JP2004322396A - 化粧材 - Google Patents

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Abstract

【課題】高級感ある落ち着いた艶消し感を有し、しかも該艶消し感が化粧材の使用中の磨耗や擦傷により損なわれにくく、また、表面の微細な凹部への汚染物の蓄積も発生しにくく、耐汚染性も良好であり、艶消し感の長期持続性も良く、さらには、保護層を厚く設ける場合でも艶消剤の節約が可能で、得られる艶消し感の均一性や安定性にも優れた化粧材を提供する。
【解決手段】基材1の表面に、透明又は半透明の樹脂組成物を主成分とする保護層2が設けられてなる化粧材において、前記保護層2が、その主成分である樹脂組成物よりも高硬度の材質からなる透明又は半透明の中空球状粒子3を含有することを特徴とし、さらには、前記中空球状粒子3の真比重が0.2〜0.5であることを特徴とする化粧材である。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅等の建築物の内装材や造作材、建具等の建築資材、家具什器類、住設機器や家電製品等の表面化粧に使用するための化粧材に関するものである。更に詳しくは、表面に落ち着いた艶消し感を有し、しかも耐磨耗性や耐擦傷性、耐汚染性に優れ、艶消し感の長期持続性も良く、さらには、保護層を厚く設ける場合でも艶消剤の節約が可能で、得られる艶消し感の均一性や安定性にも優れた化粧材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記各種用途に用いられる化粧材(化粧板、化粧紙、化粧シート等を含む)には、その長期に亘る使用中の、人体や各種物品との接触による磨耗や擦傷に耐え、その表面の美観を長期に亘り維持するために、熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂等の、硬質で透明な樹脂組成物を主成分とする保護層が、表面に設けられている場合が多い。この保護層は、用途によっては、鏡面状等の艶出し仕上げとされる場合もあるが、一般的な用途には、高級感のある艶消し仕上げが所望される場合が多く、そのため、無機粉末などの艶消剤の添加により、表面に微細な凹凸を形成した艶消し状とされる場合が多い。
【0003】
しかし、艶消剤の添加により保護層の表面を良好な艶消し状とするためには、艶消剤として、その外形に不規則な角部や稜部を有する不定形状の粒子を使用し、この粒子の一部を保護層の平均表面から突出させる事で微細な凹凸を形成する必要がある。従って、物品等との接触時に、この突出部に物品等が衝突することにより、粒子が保護層から脱落したり、脱落した粒子が保護層の表面を擦ることによって、傷を付けたり、あるいは、物品等との接触の圧力によって、粒子が保護層の内部へめり込んだりした、保護層の表面形状が変化し、擦り傷による艶変化として、化粧材に美観を低下させてしまうという問題がある。
【0004】
また、上記の様に、保護層の表面に微細な凹凸が形成されているために、化粧材を使用中に表面に付着した汚染物が凹部等に入り込むと、雑巾等で拭き取ろうとしても拭き取り難く、従って、使用中の経時により表面の汚染が蓄積して、化粧材の美観を低下させてしまうという問題もある。
【0005】
上記の問題は、艶消剤として、その外形に不規則な角部や稜部のない球状の粒子を使用すれば、その粒子形状に起因して、粒子の保護層からの脱落も保護層内へのめり込みも発生し難く、また、表面が全体としてなだらかな形状となることから、凹部への汚染物の詰まりも発生しにくいので、大幅に軽減することができる。
【0006】
しかし、上記した球状の粒子としては一般的に、架橋アクリルビーズ又は架橋ウレタンビーズ等の架橋樹脂粒子やガラスビーズ等の無機粒子が用いられるが、これらは一般に保護層の塗工液よりも比重が大きいために、保護層を塗工形成する際に、保護層の底部へ沈降してしまい易く、保護層の表面への凹凸の形成に有効に寄与する粒子はごく一部に過ぎない。特に、保護層を粒子の粒径と比較して厚く形成する場合には、粒子を大量に添加する必要があるために材料の無駄が多いほか、保護層の塗膜強度を低下させたり、保護層の透明度が低下して意匠性が悪化する場合があることなどの問題がある。
【0007】
また、係る粒子の粒径は、工業製品として全てを均一にすることは困難であり、統計的には正規分布を描く種々の粒径の粒子の集合体であり、いわゆる平均粒径よりも粒径の大きい粒子や小さい粒子が混在しているのが現実である。そのため、保護層の厚みよりも小さい粒径の粒子は保護層の底部へ沈降して表面に現れず、また、一定以上の粒径のものは、その粒径に比例して表面の凹凸の高低差を生じさせるため、保護層の膜厚のばらつきにより、表面に現れる凹凸の程度が異なり、ついては得られる艶消し感、質感などを均一にするのが困難であり、工業製品としての品質管理の観点からは満足できるものではなかった。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−57410号公報
【特許文献2】
特開平8−183147号公報
【特許文献3】
特開平11−129427号公報
【特許文献4】
特開2001−129929号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記のような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、一般的な化粧材に所望される高級感ある落ち着いた艶消し感を有し、しかも該艶消し感が化粧材の使用中の磨耗や擦傷により損なわれにくく、また、表面の微細な凹部への汚染物の蓄積も発生しにくく、耐汚染性も良好であり、艶消し感の長期持続性も良く、さらには、保護層を厚く設ける場合でも艶消剤の節約が可能で、得られる艶消し感の均一性や安定性にも優れた化粧材を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の化粧材は、基材の表面に、透明又は半透明の樹脂組成物を主成分とする保護層が設けられてなる化粧材において、前記保護層が、その主成分である樹脂組成物よりも高硬度の材質からなる透明又は半透明の中空球状粒子を含有することを特徴とするものである。
【0011】
また特には、上記の化粧材において、前記中空球状粒子の真比重が0.2〜0.5であることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の化粧材の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の化粧材の実施の形態を示す断面図である。
【0013】
本発明において、基材1の材質や構成は特に限定されるものではなく、一般的な化粧材用の基材であれば何でも適用可能である。具体的には、例えば薄葉紙、チタン紙、上質紙、表面処理紙、樹脂含浸紙、樹脂混抄紙、紙間強化紙等の紙類や、織布又は不織布等の繊維質材、ポリオレフィン系、ポリエステル系、アクリル系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ポリビニル系等の熱可塑性樹脂フィルムや成形体、繊維強化プラスチック等の合成樹脂系基材、木材単板、合板、集成材等の木質系基材、無機質系基材、金属系基材等、あるいはこれらの複数種の複合体、積層体等、目的とする化粧材の用途に応じて任意に採用することができる。
【0014】
また、この基材1の表面、裏面及び/又は層間に、意匠性の付与のための絵柄層12の印刷やエンボス15等の装飾処理が施されていても良いことは言うまでもない。なお、図1は本発明の化粧材の一種である化粧シートを示したもので、その基材1は下から順にプライマー層16、下台シート11、絵柄層12、接着剤13、上台表面シート14からなり、該上台表面シート14の表面にはエンボス15が施されている。
【0015】
保護層2は、使用時における経時での磨耗や擦傷から基材1を保護して長期の亘りその性能を維持するために設けられるものであり、透明又は半透明の樹脂組成物を主成分とするものである。そして、本発明においては、この保護層2による保護効果をさらに高めるために、この保護層2に、その主成分である樹脂組成物よりも高硬度の材質からなる、透明又は半透明の中空球状粒子3が添加されている。
【0016】
中空球状粒子3は、従来の化粧材に使用されて来た艶消剤として一般的な粒子と異なり、中空構造となっているために比重が小さく、保護層2を塗工形成する際に保護層2の表層部に浮遊し、乾燥後にはその殆どが保護層2の表層部に集中して存在する。従って、保護層2を中空球状粒子3の平均粒径との比較において格段に厚く設ける場合であっても、保護層2の表層部に所望される量だけの中空球状粒子3を添加すれば良いので、従来の艶消剤と比較して使用量が少なくて済み、効率が良い。
【0017】
それだけでなく、保護層2に添加された中空球状粒子3は、その粒度分布のばらつきにかかわらず、大粒径の粒子も小粒径の粒子もほぼ同じ比率で表面の凹凸の形成に寄与するので、保護層2の塗布量を増すと小粒径の粒子が塗膜中に埋没して凹凸形成への寄与を失い易い従来の艶消剤を使用した場合と異なり、保護層2の塗布量が多少ばらついても得られる艶消し感の変化が少なく、意匠品質の安定した化粧材の生産が容易である。
【0018】
さらに、上記したとおり中空球状粒子3は保護層2の表層部に集中的に存在し、表層部以外の部分には殆ど存在しないので、保護層2を厚く設ける場合であっても、保護層2全体としての中空球状粒子3の含有量は少なくて済むので、中空球状粒子3の添加による保護層2の強度の低下(脆化)や透明度の低下も少なく、艶消し度の割には表面物性や意匠性に優れた化粧材が得られる利点もある。
【0019】
そのほか、添加された艶消剤としての中空球状粒子3が球状であることにより、物品等との接触時に粒子の脱落や該脱落粒子による擦傷、粒子の保護層2内へのめり込みによる艶消し感の変化や、保護層2の表面が滑らかな凹凸状であることにより凹部に汚染物が蓄積しにくく耐汚染性に優れることなどは、従来の中空でない球状粒子を用いた化粧材の場合と同様である。
【0020】
中空球状粒子3の材質としては、少なくとも保護層2の主成分である樹脂組成物よりも硬質の透明又は半透明の材質であれば良く、例えば架橋アクリル系樹脂等の硬質合成樹脂やガラス等の無機物などからなるものが使用可能で、その中でも高硬度でしかも安価に入手可能な中空ガラスビーズが最も好適である。その平均粒径としては、化粧材に所望される艶消し感の程度に応じて適宜選択が可能であるが、艶消し感及び塗工液への分散性、塗工適性等を考慮すると、概ね0.5〜30μm程度の範囲内から選ぶのが良い。
【0021】
中空球状粒子3の添加量は、あまり少なすぎると耐磨耗性や耐擦傷性の向上効果が乏しく、逆にあまり多すぎると保護層2の透明度が低下したり、表面凹凸の増加による過剰な光散乱効果が発生し、保護層2が本来有すべき艶消し感が減殺されて外観意匠性が低下したり、保護層2が全体として硬く脆くなるなどのデメリットが生じてくる。従って、中空球状粒子3の添加量は、中空球状粒子3の平均粒径と保護層2の塗布量との関係にもよるが、保護層2の主成分である樹脂組成物の固形分に対し、1〜20重量%の範囲内とすることが望ましく、中でも一般的な条件では10〜15重量%の範囲内とすることが最も望ましい。
【0022】
中空球状粒子3の真比重としては0.2〜0.5の範囲内であることが望ましい。中空球状粒子3の真比重が0.5を越えると、保護層2内での浮遊性が十分に得られず、従来の中空でない球状粒子を用いた場合と大差が見られない。一方、真比重が0.2未満であると、保護層2内での浮遊性が高すぎて表層部に集中しすぎることにより、表面硬度は高いが折り曲げ等に対して脆くなり易い。さらには、中空球状粒子3が保護層2の表面上に突出し過ぎるために、摩擦により脱落し易くなったり、中空球状粒子3の強度が低下するために、摩擦や圧力により潰れて艶消し感が変化したりする原因ともなる。また、中空球状粒子3が保護層2の表層部にあまり集中しすぎると、乾燥工程において保護層2の内部の溶剤分の蒸発を妨げ、謂わば皮張りした様な状態となって乾燥効率を低下させるという問題も生じる。
【0023】
保護層2の主成分である樹脂組成物としては、従来の化粧材における保護層と同様、例えばウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、メラミン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂や、(メタ)アクリレート系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等から適宜選択が可能である。耐摩耗性や耐擦傷性の観点からは硬度が高い方が望ましいが、単に硬度が高ければ良いというものではなく、中空球状粒子3に外力が加えられた際に、その脱落を防ぎ塗膜中に保持できる様な、適度の柔軟性も要求される。この様な観点から、硬度と柔軟性とのバランスに優れた、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応生成物、すなわちアクリルウレタン樹脂を使用することが望ましい。
【0024】
保護層2の厚さは、あまり薄過ぎると耐擦傷性等の保護効果が乏しく、逆にあまり厚すぎると割れ易くなって、耐衝撃性やVカット加工又はラッピング加工等の2次加工適性が低下する。外観意匠性も含め鑑みるに、一般的には保護層2の厚さは1〜100μm程度、特に基材1が紙又は熱可塑性樹脂フィルム等の可撓性材質である場合は1〜30μm程度とするのが良く、中でも3〜6μm程度とするのが最も望ましい。
【0025】
保護層2の形成方法としては、従来の化粧材におけると同様、例えばグラビアコート、ロールコート、ロッドコート、キスコート、ナイフコート、エアナイフコート、ダイコート、リップコート、スプレーコート、フローコート、シルク印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等、従来公知の塗工又は印刷方法によることができる。特に、基材1が紙又は熱可塑性樹脂フィルム等の連続巻き取り状である場合には、グラビア印刷によるのが最も一般的である。
【0026】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【0027】
−基材の作製−
図1に示す様に、厚さ100μmの着色ポリプロピレン樹脂フィルムを下台シート11とし、その表面にウレタン系インキによる木目柄の絵柄層12をグラビア印刷し、2液硬化型ウレタン系接着剤13を介して、上台表面シート14として厚さ80μmの透明ポリプロピレン樹脂フィルムを積層し、その表面に導管柄のエンボス15を施し、下台シート11の裏面にプライマー層16を塗工した基材1を作製した。
【0028】
−実施例−
上記基材1の表面上に、アクリルポリオール100重量部、イソシアネート硬化剤5重量部、平均粒径5μmのホウケイ酸ガラスを素材とした真比重0.3の中空球状粒子3を10重量部配合してなる塗工液をグラビアコート法にて塗工、養生硬化させて、本発明の化粧材である化粧シートを作製した。
【0029】
−比較例−
上記実施例において、上記中空球状粒子3の代わりに、同一素材からなる同一平均粒径の真比重1.5の中実球状粒子を同量配合し、その他は上記実施例と同一条件にて化粧シートを作製した。
【0030】
−性能比較−
上記で作製した各化粧シートを、中密度繊維板に貼り合わせて得た化粧板について、(1)化粧板表面をスチールウールで擦るスチールウール磨耗試験、および(2)10円銅貨を荷重1kgで擦るコインスクラッチ試験を行い、耐擦傷性の評価を目視にて行った。その結果を下表に示す。
【0031】
Figure 2004322396
【0032】
【発明の効果】
以上、詳細に説明した通り、本発明の化粧材は、表面の保護層に硬質の中空球状粒子を含有することで、粒子を保護層の表層部に集中させることができるので、保護層の膜厚のばらつきに左右されることなく、少量の粒子の添加で効率良く、しかも安定して高級感ある艶消し感を演出、付与することができ、且つ耐擦傷性、耐磨耗性に優れた化粧材を得ることができる。
【0033】
また、前記中空球状粒子の真比重が0.2〜0.5のものを用いることで、より効率良く粒子を保護層の表層部に集中させ、上記した優れた性能を確実に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧材の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基材
11 下台シート
12 絵柄層
13 接着剤
14 上台表面シート
15 エンボス
16 プライマー層
2 保護層
3 中空球状粒子

Claims (2)

  1. 基材の表面に、透明又は半透明の樹脂組成物を主成分とする保護層が設けられてなる化粧材において、前記保護層が、その主成分である樹脂組成物よりも高硬度の材質からなる透明又は半透明の中空球状粒子を含有することを特徴とする化粧材。
  2. 前記中空球状粒子の真比重が0.2〜0.5であることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
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