JP2004322550A - 表皮成形型の表皮脱型構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】表皮の脱型作業の効率化および合理化等を図り得るようにする。
【解決手段】表皮成形面24で成形した表皮12の脱型時には、空気噴出孔34から噴出される空気の噴出圧力により、前記表皮成形面24に密着していた板状開閉体54を該表皮成形面24から分離させ、画成された間隙62から該空気を表皮成形面24および表皮12の間へ吹き込ませることで、表皮12を表皮成形面24から剥離させる。前記板状開閉体54は、間隙62が表皮成形面24の膨出した第4成形面24Dを指向するように揺動し、空気噴出孔34から噴出した空気を該第4成形面24Dに向けて積極的に吹き込ませるようになり、該第4成形面24Dに密着している該第4部分16Dを積極的に剥離させ得る。
【選択図】 図4
【解決手段】表皮成形面24で成形した表皮12の脱型時には、空気噴出孔34から噴出される空気の噴出圧力により、前記表皮成形面24に密着していた板状開閉体54を該表皮成形面24から分離させ、画成された間隙62から該空気を表皮成形面24および表皮12の間へ吹き込ませることで、表皮12を表皮成形面24から剥離させる。前記板状開閉体54は、間隙62が表皮成形面24の膨出した第4成形面24Dを指向するように揺動し、空気噴出孔34から噴出した空気を該第4成形面24Dに向けて積極的に吹き込ませるようになり、該第4成形面24Dに密着している該第4部分16Dを積極的に剥離させ得る。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、表皮成形型の表皮脱型構造に関し、更に詳細には、表皮成形面の所要位置に空気噴出孔を有し、前記表皮成形面に付着させた成形材料の硬化により表皮を成形した後、前記空気噴出孔から噴出する空気を前記表皮成形面および表皮の間へ吹き込むことで、成形後の前記表皮を表皮成形面から剥離させて脱型するようにした表皮成形型の表皮脱型構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
乗用車等の車両における乗員室内には、インストルメントパネル、フロアコンソール、ドアパネル、アームレストおよびピラーガーニッシュ等、種々の車両内装部材が装備されている。このような車両内装部材は、乗員室内に部分的または全体的に露出するよう配設され、それ自体の色、デザインおよび品質が乗員室内の雰囲気に大きく影響を及ぼすことから、質感および触感の向上が希求されている。そこで前記車両内装部材では、主にインジェクション成形技術等により所要形状に成形した合成樹脂製の基材における外表面に、例えば真空成形技術、パウダースラッシュ成形技術、またはウレタンスプレー成形技術等に基づいて成形した合成樹脂製の表皮を被着した構造とすることで、質感および触感の向上を図ることが多い。
【0003】
図10は、前記ウレタンスプレー成形技術に基づき、図14に例示したインストルメントパネル10に装着されるウレタン製の表皮12を成形するための表皮成形型を、該インストルメントパネル10におけるメーターフード14に対応する表皮部分を成形する位置で破断して示した概略断面図である。この表皮成形型20は、電鋳技術に基づいて所要形状に成形した金型シェル22を主体とし、該金型シェル22の表面側が表皮成形面24とされると共に、該表皮成形面24の温度調整に供される温調パイプ26を裏面側に敷設して構成されている。そして、前記温調パイプ26に加熱媒体を流通させて前記表皮成形面24を、ウレタン材料Uの硬化を促進させるのに適した温度(例えば65℃程度)に加熱保持させたもとで、図11に示すように、スプレーガンSGで該表皮成形面24の略全面に亘ってウレタン材料(成形材料)Uを所要厚で均一的に吹付け塗布し、塗布されたウレタン材料Uを硬化させることで、表皮成形面24の形状に沿った表皮12を成形するようになっている。
【0004】
ところで前記インストルメントパネル10は、前述したメーターフード14が形状変化の大きな所謂深絞り形状となるため、図10に例示したように金型シェル22の所要位置には、このメーターフード14に対応する表皮凹部16を表皮12に一体成形するための凸壁部分22Aが突設されている。しかも車種によっては、開口側よりも奥側が拡大した形状とされるメーターフード14もあり、このような形状に対応した表皮凹部16を成形するために、前記凸壁部分22Aの頂部に膨出部22Bが更に形成されている。従って前記凸壁部分22Aの外面には、前記表皮成形面24の一部をなす成形面として、該凸壁部分22Aの図示上部に位置する第1成形面24A、図示右側部に位置する第2成形面24B、図示左側部に位置する第3成形面24C、前記膨出部22Bに位置する第4成形面24D等が形成されている。
【0005】
前述のような形状を呈する表皮成形面24で成形された表皮12には、前記凸壁部分22Aの前記第1〜第4の各成形面24A,24B,24C,24Dに密着するよう成形された部位が、インストルメントパネル10の前記メーターフード14に対応した表皮凹部16として形成される(図12)。すなわち前記表皮凹部16は、前記第1成形面24Aで成形される第1部分16A、前記第2成形面24Bで成形される第2部分16B、前記第3成形面24Cで成形される第3部分16C、前記第4成形面24Dで成形される第4部分16Dからなり、第1部分16Aは後工程で切除予定の部分である。ところが、前述した外面形状の凸壁部分22Aでは、表皮12の脱型に際して前記膨出部22Bが所謂アンダーカット形状となるため、表皮凹部16が凸壁部分22Aから容易に脱型されず、該表皮12の脱型に支障を来たす不都合が生ずる。従って、例えば徐々に剥離させて脱型しようとすると脱型作業に時間がかかって生産性の低下を招来する一方、また強引に剥離させて脱型しようとすると破れや裂けが生じて不良品の発生を招来してしまう等の問題を内在していた。
【0006】
そこで、前述した問題を解決するために、図10および図11に例示したように、表皮成形面24における所要位置、すなわち前記凸壁部分22Aにおける第1成形面24Aおよび第2成形面24Bの適宜位置に、空気供給装置32に接続された適宜数(図では2個)の空気噴出孔34を設け、前記表皮成形面24の全面に付着させたウレタン材料Uを硬化させて表皮12を成形した後、前記各空気噴出孔34から噴出する空気をこれら表皮成形面24(24A,24B,24C,24D)および表皮12の間へ吹き込むことで、成形後の該表皮12を前記表皮成形面24から剥離させて脱型する構造が採用されている。このように、複数個の空気噴出孔34を、表皮成形面24の所要位置(第1成形面24A,第2成形面24B)に設けることにより、成形された表皮12と該凸壁部分22Aとの剥離が促進されるようになり、表皮12の脱型に係る従前の不都合はかなり解消されるようになった。なお、噴出空気を利用した表皮脱型構造に関する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【0007】
ここで、前記表皮成形面24で前記表皮12を成形する場合、前記空気噴出孔34の開孔輪郭形状が、成形される該表皮12の表面に転写再現され得るため、インストルメントパネル10への装着時に乗員席等から視認され得る位置となる表皮部分に対応する部位には、該空気噴出孔34を設けると質感低下を招来する不都合が生ずる。すなわち、メーターフード14に対応する前記表皮凹部16の場合では、図14から明らかなように、該メーターフード14の底面に位置する前記第3部分16Cが視認され得るため、該第3部分16Cを成形するための前記第3成形面24Cに前記空気噴出孔34を設けることはできない。このため、後工程で切除される前記第1部分16Aに対応した前記第1成形面24Aの適宜位置、またはメーターフード14の上面に位置して視認されない前記第2部分16Bに対応した前記第2成形面24Bの適宜位置に、空気噴出孔34は設けざるを得ない。
【0008】
なお前記空気噴出孔34は、前記金型シェル22とは別体に形成された筒状体36および該筒状体36に嵌挿されるバルブ体38とから構成される所謂エアージェットバルブ形態として形成され、該金型シェル22に開設した装着孔28に前記筒状体36の先端を嵌合させて装着することで、前記バルブ体38におけるボス状の頂部38aが前記表皮成形面24に臨むようになっている。そして前記バルブ体38は、前記筒状体36に対して軸方向へのスライド移動が可能に配設され、コイルバネ40の付勢力により常には表皮成形面24から後退し、前記頂部38aで該空気噴出孔34を閉成した閉孔状態に保持される一方、前記空気供給装置32から供給される空気の正圧が作用すると、前記コイルバネ40の付勢力に抗して表皮成形面24側へ所要量だけ突出し、前記頂部38aの周囲にリング状の前記空気噴出孔34を画成した開孔状態に変位する。
【0009】
【特許文献1】
特開平11−048330号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図10〜図12に例示した従来の表皮成形型20に実施される表皮脱型構造では、前記各空気噴出孔34を介して噴出される空気を、前記表皮成形面24(24A,24B,24C,24D)および表皮12の間に単に吹き込むようにした構造である。すなわち、表皮成形面24(24A,24B,24C,24D)および表皮12の間に吹き込まれる空気は、その吹き込み方向が特に規制または制御されないため、空気噴出孔34の周囲全方向へ拡散することが許容され、特に表皮12が表皮成形面24(24A,24B,24C,24D)から剥離し易い部位へ集中的に吹き込まれるようになる。このため前記表皮成形型20の場合は、図12に例示したように、前記第1成形面24Aに沿った領域および第2成形面24Bに沿った領域へは噴出空気の拡散が容易であり、第3成形面24Cに沿った領域および第4成形面24Dに沿った領域へは噴出空気の拡散が困難となっている。従って、第1成形面24Aで成形された前記第1部分16Aおよび第2成形面24Bで成形された前記第2部分16Bの剥離は好適に促進されるものの、前記第3成形面24Cで成形された前記第3部分16Cの剥離や、前記膨出部22Bへ密着するよう成形された前記第4部分16Dの剥離が促進されないため、依然として凸壁部分22Aおよび膨出部22Bと表皮凹部16との剥離が適切に促進されず、表皮12の円滑かつ適切な脱型作業の遂行には課題が残されたままだった。
【0011】
一方、前述した構成の各空気噴出孔34は、表皮成形面24に露出した状態で設けられているため、図13に例示したように前記バルブ体38が突出している際に、吹付け塗布されたウレタン材料Uの一部が、該空気噴出孔34の内面に侵入して付着することを許容してしまう。このように、空気噴出孔34の内面にウレタン材料Uが付着した場合は前記バルブ体38の完全な後退が不可能となり、空気の非噴出時であっても前記頂部38aが表皮成形面24から突出した状態で停止するため、成形される表皮12に形状不良が発生することは勿論、空気の噴出時には噴出力および噴出量が制限されて、成形後の該表皮12の脱型を適切に行なうことが不可能となる問題等も発生していた。
【0012】
【発明の目的】
本発明は、前述した課題を好適に解決するべく提案されたもので、空気噴出孔への成形材料の侵入を防止するようにする一方、空気噴出孔から噴出する空気を表皮成形面の特定部位に向けて集中的に吹き込み、この特定部位に密着している特定表皮部分を該特定部位から積極的に剥離させるようにすることで、表皮の脱型作業の効率化および合理化等をも図り得るようにした表皮成形型の表皮脱型構造を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、表皮成形面の所要位置に空気噴出孔を有し、前記表皮成形面に付着させた成形材料の硬化により表皮を成形した後、前記空気噴出孔から噴出する空気を前記表皮成形面および表皮の間へ吹き込むことで、成形後の前記表皮を表皮成形面から剥離させて脱型するようにした表皮成形型の表皮脱型構造において、
適度の剛性を有する素材からなる板状開閉体を、前記表皮成形面に揺動可能に配設して、常には前記空気噴出孔を閉成した状態で該表皮成形面に密着させ、
前記表皮の脱型時には、前記空気噴出孔から噴出される空気の噴出圧力により、前記表皮成形面に密着していた前記板状開閉体を該表皮成形面から分離させ、画成された間隙から該空気を前記表皮成形面および表皮の間へ吹き込むことで、表皮を表皮成形面から剥離させるよう構成したことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る表皮成形型の表皮脱型構造につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお実施例では、説明の便宜を図るために、図10に例示したウレタン成形技術に対応した構成の表皮成形型20を基本として、これに本願の表皮脱型構造を実施した場合を説明する。従って、従来技術の説明に際して引用した図10〜図14に既出の部材、部位と同一の部材、部位については、同一の符号を付して説明する。
【0015】
図1は、本発明の好適実施例に係る表皮成形型の表皮脱型構造を装備した表皮成形型50であって、図10に例示した従来の表皮成形型20と同一部位で破断して示した概略断面図である。本実施例の表皮成形型50は、基本的には図10に例示した従来の表皮成形型20と同様に、電鋳技術に基づいて所要形状に成形した厚みD=5mm程度とされる金型シェル22を主体とし、この金型シェル22を型フレーム52に固定して構成されている。前記金型シェル22は、その表面側が表皮成形面24として形成されており、また図示しない熱媒体供給装置に接続される温調パイプ26を裏面側に敷設して構成され、該温調パイプ26内に流通させる熱媒体の温度に基づいて前記表皮成形面24の温度調整を行なうようになっている。
【0016】
そして実施例の表皮成形型50は、図1および図2に示すように、表皮成形面24における所要位置、具体的には前記凸壁部分22Aにおける第1成形面24Aおよび第2成形面24Bに、空気供給装置32に接続された適宜数(図では2個のみ図示)の空気噴出孔34を設けてある。これら空気噴出孔34は、前記金型シェル22とは別体に形成された筒状体36および該筒状体36に嵌挿されるバルブ体38とから構成されるエアージェットバルブ形態として形成され、該金型シェル22に開設した装着孔28に前記筒状体36の先端を嵌合させて装着することで、前記バルブ体38におけるボス状の頂部38aが前記表皮成形面24に臨んでいる。前記バルブ体38は、前記筒状体36に対して軸方向へのスライド移動が可能に配設され、コイルバネ40の付勢力により常には表皮成形面24から後退して前記頂部38aで該空気噴出孔34を閉成した閉孔状態に保持される一方、前記空気供給装置32から供給される空気の正圧が作用すると、前記コイルバネ40の付勢力に抗して表皮成形面24側へ所要量だけ突出し、前記頂部38aの周囲にリング状の空気噴出孔34を画成した開孔状態に変位する。
【0017】
前記表皮成形型50に実施される本実施例の表皮脱型構造は、図2等に例示するように、適度の剛性を有する素材から形成され、前記空気噴出孔34を覆蓋可能でかつ前記表皮成形面24に密着可能な形状とされた板状開閉体54を、該表皮成形面24に対して揺動可能に配設したものである。すなわち、前記凸壁部分22Aの第1成形面24Aに設けた空気噴出孔34に対応して専用の板状開閉体54が配設されると共に、該凸壁部分22Aの第2成形面24Bに設けた空気噴出孔34に対しても専用の板状開閉体54が配設されている。これら板状開閉体54は、図2および図6に示すように、全体が略矩形状に成形された板厚S=1mm程度の薄板であって、前記表皮成形面24に密着状態で接合される固定部56と、該表皮成形面24に対して密着状態と非密着状態に揺動可能な揺動部58と、これら固定部56と揺動部58との境界部に沿ったヒンジ部60とから構成されており、該揺動部58の幅Eおよび長さFは前記空気噴出孔34の直径Hの概ね3倍程度となっている。また、前述したように適度の剛性を有すると同時に、前記ウレタン材料(成形材料)Uおよび成形後の表皮12に対して非接着性または難接着性を有し、かつ該ウレタン材料Uにより変質しない等の条件を満たす素材から形成するのが望ましく、具体的にはフッ素樹脂コーティングを施した適宜金属や、ポリプロピレン等の合成樹脂から形成されている。
【0018】
このような板状開閉体54は、前記揺動部58の略中央に対応の空気噴出孔34が来るように位置決めしたもとで、適宜の接着剤または両面テープ等を利用して前記固定部56を表皮成形面24に固定することで、該表皮成形面24に対して揺動可能に配設される。これにより表皮成形時(ウレタン材料Uの吹付け塗布時)には、図2および図3に示すように、前記板状開閉体54の復元力に基づき、前記揺動部58が前記表皮成形面24に密着して対応の空気噴出孔34を完全に閉成して覆蓋し、該ウレタン材料Uが該空気噴出孔34内へ侵入するのを防止するようになる。一方、表皮脱型時には、図4および図5に示すように、前記空気噴出孔34から噴出される空気の噴出圧力により、前記表皮成形面24に密着していた前記板状開閉体54の揺動部58が該表皮成形面24から分離して傾斜状に変位し、これにより画成された間隙62から該空気が噴出するのを許容するようになる。この時、前記空気噴出孔34から噴出された空気は、揺動部58の裏面に衝突して噴出方向が前記間隙62の側へ変向され、該間隙62を介して表皮成形面24に沿って噴出するようになる。
【0019】
ここで前記板状開閉体54は、揺動部58の傾斜状態時に画成される前記間隙62が、前記表皮成形面24の特定部位、すなわち前記膨出部22Bに位置する第4成形面24Dの側を指向するように揺動する姿勢で、該表皮成形面24に配設されている。すなわち、特定部位である膨出部22Bは、前記表皮12を前記表皮成形面24から脱型するに際して支障を来たす部位である。このように、板状開閉体54が、前記間隙62が表皮成形面24の第4成形面24D(膨出部22B)を指向するように揺動した場合、前記空気噴出孔34から噴出する空気は、前記膨出部22Bに向けて集中的に吹き込まれるようになるため、該第4成形面24Dに密着するように成形された前記表皮12の特定表皮部分、すなわち表皮凹部16の前記第4部分16Dを、該膨出部22Bから積極的に剥離させることが可能となる。
【0020】
【実施例の作用】
次に、前述のように構成された本実施例に係る表皮成形型の表皮脱型構造の作用につき、図を引用して説明する。
【0021】
本実施例の表皮成形型50は、表皮成形前の準備段階にあっては、図1および図2に示すように、前記空気供給装置32が未だ作動していないため、前記各空気噴出孔34に設けた各々の板状開閉体54は、自体の復元力に基づき、表皮成形面24(第1成形面24Aおよび第2成形面24B)に密着し、対応の空気噴出孔34を完全に閉成して覆蓋した状態となっている。そして、図示しない熱媒体供給装置から前記温調パイプ26に加熱媒体を流通させ、前記表皮成形面24を所定温度(ウレタン材料Uの硬化に最適な温度で例えば65℃程度)に加熱することで、表皮成形の準備が完了する。
【0022】
前記凸壁部分22Aにおける第1成形面24A、第2成形面24Bおよび第3成形面24Cを含む表皮成形面24の全体が所定温度に加熱保持されている状態で、図3に示すように、スプレーガンSGで該表皮成形面24の略全面に亘ってウレタン材料(成形材料)Uを所要厚にかつ均一的に吹付け塗布する。このとき、前記各々の空気噴出孔34は、表皮成形面24に密着した対応の板状開閉体54で完全に被覆されているため、該表皮成形面24に吹付け塗布されたウレタン材料Uの一部が、該空気噴出孔34へ侵入することが防止される。
【0023】
前記表皮成形面24に対するウレタン材料Uは、前記温度に加熱保持されている表皮成形面24(第1成形面24A、第2成形面24B、第3成形面24Cを含む)に吹付け塗布されると同時に硬化を開始し、所定時間の経過後には硬化が完了し、表皮凹部16を一体的に形成した所要厚の表皮12の成形が完了する。
【0024】
前記ウレタン材料Uの硬化により表皮12の成形が完了したら、前記空気供給装置32を作動させて各々の空気噴出孔34に向けて空気を圧送し、該表皮12の脱型を行なう。空気供給装置32から供給される空気は、図4および図5に例示したように、前記コイルバネ40の付勢力に抗してバルブ体38を表皮成形面24から所要量だけ突出した状態に変位させ、これにより開孔状態となった空気噴出孔34から噴出するようになる。そして前記板状開閉体54の揺動部58は、空気噴出孔34から噴出する空気の噴出圧力により、密着していた前記表皮成形面24から分離して傾斜状に変位し、これにより該表皮成形面24との間に間隙62を画成するようになる。そして、前記空気噴出孔34から噴出された空気は、揺動部58の裏面に衝突しつつ前記間隙62の側へ変向され、該間隙62を介して表皮成形面24における第1成形面24Aおよび第2成形面24Bと、表皮12における表皮凹部16の第1部分16Aおよび第2部分16Bの間へ吹き込まれるようになる。
【0025】
ここで、前記凸壁部分22Aの第1成形面24Aに設けた空気噴出孔34から噴出した空気は、該空気噴出孔34に対応した板状開閉体54の傾斜変位により画成された間隙62が前記膨出部22Bの側を指向しているため、該膨出部22Bから前記第3成形面24Cの側へ到達するようになる(図5(a),図6(b))。一方、前記凸壁部分22Aの第2成形面24Bに設けた空気噴出孔34から噴出した空気は、該空気噴出孔34に対応した板状開閉体54の傾斜変位により画成された間隙62が前記膨出部22Bの側を指向しているため、該膨出部22Bから前記第1成形面24Aの側へ到達するようになる(図5(b))。
【0026】
これにより前記表皮12の表皮凹部16は、先ず前記第4部分16Dおよびその隣接部位が、各空気噴出孔34から噴出した空気の圧力により第4成形面24Dおよびその周辺部位から剥離し、次いで該空気の噴出量が増加することに伴い、その他の部分16A,16B,16Cも対応の成形面24A,24B,24Cから順次剥離するようになる。そして、時間経過に伴って吹き込まれた空気量が増加すると、前記表皮凹部16は、それ全体が前記凸壁部分22Aから剥離し、該凸壁部分22Aより一回り大きく膨らんだ状態に膨出変形する。殊に、表皮凹部16の前記第4部分16Dおよびその隣接部位は、前記空気が継続的かつ集中的にに吹き込まれているため、凸壁部分22Aの前記膨出部22Bの周囲輪郭形状よりも適宜大きく膨らんだ状態に保持される(図4)。従って、成形された表皮12を表皮成形面24から脱型するに際しては、表皮凹部16(の第4部分16D)が凸壁部分22A(の膨出部22B)に引掛かることなく容易に抜け出ることが許容され、脱型作業が短時間で簡単かつ容易に行ない得る(図7)。また前記板状開閉体54は、表皮12に対して非接着性または難接着性を有する素材から形成されているため、脱型される表皮12から簡単に剥離され、該表皮12の脱型に支障を来たすことがない。
【0027】
このように、本実施例に係る表皮成形型の表皮脱型構造では、表皮成形面24の所要位置に設けた空気噴出孔34に対応して配設した板状開閉体54により、当該空気噴出孔34から噴出する空気を表皮成形面24および表皮12の間に吹き込むに際し、表皮12の脱型に支障を来たす部位である膨出部22Bおよびその近傍に向けて集中的に吹き込むようにしたので、前記膨出部22Bに位置する第4成形面24Dで成形された該表皮12の第4部分16Dおよびその近傍を、該第4成形面24D(膨出部22B)から積極的に剥離させ得る。従って、成形された表皮12を表皮成形面24から脱型するに際しては、表皮凹部16が凸壁部分22Aに引掛かることなく容易に抜け出るようになるため、表皮12の脱型作業の効率化および合理化等を図り得る。
【0028】
また前記板状開閉体54は、表皮成形時には表皮成形面24に密着して対応の空気噴出孔34を閉成して覆蓋するようになるため、表皮成形面24に吹付け塗布したウレタン材料Uが該空気噴出孔34へ侵入することを防止し得る。従って、空気噴出孔34の内面にウレタン材料Uが侵入して付着することがないから、前記バルブ体38のスライド移動に支障を来たすことがなく、よって成形される表皮12に形状不良が発生することが回避される一方、該表皮12の脱型不良が発生することも防止し得る。
【0029】
【変更例】
図8は、実施例の表皮脱型構造が実施される表皮成形型50の変更例を例示した概略断面図であって、この変更例に係る表皮成形型50では、空気噴出孔34を単なる通孔形態としたものである。すなわち、図10に例示した従来の表皮成形型20に設けた各空気噴出孔34は、各空気噴出孔34が表皮成形面24に露出するようになるため、バルブ体38を有するエアージェットバルブ形態としてウレタン材料Uの侵入を阻止する構造とする必要があった。しかしながら空気噴出孔34に対応して、実施例の表皮脱型構造に採用される板状開閉体54を配設した場合には、ウレタン材料Uの吹付け塗布時には該空気噴出孔34が該板状開閉体54で完全に覆蓋されるため、当該空気噴出孔34に対するウレタン材料Uの侵入が好適に防止される。従って空気噴出孔34は、図8に例示したように、金型シェル22に穿設した単なる通孔形態としてもウレタン材料Uの侵入が防止される一方、更には前記板状開閉体54に覆蓋される位置であれば複数個穿設することも可能である。また、空気噴出孔34を単なる通孔形態とするため、従来のエアージェットバルブ形態のものと比較して製造コスト低減が期待できる。
【0030】
このような変更例に係る空気噴出孔34を設けた表皮成形型50では、前記表皮12の成形が完了した後に前記空気供給装置32を作動させると、該空気供給装置32から供給される空気は、常に開孔している空気噴出孔34から噴出するようになる。これにより前記板状開閉体54の揺動部58は、図9(a),(b)に示すように、空気噴出孔34から噴出する空気の噴出圧力により、密着していた前記表皮成形面24から分離して傾斜状に変位し、これにより該表皮成形面24との間に間隙62を画成するようになる。そして前記実施例と同様に、前記空気噴出孔34から噴出した空気は、揺動部58の裏面に衝突しつつ前記間隙62の側へ変向され、該間隙62を介して表皮成形面24および表皮12の間へ吹き込まれるようになる。
【0031】
なお前記実施例では、前記凸壁部分22Aにおける第1成形面24Aおよび第2成形面24Bの所要位置に設けた空気噴出孔34の夫々に対し、対応する板状開閉体54を個別に配設した場合を例示した。しかしながら、各々の成形面24A,24Bにおいて、2個またはそれ以上の空気噴出孔34を隣接した状態に設けた場合には、板状開閉体54の形状・サイズを大きく設定して、単一の板状開閉体54で複数の空気噴出孔34を同時に覆蓋し得るようにしてもよい。
【0032】
また、前記板状開閉体54が鋼等の磁性体から形成されている場合には、該板状開閉体54を配設した表皮成形面24の裏側に磁石または電磁石等を設置するようにすれば、空気の非噴出時には磁着力により該表皮成形面24に対する板状開閉体54の密着性を高めることができ、表皮成形面24に吹付け塗布したウレタン材料(成形材料)Uの一部が前記空気噴出孔34へ侵入することを好適に防止し得るようになる。更に、前記板状開閉体54が樹脂等の非磁性体から形成されている場合であっても(磁性体から形成されている場合も含む)、前記空気供給装置32を逆作動させて空気を吸引するようにすれば、負圧によって表皮成形面24に対する板状開閉体54の密着性を高めることができ、表皮成形面24に吹付け塗布したウレタン材料(成形材料)Uの一部が前記空気噴出孔34へ侵入することを好適に防止し得る。
【0033】
一方、前記実施例では、板状開閉体54を、ウレタン材料U(表皮12)と非接着性または難接着性を有する素材から形成して、成形後に表皮成形面24から脱型される表皮12から容易に剥離されるようにした場合を例示した。しかしながら、例えば前記板状開閉体54を、前記ウレタン材料U(表皮12)に対して良好な接着性を有する材料から形成すると共に、前記表皮成形面24に対して離脱可能に配設するようにすれば、脱型される前記表皮12に装着されたまま該表皮成形面24から離脱させることが可能となる。
【0034】
なお前記実施例では、ウレタンスプレー成形技術に対応した構造の表皮成形型(スプレー成形型)に表皮脱型構造を実施した場合を例示したが、本願の表皮脱型構造は、パウダースラッシュ成形技術に対応した構造の表皮成形型(パウダースラッシュ成形型)に実施例することも可能である。
【0035】
更に、本願の表皮脱型構造が実施される表皮成形型の表皮成形面24の形状は、前記実施例および変更例に例示した形状に限定されるものではなく、これより更に複雑な形状を有するものに対しても対応可能である。
【0036】
また本願の表皮脱型構造は、前記インストルメントパネル10の他に、フロアコンソール、ドアパネル、アームレストおよびピラーガーニッシュ等の種々の車両内装部材に実施される表皮を成形するための表皮成形型は勿論、これ以外の種々物品(例えば家具等)に実施される表皮を成形するための表皮成形型等にも好適に実施可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る表皮成形型の表皮脱型構造によれば、表皮成形面の所要位置に設けた空気噴出孔に対応して配設した板状開閉体により、当該空気噴出孔から噴出する空気を表皮成形面および表皮の間に吹き込むに際し、表皮の脱型に支障を来たす部位である特定部位に向けて集中的に吹き込むようにしたので、この特定部位で成形された該表皮の特定表皮部分を該特定部位から積極的に剥離させ得る。従って、成形された表皮を表皮成形面から脱型するに際しては、特定表皮部分が特定部位に引掛からないため、表皮の脱型作業の効率化および合理化等を図り得る有益な効果を奏する。
【0038】
また前記板状開閉体は、表皮成形時には表皮成形面に密着して対応の空気噴出孔を閉成して覆蓋するようになるため、表皮成形面に吹付け塗布した成形材料が該空気噴出孔へ侵入することを防止し得る。従って、空気噴出孔の内面に成形材料の一部が侵入して付着することがないから、成形される表皮に形状不良が発生することが回避される一方、該表皮の脱型不良が起こることも回避し得る等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適実施例に係る表皮脱型構造を装備した表皮成形型の概略断面図である。
【図2】図1に例示した表皮成形型に装備した表皮脱型構造を部分的に拡大して示した説明断面図であって、(a)は、凸壁部分の上側に位置する第1成形面に設けた空気噴出孔を例示し、(b)は、凸壁部分の右側に位置する第2成形面に設けた空気噴出孔を例示している。
【図3】各空気噴出孔に対応的に配設した板状開閉体を表皮成形面に密着させて該空気噴出孔を覆蓋したもとで、表皮成形面へウレタン材料を吹付け塗布している状態を示した断面図である。
【図4】表皮成形面で成形した表皮を脱型する状態を示した説明断面図であって、各空気噴出孔から噴出した空気により板状開閉体が傾斜状に変位し、これにより膨出部を指向する側に画成された間隙を介して、空気が該膨出部に向けて集中的に吹き込まれるようになることを示している。
【図5】図4の状態にある表皮成形型を部分的に拡大して示した説明断面図であって、(a)は、凸壁部分の上側に位置する第1成形面に設けた空気噴出孔から空気が噴出している状態を例示し、(b)は、凸壁部分の右側に位置する第2成形面に設けた空気噴出孔から空気が噴出している状態を例示している。
【図6】(a)は、図2(a)の状態を示した平面図であり、(b)は、図5(a)の状態を示した平面図である。
【図7】空気噴出孔から空気を噴出させた状態で、表皮を表皮成形面から脱型する状態を示した説明断面図である。
【図8】別形態に係る空気噴出孔を実施した表皮成形型の概略断面図である。
【図9】図8に例示した表皮成形型に装備した表皮脱型構造を、表皮を脱型する状態で示した説明断面図であって、(a)は、凸壁部分の上側に位置する第1成形面に設けた空気噴出孔から空気が噴出している状態を例示し、(b)は、凸壁部分の右側に位置する第2成形面に設けた空気噴出孔から空気が噴出している状態を例示している。
【図10】従来の表皮脱型構造を実施した表皮成形型の概略断面図である。
【図11】各空気噴出孔を閉孔状態としたもとで、表皮成形面へウレタン材料を吹付け塗布している状態を示した断面図である。
【図12】表皮成形面で成形した表皮を脱型する状態を示した説明断面図であって、各空気噴出孔から噴出した空気が、該空気噴出孔の周囲全方向へ吹き込まれるようになり、アンダーカット形状となる膨出部に空気が十分に吹き込まれないことを示している。
【図13】空気噴出孔内へウレタン材料の一部が侵入して付着することで、バルブ体による該空気噴出孔の適切な閉孔状態が形成されない不都合を示した説明断面図である。
【図14】図1および図10に例示した各表皮成形型で成形された表皮が実施されるインストルメントパネルの概略斜視図である。
【符号の説明】
12 表皮
16D 第4部分(特定表皮部分)
24 表皮成形面
24D 第4成形面(特定部位)
34 空気噴出孔
54 板状開閉体
62 間隙
U 成形材料
【発明の属する技術分野】
この発明は、表皮成形型の表皮脱型構造に関し、更に詳細には、表皮成形面の所要位置に空気噴出孔を有し、前記表皮成形面に付着させた成形材料の硬化により表皮を成形した後、前記空気噴出孔から噴出する空気を前記表皮成形面および表皮の間へ吹き込むことで、成形後の前記表皮を表皮成形面から剥離させて脱型するようにした表皮成形型の表皮脱型構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
乗用車等の車両における乗員室内には、インストルメントパネル、フロアコンソール、ドアパネル、アームレストおよびピラーガーニッシュ等、種々の車両内装部材が装備されている。このような車両内装部材は、乗員室内に部分的または全体的に露出するよう配設され、それ自体の色、デザインおよび品質が乗員室内の雰囲気に大きく影響を及ぼすことから、質感および触感の向上が希求されている。そこで前記車両内装部材では、主にインジェクション成形技術等により所要形状に成形した合成樹脂製の基材における外表面に、例えば真空成形技術、パウダースラッシュ成形技術、またはウレタンスプレー成形技術等に基づいて成形した合成樹脂製の表皮を被着した構造とすることで、質感および触感の向上を図ることが多い。
【0003】
図10は、前記ウレタンスプレー成形技術に基づき、図14に例示したインストルメントパネル10に装着されるウレタン製の表皮12を成形するための表皮成形型を、該インストルメントパネル10におけるメーターフード14に対応する表皮部分を成形する位置で破断して示した概略断面図である。この表皮成形型20は、電鋳技術に基づいて所要形状に成形した金型シェル22を主体とし、該金型シェル22の表面側が表皮成形面24とされると共に、該表皮成形面24の温度調整に供される温調パイプ26を裏面側に敷設して構成されている。そして、前記温調パイプ26に加熱媒体を流通させて前記表皮成形面24を、ウレタン材料Uの硬化を促進させるのに適した温度(例えば65℃程度)に加熱保持させたもとで、図11に示すように、スプレーガンSGで該表皮成形面24の略全面に亘ってウレタン材料(成形材料)Uを所要厚で均一的に吹付け塗布し、塗布されたウレタン材料Uを硬化させることで、表皮成形面24の形状に沿った表皮12を成形するようになっている。
【0004】
ところで前記インストルメントパネル10は、前述したメーターフード14が形状変化の大きな所謂深絞り形状となるため、図10に例示したように金型シェル22の所要位置には、このメーターフード14に対応する表皮凹部16を表皮12に一体成形するための凸壁部分22Aが突設されている。しかも車種によっては、開口側よりも奥側が拡大した形状とされるメーターフード14もあり、このような形状に対応した表皮凹部16を成形するために、前記凸壁部分22Aの頂部に膨出部22Bが更に形成されている。従って前記凸壁部分22Aの外面には、前記表皮成形面24の一部をなす成形面として、該凸壁部分22Aの図示上部に位置する第1成形面24A、図示右側部に位置する第2成形面24B、図示左側部に位置する第3成形面24C、前記膨出部22Bに位置する第4成形面24D等が形成されている。
【0005】
前述のような形状を呈する表皮成形面24で成形された表皮12には、前記凸壁部分22Aの前記第1〜第4の各成形面24A,24B,24C,24Dに密着するよう成形された部位が、インストルメントパネル10の前記メーターフード14に対応した表皮凹部16として形成される(図12)。すなわち前記表皮凹部16は、前記第1成形面24Aで成形される第1部分16A、前記第2成形面24Bで成形される第2部分16B、前記第3成形面24Cで成形される第3部分16C、前記第4成形面24Dで成形される第4部分16Dからなり、第1部分16Aは後工程で切除予定の部分である。ところが、前述した外面形状の凸壁部分22Aでは、表皮12の脱型に際して前記膨出部22Bが所謂アンダーカット形状となるため、表皮凹部16が凸壁部分22Aから容易に脱型されず、該表皮12の脱型に支障を来たす不都合が生ずる。従って、例えば徐々に剥離させて脱型しようとすると脱型作業に時間がかかって生産性の低下を招来する一方、また強引に剥離させて脱型しようとすると破れや裂けが生じて不良品の発生を招来してしまう等の問題を内在していた。
【0006】
そこで、前述した問題を解決するために、図10および図11に例示したように、表皮成形面24における所要位置、すなわち前記凸壁部分22Aにおける第1成形面24Aおよび第2成形面24Bの適宜位置に、空気供給装置32に接続された適宜数(図では2個)の空気噴出孔34を設け、前記表皮成形面24の全面に付着させたウレタン材料Uを硬化させて表皮12を成形した後、前記各空気噴出孔34から噴出する空気をこれら表皮成形面24(24A,24B,24C,24D)および表皮12の間へ吹き込むことで、成形後の該表皮12を前記表皮成形面24から剥離させて脱型する構造が採用されている。このように、複数個の空気噴出孔34を、表皮成形面24の所要位置(第1成形面24A,第2成形面24B)に設けることにより、成形された表皮12と該凸壁部分22Aとの剥離が促進されるようになり、表皮12の脱型に係る従前の不都合はかなり解消されるようになった。なお、噴出空気を利用した表皮脱型構造に関する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【0007】
ここで、前記表皮成形面24で前記表皮12を成形する場合、前記空気噴出孔34の開孔輪郭形状が、成形される該表皮12の表面に転写再現され得るため、インストルメントパネル10への装着時に乗員席等から視認され得る位置となる表皮部分に対応する部位には、該空気噴出孔34を設けると質感低下を招来する不都合が生ずる。すなわち、メーターフード14に対応する前記表皮凹部16の場合では、図14から明らかなように、該メーターフード14の底面に位置する前記第3部分16Cが視認され得るため、該第3部分16Cを成形するための前記第3成形面24Cに前記空気噴出孔34を設けることはできない。このため、後工程で切除される前記第1部分16Aに対応した前記第1成形面24Aの適宜位置、またはメーターフード14の上面に位置して視認されない前記第2部分16Bに対応した前記第2成形面24Bの適宜位置に、空気噴出孔34は設けざるを得ない。
【0008】
なお前記空気噴出孔34は、前記金型シェル22とは別体に形成された筒状体36および該筒状体36に嵌挿されるバルブ体38とから構成される所謂エアージェットバルブ形態として形成され、該金型シェル22に開設した装着孔28に前記筒状体36の先端を嵌合させて装着することで、前記バルブ体38におけるボス状の頂部38aが前記表皮成形面24に臨むようになっている。そして前記バルブ体38は、前記筒状体36に対して軸方向へのスライド移動が可能に配設され、コイルバネ40の付勢力により常には表皮成形面24から後退し、前記頂部38aで該空気噴出孔34を閉成した閉孔状態に保持される一方、前記空気供給装置32から供給される空気の正圧が作用すると、前記コイルバネ40の付勢力に抗して表皮成形面24側へ所要量だけ突出し、前記頂部38aの周囲にリング状の前記空気噴出孔34を画成した開孔状態に変位する。
【0009】
【特許文献1】
特開平11−048330号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図10〜図12に例示した従来の表皮成形型20に実施される表皮脱型構造では、前記各空気噴出孔34を介して噴出される空気を、前記表皮成形面24(24A,24B,24C,24D)および表皮12の間に単に吹き込むようにした構造である。すなわち、表皮成形面24(24A,24B,24C,24D)および表皮12の間に吹き込まれる空気は、その吹き込み方向が特に規制または制御されないため、空気噴出孔34の周囲全方向へ拡散することが許容され、特に表皮12が表皮成形面24(24A,24B,24C,24D)から剥離し易い部位へ集中的に吹き込まれるようになる。このため前記表皮成形型20の場合は、図12に例示したように、前記第1成形面24Aに沿った領域および第2成形面24Bに沿った領域へは噴出空気の拡散が容易であり、第3成形面24Cに沿った領域および第4成形面24Dに沿った領域へは噴出空気の拡散が困難となっている。従って、第1成形面24Aで成形された前記第1部分16Aおよび第2成形面24Bで成形された前記第2部分16Bの剥離は好適に促進されるものの、前記第3成形面24Cで成形された前記第3部分16Cの剥離や、前記膨出部22Bへ密着するよう成形された前記第4部分16Dの剥離が促進されないため、依然として凸壁部分22Aおよび膨出部22Bと表皮凹部16との剥離が適切に促進されず、表皮12の円滑かつ適切な脱型作業の遂行には課題が残されたままだった。
【0011】
一方、前述した構成の各空気噴出孔34は、表皮成形面24に露出した状態で設けられているため、図13に例示したように前記バルブ体38が突出している際に、吹付け塗布されたウレタン材料Uの一部が、該空気噴出孔34の内面に侵入して付着することを許容してしまう。このように、空気噴出孔34の内面にウレタン材料Uが付着した場合は前記バルブ体38の完全な後退が不可能となり、空気の非噴出時であっても前記頂部38aが表皮成形面24から突出した状態で停止するため、成形される表皮12に形状不良が発生することは勿論、空気の噴出時には噴出力および噴出量が制限されて、成形後の該表皮12の脱型を適切に行なうことが不可能となる問題等も発生していた。
【0012】
【発明の目的】
本発明は、前述した課題を好適に解決するべく提案されたもので、空気噴出孔への成形材料の侵入を防止するようにする一方、空気噴出孔から噴出する空気を表皮成形面の特定部位に向けて集中的に吹き込み、この特定部位に密着している特定表皮部分を該特定部位から積極的に剥離させるようにすることで、表皮の脱型作業の効率化および合理化等をも図り得るようにした表皮成形型の表皮脱型構造を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、表皮成形面の所要位置に空気噴出孔を有し、前記表皮成形面に付着させた成形材料の硬化により表皮を成形した後、前記空気噴出孔から噴出する空気を前記表皮成形面および表皮の間へ吹き込むことで、成形後の前記表皮を表皮成形面から剥離させて脱型するようにした表皮成形型の表皮脱型構造において、
適度の剛性を有する素材からなる板状開閉体を、前記表皮成形面に揺動可能に配設して、常には前記空気噴出孔を閉成した状態で該表皮成形面に密着させ、
前記表皮の脱型時には、前記空気噴出孔から噴出される空気の噴出圧力により、前記表皮成形面に密着していた前記板状開閉体を該表皮成形面から分離させ、画成された間隙から該空気を前記表皮成形面および表皮の間へ吹き込むことで、表皮を表皮成形面から剥離させるよう構成したことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る表皮成形型の表皮脱型構造につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお実施例では、説明の便宜を図るために、図10に例示したウレタン成形技術に対応した構成の表皮成形型20を基本として、これに本願の表皮脱型構造を実施した場合を説明する。従って、従来技術の説明に際して引用した図10〜図14に既出の部材、部位と同一の部材、部位については、同一の符号を付して説明する。
【0015】
図1は、本発明の好適実施例に係る表皮成形型の表皮脱型構造を装備した表皮成形型50であって、図10に例示した従来の表皮成形型20と同一部位で破断して示した概略断面図である。本実施例の表皮成形型50は、基本的には図10に例示した従来の表皮成形型20と同様に、電鋳技術に基づいて所要形状に成形した厚みD=5mm程度とされる金型シェル22を主体とし、この金型シェル22を型フレーム52に固定して構成されている。前記金型シェル22は、その表面側が表皮成形面24として形成されており、また図示しない熱媒体供給装置に接続される温調パイプ26を裏面側に敷設して構成され、該温調パイプ26内に流通させる熱媒体の温度に基づいて前記表皮成形面24の温度調整を行なうようになっている。
【0016】
そして実施例の表皮成形型50は、図1および図2に示すように、表皮成形面24における所要位置、具体的には前記凸壁部分22Aにおける第1成形面24Aおよび第2成形面24Bに、空気供給装置32に接続された適宜数(図では2個のみ図示)の空気噴出孔34を設けてある。これら空気噴出孔34は、前記金型シェル22とは別体に形成された筒状体36および該筒状体36に嵌挿されるバルブ体38とから構成されるエアージェットバルブ形態として形成され、該金型シェル22に開設した装着孔28に前記筒状体36の先端を嵌合させて装着することで、前記バルブ体38におけるボス状の頂部38aが前記表皮成形面24に臨んでいる。前記バルブ体38は、前記筒状体36に対して軸方向へのスライド移動が可能に配設され、コイルバネ40の付勢力により常には表皮成形面24から後退して前記頂部38aで該空気噴出孔34を閉成した閉孔状態に保持される一方、前記空気供給装置32から供給される空気の正圧が作用すると、前記コイルバネ40の付勢力に抗して表皮成形面24側へ所要量だけ突出し、前記頂部38aの周囲にリング状の空気噴出孔34を画成した開孔状態に変位する。
【0017】
前記表皮成形型50に実施される本実施例の表皮脱型構造は、図2等に例示するように、適度の剛性を有する素材から形成され、前記空気噴出孔34を覆蓋可能でかつ前記表皮成形面24に密着可能な形状とされた板状開閉体54を、該表皮成形面24に対して揺動可能に配設したものである。すなわち、前記凸壁部分22Aの第1成形面24Aに設けた空気噴出孔34に対応して専用の板状開閉体54が配設されると共に、該凸壁部分22Aの第2成形面24Bに設けた空気噴出孔34に対しても専用の板状開閉体54が配設されている。これら板状開閉体54は、図2および図6に示すように、全体が略矩形状に成形された板厚S=1mm程度の薄板であって、前記表皮成形面24に密着状態で接合される固定部56と、該表皮成形面24に対して密着状態と非密着状態に揺動可能な揺動部58と、これら固定部56と揺動部58との境界部に沿ったヒンジ部60とから構成されており、該揺動部58の幅Eおよび長さFは前記空気噴出孔34の直径Hの概ね3倍程度となっている。また、前述したように適度の剛性を有すると同時に、前記ウレタン材料(成形材料)Uおよび成形後の表皮12に対して非接着性または難接着性を有し、かつ該ウレタン材料Uにより変質しない等の条件を満たす素材から形成するのが望ましく、具体的にはフッ素樹脂コーティングを施した適宜金属や、ポリプロピレン等の合成樹脂から形成されている。
【0018】
このような板状開閉体54は、前記揺動部58の略中央に対応の空気噴出孔34が来るように位置決めしたもとで、適宜の接着剤または両面テープ等を利用して前記固定部56を表皮成形面24に固定することで、該表皮成形面24に対して揺動可能に配設される。これにより表皮成形時(ウレタン材料Uの吹付け塗布時)には、図2および図3に示すように、前記板状開閉体54の復元力に基づき、前記揺動部58が前記表皮成形面24に密着して対応の空気噴出孔34を完全に閉成して覆蓋し、該ウレタン材料Uが該空気噴出孔34内へ侵入するのを防止するようになる。一方、表皮脱型時には、図4および図5に示すように、前記空気噴出孔34から噴出される空気の噴出圧力により、前記表皮成形面24に密着していた前記板状開閉体54の揺動部58が該表皮成形面24から分離して傾斜状に変位し、これにより画成された間隙62から該空気が噴出するのを許容するようになる。この時、前記空気噴出孔34から噴出された空気は、揺動部58の裏面に衝突して噴出方向が前記間隙62の側へ変向され、該間隙62を介して表皮成形面24に沿って噴出するようになる。
【0019】
ここで前記板状開閉体54は、揺動部58の傾斜状態時に画成される前記間隙62が、前記表皮成形面24の特定部位、すなわち前記膨出部22Bに位置する第4成形面24Dの側を指向するように揺動する姿勢で、該表皮成形面24に配設されている。すなわち、特定部位である膨出部22Bは、前記表皮12を前記表皮成形面24から脱型するに際して支障を来たす部位である。このように、板状開閉体54が、前記間隙62が表皮成形面24の第4成形面24D(膨出部22B)を指向するように揺動した場合、前記空気噴出孔34から噴出する空気は、前記膨出部22Bに向けて集中的に吹き込まれるようになるため、該第4成形面24Dに密着するように成形された前記表皮12の特定表皮部分、すなわち表皮凹部16の前記第4部分16Dを、該膨出部22Bから積極的に剥離させることが可能となる。
【0020】
【実施例の作用】
次に、前述のように構成された本実施例に係る表皮成形型の表皮脱型構造の作用につき、図を引用して説明する。
【0021】
本実施例の表皮成形型50は、表皮成形前の準備段階にあっては、図1および図2に示すように、前記空気供給装置32が未だ作動していないため、前記各空気噴出孔34に設けた各々の板状開閉体54は、自体の復元力に基づき、表皮成形面24(第1成形面24Aおよび第2成形面24B)に密着し、対応の空気噴出孔34を完全に閉成して覆蓋した状態となっている。そして、図示しない熱媒体供給装置から前記温調パイプ26に加熱媒体を流通させ、前記表皮成形面24を所定温度(ウレタン材料Uの硬化に最適な温度で例えば65℃程度)に加熱することで、表皮成形の準備が完了する。
【0022】
前記凸壁部分22Aにおける第1成形面24A、第2成形面24Bおよび第3成形面24Cを含む表皮成形面24の全体が所定温度に加熱保持されている状態で、図3に示すように、スプレーガンSGで該表皮成形面24の略全面に亘ってウレタン材料(成形材料)Uを所要厚にかつ均一的に吹付け塗布する。このとき、前記各々の空気噴出孔34は、表皮成形面24に密着した対応の板状開閉体54で完全に被覆されているため、該表皮成形面24に吹付け塗布されたウレタン材料Uの一部が、該空気噴出孔34へ侵入することが防止される。
【0023】
前記表皮成形面24に対するウレタン材料Uは、前記温度に加熱保持されている表皮成形面24(第1成形面24A、第2成形面24B、第3成形面24Cを含む)に吹付け塗布されると同時に硬化を開始し、所定時間の経過後には硬化が完了し、表皮凹部16を一体的に形成した所要厚の表皮12の成形が完了する。
【0024】
前記ウレタン材料Uの硬化により表皮12の成形が完了したら、前記空気供給装置32を作動させて各々の空気噴出孔34に向けて空気を圧送し、該表皮12の脱型を行なう。空気供給装置32から供給される空気は、図4および図5に例示したように、前記コイルバネ40の付勢力に抗してバルブ体38を表皮成形面24から所要量だけ突出した状態に変位させ、これにより開孔状態となった空気噴出孔34から噴出するようになる。そして前記板状開閉体54の揺動部58は、空気噴出孔34から噴出する空気の噴出圧力により、密着していた前記表皮成形面24から分離して傾斜状に変位し、これにより該表皮成形面24との間に間隙62を画成するようになる。そして、前記空気噴出孔34から噴出された空気は、揺動部58の裏面に衝突しつつ前記間隙62の側へ変向され、該間隙62を介して表皮成形面24における第1成形面24Aおよび第2成形面24Bと、表皮12における表皮凹部16の第1部分16Aおよび第2部分16Bの間へ吹き込まれるようになる。
【0025】
ここで、前記凸壁部分22Aの第1成形面24Aに設けた空気噴出孔34から噴出した空気は、該空気噴出孔34に対応した板状開閉体54の傾斜変位により画成された間隙62が前記膨出部22Bの側を指向しているため、該膨出部22Bから前記第3成形面24Cの側へ到達するようになる(図5(a),図6(b))。一方、前記凸壁部分22Aの第2成形面24Bに設けた空気噴出孔34から噴出した空気は、該空気噴出孔34に対応した板状開閉体54の傾斜変位により画成された間隙62が前記膨出部22Bの側を指向しているため、該膨出部22Bから前記第1成形面24Aの側へ到達するようになる(図5(b))。
【0026】
これにより前記表皮12の表皮凹部16は、先ず前記第4部分16Dおよびその隣接部位が、各空気噴出孔34から噴出した空気の圧力により第4成形面24Dおよびその周辺部位から剥離し、次いで該空気の噴出量が増加することに伴い、その他の部分16A,16B,16Cも対応の成形面24A,24B,24Cから順次剥離するようになる。そして、時間経過に伴って吹き込まれた空気量が増加すると、前記表皮凹部16は、それ全体が前記凸壁部分22Aから剥離し、該凸壁部分22Aより一回り大きく膨らんだ状態に膨出変形する。殊に、表皮凹部16の前記第4部分16Dおよびその隣接部位は、前記空気が継続的かつ集中的にに吹き込まれているため、凸壁部分22Aの前記膨出部22Bの周囲輪郭形状よりも適宜大きく膨らんだ状態に保持される(図4)。従って、成形された表皮12を表皮成形面24から脱型するに際しては、表皮凹部16(の第4部分16D)が凸壁部分22A(の膨出部22B)に引掛かることなく容易に抜け出ることが許容され、脱型作業が短時間で簡単かつ容易に行ない得る(図7)。また前記板状開閉体54は、表皮12に対して非接着性または難接着性を有する素材から形成されているため、脱型される表皮12から簡単に剥離され、該表皮12の脱型に支障を来たすことがない。
【0027】
このように、本実施例に係る表皮成形型の表皮脱型構造では、表皮成形面24の所要位置に設けた空気噴出孔34に対応して配設した板状開閉体54により、当該空気噴出孔34から噴出する空気を表皮成形面24および表皮12の間に吹き込むに際し、表皮12の脱型に支障を来たす部位である膨出部22Bおよびその近傍に向けて集中的に吹き込むようにしたので、前記膨出部22Bに位置する第4成形面24Dで成形された該表皮12の第4部分16Dおよびその近傍を、該第4成形面24D(膨出部22B)から積極的に剥離させ得る。従って、成形された表皮12を表皮成形面24から脱型するに際しては、表皮凹部16が凸壁部分22Aに引掛かることなく容易に抜け出るようになるため、表皮12の脱型作業の効率化および合理化等を図り得る。
【0028】
また前記板状開閉体54は、表皮成形時には表皮成形面24に密着して対応の空気噴出孔34を閉成して覆蓋するようになるため、表皮成形面24に吹付け塗布したウレタン材料Uが該空気噴出孔34へ侵入することを防止し得る。従って、空気噴出孔34の内面にウレタン材料Uが侵入して付着することがないから、前記バルブ体38のスライド移動に支障を来たすことがなく、よって成形される表皮12に形状不良が発生することが回避される一方、該表皮12の脱型不良が発生することも防止し得る。
【0029】
【変更例】
図8は、実施例の表皮脱型構造が実施される表皮成形型50の変更例を例示した概略断面図であって、この変更例に係る表皮成形型50では、空気噴出孔34を単なる通孔形態としたものである。すなわち、図10に例示した従来の表皮成形型20に設けた各空気噴出孔34は、各空気噴出孔34が表皮成形面24に露出するようになるため、バルブ体38を有するエアージェットバルブ形態としてウレタン材料Uの侵入を阻止する構造とする必要があった。しかしながら空気噴出孔34に対応して、実施例の表皮脱型構造に採用される板状開閉体54を配設した場合には、ウレタン材料Uの吹付け塗布時には該空気噴出孔34が該板状開閉体54で完全に覆蓋されるため、当該空気噴出孔34に対するウレタン材料Uの侵入が好適に防止される。従って空気噴出孔34は、図8に例示したように、金型シェル22に穿設した単なる通孔形態としてもウレタン材料Uの侵入が防止される一方、更には前記板状開閉体54に覆蓋される位置であれば複数個穿設することも可能である。また、空気噴出孔34を単なる通孔形態とするため、従来のエアージェットバルブ形態のものと比較して製造コスト低減が期待できる。
【0030】
このような変更例に係る空気噴出孔34を設けた表皮成形型50では、前記表皮12の成形が完了した後に前記空気供給装置32を作動させると、該空気供給装置32から供給される空気は、常に開孔している空気噴出孔34から噴出するようになる。これにより前記板状開閉体54の揺動部58は、図9(a),(b)に示すように、空気噴出孔34から噴出する空気の噴出圧力により、密着していた前記表皮成形面24から分離して傾斜状に変位し、これにより該表皮成形面24との間に間隙62を画成するようになる。そして前記実施例と同様に、前記空気噴出孔34から噴出した空気は、揺動部58の裏面に衝突しつつ前記間隙62の側へ変向され、該間隙62を介して表皮成形面24および表皮12の間へ吹き込まれるようになる。
【0031】
なお前記実施例では、前記凸壁部分22Aにおける第1成形面24Aおよび第2成形面24Bの所要位置に設けた空気噴出孔34の夫々に対し、対応する板状開閉体54を個別に配設した場合を例示した。しかしながら、各々の成形面24A,24Bにおいて、2個またはそれ以上の空気噴出孔34を隣接した状態に設けた場合には、板状開閉体54の形状・サイズを大きく設定して、単一の板状開閉体54で複数の空気噴出孔34を同時に覆蓋し得るようにしてもよい。
【0032】
また、前記板状開閉体54が鋼等の磁性体から形成されている場合には、該板状開閉体54を配設した表皮成形面24の裏側に磁石または電磁石等を設置するようにすれば、空気の非噴出時には磁着力により該表皮成形面24に対する板状開閉体54の密着性を高めることができ、表皮成形面24に吹付け塗布したウレタン材料(成形材料)Uの一部が前記空気噴出孔34へ侵入することを好適に防止し得るようになる。更に、前記板状開閉体54が樹脂等の非磁性体から形成されている場合であっても(磁性体から形成されている場合も含む)、前記空気供給装置32を逆作動させて空気を吸引するようにすれば、負圧によって表皮成形面24に対する板状開閉体54の密着性を高めることができ、表皮成形面24に吹付け塗布したウレタン材料(成形材料)Uの一部が前記空気噴出孔34へ侵入することを好適に防止し得る。
【0033】
一方、前記実施例では、板状開閉体54を、ウレタン材料U(表皮12)と非接着性または難接着性を有する素材から形成して、成形後に表皮成形面24から脱型される表皮12から容易に剥離されるようにした場合を例示した。しかしながら、例えば前記板状開閉体54を、前記ウレタン材料U(表皮12)に対して良好な接着性を有する材料から形成すると共に、前記表皮成形面24に対して離脱可能に配設するようにすれば、脱型される前記表皮12に装着されたまま該表皮成形面24から離脱させることが可能となる。
【0034】
なお前記実施例では、ウレタンスプレー成形技術に対応した構造の表皮成形型(スプレー成形型)に表皮脱型構造を実施した場合を例示したが、本願の表皮脱型構造は、パウダースラッシュ成形技術に対応した構造の表皮成形型(パウダースラッシュ成形型)に実施例することも可能である。
【0035】
更に、本願の表皮脱型構造が実施される表皮成形型の表皮成形面24の形状は、前記実施例および変更例に例示した形状に限定されるものではなく、これより更に複雑な形状を有するものに対しても対応可能である。
【0036】
また本願の表皮脱型構造は、前記インストルメントパネル10の他に、フロアコンソール、ドアパネル、アームレストおよびピラーガーニッシュ等の種々の車両内装部材に実施される表皮を成形するための表皮成形型は勿論、これ以外の種々物品(例えば家具等)に実施される表皮を成形するための表皮成形型等にも好適に実施可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る表皮成形型の表皮脱型構造によれば、表皮成形面の所要位置に設けた空気噴出孔に対応して配設した板状開閉体により、当該空気噴出孔から噴出する空気を表皮成形面および表皮の間に吹き込むに際し、表皮の脱型に支障を来たす部位である特定部位に向けて集中的に吹き込むようにしたので、この特定部位で成形された該表皮の特定表皮部分を該特定部位から積極的に剥離させ得る。従って、成形された表皮を表皮成形面から脱型するに際しては、特定表皮部分が特定部位に引掛からないため、表皮の脱型作業の効率化および合理化等を図り得る有益な効果を奏する。
【0038】
また前記板状開閉体は、表皮成形時には表皮成形面に密着して対応の空気噴出孔を閉成して覆蓋するようになるため、表皮成形面に吹付け塗布した成形材料が該空気噴出孔へ侵入することを防止し得る。従って、空気噴出孔の内面に成形材料の一部が侵入して付着することがないから、成形される表皮に形状不良が発生することが回避される一方、該表皮の脱型不良が起こることも回避し得る等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適実施例に係る表皮脱型構造を装備した表皮成形型の概略断面図である。
【図2】図1に例示した表皮成形型に装備した表皮脱型構造を部分的に拡大して示した説明断面図であって、(a)は、凸壁部分の上側に位置する第1成形面に設けた空気噴出孔を例示し、(b)は、凸壁部分の右側に位置する第2成形面に設けた空気噴出孔を例示している。
【図3】各空気噴出孔に対応的に配設した板状開閉体を表皮成形面に密着させて該空気噴出孔を覆蓋したもとで、表皮成形面へウレタン材料を吹付け塗布している状態を示した断面図である。
【図4】表皮成形面で成形した表皮を脱型する状態を示した説明断面図であって、各空気噴出孔から噴出した空気により板状開閉体が傾斜状に変位し、これにより膨出部を指向する側に画成された間隙を介して、空気が該膨出部に向けて集中的に吹き込まれるようになることを示している。
【図5】図4の状態にある表皮成形型を部分的に拡大して示した説明断面図であって、(a)は、凸壁部分の上側に位置する第1成形面に設けた空気噴出孔から空気が噴出している状態を例示し、(b)は、凸壁部分の右側に位置する第2成形面に設けた空気噴出孔から空気が噴出している状態を例示している。
【図6】(a)は、図2(a)の状態を示した平面図であり、(b)は、図5(a)の状態を示した平面図である。
【図7】空気噴出孔から空気を噴出させた状態で、表皮を表皮成形面から脱型する状態を示した説明断面図である。
【図8】別形態に係る空気噴出孔を実施した表皮成形型の概略断面図である。
【図9】図8に例示した表皮成形型に装備した表皮脱型構造を、表皮を脱型する状態で示した説明断面図であって、(a)は、凸壁部分の上側に位置する第1成形面に設けた空気噴出孔から空気が噴出している状態を例示し、(b)は、凸壁部分の右側に位置する第2成形面に設けた空気噴出孔から空気が噴出している状態を例示している。
【図10】従来の表皮脱型構造を実施した表皮成形型の概略断面図である。
【図11】各空気噴出孔を閉孔状態としたもとで、表皮成形面へウレタン材料を吹付け塗布している状態を示した断面図である。
【図12】表皮成形面で成形した表皮を脱型する状態を示した説明断面図であって、各空気噴出孔から噴出した空気が、該空気噴出孔の周囲全方向へ吹き込まれるようになり、アンダーカット形状となる膨出部に空気が十分に吹き込まれないことを示している。
【図13】空気噴出孔内へウレタン材料の一部が侵入して付着することで、バルブ体による該空気噴出孔の適切な閉孔状態が形成されない不都合を示した説明断面図である。
【図14】図1および図10に例示した各表皮成形型で成形された表皮が実施されるインストルメントパネルの概略斜視図である。
【符号の説明】
12 表皮
16D 第4部分(特定表皮部分)
24 表皮成形面
24D 第4成形面(特定部位)
34 空気噴出孔
54 板状開閉体
62 間隙
U 成形材料
Claims (6)
- 表皮成形面(24)の所要位置に空気噴出孔(34)を有し、前記表皮成形面(24)に付着させた成形材料(U)の硬化により表皮(12)を成形した後、前記空気噴出孔(34)から噴出する空気を前記表皮成形面(24)および表皮(12)の間へ吹き込むことで、成形後の前記表皮(12)を表皮成形面(24)から剥離させて脱型するようにした表皮成形型の表皮脱型構造において、
適度の剛性を有する素材からなる板状開閉体(54)を、前記表皮成形面(24)に揺動可能に配設して、常には前記空気噴出孔(34)を閉成した状態で該表皮成形面(24)に密着させ、
前記表皮(12)の脱型時には、前記空気噴出孔(34)から噴出される空気の噴出圧力により、前記表皮成形面(24)に密着していた前記板状開閉体(54)を該表皮成形面(24)から分離させ、画成された間隙(62)から該空気を前記表皮成形面(24)および表皮(12)の間へ吹き込むことで、表皮(12)を表皮成形面(24)から剥離させるよう構成した
ことを特徴とする表皮成形型の表皮脱型構造。 - 前記板状開閉体(54)は、前記間隙(62)が前記表皮成形面(24)の特定部位(24D)を指向するように揺動して、前記空気噴出孔(34)から噴出する空気を前記特定部位(24D)に向けて吹き込ませることで、この特定部位(24D)で成形された前記表皮(12)の特定表皮部分(16D)を該特定部位(24D)から剥離させ得るようになっている請求項1記載の表皮成形型の表皮脱型構造。
- 前記特定部位(24D)は、前記表皮(12)を前記表皮成形面(24)から脱型するに際して支障を来たす部位である請求項2記載の表皮成形型の表皮脱型構造。
- 前記板状開閉体(54)は、表皮成形時には前記空気噴出孔(34)を覆蓋した状態で前記表皮成形面(24)に密着し、前記成形材料(U)が該空気噴出孔(34)内へ侵入するのを防止するようになっている請求項1〜3の何れかに記載の表皮成形型の表皮脱型構造。
- 前記板状開閉体(54)は、前記成形材料(U)に対して非接着性または難接着性を有する素材から形成され、前記表皮(12)の脱型時には該表皮(12)から容易に剥離されるようになっている請求項1〜4の何れかに記載の表皮成形型の表皮脱型構造。
- 前記板状開閉体(54)は、前記成形材料(U)に対して良好な接着性を有する素材から形成されると共に、前記表皮成形面(24)に対して離脱可能に配設され、前記表皮(12)の脱型時には該表皮(12)に接着されたまま該表皮成形面(24)から離脱するようになっている請求項1〜4の何れかに記載の表皮成形型の表皮脱型構造。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008162198A (ja) * | 2006-12-28 | 2008-07-17 | Nippon Plast Co Ltd | 樹脂成型品の製造方法、樹脂成型品及びインストルメントパネル |
JP2014166708A (ja) * | 2013-02-28 | 2014-09-11 | Toyota Boshoku Corp | 成形装置 |
-
2003
- 2003-04-25 JP JP2003122931A patent/JP2004322550A/ja active Pending
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