JP2004327208A - 電子放出源およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】FEDでは、引き出し電圧の低減および低消費電力化が要望されており、そのためには、より低電圧で必要な電流密度を得られる電子源が望まれている。本発明は、リモートグリッド方式において、より低電圧で電子放出するカーボンナノチューブ電子源についてである。
【解決手段】一画素内の配向性カーボンナノチューブ膜を、2つ以上に分割した形状にパターン形成する。
【選択図】図4
【解決手段】一画素内の配向性カーボンナノチューブ膜を、2つ以上に分割した形状にパターン形成する。
【選択図】図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はカーボンナノチューブからなるリモートグリッド方式の電子放出源、特に自発光型平面表示装置、薄型壁掛けテレビ等に使用する電子放出源およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自発光型平面表示装置としては、電界を印加することで電子を放出させ、放出した電子を蛍光板に衝突させることで発光表示するフィールドエミッションディスプレイ(FED)が知られている。また、蛍光表示管やFEDなどの蛍光表示装置において、カーボンナノチューブを用いて電子放出源を構成する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。カーボンナノチューブは炭素六員環が連なり円筒形をなす構造体であり、その直径は1〜50nm程度である。カーボンナノチューブ電子源は、先端の曲率半径が小さい、化学的に安定、機械的に強靭、電気伝導性に優れている、高温でも安定といった優れた性質があるため最近注目されており、1998年以降、活発な報告がなされている(例えば、非特許文献1、特許文献3参照)。
【0003】
カーボンナノチューブを用いた電子放出源は、カーボンナノチューブを平坦な電極上に複数配置した構造をしており、その電極からある程度離れた位置に電子引き出し電極を設け、電圧を印加することにより、カーボンナノチューブの微細な先端に電界を集中させ、そこから電子を電界放出させることができる。カーボンナノチューブ先端と電子引き出し電極の距離が短いほど、低電圧で電子を放出することが知られている。また、カーボンナノチューブの形状としては、管径がより細い方が電界集中しやすく、より低電圧で電子を放出することが知られている。本発明者らは、高さ10μm以上、管径10nm以下のカーボンナノチューブからなる配向膜の製造に成功しており(例えば、特許文献4参照)、該配向膜からの電子放出にも成功した。
【0004】
ところで、FEDの構造としては、大きく分けて、近接ゲート方式とリモートグリッド方式の2つの方式がある(例えば、非特許文献1参照)。前者は、微細加工技術を用いて、ゲートをナノチューブ電子源の周囲に配置した構造をしている(図2参照)。当方式は、一画素に対し数百以上の微細なナノチューブ電子源を用いることで各電子源の電子放出能力のばらつきを平均化できる利点があるが、製造工程が複雑である。一方、後者は一画素に対し一個のナノチューブ電子源を配置する(図1参照)。当方式は、製造工程が容易であるものの、各画素間の均一性に課題があった。この課題を解決できる方法としては、均一な配向性カーボンナノチューブ膜をパターン形成し、各画素を均一に作製できる技術が開示されている(例えば、特許文献4、5、6参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−012124号公報
【特許文献2】特開平11−111161号公報
【特許文献3】特開2003−100198号公報
【特許文献4】特開2002−338221号公報
【特許文献5】WO00−30141
【特許文献6】WO00−73203
【非特許文献1】齋藤弥八、カーボンナノチューブ電子源とその応用、月刊ディスプレイ、テクノタイムス社発行、2001年7月号、pp60−64
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
FEDでは、引き出し電圧の低減および低消費電力化が要望されており、そのためには、より低電圧で必要な電流密度を得られる電子源が望まれている。本発明の目的は、リモートグリッド方式において、より低電圧で電子放出するカーボンナノチューブ電子源を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記電子源を開発することを目的に、配向性カーボンナノチューブ膜を製造し、その電界放出能向上について鋭意研究した結果、配向性カーボンナノチューブ膜塊の周辺部より強く電子が放出することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、電極基板上に形成された配向性カーボンナノチューブ膜より電子を放出するリモートグリッド方式の電子放出源であって、一画素内の配向性カーボンナノチューブ膜が、2つ以上に分割した形状にパターン形成されていることを特徴とする電子放出源に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる電子源としては、配向性カーボンナノチューブ膜が用いられる。配向性カーボンナノチューブ膜は、カーボンナノチューブの向きおよび高さが揃っていることが特長である。カーボンナノチューブの向きが揃っていることにより、均一な電子放出源となる。また、高さが揃っていることにより、カーボンナノチューブ先端と電極の距離を短くすることができ、より低電圧での電子放出が可能となる。本発明で用いられるカーボンナノチューブは、管径のより細い方が望ましい。より細い方が電界集中しやすく、より低電圧で電子を放出する。好ましい管径は50nm以下、より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下である。層数については特に規定はしないが、管径を細くすることにより、おのずと層数は少なくなる。
【0009】
本発明で用いられるカーボンナノチューブは、グラファイト純度の高いものが好ましい。グラファイト化度が高いことにより、電界をカーボンナノチューブ先端へ有効に伝えられる、劣化しにくい、不純物の遊離が少ないといった大きな利点がある。本発明で用いられる配向性カーボンナノチューブ膜のカーボンナノチューブ密度は、ある程度高い方が好ましい。通常密度が高すぎると、電界の集中が起こりにくく、一定の電流密度を得るのに高い電圧を必要とするため好ましくないのであるが、本発明においては、配向性カーボンナノチューブ膜塊の周辺から電子放出するため、特に問題ない。密度が低い場合、電界の集中に関しては好適である。ただし、低すぎると、一方向への配向が困難になる。また、カーボンナノチューブ数本の劣化により、電子放出能に大きな影響を及ぼしてしまう。そこで、好ましいカーボンナノチューブ密度は、1〜1000000本/μm2、より好ましくは、100〜100000本/μm2である。
【0010】
続いて、配向性カーボンナノチューブ膜の形状であるが、本発明において、配向性カーボンナノチューブ膜塊の周辺部より強く電子が放出するため、周囲長さが長いほうが好ましい。ただし、一画素中にカーボンナノチューブが占める面積、形状は限られてくる。限られた面積、形状で周囲長さを長くする方法として、配向性カーボンナノチューブ膜を2つ以上に分割する方法を用いる。分割することにより、限られた画素内で周囲長さを長くすることができる。分割した際の形状に特に制限はないが、一画素内で均一に電子を放出するために、上下左右対称のほうが好ましい。また、分割する個数は多いほど好ましいが、加工精度上の限度はある。図3〜5に5mm四方の四角を分割した際の形状と周囲長さについて記すが、本発明はこの例に限られるものではない。図7は全く分割しない場合である。周囲長さはこの例では20mmとなる。分割した場合、図3、4に示すように、分割数が多いほど周囲長さが長くなる。25に分割した図4では、周囲長さが75mmにも達する。図5は2つに分割した別の例である。分割数が同じでも形状によって周囲長さが異なる。なお、分割により、配向性カーボンナノチューブが完全に分かれてなくても良い。つまり、周囲長さが長くなりさえすれば、分割した配向性カーボンナノチューブ膜がつながっていても良い。この形状例を図6に示すが、本発明はこの例に限られるものではない。
【0011】
本発明における電子源を製造するには、配向性カーボンナノチューブ膜を任意の形状にパターン形成する必要がある。任意の形状を形成する方法としては、3つの方法がある。一つは、配向性カーボンナノチューブ膜を基板上の選択された部位で成長させることによりパターン形成を行う方法である。当方法は、例えば、配向性カーボンナノチューブ膜を基板上に直接製造する場合、触媒粒子のパターン形成によって可能である。触媒粒子のパターン形成には、マスキング、スクリーン印刷、インクジェット法やリソグラフィー等により行うことができる。
【0012】
二つ目として、カーボンナノチューブを基板上の選択された部位に貼り付けることによりパターン形成を行う方法がある。当方法の一つは、カーボンナノチューブと接合する部分を、貼り付ける基板にあらかじめパターン形成しておき、該基板にカーボンナノチューブを貼り付ける方法である。カーボンナノチューブを接合する部分には、ポリマー、低融点金属、導電性ペースト等の接着剤が用いられる。また、基板自体をカーボンナノチューブと接着性のあるものにすることもできる。接合する部分のパターン形成には、接着剤または基板接着部のパターン形成の他に、基板に凹凸をつけ凸の部分にだけ貼り付ける方法もある。
【0013】
もう一つの方法として、全面接着性の基板に、スクリーン印刷やインクジェット等によりカーボンナノチューブを選択された部位に配置する方法もある。貼り付けの原料となるカーボンナノチューブは、配向膜が好ましい。配向膜であれば、貼り付けを行っても配向が維持されるため、長さおよび向きを揃えるのが容易である。貼り付け前のカーボンナノチューブは配向していないばらばらの状態でも良い。ただし、カーボンナノチューブが配向する貼り付け方法を行う必要がある。
【0014】
三つ目として、一塊の配向性カーボンナノチューブ膜より選択された部位以外のカーボンナノチューブを除去することによりパターン形成を行う方法がある。除去する方法としては、電子線やレーザー等のリソグラフィー、部分転写等が挙げられる。
【0015】
上述のパターン形成された配向性カーボンナノチューブ膜を電極基板上に設置することにより、電子放出源となる。電極基板上への設置は通常、貼り付けによって行われる。しかし、上述のパターン形成された配向性カーボンナノチューブ膜を製造する際に電極基板を用いれば、貼り付けの必要はない。
【0016】
このようにして製造された電子放出源は、従来にない低電圧で均一な電子放出を行うことができる。このため、FEDの低電圧駆動および省電力化が行える。
【0017】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明の方法を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(1.配向性カーボンナノチューブ膜の作製)
30mm四方のシリカアルミナ板にアルミニウムを真空蒸着した。また、触媒液として、硝酸コバルト4水和物の5.7%溶液にアンモニア水を0.2ml添加した溶液を用意した。この触媒液に前述のアルミ蒸着基板を浸漬し、400℃で焼成した。この基板をアルゴン気流下700℃に昇温した後、プロピレンガス120ml/分、アルゴンガス360ml/分の混合ガスを8分間流した。反応終了冷却後、基板を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、高さ50μmの配向性カーボンナノチューブ膜が生成した。
【0018】
(2.配向性カーボンナノチューブ膜の電極基板への貼り付けおよびパターン形成)
アルミニウムを真空蒸着したガラス板に、導電性銀ペーストをパターン形成した。パターンの形状は、1mm四方の四角を縦5列、横5列の25箇所とした。各四角間の距離は0.2mmとした。つまり、パターンの大きさは5.8mm四方とした。これに上述のシリカアルミナ基板上の配向性カーボンナノチューブ膜を貼り付け、110℃で10MPaの圧力をかけた後、100℃で1時間加熱し、シリカアルミナ基板を剥がした。電極ガラス基板上には25個の配向性カーボンナノチューブ膜を形成できた。周辺長さは100mmとなる。
【0019】
(3.電子放出実験)
上述のパターン形成した配向性カーボンナノチューブ膜を陰極とし、アルミニウム蒸着後金スパッターを施したスライドガラス板を陽極とした。両電極を厚み100〜250μmのスライドガラスで仕切ることにより、該配向性カーボンナノチューブ膜と陽極との距離を調節しながら、10−6Paの真空中で二極型の電界電子放出実験を行った。
【0020】
(比較例1)
パターン形成の形状として、5.8mm四方の四角とした他は実施例と同様に行った。周辺長さは23.2mmとなる。
【0021】
実施例1と比較例1の電子放出実験結果を図8に示す。図は、電流密度が10mA/cm2に達するのに必要な電圧値である。低電圧で目標電流密度が得られる電子放出源が望ましい。微細なパターン形成により、20〜30Vの低電圧化を達成した。
【0022】
【発明の効果】
本発明のカーボンナノチューブを用いた電子放出源により、従来にない低電圧で均一な電子放出を行うことができる。このため、FEDの低電圧駆動および省電力化が行える
【図面の簡単な説明】
【図1】リモートグリッド方式(一画素)
【図2】近接ゲート方式(一画素)
【図3】2つに分割した配向性カーボンナノチューブ膜の例1
【図4】25に分割した配向性カーボンナノチューブ膜
【図5】2つに分割した配向性カーボンナノチューブ膜の例2
【図6】分割した配向性カーボンナノチューブ膜がつながってる例
【図7】全く分割していない配向性カーボンナノチューブ膜
【図8】電子放出実験結果
【符号の説明】
1.ガラス板
2.蛍光体
3.金属膜
4.グリッド
5.絶縁体
6.陰極基板
7.電子源(配向性カーボンナノチューブ膜)
8.ゲート
【発明の属する技術分野】
本発明はカーボンナノチューブからなるリモートグリッド方式の電子放出源、特に自発光型平面表示装置、薄型壁掛けテレビ等に使用する電子放出源およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自発光型平面表示装置としては、電界を印加することで電子を放出させ、放出した電子を蛍光板に衝突させることで発光表示するフィールドエミッションディスプレイ(FED)が知られている。また、蛍光表示管やFEDなどの蛍光表示装置において、カーボンナノチューブを用いて電子放出源を構成する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。カーボンナノチューブは炭素六員環が連なり円筒形をなす構造体であり、その直径は1〜50nm程度である。カーボンナノチューブ電子源は、先端の曲率半径が小さい、化学的に安定、機械的に強靭、電気伝導性に優れている、高温でも安定といった優れた性質があるため最近注目されており、1998年以降、活発な報告がなされている(例えば、非特許文献1、特許文献3参照)。
【0003】
カーボンナノチューブを用いた電子放出源は、カーボンナノチューブを平坦な電極上に複数配置した構造をしており、その電極からある程度離れた位置に電子引き出し電極を設け、電圧を印加することにより、カーボンナノチューブの微細な先端に電界を集中させ、そこから電子を電界放出させることができる。カーボンナノチューブ先端と電子引き出し電極の距離が短いほど、低電圧で電子を放出することが知られている。また、カーボンナノチューブの形状としては、管径がより細い方が電界集中しやすく、より低電圧で電子を放出することが知られている。本発明者らは、高さ10μm以上、管径10nm以下のカーボンナノチューブからなる配向膜の製造に成功しており(例えば、特許文献4参照)、該配向膜からの電子放出にも成功した。
【0004】
ところで、FEDの構造としては、大きく分けて、近接ゲート方式とリモートグリッド方式の2つの方式がある(例えば、非特許文献1参照)。前者は、微細加工技術を用いて、ゲートをナノチューブ電子源の周囲に配置した構造をしている(図2参照)。当方式は、一画素に対し数百以上の微細なナノチューブ電子源を用いることで各電子源の電子放出能力のばらつきを平均化できる利点があるが、製造工程が複雑である。一方、後者は一画素に対し一個のナノチューブ電子源を配置する(図1参照)。当方式は、製造工程が容易であるものの、各画素間の均一性に課題があった。この課題を解決できる方法としては、均一な配向性カーボンナノチューブ膜をパターン形成し、各画素を均一に作製できる技術が開示されている(例えば、特許文献4、5、6参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−012124号公報
【特許文献2】特開平11−111161号公報
【特許文献3】特開2003−100198号公報
【特許文献4】特開2002−338221号公報
【特許文献5】WO00−30141
【特許文献6】WO00−73203
【非特許文献1】齋藤弥八、カーボンナノチューブ電子源とその応用、月刊ディスプレイ、テクノタイムス社発行、2001年7月号、pp60−64
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
FEDでは、引き出し電圧の低減および低消費電力化が要望されており、そのためには、より低電圧で必要な電流密度を得られる電子源が望まれている。本発明の目的は、リモートグリッド方式において、より低電圧で電子放出するカーボンナノチューブ電子源を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記電子源を開発することを目的に、配向性カーボンナノチューブ膜を製造し、その電界放出能向上について鋭意研究した結果、配向性カーボンナノチューブ膜塊の周辺部より強く電子が放出することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、電極基板上に形成された配向性カーボンナノチューブ膜より電子を放出するリモートグリッド方式の電子放出源であって、一画素内の配向性カーボンナノチューブ膜が、2つ以上に分割した形状にパターン形成されていることを特徴とする電子放出源に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる電子源としては、配向性カーボンナノチューブ膜が用いられる。配向性カーボンナノチューブ膜は、カーボンナノチューブの向きおよび高さが揃っていることが特長である。カーボンナノチューブの向きが揃っていることにより、均一な電子放出源となる。また、高さが揃っていることにより、カーボンナノチューブ先端と電極の距離を短くすることができ、より低電圧での電子放出が可能となる。本発明で用いられるカーボンナノチューブは、管径のより細い方が望ましい。より細い方が電界集中しやすく、より低電圧で電子を放出する。好ましい管径は50nm以下、より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下である。層数については特に規定はしないが、管径を細くすることにより、おのずと層数は少なくなる。
【0009】
本発明で用いられるカーボンナノチューブは、グラファイト純度の高いものが好ましい。グラファイト化度が高いことにより、電界をカーボンナノチューブ先端へ有効に伝えられる、劣化しにくい、不純物の遊離が少ないといった大きな利点がある。本発明で用いられる配向性カーボンナノチューブ膜のカーボンナノチューブ密度は、ある程度高い方が好ましい。通常密度が高すぎると、電界の集中が起こりにくく、一定の電流密度を得るのに高い電圧を必要とするため好ましくないのであるが、本発明においては、配向性カーボンナノチューブ膜塊の周辺から電子放出するため、特に問題ない。密度が低い場合、電界の集中に関しては好適である。ただし、低すぎると、一方向への配向が困難になる。また、カーボンナノチューブ数本の劣化により、電子放出能に大きな影響を及ぼしてしまう。そこで、好ましいカーボンナノチューブ密度は、1〜1000000本/μm2、より好ましくは、100〜100000本/μm2である。
【0010】
続いて、配向性カーボンナノチューブ膜の形状であるが、本発明において、配向性カーボンナノチューブ膜塊の周辺部より強く電子が放出するため、周囲長さが長いほうが好ましい。ただし、一画素中にカーボンナノチューブが占める面積、形状は限られてくる。限られた面積、形状で周囲長さを長くする方法として、配向性カーボンナノチューブ膜を2つ以上に分割する方法を用いる。分割することにより、限られた画素内で周囲長さを長くすることができる。分割した際の形状に特に制限はないが、一画素内で均一に電子を放出するために、上下左右対称のほうが好ましい。また、分割する個数は多いほど好ましいが、加工精度上の限度はある。図3〜5に5mm四方の四角を分割した際の形状と周囲長さについて記すが、本発明はこの例に限られるものではない。図7は全く分割しない場合である。周囲長さはこの例では20mmとなる。分割した場合、図3、4に示すように、分割数が多いほど周囲長さが長くなる。25に分割した図4では、周囲長さが75mmにも達する。図5は2つに分割した別の例である。分割数が同じでも形状によって周囲長さが異なる。なお、分割により、配向性カーボンナノチューブが完全に分かれてなくても良い。つまり、周囲長さが長くなりさえすれば、分割した配向性カーボンナノチューブ膜がつながっていても良い。この形状例を図6に示すが、本発明はこの例に限られるものではない。
【0011】
本発明における電子源を製造するには、配向性カーボンナノチューブ膜を任意の形状にパターン形成する必要がある。任意の形状を形成する方法としては、3つの方法がある。一つは、配向性カーボンナノチューブ膜を基板上の選択された部位で成長させることによりパターン形成を行う方法である。当方法は、例えば、配向性カーボンナノチューブ膜を基板上に直接製造する場合、触媒粒子のパターン形成によって可能である。触媒粒子のパターン形成には、マスキング、スクリーン印刷、インクジェット法やリソグラフィー等により行うことができる。
【0012】
二つ目として、カーボンナノチューブを基板上の選択された部位に貼り付けることによりパターン形成を行う方法がある。当方法の一つは、カーボンナノチューブと接合する部分を、貼り付ける基板にあらかじめパターン形成しておき、該基板にカーボンナノチューブを貼り付ける方法である。カーボンナノチューブを接合する部分には、ポリマー、低融点金属、導電性ペースト等の接着剤が用いられる。また、基板自体をカーボンナノチューブと接着性のあるものにすることもできる。接合する部分のパターン形成には、接着剤または基板接着部のパターン形成の他に、基板に凹凸をつけ凸の部分にだけ貼り付ける方法もある。
【0013】
もう一つの方法として、全面接着性の基板に、スクリーン印刷やインクジェット等によりカーボンナノチューブを選択された部位に配置する方法もある。貼り付けの原料となるカーボンナノチューブは、配向膜が好ましい。配向膜であれば、貼り付けを行っても配向が維持されるため、長さおよび向きを揃えるのが容易である。貼り付け前のカーボンナノチューブは配向していないばらばらの状態でも良い。ただし、カーボンナノチューブが配向する貼り付け方法を行う必要がある。
【0014】
三つ目として、一塊の配向性カーボンナノチューブ膜より選択された部位以外のカーボンナノチューブを除去することによりパターン形成を行う方法がある。除去する方法としては、電子線やレーザー等のリソグラフィー、部分転写等が挙げられる。
【0015】
上述のパターン形成された配向性カーボンナノチューブ膜を電極基板上に設置することにより、電子放出源となる。電極基板上への設置は通常、貼り付けによって行われる。しかし、上述のパターン形成された配向性カーボンナノチューブ膜を製造する際に電極基板を用いれば、貼り付けの必要はない。
【0016】
このようにして製造された電子放出源は、従来にない低電圧で均一な電子放出を行うことができる。このため、FEDの低電圧駆動および省電力化が行える。
【0017】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明の方法を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(1.配向性カーボンナノチューブ膜の作製)
30mm四方のシリカアルミナ板にアルミニウムを真空蒸着した。また、触媒液として、硝酸コバルト4水和物の5.7%溶液にアンモニア水を0.2ml添加した溶液を用意した。この触媒液に前述のアルミ蒸着基板を浸漬し、400℃で焼成した。この基板をアルゴン気流下700℃に昇温した後、プロピレンガス120ml/分、アルゴンガス360ml/分の混合ガスを8分間流した。反応終了冷却後、基板を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、高さ50μmの配向性カーボンナノチューブ膜が生成した。
【0018】
(2.配向性カーボンナノチューブ膜の電極基板への貼り付けおよびパターン形成)
アルミニウムを真空蒸着したガラス板に、導電性銀ペーストをパターン形成した。パターンの形状は、1mm四方の四角を縦5列、横5列の25箇所とした。各四角間の距離は0.2mmとした。つまり、パターンの大きさは5.8mm四方とした。これに上述のシリカアルミナ基板上の配向性カーボンナノチューブ膜を貼り付け、110℃で10MPaの圧力をかけた後、100℃で1時間加熱し、シリカアルミナ基板を剥がした。電極ガラス基板上には25個の配向性カーボンナノチューブ膜を形成できた。周辺長さは100mmとなる。
【0019】
(3.電子放出実験)
上述のパターン形成した配向性カーボンナノチューブ膜を陰極とし、アルミニウム蒸着後金スパッターを施したスライドガラス板を陽極とした。両電極を厚み100〜250μmのスライドガラスで仕切ることにより、該配向性カーボンナノチューブ膜と陽極との距離を調節しながら、10−6Paの真空中で二極型の電界電子放出実験を行った。
【0020】
(比較例1)
パターン形成の形状として、5.8mm四方の四角とした他は実施例と同様に行った。周辺長さは23.2mmとなる。
【0021】
実施例1と比較例1の電子放出実験結果を図8に示す。図は、電流密度が10mA/cm2に達するのに必要な電圧値である。低電圧で目標電流密度が得られる電子放出源が望ましい。微細なパターン形成により、20〜30Vの低電圧化を達成した。
【0022】
【発明の効果】
本発明のカーボンナノチューブを用いた電子放出源により、従来にない低電圧で均一な電子放出を行うことができる。このため、FEDの低電圧駆動および省電力化が行える
【図面の簡単な説明】
【図1】リモートグリッド方式(一画素)
【図2】近接ゲート方式(一画素)
【図3】2つに分割した配向性カーボンナノチューブ膜の例1
【図4】25に分割した配向性カーボンナノチューブ膜
【図5】2つに分割した配向性カーボンナノチューブ膜の例2
【図6】分割した配向性カーボンナノチューブ膜がつながってる例
【図7】全く分割していない配向性カーボンナノチューブ膜
【図8】電子放出実験結果
【符号の説明】
1.ガラス板
2.蛍光体
3.金属膜
4.グリッド
5.絶縁体
6.陰極基板
7.電子源(配向性カーボンナノチューブ膜)
8.ゲート
Claims (7)
- 電極基板上に形成された配向性カーボンナノチューブ膜より電子を放出するリモートグリッド方式の電子放出源であって、一画素内の配向性カーボンナノチューブ膜が、2つ以上に分割した形状にパターン形成されていることを特徴とする電子放出源。
- 請求項1記載の電子放出源の製造方法において、配向性カーボンナノチューブ膜のパターン形成を電極基板上で行うことによって製造することを特徴とする電子放出源の製造方法。
- 請求項1記載の電子放出源の製造方法において、配向性カーボンナノチューブ膜のパターン形成を別の基板上で行い、パターン形成された該配向性カーボンナノチューブ膜を電極基板に貼り付けることによって製造することを特徴とする電子放出源の製造方法。
- 配向性カーボンナノチューブ膜を基板上の選択された部位で成長させることによりパターン形成を行うことを特徴とする、請求項2または3記載の電子放出源の製造方法。
- カーボンナノチューブを基板上の選択された部位に貼り付けることによりパターン形成を行うことを特徴とする、請求項2または3記載の電子放出源の製造方法。
- カーボンナノチューブが配向性カーボンナノチューブ膜であることを特徴とする請求項5記載の電子放出源の製造方法。
- 一塊の配向性カーボンナノチューブ膜より選択された部位以外のカーボンナノチューブを除去することによりパターン形成を行うことを特徴とする、請求項2または3記載の電子放出源の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003119634A JP2004327208A (ja) | 2003-04-24 | 2003-04-24 | 電子放出源およびその製造方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003119634A JP2004327208A (ja) | 2003-04-24 | 2003-04-24 | 電子放出源およびその製造方法 |
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ID=33498809
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006351231A (ja) * | 2005-06-13 | 2006-12-28 | Asahi Kasei Corp | 金属酸化物構造体の製造方法 |
JP2007227076A (ja) * | 2006-02-22 | 2007-09-06 | Dialight Japan Co Ltd | 電界放射型電子源およびその製造方法 |
JP2011098885A (ja) * | 2008-02-29 | 2011-05-19 | National Institute Of Advanced Industrial Science & Technology | カーボンナノチューブ膜構造体及びカーボンナノチューブマイクロ構造体 |
-
2003
- 2003-04-24 JP JP2003119634A patent/JP2004327208A/ja active Pending
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