JP2004324693A - 逆入力遮断クラッチ - Google Patents

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Abstract

【課題】入力側から一方向の回転トルクのみを出力側へ伝達する機能を具備した逆入力遮断クラッチを提供することにある。
【解決手段】ハウジング26に対して入力外輪21と出力内輪22を正逆回転自在に配置し、入力外輪21と出力内輪22間に正逆両回転方向に係合・離脱可能なローラ23を介装し、そのローラ23を保持する保持器24により入力外輪21に対する相対回転を通じてハウジング26に対する保持器24の回転に対して保持器24に摩擦抵抗を作用させて入力外輪21と保持器24の回転位相差を制御することによりローラ23の係合・離脱を切り替える逆入力遮断クラッチであって、入力外輪21からの正逆回転トルクのうち、一方向の回転トルクのみをローラ23の係合により出力内輪22に伝達する規制手段を設ける。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば電動自転車、自動二輪車やエンジンのスタータ等に利用されるもので、入力側から一方向の回転トルクのみを出力側へ伝達する一方、出力側から正逆両方向の回転トルクを遮断して入力側へ伝達しない機能を有する逆入力遮断クラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、電動自転車の駆動装置を図13に示す(例えば、特許文献1参照)。この駆動装置は、モータ駆動とペダル駆動の両方が行えるもので、モータ1に連設された減速機2の出力軸3と第一のワンウェイクラッチ4を第一のチェーン5を介して連結すると共に、ペダル6に連設されたクランク軸7と第二のワンウェイクラッチ8を第二のチェーン9を介して連結している。
【0003】
第一のワンウェイクラッチ4と第二のワンウェイクラッチ8が同軸的に設けられた主軸10には、サンギア、キャリア、プラネタリギア、リングギアからなる遊星歯車機構11が設けられ、その遊星歯車機構11のリングギア12に第三のチェーン13を介して自転車の後輪(図示せず)が連結されている。
【0004】
前記構成からなる駆動装置において、モータ1からの駆動は、減速機2→第一のチェーン5→第一のワンウェイクラッチ4→遊星歯車機構11のリングギヤ12→第三のチェーン13を介して後輪に伝達される。また、ペダル6からの駆動は、クランク軸7→第二のチェーン9→第二のワンウェイクラッチ8→遊星歯車機構11のリングギヤ12→第三のチェーン13を介して後輪に伝達される。
【0005】
この駆動装置では、モータ側に設置された第一のワンウェイクラッチ4とペダル側に設置された第二のワンウェイクラッチ8は、同一回転方向に対して動力を伝達するように主軸10に取り付けられている。そのため、自転車走行時の駆動源としては、モータ1あるいはペダル6のいずれか回転が速い方となる。なお、モータ1あるいはペダル6のいずれか回転が遅い方は、そのワンウェイクラッチ4,8が空転状態となるので動力が伝達されることはない。
【0006】
【特許文献1】
特開昭57−74285号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述した特許文献1に開示された駆動装置を備えた電動自転車を前方へ押しながら歩く場合、その電動自転車の後輪と駆動装置のモータ1および減速機2との間に配設された第一のワンウェイクラッチ4は空転状態となるため、電動自転車の搭乗者はその電動自転車を小さな力で押し歩くことができる。
【0008】
しかしながら、電動自転車を後方へ押しながら歩く場合には、第一のワンウェイクラッチ4がロック方向に回転するので、その第一のワンウェイクラッチ4のロックにより後輪からの駆動力が減速機2およびモータ1に伝達され、電動自転車を後方へ押し歩くのに大きな力を必要としていた。
【0009】
また、この電動自転車の駆動装置では、第二のワンウェイクラッチ8を備えていることから、電動自転車を前方へ押しながら歩く場合には、その第二のワンウェイクラッチ8が空転状態となるのでペダル6は回転しないが、電動自転車を後方へ押しながら歩く場合には、第二のワンウェイクラッチ8がロック方向に回転するので、ペダル6が回転することで煩わしいものとなる。
【0010】
そこで、電動自転車を後方へ押しながら歩く際に、その電動自転車を小さな力で後方へ押し歩くことができるワンウェイクラッチを本出願人は先に提案している(特願2002−28324)。本出願人が先に提案した逆入力遮断クラッチは、図14および図15に示すように入力側からの正逆両方向の回転トルクを出力軸に伝達し、逆に、出力側からの正逆両方向の回転トルクを遮断して入力側に伝達しない機能を有するものである。
【0011】
この逆入力遮断クラッチは、入力側回転部材としての入力外輪21と、出力側回転部材としての出力内輪22と、トルク伝達部材としてのローラ23と、そのローラ23を保持する保持器24と、その保持器24の位置決めを行う弾性部材としてのセンタリングばね25と、静止側部材としてのハウジング26と、保持器24の回転に対して保持器24に滑り摩擦抵抗を作用させる回転抵抗付与手段としての摺動ばね27とを具備する。前述した入力外輪21の内周面には、出力内輪22の外周面との間に正逆両回転方向に対称に楔空間mを形成したカム面21aが円周方向等間隔に形成されている。
【0012】
この逆入力遮断クラッチの初期状態では、入力外輪21と保持器24に嵌合されたセンタリングばね25の作用により、ローラ23は入力外輪21のカム面21aの円周方向中央に位置する状態に保持されている(図15参照)。この時、ローラ23と出力内輪22の間には隙間nを持つように設定されている。また、保持器24は摺動ばね27によってハウジング26との間で摩擦抵抗を付与している。
【0013】
図15に示すように出力内輪22に回転トルク(図中矢印参照)を作用させた逆入力時には、センタリングばね25により位置決めされた保持器24により保持されたローラ23が楔空間mの円周方向中央に位置し続けることから、ローラ23と出力内輪22との間に隙間nがあるので入力外輪21と出力内輪22は回転方向で係合せず、出力内輪22は正逆両方向ともに空転してその出力内輪22に逆入力された回転トルクは入力外輪21に伝達されずに遮断される。
【0014】
一方、図16および図17に示すように入力外輪21に正回転トルクあるいは逆回転トルク(図中矢印参照)を作用させた入力時には、入力外輪21は回転しようとするが、センタリングばね25が弾性変形してその弾性変形力を上回る摺動ばね27の摩擦抵抗によって保持器24に回転位相差が生じ、その回転位相差によりローラ23が入力外輪21に対して相対移動し楔空間mで噛み込んだ状態となり、入力外輪21に入力された回転トルクは出力内輪22に伝達される。なお、入力外輪21が停止すれば、センタリングばね25の復元力によりローラ23が楔空間mから離脱し、入力外輪21のカム面21aの円周方向中央に戻って初期状態となる。
【0015】
しかし、入力外輪21が停止しても、例えばローラ23に作用する残留トルクが大きい場合、ローラ23が楔空間mに噛み込んだままになる場合がある。このような場合には、入力外輪21を反対方向に回転させ、ローラ23を楔空間mから離脱させることができる。これにより、前記初期状態となる。
【0016】
この逆入力遮断クラッチを前述した電動自転車の駆動装置における第一のワンウェイクラッチ4(図13参照)として使用すれば、出力側からの正逆回転トルクは遮断されるので、電動自転車を押しながら歩く場合に、前進あるいは後進のいずれであっても小さな力で済むことになる。
【0017】
また、逆入力遮断クラッチを前述した電動自転車の駆動装置における第二のワンウェイクラッチ8に使用した場合、出力側からの正逆回転トルクは遮断されるので、電動自転車を押しながら歩く場合に、前進あるいは後進のいずれであってもペダルが回転することはない。
【0018】
しかしながら、この逆入力遮断クラッチでは、入力側からの正回転トルク(図16参照)および逆回転トルク(図17参照)を出力側に伝達してしまうので、この逆入力遮断クラッチを電動自転車の駆動装置における第一のワンウェイクラッチ4に使用すると、例えばモータ1が急減速した場合、入力外輪21が急減速することになる。その時、ローラ23および保持器24には慣性力が作用しており、その慣性力が摺動ばね27とハウジング26との摩擦抵抗およびセンタリングばね25の弾性力にも打ち勝つと、ローラ23が入力外輪21に対して相対移動し、ローラ23が楔空間mの逆方向のカム面21aで噛み込んだ状態となって、逆方向の回転トルクを伝達しようとし、電動自転車の後輪には急ブレーキが作用することになる。
【0019】
また、この逆入力遮断クラッチを電動自転車の駆動装置における第二のワンウェイクラッチ8に使用すると、例えば電動自転車の前進中にペダル6を逆転させた場合、入力外輪21が逆転し、逆方向の回転トルクを伝達しようとするため、電動自転車の後輪には急ブレーキが作用することになる。また、その反力でペダル6が正方向に回転し、人間の脚に衝撃力が作用したり巻き込まれたりする可能性がある。
【0020】
このように入力側から出力側へのトルク伝達が一方向のみでよいもの、例えば電動自転車、自動二輪車、エンジンのスタータ等に前述した逆入力遮断クラッチを使用すると、入力外輪21が逆方向にロックした時の不具合が発生する可能性がある。
【0021】
そこで、入力側から一方向の回転トルクのみを出力側へ伝達する一方、出力側から正逆両方向の回転トルクを遮断して入力側へ伝達しない機能を有する逆入力遮断クラッチを提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための技術的手段として、本発明は、静止側部材に対して入力側回転部材と出力側回転部材を正逆回転自在に配置し、前記入力側回転部材と出力側回転部材間に係合・離脱可能なトルク伝達部材を介装し、そのトルク伝達部材を保持する保持器により前記入力側回転部材に対する相対回転を通じて前記静止側部材に対する保持器の回転に対して保持器に摩擦抵抗を作用させて入力側回転部材と保持器の回転位相差を制御することにより前記トルク伝達部材の係合・離脱を切り替える逆入力遮断クラッチであって、前記入力側回転部材からの正逆回転トルクのうち、一方向の回転トルクのみをトルク伝達部材の係合により前記出力側回転部材に伝達する規制手段を設けたことを特徴とする。
【0023】
本発明では、入力側回転部材からの正逆回転トルクのうち、一方向の回転トルクのみをトルク伝達部材の係合により前記出力側回転部材に伝達する規制手段を設けたことにより、入力側回転部材から出力側回転部材へのトルク伝達が一方向のみでよいもの、例えば電動自転車、自動二輪車、エンジンのスタータ等に適用する場合、入力側回転部材が逆方向にロックした時の不具合を解消することができる。
【0024】
なお、入力側回転部材と出力側回転部材の配置関係は、同心回転軸の半径方向で対向させる場合、または、同心回転軸の軸方向で対向させる場合を問わない。ここで「入力側回転部材」は、回転駆動源から入力トルクを受けて回転する部材を意味し、「出力側回転部材」は、トルク伝達部材の係合・離脱作用を通じて、入力側回転部材と共に回転し、かつ入力側回転部材に対して空転可能とした部材を意味する。
【0025】
前記構成における規制手段としては、▲1▼入力側回転部材の内周面に、出力側回転部材の外周面との間で正逆回転方向のうち一方向のみに縮小する楔空間が形成されるカム面を形成した構成、▲2▼入力側回転部材と保持器に嵌合され、その保持器の位置決めを行う弾性部材の撓みにより、前記入力側回転部材からの回転トルクを一方向のみに伝達可能とした構成、▲3▼入力側回転部材と保持器間に設けられ、入力側回転部材に対する保持器の相対移動を一方向に規制する凹凸構造により、前記入力側回転部材からの回転トルクを一方向のみに伝達可能とした構成が望ましい。
【0026】
また、本発明は、回転駆動源の駆動力を直接または減速機構を介して入力側回転部材に伝達する構成とすることが望ましい。なお、「回転駆動源」としては、モータ(電動モータの他、油圧モータ、エアーモータ等も含む)や内燃機関等が代表的であるが、ここでの「回転駆動源」には、電気、油圧、空気圧等の動力により回転力を発生させるあらゆる機器、さらには手動操作で回転力を発生させる機構も含まれる。また、「減速機構」の構造は特に問わず、歯車機構、ウォーム&ホイール機構、遊星ローラ機構、コーン・ディスク機構等により構成されたものが含まれる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明に係る逆入力遮断クラッチの実施形態を以下に詳述する。図1乃至図6は、入力側回転部材の内周面に、出力側回転部材の外周面との間で正逆回転方向のうち一方向のみに縮小する楔空間が形成されるカム面を形成した第一の実施形態で、図1乃至図4は外輪入力タイプの逆入力遮断クラッチを示し、図5および図6は内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチを示す。なお、図14乃至図17と同一部分には同一参照符号を付す。
【0028】
図1および図2に示す外輪入力タイプの逆入力遮断クラッチは、入力側回転部材としての入力外輪21と、出力側回転部材としての出力内輪22と、トルク伝達部材としてのローラ23と、ローラ23を保持する保持器24と、保持器24の位置決めを行う弾性部材としてのセンタリングばね25と、静止側部材としてのハウジング26と、保持器24の回転に対して保持器24にすべり摩擦抵抗を作用させる回転抵抗付与手段としての摺動ばね27とを備えている。
【0029】
入力外輪21は、例えば電動モータと減速機構とで構成される駆動部(図示せず)に直結され、あるいは、チェーン等の動力伝達手段を介して間接的に駆動部に連結されている。
【0030】
出力内輪22は、入力外輪21の内径側に配設されており、入力外輪21の内周面に対向する円筒部22aと、円筒部22aの一端から回転中心に向けて延在したフランジ部22bと、フランジ部22bから回転軸に沿って延在した中空の軸部22cとを備えている。なお、フランジ部22bの外周側端面に止め輪28を装着することにより入力外輪21の抜け止めがなされている。
【0031】
入力外輪21の内周面には、図2に示すように出力内輪22の円筒部22aの外周面との間に正逆回転方向のうち一方向(図2左側方向)のみに縮小した楔空間pを形成したカム面21bが複数(ローラ23の数と同数)円周方向等間隔に形成されている。この楔空間pは、ローラ23の初期位置(図2の状態)でそのローラ23の直径よりも大きくなっており、出力内輪22の外周面との間に隙間qを有する。
【0032】
図2に示すようにローラ23が楔空間pの初期位置に位置する時は、ローラ23と出力内輪22の外周面との間に隙間qがあるため、そのローラ23は楔空間p内で自転可能である。この時、入力外輪21と出力内輪22は回転方向で係合していないため、初期状態あるいは出力内輪22に正逆回転トルク(図中矢印参照)が逆入力された時、その逆入力回転トルクは入力外輪21へ伝達されずに遮断される。
【0033】
図3に示すようにローラ23が楔空間pの初期位置から正逆回転方向のうち一方向(図中左側)に移動して楔空間pの縮小した箇所に噛み込んだ時は、入力外輪21と出力内輪22がローラ23を介して係合し、入力外輪21からの回転トルク(図中矢印参照)がローラ23を介して出力内輪22に伝達される。
【0034】
図4に示すようにローラ23が楔空間pの初期位置から図3と反対方向(図中右側)に移動して楔空間pの拡大した箇所に位置する時は、入力外輪21と出力内輪22は回転方向で係合せずにローラ23と出力内輪22の外周面との間で滑りが生じ、入力外輪21からの回転トルク(図中矢印参照)がローラ23を介して出力内輪22に伝達されない。
【0035】
一般的に、クラッチとして回転トルクを伝達するためには、楔角度2α、つまり、ローラ23が入力外輪21の内周面と接する点での接線とローラ23が出力内輪22の外周面と接する点での接線がなす角度が12°程度より小さくなければならない。従って、楔空間pにおいて、入力外輪21の内周面に楔角度2αが12°より小さいカム面21bを一方向に形成し、その反対方向にはカム面を形成せず、ローラ23が接触した場合でも楔角度2αが12°より大きくなるようにしてローラ23と出力内輪22間で滑りが生じるようにする。
【0036】
保持器24は、円周方向等間隔に形成したポケット24aにローラ23を保持した状態で、入力外輪21の内周と出力内輪22の円筒部22aとの間に配設された保持部24bと、出力内輪22のフランジ部22bの軸方向反対側において保持部24bから内径側に延在したフランジ部24cと、出力内輪22の円筒部22aの内側においてフランジ部24cから軸方向に突出した突起部24dとを備えている。
【0037】
センタリングばね25は、略U字形断面の弾性部材であって、そのU字形の底部を保持器24に形成された凹孔24eに嵌合させると共に、U字形の上端部を入力外輪21に形成された凹所21cに係合させている。このセンタリングばね25は、保持器24と入力外輪21を弾性的に連結する作用と、保持器24に保持されたローラ23が、楔空間pの初期位置に配置されるように保持器24を入力外輪21に対して位置決め(センタリング)する作用を発揮する。
【0038】
ハウジング26は、クラッチ軸方向の一方側に位置するフランジ部26aと、そのフランジ部26aの内周面から軸方向他方側に向けて延在したボス部26bとを備えている。また、出力内輪22の軸部22cの外周面に止め輪29を嵌着し、この止め輪29により出力内輪22のハウジング26からの抜け止めとしている。
【0039】
ボス部26bの内周面は、出力内輪22の軸部22cと嵌合する軸穴26cになっている。ボス部26bの外周面は、出力内輪22の円筒部22aの内周面と半径方向隙間を介して対向しており、ボス部26bの外周面と出力内輪22の円筒部22aとの間に円周方向に連続した空間が形成されている。上述した保持器24の突起部24dは、この円周方向に連続した空間に突出しており、保持器24の回転に伴って、この連続空間において回転する。
【0040】
摺動ばね27は、ハウジング26のボス部26bに嵌着可能な有端リング状の弾性部材であって、ボス部26bに嵌着されてボス部26bを摺動する摺動部27aと、摺動部27aの両端部を外径側に折曲した係合片27b,27cとを備えている。この摺動ばね27の係合片27b,27cは、保持器24の突起部24dの円周方向両側に隙間をもって配設され、保持器24の突起部24dとそれぞれ円周方向に係合可能となっている。
【0041】
この逆入力遮断クラッチは、入力外輪21に入力された正逆両方向のうち一方向の回転トルクのみを出力内輪22に伝達する一方、出力内輪22に逆入力された正逆両方向の回転トルクを遮断する作用を発揮する。初期状態では、図2に示すように保持器24はセンタリングばね25によりセンタリングされており、そのポケット24aに収容されたローラ23は、楔空間pの初期位置にある。
【0042】
図3に示すように入力外輪21に一方向(図中矢印で示す時計方向)の回転トルクが入力されると、保持器24は、センタリングばね25によって入力外輪21に連結されているから、入力外輪21と共に回転を始める。その保持器24が所定角度回転すると、保持器24の突起部24dが摺動ばね27の係合片27bに接触した状態となる。さらに、入力外輪21が回転すると、保持器24の突起部24dが摺動ばね27の係合片27bに接触した状態で、摺動ばね27が連れ回るようになる。
【0043】
この時、摺動ばね27はハウジング26のボス部26b周りを摺動回転することによりすべり摩擦抵抗を受ける。このすべり摩擦抵抗は係合片27bから保持器24の突起部24dに伝わり、保持器24の回転抵抗となる。ここで、摺動ばね27のすべり摩擦抵抗に起因する保持器24の回転抵抗(トルク)がセンタリングばね25の弾性力(バネトルク)よりも大きいため、センタリングばね25に弾性変形が生じ、その分、保持器24は入力外輪21に対して回転遅れを生じる。
【0044】
このセンタリングばね25の弾性変形に伴う保持器24の回転遅れによって、ポケット24aに保持されたローラ23は、入力外輪21のカム面21bにより形成された楔空間pに噛み込んだ状態となる。これにより入力外輪21に入力された回転トルクはローラ23を介して出力内輪22に伝達される。
【0045】
逆に、図2に示す初期状態から、図4に示すように入力外輪21に逆方向(図中矢印で示す反時計方向)の回転トルクが入力されると、保持器24はセンタリングばね25によって入力外輪21に連結されているから、入力外輪21と共に回転を始める。その保持器24が所定角度回転すると、保持器24の突起部24dが摺動ばね27の係合片27cに接触した状態となる。さらに、入力外輪21が回転すると、保持器24の突起部24dが摺動ばね27の係合片27cに接触した状態で、摺動ばね27が連れ回るようになる。
【0046】
この時、摺動ばね27はハウジング26のボス部26b周りを摺動回転することによりすべり摩擦抵抗を受ける。このすべり摩擦抵抗は係合片27cから保持器24の突起部24dに伝わり、保持器24の回転抵抗となる。ここで、摺動ばね27のすべり摩擦抵抗に起因する保持器24の回転抵抗(トルク)がセンタリングばね25の弾性力(バネトルク)よりも大きいため、センタリングばね25に弾性変形が生じ、その分、保持器24は入力外輪21に対して回転遅れを生じる。
【0047】
このセンタリングばね25の弾性変形に伴う保持器24の回転遅れによって、ポケット24aに保持されたローラ23は、入力外輪21のカム面21bにより形成された楔空間pで噛み込まずに出力内輪22の外周面に対して滑り状態となる。これにより入力外輪21に入力された回転トルクはローラ23を介して出力内輪22に伝達されることはない。
【0048】
なお、図2矢印で示すように出力内輪22から逆入力される回転トルクに対しては、摺動ばね27のすべり摩擦抵抗は生じないので、センタリングばね25の作用により保持器24がセンタリングされ、保持器24と入力外輪21との回転位相差が解消される。保持器24がセンタリングされた状態では、ローラ23が楔空間pの初期位置で自転できるから、出力側から逆入力された回転トルクに対しては出力内輪22が空転し、この逆入力トルクを入力外輪21に対して遮断する。
【0049】
以上の実施形態は、外輪入力タイプの逆入力遮断クラッチであるが、図5および図6に示す内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチにも適用可能である。
【0050】
この内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチは、入力側回転部材としての入力内輪31と、出力側回転部材としての出力外輪32と、トルク伝達部材としてのローラ33と、ローラ33を保持する保持器34と、保持器34の位置決めを行う弾性部材としてのセンタリングばね35と、静止側部材としてのハウジング36と、保持器34の回転に対して保持器34にすべり摩擦抵抗を作用させる回転抵抗付与手段としての摺動ばね37とを備えている。
【0051】
入力内輪31は、例えば電動モータと減速機構とで構成される駆動部(図示せず)に直結され、あるいは、チェーン等の動力伝達手段を介して間接的に駆動部に連結されている。出力外輪32は、入力内輪31の外径側に配設されており、その外周側端面に止め輪38を装着することにより出力外輪32の抜け止めがなされている。入力内輪31は、出力外輪32の内周面に対向する円筒部31aと、円筒部31aの一端に形成された鍔部31bと、円筒部31aから回転軸に沿って延在した中空の軸部31cとを備えている。
【0052】
入力内輪31の外周面には、図6に示すように出力外輪32の内周面との間に正逆回転方向のうち一方向(図中左方向)のみに縮小する楔空間rを形成した平坦なカム面31bが複数(ローラ33の数と同数)円周方向等間隔に形成されている。この楔空間rは、ローラ33の初期位置(図6の状態)でそのローラ33の直径よりも大きくなっており、出力外輪32の内周面との間に隙間sを有し、そのローラ33は楔空間r内で自転可能となっている。この初期状態では、入力内輪31と出力外輪32は回転方向で係合していないため、出力外輪32に回転トルク(図中矢印C参照)が逆入力された時、その逆入力回転トルクは入力内輪31へ伝達されずに遮断される。
【0053】
ローラ33が楔空間rの初期位置から正逆回転方向のうち一方向(図中左側)に移動して楔空間rの縮小した箇所に噛み込んだ時は、入力内輪31と出力外輪32がローラ33を介して係合し、入力内輪31からの回転トルク(図中矢印A参照)がローラ33を介して出力外輪32に伝達される。
【0054】
また、ローラ33が楔空間rの初期位置から前述とは反対方向(図中右側)に移動して楔空間rの拡大した箇所に位置する時は、入力内輪31と出力外輪32は回転方向で係合せずにローラ33と出力外輪32の外周面との間で滑りが生じ、入力内輪31からの回転トルク(図中矢印B参照)がローラ33を介して出力外輪32に伝達されない。
【0055】
保持器34は、円周方向等間隔に形成したポケット34aにローラ33を保持した状態で、入力内輪31の外周と出力外輪32の間に配設された円筒状を有する。
【0056】
ハウジング36は、保持器34の外周に配置された支持部36aと、出力外輪32の軸方向反対側において支持部36aから内径側に延在したフランジ部36bとを備えている。また、入力内輪31の軸部31cの外周面に止め輪39を嵌着し、この止め輪39により入力内輪31のハウジング36からの抜け止めとしている。
【0057】
センタリングばね35は、入力内輪31の円筒部31aの端面に嵌着可能な有端リング状の弾性部材であって、円筒部31aの端面に形成した凹溝に縮径可能なように嵌着されたリング部35aと、リング部35aの両端部を外径側に折曲した係合片35b,35cとを備えている。このセンタリングばね35の係合片35b,35cは、保持器34に形成された凹孔34dに挿入配置され、その凹孔34dの円周方向両側に係合可能となっている。
【0058】
センタリングばね35は、保持器34と入力内輪31を弾性的に連結する作用と、保持器34に保持されたローラ33が、楔空間rの初期位置に配置されるように保持器34を入力内輪31に対して位置決め(センタリング)する作用を発揮する。
【0059】
摺動ばね37は、ハウジング36の支持部36aの内径に嵌着可能な有端リング状の弾性部材であって、支持部36aに嵌着されて支持部36aを摺動する摺動部37aと、摺動部37aの両端部を内径側に折曲した係合片37b,37cとを備えている。この摺動ばね37の係合片37b,37cは、保持器34に形成された凹孔34eの円周方向両側に隙間をもって挿入配置され、保持器34の凹孔34eの円周方向両側とそれぞれ係合可能となっている。
【0060】
この逆入力遮断クラッチも、前述した外輪入力タイプと同様、入力内輪31に入力された一方向の回転トルクのみを出力外輪32に伝達する一方、出力外輪32に逆入力された両方向の回転トルクを遮断する作用を発揮するものである。初期状態では、図6に示すように保持器34はセンタリングばね35によりセンタリングされており、そのポケット34aに収容されたローラ33は、楔空間rの初期位置にある。
【0061】
入力内輪31に一方向(図中矢印Aで示す時計方向)の回転トルクが入力されると、保持器34はセンタリングばね35によって入力内輪31に連結されているから、入力内輪31と共に回転を始める。その保持器34が所定角度回転すると、保持器34の凹孔34eで摺動ばね37の係合片37bが接触した状態となる。さらに、入力内輪31が回転すると、保持器34の凹孔34eに摺動ばね37の係合片37bが接触した状態で摺動ばね37が連れ回るようになる。
【0062】
この時、摺動ばね37はハウジング36周りを摺動回転することによりすべり摩擦抵抗を受ける。このすべり摩擦抵抗は係合片37bから保持器34に伝わって回転抵抗となる。ここで、摺動ばね37のすべり摩擦抵抗に起因する保持器34の回転抵抗(トルク)がセンタリングばね35の弾性力(バネトルク)よりも大きいため、センタリングばね35に弾性変形が生じ、その分、保持器34は入力内輪31に対して回転遅れを生じる。
【0063】
このセンタリングばね35の弾性変形に伴う保持器34の回転遅れによって、ポケット34aに保持されたローラ33は、入力内輪31のカム面31bにより形成された楔空間rに噛み込んだ状態となる。これにより入力内輪31に入力された回転トルクはローラ33を介して出力外輪32に伝達される。
【0064】
逆に、入力内輪31に逆方向(図中矢印Bで示す反時計方向)の回転トルクが入力されると、保持器34はセンタリングばね35によって入力内輪31に連結されているから、入力内輪31と共に回転を始める。その保持器34が所定角度回転すると、保持器34の凹孔34eに摺動ばね37の係合片37cに接触した状態となる。さらに、入力内輪31が回転すると、保持器34の凹孔34eに摺動ばね37の係合片37cが接触した状態で摺動ばね37が連れ回るようになる。
【0065】
この時、摺動ばね37はハウジング36周りを摺動回転することによりすべり摩擦抵抗を受ける。このすべり摩擦抵抗は係合片37cから保持器34に伝わって回転抵抗となる。ここで、摺動ばね37のすべり摩擦抵抗に起因する保持器34の回転抵抗(トルク)がセンタリングばね35の弾性力(バネトルク)よりも大きいため、センタリングばね35に弾性変形が生じ、その分、保持器34は入力内輪31に対して回転遅れを生じる。
【0066】
このセンタリングばね35の弾性変形に伴う保持器34の回転遅れによって、ポケット34aに保持されたローラ33は、入力内輪31のカム面31bにより形成された楔空間rで噛み込まずに出力外輪32の内周面に対して滑り状態となる。これにより入力内輪31に入力された回転トルクはローラ33を介して出力外輪32に伝達されることはない。
【0067】
なお、図6矢印Cで示すように出力外輪32から逆入力される回転トルクに対しては、摺動ばね37のすべり摩擦抵抗は生じないので、センタリングばね35の作用により保持器34がセンタリングされ、保持器34と入力内輪31との回転位相差が解消される。保持器34がセンタリングされた状態では、ローラ33が楔空間rの初期位置で自転できるから、出力側から逆入力された回転トルクに対しては出力外輪32が空転し、この逆入力トルクを入力内輪31に対して遮断する。
【0068】
以上で説明した実施形態では、正逆回転方向のうち一方向のみに縮小する楔空間が形成されるカム面を形成したが、本発明はこれに限定されることなく、入力側からの一方向の回転トルクのみを出力側へ伝達する他の規制手段として、保持器の位置決めを行うセンタリングばねの撓みを利用することも可能である。なお、以下の実施形態では、図5に示す内輪入力タイプについて説明するが、図1に示す外輪入力タイプにも同様に適用可能である。
【0069】
図7および図8はセンタリングばねの撓みにより入力側からの回転トルクを一方向のみに伝達可能とした実施形態で、内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチを示す。図5および図6に示す内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチと主要部が同一構造であるため、重複説明は省略する。図7および図8の実施形態が、図5および図6の実施形態と相違する点は、センタリングばね45およびカム面41bの形状である。
【0070】
センタリングばね45について、図7に示すようにリング部45aの両端部を外径側に折曲した係合片45b,45cのうち、一方の係合片45bを折り曲げて円周方向に延在させ、その折曲部45dの先端を保持器34の凹孔34dの内側端面に当接させる。なお、他方の係合片45cは、保持器34の凹孔34dに入り込まない程度に短くしているが、一方の係合片45bに接触しない程度に保持器34の凹孔34dに入り込んだ長さとしてもよい。
【0071】
入力内輪31の外周面には、出力外輪32の内周面との間に正逆回転方向の両方向に縮小した楔空間tを形成した平坦なカム面41bが形成されている。
【0072】
センタリングばね45の係合片45b,45cを前述のようにしたことにより、そのセンタリングばね45が一方向に撓み、他方向に撓まないようにしている。つまり、図8に示すように入力内輪31を反時計方向(図中矢印参照)の回転トルクを付与して回転させると、保持器34はセンタリングばね45によって入力内輪31に連結されているから、入力内輪31と共に回転を始め、保持器34の凹孔34eで摺動ばね37の係合片37cが接触した状態となり、さらに、保持器34の凹孔34eに摺動ばね37の係合片37cが接触した状態で摺動ばね37が連れ回るようになる。
【0073】
この時、摺動ばね37はハウジング36周りを摺動回転することによりすべり摩擦抵抗を受け、このすべり摩擦抵抗が係合片37cから保持器34に伝わって回転抵抗となる。ここで、摺動ばね37のすべり摩擦抵抗に起因する保持器34の回転抵抗(トルク)がセンタリングばね45の弾性力(バネトルク)よりも大きいため、センタリングばね45に弾性変形が生じ、その分、保持器34は入力内輪31に対して回転遅れを生じる。このセンタリングばね45の弾性変形は、図8に示すように一方の係合片45cの折曲部45dが保持器34の凹孔34dに係止されており、他方の係合片45bが自由端となっているので、リング部45aが縮径するように撓むことになる。
【0074】
このセンタリングばね45の弾性変形に伴う保持器34の回転遅れによって、ポケット34aに保持されたローラ33は、入力内輪31のカム面41bにより形成された楔空間tに噛み込んだ状態となる。これにより入力内輪31に入力された回転トルクはローラ33を介して出力外輪32に伝達される。
【0075】
一方、入力内輪31に時計方向(図中矢印と反対方向)の回転トルクを付与して回転させようとしても、センタリングばね45の一方の係合片45cの折曲部45dの先端が保持器34の凹孔34dの内側端面に接触しているため、入力内輪31と保持器34の相対関係は変わらない。従って、入力内輪31に対してローラ33が相対移動せず、楔空間tに噛み込んだ状態とならないことから、出力外輪32に回転トルクが伝達されない。
【0076】
なお、図7および図8に示す実施形態では、センタリングばね45の一方の係合片45cを折り曲げて保持器34の凹孔34dの内側端面に接触させ、そのセンタリングばね45を一方向のみに撓むようにしたが、図9および図10に示すように保持器34の凹孔34fの円周方向幅を小さくしてセンタリングばね55の係合片55cの厚み程度とし、そのセンタリングばね55の係合片55cを保持器34の凹孔34fに嵌挿した構造とすることにより、センタリングばね55を一方向のみに撓むような構成とすることも可能である。
【0077】
図11および図12は入力内輪31に対する保持器34の相対移動を一方向のみに規制する実施形態で、内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチを示す。図5および図6に示す内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチと主要部が同一構造であるため、重複説明は省略する。図11および図12の実施形態が、図5および図6の実施形態と相違する点は、保持器34およびこれに対応した入力内輪31の構造にある。
【0078】
つまり、保持器34の内周面に突起61を形成し、その突起61が円周方向に移動可能なように入力内輪31の外周面に円周方向に沿って切欠き凹溝62を形成する。この突起61と切欠き凹溝62は、図11に示す初期状態から一方向のみへ回転可能な位置関係とする。なお、入力内輪31の外周面に突起を形成し、保持器34の内周面に切欠き凹溝を形成するようにしてもよい。また、突起61は保持器34あるいは入力内輪31に一体形成する以外に、ピンなどを圧入することにより別体で形成することも可能である。
【0079】
保持器34および入力内輪31の構造を前述のようにしたことにより、その入力内輪31に対する保持器34の相対移動を一方向のみに規制している。つまり、図12に示すように入力内輪31を反時計方向(図中矢印参照)の回転トルクを付与して回転させると、保持器34はセンタリングばね35によって入力内輪31に連結されているから、入力内輪31と共に回転を始め、保持器34の凹孔34eで摺動ばね37の係合片37cが接触した状態となり、さらに、保持器34の凹孔34eに摺動ばね37の係合片37cが接触した状態で摺動ばね37が連れ回るようになる。
【0080】
この時、摺動ばね37はハウジング36周りを摺動回転することによりすべり摩擦抵抗を受け、このすべり摩擦抵抗が係合片37cから保持器34に伝わって回転抵抗となる。ここで、摺動ばね37のすべり摩擦抵抗に起因する保持器34の回転抵抗(トルク)がセンタリングばね35の弾性力(バネトルク)よりも大きいため、センタリングばね35に弾性変形が生じ、その分、保持器34は入力内輪31に対して回転遅れを生じる。
【0081】
このセンタリングばね35の弾性変形に伴う保持器34の回転遅れによって、ポケット34aに保持されたローラ33は、入力内輪31のカム面41bにより形成された楔空間tに噛み込んだ状態となる。これにより入力内輪31に入力された回転トルクはローラ33を介して出力外輪32に伝達される。なお、この時、ローラ33が楔空間tに噛み込んだ状態で保持器34の突起61が入力内輪31の切り欠き凹溝62の内側端面に接触しない。
【0082】
一方、入力内輪31に時計方向(図中矢印と反対方向)の回転トルクを付与して回転させようとしても、保持器34の突起61が入力内輪31の切欠き凹溝62の内側端面に接触して保持器34の動きが規制されているため、入力内輪31と保持器34の相対関係は変わらない。従って、入力内輪31に対してローラ33が相対移動せず、楔空間tに噛み込んだ状態とならないことから、出力外輪32に回転トルクが伝達されない。
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、例えば電動自転車の駆動装置に組み込まれたワンウェイクラッチに使用した場合でも、モータの急減速やペダル逆転時の後輪に作用する急ブレーキを防止することができて安全に走行できる。このように電動自転車の駆動装置を例示しているが、これ以外に、入力側から出力側へのトルク伝達が一方向のみでよいもの、例えば電動自転車、自動二輪車、エンジンのスタータ等に前述した逆入力遮断クラッチを使用すれば、逆方向にロックする不具合が未然に防止することができて安全性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態で、外輪入力タイプの逆入力遮断クラッチを示す断面図である。
【図2】図1の逆入力遮断クラッチにおける初期状態を示す要部拡大断面図である。
【図3】図1の逆入力遮断クラッチにおいて、入力外輪に正回転トルクを付与した状態を示す要部拡大断面図である。
【図4】図1の逆入力遮断クラッチにおいて、入力外輪に逆回転トルクを付与した状態を示す要部拡大断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態で、内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチを示す断面図である。
【図6】図5の逆入力遮断クラッチにおける初期状態を示す要部拡大断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態で、内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチにおける初期状態を示す要部拡大断面図である。
【図8】図7の逆入力遮断クラッチにおいて、入力外輪に回転トルクを付与した状態を示す要部拡大断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態で、内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチにおける初期状態を示す要部拡大断面である。
【図10】図9の内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチにおいて、入力内輪に回転トルクを付与した状態を示す要部拡大断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態で、内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチにおける初期状態を示す要部拡大断面である。
【図12】図11の内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチにおいて、入力内輪に回転トルクを付与した状態を示す要部拡大断面図である。
【図13】従来の逆入力遮断クラッチを説明するため、電動自転車の駆動装置の一例を示す断面図である。
【図14】本出願人が先に提案した逆入力遮断クラッチを示す断面図である。
【図15】図14の内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチの初期状態を示す要部拡大断面図である。
【図16】図14の内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチで、入力外輪に正回転トルクを付与した状態を示す要部拡大断面図である。
【図17】図14の内輪入力タイプの逆入力遮断クラッチで、入力外輪に逆回転トルクを付与した状態を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
21 入力側回転部材(入力外輪)
21b カム面
22 出力側回転部材(出力内輪)
23 トルク伝達部材(ボール)
24 保持器
26 静止側部材(ハウジング)
27 回転抵抗付与手段(摺動ばね)
45,55 弾性部材
p 楔空間

Claims (5)

  1. 静止側部材に対して入力側回転部材と出力側回転部材を正逆回転自在に配置し、前記入力側回転部材と出力側回転部材間に係合・離脱可能なトルク伝達部材を介装し、そのトルク伝達部材を保持する保持器により前記入力側回転部材に対する相対回転を通じて前記静止側部材に対する保持器の回転に対して保持器に摩擦抵抗を作用させて入力側回転部材と保持器の回転位相差を制御することにより前記トルク伝達部材の係合・離脱を切り替える逆入力遮断クラッチであって、前記入力側回転部材からの正逆回転トルクのうち、一方向の回転トルクのみをトルク伝達部材の係合により前記出力側回転部材に伝達する規制手段を設けたことを特徴とする逆入力遮断クラッチ。
  2. 前記規制手段は、入力側回転部材の内周面に、出力側回転部材の外周面との間で正逆回転方向のうち一方向のみに縮小する楔空間が形成されるカム面を形成した請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
  3. 前記規制手段は、入力側回転部材と保持器に嵌合され、その保持器の位置決めを行う弾性部材の撓みにより、前記入力側回転部材からの回転トルクを一方向のみに伝達可能とした請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
  4. 前記規制手段は、入力側回転部材と保持器間に設けられ、入力側回転部材に対する保持器の相対移動を一方向に規制する凹凸構造により、前記入力側回転部材からの回転トルクを一方向のみに伝達可能とした請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
  5. 回転駆動源の駆動力を直接または減速機構を介して入力側回転部材に伝達する請求項1乃至4のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
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