JP2004327807A - 光学素子位置決め装置、それを用いた露光装置、デバイスの製造方法 - Google Patents

光学素子位置決め装置、それを用いた露光装置、デバイスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光学素子を含む可動部の固定部に対する位置決め精度を向上し、更に、可動部を基準構造体に対して6軸方向の位置決め制御を行うことが可能な光学素子位置決め装置を提供する。
【解決手段】光学素子を含む第1可動部と、第1固定部と、前記第1固定部に対して前記第1可動部を駆動する第1駆動手段と、前記第1可動部の前記第1固定部に対する位置を計測する第1計測手段と、前記第1可動部の基準構造体に対する変位を計測する第2計測手段と、前記第2計測手段の計測結果に基づいて、前記第1駆動手段を制御する第1補償器とを有し、前記第1計測手段の計測結果に基づいて、前記第1駆動手段、前記第2計測手段及び前記第1補償器を用いて前記光学素子の位置決めを行う。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、精密な調整駆動装置、特に半導体や液晶デバイスを製造する工程において使用する露光装置の光学素子(レンズ或いはミラーなど)の姿勢を微調整するための装置に関する。光学素子の姿勢調整は、原版(例えばマスク或いはレチクルなど)の像を基板(たとえばウエハ)に投影露光する際に、より正確な結像関係が得られるように行うものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体露光装置は、数多くの異なる種類のパターンを有する原版(レチクル)をシリコンウエハ(基板)に転写する装置である。高集積度の回路を作成するためには、解像性能だけでなく重ね合わせ精度の向上が不可欠である。
【0003】
半導体露光装置における重ね合わせ誤差の原因としては、アライメント誤差(レチクルとウエハとのアライメント誤差)、像歪み、および倍率誤差等が考えられる。アライメント誤差は、原版(レチクル)と基盤(ウエハ)との相対的な位置調整によって軽減することができる。一方、像歪みや倍率誤差は、光学系が有する光学素子のうち一部の光学素子を移動させることによって調整可能である。この一部の光学素子を移動させる際に、所望の移動方向以外に移動してしまったり、光学素子が偏心してしまったり、傾いてしまったりすると、所望の光学性能(像歪みや倍率誤差を補正した光学性能)が得られなくなってしまう。例えば、光学素子を光軸方向に移動させる必要がある場合には、平行偏芯、および傾き偏芯誤差成分が大きくならないようにしなければならない。
【0004】
従来の半導体露光装置用の光学素子保持装置として、特開2000−357651や特開2002−131605などでは、光学素子の固定部からの距離を常時検出するようなセンサを設けて、リアルタイムに光学素子の姿勢制御を行う装置が考案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−357651号公報
【特許文献2】
特開2002−131605号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、半導体デバイスパターンの高精細化に伴い、波長が短い光(例えばEUV光等の10〜15nmの波長の光)を用いた露光装置が考案されてきている。このようなEUV光を用いた露光装置に要求される結像関係を得るために、光学素子には従来に比べて高い位置、姿勢精度、および収差等補正のための駆動位置決め精度が要求されるようになってきている。しかし、基準構造体からの位置計測手段が、可動部との間の相対変位しか計測できない場合、可動部をある基準(例えば、固定部)に対して、位置決めするための位置決めセンサが必要になる。この位置決めセンサの検出結果を基に、可動部を固定部に対して位置決めした場合、固定部の組み付け誤差や位置決めセンサの測定誤差が、可動部の位置決め誤差として現れる。
【0007】
或いは、要求される結像関係を得るために、異なる光学素子を含む可動部間の相対位置を制御することが可能な装置も必要である。
【0008】
また、光学素子は、露光熱により温度が上昇し、熱変形を生じることが予想される。光学素子が熱変形を生じると、露光装置は要求される結像関係を満たさなくなるので、光学素子を冷却する必要がある。特に、EUV露光装置の光学素子には、ナノメートルオーダーの位置決め精度が要求されているので、冷却手段は光学素子に振動を伝えないものでなければならない。
【0009】
また、EUV光は、物質に吸収され易いため、コンタミネーション(ウエハから生じた炭化水素系化合物)が発生すると光量が低下してしまう。さらにEUV光はコンタミネーションと反応して光学素子の表面にカーボンなどを付着させて、光学素子の反射率を低下させてしまうなどの問題もある。そのため、EUV光が通過する鏡筒空間のコンタミネーション分圧を、低く保つ必要がある。
【0010】
本出願に係る第1の発明の目的は、光学素子を含む可動部の固定部に対する位置決め精度を向上し、更に、可動部を基準構造体に対して6軸方向の位置決め制御を行うことを例示的目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明の光学素子位置決め装置は、光学素子を含む第1可動部と、第1固定部と、前記第1固定部に対して前記第1可動部を駆動する第1駆動手段と、前記第1可動部の前記第1固定部に対する位置を計測する第1計測手段と、前記第1可動部の基準構造体に対する変位を計測する第2計測手段と、前記第2計測手段の計測結果に基づいて、前記第1駆動手段を制御する第1補償器とを有し、前記第1計測手段の計測結果に基づいて、前記第1駆動手段、前記第2計測手段及び前記第1補償器を用いて前記光学素子の位置決めを行うことを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本発明の露光装置及び光学素子位置決め装置について図1を用いて説明する。
【0013】
図1に示す露光装置は、EUV光(波長が10〜15nm)を発する光源53からの光を原版に導いて原版を均一に照明する照明光学系52と、その照明光学系によって照明される原版(マスク或いはレチクルなど)を保持するレチクルステージ51と、原版からの光を基板に導く投影光学系55と、基板(ウエハなど)を保持するウエハステージ27等を備えている。
【0014】
また、この露光装置は基準構造体41を有しており、レチクルステージ51は、基準構造体41に対して、6軸方向に位置決め制御されている。ここで言う6軸方向とは、XYZ軸方向(の併進方向)とXYZ軸回りの回転方向である。
【0015】
投影光学系55は、複数の光学素子32(図1ではすべてミラーであるが、レンズや回折光学素子を含むように構成しても構わない。)を後述する光学素子微動機構61を介して支持する。
【0016】
ウエハステージ27は、ウエハ28の搭載面が投影光学系55の光軸方向と交差するように配置されている。そして、露光光により照射された原版(マスク或いはレチクル)上のパターンが、投影光学系55を通して所定の縮小倍率に縮小された状態で、ウエハステージ27上のウエハ28に投影転写されるようになっている。ウエハステージ27は、基準構造体41に対して6軸方向に位置決め制御されている。
【0017】
次に、投影光学系55の光学素子微動機構61について説明する。光学素子微動機構61は、可動部1の基準構造体41に対する位置を非接触に計測する非接触計測手段42と、可動部1を駆動するための駆動機構29と、非接触計測手段42の計測情報を基に駆動機構29へ指令値を送る補償器(不図示)からなる。ここでは補償器としてPID補償器(勿論他のPID以外の他の制御系を組んでも構わない。)を用いる。光学素子微動機構61は、非接触計測手段42の計測情報を基にして、可動部1を基準構造体41に対して6軸方向に位置決め制御する。可動部1は、図1においては光学素子32(レンズ或いはミラー)もしくは、光学素子32に加えてそれを保持するための保持機構31及び光学素子保持ブロック30を含んでいるが、精度上問題が無ければ可動部1は光学素子32だけであっても良い。
【0018】
可動部1を固定部2に対して6軸方向に駆動可能な駆動機構29としては、アクチュエータを用いたパラレルリンク機構や6軸微動機構などが考えられる。アクチュエータとしては、リニアモータや圧電素子などを用いることができる。特に、アクチュエータとしてリニアモータを用いた6軸微動機構は、可動部1を固定部2に対して非接触で駆動することができるので、振動絶縁の面で優れている。ここでは、光学素子微動機構61の駆動機構29として、リニアモータを用いた6軸微動機構を用いた場合について説明する。
【0019】
リニアモータは、可動部1をX軸方向へ駆動するためのXリニアモータと、Y方向へ駆動するためのYリニアモータと、Z方向へ駆動するためのZリニアモータからなる。XリニアモータおよびYリニアモータのうち、少なくとも一方は複数個設けられている。ここで、例えばYリニアモータが2個ある場合、これらのYリニアモータを用いることで、可動部1をY方向だけでなく、Z軸周りの回転方向(θ)にも駆動することができる。またZリニアモータは、少なくとも3個設けられている。これら3個以上のZリニアモータにより、微動ステージをZ方向だけでなく、チルト方向(X、Y軸まわりの回転方向)にも駆動することができる。
【0020】
配線などの都合を考慮すると、リニアモータの固定子であるコイルは固定部側、可動子である永久磁石は可動部側に設けることが望ましい。
【0021】
また、リニアモータからは、発熱が起こることが予測されるので、リニアモータに冷却機構を設けることで、発熱が外部に漏れることを抑制することができる。冷却機構の一例としては、コイルをジャケットで覆い、ジャケット内部に冷却液を供給し、コイルの冷却を行う。
【0022】
以下リニアモータを用いた光学素子微動機構61の詳細を説明する。光学素子微動機構61の概略を図2に示す。
【0023】
可動部1には、リニアモータを構成する可動子3が取り付けられている。図3では、可動部1の裏面にすべての可動子が配置されているが、一部または全部の可動子を可動部1の側面などに構成されていても構わない。
【0024】
一方、固定部2には、リニアモータを構成する固定子が取り付けられている(図4参照)。
【0025】
図3および図4にそれぞれ可動部1、固定部2の斜視図を示し、リニアモータの取り付けを詳細に説明する。
【0026】
可動部1の裏面には7個のリニアモータの可動子が取り付けられている(勿論7個には限らず6軸方向への駆動が可能な個数であればいくつであっても構わない)。各可動子は、厚み方向に着磁された2極の磁石17およびヨーク(閉じた磁路を形成する部材)19を2組み有している(図5参照)。この2組の磁石17およびヨーク19は、側板20で連結して箱状の構造を形成し、後述のリニアモータの固定子を非接触で挟み込むように対面する。
【0027】
7個の可動子のうち、3個の可動子9a、9b、および9cは、可動部1を固定部2に対してZ方向に微動駆動するためのZ可動子を形成する。Z可動子9a、9b、および9cにおいては、図5に示すように前記2極の磁石17がZ方向に沿って配列されており、後述のZ方向に直角な直線部をもつZ固定子14a、14b、および14cの長円コイルに流れる電流と相互作用してZ方向の推力を発生する。ここで、長円コイルは、Z軸方向と垂直な直線部を持つコイルのことであり、Z軸方向と垂直な直線部を有していれば特に長円に限らずどのような形状であっても構わない。また、Z可動子9a、9b、および9cは、一直線上に並ばないように、すなわち9a、9b、および9cにより三角形を形成するように配置する。
【0028】
残る4個の可動子のうち、2個の可動子は、可動部1を固定部2に対してX方向に微動駆動するためのX可動子10a、および10bを形成する。X可動子10a、および10bにおいては、前記2極の磁石17がX方向に沿って配列されており、後述のX方向に直角な直線部をもつX固定子15aおよび15bの長円コイルに流れる電流と相互作用してX方向の推力を発生する。ここで、長円コイルは、X軸方向と垂直な直線部を持つコイルのことであり、X軸方向と垂直な直線部を有していれば特に長円に限らずどのような形状であっても構わない。
【0029】
残りの2個の可動子は、可動部1を固定部2に対してY方向に微動駆動するためのY可動子13a、および13bを形成する。Y可動子13a、および13bにおいては、前記2極の磁石17がY方向に沿って配列されており、後述のY方向に直角な直線部をもつY固定子16a、16bの長円コイルに流れる電流と相互作用してY方向の推力を発生する。ここで、長円コイルは、Y軸方向と垂直な直線部を持つコイルのことであり、Y軸方向と垂直な直線部を有していれば特に長円に限らずどのような形状であっても構わない。
【0030】
なおX、Y方向それぞれ2個のリニアモータについて述べたが、上で述べたように、どちらか1個でも良い。
【0031】
可動部1と固定部2には、それぞれ可動部1の自重を支えるための自重補償ばね21が配置され(可動部1と固定部2のうち一方にのみ自重補償ばねが配置されていても構わない)、Z方向のリニアモータの推力を軽減し、その結果、モータの発熱を抑えることができる。自重補償ばね21は自重支持方向および他の5自由度方向のばね定数が極めて小さく設計されており(相対的にはミラーの自重方向のばね定数が他の5自由度方向のばね定数より大きい方が好ましい)、自重補償ばね21を介して固定部2から可動部1への振動伝達がほぼ無視できるようになっている。本実施例では自重補償ばね21は可動部1、固定部2の間に3個配置してあるが、その他の数の自重補償ばね21で支持してもよいが3個以上配置するのが好ましい。またこの自重補償手段は、図4に示したコイルばねだけでなく、その他のばね特性をもつ要素や、あるいは互いに反発する磁性をもった磁石の組み合わせを3組以上配置するようにしても良い。
【0032】
X可動子10a、および10bが発生する力の作用線のZ座標及びY座標は概ね一致している。X可動子10a、および10bが発生する力の作用線のZ座標は、X可動子10a、および10b、Y可動子13a、および13b、Z可動子9a、9b、および9cを含む可動部1(可動部1が光学要素32を含んでいない場合はそれも含む)の重心のZ座標及びY座標と概ね一致するようになっていることが望ましい。これによって、X可動子10a、および10bに発生するX方向の推力によって、Y軸回り及びZ軸回りの回転力がほとんど可動部1に作用しないようになっている。
【0033】
X可動子と同様に、Y可動子13a、および13bが発生する力の作用線のZ座標及びX座標は概ね一致している。Y可動子13a、および13bが発生する力の作用線のZ座標は、X可動子10a、および10b、Y可動子13a、および13b、Z可動子9a、9b、および9cを含む可動部1(可動部1が光学要素32を含んでいない場合はそれも含む)の重心のZ座標及びX座標と概ね一致するようになっていることが望ましい。このためY可動子13a、および13bに発生するY方向の推力によって、X軸回り及びZ軸回りの回転力がほとんど可動部1に作用しないようになっている。
【0034】
一方、固定部2には、可動部1を6軸方向に位置制御する7個のリニアモータの固定子、および可動部1の自重を支持するための一つまたは複数個の自重補償ばね21の一端が固定されている。
【0035】
各固定子は、長円形のコイルをコイル固定枠で支持する構造になっており、前述の可動部1裏面に固定されたリニアモータ可動子と非接触で対面するようになっている。
【0036】
7個の固定子のうち、3個の固定子14a、14b、および14cは、可動部1を固定部2に対してZ方向に微動駆動するためのZ固定子を形成する。Z固定子14a、14b、および14cは、前記長円コイルの直線部がZ方向と直角になるように配置されており、前記Z可動子9a、9b、および9cのZ方向に沿って配置された2極の磁石17にZ方向の推力を作用できるようになっている。
【0037】
残る4個の固定子のうち、2個の固定子15a、および15bは、X固定子を形成する。X固定子15a、および15bでは、前記長円コイルの2つの直線部がX方向と直角になり、2つの直線部がX方向に沿うように配置されており、前記X可動子10a、および10bのX方向に沿って配置された2極の磁石17にX方向の推力を作用できるようになっている。
【0038】
残りの2個の固定子16a、および16bはY固定子を形成する。Y固定子16a、および16bでは、前記長円コイルの2つの直線部がY方向と直角になり、2つの直線部がY方向に沿うように配置されており、前記Y可動子13a、および13bのY方向に沿って配置された2極の磁石17にY方向の推力を作用できるようになっている。
【0039】
ここで、ミラーの位置合わせを行う手順について述べる。簡単に述べると、最初は固定部2上に設けられた非接触計測手段65を用いて可動部1の位置合わせを行い(この際の位置合わせは予め記憶されている設計値等に基づいて行う)、その状態でテスト露光や波面収差計測を行った後、再度可動部1の位置合わせを行う。その後、露光中の熱によるミラーの位置に誤差が生じた場合等の微小なミラーの位置の誤差に関しては、基準構造体41上に設けられた非接触計測手段42を用いて可動部1の位置合わせを行う。そして、露光装置の電源再投入後、もしくは輸送後等のようにミラーの位置が大きく変わる可能性がある際にはこの工程を再度行う。以下、上記の工程について詳細に述べる。
【0040】
可動部1と固定部2には、それぞれキネマチックマウント62を備えており、固定部2に対して可動部1を位置決めできるようになっている。しかし、キネマチックマウント62の位置決め精度は、数百nm程度であるので、ナノメートルオーダーの位置決め精度が要求される可動部1の位置決め手段としては不十分である。そこで、位置決めセンサ63を用いて固定部2に対する可動部1の位置決めを行う。位置決めセンサ63の非接触計測手段65としては、静電容量センサや渦電流センサ、差動トランス式変位センサなどが考えられる。ここでは、静電容量センサを用いる。静電容量センサの精度は数十nmである。図2に示すように可動部1側にセンサターゲット64を設け、固定部2側に静電容量センサを設ける。位置決めセンサ63は、可動部1を固定部2のXYZ軸方向に関してそれぞれ位置決めが行えるように設ける。ここでは位置決めセンサを3個用いたが、必要に応じてこれとは異なる個数を用いても構わない。
【0041】
次に、可動部1の固定部2に対する位置決めの方法を説明する。
【0042】
まず、可動部1と固定部2のキネマチックマウント62を突き当てる。次に、光学素子微動機構61を用いて、可動部1の位置制御を行う。位置決めセンサ63の値が、ある値(例えば0)になるように、可動部1の位置を移動すれば、可動部1を固定部2に対して位置決めすることができる。
【0043】
しかし、固定部の組み付け誤差や位置決めセンサ63の精度が数十nm程度であることから、各可動部の位置決め精度には、数十nmの誤差が生じている。そこで、各可動部の位置を補正するために、テスト露光を行い、要求される結像関係を満たすように、光学素子微動機構61を用いて、可動部1の位置補正を行う。これにより要求される結像関係を得ることができる。
【0044】
これで、露光前の段階の光学素子(ミラー)を含む可動部1の位置合わせが完了する。
【0045】
しかし、一度正確な結像関係が得られたとしても、露光を繰り返すうちに、露光熱により光学素子32が熱変形するなどの原因により、正確な結像関係が得られなくなる。そのため、正確な結像関係を維持するために、露光装置の使用開始時はもちろん、一定の期間ごとにテスト露光を行い、各可動部の位置を補正しなければならない。一定の期間としては、例えば、露光装置の使用時間、露光したウエハの枚数、光学素子32(レンズ或いはミラー)の温度上昇量、露光エネルギの積算量などがある。
【0046】
そこで、露光熱等の影響により、可動部1の位置がずれた場合等に可動部1の位置を再調整する方法について説明する。
【0047】
この露光装置の可動部1には、センサターゲット5が設けられており、本実施例の露光装置はそのセンサターゲット5を用いて、基準構造体41に対する可動部1の6軸方向の位置を計測するための非接触計測手段42を有している。非接触計測手段42は、可動部1の可動範囲内で有効に働く必要があり、例えば、超音波センサ、光センサ、レーザ干渉計またはリニアスケールにより構成できる。
【0048】
図2は、すべての軸の非接触計測手段42にレーザ干渉計を用いた例を示す。可動部1に6本の光ビームを照射することで、可動部1の6自由度の位置を計測している。図2の例では、X軸に平行でZ位置およびY位置の異なる3本の干渉計ビームにより、可動部1のX方向の位置およびθy(Y軸回り)、θz(Z軸回り)方向の回転量が計測できる。また、Y軸に平行でZ位置の異なる2本の干渉計ビームにより、Y方向の位置およびθx(X軸回り)方向の回転量が計測できる。さらにZ軸に平行な干渉計ビームにより、Z方向の位置が計測できる。レーザ光を照射するレーザ干渉計は、基準構造体41上に設ける。図1では、基準構造体41を固定部2や構造体フレーム24とは別に設けているが、基準構造体41が固定部2や構造体フレーム24と同一もしくはそれらと一体的に設けられていても構わない。
【0049】
このように、露光装置の動作中において、非接触計測手段42を用いて基準構造体に対する可動部1の6軸方向の位置を計測し、その計測結果に基づいて、駆動機構29を用いて可動部1を高精度に駆動することにより、露光装置が有する光学素子(ミラー等)の位置がずれたとしても適切に光学素子を駆動することができるため、露光装置(投影光学系)の光学性能を維持することができる。このような手法で光学素子の位置がずれた場合等に光学素子の位置の再調整を行っている。
【0050】
勿論、この手法は光学素子の位置がずれた場合に限らない。例えば、第1計測手段(静電容量センサ)よりも第2計測手段(超音波センサ、光センサ、レーザ干渉計、またはリニアスケール)の方が位置合わせ精度が高い場合には、第1計測手段に基づく位置合わせを行った後に、第2計測手段に基づく位置合わせを行うことにより、高精度な位置合わせを行うようにしても構わない。
【0051】
本実施例においては、テスト露光を行ったり、波面収差計測を行ったりすることによって、その結果に基づいて光学素子を駆動しているが、それに限定はされない。例えば、露光装置が、露光装置内の環境(例えば温度、コンタミネーション、圧力、光路空間の屈折率等)により光学素子を配置する位置を演算できる手段、あるいはそのような露光装置内の環境と光学素子の位置との関係をテーブルで記憶する手段を備え、その露光装置内の環境を測定し、その測定結果に基づいて、演算手段もしくは記憶手段を使って光学素子を配置すべき位置を求め、その配置すべき位置に光学素子を配置するようにしても構わない。勿論、露光装置内の環境自体も実際に測定せずに、予め実験やシミュレーション等で予測し、その予測結果を記憶する手段を有し、その予測結果に基づいて光学素子を駆動するようにしても構わない。
【0052】
通常、露光装置を用いて被処理体(ウエハ等)を露光する場合、前述のように露光熱により光学素子32の温度が上昇することが予想できる。光学素子32の温度が上昇し、一定の変形量を超えると、正確な結像関係が得られなくなる。そこで、本実施例1では、光学素子32を冷却するための冷却手段71を設けた。光学素子32の位置決め精度を考慮すると、図4に示すように冷却手段71は固定部2に設け、光学素子32を非接触で冷却できることが望ましい。非接触な冷却手段としては、輻射冷却がある。輻射冷却を行う手段は様々なものがあるが、本実施例1においては、ペルチェ素子を用いて輻射部材(輻射板)を冷却し、その輻射部材からの輻射を用いて可動部1(特に光学素子32)を冷却する構成とした。勿論輻射部材を冷却する方法としては冷媒を輻射部材の内部もしくは表面に流すことにより輻射部材を冷却しても良いし、他の冷却手段を用いても構わない。
【0053】
また、EUV光は、物質に吸収され易く、更にEUV光がコンタミネーションと反応すると光学素子32の表面にカーボンなどが付着し、光学素子32の反射率を低下する。そのため、EUV光が通過する鏡筒空間80のコンタミネーション分圧を低く保つ必要がある。
【0054】
コンタミネーション分圧を低くに保つために、図6に示すように、光学素子位置決め装置の可動部1と固定部2の間に真空隔壁81を設ける。真空隔壁81の材質としては、電解研磨されたアルミニウムやステンレス、チタン、セラミックス、フッ素系樹脂、ガラスなどがある。ただし、図6のリニアモータのように、駆動手段29が電界或いは磁界の影響を受ける場合、可動部1と固動部2の間の真空隔壁81には、非磁性体或いは絶縁体を用いる必要がある。
【0055】
図6では省略しているが、鏡筒空間80のコンタミネーション分圧を低く保つために、真空隔壁外部にも排気系を設けることが望ましい。
【0056】
図6の非接触計測手段65は、真空隔壁内部に設けているが、窓などを設けて真空隔壁の外部に設けることも可能である。また、冷却装置71は装置の構成上、真空隔壁81の内部に設けることもある。
【0057】
駆動手段29がパラレルリンク機構のように可動部1と固定部2に接続されている場合、図7に示すように、駆動手段29を覆うように真空隔壁81を設ける。
【0058】
図6の鏡筒空間80のコンタミネーション分圧と、ステージ空間84のコンタミネーション分圧は異なり、異なるコンタミネーション分圧を維持するために、開口部85を形成する面をウエハ面に近接して配置することで差動排気を設ける。
【0059】
更に、ステージ空間84から鏡筒空間80へコンタミネーションが流入を防ぐために、図8に示すように、開口部85にフィルタ83を設けても良い。フィルタとしては、ポリプロピレン、ジルコニウム、ボロン、シリコン、窒化シリコン、ベリリウムなどがある。
【0060】
また、ステージ空間84から鏡筒空間80へコンタミネーションが流入を防ぐために、図9に示すように、開口部85にパージガス86を噴出しても良い。パージガス86としては、EUV光の透過率の高い不活性ガスが良い。例えば、ヘリウムやアルゴンなどである。
【0061】
(第2実施形態)
次に、光学素子位置決め装置の第2の実施形態について説明する。第2の実施の形態は第1の実施の形態に基づくものであり、第1の実施の形態と異なる部分を中心に説明する。
【0062】
実施の形態2は、図10に示すように、露光装置本体に波面収差計測装置を搭載し、これを用いて投影光学系内部の光学素子32の位置(光学素子32を保持する可動部1の位置と考えても良い)を計測することができる。
【0063】
次に、波面収差計測装置について図10を用いて説明する。干渉計ユニット44からの光束を、ステージ上に設けたTS(Transfer Sphere)45を含む光学系に照射する。この光束のうち一部はTS45から干渉計ユニット44に戻され、他方は鏡筒25内に配置された投影光学系55を介し、さらにたとえばレチクル(或いはマスク)ステージ裏面に設けたRS(Reference Sphere)46で反射され、再度投影光学系55、およびTS45を経由して干渉計ユニット44に入り、前述の投影光学系55などを経由しなかった光束と干渉する。その強度分布から投影光学系55の波面収差を測定することができ、さらにTS45、およびRS46を駆動し、露光領域内の複数の点における波面収差を測定することで、各光学素子やウエハ面、マスク面の位置・角度を算出することができる。したがって、波面収差計測装置と光学素子微動機構61を用いて光学素子32の位置を補正することができる。
【0064】
次に、波面収差計測装置を用いた、光学素子32の位置決め方法について説明する。
【0065】
まず、可動部1と固定部2をキネマチックマウント62に突き当てる。次に、光学素子微動機構61を用いて、可動部1の位置制御を行う。位置決めセンサ63の値がある値(例えば0)になるように、可動部1の位置を移動すれば、可動部1を固定部2に対して位置決めすることができる。実施の形態1で述べたように、固定部の組み付け誤差や位置決めセンサ63の精度が数十nm程度であることから、各可動部の位置決め精度には、数十nmの誤差が生じている。そこで、各可動部の位置決め誤差を補正するために、波面収差計測装置を用いて、各光学素子32(可動部1)の位置計測を行い、光学素子微動機構61を用いて、光学素子32(可動部1)の位置を補正する。これにより要求される結像関係を得ることができる。
【0066】
一度、波面収差計測装置を用いて、各光学素子の位置補正を行えば、しばらくの間、非接触計測装置42の計測情報により、各光学素子の位置決めを行うことができる。しかし、非接触計測装置の計測が中断された場合は、波面収差計測装置による、各光学素子の位置補正をやり直す必要がある。また、露光を繰り返すうちに、露光熱により光学素子32が熱変形するなどの原因により、正確な結像関係が得られなくなる。そのため、正確な結像関係を維持するために、露光装置の使用開始時はもちろん、一定の期間ごとに波面収差計測装置による、各光学素子の位置補正を行う必要がある。一定の期間としては、例えば、露光装置の使用時間、露光したウエハの枚数、光学素子(レンズ或いはミラー)の温度上昇量、露光エネルギの積算量などがある。
【0067】
実施の形態1で述べた、テスト露光による各光学素子の位置補正を、波面収差計測装置を用いた位置補正と併用しても良い。
【0068】
(第3実施形態)
次に、光学素子位置決め装置の第3の実施形態について説明する。第3の実施の形態は、第1の実施の形態に基づくものであり、第1の実施の形態と異なる部分を中心に説明する。
【0069】
実施の形態3は、異なる可動部間の6軸方向の相対変位を非接触計測手段を用いて計測し、その計測情報を基に駆動機構29により可動部の位置決めを行うものである。図11にその概略を示す。
【0070】
非接触計測手段としてレーザ干渉計を用いる。可動部1aと可動部1b間の異なる3ヶ所のZ軸方向の相対変位を計測することにより、Z軸方向の相対変位、及びX、Y軸回りの相対角度を求める。また、可動部1aと可動部1b間の異なる2ヶ所のX軸方向の相対変位を計測することにより、X軸方向の相対変位、及びZ軸回りの相対角度を求める。更に、可動部1aと可動部1b間のY軸方向の相対変位を計測する。
【0071】
まず、Z軸方向の相対変位の計測方法を説明する。レーザ光源94からでたレーザ光は、可動部1bに固定された偏向ビームスプリッタ91により、計測光と参照光に分岐される。
【0072】
計測光は、1/4λ板98を通り、可動部1aに固定されたミラー96aで反射され、1/4λ板98を通り、偏向ビームスプリッタ91に戻ってくる。戻ってきた計測光は、コーナーキューブ92で反射され、再び偏向ビームスプリッタを通り、1/4λ板98を通り、可動部1aに固定されたミラー96aで反射され、1/4λ板98を通り、偏向ビームスプリッタを通った後、ディテクタ95に入る。
【0073】
偏向ビームスプリッタ91を出た参照光は、1/4λ板98を通り、可動部1bに固定されたミラー96bで反射され、1/4λ板98を通り、偏向ビームスプリッタ91を通った後、コーナーキューブで反射され、再び偏向ビームスプリッタ91を通る。その後、1/4λ板98を通り、可動部1bに固定されたミラー96bで反射され、1/4λ板98を通り、偏向ビームスプリッタ91を通った後、ディテクタ95に入る。ディテクタ95で計測光と参照光を干渉させることにより、可動部1aと可動部1bのZ軸方向の相対変位を計測することができる。
【0074】
次に、X、Y軸方向の相対変位の計測方法を説明する。X軸方向とY軸方向の計測方法は同じなので、X軸方向の計測方法を例に説明する。レーザ光源94から出たレーザ光は、可動部1bに固定された偏向ビームスプリッタ91により、計測光と参照光に分岐される。
【0075】
計測光は、1/4λ板98を通り、基準構造体41に固定されたバーミラー93で反射され、1/4λ板98を通り、偏向ビームスプリッタ91を通った後、コーナーキューブ92で反射され、再び偏向ビームスプリッタ91通る。その後、1/4λ板98を通り、バーミラー93で反射され、1/4λ板98を通り、偏向ビームスプリッタ91を通った後、ディテクタ95に入る。
【0076】
偏向ビームスプリッタ91出た参照光は、1/4λ板98を通り、可動部1bに固定されたミラー96bで反射され、1/4λ板98を通り、偏向ビームスプリッタ91を通った後、コーナーキューブ92で反射され、再び偏向ビームスプリッタ91通る。その後、1/4λ板98を通り、ミラー96bで反射され、1/4λ板98を通り、偏向ビームスプリッタ91を通った後、ディテクタ95に入る。
【0077】
ディテクタ95で計測光と参照光を干渉させることにより、可動部1bの基準構造体41に対するX軸方向の相対変位を計測することができる。
【0078】
同様に、可動部1aの基準構造体41に対するX軸方向の相対変位を計測し、可動部1bの基準構造体41に対するX軸方向の相対変位との差分をとることで、可動部1aと可動部1bのX軸方向の相対変位を求めることができる。
【0079】
上述した方法により計測された可動部1aと可動部1b間の6軸方向の相対変位情報を基に、補償器で可動部1a及び可動部1bの駆動機構29への指令値を演算する。ここでは、補償器としてPID補償器を用いる。
【0080】
以上のように、本実施の形態は、異なる光学素子32の相対変位を制御することにより、要求される結像関係を得ることができる。
【0081】
本実施の形態において、テスト露光による各光学素子の位置補正や、波面収差計測装置を用いた位置補正を行っても良い。
【0082】
(第4実施形態)
次に、光学素子位置決め装置の第4の実施形態について説明する。第4の実施の形態は、第3の実施の形態に基づくものであり、第3の実施の形態と異なる部分を中心に説明する。
【0083】
実施の形態4は、異なる可動部間の6軸方向の相対変位を非接触計測手段を用いて計測し、その計測情報を基に駆動機構29により可動部の位置決めを行うものである。図12にその概略を示す。
【0084】
非接触計測手段としてレーザ干渉計を用いる。可動部1aと可動部1b間の異なる3ヶ所のZ軸方向の相対変位を計測することにより、Z軸方向の相対変位、及びX、Y軸回りの相対角度を求める。また、可動部1aと可動部1b間の異なる2ヶ所のX軸方向の相対変位を計測することにより、X軸方向の相対変位、及びZ軸回りの相対角度を求める。更に、可動部1aと可動部1b間のY軸方向の相対変位を計測する。
【0085】
Z軸方向の相対変位の計測方法は、実施の形態3と同じである。
【0086】
次に、X、Y軸方向の相対変位の計測方法を説明する。レーザ光源94からでたレーザ光は、可動部1bに固定された偏向ビームスプリッタ91により、計測光aと計測光bに分岐される。
【0087】
計測光aは、1/4λ板98を通り、可動部1aに固定されたミラー96aで反射され、基準構造体41に固定されたバーミラー93で反射され、ミラー96aで反射され、1/4λ板98を通り、偏向ビームスプリッタ91を通った後、ディテクタ95に入る。
【0088】
計測光bは、1/4λ板98を通り、バーミラー93で反射され、1/4λ板98を通り、偏向ビームスプリッタ91を通った後、ディテクタ95に入る。ディテクタ95で計測光aと参照光bを干渉させることにより、可動部1aと可動部1bのX或いはY軸方向の相対変位とZ軸方向の相対変位を合わせた変位量を計測することができる。この変位量から先に計測したZ軸方向の相対変位を引くことで、X或いはY軸方向の相対変位を求めることができる。
【0089】
上述した方法により計測された可動部1aと可動部1b間の6軸方向の相対変位情報を基に、補償器により可動部1a及び可動部1bの駆動機構29への指令値を演算する。ここでは、補償器としてPID補償器を用いる。
【0090】
以上のように、本実施の形態は、異なる光学素子32の相対変位を制御することにより、要求される結像関係を得ることができる。
【0091】
本実施の形態において、テスト露光による各光学素子の位置補正や、波面収差計測装置を用いた位置補正を行っても良い。
【0092】
(第5実施形態)
次に、光学素子位置決め装置の第5の実施形態について説明する。第4の実施の形態は、第3の実施の形態に基づくものであり、第3の実施の形態と異なる部分を中心に説明する。
【0093】
実施の形態4は、異なる可動部間の6軸方向の相対変位を非接触計測手段を用いて計測し、その計測情報を基に駆動機構29により可動部の位置決めを行うものである。図12にその概略を示す。
【0094】
非接触計測手段としてレーザ干渉計を用いる。可動部1aと可動部1b間の異なる3ヶ所のZ軸方向の相対変位を計測することにより、Z軸方向の相対変位、及びX、Y軸回りの相対角度を求める。また、可動部1aと可動部1b間の異なる2ヶ所のX軸方向の相対変位を計測することにより、X軸方向の相対変位、及びZ軸回りの相対角度を求める。更に、可動部1aと可動部1b間のY軸方向の相対変位を計測する。
【0095】
Z軸方向の相対変位の計測方法は、実施の形態3と同じである。
【0096】
次に、X、Y軸方向の相対変位の計測方法を説明する。X軸方向とY軸方向の計測方法は同じなので、X軸方向の計測方法を例に説明する。レーザ光源94からでたレーザ光は、可動部1bに固定された偏向ビームスプリッタ91により、計測光と参照光に分岐される。
【0097】
計測光は、可動部1aに固定されたプリズム97により屈折され、1/4λ板98を通り、可動部1bに固定された傾斜ミラー99bで反射され、1/4λ板98を通り、再びプリズム97で屈折され、偏向ビームスプリッタ91を通った後、ディテクタ95に入る。ただし、傾斜ミラー99bの反射面と光学素子32のZ軸に直行する面がなす角は、プリズム97の入射光と射出光のなす角(図12のθ)に等しい。
【0098】
偏向ビームスプリッタ91を出た参照光は、1/4λ板98を通り、可動部1bに固定されたミラー96bで反射され、1/4λ板98を通り、偏向ビームスプリッタ91を通った後、ディテクタ95に入る。ディテクタ95で計測光と参照光を干渉させることにより、可動部1aと可動部1bのX軸方向の相対変位とZ軸方向の相対変位を合わせた変位量を計測することができる。この変位量から先に計測したZ軸方向の相対変位を引くことで、X軸方向の相対変位を求めることができる。また、プリズムによる屈折の大きさを変えることにより、X或いはY軸方向の計測の分解能を変えることができる。すなわち、図12のθが大きいほど(ただし、0°<θ<90°)、X或いはY方向の計測の分解能が向上する。
【0099】
上述した方法により計測された可動部1aと可動部1b間の6軸方向の相対変位情報を基に、補償器で可動部1a及び可動部1bの駆動機構29への指令値を演算する。ここでは、補償器としてPID補償器を用いる。
【0100】
以上のように、本実施の形態は、異なる光学素子32の相対変位を制御することにより、要求される結像関係を得ることができる。
【0101】
本実施の形態において、テスト露光による各光学素子の位置補正や、波面収差計測装置を用いた位置補正を行っても良い。
【0102】
次に、図14及び図15を参照して、上述の図1に示した露光装置を利用したデバイス製造方法の実施例を説明する。図14は、デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。本実施形態においては、半導体チップの製造を例に説明する。ステップ1(回路設計)では、デバイスの回路設計を行う。ステップ2(マスク製作)では、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。ステップ3(ウェハ製造)では、シリコンなどの材料を用いてウェハを製造する。ステップ4(ウェハプロセス)は、前工程と呼ばれ、マスクとウェハを用いてリソグラフィー技術によってウェハ上に実際の回路を形成する。ステップ5(組み立て)は、後工程と呼ばれ、ステップ4によって作成されたウェハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)では、ステップ5で作成された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テストなどの検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、それが出荷(ステップ7)される。
【0103】
図15は、ステップ4のウェハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ11(酸化)では、ウェハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)では、ウェハの表面に絶縁膜を形成する。ステップ14(イオン打ち込み)では、ウェハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)では、ウェハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では、露光装置によってマスクの回路パターンをウェハに露光する。ステップ17(現像)では、露光したウェハを現像する。ステップ18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによってウェハ上に多重に回路パターンが形成される。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。このように、上述の露光装置を使用するデバイス製造方法、並びに結果物としてのデバイスも本発明の一側面を構成する。
【0104】
本発明の実施態様は以下のように記載することができる。
(実施態様1) 光学素子を含む第1可動部と、第1固定部と、
前記第1固定部に対して前記第1可動部を駆動する第1駆動手段と、
前記第1可動部の前記第1固定部に対する位置を計測する第1計測手段と、
前記第1可動部の基準構造体に対する変位を計測する第2計測手段と、
前記第2計測手段の計測結果に基づいて、前記第1駆動手段を制御する第1補償器とを有し、
前記第1計測手段の計測結果に基づいて、前記第1駆動手段、前記第2計測手段及び前記第1補償器を用いて前記光学素子の位置決めを行うことを特徴とする光学素子位置決め装置。
(実施態様2) 前記光学素子を含む光学系の波面収差を計測する波面収差計測手段を有し、前記波面収差計測手段の計測結果に基づいて、前記光学素子の位置決めを行うことを特徴とする実施態様1記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様3) 前記第1駆動手段、前記第2計測手段及び前記第1補償器が、前記第1計測手段の計測結果に基づいて前記光学素子の位置決めを行った後、前記波面収差計測手段の計測結果に基づいて前記光学素子の位置決めを行うことを特徴とする実施態様2記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様4) 前記第1計測手段が静電容量センサを有することを特徴とする実施態様1乃至3いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様5) 前記第1計測手段が渦電流式センサを有することを特徴とする実施態様1乃至3いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様6) 前記第1計測手段が差動トランス式変位センサを有することを特徴とする実施態様1乃至3いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様7) 第1の光学素子を含む第1可動部と、第1固定部と、前記第1固定部に対して前記第1可動部を駆動する第1駆動手段と、第2の光学素子を含む第2可動部と、第2固定部と、前記第2固定部に対して前記第2可動部を駆動する第2駆動手段と、前記第1可動部と前記第2可動部の間の相対変位を計測する第3計測手段と、前記第3計測手段の計測情報を基に、前記第1駆動手段を制御する第1補償器と、前記第3計測手段の計測情報を基に、前記第2駆動手段を制御する第2補償器を有し、前記第1補償器と前記第2補償器とを用いて、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の位置決めを行うことを特徴とする光学素子位置決め装置。
(実施態様8) 前記第1光学素子及び前記第2光学素子を含む光学系の波面収差を計測する波面収差計測手段を有し、前記波面収差計測手段の計測結果に基づいて、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の位置決めを行うことを特徴とする実施態様7記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様9) 前記第3計測手段が、前記第1可動部と前記第2可動部との第1の方向に関する相対位置を3箇所以上において計測する第4計測手段と、前記第1可動部と前記第2可動部との前記第1の方向と垂直な第2の方向に関する相対位置を2箇所以上において計測する第5計測手段と、前記第1可動部と前記第2可動部との前記第1の方向及び前記第2の方向の両者に対して垂直な第3の方向に関する相対位置を1箇所以上において計測する第6計測手段とを有していることを特徴とする実施態様7又は8記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様10) 前記第1の方向が前記光学素子の光軸方向と略一致していることを特徴とする実施態様9記載の光学素子位置決め方法。
(実施態様11) 前記第4計測手段及び前記第5計測手段が、前記第1可動部に固定された第1ミラーと、前記第2可動部に固定された偏光ビームスプリッタと、前記第2可動部に固定された第2ミラーと、前記偏光ビームスプリッタと前記第1ミラーとの間及び前記偏光ビームスプリッタと前記第2ミラーの間に配置された1/4λ板と、前記偏光ビームスプリッタに対して前記第1ミラーの略反対側設けたレーザ光源とディテクタと、偏光ビームスプリッタに対して第2ミラーの略反対側に設けたコーナーキューブとを有することを特徴とする実施態様9又は10いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様12) 前記第4計測手段及び前記第5計測手段が、基準構造体に固定されたバーミラーと、第1可動部に固定された第1偏光ビームスプリッタと、可動部1に固定された第1ミラーと、第1偏光ビームスプリッタと第1ミラー及びバーミラーの間に設けた1/4λ板と、第1偏光ビームスプリッタに対して第1ミラーの略反対側設けた第1レーザ光源と第1ディテクタと、第1偏光ビームスプリッタに対してバーミラーの略反対側に設けた第1コーナーキューブと、第2可動部に固定された第2偏光ビームスプリッタと、第2可動部に固定された第2ミラーと、第2偏光ビームスプリッタと第2ミラー及びバーミラーの間に設けた1/4λ板と、第2偏光ビームスプリッタに対して第2ミラーの略反対側設けた第2レーザ光源と第2ディテクタと、第2偏光ビームスプリッタに対してバーミラーの略反対側に設けた第2コーナーキューブと、を有することを特徴とする実施態様9乃至11いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様13) 前記第4計測手段及び前記第5計測手段が、基準構造体に固定されたバーミラーと、第1可動部に固定された第1ミラーと、第2可動部に固定された偏光ビームスプリッタと、偏光ビームスプリッタと第1ミラー及びバーミラーの間に設けた1/4λ板と、偏光ビームスプリッタに対して第1ミラーの略反対側設けたレーザ光源と、偏光ビームスプリッタに対してバーミラーの略反対側に設けたディテクタとを有することを特徴とする9乃至12いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様14) 前記第4計測手段及び前記第5計測手段が、第1可動部に固定されたプリズムと、第2可動部に固定された偏光ビームスプリッタと、可動部2に固定されたミラーと、可動部2に固定された傾斜ミラーと、偏光ビームスプリッタとミラーの間に設けた1/4λ板と、プリズムと傾斜ミラーの間に設けた1/4λ板と、偏光ビームスプリッタに対してミラーの略反対側設けたディテクタと、偏光ビームスプリッタに対してプリズムの略反対側に設けたレーザ光源とを有することを特徴とする実施態様9乃至13いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様15) 前記第2計測手段がレーザ干渉計、エンコーダ、静電容量センサ、渦電流式センサ、差動トランス式変位センサのいずれかを有することを特徴とする実施態様1乃至6いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様16) 前記第3計測手段がエンコーダ、静電容量センサ、渦電流式センサ、差動トランス式変位センサのいずれかを有することを特徴とする実施態様7乃至14いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様17) 前記第1駆動手段、及び前記第2駆動手段の少なくとも一方がリニアモータを用いた6軸微動機構を用いることを特徴とする実施態様1乃至16いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様18) 前記第1駆動手段、及び前記第2駆動手段の少なくとも一方が電磁石アクチュエータを用いた6軸微動機構を用いることを特徴とする実施態様1乃至17いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様19) 前記第1駆動手段、及び前記第2駆動手段の少なくとも一方が圧電素子を用いた6軸微動機構を用いることを特徴とする実施態様1乃至17いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様20) 前記光学素子を冷却する冷却手段を有し、該冷却手段を前記光学素子位置決め装置の前記第1固定部及び/又は前記第2固定部に設けることを特徴とする実施態様1乃至19いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様21) 前記冷却手段がペルチェ素子を有することを特徴とする実施態様20記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様22) 前記第1可動部と前記第1固定部との間及び/又は前記第2可動部と前記第2固定部との間に真空隔壁を有することを特徴とする実施態様1乃至21いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様23) 前記真空隔壁の前記第1可動部側の空間及び/又は前記真空隔壁の前記第2可動部側の空間が高真空であることを特徴とする実施態様22記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様24) 前記真空隔壁に電解研磨されたアルミニウム、電解研磨されたステンレス、チタン、セラミックス、フッ素系樹脂、ガラスのいずれかを用いることを特徴とする実施態様22又は23記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様25) 前記第1可動部を包含する鏡筒を有し、該鏡筒の開口部に差動排気を用いる、あるいは該鏡筒の開口部にパージガスを流すことを特徴とする実施態様1乃至24いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様26) 前記パージガスはヘリウムであることを特徴とする実施態様25記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様27) 前記第1可動部を包含する鏡筒を有し、該鏡筒の開口部にフィルタを有することを特徴とする実施態様1乃至26いずれかに記載の光学素子位置決め装置。
(実施態様28) 前記フィルタにポリプロピレン、ジルコニウム、ボロン、シリコン、窒化シリコン、ベリリウムのいずれかを用いることを特徴とする実施態様27記載の光学素子位置決め装置。
【0105】
【発明の効果】
本発明によれば、光学素子の高精度な位置決め及び、高真空な鏡筒空間を実現することができる。
【0106】
本出願に係る第1の発明によれば、光学素子を含む可動部の固定部に対する位置決め精度を向上し、更に、可動部を基準構造体に対して6軸方向の位置決め制御を行うことができる。
【0107】
本出願に係る第2の発明によれば、露光装置本体に波面収差計測装置を搭載し、波面収差計測装置の計測情報を用いて、光学素子の位置決めを行うことができる。
【0108】
本出願に係る第7の発明によれば、異なる可動部間の6軸方向の相対変位を非接触計測手段を用いて計測し、その計測情報を基に可動部の位置を補正することができる。
【0109】
本出願に係る第8の発明によれば、露光装置本体に波面収差計測装置を搭載し、波面収差計測装置の計測情報を用いて、異なる光学素子間の相対位置補正を行うことができる。
【0110】
本出願に係る第21の発明によれば、光学素子の冷却手段を光学素子位置決め装置の固定部に設け、光学素子に冷却手段により発生する振動が伝達するのを防ぐことができる。
本出願に係る第23の発明によれば、光学素子を含む可動部と固定部の間に真空隔壁を設け、光学素子周辺を高真空に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の概略図。
【図2】光学素子位置決め装置。
【図3】可動部を示す図。
【図4】固定部を示す図。
【図5】可動子の詳細を示す図。
【図6】真空隔壁の実施例を示す図。
【図7】真空隔壁の実施例を示す図。
【図8】フィルタの実施例を示す図。
【図9】パージガスの実施例を示す図。
【図10】第2実施形態の概略図。
【図11】第3実施形態の概略図。
【図12】第4実施形態の概略図。
【図13】第5実施形態の概略図。
【図14】デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。
【図15】図14に示すステップ4のウェハプロセスの詳細なフローチャートである。
【符号の説明】
1 可動部
2 固定部
5 センサターゲット
9a、9b、9c Z可動子
10a、10b X可動子
13a、13b Y可動子
14a、14b、14c Z固定子
15a、15b X固定子
16a、16b Y固定子
17 磁石
19 ヨーク
20 側壁
21 自重補償ばね
22 ベース
23 マウント
24 構造体フレーム
25 鏡筒
26 排気系
27 ウエハステージ
28 ウエハ
29 駆動機構
30 光学要素保持ブロック
31 保持機構
32 光学素子
41 基準構造体
42 非接触計測手段
43 ステージ
44 干渉計ユニット
45 TS
46 RSミラー
51 レチクルステージ
52 照明光学系
53 光源
55 投影光学系
61 光学素子微動機構
62 キネマチックマウント
63 位置決めセンサ
64 センサターゲット
65 非接触計測手段
71 冷却手段
80 鏡筒空間
81 真空隔壁
83 フィルタ
84 ステージ空間
85 開口部
86 パージガス
91 偏向ビームスプリッタ
92 コーナーキューブ
93 バーミラー
94 レーザ光源
95 ディテクタ
96 ミラー
97 プリズム
98 1/4λ板
99 傾斜ミラー

Claims (1)

  1. 光学素子を含む第1可動部と、第1固定部と、
    前記第1固定部に対して前記第1可動部を駆動する第1駆動手段と、
    前記第1可動部の前記第1固定部に対する位置を計測する第1計測手段と、
    前記第1可動部の基準構造体に対する変位を計測する第2計測手段と、
    前記第2計測手段の計測結果に基づいて、前記第1駆動手段を制御する第1補償器とを有し、
    前記第1計測手段の計測結果に基づいて、前記第1駆動手段、前記第2計測手段及び前記第1補償器を用いて前記光学素子の位置決めを行うことを特徴とする光学素子位置決め装置。
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