JP2004316498A - 内燃機関の失火検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、内燃機関の失火を検出することができる技術を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気通路に配置されたセンサ素子48aにより空燃比を検出する空燃比センサ48に、排気中の未燃燃料を酸化させる触媒層48cを、センサ素子48aに近接して設ける。そして、失火発生時に、排気中で増加する未燃燃料が触媒層48cで酸化する際に発生する熱を、センサ素子48aを介して検出することにより失火を判定する。
【選択図】 図2
【解決手段】内燃機関の排気通路に配置されたセンサ素子48aにより空燃比を検出する空燃比センサ48に、排気中の未燃燃料を酸化させる触媒層48cを、センサ素子48aに近接して設ける。そして、失火発生時に、排気中で増加する未燃燃料が触媒層48cで酸化する際に発生する熱を、センサ素子48aを介して検出することにより失火を判定する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関に失火が発生したことを検出する失火検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関においては、混合気の混合比が適切でなかったり、供給された燃料の着火性が適切でないなどの理由により、混合気が燃焼室内で完全燃焼しない「失火」が発生することがある。この失火が発生すると機関回転速度が低下するばかりでなく、燃焼室から大気中に不完全燃焼ガスが放出される。また、排気ガス浄化用の触媒に未燃の燃料が直接供給されることにより、これを劣化させる原因にもなる。
【0003】
そのため、内燃機関を稼動させる際には、失火が発生しないように燃焼室内の混合気の混合比や圧縮比、点火タイミングなどを電子制御装置(ECU)により制御することが一般的に行われている。それに加えて、内燃機関の稼動中に失火発生の有無を監視し、その発生が一定の基準値を超えた場合に失火検出を運転者に報知することが行われている。
【0004】
この報知によりその車両の運転者に、内燃機関の燃焼状態が正常ではないことを認識させ、必要に応じて点検や修理等のサービスを早期に受けてもらうように促す。
【0005】
失火発生の有無を監視する方法としては、空燃比センサが検出した機関の空燃比が、リーン側に設定した失火判定値より更にリーンであれば、失火が発生したと判定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかし、上記従来技術においては、失火判定時の空燃比がリッチの場合に、失火によるリーンずれが生じても失火判定値を超えず、失火判定が不能となる場合がある。また、このような装置では空燃比センサを加熱するためのセンサヒータを備えることが多いが、このセンサヒータでの加熱で未燃燃料が酸化すると、未燃燃料がそこで消費されるため、リーンずれが発生せず失火判定が不能となる場合がある。
【0007】
さらに、内燃機関において空燃比センサの出力に基づく空燃比フィードバック制御を行っている場合、上記従来技術では、失火によって空燃比センサにリーンずれが生じるため、その空燃比センサの出力を用いて空燃比フィードバック制御を正しく行えなくなる場合がある。
【0008】
なお、上記以外の従来技術として、以下の特許文献2から6に示すものが例示できる。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−289111号公報
【特許文献2】
特開平4−98155号公報
【特許文献3】
実開昭63−22358号公報
【特許文献4】
特開平3−182670号公報
【特許文献5】
特開平9−189679号公報
【特許文献6】
特開平4−22858号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的とするところは、内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、内燃機関の失火を検出することができる技術を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、内燃機関の排気通路に配置されたセンサ素子により空燃比を検出する空燃比検出手段に、排気中の未燃燃料を酸化させる未燃燃料酸化手段を、センサ素子に近接して設けることに特徴がある。そして、失火発生時に、排気中で増加する未燃燃料が未燃燃料酸化手段で酸化する際に発生する熱を、センサ素子を介して検出することにより失火を判定するものである。
【0012】
より詳しくは、本発明は、内燃機関の排気通路内にセンサ素子を有する空燃比検出手段と、前記センサ素子に近接して未燃燃料を酸化させる未燃燃料酸化手段と、前記センサ素子の温度を検出する温度検出手段と、前記センサ素子の温度が所定温度を超えると失火と判定する失火判定手段と、を備える。
【0013】
すなわち、失火発生時には、内燃機関で燃焼されずに排気通路を通過する未燃燃料が増加する。この未燃燃料が、空燃比検出手段のセンサ素子に近接した未燃燃料酸化手段で酸化されると、これにより熱が発生するので、この熱で加熱されたセンサ素子の温度を温度検出手段で検出する。そして、この温度が所定温度を超える場合に失火と判定する。
【0014】
これによれば、失火発生時に、排気中で増加した未燃燃料の酸化による発熱を、センサ素子を介して検出することで失火を検出するので、そのときの内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。
【0015】
また、これによれば、未燃燃料が未燃燃料酸化手段で酸化されることにより消費されるので、失火発生時にセンサ素子のリーンずれを防止することができる。よって従来のように、失火発生時に、空燃比フィードバック制御に悪影響を与えることがない。
【0016】
なお、本発明においては、失火の発生とセンサ素子の温度との関係を予め実験的に調査しておき、失火が発生したと判断されるセンサ素子の温度を、所定温度として特定している。
【0017】
また、本発明においては、温度検出手段は、センサ素子のインピーダンスの値を検出し、その値からセンサ素子の温度を検出するようにしてもよい。
【0018】
すなわち、センサ素子の温度が上昇すると、センサ素子のインピーダンスが減少するという知見に基づいて、温度検出手段は、センサ素子のインピーダンスを検出することによりセンサ素子の温度を検出する。これにより、簡易な構成によってセンサ素子の温度を検出することができる。
【0019】
また、本発明において、温度自体を検出するのではなく、温度変化検出手段により前記センサ素子の温度変化を検出し、前記センサ素子の温度変化が所定値を超えると、失火判定手段により失火と判定されるようにしてもよい。これは、失火発生時に増加した未燃燃料を、未燃燃料酸化手段で酸化させるときに発生する熱により、センサ素子は急激に加熱されるので、失火発生時には、センサ素子の温度変化が急激に大きくなることを利用したものである。
【0020】
これによれば、センサ素子の温度自体を検出する場合のように、センサ素子の温度を正確に検出するため、センサ素子や、未燃燃料酸化手段のばらつきを考慮した零点調整をする必要もない。よって、より簡単に失火の検出を行うことができる。
【0021】
なお、センサ素子の温度変化は、センサ素子のインピーダンスの変化として検出するようにしてもよい。これにより、簡易な構成により、センサ素子の温度変化を検出することができる。
【0022】
また、本発明において、内燃機関の失火の発生によりその出力が影響を受ける空燃比検出手段と、内燃機関の失火の発生によってもその出力が影響を受けない空燃比検出手段とを備えると、両方の出力に差が現れたことをもって失火を検出することができる。
【0023】
より詳しくは、第1のセンサ素子を有する第1の空燃比検出手段には、第1のセンサ素子に近接して未燃燃料酸化手段を設け、第2のセンサ素子を有する第2の空燃比検出手段には、このような未燃燃料酸化手段は設けない。これにより、上記した内燃機関の失火の発生によりその出力が影響を受ける空燃比検出手段と内燃機関の失火の発生によってもその出力が影響を受けない空燃比検出手段とが構成される。
【0024】
ここで、第1の空燃比検出手段には、未燃燃料酸化手段が設けられているため、失火発生時に排気中の未燃燃料が増加しても、未燃燃料酸化手段で未燃燃料が酸化して消費されるために、第1のセンサ素子においては、いわゆるリーンずれが発生しない。一方、第2のセンサ素子においては、失火発生時には、いわゆるリーンずれが発生する。
【0025】
よって、失火発生時には、第1のセンサ素子と、第2のセンサ素子の出力には差が生じるので、第1及び第2のセンサ素子の出力信号の差が所定値を超えたことをもって失火判定手段は失火と判定する。
【0026】
これによれば、失火発生時に、2つのセンサ素子の出力信号のリーンずれの有無による差を検出するので、そのときの内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。
【0027】
また、これによれば、第1及び第2のセンサ素子の出力信号は、失火によるリーンずれが発生するかどうか以外は、等しい条件による出力信号であるので、第1及び第2のセンサ素子の出力信号の差をとることにより、その他の誤差要因を相殺することができ、精度よく失火の検出を行うことができる。
【0028】
また、本発明においては、未燃燃料酸化手段として、センサ素子に設けられた触媒層を用いるようにするとよい。これによれば、もともと小さな体積を有する空燃比検出手段のセンサ素子に対して厚みの薄い触媒層を設けるので、事実上、未燃燃料酸化手段の体積は充分小さいものになる。
【0029】
よって、同じ量の未燃燃料が排気通路を通過した場合でも、内燃機関の排気通路に備えられた排気浄化触媒など、大きな体積を有する触媒で未燃燃料を酸化する場合に比較して、未燃燃料を感度よく酸化させることができる。従って、センサ素子の温度も感度よく上昇させることができ、感度よく失火を検出することができる。
【0030】
また、本発明における別の形態として、第1のセンサ素子を有する第1の空燃比検出手段と、第2のセンサ素子を有する第2の空燃比検出手段が設けられ、温度制御手段によってそれぞれのセンサ素子まわりの温度を相違するように制御するものを挙げることができる。
【0031】
ここで、失火発生時に排気中で増加する未燃燃料は、センサ素子まわりの温度が高温であるほど酸化され易い。よって、センサ素子まわりの温度が高いほど、そのセンサ素子で発生するいわゆるリーンずれの程度も軽減される。すなわち、より高温に制御されたセンサ素子と、そうでないセンサ素子では、リーンずれの程度が異なるため、それらの出力には差が生じる。そして、その差は、排気中に存在する未燃燃料が多いほど大きくなる。
【0032】
従って、第1及び第2の空燃比検出手段のセンサ素子まわりの温度が相違するように制御した場合、第1及び第2の空燃比検出手段のセンサ素子の出力信号差が大きいほど、排気中の未燃燃料及び酸素が多いと判断することができる。これを利用して、失火判定手段が、それぞれのセンサ素子の出力信号差が所定値を超えることをもって失火と判断するのである。
【0033】
これによれば、失火発生時に、2つのセンサ素子で生じるリーンずれの程度の差による双方の空燃比センサの出力信号の差を検出するので、そのときの内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。また、これによれば、第1及び第2のセンサ素子の出力信号の差をとるので、種々の誤差要因を相殺することができ、精度よく失火の検出を行うことができる。
【0034】
なお、ここで、双方のセンサ素子を良好に活性化させることができ、良好に空燃比検出を行うことが可能であるという条件を満たし、かつ、失火検出のための温度差を充分にとるために、一方のセンサ素子の温度を約750℃、他方のセンサ素子の温度を約950℃と設定するとよい。
【0035】
また、本発明においては、失火判定のための前提として、第1のセンサ素子を有する第1の空燃比検出手段と、第2のセンサ素子を有する第2の空燃比検出手段と、第1及び第2のセンサ素子への印加電圧を制御する印加電圧制御手段と、を備える形態をとることもできる。
【0036】
ここで、印加電圧制御手段は、第1のセンサ素子へは、センサ素子において水が電気分解される電圧より高い電圧を印加し、第2のセンサ素子へは、センサ素子において水が電気分解される電圧より低い電圧を印加する。そして、失火判定手段は、この時の、前記第1及び第2のセンサ素子の出力信号の差が所定値以下になった場合に失火と判定する。
【0037】
すなわち、内燃機関において燃料が正常に燃焼すると、水が発生し、排気中には所定量の水分が存在する。しかし、失火が発生した場合には、燃料が正常に燃焼しないために排気中に存在する水分の量が減少する。一方、センサ素子への印加電圧を所定値以上とすることにより、そのセンサ素子では、水の電気分解が起こり、センサ素子の出力信号に、水を電気分解することによる出力信号も加えられることが分かっている。
【0038】
よって、失火が発生していないときには、水が電気分解される電圧より高い電圧を印加した第1のセンサ素子と、水が電気分解される電圧より低い電圧を印加した第2のセンサ素子との出力信号の差には、排気中の水分を第1のセンサ素子で電気分解したことによる出力信号が含まれている。
【0039】
一方、失火発生時には、排気中の水分が減少するため、双方のセンサ素子の出力信号の差のうち、排気中の水分を電気分解したことによる差が減少する。従って、双方のセンサ素子の出力信号の差が所定値以下となったときには、失火が発生したと判断できる。本発明は、以上の原理を利用して失火を検出するものである。
【0040】
これによれば、失火発生時に、2つのセンサ素子における水の電気分解の有無による出力信号の差を検出するので、そのときの内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。また、第1及び第2のセンサ素子の出力信号の差をとっているので、種々の誤差要因の相殺により、精度よく内燃機関の失火を検出することができる。
【0041】
また、本発明においては、センサ素子を加熱する加熱手段を有するようにするとよい。これにより、内燃機関の始動時など冷間時でも、センサ素子を早期に活性化させ、失火検出を早期に開始することができる。また、空燃比検出手段が未燃燃料酸化手段を備える場合には、未燃燃料酸化手段を早期に活性化させることができ、失火検出を早期に開始することができる。
【0042】
なお、上記で説明した課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて使用することができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0044】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る内燃機関とその吸排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、4つの気筒21を備えた4ストローク・サイクルの水冷式ガソリンエンジンである。各気筒21の吸気ポート26に吸気枝管33が接続され、各気筒21の排気ポート27に排気枝管45が接続されている。
【0045】
この排気枝管45は、1本の集合管に合流した後、排気通路47に接続される。この排気通路47には、排気通路47内を流れる排気の酸素量に対応した電気信号を出力する空燃比センサ48が取り付けられている。そして、排気通路47は、さらに下流側において排気浄化触媒46に接続されており、排気浄化触媒46のさらに下流側において図示しないマフラーと接続されている。
【0046】
また、内燃機関1には、機関制御用の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)20が併設されている。ECU20は、双方向性バスによって相互に接続された、CPU、ROM、RAM、入力インタフェース回路、出力インタフェース回路等から構成されている。
【0047】
前記ECU20には、空燃比センサ48が信号検出回路51を介して接続されている他、機関の制御に関る各種のセンサが電気配線によって接続され、各センサの出力信号がECU20に入力されるようになっている。また、ECU20には、空燃比センサ48を制御するためのコントロール回路50が電気配線によって接続され、ECU20の指令によって空燃比センサ48が制御されるようになっている。
【0048】
図2は、本実施の形態における空燃比センサ48及びその制御系の概略構成を示す断面図である。図2においては、空燃比センサ48と、そのコントロール回路50、信号検出回路51及びECU20を含んで空燃比検出手段が構成されている。
【0049】
空燃比センサ48には、排気中の酸素量に対応した信号を出力するセンサ素子48aが備えられており、そのセンサ素子48aには、センサ素子48aを加熱する加熱手段であるセンサヒータ48bが隣接している。センサ素子48aは、このセンサヒータ48bによって約750℃まで加熱されることにより活性化し、排気の酸素量検出が可能な状態になる。
【0050】
また、センサ素子48aの、センサヒータ48bが隣接している面と反対側の面には未燃燃料酸化手段としての触媒層48cが形成されている。さらに、センサ素子48a、センサヒータ48b、触媒層48cの外側には、排気ガスが流入するための小孔が設けられた内カバー48d及び外カバー48eが設けられている。
【0051】
これらの内カバー48d及び外カバー48eは、二重構造をとることによりセンサ素子48aなどの保護を強化している。そして、この空燃比センサ48は、排気通路47に、直接排気に触れるように取り付けられており、排気が、外カバー48e及び内カバー48dの小孔を通過してセンサ素子48aに達するようになっている。
【0052】
次に、コントロール回路50は、センサ素子48a及びセンサヒータ48bと電気的に接続されており、センサ素子48aに対して、空燃比を検出するための電圧を印加するとともに、センサヒータ48bに対しては、センサ素子48aを約750℃にまで加熱するための電流を供給している。
【0053】
また、信号検出回路51は、センサ素子48aからの出力電流を検出して電圧に変換し、空燃比信号としてECU20に入力する。なお、信号検出回路51は、センサ素子48aのインピーダンスを検出するインピーダンス検出回路を含んでいる。この検出回路としては、特開2000−28575号公報に記載の技術などを利用することができる。
【0054】
ここで、コントロール回路50によってセンサ素子48aの電極間に印加されている電圧は約0.4Vである。この場合には、センサ素子48aからは、センサ素子48aに達した排気の酸素量にほぼ比例した出力電流が得られる。
【0055】
次に、内燃機関1において発生した失火を検出する時の空燃比センサ48の作用について説明する。内燃機関1において失火が発生した場合には、内燃機関1の気筒21で燃料が燃焼されずに排出されるため、排気中の未燃燃料が増加する。その未燃燃料は、図2の矢印に示すように、空燃比センサ48の触媒層48cに到達する。ここで、未燃燃料は酸化され、消費されるとともに、その反応熱によって触媒層48cの温度を上昇させる。
【0056】
そして、上記の触媒層48cの温度が上昇すると、触媒層48cに隣接したセンサ素子48aの温度も上昇する。ここで、センサ素子48aの温度が上昇すると、そのインピーダンスが低下することが理論的に分かっている。従って、センサ素子48aのインピーダンスを信号検出回路51内のインピーダンス検出回路によって検出することにより、失火によって排気中の未燃燃料が増加したことを検出することができる。
【0057】
ここで、触媒層48cは、その温度上昇による熱を効率よくセンサ素子48aに伝えるため、センサ素子48aにできるだけ接近させるのがよい。本実施の形態では、センサ素子48aに直接触媒層48cを設けることによって、触媒層48cの温度上昇をセンサ素子48aに伝え易くしている。
【0058】
図3には、本実施の形態における失火検出ルーチンについてのフローチャートを示す。本ルーチンはECU20内のROMに記憶されたもので、内燃機関1の運転中、少なくとも内燃機関1の気筒21における点火間隔よりも充分に短い所定時間毎に実行される。
【0059】
本ルーチンに入ると、まず、S301において、信号検出回路51内のインピーダンス検出回路の信号をECU20内のRAMに読み込むことによって、空燃比センサ48のセンサ素子48aのインピーダンスRが検出される。ここで得られたインピーダンスRの値は、ECU20内のRAMにRとして記憶される。また、このとき既にRAMにRとして記憶されていた値は、本ルーチンの前回の実行時のインピーダンスR’として記憶され直す。
【0060】
そして、S302において、S301で検出されたインピーダンスRが所定値Krより大きいかどうかが判断される。ここでインピーダンスRが所定値Krより大きいと判断された場合には、触媒層48cの温度は未燃燃料の酸化により上昇していない、すなわち失火は発生していないと判断されるのでS305に進む。S305における処理については後述する。
【0061】
一方、S302において、インピーダンスRが所定値Kr以下と判断された場合には失火が発生したと判断されるので、S303に進む。
【0062】
なお、S302において、センサ素子48aのインピーダンスRと比較される所定値Krは、失火が発生したときに排気中で増大する未燃燃料が、触媒層48cで酸化された際の、センサ素子48aの温度上昇及び、センサ素子48aの温度とインピーダンスRの関係とから、失火が発生したと判断されるセンサ素子48aのインピーダンスRの閾値として、予め実験的に求めた値である。
【0063】
次に、S303においては、前回に本ルーチンを実行したときのセンサ素子48aのインピーダンスR’の値がKrより大きかったかどうかを判断する。ここにおいて、R’の値はECU20内のRAMに記憶されたR’の値を読み出すことによって得られる。
【0064】
ここで、前回の実行時のR’がKr以下であったと判断された場合は、今回センサ素子48aのインピーダンスRが所定値Kr以下であるのは、前回の本ルーチン実行時の失火が原因であり、新たに発生した失火が原因ではないと判断されるので、そのままS305に進む。S305における処理については後述する。
【0065】
一方、S303において前回の実行時のR’がKrより大きかったと判断された場合には、今回の実行においてセンサ素子48aのインピーダンスRが所定値Kr以下であるのは、新たに発生した失火が原因であると判断され、S304に進む。
【0066】
次に、S304において、失火回数をカウントする。すなわち、ECU20に設けられたRAM内の失火カウンタに記憶された、所定期間に発生した失火の回数の値に1を加える処理を行うことにより、失火回数を増加させて記憶する。ここで、上記の所定期間が経過すると、失火カウンタの値をリセットして、再度0から失火回数がカウントされるフローとなっているが、詳細な説明は省略する。
【0067】
次に、S305に進み、S304でカウントされた所定期間における失火回数を当該所定期間中の内燃機関1の気筒21における点火回数で除すことにより、当該期間中の失火率を算出する。S305での処理が終了すると、次にS306に進む。
【0068】
そして、S306において、S305で算出された失火率が所定値より大きいかどうかが判断される。ここで、失火率が所定値より大きいと判断された場合には、内燃機関1に異常が発生したと判断され、S307に進み、アラームをセットし、運転者に報知した後、本ルーチンを終了する。一方、S305において失火率が所定の値以下であると判断された場合にはS307に進み、アラームをリセットしたのち本ルーチンを終了する。
【0069】
なお、本実施の形態においては、信号検出回路51に設けられたインピーダンス検出回路及びECU20を含めて、温度検出手段を構成する。また、失火検出ルーチンを記憶したROMを有するECU20を含めて失火判定手段を構成する。
【0070】
上記したような本実施の形態によれば、空燃比検出手段を構成する空燃比センサ48は、内燃機関1で失火が生じたときに、失火によって発生する未燃燃料を酸化させる未燃燃料酸化手段である触媒層48c備えている。そして、触媒層48cにおける未燃燃料の酸化によって熱が発生し、その熱によりセンサ素子48aの温度が上昇したことを検出することにより、失火検出を行っている。従って、そのときの内燃機関1の空燃比がリッチかリーンかに関わることなく、失火の検出を行うことができる。
【0071】
また、本発明においては、失火によって排気中の未燃燃料が増加したときにも、未燃燃料が、触媒層48cで酸化されることにより消費される。従って、失火によってセンサ素子48aのリーンずれを起こすことがなく、失火が発生しても空燃比フィードバック制御に悪影響を与えることがない。
【0072】
さらに、本実施の形態によれば、センサ素子48aの温度上昇をセンサ素子48aのインピーダンスRによって検出しているので、簡易な構成により、失火判定が可能となる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、未燃燃料酸化手段として、センサ素子48aに設けられた触媒層48cを用いている。従って、未燃燃料が触媒層48cで酸化されることによる熱を、センサ素子48cに効率よく伝えることができる。従って、センサ素子48aの温度を感度よく上昇させることができ、感度よく失火を検出することができる。
【0074】
また、センサ素子48aは、もともと小さな体積を有しているので、これに対して厚みの薄い触媒層48cを設けた場合、事実上、未燃燃料酸化手段としての触媒層48cの体積は、排気通路47に備えられた排気浄化触媒46に用いられている触媒の体積に比較すると、充分小さいものになる。
【0075】
よって、同じ量の未燃燃料が排気通路47を通過した場合でも、排気浄化触媒46など、大きな体積を有する触媒で未燃燃料を酸化する場合に比較して、未燃燃料を感度よく酸化させることができる。このことによっても、センサ素子48aの温度も感度よく上昇させることができ、感度よく失火を検出することができる。
【0076】
また、本実施の形態においては、空燃比センサ48には、センサ素子48aを加熱する加熱手段であるセンサヒータ48bを設けているので、内燃機関1の始動時など冷間時でも、センサ素子48aを早期に活性化させ、失火検出を早期に開始することができると同時に、触媒層48cを早期に活性化させることができる。よって、失火検出を早期に開始することができる。
【0077】
なお、本実施の形態においては、未燃燃料酸化手段として、センサ素子48aに設けられた触媒層48cを用いたが、例えば、センサ素子48aの上流側近傍に設けた塊状の触媒を用いるなど、触媒層48c以外の未燃燃料酸化手段を用いてもよい。
【0078】
また、本実施の形態においては、センサ素子48aの温度を、そのインピーダンスRにより検出したが、別途温度センサを備えてセンサ素子48aの温度自体を直接検出するなど、他の方法により検出してもよい。
【0079】
さらに、本実施の形態においては、センサ素子48aを加熱する加熱手段としてのセンサヒータ48bを備えた例について説明したが、センサ素子48aの特性によっては、加熱手段を備えない構成としてもよい。
【0080】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。ここでは、前述の第1の実施の形態と異なる構成について説明する。その他の構成および作用については第1の実施の形態と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0081】
本実施の形態においては、失火によるセンサ素子48aの温度上昇を検出するときに、センサ素子48aのインピーダンスRを検出してセンサ素子48aの温度自体を検出するのではなく、センサ素子48aのインピーダンス変化量ΔRを検出してセンサ素子48a温度変化を検出する例について説明する。
【0082】
なお、本実施の形態における信号検出回路51には、センサ素子48aのインピーダンス検出回路及び、微分回路が備えられている。
【0083】
図4には、本実施の形態における失火の発生と、インピーダンスR及びインピーダンス変化量ΔRとの関係及びそれに伴う失火回数カウンタの状況を示すグラフを示す。図4において、内燃機関1で失火が発生した場合には、気筒21内での燃焼が完全に行われないので、排気中の未燃燃料が増加する。その未燃燃料が空燃比センサ48に到達して触媒層48cで酸化することにより、センサ素子48aの温度が上昇し、同時にそのインピーダンスRが減少する。
【0084】
すなわち、図4のグラフ▲1▼においては、失火の影響は、失火から若干の遅れをもって、センサ素子48aのインピーダンスRが減少することに現れる。そして、触媒層48cにおける未燃燃料の酸化が終了すると、センサ素子48aの温度は下がり、それに伴ってインピーダンスも増加する。
【0085】
図4の▲2▼には失火にともなうセンサ素子48aのインピーダンス変化量ΔRを表したグラフを示す。グラフ▲1▼に表したインピーダンスRを信号検出回路51の微分回路によって電気回路的に微分することによってグラフ▲2▼を得ることができる。そして、このセンサ素子48aのインピーダンス変化量ΔRが所定値Kdrより大きくなったときに、失火が発生したと判断し、グラフ▲3▼に示すように失火回数カウンタを加算することとしている。
【0086】
上記のように、本実施の形態は、失火発生時には、排気中で増加した未燃燃料が、触媒層48cで酸化されるときに発生する熱により、センサ素子48aが急激に加熱され、その温度変化が急激に大きくなることを利用したものである。これによれば、センサ素子48aの温度自体は検出せず、センサ素子48aの温度が急激に変化したことのみを検出するので、センサ素子48aや、触媒層48cのばらつきを考慮した零点調整なども必要としない。
【0087】
図5は、本実施の形態における失火検出ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、ECU20内のROMに記憶されたもので、内燃機関1の運転中、少なくとも内燃機関1の気筒21における点火間隔より充分に短い所定時間毎に実施される。
【0088】
本ルーチンが実施されると、まずS501において、空燃比センサ48の信号検出回路51内のインピーダンス検出回路によって、センサ素子48aのインピーダンスRが検出される。
【0089】
そして、S502において、センサ素子48aのインピーダンスRの値を微分回路により電気回路的に微分してインピーダンス変化量ΔRの値を検出する。ここで得られたインピーダンス変化量ΔRの値は、ECU20内のRAMにΔRとして記憶される。また、このとき既にRAMにΔRとして記憶されていた値は、本ルーチンの前回の実行時のインピーダンス変化量ΔR’として記憶され直す。
【0090】
なお、本実施の形態においては、前述のように、センサ素子48aのインピーダンスRの値を電気回路的に微分してインピーダンス変化量ΔRを検出しているが、ECU20内部において、センサ素子48aの信号検出回路51のインピーダンス検出回路の出力を演算することによって、インピーダンス変化量ΔRに変換する方法をとってもよい。
【0091】
S502の処理が終わると、次にS503に進み、S502で検出したインピーダンス変化量ΔRの値が所定値Kdrの値より大きいかどうかが判断される。ここで、インピーダンス変化量ΔRの値がKdr以下であれば、失火は発生していないと判断され、そのままS506に進む。また、インピーダンス変化量ΔRの値がKdrより大きい場合には、失火が発生していると判断され、S504に進む。
【0092】
ここで、Kdrの値は、予め、失火の発生と、センサ素子48aのインピーダンス変化量ΔRとの関係を調査することにより、失火が発生したと判断できる閾値として実験的に求めた値である。
【0093】
そして、S504においては、前回の本ルーチンの実行時のインピーダンス変化量ΔR’の値が、Kdrより大きかったかどうかが判断される。ここにおいて、ΔR’の値は、ECU20のRAMに記憶されたΔR’を読み出すことによって得られる。
【0094】
ここで、前回の本ルーチンの実行時のインピーダンス変化量ΔR’の値が、Kdrより大きかった場合には、今回の実行において、インピーダンス変化量ΔRがKdrより大きいのは、前回の本ルーチン実行時の失火が原因であり、新たに発生した失火が原因ではないと判断できるので、そのままS506に進む。
【0095】
一方、S504において前回の本ルーチン実行時のΔR’がKdr以下であった場合には、今回のインピーダンス変化量ΔRがKdrより大きいのは、新たな失火発生が原因であると判断されるので、S505に進む。以下、本ルーチンにおけるS505からS509までの処理は、失火数カウント、失火率の算出の後、運転者に報知する処理であるが、図3に示す、第1の実施の形態における失火検出ルーチンのS304からS308の処理と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0096】
なお、本実施の形態においては、信号検出回路51のインピーダンス検出回路、微分回路、及びECU20を含めて温度変化検出手段を構成している。
【0097】
本実施の形態によれば、センサ素子48aの温度自体を検出する場合のように、センサ素子48aの温度を正確に検出するために、予めセンサ素子48aや、触媒層48cのばらつきを考慮した零点調整などをする必要がない。よって、より簡単に失火の検出を行うことができる。
【0098】
また、本実施の形態によれば、センサ素子48aのインピーダンス変化量ΔRを検出することによりセンサ素子48aの温度変化を検出しているので、簡易な構成により、センサ素子48aの温度変化ΔRを検出することができる。
【0099】
なお、本実施の形態においては、未燃燃料酸化手段として、センサ素子48aに設けられた触媒層48cを用いたが、例えば、センサ素子48aの上流側近傍に設けた塊状の触媒を用いるなど、触媒層48c以外の未燃燃料酸化手段を用いてもよい。
【0100】
また、本実施の形態においては、センサ素子48aの温度変化を、そのインピーダンス変化量ΔRにより検出したが、別途温度センサを備えてセンサ素子48aの温度自体を直接検出することにより、センサ素子48aの温度変化を検出するなど、他の方法により検出してもよい。
【0101】
さらに、本実施の形態においては、センサ素子48aを加熱する加熱手段としてのセンサヒータ48bを備えた例について説明したが、センサ素子48aの特性により、加熱手段を備えない構成としてもよい。
【0102】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。ここでは、前述の第1の実施の形態と異なる構成について説明する。その他の構成および作用については第1の実施の形態と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0103】
本実施の形態においては、触媒層48cを備えた第1の空燃比センサ48と、触媒層を備えない第2の空燃比センサ49との出力の差によって失火を検出する例について説明する。
【0104】
図6は、本実施の形態における第1及び第2の空燃比センサ48及び49と、その制御系の概略構成を示す断面図である。本実施の形態においては、前述のように2つの空燃比センサ48及び49を備えている。第1の空燃比センサ48は、図2に示したものと同様の構成をとっており、センサ素子48a、センサヒータ48b、触媒層48c、内カバー48d、外カバー48eを有している。なお、本実施の形態における第1の空燃比検出手段は、上記第1の空燃比センサ48及びコントロール回路50、信号検出回路51、ECU20を含んで構成されている。
【0105】
一方、第2の空燃比センサ49は、センサ素子49a、センサヒータ49b、内カバー49d、外カバー49eを有するが、触媒層は有していない。なお、本実施の形態における第2の空燃比検出手段は、第2の空燃比センサ49及び第1の空燃比センサ48と共通のコントロール回路50、信号検出回路51、ECU20を含んで構成されている。
【0106】
ここで、コントロール回路50は、センサ素子48a及び49aに約0.4Vの電圧を印加するとともに、センサ素子48a及び49aの温度をそれぞれ約750℃に制御するため、センサヒータ48b及び49bに電流を供給している。また、信号検出回路51は、センサ素子48a及びセンサ素子49aの出力電流を検知して電圧に変換後、ECU20に入力している。なお、本実施の形態においては、信号検出回路51は、センサ素子48aまたは49aのインピーダンス検出回路は備えていない。
【0107】
本実施の形態においては、内燃機関1において失火が発生したときに、排気中で増加する未燃燃料は、第1の空燃比センサ48においては、触媒層48cで酸化されて消費され、センサ素子48aに達しないが、第2の空燃比センサ49においては、触媒層を備えないので、未燃燃料がセンサ素子49aに達する。
【0108】
その結果、第2の空燃比センサ49のセンサ素子49aにおいては、いわゆるリーンずれが発生する。すなわち、内燃機関1において失火が発生したときには、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48aではリーンずれが生じず、第2の空燃比センサ49のセンサ素子49aではリーンずれが生じるので、両者の出力に差が生じる。本実施の形態においては、この出力差を検出することにより失火を検出する。
【0109】
図7には、本実施の形態における失火検出ルーチンについてのフローチャートを示す。本ルーチンはECU20内のROMに記憶されたもので、内燃機関1の運転中、少なくとも内燃機関1の気筒21における点火間隔よりも充分に短い所定時間毎に実行される。
【0110】
本ルーチンが実行されるとまずS701において、第1の空燃比センサ48の出力信号を検出する。具体的には、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48aの出力電流を信号検出回路51で電圧に変換してECU20に入力し、それをCPUが読み出すことによって行われる。
【0111】
続いてS702において、第2の空燃比センサ49の出力信号を同様に検出する。そして、S703においては、S701及びS702において検出された第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差Dが、所定値Ksより大きいかどうかを判断する。
【0112】
ここで、S703において、Ksと比較する第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差Dは、S702及びS703で検出した検出信号をECU20内のCPUで演算することによって得られる。なお、この演算は、信号検出回路51内で、電気回路的に第1および第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差分をとる方法によって行ってもよい。
【0113】
なお、ここで得られた、第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差Dは、ECU20内のRAMにDとして記憶される。また、このとき既にRAMにDとして記憶されていた値は、前回の本ルーチン実行時の第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差D’として、RAMに記憶され直す。また、Ksは、第1及び第2の空燃比センサ48及び49検出手段の出力差Dと、排気中の未燃燃料量の関係から失火と判定するための閾値として、予め実験的に求めた値を用いる。
【0114】
S703において、出力信号の差DがKs以下と判断された場合には、失火は発生していないと判断されるので、そのままS706に進む。また、S703において、出力信号の差DがKsより大きいと判断された場合には、失火が発生していると判断されるので、S704に進み、前回の本ルーチン実行時の第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差がD’がKsより大きかったかどうかが判断される。ここで、D’の値は、ECU20のRAMに記憶されている値を読み出すことによって得られる。
【0115】
S704において、前回実行時の第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差D’がKsより大きかった場合には、今回、第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力差DがKsより大きいのは、前回の本ルーチン実行時の失火が原因であり、新たに発生した失火が原因ではないと判断できるので、そのままS706に進む。
【0116】
一方、S704において、前回の本ルーチン実行時の第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差D’がKs以下であったときには、今回検出された失火は新たに発生した失火であると判断されるので、S705に進む。以下、本ルーチンにおけるS705からS709までの処理は、失火数カウント、失火率の算出の後、運転者に報知する処理であるが、図3に示す、第1の実施の形態における失火検出ルーチンのS304からS308の処理と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0117】
本実施の形態によれば、触媒層48cを有する第1の空燃比センサ48と、触媒層を有さない第2の空燃比センサ49を備え、失火発生時に、2つの空燃比センサ48及び49のセンサ素子48a及び49aにおけるリーンずれの有無による出力信号の差を検出するので、そのときの内燃機関1の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。
【0118】
また、本発明によれば、2つの空燃比センサ48及び49の出力信号は、それぞれのセンサ素子48a及び49aにおいて失火によるリーンずれが発生するかどうか以外は、等しい条件による出力信号であるので、第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差をとることにより、その他の誤差要因を相殺することができ、精度よく失火の検出を行うことができる。
【0119】
なお、本実施の形態においては、未燃燃料酸化手段として、センサ素子48aに設けられた触媒層48cを用いたが、例えば、センサ素子48aの上流側近傍に設けた塊状の触媒を用いるなど、触媒層48c以外の未燃燃料酸化手段を用いてもよい。
【0120】
また、本実施の形態においては、センサ素子48aを加熱する加熱手段としてのセンサヒータ48bを備えた例について説明したが、センサ素子48aの特性により、加熱手段を備えない構成としてもよい。
【0121】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。ここでは、前述の第3の実施の形態と異なる構成について説明する。その他の構成および作用については第3の実施の形態と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0122】
本実施の形態においては、第1及び第2の空燃比センサ48及び49を備えており、第1の空燃比センサ48と、第2の空燃比センサ49のセンサ素子48a及び49aの制御温度を相違させるようにセンサヒータ48b及び49bへの供給電流を制御し、第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差で、失火を検出する例について説明する。
【0123】
図8は、本実施の形態における第1及び第2の空燃比センサ48及び49と、その制御系の概略構成を示した断面図である。ここにおいて、第1の空燃比センサ48及び、第2の空燃比センサ49はともに、センサ素子48a及び49a、センサヒータ48b及び49b、内カバー48d及び49d、外カバー48e及び49e、を有し、共通のコントロール回路50、信号検出回路51に接続され、さらにECU20に接続されている。
【0124】
本実施の形態にいて、第1の空燃比検出手段とは、上記第1の空燃比センサ48及びコントロール回路50、信号検出回路51、ECU20を含んで構成され、第2の空燃比検出手段とは、上記第2の空燃比センサ49及びコントロール回路50、信号検出回路51、ECU20を含んで構成される。
【0125】
ここで、コントロール回路50は、第1の空燃比センサ48のセンサヒータ48b及び、第2の空燃比センサ49のセンサヒータ49bのそれぞれに供給する電流を制御することにより、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48a及び、第2の空燃比センサ49のセンサ素子49aの温度を相違させるように制御する。従って、本実施の形態における温度制御手段は、コントロール回路50を含んで構成される。
【0126】
本実施の形態においては、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48aを約950℃に、第2の空燃比センサ49のセンサ素子49aを約750℃に制御する。内燃機関1において、失火が発生した場合には、前述のように、排気中の未燃燃料の量が増加する。この未燃燃料は、センサ素子48a及び49aと、センサヒータ48b及び49bが高温である場合は、これらの熱によって酸化され消費される。従って、この場合はセンサ素子48a及び49aでリーンずれの原因となる未燃燃料の量は減少する。
【0127】
また、センサ素子48a及び49aの制御温度が高いほど、その熱で酸化され消費される未燃燃料の量が増えるので、上記のセンサ素子48a及び49aでリーンずれの原因となる未燃燃料の量はセンサ素子48a及び49aの制御温度が高いほど少なくなる。
【0128】
よって、内燃機関1に失火が発生したときに、第1の空燃比センサ48と、第2の空燃比センサ49のセンサ素子48a及び49aの制御温度を異ならせたうえで、両方の空燃比センサ48及び49の出力の差をとると、双方のセンサ素子48a及び49aにおけるリーンずれの程度の差が、出力の差として現れる。さらに、この出力の差は、排気中の未燃燃料が多いほど大きくなる。本実施の形態においては、このことによる出力の差によって、失火を検出する。
【0129】
本実施の形態においては、図7に示す失火検出ルーチンと同様のルーチンによって、内燃機関1の失火を検出することが可能である。
【0130】
本実施の形態によれば、センサ素子48aの温度を950℃に制御された第1の空燃比センサ48と、センサ素子49aの温度を750℃に制御された第2の空燃比センサ49を備え、失火発生時に、2つの空燃比センサ48及び49のセンサ素子48a及び49aにおいて生じるリーンずれの程度の差による出力信号の差を検出するので、そのときの内燃機関1の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。
【0131】
また、本発明によれば、第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差をとることにより、その他の誤差要因を相殺することができ、精度よく失火の検出を行うことができる。
【0132】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について説明する。ここでは、前述の第3の実施の形態と異なる構成について説明する。その他の構成および作用については第3の実施の形態と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0133】
本実施の形態においては、第1及び第2の空燃比センサ48及び49を備えており、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48aへの印加電圧は、センサ素子48aにおいて水が電気分解される電圧より高く、第2の空燃比センサ49のセンサ素子49aへの印加電圧は、センサ素子49aにおいて水が電気分解される電圧より低くなるよう制御し、双方の空燃比センサ48及び49の出力信号の差で、失火を判定する例について説明する。
【0134】
本実施の形態における第1及び第2の空燃比センサ48及び49及びその制御系については、図8に示したものと同一の構成をとることができる。ここで、コントロール回路50では、センサ素子48a及び49aの温度が750℃に制御されるように、空燃比センサ48のセンサヒータ48c及び、空燃比センサ49のセンサヒータ49cに電流を供給している。
【0135】
また、コントロール回路50はセンサ素子48aについては、1.0V、センサ素子49aについては0.4Vの電圧を印加している。ここにおいて、センサ素子48aに対して、1.0Vの電圧を印加した場合にはセンサ素子48aにおいて、水が電気分解され、センサ素子48aの出力には、水の電気分解による信号が加えられることが分かっている。
【0136】
一方、センサ素子49aには、0.4Vの電圧しか印加していないのでセンサ素子49aにおいては水の電気分解は生じない。
【0137】
ここで、内燃機関1において燃料が正常に燃焼すると、水が発生し、排気中には所定量の水分が存在する。しかし、失火が発生した場合には、燃料が正常に燃焼しないために排気中に存在する水分の量は減少する。
【0138】
よって、センサ素子48aに1.0Vの電圧を印加した第1の空燃比センサ48と、センサ素子49aに0.4Vの電圧を印加した第2の空燃比センサ49との出力信号の差には、排気中の水分を第1のセンサ素子で電気分解したことによる出力信号が含まれている。
【0139】
そして、失火が発生していないときは、排気中の水分の量が多いため、双方の空燃比センサ48及び49の出力信号の差は大きくなる。一方、失火発生時には、排気中の水分が減少するため、双方の空燃比センサ48及び49の出力信号の差のうち、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48aにおいて、排気中の水分を電気分解したことによる差が減少する。従って、双方の空燃比センサ48及び49の出力信号の差が所定値より小さくなったときには、失火が発生したと判断できる。
【0140】
なお、本実施の形態においては、コンロトール回路50を含めて、印加電圧制御手段を構成する。
【0141】
図9には、本実施の形態における失火検出ルーチンについてのフローチャートを示す。本ルーチンはECU20内のROMに記憶されたもので、内燃機関1の運転中、少なくとも内燃機関1の気筒21における点火間隔よりも充分に短い所定時間毎に実行される。なお、本ルーチンは図7に示した第3の実施の形態についての失火検出ルーチンと類似のルーチンであるため、主に両者の相違点について説明をする。
【0142】
本ルーチンが実行されるとまずS901において、第1の空燃比センサ48の出力信号を検出する。続いてS902において、第2の空燃比センサ49の出力信号を同様に検出する。そして、S903においては、S901及びS902において検出された第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差Dが、所定値Ksより小さいかどうかを判断する。
【0143】
S903において、出力信号の差DがKs以上と判断された場合には、失火は発生していないと判断されるので、そのままS906に進む。また、S903において、出力信号の差DがKsより小さいと判断された場合には、失火が発生していると判断されるので、S904に進み、前回の本ルーチン実行時の出力信号の差D’がKsより小さかったかどうかが判断される。
【0144】
S904において、前回の本ルーチン実行時の出力信号の差D’がKsより小さかったと判断された場合には、今回、第1及び第2の空燃比検出手段の出力差DがKsより小さいのは、前回の本ルーチン実行時の失火が原因であり、新たに発生した失火が原因ではないと判断できるので、そのままS906に進む。
【0145】
一方、S904において、前回の本ルーチン実行時の出力信号の差D’がKs以上であったときには、今回検出された失火は新たに発生した失火であると判断されるので、S905に進む。以下、本ルーチンにおけるS905からS909までの処理は、失火数カウント、失火率の算出の後、運転者に報知する処理であるが、図3に示す、第1の実施の形態における失火検出ルーチンのS304からS308の処理と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0146】
本実施の形態によれば、2つの空燃比センサ48及び49を備え、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48aには、センサ素子48aにおける水の電気分解電圧より高い1.0Vの電圧が印加され、第2の空燃比センサ49のセンサ素子49aには、センサ素子49aにおける水の電気分解電圧より低い0.4Vの電圧が印加され、失火発生時に、それぞれのセンサ素子48a及び49aにおける水の電気分解の有無による出力信号の差を検出するので、そのときの内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。
【0147】
また、第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差をとっているので、種々の誤差要因が相殺されることにより、精度よく内燃機関の失火を検出することができる。
【0148】
なお、本実施の形態においては、センサ素子48aを加熱する加熱手段としてのセンサヒータ48bを備えた例について説明したが、センサ素子48aの特性により、加熱手段を備えない構成としてもよい。
【0149】
【発明の効果】
上述のように本発明にあっては、内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明を適用する内燃機関の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明における第1の実施の形態に係る空燃比センサ及びその制御系の概略構成を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明における第1の実施の形態に係る失火検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明における第2の実施の形態に係る失火発生時におけるセンサ素子のインピーダンス、インピーダンス変化量及びそれに伴う失火回数カウンタの状況を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明における第2の実施の形態に係る失火検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明における第3の実施の形態に係る第1及び第2の空燃比センサ及びその制御系の概略構成を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明における第3の実施の形態に係る失火検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明における第4の実施の形態に係る第1及び第2の空燃比センサ及びその制御系の概略構成を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明における第5の実施の形態に係る失火検出ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…内燃機関
20…ECU
21…気筒
26…吸気ポート
27…排気ポート
46…排気浄化触媒
47…排気通路
48…空燃比センサ
48a…センサ素子
48b…センサヒータ
48c…触媒層
48d…内カバー
48e…外カバー
49…空燃比センサ
49a…センサ素子
49b…センサヒータ
49d…内カバー
49e…外カバー
50…コントロール回路
51…信号検出回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関に失火が発生したことを検出する失火検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関においては、混合気の混合比が適切でなかったり、供給された燃料の着火性が適切でないなどの理由により、混合気が燃焼室内で完全燃焼しない「失火」が発生することがある。この失火が発生すると機関回転速度が低下するばかりでなく、燃焼室から大気中に不完全燃焼ガスが放出される。また、排気ガス浄化用の触媒に未燃の燃料が直接供給されることにより、これを劣化させる原因にもなる。
【0003】
そのため、内燃機関を稼動させる際には、失火が発生しないように燃焼室内の混合気の混合比や圧縮比、点火タイミングなどを電子制御装置(ECU)により制御することが一般的に行われている。それに加えて、内燃機関の稼動中に失火発生の有無を監視し、その発生が一定の基準値を超えた場合に失火検出を運転者に報知することが行われている。
【0004】
この報知によりその車両の運転者に、内燃機関の燃焼状態が正常ではないことを認識させ、必要に応じて点検や修理等のサービスを早期に受けてもらうように促す。
【0005】
失火発生の有無を監視する方法としては、空燃比センサが検出した機関の空燃比が、リーン側に設定した失火判定値より更にリーンであれば、失火が発生したと判定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかし、上記従来技術においては、失火判定時の空燃比がリッチの場合に、失火によるリーンずれが生じても失火判定値を超えず、失火判定が不能となる場合がある。また、このような装置では空燃比センサを加熱するためのセンサヒータを備えることが多いが、このセンサヒータでの加熱で未燃燃料が酸化すると、未燃燃料がそこで消費されるため、リーンずれが発生せず失火判定が不能となる場合がある。
【0007】
さらに、内燃機関において空燃比センサの出力に基づく空燃比フィードバック制御を行っている場合、上記従来技術では、失火によって空燃比センサにリーンずれが生じるため、その空燃比センサの出力を用いて空燃比フィードバック制御を正しく行えなくなる場合がある。
【0008】
なお、上記以外の従来技術として、以下の特許文献2から6に示すものが例示できる。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−289111号公報
【特許文献2】
特開平4−98155号公報
【特許文献3】
実開昭63−22358号公報
【特許文献4】
特開平3−182670号公報
【特許文献5】
特開平9−189679号公報
【特許文献6】
特開平4−22858号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的とするところは、内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、内燃機関の失火を検出することができる技術を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、内燃機関の排気通路に配置されたセンサ素子により空燃比を検出する空燃比検出手段に、排気中の未燃燃料を酸化させる未燃燃料酸化手段を、センサ素子に近接して設けることに特徴がある。そして、失火発生時に、排気中で増加する未燃燃料が未燃燃料酸化手段で酸化する際に発生する熱を、センサ素子を介して検出することにより失火を判定するものである。
【0012】
より詳しくは、本発明は、内燃機関の排気通路内にセンサ素子を有する空燃比検出手段と、前記センサ素子に近接して未燃燃料を酸化させる未燃燃料酸化手段と、前記センサ素子の温度を検出する温度検出手段と、前記センサ素子の温度が所定温度を超えると失火と判定する失火判定手段と、を備える。
【0013】
すなわち、失火発生時には、内燃機関で燃焼されずに排気通路を通過する未燃燃料が増加する。この未燃燃料が、空燃比検出手段のセンサ素子に近接した未燃燃料酸化手段で酸化されると、これにより熱が発生するので、この熱で加熱されたセンサ素子の温度を温度検出手段で検出する。そして、この温度が所定温度を超える場合に失火と判定する。
【0014】
これによれば、失火発生時に、排気中で増加した未燃燃料の酸化による発熱を、センサ素子を介して検出することで失火を検出するので、そのときの内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。
【0015】
また、これによれば、未燃燃料が未燃燃料酸化手段で酸化されることにより消費されるので、失火発生時にセンサ素子のリーンずれを防止することができる。よって従来のように、失火発生時に、空燃比フィードバック制御に悪影響を与えることがない。
【0016】
なお、本発明においては、失火の発生とセンサ素子の温度との関係を予め実験的に調査しておき、失火が発生したと判断されるセンサ素子の温度を、所定温度として特定している。
【0017】
また、本発明においては、温度検出手段は、センサ素子のインピーダンスの値を検出し、その値からセンサ素子の温度を検出するようにしてもよい。
【0018】
すなわち、センサ素子の温度が上昇すると、センサ素子のインピーダンスが減少するという知見に基づいて、温度検出手段は、センサ素子のインピーダンスを検出することによりセンサ素子の温度を検出する。これにより、簡易な構成によってセンサ素子の温度を検出することができる。
【0019】
また、本発明において、温度自体を検出するのではなく、温度変化検出手段により前記センサ素子の温度変化を検出し、前記センサ素子の温度変化が所定値を超えると、失火判定手段により失火と判定されるようにしてもよい。これは、失火発生時に増加した未燃燃料を、未燃燃料酸化手段で酸化させるときに発生する熱により、センサ素子は急激に加熱されるので、失火発生時には、センサ素子の温度変化が急激に大きくなることを利用したものである。
【0020】
これによれば、センサ素子の温度自体を検出する場合のように、センサ素子の温度を正確に検出するため、センサ素子や、未燃燃料酸化手段のばらつきを考慮した零点調整をする必要もない。よって、より簡単に失火の検出を行うことができる。
【0021】
なお、センサ素子の温度変化は、センサ素子のインピーダンスの変化として検出するようにしてもよい。これにより、簡易な構成により、センサ素子の温度変化を検出することができる。
【0022】
また、本発明において、内燃機関の失火の発生によりその出力が影響を受ける空燃比検出手段と、内燃機関の失火の発生によってもその出力が影響を受けない空燃比検出手段とを備えると、両方の出力に差が現れたことをもって失火を検出することができる。
【0023】
より詳しくは、第1のセンサ素子を有する第1の空燃比検出手段には、第1のセンサ素子に近接して未燃燃料酸化手段を設け、第2のセンサ素子を有する第2の空燃比検出手段には、このような未燃燃料酸化手段は設けない。これにより、上記した内燃機関の失火の発生によりその出力が影響を受ける空燃比検出手段と内燃機関の失火の発生によってもその出力が影響を受けない空燃比検出手段とが構成される。
【0024】
ここで、第1の空燃比検出手段には、未燃燃料酸化手段が設けられているため、失火発生時に排気中の未燃燃料が増加しても、未燃燃料酸化手段で未燃燃料が酸化して消費されるために、第1のセンサ素子においては、いわゆるリーンずれが発生しない。一方、第2のセンサ素子においては、失火発生時には、いわゆるリーンずれが発生する。
【0025】
よって、失火発生時には、第1のセンサ素子と、第2のセンサ素子の出力には差が生じるので、第1及び第2のセンサ素子の出力信号の差が所定値を超えたことをもって失火判定手段は失火と判定する。
【0026】
これによれば、失火発生時に、2つのセンサ素子の出力信号のリーンずれの有無による差を検出するので、そのときの内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。
【0027】
また、これによれば、第1及び第2のセンサ素子の出力信号は、失火によるリーンずれが発生するかどうか以外は、等しい条件による出力信号であるので、第1及び第2のセンサ素子の出力信号の差をとることにより、その他の誤差要因を相殺することができ、精度よく失火の検出を行うことができる。
【0028】
また、本発明においては、未燃燃料酸化手段として、センサ素子に設けられた触媒層を用いるようにするとよい。これによれば、もともと小さな体積を有する空燃比検出手段のセンサ素子に対して厚みの薄い触媒層を設けるので、事実上、未燃燃料酸化手段の体積は充分小さいものになる。
【0029】
よって、同じ量の未燃燃料が排気通路を通過した場合でも、内燃機関の排気通路に備えられた排気浄化触媒など、大きな体積を有する触媒で未燃燃料を酸化する場合に比較して、未燃燃料を感度よく酸化させることができる。従って、センサ素子の温度も感度よく上昇させることができ、感度よく失火を検出することができる。
【0030】
また、本発明における別の形態として、第1のセンサ素子を有する第1の空燃比検出手段と、第2のセンサ素子を有する第2の空燃比検出手段が設けられ、温度制御手段によってそれぞれのセンサ素子まわりの温度を相違するように制御するものを挙げることができる。
【0031】
ここで、失火発生時に排気中で増加する未燃燃料は、センサ素子まわりの温度が高温であるほど酸化され易い。よって、センサ素子まわりの温度が高いほど、そのセンサ素子で発生するいわゆるリーンずれの程度も軽減される。すなわち、より高温に制御されたセンサ素子と、そうでないセンサ素子では、リーンずれの程度が異なるため、それらの出力には差が生じる。そして、その差は、排気中に存在する未燃燃料が多いほど大きくなる。
【0032】
従って、第1及び第2の空燃比検出手段のセンサ素子まわりの温度が相違するように制御した場合、第1及び第2の空燃比検出手段のセンサ素子の出力信号差が大きいほど、排気中の未燃燃料及び酸素が多いと判断することができる。これを利用して、失火判定手段が、それぞれのセンサ素子の出力信号差が所定値を超えることをもって失火と判断するのである。
【0033】
これによれば、失火発生時に、2つのセンサ素子で生じるリーンずれの程度の差による双方の空燃比センサの出力信号の差を検出するので、そのときの内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。また、これによれば、第1及び第2のセンサ素子の出力信号の差をとるので、種々の誤差要因を相殺することができ、精度よく失火の検出を行うことができる。
【0034】
なお、ここで、双方のセンサ素子を良好に活性化させることができ、良好に空燃比検出を行うことが可能であるという条件を満たし、かつ、失火検出のための温度差を充分にとるために、一方のセンサ素子の温度を約750℃、他方のセンサ素子の温度を約950℃と設定するとよい。
【0035】
また、本発明においては、失火判定のための前提として、第1のセンサ素子を有する第1の空燃比検出手段と、第2のセンサ素子を有する第2の空燃比検出手段と、第1及び第2のセンサ素子への印加電圧を制御する印加電圧制御手段と、を備える形態をとることもできる。
【0036】
ここで、印加電圧制御手段は、第1のセンサ素子へは、センサ素子において水が電気分解される電圧より高い電圧を印加し、第2のセンサ素子へは、センサ素子において水が電気分解される電圧より低い電圧を印加する。そして、失火判定手段は、この時の、前記第1及び第2のセンサ素子の出力信号の差が所定値以下になった場合に失火と判定する。
【0037】
すなわち、内燃機関において燃料が正常に燃焼すると、水が発生し、排気中には所定量の水分が存在する。しかし、失火が発生した場合には、燃料が正常に燃焼しないために排気中に存在する水分の量が減少する。一方、センサ素子への印加電圧を所定値以上とすることにより、そのセンサ素子では、水の電気分解が起こり、センサ素子の出力信号に、水を電気分解することによる出力信号も加えられることが分かっている。
【0038】
よって、失火が発生していないときには、水が電気分解される電圧より高い電圧を印加した第1のセンサ素子と、水が電気分解される電圧より低い電圧を印加した第2のセンサ素子との出力信号の差には、排気中の水分を第1のセンサ素子で電気分解したことによる出力信号が含まれている。
【0039】
一方、失火発生時には、排気中の水分が減少するため、双方のセンサ素子の出力信号の差のうち、排気中の水分を電気分解したことによる差が減少する。従って、双方のセンサ素子の出力信号の差が所定値以下となったときには、失火が発生したと判断できる。本発明は、以上の原理を利用して失火を検出するものである。
【0040】
これによれば、失火発生時に、2つのセンサ素子における水の電気分解の有無による出力信号の差を検出するので、そのときの内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。また、第1及び第2のセンサ素子の出力信号の差をとっているので、種々の誤差要因の相殺により、精度よく内燃機関の失火を検出することができる。
【0041】
また、本発明においては、センサ素子を加熱する加熱手段を有するようにするとよい。これにより、内燃機関の始動時など冷間時でも、センサ素子を早期に活性化させ、失火検出を早期に開始することができる。また、空燃比検出手段が未燃燃料酸化手段を備える場合には、未燃燃料酸化手段を早期に活性化させることができ、失火検出を早期に開始することができる。
【0042】
なお、上記で説明した課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて使用することができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0044】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る内燃機関とその吸排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、4つの気筒21を備えた4ストローク・サイクルの水冷式ガソリンエンジンである。各気筒21の吸気ポート26に吸気枝管33が接続され、各気筒21の排気ポート27に排気枝管45が接続されている。
【0045】
この排気枝管45は、1本の集合管に合流した後、排気通路47に接続される。この排気通路47には、排気通路47内を流れる排気の酸素量に対応した電気信号を出力する空燃比センサ48が取り付けられている。そして、排気通路47は、さらに下流側において排気浄化触媒46に接続されており、排気浄化触媒46のさらに下流側において図示しないマフラーと接続されている。
【0046】
また、内燃機関1には、機関制御用の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)20が併設されている。ECU20は、双方向性バスによって相互に接続された、CPU、ROM、RAM、入力インタフェース回路、出力インタフェース回路等から構成されている。
【0047】
前記ECU20には、空燃比センサ48が信号検出回路51を介して接続されている他、機関の制御に関る各種のセンサが電気配線によって接続され、各センサの出力信号がECU20に入力されるようになっている。また、ECU20には、空燃比センサ48を制御するためのコントロール回路50が電気配線によって接続され、ECU20の指令によって空燃比センサ48が制御されるようになっている。
【0048】
図2は、本実施の形態における空燃比センサ48及びその制御系の概略構成を示す断面図である。図2においては、空燃比センサ48と、そのコントロール回路50、信号検出回路51及びECU20を含んで空燃比検出手段が構成されている。
【0049】
空燃比センサ48には、排気中の酸素量に対応した信号を出力するセンサ素子48aが備えられており、そのセンサ素子48aには、センサ素子48aを加熱する加熱手段であるセンサヒータ48bが隣接している。センサ素子48aは、このセンサヒータ48bによって約750℃まで加熱されることにより活性化し、排気の酸素量検出が可能な状態になる。
【0050】
また、センサ素子48aの、センサヒータ48bが隣接している面と反対側の面には未燃燃料酸化手段としての触媒層48cが形成されている。さらに、センサ素子48a、センサヒータ48b、触媒層48cの外側には、排気ガスが流入するための小孔が設けられた内カバー48d及び外カバー48eが設けられている。
【0051】
これらの内カバー48d及び外カバー48eは、二重構造をとることによりセンサ素子48aなどの保護を強化している。そして、この空燃比センサ48は、排気通路47に、直接排気に触れるように取り付けられており、排気が、外カバー48e及び内カバー48dの小孔を通過してセンサ素子48aに達するようになっている。
【0052】
次に、コントロール回路50は、センサ素子48a及びセンサヒータ48bと電気的に接続されており、センサ素子48aに対して、空燃比を検出するための電圧を印加するとともに、センサヒータ48bに対しては、センサ素子48aを約750℃にまで加熱するための電流を供給している。
【0053】
また、信号検出回路51は、センサ素子48aからの出力電流を検出して電圧に変換し、空燃比信号としてECU20に入力する。なお、信号検出回路51は、センサ素子48aのインピーダンスを検出するインピーダンス検出回路を含んでいる。この検出回路としては、特開2000−28575号公報に記載の技術などを利用することができる。
【0054】
ここで、コントロール回路50によってセンサ素子48aの電極間に印加されている電圧は約0.4Vである。この場合には、センサ素子48aからは、センサ素子48aに達した排気の酸素量にほぼ比例した出力電流が得られる。
【0055】
次に、内燃機関1において発生した失火を検出する時の空燃比センサ48の作用について説明する。内燃機関1において失火が発生した場合には、内燃機関1の気筒21で燃料が燃焼されずに排出されるため、排気中の未燃燃料が増加する。その未燃燃料は、図2の矢印に示すように、空燃比センサ48の触媒層48cに到達する。ここで、未燃燃料は酸化され、消費されるとともに、その反応熱によって触媒層48cの温度を上昇させる。
【0056】
そして、上記の触媒層48cの温度が上昇すると、触媒層48cに隣接したセンサ素子48aの温度も上昇する。ここで、センサ素子48aの温度が上昇すると、そのインピーダンスが低下することが理論的に分かっている。従って、センサ素子48aのインピーダンスを信号検出回路51内のインピーダンス検出回路によって検出することにより、失火によって排気中の未燃燃料が増加したことを検出することができる。
【0057】
ここで、触媒層48cは、その温度上昇による熱を効率よくセンサ素子48aに伝えるため、センサ素子48aにできるだけ接近させるのがよい。本実施の形態では、センサ素子48aに直接触媒層48cを設けることによって、触媒層48cの温度上昇をセンサ素子48aに伝え易くしている。
【0058】
図3には、本実施の形態における失火検出ルーチンについてのフローチャートを示す。本ルーチンはECU20内のROMに記憶されたもので、内燃機関1の運転中、少なくとも内燃機関1の気筒21における点火間隔よりも充分に短い所定時間毎に実行される。
【0059】
本ルーチンに入ると、まず、S301において、信号検出回路51内のインピーダンス検出回路の信号をECU20内のRAMに読み込むことによって、空燃比センサ48のセンサ素子48aのインピーダンスRが検出される。ここで得られたインピーダンスRの値は、ECU20内のRAMにRとして記憶される。また、このとき既にRAMにRとして記憶されていた値は、本ルーチンの前回の実行時のインピーダンスR’として記憶され直す。
【0060】
そして、S302において、S301で検出されたインピーダンスRが所定値Krより大きいかどうかが判断される。ここでインピーダンスRが所定値Krより大きいと判断された場合には、触媒層48cの温度は未燃燃料の酸化により上昇していない、すなわち失火は発生していないと判断されるのでS305に進む。S305における処理については後述する。
【0061】
一方、S302において、インピーダンスRが所定値Kr以下と判断された場合には失火が発生したと判断されるので、S303に進む。
【0062】
なお、S302において、センサ素子48aのインピーダンスRと比較される所定値Krは、失火が発生したときに排気中で増大する未燃燃料が、触媒層48cで酸化された際の、センサ素子48aの温度上昇及び、センサ素子48aの温度とインピーダンスRの関係とから、失火が発生したと判断されるセンサ素子48aのインピーダンスRの閾値として、予め実験的に求めた値である。
【0063】
次に、S303においては、前回に本ルーチンを実行したときのセンサ素子48aのインピーダンスR’の値がKrより大きかったかどうかを判断する。ここにおいて、R’の値はECU20内のRAMに記憶されたR’の値を読み出すことによって得られる。
【0064】
ここで、前回の実行時のR’がKr以下であったと判断された場合は、今回センサ素子48aのインピーダンスRが所定値Kr以下であるのは、前回の本ルーチン実行時の失火が原因であり、新たに発生した失火が原因ではないと判断されるので、そのままS305に進む。S305における処理については後述する。
【0065】
一方、S303において前回の実行時のR’がKrより大きかったと判断された場合には、今回の実行においてセンサ素子48aのインピーダンスRが所定値Kr以下であるのは、新たに発生した失火が原因であると判断され、S304に進む。
【0066】
次に、S304において、失火回数をカウントする。すなわち、ECU20に設けられたRAM内の失火カウンタに記憶された、所定期間に発生した失火の回数の値に1を加える処理を行うことにより、失火回数を増加させて記憶する。ここで、上記の所定期間が経過すると、失火カウンタの値をリセットして、再度0から失火回数がカウントされるフローとなっているが、詳細な説明は省略する。
【0067】
次に、S305に進み、S304でカウントされた所定期間における失火回数を当該所定期間中の内燃機関1の気筒21における点火回数で除すことにより、当該期間中の失火率を算出する。S305での処理が終了すると、次にS306に進む。
【0068】
そして、S306において、S305で算出された失火率が所定値より大きいかどうかが判断される。ここで、失火率が所定値より大きいと判断された場合には、内燃機関1に異常が発生したと判断され、S307に進み、アラームをセットし、運転者に報知した後、本ルーチンを終了する。一方、S305において失火率が所定の値以下であると判断された場合にはS307に進み、アラームをリセットしたのち本ルーチンを終了する。
【0069】
なお、本実施の形態においては、信号検出回路51に設けられたインピーダンス検出回路及びECU20を含めて、温度検出手段を構成する。また、失火検出ルーチンを記憶したROMを有するECU20を含めて失火判定手段を構成する。
【0070】
上記したような本実施の形態によれば、空燃比検出手段を構成する空燃比センサ48は、内燃機関1で失火が生じたときに、失火によって発生する未燃燃料を酸化させる未燃燃料酸化手段である触媒層48c備えている。そして、触媒層48cにおける未燃燃料の酸化によって熱が発生し、その熱によりセンサ素子48aの温度が上昇したことを検出することにより、失火検出を行っている。従って、そのときの内燃機関1の空燃比がリッチかリーンかに関わることなく、失火の検出を行うことができる。
【0071】
また、本発明においては、失火によって排気中の未燃燃料が増加したときにも、未燃燃料が、触媒層48cで酸化されることにより消費される。従って、失火によってセンサ素子48aのリーンずれを起こすことがなく、失火が発生しても空燃比フィードバック制御に悪影響を与えることがない。
【0072】
さらに、本実施の形態によれば、センサ素子48aの温度上昇をセンサ素子48aのインピーダンスRによって検出しているので、簡易な構成により、失火判定が可能となる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、未燃燃料酸化手段として、センサ素子48aに設けられた触媒層48cを用いている。従って、未燃燃料が触媒層48cで酸化されることによる熱を、センサ素子48cに効率よく伝えることができる。従って、センサ素子48aの温度を感度よく上昇させることができ、感度よく失火を検出することができる。
【0074】
また、センサ素子48aは、もともと小さな体積を有しているので、これに対して厚みの薄い触媒層48cを設けた場合、事実上、未燃燃料酸化手段としての触媒層48cの体積は、排気通路47に備えられた排気浄化触媒46に用いられている触媒の体積に比較すると、充分小さいものになる。
【0075】
よって、同じ量の未燃燃料が排気通路47を通過した場合でも、排気浄化触媒46など、大きな体積を有する触媒で未燃燃料を酸化する場合に比較して、未燃燃料を感度よく酸化させることができる。このことによっても、センサ素子48aの温度も感度よく上昇させることができ、感度よく失火を検出することができる。
【0076】
また、本実施の形態においては、空燃比センサ48には、センサ素子48aを加熱する加熱手段であるセンサヒータ48bを設けているので、内燃機関1の始動時など冷間時でも、センサ素子48aを早期に活性化させ、失火検出を早期に開始することができると同時に、触媒層48cを早期に活性化させることができる。よって、失火検出を早期に開始することができる。
【0077】
なお、本実施の形態においては、未燃燃料酸化手段として、センサ素子48aに設けられた触媒層48cを用いたが、例えば、センサ素子48aの上流側近傍に設けた塊状の触媒を用いるなど、触媒層48c以外の未燃燃料酸化手段を用いてもよい。
【0078】
また、本実施の形態においては、センサ素子48aの温度を、そのインピーダンスRにより検出したが、別途温度センサを備えてセンサ素子48aの温度自体を直接検出するなど、他の方法により検出してもよい。
【0079】
さらに、本実施の形態においては、センサ素子48aを加熱する加熱手段としてのセンサヒータ48bを備えた例について説明したが、センサ素子48aの特性によっては、加熱手段を備えない構成としてもよい。
【0080】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。ここでは、前述の第1の実施の形態と異なる構成について説明する。その他の構成および作用については第1の実施の形態と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0081】
本実施の形態においては、失火によるセンサ素子48aの温度上昇を検出するときに、センサ素子48aのインピーダンスRを検出してセンサ素子48aの温度自体を検出するのではなく、センサ素子48aのインピーダンス変化量ΔRを検出してセンサ素子48a温度変化を検出する例について説明する。
【0082】
なお、本実施の形態における信号検出回路51には、センサ素子48aのインピーダンス検出回路及び、微分回路が備えられている。
【0083】
図4には、本実施の形態における失火の発生と、インピーダンスR及びインピーダンス変化量ΔRとの関係及びそれに伴う失火回数カウンタの状況を示すグラフを示す。図4において、内燃機関1で失火が発生した場合には、気筒21内での燃焼が完全に行われないので、排気中の未燃燃料が増加する。その未燃燃料が空燃比センサ48に到達して触媒層48cで酸化することにより、センサ素子48aの温度が上昇し、同時にそのインピーダンスRが減少する。
【0084】
すなわち、図4のグラフ▲1▼においては、失火の影響は、失火から若干の遅れをもって、センサ素子48aのインピーダンスRが減少することに現れる。そして、触媒層48cにおける未燃燃料の酸化が終了すると、センサ素子48aの温度は下がり、それに伴ってインピーダンスも増加する。
【0085】
図4の▲2▼には失火にともなうセンサ素子48aのインピーダンス変化量ΔRを表したグラフを示す。グラフ▲1▼に表したインピーダンスRを信号検出回路51の微分回路によって電気回路的に微分することによってグラフ▲2▼を得ることができる。そして、このセンサ素子48aのインピーダンス変化量ΔRが所定値Kdrより大きくなったときに、失火が発生したと判断し、グラフ▲3▼に示すように失火回数カウンタを加算することとしている。
【0086】
上記のように、本実施の形態は、失火発生時には、排気中で増加した未燃燃料が、触媒層48cで酸化されるときに発生する熱により、センサ素子48aが急激に加熱され、その温度変化が急激に大きくなることを利用したものである。これによれば、センサ素子48aの温度自体は検出せず、センサ素子48aの温度が急激に変化したことのみを検出するので、センサ素子48aや、触媒層48cのばらつきを考慮した零点調整なども必要としない。
【0087】
図5は、本実施の形態における失火検出ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、ECU20内のROMに記憶されたもので、内燃機関1の運転中、少なくとも内燃機関1の気筒21における点火間隔より充分に短い所定時間毎に実施される。
【0088】
本ルーチンが実施されると、まずS501において、空燃比センサ48の信号検出回路51内のインピーダンス検出回路によって、センサ素子48aのインピーダンスRが検出される。
【0089】
そして、S502において、センサ素子48aのインピーダンスRの値を微分回路により電気回路的に微分してインピーダンス変化量ΔRの値を検出する。ここで得られたインピーダンス変化量ΔRの値は、ECU20内のRAMにΔRとして記憶される。また、このとき既にRAMにΔRとして記憶されていた値は、本ルーチンの前回の実行時のインピーダンス変化量ΔR’として記憶され直す。
【0090】
なお、本実施の形態においては、前述のように、センサ素子48aのインピーダンスRの値を電気回路的に微分してインピーダンス変化量ΔRを検出しているが、ECU20内部において、センサ素子48aの信号検出回路51のインピーダンス検出回路の出力を演算することによって、インピーダンス変化量ΔRに変換する方法をとってもよい。
【0091】
S502の処理が終わると、次にS503に進み、S502で検出したインピーダンス変化量ΔRの値が所定値Kdrの値より大きいかどうかが判断される。ここで、インピーダンス変化量ΔRの値がKdr以下であれば、失火は発生していないと判断され、そのままS506に進む。また、インピーダンス変化量ΔRの値がKdrより大きい場合には、失火が発生していると判断され、S504に進む。
【0092】
ここで、Kdrの値は、予め、失火の発生と、センサ素子48aのインピーダンス変化量ΔRとの関係を調査することにより、失火が発生したと判断できる閾値として実験的に求めた値である。
【0093】
そして、S504においては、前回の本ルーチンの実行時のインピーダンス変化量ΔR’の値が、Kdrより大きかったかどうかが判断される。ここにおいて、ΔR’の値は、ECU20のRAMに記憶されたΔR’を読み出すことによって得られる。
【0094】
ここで、前回の本ルーチンの実行時のインピーダンス変化量ΔR’の値が、Kdrより大きかった場合には、今回の実行において、インピーダンス変化量ΔRがKdrより大きいのは、前回の本ルーチン実行時の失火が原因であり、新たに発生した失火が原因ではないと判断できるので、そのままS506に進む。
【0095】
一方、S504において前回の本ルーチン実行時のΔR’がKdr以下であった場合には、今回のインピーダンス変化量ΔRがKdrより大きいのは、新たな失火発生が原因であると判断されるので、S505に進む。以下、本ルーチンにおけるS505からS509までの処理は、失火数カウント、失火率の算出の後、運転者に報知する処理であるが、図3に示す、第1の実施の形態における失火検出ルーチンのS304からS308の処理と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0096】
なお、本実施の形態においては、信号検出回路51のインピーダンス検出回路、微分回路、及びECU20を含めて温度変化検出手段を構成している。
【0097】
本実施の形態によれば、センサ素子48aの温度自体を検出する場合のように、センサ素子48aの温度を正確に検出するために、予めセンサ素子48aや、触媒層48cのばらつきを考慮した零点調整などをする必要がない。よって、より簡単に失火の検出を行うことができる。
【0098】
また、本実施の形態によれば、センサ素子48aのインピーダンス変化量ΔRを検出することによりセンサ素子48aの温度変化を検出しているので、簡易な構成により、センサ素子48aの温度変化ΔRを検出することができる。
【0099】
なお、本実施の形態においては、未燃燃料酸化手段として、センサ素子48aに設けられた触媒層48cを用いたが、例えば、センサ素子48aの上流側近傍に設けた塊状の触媒を用いるなど、触媒層48c以外の未燃燃料酸化手段を用いてもよい。
【0100】
また、本実施の形態においては、センサ素子48aの温度変化を、そのインピーダンス変化量ΔRにより検出したが、別途温度センサを備えてセンサ素子48aの温度自体を直接検出することにより、センサ素子48aの温度変化を検出するなど、他の方法により検出してもよい。
【0101】
さらに、本実施の形態においては、センサ素子48aを加熱する加熱手段としてのセンサヒータ48bを備えた例について説明したが、センサ素子48aの特性により、加熱手段を備えない構成としてもよい。
【0102】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。ここでは、前述の第1の実施の形態と異なる構成について説明する。その他の構成および作用については第1の実施の形態と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0103】
本実施の形態においては、触媒層48cを備えた第1の空燃比センサ48と、触媒層を備えない第2の空燃比センサ49との出力の差によって失火を検出する例について説明する。
【0104】
図6は、本実施の形態における第1及び第2の空燃比センサ48及び49と、その制御系の概略構成を示す断面図である。本実施の形態においては、前述のように2つの空燃比センサ48及び49を備えている。第1の空燃比センサ48は、図2に示したものと同様の構成をとっており、センサ素子48a、センサヒータ48b、触媒層48c、内カバー48d、外カバー48eを有している。なお、本実施の形態における第1の空燃比検出手段は、上記第1の空燃比センサ48及びコントロール回路50、信号検出回路51、ECU20を含んで構成されている。
【0105】
一方、第2の空燃比センサ49は、センサ素子49a、センサヒータ49b、内カバー49d、外カバー49eを有するが、触媒層は有していない。なお、本実施の形態における第2の空燃比検出手段は、第2の空燃比センサ49及び第1の空燃比センサ48と共通のコントロール回路50、信号検出回路51、ECU20を含んで構成されている。
【0106】
ここで、コントロール回路50は、センサ素子48a及び49aに約0.4Vの電圧を印加するとともに、センサ素子48a及び49aの温度をそれぞれ約750℃に制御するため、センサヒータ48b及び49bに電流を供給している。また、信号検出回路51は、センサ素子48a及びセンサ素子49aの出力電流を検知して電圧に変換後、ECU20に入力している。なお、本実施の形態においては、信号検出回路51は、センサ素子48aまたは49aのインピーダンス検出回路は備えていない。
【0107】
本実施の形態においては、内燃機関1において失火が発生したときに、排気中で増加する未燃燃料は、第1の空燃比センサ48においては、触媒層48cで酸化されて消費され、センサ素子48aに達しないが、第2の空燃比センサ49においては、触媒層を備えないので、未燃燃料がセンサ素子49aに達する。
【0108】
その結果、第2の空燃比センサ49のセンサ素子49aにおいては、いわゆるリーンずれが発生する。すなわち、内燃機関1において失火が発生したときには、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48aではリーンずれが生じず、第2の空燃比センサ49のセンサ素子49aではリーンずれが生じるので、両者の出力に差が生じる。本実施の形態においては、この出力差を検出することにより失火を検出する。
【0109】
図7には、本実施の形態における失火検出ルーチンについてのフローチャートを示す。本ルーチンはECU20内のROMに記憶されたもので、内燃機関1の運転中、少なくとも内燃機関1の気筒21における点火間隔よりも充分に短い所定時間毎に実行される。
【0110】
本ルーチンが実行されるとまずS701において、第1の空燃比センサ48の出力信号を検出する。具体的には、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48aの出力電流を信号検出回路51で電圧に変換してECU20に入力し、それをCPUが読み出すことによって行われる。
【0111】
続いてS702において、第2の空燃比センサ49の出力信号を同様に検出する。そして、S703においては、S701及びS702において検出された第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差Dが、所定値Ksより大きいかどうかを判断する。
【0112】
ここで、S703において、Ksと比較する第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差Dは、S702及びS703で検出した検出信号をECU20内のCPUで演算することによって得られる。なお、この演算は、信号検出回路51内で、電気回路的に第1および第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差分をとる方法によって行ってもよい。
【0113】
なお、ここで得られた、第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差Dは、ECU20内のRAMにDとして記憶される。また、このとき既にRAMにDとして記憶されていた値は、前回の本ルーチン実行時の第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差D’として、RAMに記憶され直す。また、Ksは、第1及び第2の空燃比センサ48及び49検出手段の出力差Dと、排気中の未燃燃料量の関係から失火と判定するための閾値として、予め実験的に求めた値を用いる。
【0114】
S703において、出力信号の差DがKs以下と判断された場合には、失火は発生していないと判断されるので、そのままS706に進む。また、S703において、出力信号の差DがKsより大きいと判断された場合には、失火が発生していると判断されるので、S704に進み、前回の本ルーチン実行時の第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差がD’がKsより大きかったかどうかが判断される。ここで、D’の値は、ECU20のRAMに記憶されている値を読み出すことによって得られる。
【0115】
S704において、前回実行時の第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差D’がKsより大きかった場合には、今回、第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力差DがKsより大きいのは、前回の本ルーチン実行時の失火が原因であり、新たに発生した失火が原因ではないと判断できるので、そのままS706に進む。
【0116】
一方、S704において、前回の本ルーチン実行時の第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差D’がKs以下であったときには、今回検出された失火は新たに発生した失火であると判断されるので、S705に進む。以下、本ルーチンにおけるS705からS709までの処理は、失火数カウント、失火率の算出の後、運転者に報知する処理であるが、図3に示す、第1の実施の形態における失火検出ルーチンのS304からS308の処理と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0117】
本実施の形態によれば、触媒層48cを有する第1の空燃比センサ48と、触媒層を有さない第2の空燃比センサ49を備え、失火発生時に、2つの空燃比センサ48及び49のセンサ素子48a及び49aにおけるリーンずれの有無による出力信号の差を検出するので、そのときの内燃機関1の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。
【0118】
また、本発明によれば、2つの空燃比センサ48及び49の出力信号は、それぞれのセンサ素子48a及び49aにおいて失火によるリーンずれが発生するかどうか以外は、等しい条件による出力信号であるので、第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差をとることにより、その他の誤差要因を相殺することができ、精度よく失火の検出を行うことができる。
【0119】
なお、本実施の形態においては、未燃燃料酸化手段として、センサ素子48aに設けられた触媒層48cを用いたが、例えば、センサ素子48aの上流側近傍に設けた塊状の触媒を用いるなど、触媒層48c以外の未燃燃料酸化手段を用いてもよい。
【0120】
また、本実施の形態においては、センサ素子48aを加熱する加熱手段としてのセンサヒータ48bを備えた例について説明したが、センサ素子48aの特性により、加熱手段を備えない構成としてもよい。
【0121】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。ここでは、前述の第3の実施の形態と異なる構成について説明する。その他の構成および作用については第3の実施の形態と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0122】
本実施の形態においては、第1及び第2の空燃比センサ48及び49を備えており、第1の空燃比センサ48と、第2の空燃比センサ49のセンサ素子48a及び49aの制御温度を相違させるようにセンサヒータ48b及び49bへの供給電流を制御し、第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差で、失火を検出する例について説明する。
【0123】
図8は、本実施の形態における第1及び第2の空燃比センサ48及び49と、その制御系の概略構成を示した断面図である。ここにおいて、第1の空燃比センサ48及び、第2の空燃比センサ49はともに、センサ素子48a及び49a、センサヒータ48b及び49b、内カバー48d及び49d、外カバー48e及び49e、を有し、共通のコントロール回路50、信号検出回路51に接続され、さらにECU20に接続されている。
【0124】
本実施の形態にいて、第1の空燃比検出手段とは、上記第1の空燃比センサ48及びコントロール回路50、信号検出回路51、ECU20を含んで構成され、第2の空燃比検出手段とは、上記第2の空燃比センサ49及びコントロール回路50、信号検出回路51、ECU20を含んで構成される。
【0125】
ここで、コントロール回路50は、第1の空燃比センサ48のセンサヒータ48b及び、第2の空燃比センサ49のセンサヒータ49bのそれぞれに供給する電流を制御することにより、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48a及び、第2の空燃比センサ49のセンサ素子49aの温度を相違させるように制御する。従って、本実施の形態における温度制御手段は、コントロール回路50を含んで構成される。
【0126】
本実施の形態においては、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48aを約950℃に、第2の空燃比センサ49のセンサ素子49aを約750℃に制御する。内燃機関1において、失火が発生した場合には、前述のように、排気中の未燃燃料の量が増加する。この未燃燃料は、センサ素子48a及び49aと、センサヒータ48b及び49bが高温である場合は、これらの熱によって酸化され消費される。従って、この場合はセンサ素子48a及び49aでリーンずれの原因となる未燃燃料の量は減少する。
【0127】
また、センサ素子48a及び49aの制御温度が高いほど、その熱で酸化され消費される未燃燃料の量が増えるので、上記のセンサ素子48a及び49aでリーンずれの原因となる未燃燃料の量はセンサ素子48a及び49aの制御温度が高いほど少なくなる。
【0128】
よって、内燃機関1に失火が発生したときに、第1の空燃比センサ48と、第2の空燃比センサ49のセンサ素子48a及び49aの制御温度を異ならせたうえで、両方の空燃比センサ48及び49の出力の差をとると、双方のセンサ素子48a及び49aにおけるリーンずれの程度の差が、出力の差として現れる。さらに、この出力の差は、排気中の未燃燃料が多いほど大きくなる。本実施の形態においては、このことによる出力の差によって、失火を検出する。
【0129】
本実施の形態においては、図7に示す失火検出ルーチンと同様のルーチンによって、内燃機関1の失火を検出することが可能である。
【0130】
本実施の形態によれば、センサ素子48aの温度を950℃に制御された第1の空燃比センサ48と、センサ素子49aの温度を750℃に制御された第2の空燃比センサ49を備え、失火発生時に、2つの空燃比センサ48及び49のセンサ素子48a及び49aにおいて生じるリーンずれの程度の差による出力信号の差を検出するので、そのときの内燃機関1の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。
【0131】
また、本発明によれば、第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差をとることにより、その他の誤差要因を相殺することができ、精度よく失火の検出を行うことができる。
【0132】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について説明する。ここでは、前述の第3の実施の形態と異なる構成について説明する。その他の構成および作用については第3の実施の形態と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0133】
本実施の形態においては、第1及び第2の空燃比センサ48及び49を備えており、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48aへの印加電圧は、センサ素子48aにおいて水が電気分解される電圧より高く、第2の空燃比センサ49のセンサ素子49aへの印加電圧は、センサ素子49aにおいて水が電気分解される電圧より低くなるよう制御し、双方の空燃比センサ48及び49の出力信号の差で、失火を判定する例について説明する。
【0134】
本実施の形態における第1及び第2の空燃比センサ48及び49及びその制御系については、図8に示したものと同一の構成をとることができる。ここで、コントロール回路50では、センサ素子48a及び49aの温度が750℃に制御されるように、空燃比センサ48のセンサヒータ48c及び、空燃比センサ49のセンサヒータ49cに電流を供給している。
【0135】
また、コントロール回路50はセンサ素子48aについては、1.0V、センサ素子49aについては0.4Vの電圧を印加している。ここにおいて、センサ素子48aに対して、1.0Vの電圧を印加した場合にはセンサ素子48aにおいて、水が電気分解され、センサ素子48aの出力には、水の電気分解による信号が加えられることが分かっている。
【0136】
一方、センサ素子49aには、0.4Vの電圧しか印加していないのでセンサ素子49aにおいては水の電気分解は生じない。
【0137】
ここで、内燃機関1において燃料が正常に燃焼すると、水が発生し、排気中には所定量の水分が存在する。しかし、失火が発生した場合には、燃料が正常に燃焼しないために排気中に存在する水分の量は減少する。
【0138】
よって、センサ素子48aに1.0Vの電圧を印加した第1の空燃比センサ48と、センサ素子49aに0.4Vの電圧を印加した第2の空燃比センサ49との出力信号の差には、排気中の水分を第1のセンサ素子で電気分解したことによる出力信号が含まれている。
【0139】
そして、失火が発生していないときは、排気中の水分の量が多いため、双方の空燃比センサ48及び49の出力信号の差は大きくなる。一方、失火発生時には、排気中の水分が減少するため、双方の空燃比センサ48及び49の出力信号の差のうち、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48aにおいて、排気中の水分を電気分解したことによる差が減少する。従って、双方の空燃比センサ48及び49の出力信号の差が所定値より小さくなったときには、失火が発生したと判断できる。
【0140】
なお、本実施の形態においては、コンロトール回路50を含めて、印加電圧制御手段を構成する。
【0141】
図9には、本実施の形態における失火検出ルーチンについてのフローチャートを示す。本ルーチンはECU20内のROMに記憶されたもので、内燃機関1の運転中、少なくとも内燃機関1の気筒21における点火間隔よりも充分に短い所定時間毎に実行される。なお、本ルーチンは図7に示した第3の実施の形態についての失火検出ルーチンと類似のルーチンであるため、主に両者の相違点について説明をする。
【0142】
本ルーチンが実行されるとまずS901において、第1の空燃比センサ48の出力信号を検出する。続いてS902において、第2の空燃比センサ49の出力信号を同様に検出する。そして、S903においては、S901及びS902において検出された第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差Dが、所定値Ksより小さいかどうかを判断する。
【0143】
S903において、出力信号の差DがKs以上と判断された場合には、失火は発生していないと判断されるので、そのままS906に進む。また、S903において、出力信号の差DがKsより小さいと判断された場合には、失火が発生していると判断されるので、S904に進み、前回の本ルーチン実行時の出力信号の差D’がKsより小さかったかどうかが判断される。
【0144】
S904において、前回の本ルーチン実行時の出力信号の差D’がKsより小さかったと判断された場合には、今回、第1及び第2の空燃比検出手段の出力差DがKsより小さいのは、前回の本ルーチン実行時の失火が原因であり、新たに発生した失火が原因ではないと判断できるので、そのままS906に進む。
【0145】
一方、S904において、前回の本ルーチン実行時の出力信号の差D’がKs以上であったときには、今回検出された失火は新たに発生した失火であると判断されるので、S905に進む。以下、本ルーチンにおけるS905からS909までの処理は、失火数カウント、失火率の算出の後、運転者に報知する処理であるが、図3に示す、第1の実施の形態における失火検出ルーチンのS304からS308の処理と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0146】
本実施の形態によれば、2つの空燃比センサ48及び49を備え、第1の空燃比センサ48のセンサ素子48aには、センサ素子48aにおける水の電気分解電圧より高い1.0Vの電圧が印加され、第2の空燃比センサ49のセンサ素子49aには、センサ素子49aにおける水の電気分解電圧より低い0.4Vの電圧が印加され、失火発生時に、それぞれのセンサ素子48a及び49aにおける水の電気分解の有無による出力信号の差を検出するので、そのときの内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。
【0147】
また、第1及び第2の空燃比センサ48及び49の出力信号の差をとっているので、種々の誤差要因が相殺されることにより、精度よく内燃機関の失火を検出することができる。
【0148】
なお、本実施の形態においては、センサ素子48aを加熱する加熱手段としてのセンサヒータ48bを備えた例について説明したが、センサ素子48aの特性により、加熱手段を備えない構成としてもよい。
【0149】
【発明の効果】
上述のように本発明にあっては、内燃機関の空燃比がリッチかリーンかに関ることなく、失火検出をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明を適用する内燃機関の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明における第1の実施の形態に係る空燃比センサ及びその制御系の概略構成を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明における第1の実施の形態に係る失火検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明における第2の実施の形態に係る失火発生時におけるセンサ素子のインピーダンス、インピーダンス変化量及びそれに伴う失火回数カウンタの状況を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明における第2の実施の形態に係る失火検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明における第3の実施の形態に係る第1及び第2の空燃比センサ及びその制御系の概略構成を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明における第3の実施の形態に係る失火検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明における第4の実施の形態に係る第1及び第2の空燃比センサ及びその制御系の概略構成を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明における第5の実施の形態に係る失火検出ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…内燃機関
20…ECU
21…気筒
26…吸気ポート
27…排気ポート
46…排気浄化触媒
47…排気通路
48…空燃比センサ
48a…センサ素子
48b…センサヒータ
48c…触媒層
48d…内カバー
48e…外カバー
49…空燃比センサ
49a…センサ素子
49b…センサヒータ
49d…内カバー
49e…外カバー
50…コントロール回路
51…信号検出回路
Claims (9)
- 内燃機関の排気通路内に配置されたセンサ素子を有し、排気中の空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記センサ素子に近接して設けられ排気中の未燃燃料を酸化させる未燃燃料酸化手段と、
前記センサ素子の温度を検出する温度検出手段と、
該温度検出手段が検出した前記センサ素子の温度が所定温度を超えた場合に失火と判定する失火判定手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の失火検出装置。 - 前記温度検出手段は、前記センサ素子のインピーダンスの値を検出することにより前記センサ素子の温度を検出することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の失火検出装置。
- 内燃機関の排気通路内に配置されたセンサ素子を有し、排気中の空燃比を検出する空燃比検出手段と、
該センサ素子に近接して設けられ排気中の未燃燃料を酸化させる未燃燃料酸化手段と、
前記センサ素子の温度変化を検出する温度変化検出手段と、
該温度変化検出手段が検出した前記センサ素子の温度変化が所定値を超えた場合に失火と判定する失火判定手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の失火検出装置。 - 前記温度変化検出手段は、前記センサ素子のインピーダンスの変化を検出することにより前記センサ素子の温度変化を検出することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の失火検出装置。
- 内燃機関の排気通路内に配置された第1のセンサ素子を有し、排気中の空燃比を検出する第1の空燃比検出手段と、
内燃機関の排気通路内に配置された第2のセンサ素子を有し、排気中の空燃比を検出する第2の空燃比検出手段と、
前記第1のセンサ素子に近接して設けられ排気中の未燃燃料を酸化させる未燃燃料酸化手段と、
前記第1及び第2のセンサ素子の出力信号の差が所定値よりも大きくなった場合に失火と判定する失火判定手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の失火検出装置。 - 前記未燃燃料酸化手段は、センサ素子に設けられた触媒層であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の内燃機関の失火検出装置。
- 内燃機関の排気通路内に配置された第1のセンサ素子を有し、排気中の空燃比を検出する第1の空燃比検出手段と、
内燃機関の排気通路内に配置された第2のセンサ素子を有し、排気中の空燃比を検出する第2の空燃比検出手段と、
前記第1及び第2のセンサ素子まわりの温度が相違するように前記第1及び第2のセンサ素子まわりの温度を制御する温度制御手段と、
前記第1及び第2のセンサ素子の出力信号の差が所定値よりも大きくなった場合に失火と判定する失火判定手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の失火検出装置。 - 内燃機関の排気通路内に配置された第1のセンサ素子を有し、排気中の空燃比を検出する第1の空燃比検出手段と、
内燃機関の排気通路内に配置された第2のセンサ素子を有し、排気中の空燃比を検出する第2の空燃比検出手段と、
前記第1及び第2のセンサ素子への印加電圧を制御する印加電圧制御手段と、
を備え、
前記第1及び第2のセンサ素子による水の電気分解電圧を所定電圧とするとき、前記印加電圧制御手段により、前記第1のセンサ素子への印加電圧を前記所定電圧より高くするとともに、前記第2のセンサ素子への印加電圧を所定電圧より低くし、
かつ、この時の、前記第1及び第2のセンサ素子の出力信号の差が所定値よりも小さくなった場合に、失火と判定する失火判定手段を備えることを特徴とする内燃機関の失火検出装置。 - 前記センサ素子を加熱する加熱手段を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の内燃機関の失火検出装置。
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JP2003109464A JP2004316498A (ja) | 2003-04-14 | 2003-04-14 | 内燃機関の失火検出装置 |
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-
2003
- 2003-04-14 JP JP2003109464A patent/JP2004316498A/ja not_active Withdrawn
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DE112008003323T5 (de) | 2007-11-27 | 2011-03-03 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Luftbrennstoffverhältnissensor und Steuergerät für einen Verbrennungsmotor |
US8131451B2 (en) | 2007-11-27 | 2012-03-06 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Air-fuel ratio sensor and control apparatus for internal combustion engine |
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