JP2004241295A - カーボンナノチューブを用いた電子放出素子用電極材料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板(1) 表面に所要パターンで凹部(5) と凸(4) 部を形成しておき、基板表面全体に触媒粒子からなる薄膜(6) を形成し、薄膜上に化学蒸着法を施すことにより凸部上の薄膜表面の触媒粒子を核としてブラシ状カーボンナノチューブ(7) を成長させる。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラシ状カーボンナノチューブおよびその製造方法、これを用いた電子放出素子用電極材料およびフィールドエミッション型フラットパネルディスプレイに関する。
【0002】
【従来の技術】
フィールドエミッション(電界電子放出)は、針状エミッタの先端から高密度のトンネル電流を引き出すことにより得られるため、電子ビームは高輝度でそのエネルギー幅も狭い。この性質を利用して、低消費電力・高輝度・高視野角が実現できるフィールドエミッション型フラットパネルディスプレイ(FED)が開発されつつある。
【0003】
カーボンナノチューブは、シリコンやモリブデンで作られたスピント型エミッタやダイヤモンド薄膜などの従来の電子放出素材に比べて、電流密度、駆動電圧、頑健さ、寿命などの特性において総合的に優れており、FED用電子源として現在最も有望と目されている。これは、カーボンナノチューブが大きなアスペクト比(長さと直径の比)と鋭い先端とを持ち、化学的に安定で機械的にも強靱であり、しかも、高温での安定性に優れているなど、電界放出のエミッタ材料として有利な物理化学的性質を備えているからである。
【0004】
カーボンナノチューブを電子源とするFEDパネルの構造を図10に模式的に示す。同図において、(41)(42)は上下一対のガラス板であり、下側のガラス板(42)の上面に陰極となる電極(43)が貼り付けられ、この陰極(43)にエミッターとなる多数のカーボンナノチューブ(44)が形成されている。また、上側のガラス板(41)の下面には、蛍光層(RGB)(45)が設けられ、この下面に、カーボンナノチューブの先端から放出される電子を受ける陽極となる透明性ITO (Indium Tin Oxide)膜(46)が貼り付けられている。また、両電極(43)(46)間には、これらと平行にグリッド電極(47)が設けられており、グリッド電極(47)と上ガラス板(41)との間には、グリッド電極(47)の横方向にのびる複数の支え板(48)がグリッド電極(47)と同じ間隔で配され、グリッド電極(47)と下ガラス板(42)との間には、グリッド電極(47)の縦方向にのびる複数の支え板(49)がグリッド電極(47)と同じ間隔で配されている。
【0005】
カーボンナノチューブFEDの実現までには、駆動電圧の低減と電子放出の均一化などいくつかの解決すべき課題があるが、スクリーン印刷によりカーボンナノチューブ陰極を形成したFEDパネルが試作されている(非特許文献1参照)
。
【非特許文献1】
「機能材料」、2001年5月号、Vol.21 No.5、42−43頁。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
スクリーン印刷によりカーボンナノチューブ陰極を形成した上記従来のFEDパネルでは、一本一本のカーボンナノチューブの向きがバラバラであるため、電界を掛けた際に一本一本のカーボンナノチューブにかかる電界が不均一となり、その結果として電界放出が不均一となり、表示画面が粗くかつ輝度が不十分という問題があった。
【0007】
スクリーン印刷法に代えて、シリコンやガラスの基板に触媒金属の薄膜をパターニングしておき、それを種結晶としてCVD法によりブラシ状にカーボンナノチューブを成長させ、これを電子放出素子に適用しようとする試みも行われているが、CVD法により成長したブラシ状カーボンナノチューブは互いに絡まり合いつつ横に曲がりながら成長することから、せっかく根元でパターニングにより電気的に絶縁がされていてもブラシ同士が接触してしまい、その結果、パターニングのピッチ幅をせまくできず表示画面が粗くなるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、大量生産に向きコスト的に有利であり、また、FEDの電極として使用した場合に、駆動電圧を低減しかつ表示画面を細かくすることができる、カーボンナノチューブを用いた電子放出素子用電極材料およびその製造方法、さらにFEDを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、基板表面に所要パターンで凹凸を形成しておき、基板表面全体に触媒粒子からなる薄膜を形成し、薄膜上に化学蒸着法を施すことにより凸部上の薄膜表面の触媒粒子を核としてブラシ状カーボンナノチューブを成長させることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の方法で製造されたカーボンナノチューブである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2記載のカーボンナノチューブを、基板から電子放出素子のカソード電極に転写するか、または導電性シートに転写して同シートを電子放出素子のカソード電極に配することを特徴とする電子放出素子用電極材料の製造方法である。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3記載の方法で製造された電子放出素子用電極材料である。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4記載の電子放出素子用電極材料をエミッターとして具備するフィールドエミッション型フラットパネルディスプレイである。
【0014】
本明細書において、「フィルム」とは、厚さに基づいて規定される狭義のフィルムだけでなく、通常シートと呼ばれる厚手のものも含むこととする。
【0015】
上記電極材料において、カーボンナノチューブの長さは、1〜150μmが好ましく、カーボンナノチューブ同士の間隔は、10〜1000nmが好ましい。
【0016】
上記電極材料の製造法においては、基板上に成長させたカーボンナノチューブを、基板から電子放出素子のカソード電極に転写するか、または導電性シートに転写して同シートを電子放出素子のカソード電極に配する。
【0017】
本発明による、カーボンナノチューブを用いた電子放出素子用電極材料の製造方法は、連続的に実施することもできる。
【0018】
カーボンナノチューブは、カーボン原子が網目状に結合してできた穴径ナノ(1ナノは10億分の1)メートルサイズの極微細な筒(チューブ)状の物質である。
【0019】
基板表面に所要パターンで凹凸を形成するには、例えば、基板表面にマスクを施し、フォトレジスト法により所要パターンでマスク皮膜を剥してエッチングレジストを形成し、基板をエッチング処理液で処理することによって基板の非マスク部を凹部に成形する方法が好ましい。
【0020】
基板表面全体に触媒粒子からなる薄膜を形成するには、基板の凹凸面上に、ニッケル、コバルト、鉄などの金属またはその錯体等の化合物の溶液をスプレーや刷毛で基板に塗布した後、プラズマを照射する方法、加熱する方法、あるいは、同触媒をクラスター銃で打ち付け、乾燥させ、必要であれば加熱する方法が好ましい。
【0021】
薄膜上に化学蒸着法を施すには、通常はアセチレン(C2H2)ガスを用いて一般的な化学蒸着法(CVD法)を施す。
【0022】
こうして、直径12〜38nmのカーボンナノチューブが多層構造で基板上に垂直に起毛される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
まず、基板表面に所要パターンで凹凸を形成する。基板は触媒粒子を支持するものであればよく、触媒粒子が濡れにくいものが好ましく、シリコン基板やガラス基板であってよい。凹凸の形成は、エッチング技術を用いる半導体集積回路の形成と同様に行うことができる。例えば、基板表面にマスク皮膜を形成し、フォトレジスト法により所要パターンでマスク皮膜を剥して皮膜残部すなわちエッチングレジストを形成し、エッチングレジストをマスクにして基板をエッチング処理液で処理して、基板の非マスク部を凹部に成形する。エッチング処理液としては、例えば、5−1etch(組成=HNO3:5、HF:1)がよく用いられる。凹部のパターンは、例えば、並行なまたは交差状の複数本の溝、散在する多数の円形、楕円形または角形の凹部等であってよい。凹部のパターンおよびサイズは、面積当たりのカーボンナノチューブの密度(カーボンナノチューブ間の間隔)が所望値になるように決められる。溝の場合、幅は好ましくは0.1〜1.5μmであり、深さは好ましくは2〜10μmである。
【0025】
つぎに、凹凸状の基板表面全体に触媒粒子からなる薄膜を形成する。触媒粒子はニッケル、コバルト、鉄などの金属粒子であってよい。これらの金属またはその錯体等の化合物の溶液をスプレーや刷毛で基板に塗布した後、プラズマを照射する方法、加熱する方法、あるいは、同触媒をクラスター銃で打ち付け、乾燥させ、必要であれば加熱し、薄膜を形成する。薄膜の厚みは、厚過ぎると加熱による粒子化が困難になるので、好ましくは1〜100nmである。次いでこの薄膜を好ましくは減圧下または非酸化雰囲気中で好ましくは650〜800℃に加熱すると、直径1〜50nm程度の触媒粒子が形成される。
【0026】
薄膜上に化学蒸着法を施すには、カーボンナノチューブの原料ガスとして、アセチレン、メタン、エチレン等の脂肪族炭化水素が使用でき、とりわけアセチレンガスが好ましい。アセチレンの場合、多層構造で太さ12〜38nmのカーボンナノチューブが触媒粒子を核として基板上にブラシ状に形成される。カーボンナノチューブの形成温度は、好ましくは650〜800℃である。
【0027】
こうして、直径12〜38nmのカーボンナノチューブが基板の所定パターンの凸部上に垂直に起毛される。
【0028】
次いで、このように成長させたブラシ状カーボンナノチューブを、直接、基板から電子放出素子のカソード電極に転写するか、または一旦、導電性シートに転写して同シートを電子放出素子のカソード電極に配する。カソード電極への転写の場合、接着剤を用いてカーボンナノチューブをカソード電極に固定するのが好ましい。導電性フィルムへの転写の場合は、導電性フィルムの温度を導電性フィルムの軟化温度以上で溶融温度以下にすることにより、カーボンナノチューブを導電性フィルムに垂直方向に配向させることが容易になる。また、転写後は、導電性フィルムの温度を軟化温度以下に冷却することにより、カーボンナノチューブを導電性フィルムに固定できる。
【0029】
導電性フィルムとしては、集電体となり得るものであればよく、一般に市販されているもの、例えば東レ社製のCF48(成分:PET/ITO (Indium Tin Oxide)/Pd )、東洋紡績社製の300R(#125)などを用いることができる。導電性フィルムの厚みは好ましくは0.01〜1mm、より好ましくは0.05〜0.5mmである。
【0030】
上記工程(すなわち、基板への触媒の塗布、触媒粒子の形成、化学蒸着法によるブラシ状カーボンナノチューブの成長、カーボンナノチューブの導電性フィルムへの転写、その後のフィルム冷却)は一連の連続工程として行うことができる。
【0031】
前記カーボンナノチューブの構造は単層すなわち単一のチューブであってもよいし、多層すなわち同心状の複数の異径チューブであってもよい。カーボンナノチューブの直径は好ましくは1〜100nmである。
【0032】
CVD法によりブラシ状カーボンナノチューブを作製するためには、種結晶として鉄などの金属触媒が必要であり、触媒上にカーボンナノチューブが成長するため基板とカーボンナノチューブの間の接着力が弱く、またキャパシターなどに使用する場合には酸、アルカリ等の電解液に浸漬されるために、使用中に基板からカーボンナノチューブが剥がれることがある。また、ブラシ状カーボンナノチューブは、互いに絡まり合いながら成長するために、直線性に乏しい。特開平10−203810号公報には直流グロー放電によってカーボンナノチューブを垂直配行させるなどの方法が提案されているが、これは工業的生産には向かない。さらに、ブラシ状カーボンナノチューブは、ブラシの先端面に凹凸があり水平でない。
【0033】
上記のような諸問題を解決するには、転写工程において、基板上に成長させたカーボンナノチューブを導電性フィルムに植え付ける際の導電性フィルムの温度を70〜140℃、好ましくは80〜120℃とし、導電性フィルムに植え付けたカーボンナノチューブから基板を剥がす際の温度を50〜0℃、好ましくは35〜0℃とするのがよい。導電性フィルムは、ポリエチレン層と同層を支持する層を少なくとも含む多層フィルムであることが好ましい。ポリエチレン層を支持する層は、耐熱性フィルムからなることが好ましい。耐熱性フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0034】
上記のようにして得られたカーボンナノチューブを、基板から電子放出素子のカソード電極に転写することにより電子放出素子用電極材料を製造することもできる。
【0035】
本発明により作製したカーボンナノチューブは、電界電子エミッタとして非常に優れた特性を有することが明らかとなった。すなわち、近年電子放出素材としてのカーボンナノチューブは、シリコンやモリブデンなどのマイクロエミッタに比べて、真空の制約が緩いこと、高い電流密度が得られること、頑健であることなど優れた特徴を有しているが、シリコン基板に成長したブラシ状カーボンナノチューブを使用すると、カーボンナノチューブの成長方向に対して垂直な方向においてもカーボンナノチューブが互いに絡まり合っているために電気が通じやすく電子を取り出す際の電圧が高いという問題があった。それに対して、本発明によると、カーボンナノチューブ同士が絡まらないために成長方向と垂直な方向において電気が通じにくく(導電性が悪く)、その結果として低い電界を掛けた場合にもカーボンナノチューブの先端から電子が放出しやすくなった。
【0036】
つぎに、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0037】
実施例1(参考例として)
(第一工程)
厚さ0.5mmで一辺100mmの方形の低抵抗N型半導体シリコン基板の上面全体に方形の凸部および文字の凸部(凸部の高さ:4μm)からなる所要パターンを形成した(図1aの写真参照)。
【0038】
次いで、こうして形成した基板凹凸面全体に、Fe(CO)5の溶液をスプレーで塗布したのち、220℃に加熱することにより厚さ5nmの鉄薄膜を生成させた。
【0039】
(第二工程)
鉄薄膜を有する基板を化学蒸着処理に付した。カーボンナノチューブの原料ガスとしてアセチレンとヘリウムの混合ガスを用いた。化学蒸着条件は、昇温速度15℃/min.、成長温度700℃、蒸着時間15分、アセチレン流量60sccm、ヘリウム流量200sccmとした。この加熱により鉄薄膜は粒子化した。化学蒸着により鉄薄膜上の触媒粒子を核として基板の凹凸面全面にブラシ状カーボンナノチューブが生成し、徐々に成長した。成長したカーボンナノチューブは、太さ12nmの多層構造であり、長さは40μmであった(図1bの写真参照)。
【0040】
図1aの写真と図1bの写真の比較から、カーボンナノチューブは凹凸に関係なく基板全面に一様に成長したことが分かる。
【0041】
実施例2
シリコン基板のパターンを幅3.5μmの凸条(凸部の高さ:4μm)と幅1.5μmの凹溝で構成した点を除いて、実施例1と同様に操作し、基板の凹凸面全面にブラシ状カーボンナノチューブを生成させた(図2aの写真参照)。図2aの写真において左下部の黒い多数の帯状部はカットされた成長したカーボンナノチューブを示す。
【0042】
図2aの写真から、カーボンナノチューブは凹凸に関係なく基板全面に一様に成長したことが分かる。
【0043】
シリコン基板のパターンを幅0.6μmの凸条(凸部の高さ:4μm)と幅0.5μmの凹溝で構成した点を除いて、上記と同じ操作を繰り返し、基板にブラシ状カーボンナノチューブを生成させた(図2bの写真参照)。このパターンでは、凹溝におけるカーボンナノチューブの成長速度が著しく低下した。凹溝の幅が小さ過ぎると、カーボンナノチューブ原料ガスの凹溝内への供給が困難になり成長速度が低下するものと考えられる。
【0044】
実施例3
図3において、ガラス基板(21)上にカソード電極用の薄板(22)を配し(図3a参照)、エッチングにより薄板(22)から複数の凸条からなるカソード電極(23)を形成した(図3b参照)。カソード電極を有する基板(21)の上にカソード電極を覆うように誘電体層(24)を配し(図3c参照)、エッチングにより誘電体層(24)から複数の誘電体凸条(25)を形成した(図3d参照)。
【0045】
複数のカソード電極(23)の表面周囲にエッチングにより溝(26)を形成することにより、カソード電極(23)の表面に凸部(27)を設けた(図3eおよび図4参照)。
【0046】
こうして得られた、溝(26)を有するガラス基板(21)に、Fe(CO)5の溶液をスプレーで塗布したのち、220℃に加熱することにより厚さ5nmの鉄薄膜を生成させた。
【0047】
以降は、実施例1の第二工程と同様の操作を行い、カソード電極(23)の凸部(27)にカーボンナノチューブ(28)を成長させた(図3f参照)。
【0048】
実施例4
図5において、厚さ0.5mmで一辺100mmの方形の低抵抗N型半導体シリコン基板(1) の上面全体にマスク皮膜(2) を形成した(図5a参照)。
【0049】
次いで、フォトレジスト法により、並行な複数本の帯状部分(幅:10μm、深さ:4μm)を残してマスク皮膜を剥いで皮膜残部すなわちエッチングレジスト(3) を形成し(図5b参照)、エッチングレジストをマスクにして基板(1) をエッチング処理液で処理して、基板のマスク部を凸部(4) に、非マスク部を凹部(5) に成形した(図5c参照)。
【0050】
次いで、こうして形成した基板凹凸面全体に、Fe(CO)5の溶液をスプレーで塗布したのち、220℃に加熱することにより厚さ5nmの鉄薄膜(6) を生成させた(図5d参照)。
【0051】
鉄薄膜を有する基板を化学蒸着処理に付した。カーボンナノチューブの原料ガスとしてアセチレンとヘリウムの混合ガスを用いた。化学蒸着条件は、昇温速度15℃/min.、成長温度700℃、蒸着時間15分、アセチレン流量60sccm、ヘリウム流量200sccmとした。この加熱により鉄薄膜は粒子化した。化学蒸着により鉄薄膜上の触媒粒子を核として、基板凸部(4) において、ブラシ状カーボンナノチューブが生成し、徐々に成長した。成長したカーボンナノチューブ(7) は、太さ12nmの多層構造であり、長さは40μmであった(図5e参照)。
【0052】
実施例5
図6において、実施例3の製造工程途中で得られた、カソード電極(23)および誘電体凸条(25)を有するガラス基板(21)(図3d参照)のカソード電極表面に接着剤を塗布しておき、実施例4で作製した、凸部(4) にブラシ状カーボンナノチューブ(7)を有するシリコン基板(1) を、カーボンナノチューブ(7)の先端から接着剤層(55)に押し付けることにより、カーボンナノチューブをカソード電極(23)に実質上垂直に転写した(図6a参照)。
【0053】
転写後、ガラス基板(21)を30℃に冷却後、シリコン基板(1) を剥がした。こうして図6bに示す電子放出用電極材料を得た。これを、別途製作したアノード側の電極材料と真空室内で組み合わせ、図7に示すFEDを得た。
【0054】
同図において、(41)(42)は上下一対のガラス板、(43)はカソード電極、(44)は多数のカーボンナノチューブ、(45)は蛍光層、(47)はグリッド電極、(51)はアノード電極(Indium Tin Oxideを含む膜)、(52)はグリッド電極用電源、(53)はアノード電極用電源、(54)は誘電体、(55)は接着剤層である。
【0055】
この構造のFEDでは、表示画面が従来のものと比較して格段に細かくなった。これは、カーボンナノチューブがカソード電極に対し垂直にかつ真っ直ぐに配向し、しかも、カーボンナノチューブを基板から剥がしたことによって先端が破れて鋭い縁を持ったことにより、電界集中がより強く起こるようになったためと考えられる。
【0056】
また、図8に示すように、カーボンナノチューブの各先端から放出される電子は、蛍光層の赤色部(R)、緑部(G)および黒色部(B)の幅方向の所定位置に正確に向けられ、所定位置からのずれを可及的に小さくすることができる。
【0057】
実施例6
接着剤を用いる代わり、95℃に加熱した導電性フィルムに、実施例4で作製した、凸部(4) にブラシ状カーボンナノチューブ(7)を有するシリコン基板(1) を、カーボンナノチューブ(7)の先端から押し付けることにより、カーボンナノチューブを導電性フィルムに実質上垂直に転写した。
【0058】
転写後、ガラス基板(21)を30℃に冷却後、シリコン基板を剥がした。
【0059】
得られたカーボンナノチューブ付き導電性フィルムを、実施例3の製造工程途中で得られた、カソード電極(23)および誘電体凸条(25)を有するガラス基板(21)(図3d参照)のカソード電極表面に配し電子放出用電極材料を得た。これを別途制作したアノード側の電極材料と真空室内で組み合わせ、図7に示すFEDを得た。
【0060】
実施例7(連続運転の参考例)
(第一工程)
図9において、駆動ドラム(61)と従動ドラム(62)によって送り速度12m/hで回転される無端ベルト(63)(厚さ0.5mmの低抵抗N型半導体シリコン基板で構成され、外面に所要パターンで溝が設けてある)の上側上流部の触媒付着ゾーンにおいて、無端ベルト(63)の上面にFe錯体の溶液をスプレー(64)で塗布したのち、220℃に加熱することにより、無端ベルト(63)上に触媒粒子(72)を100nm間隔で散在するように形成させる。
【0061】
(第二工程)
次いで、無端ベルト(63)上の触媒粒子(72)を触媒付着ゾーン下流の化学蒸着ゾーンへ送る。化学蒸着ゾーンは、ベルト移動方向に約2mの長さを有する加熱炉(65)と、その内部にて無端ベルト(63)の下に配された加熱器(67)とからなる。化学蒸着ゾーンにおいて、カーボンナノチューブの原料ガスとしてアセチレンガスを加熱炉(65)の頂部から流量30ml/minで加熱炉(65)内へ流入し、無端ベルト(63)上の触媒粒子(72)を下から熱媒体を循環する加熱器(67)で温度約720℃に加熱する。各触媒粒子が加熱炉(65)を通過する時間は15分程度とされる。触媒粒子(72)が加熱炉(65)内を移動するに連れて、触媒粒子(72)を核としてその上にブラシ状のカーボンナノチューブ(71)が生成し、上向きに成長する。成長したカーボンナノチューブは、太さ約12nmの多層構造であり、長さは約50μmとなる。
【0062】
(第三工程)
次いで、無端ベルト(63)上の各触媒粒子(72)のカーボンナノチューブ(71)がベルトの移動により化学蒸着ゾーンから従動ドラム(62)の位置、すなわち転写ゾーンへ達し、従動ドラム(62)の外側を回るに伴い徐々に横に倒れる時、カーボンナノチューブ(71)をその先端から導電性フィルム導電性フィルム(68)に押し付ける。導電性フィルム(68) (東レ社製のCF48)は、フィルム供給装置(69) から下向きに送られ、加熱器(70)で軟化温度以上かつ溶融温度以下(例えば100〜300℃)に加熱されている。こうして導電性フィルム(68) にカーボンナノチューブ(71)を押し付けることにより、カーボンナノチューブ(71)を触媒粒子(72)から導電性フィルム(68) にフィルム表面に対し実質上垂直に転写した。
【0063】
(第四工程)
転写によりブラシ状カーボンナノチューブを植え付けた導電性フィルム(68)を、加熱器(70)の下に設けられた冷却器(73)でその軟化温度以下(例えば常温)に冷却する。そして、無端ベルト(シリコン基板)(63)が、冷却後にカーボンナノチューブ(71)から剥がされる。こうして得られたカーボンナノチューブ電極は巻取ドラム(66)に巻き取られる。
【0064】
【発明の効果】
本発明によると、カーボンナノチューブを基板に対し実質上垂直に形成することができ、これを電子放出素子のカソード電極に実質上垂直に転写することができる。
【0065】
また、カーボンナノチューブの成長高さを均一に揃えることができ、その結果、構築したFEDにおいてカーボンナノチューブの先端と蛍光体の距離を可及的に均一化して、電子放出に要する電圧を下げることができる。
【0066】
さらに、カーボンナノチューブの各先端から放出される電子は、蛍光層の赤色部(R)、緑部(G)および黒色部(B)の幅方向の所定位置に向けられ、所定位置からのずれを可及的に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1aは実施例1におけるシリコン基板の凹凸パターンを示す写真(倍率:400倍)である。図1bは実施例1において基板の凹凸面全面にブラシ状カーボンナノチューブが成長した状態を示す写真(倍率:450倍)である。
【図2】図2aは実施例2におけるシリコン基板の凸条と凹溝からなる凹凸面全面にブラシ状カーボンナノチューブが成長した状態を示す写真(倍率:1000倍)である。図2bは凹溝の幅を小さくすると、凹溝におけるカーボンナノチューブの成長速度が著しく低下した状態を示す写真(倍率:400倍)である。
【図3】実施例3の工程を示すフローシートである。
【図4】実施例3においてカソード電極の表面周囲に溝を形成した状態を示す平面図である。
【図5】実施例4の工程を示すフローシートである。
【図6】実施例5の工程を示すフローシートである。
【図7】実施例6で得られたFED示す断面図である。
【図8】実施例6で得られたFED示す概略断面図である。
【図9】実施例7におけるカーボンナノチューブ電極の連続的な製造方法を示す概略図である。
【図10】FEDの構造を示す模式的な斜視図である。
【符号の説明】
(1):シリコン基板
(2):マスク皮膜
(3):エッチングレジスト
(4):凸部
(5):凹部
(6):薄膜
(7):カーボンナノチューブ
(8) :導電性フィルム
(21):ガラス基板
(23):カソード電極
(25):誘電体凸条
Claims (5)
- 基板表面に所要パターンで凹凸を形成しておき、基板表面全体に触媒粒子からなる薄膜を形成し、薄膜上に化学蒸着法を施すことにより凸部上の薄膜表面の触媒粒子を核としてブラシ状カーボンナノチューブを成長させることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
- 請求項1記載の方法で製造されたカーボンナノチューブ。
- 請求項2記載のカーボンナノチューブを、基板から電子放出素子のカソード電極に転写するか、または導電性シートに転写して同シートを電子放出素子のカソード電極に配することを特徴とする電子放出素子用電極材料の製造方法。
- 請求項3記載の方法で製造された電子放出素子用電極材料。
- 請求項4記載の電子放出素子用電極材料をエミッターとして具備するフィールドエミッション型フラットパネルディスプレイ。
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