以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
なお、ここでは、帯状の連続紙(ウェブ)に水性インクを用いてインクジェット方式で印刷するインクジェット印刷機に本発明を適用した場合を例に説明する。
≪インクジェット印刷機の構成≫
図1は、インクジェット印刷機1の全体構成図である。このインクジェット印刷機1は、ウェブ2を給紙する給紙部10、ウェブ2を送るインフィード部20、ウェブ2の印刷面に所定の処理液を塗布する処理液塗布部30、処理液が塗布されたウェブ2を乾燥させる第1乾燥部40、ウェブ2に画像を記録(描画)する印刷部50、画像が記録されたウェブ2を乾燥させる第2乾燥部60、ウェブ2に記録された画像を定着させるとともに、記録結果を読み取る定着・読取部70、ウェブ2を送るアウトフィード部80、及び、ウェブ2を巻き取る回収部90を備えて構成される。
給紙部10から給紙されるウェブ2は、インフィード部20及びアウトフィード部80によって送りが与えられて所定の搬送経路を走行し、その搬送経路の途中に設置された処理液塗布部30、第1乾燥部40、印刷部50、第2乾燥部60、定着・読取部70で所要の処理が施され、回収部90で巻き取られる。
〈ウェブ〉
記録媒体としてのウェブ2は、巻芯にロール状に巻回されて給紙ロールの状態で提供される。ウェブ2の種類は、特に限定されるものではないが、本実施の形態のインクジェット印刷機1では、一般印刷用紙(一般のオフセット印刷などで使用される、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)が使用される。
〈給紙部〉
給紙部10は、ウェブ2を連続的に給紙する。この給紙部10には、給紙ロールを装着するためのリールスタンド14と、給紙ロールの交換時に新旧のウェブを接続する紙継ぎ装置(図示せず)とが備えられる。
リールスタンド14は、複数本の給紙ロールを装着可能に構成され、ウェブ2を給紙する給紙ロールを自動的に切り替える。本例のリールスタンド14は、放射状に延びる3本のアームを備え、各アームに給紙ロールの装着部が設けられる。したがって、一度に3本の給紙ロールを装着できる。3本のアームは、図示しないモータに駆動されて回転し、これにより、給紙ロールの位置が切り替えられる。そして、この給紙ロールの位置を切り替えることにより、ウェブ2を給紙する給紙ロールが切り替えられる。なお、図1において、符号11は給紙中の給紙ロール、符号12は次に給紙する給紙ロール、符号13は使用済みの給紙ロールである。3本のアームは、時計回りに回転して、ウェブ2を給紙する給紙ロールを切り替える。また、各装着部には図示しないモータが備えられ、各装着部に装着された給紙ロールは、このモータに駆動されて回転する。
図示しない紙継ぎ装置は、新旧の給紙ロールを切り替える際、新旧のウェブ同士を接続する。すなわち、使用中の給紙ロール11から引き出されているウェブ2に次に使用する給紙ロール12から引き出したウェブ2の先端を接続し、一続きのウェブ2とする。これにより、ウェブ2が連続的に給紙される。
新旧の給紙ロールの交換は、次のように行われる。まず、リールスタンド14のアームを回転させ、新しい給紙ロール12をウェブ2の走行ラインに近接させる。次に、新しい給紙ロール12の周速度をウェブ2の搬送速度に同期させる。次に、紙継ぎ装置(図示せず)を動作させ、新しい給紙ロール12からウェブ2を引き出して、使用中の給紙ロール11から引き出されているウェブ2に接続する。ここで、新しい給紙ロール12から引き出されるウェブ2の先端には、糊付け部が設けられており、紙継ぎ装置は、この糊付け部を使用中の給紙ロール11から引き出されているウェブ2に押し付けて、新旧のウェブ同士を接続(紙継ぎ)する。接続後、紙継ぎ装置は、使用中の給紙ロール11から引き出されているウェブ2をカッターにより切断し、新たに接合されたウェブ2から切り離す。これにより、新旧の給紙ロールが切り替えられる。
なお、新旧の給紙ロールの交換は自動的に行われる。すなわち、ウェブ2の残量が残量測定手段(図示せず)によって測定され、無くなる直前に新たな給紙ロールに交換される。
〈インフィード部〉
インフィード部20は、給紙部10の給紙ロールからウェブ2を引き出し、印刷部50に向けて給送する。このインフィード部20には、ウェブ2を挟持して給送するインフィードローラ対21と、ウェブ2の張力を調整するダンサーローラ22とが備えられる。
インフィードローラ対21は、図示しないモータに駆動されて回転する。インフィードローラ対21の回転速度は任意に設定可能とされ、このインフィードローラ対21の回転速度を調整することにより、ウェブ2の給送速度が調整される。
ダンサーローラ22は、図示しないアクチュエータによって揺動保持される。走行するウェブ2は、このダンサーローラ22によって張力が調整される。給紙ロールの交換時等は、このダンサーローラ22でウェブ2を一時的に貯蔵し、紙継ぎ等に必要な時間が確保される。また、ウェブ2の搬送速度が変化した場合などには、このダンサーローラ22で張力変動が吸収される。
〈処理液塗布部〉
処理液塗布部30は、ウェブ2の印刷面に所定の処理液を塗布する。上記のように、本例のインクジェット印刷機1では、一般印刷用紙に水性インクを用いてインクジェット方式で印刷する。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いてインクジェット方式で印刷すると、打滴後にインク(色材)移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすい。そこで、本例のインクジェット印刷機1では、印刷部50で打滴されるインクと凝集反応を起こす処理液を事前にウェブ2の印刷面に塗布する。このように、インクと凝集反応を起こす処理液を塗布して、インク滴を打滴することにより、インク着弾後の滲みや着弾干渉(合一)、混色の発生を防止でき、高品位な画像を記録することができる。
処理液塗布部30は、処理液を塗布する処理液塗布装置31を備え、この処理液塗布装置31によって走行するウェブ2の印刷面に処理液を塗布する。処理液塗布装置31は、たとえば、周面に処理液が付与された塗布ローラをウェブ2の印刷面に当接させて、ウェブ2の印刷面に一定の厚さで処理液を塗布する。
なお、処理液塗布装置の構成は、これに限らず、たとえば、ライン型のインクジェットヘッドを用いて塗布する構成や、スプレーにより塗布する構成とすることもできる。
処理液は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む。凝集剤としては、インク組成物のpHを変化させることができる化合物であっても、多価金属塩であっても、ポリアリルアミン類であってもよい。pHを低下させ得る化合物としては、水溶性の高い酸性物質(リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、若しくは、これらの化合物の誘導体、又は、これらの塩等)が好適に挙げられる。酸性物質は、1種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。これにより、凝集性を高め、インク全体を固定化することができる。また、インク組成物のpH(25℃)は8.0以上であって、処理液のpH(25℃)は0.5〜4の範囲が好ましい。これにより、画像濃度、解像度及びインクジェット記録の高速化を図ることができる。また、処理液には、添加剤を含有することができる。たとえば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤を含有することができる。
〈第1乾燥部〉
第1乾燥部40は、ウェブ2に塗布された処理液を乾燥させる。この第1乾燥部40は、ドライヤ(図示せず)が備えられる。ドライヤは、走行するウェブ2の印刷面に加熱風を吹き付けて、ウェブ2を加熱乾燥させる。
また、この第1乾燥部40には、紙繋ぎ時間や搬送速度の変化に必要なウェブ2を一時的に貯蔵するため、ダンサーローラ42を有している。ダンサーローラ42は、図示しないアクチュエータに揺動保持され、走行するウェブ2の張力調整を行う。
〈印刷部〉
印刷部50は、走行するウェブ2の印刷面にインクジェットヘッド51(51M、51K、51C、51Y)からマゼンタ(M)、クロ(K)、シアン(C)、イエロー(Y)の各色のインクのインク滴を吐出してカラー画像を記録する。この印刷部50は、マゼンタインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッド51Mと、クロインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッド51Kと、シアンインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッド51Cと、イエローインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッド51Yとを備えている。
各色のインクジェットヘッド51は、ウェブ2の幅に対応したライン型のインクジェットヘッドで構成され、走行するウェブ2にシングルパスで画像を記録する。
なお、ノズルからインク滴を吐出させるための駆動部の構成は、特に限定されず、発熱素子を用いたサーマルインクジェット方式で吐出させるようにしてもよいし、また、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式で吐出させるようにしてもよい。本例では、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式でノズルからインク滴を吐出させるインクジェットを使用する。
印刷部50におけるウェブ2の搬送経路は、上方に湾曲した凸形状とされ、ウェブ2に一定の張力が付与されることにより、各インクジェットヘッド51との間のクリアランスが確保される。
また、この印刷部50を走行するウェブ2は、インクジェットヘッド直下の描画部を通過する時の速度、すなわち、画像を記録するときの速度(記録時用紙速度)が、図示しない記録時用紙速度検出機構によって検出される。
記録時用紙速度検出機構は、たとえば、ウェブ2を搬送するローラの軸にロータリーエンコーダなどの回転量検出手段を設置し、その軸の回転量から記録時用紙速度を検出する。また、たとえば、レーザードップラー速度計で記録時用紙速度を検出する。また、たとえば、ウェブ2の印刷範囲外の領域(たとえば、ウェブ両サイドの耳の部分)に速度検出用のパターンを印字し、このパターンの移動を光学式のセンサ等で検出して、記録時用紙速度を検出する。
検出された記録時用紙速度の情報は、インクジェットヘッド51の吐出制御やスキャナ74で読み取った記録画像の解析などに使用される。この点については、のちに詳述する。
また、本例のインクジェット印刷機1で使用するインクは、水性紫外線硬化型インクであり、顔料、ポリマー粒子及び活性エネルギ線により重合する水溶性の重合性化合物を含有する。水性紫外線硬化型インクは、紫外線を照射することで硬化可能であり、耐察性に優れ膜強度が高いという性質を有する。
顔料は、その表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料が用いられる。
ポリマー分散剤は、酸価が25〜1000(KOHmg/g)のポリマー分散剤が用いられる。自己分散性の安定性が良好、かつ、処理液が接触したときの凝集性が良好になる。
ポリマー粒子は、酸価が20〜50(KOHmg/g)の自己分散性ポリマー粒子が用いられる。自己分散性の安定性が良好、かつ、処理液が接触したときの凝集性が良好になる。
重合性化合物としては、凝集剤と顔料、ポリマー粒子との反応を妨げない点でノニオン性又はカチオン性の重合性化合物が好ましく、水に対する溶解度が10質量%以上(更には15質量%以上)の重合性化合物を用いることが好ましい。
また、インクは、活性エネルギ線により重合性化合物の重合を開始する開始剤を含有する。開始剤は、活性エネルギ線により重合反応を開始し得る化合物を適宜選択して含有することができ、たとえば、放射線若しくは光又は電子線により活性種(ラジカル、酸、塩基など)を発生する開始剤(たとえば、光重合開始剤等)を用いることができる。なお、開始剤は処理液に含有させることもでき、インクと処理液の少なくとも一方に含有させればよい。
また、インクは水を50〜70質量%含有する。また、インクには添加剤を含有することができる。たとえば、水溶性有機溶媒や乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤を含有することができる。
〈第2乾燥部〉
第2乾燥部60は、ウェブ2に打滴されたインクを乾燥させる。この第2乾燥部60には、ドライヤ(図示せず)が備えられる。ドライヤは、走行するウェブ2の印刷面に加熱風を吹き付けて、ウェブ2を加熱乾燥させる。
また、この第2乾燥部60には、紙繋ぎ時間や搬送速度の変化に必要なウェブ2を一時的に貯蔵するため、ダンサーローラ62を有している。ダンサーローラ62は、図示しないアクチュエータに揺動保持され、走行するウェブ2の張力調整を行う。
〈定着・読取部〉
定着・読取部70は、ウェブ2に記録された画像を定着させるとともに、記録結果をスキャナで読み取る。この定着・読取部70には、画像が記録されたウェブ2の印刷面に紫外線を当てる紫外線照射光源71と、ウェブ2を冷却する冷却装置72と、記録画像を読み取るスキャナ74とが備えられる。
紫外線照射光源71は、画像が記録されたウェブ2の印刷面に紫外線を照射して、処理液とインクとの凝集体を固化させる。
冷却装置72は、冷却された複数本のクーリングローラ73を備え、このクーリングローラ73でウェブ2を適当な温度まで冷却し、記録画像を定着させる。
スキャナ74は、ウェブ2の走行方向と直交して配置されたラインCCD(いわゆるラインセンサ)と、そのラインCCDに結像させるための光学系と、ラインCCDによる読取部を照明する光源とを備え、走行するウェブ2に記録された画像をラインCCDで1ラインずつ読み取る。スキャナ74で読み取られた画像のデータは、インクジェット印刷機1の全体の動作を制御するシステムコントローラ100(図2参照)に出力される。システムコントローラ100は、この画像データを解析して、印刷部50におけるヘッドの不具合(不吐出や吐出方向不良など)や印刷品質(画像濃度、色、ムラなど)などを検査し、必要な補正や調整を行う。
この定着・読取部70を走行するウェブ2は、スキャナ74による読取部を通過する時の速度、すなわち、スキャナ74で画像を読み取るときの速度(読取時用紙速度)が、図示しない読取時用紙速度検出機構によって検出される。
読取時用紙速度検出機構は、記録時用紙速度検出機構と同様に、たとえば、ウェブ2を搬送するローラの軸にロータリーエンコーダなどの回転量検出手段を設置し、その軸の回転量から読取時用紙速度を検出する。また、たとえば、レーザードップラー速度計で読取時用紙速度を検出する。また、たとえば、ウェブ2の印刷範囲外の領域(たとえば、ウェブ両サイドの耳の部分)に速度検出用のパターンを印字し、このパターンの移動を光学式のセンサ等で検出して、読取時用紙速度を検出する。
検出された読取時用紙速度の情報は、スキャナ74で読み取った記録画像の解析などに使用される。この点については、のちに詳述する。
〈アウトフィード部〉
アウトフィード部80は、ウェブ2を引き、回収部90に向けて給送する。このアウトフィード部80には、ウェブ2を挟持して給送するアウトフィードローラ対81と、ウェブ2の張力を調整するダンサーローラ82とが備えられる。
アウトフィードローラ対81は、図示しないモータに駆動されて回転する。アウトフィードローラ対81の回転速度は任意に設定可能とされ、このアウトフィードローラ対81の回転速度を調整することにより、ウェブ2の給送速度が調整される。
ダンサーローラ82は、図示しないアクチュエータによって揺動保持される。走行するウェブ2は、このダンサーローラ82によって張力が調整される。ウェブ2を巻き取る巻芯の交換時等は、このダンサーローラ82でウェブ2を一時的に貯蔵し、交換等に必要な時間が確保される。また、ウェブ2の搬送速度が変化した場合などには、このダンサーローラ82で張力変動が吸収される。
〈回収部〉
回収部90は、画像が記録されたウェブ2を巻芯に巻き取る。この回収部90には、巻芯を装着するためのリールスタンド94と、巻芯の交換時にウェブ2の先端を巻芯に接合する芯接合装置(図示せず)とが備えられる。
リールスタンド94は、複数本の巻芯を装着可能に構成され、ウェブ2を巻き取る巻芯を自動的に切り替える。本例のリールスタンド94は、放射状に延びる3本のアームを備え、各アームに巻芯の装着部が設けられる。したがって、一度に3本の巻芯を装着できる。3本のアームは、図示しないモータに駆動されて回転し、これにより、巻芯の位置が切り替えられる。そして、この巻芯の位置を切り替えることにより、ウェブ2を巻き取る巻芯が切り替えられる。なお、図1において、符号91はウェブ2を巻き取り中の巻芯、符号92は次にウェブ2を巻き取る巻芯、符号93はウェブを巻き取り済みの巻芯である。3本のアームは、反時計回りに回転して、ウェブ2を巻き取る巻芯を切り替える。また、各装着部には図示しないモータが備えられ、各装着部に装着された巻芯は、このモータに駆動されて回転する。
図示しない芯接合装置は、ウェブ2を巻き取る巻芯を切り替える際、巻き取り中のウェブ2を切断するとともに、切断したウェブ2の先端を新しい巻芯92に接合する。これにより、ウェブ2を連続敵に巻き取ることができる。
巻芯の交換は、次のように行われる。まず、リールスタンド94のアームを回転させ、新しい巻芯92をウェブ2の走行ラインに近接させる。次に、新しい巻芯92の周速度をウェブ2の搬送速度に同期させる。次に、芯接合装置(図示せず)を動作させ、ウェブ2を新しい巻芯92に接合する。ここで、新しい巻芯92は、その外周に接着部が設けられており、芯接合装置は、この接着部にウェブ2を押し付けて、ウェブ2を新しい巻芯92に接合させる。接合後、芯接合装置は、接合部の前側のウェブ2をカッターにより切断し、新しい巻芯92から切り離す。これにより、ウェブ2を巻き取る巻芯が切り替えられる。
なお、巻芯の交換は自動的に行われる。すなわち、ウェブ2の巻き取り量が巻取量測定手段(図示せず)によって測定され、所定量のウェブ2が巻き取られると、自動的に新たな巻芯に切り替えられる。
なお、本例のインクジェット印刷機1では、巻芯にロール状に巻き取る構成としているが、公知の折機によって、画像が記録されたウェブ2を回収する構成とすることもできる。
〈制御系〉
図2は、インクジェット印刷機1の制御系の概略構成を示すブロック図である。
同図に示すように、インクジェット印刷機1は、システムコントローラ100、通信部102、画像メモリ104、搬送制御部110、給紙制御部112、処理液塗布制御部114、第1乾燥制御部116、印刷制御部118、第2乾燥制御部120、定着・読取制御部122、回収制御部124、操作部130、表示部132等を備えている。
システムコントローラ100は、所定の制御プログラムを実行することにより、インクジェット印刷機1の各部を制御する。また、システムコントローラ100は、所定の制御プログラムを実行することにより、印刷の実行に必要な各種演算処理を実行する。このシステムコントローラ100は、CPU、ROM、RAMを備え、ROMに制御プログラム、及び、印刷の実行に必要な各種データが記憶される。
通信部102は、所要の通信インターフェースを備え、その通信インターフェースと接続されたホストコンピュータ200との間でデータの送受信を行う。
画像メモリ104は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ100を通じてデータの読み書きが行われる。通信部102を介してホストコンピュータ200から取り込まれた画像データは、この画像メモリ104に格納される。
搬送制御部110は、システムコントローラ100からの指令に応じてインフィード部20及びアウトフィード部80の動作を制御し、ウェブ2の搬送を制御する。すなわち、インフィード部20に備えられたインフィードローラ対21及びアウトフィード部80に備えられたアウトフィードローラ対81の動作を制御して、ウェブ2を給紙部10から回収部90に向けて走行させるとともに、インフィード部20に備えられたダンサーローラ22及びアウトフィード部80に備えられたダンサーローラ82の動作を制御して、ウェブ2の張力変動を制御する。
給紙制御部112は、システムコントローラ100からの指令に応じて給紙部10の動作を制御し、給紙ロールからの給紙を行う。すなわち、給紙部10に備えられたリールスタンド14の動作を制御して、給紙ロールの切り替えを行うとともに、給紙部10に備えられた紙継ぎ装置(図示せず)の動作を制御して、ロール交換時における紙継ぎを行う。
処理液塗布制御部114は、システムコントローラ100からの指令に応じて処理液塗布部30の動作を制御し、ウェブ2へ処理液を塗布する。すなわち、処理液塗布部30に備えられた処理液塗布装置31の動作を制御して、ウェブ2へ処理液を塗布する。
第1乾燥制御部116は、システムコントローラ100からの指令に応じて第1乾燥部40の動作を制御し、ウェブ2に塗布された処理液を乾燥させる。すなわち、第1乾燥部40に備えられたドライヤの動作を制御して、ウェブ2に当てる加熱風の温度・風量を制御し、ウェブ2に塗布された処理液を乾燥させる。
印刷制御部118は、システムコントローラ100からの指令に応じて印刷部50の動作を制御し、ウェブ2に画像を記録する。すなわち、印刷部50に備えられた各インクジェットヘッド51M、51K、51C、51Yの駆動を制御して、各インクジェットヘッド51M、51K、51C、51Yからのインク滴の吐出を制御し、ウェブ2に所望の画像を記録する。
第2乾燥制御部120は、システムコントローラ100からの指令に応じて第2乾燥部60の動作を制御し、ウェブ2に打滴されたインクを乾燥させる。すなわち、第2乾燥部60に備えられたドライヤの動作を制御して、ウェブ2に当てる加熱風の温度・風量を制御し、ウェブ2に吐出されたインクを乾燥させる。
定着・読取制御部122は、システムコントローラ100からの指令に応じて定着・読取部70の動作を制御し、ウェブ2に記録された画像を定着させるとともに、ウェブ2に記録された画像の読み取りを行う。すなわち、定着・読取部70に備えられた紫外線照射光源71の動作を制御して、ウェブ2への紫外線の照射を制御し、ウェブ上の処理液とインクとの凝集体を固化させる。また、定着・読取部70に備えられた冷却装置72の動作を制御して、ウェブ2の冷却を制御し、ウェブ2に記録された画像を定着させる。さらに、定着・読取部70に備えられたスキャナ74の動作を制御して、ウェブ2に記録された画像の読み取りを行う。
回収制御部124は、システムコントローラ100からの指令に応じて回収部90の動作を制御し、ウェブ2の回収を行う。すなわち、回収部90に備えられたられたリールスタンド94の動作を制御して、ウェブ2を巻き取る巻芯の切り替えを行うとともに、回収部90に備えられた芯接合装置(図示せず)の動作を制御して、巻芯交換時における芯接合を行う。
操作部130は、所要の操作手段(たとえば、操作ボタンやキーボード、タッチパネル等)を備え、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ100に出力する。システムコントローラ100は、この操作部130から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
表示部132は、所要の表示装置(たとえば、LCDパネル等)を備え、システムコントローラ100からの指令に従って所要の情報を表示装置に出力する。
ウェブ2に印刷する画像データは、ホストコンピュータ200から通信部102を介してインクジェット印刷機1に取り込まれる。インクジェット印刷機1に取り込まれた画像データは画像メモリ104に格納される。システムコントローラ100は、この画像メモリ104に格納された画像データに所要の信号処理を施してドット配置データを生成する。そして、生成されたドット配置データに従って各インクジェットヘッド51(51M、51K、51C、51Y)の駆動制御し、その画像データが表す画像をウェブ2に印刷する。
ドット配置データは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット印刷機1で使用するインク色ごとの色データ(本例では、MKCYの色データ)に変換する処理である。ハーフトーン処理は、色変換処理により生成されたインク色ごとの色データに誤差拡散等の処理を行って、インク色ごとのドット配置データ(本例では、MKCYのドット配置データ)を生成する処理である。
システムコントローラ100は、画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行ってMKCYの各色のドット配置データを生成する。そして、生成した各色のドット配置データに従って各インクジェットヘッド51(51M、51K、51C、51K)を駆動し、画像データが表す画像をウェブ2に印刷する。
本例では、大サイズ、中サイズ、小サイズのドットからなるドット配置データを生成し、画像データが表す画像を印刷する。したがって、インクジェットヘッド51は、大・中・小の各サイズのドットを形成可能に構成される。すなわち、ウェブ2に打滴されたときに大サイズのドットを形成するインク滴(大滴)と、中サイズのドットを形成するインク滴(中滴)と、小サイズのドットを形成するインク滴(小滴)とを吐出可能に形成される。
ピエゾインクジェット方式のインクジェットヘッドの場合、各ノズルに対応して設けられた圧電素子(アクチュエータ)に所定の駆動信号を印加することにより、各ノズルからインク滴を吐出する。この駆動信号は、所定の記録周期で印加され、その波形を変えることにより、メディア上に打滴されるインク滴のサイズ(ドット径)を変えることができる。
図3は、1記録周期内で組み込む吐出パルスの波高値を変えることにより、インク滴のサイズを変える場合の駆動信号の波形の一例を示す図である。
同図(a)は小サイズのインク滴を打滴する場合の駆動波形、同図(b)は中サイズのインク滴を打滴する場合の駆動波形、同図(c)は大サイズのインク滴を打滴する場合の駆動波形を示している。同図に示すように、吐出パルスの波高値(電圧)を変えることにより、打滴するインク滴のサイズを変えることができる。そして、このように、サイズの異なるインク滴を打滴可能にすることにより、階調記録を行うことができる。
図4は、1記録周期内に組み込む吐出パルスの数を変えることにより、インク滴のサイズを変える場合の駆動信号の波形の一例を示す図である。
同図(a)は小サイズを吐出する場合の駆動波形、同図(b)は中サイズを吐出する場合の駆動波形、同図(c)は大サイズのインク滴を吐出する場合の駆動波形を示している。
同図に示すように、吐出パルスは、一定間隔で組み込まれる。そして、1つのみ組み込むことにより小サイズのインク滴、2つ組み込むことにより中サイズのインク滴、4つ組み込むことにより大サイズのインク滴が吐出される。
なお、図4に示すように、波高値が漸次増大するように吐出パルスを組み込むと、後に吐出したインク滴が、先に吐出したインク滴に追い付き、1滴の状態で記録媒体に着弾させることができる(いわゆる空中合体)。
図4に示す例では、各吐出パルスの波高値を変えているが、各吐出パルスの波高値を一定とし、組み込む吐出パルスの数を変えて、打滴するインク滴のサイズを変えることもできる。この場合、同一個所に順次インク滴が着弾し、所定サイズのドットが形成される。
なお、記録周期は、ウェブ2の走行に同期して切り替わる。すなわち、ウェブ2が一定の速度で走行している間は記録周期も一定となるが、ウェブ2の加減速中は、ウェブ2の速度変化に同期して、記録周期が切り替わる。これにより、ウェブ2の加減速中も印刷することができる。
≪インクジェット印刷機の印刷動作の概略≫
ウェブ2は、インフィード部20とアウトフィード部80とによって送りが与えられて、給紙部10と回収部90の間を走行する。
給紙部10の給紙ロールから引き出されたウェブ2は、まず、処理液塗布部30を通過する。そして、その通過時に印刷面に処理液が塗布される。
処理液塗布部30を通過したウェブ2は、次に、第1乾燥部40を通過する。そして、その通過時に印刷面に加熱風が吹き当てられて、印刷面に塗布された処理液が乾燥される。
第1乾燥部40を通過したウェブ2は、次に、印刷部50を通過する。そして、その通過時に各インクジェットヘッド51M、51K、51C、51Yから吐出されたインク滴が印刷面に打滴されて、印刷面に画像が記録される。
印刷部50を通過したウェブ2は、次に、第2乾燥部60を通過する。そして、その通過時に印刷面に加熱風が吹き当てられて、印刷面に打滴されたインクが乾燥される。
第2乾燥部60を通過したウェブ2は、次に、定着・読取部70を通過する。そして、その通過時に印刷面に紫外線が照射されて、インクと処理液との凝集体が固化される。また、固化後、冷却されて、印刷面に記録された画像がウェブ2に定着される。さらに、定着後、印刷面に記録された画像がスキャナ74によって読み取られる。
定着・読取部70を通過したウェブ2は、その後、回収部90に向けて送られ、回収部90で巻芯にリール状に巻き取られる。
このように、本例のインクジェット印刷機1は、給紙部10から連続的に繰り出されるウェブ2にインクジェット方式で画像を印刷し、印刷を終えたウェブを回収部90で順次巻き取ることにより、ウェブ2に連続的に画像を印刷する。
なお、ウェブ2を給紙する給紙ロールは、ウェブ2が無くなる直前に自動的に新たな給紙ロールに切り替えられる。これにより、連続的にウェブ2を給紙することができる。印刷されたウェブ2を巻き取る巻芯についても同様であり、所定量のウェブ2が巻き取られると、自動的に新たな巻芯に切り替えられる。これにより、連続的にウェブ2を回収することができる。
≪印刷結果に基づく印刷条件の補正≫
上記のように、本例のインクジェット印刷機1では、定着・読取部70において、印刷部50で記録された画像が読み取られる。この定着・読取部70で読み取られた画像を解析し、印刷部50の印刷状態を検査し、必要に応じて印刷条件の補正やメンテナンスが行われる。すなわち、印刷される画像の状態は、使用する用紙(ウェブ)、インク状態、用紙環境温湿度、着弾誤差などにより変動するので、印刷結果をリアルタイムに解析し、必要に応じて印刷条件を補正等することにより、高品質な印刷が継続して行うことができるようにする。
画像解析は、システムコントローラ100で行われ、システムコントローラ100は、定着・読取部70のスキャナ74で読み取られた印刷画像の画像データを取り込み、所定の画像処理プログラムを実行して、画像解析の処理を実施し、印刷部50の印刷状態を検査する。たとえば、画像濃度、色、ムラ、ドット径、線幅、描画ドットの有無、サテライトの有無、異常描画、吐出異常(不吐出、吐出曲がり(着弾位置ずれ)、インク滴の体積不良、スプラッシュ等)等の検査を行う。そして、その検査結果に応じて、印刷条件の補正やメンテナンスを実行する。すなわち、検査結果をフィードバックして、印刷条件の補正等が行われる。
たとえば、印刷された画像に濃度変化が生じており、正確な濃度、色が再現されていない場合は、印刷する画像のドット配置データを補正する(たとえば、ドット配置又は密度を変更する。)。あるいは、吐出させるインク滴のサイズを補正する(たとえば、駆動波形(波高値、及び/又は、パルス幅)を変更する。)。その他の異常についても、公知の手法を用いて、その異常を是正するように印刷条件を補正する。
このように、印刷結果に基づいて、逐次、印刷条件を補正することにより、高品質な画像を安定して印刷することができる。
〈補正の一例〉
スキャナ74で読み取られた読取画像を解析して、接触するように描画された複数滴のドットの位置を検出する。そして、その各ドットが正常に描画されたとき描画される位置(標準状態)に対するズレ量を検出し、検出されたズレ量に基づいて、印刷条件を補正する。
接触するように描画される複数滴のドットは、各ドットの描画時間間隔の変動(記録時用紙速度の変動による吐出間隔の変動)により、異なったドットズレ(着弾干渉)を生じる。また、このドットズレは、使用する用紙(ウェブ)、インク状態、用紙環境温湿度、着弾誤差によって変動する。
ここで、ドットズレは、濃度変化として記録画像に現れるので、濃度変化を是正するように、ドット配置データ又は吐出させるインク滴のサイズを補正する。
なお、上記の例では、接触するように描画される複数滴のドットの位置を検出し、標準状態からのズレ量を検出して、印刷条件を補正しているが、描画後の複数滴が繋がったドットサイズを検出し、正常に描画されたときのドットサイズからのズレ量を検出して、印刷条件を補正するようにしてもよい。
すなわち、データ上でウェブ2の搬送方向に隣接したドットは、実際にウェブ2に打滴されると、着弾干渉により合一し、1つのドット(実ドット)を形成するが、そのサイズは、各ドットの描画時間間隔、使用する用紙(ウェブ)、インク状態、用紙環境温湿度、着弾誤差によって変動する。そして、このドットサイズの変動は、濃度変化として記録画像に現れるので、濃度変化を是正するように、ドット配置データ又は吐出させるインク滴のサイズを補正する。
また、読取画像からドット位置のズレ量を検出する場合において、標準状態よりも大きいズレが連続して検出された場合、そのドットを吐出するノズルは着弾誤差が大きいと推定される。したがって、このような場合は、ドット配置データを補正する際、次のように補正する。すなわち、その着弾誤差が大きいと推定されるノズルが描画するドットに隣接して他のノズルが描画するドットがある場合には、そのノズルは使用しないようにする。一方、その着弾誤差が大きいと推定されるノズルが描画するドットに隣接して他のノズルが描画するドットがない場合は、そのままそのノズルを使用してドットを描画する。これにより、着弾干渉を回避でき、高品質な画像を記録することができる。
なお、着弾誤差が大きいと推定されるノズルが検出された場合には、ドット配置データを生成する段階で上記のような処理を行うようにしてもよい。
また、このような着弾干渉によるドットの位置ズレ、ドットサイズの変動は、印刷時のウェブ2の搬送速度(記録時用紙速度)によって変化するので、補正は記録時用紙速度を考慮して行うことがより好ましい。これにより、記録時用紙速度が変動しても、適切に記録条件を補正することができる。
〈その他〉
上記のように、本例のインクジェット印刷機1では、1つの給紙ロールを使い終えても、印刷を止めることなく、次の給紙ロールに切り替えて、印刷を継続することができる。この場合、切り替えられるウェブ2(給紙ロール)は、切り替えられる前のものと同じとは限らず、種類、紙厚等が異なるウェブ2に切り替えられる場合もある。
一方、印刷部50で行う印刷は、ウェブ2(用紙)の種類、紙厚等を考慮して、印刷条件が設定される。
したがって、上記のように先に印刷された画像の検査結果をフィードバックして印刷条件を補正すると、ウェブ2の種類が切り替わった場合に、切り替え直後の数枚の画像で適正な補正ができず、かえって画像品質を低下させるおそれがある。すなわち、給紙ロールが切り替えられた場合、切り替え直後の何枚かの画像は、切り替え前のウェブ2に印刷された画像の検査結果に基づいて補正される。上記のように、印刷条件はウェブ2の種類等を考慮して設定されるので、切り替え前のウェブ2に印刷された画像の検査結果を用いて切り替え後のウェブ2に印刷される画像の印刷条件を補正すると、適正に補正できず、画像品質を低下させる事態が生じうる。
そこで、上記のように印刷結果に基づいて印刷条件を補正する場合において、給紙ロールが切り替えられた場合は、切り替え前のウェブに印刷された画像に基づく補正が、切り替え後のウェブに印刷する画像に反映されないようにする。
具体的には、切り替え前のウェブ2に最後の画像が記録されたら、印刷結果の検査、及び、その検査結果に基づく印刷条件の補正は、一旦停止する。そして、切り替え後のウェブ2に最初の画像が記録され、その最初の画像がスキャナ74で読み取られたら、その読み取った画像に基づく検査・補正を再開する。
このように、印刷結果の検査、及び、その検査結果に基づく印刷条件の補正は、同じウェブに印刷している間だけ行うようにする。
これにより、異なる条件で導き出した補正量で誤って印刷条件が補正されて、画像品質が、かえって低下するのを防止することができる。
ただし、この場合においても、吐出異常の検出については継続して行い、その結果をフィードバックして、印刷条件の補正等を行う。これにより、高品質の画像を安定して印刷することができる。
なお、フィードバックによる補正なしで印刷する場合は、切り替えられた給紙ロール(用紙)の標準の印刷条件で印刷が行われる。
また、ウェブ(用紙)2が切り替わったことは、ユーザが手動で入力するようにしてもよいし、また、印刷部50に用紙の種別を検出するセンサを設け、このセンサで用紙の切り替わり、及び、その種別を自動的に判定するようにしてもよい。
また、読取画像を解析する際、読み取り時のウェブ2の搬送速度(読取時用紙速度)と、その読取画像が印刷された時のウェブ2の搬送速度(記録時用紙速度)とを考慮して、読取画像を解析することにより、より適切に印刷状態を検査することができる。たとえば、読取時用紙速度が変わると、読取画像が読取方向に伸縮するので、必要に応じて読取画像を補正する。たとえば、ドット径や線幅などを検査する場合は、読取時用紙速度に応じて読取画像の伸縮を補正する。
≪印刷結果の取得方法≫
上記のように、本例のインクジェット印刷機1では、定着・読取部70において、印刷結果(実際にウェブ2に印刷された画像)をスキャナ74で読み取り、その読み取られた画像データ(読取画像)を解析し、印刷部50において印刷状態を検査する。そして、その検査結果に基づいて、必要な補正等が行われる。
ところで、本例のインクジェット印刷機1のように、ウェブ2に印刷する印刷機の場合、ウェブ2の加減速中にも印刷を行わないと、大量の損紙を発生することとなる。このため、この種の印刷機では、ウェブ2の加減速中にも印刷が行われる。
インクジェット方式で印刷する印刷機において、ウェブ2の加速中にも印刷するためには、ウェブ2の走行に同期してインクジェットヘッド51からインク滴を吐出させる。
一方、このようにウェブ2の加減速中にも印刷を行った場合、印刷結果の読み取りもウェブ2の加減速中に行う必要がある。
上記のように、印刷結果の読み取りはスキャナ74で行われる。スキャナ74は、ウェブ2の走行方向と直交して配置されたラインCCDと、そのラインCCDに結像させるための光学系と、光源とを備え、走行するウェブ2に記録された画像を読み取る。光源は、たとえば、白色蛍光ランプで構成され、走行するウェブ2に白色光を照射する。
そして、このスキャナ74は、定常の搬送速度(たとえば、300(m/min))で搬送されるウェブ2を想定して、その読取条件(読取周期(読取間隔)、露出条件(光源の光量や、1画素の読取時間(いわゆるシャッター速度(露光時間))、CCDの光学的開口の大きさなど))が設定される。
したがって、読み取り時のウェブ2の搬送速度(読取時用紙速度)が変化すると、読取条件が変化し、読取画像のボケ状態が変化する。すなわち、図5に示すように、読取時用紙速度が速くなるほど読取画像のボケ状態が大きくなる。
そこで、本例のインクジェット印刷機1では、読取時用紙速度に応じてスキャナ74で読み取った読取画像の画像データを補正し、読取時用紙速度の変動による読取画像のボケ状態を是正する。具体的には、読取時用紙速度に応じて設定される補正関数を使用し、読取画像に所要の演算処理を施すことにより、読取画像を補正する。
補正関数は、たとえば、ウェブ2の搬送方向に対して読取画像を補正する1×nのフィルタ行列で構成され、nをウェブ2の読取時用紙速度に応じて決定する。すなわち、1画素の読取時間(露光時間)の間にウェブ2が移動する量に対応する長さだけの読み取り画素数となるnを選択する(ただし、nは3以上の奇数)。
また、フィルタパラメータは、ボケが生じるときとは逆の空間周波数特性を実現するような値であって、画像の総エネルギが演算処理の前後でほぼ同じになるように決定される。
なお、演算処理の前後で画像の総エネルギがほぼ同じになるとは、演算処理の前後で、画像全体で画像の各画素のデータの平均値がほぼ同じであることを意味する。つまり、画像の平均濃度がほぼ同じである事になる。そのためには、前記フィルタ行列のフィルタパラメータ、つまり、行列の各要素の合計値がほぼ1になればよい。
読取画像の補正処理は、システムコントローラ100で行われる。また、設定されたフィルタ行列の情報は、ROMに格納される。システムコントローラ100は、読取時用紙速度検出機構から読取画像が読み取られた時の読取時用紙速度の情報を取得し、取得した読取時用紙速度に対応したフィルタ行列の情報をROMから読み出す。そして、そのフィルタ行列を用いて読取画像に所要のフィルタ処理を施し、読取画像を補正する。すなわち、読取時用紙速度に応じてnの値が自動的に定まるので、対応するフィルタ行列の情報をROMから読み出し、読み出したフィルタ行列を用いて読取画像にフィルタ処理を行う。
図6は、読取画像に施す補正処理の概念図である。元の読取画像の画像データ(A)に対して読取時用紙速度に対応したフィルタ行列(X)を用いてフィルタ処理を施し、補正画像(B)を取得する。同図に示す例では、n=3のときを示している。この場合、フィルタ行列(X)は、1列×3行で構成される。このフィルタ行列(X)を用いて、ウェブ2の搬送方向に読取画像を補正する。
無論、nは3に限定されるわけではなく、5や7、さらにもっと大きなフィルタ行列を用いる場合もある。
これにより、読取時用紙速度の変動に基づく読取画像の変動を是正することができる。そして、この補正された読取画像に基づいて画像解析を行い、印刷部50による印刷状態を検査することにより、正確に異常検出等を行うことができ、より適切に印刷条件の補正等を行うことができる。これにより、高品質な画像を安定して印刷することができる。
なお、ボケ状態は、スキャナ74の光学系の特性によっても変わるので、光学系の特性も加味してフィルタパラメータ、及び、nを決定することが好ましい。具体的には、光学系のボケを加味して決定することが好ましい。これにより、読取画像をより適切に補正することができ、より良好な読取画像を得ることができる。
また、本例では、補正関数をウェブ2の搬送方向に対して読取画像を補正する1×nのフィルタ行列で構成しているが、フィルタ行列の構成は、これに限定されるものではない。たとえば、m×nのフィルタ行列で構成し(mは定数であり、3以上の奇数)、搬送方向と直交する方向の画素の情報を考慮して、フィルタ処理を行うようにしてもよい。
さらに、読み取りはラインCCDに限らず、CMOS画像センサーや他の原理の撮像素子でもよい。また、センサは、ライン型に限らず、2次元型のセンサでもよい。
≪ウェブの加減速中も印刷するための印刷動作≫
上記のように、本例のインクジェット印刷機1では、ウェブ2の加減速中も印刷が行われる。
ウェブ2の加減速中も印刷するためには、ウェブ2の走行に同期してインク滴を吐出させる。
しかし、単にインク滴の吐出をウェブ2の走行に同期させただけでは、高品質な画像を記録することはできない。すなわち、インクジェット方式の場合、インク滴の吐出間隔が変動すると、ウェブ2に着弾したときのインク滴間の干渉状態が変化するため、画像濃度が変化するという問題がある。また、本来複数のドットになるべきインク滴が合一してしまい、大きなドットになって、粒状性が劣化するという問題もある。
そこで、本例のインクジェット印刷機1では、次のようにして、加減速中に印刷しても、記録される画像に濃度変化が生じないようにする。
〈第1の方法〉
第1の方法は、ウェブ2の記録時用紙速度に応じて記録する画像のドット配置データを変える。すなわち、ウェブ2の記録時用紙速度が変動しても、一定濃度の画像が記録されるように、記録する画像のドットの配置を変更する。
ドット配置データの修正は、事前に求めた修正情報を利用して行う。たとえば、同じドット配置データの画像を速度(記録時用紙速度)を変えて記録し、速度ごとに濃度を一定にするための条件を求め、これを修正情報として利用する。濃度を一定にするための条件は、ドットの出現率であり、濃度に応じたにドットの出現率を記録時用紙速度に応じて変える。本例のインクジェット印刷機1では、大・中・小の3サイズのドットで画像を記録するので、濃度に応じた各サイズのドットの出現率を記録時用紙速度に応じて変える。
濃度に応じたドットの出現率の情報は、階調カーブとして規定し、この階調カーブに基づいて、ドット配置データを修正する。
図7は階調カーブの一例を示す図である。同図(a)は、定常の記録時用紙速度のときの階調カーブの一例を示し、同図(b)は、定常の記録時用紙速度よりも遅いときの階調カーブの一例を示している。
このような階調カーブの情報を速度ごとに用意し、印刷部50で測定される記録時用紙速度に応じて、ドット配置データを修正する。
なお、画像データ(RGB)から生成されるドット配置データは、定常の記録時用紙速度のときのドット配置データであり、ウェブ2の速度が変化した場合は、この定常の記録時用紙速度のときのドット配置データに対して必要な修正処理が施される。この処理は、所定の制御プログラムに従ってシステムコントローラ100が実行する。すなわち、システムコントローラ100は、ROMに格納された階調カーブの情報を利用して、印刷部50の記録時用紙速度検出機構から記録時用紙速度の情報を取得し、定常の記録時用紙速度のときのドット配置データを修正する。そして、修正したドット配置データに基づいて、印刷部50に画像を印刷させる。これにより、ウェブ2の加減速時にもウェブ2に印刷することができるとともに、濃度変動のない安定した高品質な画像を印刷することができる。
<階調カーブについて>
階調カーブの情報は、記録時用紙速度が変動する範囲内で詳細に規定することにより、より濃度が安定した高品質な画像を印刷することができる。たとえば、定常の記録時用紙速度を300(m/min)とし、0〜350(m/min)の範囲で記録時用紙速度が変動する場合において、1(m/min)の間隔で各速度の階調カーブの情報を用意する。
その一方で階調カーブの情報数を増やすと、記憶に必要なメモリ(本例ではROM)の容量がアップする。
そこで、階調カーブの情報は、ある程度間引いて用意し、検出された速度に対応する階調カーブの情報が無い場合は、その近傍の速度の階調カーブの情報を利用して、ドット配置データを修正するようにしてもよい。たとえば、10(m/min)の間隔で階調カーブの情報を用意し、その間で速度が検出された場合は、その速度の前後近い方の速度に対応した階調カーブの情報を利用する(たとえば、記録時用紙速度が、52(m/min)の場合、50(m/min)のときの階調カーブの情報を利用する。)。あるいは、その速度の前後速い方又は遅い方の速度に対応した階調カーブの情報を利用する(たとえば、記録時用紙速度が、52(m/min)の場合、50(m/min)又は60(m/min)のときの階調カーブの情報を利用する)。
また、検出された記録時用紙速度の前後の速度における階調カーブの情報を参酌して、検出された記録時用紙速度に対応する階調カーブの情報を推定し、推定した階調カーブの情報を利用してドット配置データを修正するようにしてもよい。たとえば、10(m/min)の間隔で階調カーブの情報を用意した場合において、52(m/min)の記録時用紙速度が検出された場合、50(m/min)のときの階調カーブの情報と60(m/min)のときの階調カーブの情報とを利用して、52(m/min)のときの階調カーブの情報を推定する。
これにより、階調カーブの情報を記憶するために必要なメモリの容量を削減しつつ、高品質な画像を印刷することができる。
また、階調カーブの設定は、記録時用紙速度が速くなるほどサイズの小さいドットの出現率が上がるように設定し、記録時用紙速度が遅くなるほどサイズの大きいドットの出現率が上がるように設定することが好ましい。すなわち、記録時用紙速度が速くなるほど着弾干渉が生じなりやすくなるので、記録時用紙速度が速くなるほど小サイズのドットの割合を増やして、着弾干渉の可能性を低減させる。一方、記録時用紙速度が遅いときは、着弾干渉が生じにくいので、サイズの大きいドットの出現率を上げて、インクジェットヘッドに掛かる負荷を低減させる。これにより、より高品質な画像を印刷することができる。
また、濃度の変化は、使用するインクや使用する用紙の種類等の印刷条件によっても変わるので、印刷条件ごとに階調カーブを用意しておくことが好ましい。
なお、階調カーブは、所定の画像(たとえば、所定パターンのテスト画像)を記録時用紙速度を変えて印刷し、印刷された画像を解析して設定されるが、この解析のための画像データ、すなわち、実際に印刷された画像を読み取った画像のデータは、定着・読取部70に設置されたスキャナ74から取得する。
この際、上記のように、スキャナ74で読み取った画像(読取画像)を、その読み取り時のウェブ2の搬送速度(読取時用紙速度)に応じて補正する。これにより、より正確に画像解析を行うことができ、より適切な階調カーブを設定することができる。
<ドット配置データの修正について>
ドット配置データは、すべての領域について一律に修正することもできるが、必要な領域についてのみ行うこともできる。これにより、効率的に修正することができる。
たとえば、所定の濃度以上の領域についてのみドット配置データを修正する。すなわち、濃度が薄い領域は、ドット間の隙間も多く、着弾干渉を生じるおそれが少ないので、修正は行わず、元の配置のまま記録する。一方、濃度が濃い領域は、ドット間の隙間が狭く、記録時用紙速度が変動すると、着弾干渉を生じるおそれがあるので、ドットの配置を修正する。
このように必要な領域のドット配置データのみ修正することにより、修正の処理速度を向上させることができ、効率よくドット配置データを修正することができる。
また、このように、記録時用紙速度が変化したときの濃度変化は、ウェブ2に打滴されたときのドット間の間隔によるところが大きいので、ドットが隣接して打滴される領域のドット配置データのみを修正するようにしてもよい。たとえば、隣接して打滴されるドットのうち、周囲の上下左右4ドット又は8ドット([上、下、右、左]、[左上、右上、右下、左下]、又は、[右上、上、左上、左、左下、下、右下、右])が打滴される領域のドット配置データを修正するようにする。これにより、必要な領域のみを修正できるので、修正の処理速度を向上させることができる。
また、ドット配置データは、記録時用紙速度の変動に伴い随時行うことができるが、画像単位で行うこともできる。この場合、たとえば、描画部を通過するときの平均速度に応じてドット配置データを修正するようにしてもよいし、また、描画部に入るときの速度に応じてドット配置データを修正するようにしてもよい。これにより、随時ドット配置データを修正する必要がなくなり、効率よく画像を記録することができる。
また、1つの画像を記録するときの記録時用紙速度の変化量が所定値(第1の基準値)以下の場合についてのみ、平均の記録時用紙速度に応じてドット配置データを修正するようにしてもよい。すなわち、ウェブ2が、ゆっくりと加減速されるときのように、記録時用紙速度がゆっくりと変化するときは、濃度変化も少ないので、平均した記録時用紙速度でドット配置データを修正する。これにより、過剰に修正されるのを防止することができ、効率よく画像を記録することができる。
また、ウェブ2が、さらにゆっくりと走行するような場合には、複数の画像間で平均した記録時用紙速度でドット配置データを修正するようにしてもよい。すなわち、1つの画像を記録するときの記録時用紙速度の変化量が、上記第1の基準値よりも更に小さい第2の基準値以下の場合(=複数の画像を印刷する間の記録時用紙速度の変化量が所定値以下の場合)は、複数の画像間で平均した記録時用紙速度に応じて各画像のドット配置データを修正する。これにより、さらに効率よく画像を記録することができる。
なお、第1の基準値、第2の基準値は、印刷条件(使用するインクや用紙等)に応じて変わるので、印刷条件に応じて設定することが好ましい。
〈第2の方法〉
第2の方法は、ドット配置データは変えず、ウェブ2の記録時用紙速度に応じてノズルから吐出させるインクの吐出量を変える。すなわち、ウェブ2の記録時用紙速度が変動しても、濃度変化が生じないように、記録時用紙速度に応じて、ノズルから吐出させるインク滴の量を調整する。
吐出用の修正は、事前に求めた修正情報を利用して行う。たとえば、同じドット配置データの画像を速度(記録時用紙速度)を変えて記録し、速度ごとに濃度を一定にするための吐出量の条件を求め、これを修正情報として利用する。
本例のインクジェット印刷機1では、大・中・小の3サイズのドットで画像を記録するので、サイズごとに吐出量の修正条件を求める。
吐出量の調整は、圧電素子に印加する駆動信号の波形を変えることにより行う。たとえば、吐出パルスの波高値、又は、吐出パルスのパルス幅のいずれか一方、又は、その双方を変えることにより、吐出量を調整する。
図8は、波高値を変えて吐出量を変える場合の駆動信号の一例を示す図である。同図(a−1)〜(c−1)は、定常の記録時用紙速度のときの駆動信号の一例を示しており、同図(a−2)〜(c−2)は、定常の記録時用紙速度よりも遅いときの駆動信号の一例を示している。
同図に示すように、記録時速度が遅いときは着弾干渉の影響を受けにくいので、各サイズともに吐出量を少なくなるように、波高値を低くする(印加電圧を低くする。)。
図9は、パルス幅を変えて吐出量を変える場合の駆動信号の一例を示す図である。同図(a−1)〜(c−1)は、定常の記録時用紙速度のときの駆動信号の一例を示しており、同図(a−2)〜(c−2)は、定常の記録時用紙速度よりも遅いときの駆動信号の一例を示している。
同図に示すように、記録時速度が遅いときは着弾干渉の影響を受けにくいので、各サイズともに吐出量を少なくなるように、パルス幅を狭くする。
なお、図8、図9に示す例では、波高値又はパルス幅を変えて吐出量を調整しているが、波高値とパルス幅の双方を変えて吐出量を調整してもよい。
1記録周期内に組み込む吐出パルスの数を変えて、インク滴のサイズを変える場合(図4参照)についても同様に、吐出パルスの波高値、又は、吐出パルスのパルス幅のいずれか一方、又は、その双方を変えることにより、吐出量を調整することができる。
このように、圧電素子に印加する駆動信号の波形を変えることにより、吐出量を調整する。
修正情報は、上記のように、たとえば、同じドット配置データの画像を記録時用紙速度を変えて記録し、得られた画像に基づいて取得する。すなわち、記録時用紙速度が変わると、どのように濃度(階調)が変位するかを測定し、これを是正するための条件を修正情報として取得する。
得られた修正情報は、たとえば、ROMに格納される。システムコントローラ100は、ROMに格納された修正情報を読み出して、記録時用紙速度に対応した吐出量を求め、印刷制御部118にインクジェットヘッド51を駆動させる。
これにより、ウェブ2の加減速時にもウェブ2に印刷することができるとともに、濃度変動のない安定した高品質な画像を印刷することができる。
<吐出量の修正情報について>
吐出量の修正情報は、記録時用紙速度が変動する範囲内で詳細に規定することにより、より濃度が安定した高品質な画像を印刷することができる。たとえば、定常の記録時用紙速度を300(m/min)とし、0〜350(m/min)の範囲で記録時用紙速度が変動する場合において、1(m/min)の間隔で吐出量の修正情報を用意する。
その一方で吐出量の修正情報の数を増やすと、記憶に必要なメモリ(本例ではROM)の容量がアップする。
そこで、吐出量の修正情報は、ある程度間引いて用意し、検出された速度に対応する吐出量の情報が無い場合は、その近傍の速度の吐出量の情報を利用するようにしてもよい。たとえば、10(m/min)の間隔で吐出量の修正情報を用意し、その間で速度が検出された場合は、その速度の前後近い方の速度に対応した修正量の情報を利用する(たとえば、記録時用紙速度が、52(m/min)の場合、50(m/min)のときの修正量の情報を利用する。)。あるいは、その速度の前後速い方又は遅い方の速度に対応した修正量の情報を利用する(たとえば、記録時用紙速度が、52(m/min)の場合、50(m/min)又は60(m/min)のときの修正量の情報を利用する)。
また、検出された記録時用紙速度の前後の速度における修正量の情報を参酌して、検出された記録時用紙速度に対応する修正量を推定し、推定した修正量の情報を利用して吐出量を修正するようにしてもよい。たとえば、10(m/min)の間隔で修正量の情報を用意した場合において、52(m/min)の記録時用紙速度が検出された場合、50(m/min)のときの修正量の情報と60(m/min)のときの修正量の情報とを利用して、52(m/min)のときの修正量の情報を推定する。
これにより、修正量の情報を記憶するために必要なメモリの容量を削減しつつ、高品質な画像を印刷することができる。
なお、濃度の変化は、使用するインクや使用する用紙の種類等の印刷条件によっても変わるので、印刷条件ごとに修正量の情報を用意しておくことが好ましい。
また、階調カーブと同様に、吐出量の修正量は、所定の画像(たとえば、所定パターンのテスト画像)を記録時用紙速度を変えて印刷し、印刷された画像を解析して設定されるが、この解析のための画像データは、定着・読取部70に設置されたスキャナ74から取得する。
この際、上記のように、スキャナ74で読み取った読取画像を読取時用紙速度に応じて補正することにより、より正確に画像解析を行うことができ、より適切な階調カーブを設定することができる。
なお、吐出量の修正量は、記録時用紙速度ごとに求めた階調カーブの情報を利用して設定することもできる。
<吐出量の修正について>
吐出量(駆動波形)の修正は、すべての領域について一律に行うこともできるが、必要な領域についてのみ行うこともできる。これにより、効率的に修正することができる。
たとえば、所定の濃度以上の領域についてのみ吐出量を修正する。すなわち、濃度が薄い領域は、ドット間の隙間も多く、着弾干渉を生じるおそれが少ないので、修正は行わず、元の配置のまま記録する。一方、濃度が濃い領域は、ドット間の隙間が狭く、記録時用紙速度が変動すると、着弾干渉を生じるおそれがあるので、吐出量を修正する。
このように必要な領域の吐出量のみ修正することにより、修正の処理速度を向上させることができ、効率よく吐出量(駆動波形)を修正することができる。
また、このように、記録時用紙速度が変化したときの濃度変化は、ウェブ2に打滴されたときのドット間の間隔によるところが大きいので、ドットが隣接して打滴される領域の吐出量(駆動波形)のみを修正するようにしてもよい。たとえば、隣接して打滴されるドットのうち、周囲の上下左右4ドット又は8ドットが打滴される領域の吐出量を修正するようにする。これにより、必要な領域のみを修正できるので、修正の処理速度を向上させることができる。
また、吐出量の修正は、記録時用紙速度の変動に伴い随時行うことができるが、画像単位で行うこともできる。この場合、たとえば、ヘッド直下の描画部を通過するときの平均速度に応じて吐出量を修正するようにしてもよいし、また、描画部に入るときの速度に応じて吐出量を修正するようにしてもよい。これにより、随時吐出量を修正する必要がなくなり、効率よく画像を記録することができる。
また、1つの画像を記録するときの記録時用紙速度の変化量が所定値(第1の基準値)以下の場合についてのみ、平均の記録時用紙速度に応じて吐出量を修正するようにしてもよい。すなわち、ウェブ2が、ゆっくりと加減速されるときのように、記録時用紙速度がゆっくりと変化するときは、濃度変化も少ないので、平均した記録時用紙速度で吐出量を修正する。これにより、過剰に修正されるのを防止することができ、効率よく画像を記録することができる。
また、ウェブ2が、さらにゆっくりと走行するような場合には、複数の画像間で平均した記録時用紙速度で吐出量を修正するようにしてもよい。すなわち、1つの画像を記録するときの記録時用紙速度の変化量が、上記第1の基準値よりも更に小さい第2の基準値以下の場合(=複数の画像を印刷する間の記録時用紙速度の変化量が所定値以下の場合)は、複数の画像間で平均した記録時用紙速度に応じて各画像の吐出量を修正する。これにより、さらに効率よく画像を記録することができる。
なお、第1の基準値、第2の基準値は、印刷条件(使用するインクや用紙等)に応じて変わるので、印刷条件に応じて設定することが好ましい。
例として、第1の基準値は、1つの記録画像内での画像濃度および色のずれの最大値が、L*、a*、b*の色空間(JIS Z 8729に規定)で表したときに、△E=(△a*2+△b*2+△L*2)1/2≦2となる、もっとも遅い用紙速度変化とする。同様に、第2の基準値は、複数の記録画像内での画像濃度及び色のずれが、△E≦2となる、もっとも遅い用紙速度変化とする。
このようにすることで、画質の変化が認識されない範囲で、各画像の吐出量の修正を簡易化し、効率よく画像を記録することができる。
≪読取時用紙速度の測定方法≫
上記のように、読取時用紙速度に応じて読取画像の補正や読み取りの制御を行う場合、正確な読取時用紙速度の情報が必要になる。また、読み取った画像を解析する場合には、その画像が記録されたときの記録時用紙速度の情報を正確に知る必要がある。
読取時用紙速度は、上記のように、ウェブ2を搬送するローラの軸にロータリーエンコーダなどの回転量検出手段を設置し、その軸の回転量から求める方法や、レーザードップラー速度計で直接測定する方法などがある。
これらの方法は、画像を読み取るときの読取時用紙速度を直接測定することができるが、読み取った画像の記録時用紙速度を知ることはできない。すなわち、本例のインクジェット印刷機1では、印刷部50と定着・読取部70との間が長く、ダンサーローラ62も設置されているため、必ずしも読取時用紙速度が記録時用紙速度と同じとは限らず、異なる速度でウェブ2が搬送されている可能性がある。
そこで、以下に説明する方法によって、記録画像を読み取るときの読取時用紙速度と、その読み取った画像の記録時用紙速度を測定する。
図10に示すように、一般にウェブ2に印刷する場合、ウェブ2の幅方向両端の部分は非印刷領域とされ、この幅方向両端の部分(いわゆる、耳の部分)を除いた領域が印刷範囲に設定される。
ウェブ2が、インクジェットヘッド直下の描画部を通過する際、図11に示すように、片方の非印刷領域に所定の読取時用紙速度検出マークを一定の距離間隔で記録する(記録時用紙速度に同期して記録)とともに、所定の記録時用紙速度検出マークを一定の時間間隔で記録する。
読取時用紙速度検出マークと記録時用紙速度検出マークは、たとえば、図11に示すように、ウェブ2の搬送方向に直交する線分(=ウェブ2の長手方向い直交する線分)で構成され、M、K、C、Yのいずれかのインクジェットヘッドで記録される(たとえば、クロのインクジェットヘッド51Kで記録される。)。
定着・読取部70には、この読取時用紙速度検出マークと記録時用紙速度検出マークとを読み取る速度検出マーク読取装置(図示せず)がスキャナ74による読取部の近傍に設けられる。この速度検出マーク読取装置は、読取時速度検出マークの読み取りの時間間隔を測定し、その測定結果をシステムコントローラ100に出力する。また、記録時用紙速度検出マークの読み取りの距離間隔を測定し、その測定結果をシステムコントローラ100に出力する。
システムコントローラ100は、速度検出マーク読取装置で読み取られた読取時速度検出マークの読み取りの時間間隔と、記録時用紙速度検出マークの読み取りの距離間隔とから読取時用紙速度及びスキャナ74で読み取った画像の記録時用紙速度を算出する。
すなわち、読取時速度検出マークは、ウェブ2の搬送速度によらずに一定の距離間隔でウェブ2に順次記録されるので、その読み取りの時間間隔を測定することにより、読取時用紙速度を求めることができる。
一方、記録時用紙速度検出マークは、一定の時間間隔でウェブ2に記録されるので、その読み取りの距離間隔を測定することにより、スキャナ74で読み取る画像が記録されたときの記録時用紙速度を求めることができる。
これにより、正確に読取時用紙速度を測定することができるとともに、読み取った画像の記録時用紙速度を取得することができる。
なお、上記の例では、片方の非印刷領域に読取時用紙速度検出マークと記録時用紙速度検出マークを並列して記録する構成としているが、一方の非印刷領域に読取時用紙速度検出マークを記録し、他方の非印刷領域に読取時用紙速度検出マークを記録する構成とすることもできる。
また、上記の例では、印刷部50で画像を記録するインクジェットヘッド(上記の例ではクロインクを吐出するインクジェットヘッド51K)で読取時用紙速度検出マークと記録時用紙速度検出マークを記録する構成としているが、別途専用の記録手段(たとえば、画像を記録するインクジェットヘッドとは別のインクジェットヘッド等)を用いて記録する構成とすることもできる。この場合、読取時用紙速度検出マークと記録時用紙速度検出マークの双方を専用の記録手段で記録する構成とすることもできるし、また、いずれか一方のみを専用の記録手段で記録する構成とすることもできる。
また、読取時用紙速度検出マークについては、ウェブ2に一定の距離間隔で記録されるので、あらかじめウェブ2に記録しておいてもよい。すなわち、あらかじめ読取時用紙速度検出マークが記録されたウェブ2を用いて印刷を行うようにしてもよい。この場合、読取時用紙速度検出マークの読取手段を印刷部等に設け、その読み取りの時間間隔を測定することにより、印刷部等においても、ウェブ2の搬送速度を測定することができる。
ところで、記録時用紙速度検出マークについては、一定の時間間隔で記録されることから、ウェブ2の搬送速度が極端に低下すると、マーク同士が重なって記録される事態が生じうる。
そこで、ウェブ2の搬送速度が遅く、マーク同士が重なって記録される速度域では、記録時用紙速度検出マークは、間引いて記録し、速度算出時には、その間引き状態を検出して、記録時用紙速度を求めるようにする。
間引き状態の検出は、たとえば、間引いた本数を識別する情報を記録時用紙速度マークとともに記録し、これを速度検出マーク読取装置で読み取ることにより行う。
間引いた本数を識別する情報は、たとえば、図12に示すように、間引いた本数をドットをON/OFFしたパターンでコード化し、このパターンを次に記録する記録時用紙速度マークと共に記録する。同図に示す例では、間引いた本数を4ビットのパターンでコード化し、記録時用紙速度マークに並列して記録している。この場合、最大16本まで間引くことができる。このほか、間引き本数を公知のバーコードや二次元バーコードで表して、記録することもできる。
なお、上記の例では、記録時用紙速度検出マーク及び読取時用紙速度検出マークの形状を共にウェブ2の搬送方向に対して直交する線分としているが、記録時用紙速度検出マーク及び読取時用紙速度検出マークの形状は、これに限定されるものではない。この他、点、パターン画像、特定形状の図形等とすることもできる。
また、記録時用紙速度検出マーク及び読取時用紙速度検出マークには、通し番号を付し、その通し番号の情報を同時に記録することもできる。通し番号の情報は、たとえば、上記のように、ドットをON/OFFしたパターンでコード化し、記録時用紙速度検出マーク及び読取時用紙速度検出マークと共に記録する。あるいは、公知のバーコードや二次元バーコードで表して、記録時用紙速度検出マーク及び読取時用紙速度検出マークと共に記録する。
図13は、記録時用紙速度検出マークの通し番号をバーコードで表して記録し、読取時用紙速度検出マークの通し番号を二次元バーコードで表して記録した例を示している。
同図に示す例では、記録時用紙速度検出マークの通し番号を表すバーコードを記録時用紙速度検出マークに並列して記録するとともに、読取時用紙速度検出マークの通し番号を表す二次元バーコードを読取時用紙速度検出マークに並列して記録しているが、これらの通し番号の情報を記録する位置は、これに限定されるものではない。この他、記録時用紙速度検出マーク及び読取時用紙速度検出マークに近接した位置、たとえば、各マークの上部又は下部に記録することもできる。
また、同図に示す例では、記録時用紙速度検出マークの通し番号を表すバーコードを記録時用紙速度検出マークに並列して記録するとともに、読取時用紙速度検出マークの通し番号を表す二次元バーコードを読取時用紙速度検出マークに並列して記録しているが、これらの通し番号の情報は、記録時用紙速度検出マーク及び読取時用紙速度検出マークの一部として形成してもよい。また、記録時用紙速度検出マーク自体、又は、読取時用紙速度検出マーク自体を通し番号を示す情報で表してもよい。
図14に示す記録時用紙速度検出マークは、一部をバーコードとしたものであり、そのバーコードで通し番号を表す構成としている。また、同図に示す読取時用紙速度検出マークは、マーク自体をバーコードとし、そのバーコードで通し番号を表す構成としている。
このように、記録時用紙速度検出マーク及び読取時用紙速度検出マークに通し番号を示す情報を付加することにより、たとえば、間引いてマークを記録した場合などに、間引いた本数の情報を取得することができる。
≪記録時用紙速度の他の測定方法≫
インクジェット方式では、吐出間隔が変動すると、用紙に着弾するインク滴間の干渉状態が変化する。
インク滴の吐出は、ウェブ2の搬送に同期して行われるので、ウェブ2に打滴されたインク滴同士の干渉状態を観察することにより、記録時用紙速度を推定することができる。
すなわち、図15に示すように、データ上でウェブ2の搬送方向に隣接したドットは、実際にウェブ2に打滴されると、着弾干渉により合一し、1つのドット(実ドット)を形成するが、記録時用紙速度が遅い場合は、十分に間隔をおいてインク滴が着弾するため、実ドットはウェブ2の搬送方向に伸びた形状になる。一方、記録時用紙速度が速いと、吐出間隔が短くなるため、先に着弾したインク滴の上に次のインク滴が着弾し、実ドットは円に近い形状となる。
したがって、実際にウェブ上に形成された実ドットの形状を測定することにより、記録時用紙速度を推定することができる。
システムコントローラ100は、スキャナ74で読み取られた画像を解析し、ドット形状を測定して、その読取画像が記録されたときの記録時用紙速度を推定する。
ドット形状の測定は、たとえば、ウェブ2の搬送方向に沿った方向の実ドットの径aと、ウェブ2の搬送方向に直交する方向の実ドットの径bを測定し、その比(縦横比)を求めることにより行う。そして、この縦横比から記録時用紙速度を推定する。すなわち、実ドット径の縦横比に対応する記録時用紙速度の情報をあらかじめ取得しておき、この情報を参照して、記録時用紙速度を取得する。実ドット径の縦横比に対応する記録時用紙速度の情報は、たとえば、関数又はテーブルとしてROMに格納し、ROMから読み出して使用する。
なお、実ドット形状は、使用する用紙、インク状態、用紙環境温湿度、着弾誤差等によって変動するので、これらの情報を加味して、実ドットの形状から記録時用紙速度を推定することにより、より正確な速度を推定することができる。
≪その他の実施の形態≫
上記実施の形態では、帯状の連続紙(ウェブ)にインクジェット方式で印刷する印刷機に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限らず枚葉紙にインクジェット方式で印刷する印刷機にも同様に適用することができる。
また、印刷部50では、インクジェット方式以外の方式でウェブ2に画像を印刷することもできる。