図1は、本発明の一の実施の形態に係る画像記録装置1の構成を示す図である。画像記録装置1は、複数の記録媒体9上にインクの微小液滴を吐出することにより、カラー画像を順次記録する枚葉式の印刷装置(いわゆる、インクジェットプリンタ)である。記録媒体9は、例えば、印刷用紙である。
図1に示すように、画像記録装置1は、移動機構2と、吐出ユニット3と、供給部51と、排出部52と、制御部4とを備える。移動機構2は、複数の記録媒体9を図1中の(+Y)方向に移動する。以下の説明では、図1中のY方向を「移動方向」という。吐出ユニット3は、移動機構2の上方(すなわち、(+Z)側)に配置され、図示省略のフレームに固定される。吐出ユニット3は、移動機構2による搬送途上の記録媒体9に向けてインクの微小液滴を吐出する。供給部51は、移動機構2に記録媒体9を供給する。排出部52は、印刷終了後の記録媒体9を移動機構2から受け取る。制御部4は、移動機構2、吐出ユニット3、供給部51および排出部52等の機構を制御する。
移動機構2は、複数のステージ21と、環状のガイド22と、ベルト駆動機構23とを備える。複数のステージ21は、それぞれが1枚のシート状の記録媒体9を吸着保持する。ガイド22は、複数のステージ21が接続されたベルトを内部に備え、複数のステージ21を案内する。ベルト駆動機構23は、ガイド22内のベルトを図1中における反時計回りに移動させることにより、ステージ21を吐出ユニット3の下方(すなわち、(−Z)側)において(+Y)方向に移動する。これにより、記録媒体9が、吐出ユニット3に対して上記移動方向に相対的に移動する。
図2は、吐出ユニット3を示す底面図である。吐出ユニット3は、同様の構造を有する複数のヘッドアッセンブリ31を備える。複数のヘッドアッセンブリ31はそれぞれ、互いに異なる色のインクの微小液滴を記録媒体9に向けて吐出する吐出部である。複数のヘッドアッセンブリ31は、Y方向(すなわち、移動方向)に配列されて吐出ユニット3の取付部30に取り付けられる。図2に示す例では、4つのヘッドアッセンブリ31が吐出ユニット3に設けられる。4つのヘッドアッセンブリ31は、(−Y)側から順に、それぞれブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色のインクを吐出する。
各ヘッドアッセンブリ31は、複数の吐出ヘッド32を備える。複数の吐出ヘッド32は、上記移動方向と交差する所定の方向(以下、「幅方向」という。)に沿って千鳥状に配列される。図2に示す例では、幅方向はY方向に垂直なX方向であり、各ヘッドアッセンブリ31では、4つの吐出ヘッド32がX方向に沿って配列される。各吐出ヘッド32には、幅方向に沿って配列される複数の吐出口が設けられる。図1に示す画像記録装置1では、各ヘッドアッセンブリ31は、上記幅方向において記録媒体9の全幅に亘って設けられる。また、各ヘッドアッセンブリ31の複数の吐出口も、幅方向において記録媒体9の全幅に亘って設けられる。
各ヘッドアッセンブリ31の各吐出口から吐出されるインクの微小液滴のサイズは切替可能である。すなわち、各ヘッドアッセンブリ31では、各吐出口から異なる量のインクの微小液滴が吐出可能である。インクの微小液滴のサイズが切り替えられ、当該微小液滴が記録媒体9上に着弾することにより、記録媒体9上に形成されるドットのサイズも切り替えられる。
図1に示す画像記録装置1では、各ヘッドアッセンブリ31から吐出されるインクの微小液滴のサイズが、「小サイズ」、小サイズよりも大きい「中サイズ」、および、中サイズよりも大きい「大サイズ」の3つの間で切り替え可能である。小サイズの微小液滴は、各ヘッドアッセンブリ31から吐出されるインクの微小液滴のサイズのうち最小のサイズである。また、大サイズの微小液滴は、各ヘッドアッセンブリ31から吐出されるインクの微小液滴のサイズのうち最大のサイズである。インクの微小液滴のサイズが切り替えられることにより、記録媒体9上に形成されるインクのドットサイズは、「小サイズ」、「中サイズ」、「大サイズ」、および、ドットが存在しないことを示す「ゼロサイズ」の間で切り替えられる。以下の説明では、小サイズ、中サイズおよび大サイズのドットをそれぞれ、「小ドット」、「中ドット」および「大ドット」とも呼ぶ。
画像記録装置1では、制御部4の記録制御部41(図3参照)により吐出ユニット3と移動機構2とが制御され、記録媒体9が、吐出ユニット3の複数のヘッドアッセンブリ31に対向する位置を、複数のヘッドアッセンブリ31に対して相対的に1回だけ移動方向に移動することにより、記録媒体9への画像の記録が完了する。換言すれば、画像記録装置1では、記録媒体9に対するシングルパス印刷が行われる。
制御部4は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶するROM、および、各種情報を記憶するRAMをバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。図3は、制御部4の機能を示すブロック図である。図3では、制御部4に接続される画像記録装置1の構成の一部を併せて示す。制御部4は、上述の記録制御部41と、各種演算を行う演算部42とを備える。
演算部42は、画像メモリ421と、複数のマトリクス記憶部422(SPM(Screen Pattern Memory)とも呼ばれる。)と、比較器423(ハーフトーン化回路)と、階調補正部424とを備える。階調補正部424は、外部から入力されるカラー画像を示す画像データの階調補正を行う。当該階調補正は、吐出ユニット3の複数のヘッドアッセンブリ31により補正用媒体に予め記録された補正用パターンの階調と、目標階調(すなわち、補正用パターンの理想的な階調)との差に基づいて行われる。具体的には、補正用パターンの一部の階調が目標階調よりも低い場合、画像データの対応する部分の階調値を増加させ、他の一部の階調が目標階調よりも高い場合、画像データの対応する部分の階調値を減少させる。なお、補正用媒体は、記録媒体9と同じ種類のものであることが好ましいが、異なっていてもよい。
画像メモリ421は、階調補正部424により階調補正された画像データを記憶する。複数のマトリクス記憶部422は、複数の色成分に対応する閾値マトリクスがそれぞれ記憶されるメモリである。比較器423は、画像メモリ421に記憶された画像データと、マトリクス記憶部422に記憶された閾値マトリクスとを、色成分毎に比較する比較部である。なお、当該比較部はソフトウェアにて実現されてもよい。
各マトリクス記憶部422には、大ドット用の閾値マトリクスである大ドット用マトリクス811と、中ドット用の閾値マトリクスである中ドット用マトリクス812と、小ドット用の閾値マトリクスである小ドット用マトリクス813とが記憶される。大ドット用マトリクス811、中ドット用マトリクス812および小ドット用マトリクス813はそれぞれ、不規則に配置されるドットの個数を変更することにより階調を表現するFM(Frequency Modulated)スクリーニングに用いられる閾値マトリクスである。
図3では1つのマトリクス記憶部422に記憶される大ドット用マトリクス811、中ドット用マトリクス812および小ドット用マトリクス813を図示しているが、他の色成分のマトリクス記憶部422にもそれぞれ、大ドット用マトリクス811、中ドット用マトリクス812および小ドット用マトリクス813が記憶される。以下の説明では、大ドット用マトリクス811と中ドット用マトリクス812と小ドット用マトリクス813とをまとめて「マトリクスセット」とも呼ぶ。3つの閾値マトリクスの同じ位置では、大ドット用マトリクス811の閾値が最も大きく、小ドット用マトリクス813の閾値が最も小さい。また、中ドット用マトリクス812の閾値は、大ドット用マトリクス811および小ドット用マトリクス813の両閾値の間の値である。
記録制御部41は、吐出制御部411と、移動制御部412とを備える。移動制御部412は、演算部42からの出力に基づいて、移動機構2による記録媒体9の吐出ユニット3に対する相対移動を制御する。吐出制御部411は、演算部42からの出力に基づいて、記録媒体9の相対移動に同期して吐出ユニット3の複数の吐出口からのインクの吐出を制御する。
次に、画像記録装置1による画像記録について図4を参照しつつ説明する。なお、図4は1枚の記録媒体9に注目した画像記録の流れを示している。以下の説明ではブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの4つの色成分に対してそれぞれ準備されるマトリクスセットのうち一の色成分のマトリクスセットのみに注目するが、他の色成分のマトリクスセットについても同様の処理が行われる。
画像記録装置1にて画像記録が行われる際には、まず、上述のマトリクスセットがマトリクス記憶部422に記憶される。これにより、マトリクスセットにより表される画像記録装置1の吐出特性を示す吐出特性データが、演算部42に準備される(ステップS11)。続いて、階調補正部424により、画像データに対して上述の階調補正が行われる(ステップS12)。階調補正が行われた画像データは、画像メモリ421に記憶される。なお、ステップS12は後述するステップS13よりも前に行われるのであれば、ステップS11よりも前に行われてもよい。
次に、比較器423において、画像メモリ421に記憶された階調補正後の画像データが示す各画素の画素値と、マトリクスセットの大ドット用マトリクス811、中ドット用マトリクス812および小ドット用マトリクス813が有する閾値とが比較される。これにより、画像がハーフトーン化され(すなわち、網掛け処理が行われ)、画像記録に用いられるハーフトーン画像データが生成される(ステップS13)。
ここで、画像のハーフトーン化(網点化)について説明する。図5は、画像および閾値マトリクスを抽象的に示す図である。図5ではマトリクスセットの1つの閾値マトリクスを符号81にて示している。閾値マトリクス81では、記録媒体9の幅方向に対応する行方向(図5中にてx方向として示す。)、および、移動方向に対応する列方向(図5中にてy方向として示す。)に複数の要素が配列されており、画像70においても行方向および列方向に複数の画素が配列されている。以下の説明では、画像70は0から255の階調値(すなわち、各画素がとりうる画素値)にて表現されるものとする。
画像70のハーフトーン化の際には、画像70を、図5に示すように、同一の大きさの多数の領域に分割してハーフトーン化の単位となる繰り返し領域71が設定される。図3に示すマトリクス記憶部422は1つの繰り返し領域71に相当する記憶領域を有し、この記憶領域の各アドレス(座標)に閾値が設定されることにより閾値マトリクス81を記憶している。そして、概念的には画像70の各繰り返し領域71と各色成分の閾値マトリクス81とを重ね合わせ、繰り返し領域71の各画素の画素値と閾値マトリクス81の対応する閾値とが比較される。画素値と閾値との比較は、3つのドットサイズに対応する3つの閾値マトリクス(すなわち、大ドット用マトリクス811、中ドット用マトリクス812および小ドット用マトリクス813)に対して行われ、これにより記録媒体9上のその画素の位置に描画を行うか否か、および、描画されるドットのサイズが決定される。
実際の動作では、図3の比較器423が有するアドレス発生器からのアドレス信号に基づいて画像メモリ421から画像70の1つの画素の画素値が読み出される。一方、アドレス発生器では当該画素に対応する繰り返し領域71中の位置を示すアドレス信号も生成され、大ドット用マトリクス811、中ドット用マトリクス812および小ドット用マトリクス813の3つの閾値が特定されてマトリクス記憶部422から読み出される。そして、上記画素値と3つの閾値とが比較器423にて比較されることにより、出力画像の領域であるハーフトーン画像領域においてマトリクス状に配列された複数の画素位置(すなわち、複数の描画位置)に形成される複数のドットのサイズが順次決定される。
具体的には、画像70の各画素の画素値(以下、「入力画素値」という。)と、ハーフトーン画像領域の各画素に対応する画素位置における大ドット用マトリクス811の閾値とが比較され、入力画素値が閾値よりも大きい場合には、当該画素位置に値「3」が付与される。以下、ハーフトーン画像領域における値を「ハーフトーン画素値」という。入力画素値が大ドット用マトリクス811の閾値以下の場合には、入力画素値と中ドット用マトリクス812の閾値とが比較される。入力画素値が中ドット用マトリクス812の閾値よりも大きい場合には、上記画素位置にハーフトーン画素値「2」が付与される。入力画素値が中ドット用マトリクス812の閾値以下の場合には、入力画素値と小ドット用マトリクス813の閾値とが比較される。入力画素値が小ドット用マトリクス813の閾値よりも大きい場合には、上記画素位置にハーフトーン画素値「1」が付与され、小ドット用マトリクス813の閾値以下の場合にはハーフトーン画素値「0」が付与される。
画像記録装置1では、最初に印刷される部分の各色成分のハーフトーン画素値の集合であるハーフトーン画像データが生成されると、移動制御部412が移動機構2を駆動することにより記録媒体9の移動方向への移動が開始される(ステップS14)。そして、ハーフトーン画像データの生成に並行して、記録媒体9の移動に同期しつつ吐出ユニット3のヘッドアッセンブリ31が吐出制御部411により制御され、複数の吐出口からインクが吐出される。
ハーフトーン画像の各画素のX方向の位置は、いずれかの吐出口に対応付けられている。吐出口の下方に到達した記録媒体9上の吐出位置(すなわち、画素の位置)に対応するハーフトーン画素値が「3」である場合には当該吐出位置に大ドットが形成され、「2」である場合には中ドットが形成され、「1」である場合には小ドットが形成される。また、ハーフトーン画素値が「0」である場合には当該吐出位置にドットは形成されない。
上記印刷動作がブラック、シアン、マゼンタおよびイエローのそれぞれに関して行われることにより、記録媒体9上に上述のカラー画像を表現するカラーのハーフトーン画像が記録される(ステップS15)。既述のように、記録媒体9は、供給部51により逐次供給されるとともに画像記録後に排出部52に回収される。所望の枚数の記録媒体9上にハーフトーン画像の全体が記録されると、記録媒体9の供給および移動が停止され、画像記録動作が終了する(ステップS16)。
次に、マトリクスセットの特性について述べる。図6および図7は、一様な階調の画像を画像記録装置1にて記録する場合の画像の階調値と吐出率との関係を示す図である。図6および図7の縦軸は吐出率を示し、横軸は画像の階調値を示す。上述の吐出率とは、記録媒体9上の単位領域に対して一のヘッドアッセンブリ31から実際に吐出されて付与されるドットの個数の基準個数に対する割合を示す値である。基準個数とは、当該単位領域において、インクのドットが付与可能な位置として定義されている位置の個数である。吐出率は、階調値が255(すなわち、記録媒体9上に表現可能な最大階調値)である場合には通常100%となり、階調値が0(すなわち、記録媒体9上に表現可能な最小階調値)である場合には0%となる。
図6は、マトリクスセットにより表される吐出特性データを、画像の階調値と吐出率との関係として示すものである。マトリクスセットを記憶する上述のマトリクス記憶部422は、当該吐出特性データを記憶する記憶部である。図6では、小サイズ、中サイズおよび大サイズのインクの微小液滴の吐出率をそれぞれ、符号A1,A2,A3を付す実線にて示す。以下の説明では、小サイズ、中サイズおよび大サイズのインクの微小液滴の吐出率をそれぞれ、「小サイズ吐出率」、「中サイズ吐出率」および「大サイズ吐出率」という。線A1は、小サイズ吐出率と階調値との関係を示す小サイズ吐出率特性を示す。線A2は、中サイズ吐出率と階調値との関係を示す中サイズ吐出率特性を示す。線A3は、大サイズ吐出率と階調値との関係を示す大サイズ吐出率特性を示す。以下、小サイズ吐出率、中サイズ吐出率および大サイズ吐出率をそれぞれ、小サイズ吐出率A1、中サイズ吐出率A2および大サイズ吐出率A3とも呼ぶ。
図7では、全サイズのインクの微小液滴の吐出率を合計した合計吐出率、すなわち、小サイズ吐出率、中サイズ吐出率および大サイズ吐出率の和を、符号B1を付す実線にて示す。また、小サイズ吐出率を示す線A1、中サイズ吐出率を示す線A2、および、大サイズ吐出率を示す線A3を破線にて示す。後述する図13ないし図16の縦軸および横軸、並びに、線A1〜A3および線B1は、図6および図7と同様のものを示す。
図6に示す例では、小ドット用マトリクス813の閾値の範囲は0から140である。また、中ドット用マトリクス812の閾値の範囲は70から255である。大ドット用マトリクス811の閾値の範囲は166から255である。既述のように、マトリクスセットの3つの閾値マトリクスにおいて互いに対応する位置では、小ドット用マトリクス813の閾値よりも中ドット用マトリクス812の閾値の方が大きく、中ドット用マトリクス812の閾値よりも大ドット用マトリクス811の閾値の方が大きい。そして、1つの位置に大ドットが形成されると、小ドットおよび中ドットは入力画素値が閾値を上回っても描画されず、1つの位置に中ドットが形成されると、小ドットは入力画素値が閾値を上回っても描画されない。
図6および図7に示すように、画像の階調値が0以上70以下の範囲では、階調値が0から70に向かって増加するに従って、小サイズ吐出率は、線A1にて示すように0%から80%まで線形に増加する。また、中ドットおよび大サイズ吐出率は0%であり、合計吐出率は小サイズ吐出率に等しい。階調値が0以上70以下の範囲では、画像は小ドットのみにより記録される。すなわち、中ドットおよび大ドットは、画像の記録には利用されない。
画像の階調値が70以上140以下の範囲では、階調値が70から140に向かって増加するに従って、小サイズ吐出率は、線A1にて示すように80%から0%まで線形に減少する。また、階調値が70から140に向かって増加するに従って、中サイズ吐出率は、線A2にて示すように、0%から80%まで線形に増加する。大サイズ吐出率は0%であり、合計吐出率は80%で一定である。階調値が70以上140以下の範囲では、画像は小ドットおよび中ドットにより記録される。すなわち、大ドットは、画像の記録には利用されない。
画像の階調値が140以上166以下の範囲では、階調値が140から166に向かって増加するに従って、中サイズ吐出率は、線A2にて示すように80%から100%まで線形に増加する。また、小ドット吐出率および大サイズ吐出率は0%であり、合計吐出率は中サイズ吐出率に等しい。階調値が140以上166以下の範囲では、画像は中ドットのみにより記録される。すなわち、小ドットおよび大ドットは、画像の記録には利用されない。
画像の階調値が166以上255以下の範囲では、階調値が166から255に向かって増加するに従って、中サイズ吐出率は、線A2にて示すように100%から0%まで線形に減少する。また、階調値が166から255に向かって増加するに従って、大サイズ吐出率は、線A3にて示すように、0%から100%まで線形に増加する。小サイズ吐出率は0%であり、合計吐出率は100%で一定である。階調値が166以上255以下の範囲では、画像は中ドットおよび大ドットにより記録される。すなわち、小ドットは、画像の記録には利用されない。
マトリクスセットの各ドットサイズに対応する閾値マトリクスが生成される際には、例えば、特開2008−199154号公報に開示された方法にて元となる閾値マトリクスが作成され、閾値の範囲を必要に応じて狭めるとともに最小閾値がそのサイズのドットの出現階調値に合うように各閾値にオフセット値が加えられる。
図6に示す例では、階調値「0」は、小ドットが吐出される階調範囲の最小値である最小階調値、すなわち、小サイズ吐出率の増加が開始される階調値である小サイズ開始階調値である。階調値「70」は、小サイズ吐出率が最大となる小サイズピーク階調値である。階調値「140」は、小ドットが吐出される階調範囲の最大値である最大階調値、すなわち、小サイズ吐出率の減少が終了する小サイズ終了階調値である。小サイズピーク階調値は小サイズ開始階調値よりも大きく、小サイズ終了階調値は小サイズピーク階調値よりも大きい。
階調値「70」は、また、中ドットが吐出される階調範囲の最小値である最小階調値、すなわち、中サイズ吐出率の増加が開始される階調値である中サイズ開始階調値である。階調値「166」は、中サイズ吐出率が最大となる中サイズピーク階調値である。階調値「255」は、中ドットが吐出される階調範囲の最大値である最大階調値、すなわち、中サイズ吐出率の減少が終了する中サイズ終了階調値である。中サイズピーク階調値は中サイズ開始階調値よりも大きく、中サイズ終了階調値は中サイズピーク階調値以上である。中サイズ開始階調値は、小サイズ開始階調値以上である。図6に示す例では、中サイズ開始階調値は小サイズピーク階調値に等しく、中サイズ終了階調値は中サイズピーク階調値よりも大きい。
階調値「166」は、また、大ドットが吐出される階調範囲の最小値である最小階調値、すなわち、大サイズ吐出率の増加が開始される階調値である大サイズ開始階調値である。階調値「255」は、大ドットが吐出される階調範囲の最大値である最大階調値、すなわち、大サイズ吐出率の増加が終了する大サイズ終了階調値である。大サイズ終了階調値は、大サイズ吐出率が最大となる大サイズピーク階調値でもある。大サイズ終了階調値は大サイズ開始階調値よりも大きい。大サイズ開始階調値は、中サイズ開始階調値以上である。図6に示す例では、大サイズ開始階調値は、小サイズ終了階調値よりも大きく、中サイズピーク階調値に等しい。
階調値「0」および「255」はそれぞれ、記録媒体9上に表現可能な最小階調値および最大階調値である。上述の小サイズ開始階調値と、小サイズピーク階調値と、小サイズ終了階調値と、中サイズ開始階調値と、中サイズピーク階調値と、中サイズ終了階調値と、大サイズ開始階調値と、大サイズ終了階調値とは、当該最小階調値以上かつ最大階調値以下の階調値の範囲においてそれぞれ設定される。また、後述する第1階調値、および、当該第1階調値よりも大きい第2階調値も、最小階調値以上かつ最大階調値以下の階調値の範囲においてそれぞれ設定される。
第1階調値は、小サイズピーク階調値および中サイズ開始階調値よりも大きく、かつ、小サイズ終了階調値以下であり、かつ、中サイズピーク値よりも小さい。図6に示す例では、第1階調値は、小サイズ終了階調値に等しく、140である。図6および図7では、横軸上に第1階調値を示す点を描き、符号C1を付す。第2階調値は、大サイズ開始階調値以上であり、かつ、大サイズ終了階調値よりも小さく、かつ中サイズピーク階調値以下である。図6に示す例では、第2階調値は、大サイズ開始階調値に等しく、166である。図6および図7では、横軸上に第2階調値を示す点を描き、符号C2を付す。
画像記録装置1では、第1階調値C1における小サイズ吐出率、および、第2階調値C2における大サイズ吐出率はそれぞれ5%以下である。また、第1階調値C1以上かつ第2階調値C2以下の階調値の範囲において、中サイズ吐出率は、階調値の増加に従って漸次増加する。図6に示す例では、第1階調値C1における小サイズ吐出率、すなわち、小サイズ終了階調値における小サイズ吐出率は0%である。第2階調値C2における大サイズ吐出率、すなわち、大サイズ開始階調値における大サイズ吐出率は0%である。また、階調値が第1階調値C1から第2階調値C2に向かって増加するに従って、中サイズ吐出率は80%から100%まで線形に漸次増加する。
第1階調値C1と第2階調値C2との間の階調幅は、記録媒体9の種類、および、上述の階調補正部424による階調補正が実際に行われる階調範囲の幅である補正幅に基づいて決定される。好ましくは、第1階調値C1と第2階調値C2との間の階調幅は、当該補正幅に等しい。第1階調値C1と第2階調値C2との間の階調幅は、上述の最小階調値と最大階調値との間の階調幅の約30%以下であることが好ましい。図6に示す例では、第1階調値C1(140)と第2階調値C2(166)との間の階調幅は、最小階調値(0)と最大階調値(255)との間の階調幅の約10%である。
図7に示すように、合計吐出率B1は、階調値が小サイズ開始階調値(0)から小サイズピーク階調値(70)に向かって増加するに従って、小サイズ吐出率A1と同様に、0%から80%まで線形に増加する。また、合計吐出率B1は、小サイズピーク階調値(70)以上かつ第1階調値C1(140)以下の階調値の範囲において一定(80%)である。合計吐出率B1は、階調値が第1階調値C1(140)から第2階調値C2(166)に向かって増加するに従って、中サイズ吐出率A2と同様に、80%から100%まで線形に増加する。合計吐出率B1は、第2階調値C2(166)において100%であり、第2階調値C2(166)以上かつ大サイズ終了階調値(255)以下の階調値の範囲において一定(100%)である。
図6に示す吐出特性データは、小サイズ開始階調値と、小サイズピーク階調値と、小サイズ終了階調値と、中サイズ開始階調値と、中サイズピーク階調値と、中サイズ終了階調値と、大サイズ開始階調値と、大サイズ終了階調値と、第1階調値C1と、第2階調値C2と、小サイズ吐出率特性と、中サイズ吐出率特性と、大サイズ吐出率特性とを含む。なお、吐出特性データは、これらの階調値、および、これらの吐出率特性を実質的に含んでいれば、図6に示すものとは異なる態様にてマトリクス記憶部422に記憶されてもよい。
画像記録装置1では、上述のように、画像メモリ421に記憶された画像データと、マトリクス記憶部422に記憶された閾値マトリクスが表す吐出特性データとに基づいて、吐出ユニット3のヘッドアッセンブリ31および移動機構2が、記録制御部41により制御される。これにより、吐出特性データが示す吐出特性が反映された画像が、記録媒体9上に記録される。
図8は、記録媒体9上の画像の一部を模式的に示す図である。図8の上側の部分には、1つのヘッドアッセンブリ31において幅方向に隣接する2つの吐出ヘッド32を併せて描く。図8の下側の部分には、当該2つの吐出ヘッド32により記録媒体9上に記録された複数のドットを描く(図9ないし図12においても同様)。複数のドットのうち、図中の左側5列のドット群95が左側の吐出ヘッド32により記録され、図中の右側5列のドット群96が右側の吐出ヘッド32により記録される。図中では、ドット群95およびドット群96をそれぞれ実線の矩形にて囲み、ドットが形成される各位置を破線の矩形にて囲む。なお、実際には、各吐出ヘッド32に設けられる吐出口の数は、図8に示すものよりも多い。
図8は、階調値が148の一様な階調の画像を示す。階調値「148」は、上述の第1階調値C1(140)と第2階調値C2(166)との間の中央の階調値である。図8に示す画像は、2つの吐出ヘッド32から吐出されるインクの微小液滴の大きさが、所定の大きさに等しい理想的な状態で記録されたものである。図6に示すように、画像記録装置1では、階調値「148」の画像は中ドットのみで記録され、小ドットおよび大ドットは画像の記録には使用されない。図8に示すように、2つの吐出ヘッド32により記録された2つのドット群95,96は、中ドットのみにより構成される。2つのドット群95,96では、ドットの大きさ、および、ドットの配置が互いに等しい。
図9は、2つの吐出ヘッド32から吐出されるインクの微小液滴の大きさが、吐出ヘッド32の加工精度等に起因して互いに僅かに異なる状態で記録された画像を示す。図9に示す画像は、階調補正部424による階調補正を行うことなく、図8と同様の画像データ(すなわち、階調値が148の一様な階調の画像)に基づいて記録されたものである。図9でも、図8と同様に、画像は中ドットのみで記録され、小ドットおよび大ドットは画像の記録には使用されない。図9では、左側の吐出ヘッド32から吐出されるインクの微小液滴が所定の大きさよりも小さく、右側の吐出ヘッド32から吐出されるインクの微小液滴が所定の大きさよりも大きい。したがって、画像中において左側のドット群95により表される部位は、右側のドット群96により表される部位よりも濃度が薄くなり、当該濃度差はムラとして知覚される。
ここで、図10に示す吐出特性を有する画像記録装置(以下、「比較例の画像記録装置」という。)を想定する。図10では、小サイズ吐出率D1において、小サイズ開始階調値が0であり、小サイズピーク階調値が74であり、小サイズ終了階調値が148である。中サイズ吐出率D2において、中サイズ開始階調値は74であり、中サイズピーク階調値は148であり、中サイズ終了階調値は255である。大サイズ吐出率D3において、大サイズ開始階調値は148であり、大サイズ終了階調値は255である。小サイズ終了階調値および大サイズ開始階調値は、互いに等しい。
図11は、図9の状態の吐出ヘッド32に、比較例の画像記録装置の吐出特性(図10参照)に基づいた階調補正を行った上で、図8と同様の画像データ(すなわち、階調値が148の一様な階調の画像データ)に基づいて記録された画像を示す。図11では、上述のように、左側の吐出ヘッド32から吐出されるインクの微小液滴が所定の大きさよりも小さい。このため、画像データのうち当該吐出ヘッド32に対応する部位の階調値は、148よりも高い階調値に補正される。換言すれば、図10に示す吐出特性において、階調値「148」よりも右側の階調値に対応するインクの微小液滴の吐出が行われる。このため、左側のドット群95では、中ドットと大ドットとが混在し、小ドットは存在しない。
一方、図11の右側の吐出ヘッド32から吐出されるインクの微小液滴は、上述のように、所定の大きさよりも大きい。このため、画像データのうち当該吐出ヘッド32に対応する部位の階調値は、148よりも低い階調値に補正される。換言すれば、図10に示す吐出特性において、階調値「148」よりも左側の階調値に対応するインクの微小液滴の吐出が行われる。このため、右側のドット群96では、小ドットと中ドットとが混在し、大ドットは存在しない。
図11では、左側のドット群95の濃度と、右側のドット群96の濃度とが、およそ等しくなるように階調補正が行われている。しかしながら、左側のドット群95では中ドットと大ドットとが混在するのに対し、右側のドット群96では小ドットと中ドットとが混在する。上述のように、同濃度の画像であっても、小ドットの使用率が高い場合は粒状性が改善される一方で、小ドットの着弾位置が不安定になる。また、各サイズのドットの存在率(すなわち、全サイズのドットの総数に対する各サイズのドットの数の割合)が異なると、液滴同士の接触によるドットの位置ずれの態様も異なる。このため、図11では、左側のドット群95と右側のドット群96との見え方が異なってしまい、当該見え方の違いがムラとして知覚される。
これに対し、図1に示す画像記録装置1では、図6の吐出特性に示すように、小サイズ終了階調値が第1階調値C1に等しく、小サイズ終了階調値における小サイズ吐出率A1は0%である。また、大サイズ開始階調値が第2階調値C2に等しく、大サイズ開始階調値における大サイズ吐出率A3は0%である。さらに、第1階調値C1以上かつ第2階調値C2以下の階調値の範囲において、中サイズ吐出率A2が、階調値の増加に従って漸次増加する。すなわち、第1階調値C1(140)以上かつ第2階調値C2(166)以下の階調値の範囲では、記録媒体9に対する画像の記録は、中ドットのみにより行われ、小ドットおよび大ドットは画像の記録には使用されない。また、当該範囲では、画像の階調値の増加は、中サイズ吐出率の増加(すなわち、中ドットの個数の増加)のみにより表現される。
したがって、図9と同様に、2つの吐出ヘッド32から吐出されるインクの微小液滴の大きさが互いに異なる状態で、階調値が148の一様な階調の画像を記録した場合、当該画像は図12に示すものとなる。図12に示すように、階調補正部424による階調補正により、左側のドット群95では図9に示す状態よりも中ドットの個数が増加する。また、右側のドット群96では、図9に示す状態よりも中ドットの個数が減少する。ドット群95,96では、中ドットのみが存在し、小ドットおよび大ドットは存在しない。
図12では、階調補正部424による階調補正により、左側のドット群95の濃度と、右側のドット群96の濃度とが、およそ等しくなる。また、第1階調値C1以上かつ第2階調値C2以下の階調値の範囲では、画像の記録が中ドットのみにより行われるため、当該範囲内における階調補正において、各サイズのドットの存在率の差異によりドットの位置ずれの差が生じることを抑制することができる。したがって、左側のドット群95と右側のドット群96との間で、ドットの位置ずれの差に起因する見え方の違いの発生が抑制される。その結果、当該見え方の違いによるムラの発生を抑制(または防止)することができる。上記説明では、幅方向に隣接する吐出ヘッド32間におけるムラの抑制について記載したが、図1に示す画像記録装置1では、図6に示す吐出特性に基づいて階調補正を行いつつ画像記録が行われることにより、幅方向に隣接する吐出口間におけるムラ、および、幅方向に隣接する吐出口群の間におけるムラの発生を抑制(または防止)することもできる。
このように、画像記録装置1では、階調補正に起因するムラの発生を抑制することができるため、画像記録装置1の構造は、ムラが比較的生じやすいシングルパス印刷を行う画像記録装置に特に適している。
上述のように、図6に示す吐出特性では、第1階調値C1と第2階調値C2との間の階調幅が、階調補正部424による階調補正が実際に行われる階調範囲の幅である補正幅に基づいて決定される。これにより、第1階調値C1および第2階調値C2を含む中間領域(すなわち、ハイライト領域とシャドウ領域との間の中間的な階調の領域)において、上述の階調補正に起因するムラの発生を抑制することができる。第1階調値C1と第2階調値C2との間の階調幅が、上記補正幅に等しくされる場合、第1階調値C1以上、かつ、第2階調値C2以下の階調の範囲において、上述の階調補正に起因するムラの発生をより一層抑制することができる。また、中ドットのみにより画像が形成される階調範囲が、過剰に大きくなることを防止することができる。
上述のように、第1階調値C1と第2階調値C2との間の階調幅は、記録媒体9の種類に基づいても決定される。これにより、記録媒体9の種類に合わせた適切なムラ抑制を実現することができる。第1階調値C1と第2階調値C2との間の階調幅が大きくなると、小サイズピーク階調値以上かつ第1階調値C1以下の階調値の範囲において、階調値の増加に対する小サイズ吐出率A1の減少率が大きくなる。また、第2階調値C2以上かつ大サイズ終了階調値以下の階調値の範囲において、階調値の増加に対する大サイズ吐出率A3の増加率が大きくなる。上述の小サイズ吐出率A1の減少率、および、大サイズ吐出率A3の増加率が、仮に過剰に大きくなると、階調値の増加に対する画像の変化(すなわち、画像の見た目の変化)の程度が過剰に大きくなる(例えば、トーンジャンプが発生する)可能性がある。当該画像の変化の程度を適切な範囲内に収めるためには、第1階調値C1と第2階調値C2との間の階調幅は、記録媒体9上に表現可能な上記最小階調値と上記最大階調値との間の階調幅の30%以下であることが好ましい。
図13および図14は、画像記録装置1のマトリクスセットが表す他の好ましい吐出特性を示す図である。図14に示す例では、合計吐出率B1は、小サイズピーク階調値以上かつ第1階調値C1以下の階調値の範囲において、階調値の増加に従って漸次増大する。これにより、小サイズピーク階調値以上かつ第1階調値C1以下の階調値の範囲において、階調値の増加に従って、記録媒体9上に記録されるドットの個数も増加する。その結果、小サイズピーク階調値以上かつ第1階調値C1以下の階調値の範囲において合計吐出率B1が一定である場合(図7参照)に比べて、小サイズピーク階調値以上かつ第1階調値C1以下の階調値の範囲におけるムラの発生をより一層抑制することができる。
また、図14に示す例では、合計吐出率B1は第2階調値C2において100%未満(95%)である。これにより、第2階調値C2以上かつ大サイズ終了階調値以下の階調値の範囲において、階調値の増加に従って、記録媒体9上に記録されるドットの個数も増加する。その結果、第2階調値C2以上における合計吐出率B1が100%である場合(図7参照)に比べて、第2階調値C2以上かつ大サイズ終了階調値以下の階調値の範囲におけるムラの発生をより一層抑制することができる。
画像記録装置1における吐出特性では、小サイズ吐出率A1において、小サイズ終了階調値は必ずしも第1階調値C1に等しい必要はなく、小サイズ終了階調値における小サイズ吐出率は0%である必要はない。また、大サイズ吐出率A3において、大サイズ開始階調値は必ずしも第2階調値C2に等しい必要はなく、大サイズ開始階調値における大サイズ吐出率は0%である必要はない。当該吐出特性では、上述のように、第1階調値C1における小サイズ吐出率、および、第2階調値C2における大サイズ吐出率はそれぞれ5%以下であればよい。第1階調値C1における小サイズ吐出率、および、第2階調値C2における大サイズ吐出率がそれぞれ5%以下であることにより、小ドットと大ドットとの混在による画像の見た目への影響が、過剰に大きくなることを防止することができる。
例えば、画像記録装置1では、図15および図16に示す吐出特性データを表すマトリクスセットがマトリクス記憶部422に記憶されてもよい。図15に示す例では、小サイズ吐出率A1の階調範囲は0から148である。中サイズ吐出率A2の階調範囲は70から255である。大サイズ吐出率A3の階調範囲は148から255である。図16では、合計吐出率B1を併せて描く。図15および図16に関する説明では、第1階調値C1(140)と第2階調値C2(156)との間の中央の階調値「148」を「第3階調値C3」と呼ぶ。
図15に示すように、小サイズ開始階調値は0であり、小サイズピーク階調値は70であり、小サイズ終了階調値は148である。小サイズ吐出率A1は、階調値が小サイズ開始階調値(0)から小サイズピーク階調値(70)に向かって増加するに従って、0%から80%まで線形に増加する。また、小サイズ吐出率A1は、階調値が小サイズピーク階調値(70)から第1階調値C1(140)に向かって増加するに従って、80%から5%まで線形に減少し、階調値が第1階調値C1(140)から小サイズ終了階調値(148)に向かって増加するに従って、5%から0%まで線形に減少する。第1階調値C1(140)以上かつ小サイズ終了階調値(148)以下の階調値の範囲における階調値の増加に対する小サイズ吐出率A1の減少率は、小サイズピーク階調値(70)以上かつ第1階調値C1(140)以下の階調値の範囲における階調値の増加に対する小サイズ吐出率A1の減少率よりも小さい。
中サイズ開始階調値は70であり、中サイズピーク階調値は166であり、中サイズ終了階調値は255である。中サイズ吐出率A2は、階調値が中サイズ開始階調値(70)から第1階調値C1(140)に向かって増加するに従って、0%から75%まで線形に増加する。また、中サイズ吐出率A2は、階調値が第1階調値C1(140)から第3階調値C3(148)に向かって増加するに従って75%から90%まで線形に増加する。中サイズ吐出率A2は、階調値が第3階調値C3(148)から第2階調値C2に等しい中サイズピーク階調値(166)に向かって増加するに従って、90%から95%まで線形に増加する。中サイズ吐出率A2は、階調値が中サイズピーク階調値(166)から中サイズ終了階調値(255)に向かって増加するに従って、95%から0%まで線形に減少する。
大サイズ開始階調値は148であり、大サイズピーク階調値および大サイズ終了階調値は255である。大サイズ吐出率A3は、階調値が大サイズ開始階調値(148)から第2階調値C2(166)に向かって増加するに従って、0%から5%まで線形に増加する。また、大サイズ吐出率A3は、階調値が第2階調値C2(166)から大サイズ終了階調値(255)に向かって増加するに従って、5%から100%まで線形に増加する。大サイズ開始階調値(148)以上かつ第2階調値C2(166)以下の階調値の範囲における階調値の増加に対する大サイズ吐出率A3の増加率は、第2階調値C2(166)以上かつ大サイズ終了階調値(255)以下の階調値の範囲における階調値の増加に対する大サイズ吐出率A3の増加率よりも小さい。
図16に示すように、合計吐出率B1は、階調値が小サイズ開始階調値(0)から小サイズピーク階調値(70)に向かって増加するに従って、小サイズ吐出率A1と同様に、0%から80%まで線形に増加する。また、合計吐出率B1は、小サイズピーク階調値(70)以上かつ第1階調値C1(140)以下の階調値の範囲において一定(80%)である。合計吐出率B1は、階調値が第1階調値C1(140)から第2階調値C2(166)に向かって増加するに従って、80%から100%まで線形に増加する。合計吐出率B1は、第2階調値C2(166)において100%であり、第2階調値C2(166)以上かつ大サイズ終了階調値(255)以下の階調値の範囲において一定(100%)である。
上述のように、図15に示す吐出特性では、第1階調値C1における小サイズ吐出率A1、および、第2階調値C2における大サイズ吐出率A3がそれぞれ5%以下である。また、第1階調値C1以上かつ第2階調値C2以下の階調値の範囲における階調値の増加に対する小サイズ吐出率A1の減少率は、小サイズピーク階調値以上かつ第1階調値C1以下の階調値の範囲における階調値の増加に対する小サイズ吐出率A1の減少率よりも小さい。さらに、第1階調値C1以上かつ第2階調値C2以下の階調値の範囲における階調値の増加に対する大サイズ吐出率A3の増加率は、第2階調値C2以上かつ大サイズ終了階調値以下の階調値の範囲における階調値の増加に対する大サイズ吐出率A3の増加率よりも小さい。
これにより、第1階調値C1(140)以上かつ第2階調値C2(166)以下の階調値の範囲において、記録媒体9に対する画像の記録は、主に中ドットにより行われ、小ドットおよび大ドットはあまり使用されない。また、当該範囲では、画像の階調値の増加は、主に中サイズ吐出率の増加(すなわち、中ドットの個数の増加)により表現される。
したがって、第1階調値C1以上かつ第2階調値C2以下の階調値の範囲における階調補正において、上述のように、図12に示す左側のドット群95と右側のドット群96との間で、各サイズのドットの存在率の差異によりドットの位置ずれの差が生じることを抑制することができる。これにより、左側のドット群95と右側のドット群96との間で、ドットの位置ずれの差に起因する見え方の違いの発生が抑制される。その結果、当該見え方の違いによるムラの発生を抑制(または防止)することができる。当該ムラの発生の抑制(または防止)は、幅方向に隣接する吐出ヘッド32間だけではなく、幅方向に隣接する吐出口間、および、幅方向に隣接する吐出口群の間においても実現される。
なお、第1階調値C1以上かつ第2階調値C2以下の階調値の範囲では、小サイズ吐出率A1が5%以下の一定の値であってもよく、また、大サイズ吐出率A3が5%以下の一定の値であってもよい。この場合であっても、第1階調値C1以上かつ第2階調値C2以下の階調値の範囲における階調値の増加に対する小サイズ吐出率A1の減少率は、小サイズピーク階調値以上かつ第1階調値C1以下の階調値の範囲における階調値の増加に対する小サイズ吐出率A1の減少率よりも小さい。また、第1階調値C1以上かつ第2階調値C2以下の階調値の範囲における階調値の増加に対する大サイズ吐出率A3の増加率は、第2階調値C2以上かつ大サイズ終了階調値以下の階調値の範囲における階調値の増加に対する大サイズ吐出率A3の増加率よりも小さい。これにより、上述のように、ムラの発生を抑制(または防止)することができる。
画像記録装置1では、図6に示す吐出特性のように、小サイズ終了階調値が第1階調値C1に等しく、小サイズ終了階調値における小サイズ吐出率が0%である方が好ましい。これにより、第1階調値C1以上、かつ、第2階調値C2以下の階調値の範囲において、小ドットが画像の記録に使用されることが防止される。その結果、上述のように、階調補正後の画像において、小ドットの混在に起因する見え方の違いの発生を抑制し、当該見え方の違いに起因するムラの発生を抑制することができる。
また、図6に示す吐出特性のように、大サイズ開始階調値が第2階調値C2に等しく、大サイズ開始階調値における大サイズ吐出率が0%である方が好ましい。これにより、第1階調値C1以上、かつ、第2階調値C2以下の階調値の範囲において、大ドットが画像の記録に使用されることが防止される。その結果、上述のように、階調補正後の画像において、大ドットの混在に起因する見え方の違いの発生を抑制し、当該見え方の違いに起因するムラの発生を抑制することができる。
上記画像記録装置1は、様々な変更が可能である。
例えば、小サイズ開始階調値、小サイズピーク階調値、小サイズ終了階調値、中サイズ開始階調値、中サイズピーク階調値、中サイズ終了階調値、大サイズ開始階調値、大サイズ終了階調値、第1階調値、第2階調値および第3階調値は、上記数値に限定されるわけではなく、様々に変更されてよい。また、各階調値における小サイズ吐出率A1、中サイズ吐出率A2、大サイズ吐出率A3および合計吐出率B1の数値も適宜変更されてよい。なお、上述の最大階調値(255)における合計吐出率B1は、100%未満であってもよい。上記実施の形態では、小サイズ吐出率A1、中サイズ吐出率A2、大サイズ吐出率A3および合計吐出率B1が、階調値の変化に対して線形に変化するものとして説明したが、これらの吐出率は非線形に変化してもよい。
画像記録装置1の吐出特性は、上述の図6、図7、図13〜図16に示すものには限定されず、様々に変更されてよい。図17および図18は、画像記録装置1の他の好ましい吐出特性を示す図である。図17に示す例では、中サイズ吐出率A2は、階調値が中サイズ開始階調値(70)から第1階調値C1(140)に向かって増加するに従って線形に増加する。中サイズ吐出率A2は、また、階調値が第1階調値C1(140)から中サイズ終了階調値(255)に向かって増加するに従って線形に増加する。すなわち、図17では、中サイズ終了階調値は、中サイズ吐出率A2が最大となる中サイズピーク階調値でもある。中サイズ終了階調値は、大サイズ終了階調値に等しく、また、最大階調値に等しい。図17に示す例では、最大階調値における中サイズ吐出率A2は、最大階調値における大サイズ吐出率A3よりも大きい。なお、最大階調値では、中サイズ吐出率A2は大サイズ吐出率A3以下であってもよい。
図18に示す例では、小サイズ吐出率A1が、小サイズ開始階調値(0)、小サイズピーク階調値(70)および小サイズ終了階調値(140)を有し、さらに、もう1つの小サイズ開始階調値(200)、もう1つの小サイズピーク階調値(210)、および、もう1つの小サイズ終了階調値(220)を有する。もう1つの小サイズ開始階調値、もう1つの小サイズピーク階調値、および、もう1つの小サイズ終了階調値は、小サイズ終了階調値(140)および第2階調値C2(166)よりも大きい。もう1つの小サイズ開始階調値は、小サイズ終了値(140)よりも大きい階調値の範囲において、小サイズ吐出率A1の増加が開始される階調値である。もう1つの小サイズピーク階調値は、もう1つの小サイズ開始階調値よりも大きい階調値の範囲で、小サイズ吐出率A1が最大となる階調値である。もう1つの小サイズ終了階調値は、もう1つの小サイズピーク階調値以上の階調値の範囲で、小ドットが吐出される階調範囲の最大値である。すなわち、図18に示す例では、小サイズ終了階調値よりも大きい階調値の範囲においても、小サイズのドットが画像の記録に使用される。
画像記録装置1では、吐出ユニット3から吐出されるインクの色は、必ずしもブラック、シアン、マゼンタ、イエローには限定されず、インクの色数も4色には限定されない。画像記録装置1では、吐出ユニット3から1色のインクのみ(例えば、ブラックのインクのみ)が吐出されて、記録媒体9上に画像が記録されてもよい。
吐出ユニット3の各ヘッドアッセンブリ31では、吐出されるインクの微小液滴のサイズは、3つ以上のサイズの間で切り替え可能であればよい。例えば、各ヘッドアッセンブリ31において、インクの微小液滴のサイズが、5つのサイズの間で切り替え可能である場合、当該5つのサイズを小さい順に並べた際に連続する各3つのサイズが、上述の小サイズ、中サイズおよび大サイズにそれぞれ対応する。また、画像記録装置1において、インクの微小液滴のサイズが、5つのサイズの間で切り替え可能であっても、画像の記録に実際に使用されるインクの微小液滴のサイズが4つである場合、当該4つのサイズを小さい順に並べた際に連続する各3つのサイズが、上述の小サイズ、中サイズおよび大サイズにそれぞれ対応する。
演算部42における閾値マトリクスによるハーフトーン化には、規則的に配列されたドットの集合であるクラスタの大きさを変えることにより階調を表現するAM(Amplitude Modulated)スクリーニングが用いられてもよい。あるいは、誤差拡散方式等、他の方法により画像がハーフトーン化されてもよい。
画像記録装置1では、ハーフトーン画像データの生成および印刷動作は並行して行われる必要はなく、記録制御部41内に十分大きなメモリを設けることが可能であれば、画像全体のハーフトーン画像データの生成が完了した後に、記録媒体9に対する画像記録動作が開始されてもよい。
画像記録装置1では、記録媒体9が吐出ユニット3に対してY方向に相対的に移動するのであれば、例えば、停止している記録媒体9の上方にて、吐出ユニット3が移動機構2によりY方向に移動してもよい。画像記録装置1の構造は、例えば、インターレス印刷を行う画像記録装置に適用されてもよく、また、長尺状のロール紙に画像を記録する画像記録装置に適用されてもよい。記録媒体9は、印刷用紙以外にフィルムや金属薄板等であってもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。