JP2004323750A - ロール状セルロースエステルフィルム、及びロール状セルロースエステルフィルム包装体 - Google Patents

ロール状セルロースエステルフィルム、及びロール状セルロースエステルフィルム包装体 Download PDF

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Abstract

【課題】フィルムの保管時に異物発生が抑えられ、面品質に優れた偏光板用保護フィルムに用いられるロール状セルロースエステルフィルム、及び保管及び輸送などの物流状態における保管時の劣化(傷発生、異物発生)を抑えることができるロール状セルロースエステルフィルム包装体を提供する。
【解決手段】ロール状セルロースエステルフィルムは、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルからなる化合物を含有し、該化合物のセルロースエステルに対する含有量が4.5〜12.5重量%であり、該セルロースエステルフィルムが温度20〜25℃、湿度20〜50%RHで巻き芯に巻き取られることを特徴とする。ロール状セルロースエステルフィルム包装体は、上記ロール状セルロースエステルフィルムと、これを被覆しかつ所定の環境条件下での透湿度が0.1〜10g/m である包装材料とによって構成される。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光板用保護フィルムに用いられるロール状セルロースエステルフィルム、とりわけフィルムの保管時に異物発生が抑えられ、面品質に優れたロール状セルロースエステルフィルム、及び保管及び輸送などの物流状態における保管時の劣化(傷発生、異物発生)を抑えることができるロール状セルロースエステルフィルム包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示装置(LCD)は種々のところに使用されるに伴って、LCDに使用される液晶表示素子すなわち偏光板についても高生産性化(生産量増大)が求められている。しかも、液晶表示装置(LCD)については薄型化が進んでおり、LCDに使用される偏光板についても薄膜化が要望されている。
【0003】
現在、LCDの偏光板用の保護フィルムとしては、主にセルローストリアセテート(TAC)フィルムが用いられているが、その厚みは比較的厚いものであった。
【0004】
ところが、偏光板用保護フィルムの薄膜化が進み、これに用いられるセルロースエステルフィルムの薄膜での高生産性化が進むと、該フィルム品質での負荷が増大し、製造時にフィルムに異物発生が生じることあり、この異物が原因で傷状になることもあった。そして、セルロースエステルフィルムが外観を損ねると、偏光板用保護フィルムとしての使用に耐えないことは勿論であるが、異物の発生によりフィルムの元巻き状態の外観が劣化し、ひいては偏光板の外観不良、さらには、液晶ディスプレイの視認性の劣化につながるという問題があった。
【0005】
そこで従来は、セルロースエステルフィルムを、防湿性を有する包装材でセルロースエステルフィルムを包装したりする方法が行なわれた。このようなセルロースエステルフィルムの保管や包装に関わる先行特許文献には、例えば、つぎのようなものがある。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−106435号公報
この特許文献1に記載の発明は、包装材の巻きの強さにかかわらず塵や埃、湿気等が侵入し難く信頼性の高い元巻包装体及び元巻きの包装方法を提供することを目的としており、コアの周りに該コアの両側端部を残して長尺のフィルム部材が巻回されてなるフィルムロールと、該フィルムロールを多重に包装する複数の包装部材とを有するフィルムロール包装体であって、前記フィルムロールを包装する前記複数の包装部材のうちの少なくとも一対の隣接する包装部材同士は周回方向に沿った巻始位置または巻終位置が、例えば30°以上の所定の角度ずれていることを特徴とするものであった。また、一対の隣接する包装部材同士は巻回方向が互いに逆であることを特徴とするものであった。
【0007】
【特許文献2】
特開2001−315885号公報
この特許文献2に記載の発明は、幅広の偏光フィルムの製造原料として有用な偏光フィルム用のポリビニルアルコール系重合体フィルムの保管または輸送方法を提供することを目的としており、フィルムと接触する部分の材質が金属またはプラスチックからなりかつフィルム幅より長い筒状のコアに、ポリビニルアルコール系重合体フィルムを巻き付けてフィルムロールと成し、該フィルムロールを所定の透湿度を有する包装用フィルムで包装して、保管または輸送を行なうことを特徴とするものであった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の発明のように、包装材料そのものや、感光材料の包装に利用する包装材料についての出願は以前から多いものであるが、液晶表示装置(LCD)の偏光板用の保護フィルムとして用いられるセルローストリアセテート(TAC)フィルムは、感光材料や他のフィルムに比べ、より厳しい品質が求められるものであり、上記の従来法によれば、ある程度の効果はあるが、セルロースエステルフィルムの薄膜品については、その効果は不充分であるという問題があった。
【0009】
また特に、セルロースエステルフィルムの保管時におけるフィルム品質の安定化は重要な課題であるが、現状の包装材料では、保管時におけるフィルム品質の安定化は不充分であるという問題があった。
【0010】
このように、従来の既存のセルロースエステルフィルムでは、偏光板用保護フィルムに用いられるために、薄膜での高生産性化が進んだ場合に、フィルム自体の異物発生や傷発生による劣化に対処することができないという問題があり、セルロースエステルフィルムそのものの性状を変える必要性が考えられた。
【0011】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、セルロースエステルフィルムの製造段階での生産条件の最適化、とりわけ、フィルム構成材料の種類及び組み合わせ(配合)において、例えばフィルムに含有される有機酸エステル化合物の種類と含有量に関わる特性値、及びフィルムを巻き芯に巻き取る際の温度と湿度の環境条件を特定の範囲内に規定することにより、あるいはまた特定の透湿度を有する包装材料を用いることにより、ロール状セルロースエステルフィルムの巻品質の改善効果が大きく、異物の発生を抑え得ることを見い出した。
【0012】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、液晶表示素子すなわち偏光板の高生産性化(生産量増大)に伴い、偏光板用保護フィルムとして用いられるロール状セルロースエステルフィルムの薄膜品について、フィルムの異物発生を抑えることができて、異物発生や傷発生などの劣化に対する改善効果が大きく、フィルムの元巻き状態の外観に優れていて、高品質の偏光板用保護フィルムの高生産性化を可能とし、さらに、フィルムの保管及び輸送などの物流状態における保管時の劣化(傷発生、異物発生)を抑えることができ、またフィルムを保管あるいは輸送した後、フィルムを偏光板へ加工した際にも、傷発生を抑えることができ、ひいては偏光板の外観良化を果たし、液晶ディスプレイの視認性を向上することができる、ロール状セルロースエステルフィルム包装体及びロール状セルロースエステルフィルムを提供しようとすることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、偏光板用保護フィルム等に用いられる厚さ20〜60μmを有するロール状セルロースエステルフィルムであって、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルからなる化合物を含有し、該化合物のセルロースエステルに対する含有量が4.5〜12.5重量%であり、該セルロースエステルフィルムが温度20〜25℃、湿度20〜50%RHで巻き芯に巻き取られることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項2記載の発明は、上記請求項1記載のロール状セルロースエステルフィルムにおいて、モノカルボン酸が、分子内に芳香族環またはシクロアルキル環を有する化合物であることを特徴としている。
【0015】
本発明の請求項3記載の発明は、上記請求項2記載のロール状セルロースエステルフィルムにおいて、脂肪族多価アルコールが2〜20価であることを特徴としている。
【0016】
本発明の請求項4記載の発明は、上記請求項1記載のロール状セルロースエステルフィルムにおいて、セルロースエステルの重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとする時、重量平均分子量と数平均分子量との比:Mw/Mnが1.0〜5.0であることを特徴としている。
【0017】
本発明の請求項5記載の発明は、上記請求項4記載のロール状セルロースエステルフィルムにおいて、重量平均分子量と数平均分子量との比:Mw/Mnが1.7〜3.0であることを特徴としている。
【0018】
本発明の請求項6記載のロール状セルロースエステルフィルム包装体の発明は、上記請求項1〜5のうちのいずれか一項記載の巻き芯に巻き取られたロール状セルロースエステルフィルムと、該ロール状セルロースエステルフィルムの周面及び前後両側面を被覆する包装材料とによって構成され、包装材料はJIS Z0208に規定される温度40℃、湿度90%RHの環境条件下で24時間保持された際の透湿度が0.1〜10g/m であることを特徴としている。
【0019】
本発明の上記ロール状セルロースエステルフィルムにおいては、セルロースエステルフィルムの膜厚が、60μm以下、好ましくは20〜60μmである。その理由は、厚さ20〜60μmであるセルロースエステルフィルムは、例えば偏光板用保護フィルムとして用いられる際に、より品質に対して厳しい性能が求められるためである。
【0020】
本発明のロール状セルロースエステルフィルムによれば、偏光板用保護フィルムとして用いられるセルロースエステルフィルムの薄膜品について、フィルムの異物発生を抑えることができて、異物発生や傷発生などの劣化に対する改善効果が大きく、フィルムの元巻き状態の外観に優れている。
【0021】
また、本発明のロール状セルロースエステルフィルム包装体によれば、フィルムの保管及び輸送などの物流状態における保管時の劣化(傷発生、異物発生)を抑えることができ、またフィルムを保管あるいは輸送した後、フィルムを偏光板へ加工した際にも、傷発生を抑えることができ、ひいては偏光板の外観良化を果たし、液晶ディスプレイの視認性を向上することができる。
【0022】
また、本発明のロール状セルロースエステルフィルム及びロール状セルロースエステルフィルム包装体によれば、によれば、予期しなかったことではあるが、偏光板用保護フィルムとして用いた場合のフィルム及び偏光板の寸法安定性及び耐水性を改善することができるとともに、該偏光板用保護フィルムを用いて作製された偏光子の劣化防止を図ることができ、さらには、液晶ディスプレイの視認性を向上することができる。
【0023】
すなわち、本発明では、ロール状セルロースエステルフィルムが偏光板用保護フィルムとして使用されて高生産性化された場合において、該セルロースエステルフィルムの特性を確認するうえで、フィルムに含有される有機酸エステル化合物の種類と含有量を指標として、これらを規定するとともに、フィルムを巻き芯に巻き取る際の温度及び湿度の環境条件を指標として、これらの条件を規定することにより、ロール状セルロースエステルフィルムの巻品質の改善効果が大きく、異物の発生を抑え得ることを見い出した。あるいはまたロール状セルロースエステルフィルムを、特定の透湿度を有する包装材料にて包装したロール状セルロースエステルフィルム包装体によれば、フィルムの保管及び輸送などの物流状態における保管時の劣化(傷発生、異物発生)を抑えることができ、さらにはフィルムを保管あるいは輸送した後、フィルムを偏光板へ加工した際にも、傷発生を抑えることができ、ひいては偏光板の外観良化を果たし、液晶ディスプレイの視認性を向上し得ることを見い出した。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、具体的に説明する。
【0025】
本発明による偏光板用保護フィルム等に用いられるロール状セルロースエステルフィルムは、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルからなる化合物を含有し、該化合物のセルロースエステルに対する含有量が4.5〜12.5重量%であり、該セルロースエステルフィルムが温度20〜25℃、湿度20〜50%RHで巻き芯に巻き取られることを特徴としている。
【0026】
上記モノカルボン酸が、分子内に芳香族環またはシクロアルキル環を有する化合物であるのが、好ましい。
【0027】
また、本発明のセルロースエステルフィルムにおいて、脂肪族多価アルコールが2〜20価である。
【0028】
本発明者は、上記の課題を改善するため鋭意研究を重ねた結果、薄膜の光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルムであっても、セルロースエステルフィルムに、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルからなる有機酸エステル化合物を、特定量含有させることにより、上記の従来の課題を改善できることを見出した。
【0029】
これらの効果に対する多価アルコールエステルからなる有機酸エステル化合物の機能については、十分には解明されていないが、有機酸エステル化合物を使用することにより、従来の可塑剤を減量できることの寄与が大きいものと考えられる。
【0030】
つぎに、本発明に用いられる脂肪族多価アルコールエステルについて説明すると、脂肪族多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。
【0031】
(脂肪族多価アルコール)
本発明に用いられる脂肪族多価アルコールは、2価以上のアルコールで次の一般式(1)で表される。
【0032】
−(OH)n …(1)
ただし、式中、R はn価の脂肪族有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性及び/またはフェノール性水酸基を表す。
【0033】
ここで、n価の脂肪族有機基としては、アルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等)、アルケニレン基(例えばエテニレン基等)、アルキニレン基(例えばエチニレン基等)、シクロアルキレン基(例えば1,4−シクロヘキサンジイル基等)、アルカントリイル基(例えば1,2,3−プロパントリイル基等)が挙げられる。n価の脂肪族有機基は置換基(例えばヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子等)を有するものを含む。
【0034】
nは2〜20が好ましい。好ましい多価アルコールの例としては、例えばアドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0035】
(モノカルボン酸)
本発明において、多価アルコールエステルにおけるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0036】
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0038】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。これらはさらに置換基を有しても良い。
【0039】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0040】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0041】
(多価アルコールエステル)
本発明に用いられる多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることがさらに好ましい。保留性の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0042】
本発明において、多価アルコールエステルにおけるカルボン酸は一種類でも、二種以上の混合でもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。好ましくは、分子内に芳香環もしくはシクロアルキル環を3つ以上有することが好ましい。
【0043】
本発明に用いられる多価アルコールエステルの例を以下に示す。
【0044】
【化1】
Figure 2004323750
【化2】
Figure 2004323750
【化3】
Figure 2004323750
【化4】
Figure 2004323750
上記多価アルコールエステルのうち、トリメチロールプロパントリベンゾエート(TMPTB)、トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパントリプロピオネート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、1,3−ジブチレングリコールジベンゾエート、テトラエチレングリコールジベンゾエート、トリメチロールプロパンと酢酸及び安息香酸との混合エステル、トリメチロールプロパンとシクロヘキサンカルボン酸とのエステル、トリメチロールプロパンと酢酸及びシクロヘキサンカルボン酸との混合エステル、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールとシクロヘキサンカルボン酸とのエステル、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと安息香酸とのエステル、キシリトールと安息香酸とのエステル、キシリトールとシクロヘキサンカルボン酸とのエステルが好ましい。
【0045】
なお、多価アルコールエステルの使用量は、セルロースエステルに対して4.5〜12.5重量%が好ましく、6〜12重量%がさらに好ましく、特に好ましくは7〜11重量%である。
【0046】
本発明による偏光板用保護フィルム等に用いられるロール状セルロースエステルフィルムは、温度20〜25℃、湿度20〜50%RHで巻き芯に巻き取られるものである。
【0047】
このように、ロール状セルロースエステルフィルムを巻き芯に巻き取る際の温度を20〜25℃、及び湿度を20〜50%RHと規定することにより、フィルムの異物発生を抑えることができて、異物発生や傷発生などの劣化に対する改善効果が大きく、フィルムの元巻き状態の外観が優れているものである。
【0048】
本発明によるロール状セルロースエステルフィルムにおいて、セルロースエステルの重量平均分子量をMw、同じく数平均分子量をMnとする時、重量平均分子量と数平均分子量との比:Mw/Mnが、1.0〜5.0である。本発明の請求項5記載の発明は、この請求項4記載のロール状セルロースエステルフィルムにおいて、重量平均分子量と数平均分子量との比:Mw/Mnが、1.7〜3.0である。
【0049】
セルローストリアセテートの平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)を算出することができる。ここで、平均分子量の測定条件は、以下の通りである。
【0050】
下記に示す装置、材料を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法セルローストリアセテートの重量平均分子量(Mw)および平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布Mw/Mnを算出した。
【0051】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
溶媒(溶離液):ジクロロメタン
カラム名:昭和電工製 GPCk806−GPCk805−GPCk803 (3本)
試料濃度:0.1(重量%)
流量:1.0(ml/分)
試料注入量:100(μl)
標準試料:ポリスチレン(Mw:5,000,000〜6,700,000)
温度:25℃
検出:RI(示唆屈折率計)
上記セルローストリアセテートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.0未満であれば、フィルムの引き裂き強度が低下するので、好ましくない。また、上記の比(Mw/Mn)が5.0を超えると、フィルムの寸法安定性、すべり性が劣化するので、好ましくない。
【0052】
ここで、透湿度は、JIS Z 0208に規定される塩化カルシウム−カップ法に基づく方法に従って測定し、面積1m あたり24時間で透過する水分量(g)として算出したものである。
【0053】
本発明によるロール状セルロースエステルフィルム包装体の発明は、上記の巻き芯に巻き取られたロール状セルロースエステルフィルムと、該ロール状セルロースエステルフィルムの周面及び前後両側面を被覆する包装材料とによって構成され、包装材料はJIS Z0208に規定される温度40℃、湿度90%RHの環境条件下で24時間保持された際の透湿度が0.1〜10g/m である。
【0054】
このような包装材料としては、例えば、厚さ50μmのポリエチレンシート、厚さ50μmのポリエチレンシートの2重包装、及びポリエチレンテレフタレートシートとアルミニウム膜とポリエチレンシートの3層構成の複合材料(厚さ40μm)などを使用する。
【0055】
ここで、この包装材料の透湿度が、JIS Z0208で規定される1日あたりの透湿度が10g/m を超えるものであると、フィルムに発生した異物が増加したり、異物自体が大きくなったり、それに起因した傷発生が生じやすくなるので、好ましくない。
【0056】
本発明のロール状セルロースエステルフィルムの主成分であるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましく、結合酢酸量が58〜62.5%のベース強度が強くより好ましい。セルローストリアセテートは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。
【0057】
セルロースエステルの溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどの低級アルコール類、シクロヘキサン、ジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族塩化炭化水素類などを用いることができる。
【0058】
溶剤比率としては、例えばメチレンクロライド70〜95重量%、その他の溶剤は5〜30重量%が好ましい。またセルロースエステルの濃度は10〜50重量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないように定められる。
【0059】
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
【0060】
本発明によるセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルと溶剤、及び上記多価アルコールエステルからなる化合物のほかに、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有している。
【0061】
多価アルコールエステルからなる化合物、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0062】
本発明で用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0063】
本発明において、吸水率ならびに水分率を特定の範囲内にするために、好ましい可塑剤の添加量としては、セルロースエステルに対する重量%で、12重量%以下である。可塑剤を2種類以上併用して用いる場合には、これらの可塑剤の合計量が12重量%以下であれば、良い。
【0064】
また、本発明において、上記多価アルコールエステルは可塑剤機能を有しており、このような多価アルコールエステルと、従来の可塑剤とを同時に使用することができる。その場合、多価アルコールエステルは、上記のように、セルロースエステルに対して4.5〜12.5重量%の範囲で使用することができるが、多価アルコールエステルと可塑剤との合計量が、セルロースエステルに対する重量%で12.5重量%以下であることが、好ましい。またこの場合には、可塑剤の使用量は、セルロースエステルに対して8.0重量%以下であるのが、好ましい。中でも、多価アルコールエステルの使用量が、セルロースエステルに対して7重量%以上であることが好ましく、さらには、可塑剤の使用量は、セルロースエステルに対して5.5重量%以下であることが好ましい。その理由は、多価アルコールエステルの使用により、従来の可塑剤の使用量を低減することが可能となり、本発明の効果を発現させることができるためである。
【0065】
本発明のロール状セルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤を用いることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0066】
一般に用いられるものとしては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
【0067】
また本発明のフィルムにすべり性の向上、巻取り後のブロッキング防止等の目的でマット剤として加える微粒子は、主ドープに添加してもよいが、添加液に加えるのが生産性の上からは好ましい。添加液に添加し、フィルムに含有せしめる。また、主ドープに含有せしめてもよいが、微粒子としてはいかなるものも用いることができる。
【0068】
本発明に使用される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。その中でも、微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。これらの例としては、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されているものがあり、使用することができる。さらに、二酸化ケイ素微粒子の1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛比重が70g/リットル以上の二酸化ケイ素微粒子であることが好ましい。これらを満足する二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジル200V、アエロジルR972Vがあり、フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0069】
本発明において、上記微粒子はセルロースエステルに対して、0.04〜0.4重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。
【0070】
本発明においては、セルロースエステルを溶解して得られるドープを支持体上に流延(キャスト工程)した後、加熱して溶剤の一部を除去(支持体上乾燥工程)した後、支持体から剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)して、セルロースエステルフィルムを得る。
【0071】
キャスト工程における支持体はベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が使用される。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃から溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、5〜30℃の支持体上に流延する方が、ドープをゲル化させ剥離限界時間をあげられるため、好ましく、5〜15℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。
【0072】
支持体上乾燥工程ではドープを流延し、一旦ゲル化させた後、流延から剥離するまでの時間を100%としたとき、流延から30%以内にドープ温度を40℃〜70℃にすることで、溶剤の蒸発を促進し、それだけ早く支持体上から剥離することができ、さらに剥離強度が増すため好ましく、30%以内にドープ温度を55〜70℃にすることがより好ましい。この温度を20%以上維持することが好ましく、40%以上がさらに好ましい。
【0073】
支持体上での乾燥は残留溶媒量60〜150%で支持体から剥離することが、支持体からの剥離強度が小さくなるため好ましく、80〜120%がより好ましい。剥離するときのドープの温度は0〜30℃にすることが剥離時のベース強度をあげることができ、剥離時のベース破断を防止できるため好ましく、5〜20℃がより好ましい。
【0074】
フィルム乾燥工程においては支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式または、クリップテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。液晶表示用部材用としては、テンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。
【0075】
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行なうことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0076】
本発明のロール状セルロースエステルフィルムの製造に係わる巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0077】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
実施例1と2
(ドープ液の調製)
セルローストリアセテートのドープ液を、以下のように調製した。
【0079】
セルローストリアセテート(TAC):100kg
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ社製):0.3kg
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ社製):0.5kg
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ社製):0.5kg
トリメチロールプロパントリベンゾエート(TMPTB):
(多価アルコールエステルからなる有機酸エステル化合物で、
添加量は表1に記載した)
アエロジル200V(日本アエロジル社製):0.09kg
メチレンクロライド:320kg
エタノール:20kg
これらを密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温・攪拌しながら完全に溶解させた。
【0080】
(フィルム試料の作製)
上記のドープ液を濾過した後、図示しないベルト流延装置を用い、ドープ温度33℃にてダイスより、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体上に流延した。支持体上で60秒間保持した後に支持体上から剥離し、多数のロールで搬送させながら乾燥させた。この際、クリップテンターを用いて、フィルムを幅手方向に1.07倍に延伸しながら乾燥を行なった。乾燥後、セルローストリアセテートフィルムを、温度24℃、湿度40%RHで巻き芯にロール状に巻き取ることで膜厚41μmのロール状セルローストリアセテート(TAC)フィルムを得た。
【0081】
実施例3
上記実施例1と2の場合と同様にしてロール状セルローストリアセテート(TAC)フィルムを製造するが、多価アルコールエステルであるトリメチロールプロパントリベンゾエート(TMPTB)、及び同じくトリメチロールプロパントリベンゾエート(TMPTB)と可塑剤であるエチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)とを、表1に示す量で添加した以外は、実施例1と2の場合と同様にしてロール状セルローストリアセテートフィルムを得た。
【0082】
比較例1〜6
比較のために、使用する可塑剤と多価アルコールエステルの種類及び含有量を、下記の表1に示すように変更し、その他の点は上記実施例1と2の場合と同様にして、ロール状セルローストリアセテートフィルムを作成した。
【0083】
下記の表1に、実施例1〜3及び比較例1〜6における多価アルコールエステル、又は多価アルコールエステルと可塑剤の含有量をまとめて示した。なお、ここで、多価アルコールエステル、又は多価アルコールエステルと可塑剤の含有量は、セルローストリアセテート(TAC)に対する重量%を表わす。
【0084】
【表1】
Figure 2004323750
実施例4〜8
まず、実施例4〜6においては、上記実施例1〜3で巻き芯に巻き取られたロール状セルローストリアセテートフィルムの周面及び前後両側面を、JIS Z0208に規定される温度40℃、湿度90%RHの環境条件下で24時間保持された際の透湿度が6.0g/m である包装材料(厚さ50μmのポリエチレンシート)で、それぞれ被覆包装することにより、ロール状セルローストリアセテートフィルム包装体を作製した。
【0085】
つぎに、実施例7と8においては、上記実施例6と同じロール状セルローストリアセテートフィルムの周面及び前後両側面を、透湿度が異なる包装材料で、それぞれ被覆包装することにより、ロール状セルローストリアセテートフィルム包装体を作製した。なお、実施例7では、厚さ50μmのポリエチレンシートを2重包装する包装材料(透湿度:2.0g/m )を、実施例8では、ポリエチレンテレフタレートシートとアルミニウム膜とポリエチレンシートの3層構成の複合材料よりなる包装材料(厚さ40μm、透湿度:0.6g/m )をそれぞれ使用した。
【0086】
比較例7〜11
比較のために、上記比較例1〜4と6においてそれぞれ巻き芯に巻き取られたロール状セルローストリアセテートフィルムの周面及び前後両側面を、それぞれ包装材料で被覆包装することにより、ロール状セルローストリアセテートフィルム包装体を作製した。なお、比較例7と10では、厚さ30μmのポリエチレンシートよりなる包装材料(透湿度:12.0g/m )を、比較例8、9、11では、厚さ50μmのポリエチレンシートよりなる包装材料(透湿度:6.0g/m )をそれぞれ使用した。
【0087】
下記の表2に、実施例4〜8及び比較例7〜11における多価アルコールエステル及び/又は可塑剤の含有量、及び用いた包装材料の透湿度をまとめて示した。
【0088】
【表2】
Figure 2004323750
実施例9〜11
上記実施例6の場合と同様にしてロール状セルローストリアセテート(TAC)フィルム包装体を製造する。多価アルコールエステルであるトリメチロールプロパントリベンゾエート(TMPTB)と可塑剤であるエチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)の含有量は、上記実施例6の場合と同じであるが、セルローストリアセテート(TAC)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比:Mw/Mnを、下記の表3に示すように変更して、ロール状セルローストリアセテートフィルムを製造した。なお、セルローストリアセテートフィルムを巻き芯にロール状に巻き取る温度と湿度も同じ条件とした。
【0089】
ついで、これらの巻き芯に巻き取られたロール状セルローストリアセテートフィルムの周面及び前後両側面を、JIS Z0208に規定される温度40℃、湿度90%RHの環境条件下で24時間保持された際の透湿度が6.0g/mである包装材料(厚さ50μmのポリエチレンシート)で、それぞれ被覆包装することにより、ロール状セルローストリアセテートフィルム包装体を作製した。
【0090】
表3に、各実施例における多価アルコールエステルと可塑剤の含有量、及びセルローストリアセテート(TAC)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比:Mw/Mnの値、巻き取り条件、及び用いた包装材料の透湿度を、まとめて示した。
【0091】
なお、セルローストリアセテート(TAC)の平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定し、これを用いて数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を算出するとともに、セルローストリアセテートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を算出した。
【0092】
【表3】
Figure 2004323750
つぎに、本発明による上記実施例1〜11、及び比較例1〜11の各ロール状セルローストリアセテートフィルム、及び各ロール状セルローストリアセテートフィルム包装体について、フィルムの異物発生の程度、透湿度、寸法変化率、さらには液晶表示視認性を評価し、得られた結果を下記の表4にまとめて示した。
【0093】
(フィルムの異物発生評価)
各ロール状セルローストリアセテートフィルムの異物発生の評価は、各ロール状セルローストリアセテートフィルムの元巻きを40℃90%に1ヶ月間保存した後、外観状態を観察した。フィルムの表面の異物発生の程度により、◎、○、△、×のグレード付けを行なった。
【0094】
(フィルムの透湿度の評価)
各ロール状セルローストリアセテートフィルムについて、製造後に未処理状態(基準状態)で、塩化カルシウム−カップ法に基づく温度23℃、湿度80%RHの環境条件下で24時間後の透湿度(g/m )を測定した。
【0095】
(寸法変化率の評価)
各ロール状セルローストリアセテートフィルムの寸法変化率は、つぎのようにして測定した。すなわち、各セルローストリアセテートフィルムの試料表面の2箇所(MD方向)に十文字型の印を付し、熱処理条件:80℃、湿度80%RH、50時間を施した後、印間の距離を測定し、各セルローストリアセテートフィルム自体の寸法変化率を評価した。なお、ここで、フィルムのMD方向とは、セルローストリアセテート樹脂ドープを支持体上に流延し、乾燥してフィルムを形成する際の、流延方向すなわちフィルムの長手方向をいう。
【0096】
(液晶表示視認性の評価)
各ロール状セルローストリアセテートフィルムの偏光特性を評価した。ここで、偏光特性の評価方法として、各ロール状セルローストリアセテートフィルムを偏光板用保護フィルムとして用い、該フィルムから常法に従って偏光板を作成し、さらにそれを、液晶表示ディスプレイに用いた。液晶表示ディスプレイで得られる画像を、目視により観察し、画像の視認性により、◎、○、△、×のグレード付けを行なった。
【0097】
【表4】
Figure 2004323750
上記表4の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜11のロール状セルローストリアセテートフィルム、及びロール状セルローストリアセテートフィルム包装体によれば、いずれも異物発生が少ないことが判る。またフィルムの透湿度が250〜280g/m の範囲にあるため、該ロール状セルローストリアセテートフィルムを用いて製作した偏光板の偏光子の吸湿性と安定性を保持することができた。さらに、各ロール状セルローストリアセテートフィルム、及びロール状セルローストリアセテートフィルム包装体の寸法変化率が小さく、寸法安定性が良好であることが判る。また、本発明による実施例1〜11の各ロール状セルローストリアセテートフィルムを偏光板へ加工して、液晶ディスプレイを作製した場合にも、液晶表示ディスプレイで得られる画像の視認性が良好であり、フィルムの偏光特性が改善されていることが判る。
【0098】
これに対し、比較例1〜11のロール状セルローストリアセテートフィルム、及びロール状セルローストリアセテートフィルム包装体によれば、フィルムの異物発生の程度及び透湿度の両方を満足するものなく、かついずれも寸法安定性が劣化していることが判る。さらに、比較例1〜11のロール状セルローストリアセテートフィルム、及びロール状セルローストリアセテートフィルム包装体では、液晶表示ディスプレイで得られる画像の視認性が劣化していることが判る。
【0099】
なお、本発明の実施例9で用いたMw/Mn=1.5のセルローストリアセテートは、品質は良好であるが、セルローストリアセテートフィルムのコストアップにつながり、実用的ではない。
【0100】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の発明は、上述のように、偏光板用保護フィルム等に用いられる厚さ20〜60μmを有するロール状セルロースエステルフィルムであって、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルからなる化合物を含有し、該化合物のセルロースエステルに対する含有量が4.5〜12.5重量%であり、該セルロースエステルフィルムが温度20〜25℃、湿度20〜50%RHで巻き芯に巻き取られることを特徴とするもので、本発明のロール状セルロースエステルフィルムによれば、液晶表示素子すなわち偏光板の高生産性化(生産量増大)に伴い、偏光板用保護フィルムとして用いられるセルロースエステルフィルムの薄膜品について、フィルムの異物発生を抑えることができて、異物発生や傷発生などの劣化に対する改善効果が大きく、フィルムの元巻き状態の外観に優れていて、高品質の偏光板用保護フィルムの高生産性化を可能とし、さらに、フィルムの保管及び輸送などの物流状態における保管時の劣化(傷発生、異物発生)を抑えることができるという効果を奏する。
【0101】
また、本発明の請求項6記載のロール状セルロースエステルフィルム包装体の発明は、上述のように、上記巻き芯に巻き取られたロール状セルロースエステルフィルムと、該ロール状セルロースエステルフィルムの周面及び前後両側面を被覆する包装材料とによって構成され、包装材料はJIS Z0208に規定される温度40℃、湿度90%RHの環境条件下で24時間保持された際の透湿度が0.1〜10g/m であることを特徴とするもので、本発明によれば、偏光板用保護フィルムとして用いられるセルロースエステルフィルムの薄膜品について、ロール状セルロースエステルフィルムの保管及び輸送などの物流状態における保管時の劣化(傷発生、異物発生)を抑えることができ、さらにはフィルムを保管あるいは輸送した後、フィルムを偏光板へ加工した際にも、傷発生を抑えることができ、ひいては偏光板の外観良化を果たし、液晶ディスプレイの視認性を向上することができるという効果を奏する。
【0102】
さらに、本発明のロール状セルロースエステルフィルム及びロール状セルロースエステルフィルム包装体によれば、によれば、予期しなかったことではあるが、偏光板用保護フィルムとして用いた場合のフィルム及び偏光板の寸法安定性及び耐水性を改善することができるとともに、該偏光板用保護フィルムを用いて作製された偏光子の劣化防止を図ることができ、さらには、液晶ディスプレイの視認性を向上することができる。

Claims (6)

  1. 偏光板用保護フィルム等に用いられる厚さ20〜60μmを有するロール状セルロースエステルフィルムであって、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルからなる化合物を含有し、該化合物のセルロースエステルに対する含有量が4.5〜12.5重量%であり、該セルロースエステルフィルムが温度20〜25℃、湿度20〜50%RHで巻き芯に巻き取られることを特徴とするロール状セルロースエステルフィルム。
  2. モノカルボン酸が、分子内に芳香族環またはシクロアルキル環を有する化合物であることを特徴とする請求項1記載のロール状セルロースエステルフィルム。
  3. 脂肪族多価アルコールが2〜20価であることを特徴とする請求項2記載のロール状セルロースエステルフィルム。
  4. セルロースエステルの重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとする時、重量平均分子量と数平均分子量との比:Mw/Mnが1.0〜5.0であることを特徴とする請求項1記載のロール状セルロースエステルフィルム。
  5. 重量平均分子量と数平均分子量との比:Mw/Mnが1.7〜3.0であることを特徴とする請求項4記載のロール状セルロースエステルフィルム。
  6. 請求項1〜5のうちのいずれか一項記載の巻き芯に巻き取られたロール状セルロースエステルフィルムと、該ロール状セルロースエステルフィルムの周面及び前後両側面を被覆する包装材料とによって構成され、包装材料はJIS Z0208に規定される温度40℃、湿度90%RHの環境条件下で24時間保持された際の透湿度が0.1〜10g/m であることを特徴とするロール状セルロースエステルフィルム包装体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015042552A (ja) * 2013-08-24 2015-03-05 古河電気工業株式会社 コイル梱包体、及びコイル体の梱包方法

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