JP2010264370A - マイクロリアクターおよびマイクロリアクターの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】転写基板(19)のチューブ生成面(19a)にカーボンナノチューブ(4)を生成し、被転写面(2a)に形成された溝(2c)を有する被転写基板(2)に対して、チューブ生成面(19a)と被転写面(2a)とを対向させた状態で転写基板(19)と被転写基板(2)とを接近させて、溝(2b)にカーボンナノチューブ(4)を転写し、被転写面(2a)と閉塞面(3a)とを対向させた状態で被転写基板(2)と閉塞基板(3)とを接合して溝(2b)の開口側を塞いでカーボンナノチューブ(4)と溝(2b)と閉塞面(3a)とによって囲まれた流路(7)を形成することを特徴とするマイクロリアクター(1)の製造方法。
【選択図】図2
Description
すなわち、非特許文献1には、マイクロチャンネルの底面となる平坦且つ幅広なマイクロ流路が作製されたシリコン基板に、前記化学蒸着法により、カーボンナノチューブを直接作成する技術が記載されている。
前記特許文献1の技術では、規則性メソ細孔構造を有するシリカ薄膜を作成する際に、前駆体溶液を流入、過剰分を除去、乾燥、焼結する各工程が必要となるため、前記マイクロリアクターの作製工程が多くなり、作製費用が高くなるという問題があった。
また、前記特許文献1の技術では、前記焼結する工程が必要であり、前記マイクロチャンネル内を高温加熱する必要がある。また、前記非特許文献1、2の技術についても同様に、前記化学蒸着法によって前記カーボンナノチューブを作成するために、前記マイクロチャンネル内を高温加熱する必要がある。
すなわち、前記特許文献1および前記非特許文献1、2の技術では、前記マイクロチャンネル内に比表面積を大きくする構造を付与するために、前記マイクロチャンネル内を高温加熱しなければならないという問題があった。
すなわち、前記非特許文献1、2の技術では、前記マイクロチャンネル内に前記カーボンナノチューブを十分に成長させることができず、マイクロチャンネルの比表面積を大きくし難いという問題があった。
転写基板のチューブ生成面にカーボンナノチューブを生成するチューブ生成工程と、
被転写面と、前記被転写面に形成された溝と、を有する被転写基板に対して、前記チューブ生成面と前記被転写面とを対向させた状態で、前記転写基板と前記被転写基板とを接近させて、前記溝に前記チューブ生成面の前記カーボンナノチューブを転写するチューブ転写工程と、
閉塞面を有する閉塞基板に対して、前記被転写面と前記閉塞面とを対向させた状態で、前記被転写基板と前記閉塞基板とを接合して、前記溝の開口側を塞いで、前記カーボンナノチューブと前記溝と前記閉塞面とによって囲まれた空間としての流路を形成する流路形成工程と、
を備え、
前記流路内の比表面積を前記カーボンナノチューブによって大きくする
ことを特徴とする。
前記溝に転写された複数の前記カーボンナノチューブの少なくとも先端部に、複数の前記カーボンナノチューブどうしの間を連絡する液体を接触させ、前記液体を気化させて、複数の前記カーボンナノチューブを束ねたカーボンナノチューブ束を作成するチューブ束作成工程、
を備えたことを特徴とする。
前記溝に応じて形成された前記転写基板の凸部に、前記凸部に対応するマスクの孔部が嵌まって、前記転写基板に前記マスクが装着され、前記チューブ生成面としての前記凸部の外表面に沿って前記マスクの外表面が配置された状態で、前記各外表面に前記カーボンナノチューブを生成した後で、前記転写基板に対して着脱可能な前記マスクを取り外して、前記凸部の外表面にのみ前記カーボンナノチューブを残した状態にする前記チューブ生成工程と、
前記溝に前記凸部の外表面の前記カーボンナノチューブを転写する前記チューブ転写工程と、
を備えたことを特徴とする。
溝が形成された被転写面と、カーボンナノチューブがチューブ生成面に生成された転写基板の前記チューブ生成面と前記被転写面とが対向接近されて前記溝に転写された前記カーボンナノチューブと、を有する被転写基板と、
閉塞面を有し、前記被転写面と前記閉塞面とを対向させた状態で、前記被転写基板に接合されて前記溝の開口側を塞ぐ閉塞基板と、
前記カーボンナノチューブと前記溝と前記閉塞面とによって囲まれた空間としての流路と、
を備えたことを特徴とする。
複数の前記カーボンナノチューブの先端部が束ねられたカーボンナノチューブ束、
を備えたことを特徴とする。
前記チューブ生成面より吸着性が高い吸着部材により構成された前記被転写面、
を備えたことを特徴とする。
ポリジメチルシロキサンにより構成された前記吸着部材、
を備えたことを特徴とする。
請求項2、5に記載の発明によれば、吸着部材によって構成された溝がチューブ生成面上のカーボンナノチューブに吸着するため、溝が吸着部材によって構成されていない場合に比べ、溝に前記カーボンナノチューブを転写させ易くすることができる。また、請求項5に記載の発明によれば、被転写面を閉塞面に粘着させて被転写面と閉塞面とを密着させることができ、被転写面が吸着部材により構成されていない場合に比べ、樹脂基板と閉塞基板とを接合し易くでき、流路を形成し易くすることができる。
請求項7に記載の発明によれば、ポリジメチルシロキサンを鋳型で成型して樹脂基板を作製でき、溝を簡便に加工できる。また、請求項7に記載の発明によれば、ポリジメチルシロキサンが、高弾性、自己吸着性、粘性(流動性)を備えており、溝が前記ポリジメチルシロキサンによって構成されていない場合に比べ、溝に前記カーボンナノチューブを転写させ易くすることができる。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
図2は本発明の実施例1のマイクロリアクターの要部拡大説明図であり、図2Aは実施例1の樹脂基板の説明図であり、図2Bは実施例1のガラス板の説明図であり、図2Cは図1のIIC−IIC線断面の拡大説明図であり、実施例1のカーボンナノチューブ束の説明図である。
図1、図2において、本発明の実施例1のマイクロリアクター(微小反応装置)1は、被転写基板の一例としての樹脂基板2と、閉塞基板の一例としてのガラス板3とを有する。
また、図2Cにおいて、前記溝2cの内部には、基端部が前記溝2cの底面に突き刺された状態で支持された複数のカーボンナノチューブ4が配置されている。また、実施例1では、隣接する前記カーボンナノチューブ4どうしの先端部が前記溝2cの開口側で束ねられており、隣接する前記カーボンナノチューブ4ごとの束である複数のカーボンナノチューブ束6が形成されている。
また、実施例1の前記ガラス板3は、前記吸着面2aと対向する閉塞面3aを有する。
実施例1の前記マイクロリアクター1は、前記吸着面2aと前記閉塞面3aとが接合されて、前記樹脂基板2と前記ガラス板3とが接合されている。また、前記マイクロリアクター1では、前記閉塞面3aによって前記溝2cの開口側が閉塞されており、前記カーボンナノチューブ束6と前記溝2cと前記閉塞面3aとによって囲まれた空間としてのマイクロチャンネル(マイクロチャネル、マイクロ流路、流路)7が形成されている。
次に、実施例1の前記マイクロリアクター1の製造方法の各工程の流れを、以下に説明する。
(実施例1のチューブ生成工程について)
図3は本発明の実施例1のチューブ生成工程の説明図であり、化学蒸着装置の説明図である。
図3において、実施例1の前記カーボンナノチューブ4は、チューブ生成装置の一例としての化学蒸着装置11により生成される。
実施例1の前記化学蒸着装置11は、試料を支持する支持台12と前記支持台12の上方を覆う外周壁13とによって囲まれた加熱室14を有する。また、前記加熱室14の中央部には、上端部が前記支持台12を貫通して前記加熱室14内に延び且つ前記加熱室14外の下端部が電源16に接続された電力供給部の一例としてのヒーター支持部17,17が前記支持台12に支持されている。また、ヒーター支持部17,17の上端部には、加熱部材の一例としての平板状のヒーター18が支持されている。
なお、実施例1の前記シリコン基板19は、縦幅および横幅が、8[mm]×8[mm]となるように予め設定されている。
また、前記ヒーター18の下方には、試料としてのエタノールが収容された試料収容容器22が前記支持台12に支持されている。
さらに、実施例1の前記加熱室14には、前記加熱室14内の気体(反応性ガス、活性ガス)を排気(真空引き)するための真空ポンプ(ロータリポンプ)23と、前記加熱室14内に窒素ガス(不活性ガス)を注入するための窒素タンク24とが接続されている。
なお、実施例1の前記チューブ生成工程では、前記触媒21の鉄(Fe)が失活するまで、前記カーボンナノチューブ4を成長させることが可能である。このため、前記触媒21の寿命に応じて、前記カーボンナノチューブ4の代表寸法を、例えば、約10[min]程度で、約28[μm]まで成長させられることが確認できた。
なお、実施例1の前記チューブ生成工程は、いわゆる、アルコールCCVD(アルコール触媒CVD、Alcohol Catalytic Chemical Vapor Deposition)法として、例えば、非特許文献3等に記載されており、公知である。
図4は本発明の実施例1のチューブ転写工程の説明図であり、図4Aは鋳型を用いて樹脂基板を作成する際の斜視説明図であり、図4Bは樹脂基板の溝とシリコン基板の平坦面とを対向させて接近させた状態の斜視説明図であり、図4Cは図4BのIVC−IVC線断面図であり、図4Dは図4Cの状態から樹脂基板の溝とシリコン基板の平坦面とによってカーボンナノチューブを挟み込んだ状態の説明図であり、図4Eは図4Dの状態から樹脂基板の溝とシリコン基板の平坦面とを対向させて接近させた状態の説明図である。
また、図4Aにおいて、実施例1の前記樹脂基板2は、例えば、鋳型(モールド)26に樹脂を流し込むことにより作製できる。実施例1の前記鋳型26の中央部には、前記溝2cに対応して、縦幅および横幅が、10[mm]×10[mm]、高さが、60[μm]で予め設定された突起26aが形成されている。
図4Aにおいて、実施例1では、まず、液体状の前記ポリジメチルシロキサンが流し込まれた前記鋳型26を、60℃で、60[min]加熱して、前記ポリジメチルシロキサンを硬化させる。次に、前記ポリジメチルシロキサンを前記鋳型26から剥離し、前記貫通孔2d,2dを空けることにより、前記樹脂基板2を作製する。
そして、図4Dに示す状態から、前記溝2cと前記平坦面19aとを離隔させると、図4Eに示すように前記溝2cに突き刺さった前記カーボンナノチューブ4は前記平坦面19aから離れた状態になる。
すなわち、実施例1の前記チューブ転写工程では、前記溝2cと前記平坦面19aとを接近させ、前記平坦面19a上のカーボンナノチューブ4を前記溝2c側に押し付けることにより、前記カーボンナノチューブ4を前記平坦面19aから前記溝2cに転写する。
図5は本発明の実施例1のマイクロチャンネル形成工程の説明図であり、図5Aは図4Bに対応する図4Eの状態の斜視説明図であり、図5Bは図5Aの状態からシリコン基板の平坦面に替えてガラス板の閉塞面を樹脂基板の吸着面に対向させて接近させた状態の斜視説明図であり、図5Cは図5BのVC−VC線断面図であり、図5Dは図5Cの状態から樹脂基板とガラス板とが接合した状態の説明図である。
また、図5において、実施例1のマイクロチャンネル形成工程(流路形成工程)では、まず、図5Aに示す状態から、前記ガラス板3の閉塞面3aを、前記カーボンナノチューブ4が転写された前記樹脂基板2の吸着面2aに対向させて、図5B、図5Cに示す状態にする。
すなわち、実施例1の前記マイクロチャンネル形成工程では、前記吸着面2aと前記閉塞面3aとによって前記溝2cの開口を閉塞することにより、前記マイクロチャンネル7を形成する。
図6は本発明の実施例1のチューブ束作成工程の説明図であり、図6Aは図5Dの状態から一方の貫通孔にシリンジの針を差し込んだ状態の説明図であり、図6Bは図6Aの状態からマイクロチャンネル内にエタノールが注入された状態の説明図であり、図6Cは図6Bの状態からマイクロチャンネル内に空気が注入されてエタノールが気化した状態の説明図である。
また、図5、図6において、実施例1のチューブ束作成工程では、まず、図5Dに示す状態から、図6Aに示すように、エタノールが収容されたシリンジ(注射器)27の針を、一方の前記貫通孔2dに差し込む。次に、図6Aに示す状態から、前記シリンジ27内のエタノールを、前記マイクロチャンネル7内に注入し(注射し)、図6Bに示すように、前記マイクロチャンネル7内を前記エタノールで満たし、複数の前記カーボンナノチューブ4どうしの間に前記エタノールを浸透させる。
すなわち、実施例1の前記チューブ束作成工程では、前記マイクロチャンネル7内のカーボンナノチューブ4にエタノールを接触させた後、空気を注入して前記エタノールを気化させることにより、前記カーボンナノチューブ束6を作成する。
前記構成を備えた実施例1の前記マイクロリアクター1は、図1、図2に示すように、前記マイクロチャンネル7内に、複数の前記カーボンナノチューブ4が配置されている。よって、実施例1の前記マイクロリアクター1は、前記マイクロチャンネル7内に前記カーボンナノチューブ4が配置されていない場合に比べ、前記マイクロチャンネル7内の比表面積を大きくすることができる。
また、実施例1の前記マイクロリアクター1の製造方法では、図3、図4に示すように、アルコールCCVD法により、前記シリコン基板19の平坦面19aにカーボンナノチューブ4を生成した後、前記平坦面19aから前記樹脂基板2の溝2cにカーボンナノチューブ4が転写される。そして、図5に示すように、前記カーボンナノチューブ4が転写された前記樹脂基板2の吸着面2bに、前記ガラス板3bの閉塞面3aが接合されて前記マイクロチャンネル7が形成される。
この場合、前記平坦面19aから前記溝2cにカーボンナノチューブ4が転写されるため、前記溝2cの形状に応じて前記カーボンナノチューブ4を前記平坦面19a上に生成すれば、任意の形状の前記溝2cに前記カーボンナノチューブ4を転写できる。
例えば、前記溝2cが、図1、図2A等に示すミリメートルオーダーの正方形ではなく、図7に示すマイクロメートルオーダーの幅でY字形に形成されていた場合に、前記転写基板19に、前記溝2cのY字形に応じた凸部19cを形成し(図7B参照)、前記凸部19cに対応する孔部28を有するマスク29(図7C参照)を装着した場合について考える。この場合、前記凸部19cに前記孔部28が嵌まって、前記マスク29の外表面29aが前記凸部19cの外表面(チューブ生成面)19dに沿って配置され、実施例1の前記平坦面19aと同様に形成される(図7A参照)。
すなわち、前記溝2cの形状に応じた前記マスク29を使用することにより、任意の形状の前記溝2cに対応した前記カーボンナノチューブ4を生成でき、前記凸部19cの外表面19d上の前記カーボンナノチューブ4を前記溝2cに転写できる。なお、前記マスク29を用いて、任意の形状の前記カーボンナノチューブ4を生成できることは、予備実験により確認されている。
この結果、実施例1の前記マイクロリアクター1は、平坦面19a上に成長したカーボンナノチューブ4を直接使用する非特許文献1に記載のマイクロチップに比べ、前記マイクロチャンネル7の形状の自由度を高くすることができる。また、実施例1の前記マイクロリアクター1は、前記平坦面19a上で十分に長く成長したカーボンナノチューブ4を狭小なマイクロチャンネル7内に配置でき、狭小なマイクロチャンネル内でカーボンナノチューブを十分に長く成長させられない非特許文献2に記載の技術に比べ、前記マイクロチャンネル7内の比表面積を大きくすることができる。
また、実施例1では、前記チューブ転写工程(図4B〜図4E参照)により、前記シリコン基板19の平坦面19aのカーボンナノチューブ4は、ポリジメチルシロキサン製の前記樹脂基板2の溝2c内に9割以上が転写されることが確認された。このとき、転写の前後で前記カーボンナノチューブ4を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察したところ、図8A、図8Bに示すように、前記カーボンナノチューブ4は、転写の前後に渡って各基板2,19に対して垂直に配向していること、すなわち、垂直性を保持していることが確認された。
また、実施例1では、図6に示すように、前記マイクロチャンネル7内のカーボンナノチューブ4にエタノールを接触させた後、前記エタノールを気化させることにより、前記カーボンナノチューブ束6を作成する前記チューブ束作成工程が実行される。
ここで、実施例1の前記チューブ束作成工程(図6参照)によって作成される前記カーボンナノチューブ束6を評価するために、以下の実験例1、2を準備した。
(実験例1)
実験例1では、まず、実施例1の前記チューブ生成工程(図3参照)により、前記平坦面19a上に、前記カーボンナノチューブ4を、代表寸法が、8[μm],18.5[μm],28[μm]となるように生成した。次に、3種類の各カーボンナノチューブ4に、エタノールを、2[μL]だけそれぞれ滴下した。そして、前記エタノールを気化させて、作成された複数の前記カーボンナノチューブ束6の凝集した先端部の幅の平均値である凝集幅d1[μm](図2C、図6C参照)および複数の前記カーボンナノチューブ束6の凝集した先端部どうしの間隔の平均値である凝集間隔d2[μm](図2C、図6C参照)をそれぞれ測定した。
また、実験例2では、まず、実験例1と同様に、前記平坦面19a上に、前記カーボンナノチューブ4を、代表寸法が、8[μm],18.5[μm],28[μm]となるように生成した。次に、前記カーボンナノチューブ4に、加速電圧500[V]のアルゴンプラズマを5[min]間だけ照射して、前記カーボンナノチューブ4の親水化を行った。なお、前記アルゴンプラズマとは、加速電圧によりイオン化されプラズマ状態になったアルゴンガスのことである(例えば、特開2006−111504号公報や特開2001−133439号公報等参照)。また、液体の滴下前に、アルゴンプラズマを照射する場合には、照射しない場合に比べ、前記カーボンナノチューブ4間に前記液体が浸透し易くなることが予備実験により確認されている。
次に、3種類の前記各カーボンナノチューブ4に、純水を、1[μL]だけそれぞれ滴下して前記カーボンナノチューブ4間に前記純水を浸透させた。そして、前記純水を気化させて、作成された複数の前記カーボンナノチューブ束6の前記凝集幅d1[μm]および前記凝集間隔d2[μm]をそれぞれ測定した。
図9は実験例1、2の実験結果であり、凝集後のカーボンナノチューブ束の先端部を走査型電子顕微鏡で観察したときの拡大説明図であり、図9Aは液体の接触範囲と非接触範囲との境界を示す説明図、図9Bは実験例1の代表寸法が18.5[μm]のカーボンナノチューブの先端部が凝集した状態の説明図、図9Cは実験例2の代表寸法が18.5[μm]のカーボンナノチューブの先端部が凝集した状態の説明図である。
図10は実験例1および実験例2の実験結果であり、横軸にカーボンナノチューブの代表寸法[μm]ををとり、縦軸にカーボンナノチューブの凝集幅[μm]とったグラフの説明図である。
図11は実験例1および実験例2の実験結果であり、横軸にカーボンナノチューブの代表寸法[μm]ををとり、縦軸にカーボンナノチューブの凝集間隔[μm]をとったグラフの説明図である。
また、図10、図11に示すように、実験例1の前記カーボンナノチューブ4の代表寸法が、8[μm],18.5[μm],28[μm]の場合に、前記凝集幅d1が、約5[μm],約8[μm],約10[μm]となり、前記凝集間隔d2が、約12[μm],約26[μm],約45[μm]となることがわかる。
また、実験例2の前記カーボンナノチューブ4の代表寸法が、8[μm],18.5[μm],28[μm]の場合に、前記凝集幅d1が、約5[μm],約11[μm],約15[μm]となり、前記凝集間隔d2が、約8[μm],約28[μm],約50[μm]となることがわかる。
(実験例3)
実験例3では、まず、前記チューブ生成工程(図3参照)、前記チューブ転写工程(図4B〜図4E参照)、前記マイクロチャンネル形成工程(図5参照)、前記チューブ束作成工程(図6参照)により、実施例1の前記マイクロリアクター1を作成した。次に、前記シリンジ27により、作成した前記マイクロリアクター1のマイクロチャンネル7内に、エタノールを再度注入し、前記マイクロチャンネル7内を前記エタノールで満たした。
図12は実験例3の実験結果であり、マイクロチャンネル内のカーボンナノチューブの先端部を走査型電子顕微鏡で観察したときの拡大説明図であり、図12Aはチューブ束作成工程におけるエタノール注入前のカーボンナノチューブの先端部の状態を示す説明図、図12Bは図12Aの状態からエタノール注入後のカーボンナノチューブの先端部の状態を示す説明図、図12Cは図12Bの状態からエタノール気化後のカーボンナノチューブの先端部の状態を示す説明図、図12Dは図12Cの状態からエタノール再注入後のカーボンナノチューブの先端部の状態を示す説明図である。
なお、前記カーボンナノチューブ4の先端部が凝集するのは、前記カーボンナノチューブ4と前記各基板2,19との摩擦力、前記カーボンナノチューブ4の流体抗力、前記カーボンナノチューブ4どうしの分子間力(ファンデルワールス力、van der Waals)や前記エタノールの表面張力等が働くためと考えられる。また、実験例3の実験結果から、これらの力のうち、エタノールの気化に伴って大きく変化する力である前記表面張力が、前記凝集の発生に強く影響するものと考えられる。
すなわち、図6B、図12Bに示す状態から、前記シリンジ27により空気が注入されると、マイクロチャンネル7内に満たされたエタノールが押し出され、図13Aに示す状態になる。このとき、前記エタノールが気化していくと、液体のエタノールの量が減少していき、平面状に均一に配置されたカーボンナノチューブ4の先端部に対して、点在する島状の滴(カーボンナノチューブの先端部どうしの間を連絡する液体)となっていき、図13Bに示す状態になる。
また、前記カーボンナノチューブ4どうしの分子間力は、前記カーボンナノチューブ4どうしが近付くに連れて大きくなるため、前記カーボンナノチューブ4の先端部が凝集した際には、先端部どうしの分子間力が大きくなる。このため、凝集後の前記カーボンナノチューブ束6がエタノールに再接触しても、前記カーボンナノチューブ束6の先端部に作用する分子間力がカーボンナノチューブ4の先端部の束を凝集させる力として作用し、凝集前の状態に戻らずに凝集後の状態が保持されるものと考えられる。
さらに、実施例1の前記チューブ束作成工程によって、作成されたカーボンナノチューブ束6を有する前記マイクロリアクター1の評価をするために、以下の実験例4、5および比較例1を準備した。
(実験例4)
実験例4では、実験例3と同様に、前記チューブ生成工程、前記チューブ転写工程、前記マイクロチャンネル形成工程、前記チューブ束作成工程により、実施例1の前記マイクロリアクター1(図14B参照)を作成した。
また、実験例5では、前記チューブ生成工程、前記チューブ転写工程、前記マイクロチャンネル形成工程により、実験例4の前記マイクロリアクター1に比べ、前記カーボンナノチューブ4の先端部が凝集していないマイクロリアクター1′(図14C参照)を作成した。
(比較例1)
また、比較例1では、前記マイクロチャンネル形成工程により、実験例4、5の前記マイクロリアクター1,1′に比べ、前記マイクロチャンネル7内に前記カーボンナノチューブ4が転写されていないマイクロリアクター1″(図14D参照)を作成した。
実験例4、5および比較例1では、まず、図14B〜図14Dに示すように、前記各マイクロリアクター1,1′,1″の各マイクロチャンネル7,7′,7″の内表面に、触媒の一例であって、酵素の一例としてのHRP(horseradish peroxidase、西洋ワサビペルオキシダーゼ)31を予め付着(吸着)させておく。次に、図14Aに示すように、前記シリンジ27により、前記各マイクロチャンネル7〜7″内に、第1の試料の一例としてのAmplex(登録商標)Red試薬(例えば、非特許文献5等参照)と、第2の試料の一例としての過酸化水素水(H2O2)とを注入して化学反応させ、反応物の一例であって、蛍光物質の一例としてのレゾルフィン(Resorufin)を生成する。そして、図14Aに示すように、前記各マイクロチャンネル7〜7″内のレゾルフィンに外部からアルゴンレーザー32を照射して励起させ、前記レゾルフィンの蛍光をCCDカメラ33で撮影すると共に、前記CCDカメラ33に接続されたパーソナルコンピュータ(電子計算機、蛍光強度測定装置)34により、撮影されたレゾルフィンの蛍光強度の変化を測定した。
図15は実験例4、5および比較例1の実験結果であり、横軸に時間[sec]をとり、縦軸にレゾルフィンの蛍光強度をとったグラフの説明図である。
図15に示すように、実験例4では、前記レゾルフィンの蛍光強度の最大値である最大蛍光強度が、2382であり、前記最大蛍光強度を示すまでの時間が、前記各試料をマイクロチャンネル7内に注入してから7.8[sec]後であったことがわかる。また、実験例5では、前記最大蛍光強度が、1044であり、前記最大蛍光強度を示すまでの時間が、前記各試料をマイクロチャンネル7′内に注入してから14.2[sec]後であったことがわかる。さらに、比較例1では、前記最大蛍光強度が、1455であり、前記最大蛍光強度を示すまでの時間が、前記各試料をマイクロチャンネル7″内に注入してから27.7[sec]後であったことがわかる。
ここで、実験例4の前記マイクロリアクター1がレゾルフィンを最も効率良く化学反応させたのは、図14Bに示すように、複数のカーボンナノチューブ束6の先端部どうしの間の領域に、前記HRP(31)が付着しており、且つ、前記領域に前記各試料も入り込むことが可能であったためであると考えられる。すなわち、実験例4の前記マイクロリアクター1は、複数のカーボンナノチューブ束6の先端部どうしの前記凝集間隔d2[μm](図2C、図6C参照)よりも、前記触媒(31)および前記各試料の分子の径(分子径)が小さかったものと考えられる。
なお、実験例5の前記マイクロリアクター1′が、実験例4および比較例1の前記マイクロリアクター1,1″に比べ、前記最大蛍光強度が小さくなったのは、図14Cに示すように、前記触媒(31)または前記各試料、あるいは両方が、その分子径と前記カーボンナノチューブ4どうしの隙間との関係で、前記カーボンナノチューブ4どうしの間に入り込むことができなかったためと考えられる。すなわち、前記触媒(31)および前記各試料の種類との関係において、前記カーボンナノチューブ4の全表面を、化学反応の反応場として使用できなかったためであると考えられる。
このため、実験例5の前記マイクロリアクター1′は、比較例1の前記マイクロリアクター1″に比べ、前記マイクロチャンネル(7′,7″)の深さが浅いため(32[μm]<60[μm])、前記各試料が拡散可能な範囲、すなわち、前記各試料の拡散距離が短くなっている。よって、実験例5では、比較例1に比べ、化学反応の収束が早くなったものと考えられる。
この結果、実験例5の前記マイクロリアクター1′は、HRP(31)存在下でAmplex Red試薬と過酸化水素水を化学反応させてレゾルフィンを生成することについては不向きであったと考えられる。換言すれば、前記カーボンナノチューブ4の間に進入可能な分子径の試料等を使用する場合には、実施例5の前記マイクロリアクター1′についても、実施例4の前記マイクロリアクター1と同様の効果が期待できる。
この結果、実施例1の前記マイクロリアクター1は、前記マイクロチャンネル7内にカーボンナノチューブ4が存在しない比較例1のマイクロリアクター1″等に比べ、前記マイクロチャンネル7内の化学反応を効率良く実行することができる。
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H07)を下記に例示する。
(H01)前記実施例では、前記チューブ生成工程(図3参照)において、前記化学蒸着装置11(図3参照)を用いて、エタノールを原料としたアルコールCCVD法により、前記シリコン基板19の平坦面19aに前記カーボンナノチューブ4を生成したが、これに限定されず、前記平坦面19aに前記カーボンナノチューブ4が垂直配向される任意の方法により、前記カーボンナノチューブ4を生成することが可能である。例えば、非特許文献1のキシレンとフェロゼンを原料としたCVD法を利用したり、非特許文献2のメタンにマイクロ波を照射するCVD法を利用したり、ニッケル−コバルト(Ni−Co)等の金属触媒を混ぜた黒鉛(C)にYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーを当て蒸発させ、アルゴン(Ar)の気流で約1200℃の電気炉に送り出して前記電気炉の壁面に付着させるレーザーアブレーション法を利用したりして、平坦面19aに前記カーボンナノチューブ4を生成することも可能である。
(H03)前記実施例では、前記チューブ転写工程(図4参照)において、樹脂基板2を鋳型26で形成する際に(図4A参照)、樹脂基板2の溝2cを、溝2cに応じた突起26aで形成すると共に、加熱して硬化させた樹脂基板2をくり抜いて貫通孔2d,2dを空けているが、これに限定されず、例えば、貫通孔2d,2dについても、溝2cと同様に、貫通孔2d,2dに応じた突起を設けて形成することも可能である。なお、前記実施例では、樹脂基板2に、1つの溝2cと、2つの貫通孔2d,2dを形成したが、溝や貫通孔の数はこれに限定されず、例えば、一方の貫通孔2dを省略したり、2以上の溝や3以上の貫通孔を形成したりすることも可能である。さらに、溝や貫通孔の形状や位置・大きさ・範囲等についても、任意に変更可能である。
(H07)前記実施例では、前記チューブ束作成工程(図6参照)を、前記マイクロチャンネル形成工程(図5参照)の後に実行したが、これに限定されず、例えば、前記チューブ転写工程(図4参照)と前記マイクロチャンネル形成工程(図5参照)との間に実行することも可能である。また、前記チューブ束作成工程により、前記カーボンナノチューブ束6を作成することが好ましいが、これに限定されず、前記チューブ束作成工程を省略して、前記カーボンナノチューブ4を垂直配向させたままの状態にしておくことも可能である。
2…被転写基板、
2a…被転写面、吸着部材、ポリジメチルシロキサン、
2c…溝、
3…閉塞基板、
3a…閉塞面、
4…カーボンナノチューブ、
6…カーボンナノチューブ束、
7…流路、
19…転写基板、
19a…チューブ生成面、
19c…凸部、
19d…凸部の外表面、
28…孔部、
29…マスク、
29a…マスクの外表面。
Claims (7)
- 転写基板のチューブ生成面にカーボンナノチューブを生成するチューブ生成工程と、
被転写面と、前記被転写面に形成された溝と、を有する被転写基板に対して、前記チューブ生成面と前記被転写面とを対向させた状態で、前記転写基板と前記被転写基板とを接近させて、前記溝に前記チューブ生成面の前記カーボンナノチューブを転写するチューブ転写工程と、
閉塞面を有する閉塞基板に対して、前記被転写面と前記閉塞面とを対向させた状態で、前記被転写基板と前記閉塞基板とを接合して、前記溝の開口側を塞いで、前記カーボンナノチューブと前記溝と前記閉塞面とによって囲まれた空間としての流路を形成する流路形成工程と、
を備え、
前記流路内の比表面積を前記カーボンナノチューブによって大きくする
ことを特徴とするマイクロリアクターの製造方法。 - 前記溝に転写された複数の前記カーボンナノチューブの少なくとも先端部に、複数の前記カーボンナノチューブどうしの間を連絡する液体を接触させ、前記液体を気化させて、複数の前記カーボンナノチューブを束ねたカーボンナノチューブ束を作成するチューブ束作成工程、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のマイクロリアクターの製造方法。 - 前記溝に応じて形成された前記転写基板の凸部に、前記凸部に対応するマスクの孔部が嵌まって、前記転写基板に前記マスクが装着され、前記チューブ生成面としての前記凸部の外表面に沿って前記マスクの外表面が配置された状態で、前記各外表面に前記カーボンナノチューブを生成した後で、前記転写基板に対して着脱可能な前記マスクを取り外して、前記凸部の外表面にのみ前記カーボンナノチューブを残した状態にする前記チューブ生成工程と、
前記溝に前記凸部の外表面の前記カーボンナノチューブを転写する前記チューブ転写工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロリアクターの製造方法。 - 溝が形成された被転写面と、カーボンナノチューブがチューブ生成面に生成された転写基板の前記チューブ生成面と前記被転写面とが対向接近されて前記溝に転写された前記カーボンナノチューブと、を有する被転写基板と、
閉塞面を有し、前記被転写面と前記閉塞面とを対向させた状態で、前記被転写基板に接合されて前記溝の開口側を塞ぐ閉塞基板と、
前記カーボンナノチューブと前記溝と前記閉塞面とによって囲まれた空間としての流路と、
を備えたことを特徴とするマイクロリアクター。 - 複数の前記カーボンナノチューブの先端部が束ねられたカーボンナノチューブ束、
を備えたことを特徴とする請求項4に記載のマイクロリアクター。 - 前記チューブ生成面より吸着性が高い吸着部材により構成された前記被転写面、
を備えたことを特徴とする請求項4または5に記載のマイクロリアクター。 - ポリジメチルシロキサンにより構成された前記吸着部材、
を備えたことを特徴とする請求項6に記載のマイクロリアクター。
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