JP2004322210A - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Yasuo Kishimoto
康夫 岸本
Masamichi Abe
正道 阿部
Hiroki Kurooka
裕樹 黒岡
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Abstract

【課題】鋳型内における必要箇所に限定した、溶鋼流動速度の測定を精度良く行って、その情報に基づいた高精度でダイナミックな溶鋼の流動制御を実現した鋼の連続鋳造方法について提案する。
【解決手段】鋳型内の溶鋼に、該鋳型の長辺間を貫く静磁場を印加し、溶鋼の流動を制御しながら連続鋳造を行うに当たり、静磁界と溶鋼流動との相互作用に起因して発生する磁力により溶鋼の流動変化を、溶鋼から離間した位置にて検知する、非接触式流速センサーを用いて、鋳型長辺に平行かつ鋳造方向に垂直な方向の溶鋼流速成分を検出し、その検出値に基づいて鋳型内溶鋼の流動を制御する。
【選択図】なし

Description

本発明は、鋳型内溶鋼に静磁場を印加して、該溶鋼の流動を制御しながら連続鋳造を行う方法、特に鋳型内の溶鋼流動パターンを最適化した連続鋳造方法に関するものである。
鋼の連続鋳造において、鋳型内の溶鋼の流動を最適に制御することは、鋳片の品質管理上極めて重要である。
そこで、例えば特許文献1では、タンディッシュから耐火物製の浸漬ノズルを介して鋳型に溶鋼を注入する連続鋳造において、鋳型短辺の面と平行な方向に鋳片を貫通するように静磁界を印加して、この静磁界印加範囲内に2本で1対の電極を1対以上、鋳型長辺方向に所定の間隔で溶鋼中に浸漬させ、溶鋼流と前記印加磁界との相互作用から誘起される起電圧を電極で連続的に検出し、溶鋼の流速を求める方法が提案されている。
また、特許文献2には、静磁場を印加した鋳型内に電極を浸漬させて電位を測定することにより流速を測定する方法が、特許文献3には、空芯のソレノイドコイルを用いた浸漬型センサーを用いて流速を測定する方法が、それぞれ提案されている。さらに、特許文献4では、鋳型に埋め込んだコイルにより電磁気を発生させ、二ヶ所での磁場の差分を検知することにより流速を求める、非接触式流速計を用いて流速を測定する方法が提案されている。
しかし、特許文献1〜3に記載の、溶鋼に浸漬させて流速を測定する方法は、センサーにより溶鋼流動が干渉される上に、センサー自体が溶損することにより品質上大きな障害となるため、工程管理に用いることは事実上困難である。
一方、特許文献4に記載の、磁場を鋳型背面から与える方法は、溶鋼流動制御に効果的な電磁ブレーキを用いる際には適用困難である上、鋳型や周囲の金属との相互干渉の問題から十分な精度で流速を測定することが出来ないという問題がある。
ここに、特許文献5において、移動中の金属ベッドについて、磁石と導体である金属ベッドの移動との相互作用に基づく力を測定することにより、例えば移動速度を測定する非接触式のセンサーが開示されている。このセンサーを連続鋳型に適用することにより、鋳型内の溶鋼流速を、溶鋼と非接触下で測定できる方途が開けたのである。
特開平7−195159号公報 特開平7−209047号公報 特開平9−164462号公報 特開平7−128104号公報 特表2002−540414号公報
しかしながら、上記の非接触式流速センサーを単に連続鋳造に適用しようとすると以下の問題があった。
まず、実際に鋳型内の流動をこのセンサーで測定したところ、同一条件においても極めてばらつきが大きく正確に流速を検知できなかったことが挙げられる。
また、溶綱流動制御に効果的な電磁ブレーキを用いると、流速センサー内の磁石が電磁ブレーキの磁場と干渉するため適用困難であるという問題もあった。
本発明は、上記の特許文献5に示されるような、非接触式のセンサーを用いて、流動制御用の磁場の存在下においても、鋳型内の品質制御に重要となる特定方向の溶鋼流動速度の測定を精度良く行って、その情報に基づいた高精度でダイナミックな溶鋼の流動制御を実現した鋼の連続鋳造方法について提案することを目的とする。
本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)鋳型内の溶鋼に、該鋳型の長辺間を貫く静磁場を印加し、溶鋼の流動を制御しながら連続鋳造を行うに当たり、静磁界と溶鋼流動との相互作用に起因して発生する磁力により溶鋼の流動変化を、溶鋼から離間した位置にて検知する、非接触式流速センサーを用いて、鋳型長辺に平行かつ鋳造方向に垂直な方向の溶鋼流速成分を検出し、その検出値に基づいて鋳型内溶鋼の流動を制御することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
(2)鋳型長辺に平行かつ鋳造方向に垂直な方向の溶鋼流速成分の検出値と、予め操業条件により予想される同流速成分との差が大きくなった時点において、鋳型内に溶鋼を注入する浸漬ノズルの鋳型内挿入深さ、鋳型内溶鋼の流動を制御する装置の出力、浸漬ノズル内に吹きこむArガス流量および鋳造速度の少なくとも一つを制御して上記差を小さくすることを特徴とする上記(1)に記載の鋼の連続鋳造方法。
鋼の連続鋳造においては、操業の安定性と品質の確保との観点から、鋳型内における溶鋼の流動パターンを最適化する要求は極めて強いものがある。
一般的に、鋳造条件、例えば浸漬ノズルの吐出角度およびノズルの開口径、鋳片サイズおよび注湯速度、さらには浸漬ノズルの浸漬深さ等の条件が決まると、鋳型内における溶鋼の流動パターンはほぼ決定されるが、鋳造の進行と共に、浸漬ノズル内面にはアルミナ等の脱酸生成物が付着し、流動パターンは鋳造初期のものから次第に変化する。
そこで、従来は、浸漬型のセンサーにより鋳型内の流動状況に関する情報を入手し、この情報に基づいて、浸漬ノズルの浸漬深さや、電磁力を用いた流動制御装置の出力を変化させることによって、上記変化に対応させることが試みられてきた。
このような流速情報に基づく流動のフィードバック制御を実施するには、浸漬型のセンサーを連続的に使用する必要がある。しかし、浸漬したセンサーは溶損するので、鋼の品質が悪化するという問題と、溶損により測定可能な時間が限られるため、所定の目的が達成できないという問題があった。
この点、非接触式流速センサーからの信号を基に、鋳型内において最適な溶鋼の流動パターンを得ることによって、連続鋳造操業を制御しようとするものである。すなわち、非接触式流速センサーにより、操業の安定性及び鋳片品質に最も敏感に反映するメニスカス近辺の流動を検出し、これを最適なパターンとするために鋳型の流動制御装置の出力をダイナミックに制御することによって、高品質の鋳片を安定して鋳造する。
その際の制御方法としては、浸漬ノズルの深さや、高速鋳造の場合に流速センサーからの信号を用いて長辺鋳型背面に配置されている電磁ブレーキもしくは電磁攪拌装置等の流動制御装置の出力制御機構にもフィードバックがかかるように配慮することが好ましい。
まず、本発明で用いる、溶鋼と非接触下で鋳型内の溶鋼表面流速を測定し得る高精度のセンサーについて説明する。本発明で用いるセンサーは、図1に示すように、センサー自体の磁場と溶鋼間に発生する渦電流に基づく微小な力を検出するものである。
すなわち、図1に示すように、センサーから磁場Bを発生させると、溶鋼の運動とその磁場の干渉により溶鋼内部に渦電流が生じる。この渦電流と磁場との干渉による微小な力fが溶鋼部に生じる。その結果、センサー部の磁石にも反力Fが溶鋼の運動方向と同じ方向に加わることになる。そこで例えば、磁場発生部を支えるロッドに厚みが細くなる部分を形成し、そこに歪みゲージを付けることにより、上記微弱な力Fの測定が可能となる。この力Fは、センサーの磁石と溶鋼間の距離Hと溶鋼の流速との関数となるので、予めHおよび溶鋼の流速uと磁力Fとの関係を実験で求めておけば、センサーと溶鋼との距離を別途求めることにより、溶鋼の流速uをFから知ることが可能となる。
ただし、連続鋳造にて多用されている電磁ブレーキのような、静磁場による溶鋼流動制御装置を適用している場合は、本センサーを用いた際に、電磁ブレーキの静磁場とセンサーの磁場との干渉によりセンサーの微小な力を検知できなくなるという問題がある。
ここで、発明者らは、上記の流動制御に必要な流速は、主にノズルより一旦鋳型短辺に衝突した後に形成される反転流に基づく、短辺からノズルに向けての流れであることに着目した。そして、溶鋼に印加した磁場と垂直で、かつ鋳型短辺とノズルとを結ぶ幅方向の流速、換言すると、鋳型長辺に平行かつ鋳造方向に垂直な方向の溶鋼流速、のみを上記センサーにより測定することを試みた。
さて、電磁ブレーキの静磁場は、鋳型の二つの長辺の間に磁場が印可され、鋳造方向およびメニスカスの短辺とノズルを結ぶ方向の流動を制御するものである。従って、図2(b)に示される長辺間の方向には電磁ブレーキによる強力な磁場により、センサーの磁石部に力がかかるため、上に説明した溶鋼流動に伴いセンサー部磁石に加わる微少な力を検出することが困難となる。ただし、鋳型長辺に平行かつ鋳造方向に垂直な方向の流動により生じる力(図2(a))については、電磁ブレーキの影響を受けない。従って、センサーを鋳型長辺に平行かつ鋳造方向に垂直な方向の流動により生じる力のみ感知出来るように、言い換えれば、一方向のみのメニスカス表面流速を検知できるように、改良すれば、電磁ブレーキの存在下でもセンサーによる鋳型内溶鋼表面流速が測定可能となる。
なお、流動制御に必要な流速を鋳型長辺に平行かつ鋳造方向に垂直な方向の溶鋼流速に限定したのは、以下の理由である。
鋳片の表面性状は、初期凝固部の流動によって大きく影響されることが知られている。すなわち、初期凝固部前面の流動が小さすぎると、介在物や気泡が停滞しやすくなる結果、凝固界面に取り込まれ最終的に鋳片最表層部の欠陥となってしまう。
この凝固界面の流動は、メニスカス(溶鋼表面)流速と密接な関係にある。初期凝固部の前面流速を大きくするには、メニスカス流速を大きくする必要があるが、一方で初期凝固部の流速を大きくしようとして表面流速を大きくしすぎるとメニスカス部(溶鋼表面部)でパウダーの巻き込みなどの欠陥が増加してしまう。従って、溶鋼表面流速をセンサーにより計測し、適当なレベルに制御する必要が生じる。
そこで、発明者らは、上に述べた流速センサーを用いて溶鋼表面流速を測定して、鋳片表面性状との関係を調査した。長辺に平行で、かつ鋳造方向に垂直な、いわゆる幅方向の流速と、長辺および鋳造方向のいずれにも垂直な、いわゆる厚み方向の流速と、をそれぞれセンサーにより求めると共に、初期凝固部の流速をデンドライトの傾きより測定した。その結果、鋳片の表層部清浄度が問題となる表層から数ミリメートル以内の流速は、幅方向の流動と非常に強い相関を持つが、厚み方向の流動とはほとんど関係のないことがわかった。
これは、鋳型内に溶鋼を注入する浸漬ノズルが一般に二孔を有し、その結果鋳型内の流動が一般に二次元的となり、長辺側の凝固界面における介在物と気泡の付着を決定する流れは、長辺に平行な短辺とノズルを結ぶ向きの幅方向の流動成分となっているためと推察された。
従って、本発明にしたがう電磁ブレーキ下で幅方向の流速のみを検知し、鋳片表面清浄度向上を目的にした溶鋼表面流速を制御しようとする試みは、電磁ブレーキ下での流動を比較的に容易に検知できる方法であるだけでなく、鋳片表面部性状を改善する上で優れた方法であるといえる。
以上の知見から、磁場発生方向についてはセンサーを固定し、幅方向についてのみ溶鋼からの力を検出できるようにした。すなわち、図1に示したように、センサーから磁場を発生させると、溶鋼内に生じた渦電流との干渉により微小な力が生じるが、電磁ブレーキによる磁場方向にセンサーを固定すると、磁場と垂直な鋳型長辺に沿う向きの流動のみを検知することができる。
すなわち、図2に示すように、磁場発生方向(長辺に対して垂直方向)についてはセンサーを例えば軸とべアリングで固定し、幅方向(溶鋼注入用浸漬ノズルと短辺を結ぶ方向)についてのみ溶鋼からの力を検出できるようにした。
なお、センサーにおいて、その磁場発生手段としては、簡便な永久磁石を用いることができる。その際、この磁石の温度がキューリー点以上に上昇しないように、例えば空気にて冷却を行うことが好ましい。
ここで、静磁場(直流磁場)を用いるいわゆる電磁ブレーキの形態としては、図3(a)〜(c)に示すように、メニスカス流速と内部への介在物侵入の防止を目的とした二段の磁場ブレーキの印加(同図(a))、メニスカス部の流速を制御するための上部一段にのみ電磁ブレーキを印加する上部一段電磁ブレーキ(同図(b))あるいは、ノズル吐出孔の下部に設けた一段の電磁ブレーキの印加(同図(c))、がある。いずれも電磁ブレーキにより鋳型内の流動制御が可能であり、いずれも本発明に適用可能な技術である。
本発明は、磁場を利用した非接触式流速センサーにより鋳型内の特定の溶鋼流動状況を直接測定し、その測定結果に基づいて、浸漬ノズルの浸漬深さや、流動制御装置の出力、鋳造速度等を調整し、鋳型内における溶鋼流れを制御することにより、高品質鋳片を安定して鋳造することが可能となる。
以下,本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図4は、本発明の連続鋳造設備で使用する鋳型近傍の概要を示す断面図である。
この図において、1はタンディシュ、2は溶鋼、3はタンディシュ昇降装置、4はスライディングプレート、5は浸漬ノズル、6は鋳型、7は非接触式電磁流速センサー、8は鋳型内の溶鋼流動を制御する流動制御装置(電磁ブレーキ)である。
さて、タンディシュ1内の溶鋼2は、スライディングプレート4から浸漬ノズル5を経由して鋳型6内に注入される。この鋳型6の近傍には、非接触式流速センサー7を配置してあり、鋳型6の長辺裏面には鋳型内の溶鋼流動を制御する流動制御装置8が設置されている。
この流動制御装置8としては電磁ブレーキまたは電磁攪拌装置を使用する。
かような連続鋳造設備において、浸漬ノズル5から鋳型6内に溶鋼2の流出が始まった時点で、非接触式流速センサー7にて鋳型6内における溶鋼2の流速値を測定する。ここで、事前に水モデルあるいはノズル詰まりの無い状態で溶鋼流速を測定しておくことによって、通常の状態でのスループット等の操業条件における流速の予測値を予め求めておく。そして、測定した流速が予測値より偏差が例えば20%以上に大きくなった時点で、電磁流動制御を変化させ、流速の予測値に実際の流速を近づける操作を行う。さらに、場合によっては、浸漬ノズル5の深さをタンディシュ昇降装置3により制御したり、浸漬ノズル内に吹きこむArガス流量を制御したり、または鋳造速度を制御する。
以上の操作により、メニスカス付近の溶鋼流動を一定の良好な状態に保つことが可能となり、鋳型内において最適な溶鋼の流動パターンが得られる結果、鋳片の表面品質が改善できる。
実施例1
図4に示すところに従って、タンディッシュ内での過熱度(溶鋼温度と凝固温度の差)が35℃の溶鋼を用いて、鋳造中のサイズが260mm×1700mmの鋳型内において、連続鋳造を行った。この連続鋳造において、図5に示すように、鋳型短辺間の間隔つまり鋳型の全幅Wの短辺内壁から1/4の位置(浸漬ノズル5と短辺内壁との中間)に、図2に示した非接触式流速センサー7を設置した。また、浸漬ノズルは、吐出角度25度のノズルを使用し、浸漬ノズル深さは吐出孔上端より溶鋼まで200mmとした。また、センサーの位置は、溶鋼面から50〜70mmとした。
まず、浸漬ノズル5から鋳型6内に溶鋼2の流出が始まった時点で、非接触式流速センサー7により、溶鋼の流動に伴う力を検出し、その信号に基づいて、鋳型長辺に平行かつ鋳造方向に垂直な方向の溶鋼流速を検出した。すなわち、流速センサーには同時に渦流センサーの原理に基づく電磁コイルが設置されており、それにより流速センサーの湯面との距離を流速信号と共に測定している。この湯面との距離(図1中のH)と流速信号より溶鋼の幅方向の流速を検出する。
一方、図6に示す水モデル実験結果より、1分間当たりの鋳型毎の鋳造量(スループット(t/分))が2t/分から6t/分の範囲では上記溶鋼表面が浸漬ノズル側に向かって10〜60cm/sの流動になることがわかっているため、それを、表層から10mm以内の介在物気泡を最小とするために、最適の条件と考えられる35〜45cm/sになるように、図4に示す電磁流動制御装置8を用いて制御した。電磁流動制御装置としては、二段の静磁場を印加できる、いわゆる電磁ブレーキを用いた。電磁ブレーキの強度は500〜1500Gの範囲で、鋳造速度に合わせて変化させた。
ただし、非接触式流速センサー7により測定している上記溶鋼流速が、大きく変化する時期があった。これは、ノズル浸漬深さを変化させるタイミングと、スラディングノズルの開度が大きく変化する時期に対応した。
すなわち、前者はノズル浸漬深さが変化することにより、溶鋼流速が変化するためであり、例えば浸漬深さが浅くなるとメニスカス流速が増加する。その場合は、電磁流動制御装置の出力(磁束密度)を1500G以上に高める操作にて対応した。
一方、後者は、ノズル詰まりが生じることにより、いわゆる偏流が大きくなったことによる変化であり、その場合も静磁場による電磁流動を制御して偏流を防止した。
このように、電磁流動制御を実施することにより、浸漬ノズル詰まりの発生傾向があるにも拘わらず、鋳造初期から末期まで安定して高品質の鋳片を鋳造することができた。
実施例2
実施例1と同一の、鋳造装置及び非接触式流速センサーを用いて、鋳型の電磁攪拌装置の出力を制御しながらノズルの浸漬深さも制御して、連続鋳造を行った。ここで、鋳型サイズは、厚み:260mmおよび幅:1400mmであった。尚、実施例2では、鋳型の幅が実施例1の場合よりも狭いために、水モデルで予想される溶鋼表面流速は、図6に示すように、同一スループットに対して大きくなる。そこで、最適流速である35〜45cm/sとするために、電磁ブレーキを2000G以上にさらに強くすると共に、ノズルの浸漬深さを実施例よりさらに50mm深くした。ノズルの深さを深くすることにより、溶鋼の流動速度が低下した。流速センサーの出力結果により、最適流動パターンである35〜40cm/sになるように電磁力を制御し、電磁力の出力調整のみでの制御が不完全な場合は、直ちに、浸漬ノズルの浸漬深さをタンディッシュ昇降装置にて調整して、常に安定した流れを確保した。
この実施例2では、実施例1に比べて連々鋳の経過により、予め予測される流速より偏倚する時期が多くなった。これは、鋳型の幅が狭いため、ノズル詰まりによる偏流の発生が多くなったものと推察される。
以上、本発明を適用すると、非接触式流速センサーの出力結果を用いることにより、鋳型内の流速をほぼ一定範囲に収めることが可能となり、鋳片表層付近に介在物や気泡が付着していない、極めて清浄な鋳片を鋳造初期から末期まで安定して鋳造することができた。
実施例3
実施例1と同一の、鋳造サイズおよび流動速度を対象とした非接触式流速センサーを用いて連続鋳造操業を行った。その際、実施例2と同一の、鋳造装置及び非接触式流速センサーを用いて、鋳型の電磁ブレーキ装置の出力やノズルの浸漬深さを制御した。鋳型サイズについては、厚み:260mmおよび幅:750mmであった。尚、鋳型の幅が実施例1よりも狭いために、図6に示したように、水モデル試験より予想される溶鋼表面流速は同一スループットに対して、さらに溶鋼流速が大きくなる結果となった。非接触式流速センサーの出力結果により、最適流動パターンである35〜40cm/sになるように、電磁力を3000G以上に制御し、電磁力の出力調整のみでの制御が不完全な場合は、直ちに、浸漬ノズルの浸漬深さをタンディッシュ昇降装置にて調整して、常に安定した溶鋼流れを確保した。しかし、実施例3では、実施例1、2に比べて、連々鋳の経過により、予め予測される流速よりさらに偏倚する時期が多くなった。電磁流動制御およびノズル浸漬深さの制御のみでは対応できなくなったため、偏流が発生した時期では一部鋳造速度を低下させ、スループットを2t/分以下に低下させる操業を行った。
その結果、センサーの出力結果による、鋳型内の流速をほぼ一定範囲に収めることが可能となり、鋳片表層付近への介在物や気泡が付着していない極めて清浄な鋳片を鋳造初期から末期まで安定して鋳造することが出来た。
実施例4
実施例1と同一の鋳造条件、鋳型および非接触式センサーを用いて、鋳型の電磁ブレーキを制御した。ただし、電磁ブレーキとしては、図3(b)に示した一段の電磁ブレーキを用いた。この場合二段の電磁ブレーキに比して電磁ブレーキによる表面流速の制御効果が若干大きくなった。これは、吐出孔下の電磁ブレーキが無いことから、吐出孔から短片に衝突した後の反転流が小さくなるためと推察された。そこで、電磁ブレーキの制動強度を300〜1000G程度に抑えた。
その結果、センサーの出力結果に基づき、鋳型内の流速をほぼ一定範囲に収めることが可能となり、鋳片表層付近への介在物や気泡が付着していない極めて清浄な鋳片を鋳造初期から末期まで安定して鋳造することが出来た。
比較例1
比較例として、特許文献5に示されるように溶鋼表面に磁場を印可し、溶鋼流動により生じる力を検知する非接触式流速センサーを用いて、実施例と同じ条件で操業を行った。すると、電磁ブレーキによる磁場を印可すると、センサーの流速検出部(歪みゲージによる電圧表示)が振り切れてしまい、流速を測定できなかった。
比較例2
比較例として、電磁ブレーキを用いずに特許文献5に示される構造の非接触式流速計による流速測定を試みた。その他の鋳造条件については、実施例1と同じである。ただし、流速を制御する手段として電磁ブレーキがないため、ノズル浸漬深さ、アルゴンガス流量および鋳造速度を制御することを試みた。しかし、電磁ブレーキがないため、表面流速を35〜45cm/sに制御することは極めて困難であった。そのため、スループットを平均4.5t/分以下とせざるを得なかった。
ここで、アルゴンガスの吹き込みガス流量は一般に10〜15l/min程度であるが、偏流が大きくなった場合は、流量を5〜10l/min程度に絞ると偏流を抑制できることがある。これは偏流によりノズルの片側にアルゴンガスが大量に流れ、偏流を助長することがあるためである。しかし、アルゴンガスは幅とスループットにより溶鋼表面へ浮上する位置が複雑に変化するので、一概に偏流を抑制する上で流量の変化を定義することは困難である。従って、実際に非接触式流速センサーの出力を見ながらアルゴンガス流量を動的に変化させるのが良い。
尚、この実施例では外部直流磁場の存在下での測定を意図しているため、磁場の向かう方向と直角の方向である、短辺からノズルに向けて流れる、いわゆる幅方向の流速を測定している。なぜなら、ノズルの吐出孔は一般に二孔であるため、鋳型内の流動は一般に二次元的であることと、長辺の凝固シェルへの介在物と気泡の付着を決定する流れが主として幅方向の流動であるためである。
また、直流磁場としては、二段の直流磁場を備える電磁流動性御装置を用いる例を説明したが、本発明の趣旨はメニスカス流速を制御する電磁流動装置を非接触式流速センサーを用いて制御することにあるため、特に二段の直流磁場を備える装置に限定されることはない。
すなわち、二段の磁場を用いることにより内部への介在物浸入を防止できるため、加工性を要求される綱種では二段の静磁場の印加が有効であるが、一方で、例えば薄スラブ連鋳機などではCa処理を行うため、介在物の問題は存在しないから、表面の変動・流速低減を抑制することが主目的になるため、一段の静磁場の利用で十分である。
本発明に用いられる静磁場下での溶鋼流速を検知可能な非接触式流速センサーの概略図である。 非接触式流速センサーの具体的構成を示す図である。 本発明に適用する電磁ブレーキの形態を例示する図である。 本発明で用いる連続鋳造設備の鋳型近傍の概略を示す断面図である。 非接触式流速センサーの配置を示す図である。 スループットと予測されるメニスカス流速の関係を示した図である。
符号の説明
1 タンディッシュ
2 溶鋼
3 タンディッシュ昇降装置
4 スライディングプレート
5 浸漬ノズル
6 鋳型
7 非接触式流速センサー
8 流動制御装置

Claims (2)

  1. 鋳型内の溶鋼に、該鋳型の長辺間を貫く静磁場を印加し、溶鋼の流動を制御しながら連続鋳造を行うに当たり、静磁界と溶鋼流動との相互作用に起因して発生する磁力により溶鋼の流動変化を、溶鋼から離間した位置にて検知する、非接触式流速センサーを用いて、鋳型長辺に平行かつ鋳造方向に垂直な方向の溶鋼流速成分を検出し、その検出値に基づいて鋳型内溶鋼の流動を制御することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
  2. 鋳型長辺に平行かつ鋳造方向に垂直な方向の溶鋼流速成分の検出値と、予め操業条件により予想される同流速成分との差が大きくなった時点において、鋳型内に溶鋼を注入する浸漬ノズルの鋳型内挿入深さ、鋳型内溶鋼の流動を制御する装置の出力、浸漬ノズル内に吹きこむArガス流量および鋳造速度の少なくとも一つを制御して上記差を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008183601A (ja) * 2007-01-31 2008-08-14 Jfe Steel Kk 鋼の連続鋳造方法及び溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

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