図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像記録装置1の構成を示す図である。画像記録装置1は、印刷用紙である基材9上にインクの微小液滴を吐出することにより、複数の基材9上にカラー画像を順次記録する枚様式の印刷装置(いわゆる、インクジェットプリンタ)である。本実施の形態では、水性の顔料インクが用いられるが、他の種類のインクが用いられてもよい。
図1に示すように、画像記録装置1は、複数の基材9を図1中の(+Y)方向である移動方向に移動する移動機構2、移動機構2による搬送途上の基材9に向けてインクの微小液滴を吐出する吐出ユニット3、移動機構2に基材9を供給する供給部51、印刷終了後の基材9を移動機構2から受け取る排出部52、並びに、これらの機構を制御する制御部4を備える。吐出ユニット3は、移動機構2の上方((+Z)側)に配置され、図示省略のフレームに固定される。
移動機構2は、複数のステージ21と、環状のガイド22と、ベルト駆動機構23とを備える。複数のステージ21は、それぞれが1枚のシート状の基材9を吸着保持する。ガイド22は、複数のステージ21が接続されたベルトを内部に備え、複数のステージ21を案内する。ベルト駆動機構23は、ガイド22内のベルトを図1中における反時計回りに移動させることにより、基材9を保持するステージ21を吐出ユニット3の下方(すなわち、(−Z)側)において(+Y)方向に移動する。
図2は吐出ユニット3を示す底面図である。吐出ユニット3は、それぞれが互いに異なる色のインクを基材9に向けて吐出する複数(本実施の形態では、4個)の吐出部310を備え、これらの吐出部310は同様の構造を有する。複数の吐出部310はY方向(すなわち、基材9の移動方向)に配列されて吐出ユニット3の取付部30に取り付けられる。各吐出部310は複数のヘッド31を有し、複数のヘッド31は、Y方向およびZ方向に垂直なX方向(以下、「幅方向」という。)に千鳥状に配列される。各ヘッド31は、幅方向に配列される複数の吐出口を有する。なお、複数の吐出口は、必ずしも幅方向に配列される必要はなく、Y方向に対して交差する方向に配列されていればよい。
吐出部310の各吐出口から吐出されるインクの微小液滴のサイズは切り替え可能である(すなわち、異なる量の微小液滴を吐出可能である。)。液滴のサイズが切り替えられることにより、基材9上に記録されるドットのサイズも切り替えられる。本実施の形態では、インクの微小液滴のサイズが、吐出部310から吐出可能な最小サイズである「小サイズ」、および、小サイズよりも大きく、吐出部310から吐出可能な最大サイズである「大サイズ」の2種類の間で切り換えられることにより、基材9上に記録されるインクのドットが「小ドット」および「大ドット」の間で切り換えられる。画像記録装置1では、3種類以上のサイズのドットが記録可能であってもよく、この場合に、2種類のサイズのドットのみを利用するときには、ドットの径が大きいものを大ドットとし、ドットの径が小さいものを小ドットとして取り扱う。
図2中の最も(−Y)側の吐出部310はK(ブラック)の色のインクを吐出し、Kの吐出部310の(+Y)側の吐出部310はC(シアン)の色のインクを吐出し、Cの吐出部310の(+Y)側の吐出部310はM(マゼンタ)の色のインクを吐出し、最も(+Y)側の吐出部310はY(イエロー)の色のインクを吐出する。なお、吐出ユニット3では、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト等の他の色用の吐出部等も設けられてよい。
各吐出部310では、X方向に関し、複数のヘッド31が基材9上の記録領域の全体に亘って(本実施の形態では、基材9のX方向の幅の全体に亘って)設けられる。そして、制御部4の本体制御部41(図3参照)により吐出ユニット3と移動機構2とが制御され、基材9が、吐出ユニット3の複数の吐出部310に対向する位置を1回だけ通過することにより、基材9への画像の記録が完了する。換言すれば、画像記録装置1では、基材9に対するシングルパス印刷が行われる。
制御部4は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶するROM、および、各種情報を記憶するRAMをバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。図3は、制御部4の機能を示すブロック図である。図3では、制御部4に接続される画像記録装置1の構成の一部を併せて示す。制御部4は、上述の本体制御部41と、各種演算を行う演算部42とを備える。
演算部42は、画像メモリ421と、複数のマトリクス記憶部422(SPM(Screen Pattern Memory)とも呼ばれる。)と、比較器423(ハーフトーン化回路)とを備える。画像メモリ421は、外部から入力されるカラーの元画像のデータ(以下、「元画像データ」という。)を記憶する。複数のマトリクス記憶部422は、複数の色成分に対応する閾値マトリクスがそれぞれ記憶されるメモリである。比較器423は、元画像データと閾値マトリクスとを色成分毎に比較する比較部である。なお、当該比較部はソフトウェアにて実現されてもよい。
各マトリクス記憶部422には、小ドット用の閾値マトリクスである小ドット用マトリクス811と、大ドット用の閾値マトリクスである大ドット用マトリクス813とが記憶される。小ドット用マトリクス811および大ドット用マトリクス813のそれぞれは、不規則に配置されるドットの個数を変更することにより階調を表現するFM(Frequency Modulated)スクリーニングに用いられる閾値マトリクスである。図3では1つのマトリクス記憶部422に記憶される小ドット用マトリクス811および大ドット用マトリクス813を図示しているが、他の色成分のマトリクス記憶部422にも、小ドット用マトリクス811および大ドット用マトリクス813が記憶される。以下の説明では小ドット用マトリクス811と大ドット用マトリクス813とをまとめて「マトリクスセット」とも呼ぶ。
本体制御部41は、吐出制御部411と、移動制御部412とを備える。移動制御部412は、演算部42からの出力に基づいて、移動機構2による基材9の吐出ユニット3に対する相対移動を制御する。吐出制御部411は、基材9の相対移動に同期しつつ、演算部42からの出力に基づいて吐出ユニット3の複数の吐出口からのインクの吐出を制御する。
次に、画像記録装置1による画像記録の基本動作について図4を参照しつつ説明する。なお、図4は1枚の基材9に注目した画像記録の流れを示している。以下の説明ではブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの4つの色成分に対してそれぞれ準備されるマトリクスセットのうち一の色成分のマトリクスセットのみに注目するが、他の色成分のマトリクスセットについても同様の処理が行われる。
画像記録装置1にて画像記録が行われる際には、まず、比較器423において、元画像データが示す各画素の画素値と、マトリクスセットの小ドット用マトリクス811および大ドット用マトリクス813が有する閾値とが比較されることにより、元画像がハーフトーン化され(すなわち、網掛け処理が行われ)、画像記録に用いられるハーフトーン画像データが生成される(ステップS11)。
ここで、元画像のハーフトーン化(網点化)について説明する。図5は、元画像および閾値マトリクスを抽象的に示す図である。図5ではマトリクスセットの1つの閾値マトリクスを符号81にて示している。閾値マトリクス81では、基材9の幅方向に対応する行方向(図5中にてx方向として示す。)、および、移動方向に対応する列方向(図5中にてy方向として示す。)に複数の要素が配列されており、元画像70においても行方向および列方向に複数の画素が配列されている。以下の説明では、元画像70は0から255の階調値(すなわち、各画素がとりうる画素値)にて表現されるものとする。
元画像70のハーフトーン化の際には、元画像70を、図5に示すように、同一の大きさの多数の領域に分割してハーフトーン化の単位となる繰り返し領域71が設定される。マトリクス記憶部422は1つの繰り返し領域71に相当する記憶領域を有し、この記憶領域の各アドレス(座標)に閾値が設定されることにより閾値マトリクス81を記憶している。そして、概念的には元画像70の各繰り返し領域71と各色成分の閾値マトリクス81とを重ね合わせ、繰り返し領域71の各画素の画素値と閾値マトリクス81の対応する閾値とが比較される。画素値と閾値との比較は、2種類のドットサイズに対応する2つの閾値マトリクス(すなわち、小ドット用マトリクス811および大ドット用マトリクス813)に対して行われ、これにより基材9上のその画素の位置にドットを記録するか否か、および、記録されるドットのサイズが決定される。
詳細には、図3の比較器423が有するアドレス発生器からのアドレス信号に基づいて画像メモリ421から元画像70の1つの画素の画素値が読み出される。一方、アドレス発生器では当該画素に対応する繰り返し領域71中の位置を示すアドレス信号も生成され、小ドット用マトリクス811および大ドット用マトリクス813の2つの閾値が特定されてマトリクス記憶部422から読み出される。2つの閾値では、原則として、大ドット用マトリクス813の閾値が大きく、小ドット用マトリクス811の閾値が小さい。そして、上記画素値と2つの閾値とが比較器423にて比較されることにより、出力画像であるハーフトーン画像の各画素の位置(すなわち、各吐出位置)におけるドットサイズが順次決定される。
具体的には、元画像70の画素値(以下、「入力画素値」という。)と大ドット用マトリクス813の閾値とが比較され、入力画素値が閾値よりも大きい場合には、ハーフトーン画像の対応する画素に値「2」が付与される。以下、ハーフトーン画像の画素値を「ハーフトーン画素値」という。入力画素値が大ドット用マトリクス813の閾値以下である場合には、入力画素値と小ドット用マトリクス811の閾値とが比較される。入力画素値が小ドット用マトリクス811の閾値よりも大きい場合には、ハーフトーン画像の対応する位置にハーフトーン画素値「1」が付与され、閾値以下の場合にはハーフトーン画素値「0」が付与される。
画像記録装置1では、最初に印刷される部分の各色成分のハーフトーン画素値の集合であるハーフトーン画像データが生成されると、移動制御部412が移動機構2を駆動することにより基材9の移動方向への移動が開始される(ステップS12)。そして、ハーフトーン画像データの生成に並行して、基材9の移動に同期しつつ吐出部310が吐出制御部411により制御され、複数の吐出口からインクが吐出される(ステップS13)。
ハーフトーン画像の各画素のx方向の位置はいずれかの吐出口に対応付けられており、吐出口の下方に到達した基材9上の吐出位置(すなわち、画素の位置)に対応するハーフトーン画素値が「2」である場合には当該吐出位置に大ドットが記録され、「1」である場合には小ドットが記録される。また、ハーフトーン画素値が「0」である場合には当該吐出位置にドットは記録されない。
上記印刷動作がブラック、シアン、マゼンタおよびイエローのそれぞれに関して行われることにより、基材9上にカラーの元画像を表現するカラーのハーフトーン画像が記録される。既述のように基材9は供給部51により逐次供給されるとともに画像記録後に排出部52に回収され、所望の枚数の基材9上にハーフトーン画像の全体が記録されると、基材9の供給が停止され、画像記録の基本動作が終了する(ステップS14)。
画像記録装置1における実際の画像記録では、吐出部310の複数の(全ての)吐出口に対して予め取得される複数の補正値を利用して、基材9上の各位置に記録するドットのサイズや、記録の要否が決定される。具体的に、補正値を取得する際には、まず、全ての画素が一定の画素値を有するチェック画像のデータが準備され、当該チェック画像のデータが示す各画素の画素値と、マトリクスセットの小ドット用マトリクス811および大ドット用マトリクス813が有する閾値とを比較することにより、ハーフトーン画像データが生成される。そして、当該ハーフトーン画像データに従って吐出部310を制御することにより、基材9上にチェック画像が記録される。
続いて、外部の撮像部(画像記録装置1に設けられてもよい。)を利用して、チェック画像の幅方向の各位置における濃度が測定される。幅方向におけるチェック画像の複数の位置は、吐出部310の複数の吐出口によりそれぞれドットが記録されており、幅方向の各位置における濃度の測定値に基づいて、当該位置にドットを記録する吐出口に対する補正値が取得される。本実施の形態では、濃度の測定値が所定の基準濃度よりも低い位置にドットを記録する吐出口には1よりも大きい補正値が取得され、濃度の測定値が基準濃度よりも高い位置にドットを記録する吐出口には1よりも小さい補正値が取得される。以上の事前準備により、一様な濃度の画像を記録するための複数の補正値が、吐出部310の複数の吐出口に対して予め取得される。
実際の画像の記録(元画像データが示す画像の記録)では、元画像において、各吐出口に対応する行方向の位置にて列方向に並ぶ画素の画素値に、当該吐出口の補正値を掛けて得た値(すなわち、補正画素値)が、当該画素に対応するマトリクスセットの閾値と比較され、ハーフトーン画像データが生成される。したがって、チェック画像における濃度の測定値が基準濃度よりも低い吐出口では、補正値を利用しない場合に比べて、原則としてドットを記録する頻度が高くなる。また、チェック画像における濃度の測定値が基準濃度よりも高い吐出口では、補正値を利用しない場合に比べて、原則としてドットを記録する頻度が低くなる。これにより、基材9上に記録された画像では、幅方向において濃度ムラが発生することが抑制される。
実際には、濃度の測定値は、ヘッド31単位にて大きく変動することが多い。これについては、同じサイズのドットを記録する場合であっても、ヘッド31間で微小液滴の吐出量が僅かに相違することが1つの原因として考えられる。したがって、複数の吐出口に対する複数の補正値は、ヘッド31毎に大きく変動する傾向がある。
次に、マトリクスセットの特性について述べる。図6は、マトリクスセットの特性を示す図である。図6では、一様な階調値の元画像を画像記録装置1にて記録する場合(ただし、補正値による補正は行わない。)の記録率を縦軸に示しており、横軸は元画像の階調値を示している(以下同様)。上述の記録率とは、基材9上の単位領域においてインクのドットが付与可能な位置として定義されている位置の個数を基準個数として、単位領域に対して一の吐出部310により実際に記録されるドットの個数の基準個数に対する割合を示す値である。
図6では、小サイズのドットの記録率を符号A1を付す破線にて示し、大サイズのドットの記録率を符号A3を付す実線にて示す(ドットの記録率を示す他の図において同様)。図6では、破線A1および実線A3は重なっている。以下の説明では、大サイズおよび小サイズのドットの記録率をそれぞれ「大ドットの記録率」および「小ドットの記録率」という。
図6に示すように、元画像の階調値が0から255まで増加するに従って、小ドットの記録率は、破線A1にて示すように0%から、100%よりも小さいW%まで線形に増加し、大ドットの記録率は、実線A3にて示すように0%からW%まで線形に増加する。すなわち、小ドットの記録率と大ドットの記録率が、階調値0から階調値255までの全階調範囲に亘って同一となる。換言すると、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が、全階調範囲において一定である。なお、破線A1および実線A3の傾きは、図6に示すものに限定されず、全サイズのドットの記録率を合計した合計記録率(すなわち、小ドットおよび大ドットの記録率の和)が100%を超えない範囲にて任意に変更されてよい(以下同様)。
ここで、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比は、完全に一定である必要はなく、僅かに変動していてもよい。すなわち、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が、全階調範囲(後述の例では、特定階調範囲の全体)において略一定であればよい。例えば、一のサイズのドットの記録率と、他の一のサイズのドットの記録率との比の値の全階調範囲における平均が(m/n)にて表される場合に(すなわち、ドットの記録率の平均的な比が(m:n)である場合に)、全階調範囲に含まれる各階調値における比の値が((m/n)・(1±0.2))の範囲内であることが好ましく、((m/n)・(1±0.1))の範囲内であることがより好ましい。よって、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比の値の全階調範囲における平均が1にて表される図6の例では、全階調範囲における比の値が0.8〜1.2の範囲内であることが好ましく、0.9〜1.1の範囲内であることがより好ましい。
マトリクスセットの各ドットサイズに対応する閾値マトリクスを生成する際には、例えば、特開2008−199154号公報(上記特許文献5)に開示された方法にて元となる閾値マトリクス(FMスクリーン用の閾値マトリクス)が作成される。当該閾値マトリクスの閾値の範囲は、0から254である。そして、図6に示す小ドットの記録率の変化、および、大ドットの記録率の変化が得られるように、閾値マトリクスの各要素の閾値が修正されて小ドット用の閾値マトリクスおよび大ドット用の閾値マトリクスが生成される。
具体的には、図6では、全サイズのドットの記録率を合計した合計記録率は、階調値255にてW%の2倍となり、100%よりも低い。そこで、元となる閾値マトリクスにおいて、階調値255における記録率がW%の2倍となるように、閾値の範囲が、0から254よりも大きな値まで広げられる。そして、255以上の閾値は、ドットを記録しないことを示す同じ閾値(例えば、255)に変換され、小ドット用マトリクス811が生成される。また、元となる閾値マトリクスにおいて、階調値255における記録率がW%となるように、閾値の範囲が、0から254よりも大きな値まで広げられる。そして、255以上の閾値は、ドットを記録しないことを示す同じ閾値(例えば、255)に変換され、大ドット用マトリクス813が生成される。
このとき、マトリクスセットの2つの閾値マトリクスにおいて互いに対応する位置では、小ドット用マトリクス811の閾値よりも大ドット用マトリクス813の閾値の方が大きい。また、既述のように、1つの位置に大ドットが記録されると、小ドットは入力画素値が閾値を上回っても描画されない。したがって、上記のようにして生成された小ドット用マトリクス811および大ドット用マトリクス813では、図6に示す小ドットの記録率の変化、および、大ドットの記録率の変化が実現される。閾値マトリクスにおける各要素の閾値の修正は、他の様々な手法にて行われてよい。
ここで、比較例のマトリクスセットについて述べる。図7は、比較例のマトリクスセットの特性を示す図である。比較例のマトリクスセットでは、元画像の階調値が0から128まで増加するに従って、小ドットの記録率は、破線B1にて示すように0%から50%まで線形に増加する。階調値が128から255まで増加するに従って、小ドットの記録率は50%から0%まで線形に減少し、大ドットの記録率は、実線B3にて示すように0%から100%まで線形に増加する。したがって、大ドット用マトリクスの閾値の範囲は128から254であり、小ドット用マトリクスの閾値の範囲は0から254である。比較例の大ドット用マトリクスの生成では、元となる閾値マトリクスにおける閾値の範囲が0から126までに狭められるとともに各閾値にオフセット値128が加えられる。小ドット用マトリクスは、元となる閾値マトリクスそのままである。
既述のように、画像記録装置1における画像記録では、元画像において、各吐出口に対応する画素の画素値に当該吐出口の補正値を掛けて得た値(補正画素値)が、当該画素に対応するマトリクスセットの閾値と比較され、ハーフトーン画像データが生成される。したがって、仮に、比較例のマトリクスセットを用いて、全ての画素値が128である元画像を記録するときには、128よりも低い階調値におけるドットの記録率に従ってドットを記録する吐出口と、128よりも高い階調値におけるドットの記録率に従ってドットを記録する吐出口とが混在する(図7中の階調値V1,V2におけるドットの記録率参照)。よって、小ドットと大ドットとの色味(主として色相)が違って見える場合には、小ドットと大ドットの混合率が相違する領域間の色(色相)も違って見えるため、基材9上の画像においてムラが発生してしまう。
既述のように、複数の吐出口に対する複数の補正値は、ヘッド31毎に大きく変動することが多いため、比較例のマトリクスセットを用いる場合には、幅方向に関して互いに隣接する2つのヘッド31のうち一方のヘッド31により画像が記録される領域と、他方のヘッド31により画像が記録される領域との間にて、小ドットと大ドットの混合率の相違による色相の違いが発生する。なお、小ドットと大ドットとの色相が違って見える原因は明らかではないが、小ドットと大ドットとで微小液滴のサイズが異なるため、基材9上に定着するインク(ドット)の厚さが相違することが1つの理由として考えられる。
これに対し、図6のマトリクスセットを用いる画像記録装置1では、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が、階調範囲の全体において略一定とされる。これにより、複数の吐出口に対する複数の補正値を用いて、全ての画素値が一定の元画像を記録する場合であっても、当該複数の吐出口にそれぞれ対応する基材9上の複数の位置(幅方向の位置)において小ドットと大ドットの混合率を略一定とすることができる。これにより、基材9上の画像において領域間(典型的には、隣接する2つのヘッド31に対応する領域間)の色の相違(主として色相の相違)によるムラが発生することを抑制することができる。
なお、既述のように、同じサイズのドットを記録する場合に、ヘッド31間で微小液滴の吐出量が僅かに相違することが、ヘッド31毎に補正値が変動する1つの原因として考えられる。しかしながら、ヘッド31間における微小液滴の吐出量の相違は、小ドットと大ドットとの間における微小液滴の吐出量の相違に比べて十分に小さいため、領域間の色相の相違に及ぼす影響は僅かである。
図8は、CIELAB(CIE1975 L*a*b*)色空間を抽象的に示す図である。図8では、一様な階調値であるシアン単色の元画像を画像記録装置1にて記録する場合に(ただし、補正値による補正は行わない。)、80から128までのそれぞれの階調値において、シアンのインクを吐出する一の吐出口により記録される領域のL*、a*、b*の値の変化を曲線(以下、「色変化曲線」という。)L1にて示している。なお、L*、a*、b*の値は測色計等で得られる。他の階調値に対応するL*、a*、b*の値は、色変化曲線L1の延長線上に配置される。階調値の増加に従ったL*、a*、b*の値の変化は全ての吐出口にて一致することが理想であるが、実際には、各階調値に対するL*、a*、b*の値は吐出口毎にばらつく。すなわち、図9に示すように、複数の吐出口にそれぞれ対応する複数の色変化曲線L1が存在する。
図10は、2つの吐出口にそれぞれ対応する2つの色変化曲線L1を示す図である。既述のように、一様な濃度の画像におけるムラの発生を抑制するには、幅方向に関して、互いに隣接する領域間の色相が互いに近似する(およそ同じとなる)必要がある。画像中の2つの領域の色(色相を含む。)が互いに近似するか否かを判定する際には、例えば、JIS(日本工業規格)B9620−1に規定されるCIELAB色差を用いることができる。CIELAB色差は、CIELAB色空間において、2つの色が示す2点の距離をユークリッド幾何的に示した差である。
図10では、シアンの階調値が100である元画像を記録する場合に、2つの吐出口のうちの一方の吐出口により、補正値を利用することなく記録される領域のL*、a*、b*の値を符号P10を付す黒い丸の点にて示し、他方の吐出口により、補正値を利用することなく記録される領域のL*、a*、b*の値を符号P20を付す黒い四角の点にて示す。2つの点P10,P20の間では、大きな濃度(反射濃度)差が生じており、この場合、当該2つの吐出口によりそれぞれ記録される2つの領域の濃度が一致するように補正値が求められる。
図10では、上記と同様にシアンの階調値が100である元画像を記録する場合に、当該一方の吐出口により、補正値を利用して記録される領域のL*、a*、b*の値を符号P11を付す白い丸の点にて示し、当該他方の吐出口により、補正値を利用して記録される領域のL*、a*、b*の値を符号P21を付す白い四角の点にて示す。例えば、当該一方の吐出口に対して、元画像の画素の画素値(100)に補正値を掛けて得た補正画素値は90であり、当該他方の吐出口に対して、元画像の画素の画素値(100)に補正値を掛けて得た補正画素値は110である。すなわち、白い丸の点P11は、階調値が90である元画像を補正値を利用することなく記録する場合に、当該一方の吐出口により記録される領域のL*、a*、b*の値を示し、白い四角の点P21は、階調値が110である元画像を補正値を利用することなく記録する場合に、当該他方の吐出口により記録される領域のL*、a*、b*の値を示す。
画像記録装置1では、上記補正値の利用により、2つの点P11,P21の濃度(明度)がほぼ一致する。このとき、階調範囲の全体(後述の例では、特定階調範囲の全体)において、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定であるため、2つの点P11,P21間の距離、すなわち、色差ΔEが、色相(または色)の違いが観察者においてほとんど認識されない一定の範囲(好ましくは1以下であり、より好ましくは0.5以下である。)内に制限される。図9に示すように、実際には、複数の吐出口にそれぞれ対応する複数の色変化曲線L1が存在するため、階調範囲の全体(後述の例では、特定階調範囲の全体)において、複数の色変化曲線L1に対する平均線L2(図9中にて一点鎖線にて示す。)と各色変化曲線L1との間の距離が一定の範囲(好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.25以下である。)内に制限される。
また、画像記録装置1では、階調範囲の全体(後述の例では、特定階調範囲の全体)において、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定であるため、濃度が滑らかに連続して変化するグラデーション画像を元画像として記録する際に、基材9上の画像において一の濃度を示す領域における色相と、他の濃度を示す領域における色相とを近似させることができる。この場合に、これらの2つの領域において色相が互いに近似するか否かの判定は、例えば、CIELAB色空間において(tan−1(b*/a*))にて求められる色相角θを用いて行うことができ、一の濃度を示す領域における色相角と他の濃度を示す領域における色相角との差が所定の範囲内(例えば、10度以下)であれば、両領域の色相が近似すると捉えることができる。画像中の2つの領域において色相(または色)が互いに近似するか否かは、他の手法により判定されてもよい。
マトリクスセットにおいて、小ドットの記録率と大ドットの記録率とが同一である、すなわち、両者の比の値(m/n)が1である必要はなく、図11に示すように、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比の値が1以外であってもよい。図11では、一の階調値における小ドットの記録率および大ドットの記録率を符号αm,αnを付す点にて示し、他の一の階調値における小ドットの記録率および大ドットの記録率も同じ符号αm,αnを付す点にて示すことにより、当該一の階調値における小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が、当該他の一の階調値における小ドットの記録率と大ドットの記録率との比と略同一であることを示している(以下同様)。
小ドットの記録率を示す破線A1、および、大ドットの記録率を示す実線A3の傾きや、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比(m:n)は、図11のものには限定されず、合計記録率が100%を超えない範囲にて任意に決定されてよい。また、実線A3の傾きが破線A1の傾きよりも大きい、すなわち、大ドットの記録率が小ドットの記録率よりも大きくてもよい。さらに、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定に保たれるのであるならば、破線A1および実線A3が折れ曲がった形状でもよく、曲線であってもよい。図11に対して適用可能な上記変更は、他のマトリクスセットにおいても同様である。
マトリクスセットにおいて、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が一部の階調範囲においてのみ略一定であってもよい。図12ないし図15は、マトリクスセットの他の例の特性を示す図である。以下の説明では、2種類のサイズのドットの記録率の比が略一定となる階調範囲を「特定階調範囲」という。また、特定階調範囲の下限の階調値および上限の階調値をそれぞれ「第1特定階調値」および「第2特定階調値」という。換言すると、特定階調範囲は、第1特定階調値から第1特定階調値よりも大きい第2特定階調値までの範囲である。なお、図6および図11の例では、全階調範囲が特定階調範囲となり、第1特定階調値は0であり、第2特定階調値は255である。
図12では、実線A3が折れ曲がる階調値である第1特定階調値G1以上(かつ最大階調値以下)の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が、(m:n)にて略一定である。第1特定階調値G1は、最小階調値よりも大きく、かつ、中間階調値(すなわち、全階調範囲の50%に相当する階調値)よりも小さい。これにより、中間階調値を含む中間階調領域から、最大階調値近傍のシャドウ領域に亘る特定階調範囲の全体において、基材9上の画像における領域間の色相の相違を低減することができる。また、吐出口間の濃度差の補正を伴う一様な濃度の画像の記録において、領域間の色相の相違によるムラの発生を抑制することができる。第1特定階調値G1未満の階調領域において、0から階調値V1までの階調範囲では、小ドットのみが用いられる。このように、基材9上に表現可能な最小階調値近傍において、最小サイズのドットのみが記録されることにより、最小階調値近傍のハイライト領域において画像の粒状性を改善することができる。
図12では、大ドットの出現階調値V1がハイライト領域に位置するが、大ドットの出現階調値は、中間階調領域やシャドウ領域に位置してもよく、この場合、より広い階調範囲において画像の粒状性を改善することができる(図15において同様)。マトリクスセット(他の例のマトリクスセットを含む。)では、原則として、一のサイズのドットの出現階調値は、当該一のサイズのドットよりも小さいサイズのドットの出現階調値以上である。この場合に、当該一のサイズのドットの出現階調値は、ハイライト領域に限定されず、中間階調領域やシャドウ領域に位置してもよい。また、第1特定階調値G1も、ハイライト領域に限定されず、中間階調領域やシャドウ領域に位置してもよい。図12に対して可能な上記変更は、他のマトリクスセットにおいても同様である。なお、図12の例において、破線A1が折れ曲がる階調値が、実線A3が折れ曲がる階調値よりも大きい場合には、破線A1が折れ曲がる階調値が、第1特定階調値となる。
図13では、実線A3が折れ曲がる階調値である第2特定階調値G2以下(かつ最小階調値以上)の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が、(m:n)にて略一定である。第2特定階調値G2は、最大階調値よりも小さく、かつ、中間階調値よりも大きい。これにより、ハイライト領域から中間階調領域に亘って、基材9上の画像における領域間の色相の相違を低減することができる。また、吐出口間の濃度差の補正を伴う一様な濃度の画像の記録において、領域間の色相の相違によるムラの発生を抑制することができる。
第2特定階調値G2から最大階調値までの階調範囲では、大ドットの記録率を示す実線A3の傾きが大きくなる。また、第2特定階調値G2よりも大きい階調値V1から最大階調値までの階調値の増加に従って、小ドットの記録率は漸次減少し、全サイズのドットの記録率を合計した合計記録率に占める最大サイズのドットの記録率の割合が漸次増大する(実際には、最大サイズのドットの記録率の割合は、第2特定階調値G2から漸次増大する。)。これにより、画像記録装置1にて記録される画像において、シャドウ領域における濃度を確保することができる。
図13では、第2特定階調値G2がシャドウ領域に位置するが、中間階調領域やハイライト領域に位置してもよい(他の例のマトリクスセットにおいて同様)。また、図13の例において、実線A3が折れ曲がる階調値が、破線A1が折れ曲がる階調値よりも大きくてもよく、この場合、破線A1が折れ曲がる階調値が、第2特定階調値となる(図14において同様)。さらに、最大サイズのドットの記録率の割合は、第2特定階調値G2よりも大きい階調値から漸次増大してもよい。すなわち、第2特定階調値以上である階調値から、階調値の増加に従って合計記録率に占める最大サイズのドットの記録率の割合が漸次増大してもよい。また、大ドットの記録率が、最大階調値において100%未満であってもよい。
図14では、第2特定階調値G2よりも大きい階調値V1からの階調値の増加に従って、小ドットの記録率は漸次減少し、最大階調値よりも小さい階調値にて0%となる。なお、図13および図14において、小ドットの記録率が、最大階調値において0%よりも大きくてもよい。
図15では、階調値の増加に従って破線A1および実線A3が共に最初に折れ曲がる階調値である第1特定階調値G1から、破線A1が2回目に折れ曲がる階調値である第2特定階調値G2までの階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が、(m:n)にて略一定である。これにより、特定階調範囲において、基材9上の画像における領域間の色相の相違を低減することができる。また、吐出口間の濃度差の補正を伴う一様な濃度の画像の記録において、領域間の色相の相違によるムラの発生を抑制することができる。
図16は、本発明の第2の実施の形態に係る画像記録装置の制御部4の機能を示すブロック図である。図16に示すように、第2の実施の形態に係る画像記録装置では、制御部4の各マトリクス記憶部422に、小ドット用マトリクス811および大ドット用マトリクス813に加えて、中ドット用マトリクス812も記憶される。その他の構成は、図1ないし図3に示す画像記録装置1と同様であり、以下の説明において対応する構成に同符号を付す。
第2の実施の形態に係る画像記録装置では、制御部4の吐出制御部411により吐出ユニット3が制御されることにより、各吐出部310の各吐出口から吐出されるインクの微小液滴のサイズが、最小サイズである「小サイズ」、最大サイズである「大サイズ」、および、小サイズよりも大きく、かつ、大サイズよりも小さい「中サイズ」の3種類の間で切り換えられる。これにより、基材9上に記録されるインクのドットが「小ドット」、「中ドット」および「大ドット」の間で切り換えられる。
中ドット用マトリクス812は、小ドット用マトリクス811および大ドット用マトリクス813と同様に、不規則に配置されるドットの個数を変更することにより階調を表現するFMスクリーニングに用いられる閾値マトリクスである。以下の説明では、小ドット用マトリクス811、中ドット用マトリクス812および大ドット用マトリクス813をまとめて「マトリクスセット」とも呼ぶ。3つの閾値マトリクスの同じ位置では、原則として大ドット用マトリクス813の閾値が最も大きく、小ドット用マトリクス811の閾値が最も小さい。また、中ドット用マトリクス812の閾値は、小ドット用マトリクス811および大ドット用マトリクス813の両閾値の間の値である。
第2の実施の形態に係る画像記録装置による画像記録の基本動作の流れは、第1の実施の形態とほぼ同様であるため、以下、図4を参照しつつ説明する。画像記録が行われる際には、まず、図16に示す比較器423において、画像メモリ421に記憶された元画像データが示す元画像70(図5参照)の各画素の画素値(実際の画像記録では、補正画素値)と、マトリクスセットの小ドット用マトリクス811、中ドット用マトリクス812および大ドット用マトリクス813が有する閾値とが比較されることにより、元画像がハーフトーン化されてハーフトーン画像データが生成される(ステップS11)。
元画像のハーフトーン化の際には、上述のように、図5に示す各繰り返し領域71の各画素の画素値と、3種類のドットサイズに対応するマトリクスセットの3つの閾値マトリクス(すなわち、小ドット用マトリクス811、中ドット用マトリクス812および大ドット用マトリクス813)の閾値とが比較される。これにより基材9上のその画素の位置にドットの記録を行うか否か、および、記録されるドットのサイズが決定される。
詳細には、まず、元画像の画素値である入力画素値と大ドット用マトリクス813の閾値とが比較され、入力画素値が閾値よりも大きい場合には、ハーフトーン画像の対応する画素にハーフトーン画素値「3」が付与される。入力画素値が大ドット用マトリクス813の閾値以下である場合には、入力画素値と中ドット用マトリクス812の閾値とが比較される。入力画素値が中ドット用マトリクス812の閾値よりも大きい場合には、ハーフトーン画像の対応する位置にハーフトーン画素値「2」が付与される。入力画素値が中ドット用マトリクス812の閾値以下である場合には、入力画素値と小ドット用マトリクス811の閾値とが比較される。入力画素値が小ドット用マトリクス811の閾値よりも大きい場合には、ハーフトーン画像の対応する位置にハーフトーン画素値「1」が付与され、閾値以下の場合にはハーフトーン画素値「0」が付与される。
画像記録装置では、最初に印刷される部分のハーフトーン画像データが生成されると、本体制御部41の移動制御部412により移動機構2が制御され、基材9の移動方向への移動が開始される(ステップS12)。そして、ハーフトーン画像データの生成に並行して、基材9の移動に同期しつつ複数の吐出口からインクが吐出される(ステップS13)。このとき、基材9上の吐出位置(すなわち、画素の位置)に対応するハーフトーン画素値が「3」である場合には当該吐出位置に大ドットが記録され、「2」である場合には中ドットが記録され、「1」である場合には小ドットが記録される。また、ハーフトーン画素値が「0」である場合には当該吐出位置にドットは記録されない。
上記印刷動作がブラック、シアン、マゼンタおよびイエローのそれぞれに関して行われることにより、基材9上にカラーの元画像を表現するカラーのハーフトーン画像が記録される。そして、所望の枚数の基材9上にハーフトーン画像の全体が記録されると、基材9の供給が停止され、画像記録動作が終了する(ステップS14)。既述のように、実際の画像記録では、補正値と元画像の各画素の画素値から求められる補正画素値が、当該画素に対応するマトリクスセットの閾値と比較され、ハーフトーン画像データが生成される。
次に、第2の実施の形態に係るマトリクスセットの特性について述べる。図17は、マトリクスセットの特性を示す図である。図17では、小サイズのドットの記録率を符号A1を付す破線にて示し、中サイズのドットの記録率を符号A2を付す一点鎖線にて示し、大サイズのドットの記録率を符号A3を付す実線にて示す(ドットの記録率を示す他の図において同様)。図17では、破線A1、一点鎖線A2および実線A3は互いに重なっている。
図17に示すように、元画像の階調値が0から255まで増加するに従って、小ドットの記録率は0%から、100%よりも小さいW%まで線形に増加し、中ドットの記録率も0%からW%まで線形に増加し、大ドットの記録率も0%からW%まで線形に増加する。すなわち、小ドットの記録率、中ドットの記録率および大ドットの記録率が、階調値0から階調値255までの全階調範囲に亘ってほぼ同一となる。換言すると、小ドットの記録率と中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が、全階調範囲において略一定である。これにより、特定階調範囲である全階調範囲において、基材9上の画像における領域間の色相の相違を低減することができる。また、吐出口間の濃度差の補正を伴う一様な濃度の画像の記録において、領域間の色相の相違によるムラの発生を抑制することができる。なお、破線A1、一点鎖線A2および実線A3の傾きは、図17に示すものに限定されず、全サイズのドットの記録率を合計した合計記録率が100%を超えない範囲にて任意に変更されてよい(以下同様)。
図18および図19は、マトリクスセットの他の例の特性を示す図である。図18では、各階調値において中ドットの記録率と大ドットの記録率とが同じであり、小ドットの記録率がこれらの記録率と相違するが、全階調範囲において、小ドットの記録率と中ドットの記録率と大ドットの記録率との比(m:k:n)が略一定である。図19では、各階調値において、小ドットの記録率、中ドットの記録率および大ドットの記録率が互いに相違するが、全階調範囲において、小ドットの記録率と中ドットの記録率と大ドットの記録率との比(m:k:n)が略一定である。
図18および図19では、一の階調値における小ドットの記録率、中ドットの記録率および大ドットの記録率を符号αm,αk,αnを付す点にて示し、他の一の階調値における小ドットの記録率、中ドットの記録率および大ドットの記録率も同じ符号αm,αk,αnを付す点にて示すことにより、当該一の階調値における小ドットの記録率と中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が、当該他の一の階調値における小ドットの記録率と中ドットの記録率と大ドットの記録率との比と略同一であることを示している(以下同様)。
図18および図19のマトリクスセットにおいても、特定階調範囲である全階調範囲において、基材9上の画像における領域間の色相の相違を低減することができる。また、吐出口間の濃度差の補正を伴う一様な濃度の画像の記録において、領域間の色相の相違によるムラの発生を抑制することができる。
小ドットの記録率を示す破線A1、中ドットの記録率を示す一点鎖線A2、および、大ドットの記録率を示す実線A3の傾きや、小ドットの記録率と中ドットの記録率と大ドットの記録率との比(m:k:n)は、図18および図19のものには限定されず、合計記録率が100%を超えない範囲にて任意に決定されてよい。また、小ドットの記録率、中ドットの記録率および大ドットの記録率の大小関係も任意に決定されてよい。さらに、特定階調範囲において、小ドットの記録率と中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定に保たれるのであるならば、破線A1、一点鎖線A2および実線A3が折れ曲がった形状でもよく、曲線であってもよい。図18および図19に対して適用可能な上記変更は、他のマトリクスセットにおいても同様である。
マトリクスセットにおいて、小ドットの記録率と中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が一部の階調範囲においてのみ略一定であってもよい。図20ないし図22は、マトリクスセットの他の例の特性を示す図である。図20では、実線A3が折れ曲がる階調値V1以上の階調範囲では、小ドットの記録率と中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が(m:k:n)にて略一定である。これにより、中間階調領域からシャドウ領域に至る当該階調範囲において、基材9上の画像における領域間の色相の相違を低減することができる。また、吐出口間の濃度差の補正を伴う一様な濃度の画像の記録において、領域間の色相の相違によるムラの発生を抑制することができる。
また、図20では、一点鎖線A2が折れ曲がる第1特定階調値G1以上の階調範囲を特定階調範囲として、当該特定階調範囲にて小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が、(m:k)にて略一定である。このように、特定階調範囲において記録される(使用される)全てのサイズのドットのうち、少なくとも2つのサイズのドットの記録率の比が略一定であることにより、特定階調範囲において、基材9上の画像における領域間の色相の相違をある程度低減することができる。また、吐出口間の濃度差の補正を伴う一様な濃度の画像の記録において、領域間の色相の相違によるムラの発生もある程度抑制することができる。
さらに、図20では、階調値V1未満の階調領域において、最小階調値からの階調値の増加に従って、小ドット、中ドット、大ドットが順に出現する。すなわち、小ドットの出現階調値が最も小さく、大ドットの出現階調値が最も大きく、中ドットの出現階調値が、小ドットの出現階調値と大ドットの出現階調値との間に位置する。したがって、基材9上に表現可能な最小階調値近傍において、最小サイズのドットのみが記録される。これにより、最小階調値近傍のハイライト領域において画像の粒状性を改善することができる(図22において同様)。なお、図20において、破線A1、一点鎖線A2および実線A3が折れ曲がる階調値の大小関係は任意に決定されてよく、この場合、階調値の増加に従って2番目に折れ曲がる線の折れ曲がり位置の階調値以上の階調範囲にて2つのサイズのドットの記録率の比が略一定となり、3番目に折れ曲がる線の折れ曲がり位置の階調値以上の階調範囲にて3つのサイズのドットの記録率の比が略一定となる。また、破線A1、一点鎖線A2および実線A3のうち2つまたは3つの線の折れ曲がる階調値が同じであってもよい。
図21では、一点鎖線A2が折れ曲がる第2特定階調値G2以下の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が、(k:n)にて略一定である。これにより、ハイライト領域から中間階調領域に亘る特定階調範囲において、基材9上の画像における領域間の色相の相違を低減することができる(吐出口間の濃度差の補正を伴う一様な濃度の画像の記録における、領域間の色相の相違によるムラの発生の抑制を含む。以下同様。)。また、特定階調範囲において破線A1が折れ曲がる階調値V1以下の階調範囲では、小ドットの記録率と中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が(m:k:n)にて略一定である。これにより、当該階調範囲において、基材9上の画像における領域間の色相の相違をさらに低減することができる。
第2特定階調値G2よりも大きい階調値V2から最大階調値までの階調範囲では、大ドットの記録率を示す実線A3の傾きが急激に大きくなる。また、階調値の増加に従って、小ドットの記録率および中ドットの記録率は、それぞれ階調値V1および第2特定階調値G2から漸次減少し、合計記録率に占める大ドットの記録率の割合が漸次増大する。これにより、画像記録装置1にて記録される画像において、シャドウ領域における濃度を確保することができる(図22において同様)。
図21の例における破線A1、一点鎖線A2および実線A3のうち2つまたは3つの線が重なっていてもよい。また、破線A1、一点鎖線A2および実線A3が折れ曲がる階調値の大小関係は任意に決定されてよく、この場合、階調値の増加に従って2番目に折れ曲がる線の折れ曲がり位置の階調値以下の階調範囲にて2つのサイズのドットの記録率の比が略一定となり、1番目に折れ曲がる線の折れ曲がり位置の階調値以下の階調範囲にて3つのサイズのドットの記録率の比が略一定となる。破線A1、一点鎖線A2および実線A3のうち2つまたは3つの線の折れ曲がる階調値が同じであってもよい。さらに、小ドットの記録率および中ドットの記録率は、最大階調値において0%以上であってもよい。大ドットの記録率は、最大階調値において100%未満であってもよい。
図22では、小ドットの記録率と中ドットの記録率との関係において、階調値の増加に従って一点鎖線A2が最初に折れ曲がる階調値V1から、破線A1が2回目に折れ曲がる階調値V3までの階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が略一定である。また、中ドットの記録率と大ドットの記録率との関係において、実線A3が最初に折れ曲がる階調値V2から一点鎖線A2が2回目に折れ曲がる階調値V4までの階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。さらに、階調値V2から階調値V3までの階調範囲では、小ドットの記録率と中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。図22では、中間階調領域において、基材9上の画像における領域間の色相の相違を低減することができる。
次に、小ドットおよび中ドットのみが記録される階調範囲において、小ドットの記録率と中ドットの記録率との比を略一定とする場合について述べる。図23ないし図26は、マトリクスセットの他の例の特性を示す図である。図23では、特定階調範囲である全階調範囲において小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が略一定である。また、大ドットの出現階調値V1未満の階調範囲において、記録される全てのサイズのドット(すなわち、当該階調範囲にて記録率が0%よりも大きい全てのサイズのドット)の記録率の比が略一定である。図23の例では、階調値V1未満のハイライト領域および中間階調領域において、小ドットおよび中ドットのみを用いて画像の粒状性を抑えつつ領域間の色相の相違を低減することができる。また、階調値V1から最大階調値に至る階調範囲において十分な濃度を確保することができる(図24において同様)。
図24では、一点鎖線A2が折れ曲がる階調値である第1特定階調値G1以上の特定階調範囲において、小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が略一定である。また、第1特定階調値G1以上、かつ、大ドットの出現階調値V1未満の階調範囲において、記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定である。最小階調値近傍において、最小サイズのドットのみが記録されることにより、ハイライト領域において画像の粒状性を改善することができる(図26において同様)。また、第1特定階調値G1以上、かつ、大ドットの出現階調値V1未満の中間階調領域では、小ドットおよび中ドットのみを用いて、画像における粒状性を改善しつつ領域間の色相の相違を低減することができる。なお、大ドットの出現階調値V1は、中間階調領域やハイライト領域に位置してもよい(図23、図25および図26において同様)。
図25では、破線A1が折れ曲がる階調値である第2特定階調値G2以下の特定階調範囲において、小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が略一定であり、当該特定階調範囲では、小ドットおよび中ドットのみが利用される。これにより、ハイライト領域を含む特定階調範囲において、画像の粒状性を抑えつつ領域間の色相の相違を低減することができる。また、第2特定階調値G2および階調値V1から、小ドットの記録率および中ドットの記録率がそれぞれ減少する。これにより、シャドウ領域において、大ドットの記録率の割合が高くなり、さらに、最大階調値において大ドットの記録率が100%まで増大するため、シャドウ領域における濃度を十分に確保することができる(図26において同様)。
図25において、一点鎖線A2が折れ曲がる階調値が、破線A1が折れ曲がる階調値よりも小さくてもよく、この場合、一点鎖線A2が折れ曲がる階調値が第2特定階調値となる。また、大ドットの出現階調値が第2特定階調値よりも小さい場合には、当該出現階調値未満の階調範囲にて、記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定である。階調値の増加に伴って中ドットの記録率が小ドットの記録率よりも先に0%になってもよく、双方が同時に(例えば、最大階調値にて)0%となってもよい。小ドットの記録率および中ドットの記録率の一方または双方は、必ずしも減少する必要はない。
図26では、階調値の増加に従って一点鎖線A2が最初に折れ曲がる階調値である第1特定階調値G1以上、かつ、破線A1が2回目に折れ曲がる階調値である第2特定階調値G2以下の特定階調範囲において、小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が略一定であり、当該特定階調範囲では、小ドットおよび中ドットのみが利用される。特定階調範囲では、小ドットおよび中ドットのみを用いて、画像における粒状性を改善しつつ領域間の色相の相違を低減することができる。
次に、中ドットおよび大ドットのみが記録される階調範囲において、中ドットの記録率と大ドットの記録率との比を略一定とする場合について述べる。図27ないし図30は、マトリクスセットの他の例の特性を示す図である。図27では、中ドットおよび大ドットの出現階調値である第1特定階調値G1以上の特定階調範囲において、中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。また、小ドットの記録率が0%となる階調値V1以上の階調範囲において、記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定である。
図27では、第1特定階調値G1未満の階調範囲において、最小サイズのドットのみが記録されることにより、ハイライト領域において画像の粒状性を改善することができる(図29において同様)。また、特定階調範囲(特に、階調値V1以上の階調範囲)において、中ドットおよび大ドットの使用により画像における十分な濃度を確保しつつ、領域間の色相の相違を低減することができる(図28ないし図30において同様)。なお、中ドットおよび大ドットの出現階調値は、中間階調領域やシャドウ領域に位置してもよい(図28ないし図30において同様)。
図28では、実線A3が折れ曲がる階調値である第1特定階調値G1以上の特定階調範囲において、中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。また、小ドットの記録率が0%となる階調値V1以上の階調範囲において、記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定である。実際には、中ドットの出現階調値が大ドットの出現階調値よりも小さいことにより、過度な粒状性の増大を抑制することができる(図30において同様)。また、中ドットの出現階調値未満の階調範囲において、最小サイズのドットのみが記録されることにより、ハイライト領域において画像の粒状性を改善することができる(図29および図30において同様)。一点鎖線A2が折れ曲がる階調値が、実線A3が折れ曲がる階調値よりも大きくてもよく、この場合、一点鎖線A2が折れ曲がる階調値が第1特定階調値となる。また、小ドットの記録率が0%となる階調値が第1特定階調値よりも小さい場合には、第1特定階調値以上の特定階調範囲にて、記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定となる。
図29では、中ドットおよび大ドットの出現階調値である第1特定階調値G1以上、かつ、実線A3が折れ曲がる階調値である第2特定階調値G2以下の特定階調範囲において、中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。また、特定階調範囲のうち、小ドットの記録率が0%となる階調値V1以上の階調範囲において、記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定である。さらに、第2特定階調値G2よりも大きい階調値V2から中ドットの記録率が減少し、合計記録率に占める大ドットの記録率の割合が、最大階調値にて100%となる。これにより、シャドウ領域において画像の濃度を最大限に確保することができる(図30において同様)。
図30では、階調値の増加に従って実線A3が最初に折れ曲がる階調値である第1特定階調値G1以上、かつ、実線A3が2回目に折れ曲がる階調値である第2特定階調値G2以下の特定階調範囲において、中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。また、特定階調範囲のうち、小ドットの記録率が0%となる階調値V1以上の階調範囲において、記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定である。
次に、小ドットおよび大ドットのみが記録される階調範囲において、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比を略一定とする場合について述べる。図31および図32は、マトリクスセットの他の例の特性を示す図である。図31では、実線A3が折れ曲がる階調値である第1特定階調値G1以上の特定階調範囲において、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。これにより、シャドウ領域において画像における領域間の色相の相違を低減することができる。また、小ドットが全階調範囲に亘って使用されることにより、ハイライト領域のみならず、中間階調領域およびシャドウ領域においても画像の粒状性を改善することができる(図32において同様)。図31では、中ドットの記録率が0%となる階調値V1が第1特定階調値よりも小さいが、中ドットの記録率が0%となる階調値は、第1特定階調値よりも大きくてもよく、この場合、特定階調範囲のうち当該階調値以上の階調範囲にて、使用される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定となる(図32において同様)。
図32では、階調値の増加に従って実線A3が最初に折れ曲がる階調値である第1特定階調値G1以上、かつ、破線A1が2回目に折れ曲がる階調値である第2特定階調値G2以下の特定階調範囲において、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。これにより、当該特定階調範囲において画像における領域間の色相の相違を低減することができる。実際には、第1特定階調値G1よりも小さい階調値V1にて中ドットの記録率が0%となるため、特定階調範囲において記録される全てのサイズのドットの記録率の比は略一定である。
また、第2特定階調値G2から階調値の増加に従って小ドットの記録率が減少するため、合計記録率に占める大ドットの記録率の割合が漸次増大し、最大階調値にて100%となる。したがって、シャドウ領域において画像の濃度を最大限に確保することができる。実線A3が階調値の増加に従って2回目に折れ曲がる階調値は、破線A1が2回目に折れ曲がる階調値よりも小さくてもよく、この場合、実線A3が2回目に折れ曲がる階調値が第2特定階調値となる。小ドットの記録率が、最大階調値よりも小さい階調値にて0%となってもよく、最大階調値において0%よりも大きくてもよい。また、大ドットの記録率は、最大階調値において100%未満であってもよい。
次に、小ドットおよび中ドットのみが記録される階調範囲において、小ドットの記録率と中ドットの記録率との比を略一定とし、小ドットおよび大ドットのみが記録される階調範囲において、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比を略一定とする場合について述べる。図33ないし図37は、マトリクスセットの他の例の特性を示す図である。図33ないし図37において、小ドットの記録率と中ドットの記録率との比は、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比と必ずしも異ならせる必要はなく、一致していてもよい。
図33および図34では、小ドットの記録率と中ドットの記録率との関係において、一点鎖線A2が折れ曲がる階調値V1以下の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が(αm:αk)にて略一定である。なお、大ドットの出現階調値は階調値V1よりも大きい。また、小ドットの記録率と大ドットの記録率との関係において、実線A3が折れ曲がる階調値V2以上の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が(βm:βn)にて略一定である。図33では、中ドットの記録率は、階調値V2よりも大きい階調値V3にて0%となるため、当該特定階調範囲のうち階調値V3以上の階調範囲にて記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定である。図33および図34では、一方の特定階調範囲における小ドットの記録率と中ドットの記録率との比と、他方の特定階調範囲における小ドットの記録率と大ドットの記録率との比とを互いに独立させることにより、各特定階調範囲において、使用するドットサイズの組合せに適した混合比を設定することが可能となる(図35ないし図37において同様)。
図33では、破線A1の傾きが全階調範囲において一定であるが、図34のように、破線A1の傾きが、小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が略一定である特定階調範囲と、小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である特定階調範囲とで異なってもよい。図33および図34では、大ドットの出現階調値が、一点鎖線A2が折れ曲がる階調値以下であってもよく、この場合、大ドットの出現階調値未満の階調範囲において記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定となる(図36において同様)。図33において、中ドットの記録率が0%となる階調値が、実線A3が折れ曲がる階調値以下であってもよく、この場合、小ドットと大ドットとの間の特定階調範囲の全体において、記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定となる(図35および図36において同様)。また、図34において、中ドットの記録率が0%となる階調値が、実線A3が折れ曲がる階調値以上であってもよく、この場合、特定階調範囲において、中ドットの記録率が0%となる階調値以上の階調範囲にて、記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定となる。
図35では、小ドットの記録率と中ドットの記録率との関係において、一点鎖線A2が最初に折れ曲がる階調値V1以上、かつ、一点鎖線A2が2回目に折れ曲がる階調値V2以下の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が略一定である。当該特定階調範囲では、小ドットおよび中ドットのみが利用される。また、小ドットの記録率と大ドットの記録率との関係において、実線A3が折れ曲がる階調値V3以上の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。中ドットの記録率が0%となる階調値V4は階調値V3よりも大きく、当該特定階調範囲のうち階調値V4以上の階調範囲にて、小ドットおよび大ドットのみが利用される。
図35において、大ドットの出現階調値が、一点鎖線A2が2回目に折れ曲がる階調値よりも小さくてもよく、この場合、小ドットと中ドットとの間の特定階調範囲において、大ドットの出現階調値未満の階調範囲において記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定となる。図35では、最小階調値近傍において、最小サイズのドットのみが記録されることにより、ハイライト領域において画像の粒状性を改善することができる(図37において同様)。
図36では、小ドットの記録率と中ドットの記録率との関係において、一点鎖線A2が折れ曲がる階調値V1以下の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が略一定である。また、小ドットの記録率と大ドットの記録率との関係において、実線A3が最初に折れ曲がる階調値V2以上、かつ、2回目に折れ曲がる階調値V3以下の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。図36では、中ドットの記録率は、階調値V2よりも大きい階調値V4にて0%となるため、当該特定階調範囲のうち階調値V4以上の階調範囲にて記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定である。
破線A1が2回目に折れ曲がる階調値から階調値の増加に従って小ドットの記録率が減少するため、合計記録率に占める大ドットの記録率の割合が漸次増大し、最大階調値にて100%となる。したがって、シャドウ領域において画像の濃度を最大限に確保することができる(図37において同様)。図36では、実線A3が階調値の増加に従って2回目に折れ曲がる階調値が、破線A1が2回目に折れ曲がる階調値よりも大きくてもよく、この場合、特定階調範囲の上限値が破線A1が2回目に折れ曲がる階調値となる。また、小ドットの記録率が、最大階調値よりも小さい階調値にて0%となってもよく、最大階調値において0%よりも大きくてもよい。また、大ドットの記録率は、最大階調値において100%未満であってもよい。
図37では、小ドットの記録率と中ドットの記録率との関係において、一点鎖線A2が最初に折れ曲がる階調値V1以上、かつ、一点鎖線A2が2回目に折れ曲がる階調値V2以下の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が略一定である。また、小ドットの記録率と大ドットの記録率との関係において、実線A3が最初に折れ曲がる階調値V3以上、かつ、2回目に折れ曲がる階調値V4以下の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。図37では、中ドットの記録率は、階調値V3よりも大きい階調値V5にて0%となるため、当該特定階調範囲のうち階調値V5以上の階調範囲にて記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定である。
次に、小ドットおよび中ドットのみが記録される階調範囲において、小ドットの記録率と中ドットの記録率との比を略一定とし、中ドットおよび大ドットのみが記録される階調範囲において、中ドットの記録率と大ドットの記録率との比を略一定とする場合について述べる。図38ないし図42は、マトリクスセットの他の例の特性を示す図である。図38ないし図42において、小ドットの記録率と中ドットの記録率との比は、中ドットの記録率と大ドットの記録率との比と必ずしも異ならせる必要はなく、一致していてもよい。
図38および図39では、小ドットの記録率と中ドットの記録率との関係において、破線A1が折れ曲がる階調値V1以下の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が(αm:αk)にて略一定である。なお、大ドットの出現階調値は階調値V1よりも大きく、当該特定階調範囲では、小ドットおよび中ドットのみが利用される。また、中ドットの記録率と大ドットの記録率との関係において、実線A3が折れ曲がる階調値V2以上の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が(βk:βn)にて略一定である。図38では、小ドットの記録率は、階調値V2よりも大きい階調値V3にて0%となるため、特定階調範囲のうち階調値V3以上の階調範囲にて記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定である。図38および図39では、一方の特定階調範囲における小ドットの記録率と中ドットの記録率との比と、他方の特定階調範囲における中ドットの記録率と大ドットの記録率との比とを互いに独立させることにより、各特定階調範囲において、使用するドットサイズの組合せに適した混合比を設定することが可能となる(図40ないし図42において同様)。
図38では、一点鎖線A2の傾きが全階調範囲において一定であるが、図39のように、一点鎖線A2の傾きが、小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が略一定である特定階調範囲と、中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である特定階調範囲とで異なってもよい。図38および図39では、大ドットの出現階調値が、破線A1が折れ曲がる階調値以下であってもよく、この場合、大ドットの出現階調値未満の階調範囲において記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定となる(図40において同様)。図38において、小ドットの記録率が0%となる階調値が、実線A3が折れ曲がる階調値以下であってもよく、この場合、中ドットと大ドットとの間の特定階調範囲の全体において、記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定となる(図41において同様)。また、図39において、小ドットの記録率が0%となる階調値が、実線A3が折れ曲がる階調値以上であってもよく、この場合、特定階調範囲において、小ドットの記録率が0%となる階調値以上の階調範囲にて、記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定となる。
図40では、小ドットの記録率と中ドットの記録率との関係において、破線A1が折れ曲がる階調値V1以下の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が略一定である。また、中ドットの記録率と大ドットの記録率との関係において、実線A3が最初に折れ曲がる階調値V2以上、かつ、2回目に折れ曲がる階調値V3以下の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。図40では、小ドットの記録率は、階調値V2よりも大きい階調値V4にて0%となるため、特定階調範囲のうち階調値V4以上の階調範囲にて記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定である。
一点鎖線A2が2回目に折れ曲がる階調値から階調値の増加に従って中ドットの記録率が減少するため、合計記録率に占める大ドットの記録率の割合が漸次増大し、最大階調値にて100%となる。したがって、シャドウ領域において画像の濃度を最大限に確保することができる(図42において同様)。図40では、実線A3が階調値の増加に従って2回目に折れ曲がる階調値が、一点鎖線A2が2回目に折れ曲がる階調値よりも大きくてもよく、この場合、特定階調範囲の上限値が一点鎖線A2が2回目に折れ曲がる階調値となる。
図41では、小ドットの記録率と中ドットの記録率との関係において、一点鎖線A2が折れ曲がる階調値V1以上、かつ、破線A1が2回目に折れ曲がる階調値V2以下の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が略一定である。当該特定階調範囲では、小ドットおよび中ドットのみが用いられる。また、中ドットの記録率と大ドットの記録率との関係において、実線A3が折れ曲がる階調値V3以上の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。図41では、小ドットの記録率は、階調値V3よりも大きい階調値V4にて0%となるため、当該特定階調範囲のうち階調値V4以上の階調範囲にて記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定である。図41では、最小階調値近傍において、最小サイズのドットのみが記録されることにより、ハイライト領域において画像の粒状性を改善することができる(図42において同様)。図41では、大ドットの出現階調値が、破線A1が2回目に折れ曲がる階調値以下であってもよく、この場合、特定階調範囲において大ドットの出現階調値未満の階調範囲にて記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定となる(図42において同様)。
図42では、小ドットの記録率と中ドットの記録率との関係において、一点鎖線A2が最初に折れ曲がる階調値V1以上、かつ、破線A1が2回目に折れ曲がる階調値V2以下の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲において小ドットの記録率と中ドットの記録率との比が略一定である。当該特定階調範囲では、小ドットおよび中ドットのみが用いられる。また、中ドットの記録率と大ドットの記録率との関係において、実線A3が最初に折れ曲がる階調値V3以上、かつ、2回目に折れ曲がる階調値V4以下の階調範囲が特定階調範囲であり、特定階調範囲にて中ドットの記録率と大ドットの記録率との比が略一定である。図42では、小ドットの記録率は、階調値V3よりも大きい階調値V5にて0%となるため、当該特定階調範囲のうち階調値V5以上の階調範囲にて記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定である。なお、小ドットの記録率が0%となる階調値が、実線A3が1回目に折れ曲がる階調値以下であってもよく、この場合、特定階調範囲の全体において、記録される全てのサイズのドットの記録率の比が略一定となる(図40において同様)。図41および図42において、図39および図40のように、2つの特定階調範囲における一点鎖線A2の傾きが相違してもよい。
以上のように、画像記録装置1では、一の色のインクに関して、N種類(ただし、Nは2以上の整数)のサイズのドットが記録可能である場合に、2種類以上のサイズのドットの記録率の比が略一定となる少なくとも1つの特定階調範囲が設けられる。これにより、当該特定階調範囲において基材9上の画像における領域間の色相の相違を低減することができる。この場合に、特定階調範囲の少なくとも一部の階調範囲において、記録される全てのサイズのドット(すなわち、当該階調範囲にて記録率が0%よりも大きい全てのサイズのドット)の記録率の比が略一定であることが好ましい。これにより、当該少なくとも一部の階調範囲において基材9上の画像における領域間の色相の相違をさらに低減することができる。各特定階調範囲は、好ましくは、全階調範囲の幅の20%以上(より好ましくは、30%以上、さらに好ましくは、40%以上)の幅である。なお、各階調値における合計記録率は100%以下である。
上記画像記録装置1は様々な変形が可能である。上記画像記録装置1では、補正値を用いて元画像の画素値を修正することにより吐出口間の濃度差の補正が行われるが、補正値を用いて閾値マトリクスの閾値を修正することにより吐出口間の濃度差の補正が行われてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様に、吐出部310の複数の吐出口における全サイズのドットの記録率が、複数の補正値に基づいて制御されていると捉えることができる。
閾値マトリクスによるハーフトーン化には、規則的に配列されたドットの集合であるクラスタの大きさを変えることにより階調を表現するAM(Amplitude Modulated)スクリーニングが用いられてもよい。また、上記実施の形態では、画像データの画素値と閾値マトリクスの閾値とが比較されることにより、吐出部310における全サイズのドットの記録率が制御されるが、一のサイズの第1ドットの記録率と、当該第1ドットよりもサイズが大きい第2ドットの記録率との比を特定階調範囲の全体において略一定とする上記手法は、誤差拡散方式等の他のハーフトーン化手法において用いられてもよい。
画像記録装置におけるハーフトーン画像データの生成および印刷動作は並行して行われる必要はなく、本体制御部41内に十分大きなメモリを設けることが可能であれば、元画像全体のハーフトーン画像データの生成が完了してから画像記録動作が開始されてもよい。
上述の画像記録装置では、基材9が吐出ユニット3に対して相対的に移動するのであれば、例えば、停止している基材9の上方にて、吐出ユニット3が移動機構2によりY方向に移動してもよい。画像記録装置の構造は、例えば、インターレス印刷を行う画像記録装置に適用されてもよく、また、長尺状のロール紙に画像を記録する画像記録装置に適用されてもよい。基材9は、印刷用紙以外にフィルムや金属薄板等であってもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。