JP2004326613A - 画像処理方法、及び画像処理装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】通常の誤差拡散法を適用したハーフトーン処理を行って、記録レベル1が100%となる画像が形成される場合には、(A)に示すように、記録レベル1が連続してバンディングBDが目立つ。一方、本発明のハーフトーン処理によれば、(B)に示すように、画素位置Xには、滴なしの記録レベルが適用されてインク滴が吐出されない。また、本来小滴の記録レベルが選択される画像データについて滴なしの記録レベルが選択されるので、未処理の画像データへの拡散誤差が大きくなり、後の画像データについて処理において、中滴の記録レベル以上のものが選択され、(B)に示すように、中サイズのインク滴Cが吐出されて画像が形成される。
【選択図】 図8
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像処理方法、画像処理装置、液滴吐出方法、及び、液滴吐出装置に関し、特に、画像情報に基づいてハーフトーン処理を行う際における、画像処理方法、及び画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、インクジェット記録装置などの画像記録装置においては、出力できる記録レベルは2〜4程度で、画像データの階調数と比較して、非常に少ない。そのような制限の上できれいな中間調の出力を得るために、ハーフトーン処理が行われる。ハーフトーン処理の基本は、画像データ値と、予め定められた閾値との比較である。例えば、ある画素の画像データ値が、k−1番記録レベルの値とk番目の記録レベルの値の間の値であった場合、ハーフトーン後の画像は、画像データ値とk−1番の閾値と比較して、画像データ値が大きければk番目の記録レベル、小さければk−1番目の記録レベルとなる。この閾値の集合を2次元マトリクス状に記憶したものを、ハーフトーン向けスクリーンマトリクスと称し、ベイヤー型ディザマトリクス、クラスタドット型マトリクス、ブルーノイズマスク等が、有名である。このスクリーンマトリクスを用いたハーフトーン処理は、ディザ法とも称され、出力画像にテクスチャー(模様)や疑似輪郭が生じやすい等の欠点がある。この欠点を改善できるものとして、閾値は一定で、ハーフトーン処理により発生した誤差(画像データ値−記録レベルの値)を、周辺の画素に分散する誤差拡散法という手法が提案されている。この手法は、1975年に、FloidとSteinbergにより、”An Adaptive Algorithm for Spatial Gray Scale”, SID DIGEST という論文の中で発表されたもので、近年の写真画質並の高画質な出力の際のハーフトーン手法の多くは、この手法を基本に用いている。これらのハーフトーン手法は、当業者には、周知の技術であり、例えば、1999年1月にコロナ社より刊行された「ファインイメージとハードコピー」p.309〜313に記載されているので、詳細な説明は省く。
【0003】
この誤差拡散法は、ディザ法と比較して、高画質な出力が得られるが、閾値と比較される値が、画像データ値と拡散された誤差が足し合わせれた結果であるため、出力の制御すなわち、所定の位置に所定の記録レベルの出力を行わせることが困難である。そのため、以下に述べるような問題が生じている。以下は、記録レベルの違いを、インクの滴の大きさ、すなわち、紙面上のドットの大きさの違いで現わす、インクジェットプリンターの例で説明を行う。
【0004】
一つの問題点は、明部でのドットの出現の遅延である。この現象が起こる理由は、明部では画像データの値が小さいため誤差が小さく、周囲に拡散する誤差を多く蓄積しないと、閾値を越えてドットが出現しないので、図13(A)に示すように、しばらくドットが発生しない白抜けの部分Wが出現してしまうのである。ここでは、明部において白(ドットなし)と小滴の例で説明したが、記録レベル(ドットの大きさ)の変わり目の濃度においても、同様の問題が生じる。例えば、小ドットが一面に置かれる画像濃度よりわずかに濃い領域では、小ドットのみの部分がしばらく続いたのちに、中ドットが出現することになる。この問題の対処として、特許文献1では、画像濃度レベルに応じた確率で低レベルの閾値を設定する方法を述べている。しかしながらこの方法では、閾値に与えるノイズ(乱数)の振幅が明部ほど大きくなるため、ドットの出現に偏りが生じて、粒状性が多くなってしまう。また、その他の実施例1でL3を小さくして乱数の振幅を小さくしても、画像データが1,2程度の極端に明るい部分では、図13(B)に示すようにドットが波状に連なってしまうという問題点が存在する。また、多値の出力レベルでの対処法については、述べられていない。
【0005】
もう一つの問題点は、バンディングが生じてしまうことである。一般にインクジェットプリンターにおいては、ノズル毎にインクの吐出特性が微妙に異なる。そして、インクの記録媒体上への着弾位置にズレが生じる場合、このズレはノズル毎に同一となる。図14に示すように、インクジェットヘッド102を主走査方向へ移動させながら、ノズルN1〜Nnからインク滴を吐出させて画像を形成する場合、ノズルN4から吐出されたインクの着弾位置にズレが生じるとすると、ノズルN4で形成される着弾列L0によって、筋状の濃淡ムラ104、106が形成されてしまうという不都合があった。この筋状の濃度ムラがバンディングである。この対策として、横1ラインを1種類のノズルで記録しないで、複数のノズルで行う方法(多パス記録、分割記録、インターレース記録、オーバーラップ方式等の名称がある)が存在するが、横1ラインを形成するのに必要な主走査の回数がノズル種類数となり、記録速度が低下するという別の問題が生じる。
【0006】
バンディングは、図8(A)に示すように、均一な大きさドットが並んでいる場合は立ちやすいが、図8(B)に示すように、色々な大きさのドットが混合している場合は、同じ位置ズレ量でも、バンディングが目立ちにくいことが知られている。そこで、このバンディングを軽減させるために、特許文献2は、ハーフトーン処理において誤差拡散法を用いると共に、ディザマトリクスの値に応じて誤差拡散法の閾値を変更して、ドットを打つ位置を変動させる方法が記載されている。確かに、この方法によれば、ドットの混合がある程度制御することができ、通常の誤差拡散法よりもドットの混合率が増えて、バンディングの軽減は行える。しかしながら、全ての画像データについて閾値の変動を行うため、処理が多くなってしまう。先に述べたドットの遅延の問題の対処が出来ていない。ドットの形成位置を完全には制御することができない。という問題があった。
【0007】
また、インクジェットプリンターをヘッドの本来の性能以上に超高速で駆動させると、ある滴種(例えば小滴)だけは不安定だが、ほかの滴種は問題なく出力できる場合がある。このような場合は、不安定となる滴(小滴)だけは連続して出力しない(小ドットが連続しない)ように制御することにより、ヘッド本来の性能以上に高速な出力が可能となる。
【0008】
【特許文献1】
特許登録第2662401号
【特許文献2】
特開2001−150651号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述事実を考慮してなされたものであり、より簡単な処理で、記録レベルの制御が容易に行える誤差拡散法が実現でき、ドットの遅延、バンディングの軽減、安定した高速記録を可能な画像処理方法、及び、前記画像処理方法の適用された画像処理装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の画像処理方法は、ハーフトーン処理において、画像データに基づく複数の記録レベル値の選択を、注目画素の画像データ値と周辺画素の重み付け誤差との和で得られる周辺誤差付加画像データ値と、所定の閾値と、の比較により行う誤差拡散法を用いた画像処理方法であって、前記複数の記録レベル値の各々に対応した記録レベル適用数値範囲を画する通常閾値を記憶し、所定の画素位置に対応する特定画像位置を決定すると共に、この特定画像位置に対応する画像データに適用される前記通常閾値をこの通常閾値と異なる特別閾値に変更し、 前記特定画像位置の画像データには前記特別閾値を適用すると共に、前記特定画像位置以外の画像データには前記通常閾値を適用して、前記記録レベル値を選択するものである。
【0011】
また、本発明の画像処理装置は、ハーフトーン処理において、画像データに基づく複数の記録レベル値の選択を、注目画素の画像データ値と周辺画素の重み付け誤差との和で得られる周辺誤差付加画像データ値と、所定の閾値と、の比較により行う誤差拡散法を用いる画像処理装置であって、前記複数の記録レベル値の各々に対応した記録レベル適用数値範囲を画する通常閾値を記憶する記憶手段と、所定の画素位置に対応する特定画像位置を決定すると共に、この特定画像位置に対応する画像データに適用される前記通常閾値をこの通常閾値と異なる特別閾値に変更する変更手段と、前記特定画像位置の画像データには前記特別閾値を適用すると共に、前記特定画像位置以外の画像データには前記通常閾値を適用して、前記記録レベル値を選択する選択手段と、を含んで構成されている。
【0012】
通常、低階調の出力機能しか有さない出力装置において、高階調の画像データに対応した階調を実現するために、ハーフトーン処理が行われるが、このハーフトーン処理としては、画像データ値と記録レベル値との誤差を周辺の画素に拡散させる誤差拡散法が知られている。ここで、記録レベル値とは、記録しない場合を含む、記録レベル毎に設定されている値で、各記録レベルの濃度に対応した値をいう。
【0013】
例えば、インクジェット記録装置では、図15(A)に示すように、インクの吐出、または非吐出の2階調については、通常、記録レベル値0、255が設定されることが多い。多値の場合、例えば、吐出されるインクの滴(紙面上のドット)が大、中、小の3種類に、インクの非吐出を加えた4階調については、大:255、インク非吐出:0で、中の記録レベルで記録した均一な画像の濃度は大の記録レベルで記録した均一な画像の濃度の約170/255、小の記録レベルで記録した均一な画像の濃度は大の記録レベルで記録した均一な画像の濃度の約85/255であったとすれば、中、小は、170、85のように、記録レベル値が設定される。記録レベル値に対応した量のインクが出力されることを、プリンターでは、ドットが出現する、ドットが打たれるというように記述できる。インクジェットプリンターでは、ドットの代わりに滴という言葉を用いることもある。
【0014】
一般的に、記録レベル値の決定は、画像データの値と所定の閾値との比較により行われるが、誤差拡散法では、注目画素の画像データ値に周辺画素の重み付け誤差を付加し、この値(以下「周辺誤差付加画像データ値」という)と、所定の閾値と、の比較により行われる。閾値との比較により記録レベルが決定されることから、所定の閾値はある記録レベル値が出力されるための数値範囲を画するという見方もできる。本稿では、各々の記録レベル値が出力される周辺誤差付加画像データの数値範囲を、記録レベル適用数値範囲と称することとする。
【0015】
例えば、図15(A)に示すように、誤差拡散法における閾値(図15(A)では、127)により記録レベル適用数値範囲が画され、記録レベル値0に対応する記録レベル適用数値範囲は0〜127、記録レベル値255に対応する記録レベル適用数値範囲は128〜255となる。言い換えると、周辺誤差付加画像データが0〜127のときには記録レベル0が出力され、128〜255のときには記録レベル255が出力される。また、図15(B)の例では、記録レベル値0(0番目の記録レベル)に対応する記録レベル適用数値範囲は0〜41であり、記録レベル値85(1番目の記録レベル)に対応する記録レベル適用数値範囲は42〜127で、記録レベル適用数値範囲0〜41と記録レベル適用数値範囲42〜127とを画する閾値(1番目の閾値)は41である。同様に、記録レベル値170(2番目の記録レベル)に対応する記録レベル適用数値範囲は128〜212で、記録レベル適用数値範囲42〜127と記録レベル適用数値範囲128〜212とを画する閾値(2番目の閾値)は127である。同様に、記録レベル値255(3番目の記録レベル)に対応する記録レベル適用数値範囲は213〜255で、記録レベル適用数値範囲128〜212と記録レベル適用数値範囲213〜255とを画する閾値(3番目の記録レベル)は212である。
【0016】
以上の関係を図15(C)に示すように一般化すると、周辺誤差付加画像データが、k番目の閾値以下であればk−1番目の記録レベル、k番目の閾値より大きければk番目の記録レベルが出力され、k番目の閾値により画される記録レベル適用数値範囲は、以下の2つである。一つは、k−1番目の記録レベルに対応する記録レベル適用数値範囲で、その範囲はk−1番目の閾値+1の値〜k番目の閾値、もう一つは、k番目の記録レベルに対応する記録レベル適用数値範囲で、その範囲はk番目の閾値+1の値〜k+1番目の閾値となる。ただし、k=1の場合のみ、0番目の記録レベルに対応する記録レベル適応数値範囲は0〜1番目の閾値である。
【0017】
このように、通常の誤差拡散で用いられるように、周辺誤差付加画像データが大きくなるにしたがって、記録レベルが順次出力されていくように、予め定められた閾値を通常閾値と称することとする。通常閾値は、必ずしも一定値である必要はなく、平均値がほぼ一定であればよい。また、通常は、各記録レベル値間の中間値をとるが、必ずしも中間値である必要はない。
【0018】
本発明では、まず、所定の特定画像位置を決定する。ここでの特別画像位置とは、形成される画像の中の所定の画素位置に対応する位置を意味する。この特定画像位置に対応する画像データに適用される閾値を、通常閾値と異なる特別閾値に変更する。例えば、k番目の閾値を通常閾値よりも大きな値の特別閾値に変更すれば、k番目の記録レベル値は出力されにくくなり、k番目の閾値よりも小さな値の特別閾値に変更すればk番目の記録レベル値は出力されやすくなる。
【0019】
このように、特定画像位置に対応する画像データに適用される閾値を変更することにより、記録レベル値の制御を容易に行うことができ、明部のドットの出現の遅延を解消、バンディングの低減、ヘッド本来の性能以上に高速な出力が可能となる。 また、上記では特定画像位置に対応する画像データに適用される閾値のみを変更するので、全ての画像データについて閾値を変更する場合と比較して、高速な処理を行うことができる。
【0020】
なお、本発明の画像処理方法における前記特別閾値は、請求項2、請求項11に記載のように、前記記録レベル適用数値範囲を80%以上変動させる値とされたことを特徴とすることができる。記録レベル適用数値範囲が広がるように80%以上変動させることにより、この記録レベル適用数値範囲に対応した記録レベル値をより出力されやすく制御することができ、記録レベル適用数値範囲が狭まるように80%以上変動させることにより、この記録レベル適用数値範囲に対応した記録レベル値をより出力されにくく制御することができる。
【0021】
さらに、本発明の画像処理方法は、請求項3、12に記載のように、前記特別閾値は、この特別閾値に変更される前の通常閾値によって画される2つの記録レベル適用数値範囲の中の最大値以上、または最小値以下とすることを特徴とすることができる。一般化してその作用を説明する。k番目の記録レベルに対するk番目の通常閾値を、k番目の通常閾値によって画される2つの記録レベル適用数値範囲の中の最大値すなわちk+1番目の通常閾値より大きくすると、記録レベルkに対応する記録レベル数値範囲はなくなるので、記録レベルkは出力されなくなる。また、k番目の記録レベルに対するk番目の通常閾値を、k番目の通常閾値によって画される2つの記録レベル適用数値範囲の中の最小値すなわちk−1番目の通常閾値より小さくすると、記録レベル値k−1に対応する記録レベル適用数値範囲はなくなるので、記録レベル値k−1を確実に出力されないように制御することができる。さらに、最大値以上、最小値以下の極端な場合、すなわち、kより上の記録レベルの特別閾値がすべて記録レベル適用数値範囲の中の最大値で、かつ、k番目の記録レベルの特別閾値は、最下記録レベル(滴なし)の記録レベル適用数値範囲の最小値とした場合は、k番目の記録レベルは、確実に出力される。
【0022】
例えば、図15(B)においては、通常閾値41により画される、2つの記録レベル適用数値範囲すなわち、記録レベル0に対応する記録レベル適用数値範囲0〜41と、記録レベル85に対応する記録レベル適用数値範囲42〜127が存在する。この通常閾値41に代えて用いる特別閾値をこの2つの記録レベル適用数値範囲の中の最大値:127より大きく、例えば、130とすれば、記録レベル値85に対応する記録レベル適用数値範囲とすれば、記録レベル値85に対応する記録レベル適用数値範囲はなくなるので、記録レベル値85を確実に出力されないように制御することができる。また、通常閾値41に代えて用いる特別閾値を2つの記録レベル適用数値範囲の中の最小値:0より小さくすれば、記録レベル値0に対応する記録レベル適用数値範囲はなくなるので、記録レベル値0を確実に出力されないように制御することができる。
【0023】
ここで、所定の記録レベル値が出力されやすいように所定の記録レベル値に対応する記録レベル適用数値範囲を広げるような特別閾値を拡大特別閾値、隣り合う2つの記録レベル適用数値範囲の中の最小値以下の特別閾値を最小特別閾値、所定の記録レベル値が出力されにくいように所定の記録レベル値に対応する記録レベル適用数値範囲を狭めるような特別閾値を縮小特別閾値、隣り合う2つの記録レベル適用数値範囲の中の最大値以上の特別閾値を最大特別閾値と呼ぶこととする。
【0024】
特別閾値を用いることにより、通常の誤差拡散法では同一の記録レベルが出力される濃度領域において、特定画像位置では異なる記録レベルを使用することができる。異なる記録レベルが出力されたとしても、その誤差が周辺画素に拡散されるため、特定画像位置以外では、濃度差が相殺される記録レベルが出力されるので、マクロ的な濃度は、通常の誤差拡散の結果と同じになる。すなわち、特定画像位置の記録レベルが通常の結果よりも大きい(濃くなる)場合は、通用よりもマイナス方向の誤差が拡散されて、特定画像位置以外の周辺の画素は、通常の記録レベルよりも小さい(薄い)結果となる。マクロ的な濃度とは、多種の大きさ(濃度)の微細な画素の集合を通常の目視距離から肉眼で見た場合は、目の積分効果によって単一濃度と識別されるが、その単一の濃度のことである。
【0025】
この方法により、出力のマクロ的な濃度を変えることなく、ドットの種類と位置を制御することが容易となり、明部でのドット出現の遅延、ドットの種類を混在させることによるバンディング対策、高速化により安定しなくなる滴種(例えば小ドット)を連続して出力しないようにすることによる超高速化等の実現が可能となる。
【0026】
なお、特定画像位置は、請求項4、11に記載のように、2次元的に偏りのない位置に設定しておくことが望ましい。
【0027】
また、本発明の画像処理方法は、請求項5、14に記載のように、前記特定画像位置の画像データ値が複数の前記記録レベル値の中の1つの記録レベル値を含む記録レベル値近辺の所定範囲の値である場合には、前期記録レベルに隣接する上下の2つの記録レベルに対する特別閾値は、前記1つの記録レベル値に近い値とされていることを特徴とすることもできる。
【0028】
前記特定画像位置の画像データ値が、ある記録レベル値を含む所定範囲の値、特にその記録レベル値近辺の値である場合には、ハーフトーン後の出力はこの記録レベルが大半で、画像データ値が記録レベル値より大きい場合は、一つ上の記録レベルのドットが、画像データ値が記録レベル値より小さい場合は、一つ下の記録レベルのドットが、少し出力されることになる。この少しのドットの出現に偏りが出るのが、先に述べたドットの出現の遅延問題である。この場合には、記録レベルに隣接する上下の2つの記録レベルに対する特別閾値を、記録レベル適用数値範囲を拡大するよう設定することにより、この記録レベルの上と下の記録レベルがが出力しやすいようにするのである。これにより、明部もしくは記録レベル値近辺のドットの出現の遅延を解消することが可能となる。
【0029】
ところで、特定画像位置の画素の数が多くなりすぎると、濃度差を相殺できる画素が少なくなってしまって、通常の誤差拡散法と比較して、マクロ的な濃度が異なってしまう現象が発生する。例えば、画像データ値が0〜255の256階調、記録レベル値がドットなし(0)、小ドット(128)、大ドット(255)の場合で説明する。今、画像データ値が64の均一の濃度領域をハーフトーン化することを考える。通常の誤差拡散法の場合は、小ドット50%の結果となる。この場合、小ドットに関して特別最小閾値となる特定画像位置の画素の数が50%を越える(50+α%)ように設定すると、通常の誤差拡散法の結果(小ドット50%)と比較して、マクロ的な濃度が異なってしまう。何故なら、この場合は、50+α%の画素が小ドットとなり、通常の結果よりも濃くなってしまうからである。また、画像データ値が192の均一の濃度の場合は、通常の誤差拡散の場合は、小ドット50%大ドット50%の結果となる。この場合、小ドットに関して特別最小閾値となる特定画像位置の画素の数が50%を越える(小ドットが50%以上となる)か、大ドットに関して特別最大閾値となる特定画像位置の画素の数が50%を超える(大ドットが50%以下となる)と、通常の誤差拡散の結果(小ドット50%大ドット50%)と比較して、マクロ的な濃度が薄くなってしまう。
【0030】
このように、特定画像位置の個数は、画像データ値に依存する。そこで本発明の画像処理方法では、請求項6、15に記載のように、前記特定画像位置の決定は、ハーフトーン処理のスクリーンマトリクスの各値と、注目画素の画像データ値に基づいて行うことを特徴とすることができる。すなわち、ハーフトーン向けスクリーンマトリクスを、ハーフトーン処理に用いるのと同様に、画像データ上にスクリーンマトリクスをタイル状に並べて、画像データの位置とスクリーンマトリクスの位置を対応づけ、対応している画像データの値とスクリーンマトリクスの値を基準に、特定画像位置を決定する。このようにして特定画像位置を決定することにより、上記濃度の不都合を回避することができる。
【0031】
また、本発明の画像処理方法は、請求項7、16に記載のように、ハーフトーン処理において、画像データ値の濃度変化に対してある記録レベルの出現を制限するにあたり、相補する2つの2次元位置A、Bを想定し、前期記録レベルの出現する比率を増減させたい濃度領域ではAの位置の特別閾値による記録レベル適用数値範囲が減少する特別閾値を適用し、前期記録レベルの出現する比率を一定にさせたい濃度領域ではBの位置の特別閾値による記録レベル適用数値範囲が増大する特別閾値を適用することを特徴とすることができる。これにより、ある記録レベルのドットの出現の制限、例えば小ドットの出現を50%以内等、を連続性を保ちながら行うことが可能である。
【0032】
また、本発明の画像処理方法は、請求項8、17に記載のように、前記相補する2つの2次元位置A、Bは、ハーフトーン処理のスクリーンマトリクスにおいて、マトリクス内の値に応じて2値化された2種の値に対応する位置であることを特徴とする。これにより、容易に、相補する2つの2次元位置を決定することができる。
【0033】
さらに、本発明の画像処理方法は、請求項9、18に記載のように、ハーフトーン処理において、画像データ値の濃度増加に伴い複数の記録レベルを混在するにあたり、ある濃度領域における1つの記録レベルの特定画像位置における特別閾値は記録レベル適用数値範囲が増大する値を適用し、前記濃度領域と同じ濃度領域における前記1つの記録レベルと隣接する記録レベルに対しては、特定画像位置は前記1つの記録レベルの特定画像位置と同じ位置とし、その特別閾値は記録レベル適用数値範囲が減少する値を適用することを特徴とする。これにより、隣り合う記録レベル、例えば小ドットと中ドットの混合が、濃度の変化にともなって、小ドットが打たれていない画素に中ドットが打たれるようなドットの制御が、容易に行うことが可能となる。
【0034】
本発明は特別閾値によりドットを混在させるようにするものであるが、ドットの混在の仕方に偏りがあると、粒状性の増加となって、別の画質劣化の要因となる。そこで、請求項7−9、16−18のような構成にすることにより、ドットの混在の仕方に偏りが少なく、ドットの混在率を高くすることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳しく説明する。なお、以下では説明の便宜上、具体的数値を挙げることがあるが、本発明は、これに限定されない。
【0036】
本実施形態の画像記録装置としてのインクジェット記録装置10は、図1に示すように、インクジェットヘッド12、キャリッジ14、主走査機構16、および、副走査機構18を含んで構成されている。
【0037】
インクジェットヘッド12は、キャリッジ14に固定され、キャリッジ14と共に移動可能とされている。主走査機構16は、キャリッジ14を、記録用紙Pの記録面に沿った所定の主走査方向に移動(主走査)可能とされている。副走査機構18は、記録用紙Pを主走査方向と交差(好ましくは直交)する所定の副走査方向に搬送(副走査)可能とされている。なお、図面において主走査方向を矢印Mで、副走査方向を矢印Sでそれぞれ示す。
【0038】
インクジェットヘッド12は、図2に示すように、インク滴の吐出されるノズルN1〜Nnを備える。ノズルN1〜Nnは、記録用紙Pと対向する側(図1参照)に、副走査方向に沿って備えられている。インクジェットヘッド12は、キャリッジ14と共に主走査機構106によって主走査方向に移動されながら、記録用紙Pに対してインク滴を吐出することにより、一定のバンド領域BEに対して画像の記録を行う。主走査方向への1回の移動が終了すると、副走査機構18によって記録用紙Pが副走査方向に搬送され、再びインクジェットヘッド12が主走査方向に移動されて、次のバンド領域を記録する。こうした動作を複数回繰り返すことにより、記録用紙Pの全面にわたって画像記録を行うことができる。
【0039】
図3には、本実施形態の制御系の概略ブロック図が示されている。インクジェット記録装置10には、インクジェット記録装置10のシステム制御を行う制御部20が備えられている。制御部20は、インターフェイス22、CPU24、ROM26、RAM28を有しており、これらはバスBで互いに接続されている。インターフェイス22は、パーソナルコンピュータなどの外部機器との各種信号の授受を行う。CPU24は、所定の処理を実行可能とされている。ROM26には、インクジェット記録装置10の動作のための各種プログラム、誤差拡散法を用いたハーフトーン処理において使用する通常閾値、特別閾値、通常閾値から特別最大閾値へ変更する特定画像位置、その他のデータが記憶されている。
【0040】
ここで、通常閾値、特別閾値、及び、通常閾値から特別閾値へ変更する特定画像位置について説明する。通常の誤差拡散法で用いられる閾値に対応するものである。たとえば、0〜255の数値範囲で示される256階調の画像データを、インク滴を吐出しない(滴なし)、小さいサイズのインク滴を吐出する(小滴)、中サイズのインク滴を吐出する(中滴)、大きいサイズのインク滴を吐出する(大滴)、の4階調の記録レベルで実現する場合を考える。各記録レベルには、濃度に応じた記録レベル値が設定されている。ここでは、図4(A)に示す対応表Hのように、滴なし:0、小滴:85、中滴:170、大滴:255、に設定されているとする。滴なしの記録レベル値は、周辺誤差付加画像データ値が0〜42(滴なし記録レベル適用数値範囲)のものに適用され、小滴の記録レベル値は、周辺誤差付加画像データ値が43〜127(小滴記録レベル適用数値範囲)のものに適用され、中滴の記録レベル値は、周辺誤差付加画像データ値が128〜212(中滴記録レベル適用数値範囲)のものに適用され、大滴の記録レベル値は、周辺誤差付加画像データ値が213〜255(大滴記録レベル適用数値範囲)のものに適用されるように設定する。したがって、通常閾値としては、滴なしの記録レベル値と小滴の記録レベル値との間の通常閾値TH1:42、小滴の記録レベル値と中滴の記録レベル値との間の通常閾値TH2:127、中滴の記録レベル値と大滴の記録レベル値との間の通常閾値TH3:212、が設定されている。
【0041】
特別閾値は、通常閾値と異なる値であり、各通常閾値に代えて使用する閾値である。例えば、図4(B)に示すように、通常閾値TH1に代えて特別閾値Aを使用することができる。ここでは、特別閾値Aとして、小滴の記録レベルに対応する数値範囲の最大値:127を設定する。これにより、小滴の記録レベルに対応する数値範囲は存在しなくなり、周辺誤差付加画像データ値が0〜127のものには、滴なしの記録レベルが適用される。このように、ある通常閾値によって画される2つの記録レベル適用数値範囲の中の最大値をとる特別閾値を特別最大閾値とよび、最小値をとる特別閾値を特別最小閾値とよぶことにする。
【0042】
通常閾値から特別最大閾値へ変更する画素位置については、例えば、図5に示すマトリクスMのXで示される位置(以下「画素位置X」という)とすることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、上記の例に示す、対応表H、I、及び、図5に示す画素位置X、が予め記憶されているものとする。
【0044】
さらに制御部20は、図3に示すように、画像データ送信回路30、3つの駆動信号発生回路32A、32B、32C、を有しており、これらもバスBと接続されている。画像データ送信回路30は、所定の処理が行われた画像データをインクジェットヘッド12内の、後述する画像データ受信回路40へ、送信する。
【0045】
インクジェットヘッド12内には、画像データ受信回路40が備えられ、ノズルN毎(図示省略)に圧電アクチュエータ42が備えられている。また、圧電アクチュエータ42に対応して、駆動信号選択回路44が備えられている。画像データ受信回路40は、画像データ送信回路30からの画像データを受け取る。それぞれの駆動信号選択回路44には、画像データ受信回路40からの画像データと、3つの駆動信号34A、34B、34Cとが入力されるようになっている。
【0046】
駆動信号発生回路32A、32B、32Cは、図6に示すように、それぞれ異なる駆動信号34A(図6(A)参照)、駆動信号34B(図6(B)参照)、駆動信号34C(図6(C)参照)を発生するようになっている。これらの駆動信号34A、34B、34Cの電圧の波形は、所定のバイアス電圧から、一旦電圧を降下させる電圧降下プロセス36A、降下された電圧(低電圧)に維持する低電圧維持プロセス36B、低電圧から電圧を上昇させる電圧上昇プロセス36C、上昇された電圧(高電圧)を維持する高電圧維持プロセス36D、及び、高電圧をバイアス電圧に戻す電圧復元プロセス36Eにより構成されている。この駆動信号34A、34B、34Cのいずれかが、圧電アクチュエータ42(図3参照)に印加されると、ノズルNから液滴が吐出される。
【0047】
ここで、図5から分かるように、本実施形態では、3つの駆動信号ごとに、高電圧維持プロセス36Dの長さが異なるように、それぞれの駆動信号が設定されている。一般に、この高電圧維持プロセス36Dの長さが長くなるほど、吐出される液滴の滴径が大きくなる。したがって、駆動信号発生回路32Bの駆動信号34Bを基準に考えると、駆動信号発生回路32Aの駆動信号34Aによって吐出される液滴の滴径は小さくなる。これに対し、駆動信号発生回路32Cの駆動信号34Cによって吐出される液滴の滴径は大きくなる。
【0048】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0049】
インターフェイス22から画像データが入力され、画像データに所定の処理が施された後、CPU24では、図7に示すハーフトーン処理が行われる。なお、このハーフトーン処理は、シリアルに並んでいる画像データ各々に対して順次行われる。
【0050】
ステップS10で、1の画像データを読出し、ステップS12で、前の画像データの誤差を拡散して誤差拡散後データを求める。ステップS14で、当該画像データがマトリクスMのXで示される画素位置Xに対応する画像データかどうかを判断し、判断が肯定された場合には、ステップS16で、通常閾値TH1に代えて特別閾値Aを適用した対応表Iを使用して、記録レベルを選択する。ステップS14での判断が否定された場合にはステップS18へ進み、ステップS18で、対応表Hを使用して、記録レベルを選択する。ステップS20で、後の画像データに拡散させる誤差を決定された記録レベルに応じて算出する。ステップS22で、全画素について上記の処理が終了したかどうかを判断し、終了していない場合には、ステップS10で次の画像データを読出して上記処理を繰り返す、全画素について上記の処理が終了した場合には、本処理を終了する。
【0051】
本処理後に、さらにラスタライズ等の処理が行われ、処理後の4階調の画像データが画像データ送信部30へ出力される。前記画像データは、画像データ送信部30から画像データ受信部40へ送信され、各ノズルN1〜Nnへ振り分けられる。そして、駆動信号選択回路44で、選択された記録レベルの駆動信号が選択され、選択された駆動信号が圧電アクチュエータ42へ印加され、所定のタイミングでインク滴が吐出されて画像が形成される。
【0052】
上記処理により、対応表Hが適用されていれば、小滴の記録レベルが選択されている画像データであっても、それが画素位置Xに対応する画像データであれば、対応表Iが適用され、滴なしの記録レベルが適用されることになる。
【0053】
例えば、図8(A)に示すように、通常の誤差拡散法を適用したハーフトーン処理を行った場合には、小滴のレベルが100%となる画像が形成される場合がある。この小滴のレベルが100%となる画像においては、小滴のレベルが連続しているため、バンディングBDが目立っている。一方、上記のハーフトーン処理によれば、マトリクスMのXで示される画素位置Xには、滴なしの記録レベルが適用されるため、インク滴が吐出されず、図8(B)に示すようにインク滴が着弾されない。このように、インク滴の着弾されない位置を設けることによって、バンディングを軽減させることができる。
【0054】
また、本来小滴の記録レベルが選択される画像データについて滴なしの記録レベルが選択されているので、未処理の画像データへの拡散誤差が大きくなる。したがって、後の画像データについてのハーフトーン処理において、中滴の記録レベル以上のものが選択される場合が生じる。例えば、中滴の記録レベルが選択されることがあり、図8(B)に示すように、中サイズのインク滴Cが吐出されて画像が形成される。このように、画像形成のためのインク滴のサイズが変更される。これにより、サイズの異なるドットを混在させることができ、バンディングを軽減させることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、通常閾値TH1に代えて特別閾値Aを使用したが、他の通常閾値TH2、TH3について特別閾値を設定することもできる。特に、通常閾値TH1を特別閾値Aにすることにより、インク滴サイズ小の連続出現を抑制することができる。インク滴サイズの微小なものを連続して吐出すると、吐出安定性が悪くなるような場合は、インク滴サイズ小の連続出現を抑制することにより、インクの吐出を安定させることができる。
【0056】
なお、通常閾値から特別最大閾値へ変更する画素位置は、上記に示した例に限定されない。乱数表などに基づいたランダムな位置や、ハーフトーン処理のスクリーンマトリクスと注目画素を比較する方法で得られる位置とすることもできる。ハーフトーン処理のスクリーンマトリクスと注目画素を比較する方法で得られる位置については、例えば以下のようにして得ることができる。
【0057】
スクリーンマトリクスは、図9に示すように、16×8の大きさで、各値は0〜127で重複することなく分散している(連続する値は2次元ユークリッド距離がなるべく遠い)形のものとする。このようなスクリーンマトリクスを、ここでは128階調分散マトリクスと称する。
【0058】
この128分散マトリクスを用いて、明部のドット遅延対策の形態の例を述べる。例えば、明部(濃度1〜16)について、小ドットについての特定画像位置は、濃度すなわち注目画素の画像データ値が1のとき128階調分散マトリクスの値が1以下の位置、注目画素の画像データ値が2のとき128階調分散マトリクスの値が2以下の位置、注目画素の画像データ値が3のとき128階調分散マトリクスの値が3以下の位置…注目画素の画像データ値がkのとき128階調分散マトリクスの値がk以下の位置…注目画素の画像データ値が16のとき128階調分散マトリクスの値が16以下の位置のように設定する。その結果、濃度1〜16までの間は、128階調分散マトリクスによるディザ法によるハーフトーハーフトーン結果と非常に似た結果となり、ドット出現の遅延は発生しない。スクリーンマトリクスをブルーノイズマスクのような高周波で大きいのものにすれば、ドットの規則性も視認されにくくなる。濃度が1〜16の場合にのみ特別閾値を適用すると、濃度が16(ディザの結果)と17(誤差拡散の結果)の間で、ドット配置に不連続が生じる場合がある。そこで、ドット配置に不連続が生じる場合は、濃度17以降も特定画像位置は同様の方法で決定し、特別閾値の値は濃度17以降の画像データ値の増加に伴って、縮小特別閾値から徐々に通常閾値に近づけていくようにすれば良い。このドット遅延の対策に関する特別閾値は、最小特別閾値でなく、縮小特別閾値を用いることが望ましい。何故なら、最小特別閾値の特別画像位置では、確実にドットが打たれるため、通常閾値により出現したドットに隣接した(次のハーフトーン処理の)画素位置に、最小特別閾値によりドットが打たれしまう可能性がある。この場合は、ドット配置に偏りが生じてしまい、明部における粒状粒状性の悪化となり、画像劣化となってしまう。明部においてドットが打たれた画素に隣接した画素は、マイナス方向に大きな誤差が拡散されているので、最小特別閾値でない限りは、ドットが打たれることはない。ゆえに、縮小特別閾値を用いれば、明部で隣接してドットが出現することはない。縮小特別閾値は、遅延が生じる下地のレベル値(この場合は滴なしの0)に近い値で、かつ、最小特別閾値でないことから、例えば、注目画素の画像データ値と同じ値等を用いればよい。
【0059】
以上は、下地が滴なしで小ドットの遅延の対策について述べたが、下地が小ドットで中ドットの遅延の対策についても同様に行える。図15(B)に示すような通常閾値に対して、画像データ値が85+1から85+16(小ドットの下地に中ドットが少し出現するような濃度領域)におけるドット遅延の対策について述べる。中ドットについての特定画像位置は、濃度すなわち注目画素の画像データ値が85+1のとき128階調分散マトリクスの値が1以下の位置、注目画素の画像データ値が85+2のとき128階調分散マトリクスの値が2以下の位置、注目画素の画像データ値が85+3のとき128階調分散マトリクスの値が3以下の位置…注目画素の画像データ値が85+kのとき128階調分散マトリクスの値がk以下の位置…注目画素の画像データ値が85+16のとき128階調分散マトリクスの値が16以下の位置のように設定する。その結果、濃度85+1〜85+16までの間は、128階調分散マトリクスによるディザ法によるハーフトーハーフトーン結果と非常に似た結果となり、ドット出現の遅延は発生しない。濃度が85+1〜85+16の場合にのみ特別閾値を適用すると、濃度が85+16(ディザの結果)と85+17(誤差拡散の結果)の間で、ドット配置に不連続が生じる場合がある。そこで、ドット配置に不連続が生じる場合は、濃度85+17以降も特定画像位置は同様の方法で決定し、特別閾値の値は濃度85+17以降の画像データ値の増加に伴って、縮小特別閾値から徐々に通常閾値に近づけていくようにすれば良い。縮少特別閾値は、遅延が生じる下地のレベル値(この場合は小滴の85)に近い値で、かつ、最小特別閾値でないことから、例えば、注目画素の画像データ値と同じ値等を用いればよい。
【0060】
また、スクリーンマトリクスを用いた特別画像位置、及び特別閾値を以下のようにすることもできる。ここでは、ドットなし、小、中、大ドットの4階調の例で説明する。
【0061】
本来、小ドットのみで記録すべき濃度領域において、大ドットが出現すると、粒状性が増加する。ゆえに、ドットが混在するといっても、画像データの濃度の増加に伴って、徐々に大きな滴の混合率が増えていくのが望ましい。ここでは、図12に示すようなドットの混合率を例に説明を行う。小ドットと中ドットは、50%の密度までしか出現しないようにしている。濃度が42まではドットなしと小ドットのハーフトーンで、濃度42において小ドットの密度が50%となった後は、中ドットが出現し、濃度128までは小ドットと中ドットのハーフトーン、128において中ドット50%小ドット50%となり、128から大ドットが出現するかわりに小ドットが減少していき、213で小ドット0%中ドット50%大ドット50%、以降中ドットと大ドットのハーフトーンとなっている。このような混合率により、通常のハーフトーンでは、ほとんど1種のドットか、2種のドットのハーフトーンとなる濃度領域において、2〜3種のドットのハーフトーンとなり、さらに、画像データの濃度の増加に伴って、徐々に大きな滴の混合率が増えていくので、粒状性が増加することなくバンディングの低減が図れる。ただし、本発明は、図12のドット混合率に限定されない。例えば、小60%、中75%まで出現するような混合率でも良い。
【0062】
このドット出現を実現するための特別閾値と特別画像データの位置を、図10に示すような16×16の大きさ、各値が0〜255まで各値は重複していないで、かつ分散している(連続する値は2次元ユークリッド距離がなるべく遠い)形のスクリーンマトリクスの一例を用いて説明する。このようなスクリーンマトリクスを、仮に256階調分散マトリクスと称する。マトリクスは、この形に限定されるものではない。
【0063】
まず、図11に示すように、図10の256階調分散マトリクスを127以下の第1の値の位置(灰色部分、以下、位相Aの位置と称する)と128以上の第2の値の位置(白色部分、以下、位相Bの位置と称する)に2値化したマトリクスを考える。濃度1〜41までの領域の小ドットに対する特別画像位置は位相Aの位置、特別閾値を最大特別閾値に設定する。それにより、この位置には、小ドットが打たれることはなく、小ドットは位相Bの位置のみに出現する。濃度42〜127まで領域の小ドットに対する特別画像データの位置は、位相Bの位置で特別閾値は最小特別閾値と設定する。また、濃度42〜127までの領域の中ドットに対する特別画像データの位置は、位相Bの位置で特別閾値は最大特別閾値と設定する。それにより、図12に示すように、濃度42〜127までの領域は、位相Bの位置には小ドットが必ず打たれ、位相Aの位置に徐々に中ドットが打たれることになる。濃度128〜212までの領域の中ドットに対する特別画像データの位置は位相Aの位置で、特別閾値は最小特別閾値に設定する。これにより濃度128〜212までの領域は、位相Aの位置に中ドットが必ず打たれて、位相Bの位置の画素は、小ドットと大ドットのハーフトーンとなる。濃度213以降は、通常の誤差拡散処理で、中ドットと大ドットのハーフトーンとなる。
【0064】
以上に述べたような特別画像位置と特別閾値で、2〜3種のドットのハーフトーンとなり、さらに、画像データの濃度の増加に伴って、徐々に大きな滴の混合率が増えていくので、粒状性が増加することなくバンディングの低減を図ることができる。
【0065】
また、以上に述べたドット出現率では、小ドットの密度が50%以上となることはないので、連続して小ドットが打たれることはない。ゆえに、本来の性能以上に超高速で駆動させると、ある滴種(例えば小滴)だけは不安定だが、ほかの滴種は問題なく出力できるようなインクジェットプリンターでは、不安定となる滴(小滴)だけは連続して出力しない(小ドットが連続しない)ように制御することができ、ヘッド本来の性能以上に高速な出力が可能となる。
【0066】
本発明は、以上に述べたスクリーンマトリクスに限定されるものではない。通常のベイヤー型ディザマトリクス、クラスタドット型マトリクス、ブルーノイズマスク等を用いても良い。図16に大きなブルーノイズマスク(例えば、32x32の大きさ)の1部(16x16)を示す。このようなブルーノイズマスクを、図9、10のスクリーンの代わりに使用しても、本発明は同様の効果が得られる。
【0067】
また、本実施形態では、本発明に係る画像処理方法を、多値のインクジェット記録装置に適応した例について説明したが、インク滴の吐出のオン/オフのみの制御のみ可能なインクジェット記録装置にも適用できる。また、圧電アクチュエータを用いたインクジェット記録装置に適用した例について説明したが、それにかぎらず、
熱エネルギーによる膜沸騰により生じる気泡の圧力を利用したインクジェット記録装置、レーザープリンター、昇華型プリンター等の記録装置も適応可能である。
【0068】
さらに、本実施形態では、記録用紙上にインク滴を吐出して文字や画像などの記録を行うインクジェット記録装置を例に挙げたが、本発明の画像処理方法、及び、画像処理装置としては、記録用紙上への文字や画像の記録に用いられるものに限定されない。また、記録媒体は紙に限定されるわけではなく、吐出する液体も着色インクに限定されるわけではない。「記録媒体」としては、液滴吐出ヘッドによって液滴を吐出する対象物であればよく、同様に、「画像」あるいは「記録画像」としても、液滴が記録媒体上に付着されることで得られる記録媒体上のドットのパターンであれば、すべて含まれる。したがって、「記録媒体」には、記録用紙やOHPシートなどが含まれるのはもちろんであるが、これら以外にも、たとえば基板、ガラス板などが含まれる。また、「画像」あるいは「記録画像」には、一般的な画像(文字、絵、写真など)のみならず、基板上の配線パターンや3次元物体、有機薄膜などが含まれる。例えば、高分子フィルムやガラス上に着色インクを吐出して行うディスプレイ用のカラーフィルターの作製、溶融状態のハンダを基板上に吐出して行う部品実装用のバンプの形成、有機EL溶液を基板上に吐出させて行うELディスプレイパネルの形成、溶融状態のハンダを基板上に吐出して行う電気実装用のバンプの形成など、様々な工業的用途を対象とした液滴噴射装置一般に対して、本発明の画像処理方法および画像処理装置を適用することも可能である。
【0069】
【発明の効果】
本発明は上記構成としたので、通常の誤差拡散法と比較して記録レベルの制御を容易に行って、バンディングを低減させることができる。また、明部のドットの出現の遅延を解消することができる。さらに、ヘッド本来の性能以上に高速な出力が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のインクジェット記録装置を示す斜視図である。
【図2】本実施形態のインクジェットヘッドのノズル部分と走査方向と示す概略図である。
【図3】本実施形態のインクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】(A)は通常閾値のみを用いた記録表であり、(B)は特別閾値を用いた記録表を示す図である。
【図5】特別閾値を用いる画素位置を特定するためのマトリクスである。
【図6】駆動信号発生回路から出力される電圧の波形を示す図である。
【図7】本実施形態のハーフトーン処理を示すフローチャートである。
【図8】(A)は、従来の誤差拡散法で処理された記録レベル1が100%の場合に形成される画像の一部を示す図であり、(B)は、(A)と同一の画像データで本実施形態のハーフトーン処理を行った場合に形成される画像の一部を示す図である。
【図9】16×8のマトリクスの例である。
【図10】16×16のマトリクスの例である。
【図11】図10に示すマトリクスを値に応じて2値化した後のマトリクスである。
【図12】画像濃度と使用するドットの密度との関係を示すグラフである。
【図13】(A)は従来例の白抜けの部分が出現している画像を示す図であり、(B)は従来例のドットが波状に連なっている画像を示す図である。
【図14】従来のハーフトーン処理が適用される場合において形成されるバンディングを示す図である。
【図15】閾値、記録レベル、及び記録レベルに対応する数値範囲を示す図である。
【図16】ブルーノイズマスク(1部16×16)の例である。
【符号の説明】
10 インクジェット記録装置(画像処理装置)
24 CPU(変更手段、選択手段)
26 ROM(記憶手段)
TH1、TH2、TH3 通常閾値
A 特別閾値
N1〜Nn ノズル(液滴吐出手段)
X 画素位置
Claims (18)
- ハーフトーン処理において、画像データに基づく複数の記録レベル値の選択を、注目画素の画像データ値と周辺画素の重み付け誤差との和で得られる周辺誤差付加画像データ値と、所定の閾値と、の比較により行う誤差拡散法を用いた画像処理方法であって、
前記複数の記録レベル値の各々に対応した記録レベル適用数値範囲を画する通常閾値を記憶し、
所定の画素位置に対応する特定画像位置を決定すると共に、この特定画像位置に対応する画像データに適用される前記通常閾値をこの通常閾値と異なる特別閾値に変更し、
前記特定画像位置の画像データには前記特別閾値を適用すると共に、前記特定画像位置以外の画像データには前記通常閾値を適用して、前記記録レベル値を選択する、画像処理方法。 - 前記特別閾値は、前記記録レベル適用数値範囲を80%以上変動させる値とされたことを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
- 前記特別閾値は、この特別閾値に変更される前の通常閾値によって画される2つの記録レベル適用数値範囲の中の最大値以上、または最小値以下であることを特徴とする、請求項1に記載の画像処理方法。
- 前記特定画像位置は、2次元的に偏りのない位置に決定されることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像処理方法。
- 前記特定画像位置の画像データ値が複数の前記記録レベル値の中の1つの記録レベル値を含む記録レベル値近辺の所定範囲の値である場合には、前期記録レベルに隣接する上下の2つの記録レベルに対する特別閾値は、記録レベル適用数値範囲を拡大するよう設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像処理方法。
- 前記特定画像位置の決定は、ハーフトーン処理のスクリーンマトリクスの各値と、注目画素の画像データ値に基づいて行うことを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像処理方法。
- ハーフトーン処理において、画像データ値の濃度変化に対してある記録レベルの出現を制限するにあたり、相補する2つの2次元位置A、Bを想定し、前期記録レベルの出現する比率を増減させたい濃度領域ではAの位置の特別閾値による記録レベル適用数値範囲が減少する特別閾値を適用し、前期記録レベルの出現する比率を一定にさせたい濃度領域ではBの位置の特別閾値による記録レベル適用数値範囲が増大する特別閾値を適用することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像処理方法。
- 前記相補する2つの2次元位置A、Bは、ハーフトーン処理のスクリーンマトリクスにおいて、マトリクス内の値に応じて2値化された2種の値に対応する位置であることを特徴とする請求項7に記載の画像処理方法。
- ハーフトーン処理において、画像データ値の濃度増加に伴い複数の記録レベルを混在するにあたり、ある濃度領域における1つの記録レベルの特定画像位置における特別閾値は記録レベル適用数値範囲が増大する値を適用し、前記濃度領域と同じ濃度領域における前記1つの記録レベルと隣接する記録レベルに対しては、特定画像位置は前記1つの記録レベルの特定画像位置と同じ位置とし、その特別閾値は記録レベル適用数値範囲が減少する値を適用することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の画像処理方法。
- ハーフトーン処理において、画像データに基づく複数の記録レベル値の選択を、注目画素の画像データ値と周辺画素の重み付け誤差との和で得られる周辺誤差付加画像データ値と、所定の閾値と、の比較により行う誤差拡散法を用いる画像処理装置であって、
前記複数の記録レベル値の各々に対応した記録レベル適用数値範囲を画する通常閾値を記憶する記憶手段と、
所定の画素位置に対応する特定画像位置を決定すると共に、この特定画像位置に対応する画像データに適用される前記通常閾値をこの通常閾値と異なる特別閾値に変更する変更手段と、
前記特定画像位置の画像データには前記特別閾値を適用すると共に、前記特定画像位置以外の画像データには前記通常閾値を適用して、前記記録レベル値を選択する選択手段と、
を備えた画像処理装置。 - 前記特別閾値は、前記記録レベル適用数値範囲を80%以上変動させる値とされたことを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
- 前記特別閾値は、この特別閾値に変更される前の通常閾値によって画される2つの記録レベル適用数値範囲の中の最大値以上、または最小値以下であることを特徴とする、請求項11に記載の画像処理装置。
- 前記特定画像位置は、2次元的に偏りのない位置に決定されることを特徴とする、請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- 前記特定画像位置の画像データ値が複数の前記記録レベル値の中の1つの記録レベル値を含む記録レベル値近辺の所定範囲の値である場合には、前期記録レベルに隣接する上下の2つの記録レベルに対する特別閾値は、記録レベル適用数値範囲を拡大するよう設定されていることを特徴とする請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- 前記特定画像位置の決定は、ハーフトーン処理のスクリーンマトリクスの各値と、注目画素の画像データ値に基づいて行うことを特徴とする、請求項10乃至請求項14のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- ハーフトーン処理において、画像データ値の濃度変化に対してある記録レベルの出現を制限するにあたり、相補する2つの2次元位置A、Bを想定し、前期記録レベルの出現する比率を増減させたい濃度領域ではAの位置の特別閾値による記録レベル適用数値範囲が減少する特別閾値を適用し、前期記録レベルの出現する比率を一定にさせたい濃度領域ではBの位置の特別閾値による記録レベル適用数値範囲が増大する特別閾値を適用することを特徴とする請求項10乃至請求項15のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- 前記相補する2つの2次元位置A、Bは、ハーフトーン処理のスクリーンマトリクスにおいて、マトリクス内の値に応じて2値化された2種の値に対応する位置であることを特徴とする請求項16に記載の画像処理装置。
- ハーフトーン処理において、画像データ値の濃度増加に伴い複数の記録レベルを混在するにあたり、ある濃度領域における1つの記録レベルの特定画像位置における特別閾値は記録レベル適用数値範囲が増大する値を適用し、前記濃度領域と同じ濃度領域における前記1つの記録レベルと隣接する記録レベルに対しては、特定画像位置は前記1つの記録レベルの特定画像位置と同じ位置とし、その特別閾値は記録レベル適用数値範囲が減少する値を適用することを特徴とする請求項10乃至請求項17のいずれか1項に記載の画像処理装置。
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