すべき物質を含む検体試料と共に最初適当な試験管中に一緒に入れ、その後該感作されたプラスチックなどのビーズを加えることにより測定を行うことができる。
本発明の定量法においては、免疫学的測定法が用いられるが、その際の固相担体としては、抗体などタンパク質を良く吸着するポリスチレン製、ポリカーボネイト製、ポリプロピレン製あるいはポリビニル製のボール、マイクロプレート、スティック、微粒子あるいは試験管などの種々の材料及び形態を任意に選択し、使用することができる。
測定にあたっては至適pH、例えばpH約4〜約9に保つように適当な緩衝液系中で行うことができる。特に適切な緩衝剤としては、例えばアセテート緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、フォスフェート緩衝剤、トリス緩衝剤、トリエタノールアミン緩衝剤、ボレート緩衝剤、グリシン緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、Tris−HCl緩衝剤などが挙げられる。緩衝剤は互いに任意の割合で混合して用いることができる。抗原抗体反応は約0〜約60℃の間の温度で行うことが好ましい。
酵素などで標識されたモノクローナル抗体などの抗体試薬及び担体に結合せしめられた抗体試薬、さらには測定すべき物質のインキュベーション処理は、平衡に達するまで行うことができるが、抗原抗体反応の平衡が達成されるよりもずっと早い時点で固相と液相とを分離して限定されたインキュベーション処理の後に反応を止めることができ、液相又は固相のいずれかにおける酵素などの標識の存在の程度を測ることができる。測定操作は、自動化された測定装置を用いて行うことが可能であり、ルミネセンス・ディテクター、ホト・ディテクターなどを使用して基質が酵素の作用で変換されて生ずる表示シグナルを検知して測定することもできる。
【0084】
抗原抗体反応においては、それぞれ用いられる試薬、測定すべき物質、さらには酵素などの標識を安定化したり、抗原抗体反応自体を安定化するように適切な手段を講ずることができる。さらに、非特異的な反応を除去し、阻害的に働く影響を減らしたり、あるいは測定反応を活性化したりするため、タンパク質、安定化剤、界面活性化剤、キレート化剤などをインキュベーション溶液中に加えることもできる。キレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩 (EDTA) がより好ましい。
当該分野で普通に採用されていたりあるいは当業者に知られた非特異的結合反応を防ぐためのブロッキング処理を施してもよく、例えば、哺乳動物などの正常血清タンパク質、アルブミン、スキムミルク、乳発酵物質、コラーゲン、ゼラチンなどで処理することができる。非特異的結合反応を防ぐ目的である限り、それらの方法は特に限定されず用いることが出来る。
本発明の測定方法で測定される試料としては、あらゆる形態の溶液やコロイド溶液、非流体試料などが使用しうるが、好ましくは生物由来の試料、例えば胸腺、睾丸、腸、腎臓、脳、乳癌、卵巣癌、結腸・直腸癌、血液、血清、血漿、関節液、脳脊髄液、膵液、胆汁液、唾液、羊水、尿、その他の体液、細胞培養液、組織培養液、組織ホモジュネート、生検試料、組織、細胞などが挙げられる。
これら個々の免疫学的測定法を含めた各種の分析・定量法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作などの設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該対象物質あるいはそれと実質的に同等な活性を有する物質に関連した測定系を構築すればよい。
【0085】
これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江 寛編,「ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和49年発行;入江 寛編,「続ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和54年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」,医学書院,昭和53年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第2版),医学書院,昭和57年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第3版),医学書院,昭和62年発行;H. V. Vunakis et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 70 (Immunochemical Techniques, Part A), Academic Press, New York (1980); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 73 (Immunochemical Techniques, Part B), Academic Press, New York (1981); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 74 (Immunochemical Techniques, Part C), Academic Press, New York (1981); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 84 (Immunochemical Techniques, Part D: Selected Immunoassays), Academic Press, New York (1982); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 92 (Immunochemical Techniques, Part E: Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods), Academic Press, New York (1983); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 121 (Immunochemical Techniques, Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies), Academic Press, New York (1986); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 178 (Antibodies, Antigens, and Molecular Mimicry), Academic Press, New York (1989); M. Wilchek et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 184 (Avidin−Biotin Technology), Academic Press, New York (1990); J. J. Langone et al. (ed.), ”Methods in Enzymology”, Vol. 203 (Molecular Design and Modeling: Concepts and Applications, Part B: Anibodies and Antigens, Nucleic Acids, Polysaccharides, and Drugs), Academic Press, New York (1991) などあるいはそこで引用された文献 (それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる) 〕。
【0086】
本発明の抗ポリセラーゼ−I抗体(抗ヒトセラーゼ−1, −2又は −3 抗体、抗ヒトポリセラーゼ−I TM ドメイン抗体、抗ヒトポリセラーゼ−I LDLRドメイン抗体及び抗ヒトポリセラーゼ−Iペプチドフラグメント抗体を含む)、特にモノクローナル抗体を用いて、エピトープマッピングを行うこともでき、各エピトープを認識する抗体を用いれば当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及びその関連ペプチド断片などの検知・測定を行うことができる。
当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及びその関連ペプチド断片に対する抗体は、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質によるタンパク質分解、さらには細胞外マトリックス成分の分解、ガンを含めた腫瘍の進行、転移、ホメオスタシスあるいは血管新生などのプロセスへの制御あるいは促進または抑制などの現象の検出及び/又は測定、さらには当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の過剰あるいは減少により生ずる各種の生理活性物質あるいは生理現象又は生物現象の検出及び/又は測定、また、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質産生を制御する因子や機構の研究・開発などに有用である。該抗体、特にモノクローナル抗体は、(i) 当該ポリセラーゼ−Iタンパク質とその基質あるいは制御因子との間での相互作用に起因する組織あるいは細胞が関連する障害、異常及び/又は疾患を検出したり、(ii)当該ポリセラーゼ−Iタンパク質とその基質あるいは制御因子との間での相互作用に起因する細胞の変化、細胞の腫瘍化、細胞の移動、浸潤、遊走及び/又は転移あるいはその可能性を検出したり、(iii) 当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の酵素活性に関連して生ずる障害、異常及び/又は疾患あるいはその可能性を検出したり、(iv)当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の発現量を測定したり、(v) 活性化されたセラーゼタンパク質の変化を検出及び/又は測定したり、(vi)当該ポリセラーゼ−Iタンパク質産生を制御する化合物などの探索をしたり、及び/又は(vii) 該当該ポリセラーゼ−Iタンパク質産生を制御する化合物の活性の検知及び/又は測定をしたりなどするのに有用である。免疫応答、血管新生、血液凝固、創傷治癒、再生プロセス、胚着床、胎児発達などのプロセス、癌細胞の浸潤、転移、関節炎、リウマチあるいは心臓血管におけるプロセス、血液学的なプロセス及び神経退化のプロセス、細胞の異常、組織の異常、がんの移動性、浸潤性、走化性及び/又は転移性の程度を知るのに使用できると期待される。
本発明に従えば、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質による様々な生理活性あるいは生物活性による現象・作用の促進活性あるいは抑制・阻害活性を検出及び/又は測定し、組織の疾患予防・治療剤、抗炎症剤、抗がん剤、がん転移阻害剤、動脈硬化症治療剤、関節破壊治療剤、抗アレルギー剤及び/又は免疫抑制剤の効果判定モニターとして使用することが可能となる。
また、本発明では、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質による組織・細胞あるいはタンパク質の異常化現象の検出及び/又は測定方法やそのための試薬が提供できる。
【0087】
本発明の活性成分〔例えば、(a) 当該ポリセラーゼ−Iポリペプチド、その一部のペプチドまたはそれらの塩、それに関連するペプチド(ホモログを含む)など、(b) 該当該ポリセラーゼ−Iタンパク質あるいは当該ポリセラーゼ−IポリペプチドをコードするDNA などの核酸など、(c) 本発明の抗体、その一部断片(モノクローナル抗体を包含する) またはその誘導体、(d) 当該ポリセラーゼ−Iタンパク質(セラーゼ−1やセラーゼ−2も含む)の活性を制御する化合物(当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の活性を促進したりあるいは抑制・阻害するなどの現象、あるいは組織あるいはタンパク質の変質・過剰生産あるいは分解現象といった生物学的活性を促進あるいは抑制及び/又は阻害する化合物)またはその塩、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質産生を制御する化合物またはその塩、(e) 本発明のDNA などの核酸に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドなど、(f) 本発明を使用して見出された活性物質など〕を医薬として用いる場合、例えば当該ポリセラーゼ−I(セラーゼ−1やセラーゼ−2も含む)の酵素活性阻害剤またはそれらの塩などは、通常単独或いは薬理的に許容される各種製剤補助剤と混合して、医薬組成物又は医薬調製物などとして投与することができる。好ましくは、経口投与、局所投与、または非経口投与などの使用に適した製剤調製物の形態で投与され、目的に応じていずれの投与形態(吸入法、あるいは直腸投与も包含される)によってもよい。
また、本発明の活性成分は、各種医薬、例えば抗腫瘍剤(抗がん剤)、腫瘍移転阻害剤、血栓形成阻害剤、関節破壊治療剤、鎮痛剤、消炎剤及び/又は免疫抑制剤と配合して使用することもでき、それらは、有利な働きを持つものであれば制限なく使用でき、例えば当該分野で知られたものの中から選択することができる。
【0088】
そして、非経口的な投与形態としては、局所、経皮、静脈内、筋肉内、皮下、皮内もしくは腹腔内投与を包含し得るが、患部への直接投与も可能であり、またある場合には好適でもある。好ましくはヒトを含む哺乳動物に経口的に、あるいは非経口的(例、細胞内、組織内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、胸腔内、脊髄腔内、点滴法、注腸、経直腸、点耳、点眼や点鼻、歯、皮膚や粘膜への塗布など)に投与することができる。具体的な製剤調製物の形態としては、溶液製剤、分散製剤、半固形製剤、粉粒体製剤、成型製剤、浸出製剤などが挙げられ、例えば、錠剤、被覆錠剤、糖衣を施した剤、丸剤、トローチ剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、マイクロカプセル剤、埋込剤、粉末剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、注射剤、液剤、エリキシル剤、エマルジョン剤、灌注剤、シロップ剤、水剤、乳剤、懸濁剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、スプレー剤、吸入剤、噴霧剤、軟膏製剤、硬膏製剤、貼付剤、パスタ剤、パップ剤、クリーム剤、油剤、坐剤(例えば、直腸坐剤)、チンキ剤、皮膚用水剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、塗布剤、輸液剤、注射用液剤などのための粉末剤、凍結乾燥製剤、ゲル調製品などが挙げられる。
医薬用の組成物は通常の方法に従って製剤化することができる。例えば、適宜必要に応じて、生理学的に認められる担体、医薬として許容される担体、アジュバント剤、賦形剤、補形剤、希釈剤、香味剤、香料、甘味剤、ベヒクル、防腐剤、安定化剤、結合剤、pH調節剤、緩衝剤、界面活性剤、基剤、溶剤、充填剤、増量剤、溶解補助剤、可溶化剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤、硬化剤、吸収剤、粘着剤、弾性剤、可塑剤、崩壊剤、噴射剤、保存剤、抗酸化剤、遮光剤、保湿剤、緩和剤、帯電防止剤、無痛化剤などを単独もしくは組合わせて用い、それとともに本発明のタンパク質などを混和することによって、一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態にして製造することができる。
【0089】
非経口的使用に適した製剤としては、活性成分と、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る媒体との無菌性溶液、または懸濁液剤など、例えば注射剤などが挙げられる。一般的には、水、食塩水、デキストロース水溶液、その他関連した糖の溶液、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類が好ましい注射剤用液体担体として挙げられる。注射剤を調製する際は、蒸留水、リンゲル液、生理食塩液のような担体、適当な分散化剤または湿化剤及び懸濁化剤などを使用して当該分野で知られた方法で、溶液、懸濁液、エマルジョンのごとき注射しうる形に調製する。
注射用の水性液としては、例えば生理食塩液、ブドウ糖やその他の補助薬(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)を含む等張液などが挙げられ、薬理的に許容される適当な溶解補助剤、例えばアルコール(例えばエタノールなど)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えばポリソルベート 80 TM, HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)又は浸透圧調節のための試薬、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、アスコルビン酸などの酸化防止剤、吸収促進剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
【0090】
非経口投与には、界面活性剤及びその他の薬学的に許容される助剤を加えるか、あるいは加えずに、水、エタノール又は油のような無菌の薬学的に許容される液体中の溶液あるいは懸濁液の形態に製剤化される。製剤に使用される油性ベヒクルあるいは溶剤としては、天然あるいは合成あるいは半合成のモノあるいはジあるいはトリグリセリド類、天然、半合成あるいは合成の油脂類あるいは脂肪酸類が挙げられ、例えばピーナッツ油、トウモロコシ油、大豆油、ゴマ油などの植物油が挙げられる。例えば、この注射剤は、通常本発明化合物を0.1 〜10重量%程度含有するように調製されることができる。
局所的、例えば口腔、又は直腸的使用に適した製剤としては、例えば洗口剤、歯磨き剤、口腔噴霧剤、吸入剤、軟膏剤、歯科充填剤、歯科コーティング剤、歯科ペースト剤、坐剤などが挙げられる。洗口剤、その他歯科用剤としては、薬理的に許容される担体を用いて慣用の方法により調製される。口腔噴霧剤、吸入剤としては、本発明化合物自体又は薬理的に許容される不活性担体とともにエアゾール又はネブライザー用の溶液に溶解させるかあるいは、吸入用微粉末として歯などへ投与できる。軟膏剤は、通常使用される基剤、例えば、軟膏基剤(白色ワセリン、パラフィン、オリーブ油、マクロゴール400 、マクロゴール軟膏など)などを添加し、慣用の方法により調製される。
歯、皮膚への局所塗布用の薬品は、適切に殺菌した水または非水賦形剤の溶液または懸濁液に調剤することができる。添加剤としては、例えば亜硫酸水素ナトリウムまたはエデト酸二ナトリウムのような緩衝剤;酢酸または硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウムまたはクロロヘキシジンのような殺菌及び抗真菌剤を含む防腐剤及びヒプロメルローズのような濃厚剤が挙げられる。
坐剤は、当該分野において周知の担体、好ましくは非刺激性の適当な補形剤、例えばポリエチレングリコール類、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセライドなどの、好ましくは常温では固体であるが腸管の温度では液体で直腸内で融解し薬物を放出するものなどを使用して、慣用の方法により調製されるが、通常本発明化合物を0.1 〜95重量%程度含有するように調製される。使用する賦形剤及び濃度によって薬品は、賦形剤に懸濁させるかまたは溶解させることができる。局部麻酔剤、防腐剤及び緩衝剤のような補助薬は、賦形剤に溶解可能である。
【0091】
経口的使用に適した製剤としては、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、トローチのような固形組成物や、液剤、シロップ剤、懸濁剤のような液状組成物などが挙げられる。製剤調製する際は、当該分野で知られた製剤補助剤などを用いる。錠剤及び丸剤はさらにエンテリックコーティングされて製造されることもできる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。
また、活性成分がタンパク質やポリペプチドである場合、ポリエチレングリコール(PEG)は、哺乳動物中で極めて毒性が低いことから、それを結合させることは特に有用である。また、PEG を結合せしめると、異種性化合物の免疫原性及び抗原性を効果的に減少せしめることができる場合がある。該化合物は、マイクロカプセル装置の中に入れて与えてもよい。PEG のようなポリマーは、アミノ末端のアミノ酸のα−アミノ基、リジン側鎖のε−アミノ基、アスパラギン酸又はグルタミン酸側鎖のカルボキシル基、カルボキシ末端のアミノ酸のα−カルボキシル基、又はある種のアスパラギン、セリン又はトレオニン残基に付着したグリコシル鎖の活性化された誘導体に、簡便に付着させることができる。
タンパク質との直接的な反応に適した多くの活性化された形態のPEG が知られている。タンパク質のアミノ基と反応させるのに有用なPEG 試薬としては、カルボン酸、カルボネート誘導体の活性エステル、特に、脱離基がN−ヒドロキシスクシンイミド、p−ニトロフェノール、イミダゾール、又は1−ヒドロキシ−2−ニトロベンゼン−4−スルフォネートであるものが挙げられる。同様に、アミノヒドラジン又はヒドラジド基を含有するPEG 試薬は、タンパク質中の過ヨウ素酸酸化によって生成したアルデヒドとの反応に有用である。
【0092】
さらに、本発明のDNA などの核酸を上記したような治療及び/又は予防剤として用いる場合、該核酸はそれを単独で用いることもできるし、あるいは上記したような遺伝子組換え技術で使用される適当なベクター、例えばレトロウイルス由来ベクターなどウイルス由来のベクターなどに結合させるなどして用いることができる。本発明のDNA などの核酸は通常の知られた方法で投与でき、そのままで、あるいは、例えば細胞内への摂取が促進されるように、適当な補助剤あるいは生理的に許容される担体などと共に、製剤化されて用いることができ、上記したような、医薬組成物又は医薬調製物などとして投与することができる。また遺伝子治療として知られた方法を適用することもできる。遺伝子治療技術は、当該分野で知られた手法を適用でき、例えば、Peter J. Quesenberry (Ed.), Stem Cell Biology and Gne Therapy, WileyEurope (1998) などに開示してあり、その内容(そこで引用された文献記載の内容も含まれる)はそれらを参照することにより本明細書にすべて含められるものである。
本発明の活性成分は、その投与量を広範囲にわたって選択して投与できるが、その投与量及び投与回数などは、処置患者の性別、年齢、体重、一般的健康状態、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組み合わせ、患者のその時に治療を行なっている病状の程度に応じ、それらあるいはその他の要因を考慮して決められる。
医薬品製造にあたっては、その添加剤などや調製法などは、例えば日本薬局方解説書編集委員会編、第十四改正 日本薬局方解説書、平成13年6月27日発行、株式会社廣川書店;一番ヶ瀬 尚 他編 医薬品の開発12巻(製剤素剤〔I〕)、平成2年10月15日発行、株式会社廣川書店;同、医薬品の開発12巻(製剤素材〔II〕)平成2年10月28日発行、株式会社廣川書店などの記載を参考にしてそれらのうちから必要に応じて適宜選択して適用することができる。
【0093】
本発明の活性成分は、当該ポリセラーゼ−Iの活性(例えば、ヒトセラーゼ−1, −2, −3、ヒトポリセラーゼ−I内のTMドメイン及び/又はヒトポリセラーゼ−I内のLDLRドメインの生物活性など)を制御(促進あるいは抑制・阻害)するといった生物学的活性をもつものであれば特に限定されないが、好ましくは有利な作用を持つものが挙げられる。本発明の活性成分は、例えば、(a) 当該ポリセラーゼ−Iタンパク質、その変異体ポリペプチド(ホモログを含む)、その一部のペプチドまたはそれらの塩など、(b) 該当該ポリセラーゼ−Iタンパク質をコードするDNA 、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質変異体ポリペプチドをコードするDNA などの核酸など、(c) 本発明の抗体、その一部断片(モノクローナル抗体を包含する) またはその誘導体、(d) 当該ポリセラーゼ−Iタンパク質による生体成分との間の相互作用を制御(促進あるいは抑制・阻害)するといった生物学的活性に有利な作用をもつ化合物またはその塩などが包含される。
本発明の活性成分は、当該ポリセラーゼ−I(ヒトセラーゼ−1, −2, −3、ヒトポリセラーゼ−I内のTMドメイン及び/又はヒトポリセラーゼ−I内のLDLRドメインなど)と生体成分との間の相互作用に起因する各種組織あるいは細胞における変化を制御(促進あるいは抑制・阻害)するのに有用と期待される。また、該活性成分は、当該ポリセラーゼ−Iの活性発現の制御(促進あるいは抑制・阻害)に有用であり、当該ポリセラーゼ−Iと生体成分との間の相互作用に起因する障害、異常及び/又は疾患の予防あるいは治療に有用である。また、当該ポリセラーゼ−I(ヒトセラーゼ−1, −2, −3、ヒトポリセラーゼ−I内のTMドメイン及び/又はヒトポリセラーゼ−I内のLDLRドメインなど)が関与する腫瘍細胞などの移動、浸潤、遊走及び/又は転移の制御、例えば抑制に有用であると期待される。
本発明の活性成分(当該ポリセラーゼ−Iタンパク質及びその関連ペプチドを含む)は、悪性腫瘍、すなわち、がんの移動、浸潤及び/又は転移の阻止及び/又は抑制するのに有用で、血管形成・新生阻害剤、抗腫瘍剤及び/又はがん転移抑制剤として期待できる。また、血液系細胞の、該ポリセラーゼ−Iが関与した障害、異常及び/又は疾患の予防あるいは治療にも有用で、動脈硬化症治療・予防剤、血栓症治療・予防剤、消炎剤及び/又は免疫抑制剤としても期待できる。さらに、抗リウマチ剤、関節破壊治療剤などとしても期待できる。
【0094】
さらに、本発明では、(a) 当該ポリセラーゼ−Iタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号:14 のアミノ酸配列)に基づいて分子設計を施して、当該ポリセラーゼ−Iと生体成分との間の相互作用を制御(促進あるいは抑制・阻害)する活性を有する物質を得るのに使用できる。こうして得られる物質も本発明の思想の範囲内のものであるし、本発明の活性成分として扱うことができる。該配列から特定の特徴部分を選択し、(i) そのうちの薬理作用団をイソスターで置き換えることによりなされるか、(ii) 構成アミノ酸残基の少なくとも1個をD体のアミノ酸残基に置き換えるか、(iii) アミノ酸残基の側鎖を修飾するか、(iv) 該配列に存在するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を配置して連結するか、(v) 立体構造を解析してmimic 体をデザインすることなど、当該分野で採用される技術を駆使して行うことができる(例えば、首藤 紘一 編 医薬品の開発7巻(分子設計)、平成2年6月25日発行、株式会社廣川書店及びそこで引用している文献や論文など) 。そうした技術の一部は、上記で説明したものを含んでいる。
【0095】
明細書及び図面において、用語は、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるか、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。代表的な用語の意味を以下に示す。
アミノ酸配列に関しては:
A:アラニン (Ala) M:メチオニン (Met)
C:システイン (Cys) N:アスパラギン (Asn)
D:アスパラギン酸 (Asp) P:プロリン (Pro)
E:グルタミン酸(Glu) Q:グルタミン (Gln)
F:フェニルアラニン(Phe) R:アルギニン (Arg)
G:グリシン(Gly) S:セリン (Ser)
H:ヒスチジン(His) T:スレオニン (Thr)
I:イソロイシン(Ile) V:バリン (Val)
K:リジン(Lys) W:トリプトファン (Trp)
L:ロイシン(Leu) Y:チロシン (Tyr)
ヌクレオチド配列に関しては:
A,a:アデニン G,g: グアニン
C,c:シトシン T,t: チミン
【0096】
【実施例】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。以下の実施例における通常慣用されるDNAクローニングを含めた技術としては、標準的な実験マニュアル、例えば J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989) & J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd Edition), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2001)に記載されるように実施できる。また特にPCR 法では、R. Saiki et al., Science, 230: 1350, 1985; R. Saiki et al., Science, 239: 487, 1988; H. A. Erlich (ed.), PCR Technology, Stockton Press, 1989 ; D. M. Glover et al. (ed.), ”DNA Cloning”, 2nd ed., Vol. 1, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995); M. A. Innis et al. (ed.), ”PCR Protocols: a guide to methods and applications”, Academic Press, New York (1990)); M. J. McPherson, P. Quirke and G. R. Taylor (ed.), PCR: a practical approach, IRL Press, Oxford (1991) などに記載の方法に準じて行っているし、また市販の試薬あるいはキットを用いている場合はそれらに添付の指示書(protocols) や添付の薬品などを使用している。
【0097】
実施例1
実施例1 ポリセラーゼ−I 分子クローニング
(1)方法
BLAST プログラムを使用してヒトゲノムデータベースのコンピューター・サーチを行った結果、ヒトのDNA コンテイグ(contig) NT 011245(染色体 19p13)の中に3つの領域を同定した。概念上の翻訳をしてみると、セリンプロテアーゼ類と構造的に認めるに足る特徴の存在を示していた。次に、これらのプロテアーゼ類のcDNAをクローン化するため、PCR に基づいたアプローチを設計した。この戦略では、最初に、該クラスターの中に存在する中央のプロテアーゼ遺伝子と推定される遺伝子から誘導される特異的オリゴヌクレオチドを使用することを含んでいる。デザインしたプライマーの配列は、
【0098】
Polys2f : 5’−GTCGTGGGCGGGTTCGGAGCT 〔配列番号:1〕
Polys2f−nd:5’−CTTCTGCGGAGCAACTGTGGT 〔配列番号:2〕
Polys2r : 5’−CAGGAAGCCTGCGCAGATCAT 〔配列番号:3〕
Polys2r−nd: 5’−CTGCGCAGATCATGCGGTCTG 〔配列番号:4〕
【0099】
(上記中、「f」はフォアード(forward)を示し、「r」はリバース(reverse)を示し、そして「nd」はネスティッド(nested)オリゴヌクレオチドであることを示す)である。PCR 反応は、変性(94℃、20秒)、アニーリング(64℃、15秒)、伸張(68℃、60秒)を40サイクル行うもので、GeneAmp 2400 PCRシステム(PerkinElmer Life Sciences) を使用して行った。市販されて利用可能である異なるcDNAライブラリーとExpand High Fidely PCRシステム(Roche Molecular Biochemicals)を使用した。ヒトのcDNAライブラリーから増幅されたPCR 産物 (439 bp) をクローニングし、自動的DNAシークエンサー ABI−PRISM 310(PerkinElmer Life Sciences) で配列解析した。クローン化されたcDNAの5’末端と3’末端は、MarathonTM cDNA 増幅キット(Clontech)を使用し、ヒトの肝臓からのRNA を用いたRACE (Rapid Amplification of cDNAs Ends)の連続操作により伸張した。各サイクルでそれぞれのエンドあたり約300 bpの伸張ができた。RACEで伸張されたcDNAクローンを配列解析した結果、NT 011245 DNA コンテイグの中央のプロテアーゼ遺伝子の5’−端と3’−端に存在する2つの更なるプロテアーゼ遺伝子が、実際のところ、3つのプロテアーゼ様のドメインを持ったタンパク質と推定されるものをコードしていることのできる単一の遺伝子の部分であることが解明できた。この大きな遺伝子の開始コドン及び終止コドンの位置を同定できたことから、
【0100】
プライマー
PolysATG:5’−ATGGAGCCCACTGTGGCTGAC 〔配列番号:5〕
と
polysEND:5’−CTCCTGGATGTGCTGTCCTAT 〔配列番号:6〕
を用いたPCR によって全長のcDNAを得ることができた。PCR 条件は上記のように行ったが、但し、伸張は180 秒で行った。PCR 産物をクローンニングし、その同一性はヌクレオチドシークエンシングによって確認した。
【0101】
(2)結果
新規プロテアーゼ遺伝子を捜し出すためのヒトゲノムデータベースのサーチにより、新しいセリンプロテアーゼ類をコードしていると推定される3個の領域を含んでいるDNA contig(シークエンス済みの巨大ゲノミックDNA)を同定することができた。しかしながら、これら3個の領域を詳細に配列解析してみると、それらはお互い密に配置されており、異なったプロテアーゼ・モジュールを含んでいる単一の遺伝子の一部であることを示唆するものであることが示された。この可能性をさらに探究するために、本発明者等は、中央部のプロテアーゼ・モジュールから導かれた特異オリゴヌクレオチドを使用してのPCR 増幅を実施し、次に5’− 及び3’−RACE 増幅を行った。こうした手法により最終的に3180bpのcDNAを作り出し、クローニング及び配列決定をした後、3個のセリンプロテアーゼ・ドメインと予測されるドメインに関するコード情報を保持する単一のRNA 転写物が存在することを明らかにした(図1及び2)。
【0102】
この全長cDNA配列をコンピューター解析した結果、114,020 の分子量と計算されるところの1059個のアミノ酸よりなるタンパク質をコードしていることが示された(配列表の配列番号:13 及び14)。TMHMM (transmembrane helics Markov model) プログラムを用いてのSMART 解析によると、本タンパク質は28番目の残基〜50番目の残基間のII型膜貫通(type II transmembrane)セグメントと、 154番目の位置〜189 番目の位置の間の低密度リポプロテイン・レセプター・ドメイン・クラスA (LDL レセプターA (LDLR)) とを保有持していることが示された。このLDL レセプターA モジュールに引き続いては、3個のプロテアーゼ・ドメインが容易に認識されるものであった。すなわち、Arg202の後にトリプシン様プロテアーゼのコンセンサス活性化部位を持っている 190〜433 位にあるセラーゼ−1 (serase−1; serine protease−1)、Arg503の後のトリプシン様プロテアーゼのコンセンサス活性化部位を持っている 491〜733 位にあるセラーゼ−2 (serase−2) 及びArg826の後のタンパク質分解により活性化する816 〜1055位にあるセラーゼ−3(serase−3)である。また配列の一直線上にある並びより、セラーゼ−1とセラーゼ−2とはコンセンサス・モチーフ Gly−Asp−Ser−Gly−Gly の内に推定される触媒活性のSer残基を含有している(各々385〜389 位と 685〜689 位)ことが示されている。一方、セラーゼ−3は、その活性部位にそのSer残基の代わりに Ala残基(Gly−Asp−Ala−Gly−Gly, 1007〜1011位)を含有していることから、該第3のモジュールは触媒的に不活性であるに違いないことが示されている。更に、セリンプロテアーゼ類であることを構造的に示している特徴が、その同定されたセラーゼ類にも保存されている。
【0103】
かくして、適切な配向をした切れやすい結合に関して基質の側鎖と相互作用をするようにされている配列Ser−Trp−Gly が、該3個のセラーゼ中に存在する(それぞれ、407〜409位、707〜709位及び1029〜1031位)。また触媒活性に必要なHis 残基及びAsp 残基も保存されている(それぞれ、His243とAsp292、His544とAsp592、そしてHis868とAsp915)。また同様に触媒領域の3個のS−S 結合の形成に関与する6個のCys 残基も保存されている(セラーゼ−1では、Cys228−Cys244, Cys358−Cys372及びCys383−Cys412 、セラーゼ−2では、Cys529−Cys545, Cys658−Cys672及びCys682−Cys712 、そしてセラーゼ−3では、Cys853−Cys869, Cys980−Cys994及びCys1005−Cys1034 )。他のセリンプロテアーゼ類と同様に、第4のS−S 結合はセラーゼ−1のプロドメインに位置するCys191と本ドメインの触媒ドメインのCys312との間に形成されることが予想される。同様な結合は、セラーゼ−2のCys492とCys612との間に、そしてセラーゼ−3のCys817とCys935との間に形成されるであろう。これら推定されるS−S 結合の最初のものが形成されることにより、該ポリプロテアーゼの触媒ドメインは活性化部位での開裂の後でさえ細胞表面に依然結合したままで残存するであろうことが暗示されるのである。
【0104】
本同定されたヒトタンパク質中にある全てのこれらの構造的特徴は、その推定されるところのマウスやラットのオルソログ(orthologs, 類似遺伝子) 中でも保持されているのであって、それらの配列はマウスやラットのゲノムデータベースの中において、該同定されたヒトの配列をクエリーとして使用することにより、推測された(図3)。ラットのオルソログをコードする遺伝子はクロモゾーム7 の中に位置しており、マウスポリプロテインをコードする遺伝子はクロモゾ−ム10の中に位置しており、それらのクロモゾ−ム領域は、ヒト遺伝子が位置しているクロモゾ−ム19p13 にシンテニーな(syntenic)領域の中のものである。
【0105】
さらに該推定される配列を解析すると、最高の相同性(同一性)パーセンテージを与えるものとしては、マトリプターゼ(matriptase; セラーゼ−1とは46% 、セラーゼ−2とは43% 、そしてセラーゼ−3とは48% の相同性を有する)並びにマトリプターゼ 2(matriptase 2; セラーゼ−1とは45% 、セラーゼ−2とは40% 、そしてセラーゼ−3とは48% の相同性を有する)が挙げられる。この両者は膜セリンプロテアーゼであるTTSP (type II transmembrane serine proteinase)ファミリー(a subfamily of serine protease)のメンバーである。本構造解析によれば、該クローン化されたヒト肝臓cDNAはセリンプロテアーゼと推定される3個のモジュールを持っている新規な膜結合ポリプロテイン(membrane−bound polyprotein)をコードしていると結論づけることができ、該新規な膜結合ポリプロテインを、ポリセラーゼ−I (polyserase−I: polyserine protease−I より)(EMBL accession number AJ488946)と呼ぶこととした。また注目すべきこととしては、ヒトポリセラーゼ−I遺伝子の最後のエクソン(該cDNAの3050位で始まる)は、ヒト難聴異緊張症 (human deafness dystonia syndrome, Roesch, K. et al., Hum. Mol. Genet., 11: 477−486, 2002) に関与することが見出されているミトコンドリア内膜13(mitochondrial inner membrane 13, TIMM13) 遺伝子のトランスロカーゼ(translocase) の 3’−非翻訳領域の一部とアンチセンス配向でオーバラップしている。
【0106】
実施例2 ポリセラーゼ−Iの解析
(a) 組換えセラーゼ−1ドメイン及び組換えセラーゼ−2ドメインの産生と精製
該クローン化されたcDNAの中の第1番目のセリンプロテアーゼ・ドメインをコードするcDNAコンストラクト又は該クローン化されたcDNAの中の第2番目のセリンプロテアーゼ・ドメインをコードするcDNAコンストラクトといった、2つのcDNAコンストラクトは、次なるオリゴヌクレオチドを使用して、PCR 増幅によって作製した。
【0107】
第1のプロテアーゼ・ドメイン用として
mod1f :5’−ATCGTGGGCGGCATGGAAGCA 〔配列番号:7〕
及び
mod1r :5’−CTCCAGGATCCAGTCACGTAG 〔配列番号:8〕、
第2のプロテアーゼ・ドメイン用として
mod2f :5’−GTCGTGGGCGGGTTCGGAGCT 〔配列番号:9〕
及び
mod2r :5’−CTCCAGGATCCAGCCCTTTAG 〔配列番号:10〕。
【0108】
PCR 増幅は、変性(95℃、15秒)、アニーリング(59℃、10秒)及び伸張(68℃、50秒)を25サイクル行うもので、ExpandTM High Fidelity PCR system を使用して行った。PCR 産物は、発現ベクターpGEX−3X (Amersham Biosciences)のSmaIサイトにクローン化した。得られたベクター(pGEX−3X−serase 1 及びpGEX−3X−serase 2)を、コンペテントな大腸菌細胞 BL21(DE3)pLysE へ導入し、0.5mM IPTGで発現誘導を行った。細胞を遠心分離して集め、洗浄し、PBS 中へ再懸濁した。次に、細胞は超音波処理で可溶化し、4℃、20分間、20,000×g で遠心分離した。可溶化画分はグルタチオン−セファロース 4B カラム(Amersham Biosciences)を使用して、精製した。グルタチオンS−トランスフェラーゼ GST−serase 1 融合タンパク質及びグルタチオンS−トランスフェラーゼ GST−serase−2 融合タンパク質を、20 mM 還元型グルタチオンで溶出し、酵素活性分析に使用した。
【0109】
(b) 酵素活性分析
(1) 方法
組換えGST−serase−1タンパク質及び組換えGST−serase−2タンパク質につきその推定上の酵素活性を、合成蛍光基質N−t−Boc−Gln−Ala−Arg−AMC 、N−t−Boc−Gln−Gly−Arg−AMC 、N−t−Boc−Ala−Pro−Ala−AMC 及びN−t−Boc−Ala−Phe−Lys−AMC を使用してアッセイした。通常のアッセイを、50mM Tris−HCl, pH8.0, 20mM NaCl, 2.5% Me2SO 含有アッセイ緩衝液中、37℃で行った。蛍光測定は、MPF−44A PerkinElmer 分光蛍光計(λex=360nm及びλem=460nm)で行った。阻害活性アッセイは、異なる阻害剤と該組換えタンパク質とを37℃、15分間プレインキュベーションし、その後、上記の条件でインキュベーションを行った。I型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン及びフィブリノーゲンを分解処理し、SDS−PAGEで調べた。すべてのアッセイは上記のアッセイ緩衝液中37℃で4〜12時間インキュベーションし、1/100 の酵素/ 基質比率(w/w) で行った。
【0110】
(2) 結果
セラーゼ−1及びセラーゼ−2の酵素学的諸性質の解析のため、微生物細胞中で本膜結合ポリプロテアーゼの2個の触媒活性ドメインと推定されるドメインを発現させた。この目的のため、これらのドメインのそれぞれをコードするcDNAを、発現ベクターpGEX−3X 中にサブクローニングし、得られたプラスミドでもって大腸菌(E.coli) BL21(DE3)pLysS 株を形質転換せしめた。形質転換体微生物の発現誘導は、IPTGで行われ、期待されたサイズのタンパク質のバンド(それぞれ、52 kDa及び51 kDa) が微生物タンパク質抽出物をSDS−PAGE分析して検出された(図4A)。これら組換え融合タンパク質はグルタチオン(GST)−セファロースクロマトグラフィーで精製され、アフィニティーカラム溶出可溶性GST−serase−1タンパク質及びGST−serase−2タンパク質は直接酵素活性分析に供された。他のGST−融合タンパク質に関して以前に記載してあるように、該融合タンパク質は37℃でのインキュベーション後、明らかに自動的に活性化され、各タンパク質で更なる約26kDa のバンドが生ずるのが見られた。これは、GST 部分がタンパク質分解により遊離された後の各触媒活性ドメインに相応するように思われる。
【0111】
組換え酵素のタンパク質分解活性を、セリンプロテアーゼ類のアッセイに通常用いられている合成消光蛍光ペプチドをパネルとして用いて分析した。両酵素は非常に似た活性を示し、ペプチドN−t−Boc−Gln−Ala−Arg−AMC 及びN−t−Boc−Gln−Gly−Arg−AMC が加水分解された。N−t−Boc−Ala−Phe−Lys−AMC やN−t−Boc−Ala−Pro−Ala−AMC を含む他のペプチド類は該組換えタンパク質によっては有意には加水分解されなかった(図4B)。この2種の組換えセラーゼの触媒活性はセリンプロテアーゼ阻害剤フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)や4−(2−アミノエチル)−ベンゾイルスルホニルフルオリド(AEBSF) によって実質的に消失せしめられたが、EDTAでは消失しなかった(図4C)。またこれらの酵素がセリンプロテアーゼの中のTTSPファミリーの他のメンバー(Lin, C. et al.,J. Biol. Chem., 274: 18231−18236, 1999; Roesch, K. et al., Hum. Mol. Genet., 11: 477−486, 2002, Hooper, J. D. et al., J. Biol. Chem., 276: 857−860, 2001) により標的とされることのできる各種マトリックスや基底膜のタンパク質成分を分解するかもしれないという可能性につきそれを評価した。当該反応を行った後、SDS−PAGE分析をした。図5に示されているように、該タンパク質の双方は、I型コラーゲン(type I collagen) 、フィブロネクチン(fibronectin) 、ラミニン(laminin) 、そしてフィブリノーゲン(fibrinogen)を分解することができた。これら基質に対する両プロテアーゼの加水分解活性はPMSFで阻害された(図5)。このことはこれら酵素がセリンプロテアーゼであるとの提案をより支持するものである。
【0112】
(c) ヒト組織中でのポリセラーゼ−I発現解析
(1) 方法
種々のヒト組織を使用してノーザン・ブロット解析を行った。種々のヒト組織(心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、筋肉、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、腸、大腸及び白血球)の poly(A)+ RNA を2μg 含んでいるナイロン・フィルターを使用し、該ナイロン・フィルターを、50% のフォルムアミド、5X SSPE (1X SSPE=150 nM NaCl, 10mM NaH2PO4, 1mM EDTA, pH 7.4)、10X Denhardt’s溶液、2% SDS及び100 μg/ml変性ニシン精子DNA 中で42℃、3時間プレハイブリダイズせしめた。ハイブリダイゼーション処理は、次なるオリゴヌクレオチド
northF:5’−CTTGCAGCCTGCCTGGAGGAT 〔配列番号:11〕
及び
northR:5’−CCTTGAGGTAGCCCCAGCCTG 〔配列番号:12〕
を用いてcDNAクローンからPCR 増幅して得られた、放射性ラベルした0.5kb のプローブでもって行った。プレハイブリダイズと同条件で20時間のハイブリダイゼーション処理した後に、フィルターは、0.1%SDS 含有0.1X SSCで50℃、2時間洗浄し、オートラジオグラフィーに供した。アクチンプローブによるハイブリダイゼーションを行ってRNAの真正性(RNA integrity)についての評価を行った。
【0113】
(2) 結果
ヒト組織中でのポリセラーゼ−I発現パターンを研究するため、いろいろな組織及び腫瘍細胞株から調製した poly(A)+ を含有する試料につきノーザン・ブロットを行い、該同定されたcDNAの5’末端に対応するプローブとハイブリダイズさせた。腎臓、肝臓、肺及び脳を含むヒト胎児組織(human fetal tissues) のパネル中や腫瘍細胞株A549(肺癌)、Raji(バーキットリンパ腫)、MOLT−4(リンパ芽球白血病)、 K−562(慢性脊髄白血病)及びHeLa(頚管上皮癌)を含む各種腫瘍細胞株(tumor cell lines)中で約5.4kb の1個のバンドが検出された(図6)。また、成人組織(human adult tissues) 中、主として膵臓、筋肉、肝臓、心臓及び精巣中で3.8kb と2.4kb のマイナーな転写物が検出された。5.4kb の主バンドはポリセラーゼ−Iに関して記載されている全長cDNAを含んでいる転写物に相当すると推測される。一方、マイナーな転写物は本発明の中で見つけられたオールターナティブ・スプライシング(それはポリプロテアーゼのより短い形態のもの(EMBL accession number AJ488947)に導く)により誘導されたと推測される。
【0114】
(d) ポリセラーゼ−Iの翻訳後のプロセシングの解析
(1) 方法
5’末端にFLAGエピトープを持ち、3’末端にHAエピトープを持つベクターpcDNA3のEcoRV サイトに全長cDNAをクローン化し、得られた構築物(pcDNA3−polys)をLipofectAMINE 試薬(Life Technologies, Inc.社) を用いて、HeLa及びCOS−7 細胞へ導入した。
大腸菌で産生された第1と第2のプロテアーゼ・モジュールに対するポリクローナル抗体は、標準の方法でもってウサギで作製された。さらに、第3のプロテアーゼ・モジュールから導かれた合成ペプチド(FDVYGDPKQWAAF; 870−882位) にマレイミド−活性化キーホールリンペット・ヘモシアニンを結合し、それに対するウサギ・ポリクローナル抗体を作製した。タンパク質のウエスタン・ブロット解析は、サンプルを12%SDS−PAGE ゲルで分離し、Hybond ECLニトロセルロース膜(Amersham Bioscience社) に転写して行った。ウエスタン・ブロットは 1μg/mlの各々の抗体、若しくは抗FLAG M2 抗体(Scientific Imaging Systems, Eastman Kodak社) 及び抗HA抗体(Roche社) と共にインキュベーションし、続いて、HRP 結合2次抗体(Santa Cruz Biotech 社) を1:10000 に稀釈し用いた。細胞膜リッチ画分を得るために、HeLa及びCOS−7 細胞をプレートから掻き取り、以前に報告(Velasco, G., et al., J. Biol. Chem., 277: 37637−37646, 2002)したようにして、細胞膜画分を調製した。
【0115】
(2) 結果
3個のプロテアーゼ・モジュールに対して作製されたポリクローナル抗体をHeLa細胞中のポリセラーゼ−Iの検出に用いた。図7で見られるように約55 kDaと約32 kDaの2つのバンドが抗セラーゼ−1抗体でHeLa細胞抽出物中に検出された。55 kDaのセラーゼ−1免疫反応性バンドは、LDLRと膜貫通・ドメイン(推定値 56.1kDa)を伴っている第1のプロテアーゼ・モジュールを含有しているタンパク質種に相当するものであるかもしれない。一方、32kDa のタンパク質は、Arg202の部位でトリプシン様プロテアーゼにより消化された後の活性型セラーゼ−1(推定値 33.9kDa)に相当するものであるかもしれない。抗セラーゼ−2抗体は、35kDa のバンドを検出したが、それはArg503の活性化部位で切断された後のセラーゼ−2のプロセスを受けた形態のもの(推定値 34.8kDa)に相当するものであるかもしれない。最後に、抗セラーゼ−3抗体は約25kDa のバンドを認識した。本約25kDa のバンドはArg826でのプロセス化を受けた後の予想されたサイズの該ドメイン(推定値 25.7kDa)によく一致したものであった。これらの抗体は他のより高分子のバンドも検出したが、それらは部分的にプロセス化を受けた形態のものに相当するものであるのかもしれないし、あるいは、全長タンパク質に相当するものであるのかもしれない。特異セラーゼ免疫反応性バンドのいずれもポリセラーゼ−I非発現のSW480 細胞中では存在しておらず、本明細書における実験では陰性コントロ−ルとして該細胞を使用した(図7)。
【0116】
推定されるポリセラーゼ−Iのプロセッシングのメカニズムを更に研究するため、タンパク質の N末端にFLAGエピトープ及び C末端にHAエピトープをそれぞれ有している本酵素を発現する真核生物発現ベクターを調製した。構築物はCOS−7細胞及びHeLa細胞をそれぞれトランスフェクトするために使用した。抗FLAG抗体あるいは抗HA抗体を用いてポリセラーゼ−Iの内因性のものとポリセラーゼ−Iのトランスフェクト型との区別を可能にした。トランスフェクトされたCOS−7細胞の膜リッチな画分を抗FLAG抗体でウエスタン・ブロット解析すると、タンパク質の大部分はインタクト(115kDa)として残っていたが、更なるバンド、すなわち、90 kDa(膜貫通部+LDLR+セラーゼ−1+ セラーゼ−2)、55 kDa(膜貫通部+LDLR+セラーゼ−1)及び21kDa のバンドも検出された。この最後の21kDa のシグナルはセラーゼ−1がArg202の後でトリプシン様プロテアーゼにより除去されてしまったもの(推定値22.2 kDa)で、膜貫通部とLDLRのモチーフに相当するものかもしれない。同じ実験で、膜リッチ画分をアルカリ/EDTA 処理すると、抗HA抗体で115kDaのバンド(全長タンパク質)が検出される。さらなるバンドが、115kDaのタンパク質のプロセッシングから誘導でき、約100kDa、55 kDa及び25 kDaの3個のより強いバンドはそれぞれセラーゼ−1+ セラーゼ−2+ セラーゼ−3(推定値94 kDa)、セラーゼ−2+ セラーゼ−3(推定値60.5 kDa)及びセラーゼ−3モジュール(推定値25.7 kDa)に相当するものである(図8)。55 kDa及び25 kDaの分子量の2個のバンドが、膜リッチ画分を使用し高塩濃度(350mM) とβ−メルカプトエタノール(5mM)で抽出すると、その上清中に検出された。トランスフェクトされたHeLa細胞あるいは個々のセラーゼ・モジュールに対する抗体を使用すると、同様な結果が得られた。こうしたことを考え併せると、これらデータはポリセラーゼ−Iが膜結合性タンパク質であり、本タンパク質は3個の明確に異なっているプロテアーゼ・ユニットの遊離をもたらす一連の連続したタンパク質分解プロセッシングを受けることを示している。これらのタンパク質はプロドメインに位置しているCys 残基と各セラーゼ・ドメインの触媒ドメインとの間に形成されるS−S 結合により細胞膜に結合して残っているようである。
【0117】
実施例3 モノクローナル抗体の作製
免疫に用いる抗原としては、ヒトポリセラーゼ−Iの全長、実施例2で得られた精製した融合組換えGST−serase−1若しくはGST−serase−2又はプロテアーゼ・モジュールの合成ペプチド(FDVYGDPKQWAAF、870−882 位) にマレイミド−活性化キーホールリンペット・ヘモシアニンを結合したものを使用することができる。また、配列番号:14に記載したヒトポリセラーゼ−Iのアミノ酸配列中より他のセリンプロテアーゼと相同性が低く、ヒトポリセラーゼ−Iに特徴的な配列を選択し、合成することができる。これらの抗原タンパク質は、イオン交換、ゲルろ過、抗体アフィニティークロマトグラフィー又はそれ以外の各種クロマトグラフィーによって精製できる。精製した免疫用抗原を一般的な方法で免疫し、抗体産生細胞を誘導、細胞融合によりハイブリドーマとして抗体産生細胞を得ることができる。さらに免疫用抗原に対する反応性に基づいてクローニングを行いモノクローナル抗体産生ハイブリドーマとして株化できる。ただし、GST 融合組換えserase−1若しくはGST 融合組換えserase−2を免疫源として得られたハイブリドーマの場合には、GST に対する抗体産生株を含んでいるので、GST に反応する抗体産生ハイブリドーマを除去しなければならない。また、ヒトポリセラーゼ−I特異的モノクローナル抗体を得るための免疫源としては、ヒトポリセラーゼ−Iに特徴的なアミノ酸配列を持つ合成ペプチドにキャリアータンパク質を結合させたものが使用できる。例えば、第190−433 位のセラーゼ−1の活性部位、第491−733 位のセラーゼ−2の活性部位、第816−1055位のセラーゼ−3の活性部位を含む領域から、他のセリンプロテアーゼには見られない特異的で、疎水性の低い可溶性ペプチド配列を選択し使用することができる。これらのヒトポリセラーゼ−Iの全長若しくは一部の領域の融合組換えタンパク質若しくはポリペプチドを免疫原として作製する抗体をここでは抗ヒトポリセラーゼ−I抗体とする。
【0118】
(a) 抗原ポリペプチドの調製
前述のようなポリペプチドは、ペプチド合成機(ペプチドシンセサイザー9600、MilliGen/Biosearch)を使用して、Fmoc−bop法で合成する。ポリペプチドの N末端あるいは C末端にはシステインを導入する。合成したペプチドはμBondasphere, C18カラム(Waters)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより精製する。
(b) ポリペプチドとウシ血清アルブミン(BSA) の複合体の調製
システイン残基を介してBSA と結合させ、抗原コンジュゲートとする。BSA を 0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) に溶解したものとN−(6−maleimidecaproyloxy)−succinimide (EMCS)をジメチルホルムアミドに溶解したものと混合し、30℃、30分間反応させ、ついで、上記の混合液を 0.1M リン酸緩衝液(pH7.0) で平衡化した PD−10(Pharmacia) でゲルろ過する。マレイミド結合BSA を分取し、1.5ml 以下に濃縮する。前記(a) で合成したそれぞれのポリペプチドを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0) に溶解し、マレイミド結合BSA に対し50倍モル量となるようにそれぞれ混合し、4℃、20時間インキュベートし、BSA−ポリペプチド複合体を調製する。
【0119】
(c) 抗体産生細胞の調製
前記(b) で調製したBSA−ポリペプチド複合体、 200μg を完全フロインドアジュバントと共に8週令Balb/c雌マウスに腹腔内投与し、初回免疫する。19日目と34日目に 0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) に溶解した複合体 200μg を初回免疫したマウスに腹腔内投与し、追加免疫する。さらに69日目に複合体 200μg を静脈内投与し、最終免疫とする。その3日後に脾臓を摘出し、脾細胞懸濁液を調製する。
【0120】
(d) 細胞融合
(1) 以下の材料及び方法を用いる。RPMI−1640 培地:RPMI−1640 (Flow Lab.) に重炭酸ナトリウム (24mM) 、ピルビン酸ナトリウム (1mM)、ペニシリンG カリウム (50U/ml) 、硫酸アミカシン(100μg/ml) を加え、ドライアイスでpHを7.2 に調整し、 0.2μm 東洋メンブレンフィルターで除菌ろ過する。NS−1培地:上記RPMI−1640 培地に除菌ろ過したウシ胎児血清 (FCS, M.A. Bioproducts)を15%(v/v)の濃度になるように加える。PEG−4000溶液:RPMI−1640 培地にポリエチレングリコール−4000(PEG−4000, Merk & Co.) を50%(w/w)になるように加えた無血清培地を調製する。8−アザグアニン耐性ミエローマ細胞 SP−2 (SP−2/0−Ag14) との融合は、Selected methods in cellular immunology, pp. 351−371 (ed. B. B. Mishell and S. M. Shiigi), W. H. Freeman and Company (1980) に記載のOi & Herzenberg の方法を若干改変して行う。
(2) 前記(c) で調製した有核脾細胞(生細胞率 100% )とミエローマ細胞(生細胞率 100% )とを5:1 の比率で以下の手順で融合した。それぞれのポリペプチド免疫脾細胞懸濁液とミエローマ細胞をそれぞれ RPMI1640 培地で洗浄する。次に同じ培地に懸濁し、融合させるために有核脾細胞とミエローマ細胞を混合する。次に遠心分離により細胞を沈殿させ、上清を完全に吸引除去する。沈殿した細胞に37℃に加温したPEG−4000溶液を1分間で滴下し、1分間撹拌し、細胞を再懸濁、分散させる。次に37℃に加温したRPMI1640培地を2分間で滴下した後、同培地を2〜3分間で常に撹拌しながら滴下し、細胞を分散させる。これを遠心分離し、上清を完全に吸引除去する。次にこの沈殿した細胞に37℃に加温したNS−1培地を速やかに加え、大きい細胞塊を注意深くピペッティングで分散する。さらに同培地64mlを加えて希釈し、ポリスチレン製96穴マイクロウェルにウェル当り 6.0×105 個/0.1mlの細胞を加える。細胞を加えた上記マイクロウェルを7%炭酸ガス/93%空気中で温度37℃、湿度100%で培養する。
【0121】
(e) 選択培地によるハイブリドーマの選択的増殖
(1) 使用した培地は以下の通りである。
HAT 培地:前記(d) 項(1) で述べたNS−1培地に更にヒポキサンチン(H、100 μM)、アミノプテリン(A、0.4 μM)及びチミジン(T、16μM)を加える。HT培地:A を除去した以外は上記HAT 培地と同一組成のものである。
(2) 前記(d) 項の培養開始後翌日(1日目)、細胞にパスツールピペットでHAT 培地2滴(約 0.1ml)を加える。2、3、5、8日目に培地の半分(約 0.1ml)を新しい HAT培地で置き換え、11日目に培地の半分を新しいHT培地で置き換える。14日目にハイブリドーマの生育が肉眼にて認められた全ウエルについて固相−抗体結合テスト法(ELISA) により陽性ウエルを調べる。すなわち、ポリスチレン製96穴プレートを抗原としたそれぞれのポリペプチドでコートし、次に洗浄用 PBS(0.05% Tween20 含有) を用いて洗浄して未吸着のペプチドを除く。さらに各ウエルの未コート部分を1% BSAでブロックする。この各ウエルにハイブリドーマの生育が確認されたウエルの上清 0.1mlを添加し、室温で約1時間静置する。2次抗体としてHRP 標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン (Cappele Lab.) を加え、さらに室温で約1時間静置する。次に基質であるTMB 溶液(Calbiochem)をウェル当たり 100μl 加え、発色の程度をマイクロプレート用吸光度測定器(MRP−A4、東ソー社)を用いて 492nmの吸光度で測定する。ポリスチレン製96穴プレートに固相化する抗原としては、前述の精製した各種組換えヒトセラーゼ−1若しくはヒトセラーゼ−2も使用できる。
【0122】
(f) ハイブリドーマのクローニング
上記(e) 項で得られた抗原ペプチドに対する陽性ウエル中のハイブリドーマを、限界希釈法を用いてモノクローン化する。すなわち、NS−1培地1ml 当りフィーダーとして 107個のマウス胸腺細胞を含むクローニング培地を調製し、96穴マイクロウエルにハイブリドーマをウエル当り5個、1個、0.5 個になるように希釈し、それぞれ36穴、36穴、24穴に加える。5日目、12日目に全ウエルに約 0.1mlのNS−1培地を追加する。クローニング開始後約2週間で、肉眼的に十分なハイブリドーマの生育を認め、コロニー形成陰性ウエルが50% 以上である群について(e) 項に記載したELISA を行う。調べた全ウエルが陽性でない場合、抗体陽性ウエル中のコロニー数が1個のウエルを4〜6個選択し、再クローニングを行う。最終的にそれぞれのポリペプチドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。
【0123】
(g) ハイブリドーマの培養とモノクローナル抗体の精製
得られたハイブリドーマ細胞をNS−1培地で培養し、その上清から濃度10〜100 μg/mlのモノクローナル抗体を得ることができる。また、得られたハイブリドーマ107 個を予め1週間前にプリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン、Aldrich chemicals )を腹腔内投与したマウス(Balb/c系、雌、6週齢)に同じく腹腔内投与し、1〜2週間後、腹水中からも 4〜7mg/mlのモノクローナル抗体を含む腹水を得ることができる。得られた腹水を40% 飽和硫酸アンモニウムで塩析後、IgG クラスの抗体をプロテインA アフィゲル (Bio−Rad)に吸着させ、0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.0) で溶出することにより精製する。
(h) モノクローナル抗体のクラス、サブクラスの決定
前述したELISA に従い、それぞれのポリペプチドをコートしたポリスチレン製96穴プレートに、(f) 項で得られたハイブリドーマの上清を加える。次にPBS で洗浄後、アイソタイプ特異的ウサギ抗マウスIgG 抗体 (Zymed Lab.) を加える。PBS により洗浄後、HRP 標識ヤギ抗ウサギIgG (H+L) を加え、基質として過酸化水素及び 2,2’−アジノ− ジ(3−エチルベンゾチアゾリン酸)を用いてクラス、サブクラスを決定する。
【0124】
実施例4 サンドイッチEIA
実施例3で調製した抗ヒトポリセラーゼ−I抗体から少なくとも1種を選択し、抗ヒトポリセラーゼ−I抗体の適当な2種の組み合わせによってヒトポリセラーゼ−Iを特異的に検出・測定するサンドイッチEIA 系が構成できる。EIA 系は1ステップ法、2ステップ法のいずれも可能であり、標識抗体はFab’−HRPに限定されない。各反応緩衝液の組成や反応条件は測定の目的に応じて短縮あるいは延長など調整できる。また、標準品となるヒトポリセラーゼ−Iタンパク質は、組織培養上清、細胞培養上清又は本明細書記載或いはそれ以外の方法で発現した組換え体から精製することができる。精製にはイオン交換、ゲルろ過、当該ヒトポリセラーゼ−Iモノクローナル抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーまたそれ以外の各種アフィニティークロマトグラフィーの組み合わせによって達成される。
【0125】
(a) 標識抗体の調製
抗ヒトポリセラーゼ−Iモノクローナル抗体を0.1M NaCl 含有 0.1M 酢酸緩衝液 (pH4.2)に抗体量の2%(W/W) のペプシンを加え、37℃、24時間消化する。消化物に3M Tris−HCl 緩衝液(pH7.5) を添加し、反応を停止する。 0.1M リン酸緩衝液 (pH7.0)で平衡化したウルトロゲルAcA54 カラムによるゲルろ過でF(ab’)2 画分を分取する。このF(ab’)2 画分に最終濃度 0.01Mとなるようにシステアミン塩酸塩を添加し、37℃、1.5 時間還元し、5mM EDTA含有 0.1M リン酸緩衝液(pH6.0) で平衡化したウルトロゲルAcA54 カラムによるゲルろ過でFab’画分を分取する。上記の操作とは別にHRP を 0.1M リン酸緩衝液(pH7.0) に溶解、HRP の25倍モル量のEMCSをDMF 溶液として加え、30℃、30分間反応させる。これを 0.1M リン酸緩衝液 (pH6.0)で平衡化した NICK−5 カラム (Pharmacia)でゲルろ過し、マレイミド標識 HRP画分を分取する。Fab’画分とマレイミド標識 HRPを等モルとなるように両画分を混合し4℃、20時間反応させた後、Fab’の10倍モル量のN−エチルマレイミドで未反応のチオール基をブロックする。これを 0.1M リン酸緩衝液 (pH6.5)で平衡化したウルトロゲルAcA54 カラムでゲルろ過し、Fab’−HRP標識抗体を分取する。これに0.1% BSA及び0.001%クロルヘキシジンを添加して4℃で保存する。
【0126】
(b) モノクローナル抗体結合担体の調製
抗ヒトポリセラーゼ−Iモノクローナル抗体を 0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) に溶解し、50μg/mlの濃度に調製する。このモノクローナル抗体溶液を96穴マイクロプレートにウエルあたり 100μl ずつ加え、4℃、18時間静置する。モノクローナル抗体溶液を除去し、生理食塩液で1回、0.05% Tween20 、0.1M NaCl 、5mM CaCl2 含有Tris−HCl緩衝液(pH8.0) で3回洗浄後、1% BSA、0.1M NaCl 、5mM CaCl2 含有Tris−HCl緩衝液(pH8.0) を加えブロッキングする。
【0127】
(c) 1ステップサンドイッチEIA 法
精製したヒトポリセラーゼ−I画分を標準抗原としてヒトポリセラーゼ−I定量用標準曲線を作成する。1% BSA、0.05% Brij35、0.05% Tween20 、0.1M NaCl 、5mM CaCl2 含有Tris−HCl緩衝液(pH8.0) で段階希釈した標準ヒトポリセラーゼ−Iを60μl ずつ分注、それぞれに1% BSA、0.05% Brij35、0.05% Tween20 、0.1M NaCl 、5mM CaCl2 含有Tris−HCl緩衝液(pH8.0) で100ng/50μl に調整した標識抗体Fab’−HRPを60μl ずつ添加し十分混和する。調製した抗体結合マイクロプレートを0.05% Tween20 、0.1M NaCl 、5mM CaCl2 含有Tris−HCl緩衝液(pH8.0) で3回洗浄し、標準抗原と標識抗体混合液を 100μl/ウエルずつ添加する。室温で1時間反応した後0.05% Tween20 、0.1M NaCl 、5mM CaCl2 含有Tris−HCl緩衝液(pH8.0) で3回洗浄する。次に、TMB 溶液(Calbiochem)をウエルあたり 100μl 添加し、室温で20分間反応後、2N硫酸を 100μl 添加し反応を停止する。この反応混液のA492をマイクロプレートリーダーを用いて測定し、標準曲線を求める。測定検体は、ヒト血清、脊髄液、血漿、関節液、尿及び唾液などのヒトに由来する体液成分、各種ヒト組織の抽出液、ヒト由来あるいは組換え体など各種培養細胞の細胞抽出液、培養上清などから調製される。それぞれの測定検体は、標準ヒトポリセラーゼ−Iにかえて上記1ステップサンドイッチEIA に供し、標準ヒトポリセラーゼ−Iと同時に反応を進行させる。測定検体から得られたA492の値を得られた標準曲線にあてはめ、測定検体に含まれるヒトポリセラーゼ−Iの量を算出する。
【0128】
〔考察〕
本発明者等は、1個のモザイクタンパク質(mosaic protein)をコードするcDNAをクローニングすることに成功した。該モザイクタンパク質は1個のII型膜貫通領域と、1個のLDL 受容体ドメインと、3個のセリンプロテアーゼ・モジュールとを含んでいる複雑な構成(complex organization)を示すものである。構造的、機能的特徴からは、本複合体タンパク質(complex protein)は膜結合セリンプロテアーゼのTTSPファミリーの新メンバーである。そして本発明者等は、本複合体タンパク質を「ポリセラーゼ−I」と名付けた。
1個の単一のポリペプチド鎖に埋め込まれている数種の触媒ユニットが存在しているということは、大変に異常なものである。これに関連し、本発明者等は、2種のヒトプロテアーゼがさらにあるということは知っている。それらはポリセラーゼ−Iとそのドメイン構築の点でいくらか類似しているところを示してはいるが、しかし、翻訳後のプロセッシングの点で著しく異なっている。その2種のヒトプロテアーゼとは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)とカルボキシペプチダーゼDである。
【0129】
ACE は、レニン−アンジオテンシンシステムにおいてキーとなる機能のゆえに、そして心臓脈管疾患における治療上の標的としての関連性から広く研究されている I型膜メタロプロテアーゼである。本ACE酵素は先祖の遺伝子から複製によって生じたもので2個のメタロプロテアーゼ−ドメインを含んでいる遺伝子によってコードされているものである。該2個のACE ドメインは、酵素学的には活性であるが、異なる触媒定数とパターンのクロライド活性化反応性を示し、さらにいくつかの競合阻害剤と異なった相互作用を示す(Wei, L. et al., J. Biol. Chem., 266: 9002−9008, 1991; Wei, L. et al., J. Biol Chem., 267: 13398−13405, 1992) 。カルボキシペプチダーゼD はI型膜結合酵素であり、該酵素は、3個のメタロプロテアーゼ・ドメインを含んでおり、そのうちの2個は、触媒的に活性があり、かつ補体活性を示すものである。該第一のドメインは pH6.3〜7.5 において至適なもので、該第2番目のドメインは pH5.0〜6.5 において至適性がある。それ故、本カルボキシペプチダーゼD 酵素は広範囲な基質に対して広い活性を示すことになる(Novikova, E.G. et al., J. Biol. Chem.,274: 28887−28892, 1999)。両ケース共に、ACE やカルボキシペプチダーゼD 中に存在するプロテアーゼユニットは、完全多領域(マルチドメイン, multidomain)構造の必須部分にあり、ユニークな翻訳産物から遊離されたものではない。
【0130】
対照的に、ポリセラーゼ−Iは、一連のタンパク質分解プロセッシングを受けて、それにより3個の独立したプロテアーゼユニットの形成が誘導される。これらセリンプロテアーゼ・ドメインのうちの2個はタンパク質分解活性を持ち、セリンプロテアーゼ類をアッセイするのに使用される合成基質に対して、さらにI型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンやフィブロンーゲンのような内因性タンパク質に対して強い加水分解活性を示す。そのうちの第3のセリンプロテアーゼ・ドメインは、決定的に重要な活性部位域内に位置している特別なアミノ酸残基に変化が生じていることから、非プロテアーゼ・ホモログのカテゴリーに属するとされるものである。該不活性プロテアーゼ・ホモログというものは、不活性な触媒ドメインを介して基質を結合することによりドミナントネガテイブとして働き、制御活性を有する分子あるいは阻害活性を有する分子としてその役割を果たすとの推測により、デグラドミックス(degradomics) において益々その興味が持たれつつあるものである。従って、該ポリセラーゼ−Iの第3のセリンプロテアーゼ・モジュールは本プロテアーゼの2個の触媒活性ドメインの活性を、幾分か、制御することができるものであるかもしれない。
【0131】
本明細書で開示のポリセラーゼ−Iのプロセッシングは単一の翻訳産物から独自のプロテアーゼ・ドメインを産生する能力を持っているといったヒトポリプロテアーゼの最初の例を提示しているのである。こういったことは、他の生物では先例がないものであるが、最近類似したことが見出されている。それは、Xenopus laevisからのオボキマーゼ(ovochymase)に関して記載されているものである。すなわち、3個のセリンプロテアーゼ・ドメインを有する別の複合モザイクタンパク質で、それは単一のポリタンパク質産物の翻訳後遊離されるものである(Lindsay L.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96: 11253−11258, 1999)。同様に、Xenopus laevisやBufo japonicus中で同定されたオビダクチン(oviductin) は、2個のセリンプロテアーゼ・ドメインを含んでおり(Lindsay, L.L. et al., Biol. Reprod., 60: 989−995, 1999; Hiyoshi, M, et al., Dev. Biol., 243: 176−184, 2002)、それらの1個は触媒的に不活性で、それはさらに翻訳後タンパク質分解プロセッシングを受けて独自のユニットを生成する。オボキマーゼとオビダクチンの双方は、受精過程に関与するポリプロテアーゼである。しかし、それらは膜貫通ドメインを含有してはいないし、それゆえに、ポリセラーゼ−Iの場合のようには、TTSPファミリーに属すものではない。今日まで、オボキマーゼ様プロテアーゼやオビダクチン様プロテアーゼはヒトでは報告されていない。しかしながら、我々による最近の世界的なヒトデグラドーム(degradome) 分析は、これらの活性の候補遺伝子の存在を示してきている。予備的な結果は推定されるヒトオビダクチンプロテアーゼは1個のセリンプロテアーゼ・ドメインを、そしてオボキマーゼプロテアーゼは3個のセリンプロテアーゼ・ドメインを含有していることを示している。従って、このオボキマーゼプロテアーゼはヒト組織によって産生されるところの第2のポリセラーゼを表しているのかも知れないという可能性への途を開くものである。
【0132】
本明細書において、さらに、ポリセラーゼ−Iの生理学的役割を解明する試みの前段階として、本発明者等は、ヒト組織中でのポリセラーゼ−Iの発現パターンについて調べた。ポリセラーゼ−Iの発現は各種のヒト組織で検出されているが、殆どの場合低レベルである。また、オルターナティブ・スプライシングにより創り出される更なる転写物についての証明もあり、そのことによりポリセラーゼ−Iの多様性を創出する更なる機構が提供せしめられている。ポリセラーゼ−Iプロテアーゼ・ドメインのうちの2個は細胞外マトリックス成分を分解することができるとの発見は、本酵素がその発現が検出されたところの正常及び腫瘍組織中で起こるマトリックス分解プロセスに関与するかも知れないことを示唆している。このように、ポリセラーゼ−Iは膜結合プロテアーゼであるTTSPファミリーに最も近い親類であるマトリプターゼ (matriptase) やマトリプターゼ−2 (matriptase−2) に関して先に示唆されているのと類似した機能上の役割を果たすものであるかもしれない(Egeblad, M. et al., Nature Rev. Cancer, 2: 161−174, 2002; Roesch, K. et al., Hum. Mol. Genet., 11: 477−486, 2002)。ヒトポリセラーゼ−Iのネズミにおける類似遺伝子を同定できれば、本ポリプロテアーゼを欠損する変異マウス作製の可能性という問題を提起しよう。本進行中のプロジェクトにより、ポリセラーゼ−Iが関与している、癌の進行を含めた生理学的・病理学的過程に関する興味ある情報が得られ可能性がある。
【0133】
【発明の効果】
本発明では、新規ポリセラーゼ−Iタンパク質を確認同定できたことから、この情報を利用して該タンパク質を測定することが可能となり、その生理学的活性や生物学的活性などを解明する手段が入手でき、さらに該タンパク質に起因する生理現象、関連疾患の診断、原因究明、リスク予知などに有用である。当該ヒトポリセラーゼ−Iタンパク質に対するモノクローナル抗体を始めとした抗体などの活性物質を作製し、これを用いた当該タンパク質の測定系を開発することが可能で、タンパク質分解現象や組織リモデリングといった生物学的過程(プロセス)、例えば、免疫応答、血管新生、凝固、創傷治癒、再生プロセス、胚着床あるいは胎児発達のような生理学的条件の解明・研究、さらに癌細胞の浸潤、転移、関節炎、リウマチあるいは心臓血管におけるプロセス、血液学的なプロセス及び神経退化のプロセスのような生理学的条件に関連した正常あるいは病的な現象の検出・測定・予知などに役立つ。また、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質の産生を制御する化合物の開発も可能となるし、がんの転移、浸潤の診断などにも有用である。
本発明により、当該ポリセラーゼ−Iポリペプチド若しくはその塩、さらにはそれを基礎とした変異体(ホモログを含む) 、修飾体、誘導体などをデザインして得ることが可能となり、またそれらをコードする核酸、該核酸を有するベクター、該ベクターで形質転換された宿主細胞が提供でき、当該ポリセラーゼ−Iタンパク質に関連した疾患、例えば老化に付随した各種疾患、動脈硬化症、生体内タンパク質の関係した疾患あるいは病気の発症及び/又は進展、及び腫瘍の浸潤又は拡散などの病的な状態あるいは症状の研究に役立つし、医薬品、診断薬、さらには遺伝子診断や遺伝子治療の途を開くと期待できる。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【0134】
<配列表フリーテキスト>
SEQ ID NO: 1, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 2, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 3, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 4, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 5, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 6, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 7, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 8, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 9, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 10, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 11, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
SEQ ID NO: 12, Oligonucleotide to act as a primer for PCR
【0135】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ヒトポリセラーゼ−Iのヌクレオチド配列と推定アミノ酸配列を示す。図1の配列は図2に連続する。アミノ酸配列はヌクレオチド配列の下に一文字アルファベット表記で示した。膜貫通・モチーフは灰色で、またLDLRは黒塗りで示した。3個のセリンプロテアーゼ・ドメインはアンダーラインしてある。活性化部位は矢印で示した。
【図2】図1は、ヒトポリセラーゼ−Iのヌクレオチド配列と推定アミノ酸配列を示す。図2の配列は図1の続きである。アミノ酸配列はヌクレオチド配列の下に一文字アルファベット表記で示した。3個のセリンプロテアーゼ・ドメインはアンダーラインしてある。活性化部位は矢印で示した。
【図3】図3は、ヒト、マウス及びラットポリセラーゼのアミノ酸配列アライメントとドメイン構成を示す。A :同定されたポリセラーゼ−Iの配列(ヒト)及び推定されたポリセラーゼ−Iの配列(マウスとラット)で、異なるドメインが示されており、矢印は活性化部位を示す。B :ポリセラーゼ−Iのドメイン構造を示す。
【図4】図4は、組換えセラーゼ−1及び組換えセラーゼ−2の産生並びにそれらの酵素活性の解析結果を示す。A :pGEX−3X (レーン2)、pGEX−3X−serase−1(レーン3)又はpGEX−3X−serase−2(レーン5)で形質転換されたバクテリア抽出液(5μl)及び精製セラーゼ類(各レーン4、6)をSDS−PAGEで分析した。電気泳動の写真を示す。分子量マーカー類(MWM 、レーン1)のサイズは左に示した。B :蛍光ペプチドを精製セラーゼ類とインキュベートし、その蛍光を360nm(λex)と460nm(λem) で測定した。セラーゼ−1は白棒、セラーゼ−2は黒塗り棒で示す。C :2mM PMSF、2.5mM EDTA若しくは2mM AEBSF 存在又は非存在下での精製セラーゼ類の阻害活性のアッセイ結果を示す。
【図5】図5は、タンパク質基質上でのセラーゼ−1及びセラーゼ−2の酵素活性分析の結果を示す。フィブロネクチン、 I型コラーゲン、ラミニン及びフィブリノーゲンは単独 (C−) あるいは組換えセラーゼ−1及びセラーゼ−2の存在下でインキュベーションを行った。各々の分解フラグメントを示す。阻害活性分析では2mM PMSF存在下でインキュベーションした。それぞれ電気泳動の写真を示す。
【図6】図6は、ヒト組織及び腫瘍細胞株でのポリセラーゼ−I発現分析の結果を示す。ヒト胎児及び成人組織並びに腫瘍細胞株中ポリセラーゼ−I発現のノーザン・ブロット分析を示す。そこに示した組織及び細胞ラインの約 2μg ポリアデニール化RNA をポリセラーゼ−I全長cDNAの5’−プローブとハイブリダイズさせ分析に供した。RNA サイズマーカーの位置が示してある。フィルターはヒトアクチン・プローブとハイブリダイズさせ、異なる組織間でのRNA装填の差を確認した。それぞれ電気泳動の写真を示す。
【図7】図7は、ポリセラーゼ−Iの翻訳後のプロセッシングの解析の結果を示す。SW480 細胞及びHeLa細胞の抽出液を用いて、そこに示した抗セラーゼ抗体で標識したウエスタン・ブロットを示す。電気泳動の写真である。タンパク質抽出液は電気泳動前に2−メルカプトエタノール処理した。各免疫反応性バンドの位置は右側に図示、分子量マーカーはブロットの左側に表示した。
【図8】図8は、ポリセラーゼ−Iの翻訳後のプロセッシングの解析の結果を示す。トランスフェクトされたCOS−7細胞の膜リッチ画分の抗FLAGあるいは抗HA抗体で標識したウエスタン・ブロットを示す。電気泳動の写真である。タンパク質抽出液は電気泳動前に2−メルカプトエタノール処理した。各免疫反応性バンドの位置は右側に図示、分子量マーカーはブロットの左側に表示した。P は全長cDNAポリセラーゼ−Iでトランスフェクトされた細胞を示す。
Claims (19)
- (i) ポリセラーゼ−Iタンパク質、
(ii) (a) セラーゼ−1タンパク質、(b) セラーゼ−2タンパク質、(c) セラーゼ−3タンパク質、(d) セラーゼ−1及びセラーゼ−2を共に含有しているタンパク質、(e) セラーゼ−1、セラーゼ−2及びセラーゼ−3を共に含有しているタンパク質、及び(f) セラーゼ−2及びセラーゼ−3を共に含有しているタンパク質から成る群から選ばれたタンパク質、
(iii) (A) 配列番号:13 又は図1〜2のヌクレオチド配列及び(B) その多形型配列、オールターナティブスプライシング産物、変異体、ホモログ、誘導体配列あるいは部分配列であって且つタンパク分解活性を持つ酵素をコードするかあるいは細胞の変化、ホメオスタシスあるいは血管新生のプロセスに関与するもの、
から成る群から選ばれたヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列の全部あるいはその一部を有するポリペプチド、
(iv) 配列番号:14 又は図1〜2のアミノ酸配列、配列番号:15 のアミノ酸配列及び配列番号:16 のアミノ酸配列から成る群から選ばれた配列からなるポリペプチドあるいはその一部の配列からなるポリペプチド、
(v) (a)配列番号:14 のGlu190〜Glu433のポリペプチド、(b) 配列番号:14 のGlu491〜Glu733のポリペプチド、(c) 配列番号:14 のAsp816〜Gln1055のポリペプチド、(d) 配列番号:14 のGlu190〜Glu433の配列及びGlu491〜Glu733の配列を共に有するポリペプチド、(e) 配列番号:14 のGlu190〜Glu433の配列、Glu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するポリペプチド、(f) 配列番号:14 のGlu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するポリペプチドから成る群から選ばれたポリペプチドあるいはその一部の配列からなるポリペプチド、
(vi) 前記(i) 又は(ii)のタンパク質並びに(iii) 〜(v) のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列のいずれか一において、1個以上のアミノ酸あるいは1若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ(i)又は(ii)のタンパク質の示す生物学的活性を有するか、あるいは(iii)〜(v)のいずれかのポリペプチドの示す生物学的活性を有するポリペプチド、及び
(vii) 配列番号:14 又は図1〜2のアミノ酸配列、配列番号:15 のアミノ酸配列及び配列番号:16 のアミノ酸配列から成る群から選ばれた配列に存在する各ドメインのいずれか一に対し少なくとも50% 以上、あるいは60% 以上、又は少なくとも70% より高い相同性を有しているもの、あるいはそれに対し、80% あるいは90% 以上の相同アミノ酸配列を有するポリペプチド
から成る群から選ばれたものであることを特徴とするタンパク質若しくはポリペプチド又はその塩、あるいは
(viii) 前記 (i)〜(vii)のいずれか一記載のタンパク質若しくはポリペプチドの部分ペプチド又はその塩。 - (i) ポリセラーゼ−Iタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(ii) (a) セラーゼ−1タンパク質、(b) セラーゼ−2タンパク質、(c) セラーゼ−3タンパク質、(d) セラーゼ−1及びセラーゼ−2を共に含有しているタンパク質、(e) セラーゼ−1、セラーゼ−2及びセラーゼ−3を共に含有しているタンパク質、及び(f) セラーゼ−2及びセラーゼ−3を共に含有しているタンパク質から成る群から選ばれたタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(iii) 配列番号:14 又は図1〜2のアミノ酸配列、配列番号:15 のアミノ酸配列及び配列番号:16 のアミノ酸配列から成る群から選ばれた配列からなるポリペプチドあるいはその一部の配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(iv) (A) 配列番号:13 又は図1〜2のヌクレオチド配列及び (B)その多形型配列、オールターナティブスプライシング産物、変異体、ホモログ、誘導体配列あるいは部分配列であって且つタンパク分解活性を持つ酵素をコードするかあるいは細胞の変化、ホメオスタシスあるいは血管新生のプロセスに関与するもの、
から成る群から選ばれた配列からなるポリヌクレオチド、
(v) (a) 配列番号:14 のGlu190〜Glu433のポリペプチド、(b) 配列番号:14 のGlu491〜Glu733のポリペプチド、(c) 配列番号:14 のAsp816〜Gln1055のポリペプチド、(d) 配列番号:14 のGlu190〜Glu433の配列及びGlu491〜Glu733の配列を共に有するポリペプチド、(e) 配列番号:14 のGlu190〜Glu433の配列、Glu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するポリペプチド及び(f) 配列番号:14 のGlu491〜Glu733の配列及びAsp816〜Gln1055の配列を共に有するポリペプチドから成る群から選ばれたポリペプチドあるいはその一部の配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(vi) (i) 又は(ii)のタンパク質のアミノ酸配列あるいは(ii)のアミノ酸配列又は(v) のポリペプチドにおけるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸あるいは1若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ(i) 又は(ii)のタンパク質の示す生物学的活性を有するか、あるいは(iii)〜(v)のいずれかのポリペプチドの示す生物学的活性又は(iv)で言及した生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(vii) 配列番号:13 又は図1〜2からなるDNA から選択された10個又は15個以上の連続した塩基配列を有するヌクレオチド配列と相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ(i)又は(ii)のタンパク質の示す生物学的活性を有するか、あるいは(iii)〜(v)のいずれかのポリペプチドの示す生物学的活性又は(iv)で言及した生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び
(viii) 配列番号:13 又は図1〜2の配列のCDS に対して少なくとも 50%以上、さらには60% 以上、好ましくは70% 以上、さらに好ましくは80% 以上、あるいは90% 以上の相同性を有し且つ(i)又は(ii)のタンパク質の示す生物学的活性を有するか、あるいは(iii)〜(v)のいずれかのポリペプチドの示す生物学的活性又は(iv)で言及した生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
から成る群から選ばれたものであることを特徴とするポリヌクレオチド。 - 請求項2記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とする組換えベクター。
- 請求項2記載のポリヌクレオチド又は請求項3記載のベクターで宿主細胞を形質転換されて得られたことを特徴とする形質転換された宿主細胞。
- 請求項4記載の宿主細胞を培養条件下に維持して、請求項1記載のタンパク質又はポリペプチドを発現せしめ、得られた発現ポリペプチドを分離することを特徴とする請求項1記載のタンパク質又はポリペプチドの製造方法。
- 請求項1記載の(i) 〜(vi)のいずれか一記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩に特異的に結合することを特徴とする抗体。
- 抗体が、モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項6記載の抗体。
- (i) 請求項6記載の抗体又は(ii)請求項1記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩を含むことを特徴とする請求項1記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩の免疫学的測定試薬。
- 請求項6記載の抗体を測定試薬として用いることを特徴とする請求項1記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩の免疫学的測定方法。
- (1) 請求項1記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩あるいはその一部のペプチドまたはその塩、(2) 請求項6記載の抗体、(3) 請求項2記載のポリヌクレオチド、(4) 請求項3記載の組換えベクター及び(5) 請求項4記載の形質転換された細胞から成る群から選ばれたものを含むことを特徴とする組成物。
- 請求項1記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩、その一部のペプチドまたはそれらの塩;あるいは請求項2記載のポリヌクレオチド;あるいは請求項6記載の抗体を含有していることを特徴とする医薬。
- 請求項1記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩、その一部のペプチドまたはそれらの塩の、生物学的活性を促進または阻害する化合物またはその塩を含有していることを特徴とする医薬。
- 請求項1記載のタンパク質若しくはポリペプチドまたはその塩、その一部のペプチドまたはそれらの塩の、生物学的活性を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法及びスクリーニングキット。
- 組換えあるいは合成タンパク質又はポリペプチド生産のための、
配列番号:13及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。 - 抗体作製のための、
配列番号:13及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。 - ポリセラーゼ−I活性, セラーゼ−1活性, セラーゼ−2活性, セラーゼ−3、ポリセラーゼ−I TM 及びポリセラーゼ−I LDLR 活性から成る群から選ばれた活性に対する阻害剤をデザインするための、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。 - ポリセラーゼ−Iに関する活性を持っているタンパク質及び/又は該ポリセラーゼ−Iをコードする遺伝子を検出するためのシステムを構築するための、
配列番号:13及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。 - ポリセラーゼ−Iに関して及び/又は該ポリセラーゼ−Iをコードする遺伝子に関してメディエートされる病気発生プロセスを処置するための活性化合物を製造するための、
配列番号:13 及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用。 - ポリセラーゼ−Iタンパク質又はそれをコードする遺伝子配列を同定する方法であって、
(i) オリゴヌクレオチドプライマーを使用する核酸のPCRによる増幅、又は
(ii) cDNA のライブラリーとハイブリダイズするプローブの使用
を含み、
配列番号:13及び14並びに図1及び2の配列、配列番号:15の配列並びに配列番号:16の配列から成る群から選ばれた配列の全部あるいはその一部の使用を含むことを特徴とする方法。
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CN110225973A (zh) * | 2016-10-31 | 2019-09-10 | 苏黎世大学 | 蛋白质筛选和检测方法 |
CN115991757A (zh) * | 2022-07-15 | 2023-04-21 | 南宁师范大学 | 信号增强型检测汞离子的荧光蛋白探针及其制备与应用 |
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2003
- 2003-05-01 JP JP2003126187A patent/JP2004329040A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN110225973A (zh) * | 2016-10-31 | 2019-09-10 | 苏黎世大学 | 蛋白质筛选和检测方法 |
CN110225973B (zh) * | 2016-10-31 | 2024-02-13 | 苏黎世大学 | 蛋白质筛选和检测方法 |
CN115991757A (zh) * | 2022-07-15 | 2023-04-21 | 南宁师范大学 | 信号增强型检测汞离子的荧光蛋白探针及其制备与应用 |
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