JP2004319143A - 有機elディスプレイおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の有機ELディスプレイは、支持基板上に、少なくとも第1電極、絶縁膜、有機EL層および第2電極を順次積層したものであり、前記第1電極と平行および垂直に前記絶縁膜が形成され、前記第1の電極の支持基板側の面と第1の電極の側面のなす角が1度以上20度未満であり、第1電極側の前記絶縁膜側の面と絶縁膜の側面のなす角が1度以上20度未満であることを特徴とする。本発明は上記有機ELディスプレイの製造方法も提供する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(本明細書中で有機ELとも称する。)ディスプレイおよびその製造方法に関する。特に本発明は、電極間の短絡の発生を防止でき、光の取り出し効率を改善したる有機ELディスプレイとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機化合物材料のエレクトロルミネッセンスを利用した有機ELディスプレイの1つに、パッシブマトリックス型(単純マトリックス型)ディスプレイがある。パッシブマトリックス型ディスプレイは、概略的には、透明基板上に形成された複数の第1電極と、第1電極に直交する複数の第2電極と、これらの電極間に挟持された有機EL層から構成される。有機ELディスプレイは、この第1電極と第2電極の交差領域で発光し、この発光部を1単位として1画素を形成し、この画素が複数個配列することで表示部を形成している。
【0003】
上記の第1電極および第2電極は、各々ストライプ状にパターンニングされ、各電極は縁部を有する。この縁部は、電極形状が急激に変化している部分であり、電界の集中が起こりやすい部分である。この電界の集中が起こる部分では、有機EL層が絶縁破壊を起こし、第1電極と第2電極の短絡(クロストーク)が起こる。この結果、短絡した第1電極または第2電極の部分の全ての画素が常時発光するなどの表示欠陥が発生する。
【0004】
第1電極と第2電極間の短絡を防止する方法には、特許第2911552号公報(特許文献1)に開示されるものがある。この特許では、複数の互いに対向する一対の電極とこの電極間に配置された有機EL層からなる電界発光素子であって、この有機EL層および少なくとも一方の前記電極間に挟まれ且つ前記電極の縁部に沿って延在した絶縁層を備えたものを開示している。この絶縁層により一対の電極間の漏洩電流を遮断している。また、特開平9−330792号公報(特許文献2)には、第1電極、絶縁膜、スペーサ、オーバーハング体、有機EL層、第2電極および保護膜を備えた有機EL表示装置およびその製造方法が開示されており、前記絶縁膜の材料としてポリイミド、酸化ケイ素、窒化ケイ素を用いることも開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特許第2911552号明細書
【0006】
【特許文献2】
特開平9−330792号公報
【0007】
【特許文献3】
特開平5−134112号公報
【0008】
【特許文献4】
特開平7−218717号公報
【0009】
【特許文献5】
特開平7−306311号公報
【0010】
【特許文献6】
特開平5−119306号公報
【0011】
【特許文献7】
特開平7−104114号公報
【0012】
【特許文献8】
特開平7−48424号公報
【0013】
【特許文献9】
特開平6−300910号公報
【0014】
【特許文献10】
特開平7−128519号公報
【0015】
【特許文献11】
特開平8−279394号公報
【0016】
【特許文献12】
特開平9−330793号公報
【0017】
【特許文献13】
特開平8−27934号公報
【0018】
【特許文献14】
特開平5−36475号公報
【0019】
【特許文献15】
特開平9−330793号公報
【0020】
【非特許文献1】
月刊ディスプレイ1997年、3巻、7号
【0021】
【非特許文献2】
公開技報2001−6083
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
絶縁膜の材料としてポリイミド、ノボラック樹脂等の有機材料を使用することの利点は、十分な耐電圧を持つ膜厚で絶縁膜をフォトリソグラフ法などを用いて簡便に形成することができることにある。しかしこれらの材料は、吸湿性が高いために、有機発光層の変質をもたらす水分が含有される可能性が高く、有機発光層を形成する前に十分に水分を脱水する必要が生じる。
【0023】
ディスプレイとして高い信頼性が求められる場合、例えば、車載用ディスプレイなどでは、有機ELディスプレイは、高温・高湿下のような悪条件でも輝度の低下が小さいことが求められる。特に高温下での駆動では、有機材料からの水分の放出が温度上昇に伴って加速度的に増加し、有機EL層に拡散する。この水分の放出は、有機EL層の変質を招き、発光面積を低下させる要因となる。このような問題を解決する必要もある。
【0024】
また、ポリイミドやノボラック樹脂のような有機材料は、可視光の領域に吸収を持つため、有機EL層からの発光のうち、これらの有機材料へ入射する光が、これらの有機材料により吸収され、外部へ放出されにくくなる。これは光の取り出し効率の低下の要因となる。
また、有機ELディスプレイでは、有機材料以外の理由に基づく光の取り出し効率の低下を抑制することも必要である。
【0025】
これらの要求を満たす有機ELディスプレイは未だ提供されていない。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、有機ELディスプレイに関する。本発明の有機ELディスプレイは、パッシブマトリックス型ディスプレイであり、概略的には、透明基板上に形成された複数の第1電極と、第1電極に直交する複数の第2電極と、これらの電極間に挟持された有機EL層から構成される。有機ELディスプレイは、この第1電極と第2電極の交差領域で発光し、この発光部を1単位として1画素を形成し、この画素が複数個配列することで表示部を形成している。なお、本発明では、第1電極および第2電極がそれぞれ1つである有機EL発光素子であってもよい。
【0027】
本発明の有機ELディスプレイは、支持基板上に、少なくとも第1電極、絶縁膜、有機EL層および第2電極を順次積層した有機ELディスプレイであり、前記第1電極と平行および垂直に前記絶縁膜が形成され、前記第1の電極の支持基板側の面と第1の電極の側面のなす角が1度以上20度未満であり、前記絶縁膜の第1電極側の面と絶縁膜の側面のなす角が1度以上20度未満であることを特徴とする。
【0028】
本発明の有機ELディスプレイは、前記支持基板が、少なくともパターン化された色変換フィルタ層、平坦化層、およびパッシベーション層をさらに含むカラー有機ELディスプレイを包含する。
【0029】
本発明の有機ELディスプレイは、前記第2電極側に少なくとも色変換フィルタ層を含む色変換フィルタ基板を設けたことを特徴とするカラー有機ELディスプレイを包含する。
【0030】
また、本発明の有機ELディスプレイは、絶縁膜が、屈折率1.8以上の無機絶縁膜であることを特徴とする。このような無機絶縁膜を使用することで、光の取り出し効率を上げることができる。
【0031】
本発明の第2は、有機ELディスプレイの製造方法に関する。
【0032】
具体的には、本発明の製造方法は、支持基板上に、少なくとも第1電極、絶縁膜、有機EL層および第2電極を順次積層した有機ELディスプレイの製造方法であり、該製造方法が、(1)支持基板を提供する工程と、(2)該支持基板上に第1電極を形成する工程と、(3)第1電極の形成された支持基板上にリフトオフレジストをパターンニングし、絶縁膜を前記第1電極と平行および垂直に形成し、次いでリフトオフレジストを除去する工程と、(4)有機EL層と第2電極を形成する工程とを含み、前記工程(3)において、リフトオフレジストは、リフトオフレジストの第1電極側の面とリフトオフレジストの側面のなす角が120度以上160度未満に形成されることを特徴とする。
【0033】
本発明の製造方法は、前記工程(1)が、基板上に少なくともパターン化された色変換フィルタ層、平坦化層、およびパッシベーション層が形成された支持基板を提供する工程であることを特徴とするカラー有機ELディスプレイの製造方法を包含する。
【0034】
本発明の製造方法は、上記工程(4)の後に、少なくとも色変換フィルタ層を含む色変換フィルタ基板を形成する工程をさらに含むことを特徴とするカラー有機ELディスプレイの製造方法を包含する。
【0035】
本発明の製造方法は、前記絶縁膜が、屈折率1.8以上の無機絶縁膜であることを特徴とする。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明では、絶縁膜材料としての有機材料からの水分の放出、これに基づく有機EL層の変質および発光面積の低下を抑制し、さらに、光の取り出し効率を改善する。
【0037】
本発明では、絶縁膜材料に無機材料を用いる。無機材料を用いるには、以下の条件が求められる。
【0038】
1)電界の集中が特に発生しやすい電極の縁部で、十分な耐電圧の膜厚を有する絶縁膜が形成できること。
2)ピンホールの発生を抑制し、耐電圧を確保すること。
3)絶縁膜端部で第2電極が断線しない程度の滑らかなテーパー形状を持つこと。
4)絶縁膜をパターンニングする際に、表示欠陥の原因となる第1電極の表面粗さを大きくせず、有機物残渣を発生させないこと。
5)有機EL層からの発光を効率よく反射すること。
【0039】
本発明は、有機材料より吸湿性の低い無機材料を使用し、該無機材料を適切に選択すること、および、該絶縁膜を所定形状に形成することにより上記条件を満たした。
【0040】
以下に本発明の有機ELディスプレイおよびその製造方法を説明する。以下の説明では、適宜図面を参照するが、図面に示される有機ELディスプレイおよびその製造方法は、例示であり、本発明はこれに限定されない。
【0041】
まず、本発明の有機ELディスプレイについて図1から図3を参照して説明する。図1は、本発明の有機ELディスプレイの第1の実施形態の構成を示す概略断面図である。図2は、本発明の有機ELディスプレイの第2の実施形態の構成を示す概略断面図である。また、図3は、支持基板、第1電極および絶縁膜の部分を取り出して記載した場合の、本発明の有機ELディスプレイの部分上面図である。
【0042】
本発明の有機ELディスプレイの第1の実施形態は、図1(a)に示される、いわゆるボトムエミッション型パッシブマトリックス有機ELディスプレイ100である。ボトムエミッション型は、支持基板102側から光130を取り出す方式である。図1(a)に示されるように、本発明の有機ELディスプレイは、支持基板102上に第1電極104、第1電極に平行および垂直に設けられた絶縁膜106を有し、この上に有機EL層108、第2電極110を有する。なお、本発明の有機ELディスプレイには、第2電極側にパッシベーション層112を設けることができる。パッシベーション層は任意要素であるが、本発明ではこれを設けることが好ましい。また、本発明の有機ELディスプレイには、必要に応じて封止用基板114、外周封止層(図示せず)および充填剤層(図示せず)が含まれる。封止用基板114、外周封止層及び充填剤層は、一体に形成されてもよい。
【0043】
本発明の有機ELディスプレイでは、図1(b)に示されるように、支持基板102上に第1電極104が形成され、この第1電極104の側面と上面の一部を覆うように絶縁膜106が形成されている。なお、絶縁膜は第1電極と平行および垂直に形成される。
【0044】
第1電極は、基板側の面(第1電極の底面)132、第1電極の側面134、該第1電極の底面に対向する面(第1電極の上面)136を有する略台形形状をしている。本発明では、第1電極の底面132と第1電極の側面134のなす角αは1度以上20度未満であることを必要とする。角度αを1度以上20度未満とすることで、第1電極の側面にほぼ均等な膜厚で絶縁膜が形成される。角度αが20度以上であると、第1電極の端部での絶縁膜の厚さが変化し、絶縁耐性の低い部分が発生する。
【0045】
絶縁膜106は、第1電極の側面134と第1電極の上面136の一部を覆うように形成される。本発明では、第1電極の上面136と絶縁膜の側面138のなす角βが1度以上20度未満であることを必要とする。角度βを1度以上20度未満とすることで、後に形成される第2電極の断線を防止することができる。
【0046】
なお、図1(b)では、図面の煩雑化を避けるため、第1電極および絶縁膜の両側面のうち一方のみに番号を付し、一側面側でのみ説明したが、上記説明は両側面に対応することはいうまでもない。
【0047】
本発明では、無機酸化膜は屈折率が1.8以上の材料を用いることが好ましい。有機EL層の屈折率が約1.5〜1.6であるため、絶縁膜に屈折率の大きな材料を用いることにより有機EL層と絶縁膜の界面に屈折率差を設け、有機EL層から発せられる光を反射させ、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施形態の有機ELディスプレイを説明する。
【0049】
本発明の第2の実施形態の有機ELディスプレイは、図2(a)に示される、いわゆるトップエミッション型パッシブマトリックス有機ELディスプレイ150である。トップエミッション型は、封止用基板122側から光130を取り出す方式である。
【0050】
図2(a)に示されるように、本発明の有機ELディスプレイは、第2電極側にパッシベーション層120を設けることができる。本発明では、パッシベーション層は任意要素であるが、有機ELディスプレイの気密性を保つため、第2電極および有機EL層上にパッシベーション層120を設けることが好ましい。また、本発明では、封止用基板(透明基板)122を設けることが好ましい。封止用基板(透明基板)は、外周封止層(図示せず)および充填剤層(図示せず)と共に用いられ、本発明の有機ELディスプレイを封止することができる。本発明では封止用基板(透明基板)122、外周封止層及び充填剤層は、一体に形成されてもよい。
【0051】
本発明の有機ELディスプレイでは、図2(b)に示されるように、支持基板102上に第1電極104が形成され、この第1電極104の側面と上面の一部を覆うように絶縁膜106が形成されている。なお、絶縁膜は第1電極と平行および垂直に形成される。図2(b)には示していないが、トップエミッション型有機ELディスプレイでは、支持基板上に必要に応じて反射膜と絶縁層を設けてもよい。
【0052】
第1電極は、支持基板側の面(第1電極の底面)132、第1電極の側面134、該第1電極の底面に対向する面(第1電極の上面)136を有する略台形形状をしている。本発明では、第1電極の底面132と第1電極の側面134のなす角αは1度以上20度未満であることを必要とする。角度αを1度以上20度未満とすることで、第1電極の側面にほぼ均等な膜厚で絶縁膜が形成される。角度αが20度以上であると、第1電極の端部での絶縁膜の厚さが変化し、絶縁耐性の低い部分が発生する。
【0053】
絶縁膜106は、第1電極の側面134と第1電極の上面136の一部を覆うように形成される。本発明では、第1電極の上面136と絶縁膜の側面138のなす角βが1度以上20度未満であることを必要とする。角度βを1度以上20度未満とすることで、後に形成される第2電極の断線を防止することができる。
【0054】
なお、図2(b)では、図面の煩雑化を避けるため、第1電極および絶縁膜の両側面のうち一方のみに番号を付し、一側面側でのみ説明したが、上記説明は両側面に対応することはいうまでもない。
【0055】
本発明では、無機酸化膜は屈折率が1.8以上の材料を用いることが好ましい。有機EL層の屈折率が約1.5〜1.6であるため、絶縁膜に屈折率の大きな材料を用いることにより有機EL層と絶縁膜の界面に屈折率差を設け、有機EL層から発せられる光を反射させ、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0056】
図3に本発明の有機ELディスプレイの第1電極と絶縁膜の形成領域を示した。図3に示されるように、絶縁膜は、第1電極の端部、および第1電極上の発光に必要な領域に開口部306を除いた領域に、第1電極と平行および垂直に形成される。第1電極の各々は、外部駆動回路との接続部および引き出し部とに接続されている。また、第1電極は外部駆動回路との接続部位から有機ELディスプレイの表示部内の中央まで配線される。さらに、本発明の有機ELディスプレイは、図3に示されるように、端子パッド302を有しており、さらに電気絶縁性の隔壁308を有していてもよい。
【0057】
以下に本発明の有機ELディスプレイの各要素について説明する。
【0058】
(i)第1電極、有機EL層および第2電極
本発明の有機ELディスプレイは、一対の電極の間に少なくとも有機発光層を挟持し、必要に応じ、正孔注入層や電子注入層などを導入した構造を有する。即ち、本発明の有機ELディスプレイは、第1電極と、正孔注入層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む有機EL層と第2電極とを少なくとも含む。具体的には、下記のような層構造を有する。
(1)陽極/有機発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/有機発光層/陰極
(3)陽極/有機発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/有機発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
上記の層構造において、陽極および陰極の少なくとも一方、特に陽極は、有機EL層の発する光の波長域において透明であることが望ましい。この透明な電極を通してが放出される。
【0059】
なお、本明細書において、第1電極および第2電極に挟持された有機層(有機発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および/または電子注入層)の部分を有機EL層と称する。また、本明細書において、第1電極、後述する絶縁膜、有機EL層、および第2電極を併せて発光部と称する。
【0060】
(i)電極(104、110)
本発明では、以下に示す第1電極および第2電極を用いることができる。
【0061】
イ)第1電極(104)
第1電極104は、支持基板102上に形成される。第1電極104は、有機発光層に対して効率よく電子または正孔を注入することができるものである。第1電極は、陽極または陰極として用いることができるが、本発明では陽極として用いることが好ましい。
【0062】
第1電極を陽極として用いる場合、正孔の注入を効率よく行うために、仕事関数が大きい材料が用いられる。特に有機ELディスプレイがボトムエミッション方式である場合、陽極を通して光が放出されるために陽極が透明であることが要求され、ITO、IZO、ATO等の導電性金属酸化物が用いられる。本発明では、IZOが好ましい。これは、IZOは室温で比較的低抵抗な膜として成膜することができ、且つ弱酸によるパターンニングが可能であるためである。一方、トップエミッション方式では第1電極は透明であることは必要ではないが、ITO、IZOなどの導電性金属酸化物を用いて第1電極を形成することができる。さらに、ITOなどの導電性金属酸化物を用いる場合、その下に反射率の高いメタル電極(Al,Ag,Mo,Wなど)を用いることが好ましい。このメタル電極は、導電性金属酸化物より抵抗率が低いので補助電極として機能すると同時に、有機EL層にて発光される光を色変換フィルタ側に反射して光の有効利用を図ることが可能となる。
【0063】
第1電極を陰極として用いる場合、ボトムエミッション方式では、有機発光層の発する光の波長域において透明であることが必要とされる。上記の仕事関数の小さいことと透明であることの2つの特性を両立するために、本発明において第1電極を複数層からなる積層構造としてもよい。一般に、仕事関数の小さい材料は、透明性が低いので、このようにすることは有効である。例えば、基板上にITOまたはIZOなどの透明導電膜を形成する。次いで、該透明電極上の有機発光層と接触する部位に、極薄膜(10nm以下)を用いればよい。この極薄膜の材料としては、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属、またはこれらのフッ化物等からなる電子注入性の金属、その他の金属との合金や化合物を用いることができる。これらの仕事関数の小さい材料を用いることにより効率のよい電子注入を可能とし、さらに極薄膜とすることによりこれら材料による透明性の低下を最低限とすることが可能となる。上記の極薄膜は補助電極として機能し、第2電極全体の抵抗値を減少させ有機発光層に対して充分な電流を供給することを可能にする。
【0064】
一方トップエミッション方式では、仕事関数が小さい材料であるリチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属、またはこれらのフッ化物等からなる電子注入性の金属、その他の金属との合金や化合物が用いられる。前述と同様に、その下に反射率の高いメタル電極(Al,Ag,Mo,Wなど)を用いてもよく、その場合には低抵抗化および反射による有機発光層の発光の有効利用を図ることができる。
【0065】
本発明では、第1電極は、第1電極の底面132と第1電極の側面134のなす角αが1度以上20度未満であることを必要とする。角度αを1度以上20度未満とすることで、第1電極の側面にほぼ均等な膜厚で絶縁膜が形成され、絶縁耐性が改善される。
【0066】
ロ)第2電極(110)
第2電極110は、有機発光層に対して効率よく電子または正孔を注入することができるものである。
【0067】
トップエミッション方式である場合、第2電極は有機発光層の発光波長域において透明であることが求められる。第2電極110は、波長400〜800nmの光に対して50%以上の透過率を有することが好ましい。ボトムエミッション方式の場合、第2電極には透明性は要求されないが、光反射性金属と透明電極を組み合わせて用いることもできる。
【0068】
ボトムエミッション方式において、第2電極110を陰極として用いる場合、その材料は、電子を効率よく注入するために仕事関数が小さいことが求められる。このような材料には、例えばリチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属、またはこれらのフッ化物等からなる電子注入性の金属、その他の金属との合金や化合物を用いることができる。また、Al、Mg/Agのような材料を用いることもできる。
【0069】
また、トップエミッション方式である場合、有機発光層の発する光の波長域において透明であることが必要とされる。上記の仕事関数の小さいことと透明であることの2つの特性を両立するために、本発明において第2電極を複数層からなる積層構造としてもよい。一般に、仕事関数の小さい材料は、透明性が低いので、このようにすることは有効である。例えば、有機発光層と接触する部位に、上記材料の極薄膜(10nm以下)を用いることができる。これらの仕事関数の小さい材料を用いることにより効率のよい電子注入を可能とし、さらに極薄膜とすることによりこれら材料による透明性低下を最低限とすることが可能となる。この極薄膜の上には、ITOまたはIZOなどの透明導電膜を形成する。上記の極薄膜は補助電極として機能し、第2電極全体の抵抗値を減少させ有機発光層に対して充分な電流を供給することを可能にする。
【0070】
第2電極110を陽極として用いる場合、正孔注入効率を高めるために仕事関数の大きな材料を用いる必要がある。ボトムエミッション方式である場合、ITO、IZOなどの導電性金属酸化物を用いて第2電極を形成することができる。ITOなどの導電性金属酸化物を用いる場合、その下に反射率の高いメタル電極(Ag,Pt,Auなど)を用いることが好ましい。このメタル電極は、導電性金属酸化物より抵抗率が低いので補助電極として機能すると同時に、有機EL層にて発光される光を色変換フィルタ側に反射して光の有効利用を図ることが可能となる。
【0071】
また、トップエミッション方式である場合、有機発光層からの発光が第2電極を通過するために透明性の高い材料を用いる必要がある。したがって、この場合にはITOまたはIZOのような透明導電性材料を用いることが好ましい。
【0072】
ハ)有機EL層
有機EL層108の各層の材料は、公知のものが使用できる。青色から青緑色の発光を得るためには、有機発光層中に、例えばベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、べンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などが好ましく使用される。また、電子注入層としては、キノリン誘導体(たとえば、8−キノリノールを配位子とする有機金属錯体)、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体などを用いることができる。さらに、電子注入層として、アルカリ金属、アルカリドル金属、およびその酸化物、フッ化物、窒化物、ホウ化物、例えばLiFなどを用いることができる。電子輸送層としては、金属錯体系(Alq3)とオキサジアゾール、トリアゾール系化合物等を用いることができる。また、正孔注入層としては、芳香族アミン化合物、スターバースト型アミンや、ベンジジン型アミンの多量体および銅フタロシアニン(CuPc)などを用いることができる。正孔輸送層としては、スターバースト型アミン、芳香族ジアミンなどを用いることができる。
【0073】
上記各電極および有機EL層の各層の厚さは、従来通りである。
【0074】
(ii)絶縁膜
本発明の有機ELディスプレイでは、絶縁膜104を配設する。絶縁膜の材料としては、発光部の駆動電圧に対し、十分な絶縁耐性を有し、且つ、発光部および色変換フィルタ層へ悪影響を及ぼさないものであればよい。例えば、無機酸化物膜または無機窒化物膜、特に、屈折率が1.8以上の材料を用いることが好ましい。このような無機酸化物膜または無機窒化物膜には、例えば、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、窒化アルミニウム等があり、本発明ではこれらを好適に使用することができる。
【0075】
本発明では、上記のように、絶縁膜106は、第1電極の上面136と絶縁膜の側面138のなす角βが1度以上20度未満であることを必要とする。角度βを1度以上20度未満とすることで、第2電極の断線を防止することができる。なお、絶縁膜は第1電極と平行および垂直に形成される。
【0076】
また、本発明では、絶縁膜は屈折率が1.8以上の材料を用いることが好ましい。有機EL層の屈折率が約1.5〜1.6であるため、絶縁膜に屈折率の大きな材料を用いることにより有機EL層と絶縁膜の界面に屈折率差を設け、有機EL層から発せられる光を反射させ、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0077】
さらに、絶縁膜を配設することによって、例えば以下で説明する有機カラーディスプレイの場合、その発光部位を制御し、消費電力を抑えることができる。例えば、絶縁膜を配設しない有機カラーディスプレイを駆動した場合、色変換フィルタ層の面だけでなく、ブラックマトリックスをもうけた部分も発光してしまう。ブラックマトリックスの部分での発光は外部へ到達できないため、有効活用できず、有機カラーディスプレイの消費電力を増大させる原因となる。
【0078】
絶縁膜の膜厚などのパラメータは従来の通りであり、当業者により適切に選択されうる。例えば、膜厚は、200〜400nm、好ましくは250〜350nmである。
【0079】
(iii)パッシベーション層114、120
第2電極以下の各層を覆うパッシベーション層114、120を設けることが好ましい。パッシベーション層は、外部環境からの酸素、低分子成分および水分の透過を防止し、それらによる有機EL層の機能低下を防止することに有効である。パッシベーション層は、任意選択の層であるが、上記目的のために設けることが好ましい。パッシベーション層は、有機EL層の発光を外部へと透過させるために、その発光波長域において透明であることが好ましい。
【0080】
これらの要請を満たすために、パッシベーション層は、可視域における透明性が高く(400〜800nmの範囲で透過率50%以上)、電気絶縁性を有し、水分、酸素および低分子成分に対するバリア性を有し、好ましくは鉛筆硬度2H以上の膜硬度を有する材料で形成される。例えば、SiOx、SiNx、SiNxOy、AlOx、TiOx、TaOx、ZnOx等の無機酸化物、無機窒化物等の材料を使用できる。
【0081】
また、パッシベーション層として種々のポリマー材料を用いることができる。イミド変性シリコーン樹脂(特開平5−134112号公報、特開平7−218717号公報、特開平7−306311号公報(特許文献3〜5)等)、無機金属化合物(TiO、Al2O3、SiO2等)をアクリル、ポリイミド、シリコーン樹脂等の中に分散した材料(特開平5−119306号公報、特開平7−104114号公報(特許文献6、7)等)、アクリレートモノマー/オリゴマー/ポリマーの反応性ビニル基を有した樹脂、レジスト樹脂(特開平6−300910号公報、特開平7−128519号公報、特開平8−279394号公報、特開平9−330793号公報(特許文献9〜12)等)、フッ素系樹脂(特開平5−36475号公報、特開平9−330793号公報(特許文献14、15)等)、または高い熱伝導率を有するメソゲン構造を有するエポキシ樹脂などの光硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂を挙げることができる。
【0082】
上述のパッシベーション層は、単層であっても、複数の層が積層されたものであってもよい。パッシベーション層の厚さ(複数の層の積層物である場合は全厚)は、0.1〜10μmであることが好ましい。
【0083】
(iv)支持基板102
支持基板102として、ガラスやプラスチックなどからなる絶縁性基板、または、半導電性や導電性基板に絶縁性の薄膜を形成した基板を用いることができる。あるいはまた、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂またはポリイミド樹脂などから形成される可撓性フィルムを、支持基板102として用いてもよい。
【0084】
本発明では、トップエミッション型の場合、支持基板102は、少なくとも基板と以下に説明する反射膜から構成されていてもよい。この基板として上記の材料をそのまま使用できる。また、支持基板の代りに絶縁層を介して、光を反射する金属または合金からなる基板を用いることもできる。絶縁層の材料には、先に説明したパッシベーション層や後述する平坦化層で説明する無機酸化物膜、無機窒化物膜、有機材料等を用いることができる。
【0085】
支持基板の膜厚などのパラメータは従来の通りであり、当業者により適切に選択されうる。
【0086】
(v)反射膜
本発明で使用されうる反射膜は、特に限定されるものではなく、有機EL層からの光を上部透明電極(第2電極)側に効率良く反射させることが可能であればよい。例えば光を反射する金属または合金からなるものが挙げられる。透明基板上に設けられる反射膜は、有機EL層の下地層にもなるため平坦性に優れたアモルファス膜とすることが好ましい。アモルファス膜を形成するのに好適な金属および合金としては、CrB、CrP、またはNiPなどが挙げられる。
【0087】
反射膜は、ガラスまたはプラスチックなどの透明基板の上面または裏面(背面)に設けることができる。また、第1電極の形状に合わせてパターン化された反射膜を透明基板上に設けてもよい。さらに、透明基板の代りに絶縁層を介して、光を反射する金属または合金からなる基板を用いることにより、基板と反射膜とを兼ねてもよい。反射膜の膜厚などのパラメータは従来の通りであり、当業者により適切に選択されうる。なお、導電性金属を反射膜として用いる場合には、反射膜上に絶縁性の薄膜を形成する。絶縁性の薄膜の材料には、先に説明したパッシベーション層や後述する平坦化層で説明する無機酸化物膜、無機窒化物膜、有機材料などを用いることができる。
【0088】
次に、外周封止層(図示せず)、封止用基板114、および充填剤層(図示せず)について説明する。
【0089】
(vi)外周封止層
外周封止層は、封止用基板114と、第1電極、絶縁膜、有機EL層、第2電極を設けた支持基板を接着するとともに、内部の各構成要素を外部環境の酸素、水分などから保護する機能を有する。外周封止層は、例えば紫外線硬化型樹脂から形成ることができる。
【0090】
封止用基板114と支持基板とのアライメントが完了したならば、紫外線を照射して、紫外線硬化型樹脂を硬化させればよい。
【0091】
また、外周封止層に用いる前記紫外線硬化型樹脂は、直径5〜50μm、好ましくは直径5〜20μmのガラスビーズ、シリカビーズなどを含んでいることが好ましい。これらのビーズ類が、封止用基板114と色変換フィルタとの貼り合わせにおいて、基板間距離(基板と封止用基板114との間の距離)を規定するとともに、接着のために印加される圧力を負担するからである。
【0092】
なお、内部空間に充填剤を封入する場合には、外周封止層の一部に孔を設けて外周封止層を硬化させ、この孔から充填剤を注入した後、この孔を塞げばよい。
【0093】
(vii)封止用基板114、122
封止用基板は、本発明の有機カラーディスプレイを封止し、外部の水分や有害なガスなどを透過させないものであれば特に限定されない。また、膜厚等も従来の通りである。例えば、後述する色変換フィルタ基板の透明基板と同じ材料や、従来の封止用の基板をそのまま使用することができる。
【0094】
(viii)充填剤層
充填剤層は、外周封止層、封止用基板114、発光部および色変換フィルタ基板102により形成される内部空間を充填して、有機カラーディスプレイの密閉性を高めるためものである。
【0095】
充填剤層を形成するための充填剤は、発光部、色変換フィルタ層などの特性に悪影響を及ぼさない不活性液体または不活性なゲルであればよい。また、充填剤は、内部空間に注入した後にゲル化する液体であってもよい。本発明で使用しうるこのタイプの充填剤の例は、シリコーン樹脂、フッ素系不活性液体、またはフッ素系オイルなどを含む。充填剤の所要量は、当業者によって容易に決定されうるものである。
【0096】
本発明では、封止用基板114、外周封止層及び充填剤層は、例えば紫外線硬化樹脂または熱光併用型硬化樹脂などの樹脂を、発光部を設けた色変換フィルタ基板上に均一に塗布し、これを硬化することで一体に形成してもよい。
【0097】
次に本発明のカラー有機ELディスプレイについて説明する。
【0098】
本発明の有機ELディスプレイの第1の実施形態には、支持基板が少なくともパターン化された色変換フィルタ層および平坦化層をさらに含むカラー有機ELディスプレイを包含する。即ち、図1(a)において、支持基板102は、透明な基板と、該基板上に形成された色変換フィルタ層と、色変換フィルタ層を含む透明基板上に形成された平坦化層を少なくとも具備する。なお、本明細書において、透明基板と、その上に形成された色変換フィルタ層を少なくとも具備し、任意に、色変換フィルタ層を含む透明基板上に形成された平坦化層と、上記の透明な基板上に形成されたブラックマトリックスを有するものを色変換フィルタ基板と称する。
【0099】
本発明の第2の実施形態のカラー有機ELディスプレイは、第2電極側に少なくとも透明基板および色変換フィルタ層を含む色変換フィルタ基板を設ける。なお、第2の実施形態では、第2電極側にパッシベーション層120を設けることが好ましい。また、封止用基板122は色変換フィルタ基板とする。色変換フィルタ基板は、色変換フィルタ層以外に、ブラックマトリックスおよび平坦化層などを含むことが好ましい。なお、パッシベーション層および平坦化層には、先に説明した材料を用いることができる。また、色変換フィルタ基板は先に説明した外周封止層、充填剤層などと共に用いることができる。
【0100】
本発明のカラー有機ELディスプレイの色変換フィルタ基板を説明する。色変換フィルタ基板の各色変換フィルタ層は、それぞれ、赤、緑および青の染料または顔料からなる赤色変換フィルタ層、緑色変換フィルタ層および青色変換フィルタ層である。
【0101】
各要素について以下に説明する。
【0102】
以下に本発明の色変換フィルタ基板の各要素について説明する。
1.色変換フィルタ層
本明細書において、色変換フィルタ層は、カラーフィルタ層、蛍光変換層、およびカラーフィルタ層と蛍光変換層との積層体の総称である。蛍光変換層は、有機EL層で発光される近紫外領域ないし可視領域の光、特に青色ないし青緑色領域の光を吸収して異なる波長の可視光を蛍光として発光するものである。フルカラー表示を可能にするためには、少なくとも青色(B)領域、緑色(G)領域および赤色(R)領域の光を放出する独立した色変換フィルタ層が設けられる。RGBそれぞれの蛍光変換層は、少なくとも有機蛍光色素とマトリクス樹脂とを含む。
【0103】
本発明では、有機蛍光色素として、少なくとも赤色領域の蛍光を発する蛍光色素の一種類以上が用いられ、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素の一種以上と組み合わせることが好ましい。これは以下の理由による。有機EL層が発光源である場合、青色ないし青緑色領域の光を発光するものが得やすいが、これを単なる赤色フィルタに通して赤色領域の光に変更しようとすると、元々赤色領域の波長の光が少ないため、極めて暗い出力光になってしまう。したがって、十分な強度の出力を持った赤色領域の光を得るためには、発光体としての有機EL層からの光を蛍光色素によって一旦吸収させ、赤色領域の光に変換させることが必要となる。このように、赤色領域の光は、発光体からの光を蛍光色素によって赤色領域の光に変換させることにより、十分な強度の出力が可能となる。
【0104】
一方、緑色領域の光は、赤色領域の光と同様に、発光体からの光を別の蛍光色素によって緑色領域の光に変換させて出力させてもよいし、または、発光体の発光が緑色領域の光を十分に含むならば、この発光体からの光を単に緑色フィルタを通して出力してもよい。
【0105】
また、青色領域の光に関しては、発光源からの光(例えば有機EL層からの光)を単なる青色フィルタに通して出力させることが可能である。
【0106】
1)有機蛍光色素
本発明において、有機蛍光色素は、有機EL層のような発光体から発せられる近紫外領域ないし可視領域の光、特には青色ないし青緑色領域の光を吸収して、該発光体とは異なる波長の可視光を発するものであれば特に限定されない。
【0107】
有機EL層から発せられる青色から青緑色領域の光を吸収して、赤色領域の蛍光を発する蛍光色素には、例えば以下のような有機蛍光色素がある。すなわち、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、べ一シックバイオレット11、べーシックレッド2などのローダミン系色素、シアニン系色素、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−13−ブタジエニル]−ピリジウム−パークロレート(ピリジン1)などのピリジン系色素、あるいはオキサジン系色素などである。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も所望の蛍光を発することができれば使用することができる。
【0108】
有機EL層から発せられる青色ないし青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素には、例えば以下のような有機蛍光色素がある。すなわち、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、3−(2’−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素、または、クマリン色素系染料であるべーシックイエロー51、さらにはソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素などである。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も所望の蛍光を発することができれば使用することができる。
【0109】
なお、本発明に用いることができる有機蛍光色素を、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アルキッド樹脂、芳香族スルホンアミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂およびこれらの樹脂混合物などに予め練り込んで顔料化して、有機蛍光顔料としてもよい。また、これらの有機蛍光色素や有機蛍光顔料(本明細書中で、前記2つを合わせて有機蛍光色素と総称する)は単独で用いてもよく、蛍光の色相を調整するために二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明に用いる有機蛍光色素は、色変換フィルタ層に対して、この変換フィルタ層の重量を基準として0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%の量で含有される。有機蛍光色素の含有量が0.01重量%未満の場合には、十分な波長変換を行うことができず、その含有量が5%を越える場合には、濃度消光等の効果により色変換効率の低下が起こる。
【0110】
本発明では、色変換フィルタ層の線幅、ピッチなどは、特に制限されない。例えば、以下の実施例に示される線幅、ピッチを挙げることができる。また、色変換層の膜厚は、例えば10μmmとすることができる。
【0111】
2)マトリックス樹脂
次に、本発明の色変換フィルタ層に用いられるマトリックス樹脂について説明する。マトリックス樹脂は、光硬化性樹脂または光熱併用型の硬化性樹脂からなる。これを、光および/または熱処理して、ラジカル種やイオン種を発生させて重合または架橋させ、樹脂を不溶不融化させて、色変換フィルタ層を形成する。
【0112】
光硬化性または光熱併用型の硬化性樹脂には、(1)アクロイル基やメタクロイル基を複数有するアクリル系多官能モノマーおよびオリゴマー、(2)ポリビニル桂皮酸エステル、(3)鎖状または環状オレフィン、(4)エポキシ基を有するモノマーなどが含まれる。また、光硬化性樹脂または光熱併用型の硬化性樹脂は、色変換フィルタ層として硬化されない状態では、有機溶媒またはアルカリ溶液に可溶であることが好ましい。
【0113】
これらの硬化性樹脂は、例えば以下のような組成物として使用され、基板上に塗布された後、パターンニングされる。例えば、(1)の硬化性樹脂は、光または熱重合開始剤と混合され、この組成物を塗布した後、光または熱処理して、光ラジカルや熱ラジカルを発生させて重合させる。また、(2)の硬化性樹脂は、増感剤と混合され、この組成物を塗布した後、光または熱処理により二量化させて架橋する。(3)の硬化性樹脂は、ビスアジドと混合され、この組成物を塗布した後、光または熱処理によりナイトレンを発生させ、オレフィンと架橋させる。(4)の硬化剤は、光酸発生剤と混合され、この組成物を塗布した後、光または熱処理により、酸(カチオン)を発生させて重合させる。本発明では、特に(1)の光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂からなる組成物が高精細でパターンニングが可能であり、耐溶剤性、耐熱性等の信頼性の面でも好ましい。
【0114】
3)ブラックマトリックス
ブラックマトリックスは、可視光をよく吸収し、発光部及び色変換フィルタ層へ悪影響を与えないものであれば特に限定されない。本発明では、黒色の無機層、黒色顔料または黒色染料を樹脂に分散した層等によりブラックマトリックスを形成することが好ましい。例えば、黒色の無機層としては、クロム膜(酸化クロム/クロム積層膜)などを挙げることができる。また、黒色顔料または黒色染料を樹脂に分散した層としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン等の顔料または染料をポリイミドなどの樹脂に分散したもの、カラーレジストなどが挙げられる。これらのブラックマトリックスは、スパッタ法、CVD法、真空蒸着等のドライプロセス、スピンコート法のようなウエットプロセスにより形成することができ、フォトリソグラフィー法等によりパターンニングすることができる。
【0115】
本発明では、ブラックマトリックスの光反射率は、40以下、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下である。これ以上の反射率であると、外部からの入射光を反射し、コントラストを低下させる原因となる。本発明では、上記クロム膜(数十%)、及び顔料分散樹脂層(10%以下)が好ましい光反射率を有するが、クロム膜よりも顔料分散樹脂層の方が低い反射率を有するため好ましい。但し、無機層は、材料により電気伝導性を持たせることが可能であり、透明電極の補助電極としての機能を持たせることができる場合があるので、ブラックマトリックスの材料は、色変換フィルタ基板の用途に応じて適宜選択すればよい。
【0116】
ブラックマトリックスは、好ましくは0.5〜2.0μmの厚さを有する。
【0117】
4)平坦化層
本発明に用いることができる平坦性を有した平坦化層は、色変換フィルタ側面の凹凸(これは、色変換フィルタ基板をディスプレイのような表示素子に用いる場合、発光部の電極間の短絡の原因となる。)を平坦化し、且つ、色変換フィルタ層へ悪影響を与えないものであれば特に限定されない。また、本発明の色変換フィルタ基板をディスプレイのような発光素子に用いる場合、平坦化層は第1電極、絶縁膜、有機EL層および第2電極へ悪影響を与えないことも必要である。
【0118】
本発明の色変換フィルタ基板では、平坦化層は任意要素である。しかし、パッシブ型のディスプレイのような表示素子に本発明の色変換フィルタ基板を用いる場合には、前記の電極間の短絡を防止するためにも平坦化層を設けることが好ましい。
【0119】
また、平坦化層は、色変換フィルタ基板の各要素を密閉し、外部の有害なガスや水分などから、色変換フィルタ層、ブラックマトリックスなどを保護する機能も有する。
【0120】
本発明の平坦化層は、例えば、可視域における透明性が高く(400〜800nmの範囲で透過率50%以上)、Tgが100℃以上であり、表面硬度が鉛筆硬度で2H以上である層である。本発明の平坦化層に使用できる材料は、基板上に表面が平坦となるように塗膜を形成でき、色変換フィルタ層の機能を低下させない材料であればよい。例えば、イミド変性シリコーン樹脂(特開平5−134112号公報、特開平7−218717号公報、特開平7−306311号公報(特許文献3〜5)等)、無機金属化合物(TiO、AL2O3、SiO2等)をアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等の中に分散したもの(特開平5−119306号公報、特開平7−104114号公報(特許文献6、7)等)、紫外線硬化型樹脂としてのエポキシ変性アクリレート樹脂(特開平7−48424号公報(特許文献8))、アクリレートモノマー/オリゴマー/ポリマーの反応性ビニル基を有する樹脂、レジスト樹脂(特開平6−300910号公報、特開平7−128519号公報、特開平8−279394号公報、特開平9−330793号公報(特許文献9〜12)等)、無機化合物のゾル−ゲル法を用いることができる材料(月刊ディスプレイ1997年、3巻、7号(非特許文献1)に記載、特開平8−27934号公報(特許文献13)等)、フッ素系樹脂(特開平5−36475号公報、特開平9−330793号公報(特許文献14、15)等)等の光硬化型樹脂および/または熱硬化型樹脂がある。
【0121】
また、本発明の色変換フィルタ基板をディスプレイのような発光素子に用いる場合、発光部が水分やアルカリ等に弱い場合、平坦化層には、電気絶縁性を有し、ガス、水分、アルカリ、有機溶剤等に対するバリア性を有し、可視域における透明性が高く(400〜800nmの範囲で透過率50%以上)、電極の成膜に耐えうる硬度として、好ましくは2H以上の膜硬度を有する材料を用いることができる。例えば、SiOx、SiNx、SiNxOy、AlOx、TiOx、TaOx、ZnOx等の無機酸化物、無機窒化物等が使用できる。これらの材料は、本発明の平坦化層の表面の平坦性を損なうことなく、層を形成することができる。
【0122】
上述の平坦化層は単層であっても、または、複数の層が積層された積層体でもよい。また、複数層からなる場合、各層は同じ材料でも異なる材料でもよいが、バリアー性を向上させるためには、異なる材料を用いることが好ましい。
【0123】
この平坦化層を色変換方式の有機カラーディスプレイに適用する際には、考慮しなければならない重要な要素が有る。すなわち、その要素とは、平坦化層の膜厚が表示性能、特に視野角特性に及ぼす影響である。本発明の色変換方式の有機カラーディスプレイにおいて、特に重要な視野角特性とは、素子に対して見る角度を変えた際に生じる色の変化である。
【0124】
平坦化層を厚くしすぎると、有機EL層で発生した光が、平坦化層を介して色変換フィルタ層に届くまでの光路長が長くなる。その結果、有機カラーディスプレイを用いて構築されたディスプレイを斜め方向から見ると、隣接する別の色の画素への光の漏れ(光学的クロストーク)が発生する。ディスプレイの表示性能として考えると、この光学的クロストークによる隣接色の発光量の比率が、本来の色の発光量に対して、十分小さいことが要求される。
【0125】
この要求は、平坦化層の厚さと、画素の最小幅との関係を制限することに置き換えられる。公開技報2001−6083(非特許文献2)によれば平坦化層の膜厚tpLは、0<tpL<0.1W(Wは画素の最小幅)で示される範囲が好適とされている。本発明においては、平坦化層の厚さは、3から20μm、好ましくは5から15μmである。
【0126】
なお、上記説明では、平坦化層に色変換フィルタ基板の各要素を密閉し、外部の有害なガスや水分などから、色変換フィルタ層、ブラックマトリックスなどを保護する機能(保護機能)も合わせ持つように記載したが、平坦化の機能と保護機能を別々の層として持たせてもよい。例えば、平坦化の機能を有する層を平坦化層とし、保護機能を有する層をパッシベーション層として別々に設けてもよい。
【0127】
5)基板
基板には、ガラスやプラスチックなどからなる絶縁性基板、または、半導電性や導電性基板に絶縁性の薄膜を形成した基板を用いることができる。あるいはまた、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂またはポリイミド樹脂などから形成される可撓性フィルムを基板として用いてもよい。本発明では、トップエミッション型の場合、支持基板102は、少なくとも基板と先に説明した反射膜から構成されていてもよい。この基板として上述の材料をそのまま使用できる。本発明では、基板の代りに絶縁層を介して、光を反射する金属または合金からなる基板を用いることにより、基板と反射膜とを兼ねることもできる。絶縁層の材料には、先にパッシベーション層や平坦化層で説明した無機酸化物膜、無機窒化物膜、有機材料等を用いることができる。上記各層の膜厚などのパラメータは従来の通りであり、当業者により適切に選択されうる。
【0128】
次に、本発明の有機ELディスプレイの製造方法について説明する。
【0129】
本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、(1)支持基板を提供する工程と、(2)該支持基板上に第1電極を形成する工程と、(3)第1電極の形成された支持基板上にリフトオフレジストをパターンニングし、絶縁膜を少なくとも表示部において前記第1電極と平行および垂直に形成し、次いでリフトオフレジストを除去する工程と、(4)有機EL層と第2電極を形成する工程とを含む。以下に図4を参照して各工程を説明する。図4は、ボトムエミッション型有機ELディスプレイの製造方法の例である。
【0130】
第1の工程は、支持基板を提供する工程である。支持基板は、上記有機ELディスプレイで説明したものを用いることができる。
【0131】
支持基板は、予め平滑化処理などの表面処理を施しておくことが好ましい。
【0132】
本発明の有機ELディスプレイの場合には、上記支持基板を用いて以下の工程(2)〜(4)を行えばよい。
【0133】
なお、トップエミッション型有機ELディスプレイの場合、支持基板は、基板と反射膜から形成されていてもよい。この場合、基板は上記支持基板と同じであってもよくまた不透明な基板であってもよい。該基板上に、反射膜を、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法、ディップ法、ゾル−ゲル法等の慣用の手法により形成することができる。また、必要に応じて反射膜上に絶縁層を形成する。絶縁層は、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法、ディップ法、ゾル−ゲル法等の慣用の手段により形成することができる。なお、絶縁層の材料は、先に反射膜の欄で説明したとおりである。
【0134】
第2の工程は、第1電極を形成する。支持基板上面にスパッタ法などにより第1電極を全面成膜する。この透明電極上にレジスト剤を塗布した後、フォトリソグラフィー法などによりパターンニングを行い、それぞれの色の発光部に位置するストライプパターンからなる第1電極(陽極)104を得る(図4(a)参照)。本発明では、第1電極は、第1電極の底面132と第1電極の側面134のなす角αが1度以上20度未満であることを必要とする。このように第1電極の側面を所定角度で形成するには、フォトリソグラフ法によるパターンニングの際にフォトレジストと第1電極との密着性を下げればよい。このようにすることにより第1電極の材料とフォトレジストの界面にエッチング液が浸入しやすくなり、第1電極の上面側がより速く浸食され、第1電極の側面が所定角度である略台形形状の第1電極を形成することができる。フォトレジストと第1電極材の料との密着性を低下させる方法として、フォトレジスト形成時のベーキング温度を低くすることや、ベーキング時間を短時間とすることにより基板の温度上昇を抑えることが挙げられる。例えば、IZOを第1電極として用いる場合、フォトレジスト材料(例えばOFPR−800(東京応化工業社製))をスピンコート法によりIZO上に塗布し、これをクリーンオーブンを用いた場合には50℃〜80℃で、5〜10分、ホットプレートを用いた場合には90℃〜110℃で30秒〜120秒の条件でプリベークおよび露光した後、現像して第1電極のパターンを形成すればよい。次いで、シュウ酸のような弱酸性溶液でIZOをエッチングすることにより略台形形状の第1電極を形成できる。
【0135】
第3の工程は、第1電極の形成された支持基板上にリフトオフレジストを形成し、絶縁膜を形成し、次いでリフトオフレジストを除去する工程である(図4(b)〜図4(e)参照)。
【0136】
絶縁膜の形成にはリフトオフレジストを使用するリフトオフ法を用いることが好ましい。リフトオフ法は、無機絶縁膜のパターンニングに強酸または強アルカリを用いる必要がなく、第1電極の表面を粗くすることがないという利点がある。
【0137】
リフトオフレジストとしては、ポジ型フォトレジスト(例えばSIPR9691(信越化学製)、LOR−P003(東京応化工業製))や、ネガ型フォトレジスト(例えばZPN1100(日本ゼオン製))を用いることができる。
【0138】
リフトオフレジストは、従来から公知のフォトレジスト法に従って塗布およびパターンニングを行うことができる。本発明では、リフトオフレジストの基板側の面(リフトオフレジスト底面)404とリフトオフレジストの側面406のなす角γが120度以上160度未満であることが好ましい。より好ましくは角度γは150度である。このような角度とすることにより、絶縁膜がほぼ均一な膜厚で形成される。角度γが120度より小さくなると、絶縁膜を形成する際、絶縁膜材料がリフトオフレジストの側面に回り込みレジストの除去が難しくなる。また、絶縁膜の上記角度αが大きくなりすぎ、絶縁膜の側面が急峻に形成されるようになる。また、角度γが160度より大きくなると、絶縁膜の回り込みが小さくなりすぎるため、設計寸法よりも小さくパターンが形成されることになる。
【0139】
本発明のリフトオフレジストのパターンニングは、例えばZPN1000(日本ゼオン)のようなレジスト材料を、第1電極を形成した支持基板上にスピンコート法により塗布し、クリーンオーブンを用いた場合60℃〜100℃で15〜30分、またはホットプレートを用いた場合には90℃〜110℃で90秒〜180秒の条件でベーキングした後、露光し、再度ベークを行う。このベークは、クリーンオーブンを用いた場合80℃〜100℃で5分〜10分、ホットプレートを用いた場合には90℃〜110℃で60秒〜120秒の条件で行うことが望ましい。ベークの後に、現像(例えば、NMD−3(東京応化工業製)を用い、室温で90〜120秒浸漬するか、またはシャワー現像を90〜120秒)を行えばよい。この手順により、図4(c)に示したように第1電極上の開口部に相当する領域に、所定の角度γを有するリフトオフレジスト402を形成することができる。また、リフトオフレジストは、第1電極と外部駆動回路との接合部にも形成される。リフトオフレジストの膜厚は1〜5μmであることが好ましい。
【0140】
次に、絶縁膜を形成する(図4(d)参照)。絶縁膜は、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法などを用いることができる。本発明では、例えばRFスパッタ法により室温で絶縁膜を形成することができる。
【0141】
次に、前記リフトオフレジストを除去する(図4(e)参照)。
【0142】
リフトオフレジストは、レジスト剥離液に浸漬するか、レジスト剥離液を噴霧等することにより除去することができる。剥離液への浸漬、噴霧等の時間および剥離液の温度などは、当業者により適宜選択されうる。例えば、液温度は室温から50℃、処理時間は1〜5分である。
【0143】
以上の工程で、絶縁膜を所定角度で、第1電極に平行および垂直に形成することができる。
【0144】
第4の工程は、有機EL層および第2電極を形成する工程である。
【0145】
第1電極および絶縁膜を形成した支持基板上に有機EL層108を形成する。有機EL層は、抵抗加熱蒸着装置などを用いて、例えば正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子注入層を、真空を破らずに順次成膜すればよい。なお、有機EL層108はこの構成に限らず、先に説明したような種々の形態をとりうる。それぞれの形態においても、各層は抵抗加熱蒸着装置などを用いて成膜すればよい。
【0146】
この後、第1電極のラインと垂直なストライプパターンが得られるマスクを用いて第2電極(陰極)110を真空を破らずに形成する。
【0147】
次に、必要に応じて、第2電極側にパッシベーション層を形成する。該パッシベーション層の形成方法としては特に制約はなく、無機材料を用いる場合には、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法、ディップ法、ゾル−ゲル法等の慣用の手法により形成できる。また、ポリマー材料を用いる場合にも、その形成法は特に制限はない。たとえば、乾式法(スパッタ法、蒸着法、CVD法など)、あるいは湿式法(スピンコート法、ロールコート法、キャスト法など)のような慣用の手法により形成することができる。
【0148】
こうして得られた有機発光素子をグローブボックス内で、乾燥窒素雰囲気下において、封止ガラス114とUV硬化接着剤などからなる外周封止層を用いて封止する。必要に応じて、充填剤を注入し、充填剤層を形成する。充填剤を封入する場合には、外周封止層の一部に孔を設けて外周封止層を硬化させ、この孔から充填剤112を注入した後、この孔を塞げばよい。
【0149】
また、本発明では、封止用基板114、外周封止層及び充填剤層は、例えば紫外線硬化樹脂または熱光併用型硬化樹脂などの樹脂を、発光部を設けた色変換フィルタ基板上に均一に塗布し、これを硬化することで一体に形成してもよい。
【0150】
以上のようにして、有機ELディスプレイを製造することができる(図4(f)参照)。
【0151】
本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、いわゆるボトムエミッション型のカラー有機ELディスプレイの製造方法(第1の実施形態)を包含する。
【0152】
このカラー有機ELディスプレイの製造方法では、工程(1)は、基板上に少なくともパターン化された色変換フィルタ層および平坦化層が形成された支持基板を提供する。
【0153】
具体的には、以下の工程(A)〜(C)を含む。
【0154】
(A)基板上に赤、緑および青の色変換フィルタ層の領域に相当する開口部を備えるブラックマトリックスを形成する工程
本発明では、透明な基板上に先に説明したブラックマトリックスの材料を、スピンコート法、噴霧法、ディップ法のような塗布手段により支持基板全面に塗布し、加熱乾燥した後、フォトリソグラフ法によりパターン形成する。すなわち、基板上に全面塗布し、乾燥されたブラックマトリックス上に、レジストをスピンコート法、噴霧法、ディップ法のような塗布手段で塗布し、赤、緑および青の色変換フィルタ層の領域に相当する開口部が形成されるようなマスクを通して露光(UV照射など)し、パターンニングを行う。次いで、各色の開口部に相当する部分のブラックマトリックス及びレジストを現像により除去し、所望のパターンを有するブラックマトリックスを形成する。なお、ブラックマトリックスとしては、光透過率が10%以下であるものを用いることが好ましい。
【0155】
(B)ブラックマトリックスの開口部に赤、緑および青の色変換フィルタ層を順次形成する工程
本発明では、染料または顔料を含有したマトリックス樹脂を、例えばコーニング社製のガラス(ノンアルカリガラスである、コーニング1737ガラス)のような透明基板上に、スピンコート法などを用いて塗布し、フォトリソグラフィー法などによりパターンニングを行うことにより色変換フィルタ層を形成する。例えば青色の蛍光を発する蛍光色素を含有するマトリックス樹脂を、スピンコート法などによりブラックマトリックスを形成した基板上に全面塗布し、加熱乾燥した後、フォトリソグラフ法によりパターン形成する。これを他の色変換フィルタ層に対しても行うことにより色変換フィルタ層を形成する。
【0156】
以下に各色フィルタ層の形成方法を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、以下の説明は、青緑色の光を発する有機EL層を用いた場合の各フィルタ層の形成方法を例に取る。
【0157】
[青色フィルタ層の作製]
青色フィルタ層の材料を透明な支持基板上に、スピンコート法などを用いて塗布し、フォトリソグラフィー法などによりパターンニングを実施すことにより、青色フィルタ層のラインパターンを得ることができる。すなわち、青色フィルタ層の材料を塗布、乾燥した後、この上に、レジストをスピンコート法、噴霧法、ディップ法のような塗布手段で塗布し、青色フィルタ層の領域が形成されるようなマスクを通して露光(UV照射など)し、パターンニングを行う。次いで、この開口部に相当する部分のマトリックス樹脂及びレジストを現像により除去し、所望のパターンを有する青色フィルタ層15を形成する。
【0158】
[緑色変換フィルタ層の作製]
緑色変換用の蛍光色素を溶剤へ溶解させ、これに光重合性樹脂を加えて、硬化性樹脂組成物の溶液を得る。この溶液を、青色フィルタのラインパターンをすでに形成した、透明な支持基板上に、スピンコート法などを用いて塗布し、フォトリソグラフィー法などによりパターンニングを実施すことにより、緑色変換フィルタ層のラインパターンを得ることができる。すなわち、緑色変換フィルタ層の材料を塗布、乾燥した後、この上に、レジストをスピンコート法、噴霧法、ディップ法のような塗布手段で塗布し、緑色の色変換フィルタ層の領域が形成されるようなマスクを通して露光(UV照射など)し、パターンニングを行う。次いで、この開口部に相当する部分のマトリックス樹脂及びレジストを現像により除去し、所望のパターンを有する緑色変換フィルタ層を形成する。
【0159】
[赤色変換フィルタ層の作製]
赤色変換用の蛍光色素を溶剤へ溶解させ、これに光重合性樹脂を加えて、硬化性樹脂組成物の溶液を得る。この溶液を、青色フィルタ層および緑色変換フィルタ層のラインパターンを形成した透明な支持基板上に、スピンコート法などを用いて塗布し、フォトリソグラフィー法などによりパターンニングを実施すことにより、赤色変換フィルタ層を得る。すなわち、赤色変換フィルタ層の材料を塗布、乾燥した後、この上に、レジストをスピンコート法、噴霧法、ディップ法のような塗布手段で塗布し、赤色変換フィルタ層の領域が形成されるようなマスクを通して露光(UV照射など)し、パターンニングを行う。次いで、この開口部に相当する部分のマトリックス樹脂及びレジストを現像により除去し、所望のパターンを有する赤色変換フィルタ層を形成する。
【0160】
なお、上記各フィルタ層の形成において、乾燥は、60℃から100℃、好ましくは80℃で行われる。そのほかの条件は、従来より知られた条件を用いることができ、あるいは、そのような条件から当業者により容易に導くことができる。例えば、青色フィルタでは、スピンコート後のプリベイク温度80℃15分、露光・現像後の乾燥温度は、例えば200℃30分である。また、緑色変換フィルタでは、例えばスピンコート後のプリベイク温度80℃15分、露光・現像後の乾燥温度180℃30分である。緑色変換フィルタでは、例えばスピンコート後のプリベイク温度80℃10分、露光・現像後の乾燥温度は180℃30分である。
【0161】
本発明では、各色変換フィルタ層は、ブラックマトリックスの開口部と同じ領域を有していることが好ましいが、ブラックマトリックスの開口部より大きい領域であってもよい。
【0162】
さらに本発明では、色変換層と基板の間に、カラーフィルタ層をさらに設けてもよい。すなわち、上記の緑色または赤色の変換フィルタ層のみでは十分な色純度が得られない場合は、カラーフィルタ層を設けることができる。カラーフィルタ層の厚さは1〜1.5μmが好ましい。また、このカラーフィルタ層は、上記青色フィルタ層と同様の方法で形成することができる。
【0163】
以上のようにして、本発明の色変換フィルタ層が得られる。
【0164】
(C)平坦化層の形成工程
本発明の平坦化層の形成工程は、上記の色変換フィルタ基板上に、平坦化層16を形成するための材料を、スピンコート法等で塗布し、オーブンのような加熱手段でベーキング(例えば100℃から180℃、好ましくは130℃)することにより形成することができる。本発明では、180℃で30分の温度条件が好適である。
【0165】
なお、平坦化層の形成に使用される材料は、上述の通りである。
【0166】
以上のようにして色変換フィルタ基板を製造することができる。
【0167】
本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、いわゆるトップエミッション型のカラー有機ELディスプレイの製造方法(第2の実施形態)を包含する。
【0168】
このカラー有機ELディスプレイの製造方法は、上記工程(4)の後に、少なくとも色変換フィルタ層を含む色変換フィルタ基板を形成する工程をさらに含む。
【0169】
なお、第2の実施形態の製造方法では、支持基板102を基板と反射膜から構成することができる。この場合、工程(1)において、基板上に反射膜および必要に応じて絶縁層を形成する。これらは、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法等の慣用の手法により形成できる。
【0170】
工程(4)の後に、色変換フィルタ基板を第2電極側に設ける。
【0171】
本発明では、第2電極上に設ける色変換フィルタ基板は、第2電極を設けた後に色変換フィルタ層を順次形成すればよい。あるいは、別途色変換フィルタ基板を作製し、有機EL素子と貼り合わせてもよい。
【0172】
色変換フィルタ層を順次形成する場合、第2電極を形成した後にパッシベーション層をさらに形成し、次いで、このパッシベーション層上に、青色フィルタ層、緑色変換フィルタ層、赤色変換フィルタ層をスピンコート法およびフォトリソグラフ法を併用して色変換フィルタ層を形成すればよい。パッシベーション層および色変換フィルタ層の形成は、先に説明したとおりである。色変換フィルタ層を形成した後、気密性を持たせるためにパッシベーション層を、必要に応じて基板全面に形成する。次いで、外周封止層および封止用基板を形成して封止する。また、必要に応じて充填剤層を形成してもよい。これらの形成手順は先に説明したとおりである。また、外周封止層、封止用基板および充填剤層は、例えば紫外線硬化樹脂または熱光併用型硬化樹脂などの樹脂を、発光部を設けた色変換フィルタ基板上に均一に塗布し、これを硬化することで一体に形成してもよい。
【0173】
また、別途色変換フィルタ基板を作製し、有機EL素子と貼り合わせる場合には、以下の手順でカラー有機ELディスプレイを製造することができる。上記(A)〜(C)で説明したように、透明基板上に、例えば青色フィルタ層、緑色変換フィルタ層、赤色変換フィルタ層をスピンコート法およびフォトリソグラフ法を併用して色変換フィルタ層を形成し、次いで平坦化層を形成して色変換フィルタ基板を作製する。次いで、上記工程(1)〜(4)で形成された有機EL素子とあらかじめ形成された色変換フィルタ基板をUV硬化接着剤などで接着し、封止すればよい。なお、有機EL素子は、接着前に露出した有機EL層を保護するためパッシベーション層を第2電極側に形成することが好ましい。
【0174】
(実施例)
以下、本発明を適用した有機ELディスプレイの作製例を説明する。有機ELディスプレイは、画素数160×120×RGB、画素ピッチ0.33mmで形成した。
【0175】
(実施例1)
[青色フィルタの作製]
青色フィルタ材料(富士フィルムアーチ社製、カラーモザイクCB−7001)を、透明基板としてのコーニングガラス(50×50×1.1mm)上にスピンコート法により塗布し、フォトリソグラフ法によりパターンニングを実施して、線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚10μmの青色フィルタを得た。
【0176】
[緑色変換フィルタの作製]
蛍光色素としてクマリン(0.7重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)(120重量部)へ溶解させた。これに光重合性樹脂V259PA/P5(商品名、新日鐵化成工業株式会社)(100重量部)を加えて溶解させ、塗布液を得た。この塗布液を、青色フィルタのラインパターンが形成された透明基板上にスピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によりパターンニングを実施して、線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚10μmの緑色変換フィルタを得た。
【0177】
[赤色変換フィルタの作製]
蛍光色素としてクマリン(0.6重量部)、ローダミン6G(0.3重量部)、ベーシックバイオレット11(0.3重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)(120重量部)へ溶解させた。これに光重合性樹脂V259PA/P5(商品名、新日鐵化成工業株式会社)(100重量部)を加えて溶解させ、塗布液を得た。この塗布液を、青色フィルタおよび緑色変換フィルタのラインパターンが形成された透明基板上にスピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によりパターンニングを実施して、線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚10μmの赤色変換フィルタを得た。
【0178】
「平坦化層の形成]
i)高分子膜の作製
上記の工程で作製された蛍光変換フィルタ上に、UV硬化型樹脂(エポキシ変性アクリレート)をスピンコート法により塗布し、高圧水銀灯で照射して膜厚8μmの高分子膜を形成した。高分子膜を形成した後の蛍光変換フィルタのパターンは変形していなかった。また、高分子膜の上面は平坦であった。
【0179】
ii)無機膜層の作製
無機膜層として、DCスパッタ法により、室温において、膜厚300nmのSiOx膜を形成した。スパッタターゲットにはSiを用い、スパッタガスとしてArおよび酸素の混合ガス(Ar:酸素=5:1)を使用した。
【0180】
[第1電極の作製]
第1電極としてIn−Zn酸化物(IZO)パターンを形成した。第1電極は外部駆動回路との接続部位から表示部内の中央まで配線される。DCスパッタ法により室温において、膜厚200nmのIn−Zn酸化物膜を形成した。スパッタターゲットしてIn−Zn酸化物ターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンおよび酸素を使用した。フォトリソグラフ法によりレジストをパターンニングした。具体的には、フォトレジストOFRP−800(東京応化工業製)をスピンコート法によりIZO上に塗布した。これを110℃30秒の条件でホットプレートを用いてプリベークし、露光した後、現像液(NMD−3、東京応化工業製)を25℃で用いて現像し、第1電極のパターンを形成した。この後、シュウ酸をエッチング液として用いて第1電極をパターンニングすることにより配線幅100μmの第1電極を形成した。第1電極の底面と側面のなす角度αは約10度であった。
【0181】
[絶縁膜の作製]
絶縁膜として窒化ケイ素膜をリフトオフ法により形成した。リフトオフレジストは、第1電極上の開口部の領域、および第1電極と外部駆動回路との接合部に形成した。リフトオフレジストのパターンニングは、レジスト材料ZPN1100(日本ゼオン製)を、第1電極を形成した支持基板にスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて110℃で90秒ベーキングした後、露光し、再度ホットプレートを用いて110℃で60秒間ベーキングを行った。現像液(NMD−3、東京応化工業製)を25℃で用いて現像を行った。この手順により、角度γ=150度を有するリフトオフレジスト402を形成した。なお、リフトオフレジストの膜厚は4μmであった。
【0182】
上記手順により、リフトオフレジストを第1電極上の開口部、および第1電極と外部駆動回路との接合部に形成した後、RFスパッタ法により室温において膜厚300nmの窒化ケイ素膜を形成した。次いで、レジスト剥離液(剥離104、東京応化工業製)でリフトオフレジストを除去し、絶縁膜を第1電極上の開口部、および第1電極と外部駆動回路との接合部を除いて形成した。第1電極の底面と絶縁膜の側面のなす角度は5度であった。
【0183】
[有機EL層の作製]
上記のように絶縁膜を形成した基板を抵抗加熱蒸着装置内に装填し、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子注入層を真空を破らずに順次成膜した。成膜に際して真空槽内の圧力を1×10−4Paまで減圧した。正孔注入層として銅フタロシアニン(CuPc)を100nm積層した。正孔輸送層として4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を20nm積層した。有機発光層として4,4’−ビス(2,2’−ジフェニル)ビフェニル(DPVBi)を30nm積層した。電子注入層として、Alq3を20nm積層した。
【0184】
[第2電極の作製]
有機EL層の作製後、第1電極のラインと垂直に、幅0.3mm、0.03mmのギャップのストライプパターンが得られるマスクを用いて、厚さ200nmのMg/Ag(10:1の重量比率)層からなる第2電極を、真空を破らずに形成した。
【0185】
[封止工程]
以上のようにして得られた有機EL素子をグローブボックス内で、乾燥窒素雰囲気下(酸素および水分濃度共に10ppm以下)において封止ガラスとUV硬化接着剤を用いて封止した。
【0186】
(実施例2)
[第1電極の形成]
基板上に、第1電極としてAl−Cu−Si合金のパターンを形成した。第1電極は外部駆動回路との接続部位から表示部内の中央まで配線される。DCスパッタ法により室温において、膜厚200nmのAl−Cu−Si合金を形成した(第1電極の角度α=10度)。スパッタターゲットしてAl−Cu−Si合金ターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンおよび酸素を使用した。フォトリソグラフ法によりレジストをパターンニングした後、シュウ酸をエッチング液として用いて第1電極をパターンニングすることにより配線幅100μmの第1電極を形成した。
【0187】
[絶縁膜の作製]
絶縁膜として窒化ケイ素膜をリフトオフ法により形成した。リフトオフレジストを第1電極上の開口部の領域、および第1電極と外部駆動回路との接合部に形成した後、RFスパッタ法により室温において膜厚300nmの窒化ケイ素膜を形成した。次いで、レジスト剥離液でリフトオフレジストを除去し、絶縁膜を第1電極の開口部、および第1電極と外部駆動回路との接合部を除いて形成した。なお、リフトオフレジストおよび絶縁膜の形成条件は実施例1と同様であった。また第1電極の上面と絶縁膜の側面のなす角度βは5度であった。またリフトオフレジストの底面と側面のなす角度γは150度であった。
【0188】
[有機EL層の作製]
上記のように絶縁膜を形成した基板を抵抗加熱蒸着装置内に装填し、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子注入層を真空を破らずに順次成膜した。成膜に際して真空槽内の圧力を1×10−4Paまで減圧した。正孔注入層として銅フタロシアニン(CuPc)を100nm積層した。正孔輸送層として4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を20nm積層した。有機発光層として4,4’−ビス(2,2’−ジフェニル)ビフェニル(DPVBi)を30nm積層した。電子注入層として、Alq3を20nm積層した。
【0189】
[第2電極の作製]
有機EL層の作製後、第1電極のラインと垂直に、幅0.3mm、0.03mmのギャップのストライプパターンが得られるマスクを用いて、厚さ1nmのAl−Liと厚さ200nmのIZOからなる第2電極を、真空を破らずに形成した。
【0190】
次に、第2電極を形成した基板上にパッシベーション層として、DCスパッタ法により、室温において、膜厚300nmのSiOx膜を形成した。スパッタターゲットにはSiを用い、スパッタガスとしてArおよび酸素の混合ガス(Ar:酸素=5:1)を使用した。
【0191】
[色変換フィルタ基板の作製]
上記実施例1で、青色フィルタ、緑色変換フィルタ、赤色変換フィルタおよび平坦化層の作製で説明した手順に従い、透明な基板上に各層を形成し、色変換フィルタ基板を形成した。
【0192】
[貼り合わせ工程]
第2電極およびパッシベーション層を形成した支持基板と、色変換フィルタ層を、グローブボックス内で、乾燥窒素雰囲気下(酸素および水分濃度共に10ppm以下)においてUV硬化接着剤を用いて貼り合わせ、封止した。
【0193】
(比較例1および2)
比較例として、絶縁膜にノボラック樹脂(JEM700R2(JSR製)を用いて、上記実施例1および2と同様の手順で有機ELディスプレイを作製した。なお、比較例1および2の絶縁膜の形成条件は同じであり、以下の通りである。
【0194】
絶縁膜の成膜条件
フォトレジストJEM700−R2(JSR製)をスピンコート法により塗布した。これを110℃120秒の条件で、ホットプレートを用いてプリベークし、露光した後、現像液(NMD−3、東京応化工業製)を25℃で用いて現像し、絶縁膜のパターンを形成した。
【0195】
上記各実施例により作製した有機ELディスプレイの耐久試験および発光効率の評価を行った。
【0196】
(評価)
1.耐久試験
上記実施例1、2、および比較例1、2の有機ELディスプレイについて、環境温度85℃において、パネル面輝度150cd/m2で500時間の連続駆動を行い、各画素の発光面積の減少を評価した。画素の発光面積の減少は、絶縁膜からの水分放出が原因と考えられる。評価数は、有機ELディスプレイ1機あたり10点であり、有機ELディスプレイ数は12であった。比較例1および比較例2の場合減少率は、それぞれ42〜56%、44〜59%であった。一方、実施例1の場合、減少率は2〜5%であり、実施例2の場合、減少率は3〜8%であった。以上の結果により、本発明の有機ELディスプレイの有効性が確認できる。
【0197】
2.発光効率評価
ピクセルあたりの電流密度を100μA、デューティーを1/60として有機ELディスプレイの面輝度を強化した。評価1は、有機ELディスプレイの中央部であった。評価した有機ELディスプレイ数は12であった。比較例1の有機ELディスプレイの輝度の平均値を1とすると実施例1の場合の輝度の平均値は1.04であった。また、比較例2の有機ELディスプレイの輝度の平均値を1とすると実施例1の場合の輝度の平均値は1.03であった。
【0198】
【発明の効果】
上記のように、本発明の有機ELディスプレイは、非発光部分の拡大を抑え、長時間安定に駆動することができる。また、本発明の有機ELディスプレイは、発光効率を高めることができる。さらに、本発明の製造方法によれば、前記のような有機ELディスプレイを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のボトムエミッション型有機ELディスプレイの構造を示す概略断面図である。(b)は、第1電極および絶縁膜の形状を説明するための図である。
【図2】(a)は本発明のトップエミッション型有機ELディスプレイの構造を示す概略断面図である。(b)は、第1電極および絶縁膜の形状を説明するための図である。
【図3】本発明の有機ELディスプレイの絶縁膜の形状の一形態を示す概略図である。
【図4】本発明の有機ELディスプレイの製造工程を説明するための図である。
【図5】走査電子顕微鏡(斜視40度)で得られた支持基板、第1電極および絶縁膜の断面形状を示す図である。
【図6】走査電子顕微鏡(斜視40度)で得られたリフトオフレジストの断面形状を示す図である。
【符号の説明】
100、150 有機ELディスプレイ
102 支持基板
104 第1電極
106 絶縁膜
108 有機EL層
110 第2電極
112、120 パッシベーション層
114、122 封止用基板
130 光
132 第1電極の底面
134 第1電極の側面
136 第1電極の上面
138 絶縁膜側面
302 端子パッド
304 絶縁性隔壁
306 絶縁膜の開口部
402 リフトオフレジスト
404 リフトオフレジスト底面
406 リフトオフレジスト側面
Claims (8)
- 支持基板上に、少なくとも第1電極、絶縁膜、有機EL層および第2電極を順次積層した有機ELディスプレイであって、前記第1電極と平行および垂直に前記絶縁膜が形成され、前記第1の電極の支持基板側の面と第1の電極の側面のなす角が1度以上20度未満であり、第1電極側の前記絶縁膜側の面と絶縁膜の側面のなす角が1度以上20度未満であることを特徴とする有機ELディスプレイ。
- 前記支持基板が、少なくともパターン化された色変換フィルタ層および平坦化層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の有機ELディスプレイ。
- 前記第2電極側に少なくとも透明基板および色変換フィルタ層を含む色変換フィルタ基板を設けることを特徴とする請求項1に記載の有機ELディスプレイ。
- 前記絶縁膜が、屈折率1.8以上の無機絶縁膜であることを特徴とする請求項1から3に記載の有機ELディスプレイ。
- 支持基板上に、少なくとも第1電極、絶縁膜、有機EL層および第2電極を順次積層した有機ELディスプレイの製造方法であって、該製造方法が、
(1)支持基板を提供する工程と、
(2)該支持基板上に第1電極を形成する工程と、
(3)第1電極の形成された支持基板上にリフトオフレジストをパターンニングし、絶縁膜を前記第1電極と平行および垂直に形成し、次いでリフトオフレジストを除去する工程と
(4)有機EL層と第2電極を形成する工程
とを含み、前記工程(3)において、リフトオフレジストは、リフトオフレジストの第1電極側の面とリフトオフレジストの側面のなす角が120度以上160度未満に形成されることを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。 - 前記工程(1)が、基板上に少なくともパターン化された色変換フィルタ層、平坦化層、およびパッシベーション層が形成された支持基板を提供する工程であること特徴とする請求項5に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
- 上記工程(4)の後に、少なくとも色変換フィルタ層を含む色変換フィルタ基板を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
- 前記絶縁膜が、屈折率1.8以上の無機絶縁膜であることを特徴とする請求項5から7に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
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