JP2004324285A - 躯体コンクリートの表面保護工法 - Google Patents

躯体コンクリートの表面保護工法 Download PDF

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Abstract

【課題】コンクリート躯体と同じ無機系のものであり、躯体との一体性を保持でき、しかも、吹き付けをもって施工できるので、施工の省力化を図り、コンクリート躯体に生じるまたは生じた大きな開口幅のひび割れに追従せず、ひび割れを抑制し、有害物質の進入を阻止できる。
【解決手段】躯体コンクリートの表面に目粗しの処理を行い、その上に、材令28日の硬化体の引張試験において引張ひずみが1%以上を示すクラック分散型の短繊維補強セメント複合材料であって、所定の条件を満たすPVA短繊維を、所定の調合マトリクスに、1越え3Vol.%の配合量で、3次元ランダムまたは2次元ランダムに配合した高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)を吹付けにより施工する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉄道橋のはり等橋梁上部工を初めとして各種コンクリート躯体の表面保護工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、鉄道橋のはりでは、大きな活荷重を負担するもので、過酷な曲げ疲労を受けるため、躯体コンクリートにひび割れが発生し易い。
【0003】
このような躯体コンクリートのひび割れ対策としては、躯体コンクリートに表面保護工を施すことが考えられ、その保護工には、連続シートをコンクリートの表面に接着してはく落を防ぐ連続繊維シート接着工法、樹脂を吹き付ける塗布工法、専用モルタルをコンクリート表面に吹き付けた後、高密度ポリエチレン樹脂製のシートなどを表面に貼り付けるシートライニング工法、樹脂製の高耐久性防食パネルを埋設型枠として使用する埋設型枠など種々のものがある。
【0004】
前記工法のうち、塗布工法が施工面では簡単であり、その一例としては下記特許文献がある。
【0005】
【特許文献1】
特開2003−027422号公報「橋梁における橋桁等の対向端面の防水処理方法及びその装置 」
【特許文献2】
特開2003−027421号公報「 橋梁における橋桁等の対向端面の防水処理方法及びその装置 」
【0006】
これら特許文献1、2は、吹付管に供給ホースを通じてウレタン樹脂液等の塗布剤と硬化剤とを供給して管内で混合させ、この混合剤を先端ノズルから橋桁と橋台との対向コンクリート端面に吹き付けることによりコンクリート端面に全面的に塗布剤の吹き付け塗装による防水塗布層を形成するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
表面保護工として樹脂塗料系、ポリマー系材料は、材料の強度および遮蔽性が高いという利点を有するが、材料が高価であること、また、弾性係数や熱膨張係数が既存躯体のコンクリートと大きく異なるため、外力が繰り返し加わると、この外力により既存部分との間に剥離が生じて剥落しやすい欠点がある。
【0008】
特に、樹脂塗では紫外線に弱い場合が多く、また、前記のように有機特有の樹脂特性と無機特有の躯体のコンクリート特性とが異なるため、追随性が悪い。
【0009】
これに対して、セメント系材料による表面保護工で、吹き付けに適するものの使用を検討するも、セメント系材料は、安価であるが、強度、靱性が小さい。そのため、表面保護工の施工後に、躯体コンクリートともどもひび割れが発生し易く、コンクリートのひび割れが表面保護材を貫通して大きなひび割れ開口を生じて、表面保護工としての機能を失うことが多い。
【0010】
その結果、表面保護工の再施工を定期的に実施する必要を生じ、維持管理費の増大を招く結果となっている。この場合、生じるひび割れ開口幅はこれまでの経験より0.6mmに達する。
【0011】
この発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、コンクリート躯体と同じ無機系のものであり、躯体との一体性を保持でき、しかも、吹き付けをもって施工できるので、後施工アンカーなどの煩雑な工程を省略して施工の省力化を図り、コンクリート躯体に生じるまたは生じた大きな開口幅のひび割れに追従せず、ひび割れを抑制し、有害物質の進入を阻止できる躯体コンクリートの表面保護工法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のこの発明は、前記目的を達成するため、躯体コンクリートの表面に目粗しの処理を行い、その上に、材令28日の硬化体の引張試験において引張ひずみが1%以上を示すクラック分散型であって、下記〔F1〕のPVA(Polyvinyl Alcohol)短繊維を、〔M1〕の調合マトリクスに、1越え3Vol.%の配合量で、3次元ランダムまたは2次元ランダムに配合した高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)を吹付けにより施工することを要旨とするものである。
〔M1〕
・水結合材比(W/C)25%以上
・砂結合材料重量比(S/C)が1.5以下(0を含む)
細骨材の最大粒径0.8mm以下、平均粒径0.4mm以下、
単位水量250kg/m以上400kg/m以下
高性能AE減水剤量30 kg/m未満
〔F1〕
繊維径50μm以下
繊維長:5〜20mm
繊維引張強度:1500MPa〜2400MPa以下
【0013】
請求項1記載のこの発明によれば、高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)はその調合のマトリクスと繊維配合量により、引張ひずみが1%を越えることで、載荷方向(応力方向)とほぼ直角方向に多数のクラック(マルチクラック)が発生するクラック分散型の破壊現象が生じる。よって、ひび割れを確実に微小な幅に制御できるものであり、このような高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)を表面保護工として用いることで、曲げ荷重や疲労荷重による躯体コンクリートにひび割れが生じても機能を保持する表面保護工を実現できる。
【0014】
また、躯体コンクリートの表面に目粗しの処理を行い、その上に高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)を吹き付けることで、既存部分との一体化を図るためのアンカー等の設置も不要となり、施工性の向上が図れる。
【0015】
請求項2記載のこの発明は、前記〔M1〕の調合マトリクスにおいて、練り上がり時の空気量20%以上とすることを要旨とするものである。
【0016】
請求項2記載のこの発明によれば、通常の練り上がり時の空気量は3.5%以上20%以下であるのを、20%以上とすることで、ノズルまで空気を抜けにくくして、ポンプ圧送性能を向上させることができ、施工性を上げることができる。また、20%以上としてもノズル部分でのばらけ易さを惹起しないことが立証できた。
【0017】
請求項3記載のこの発明は、前記高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)の吹付け厚さは3mm〜20mmとすることを要旨とするものである。
【0018】
請求項3記載のこの発明によれば、適正な表面保護工の厚さを提示するものであり、最適には5mm程度が望ましい。また、保護材の施工厚さにより、必要に応じて剥落防止用の警備なアンカーを躯体コンクリートに設置するようにしてもよい。
【0019】
請求項4記載のこの発明は、ひび割れに沿って両側に無付着帯を設置し、高靱性の繊維補強セメント複合材料はその上に吹き付け施工することを要旨とするものである。
【0020】
請求項4記載のこの発明によれば、表面の凹凸が大きな場合に、躯体コンクリートと表面保護材の付着が上がり過ぎ、躯体コンクリートのひび割れを保護材により微細な多数のひび割れに分散することが難しくなるが、無付着帯をひび割れに沿って両側に設置することで、ひび割れがそのまま延長することを防止して、躯体ひび割れの拡大に対してより追従性を向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面についてこの発明の実施の形態を詳細に説明する。図1はこの発明の躯体コンクリートの表面保護工法の実施形態を示す説明図で、図中1は躯体コンクリートであり、これは鉄道橋のはり等の、大きな活荷重を負担し、過酷な曲げ疲労を受けるものである。
【0022】
躯体コンクリート1の表面に、吹き付けにより高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)2を表面保護工として施工する。
【0023】
この高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)2は、材令28日の硬化体の引張試験において引張ひずみが1%以上を示すクラック分散型であって、下記〔F1〕のPVA(Polyvinyl Alcohol)短繊維を、〔M1〕の調合マトリクスに、1越え3Vol.%の配合量で、3次元ランダムまたは2次元ランダムに配合した。
〔M1〕
・水結合材比(W/C)25%以上
・砂結合材料重量比(S/C)が1.5以下(0を含む)
細骨材の最大粒径0.8mm以下、平均粒径0.4mm以下、
単位水量250kg/m以上400kg/m以下
練り上がり時の空気量20%以上
高性能AE減水剤量30 kg/m未満
〔F1〕
繊維径50μm以下
繊維長:5〜20mm
繊維引張強度:1500MPa〜2400MPa以下
【0024】
なお、前記〔M1〕の調合マトリクスにおいて、練り上がり時の空気量は3.5%以上20%以下でもよいが、これを20%以上とすることが好ましい。
【0025】
空気連行量を増加させるため、高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)2の混和時に、AE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤等の空気連行性混和剤が使用され。
【0026】
使用できる空気連行性混和剤は、セメント配合物に微細な独立気泡を連行できる混和剤であり、直径250μm以下、好ましくは20〜200μmの独立気泡を3〜6容量%連行できるものが良い。
【0027】
このような空気連行性混和剤としては、JIS A6204(コンクリート用化学混和剤)のAE剤、AE減水剤若しくは高性能AE減水剤及びそれらと同等の性能を有する化合物があげられ、市販品を使用することもできる。これらは1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0028】
AE剤としては、例えば、脂肪酸塩、樹脂酸塩、ナフテン酸塩等の石鹸系AE剤;高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル系AE剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル等のエーテル系AE剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系AE剤等のノニオン系AE剤;ベタイン系AE剤、イミダゾリンベタイン系AE剤等の両性界面活性剤系AE剤等が挙げられる。なお、これらの中には、起泡剤としての機能を有するものもある。
【0029】
AE減水剤としては、例えば、主成分としてリグニンスルホン酸塩若しくはその誘導体、オキシ有機酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオール複合体、高級アルコールのスルホン酸塩等を含む化合物等が挙げられる。また、これらの化合物が主成分であれば、前述したAE剤が一部に含有されていてもよい。
【0030】
高性能AE減水剤としては、例えば、主成分としてポリカルボン酸エーテル類、変性リグニンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、芳香族アミノスルホン酸塩、変性ナフタレンスルホン酸塩、変性メチロールメラミン縮合物、メラミンスルホン酸塩等を含む化合物等が挙げられる。また、これらの化合物が主成分であれば、前述したAE剤又はAE減水剤が一部に含有されていてもよい。
【0031】
前記引張ひずみは、材令28日以上の硬化体の引張試験で得られる応力−歪み曲線において、最大引張応力値でのひずみ量(%)をいう。実際には、材令28日での試験体の引張試験(例えば断面30mm×13mmの試験体を80mmの試験区間で引張試験を行う)における引張ひずみ(%)で代表される。
【0032】
この引張ひずみが1%以上であることは、載荷方向(応力方向)とほぼ直角方向に多数のクラック(マルチクラック)が発生するクラック分散型の破壊現象が生じていることを意味する。
【0033】
この発明は前記したような高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)2を躯体コンクリート1の表面に吹き付けるに先立ち、躯体コンクリート1の表面に目粗しの処理を行う。この目粗しは、高圧洗浄、サンドブラスト、サンダー等によるものであり、例えば、±1mm以下の凹凸をつけるものである。
【0034】
また、躯体コンクリート1の表面に凹凸が大きく、すでに、ひび割れ3を生じている場合には、ひび割れ3に沿って両側にを設置し、高靱性の繊維補強セメント複合材料は2その上に吹き付け施工するものとする。図中4は躯体コンクリート1の鉄筋である。
【0035】
この無付着帯5の形成は、剥離材を刷毛等で塗布したり、テープを貼り付けることで簡単に形成できる。
【0036】
図2に吹き付けのシステムを示すと、ミキサ6で前記高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)2を混練成形し、これをホッパー7で受けて、ポンプ8により耐圧ホース9を圧送し、圧搾空気を混入する吹付けガン10で躯体コンクリート1の表面に吹付ける。
【0037】
吹き付け厚さは3mm以上、20mm以下が望ましいが、5mm、または5mm程度が最適である。
【0038】
高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)2では繊維によるクラックの拘束能力が高く、ひび割れの拡大を防ぎ、次のひび割れを発生させる。引き続き、次々と新たな微小なひび割れを数多く発生させるため、見かけ上非常に大きな引張りひずみが生じても荷重に耐えることができる。
【0039】
また、ひび割れを微小な幅(例えば0.05mm以下)に制御できるので、ひび割れからの水の浸透を防ぐことも可能である。ひび割れからの全ての浸透を防ぐことができない場合でも、浸透量はひび割れ幅の3乗に比例すると言われており、ひび割れ幅を制御できることは浸透量を大きく制限することができることになる。そして、ひび割れからの水の浸透を防ぐことにより、水に溶解してコンクリートに浸入しコンクリートを劣化させる硫酸塩や酸等の物質から防護でき、共用年数の延長に大きく貢献することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたようにこの発明の躯体コンクリートの表面保護工法は、コンクリート躯体と同じ無機系のものであり、躯体との一体性を保持でき、しかも、吹き付けをもって施工できるので、後施工アンカーなどの煩雑な工程を省略して施工の省力化を図り、コンクリート躯体に生じるまたは生じた大きな開口幅のひび割れに追従せず、ひび割れを抑制し、有害物質の進入を阻止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の躯体コンクリートの表面保護工法の実施形態を示す説明図である。
【図2】この発明の躯体コンクリートの表面保護工法の吹き付けシステムを示す説明図である。
【符号の説明】
1…躯体コンクリート
2…高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)
3…ひび割れ
4…鉄筋
5…無付着帯
6…ミキサ
7…ホッパー
8…ポンプ
9…耐圧ホース
10…吹付けガン

Claims (4)

  1. 躯体コンクリートの表面に目粗しの処理を行い、その上に、材令28日の硬化体の引張試験において引張ひずみが1%以上を示すクラック分散型であって、下記〔F1〕のPVA(Polyvinyl Alcohol)短繊維を、〔M1〕の調合マトリクスに、1越え3Vol.%の配合量で、3次元ランダムまたは2次元ランダムに配合した高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)を吹付けにより施工することを特徴とする躯体コンクリートの表面保護工法。
    〔M1〕
    ・水結合材比(W/C)25%以上
    ・砂結合材料重量比(S/C)が1.5以下(0を含む)
    細骨材の最大粒径0.8mm以下、平均粒径0.4mm以下、
    単位水量250kg/m以上400kg/m以下
    高性能AE減水剤量30 kg/m未満
    〔F1〕
    繊維径50μm以下
    繊維長:5〜20mm
    繊維引張強度:1500MPa〜2400MPa以下
  2. 前記〔M1〕の調合マトリクスにおいて、練り上がり時の空気量20%以上とする請求項1記載の躯体コンクリートの表面保護工法。
  3. 前記高靱性の繊維補強セメント複合材料(高靱性FRC材料)の吹付け厚さは3mm〜20mmとする請求項1または請求項2記載の躯体コンクリートの表面保護工法。
  4. ひび割れに沿って両側に無付着帯を設置し、高靱性の繊維補強セメント複合材料はその上に吹き付け施工する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の躯体コンクリートの表面保護工法。
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