JP2004328387A - 弾性表面波装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】狭帯域化を図って中間周波数高めた場合であっても、挿入損失の悪化が生じ難い、横結合型2重モード共振子型弾性表面波フィルタを2段縦続接続した構造を有する弾性表面波装置を提供する。
【解決手段】圧電基板2上に、縦続接続された第1,第2の横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタ3,4が構成されており、各横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタ3,4は、IDT電極と、IDT電極が設けられている領域の表面波伝搬方向両側に設けられたグレーティング反射器電極とを有する2つの1ポート型弾性表面波型共振子31,32,41,42が表面波伝搬方向と直交する方向に近接して配置されており、弾性表面波の波長λRとしたときに、電極の規格化膜厚h/λRが0.002以上、0.028の範囲にあり、結合長Gが1.43λR以上1.55λR以下とされている、弾性表面波装置1。
【選択図】 図1
【解決手段】圧電基板2上に、縦続接続された第1,第2の横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタ3,4が構成されており、各横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタ3,4は、IDT電極と、IDT電極が設けられている領域の表面波伝搬方向両側に設けられたグレーティング反射器電極とを有する2つの1ポート型弾性表面波型共振子31,32,41,42が表面波伝搬方向と直交する方向に近接して配置されており、弾性表面波の波長λRとしたときに、電極の規格化膜厚h/λRが0.002以上、0.028の範囲にあり、結合長Gが1.43λR以上1.55λR以下とされている、弾性表面波装置1。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、第1,第2の横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタが2段縦続接続されている構造を有する弾性表面波装置に関し、例えば、AMPS/CDMA800MHz/PCS方式のトリプルバンド携帯電話機の第1中間周波数段における帯域フィルタとして好適に用いられる弾性表面波装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
米国で用いられているAMPS/CDMA800MHz/PCS方式のトリプルバンド携帯電話機では、AMPS部/CDMA部の第1中間周波数段の周波数は、従来、85.38MHzであり、PCS部では210.38MHzであった。この場合、それぞれの第1中間周波数段用フィルタでは、異なる特性が要求されていたため、合計3個のフィルタが必要であった。
【0003】
しかしながら、近年、第1中間周波数段の周波数を183.60MHzに統一し、CDMA部及びPCS部の第1中間周波数段のフィルタを共通化することにより、共通化された1個のフィルタで、AMPS部のフィルタと合わせて、2個のフィルタで回路が構成されてきている。それによって、部品点数の削減によりコストダウンを図ることができ、かつ携帯電話機の小型化を図ることができる。
【0004】
ところで、AMPS部の第1中間周波数段用フィルタでは、従来から弾性表面波フィルタと水晶フィルタとが用いられてきた。弾性表面波フィルタは、水晶フィルタに比べて大きいものの、低価格であるという利点を有する。弾性表面波フィルタでは、水晶基板などの圧電性を有する基板の表面に、フォトリソグラフィーによりIDT電極が形成される。IDT電極の電極指の周期は、表面波の波長λに等しい。表面波の波長λは、伝搬速度Vと、所望とする周波数fとにより、λ=V/fにより求められる。
【0005】
また、弾性表面波フィルタは、大別すると、トランスバーサル型弾性表面波フィルタと、共振子型弾性表面波フィルタとに分類される。AMPS部の第1中間周波数段に用いられるフィルタは、この内、共振子型弾性表面波フィルタであり、特に2個の弾性表面波共振子を結合することにより構成された横結合型の共振子型弾性表面波フィルタである。
【0006】
従来の横結合型共振子型弾性表面波フィルタの一例を図15に示す。横結合型共振子型弾性表面波フィルタ101では、1ポート型SAW共振子102,103が表面波伝搬方向と直交する方向、すなわち横方向に近接配置されている。各1ポート型SAW共振子102,103は、圧電基板104上に、IDT電極102a、グレーティング反射器電極102b,102c、及びIDT電極103a及びグレーティング反射器電極103b,103cを形成することにより構成されている。横結合型共振子型弾性表面波フィルタ101では、入力端子105に入力信号を加えられると、図16の(a)及び(b)において模式的に示す定在波が励起される。なお、図16(a)及び(b)の横軸Aは、IDT電極の電極指の延びる方向に相当し、図16(a)では、横0次モードの定在波Bが、図16(b)では、横1次モードの定在波Cが示されている。
【0007】
このように横方向に結合した分布を有する定在波B,Cの共振モードを用いてフィルタ特性が得られる。パッケージの寸法や挿入損失との兼ね合いにより、図15に示した横結合型弾性表面波フィルタ101を2段縦続接続した構造を用いるのが一般的である。
【0008】
横結合型弾性表面波フィルタの通過帯域幅は、横0次モードと、横1次モードのモード間周波数間隔Δfによって決定される。モード間周波数間隔Δfは、IDT電極により励振される表面波が横方向に結合する程度によって決定される。そして、横方向の結合の程度は、図17に示すように、横結合型弾性表面波フィルタを多数の導波路と見なしたときの各導波路領域の幅と、弾性表面波の伝搬速度によって支配される。なお、弾性表面波の伝搬速度は、IDT電極の膜厚及びデューティ比によっても変化する。従って、横結合型弾性表面波フィルタの設計に際しては、電極膜厚やデューティ比を考慮しつつ、各導波路の幅、特に電極指交叉幅E1,E2、結合長Gの設定が重要となる。
【0009】
他方、下記の特許文献1には、上記のような横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタにおいて、IDT電極のデューティを0.68以上とすれば、減衰量を改善し得る旨が開示されている。
【0010】
また、下記の特許文献2〜4では、弾性表面波共振子のIDT電極の膜厚やデューティ比の値を特定の範囲とすることにより、Q値を制御したり、容量比γを低めたりし得ることが記載されている。
【0011】
【特許文献1】
特開平7−30363号公報
【特許文献2】
特開昭57−170615号公報
【特許文献3】
特開昭58−6618号公報
【特許文献4】
特開昭59−135917号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述したAMPS/CDMA800MHz/PCS方式の携帯電話機のAMPS部の183.60MHzの第1中間周波数段用帯域フィルタでは、隣接チャンネル周波数(183.60MHz±60kZz)における減衰量は10dB程度であった。一般に、中間周波数が高くなるにつれて、フィルタの帯域幅は広くなる。従って、85.3MHzから、183.60MHzに中間周波数を高めるように、弾性表面波フィルタの設計を変更しただけでは、183.60MHz±60kHzにおいて10dB程度の減衰量を得ることはできない。よって、中間周波数が183.60MHzのフィルタでは、帯域をより一層狭めなければならない。
【0013】
横結合型の弾性表面波フィルタにおいて、狭帯域化を図るには、電極指交叉幅E1,E2を大きくする方法、あるいは結合長Gを大きくする方法が用いられる。しかしながら、狭帯域化を図ると、横結合共振子型弾性表面波フィルタのQが低下し、挿入損失が悪化するという問題があった。特に、中心周波数が183.60MHzのフィルタを構成した場合には、帯域がかなり狭くなるため、挿入損失の悪化量はかなり大きくなると予想される。
【0014】
他方、挿入損失については、IDTの電極膜厚やデューティ比も影響する。水晶基板のような電気機械結合係数や音響アドミタンスが小さい圧電基板を用いた弾性表面波フィルタでは、小型化を図る場合に、電気的特性の劣化を防ぐために、電極膜厚を厚くしたり、デューティ比を大きくしたりするのが普通である。これは、IDT電極やグレーティング反射器電極を構成する電極指1本当りの反射率を高め、それによって表面波の閉じ込め量が劣化するのを防止するためである。但し、電極膜厚を厚くし過ぎたり、デューティ比を大きくしたりし過ぎると、表面波の伝搬損失が大きくなり、逆に挿入損失が大きくなるという問題があった。
【0015】
上述した特許文献1に記載の横結合型弾性表面波フィルタでは、IDT電極のデューティ比を0.68以上とすることにより、減衰量の改善を図ることが示されているものの、上記のような狭帯域化を図った場合の挿入損失の悪化について何ら言及されていない。
【0016】
また、特許文献1では、IDT電極のデューティ比を0.68以上とすることにより、帯域外減衰量を改善し得る旨が示されているだけであり、電極膜厚と結合長などの関係については言及されていない。
【0017】
他方、特許文献2〜4では、弾性表面波共振子のIDT電極膜厚やデューティ比について言及されているだけであり、横結合型共振子型弾性表面波フィルタにおける上記問題点は何ら示されていない。
【0018】
すなわち、AMPS部の第1中間周波数段用の183.60MHz帯フィルタのような超狭帯域の弾性表面波フィルタにおける電極設計条件、IDT電極の膜厚、及びデューティ比について言及されている先行技術はこれまで存在しなかった。
【0019】
本発明の目的は、帯域幅が非常に狭い狭帯域の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ装置において、挿入損失の低減を図ることを可能とする構造を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る弾性表面波装置は、水晶基板と、前記水晶基板に構成されており、縦続接続された第1,第2の横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタとを備え、前記各横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタが、IDT電極と、IDT電極が設けられている領域の表面波伝搬方向両側に設けられた第1,第2のグレーティング反射器電極とを有する2つの1ポート型弾性表面波共振子が表面波伝搬方向と直交する方向に近接して配置されている構造を有し、前記IDT電極及びグレーティング反射器電極がAlまたはAlを主成分とする電極層を有し、前記弾性表面波の波長をλRとしたときに、波長λRで規格化された電極膜厚h/λRが0.002≦h/λR≦0.028の範囲にあり、かつ結合長Gが1.43λR≦G≦1.55λRとされていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る弾性表面波装置のある特定の局面では、前記第1,第2の横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタにおける電極指交叉幅が8λR以上とされている。
【0022】
本発明に係る弾性表面波装置のさらに他の特定の局面では、前記IDT電極及びグレーティング反射器電極のデューティ比Dが、0.68≦D≦0.72の範囲とされている。
【0023】
本発明に係る弾性表面波装置のさらに別の特定の局面では、前記グレーティング反射器電極の電極指の本数が154本以上である。
本発明に係る弾性表面波装置のさらに他の特定の局面では、前記弾性表面波装置の5dB帯域幅を中心周波数で除算した値が0.0335〜0.0366の範囲内とされている。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る弾性表面波装置の電極構造を示す模式的平面図である。弾性表面波装置1は、圧電基板2上に図1に示した電極構造を形成することにより構成されている。圧電基板2上において、第1,第2の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ3,4が構成されている。第1,第2の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ3,4は縦続接続されており、第1の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ3に入力端子5が、第2の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ4に出力端子6が接続されている。
【0026】
第1の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ3は、1ポート型弾性表面波共振子31と、1ポート型弾性表面波共振子32とを表面波伝搬方向と直交する方向、すなわち横方向において近接配置することにより構成されている。同様に、第2の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ4は、1ポート型弾性表面波共振子41と、1ポート型弾性表面波共振子42とを表面波伝搬方向と直交する方向に近接配置することにより構成されている。
【0027】
各弾性表面波共振子31,32,41,42は、それぞれ、IDT電極31a,32a,41a,42aと、グレーティング反射器電極31b,31c,32b,32c,41b,41c,42b,42cとを有する。グレーティング反射器電極31b,31cは、IDT電極31aが設けられている領域の表面波伝搬方向両側に配置されている。同様に、グレーティング反射器電極32b,32c,41b,41c及び42b,42cも、IDT電極32a,41a,42aが設けられている各領域の表面波伝搬方向両側に配置されている。
【0028】
IDT電極31a,32a,41a,42aは、互いに間挿し合う数本の電極指を有する。グレーティング反射器電極32b,32c,41b,41c,42b,42cは、互いに短絡された複数本の電極指を有する。
【0029】
第1の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ3では、電極指交叉幅E1,E2は等しくされている。また、結合長Gは、図示のように、1ポート型弾性表面波共振子31,32間の領域の表面波伝搬方向と直交する方向の寸法をいうものとする。
【0030】
AMPS部の第1中間周波数段用の中間周波数が183.60MHzの狭帯域の弾性表面波フィルタを構成するために、弾性表面波装置1と同様の電極構造を有し、但し、電極膜厚h/λRを種々異ならせた弾性表面波装置を作製した。なお、弾性表面波装置において、圧電基板2としては、矩形板状の水晶基板を用い、IDT電極31a,32a,41a,42a及びグレーティング反射器電極31b,31c〜42b,42cを構成する電極材料として、Alを主成分とする合金を用いた。また、励振される表面波はレイリー波である。
【0031】
また、IDT電極31a,32a,41a,42aにおける電極指交叉幅は、全て11λR、電極指の対数は115対とした。グレーティング反射器電極31b,31c〜41b,42cにおいて、電極指の本数は、それぞれ174本とした。さらに、デューティ比、すなわち電極指の幅の電極指と電極指間ギャップの合計に対する割合は0.7とした。
【0032】
なお、電極指交叉幅11λRとしたのは、以下の理由による。すなわち、上記弾性表面波装置1において、電極指交叉幅を種々異ならせ、挿入損失の変化を調べたところ、図2に示す結果が得られた。なお、ここでは、電極膜厚h/λRは0.032とした。図2から明らかなように、電極指交叉幅を8λR以上とすることにより、挿入損失を6dB以下とし得ることがわかる。これは、電極指交叉幅を拡げることにより、表面波の横方向の閉じ込めが良好に行われているためである。よって、電極指交叉幅を8λR以上とすることにより、挿入損失を改善することができる。なお、本明細書における挿入損失の値は、0dBを基準としたときの最小損失点における減衰量を意味するものとする。
【0033】
図2から明らかなように、交叉幅を8λR以上とすることが好ましく、また交叉幅を大きくするほど挿入損失の低減を図り得ることに鑑み、上記のように電極指交叉幅を11λRとした。なお、11λRは、5.0×7.0mmのセラミックパッケージに入る最大チップサイズを採用した圧電基板を用いた場合の電極指交叉幅のほぼ最大値である。交叉幅は大きい程好ましいが、水晶基板の寸法により制限される。すなわち、小型化を図るには、交叉幅の最大値は水晶基板の寸法に応じた最大限の値となる。
【0034】
次に、上記のように、電極膜厚を種々異ならせた場合の電極膜厚と挿入損失の関係を図3に示す。なお、ここでは、電極の規格化膜厚を、h/λR=0.02、0.022、0.024、0.026、0.028、0.030及び0.032と変化させた。下記の表1に、h/λRと、電極の膜厚の絶対値を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
図3は、種々の電極膜厚弾性表面波装置における電極膜厚h/λRと挿入損失の関係を示す図である。
図3から明らかなように、h/λRが約0.024において、挿入損失が最も小さくなることがわかる。電極膜厚h/λRが0.024より厚い場合には、伝搬損失が大きくなることにより、挿入損失が悪化し、逆に、0.024よりも薄い場合には、表面波の閉じ込めが弱くなり、エネルギーの漏洩が増大するため、挿入損失が悪化していることがわかる。従って、最も好ましくは、電極膜厚をh/λR=0.024とすることにより、挿入損失を効果的に低減することができる。また、電極膜厚h/λRは0.020〜0.028の範囲であれば、挿入損失が5.5dB以下となり、必要上問題のない良好な特性の得られることがわかる。なお、図4〜6は、電極膜厚h/λRが0.020、0.024、0.026及び0.028の場合の弾性表面波装置1の伝送特性を示す図である。
【0037】
また、図4〜6における内側の特性曲線は、縦軸の右側の拡大スケールで示した伝送特性を示す。
上記結果を考慮し、電極膜厚h/λRを約0.024とし、結合長Gを種々異ならせた弾性表面波装置を作製し、帯域幅について検討した。使用した圧電基板、電極指交叉幅、電極指の対数及び反射器電極の電極指の本数及びデューティ比は上述した電極膜厚を異ならせた実験と同一とした。
【0038】
なお、目標特性は、中間周波数が183.60MHzであり、5dB帯域幅が中間周波数±11kHz以上であり、中間周波数±60kHzにおける減衰量は11dB以上である。
【0039】
上記目標特性である5dB帯域幅、11dB帯域幅、並びに5dB帯域幅を183.60MHzで除算した値を下記の表2に示す。
また、図7に、上記のように結合長Gが1.43λRから1.55λRの間で異ならせた弾性表面波装置1の挿入損失を示す。
【0040】
使用温度範囲における周波数の温度特性や基板実装のためのリフローハンダ付けに際しての周波数シフト量などを考慮すると、5dB帯域幅は約60〜67kHz、11dB帯域幅は約76〜84kHzであることが目標特性に対して適切である。
【0041】
【表2】
【0042】
表2の結果から、5dB帯域幅、11dB帯域幅共に結合長1.43λRが結合長の下限となる。他方、挿入損失の兼ね合いを考慮すると、結合長Gは1.55λR以下とすることが好ましいことがわかる。すなわち、結合長が1.43λR〜1.55λRの範囲であれば、図7からも明らかなように、挿入損失も5.5dB以下とさほど大きくない。
【0043】
なお、上記各実験例では、デューティ比は0.7とした。そこで、次にデューティ比を変化させて、他は同じ条件とし、種々の弾性表面波装置を作製し、ウェハー段階における中心周波数を測定した。結果を図8に示す。なお、図8の中心周波数は、ウェハー上の弾性表面波装置の中心周波数の平均値である。
【0044】
図8から明らかなように、デューティ比が0.7において、中心周波数が極小になる2次曲線が得られることがわかる。従って、デューティ比を0.7とすることが最も好ましく、また図8から、デューティ比が0.68以上、0.72以下の範囲であれば、周波数平均値のばらつきが約10kHz以下に制限され得ることがわかる。従って、デューティ比を0.68以上、0.72以下とすることにより、周波数ずれによる良品率の悪化を抑制することができ、かつドライエッチングによるウェハー単位の周波数調整に必要な工程を少なくし得ることがわかる。
【0045】
デューティ比が0.68以上、0.72以下の場合の上記弾性表面波装置の挿入損失の変化を図9に示す。また、デューティ比が0.68、0.70及び0.72のときの弾性表面波装置の伝送特性を図10〜図12に示す。
【0046】
図10〜図12から明らかなように、デューティ比を0.68以上、0.72以下とすることにより良好な共振特性が得られることがわかる。
上記各実験例から明らかなように、電極指交叉幅を8λR以上、電極膜厚h/λRを0.02〜0.028、並びにデューティ比を0.68〜0.72の範囲にすることにより、AMPS/CDMA 800MHz/PCS方式のトリプルバンド携帯電話機に用いられるAMPS部の第1中間周波数段用フィルタとして、伝送特性が良好であり、安価な弾性表面波装置を提供し得ることがわかる。
【0047】
次に、グレーティング反射器電極の電極指の本数を変化させた場合の実験例につき、説明する。
結合長Gが1.51λRである弾性表面波装置1において、グレーティング反射器電極の本数を減らした場合の挿入損失の影響を調べた。図13は、その結果を示し、1段の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ当り、左右のグレーティング反射器電極の本数を、10本ずつ、20本ずつ、30本ずつ及び50本ずつ減らした場合の挿入損失の変化を示す。また、左右20本ずつ電極指を減らした場合の伝送特性を図14に示す。
【0048】
図13から明らかなように、左右20本ずつの電極指をグレーティング反射器電極において減らした場合の伝送特性において挿入損失の悪化量は0.5dB以内に納まっており、実用上問題のないことがわかる。
【0049】
よって、グレーティング反射器電極の本数を154本以上とすることにより、特性の悪化を招くことなく、弾性表面波装置1のコストを低減することができる。すなわち、フィルタ1段当り左右20本ずつ反射器電極の電極指の本数を削減できた場合、表面波の波長が約17μmであるため、17×20=340μmだけ弾性表面波装置1の長手方向寸法を小さくすることができる。弾性表面波装置の小型化を図ることができるので、ウェハー1枚当りの弾性表面波装置の個数を増加させることができて、それによって弾性表面波装置1のコストの低減を図ることができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明に係る弾性表面波装置は、第1,第2の横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタが縦続接続されている構成において、電極膜厚h/λRが0.002以上、0.028以下の範囲にあり、かつ結合長Gが1.43λR以上、1.55λRとされているため、狭帯域化を図った場合であっても、挿入損失を著しく抑制することができ、それによって狭帯域かつ低損失の弾性表面波装置を提供することができる。
【0051】
よって、例えばAMPS/CDMA 800MHz/PCS方式のトリプルモード携帯電話機のAMPSの第1中間周波数段のフィルタとして最適な弾性表面波装置を提供することができる。
【0052】
また、電極指交叉幅が8λR以上であれば、挿入損失をより一層効果的に低減することができる。
また、デューティ比が0.68〜0.72の範囲にある場合には、挿入損失の低減を図りつつ、中間周波数のばらつきを小さくすることができ、弾性表面波装置のコストの低減を果たすことも可能となる。
【0053】
グレーティング反射器電極の本数は、154本以上の場合には、挿入損失の悪化は0.5dB以内に納まっており、実用上問題はない。
弾性表面波装置の5dB帯域幅を中間周波数で除算した値が0.0335〜0.0366の範囲にある場合は、AMPS/CDMA 800MHz/PCS方式のトリプルモード携帯電話機のAMPS部第1中間周波数段のフィルタとして最適な弾性表面波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る弾性表面波装置の電極構造を示す模式的平面図。
【図2】電極指交叉幅を変化させた場合の挿入損失の変化を示す図。
【図3】電極の規格化膜厚h/λRを変化させた場合の挿入損失の変化示す図。
【図4】電極膜厚が0.02の場合の伝送特性を示す図。
【図5】電極膜厚が0.024の場合の伝送特性を示す図。
【図6】電極膜厚が0.028の場合の伝送特性を示す図。
【図7】電極膜厚h/λRが0.024である弾性表面波装置において結合長Gを変化させた場合の挿入損失の変化を示す図。
【図8】電極膜厚h/λR=0.024、結合長G=1.51λRの弾性表面波装置において、デューティ比を変化させた場合のウェハー上における中心周波数平均値の変化を示す図。
【図9】電極膜厚h/λR=0.024かつ結合長G=1.51λRの弾性表面波装置におけるデューティ比を変化させた場合の挿入損失の変化を示す図。
【図10】電極膜厚h/λR=0.024かつ結合長G=1.51λRの弾性表面波装置において、デューティ比が0.68の場合の伝送特性を示す図。
【図11】電極膜厚h/λR=0.024かつ結合長G=1.51λRの弾性表面波装置において、デューティ比が0.70の場合の伝送特性を示す図。
【図12】電極膜厚h/λR=0.024かつ結合長G=1.51λRの弾性表面波装置において、デューティ比が0.72の場合の伝送特性を示す図。
【図13】反射器電極の電極指を削減した数と、挿入損失変化量との関係を示す図。
【図14】反射器電極の電極指を20本削減する前及び削減した後の弾性表面波装置の伝送特性を示す図。
【図15】従来の横結合型弾性表面波フィルタの一例を示す模式的平面図。
【図16】図15に示した横結合型弾性表面波フィルタにおいて生じる定在波を説明するための各模式図。
【図17】横結合型弾性表面波フィルタにおける交叉幅及び結合長を説明するための模式的平面図。
【符号の説明】
1…弾性表面波装置
2…圧電基板
3,4…第1,第2の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ
5…入力端子
6…出力端子
31,32,41,42…1ポート型弾性表面波共振子
31a,32a,41a,42a…IDT電極
31b,31c,32b,32c,41b,41c,42b,42c…グレーティング反射器電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、第1,第2の横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタが2段縦続接続されている構造を有する弾性表面波装置に関し、例えば、AMPS/CDMA800MHz/PCS方式のトリプルバンド携帯電話機の第1中間周波数段における帯域フィルタとして好適に用いられる弾性表面波装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
米国で用いられているAMPS/CDMA800MHz/PCS方式のトリプルバンド携帯電話機では、AMPS部/CDMA部の第1中間周波数段の周波数は、従来、85.38MHzであり、PCS部では210.38MHzであった。この場合、それぞれの第1中間周波数段用フィルタでは、異なる特性が要求されていたため、合計3個のフィルタが必要であった。
【0003】
しかしながら、近年、第1中間周波数段の周波数を183.60MHzに統一し、CDMA部及びPCS部の第1中間周波数段のフィルタを共通化することにより、共通化された1個のフィルタで、AMPS部のフィルタと合わせて、2個のフィルタで回路が構成されてきている。それによって、部品点数の削減によりコストダウンを図ることができ、かつ携帯電話機の小型化を図ることができる。
【0004】
ところで、AMPS部の第1中間周波数段用フィルタでは、従来から弾性表面波フィルタと水晶フィルタとが用いられてきた。弾性表面波フィルタは、水晶フィルタに比べて大きいものの、低価格であるという利点を有する。弾性表面波フィルタでは、水晶基板などの圧電性を有する基板の表面に、フォトリソグラフィーによりIDT電極が形成される。IDT電極の電極指の周期は、表面波の波長λに等しい。表面波の波長λは、伝搬速度Vと、所望とする周波数fとにより、λ=V/fにより求められる。
【0005】
また、弾性表面波フィルタは、大別すると、トランスバーサル型弾性表面波フィルタと、共振子型弾性表面波フィルタとに分類される。AMPS部の第1中間周波数段に用いられるフィルタは、この内、共振子型弾性表面波フィルタであり、特に2個の弾性表面波共振子を結合することにより構成された横結合型の共振子型弾性表面波フィルタである。
【0006】
従来の横結合型共振子型弾性表面波フィルタの一例を図15に示す。横結合型共振子型弾性表面波フィルタ101では、1ポート型SAW共振子102,103が表面波伝搬方向と直交する方向、すなわち横方向に近接配置されている。各1ポート型SAW共振子102,103は、圧電基板104上に、IDT電極102a、グレーティング反射器電極102b,102c、及びIDT電極103a及びグレーティング反射器電極103b,103cを形成することにより構成されている。横結合型共振子型弾性表面波フィルタ101では、入力端子105に入力信号を加えられると、図16の(a)及び(b)において模式的に示す定在波が励起される。なお、図16(a)及び(b)の横軸Aは、IDT電極の電極指の延びる方向に相当し、図16(a)では、横0次モードの定在波Bが、図16(b)では、横1次モードの定在波Cが示されている。
【0007】
このように横方向に結合した分布を有する定在波B,Cの共振モードを用いてフィルタ特性が得られる。パッケージの寸法や挿入損失との兼ね合いにより、図15に示した横結合型弾性表面波フィルタ101を2段縦続接続した構造を用いるのが一般的である。
【0008】
横結合型弾性表面波フィルタの通過帯域幅は、横0次モードと、横1次モードのモード間周波数間隔Δfによって決定される。モード間周波数間隔Δfは、IDT電極により励振される表面波が横方向に結合する程度によって決定される。そして、横方向の結合の程度は、図17に示すように、横結合型弾性表面波フィルタを多数の導波路と見なしたときの各導波路領域の幅と、弾性表面波の伝搬速度によって支配される。なお、弾性表面波の伝搬速度は、IDT電極の膜厚及びデューティ比によっても変化する。従って、横結合型弾性表面波フィルタの設計に際しては、電極膜厚やデューティ比を考慮しつつ、各導波路の幅、特に電極指交叉幅E1,E2、結合長Gの設定が重要となる。
【0009】
他方、下記の特許文献1には、上記のような横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタにおいて、IDT電極のデューティを0.68以上とすれば、減衰量を改善し得る旨が開示されている。
【0010】
また、下記の特許文献2〜4では、弾性表面波共振子のIDT電極の膜厚やデューティ比の値を特定の範囲とすることにより、Q値を制御したり、容量比γを低めたりし得ることが記載されている。
【0011】
【特許文献1】
特開平7−30363号公報
【特許文献2】
特開昭57−170615号公報
【特許文献3】
特開昭58−6618号公報
【特許文献4】
特開昭59−135917号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述したAMPS/CDMA800MHz/PCS方式の携帯電話機のAMPS部の183.60MHzの第1中間周波数段用帯域フィルタでは、隣接チャンネル周波数(183.60MHz±60kZz)における減衰量は10dB程度であった。一般に、中間周波数が高くなるにつれて、フィルタの帯域幅は広くなる。従って、85.3MHzから、183.60MHzに中間周波数を高めるように、弾性表面波フィルタの設計を変更しただけでは、183.60MHz±60kHzにおいて10dB程度の減衰量を得ることはできない。よって、中間周波数が183.60MHzのフィルタでは、帯域をより一層狭めなければならない。
【0013】
横結合型の弾性表面波フィルタにおいて、狭帯域化を図るには、電極指交叉幅E1,E2を大きくする方法、あるいは結合長Gを大きくする方法が用いられる。しかしながら、狭帯域化を図ると、横結合共振子型弾性表面波フィルタのQが低下し、挿入損失が悪化するという問題があった。特に、中心周波数が183.60MHzのフィルタを構成した場合には、帯域がかなり狭くなるため、挿入損失の悪化量はかなり大きくなると予想される。
【0014】
他方、挿入損失については、IDTの電極膜厚やデューティ比も影響する。水晶基板のような電気機械結合係数や音響アドミタンスが小さい圧電基板を用いた弾性表面波フィルタでは、小型化を図る場合に、電気的特性の劣化を防ぐために、電極膜厚を厚くしたり、デューティ比を大きくしたりするのが普通である。これは、IDT電極やグレーティング反射器電極を構成する電極指1本当りの反射率を高め、それによって表面波の閉じ込め量が劣化するのを防止するためである。但し、電極膜厚を厚くし過ぎたり、デューティ比を大きくしたりし過ぎると、表面波の伝搬損失が大きくなり、逆に挿入損失が大きくなるという問題があった。
【0015】
上述した特許文献1に記載の横結合型弾性表面波フィルタでは、IDT電極のデューティ比を0.68以上とすることにより、減衰量の改善を図ることが示されているものの、上記のような狭帯域化を図った場合の挿入損失の悪化について何ら言及されていない。
【0016】
また、特許文献1では、IDT電極のデューティ比を0.68以上とすることにより、帯域外減衰量を改善し得る旨が示されているだけであり、電極膜厚と結合長などの関係については言及されていない。
【0017】
他方、特許文献2〜4では、弾性表面波共振子のIDT電極膜厚やデューティ比について言及されているだけであり、横結合型共振子型弾性表面波フィルタにおける上記問題点は何ら示されていない。
【0018】
すなわち、AMPS部の第1中間周波数段用の183.60MHz帯フィルタのような超狭帯域の弾性表面波フィルタにおける電極設計条件、IDT電極の膜厚、及びデューティ比について言及されている先行技術はこれまで存在しなかった。
【0019】
本発明の目的は、帯域幅が非常に狭い狭帯域の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ装置において、挿入損失の低減を図ることを可能とする構造を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る弾性表面波装置は、水晶基板と、前記水晶基板に構成されており、縦続接続された第1,第2の横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタとを備え、前記各横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタが、IDT電極と、IDT電極が設けられている領域の表面波伝搬方向両側に設けられた第1,第2のグレーティング反射器電極とを有する2つの1ポート型弾性表面波共振子が表面波伝搬方向と直交する方向に近接して配置されている構造を有し、前記IDT電極及びグレーティング反射器電極がAlまたはAlを主成分とする電極層を有し、前記弾性表面波の波長をλRとしたときに、波長λRで規格化された電極膜厚h/λRが0.002≦h/λR≦0.028の範囲にあり、かつ結合長Gが1.43λR≦G≦1.55λRとされていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る弾性表面波装置のある特定の局面では、前記第1,第2の横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタにおける電極指交叉幅が8λR以上とされている。
【0022】
本発明に係る弾性表面波装置のさらに他の特定の局面では、前記IDT電極及びグレーティング反射器電極のデューティ比Dが、0.68≦D≦0.72の範囲とされている。
【0023】
本発明に係る弾性表面波装置のさらに別の特定の局面では、前記グレーティング反射器電極の電極指の本数が154本以上である。
本発明に係る弾性表面波装置のさらに他の特定の局面では、前記弾性表面波装置の5dB帯域幅を中心周波数で除算した値が0.0335〜0.0366の範囲内とされている。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る弾性表面波装置の電極構造を示す模式的平面図である。弾性表面波装置1は、圧電基板2上に図1に示した電極構造を形成することにより構成されている。圧電基板2上において、第1,第2の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ3,4が構成されている。第1,第2の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ3,4は縦続接続されており、第1の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ3に入力端子5が、第2の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ4に出力端子6が接続されている。
【0026】
第1の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ3は、1ポート型弾性表面波共振子31と、1ポート型弾性表面波共振子32とを表面波伝搬方向と直交する方向、すなわち横方向において近接配置することにより構成されている。同様に、第2の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ4は、1ポート型弾性表面波共振子41と、1ポート型弾性表面波共振子42とを表面波伝搬方向と直交する方向に近接配置することにより構成されている。
【0027】
各弾性表面波共振子31,32,41,42は、それぞれ、IDT電極31a,32a,41a,42aと、グレーティング反射器電極31b,31c,32b,32c,41b,41c,42b,42cとを有する。グレーティング反射器電極31b,31cは、IDT電極31aが設けられている領域の表面波伝搬方向両側に配置されている。同様に、グレーティング反射器電極32b,32c,41b,41c及び42b,42cも、IDT電極32a,41a,42aが設けられている各領域の表面波伝搬方向両側に配置されている。
【0028】
IDT電極31a,32a,41a,42aは、互いに間挿し合う数本の電極指を有する。グレーティング反射器電極32b,32c,41b,41c,42b,42cは、互いに短絡された複数本の電極指を有する。
【0029】
第1の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ3では、電極指交叉幅E1,E2は等しくされている。また、結合長Gは、図示のように、1ポート型弾性表面波共振子31,32間の領域の表面波伝搬方向と直交する方向の寸法をいうものとする。
【0030】
AMPS部の第1中間周波数段用の中間周波数が183.60MHzの狭帯域の弾性表面波フィルタを構成するために、弾性表面波装置1と同様の電極構造を有し、但し、電極膜厚h/λRを種々異ならせた弾性表面波装置を作製した。なお、弾性表面波装置において、圧電基板2としては、矩形板状の水晶基板を用い、IDT電極31a,32a,41a,42a及びグレーティング反射器電極31b,31c〜42b,42cを構成する電極材料として、Alを主成分とする合金を用いた。また、励振される表面波はレイリー波である。
【0031】
また、IDT電極31a,32a,41a,42aにおける電極指交叉幅は、全て11λR、電極指の対数は115対とした。グレーティング反射器電極31b,31c〜41b,42cにおいて、電極指の本数は、それぞれ174本とした。さらに、デューティ比、すなわち電極指の幅の電極指と電極指間ギャップの合計に対する割合は0.7とした。
【0032】
なお、電極指交叉幅11λRとしたのは、以下の理由による。すなわち、上記弾性表面波装置1において、電極指交叉幅を種々異ならせ、挿入損失の変化を調べたところ、図2に示す結果が得られた。なお、ここでは、電極膜厚h/λRは0.032とした。図2から明らかなように、電極指交叉幅を8λR以上とすることにより、挿入損失を6dB以下とし得ることがわかる。これは、電極指交叉幅を拡げることにより、表面波の横方向の閉じ込めが良好に行われているためである。よって、電極指交叉幅を8λR以上とすることにより、挿入損失を改善することができる。なお、本明細書における挿入損失の値は、0dBを基準としたときの最小損失点における減衰量を意味するものとする。
【0033】
図2から明らかなように、交叉幅を8λR以上とすることが好ましく、また交叉幅を大きくするほど挿入損失の低減を図り得ることに鑑み、上記のように電極指交叉幅を11λRとした。なお、11λRは、5.0×7.0mmのセラミックパッケージに入る最大チップサイズを採用した圧電基板を用いた場合の電極指交叉幅のほぼ最大値である。交叉幅は大きい程好ましいが、水晶基板の寸法により制限される。すなわち、小型化を図るには、交叉幅の最大値は水晶基板の寸法に応じた最大限の値となる。
【0034】
次に、上記のように、電極膜厚を種々異ならせた場合の電極膜厚と挿入損失の関係を図3に示す。なお、ここでは、電極の規格化膜厚を、h/λR=0.02、0.022、0.024、0.026、0.028、0.030及び0.032と変化させた。下記の表1に、h/λRと、電極の膜厚の絶対値を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
図3は、種々の電極膜厚弾性表面波装置における電極膜厚h/λRと挿入損失の関係を示す図である。
図3から明らかなように、h/λRが約0.024において、挿入損失が最も小さくなることがわかる。電極膜厚h/λRが0.024より厚い場合には、伝搬損失が大きくなることにより、挿入損失が悪化し、逆に、0.024よりも薄い場合には、表面波の閉じ込めが弱くなり、エネルギーの漏洩が増大するため、挿入損失が悪化していることがわかる。従って、最も好ましくは、電極膜厚をh/λR=0.024とすることにより、挿入損失を効果的に低減することができる。また、電極膜厚h/λRは0.020〜0.028の範囲であれば、挿入損失が5.5dB以下となり、必要上問題のない良好な特性の得られることがわかる。なお、図4〜6は、電極膜厚h/λRが0.020、0.024、0.026及び0.028の場合の弾性表面波装置1の伝送特性を示す図である。
【0037】
また、図4〜6における内側の特性曲線は、縦軸の右側の拡大スケールで示した伝送特性を示す。
上記結果を考慮し、電極膜厚h/λRを約0.024とし、結合長Gを種々異ならせた弾性表面波装置を作製し、帯域幅について検討した。使用した圧電基板、電極指交叉幅、電極指の対数及び反射器電極の電極指の本数及びデューティ比は上述した電極膜厚を異ならせた実験と同一とした。
【0038】
なお、目標特性は、中間周波数が183.60MHzであり、5dB帯域幅が中間周波数±11kHz以上であり、中間周波数±60kHzにおける減衰量は11dB以上である。
【0039】
上記目標特性である5dB帯域幅、11dB帯域幅、並びに5dB帯域幅を183.60MHzで除算した値を下記の表2に示す。
また、図7に、上記のように結合長Gが1.43λRから1.55λRの間で異ならせた弾性表面波装置1の挿入損失を示す。
【0040】
使用温度範囲における周波数の温度特性や基板実装のためのリフローハンダ付けに際しての周波数シフト量などを考慮すると、5dB帯域幅は約60〜67kHz、11dB帯域幅は約76〜84kHzであることが目標特性に対して適切である。
【0041】
【表2】
【0042】
表2の結果から、5dB帯域幅、11dB帯域幅共に結合長1.43λRが結合長の下限となる。他方、挿入損失の兼ね合いを考慮すると、結合長Gは1.55λR以下とすることが好ましいことがわかる。すなわち、結合長が1.43λR〜1.55λRの範囲であれば、図7からも明らかなように、挿入損失も5.5dB以下とさほど大きくない。
【0043】
なお、上記各実験例では、デューティ比は0.7とした。そこで、次にデューティ比を変化させて、他は同じ条件とし、種々の弾性表面波装置を作製し、ウェハー段階における中心周波数を測定した。結果を図8に示す。なお、図8の中心周波数は、ウェハー上の弾性表面波装置の中心周波数の平均値である。
【0044】
図8から明らかなように、デューティ比が0.7において、中心周波数が極小になる2次曲線が得られることがわかる。従って、デューティ比を0.7とすることが最も好ましく、また図8から、デューティ比が0.68以上、0.72以下の範囲であれば、周波数平均値のばらつきが約10kHz以下に制限され得ることがわかる。従って、デューティ比を0.68以上、0.72以下とすることにより、周波数ずれによる良品率の悪化を抑制することができ、かつドライエッチングによるウェハー単位の周波数調整に必要な工程を少なくし得ることがわかる。
【0045】
デューティ比が0.68以上、0.72以下の場合の上記弾性表面波装置の挿入損失の変化を図9に示す。また、デューティ比が0.68、0.70及び0.72のときの弾性表面波装置の伝送特性を図10〜図12に示す。
【0046】
図10〜図12から明らかなように、デューティ比を0.68以上、0.72以下とすることにより良好な共振特性が得られることがわかる。
上記各実験例から明らかなように、電極指交叉幅を8λR以上、電極膜厚h/λRを0.02〜0.028、並びにデューティ比を0.68〜0.72の範囲にすることにより、AMPS/CDMA 800MHz/PCS方式のトリプルバンド携帯電話機に用いられるAMPS部の第1中間周波数段用フィルタとして、伝送特性が良好であり、安価な弾性表面波装置を提供し得ることがわかる。
【0047】
次に、グレーティング反射器電極の電極指の本数を変化させた場合の実験例につき、説明する。
結合長Gが1.51λRである弾性表面波装置1において、グレーティング反射器電極の本数を減らした場合の挿入損失の影響を調べた。図13は、その結果を示し、1段の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ当り、左右のグレーティング反射器電極の本数を、10本ずつ、20本ずつ、30本ずつ及び50本ずつ減らした場合の挿入損失の変化を示す。また、左右20本ずつ電極指を減らした場合の伝送特性を図14に示す。
【0048】
図13から明らかなように、左右20本ずつの電極指をグレーティング反射器電極において減らした場合の伝送特性において挿入損失の悪化量は0.5dB以内に納まっており、実用上問題のないことがわかる。
【0049】
よって、グレーティング反射器電極の本数を154本以上とすることにより、特性の悪化を招くことなく、弾性表面波装置1のコストを低減することができる。すなわち、フィルタ1段当り左右20本ずつ反射器電極の電極指の本数を削減できた場合、表面波の波長が約17μmであるため、17×20=340μmだけ弾性表面波装置1の長手方向寸法を小さくすることができる。弾性表面波装置の小型化を図ることができるので、ウェハー1枚当りの弾性表面波装置の個数を増加させることができて、それによって弾性表面波装置1のコストの低減を図ることができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明に係る弾性表面波装置は、第1,第2の横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタが縦続接続されている構成において、電極膜厚h/λRが0.002以上、0.028以下の範囲にあり、かつ結合長Gが1.43λR以上、1.55λRとされているため、狭帯域化を図った場合であっても、挿入損失を著しく抑制することができ、それによって狭帯域かつ低損失の弾性表面波装置を提供することができる。
【0051】
よって、例えばAMPS/CDMA 800MHz/PCS方式のトリプルモード携帯電話機のAMPSの第1中間周波数段のフィルタとして最適な弾性表面波装置を提供することができる。
【0052】
また、電極指交叉幅が8λR以上であれば、挿入損失をより一層効果的に低減することができる。
また、デューティ比が0.68〜0.72の範囲にある場合には、挿入損失の低減を図りつつ、中間周波数のばらつきを小さくすることができ、弾性表面波装置のコストの低減を果たすことも可能となる。
【0053】
グレーティング反射器電極の本数は、154本以上の場合には、挿入損失の悪化は0.5dB以内に納まっており、実用上問題はない。
弾性表面波装置の5dB帯域幅を中間周波数で除算した値が0.0335〜0.0366の範囲にある場合は、AMPS/CDMA 800MHz/PCS方式のトリプルモード携帯電話機のAMPS部第1中間周波数段のフィルタとして最適な弾性表面波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る弾性表面波装置の電極構造を示す模式的平面図。
【図2】電極指交叉幅を変化させた場合の挿入損失の変化を示す図。
【図3】電極の規格化膜厚h/λRを変化させた場合の挿入損失の変化示す図。
【図4】電極膜厚が0.02の場合の伝送特性を示す図。
【図5】電極膜厚が0.024の場合の伝送特性を示す図。
【図6】電極膜厚が0.028の場合の伝送特性を示す図。
【図7】電極膜厚h/λRが0.024である弾性表面波装置において結合長Gを変化させた場合の挿入損失の変化を示す図。
【図8】電極膜厚h/λR=0.024、結合長G=1.51λRの弾性表面波装置において、デューティ比を変化させた場合のウェハー上における中心周波数平均値の変化を示す図。
【図9】電極膜厚h/λR=0.024かつ結合長G=1.51λRの弾性表面波装置におけるデューティ比を変化させた場合の挿入損失の変化を示す図。
【図10】電極膜厚h/λR=0.024かつ結合長G=1.51λRの弾性表面波装置において、デューティ比が0.68の場合の伝送特性を示す図。
【図11】電極膜厚h/λR=0.024かつ結合長G=1.51λRの弾性表面波装置において、デューティ比が0.70の場合の伝送特性を示す図。
【図12】電極膜厚h/λR=0.024かつ結合長G=1.51λRの弾性表面波装置において、デューティ比が0.72の場合の伝送特性を示す図。
【図13】反射器電極の電極指を削減した数と、挿入損失変化量との関係を示す図。
【図14】反射器電極の電極指を20本削減する前及び削減した後の弾性表面波装置の伝送特性を示す図。
【図15】従来の横結合型弾性表面波フィルタの一例を示す模式的平面図。
【図16】図15に示した横結合型弾性表面波フィルタにおいて生じる定在波を説明するための各模式図。
【図17】横結合型弾性表面波フィルタにおける交叉幅及び結合長を説明するための模式的平面図。
【符号の説明】
1…弾性表面波装置
2…圧電基板
3,4…第1,第2の横結合型共振子型弾性表面波フィルタ
5…入力端子
6…出力端子
31,32,41,42…1ポート型弾性表面波共振子
31a,32a,41a,42a…IDT電極
31b,31c,32b,32c,41b,41c,42b,42c…グレーティング反射器電極
Claims (5)
- 水晶基板と、前記水晶基板に構成されており、縦続接続された第1,第2の横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタとを備え、
前記各横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタが、IDT電極と、IDT電極が設けられている領域の表面波伝搬方向両側に設けられた第1,第2のグレーティング反射器電極とを有する2つの1ポート型弾性表面波共振子が表面波伝搬方向と直交する方向に近接して配置されている構造を有し、
前記IDT電極及びグレーティング反射器電極がAlまたはAlを主成分とする電極層を有し、
前記弾性表面波の波長をλRとしたときに、波長λRで規格化された電極膜厚h/λRが0.002≦h/λR≦0.028の範囲にあり、かつ結合長Gが1.43λR≦G≦1.55λRとされている、弾性表面波装置。 - 前記第1,第2の横結合2重モード共振子型弾性表面波フィルタにおける電極指交叉幅が8λR以上であることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波装置。
- 前記IDT電極及びグレーティング反射器電極のデューティ比Dが、0.68≦D≦0.72の範囲にある、請求項1または2に記載の弾性表面波装置。
- 前記グレーティング反射器電極の電極指の本数が154本以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の弾性表面波装置。
- 前記弾性表面波装置の5dB帯域幅を中心周波数で除算した値が0.0335〜0.0366の範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載の弾性表面波装置。
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2003
- 2003-04-24 JP JP2003120350A patent/JP2004328387A/ja active Pending
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