JP2004323755A - プリプレグおよび繊維強化複合材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】オートクレーブ成形によることなく、真空圧のみによる成形においても内部のボイドや表面のピンホールがなく、且つ、外観に優れたFRPを得ることができるプリプレグを開発する。
【解決手段】補強繊維織物からなるシート状基材にマトリックス樹脂を含浸してなるプリプレグにおいて、プリプレグ表面に凹凸を有し、その凹凸係数が11以上34以下であるプリプレグ。補強繊維織物に用いる補強繊維として、炭素繊維、ガラス繊維が好適である。また、マトリックス樹脂としては熱硬化性樹脂が好適である。そして、これを真空パック成形して、外観特性に優れたFRPを得ることができる。
【解決手段】補強繊維織物からなるシート状基材にマトリックス樹脂を含浸してなるプリプレグにおいて、プリプレグ表面に凹凸を有し、その凹凸係数が11以上34以下であるプリプレグ。補強繊維織物に用いる補強繊維として、炭素繊維、ガラス繊維が好適である。また、マトリックス樹脂としては熱硬化性樹脂が好適である。そして、これを真空パック成形して、外観特性に優れたFRPを得ることができる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化複合材料を成形するための中間材料である補強繊維織物で補強されたプリプレグに関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化複合材料(以下、FRPと略記する)は、軽量、且つ、高強度、高剛性の特長をいかし、スポーツ・レジャー用途から自動車や航空機等の産業用途まで、幅広く用いられている。
【0003】
FRPを成形する際には成形体中あるいは成形体表面に欠陥の無いよう成形することが重要である。特に成形体中にボイドと呼ばれる気泡を含むことによる強度低下や、ピンホールと呼ばれる成形体表面の欠陥による外観不良が問題となることが多い。このボイドやピンホールが発生する原因としては、様々なことが考えられているが、主としてプリプレグを積層する際にプリプレグ間もしくはプリプレグとツール面の間にかみ込んでしまった空気が、成形中に抜け切ることができずに残存することが挙げられる。
【0004】
このようなボイドやピンホールの発生を抑制するために、FRPを成形する際には、プリプレグと呼ばれる中間材料を用い、オートクレーブ成形で製造されることが一般的である。しかしながら、オートクレーブ成形では高圧を加えて成形するため、成形品中のボイドや表面のピンホールの発生を軽減することができる。しかしながら、オートクレーブ自体が非常に高価であり、新規参入の大きな妨げになるばかりでなく、一旦導入するとそのオートクレーブの大きさにより成形品の大きさが制限され、より大きなFRPへの対応が事実上不可能となる。
【0005】
このような問題点に対し、脱オートクレーブ、低コスト成形の開発が盛んに行われている。その代表的なものとしては、真空、大気圧で成形する、オーブン成形(または真空バッグ成形とも言うことがある)がある。オーブン成形では成形品に圧力を加えないので、オートクレーブのようなしっかりした耐圧力容器でなくてもよく、例えば、断熱ボードと熱風ヒーターといった、その内部の温度さえ上げることができる装置を備えていれば成形することができる。ただし、成形品に圧力を加えないので、成形品中にボイドが残りやすく、その成形品はオートクレーブでの成形品に比べて強度が低いという欠点があった。また成形品の表面にピンホールが発生するという問題があった。この問題は、表面に凹凸の刻まれたロールによりプリプレグ表面に連続した凹部を形成し、成形時に凹部を空気の抜け道として利用して、成形体中のボイドやピンホールを抑制する技術(例えば、特許文献1参照)がある。しかし、プリプレグ上に賦形した溝は、成形時にはたらく補強繊維が膨らもうとする力により溝がふさがれるが、加圧を行わず大気圧のみで脱気を行うオーブン成形では、ふさがれる前に成形体中のボイドや成形体表面のピンホールの原因となる空気だまりを完全に抜くことが難しいため、特許文献1でも上述の問題は完全には解決されていない。
【0006】
このような問題に対しても近年解決策が講じられつつある。例えば、樹脂層と補強繊維層を重ねて成形材料として用い、成形中に樹脂を補強繊維層に含浸させる方法が考えられており、オーブン成形でもボイドの発生が少なく、表面も非常にきれいな成形品が得られる(例えば、特許文献2参照)。しかしながらこの技術では成形中にほとんどの樹脂を含浸させるため、成形条件によっては樹脂を含浸し切れない部分が発生し、内部にボイドや表面にピンホールが発生する。また、前記成形材料は表面に樹脂がなく非常にドライな為、成形型への貼り付けが困難であるなど、作業性にも問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−298520号公報
【特許文献2】
国際公開第00/27632号パンフレット
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、従来のプリプレグ並みの作業性を維持しながら、オートクレーブ成形によることなく、内部のボイドや表面のピンホールがなく、且つ、外観に優れたFRPを得ることができるプリプレグを開発することにある。
【0009】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を進めた結果、プリプレグ表面の凹凸係数を特定の範囲とすることによって、ボイドやピンホールがなく、外観の優れたFRP用のプリプレグを得ることに成功した。
すなわち、本発明は下記1)〜9)記載のプリプレグ及び当該プリプレグを真空バッグ成形して得られるFRPを提供するものである。
【0010】
1)補強繊維織物にマトリックス樹脂を含浸してなるプリプレグであって、プリプレグ表面に凹凸を有し、その凹凸係数が11以上34以下であることを特徴とするプリプレグ。
2)補強繊維織物にマトリックス樹脂を含浸してなるプリプレグであって、プリプレグ表面に凹凸を持ち、その凹凸係数が13以上27以下であることを特徴とするプリプレグ。
3)補強繊維織物の繊維目付が400g/m2 以上である上記1)または2)記載のプリプレグ。
【0011】
4)マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂からなる上記1)〜3)に記載のプリプレグ。
5)補強繊維織物にホットメルト法によりマトリックス樹脂を含浸して得られる上記1)〜4)に記載のプリプレグ。
6)補強繊維織物が炭素繊維又はガラス繊維からなる上記1)〜5)に記載のプリプレグ。
7)補強繊維織物の織形態が綾織である上記1)〜6)に記載のプリプレグ。
【0012】
8)上記1)〜7)に記載のプリプレグを真空バッグ成形して得られる繊維強化複合材料。
9)真空バッグ成形がバッグ内部を50℃以下で真空引きした後50℃以上に昇温するものである上記8)に記載の繊維強化複合材料。
【0013】
【発明実施の形態】
以下、本発明の構成について詳細に説明する。
本発明のプリプレグに用いられる補強繊維織物に用いられる繊維としては特に制限はなく、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、高強度ポリエチレン繊維、ボロン繊維、スチール繊維等を例示できるが、FRPの性能、特に安価で強度に優れるガラス繊維や、軽量で高強度、高剛性の機械物性が得られる炭素繊維が好ましく用いられる。また、補強繊維織物の形態としても特に制限はなく、平織、綾織、朱子織、3次元織物、または繊維束を一方向、あるいは角度を変えて積層した状態のものをほぐれない様にステッチしたNCF(ノン・クリンプト・ファブリック)のようなステッチングシート等を例示することできる。綾織を織形態として用いると、ボイドやピンホールがより発生し難いため好ましい。
【0014】
プリプレグに用いられるマトリックス樹脂としても特に制限はなく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができるが、プリプレグとしてのタックやドレープなどの取り扱い性、成形性などから熱硬化性樹脂が好適に用いられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、BT樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が例示できるが、取り扱い性、硬化物物性からエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、BT樹脂、シアネートエステル樹脂が好ましく、これらの中でエポキシ樹脂が特に好適に用いられる。
【0015】
本発明のプリプレグは、その表面の凹凸係数が11以上34以下でなくてはならない。成形中に加圧をせずに成形する場合、材料として脱気回路の確保が重要であることはこれまでの先行技術でも指摘されてきた。しかしながら、前掲特許文献1に記載されているように、溝ロールにより補強繊維織物を用いたプリプレグの表面に連続した凹状の溝を賦形した場合、補強繊維織物の凹状の連続した溝は、補強繊維が膨らもうとする力により小さくなりやすい。そのため加圧を行わず大気圧で脱気を行う真空バッグ成形では、成形体中のボイドや成形体表面のピンホールを完全に抑制することができなかった。本発明はプリプレグにおける脱気回路の適切な形状、大きさについての検討により、補強繊維織物の凹凸に沿ってプリプレグ上に凹凸を賦形し、かつある適切な範囲の凹凸係数を有するプリプレグを用いることによって真空圧のみで成形する真空バック形成においても成形体中のボイドやピンホールを抑制することができることを見出したものである。
【0016】
本発明における凹凸係数とは、補強繊維織物からなるブリプレグの凸部と凹部の厚みの差から後記式(1)で算出される係数である。以下では、凹凸係数の測定方法について、2/2綾織の補強繊維織物を使用したブリプレグを例として詳しく説明する。
図1は2/2綾織の補強繊維織物を使用したプリプレグの平面図である。まず、断面を観察するためにプリプレグを、図1中の破線のように、端部を除いた任意の補強繊維の中心線に沿ってカットする。その際、プリプレグ自体が曲がらないよう注意しながら、剃刀のような鋭利な刃物を使い、何回もなぞることなく一気にカットする必要がある。
次に、カットしたブリプレグを、平らな板に貼り付けて断面を視察する。断面を観察する場合には、拡大鏡等を用いて、倍率20倍〜200倍程度に拡大して観察するとよい。
【0017】
図2は、繊維の中心線に沿ってカットしたブリプレグの断面図である。図2中の凸1 〜凸7 は補強繊維織物の凸部によって形成されるブリプレグ表面の凸部の厚みであり、板を基準面とした時の、凸部の極大点までの厚み(mm)である。また、凹1 〜凹7 はそれぞれ補強繊維織物の凹部によって形成されるブリプレグ表面の凹部の厚みであり、板を基準面とした時の、凹部の極小点までの厚み(mm)である。このように、両端部(断面上で最も端にある凸部及び凹部)を除く全ての断面上の凸部の厚み、及び凹部の厚みを測定し、式(1)によりブリプレグの凹凸係数を算出する。なお、凸部の厚み、及び凹部の厚みを測定する際には画像処理装置などを用いてもよい。
【0018】
【数1】
【0019】
ここで、凸av. 及び凹av. はそれぞれプリプレグの凸部及び凹部の平均厚みであり、図2の場合は、凸部及び凹部がそれぞれ7ヶ所ずつ存在する(両端の凸部及び凹部はそれぞれ除いた。)ので、凸av. =(凸1 +凸2 +凸3 +凸4 +凸5 +凸6 +凸7 )/7、凹av. =(凹1 +凹2 +凹3 +凹4 +凹5 +凹6 +凹7 )/7となる。両端部を除く全ての断面上の凸部の厚み、及び凹部の厚みについて測定して、凸av. 及び凹av. を算出することが好ましいが、プリプレグの幅が広く測定すべき凸部及び凹部が非常に多い場合には、プリプレグの中心付近に存在する、連続した7点以上の凸部と凹部とについてそれぞれ測定して、凸av. 及び凹av. を算出すればよい。
式(1)で、Fはプリプレグに用いる補強繊維織物の繊維目付(g/m2 )、σは補強繊維の密度(g/cm3 )である。なお、一枚の補強繊維織物中に複数種の補強繊維を用いている場合には、σはそれぞれの補強繊維の密度を、補強繊維織物中の重量分率で除したものの和とする。
【0020】
本発明において、脱気回路の大きさは成形体のボイドやピンホールを抑制するための重要な要素である。脱気回路が小さすぎるとプリプレグを積層する際にかみこむ空気を脱気することができずに、ボイドやピンホールが成形体中に残ってしまう。また、脱気回路が大きすぎても、成形後に脱気回路が残ってしまい、内部ボイドや表面ピンホールの原因となる。本発明のプリプレグにおける脱気回路の適切な大きさは、上記式(1)により求められる凹凸係数が11以上である。凹凸係数が11未満である場合には成形中の脱気回路が十分に確保されないため、成形後に内部ボイドや表面のピンホールが多数残りやすくなるので好ましくない。さらに凹凸係数が13以上になると脱気回路が確保されやすく、成形後の内部ボイドがさらに低減されるので好ましい。また、凹凸係数が34を越える場合、樹脂の流れ不足により成形後に内部ボイドや表面のピンホールが発生してしまう為よくない。凹凸係数が27以下であればより樹脂が流れやすく、表面のピンホール、内部ボイドが発生し難いため好ましい。
【0021】
また本発明のプリプレグにおける補強繊維織物の繊維目付は、400g/m2 以上であることが好ましい。本発明のプリプレグは脱気回路を有しながら、尚且つ、成形中に補強繊維織物の隅々にまで樹脂が移動し、完全に含浸して成形品内部のボイドや表面のピンホールを発生しないものであるので、十分な凹凸が得られ、積層枚数が少なくて済むよう補強繊維織物がある程度厚いものが適している。繊維目付でいうならば400g/m2 以上の補強繊維織物が適している。また、600g/m2 以上であれば更に好ましく、700g/m2 以上は特に好ましい。
【0022】
本発明のプリプレグを製造する方法としては、特に制限はないが、補強繊維からなる補強繊維織物の片側面もしくは両側面からホットメルト法によりマトリックス樹脂を供給し、加熱及び加圧してマトリックス樹脂を補強繊維織物に含侵させてプリプレグを製造する方法が好ましい。その際に、加熱する温度、加圧する圧力を調節して樹脂の移動量、移動具合を調整し、プリプレグの凹凸係数を11以上34以下に調節する。ホットメルト法とは溶剤を含まず、マトリックス樹脂の温度を上げることによりマトリックス樹脂の粘度を下げて基材に樹脂を含浸させるプリプレグの製造方法である。ホットメルト法でプリプレグを製造する方法としては、通常は補強繊維織物の両面から樹脂を供給し、マトリックス樹脂と補強繊維織物が十分になじむまで温度及び圧力を掛けるのが一般的であるが、樹脂と補強繊維織物を十分になじませた場合図3に示すように補強繊維織物の織り目の間にまでマトリックス樹脂が浸透してしまい、プリプレグ表面の凹凸が殆ど残らないため好ましくない。マトリックス樹脂をなじませる際の圧力及び温度をマトリックス樹脂が十分に浸透しないように低めに調整することにより、図4に示すように補強繊維織物の織り目の間に樹脂が浸透しない様にすることができ、凹凸係数を11以上34以下になるように温度、圧力等を調整する事が好ましい。
【0023】
本発明のプリプレグを用いてFRPを成形する方法としては特に制限はないが、真空バッグ成形を用いることが好ましい。FRPを成形する際に、特に50℃以下の温度で30分以上バッグ内部を真空引きするのが好ましい。これは形成されている脱気回路を通して内部のエアをプリプレグの積層体の外へ導き出す為である。温度が50℃を上回った場合にはマトリックス樹脂の種類によってはその粘度が下がり、完全にエアが抜けきる前にマトリックス樹脂が移動し、脱気回路を閉鎖してしまうことがあるので好ましくない。45℃以下の温度でバッグ内部を真空引きするのが更に好ましく、40℃以下の場合には特に好ましい。室温未満の温度で真空引きするためには冷却装置が必要である為、真空引きする時の下限の温度としては室温で十分である。
【0024】
また、真空引きの時間が30分未満の場合には完全にエアが抜けきっていない場合があるので好ましくない。60分以上真空引きするのが更に好ましく、90分以上が特に好ましい。但し、あまりに長時間真空引きをすると生産性が低下してしまう。真空引きする時間として十分な時間は成形品の大きさや形状にも依存するが、上限としては6時間で十分である。また本発明でいう真空とは完全な真空状態ではなく、50Torr以下の減圧状態をいう。減圧が10Torr以下であれば更に好ましく、5Torr以下は特に好ましい。
また、本発明のプリプレグを用いて真空バッグ成形でFRPを成形する方法としては、上記の時間の間真空引きした後、真空状態を保持したまま昇温することが好ましい。真空引きによりエアを導き出した後、真空状態を保持していないと織物内に再びエアを引き込んでしまい、層間ボイド、表面ピンホールの原因となってしまう。
【0025】
また、本発明のプリプレグを用いて真空バッグ成形でFRPを成形する方法としては成形温度より20℃以上低い温度から成形温度までの昇温速度が1℃以下/分であることが好ましい。上記のように真空引きした後、真空状態を保持したまま昇温していくが、昇温途中でマトリックス樹脂が一気に移動し始めると、真空状態、すなわち50Torr以下の減圧状態で、僅かに残るエアを閉じ込めたまま硬化してしまい、層間ボイドや表面ピンホールが残ってしまう。したがって昇温過程でのマトリックス樹脂の移動速度を制限し、最後に残る僅かなエアも成形品から追い出すことが必要である。そのためには昇温速度を遅くすれば良いが、あまり低い温度ではもともとマトリックス樹脂の粘度が高く、移動能が低い為、昇温速度を遅くする効果があまりない。通常成形する温度付近でマトリックス樹脂の粘度は最低となるので、成形温度より20℃以上低い温度から昇温速度を1℃以下にすると効果が高い。成形温度より30℃以上低い温度から昇温速度を1℃以下にすると更に好ましく、40℃以上低い温度からの場合は特に好ましい。また昇温速度は0.7℃以下/分は更に好ましく、0.5℃以下/分は特に好ましい。
【0026】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0027】
実施例1:
マトリックス樹脂として三菱レイヨン(株)製エポキシ樹脂組成物#852を用い、離型紙上に430g/m2 の樹脂目付で均一に塗工して樹脂フィルムを調製した。この樹脂フィルムを、三菱レイヨン(株)製炭素繊維織物TRK510(繊維目付646g/m2 、2/2綾織)の下側面に供給し、炭素繊維クロスに樹脂を含浸させた。含侵にはアサヒ繊維工業(株)製フュージングプレスASAHI FUSINGを用いて、含浸の温度は55℃、0.1MPaの圧力で加圧時間60秒の条件で過熱加圧しプリプレグを調製した。得られたプリプレグの凹凸係数を測定したところ19であり、本発明のプリプレグであることを確認した。
次に、得られたプリプレグを0°で10枚積層し、真空バッグして25cm角のパネルをオーブン成形した。プリプレグの表面には十分なタックがあり、作業性は良好であった。
成形条件は次の通りとした。室温から50℃まで3℃/分で昇温し、50℃、3時間20Torrの減圧下で保持し、その後20Torrの減圧状態を維持しながら1℃/分で80℃まで昇温し、80℃×1時間で成形した。
得られたパネルのボイド観察を行った。成型した複合材料パネルを(株)丸東製湿式カッターAC300CFでカットし、25倍の倍率で断面の観察を行った。観察したカット面10cm当たりに観察された0.5mm以上の直径を持つボイドの数を測定したところ、5個であり、表面のピンホールも確認されなかった。この結果は表1にあわせて示す。
【0028】
実施例2:
プリプレグの調製において、加圧時間を100秒とした以外は実施例1と同様にしてプリプレグを得た。得られたプリプレグの凹凸係数を測定したところ13であり、本発明のプリプレグであることを確認した。このプリプレグを実施例1と同様に積層しパネルを作成した。プリプレグの表面には十分なタックがあり、作業性は良好であった。得られたパネルのボイド観察を行ったところ、カット面10cm当たりに観察された0.5mm以上の直径を持つボイドの数は10個であり表面のピンホールは観察されなかった。この結果は表1にあわせて示す。
【0029】
比較例1:
プリプレグの調製において、含侵温度を60℃とし、0.2MPaの圧力で加圧時間120秒の条件で2回加熱及び加圧した他は実施例1と同様にしてプリプレグを得た。得られたプリプレグの凹凸係数を測定したところ、10であった。このプリプレグを実施例1と同じように積層し、パネルを成形した。プリプレグの表面には十分なタックがあり、作業性は良好であった。成形されたパネルの断面を実施例1と同じように観察したところ、カット面10cm当たりに観察された直径0.5mm以上のボイドは85個であり、パネルの表面には多数のピンホールが観察された。この結果は表1にあわせて示す。
【0030】
実施例3:
マトリックス樹脂としては三菱レイヨン(株)製エポキシ樹脂#852を用い、離型紙に133g/m2 の樹脂目付で均一に塗工して樹脂フィルムを調製した。この樹脂フィルムを、三菱レイヨン(株)製炭素繊維織物TRK3110(繊維目付200g/m2 、平織)の下側面から供給し、炭素繊維織物に樹脂を含浸させた。ただし、含浸の温度は55℃とし、0.1MPaの圧力で加圧時間40秒の条件で加熱及び加圧しプリプレグを得た。得られたプリプレグの凹凸係数を測定したところ18であり、本発明のプリプレグであることを確認した。このプリプレグを25cm角にカットし、0°で10枚積層し、実施例1と同様の温度条件でパネルを作成した。プリプレグの表面には十分なタックがあり、作業性は良好であった。得られたパネルのボイド観察を行ったところ、カット面10cm当たりに観察された0.5mm以上の直径を持つボイドの数は2個であり表面のピンホールは観察されなかった。この結果は表1にあわせて示す。
【0031】
比較例2:
プリプレグの調製において、含浸条件を次の通りに代えた他は、実施例3と同様にしてプリプレグを得た。含浸の温度は60℃とし、0.2MPaの圧力で加圧時間120秒の条件で2回加熱及び加圧した。得られたプリプレグの凹凸係数を測定したところ7.0であった。実施例1と同様の温度条件でパネルを作成した。プリプレグの表面には十分なタックがあり、作業性は良好であった。またパネルのボイド観察を行ったところ、カット面10cm当たりに観察された0.5mm以上の直径を持つボイドの数は53個であり、表面には多数のピンホールが観察された。この結果は表1にあわせて示す。
【0032】
比較例3:
離型紙に380g/m2 の樹脂目付で均一に塗工し、含侵温度を40℃、圧力0.05MPa、加圧時間を15秒とした以外は、実施例1と同じ条件で加熱及び加圧しプリプレグを調製した。得られたプリプレグの凹凸係数を測定したところ、35であった。このブリプレグを実施例1と同じように積層し、パネルを成形した。ブリプレグの表面のタックは弱く、作業性は良くなかった。成形されたパネルの断面を実施例1と同じように観察したところ、カット面10cm当たりに観察された直径0.5mm以上のボイドは32個であり、パネルの表面には少数ではあるが、ピンホールが観察された。この結果は表1にあわせて示した。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のプリプレグは表面に凹凸を持ち、凹凸係数が11以上、34以下であるので、従来のプリプレグ並みの取扱い性を維持しながら、オートクレーブを用いない、真空圧のみによる成形において、表面のピンホールや内部のボイドがなく、外観に優れたFRPを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2/2綾織の炭素繊維織物を補強繊維として樹脂フィルムを含侵したプリプレグの模式図。
【図2】プリプレグの凹凸係数を測定する際のプリプレグカット面の模式図。
【図3】樹脂と補強繊維織物を十分になじませ、プリプレグ表面の凹凸を小さくしたプリプレグの断面図。
【図4】樹脂と補強繊維織物を十分になじませず、プリプレグ表面の凹凸を大きくしたプリプレグの断面図。
【符号の説明】
1 たて糸
2 よこ糸
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化複合材料を成形するための中間材料である補強繊維織物で補強されたプリプレグに関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化複合材料(以下、FRPと略記する)は、軽量、且つ、高強度、高剛性の特長をいかし、スポーツ・レジャー用途から自動車や航空機等の産業用途まで、幅広く用いられている。
【0003】
FRPを成形する際には成形体中あるいは成形体表面に欠陥の無いよう成形することが重要である。特に成形体中にボイドと呼ばれる気泡を含むことによる強度低下や、ピンホールと呼ばれる成形体表面の欠陥による外観不良が問題となることが多い。このボイドやピンホールが発生する原因としては、様々なことが考えられているが、主としてプリプレグを積層する際にプリプレグ間もしくはプリプレグとツール面の間にかみ込んでしまった空気が、成形中に抜け切ることができずに残存することが挙げられる。
【0004】
このようなボイドやピンホールの発生を抑制するために、FRPを成形する際には、プリプレグと呼ばれる中間材料を用い、オートクレーブ成形で製造されることが一般的である。しかしながら、オートクレーブ成形では高圧を加えて成形するため、成形品中のボイドや表面のピンホールの発生を軽減することができる。しかしながら、オートクレーブ自体が非常に高価であり、新規参入の大きな妨げになるばかりでなく、一旦導入するとそのオートクレーブの大きさにより成形品の大きさが制限され、より大きなFRPへの対応が事実上不可能となる。
【0005】
このような問題点に対し、脱オートクレーブ、低コスト成形の開発が盛んに行われている。その代表的なものとしては、真空、大気圧で成形する、オーブン成形(または真空バッグ成形とも言うことがある)がある。オーブン成形では成形品に圧力を加えないので、オートクレーブのようなしっかりした耐圧力容器でなくてもよく、例えば、断熱ボードと熱風ヒーターといった、その内部の温度さえ上げることができる装置を備えていれば成形することができる。ただし、成形品に圧力を加えないので、成形品中にボイドが残りやすく、その成形品はオートクレーブでの成形品に比べて強度が低いという欠点があった。また成形品の表面にピンホールが発生するという問題があった。この問題は、表面に凹凸の刻まれたロールによりプリプレグ表面に連続した凹部を形成し、成形時に凹部を空気の抜け道として利用して、成形体中のボイドやピンホールを抑制する技術(例えば、特許文献1参照)がある。しかし、プリプレグ上に賦形した溝は、成形時にはたらく補強繊維が膨らもうとする力により溝がふさがれるが、加圧を行わず大気圧のみで脱気を行うオーブン成形では、ふさがれる前に成形体中のボイドや成形体表面のピンホールの原因となる空気だまりを完全に抜くことが難しいため、特許文献1でも上述の問題は完全には解決されていない。
【0006】
このような問題に対しても近年解決策が講じられつつある。例えば、樹脂層と補強繊維層を重ねて成形材料として用い、成形中に樹脂を補強繊維層に含浸させる方法が考えられており、オーブン成形でもボイドの発生が少なく、表面も非常にきれいな成形品が得られる(例えば、特許文献2参照)。しかしながらこの技術では成形中にほとんどの樹脂を含浸させるため、成形条件によっては樹脂を含浸し切れない部分が発生し、内部にボイドや表面にピンホールが発生する。また、前記成形材料は表面に樹脂がなく非常にドライな為、成形型への貼り付けが困難であるなど、作業性にも問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−298520号公報
【特許文献2】
国際公開第00/27632号パンフレット
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、従来のプリプレグ並みの作業性を維持しながら、オートクレーブ成形によることなく、内部のボイドや表面のピンホールがなく、且つ、外観に優れたFRPを得ることができるプリプレグを開発することにある。
【0009】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を進めた結果、プリプレグ表面の凹凸係数を特定の範囲とすることによって、ボイドやピンホールがなく、外観の優れたFRP用のプリプレグを得ることに成功した。
すなわち、本発明は下記1)〜9)記載のプリプレグ及び当該プリプレグを真空バッグ成形して得られるFRPを提供するものである。
【0010】
1)補強繊維織物にマトリックス樹脂を含浸してなるプリプレグであって、プリプレグ表面に凹凸を有し、その凹凸係数が11以上34以下であることを特徴とするプリプレグ。
2)補強繊維織物にマトリックス樹脂を含浸してなるプリプレグであって、プリプレグ表面に凹凸を持ち、その凹凸係数が13以上27以下であることを特徴とするプリプレグ。
3)補強繊維織物の繊維目付が400g/m2 以上である上記1)または2)記載のプリプレグ。
【0011】
4)マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂からなる上記1)〜3)に記載のプリプレグ。
5)補強繊維織物にホットメルト法によりマトリックス樹脂を含浸して得られる上記1)〜4)に記載のプリプレグ。
6)補強繊維織物が炭素繊維又はガラス繊維からなる上記1)〜5)に記載のプリプレグ。
7)補強繊維織物の織形態が綾織である上記1)〜6)に記載のプリプレグ。
【0012】
8)上記1)〜7)に記載のプリプレグを真空バッグ成形して得られる繊維強化複合材料。
9)真空バッグ成形がバッグ内部を50℃以下で真空引きした後50℃以上に昇温するものである上記8)に記載の繊維強化複合材料。
【0013】
【発明実施の形態】
以下、本発明の構成について詳細に説明する。
本発明のプリプレグに用いられる補強繊維織物に用いられる繊維としては特に制限はなく、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、高強度ポリエチレン繊維、ボロン繊維、スチール繊維等を例示できるが、FRPの性能、特に安価で強度に優れるガラス繊維や、軽量で高強度、高剛性の機械物性が得られる炭素繊維が好ましく用いられる。また、補強繊維織物の形態としても特に制限はなく、平織、綾織、朱子織、3次元織物、または繊維束を一方向、あるいは角度を変えて積層した状態のものをほぐれない様にステッチしたNCF(ノン・クリンプト・ファブリック)のようなステッチングシート等を例示することできる。綾織を織形態として用いると、ボイドやピンホールがより発生し難いため好ましい。
【0014】
プリプレグに用いられるマトリックス樹脂としても特に制限はなく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができるが、プリプレグとしてのタックやドレープなどの取り扱い性、成形性などから熱硬化性樹脂が好適に用いられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、BT樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が例示できるが、取り扱い性、硬化物物性からエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、BT樹脂、シアネートエステル樹脂が好ましく、これらの中でエポキシ樹脂が特に好適に用いられる。
【0015】
本発明のプリプレグは、その表面の凹凸係数が11以上34以下でなくてはならない。成形中に加圧をせずに成形する場合、材料として脱気回路の確保が重要であることはこれまでの先行技術でも指摘されてきた。しかしながら、前掲特許文献1に記載されているように、溝ロールにより補強繊維織物を用いたプリプレグの表面に連続した凹状の溝を賦形した場合、補強繊維織物の凹状の連続した溝は、補強繊維が膨らもうとする力により小さくなりやすい。そのため加圧を行わず大気圧で脱気を行う真空バッグ成形では、成形体中のボイドや成形体表面のピンホールを完全に抑制することができなかった。本発明はプリプレグにおける脱気回路の適切な形状、大きさについての検討により、補強繊維織物の凹凸に沿ってプリプレグ上に凹凸を賦形し、かつある適切な範囲の凹凸係数を有するプリプレグを用いることによって真空圧のみで成形する真空バック形成においても成形体中のボイドやピンホールを抑制することができることを見出したものである。
【0016】
本発明における凹凸係数とは、補強繊維織物からなるブリプレグの凸部と凹部の厚みの差から後記式(1)で算出される係数である。以下では、凹凸係数の測定方法について、2/2綾織の補強繊維織物を使用したブリプレグを例として詳しく説明する。
図1は2/2綾織の補強繊維織物を使用したプリプレグの平面図である。まず、断面を観察するためにプリプレグを、図1中の破線のように、端部を除いた任意の補強繊維の中心線に沿ってカットする。その際、プリプレグ自体が曲がらないよう注意しながら、剃刀のような鋭利な刃物を使い、何回もなぞることなく一気にカットする必要がある。
次に、カットしたブリプレグを、平らな板に貼り付けて断面を視察する。断面を観察する場合には、拡大鏡等を用いて、倍率20倍〜200倍程度に拡大して観察するとよい。
【0017】
図2は、繊維の中心線に沿ってカットしたブリプレグの断面図である。図2中の凸1 〜凸7 は補強繊維織物の凸部によって形成されるブリプレグ表面の凸部の厚みであり、板を基準面とした時の、凸部の極大点までの厚み(mm)である。また、凹1 〜凹7 はそれぞれ補強繊維織物の凹部によって形成されるブリプレグ表面の凹部の厚みであり、板を基準面とした時の、凹部の極小点までの厚み(mm)である。このように、両端部(断面上で最も端にある凸部及び凹部)を除く全ての断面上の凸部の厚み、及び凹部の厚みを測定し、式(1)によりブリプレグの凹凸係数を算出する。なお、凸部の厚み、及び凹部の厚みを測定する際には画像処理装置などを用いてもよい。
【0018】
【数1】
【0019】
ここで、凸av. 及び凹av. はそれぞれプリプレグの凸部及び凹部の平均厚みであり、図2の場合は、凸部及び凹部がそれぞれ7ヶ所ずつ存在する(両端の凸部及び凹部はそれぞれ除いた。)ので、凸av. =(凸1 +凸2 +凸3 +凸4 +凸5 +凸6 +凸7 )/7、凹av. =(凹1 +凹2 +凹3 +凹4 +凹5 +凹6 +凹7 )/7となる。両端部を除く全ての断面上の凸部の厚み、及び凹部の厚みについて測定して、凸av. 及び凹av. を算出することが好ましいが、プリプレグの幅が広く測定すべき凸部及び凹部が非常に多い場合には、プリプレグの中心付近に存在する、連続した7点以上の凸部と凹部とについてそれぞれ測定して、凸av. 及び凹av. を算出すればよい。
式(1)で、Fはプリプレグに用いる補強繊維織物の繊維目付(g/m2 )、σは補強繊維の密度(g/cm3 )である。なお、一枚の補強繊維織物中に複数種の補強繊維を用いている場合には、σはそれぞれの補強繊維の密度を、補強繊維織物中の重量分率で除したものの和とする。
【0020】
本発明において、脱気回路の大きさは成形体のボイドやピンホールを抑制するための重要な要素である。脱気回路が小さすぎるとプリプレグを積層する際にかみこむ空気を脱気することができずに、ボイドやピンホールが成形体中に残ってしまう。また、脱気回路が大きすぎても、成形後に脱気回路が残ってしまい、内部ボイドや表面ピンホールの原因となる。本発明のプリプレグにおける脱気回路の適切な大きさは、上記式(1)により求められる凹凸係数が11以上である。凹凸係数が11未満である場合には成形中の脱気回路が十分に確保されないため、成形後に内部ボイドや表面のピンホールが多数残りやすくなるので好ましくない。さらに凹凸係数が13以上になると脱気回路が確保されやすく、成形後の内部ボイドがさらに低減されるので好ましい。また、凹凸係数が34を越える場合、樹脂の流れ不足により成形後に内部ボイドや表面のピンホールが発生してしまう為よくない。凹凸係数が27以下であればより樹脂が流れやすく、表面のピンホール、内部ボイドが発生し難いため好ましい。
【0021】
また本発明のプリプレグにおける補強繊維織物の繊維目付は、400g/m2 以上であることが好ましい。本発明のプリプレグは脱気回路を有しながら、尚且つ、成形中に補強繊維織物の隅々にまで樹脂が移動し、完全に含浸して成形品内部のボイドや表面のピンホールを発生しないものであるので、十分な凹凸が得られ、積層枚数が少なくて済むよう補強繊維織物がある程度厚いものが適している。繊維目付でいうならば400g/m2 以上の補強繊維織物が適している。また、600g/m2 以上であれば更に好ましく、700g/m2 以上は特に好ましい。
【0022】
本発明のプリプレグを製造する方法としては、特に制限はないが、補強繊維からなる補強繊維織物の片側面もしくは両側面からホットメルト法によりマトリックス樹脂を供給し、加熱及び加圧してマトリックス樹脂を補強繊維織物に含侵させてプリプレグを製造する方法が好ましい。その際に、加熱する温度、加圧する圧力を調節して樹脂の移動量、移動具合を調整し、プリプレグの凹凸係数を11以上34以下に調節する。ホットメルト法とは溶剤を含まず、マトリックス樹脂の温度を上げることによりマトリックス樹脂の粘度を下げて基材に樹脂を含浸させるプリプレグの製造方法である。ホットメルト法でプリプレグを製造する方法としては、通常は補強繊維織物の両面から樹脂を供給し、マトリックス樹脂と補強繊維織物が十分になじむまで温度及び圧力を掛けるのが一般的であるが、樹脂と補強繊維織物を十分になじませた場合図3に示すように補強繊維織物の織り目の間にまでマトリックス樹脂が浸透してしまい、プリプレグ表面の凹凸が殆ど残らないため好ましくない。マトリックス樹脂をなじませる際の圧力及び温度をマトリックス樹脂が十分に浸透しないように低めに調整することにより、図4に示すように補強繊維織物の織り目の間に樹脂が浸透しない様にすることができ、凹凸係数を11以上34以下になるように温度、圧力等を調整する事が好ましい。
【0023】
本発明のプリプレグを用いてFRPを成形する方法としては特に制限はないが、真空バッグ成形を用いることが好ましい。FRPを成形する際に、特に50℃以下の温度で30分以上バッグ内部を真空引きするのが好ましい。これは形成されている脱気回路を通して内部のエアをプリプレグの積層体の外へ導き出す為である。温度が50℃を上回った場合にはマトリックス樹脂の種類によってはその粘度が下がり、完全にエアが抜けきる前にマトリックス樹脂が移動し、脱気回路を閉鎖してしまうことがあるので好ましくない。45℃以下の温度でバッグ内部を真空引きするのが更に好ましく、40℃以下の場合には特に好ましい。室温未満の温度で真空引きするためには冷却装置が必要である為、真空引きする時の下限の温度としては室温で十分である。
【0024】
また、真空引きの時間が30分未満の場合には完全にエアが抜けきっていない場合があるので好ましくない。60分以上真空引きするのが更に好ましく、90分以上が特に好ましい。但し、あまりに長時間真空引きをすると生産性が低下してしまう。真空引きする時間として十分な時間は成形品の大きさや形状にも依存するが、上限としては6時間で十分である。また本発明でいう真空とは完全な真空状態ではなく、50Torr以下の減圧状態をいう。減圧が10Torr以下であれば更に好ましく、5Torr以下は特に好ましい。
また、本発明のプリプレグを用いて真空バッグ成形でFRPを成形する方法としては、上記の時間の間真空引きした後、真空状態を保持したまま昇温することが好ましい。真空引きによりエアを導き出した後、真空状態を保持していないと織物内に再びエアを引き込んでしまい、層間ボイド、表面ピンホールの原因となってしまう。
【0025】
また、本発明のプリプレグを用いて真空バッグ成形でFRPを成形する方法としては成形温度より20℃以上低い温度から成形温度までの昇温速度が1℃以下/分であることが好ましい。上記のように真空引きした後、真空状態を保持したまま昇温していくが、昇温途中でマトリックス樹脂が一気に移動し始めると、真空状態、すなわち50Torr以下の減圧状態で、僅かに残るエアを閉じ込めたまま硬化してしまい、層間ボイドや表面ピンホールが残ってしまう。したがって昇温過程でのマトリックス樹脂の移動速度を制限し、最後に残る僅かなエアも成形品から追い出すことが必要である。そのためには昇温速度を遅くすれば良いが、あまり低い温度ではもともとマトリックス樹脂の粘度が高く、移動能が低い為、昇温速度を遅くする効果があまりない。通常成形する温度付近でマトリックス樹脂の粘度は最低となるので、成形温度より20℃以上低い温度から昇温速度を1℃以下にすると効果が高い。成形温度より30℃以上低い温度から昇温速度を1℃以下にすると更に好ましく、40℃以上低い温度からの場合は特に好ましい。また昇温速度は0.7℃以下/分は更に好ましく、0.5℃以下/分は特に好ましい。
【0026】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0027】
実施例1:
マトリックス樹脂として三菱レイヨン(株)製エポキシ樹脂組成物#852を用い、離型紙上に430g/m2 の樹脂目付で均一に塗工して樹脂フィルムを調製した。この樹脂フィルムを、三菱レイヨン(株)製炭素繊維織物TRK510(繊維目付646g/m2 、2/2綾織)の下側面に供給し、炭素繊維クロスに樹脂を含浸させた。含侵にはアサヒ繊維工業(株)製フュージングプレスASAHI FUSINGを用いて、含浸の温度は55℃、0.1MPaの圧力で加圧時間60秒の条件で過熱加圧しプリプレグを調製した。得られたプリプレグの凹凸係数を測定したところ19であり、本発明のプリプレグであることを確認した。
次に、得られたプリプレグを0°で10枚積層し、真空バッグして25cm角のパネルをオーブン成形した。プリプレグの表面には十分なタックがあり、作業性は良好であった。
成形条件は次の通りとした。室温から50℃まで3℃/分で昇温し、50℃、3時間20Torrの減圧下で保持し、その後20Torrの減圧状態を維持しながら1℃/分で80℃まで昇温し、80℃×1時間で成形した。
得られたパネルのボイド観察を行った。成型した複合材料パネルを(株)丸東製湿式カッターAC300CFでカットし、25倍の倍率で断面の観察を行った。観察したカット面10cm当たりに観察された0.5mm以上の直径を持つボイドの数を測定したところ、5個であり、表面のピンホールも確認されなかった。この結果は表1にあわせて示す。
【0028】
実施例2:
プリプレグの調製において、加圧時間を100秒とした以外は実施例1と同様にしてプリプレグを得た。得られたプリプレグの凹凸係数を測定したところ13であり、本発明のプリプレグであることを確認した。このプリプレグを実施例1と同様に積層しパネルを作成した。プリプレグの表面には十分なタックがあり、作業性は良好であった。得られたパネルのボイド観察を行ったところ、カット面10cm当たりに観察された0.5mm以上の直径を持つボイドの数は10個であり表面のピンホールは観察されなかった。この結果は表1にあわせて示す。
【0029】
比較例1:
プリプレグの調製において、含侵温度を60℃とし、0.2MPaの圧力で加圧時間120秒の条件で2回加熱及び加圧した他は実施例1と同様にしてプリプレグを得た。得られたプリプレグの凹凸係数を測定したところ、10であった。このプリプレグを実施例1と同じように積層し、パネルを成形した。プリプレグの表面には十分なタックがあり、作業性は良好であった。成形されたパネルの断面を実施例1と同じように観察したところ、カット面10cm当たりに観察された直径0.5mm以上のボイドは85個であり、パネルの表面には多数のピンホールが観察された。この結果は表1にあわせて示す。
【0030】
実施例3:
マトリックス樹脂としては三菱レイヨン(株)製エポキシ樹脂#852を用い、離型紙に133g/m2 の樹脂目付で均一に塗工して樹脂フィルムを調製した。この樹脂フィルムを、三菱レイヨン(株)製炭素繊維織物TRK3110(繊維目付200g/m2 、平織)の下側面から供給し、炭素繊維織物に樹脂を含浸させた。ただし、含浸の温度は55℃とし、0.1MPaの圧力で加圧時間40秒の条件で加熱及び加圧しプリプレグを得た。得られたプリプレグの凹凸係数を測定したところ18であり、本発明のプリプレグであることを確認した。このプリプレグを25cm角にカットし、0°で10枚積層し、実施例1と同様の温度条件でパネルを作成した。プリプレグの表面には十分なタックがあり、作業性は良好であった。得られたパネルのボイド観察を行ったところ、カット面10cm当たりに観察された0.5mm以上の直径を持つボイドの数は2個であり表面のピンホールは観察されなかった。この結果は表1にあわせて示す。
【0031】
比較例2:
プリプレグの調製において、含浸条件を次の通りに代えた他は、実施例3と同様にしてプリプレグを得た。含浸の温度は60℃とし、0.2MPaの圧力で加圧時間120秒の条件で2回加熱及び加圧した。得られたプリプレグの凹凸係数を測定したところ7.0であった。実施例1と同様の温度条件でパネルを作成した。プリプレグの表面には十分なタックがあり、作業性は良好であった。またパネルのボイド観察を行ったところ、カット面10cm当たりに観察された0.5mm以上の直径を持つボイドの数は53個であり、表面には多数のピンホールが観察された。この結果は表1にあわせて示す。
【0032】
比較例3:
離型紙に380g/m2 の樹脂目付で均一に塗工し、含侵温度を40℃、圧力0.05MPa、加圧時間を15秒とした以外は、実施例1と同じ条件で加熱及び加圧しプリプレグを調製した。得られたプリプレグの凹凸係数を測定したところ、35であった。このブリプレグを実施例1と同じように積層し、パネルを成形した。ブリプレグの表面のタックは弱く、作業性は良くなかった。成形されたパネルの断面を実施例1と同じように観察したところ、カット面10cm当たりに観察された直径0.5mm以上のボイドは32個であり、パネルの表面には少数ではあるが、ピンホールが観察された。この結果は表1にあわせて示した。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のプリプレグは表面に凹凸を持ち、凹凸係数が11以上、34以下であるので、従来のプリプレグ並みの取扱い性を維持しながら、オートクレーブを用いない、真空圧のみによる成形において、表面のピンホールや内部のボイドがなく、外観に優れたFRPを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2/2綾織の炭素繊維織物を補強繊維として樹脂フィルムを含侵したプリプレグの模式図。
【図2】プリプレグの凹凸係数を測定する際のプリプレグカット面の模式図。
【図3】樹脂と補強繊維織物を十分になじませ、プリプレグ表面の凹凸を小さくしたプリプレグの断面図。
【図4】樹脂と補強繊維織物を十分になじませず、プリプレグ表面の凹凸を大きくしたプリプレグの断面図。
【符号の説明】
1 たて糸
2 よこ糸
Claims (10)
- 補強繊維織物にマトリックス樹脂を含浸してなるプリプレグであって、プリプレグ表面に凹凸を有し、その凹凸係数が11以上34以下であることを特徴とするプリプレグ。
- 補強繊維織物にマトリックス樹脂を含浸してなるプリプレグであって、プリプレグ表面に凹凸を持ち、その凹凸係数が13以上27以下であることを特徴とするプリプレグ。
- 補強繊維織物の繊維目付が400g/m2 以上である請求項1または請求項2に記載のプリプレグ。
- マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグ。
- 補強繊維織物にホットメルト法によりマトリックス樹脂を含浸して得られる請求項1〜4のいずれかに記載のプリプレグ。
- 補強繊維織物が炭素繊維からなる請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグ。
- 補強繊維織物がガラス繊維からなる請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグ。
- 補強繊維織物の織形態が綾織である請求項1〜7のいずれかに記載のプリプレグ。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のプリプレグを真空バッグ成形して得られる繊維強化複合材料。
- 真空バッグ成形がバッグ内部を50℃以下で真空引きした後50℃以上に昇温するものである請求項9に記載の繊維強化複合材料。
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