JP2004316802A - 2方向クラッチおよびハイブリッド4輪駆動車の動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】補助駆動輪をアシスト駆動するモータが搭載されたハイブリッド4輪駆動車への組込みにおいて係合ショックやポッピングの発生を防止することができるようにした2方向クラッチを提供することである。
【解決手段】外輪1の内周に形成されたカム面7と駆動軸3の外周に設けられた円筒面5間に係合子8を組込む。係合子8を保持する保持器9にスイッチばね12の弾性力を付与して保持器9を一方向に付勢し、係合子8をカム面7の正転用カム面7aと円筒面5に接触する位置にスイッチさせ、駆動軸3が逆転方向に回転した場合でも、係合子8が逆転側にスイッチされることのないようにして、外輪1が正転方向に回転した場合に係合子8を円筒面5とカム面7とに直ちに係合させて係合ショックが発生するのを防止する。また、保持器9に回り止めされたアーマチュア21を電磁石17で吸着して保持器9を回り止めし、外輪1が逆転方向に回転された場合に、係合子8を逆転側にスイッチさせて、外輪1の回転を駆動軸3に伝達する。
【選択図】 図1
【解決手段】外輪1の内周に形成されたカム面7と駆動軸3の外周に設けられた円筒面5間に係合子8を組込む。係合子8を保持する保持器9にスイッチばね12の弾性力を付与して保持器9を一方向に付勢し、係合子8をカム面7の正転用カム面7aと円筒面5に接触する位置にスイッチさせ、駆動軸3が逆転方向に回転した場合でも、係合子8が逆転側にスイッチされることのないようにして、外輪1が正転方向に回転した場合に係合子8を円筒面5とカム面7とに直ちに係合させて係合ショックが発生するのを防止する。また、保持器9に回り止めされたアーマチュア21を電磁石17で吸着して保持器9を回り止めし、外輪1が逆転方向に回転された場合に、係合子8を逆転側にスイッチさせて、外輪1の回転を駆動軸3に伝達する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、回転トルクの伝達と遮断とを行なう2方向クラッチおよびハイブリッド4輪駆動車の動力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハイブリッド4輪駆動車として、特許文献1に記載されたものが従来から知られている。その特許文献1に記載されたハイブリッド4輪駆動車は、図7に示すように、主駆動輪としての前輪40を駆動するエンジン41と、補助駆動輪としての後輪42を駆動するモータ43を有している。エンジン41から前輪40へのトルク伝達経路にはトランスミッション44およびディファレンシャル45が設けられている。
【0003】
一方、モータ43から後輪42のトルク伝達経路には減速機46、2方向クラッチ47およびディファレンシャル48が設けられている。
【0004】
図8および図9(I)、(II)に示すように、2方向クラッチ47は減速機46の出力軸に取付けられた出力ギヤ49に噛合するギヤ歯50が外周に設けられた外輪51と後輪42のアクスルに回転トルクを伝達する内輪52間に径の異なる保持器53、54を組込み、その外側保持器53を外輪51の内径面に圧入し、その外側保持器53と内側保持器54のそれぞれに形成されたポケット55内にスプラグ56を組込み、そのスプラグ56を、その両側に設けた一対の弾性片57a、57bによってそれぞれの側にスプラグ56をスタンバイさせている。
【0005】
また、内側保持器54の一端部に出力ギヤ49に噛合するサブギヤ58をスライド自在に嵌合し、そのサブギヤ58を皿ばね59によって内側保持器54に設けられたフランジ54aに圧接し、上記サブギヤ58の歯数を外輪51に設けられたギヤ歯50より多く設定している。
【0006】
さらに、内側保持器54にピン60を突設し、そのピン60を外側保持器53に設けられた周方向に長い長孔61に挿入し、上記長孔61の両端に対するピン60の当接によって外側保持器53と内側保持器54の相対的な回転量を規制している。
【0007】
上記の構成から成るハイブリッド4輪駆動車は、通常走行時は、エンジン41の駆動によって前輪40を駆動し、発進時や加速時の負荷が大きい場合にモータ43を駆動して後輪42を駆動し、エンジン41をアシストするようになっている。
【0008】
ここで、モータ43を駆動すると、その回転は出力ギヤ49から2方向クラッチ47の外輪51とサブギヤ58に伝達される。このとき、サブギヤ58の歯数は外輪51に設けられたギヤ歯50の歯数より多いため、外輪51に対してサブギヤ58が遅れて回転する。
【0009】
このとき、サブギヤ58はフランジ54aに圧接されているため、内側保持器54はサブギヤ58と共に回転すると共に、外側保持器53は外輪51と一体に回転し、上記外側保持器53と内側保持器54の相対回転によってスプラグ56が傾き、図9(I)に示すように、外輪51の円筒形内面51aと内輪52の円筒形外面52aに係合する。このため、外輪51の回転はスプラグ56を介して内輪52に伝達され、後輪42が回転される。
【0010】
また、外輪51が反対方向に回転されると、上記と同様の動作によってスプラグ56は上記の逆方向に傾き、図9(II)に示すように、外輪51の円筒形内面51aと内輪52の円筒形外面52aに係合して後輪42が逆方向に回転される。
【0011】
図9(I)、(II)に示すスプラグ56の係合状態において、車速が上がり、後輪42からのトルク伝達により回転される内輪52の回転速度がモータ43によって駆動される外輪51の回転速度より速くなると、スプラグ56が係合解除されて2方向クラッチ47が切れ、モータ43側への回転トルクの伝達が遮断される。
【0012】
このように、モータ43の駆動によるアシスト状態において、内輪52の回転速度が外輪51の回転速度を上回ると、2方向クラッチ47はOFFとされて後輪42からの回転が減速機46およびモータ43側に伝達されるのが防止されるため、走行抵抗が増大するのが抑制され、燃費の向上を図ることができるという特徴を有している。
【0013】
また、外輪51とサブギヤ58が所定角度相対回転すると、長孔61の一端にピン60が当接し、その当接によって外輪51とサブギヤ58が相対回転するのが防止されるため、スプラグ56が外輪51の円筒形内面51aと内輪52の円筒形外面52aに強く噛み込むのが防止され、スプラグ56の割損や外輪51の円筒形内面51aおよび内輪52の円筒形外面52aの損傷を防止し、2方向クラッチ47を確実に動作させることができるという特徴も有している。
【0014】
【特許文献1】
特開平11−291774号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記アシストタイプのハイブリッド4輪駆動車においては、以下のような不都合がある。
【0016】
例えば、モータ43で後輪42をアシスト駆動し、上り坂を前進で登坂する場合、2方向クラッチ47のスプラグ56は図9(I)に示すように、正転側にスイッチしている。ここで、4輪駆動車をブレーキペダルの踏み込みにより停車させ、シフトレバーをニュートラルに切り換え、ブレーキペダルを緩めると、4輪駆動車は自重で後退する。
【0017】
このとき、スプラグ56は正転側にスイッチしているので、後輪42からの回転トルクにより内輪52が回転し、その内輪52の回転はスプラグ56を介して外輪51に伝達され、外輪51が図9(I)の矢印で示す方向と逆方向に回転する。
【0018】
一方、外輪51が逆転側に回転すると、外側保持器53と内側保持器54が逆転側に相対回転し、スプラグ56は図9(II)に示すように、逆転側にスイッチする。このスプラグ56のスイッチは、保持器53、54に形成されたポケット55のピッチ誤差や各スプラグ56のトルク負荷配分などにより、それぞれのスプラグ56が順次スイッチしていく場合もある。
【0019】
ハイブリッド4輪駆動車が坂道を自重で後退し、スプラグ56が全て逆転側にスイッチしたのちは2方向クラッチ47が空転するため、内輪52は後転を続け、一方、外輪51は停止する。
【0020】
このとき、シフトレバーをドライブ側に位置させてアクセルペダルを踏み込むと、モータ43のアシストにより後輪42が回転され、上り坂を前進で登坂しようとするが、逆転側にスイッチされているスプラグ56が正転側にスイッチするまでの遅れが発生し、また、外輪51と内輪52の回転差が大きいことから、スプラグ56が外輪51の円筒形内面51aおよび内輪52の円筒形外面52aに衝撃的に噛合い、2方向クラッチ47に大きな係合ショックが発生するという不都合がある。
【0021】
また、スプラグ56が順次スイッチしている途中でモータ43のアシストにより後輪42を回転させて上り坂を前進で登坂しようとすると、逆転側にスイッチしているスプラグ56は回転トルクを伝達することができず、残りの正転側にスイッチしているスプラグ56で回転トルクを伝達するため、スプラグ56の1本あたりの負荷トルクが大きくなり、過大トルクによりポッピングが発生するという不都合がある。
【0022】
この発明の課題は、ハイブリッド4輪駆動車のアシスト用モータから補助駆動輪へのトルク伝達経路への組込みにおいて、係合ショックやポッピングの発生を防止することができるようにした2方向クラッチおよびハイブリッド4輪駆動車の動力伝達装置を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、この発明に係る2方向クラッチにおいては、外方部材の内周と、その内側に組込まれて相対的に回転自在に支持された内方部材の外周における一方に円筒面を形成し、他方にその円筒面との間で楔形空間を形成するカム面を設け、そのカム面と円筒面との間に係合子を組込み、その係合子を外方部材と内方部材間に組込まれた保持器で保持し、その保持器と前記カム面が形成された側の部材の相互間に、前記保持器を周方向に付勢して係合子を円筒面とカム面の正転用カム面のそれぞれに接触するスタンバイ位置に配置させるスイッチばねを設け、静止部材に固定される電磁石を前記保持器に対して軸方向で対向し、その電磁石の電磁コイルに対する通電によって電磁石に吸着されるアーマチュアを保持器に対して回り止めした構成を採用したのである。
【0024】
また、この発明に係るハイブリッド4輪駆動車の動力伝達装置においては、エンジンによって、駆動される主駆動輪と、モータによって駆動される補助駆動輪とを有し、前記モータから補助駆動輪へのトルク伝達経路に2方向クラッチを組込んだハイブリッド4輪駆動車の動力伝達装置において、前記2方向クラッチとして、この発明に係る前記2方向クラッチを採用したのである。
【0025】
上記の構成から成る2方向クラッチをアシスト用モータによって補助駆動輪を回転させるハイブリッド4輪駆動車への採用に際しては、外方部材と内方部材のうち、カム面が形成された側の部材にアシスト用モータの回転トルクが伝達され、円筒面が形成された側の部材の回転トルクが補助駆動輪に伝達される組込みとする。
【0026】
上記のような2方向クラッチの組込みにおいて、その2方向クラッチの係合子はカム面の正転用カム面と円筒面に接触する位置にスタンバイされているため、モータの駆動によりカム面を有する部材を正転方向に回転させると、係合子が正転用カム面および円筒面に直ちに係合し、その係合子を介してカム面を有する側の部材の回転が円筒面を有する側の部材に伝達され、補助駆動輪が回転される。
【0027】
ここで、正転方向とは、ハイブリッド4輪駆動車を前進させる方向の回転をいう。
【0028】
ハイブリッド4輪駆動車が上り坂を前進で登坂し、その登坂時に4輪駆動車を停止させ、シフトレバーをニュートラルに位置させてブレーキペダルを緩めると、4輪駆動車は自重で後退する場合がある。
【0029】
このとき、2方向クラッチの係合子は正転側にスイッチされているため、補助駆動輪からモータ側に動力が伝達されるが、電磁石の電磁コイルへの通電は遮断されたままの状態にあるので係合子が逆転側にスイッチすることはない。
【0030】
したがって、再びモータで補助駆動輪をアシストし、上り坂を前進で登坂しようとするとき、係合子は正転用カム面と円筒面とに直ちに係合する。このため、係合ショックの発生はなく、モータによって補助駆動輪をスムーズにアシスト駆動することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図1乃至図7に基づいて説明する。図1は、この発明に係る2方向クラッチの第1の実施形態を示す。図示のように、2方向クラッチは、外方部材としての外輪1を有し、その外輪1の外周にはギヤ歯2が形成されている。
【0032】
外輪1の内側には内方部材としての駆動軸3が組込まれている。外輪1と駆動軸3は軸受4によって相対的に回転自在に支持されている。
【0033】
図1、図3および図4(II)に示すように、駆動軸3の外周には円筒面5が形成され、一方、外輪1の内周には環状突出部6が設けられ、その環状突出部6の内周に上記円筒面5との間で楔形空間を形成する複数のカム面7が設けられている。
【0034】
カム面7の周方向中央から一端に至る部分は正転用カム面7aとされ、かつ周方向中央から他端に至る部分は逆転用カム面7bとされている。このカム面7と円筒面5との間にはローラから成る係合子8が組込まれている。
【0035】
外輪1と駆動軸3との間には保持器9が組込まれている。保持器9は外輪1に対して回転自在に支持され、その保持器9の周方向に間隔をおいて形成された複数のポケット10のそれぞれに係合子8が収納されている。
【0036】
図1、図2および図4(I)に示すように、外輪1に形成された環状突出部6の端面にはばね収納凹部11が設けられ、そのばね収納凹部11にスイッチばね12が組込まれている。スイッチばね12は切り離しリング部12aの両端部に一対の係合片12b、12cを内向きに設けた構成とされ、上記切り離しリング部12aは縮径された状態でばね収納凹部11内に嵌合されている。
【0037】
一対の係合片12b、12cは長さが異なり、長さの短い係合片12bはばね収納凹部11の内周壁に形成された切欠部13内に挿入されて、その切欠部13の一端面に係合している。
【0038】
一方、長さの長い係合片12cは上記切欠部13から保持器9の端部に形成された半径方向の挿入孔14に挿入されている。挿入孔14と係合片12cとの間には隙間15が形成され、また、係合片12cと切欠部13の他端面間にも隙間16が設けられている。
【0039】
スイッチばね12の上記のような組付けによって保持器9は周方向の一方に付勢され、その保持器9に保持された係合子8は、図4(II)に示すように、円筒面5とカム面7の正転用カム面7aと接触するスタンバイ位置に配置されている。
【0040】
図1に示すように、外輪1の端部内には電磁石17が設けられている。電磁石17は磁性体から成るコア17aと、そのコア17aによって保持された電磁コイル17bとから成り、前記コア17aはその外径側に設けられた軸受18および内径側に設けられた軸受19によって外輪1および駆動軸3に対して相対的に回転自在に支持されている。また、コア17aは支持板20に支持され、その支持板20が図示省略した静止部材に固定される。このため、電磁石17は固定の支持とされている。
【0041】
電磁石17と保持器9の対向部間にはアーマチュア21と、環状の回り止めプレート22とが組込まれている。回り止めプレート22は外輪1の内側に嵌合され、止め輪23によって抜け止めされている。回り止めプレート22の内周にはL形の係合片24が設けられている。係合片24は保持器9の端部に形成された切欠き25からアーマチュア21に形成された係合孔26に係合されており、上記係合片24と係合孔26の係合によってアーマチュア21は保持器9に対して回り止めされ、かつ軸方向に移動可能とされている。
【0042】
アーマチュア21は電磁石17との間に組込んだ弾性部材27によって電磁石17から離反する方向に付勢されている。
【0043】
第1の実施形態で示す2方向クラッチは上記の構造から成り、その2方向クラッチを図7に示すアシスト用モータ43を有するハイブリッド4輪駆動車に採用する場合は、アシスト用モータ43の回転トルクが外輪1に伝達され、その外輪1から係合子8を介して駆動軸3に伝達される回転によって補助駆動輪としての後輪42が回転される組付けとする。
【0044】
2方向クラッチを組込んだハイブリッド4輪駆動車においては、発進時や加速時の負荷が大きいときにアシスト用モータ43を駆動する。
【0045】
ここで、ハイブリッド4輪駆動車が上り坂を前進で登坂する場合にモータ43を起動すると、そのモータ43の回転は外輪1に伝達されて、外輪1が図2の矢印で示す正転方向に回転する。
【0046】
このとき、2方向クラッチの係合子8は図3に示すように、円筒面5と正転用カム面7aとに接触するスタンバイ位置に配置されているため、外輪1が正転方向に回転されると、係合子8が円筒面5および正転用カム面7aに直ちに係合し、その係合によって外輪1の回転は係合子8を介して駆動軸3に伝達され、その駆動軸3の回転によって後輪42がハイブリッド4輪駆動車を前進させる方向に回転する。
【0047】
モータ43が後輪42をアシスト駆動するハイブリッド4輪駆動車の前進走行状態で車速が上がり、後輪42を駆動する駆動軸3の回転速度がモータ43によって駆動される外輪1の回転速度より速くなると、係合子8は駆動軸3との接触により係合が解除され、2方向クラッチは空転する。
【0048】
このため、後輪42からの回転は2方向クラッチによって遮断され、モータ43側に伝達されるのが防止される。
【0049】
なお、モータ43は2方向クラッチが空転状態に切換わったのちに停止状態とされる。
【0050】
また、モータ43により後輪42をアシスト駆動して上り坂を前進で登坂するハイブリッド4輪駆動車の走行状態において、ブレーキペダルの踏み込みにより4輪駆動車を停車させ、シフトレバーをニュートラルにし、ブレーキペダルを緩めると、4輪駆動車は自重で後退する。
【0051】
このとき、2方向クラッチの係合子8は円筒面5および正転用カム面7aに係合しているため、後輪42からの駆動力は駆動軸3および係合子8を介して外輪1に伝達され、モータ側に伝達されることになるが、係合子8はスイッチばね12により正転側のスタンバイ位置に保持されて逆転側にスイッチすることはない。
【0052】
このため、モータ43を再び駆動して後輪42をアシスト駆動し、上り坂を前進で登坂すると、係合子8は正転側にスタンバイされたままであるため、係合子8は円筒面5および正転用カム面7aに直ちに係合する。このため、その係合時のショックはきわめて小さく、モータ43によって後輪42をスムーズにアシスト駆動することができる。
【0053】
ここで、ハイブリッド4輪駆動車が上り坂を後退によって登坂する場合には電磁石17の電磁コイル17bに通電すると共に、モータ43を逆転させる。
【0054】
電磁コイル17bに通電すると、アーマチュア21はコア17aに吸着されて停止状態に保持される。その、アーマチュア21は保持器9に対して回り止めされているため、保持器9も停止状態に保持され、その状態でモータ43が逆転側に回転し、その回転が外輪1に伝達されると、外輪1はスイッチばね12の弾性に抗して保持器9に対して相対回転する。
【0055】
外輪1と保持器9の相対回転によって、係合子8は図5(II)に示すように逆転用カム面7bと円筒面5に係合する逆転側にスイッチし、外輪1の回転は係合子8を介して駆動軸3に伝達され、後輪42がハイブリッド4輪駆動車を後退させる方向に回転する。
【0056】
なお、電磁石17がアーマチュア21を吸着したとき、アーマチュア21とコア17aとの接触部に作用する摩擦力がスイッチばね12の弾性力より小さい場合、係合子8を逆転側にスイッチさせることができないため、上記摩擦力はスイッチばね12の弾性力より大きくしておく。換言すれば、スイッチばね12の弾性力は摩擦力より小さい値に設定しておくようにする。
【0057】
このように、2方向クラッチの係合子8はスイッチばね12によって正転用カム面7aと円筒面5に接触するスタンバイ位置に配置され、電磁石17の電磁コイル17bに通電してモータ43を逆回転させなければ係合子8を逆転側にスイッチさせることができないため、ハイブリッド4輪駆動車が上り坂で自重で後退し、その後、モータ43の再起動により前進で登坂しようとする場合に2方向クラッチに係合ショックやポッピングが発生するのを防止することができ、モータ43によって後輪42をスムーズに駆動することができる。
【0058】
図6は、この発明に係る2方向クラッチの第2の実施形態を示す。この実施形態では、外輪1の内周に円筒面28を形成し、駆動軸3の大径軸部3aの外周面に上記円筒面28との間で楔形空間を形成する平坦なカム面29を設け、かつ、大径軸部3aの端面にスイッチばね30を収容するばね収納凹部31を形成し、そのばね収納凹部31の外周壁にスイッチばね30に設けられた一対の係合片30a、30bを挿入する切欠部32を形成している点で第1の実施形態で示す2方向クラッチと相違している。
【0059】
このため、第1の実施形態で示す2方向クラッチと同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
第2の実施形態で示す2方向クラッチにおいて、カム面29の周方向中央から一端側の部分は正転用カム面29aとされ、他端側の部分は逆転用カム面29bとされ、係合子8は上記正転用カム面29aと円筒面28とに接触するスタンバイ位置に配置されている。
【0061】
上記の構成から成る2方向クラッチを図7に示すハイブリッド4輪駆動車に採用する場合、アシスト用モータ43によって駆動軸3が駆動され、外輪1の回転が補助駆動輪としての後輪42に伝達される組込みとする。
【0062】
上記第2の実施形態で示す2方向クラッチにおいても係合ショックやポッピングの発生を防止することができる。
【0063】
なお、実施の形態では、この発明に係る2方向クラッチをハイブリッド4輪駆動車に適用した場合を例にとって説明したが、適用例はこれに限定されるものではない。例えば、特開2002−195307号公報に記載される無段変速機の副動力伝達経路内にも適用することができる。
【0064】
また、第1の実施形態および第2の実施形態では係合子8としてローラを示したが、係合子8はローラに限定されるものではない。例えば、スプラグを係合子としてもよい。
【0065】
【発明の効果】
以上のように、この発明に係る2方向クラッチにおいては、スイッチばねにより保持器を周方向の一方に付勢し、その保持器に保持された係合子を正転側のスタンバイ位置に配置させるようにしたので、ハイブリッド4輪駆動車への採用において、上り坂で停止させたハイブリッド4輪駆動車が自重で後退し、その後、アシスト用モータを再起動して上り坂を前進で登坂しようとしたときに、2方向クラッチに係合ショックやポッピングが発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る2方向クラッチの第1の実施形態を示す縦断正面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】図1のIII −III 線に沿った断面図
【図4】(I)は図2の一部を拡大して示す断面図、(II)は図3の一部を拡大して示す断面図
【図5】(I)は図1に示す保持器を回り止めして外輪を逆方向に回転させたときのばねの変形状態を示す断面図、(II)は係合子を逆転側にスイッチさせた状態の断面図
【図6】この発明に係る2方向クラッチの第2の実施形態を示す断面図
【図7】ハイブリッド4輪駆動車の概略図
【図8】従来の2方向クラッチを示す縦断正面図
【図9】(I)は図8に示すスプラグを正転側にスイッチさせた状態の断面図、(II)はスプラグを逆転側にスイッチさせた状態の断面図
【符号の説明】
1 外輪(外方部材)
3 駆動軸(内方部材)
5 円筒面
7 カム面
7a 正転用カム面
8 係合子
9 保持器
12 スイッチばね
17 電磁石
17b 電磁コイル
21 アーマチュア
28 円筒面
29 カム面
29a 正転用カム面
30 スイッチばね
40 前輪(主駆動輪)
41 エンジン
42 後輪(補助駆動輪)
43 モータ
【発明の属する技術分野】
この発明は、回転トルクの伝達と遮断とを行なう2方向クラッチおよびハイブリッド4輪駆動車の動力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハイブリッド4輪駆動車として、特許文献1に記載されたものが従来から知られている。その特許文献1に記載されたハイブリッド4輪駆動車は、図7に示すように、主駆動輪としての前輪40を駆動するエンジン41と、補助駆動輪としての後輪42を駆動するモータ43を有している。エンジン41から前輪40へのトルク伝達経路にはトランスミッション44およびディファレンシャル45が設けられている。
【0003】
一方、モータ43から後輪42のトルク伝達経路には減速機46、2方向クラッチ47およびディファレンシャル48が設けられている。
【0004】
図8および図9(I)、(II)に示すように、2方向クラッチ47は減速機46の出力軸に取付けられた出力ギヤ49に噛合するギヤ歯50が外周に設けられた外輪51と後輪42のアクスルに回転トルクを伝達する内輪52間に径の異なる保持器53、54を組込み、その外側保持器53を外輪51の内径面に圧入し、その外側保持器53と内側保持器54のそれぞれに形成されたポケット55内にスプラグ56を組込み、そのスプラグ56を、その両側に設けた一対の弾性片57a、57bによってそれぞれの側にスプラグ56をスタンバイさせている。
【0005】
また、内側保持器54の一端部に出力ギヤ49に噛合するサブギヤ58をスライド自在に嵌合し、そのサブギヤ58を皿ばね59によって内側保持器54に設けられたフランジ54aに圧接し、上記サブギヤ58の歯数を外輪51に設けられたギヤ歯50より多く設定している。
【0006】
さらに、内側保持器54にピン60を突設し、そのピン60を外側保持器53に設けられた周方向に長い長孔61に挿入し、上記長孔61の両端に対するピン60の当接によって外側保持器53と内側保持器54の相対的な回転量を規制している。
【0007】
上記の構成から成るハイブリッド4輪駆動車は、通常走行時は、エンジン41の駆動によって前輪40を駆動し、発進時や加速時の負荷が大きい場合にモータ43を駆動して後輪42を駆動し、エンジン41をアシストするようになっている。
【0008】
ここで、モータ43を駆動すると、その回転は出力ギヤ49から2方向クラッチ47の外輪51とサブギヤ58に伝達される。このとき、サブギヤ58の歯数は外輪51に設けられたギヤ歯50の歯数より多いため、外輪51に対してサブギヤ58が遅れて回転する。
【0009】
このとき、サブギヤ58はフランジ54aに圧接されているため、内側保持器54はサブギヤ58と共に回転すると共に、外側保持器53は外輪51と一体に回転し、上記外側保持器53と内側保持器54の相対回転によってスプラグ56が傾き、図9(I)に示すように、外輪51の円筒形内面51aと内輪52の円筒形外面52aに係合する。このため、外輪51の回転はスプラグ56を介して内輪52に伝達され、後輪42が回転される。
【0010】
また、外輪51が反対方向に回転されると、上記と同様の動作によってスプラグ56は上記の逆方向に傾き、図9(II)に示すように、外輪51の円筒形内面51aと内輪52の円筒形外面52aに係合して後輪42が逆方向に回転される。
【0011】
図9(I)、(II)に示すスプラグ56の係合状態において、車速が上がり、後輪42からのトルク伝達により回転される内輪52の回転速度がモータ43によって駆動される外輪51の回転速度より速くなると、スプラグ56が係合解除されて2方向クラッチ47が切れ、モータ43側への回転トルクの伝達が遮断される。
【0012】
このように、モータ43の駆動によるアシスト状態において、内輪52の回転速度が外輪51の回転速度を上回ると、2方向クラッチ47はOFFとされて後輪42からの回転が減速機46およびモータ43側に伝達されるのが防止されるため、走行抵抗が増大するのが抑制され、燃費の向上を図ることができるという特徴を有している。
【0013】
また、外輪51とサブギヤ58が所定角度相対回転すると、長孔61の一端にピン60が当接し、その当接によって外輪51とサブギヤ58が相対回転するのが防止されるため、スプラグ56が外輪51の円筒形内面51aと内輪52の円筒形外面52aに強く噛み込むのが防止され、スプラグ56の割損や外輪51の円筒形内面51aおよび内輪52の円筒形外面52aの損傷を防止し、2方向クラッチ47を確実に動作させることができるという特徴も有している。
【0014】
【特許文献1】
特開平11−291774号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記アシストタイプのハイブリッド4輪駆動車においては、以下のような不都合がある。
【0016】
例えば、モータ43で後輪42をアシスト駆動し、上り坂を前進で登坂する場合、2方向クラッチ47のスプラグ56は図9(I)に示すように、正転側にスイッチしている。ここで、4輪駆動車をブレーキペダルの踏み込みにより停車させ、シフトレバーをニュートラルに切り換え、ブレーキペダルを緩めると、4輪駆動車は自重で後退する。
【0017】
このとき、スプラグ56は正転側にスイッチしているので、後輪42からの回転トルクにより内輪52が回転し、その内輪52の回転はスプラグ56を介して外輪51に伝達され、外輪51が図9(I)の矢印で示す方向と逆方向に回転する。
【0018】
一方、外輪51が逆転側に回転すると、外側保持器53と内側保持器54が逆転側に相対回転し、スプラグ56は図9(II)に示すように、逆転側にスイッチする。このスプラグ56のスイッチは、保持器53、54に形成されたポケット55のピッチ誤差や各スプラグ56のトルク負荷配分などにより、それぞれのスプラグ56が順次スイッチしていく場合もある。
【0019】
ハイブリッド4輪駆動車が坂道を自重で後退し、スプラグ56が全て逆転側にスイッチしたのちは2方向クラッチ47が空転するため、内輪52は後転を続け、一方、外輪51は停止する。
【0020】
このとき、シフトレバーをドライブ側に位置させてアクセルペダルを踏み込むと、モータ43のアシストにより後輪42が回転され、上り坂を前進で登坂しようとするが、逆転側にスイッチされているスプラグ56が正転側にスイッチするまでの遅れが発生し、また、外輪51と内輪52の回転差が大きいことから、スプラグ56が外輪51の円筒形内面51aおよび内輪52の円筒形外面52aに衝撃的に噛合い、2方向クラッチ47に大きな係合ショックが発生するという不都合がある。
【0021】
また、スプラグ56が順次スイッチしている途中でモータ43のアシストにより後輪42を回転させて上り坂を前進で登坂しようとすると、逆転側にスイッチしているスプラグ56は回転トルクを伝達することができず、残りの正転側にスイッチしているスプラグ56で回転トルクを伝達するため、スプラグ56の1本あたりの負荷トルクが大きくなり、過大トルクによりポッピングが発生するという不都合がある。
【0022】
この発明の課題は、ハイブリッド4輪駆動車のアシスト用モータから補助駆動輪へのトルク伝達経路への組込みにおいて、係合ショックやポッピングの発生を防止することができるようにした2方向クラッチおよびハイブリッド4輪駆動車の動力伝達装置を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、この発明に係る2方向クラッチにおいては、外方部材の内周と、その内側に組込まれて相対的に回転自在に支持された内方部材の外周における一方に円筒面を形成し、他方にその円筒面との間で楔形空間を形成するカム面を設け、そのカム面と円筒面との間に係合子を組込み、その係合子を外方部材と内方部材間に組込まれた保持器で保持し、その保持器と前記カム面が形成された側の部材の相互間に、前記保持器を周方向に付勢して係合子を円筒面とカム面の正転用カム面のそれぞれに接触するスタンバイ位置に配置させるスイッチばねを設け、静止部材に固定される電磁石を前記保持器に対して軸方向で対向し、その電磁石の電磁コイルに対する通電によって電磁石に吸着されるアーマチュアを保持器に対して回り止めした構成を採用したのである。
【0024】
また、この発明に係るハイブリッド4輪駆動車の動力伝達装置においては、エンジンによって、駆動される主駆動輪と、モータによって駆動される補助駆動輪とを有し、前記モータから補助駆動輪へのトルク伝達経路に2方向クラッチを組込んだハイブリッド4輪駆動車の動力伝達装置において、前記2方向クラッチとして、この発明に係る前記2方向クラッチを採用したのである。
【0025】
上記の構成から成る2方向クラッチをアシスト用モータによって補助駆動輪を回転させるハイブリッド4輪駆動車への採用に際しては、外方部材と内方部材のうち、カム面が形成された側の部材にアシスト用モータの回転トルクが伝達され、円筒面が形成された側の部材の回転トルクが補助駆動輪に伝達される組込みとする。
【0026】
上記のような2方向クラッチの組込みにおいて、その2方向クラッチの係合子はカム面の正転用カム面と円筒面に接触する位置にスタンバイされているため、モータの駆動によりカム面を有する部材を正転方向に回転させると、係合子が正転用カム面および円筒面に直ちに係合し、その係合子を介してカム面を有する側の部材の回転が円筒面を有する側の部材に伝達され、補助駆動輪が回転される。
【0027】
ここで、正転方向とは、ハイブリッド4輪駆動車を前進させる方向の回転をいう。
【0028】
ハイブリッド4輪駆動車が上り坂を前進で登坂し、その登坂時に4輪駆動車を停止させ、シフトレバーをニュートラルに位置させてブレーキペダルを緩めると、4輪駆動車は自重で後退する場合がある。
【0029】
このとき、2方向クラッチの係合子は正転側にスイッチされているため、補助駆動輪からモータ側に動力が伝達されるが、電磁石の電磁コイルへの通電は遮断されたままの状態にあるので係合子が逆転側にスイッチすることはない。
【0030】
したがって、再びモータで補助駆動輪をアシストし、上り坂を前進で登坂しようとするとき、係合子は正転用カム面と円筒面とに直ちに係合する。このため、係合ショックの発生はなく、モータによって補助駆動輪をスムーズにアシスト駆動することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図1乃至図7に基づいて説明する。図1は、この発明に係る2方向クラッチの第1の実施形態を示す。図示のように、2方向クラッチは、外方部材としての外輪1を有し、その外輪1の外周にはギヤ歯2が形成されている。
【0032】
外輪1の内側には内方部材としての駆動軸3が組込まれている。外輪1と駆動軸3は軸受4によって相対的に回転自在に支持されている。
【0033】
図1、図3および図4(II)に示すように、駆動軸3の外周には円筒面5が形成され、一方、外輪1の内周には環状突出部6が設けられ、その環状突出部6の内周に上記円筒面5との間で楔形空間を形成する複数のカム面7が設けられている。
【0034】
カム面7の周方向中央から一端に至る部分は正転用カム面7aとされ、かつ周方向中央から他端に至る部分は逆転用カム面7bとされている。このカム面7と円筒面5との間にはローラから成る係合子8が組込まれている。
【0035】
外輪1と駆動軸3との間には保持器9が組込まれている。保持器9は外輪1に対して回転自在に支持され、その保持器9の周方向に間隔をおいて形成された複数のポケット10のそれぞれに係合子8が収納されている。
【0036】
図1、図2および図4(I)に示すように、外輪1に形成された環状突出部6の端面にはばね収納凹部11が設けられ、そのばね収納凹部11にスイッチばね12が組込まれている。スイッチばね12は切り離しリング部12aの両端部に一対の係合片12b、12cを内向きに設けた構成とされ、上記切り離しリング部12aは縮径された状態でばね収納凹部11内に嵌合されている。
【0037】
一対の係合片12b、12cは長さが異なり、長さの短い係合片12bはばね収納凹部11の内周壁に形成された切欠部13内に挿入されて、その切欠部13の一端面に係合している。
【0038】
一方、長さの長い係合片12cは上記切欠部13から保持器9の端部に形成された半径方向の挿入孔14に挿入されている。挿入孔14と係合片12cとの間には隙間15が形成され、また、係合片12cと切欠部13の他端面間にも隙間16が設けられている。
【0039】
スイッチばね12の上記のような組付けによって保持器9は周方向の一方に付勢され、その保持器9に保持された係合子8は、図4(II)に示すように、円筒面5とカム面7の正転用カム面7aと接触するスタンバイ位置に配置されている。
【0040】
図1に示すように、外輪1の端部内には電磁石17が設けられている。電磁石17は磁性体から成るコア17aと、そのコア17aによって保持された電磁コイル17bとから成り、前記コア17aはその外径側に設けられた軸受18および内径側に設けられた軸受19によって外輪1および駆動軸3に対して相対的に回転自在に支持されている。また、コア17aは支持板20に支持され、その支持板20が図示省略した静止部材に固定される。このため、電磁石17は固定の支持とされている。
【0041】
電磁石17と保持器9の対向部間にはアーマチュア21と、環状の回り止めプレート22とが組込まれている。回り止めプレート22は外輪1の内側に嵌合され、止め輪23によって抜け止めされている。回り止めプレート22の内周にはL形の係合片24が設けられている。係合片24は保持器9の端部に形成された切欠き25からアーマチュア21に形成された係合孔26に係合されており、上記係合片24と係合孔26の係合によってアーマチュア21は保持器9に対して回り止めされ、かつ軸方向に移動可能とされている。
【0042】
アーマチュア21は電磁石17との間に組込んだ弾性部材27によって電磁石17から離反する方向に付勢されている。
【0043】
第1の実施形態で示す2方向クラッチは上記の構造から成り、その2方向クラッチを図7に示すアシスト用モータ43を有するハイブリッド4輪駆動車に採用する場合は、アシスト用モータ43の回転トルクが外輪1に伝達され、その外輪1から係合子8を介して駆動軸3に伝達される回転によって補助駆動輪としての後輪42が回転される組付けとする。
【0044】
2方向クラッチを組込んだハイブリッド4輪駆動車においては、発進時や加速時の負荷が大きいときにアシスト用モータ43を駆動する。
【0045】
ここで、ハイブリッド4輪駆動車が上り坂を前進で登坂する場合にモータ43を起動すると、そのモータ43の回転は外輪1に伝達されて、外輪1が図2の矢印で示す正転方向に回転する。
【0046】
このとき、2方向クラッチの係合子8は図3に示すように、円筒面5と正転用カム面7aとに接触するスタンバイ位置に配置されているため、外輪1が正転方向に回転されると、係合子8が円筒面5および正転用カム面7aに直ちに係合し、その係合によって外輪1の回転は係合子8を介して駆動軸3に伝達され、その駆動軸3の回転によって後輪42がハイブリッド4輪駆動車を前進させる方向に回転する。
【0047】
モータ43が後輪42をアシスト駆動するハイブリッド4輪駆動車の前進走行状態で車速が上がり、後輪42を駆動する駆動軸3の回転速度がモータ43によって駆動される外輪1の回転速度より速くなると、係合子8は駆動軸3との接触により係合が解除され、2方向クラッチは空転する。
【0048】
このため、後輪42からの回転は2方向クラッチによって遮断され、モータ43側に伝達されるのが防止される。
【0049】
なお、モータ43は2方向クラッチが空転状態に切換わったのちに停止状態とされる。
【0050】
また、モータ43により後輪42をアシスト駆動して上り坂を前進で登坂するハイブリッド4輪駆動車の走行状態において、ブレーキペダルの踏み込みにより4輪駆動車を停車させ、シフトレバーをニュートラルにし、ブレーキペダルを緩めると、4輪駆動車は自重で後退する。
【0051】
このとき、2方向クラッチの係合子8は円筒面5および正転用カム面7aに係合しているため、後輪42からの駆動力は駆動軸3および係合子8を介して外輪1に伝達され、モータ側に伝達されることになるが、係合子8はスイッチばね12により正転側のスタンバイ位置に保持されて逆転側にスイッチすることはない。
【0052】
このため、モータ43を再び駆動して後輪42をアシスト駆動し、上り坂を前進で登坂すると、係合子8は正転側にスタンバイされたままであるため、係合子8は円筒面5および正転用カム面7aに直ちに係合する。このため、その係合時のショックはきわめて小さく、モータ43によって後輪42をスムーズにアシスト駆動することができる。
【0053】
ここで、ハイブリッド4輪駆動車が上り坂を後退によって登坂する場合には電磁石17の電磁コイル17bに通電すると共に、モータ43を逆転させる。
【0054】
電磁コイル17bに通電すると、アーマチュア21はコア17aに吸着されて停止状態に保持される。その、アーマチュア21は保持器9に対して回り止めされているため、保持器9も停止状態に保持され、その状態でモータ43が逆転側に回転し、その回転が外輪1に伝達されると、外輪1はスイッチばね12の弾性に抗して保持器9に対して相対回転する。
【0055】
外輪1と保持器9の相対回転によって、係合子8は図5(II)に示すように逆転用カム面7bと円筒面5に係合する逆転側にスイッチし、外輪1の回転は係合子8を介して駆動軸3に伝達され、後輪42がハイブリッド4輪駆動車を後退させる方向に回転する。
【0056】
なお、電磁石17がアーマチュア21を吸着したとき、アーマチュア21とコア17aとの接触部に作用する摩擦力がスイッチばね12の弾性力より小さい場合、係合子8を逆転側にスイッチさせることができないため、上記摩擦力はスイッチばね12の弾性力より大きくしておく。換言すれば、スイッチばね12の弾性力は摩擦力より小さい値に設定しておくようにする。
【0057】
このように、2方向クラッチの係合子8はスイッチばね12によって正転用カム面7aと円筒面5に接触するスタンバイ位置に配置され、電磁石17の電磁コイル17bに通電してモータ43を逆回転させなければ係合子8を逆転側にスイッチさせることができないため、ハイブリッド4輪駆動車が上り坂で自重で後退し、その後、モータ43の再起動により前進で登坂しようとする場合に2方向クラッチに係合ショックやポッピングが発生するのを防止することができ、モータ43によって後輪42をスムーズに駆動することができる。
【0058】
図6は、この発明に係る2方向クラッチの第2の実施形態を示す。この実施形態では、外輪1の内周に円筒面28を形成し、駆動軸3の大径軸部3aの外周面に上記円筒面28との間で楔形空間を形成する平坦なカム面29を設け、かつ、大径軸部3aの端面にスイッチばね30を収容するばね収納凹部31を形成し、そのばね収納凹部31の外周壁にスイッチばね30に設けられた一対の係合片30a、30bを挿入する切欠部32を形成している点で第1の実施形態で示す2方向クラッチと相違している。
【0059】
このため、第1の実施形態で示す2方向クラッチと同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
第2の実施形態で示す2方向クラッチにおいて、カム面29の周方向中央から一端側の部分は正転用カム面29aとされ、他端側の部分は逆転用カム面29bとされ、係合子8は上記正転用カム面29aと円筒面28とに接触するスタンバイ位置に配置されている。
【0061】
上記の構成から成る2方向クラッチを図7に示すハイブリッド4輪駆動車に採用する場合、アシスト用モータ43によって駆動軸3が駆動され、外輪1の回転が補助駆動輪としての後輪42に伝達される組込みとする。
【0062】
上記第2の実施形態で示す2方向クラッチにおいても係合ショックやポッピングの発生を防止することができる。
【0063】
なお、実施の形態では、この発明に係る2方向クラッチをハイブリッド4輪駆動車に適用した場合を例にとって説明したが、適用例はこれに限定されるものではない。例えば、特開2002−195307号公報に記載される無段変速機の副動力伝達経路内にも適用することができる。
【0064】
また、第1の実施形態および第2の実施形態では係合子8としてローラを示したが、係合子8はローラに限定されるものではない。例えば、スプラグを係合子としてもよい。
【0065】
【発明の効果】
以上のように、この発明に係る2方向クラッチにおいては、スイッチばねにより保持器を周方向の一方に付勢し、その保持器に保持された係合子を正転側のスタンバイ位置に配置させるようにしたので、ハイブリッド4輪駆動車への採用において、上り坂で停止させたハイブリッド4輪駆動車が自重で後退し、その後、アシスト用モータを再起動して上り坂を前進で登坂しようとしたときに、2方向クラッチに係合ショックやポッピングが発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る2方向クラッチの第1の実施形態を示す縦断正面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】図1のIII −III 線に沿った断面図
【図4】(I)は図2の一部を拡大して示す断面図、(II)は図3の一部を拡大して示す断面図
【図5】(I)は図1に示す保持器を回り止めして外輪を逆方向に回転させたときのばねの変形状態を示す断面図、(II)は係合子を逆転側にスイッチさせた状態の断面図
【図6】この発明に係る2方向クラッチの第2の実施形態を示す断面図
【図7】ハイブリッド4輪駆動車の概略図
【図8】従来の2方向クラッチを示す縦断正面図
【図9】(I)は図8に示すスプラグを正転側にスイッチさせた状態の断面図、(II)はスプラグを逆転側にスイッチさせた状態の断面図
【符号の説明】
1 外輪(外方部材)
3 駆動軸(内方部材)
5 円筒面
7 カム面
7a 正転用カム面
8 係合子
9 保持器
12 スイッチばね
17 電磁石
17b 電磁コイル
21 アーマチュア
28 円筒面
29 カム面
29a 正転用カム面
30 スイッチばね
40 前輪(主駆動輪)
41 エンジン
42 後輪(補助駆動輪)
43 モータ
Claims (2)
- 外方部材の内周と、その内側に組込まれて相対的に回転自在に支持された内方部材の外周における一方に円筒面を形成し、他方にその円筒面との間で楔形空間を形成するカム面を設け、そのカム面と円筒面との間に係合子を組込み、その係合子を外方部材と内方部材間に組込まれた保持器で保持し、その保持器と前記カム面が形成された側の部材の相互間に、前記保持器を周方向に付勢して係合子を円筒面とカム面の正転用カム面のそれぞれに接触するスタンバイ位置に配置させるスイッチばねを設け、静止部材に固定される電磁石を前記保持器に対して軸方向で対向し、その電磁石の電磁コイルに対する通電によって電磁石に吸着されるアーマチュアを保持器に対して回り止めし、かつ軸方向に移動自在に支持した2方向クラッチ。
- エンジンによって駆動される主駆動輪と、モータによって駆動される補助駆動輪とを有し、前記モータから補助駆動輪へのトルク伝達経路に2方向クラッチを組込んだハイブリッド4輪駆動車の動力伝達装置において、前記2方向クラッチが外方部材の内周と、その内側に組込まれて相対的に回転自在に支持された内方部材の外周における一方に円筒面を形成し、他方にその円筒面との間で楔形空間を形成するカム面を設け、そのカム面と円筒面との間に係合子を組込み、その係合子を外方部材と内方部材間に組込まれた保持器で保持し、その保持器と前記カム面が形成された側の部材の相互間に、前記保持器を周方向に付勢して係合子を円筒面とカム面の正転用カム面のそれぞれに接触するスタンバイ位置に配置させるスイッチばねを設け、静止部材に固定される電磁石を前記保持器に対して軸方向で対向し、その電磁石の電磁コイルに対する通電によって電磁石に吸着されるアーマチュアを保持器に対して回り止めし、かつ軸方向に移動自在に支持した構成から成ることを特徴とするハイブリッド4輪駆動車の動力伝達装置。
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003112687A Pending JP2004316802A (ja) | 2003-04-17 | 2003-04-17 | 2方向クラッチおよびハイブリッド4輪駆動車の動力伝達装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004316802A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006290132A (ja) * | 2005-04-08 | 2006-10-26 | Gkn ドライブライン トルクテクノロジー株式会社 | 駆動装置 |
JP2012106560A (ja) * | 2010-11-16 | 2012-06-07 | Jtekt Corp | 電動パワーステアリング装置 |
JP2013174345A (ja) * | 2012-01-25 | 2013-09-05 | Ntn Corp | 回転伝達装置 |
-
2003
- 2003-04-17 JP JP2003112687A patent/JP2004316802A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006290132A (ja) * | 2005-04-08 | 2006-10-26 | Gkn ドライブライン トルクテクノロジー株式会社 | 駆動装置 |
JP2012106560A (ja) * | 2010-11-16 | 2012-06-07 | Jtekt Corp | 電動パワーステアリング装置 |
JP2013174345A (ja) * | 2012-01-25 | 2013-09-05 | Ntn Corp | 回転伝達装置 |
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