JP2004310843A - 追記型光記録媒体とその記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】青色レーザ波長以下の領域、特に450nm以下の波長領域で高密度の記録再生を行っても、また、転写性のよい浅溝基板を用いた場合でも容易に記録再生でき、記録感度、変調度、ジッタといったような記録特性や、パワーマージンの改善を実現できる追記型光記録媒体とその記録方法の提供。
【解決手段】案内溝を有する基板上に直接又は無機層を介して記録層を有し、2値レベルのランダム記録を行った場合の記録マーク部の変形の最大高さHが50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、1≦H/D≦2.5という関係を満足し、450nm以下の波長の光により記録再生可能であることを特徴とする追記型光記録媒体とその記録方法。
【選択図】 図1
【解決手段】案内溝を有する基板上に直接又は無機層を介して記録層を有し、2値レベルのランダム記録を行った場合の記録マーク部の変形の最大高さHが50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、1≦H/D≦2.5という関係を満足し、450nm以下の波長の光により記録再生可能であることを特徴とする追記型光記録媒体とその記録方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、青色レーザ波長領域でも高密度の記録が可能な追記型光記録媒体(WORM:Write Once Read Many)に関する。
【0002】
【従来の技術】
超高密度の記録が可能となる青色レーザの開発は急速に進んでおり、それに対応した追記型光記録媒体の開発が行われている。
従来の追記型光記録媒体では、有機材料からなる記録層にレーザ光を照射し、主に有機材料の分解・変質による屈折率変化を生じさせることで記録ピットを形成させており、記録層に用いられる有機材料の光学定数や分解挙動が、良好な記録ピットを形成させるための重要な要素となっている。
従って、記録層に用いる有機材料としては、青色レーザ波長に対する光学的性質や分解挙動の適切な材料を選択する必要がある。即ち、未記録時の反射率を高め、またレーザの照射によって有機材料が分解し大きな屈折率変化が生じるようにするため(これによって大きな変調度が得られる)、記録再生波長は大きな吸収帯の長波長側の裾に位置するように選択される。
何故ならば、有機材料の大きな吸収帯の長波長側の裾は、適度な吸収係数を有し且つ大きな屈折率が得られる波長領域となるためである。
しかしながら、青色レーザ波長に対する光学的性質が従来並みの値を有する有機材料は未だ見出されていない。これは、青色レーザ波長近傍に吸収帯を持つ有機材料を得るためには、分子骨格を小さくするか又は共役系を短くする必要があるが、そうすると吸収係数の低下、即ち屈折率の低下を招くためである。
つまり、青色レーザ波長近傍に吸収帯を持つ有機材料は多数存在し、吸収係数を制御することは可能となるが、大きな屈折率を持たないため、大きな変調度を得ることができなくなる。
【0003】
青色レーザ対応の有機材料としては、例えば、特許文献1〜5に記載がある。
しかし、これらの公報では、実施例を見ても溶液と薄膜のスペクトルを測定しているのみで、記録再生に関する記載はない。
特許文献6〜8には、実施例に記録の記載があるものの、記録波長は488nmであり、また記録条件や記録密度に関する記載はなく、良好な記録ピットが形成できた旨の記載があるのみである。
特許文献9には、実施例に記録の記載があるものの、記録波長は430nmであり、また記録条件や記録密度に関する記載はなく、良好な変調度が得られた旨の記載があるのみである。
特許文献10〜19には、実施例に記録波長430nm、NA0.65での記録例があるが、最短ピットが0.4μmという低記録密度条件(DVDと同等の記録密度)である。
特許文献20には、記録再生波長は405〜408nmであるが、記録密度に関する具体的な記載がなく、14T−EFM信号の記録という低記録密度条件である。
【0004】
また、従来のCD、DVD系光記録媒体と異なる層構成及び記録方法に関して、以下のような技術が公開されている。
特許文献21には、基板/可飽和吸収色素含有層/反射層という層構成で、可飽和吸収色素の消衰係数(本発明でいう吸収係数)の変化により記録を行う技術が開示されている。
特許文献22には、基板/金属蒸着層/光吸収層/保護シ−トという層構成で、光吸収層によって発生した熱によって、金属蒸着層を変色又は変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献23には、基板/誘電体層/光吸収体を含む記録層/反射層という層構成で、記録層の膜厚を変えて溝部の深さを変えることにより記録を行う技術が開示されている。
特許文献24には、基板/光吸収体を含む記録層/金属反射層という層構成で、記録層の膜厚を10〜30%変化させることにより記録を行う技術が開示されている。
特許文献25には、基板/有機色素を含有する記録層/金属反射層/保護層という層構成で、基板の溝幅を未記録部に対して20〜40%広くすることにより記録を行う技術が開示されている。
【0005】
特許文献26には、基板/中間層/金属薄膜という層構成で、金属薄膜が変形しバブルを形成することにより記録を行う技術が開示されている。
特許文献27には、基板/光吸収層/記録補助層/光反射層という層構成で、記録補助層を凹状に変形させると共に、記録補助層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献28には、基板/光吸収層/多孔質な記録補助層/光反射層、或いは、基板/多孔質な記録補助層/光吸収層/光反射層という層構成で、記録補助層を凹状に変形させると共に、記録補助層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献29には、基板/多孔質な光吸収層/光反射層という層構成で、光吸収層を凹状に変形させると共に、光吸収層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献30には、基板/有機色素を含む記録層/記録補助層という層構成で、記録補助層と有機色素が相溶して、有機色素の吸収スペクトルを短波長側へシフトさせることで記録を行う技術が開示されている。
【0006】
特許文献31には、基板上に反射層と記録層の機能を有する複合機能層、保護層を順次形成した層構成で、基板と複合機能層がバンプを形成することで記録を行う技術が開示されている。なお、複合機能層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金との規定がある。
特許文献32には、基板上に金属薄膜層、変形可能な緩衝層、反射層、保護層を順次形成した層構成で、基板と金属薄膜層を変形させ、同時にこの変形部での緩衝層膜厚を薄くさせることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属薄膜層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金との規定がある。また、緩衝層としては、変形し易く適当な流動性を持つ樹脂が用いられ、変形を促進させるために色素を含有させても良いとの記載がある。
特許文献33には、基板上に金属薄膜層、緩衝層、反射層を順次積層した層構成で、基板と金属薄膜層を変形させ、同時にこの変形部での緩衝層膜厚と光学定数とを変化させることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属薄膜層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金が好ましいとの記載がある。また、緩衝層は色素と有機高分子の混合物からなり、記録再生波長近傍に大きな吸収帯を有する色素が用いられる。
【0007】
特許文献34には、基板上に金属記録層、バッファ層、反射層を順次積層した層構成で、基板と金属記録層を変形させ、同時にこの変形部でのバッファ層膜厚と光学定数とを変化させることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属記録層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金が好ましいとの記載がある。また、バッファ層は色素と樹脂の混合物からなり、記録再生波長近傍に大きな吸収帯を有する色素が用いられる。
しかし、これら金属薄膜層を用いた文献には、光源として400〜850nmの波長のレーザを用いることができるという記載はあるものの、実際に実施例で用いているのはCD−R用の780nmのレーザのみであって、CD−R程度の低記録密度の場合しか効果が確認されていない。しかも、評価項目はCNRであり、3Tのみのシングルパターンでの評価である。周知のように、2値記録では、ランダムパターンでの記録においてジッタ評価を行なわなければ実用上意味がない。従って、これらの文献に高密度の2値記録を実現できる技術が記載されているとは言えない。
【0008】
特許文献35には、記録層にフタロシアニンを用いてマルチレベル記録を行う発明が開示されているが、発明の対象はCD−R/RW用の媒体であり、実施の態様として具体的に説明されているのは、レーザ波長785nm、NA0.5の場合のみである。即ち、非常に低密度での多値記録に関する発明である上に、必須要件であるグルーブの幅Wの範囲を規定するためλ/NAを用いていることから、簡単に高密度記録用媒体に転用できるような内容の発明ではない。しかも、本発明者らの検討によれば、本発明のような波長450nm以下のレーザを用いた高密度記録では良好な多値信号は全く得られなかった。
特許文献36には、相変化材料などの記録層を、ZnS・SiO2などの保護層材料に変えてTeO層で挟み、記録層との接着性を改善し、ZnS・SiO2等のようにSが記録膜の中に拡散し特性が劣化するのを防止する発明が開示されているが、信頼性の向上のために本願発明とは全く異なる範囲の酸化度を有するTeOを用いており、該発明の効果も本願発明とは全く異なるものである。
【0009】
特許文献37〜38にはフタロシアニン色素を青色レーザ用媒体に適用して記録を行う発明が開示されているが、フタロシアニンが400nm付近に吸収領域を持つことは以前から知られており、単に記録により反射率変化が起こるというだけでは技術的に意味がない。また、2値記録ではランダムパターンが書き込めることが重要であるが、これらの文献には実施例としてシングルパターンによる記録とC/Nや変調度といった評価項目が示されているのみであって、ランダムパターンを書き込むための条件については記載も示唆もされていない。シングルパターンならば投入エネルギーの上昇と共に変調度が大きくなると考えられるが、変調度を大きくするために常識外の高いエネルギーを投入すれば基板変化も溝深さ以上に変形するはずであり、いくら変調度を大きくしてもランダムパターンが書き込めなければ2値記録として全く意味が無い。
特許文献39には本発明の一般式(1)で示したフタロシアニン化合物がCD−R用色素として記載されているが、青色領域のレーザで高密度に記録する手法については記載も示唆もされていない。青色領域のレーザを用いて高密度記録を行うに当っては本発明者らが発明した方法を以ってする以外に綺麗なアイパターンで良好なジッタを有する記録を行うことは不可能である。
【0010】
以上のように、上記従来技術は青色レーザ波長領域での光記録媒体の実現を狙ったものではなく青色レーザ波長領域で有効となる層構成や記録方法ではない。
特に、現在実用化されている青色半導体レーザの発振波長の中心である405nm近傍においては、従来の追記型光記録媒体の記録層に要求される光学定数と同程度の光学定数を有する有機化合物が殆ど存在しない。
また、405nm近傍で記録条件を明確にし、DVDよりも高記録密度で記録された例はない。
更に、上記特許文献における実施例の多くは従来のディスク構成での実験であり、また、従来のディスク構成と異なる構成も提案されてはいるが、そこに用いられる色素には従来と同じ光学特性と機能が要求されており、青色レーザ波長領域で、有機化合物を記録層に用いた追記型光記録媒体を容易に実現する層構成や記録原理、記録方式についての有効な提案はない。
【0011】
また、従来の有機化合物を記録層に用いた追記型光記録媒体では、変調度と反射率の確保の点から、記録再生波長に対し大きな屈折率と比較的小さな吸収係数(0.05〜0.07程度)を持つ有機化合物しか使用することができない。
即ち、有機化合物は記録光に対して大きな吸収能を持たないため、有機化合物の膜厚を薄膜化することが不可能であり、従って、深い溝を持った基板を使用する必要があった(有機化合物は通常スピンコート法によって形成されるため、有機化合物を深い溝に埋めて厚膜化していた)。
そのため、深い溝を有する基板の形成が非常に難しくなり、光情報記録媒体としての品質を低下させる要因になっていた。
更に、従来の有機化合物を記録層に用いた追記型光記録媒体では、記録再生波長近傍に有機化合物の主吸収帯が存在するため、有機化合物の光学定数の波長依存性が大きくなり(波長によって光学定数が大きく変動する)、レーザの個体差や環境温度の変化等による記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラー率といったような記録特性や反射率等が大きく変化するという問題があった。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−181524号公報
【特許文献2】
特開2001−158865号公報
【特許文献3】
特開2000−343824号公報
【特許文献4】
特開2000−343825号公報
【特許文献5】
特開2000−335110号公報
【特許文献6】
特開平11−221964号公報
【特許文献7】
特開平11−334206号公報
【特許文献8】
特開2000−43423号公報
【特許文献9】
特開平11−58955号公報
【特許文献10】
特開2001−39034号公報
【特許文献11】
特開2000−149320号公報
【特許文献12】
特開2000−113504号公報
【特許文献13】
特開2000−108513号公報
【特許文献14】
特開2000−222772号公報
【特許文献15】
特開2000−218940号公報
【特許文献16】
特開2000−222771号公報
【特許文献17】
特開2000−158818号公報
【特許文献18】
特開2000−280621号公報
【特許文献19】
特開2000−280620号公報
【特許文献20】
特開2001−146074号公報
【特許文献21】
特開平7−304258号公報
【特許文献22】
特開平8−83439号公報
【特許文献23】
特開平8−138245号公報
【特許文献24】
特開平8−297838号公報
【特許文献25】
特開平9−198714号公報
【特許文献26】
特許第2506374号公報
【特許文献27】
特許第2591939号公報
【特許文献28】
特許第2591940号公報
【特許文献29】
特許第2591941号公報
【特許文献30】
特許第2982925号公報
【特許文献31】
特開平9−265660号公報
【特許文献32】
特開平10−134415号公報
【特許文献33】
特開平11−306591号公報
【特許文献34】
特開平10−124926号公報
【特許文献35】
特開2002−334438号公報
【特許文献36】
特開2002−298436号公報
【特許文献37】
特開2002−301870号公報
【特許文献38】
特開2002−324337号公報
【特許文献39】
特開平10−45761号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点を解決し、青色レーザ波長以下の領域、特に450nm以下の波長領域で高密度の2値レベルによるランダムパターンの記録再生を行っても、また、転写性のよい浅溝基板を用いた場合でも容易に記録再生でき、記録感度、変調度、ジッタといったような記録特性や、パワーマージンの改善を実現できる追記型光記録媒体とその記録方法の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、次の1)〜9)の発明(以下、本発明1〜9という)によって解決される。
1) 案内溝を有する基板上に直接又は無機層を介して記録層を有し、2値レベルのランダム記録を行った場合の記録マーク部の変形の最大高さHが50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、1≦H/D≦2.5という関係を満足し、450nm以下の波長の光により記録再生可能であることを特徴とする追記型光記録媒体。
2) 案内溝のトラックピッチが0.25〜0.5μm、深さが20〜150nm、溝底幅が0.10〜0.25μmであり、未記録状態の反射率が2〜50%であることを特徴とする1)記載の追記型光記録媒体。
3) 案内溝の深さが30〜50nm、溝底幅が0.10〜0.22μmである2)記載の光学的情報記録用媒体。
4) 記録層が有機色素からなることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
5) 有機色素がテトラアザポルフィリンを主成分とすることを特徴とする4)記載の追記型光記録媒体。
6) テトラアザポルフィリンがフタロシアニンであることを特徴とする5)記載の追記型光記録媒体。
7) フタロシアニンが下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする6)記載の追記型光記録媒体。
【化2】
(式中、フタロシアニン骨格周辺の1〜16は周辺炭素原子位置を示し、フタロシアニン骨格に結合する4個の酸素原子は、1位又は4位、5位又は8位、9位又は12位、13位又は16位の炭素原子に結合している。また、R1はフッ素置換されたアルキル基、R2はフェニル基、又はアルキル基を有するフェニル基、R3はアルキル基、フッ素置換されたアルキル基、又は水素原子、MはVO又はTiOを表す。)
8) 基板の記録層側の面から入射するレーザにより記録・再生が行われることを特徴とする請求項1)〜7)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
9) 2値レベルのランダム記録を行った場合の記録マーク部の変形の最大高さHが50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、1≦H/D≦2.5という関係を満足するような記録パワー又は記録ストラテジで記録を行うことを特徴とする1)〜8)の何れかに記載の追記型光記録媒体の記録方法。
【0015】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明者等は、案内溝を有する基板上に直接又は無機層を介して記録層を有する媒体において、2値レベルのランダム記録を行った場合の記録マーク部の変形の最大高さHが50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、1≦H/D≦2.5という関係を満足するようにすれば、450nm以下の波長の光により記録再生可能で、かつ高い変調度と良好なジッタを有し、パワーマージンの広い追記型光記録媒体が実現できることを見出した。H/Dが1未満、或いはH/Dが2.5を越えた場合には、実用可能な2値レベルのランダム記録は実現できない。
また、トラックピッチ0.25〜0.5μm、深さ20〜150nm、溝底幅0.10〜0.25μmの案内溝を有する基板を用い、未記録状態の反射率が2〜50%となるようにすれば、更に好ましい記録特性を有する媒体が得られる。
【0016】
記録材料としては、ポリメチン系、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系各色素、又は金属錯体化合物などが挙げられる。
本発明では、短波長領域での光吸収能を有し、かつ分解・変質に起因した記録が可能なテトラアザポルフィリン(例えば、ナフタロシアニン、フタロシアニン、ポルフィラジン等)を主成分とする色素を用いることが好ましい。ここで主成分とするとは、後述する本発明の記録層としての機能を果すのに十分な量のテトラアザポルフィリンを用いることを意味するが、通常は特に他の目的が無い限り、テトラアザポルフィリンのみの記録層とする。
【0017】
しかし、従来のCD−R、DVD−Rのような基板/記録層/反射層という層構成において記録層にテトラアザポルフィリンを用いると、他の色素を用いた場合に比べて感度、高速対応、ジッタ、変調度、ピットデビエーション等の特性で劣る事が知られている。これは、テトラアザポルフィリンが分解しづらく、屈折率変化が小さいことに起因している。
また、テトラアザポルフィリンは波長依存性が大きく、その特性が不安定であるという大きな短所を有している。
更に、テトラアザポルフィリンは基本的に分解温度が高く、かつ分解の閾値が明瞭でないため、変形と分解のモード不一致が大きくなる。即ち、変形による記録領域と分解による記録領域の差が大きくなる。従って、次の(1)(2)のような問題が発生する。
(1)基板変形が大きくなり好ましくないが、基板変形が大きくないと変調度が発生しない。
(2)熱干渉が大きくなるため高線速記録に向かない。
【0018】
また、従来の基板/記録層(色素層)/反射層のような層構成では、色素層が記録機能と光吸収機能を兼ねているため、記録再生波長に対して大きな屈折率nと比較的小さな吸収係数kを有する色素を用いる必要があるが、例えばこの条件を満たす色素としてテトラアザポルフィリンを選択すると、その高い分解温度に到達させるには比較的厚い膜厚が必要となる(また、相変化型の光記録媒体に比べて基板の溝深さが非常に深くなる)。もしも色素層を薄膜化すると反射層での放熱によって記録ができないことになってしまう。しかし、色素層は変形受容層としても機能するため、色素層を厚くすると基板変形量の増大を招く。
色素層の厚膜化のデメリットを纏めると、(1)ジッタの悪化、(2)再生安定性の悪化、(3)変形量が拡大し、クロストークやトラッキングの不良、アドレスやウォブル信号の検出不能、(4)記録パワーマージンの悪化などが考えられる。
【0019】
本発明では、テトラアザポルフィリンとしてフタロシアニンやポルフィラジンを用いることにより、記録層の光吸収特性を一層向上させることができる。
特に、前記一般式(1)で表されるフタロシアニン色素は、700nm付近の主吸収帯と340nm付近の副吸収帯とを有しており、この色素を記録材料として用いることで、波長450nm以下のレーザの照射に対しても高い感度を示し、かつ高い反射率や高い変調度を与える良好な記録再生特性を備えた光記録媒体を得ることができる。また、この光記録媒体は、同時に波長750〜850nmのレーザ光に対しても高い感度を示し、かつ高い反射率や高い変調度を与える良好な記録再生特性を備えている。
また、本発明者らは、案内溝の深さを30〜50nm、溝底幅を0.10〜0.22μmとすることにより、ジッタ、変調度、パワーマージンが一層よくなることを見出した。
【0020】
更に、本発明8のように、基板の記録層側の面から入射するレーザにより記録・再生が可能な構成とすることにより、NAの大きなレーザの使用を可能にし、従来の追記型光記録媒体の記録層に要求される光学定数と同程度の光学定数が得ることが困難な青色レーザ波長以下の領域であっても、高密度化が図れ、かつ良好な記録再生特性が得られる。
また、転写性のよい浅溝基板でも記録再生が容易に行なえる追記型光記録媒体の層構成を提供し、ジッタ、変調度、パワーマージンの良好な追記型光記録媒体の層構成を提供する。
また、2値レベルのランダム記録を行った場合の記録マーク部の変形の最大高さHが50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、1≦H/D≦2.5という関係を満足するような記録パワー又は記録ストラテジで記録を行うことにより、本発明の追記型光記録媒体の特徴を最大限に活かすことができる。
【0021】
また、本発明では、次の理由で記録再生波長を450nm以下とすることが好ましく、これにより記録ピットを小さくし、記録密度を大きく向上させることができる。
(1)例えば記録再生波長を400nm近傍とすると、色素の主吸収帯は400nmよりも長波長側に位置させる必要があるが、500nmを越える波長領域に主吸収帯を有する色素では分子骨格が大きくなるため、分解特性に優れた材料が多数存在すること。
(2)色素の分解によって発生する分子や分子団の吸収波長は、ほぼ450nm以下に発生すること。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の層構成例の要部拡大断面図を、図1〜図3に示す。図1〜図2は、基板側からレーザを入射して記録再生を行う例、図3はカバー層側からレーザを入射して記録再生を行う例である。
図1の追記型光記録媒体は、片面に微細な凹凸状のプリフォーマットパターン(図示せず)を有する基板1、記録層2、反射層3、保護層4がこの順に積層された層構成を有する。
図2の追記型光記録媒体は、片面に微細な凹凸状のプリフォーマットパターン(図示せず)を有する基板1、記録層2、保護層4がこの順に積層された層構成を有する。
図3の追記型光記録媒体は、片面に微細な凹凸状のプリフォーマットパターン(図示せず)を有する基板1、反射層3、記録層2、カバー層5がこの順に積層された層構成を有する。
【0023】
基板1としては、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルペンテン、エポキシ樹脂、ポリエステル、非晶質ポリオレフィンなどの透明樹脂材料(好ましくはガラス転移温度Tgが100〜200℃)を所望の形状に成形し、その片面に所望のプリフォーマットパターンを転写したものや、所望の形状に形成されたガラス等の透明セラミックス板の片面に所望のプリフォーマットパターンが転写された透明樹脂層を密着したものなど、公知に属する任意の透明基板を用いることができる。
また、ディスク状光記録媒体(光ディスク)を構成する基板の場合には、中心部にセンタ孔を有する円盤状に形成する。
なお、基板1の作製は、公知の方法で行うことができる。
【0024】
プリフォーマットパターンは、少なくとも記録・再生用レーザビームを記録トラックに追従させるためのビーム案内部を含んで構成される。例えば、ビーム案内部を、センタ孔と同心の渦巻状又は同心円状に形成された案内溝をもって構成し、当該案内溝に沿ってアドレスピットやクロックピット等のプリピットを形成することができる。
プリピットを案内溝上に重ねて形成する場合には、両者を光学的に識別できるようにするため、案内溝とプリピットとをそれぞれ異なる深さに形成する。プリピットを相隣接する案内溝の間に形成する場合には、両者を同じ深さにすることもできる。
なお、ビーム案内部としては、案内溝に代えて、ウォブルピットを記録トラックに沿って形成することもできる。また、プリピットを省略し、案内溝のみで形成しても良い。
【0025】
テトラアザポルフィリンはよく知られているように、長波長にQ帯、短波長にS帯という大きな吸収帯を有している。
従って、本発明の記録層の材料としては、テトラアザポルフィリンが好適であり、例えばフタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィラジンを挙げることができるが、中でもフタロシアニン、ポルフィラジンが特に好ましい。
それらの具体例を下記一般式(2)〜(10)に示す。一般式(2)〜(4)はナフタロシアニン、一般式(5)〜(7)はフタロシアニン、一般式(8)〜(10)はポルフィラジンである。
【化3】
【化4】
【化5】
【0026】
以下、上記一般式(2)〜(10)で表わされるテトラアザポルフィリンについて説明する。
式中、M、M1としてはIb族、IIa族、IIb族、IIIa族、IVa族、IVb族、Vb族、VIb族、VIIb族、VIII族の金属、又はそれらの酸化物、ハロゲン化物、水酸化物などが挙げられ、更に上記金属が置換基を有していてもよい。
上記金属としてはCu、Zn、Mg、Al、Ge、Ti、Sn、Pb、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、In、Pt、Pd等があり、酸化物としてはTiO、VO等があり、ハロゲン化物としてはAlCl、GeCl2、SiCl2、FeCl2、SnCl2、InCl2等があり、水酸化物としてはAl(OH)3、Si(OH)2、Ge(OH)2、Sn(OH)2等がある。
【0027】
更に、金属が置換基を有する場合の金属としては、Al、Ti、Si、Ge、Sn等があり、置換基としてはアリールオキシル基、アルコキシル基、トリアルキルシロキシル基、トリアリールシロキシル基、トリアルコキシシロキシル基、トリアリールオキシシロキシル基、トリチルオキシル基又はアシロキシル基等がある。
以下、置換基の例を更に具体的に例示するが、アルキル基及びアルコキシ基にについては、それぞれシクロアルキル基及びシクロアルコキシ基を含む。
アリールオキシル基:フェノキシル基、トリルオキシル基、アニシルオキシル基等。
アルコキシル基:アミロキシル基、ヘキシロキシル基、オクチロキシル基、デシロキシル基、ドデシロキシル基、テトラデシロキシル基、ヘキサデシロキシル基、オクタデシロキシル基、エイコシロキシル基、ドコシロキシル基等。
トリアルキルシロキシル基:トリメチルシロキシル基、トリエチルシロキシル基、トリプロピルシロキシル基、トリブチルシロキシル基等。
トリアリールシロキシル基:トリフェニルシロキシル基、トリアニシルシロキシル基、トリトリルシロキシル基等。
トリアルコキシシロキシル基:トリメトキシシロキシル基、トリエトキシシロキシル基、トリプロポキシシロキシル基、トリブトキシシロキシル基等。
トリアリールオキシシロキシル基:トリフェノキシシロキシル基、トリアニシロキシシロキシル基、トリトリルオキシシロキシル基等。
アシロキシル基:アセトキシル基、プロピオニルオキシル基、ブチリルオキシル基、バレリルオキシル基、ピバロイルオキシル基、ヘキサノイルオキシル基、オクタノイルオキシル基等。
【0028】
Qとしてはアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン、アルキル基又はアリール基でN置換されていてもよいアミノ基、アルキル基又はアリール基でN置換されていてもよいスルホンアミド基、ニトロ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等がある。これらはハロゲン、水酸基、アルコキシ基等で置換されていてもよい。
k、l、m、nは0又は1〜8の整数を表わし、k+l+m+n≧1であり、Qが複数個あるときは同一でも異なっていてもよく、Zの例としては−S−又は−SO2−が挙げられる。
Yはアリールオキシル基、アルコキシル基、トリアルキルシロキシル基、トリアリールシロキシル基、トリアルコキシシロキシル基、トリアリールオキシシロキシル基、トリチルオキシル基又はアシロキシル基を示し、2個のYは同一でも相違していてもよい。
【0029】
R1〜R4がアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、sec−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、t−アミル基、2−アミル基、3−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ドコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、4−メチルシクロヘキシル基などがある。
【0030】
R1〜R4が置換基を有するアルキル基の例としては、エステル基を有するアルキル基、アミド基を有するアルキル基、ヒドロキシル基を有するアルキル基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、ハロアルキル基、1−ジシクロヘキシルメチル基、1,1−ジシクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロプロピルメチル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、2−シクロヘキシルプロピル基、3−シクロヘキシルプロピル基等があり、更に、−(CR5R6)ySiR7R8R9で表わされる基(但し、R5〜R9は水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシル基、アリール基又はアリールオキシル基を示し、これらは同一でも異なっていてもよく、yは1〜30の整数を示す。)がある。
以上で示した基内のアルキル基はハロゲン等で置換されていてもよい。
R1〜R4がアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、アニシル基、フルオロフェニル基等のハロフェニル基などがある。
【0031】
上記テトラアザポルフィリンは、その他の色素を混合して用いる事もできる。その他の色素としてはポリメチン系色素、アントラキノン系色素、ダイオキシディン系色素、トリフェノジチアジン系色素、フェナントレン系色素、シアニン系色素、ジカルボシアニン系色素、メロシアニン系色素、ピリリウム系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、アズレン系色素、含金属アゾ染料、アゾ染料、アゾ系色素、スクアリリウム系色素、ポリエン系色素、ベーススチリル系色素、ホルマザンキレート系色素、クロコニウム系色素、インジゴイド系色素、メチン系色素、スルファイド系色素、メタンジチオールレート系色素等が挙げられる。また、アミニウム系色素などの各種クエンチャを添加した色素材料を用いることもできる。
【0032】
また、本発明では、上記テトラアザポルフィリン化合物の中でも、前記一般式(1)で示されるフタロシアニン化合物が特に好適に用いられる。
一般式(1)のフタロシアニン化合物において、R1の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロ−iso−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基などが挙げられる。R2の具体例としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,5−ジ−iso−プロピルフェニル基、2,5−ジ−tert−ブチルフェニル基などが挙げられる。R3となる原子団のうちアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分岐状のペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられ、フッ素置換されたアルキル基の具体例としてはR1で例示したのと同じものが挙げられる。
【0033】
フタロシアニン化合物(1)は、後述する方法によってフタロニトリル誘導体を合成し、それを必要な金属塩と共に強有機塩基である1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)等の存在下、メタノール、エタノール、n−ペンタノール等のアルコール溶媒中で反応させて合成することができる。その結果得られるフタロシアニン化合物は、種々の炭化水素系、エーテル系、アルコール系、芳香族系等の溶剤に容易に溶けて青緑色ないし緑色を呈する。これらの溶液を用いてポリカーボネート基板にスピンコートすると、均質な薄膜を形成することができる。
【0034】
このようにして得られた薄膜の吸収スペクトルは、通常のフタロシアニン化合物を用いた薄膜で見られるような可視部における吸光係数の低下が見られないので、光記録媒体等の用途にも適している。吸収スペクトルに関するこのような好ましい特性は、前記フタロシアニン化合物の有するフェニル基やフッ素置換されたアルキル基が嵩高いこと、及び中心にあるバナジル基やチタニル基が分子の非平面性を強くすることにより、吸光度低下の原因となる分子間の会合が防がれるためと推定される。
また、熱特性に関しては、フタロシアニン化合物(1)が有するフェニルメトキシ基の部分は一般に熱分解し易い構造と考えられており、実際にフタロシアニン化合物(1)も200〜350℃の温度範囲で発熱的に分解するので、追記型光記録媒体の素材として適切である。この他、フタロシアニン化合物(1)に含まれるフッ素原子は強い電子吸引性を持つため、電子供与性であるアルキル基等の置換基とは光吸収波長や熱安定性、光安定性に関して拮抗的に作用する。フタロシアニン化合物(1)は、これらの特徴的な原子団相互のバランスを考慮することで分子全体の特性を柔軟にコントロールすることができるため、特性の微妙な調整が求められる追記型光記録媒体の素材としても高い適応能力を持っている。
【0035】
フタロシアニン化合物(1)を合成するのに必要な、含フッ素系置換基を持ったフタロニトリル誘導体は、次の(イ)〜(ハ)の何れかの反応経路を通じて合成される含フッ素べンジルアルコール誘導体と、3−ニトロフタロニトリルとを反応させれば得ることができる。
(イ)ベンゼン誘導体と、含フッ素系のカルボン酸無水物又はカルボン酸ハロゲン化物とのフリーデルクラフツ反応によって、含フッ素アセトフェノン誘導体を作り、それを還元する。
(ロ)ベンゼン誘導体と含フッ素アセトン誘導体とをフリーデルクラフツ反応させる。
(ハ)ハロゲン化ベンゾイル誘導体と含フッ素不飽和炭化水素をフッ化物イオンの存在下に反応させて含フッ素アセトフェノン誘導体を作り、それを還元する。
【0036】
テトラアザポルフィリン層は、透明基板1のプリフォーマットパターン形成面上に、上記色素群より選択された色素の溶剤溶液をスピンコートして形成する。即ち、溝状のプリフォーマットパターン内に色素を充填した後、プリフォーマットパターンの間のランド部に付着した色素を選択的に除去し、透明基板1の表面を露出すると共に、プリフォーマットパターン内のみに色素を充填することによって形成する。なお、色素の溶剤としては、25℃における誘電率が80未満であり、色素を0.1重量%以上溶解させることができるものを用いる必要がある。溶解能力が0.1重量%より小さいと膜厚を確保することができない。具体的にはアルコール系溶剤やセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
また、後述するカバー層を設ける場合には、基板1のプリフォーマットパターン形成面上に成膜した反射層又は保護層上に、上記と同様にしてスピンコートによりテトラアザポルフィリン層を設ける。
【0037】
また、テトラアザポルフィリン層を形成するための誘電率の小さい溶剤の例としては、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミドなどのアミド;シクロヘキサンなどの炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコールなどのアルコール;2,2,3,3−テトラフロロプロパノールなどのフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などを挙げることができる。
上記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で又は二種以上併用して適宜用いることができる。塗布液中には更に酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤など各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0038】
更に、二座配位を取り得るキレート剤を含有させて、色素の褪色防止を図ることもできる。このようなキレート剤としては、無機酸類、ジカルボン酸類、オキシカルボン酸類、ジオキシ化合物類、オキシオキシム類、オキシアルデヒド及びその誘導体類、ジケトン及び類似化合物類、オキシキノン類、トロボロン類、N−オキシド化合物類、アミノカルボン酸及び類似化合物類、ヒドロキシルアミン類、オキシン類、アルジミン類、オキシアゾ化合物類、ニトロソナフトール類、トリアゼン類、ピウレット類、ホルマザン類及びジチゾン類、ビクアリド類、グリオキシム類、ジアミン及び類似化合物類、ヒドラジン誘導体類、チオエーテル類などが挙げられる。更に、イミノ基を有する誘導体も使用可能である。
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。
テトラアザポルフィリン層の膜厚は10〜200nmが好適である。10nmより薄いと吸収率が低下し光から熱への変換が不十分となるし、200nmより厚いと、体積が大き過ぎるため、形状変化や熱の伝達が不十分となる。
テトラアザポルフィリン層は単層でも2層以上の重層でもよい。
【0039】
次にテトラアザポルフィリン層の変質について説明する。
テトラアザポルフィリンを主成分とする色素材料は、隣接する層より熱を受け取るか又は色素自身が光を吸収し、その一部又は全部が分解、溶融、昇華等の熱的状態変化を起す。その結果、通常、色素材料は変質し、テトラアザポルフィリンの変質部分は反射層に癒着し、テトラアザポルフィリン層を境目として剥離した際、変質部は反射層に非変質部は記録補助層にそれぞれ優先的に密着して剥離される。
反射層を有する実施の形態では反射層/テトラアザポルフィリン層界面が反射の担い手であるため、反射層界面に変質した色素材料が癒着することは、その部分からの反射光を制御する意味で重要である。
【0040】
また、変質の様子や範囲を確認しながら、記録パワー、記録パルスの長さ、種類を決める必要がある。変質部の色素はその構造が破壊されているため、溶解性が変化する。その変化は、溶け難い方向に変化する場合と、色素が分解して低分子化し溶解性が上がる、つまり溶け易い方向に変化する場合とがある。溶解性の変化について変質部と非変質部とで差が生じれば変質の範囲を確認することができる。
本発明者等の検討によれば、変質部の溶解性が下がり、溶け難い方向に変質することが、色素の溶融、分解、昇華などの熱的状態変化に伴う光学的特性の変化である反射率の低下の方向と一致し好適であった。
本発明では、特に記録後の未記録部における見掛け上の光学特性の変化量が、記録前の未記録部の光学特性の値に対して相対値で±50%以内となるように設定することが好ましく、そうすれば、未記録部の反射率が記録により変化しないため、記録領域と非記録領域で反射率の変動によるトラックオフなどが起きなくなる。
【0041】
また、本発明では必要に応じて光反射機能を有する層(反射層)を設けることができる。光反射機能を有する層には、再生光の波長で反射率の十分高い材料、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Cr、Pdから選ばれる金属を単独で或いは合金にして用いることができる。中でもAu、Al、Agは、反射率が高く反射層の材料として適している。
また、上記の材料を主成分とし、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属及び半金属を含む材料でもよい。
中でもAgを主成分とするものは、コストが安いこと、高反射率が出易いことから特に好ましい。
金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
反射層の膜厚は、50〜100nm程度が好ましい。
反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。
【0042】
保護層は、例えばSiO、SiN、AlN等の無機材料や、光硬化性樹脂などの有機材料を用いて形成することができる。
無機保護層は、真空成膜法によって形成することができ、有機保護層は、反射層上に光硬化性樹脂膜(例えば、大日本インキ化学工業社製のSD1700、SD318、SD301)をスピンコートした後、樹脂硬化光を照射することによって形成できる。
また、高密度化を図るため高NAのレンズを用いる場合には、保護層を光透過性とする必要がある。
更に、高NA化する場合には、再生光が透過する部分の厚さを薄くする必要がある。これは、高NA化に伴い、光学ピックアップの光軸に対してディスク面が垂直からズレる角度(いわゆるチルト角、光源の波長の逆数と対物レンズの開口数の積の2乗に比例する)により発生する収差の許容量が小さくなるためであり、このチルト角が基板の厚さによる収差の影響を受け易いためである。
従って、基板の厚さを薄くしてチルト角に対する収差の影響をなるべく小さくするようにする必要がある。
【0043】
そこで、例えば基板上に凹凸を形成して記録層とし、その上に反射層を設け、更にその上に光を透過する薄膜である光透過性の保護層(カバー層)を設けるようにし、カバー層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体や、基板上に反射層を設け、その上に熱受容層、光吸収層を形成して記録層とし、更にその上に光透過性を有する保護層(カバー層)を設けるようにし、カバー層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体が提案されている。このようにすれば、カバー層を薄型化していくことで対物レンズの高NA化に対応可能である。つまり、薄いカバー層を設け、このカバー層側から記録再生することで、更なる高記録密度化を図ることができる。
なお、このような保護層(カバー層)は、ポリカーボネートシートや紫外線硬化型樹脂により形成する方法、又は、厚さ70μmのシート(カバー基板)を厚さ30μmの接着剤で固定する方法が一般的である。接着剤で固定する場合の保護層と接着層の合計厚みは0.1mm程度が好適である。
【0044】
ディスク形態の場合には、反射層を内側に挟む形で2枚の基板を貼り合わせた構造としてもよいし、2枚の基板を貼り合せないで、いわゆる単板の構造としてもよい。更に、必要に応じて接着層や保護層を設けた2枚の基板を貼り合わせた構造としてもよい。これらの2枚の基板は、それぞれが記録層を有しており、光ビームをどちらか一方の基板から照射することによって、それぞれの記録層に情報の記録を行い、光ビームを照射する側の基板、第一の光吸収層、第二の光吸収層及び熱受容層が上記光ビームのうち40%以上を透過する構成とする。
追記型光記録媒体のアドレス情報等をプリフォーマット信号として基板に予め形成させることができる。そのための形態としては、凹又は凸形状のエンボスピット方式、或いは、情報に応じてグルーブ部やランド部の幅を変調するウォーブル方式が可能である。ウォーブル方式としては、グルーブ部の内周側と外周側の何れか一方又は両方の側面を蛇行させる方式を採用することができる。
【0045】
本発明では片面に2層の記録再生可能な層を有する媒体とすることもできる。その構成は、2枚の基板にそれぞれ記録層及び記録補助層を形成し、両者を透明な材料で貼り合わせ、どちらか一方の基板側からレーザ光を入射し、両方の記録層に対して情報の記録及び再生を行うものである。貼り合わせ材料としては、紫外線硬化樹脂、両面テープなど平坦性の良好なものを用いる。
また本発明では、1枚の基板上に2層の記録再生可能な層を形成した媒体とすることもできる。その構成は、1枚の基板に2層の記録層及び記録補助層を形成し、基板側或いは基板と反対側からレーザ光を入射し、両方の記録層に対して情報の記録及び再生を行うものである。
これらの場合において、記録再生用のレーザ光が入射する側の基板に形成された記録層及び記録補助層を第一層、反対側の層を第二層とすると、第二層に情報を記録したり、第二層の情報を再生するためには、第一層は記録再生用レーザ光の少なくとも一部を透過しなければならない。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を、実施例及び参考例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、参考例で得られた色素化合物1〜8の構造(部分構造)を、後記表1に示す。
【0047】
参考例1(化合物1の合成)
(a)ベンジルアルコール誘導体の合成
冷却管をつけた反応フラスコに2,2,2−トリフルオロアセトフェノン5.0g、アルミニウムトリイソプロポキシド11.8g、イソプロピルアルコール100mlを仕込み、撹拌しながら還流温度まで昇温し、更に同温度で1.5時間撹拌した。加熱を止めて放冷した後、反応液を氷水1000ml中に排出し、20%塩酸でpH3にした後、トルエン200mlで抽出した。トルエン層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエンを留去し5.1gの目的化合物を得た。マススペクトルにより分子量ピーク(176)を、IRスペクトルよりνOH=3500cm−1、νCF=1120〜1170cm−1の吸収ピークを確認した。
(b)フタロニトリル誘導体の合成
反応フラスコに、(a)で得たアルコール5g、無水炭酸カリウム7.9g、ジメチルスルホキシド30ml、3−ニトロフタロニトリル4.5gを仕込み、窒素気流下70℃で4時間撹拌した後、反応物を水1000mlに注加し、析出した結晶を瀘集、乾燥して、6gの目的化合物を得た。この化合物の分析データは下記の通りであった。
・IRスペクトル(KBr):2230cm−1(νCN)、1140〜1180cm−1(νCF)
・マススペクトル:302(M+)
・融点:165〜167℃
・1H−NMR(CDC13):δ(ppm from TMS)5.6(1H,q),7.1(1H,d),7.4〜7.6(7H,m)
(c)環化反応
反応フラスコに、(b)で得たフタロニトリル誘導体5g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(以下、DBUと略称)3.8g、n−ペンタール(2−メチル−2−ブテン)40ml、三塩化バナジウム0.87gを仕込み、窒素気流下110℃で18時間撹拌した。反応液をメタノール500mlに注加し、更に水500mlを加え、析出した結晶を瀘集、乾燥して5.4gの粗製品を得た。この粗製品3gをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=20:1)により分取精製し、1.4gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物はIRスペクトル(KBr)において1140〜1180cm−1にνCFの特性吸収を持ち、溶解度は1,2−ジクロルエタン、トルエンの何れに対しても室温で2%以上であった。また、DSC分析において300℃付近に発熱ピークが見られ(Ti293℃、Tp310℃)、TG分析において250℃付近から減量が観測された。また、元素分析値は次のようであった。
【0048】
参考例2(化合物2の合成)
(a)アセトフェノン誘導体の合成
冷却器を付けた反応フラスコに無水塩化アルミニウム40g、二硫化炭素40mlを仕込み、撹拌しながら−10℃まで冷却し、メシチレン24gを30分かけて滴下した。次に、同温度で無水トリフルオロ酢酸21gを40分かけて滴下した。その後、−12〜−8℃で2.5時間撹拌した。反応液を氷水1000mlに注加し、トルエン300mlで抽出した。抽出液を3%炭酸ナトリウム水溶液1000mlで、次いで水1000mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、トルエン、メシチレンを留去して淡黄色オイル状物質13gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(216)を、IRスペクトルでνCO(1740cm−1)、νCF(1150〜1200cm−1)の吸収ピークを確認した。
(b)ベンジルアルコール誘導体の合成
反応フラスコに、(a)で得たアセトフェノン誘導体13g、イソプロピルアルコール150mlを仕込み撹拌しながら40℃で水素化ホウ素ナトリウム7.5gを加えた。40℃で2時間撹拌した後、室温まで放冷した反応液を水2000mlに加えトルエンで抽出した。抽出液を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮して淡黄色のオイル状物質12gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(218)を、IRスペクトルでνCOの吸収のないことと、νOH(3500cm−1)、νCF(1120〜1170cm−1)の吸収ピークを確認した。
(c)フタロニトリル誘導体の合成
反応フラスコに、(b)の生成物12g、無水炭酸カリウム15g、ジメチルスルホキシド50mlを仕込み、撹拌しながら8−ニトロフタロニトリル8.3gをジメチルスルホキシド50mlに溶かした溶液を60℃で90分かけて滴下した。その後、60℃で3時間撹拌した後、反応物を水1000mlに注加し、析出した結晶を濾集、乾燥して、16gの淡黄色固体を得た。この化合物の分析デー夕は下記の通りであった。
・IRスペクトル(KBr):2240cm−1(νCN)、1140〜1180cm−1(νCF)
・マススペクトル:344(M+)
・融点:170〜175℃
(d)環化反応
反応フラスコに、(c)で得たフタロニトリル誘導体4g、DBU2.7g、n−ペンタール40mlを仕込み、撹拌しながら窒素気流下で90℃に昇温し、三塩化バナジウム0.6gを投入した後、100℃で6時間撹拌した。加熱を止め、反応液をメタノール300mlに注加し、更に水100mlを加えて析出物を濾集、乾燥し、3.3gの粗製品を得た。この粗製品をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=50:1)により精製し、1.5gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物は、IRスペクトルにおいて1130〜1180cm−1にνCFの、2920cm−1にνCH(メチル基)の特性吸収を持ち、溶解度は室温で1,2−ジクロルエタンに2%以上、トルエンに2%以上、2−エトキシエタノールに1%以上であった。また、DSC分析において350℃付近に発熱ピークが見られ(Ti344℃、Tp355℃)、TG分析において250℃付近から減量が見られた。
【0049】
参考例3(化合物3の合成)
(a)フタロニトリル誘導体の合成
反応フラスコに、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−フェニル−2−プロパノール10g、無水炭酸カリウム16g、N,N−ジメチルホルムアミド25mlを仕込み撹拌しながら、50〜60℃で3−ニトロフタロニトリル4.8gを40分かけて仕込んだ。その後、70℃で6時間撹拌した後、反応物を水600mlに注加し、析出した結晶を濾集、乾燥して、5.2gの固体を得た。この化合物は、融点150〜152℃であり、マススペクトルで分子量ピーク(370)が確認された。
(b)環化反応
反応フラスコに、(a)で得たフタロニトリル誘導体5.2g、DBU5.1g、n−ペンタール30ml、三塩化バナジウム0.73gを仕込み、窒素気流下90〜95℃で8時間撹拌した。反応液をメタノール600mlに注加し、水80mlを加え析出物を濾集、乾燥して、2.4gの粗製品を得た。この粗製品をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=80:1)により精製し、1.1gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物は、室温で1,2−ジクロルエタンに2%以上溶解した。また、DSC分析において300℃付近に発熱ピークが見られ(Ti296℃、Tp311℃)、TG分析において250℃付近から減量が観測された。
【0050】
参考例4(化合物4の合成)
参考例3の(b)の反応操作において、三塩化バナジウム0.73gの代りに四塩化チタン0.5gを用い、他の操作は参考例3と同様にしてフタロシアニン化合物0.8gを得た。この化合物は室温で1,2−ジクロルエタンに2%以上溶解した。また、DSC分析において300℃付近に発熱ピークが見られ(Ti288℃、Tp315℃)、TG分析において250℃付近から減量が観測された。
【0051】
参考例5(化合物5の合成)
(a)アセトフェノン誘導体の合成
冷却器を付けた反応フラスコに、無水塩化アルミニウム20g、二硫化炭素20mlを仕込み、撹拌しながら−15℃まで冷却し、メシチレン12gを30分かけて摘下した。次に、同温度で無水ペンタフルオロプロピオン酸15.5gを30分かけて滴下した。その後、−10〜−18℃で3.5時間撹拌した。反応液を氷水500mlに注加し、トルエン200mlで抽出した。トルエン層を3%炭酸ナトリウム水溶液500mlで、次いで水1000mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、トルエン層のトルエン、メシチレンを留去し微黄色の油状物質5.8gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(266)を、IRスペクトルでνCO(1740cm−1)、νCF(1140〜1260cm−1)のピークを確認した。
(b)ベンジルアルコール誘導体の合成
反応フラスコに、(a)で得たアセトフェノン誘導体5.3g、イソプロピルアルコール50mlを仕込み、撹拌しながら40〜50℃で水素化ホウ素ナトリウム2.6gを加えた。次いで40℃で2時間撹拌した後、反応液を水700mlに注加し、トルエンで抽出した。トルエン層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮して淡黄色の液体5.4gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(268)、IRスペクトルでνCOの吸収のないことと、νOH(3500cm−1)、νCF(1130〜1210cm−1)の吸収ピークを確認した。
(c)フタロニトリル誘導体の合成
反応フラスコに、(b)で得たアルコール5.3g、無水炭酸カリウム5.5g、3−ニトロフタロニトリル3.5g、ジメチルスルホキシド50mlを混合し、60℃で2時間撹拌した後、加熱を止め、反応混合物を水500mlに注加し、析出した結晶を濾集、乾燥して、7.8gの白色固体を得た。この化合物の分析デー夕は、下記の通りであった。
・IRスペクトル(KBr):2250cm−1(νCN)、1140〜1210cm−1(νCF)
・マススペクトル:394(M+)
・融点:155〜158℃
(d)環化反応
反応フラスコに、(c)で得たフタロニトリル誘導体7.2g、DBU3.5g、n−ペンタール30ml、三塩化バナジウム1.6gを仕込み、撹拌しながら昇温し、窒素気流下100℃で20時間撹拌した。加熱を止め、反応液をメタノール400mlに注加し、不溶物を濾別した後、濾液に水100mlを加え、析出物を濾集、乾燥して、5.4gの粗製品を得た。この粗製品3gをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン)により分取精製し、0.4gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物は、室温で1,2−ジクロルエタンに5%以上溶解した。また、DSC分析において250〜300℃付近に発熱ピークが見られ(Ti224℃、Tp248℃,294℃)、TG分析において200℃付近から減量が観測された。
【0052】
参考例6(化合物6の合成)
(a)アセトフェノン誘導体の合成
参考例2の(a)の反応繰作において、メシチレン24gの代りに2,5−ジイソプロピルベンゼン32gを用いた点以外は、参考例2の(a)と同様にして目的とするケトン8.5gを得た。マススペクトルにより分子量ピーク(258)を、IRスペクトルでνCO(1720cm−1)、νCF(1150〜1200cm−1)のピークを確認した。
(b)ベンジルアルコール誘導体の合成
上記(a)で得たケトン4.0gを原料として、参考例2の(b)と同様にして還元反応を行ない、目的とするアルコール2.2gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(260)を、IRスペクトルでνOH(3500cm−1)、νCF(1130〜1170cm−1)のピークを確認した。
(c)フタロニトリル誘導体の合成
上記(b)で得たアルコール2.2gを、参考例2の(c)と同様にして3−ニトロフタロニトリルと反応させ、オイル状の目的化合物2.4gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(386)、νCN(2240cm−1)、νCF(1150〜1180cm−1)のピークを確認した。
(d)環化反応
上記(c)で得たフタロニトリル誘導体2.4gを、参考例2の(d)と同様にして三塩化バナジウムと反応させ粗製品1.0gを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン)により精製し、0.2gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物は室温で1,2−ジクロルエタンに5%以上溶解した。
【0053】
参考例7(化合物7の合成)
(a)アセトフェノン誘導体の合成
参考例2の(a)の反応操作において、メシチレン24gの代りに2,5−ジ−tert−ブチルベンゼン38gを用いた点以外は参考例2の(a)と同様にして、目的とするケトン13gを得た。マススペクトルにより分子量ピーク(286)を、IRスペクトルでνCO(1720cm−1)、νCF(1150〜1200cm−1)のピークを確認した。
(b)ベンジルアルコール誘導体の合成
上記(a)で得たケトン13gを原料として、参考例2の(b)と同様にして還元反応を行ない、目的とするアルコール7.3gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(288)を、IRスペクトルでνOH(3400〜3550cm−1)、νCF(1130〜1170cm−1)のピークを確認した。
(c)フタロニトリル誘導体の合成
上記(b)で得たベンジルアルコール誘導体7.3gを、参考例2の(c)と同様にして3−ニトロフタロニトリルと反応させ、7.5gの目的化合物を得た。マススペクトルで分子量ピーク(414)、IRスペクトルでνCN(2250cm−1)、νCF(1150〜1180cm−1)を確認した。
(d)環化反応
上記(c)で得たフタロニトリル誘導体4.0gを、参考例2の(d)と同様にして三塩化バナジウムと反応させ、粗製品0.87gを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン)により精製し、0.11gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物は室温で1,2−ジクロルエタンに5%以上溶解した。
【0054】
参考例8(化合物8の合成)
(a)アセトフェノン誘導体の合成
反応容器に塩化ベンゾイル14g、ジメチルホルムアミド50ml、粉砕したフッ化カリウム23gを仕込み、−40℃に冷却してヘキサフルオロプロペン0.22モルを加え、容器を密閉して室温に戻した。オートクレーブ中で撹拌しながら120℃に昇温し、6時間加熱した。加熱を止めて放冷した後、反応液を水1000mlに注加し、生成物をジエチルエーテルで抽出した。抽出層を炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を除いた後、真空蒸留(80〜82℃/40mmHg)により目的物15gを得た。マススペクトルにより分子量ピーク(274)を、IRスペクトルでνCO(1700cm−1)、νCF(1140〜1200cm−1)のピークを確認した。
(b)ベンジルアルコール誘導体の合成
反応容器に、(a)で得たケトン15g、イソプロピルアルコール150mlを仕込み、撹拌しながら40℃に昇温し、水素化ホウ素ナトリウム8.5gを加えた。40℃で3時間撹拌した後、反応液を水2000mlに加え、トルエンで抽出した。抽出層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去して油状の目的物14gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(276)を、IRスペクトルでνOH(3500cm−1)、νCF(1120〜1200cm−1)のピークを確認した。
(c)フタロニトリル誘導体の合成
反応フラスコに、(b)で得たアルコール14g、無水炭酸カリウム17g、ジメチルスルホキシド40mlを仕込み、撹拌しながら、3−ニトロフタロニトリル7.3gを50〜60℃で90分かけて仕込んだ。次いで、60℃で5時間撹拌した後、反応物を水1000mlに注加し、生成物をトルエンで抽出した。抽出層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮して11gの目的化合物を得た。マススペクトルにより分子量ピーク(402)、νCN(2240cm−1)、νCF(1140〜1210cm−1)のピークを確認した。
(d)環化反応
反応フラスコに、(c)で得たフタロニトリル誘導体4g、DBU2.3g、n−ペンタール20mlを仕込み、撹拌しながら窒素気流下90℃に昇温し、次いで三塩化バナジウム0.52gを投入して90〜100℃で10時間撹拌した。加熱を止め、反応液をメタノール300mlに注加し、更に水20mlを加え、析出物を濾集、乾燥して粗製品2.3gを得た。この粗製品をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=60:1)により精製し、1.2gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物は、室温で1,2−ジクロルエタンに5%以上溶解した。また、DSC分析において発熱ピーク(Ti240℃、Tp285℃)が見られ、TG分析において220℃付近から減量が観測された。
【0055】
表1に参考例1〜8の各フタロシアニン化合物(色素)の置換基と中心金属、及び四塩化炭素溶液中の吸収スペクトルの極大波長λmax(nm)を示したが、これらは400nm付近にも吸収能を有し本発明においても有効である。
【表1】
【0056】
実施例1〜8
トラックピッチ0.43μm、溝底幅0.14μm、溝深さ50nmの案内溝を有するポリカーボネート基板上に、記録層として、参考例1〜8で合成したフタロシアニン色素をそれぞれスピンコートにより塗布し、その上に反射層としてAgを厚さ1000Åスパッタし、その上に、保護層として大日本インキ化学工業社製のSD1700を膜厚5μm積層して、図1に示す層構成の実施例1〜8の光記録媒体を得た。
これらの光記録媒体に対し、パルステック工業社製の光ディスク評価装置DDU−1000(波長:405nm、NA:0.65)を用いて、下記の記録条件で記録再生を行った。
図4に、代表例として実施例3の光記録媒体のアイパターンを示す。
これまで色素のみからなる記録層では青色領域のレーザによる記録再生は非常に困難であるとされてきたが、本発明の光記録媒体は非常にきれいなアイが開いており、波形の滲みなども確認できず、ジッタも7.8%と非常に良好な値を示した。その他の実施例についても同様のアイパターンが得られた。
図5に、代表例として実施例1、3のパワー依存性を示す。
どちらも似たようなジッタとパワー依存性を示し、良好な媒体特性を有していることが分る。その他の実施例についても同様のパワー依存性が得られた。
図6〜図8に、実施例3の光記録媒体のAFM観察による記録ピット部の基板変形の様子を示す。図6は斜視図、図7は上視図、図8はマークの断面図(図7のX−X断面図)である。このAFM観察は、テープによって銀反射膜側を銀反射膜とフタロシアニン色素との界面において剥がし、更に基板上のフタロシアニン色素をエタノールで洗い流した後、基板表面の観察を行ったものである。
7.8%という良好なジッタを示した実施例3の光記録媒体のマークの基板変形は、50nmの基板溝深さよりも大きい(約67.75nm)ことが分る。
下記表2に、各実施例の光記録媒体の最適ジッタとその時のマークの最大基板変形高さ、変調度、反射率、パワーマージンを纏めて示す。最大変形高さは何れもAFM断面図測定結果から割り出したものである。
【0057】
【表2】
表2から分るように、全ての光記録媒体においてジッタ9%以下、反射率20%以上、変調度30%以上と良好な結果を示した。これらの実施例において記録された記録マーク部の変形の最大高さは何れも50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとの関係が1≦H/D≦2.5という式で表される場合において非常に良好な媒体特性を示すことが分った。
また、記録層色素としてポルフィラジンを用いても同様に好適な結果が得られた。
【0058】
実施例9〜16
反射層を設けなかった点以外は実施例1〜8と同様にして、図2に示す層構成の実施例9〜16の光記録媒体を作成し、実施例1〜8と同様にして記録再生を行った結果、何れの媒体についても、ジッタ9%以下、反射率5%以上、変調度30%以上という良好な結果を示した。
【0059】
実施例17〜24
実施例1〜8と同じポリカーボネート基板上に、反射層としてAgを厚さ1000Åスパッタし、その上に、記録層として、参考例1〜8で合成したフタロシアニン色素をそれぞれスピンコートにより塗布し、その上に、厚さ0.1mmのカバー層を紫外線硬化樹脂により貼り合わせて、図3に示す層構成の実施例17〜24の光記録媒体を得た。
これらの光記録媒体に対し、実施例1〜8と同様にして記録再生を行った結果、何れの媒体についても、ジッタ9%以下、反射率20%以上、変調度30%以上という良好な結果を示した。
【0060】
比較例1−8
実施例1〜8に対し、最大基板変形高さが120nm以上になるように記録パワーを調整し、ストラテジを最適化して記録を行ったが、どれもジッタで12%以上となり、隣のマークへ干渉していることが分った。
【0061】
比較例9−16
実施例1〜8に対し、最大基板変形高さが30〜50nmになるように記録パワーを調整し、ストラテジを最適化して記録を行ったが、どれもジッタは10%以下にならず、特に変調度は全て45%以下となった。
【0062】
なお、上記実施例においては、ディスク状光記録媒体を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばカード状、スティック状、テープ状などの、他の形態の追記型光記録媒体にも応用できることは勿論である。
以上の実施例から、本発明の光記録媒体の層構成と記録原理が、青色レーザ波長対応の有機材料からなる追記型光記録媒体、更には高変調度が確保できる追記型光記録媒体の実現に非常に有効であることが確認できた。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、450nm以下の波長領域で高密度の2値レベルによるランダムパターンの記録再生を行っても、また、転写性のよい浅溝基板を用いた場合でも容易に記録再生でき、記録感度、変調度、ジッタといったような記録特性や、パワーマージンの改善を実現できる追記型光記録媒体とその記録方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の追記型光記録媒体の層構成の一例を示す要部拡大断面図。
【図2】本発明の追記型光記録媒体の層構成の他の例を示す要部拡大断面図。
【図3】本発明の追記型光記録媒体の層構成の更に他の例を示す要部拡大断面図。
【図4】実施例3の光記録媒体のアイパターンを示す図。
【図5】実施例1、3のパワー依存性を示す図。
【図6】実施例3の光記録媒体のAFM観察による記録ピット部の基板変形の様子を示す斜視図。
【図7】実施例3の光記録媒体のAFM観察による記録ピット部の基板変形の様子を示す上視図。
【図8】図7のX−X断面図。
【符号の説明】
1 基板
2 記録層
3 反射層
4 保護層
5 カバー層
【発明の属する技術分野】
本発明は、青色レーザ波長領域でも高密度の記録が可能な追記型光記録媒体(WORM:Write Once Read Many)に関する。
【0002】
【従来の技術】
超高密度の記録が可能となる青色レーザの開発は急速に進んでおり、それに対応した追記型光記録媒体の開発が行われている。
従来の追記型光記録媒体では、有機材料からなる記録層にレーザ光を照射し、主に有機材料の分解・変質による屈折率変化を生じさせることで記録ピットを形成させており、記録層に用いられる有機材料の光学定数や分解挙動が、良好な記録ピットを形成させるための重要な要素となっている。
従って、記録層に用いる有機材料としては、青色レーザ波長に対する光学的性質や分解挙動の適切な材料を選択する必要がある。即ち、未記録時の反射率を高め、またレーザの照射によって有機材料が分解し大きな屈折率変化が生じるようにするため(これによって大きな変調度が得られる)、記録再生波長は大きな吸収帯の長波長側の裾に位置するように選択される。
何故ならば、有機材料の大きな吸収帯の長波長側の裾は、適度な吸収係数を有し且つ大きな屈折率が得られる波長領域となるためである。
しかしながら、青色レーザ波長に対する光学的性質が従来並みの値を有する有機材料は未だ見出されていない。これは、青色レーザ波長近傍に吸収帯を持つ有機材料を得るためには、分子骨格を小さくするか又は共役系を短くする必要があるが、そうすると吸収係数の低下、即ち屈折率の低下を招くためである。
つまり、青色レーザ波長近傍に吸収帯を持つ有機材料は多数存在し、吸収係数を制御することは可能となるが、大きな屈折率を持たないため、大きな変調度を得ることができなくなる。
【0003】
青色レーザ対応の有機材料としては、例えば、特許文献1〜5に記載がある。
しかし、これらの公報では、実施例を見ても溶液と薄膜のスペクトルを測定しているのみで、記録再生に関する記載はない。
特許文献6〜8には、実施例に記録の記載があるものの、記録波長は488nmであり、また記録条件や記録密度に関する記載はなく、良好な記録ピットが形成できた旨の記載があるのみである。
特許文献9には、実施例に記録の記載があるものの、記録波長は430nmであり、また記録条件や記録密度に関する記載はなく、良好な変調度が得られた旨の記載があるのみである。
特許文献10〜19には、実施例に記録波長430nm、NA0.65での記録例があるが、最短ピットが0.4μmという低記録密度条件(DVDと同等の記録密度)である。
特許文献20には、記録再生波長は405〜408nmであるが、記録密度に関する具体的な記載がなく、14T−EFM信号の記録という低記録密度条件である。
【0004】
また、従来のCD、DVD系光記録媒体と異なる層構成及び記録方法に関して、以下のような技術が公開されている。
特許文献21には、基板/可飽和吸収色素含有層/反射層という層構成で、可飽和吸収色素の消衰係数(本発明でいう吸収係数)の変化により記録を行う技術が開示されている。
特許文献22には、基板/金属蒸着層/光吸収層/保護シ−トという層構成で、光吸収層によって発生した熱によって、金属蒸着層を変色又は変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献23には、基板/誘電体層/光吸収体を含む記録層/反射層という層構成で、記録層の膜厚を変えて溝部の深さを変えることにより記録を行う技術が開示されている。
特許文献24には、基板/光吸収体を含む記録層/金属反射層という層構成で、記録層の膜厚を10〜30%変化させることにより記録を行う技術が開示されている。
特許文献25には、基板/有機色素を含有する記録層/金属反射層/保護層という層構成で、基板の溝幅を未記録部に対して20〜40%広くすることにより記録を行う技術が開示されている。
【0005】
特許文献26には、基板/中間層/金属薄膜という層構成で、金属薄膜が変形しバブルを形成することにより記録を行う技術が開示されている。
特許文献27には、基板/光吸収層/記録補助層/光反射層という層構成で、記録補助層を凹状に変形させると共に、記録補助層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献28には、基板/光吸収層/多孔質な記録補助層/光反射層、或いは、基板/多孔質な記録補助層/光吸収層/光反射層という層構成で、記録補助層を凹状に変形させると共に、記録補助層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献29には、基板/多孔質な光吸収層/光反射層という層構成で、光吸収層を凹状に変形させると共に、光吸収層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献30には、基板/有機色素を含む記録層/記録補助層という層構成で、記録補助層と有機色素が相溶して、有機色素の吸収スペクトルを短波長側へシフトさせることで記録を行う技術が開示されている。
【0006】
特許文献31には、基板上に反射層と記録層の機能を有する複合機能層、保護層を順次形成した層構成で、基板と複合機能層がバンプを形成することで記録を行う技術が開示されている。なお、複合機能層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金との規定がある。
特許文献32には、基板上に金属薄膜層、変形可能な緩衝層、反射層、保護層を順次形成した層構成で、基板と金属薄膜層を変形させ、同時にこの変形部での緩衝層膜厚を薄くさせることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属薄膜層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金との規定がある。また、緩衝層としては、変形し易く適当な流動性を持つ樹脂が用いられ、変形を促進させるために色素を含有させても良いとの記載がある。
特許文献33には、基板上に金属薄膜層、緩衝層、反射層を順次積層した層構成で、基板と金属薄膜層を変形させ、同時にこの変形部での緩衝層膜厚と光学定数とを変化させることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属薄膜層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金が好ましいとの記載がある。また、緩衝層は色素と有機高分子の混合物からなり、記録再生波長近傍に大きな吸収帯を有する色素が用いられる。
【0007】
特許文献34には、基板上に金属記録層、バッファ層、反射層を順次積層した層構成で、基板と金属記録層を変形させ、同時にこの変形部でのバッファ層膜厚と光学定数とを変化させることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属記録層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金が好ましいとの記載がある。また、バッファ層は色素と樹脂の混合物からなり、記録再生波長近傍に大きな吸収帯を有する色素が用いられる。
しかし、これら金属薄膜層を用いた文献には、光源として400〜850nmの波長のレーザを用いることができるという記載はあるものの、実際に実施例で用いているのはCD−R用の780nmのレーザのみであって、CD−R程度の低記録密度の場合しか効果が確認されていない。しかも、評価項目はCNRであり、3Tのみのシングルパターンでの評価である。周知のように、2値記録では、ランダムパターンでの記録においてジッタ評価を行なわなければ実用上意味がない。従って、これらの文献に高密度の2値記録を実現できる技術が記載されているとは言えない。
【0008】
特許文献35には、記録層にフタロシアニンを用いてマルチレベル記録を行う発明が開示されているが、発明の対象はCD−R/RW用の媒体であり、実施の態様として具体的に説明されているのは、レーザ波長785nm、NA0.5の場合のみである。即ち、非常に低密度での多値記録に関する発明である上に、必須要件であるグルーブの幅Wの範囲を規定するためλ/NAを用いていることから、簡単に高密度記録用媒体に転用できるような内容の発明ではない。しかも、本発明者らの検討によれば、本発明のような波長450nm以下のレーザを用いた高密度記録では良好な多値信号は全く得られなかった。
特許文献36には、相変化材料などの記録層を、ZnS・SiO2などの保護層材料に変えてTeO層で挟み、記録層との接着性を改善し、ZnS・SiO2等のようにSが記録膜の中に拡散し特性が劣化するのを防止する発明が開示されているが、信頼性の向上のために本願発明とは全く異なる範囲の酸化度を有するTeOを用いており、該発明の効果も本願発明とは全く異なるものである。
【0009】
特許文献37〜38にはフタロシアニン色素を青色レーザ用媒体に適用して記録を行う発明が開示されているが、フタロシアニンが400nm付近に吸収領域を持つことは以前から知られており、単に記録により反射率変化が起こるというだけでは技術的に意味がない。また、2値記録ではランダムパターンが書き込めることが重要であるが、これらの文献には実施例としてシングルパターンによる記録とC/Nや変調度といった評価項目が示されているのみであって、ランダムパターンを書き込むための条件については記載も示唆もされていない。シングルパターンならば投入エネルギーの上昇と共に変調度が大きくなると考えられるが、変調度を大きくするために常識外の高いエネルギーを投入すれば基板変化も溝深さ以上に変形するはずであり、いくら変調度を大きくしてもランダムパターンが書き込めなければ2値記録として全く意味が無い。
特許文献39には本発明の一般式(1)で示したフタロシアニン化合物がCD−R用色素として記載されているが、青色領域のレーザで高密度に記録する手法については記載も示唆もされていない。青色領域のレーザを用いて高密度記録を行うに当っては本発明者らが発明した方法を以ってする以外に綺麗なアイパターンで良好なジッタを有する記録を行うことは不可能である。
【0010】
以上のように、上記従来技術は青色レーザ波長領域での光記録媒体の実現を狙ったものではなく青色レーザ波長領域で有効となる層構成や記録方法ではない。
特に、現在実用化されている青色半導体レーザの発振波長の中心である405nm近傍においては、従来の追記型光記録媒体の記録層に要求される光学定数と同程度の光学定数を有する有機化合物が殆ど存在しない。
また、405nm近傍で記録条件を明確にし、DVDよりも高記録密度で記録された例はない。
更に、上記特許文献における実施例の多くは従来のディスク構成での実験であり、また、従来のディスク構成と異なる構成も提案されてはいるが、そこに用いられる色素には従来と同じ光学特性と機能が要求されており、青色レーザ波長領域で、有機化合物を記録層に用いた追記型光記録媒体を容易に実現する層構成や記録原理、記録方式についての有効な提案はない。
【0011】
また、従来の有機化合物を記録層に用いた追記型光記録媒体では、変調度と反射率の確保の点から、記録再生波長に対し大きな屈折率と比較的小さな吸収係数(0.05〜0.07程度)を持つ有機化合物しか使用することができない。
即ち、有機化合物は記録光に対して大きな吸収能を持たないため、有機化合物の膜厚を薄膜化することが不可能であり、従って、深い溝を持った基板を使用する必要があった(有機化合物は通常スピンコート法によって形成されるため、有機化合物を深い溝に埋めて厚膜化していた)。
そのため、深い溝を有する基板の形成が非常に難しくなり、光情報記録媒体としての品質を低下させる要因になっていた。
更に、従来の有機化合物を記録層に用いた追記型光記録媒体では、記録再生波長近傍に有機化合物の主吸収帯が存在するため、有機化合物の光学定数の波長依存性が大きくなり(波長によって光学定数が大きく変動する)、レーザの個体差や環境温度の変化等による記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラー率といったような記録特性や反射率等が大きく変化するという問題があった。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−181524号公報
【特許文献2】
特開2001−158865号公報
【特許文献3】
特開2000−343824号公報
【特許文献4】
特開2000−343825号公報
【特許文献5】
特開2000−335110号公報
【特許文献6】
特開平11−221964号公報
【特許文献7】
特開平11−334206号公報
【特許文献8】
特開2000−43423号公報
【特許文献9】
特開平11−58955号公報
【特許文献10】
特開2001−39034号公報
【特許文献11】
特開2000−149320号公報
【特許文献12】
特開2000−113504号公報
【特許文献13】
特開2000−108513号公報
【特許文献14】
特開2000−222772号公報
【特許文献15】
特開2000−218940号公報
【特許文献16】
特開2000−222771号公報
【特許文献17】
特開2000−158818号公報
【特許文献18】
特開2000−280621号公報
【特許文献19】
特開2000−280620号公報
【特許文献20】
特開2001−146074号公報
【特許文献21】
特開平7−304258号公報
【特許文献22】
特開平8−83439号公報
【特許文献23】
特開平8−138245号公報
【特許文献24】
特開平8−297838号公報
【特許文献25】
特開平9−198714号公報
【特許文献26】
特許第2506374号公報
【特許文献27】
特許第2591939号公報
【特許文献28】
特許第2591940号公報
【特許文献29】
特許第2591941号公報
【特許文献30】
特許第2982925号公報
【特許文献31】
特開平9−265660号公報
【特許文献32】
特開平10−134415号公報
【特許文献33】
特開平11−306591号公報
【特許文献34】
特開平10−124926号公報
【特許文献35】
特開2002−334438号公報
【特許文献36】
特開2002−298436号公報
【特許文献37】
特開2002−301870号公報
【特許文献38】
特開2002−324337号公報
【特許文献39】
特開平10−45761号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点を解決し、青色レーザ波長以下の領域、特に450nm以下の波長領域で高密度の2値レベルによるランダムパターンの記録再生を行っても、また、転写性のよい浅溝基板を用いた場合でも容易に記録再生でき、記録感度、変調度、ジッタといったような記録特性や、パワーマージンの改善を実現できる追記型光記録媒体とその記録方法の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、次の1)〜9)の発明(以下、本発明1〜9という)によって解決される。
1) 案内溝を有する基板上に直接又は無機層を介して記録層を有し、2値レベルのランダム記録を行った場合の記録マーク部の変形の最大高さHが50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、1≦H/D≦2.5という関係を満足し、450nm以下の波長の光により記録再生可能であることを特徴とする追記型光記録媒体。
2) 案内溝のトラックピッチが0.25〜0.5μm、深さが20〜150nm、溝底幅が0.10〜0.25μmであり、未記録状態の反射率が2〜50%であることを特徴とする1)記載の追記型光記録媒体。
3) 案内溝の深さが30〜50nm、溝底幅が0.10〜0.22μmである2)記載の光学的情報記録用媒体。
4) 記録層が有機色素からなることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
5) 有機色素がテトラアザポルフィリンを主成分とすることを特徴とする4)記載の追記型光記録媒体。
6) テトラアザポルフィリンがフタロシアニンであることを特徴とする5)記載の追記型光記録媒体。
7) フタロシアニンが下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする6)記載の追記型光記録媒体。
【化2】
(式中、フタロシアニン骨格周辺の1〜16は周辺炭素原子位置を示し、フタロシアニン骨格に結合する4個の酸素原子は、1位又は4位、5位又は8位、9位又は12位、13位又は16位の炭素原子に結合している。また、R1はフッ素置換されたアルキル基、R2はフェニル基、又はアルキル基を有するフェニル基、R3はアルキル基、フッ素置換されたアルキル基、又は水素原子、MはVO又はTiOを表す。)
8) 基板の記録層側の面から入射するレーザにより記録・再生が行われることを特徴とする請求項1)〜7)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
9) 2値レベルのランダム記録を行った場合の記録マーク部の変形の最大高さHが50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、1≦H/D≦2.5という関係を満足するような記録パワー又は記録ストラテジで記録を行うことを特徴とする1)〜8)の何れかに記載の追記型光記録媒体の記録方法。
【0015】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明者等は、案内溝を有する基板上に直接又は無機層を介して記録層を有する媒体において、2値レベルのランダム記録を行った場合の記録マーク部の変形の最大高さHが50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、1≦H/D≦2.5という関係を満足するようにすれば、450nm以下の波長の光により記録再生可能で、かつ高い変調度と良好なジッタを有し、パワーマージンの広い追記型光記録媒体が実現できることを見出した。H/Dが1未満、或いはH/Dが2.5を越えた場合には、実用可能な2値レベルのランダム記録は実現できない。
また、トラックピッチ0.25〜0.5μm、深さ20〜150nm、溝底幅0.10〜0.25μmの案内溝を有する基板を用い、未記録状態の反射率が2〜50%となるようにすれば、更に好ましい記録特性を有する媒体が得られる。
【0016】
記録材料としては、ポリメチン系、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系各色素、又は金属錯体化合物などが挙げられる。
本発明では、短波長領域での光吸収能を有し、かつ分解・変質に起因した記録が可能なテトラアザポルフィリン(例えば、ナフタロシアニン、フタロシアニン、ポルフィラジン等)を主成分とする色素を用いることが好ましい。ここで主成分とするとは、後述する本発明の記録層としての機能を果すのに十分な量のテトラアザポルフィリンを用いることを意味するが、通常は特に他の目的が無い限り、テトラアザポルフィリンのみの記録層とする。
【0017】
しかし、従来のCD−R、DVD−Rのような基板/記録層/反射層という層構成において記録層にテトラアザポルフィリンを用いると、他の色素を用いた場合に比べて感度、高速対応、ジッタ、変調度、ピットデビエーション等の特性で劣る事が知られている。これは、テトラアザポルフィリンが分解しづらく、屈折率変化が小さいことに起因している。
また、テトラアザポルフィリンは波長依存性が大きく、その特性が不安定であるという大きな短所を有している。
更に、テトラアザポルフィリンは基本的に分解温度が高く、かつ分解の閾値が明瞭でないため、変形と分解のモード不一致が大きくなる。即ち、変形による記録領域と分解による記録領域の差が大きくなる。従って、次の(1)(2)のような問題が発生する。
(1)基板変形が大きくなり好ましくないが、基板変形が大きくないと変調度が発生しない。
(2)熱干渉が大きくなるため高線速記録に向かない。
【0018】
また、従来の基板/記録層(色素層)/反射層のような層構成では、色素層が記録機能と光吸収機能を兼ねているため、記録再生波長に対して大きな屈折率nと比較的小さな吸収係数kを有する色素を用いる必要があるが、例えばこの条件を満たす色素としてテトラアザポルフィリンを選択すると、その高い分解温度に到達させるには比較的厚い膜厚が必要となる(また、相変化型の光記録媒体に比べて基板の溝深さが非常に深くなる)。もしも色素層を薄膜化すると反射層での放熱によって記録ができないことになってしまう。しかし、色素層は変形受容層としても機能するため、色素層を厚くすると基板変形量の増大を招く。
色素層の厚膜化のデメリットを纏めると、(1)ジッタの悪化、(2)再生安定性の悪化、(3)変形量が拡大し、クロストークやトラッキングの不良、アドレスやウォブル信号の検出不能、(4)記録パワーマージンの悪化などが考えられる。
【0019】
本発明では、テトラアザポルフィリンとしてフタロシアニンやポルフィラジンを用いることにより、記録層の光吸収特性を一層向上させることができる。
特に、前記一般式(1)で表されるフタロシアニン色素は、700nm付近の主吸収帯と340nm付近の副吸収帯とを有しており、この色素を記録材料として用いることで、波長450nm以下のレーザの照射に対しても高い感度を示し、かつ高い反射率や高い変調度を与える良好な記録再生特性を備えた光記録媒体を得ることができる。また、この光記録媒体は、同時に波長750〜850nmのレーザ光に対しても高い感度を示し、かつ高い反射率や高い変調度を与える良好な記録再生特性を備えている。
また、本発明者らは、案内溝の深さを30〜50nm、溝底幅を0.10〜0.22μmとすることにより、ジッタ、変調度、パワーマージンが一層よくなることを見出した。
【0020】
更に、本発明8のように、基板の記録層側の面から入射するレーザにより記録・再生が可能な構成とすることにより、NAの大きなレーザの使用を可能にし、従来の追記型光記録媒体の記録層に要求される光学定数と同程度の光学定数が得ることが困難な青色レーザ波長以下の領域であっても、高密度化が図れ、かつ良好な記録再生特性が得られる。
また、転写性のよい浅溝基板でも記録再生が容易に行なえる追記型光記録媒体の層構成を提供し、ジッタ、変調度、パワーマージンの良好な追記型光記録媒体の層構成を提供する。
また、2値レベルのランダム記録を行った場合の記録マーク部の変形の最大高さHが50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、1≦H/D≦2.5という関係を満足するような記録パワー又は記録ストラテジで記録を行うことにより、本発明の追記型光記録媒体の特徴を最大限に活かすことができる。
【0021】
また、本発明では、次の理由で記録再生波長を450nm以下とすることが好ましく、これにより記録ピットを小さくし、記録密度を大きく向上させることができる。
(1)例えば記録再生波長を400nm近傍とすると、色素の主吸収帯は400nmよりも長波長側に位置させる必要があるが、500nmを越える波長領域に主吸収帯を有する色素では分子骨格が大きくなるため、分解特性に優れた材料が多数存在すること。
(2)色素の分解によって発生する分子や分子団の吸収波長は、ほぼ450nm以下に発生すること。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の層構成例の要部拡大断面図を、図1〜図3に示す。図1〜図2は、基板側からレーザを入射して記録再生を行う例、図3はカバー層側からレーザを入射して記録再生を行う例である。
図1の追記型光記録媒体は、片面に微細な凹凸状のプリフォーマットパターン(図示せず)を有する基板1、記録層2、反射層3、保護層4がこの順に積層された層構成を有する。
図2の追記型光記録媒体は、片面に微細な凹凸状のプリフォーマットパターン(図示せず)を有する基板1、記録層2、保護層4がこの順に積層された層構成を有する。
図3の追記型光記録媒体は、片面に微細な凹凸状のプリフォーマットパターン(図示せず)を有する基板1、反射層3、記録層2、カバー層5がこの順に積層された層構成を有する。
【0023】
基板1としては、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルペンテン、エポキシ樹脂、ポリエステル、非晶質ポリオレフィンなどの透明樹脂材料(好ましくはガラス転移温度Tgが100〜200℃)を所望の形状に成形し、その片面に所望のプリフォーマットパターンを転写したものや、所望の形状に形成されたガラス等の透明セラミックス板の片面に所望のプリフォーマットパターンが転写された透明樹脂層を密着したものなど、公知に属する任意の透明基板を用いることができる。
また、ディスク状光記録媒体(光ディスク)を構成する基板の場合には、中心部にセンタ孔を有する円盤状に形成する。
なお、基板1の作製は、公知の方法で行うことができる。
【0024】
プリフォーマットパターンは、少なくとも記録・再生用レーザビームを記録トラックに追従させるためのビーム案内部を含んで構成される。例えば、ビーム案内部を、センタ孔と同心の渦巻状又は同心円状に形成された案内溝をもって構成し、当該案内溝に沿ってアドレスピットやクロックピット等のプリピットを形成することができる。
プリピットを案内溝上に重ねて形成する場合には、両者を光学的に識別できるようにするため、案内溝とプリピットとをそれぞれ異なる深さに形成する。プリピットを相隣接する案内溝の間に形成する場合には、両者を同じ深さにすることもできる。
なお、ビーム案内部としては、案内溝に代えて、ウォブルピットを記録トラックに沿って形成することもできる。また、プリピットを省略し、案内溝のみで形成しても良い。
【0025】
テトラアザポルフィリンはよく知られているように、長波長にQ帯、短波長にS帯という大きな吸収帯を有している。
従って、本発明の記録層の材料としては、テトラアザポルフィリンが好適であり、例えばフタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィラジンを挙げることができるが、中でもフタロシアニン、ポルフィラジンが特に好ましい。
それらの具体例を下記一般式(2)〜(10)に示す。一般式(2)〜(4)はナフタロシアニン、一般式(5)〜(7)はフタロシアニン、一般式(8)〜(10)はポルフィラジンである。
【化3】
【化4】
【化5】
【0026】
以下、上記一般式(2)〜(10)で表わされるテトラアザポルフィリンについて説明する。
式中、M、M1としてはIb族、IIa族、IIb族、IIIa族、IVa族、IVb族、Vb族、VIb族、VIIb族、VIII族の金属、又はそれらの酸化物、ハロゲン化物、水酸化物などが挙げられ、更に上記金属が置換基を有していてもよい。
上記金属としてはCu、Zn、Mg、Al、Ge、Ti、Sn、Pb、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、In、Pt、Pd等があり、酸化物としてはTiO、VO等があり、ハロゲン化物としてはAlCl、GeCl2、SiCl2、FeCl2、SnCl2、InCl2等があり、水酸化物としてはAl(OH)3、Si(OH)2、Ge(OH)2、Sn(OH)2等がある。
【0027】
更に、金属が置換基を有する場合の金属としては、Al、Ti、Si、Ge、Sn等があり、置換基としてはアリールオキシル基、アルコキシル基、トリアルキルシロキシル基、トリアリールシロキシル基、トリアルコキシシロキシル基、トリアリールオキシシロキシル基、トリチルオキシル基又はアシロキシル基等がある。
以下、置換基の例を更に具体的に例示するが、アルキル基及びアルコキシ基にについては、それぞれシクロアルキル基及びシクロアルコキシ基を含む。
アリールオキシル基:フェノキシル基、トリルオキシル基、アニシルオキシル基等。
アルコキシル基:アミロキシル基、ヘキシロキシル基、オクチロキシル基、デシロキシル基、ドデシロキシル基、テトラデシロキシル基、ヘキサデシロキシル基、オクタデシロキシル基、エイコシロキシル基、ドコシロキシル基等。
トリアルキルシロキシル基:トリメチルシロキシル基、トリエチルシロキシル基、トリプロピルシロキシル基、トリブチルシロキシル基等。
トリアリールシロキシル基:トリフェニルシロキシル基、トリアニシルシロキシル基、トリトリルシロキシル基等。
トリアルコキシシロキシル基:トリメトキシシロキシル基、トリエトキシシロキシル基、トリプロポキシシロキシル基、トリブトキシシロキシル基等。
トリアリールオキシシロキシル基:トリフェノキシシロキシル基、トリアニシロキシシロキシル基、トリトリルオキシシロキシル基等。
アシロキシル基:アセトキシル基、プロピオニルオキシル基、ブチリルオキシル基、バレリルオキシル基、ピバロイルオキシル基、ヘキサノイルオキシル基、オクタノイルオキシル基等。
【0028】
Qとしてはアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン、アルキル基又はアリール基でN置換されていてもよいアミノ基、アルキル基又はアリール基でN置換されていてもよいスルホンアミド基、ニトロ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等がある。これらはハロゲン、水酸基、アルコキシ基等で置換されていてもよい。
k、l、m、nは0又は1〜8の整数を表わし、k+l+m+n≧1であり、Qが複数個あるときは同一でも異なっていてもよく、Zの例としては−S−又は−SO2−が挙げられる。
Yはアリールオキシル基、アルコキシル基、トリアルキルシロキシル基、トリアリールシロキシル基、トリアルコキシシロキシル基、トリアリールオキシシロキシル基、トリチルオキシル基又はアシロキシル基を示し、2個のYは同一でも相違していてもよい。
【0029】
R1〜R4がアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、sec−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、t−アミル基、2−アミル基、3−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ドコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、4−メチルシクロヘキシル基などがある。
【0030】
R1〜R4が置換基を有するアルキル基の例としては、エステル基を有するアルキル基、アミド基を有するアルキル基、ヒドロキシル基を有するアルキル基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、ハロアルキル基、1−ジシクロヘキシルメチル基、1,1−ジシクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロプロピルメチル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、2−シクロヘキシルプロピル基、3−シクロヘキシルプロピル基等があり、更に、−(CR5R6)ySiR7R8R9で表わされる基(但し、R5〜R9は水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシル基、アリール基又はアリールオキシル基を示し、これらは同一でも異なっていてもよく、yは1〜30の整数を示す。)がある。
以上で示した基内のアルキル基はハロゲン等で置換されていてもよい。
R1〜R4がアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、アニシル基、フルオロフェニル基等のハロフェニル基などがある。
【0031】
上記テトラアザポルフィリンは、その他の色素を混合して用いる事もできる。その他の色素としてはポリメチン系色素、アントラキノン系色素、ダイオキシディン系色素、トリフェノジチアジン系色素、フェナントレン系色素、シアニン系色素、ジカルボシアニン系色素、メロシアニン系色素、ピリリウム系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、アズレン系色素、含金属アゾ染料、アゾ染料、アゾ系色素、スクアリリウム系色素、ポリエン系色素、ベーススチリル系色素、ホルマザンキレート系色素、クロコニウム系色素、インジゴイド系色素、メチン系色素、スルファイド系色素、メタンジチオールレート系色素等が挙げられる。また、アミニウム系色素などの各種クエンチャを添加した色素材料を用いることもできる。
【0032】
また、本発明では、上記テトラアザポルフィリン化合物の中でも、前記一般式(1)で示されるフタロシアニン化合物が特に好適に用いられる。
一般式(1)のフタロシアニン化合物において、R1の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロ−iso−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基などが挙げられる。R2の具体例としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,5−ジ−iso−プロピルフェニル基、2,5−ジ−tert−ブチルフェニル基などが挙げられる。R3となる原子団のうちアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分岐状のペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられ、フッ素置換されたアルキル基の具体例としてはR1で例示したのと同じものが挙げられる。
【0033】
フタロシアニン化合物(1)は、後述する方法によってフタロニトリル誘導体を合成し、それを必要な金属塩と共に強有機塩基である1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)等の存在下、メタノール、エタノール、n−ペンタノール等のアルコール溶媒中で反応させて合成することができる。その結果得られるフタロシアニン化合物は、種々の炭化水素系、エーテル系、アルコール系、芳香族系等の溶剤に容易に溶けて青緑色ないし緑色を呈する。これらの溶液を用いてポリカーボネート基板にスピンコートすると、均質な薄膜を形成することができる。
【0034】
このようにして得られた薄膜の吸収スペクトルは、通常のフタロシアニン化合物を用いた薄膜で見られるような可視部における吸光係数の低下が見られないので、光記録媒体等の用途にも適している。吸収スペクトルに関するこのような好ましい特性は、前記フタロシアニン化合物の有するフェニル基やフッ素置換されたアルキル基が嵩高いこと、及び中心にあるバナジル基やチタニル基が分子の非平面性を強くすることにより、吸光度低下の原因となる分子間の会合が防がれるためと推定される。
また、熱特性に関しては、フタロシアニン化合物(1)が有するフェニルメトキシ基の部分は一般に熱分解し易い構造と考えられており、実際にフタロシアニン化合物(1)も200〜350℃の温度範囲で発熱的に分解するので、追記型光記録媒体の素材として適切である。この他、フタロシアニン化合物(1)に含まれるフッ素原子は強い電子吸引性を持つため、電子供与性であるアルキル基等の置換基とは光吸収波長や熱安定性、光安定性に関して拮抗的に作用する。フタロシアニン化合物(1)は、これらの特徴的な原子団相互のバランスを考慮することで分子全体の特性を柔軟にコントロールすることができるため、特性の微妙な調整が求められる追記型光記録媒体の素材としても高い適応能力を持っている。
【0035】
フタロシアニン化合物(1)を合成するのに必要な、含フッ素系置換基を持ったフタロニトリル誘導体は、次の(イ)〜(ハ)の何れかの反応経路を通じて合成される含フッ素べンジルアルコール誘導体と、3−ニトロフタロニトリルとを反応させれば得ることができる。
(イ)ベンゼン誘導体と、含フッ素系のカルボン酸無水物又はカルボン酸ハロゲン化物とのフリーデルクラフツ反応によって、含フッ素アセトフェノン誘導体を作り、それを還元する。
(ロ)ベンゼン誘導体と含フッ素アセトン誘導体とをフリーデルクラフツ反応させる。
(ハ)ハロゲン化ベンゾイル誘導体と含フッ素不飽和炭化水素をフッ化物イオンの存在下に反応させて含フッ素アセトフェノン誘導体を作り、それを還元する。
【0036】
テトラアザポルフィリン層は、透明基板1のプリフォーマットパターン形成面上に、上記色素群より選択された色素の溶剤溶液をスピンコートして形成する。即ち、溝状のプリフォーマットパターン内に色素を充填した後、プリフォーマットパターンの間のランド部に付着した色素を選択的に除去し、透明基板1の表面を露出すると共に、プリフォーマットパターン内のみに色素を充填することによって形成する。なお、色素の溶剤としては、25℃における誘電率が80未満であり、色素を0.1重量%以上溶解させることができるものを用いる必要がある。溶解能力が0.1重量%より小さいと膜厚を確保することができない。具体的にはアルコール系溶剤やセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
また、後述するカバー層を設ける場合には、基板1のプリフォーマットパターン形成面上に成膜した反射層又は保護層上に、上記と同様にしてスピンコートによりテトラアザポルフィリン層を設ける。
【0037】
また、テトラアザポルフィリン層を形成するための誘電率の小さい溶剤の例としては、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミドなどのアミド;シクロヘキサンなどの炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコールなどのアルコール;2,2,3,3−テトラフロロプロパノールなどのフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などを挙げることができる。
上記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で又は二種以上併用して適宜用いることができる。塗布液中には更に酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤など各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0038】
更に、二座配位を取り得るキレート剤を含有させて、色素の褪色防止を図ることもできる。このようなキレート剤としては、無機酸類、ジカルボン酸類、オキシカルボン酸類、ジオキシ化合物類、オキシオキシム類、オキシアルデヒド及びその誘導体類、ジケトン及び類似化合物類、オキシキノン類、トロボロン類、N−オキシド化合物類、アミノカルボン酸及び類似化合物類、ヒドロキシルアミン類、オキシン類、アルジミン類、オキシアゾ化合物類、ニトロソナフトール類、トリアゼン類、ピウレット類、ホルマザン類及びジチゾン類、ビクアリド類、グリオキシム類、ジアミン及び類似化合物類、ヒドラジン誘導体類、チオエーテル類などが挙げられる。更に、イミノ基を有する誘導体も使用可能である。
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。
テトラアザポルフィリン層の膜厚は10〜200nmが好適である。10nmより薄いと吸収率が低下し光から熱への変換が不十分となるし、200nmより厚いと、体積が大き過ぎるため、形状変化や熱の伝達が不十分となる。
テトラアザポルフィリン層は単層でも2層以上の重層でもよい。
【0039】
次にテトラアザポルフィリン層の変質について説明する。
テトラアザポルフィリンを主成分とする色素材料は、隣接する層より熱を受け取るか又は色素自身が光を吸収し、その一部又は全部が分解、溶融、昇華等の熱的状態変化を起す。その結果、通常、色素材料は変質し、テトラアザポルフィリンの変質部分は反射層に癒着し、テトラアザポルフィリン層を境目として剥離した際、変質部は反射層に非変質部は記録補助層にそれぞれ優先的に密着して剥離される。
反射層を有する実施の形態では反射層/テトラアザポルフィリン層界面が反射の担い手であるため、反射層界面に変質した色素材料が癒着することは、その部分からの反射光を制御する意味で重要である。
【0040】
また、変質の様子や範囲を確認しながら、記録パワー、記録パルスの長さ、種類を決める必要がある。変質部の色素はその構造が破壊されているため、溶解性が変化する。その変化は、溶け難い方向に変化する場合と、色素が分解して低分子化し溶解性が上がる、つまり溶け易い方向に変化する場合とがある。溶解性の変化について変質部と非変質部とで差が生じれば変質の範囲を確認することができる。
本発明者等の検討によれば、変質部の溶解性が下がり、溶け難い方向に変質することが、色素の溶融、分解、昇華などの熱的状態変化に伴う光学的特性の変化である反射率の低下の方向と一致し好適であった。
本発明では、特に記録後の未記録部における見掛け上の光学特性の変化量が、記録前の未記録部の光学特性の値に対して相対値で±50%以内となるように設定することが好ましく、そうすれば、未記録部の反射率が記録により変化しないため、記録領域と非記録領域で反射率の変動によるトラックオフなどが起きなくなる。
【0041】
また、本発明では必要に応じて光反射機能を有する層(反射層)を設けることができる。光反射機能を有する層には、再生光の波長で反射率の十分高い材料、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Cr、Pdから選ばれる金属を単独で或いは合金にして用いることができる。中でもAu、Al、Agは、反射率が高く反射層の材料として適している。
また、上記の材料を主成分とし、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属及び半金属を含む材料でもよい。
中でもAgを主成分とするものは、コストが安いこと、高反射率が出易いことから特に好ましい。
金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
反射層の膜厚は、50〜100nm程度が好ましい。
反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。
【0042】
保護層は、例えばSiO、SiN、AlN等の無機材料や、光硬化性樹脂などの有機材料を用いて形成することができる。
無機保護層は、真空成膜法によって形成することができ、有機保護層は、反射層上に光硬化性樹脂膜(例えば、大日本インキ化学工業社製のSD1700、SD318、SD301)をスピンコートした後、樹脂硬化光を照射することによって形成できる。
また、高密度化を図るため高NAのレンズを用いる場合には、保護層を光透過性とする必要がある。
更に、高NA化する場合には、再生光が透過する部分の厚さを薄くする必要がある。これは、高NA化に伴い、光学ピックアップの光軸に対してディスク面が垂直からズレる角度(いわゆるチルト角、光源の波長の逆数と対物レンズの開口数の積の2乗に比例する)により発生する収差の許容量が小さくなるためであり、このチルト角が基板の厚さによる収差の影響を受け易いためである。
従って、基板の厚さを薄くしてチルト角に対する収差の影響をなるべく小さくするようにする必要がある。
【0043】
そこで、例えば基板上に凹凸を形成して記録層とし、その上に反射層を設け、更にその上に光を透過する薄膜である光透過性の保護層(カバー層)を設けるようにし、カバー層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体や、基板上に反射層を設け、その上に熱受容層、光吸収層を形成して記録層とし、更にその上に光透過性を有する保護層(カバー層)を設けるようにし、カバー層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体が提案されている。このようにすれば、カバー層を薄型化していくことで対物レンズの高NA化に対応可能である。つまり、薄いカバー層を設け、このカバー層側から記録再生することで、更なる高記録密度化を図ることができる。
なお、このような保護層(カバー層)は、ポリカーボネートシートや紫外線硬化型樹脂により形成する方法、又は、厚さ70μmのシート(カバー基板)を厚さ30μmの接着剤で固定する方法が一般的である。接着剤で固定する場合の保護層と接着層の合計厚みは0.1mm程度が好適である。
【0044】
ディスク形態の場合には、反射層を内側に挟む形で2枚の基板を貼り合わせた構造としてもよいし、2枚の基板を貼り合せないで、いわゆる単板の構造としてもよい。更に、必要に応じて接着層や保護層を設けた2枚の基板を貼り合わせた構造としてもよい。これらの2枚の基板は、それぞれが記録層を有しており、光ビームをどちらか一方の基板から照射することによって、それぞれの記録層に情報の記録を行い、光ビームを照射する側の基板、第一の光吸収層、第二の光吸収層及び熱受容層が上記光ビームのうち40%以上を透過する構成とする。
追記型光記録媒体のアドレス情報等をプリフォーマット信号として基板に予め形成させることができる。そのための形態としては、凹又は凸形状のエンボスピット方式、或いは、情報に応じてグルーブ部やランド部の幅を変調するウォーブル方式が可能である。ウォーブル方式としては、グルーブ部の内周側と外周側の何れか一方又は両方の側面を蛇行させる方式を採用することができる。
【0045】
本発明では片面に2層の記録再生可能な層を有する媒体とすることもできる。その構成は、2枚の基板にそれぞれ記録層及び記録補助層を形成し、両者を透明な材料で貼り合わせ、どちらか一方の基板側からレーザ光を入射し、両方の記録層に対して情報の記録及び再生を行うものである。貼り合わせ材料としては、紫外線硬化樹脂、両面テープなど平坦性の良好なものを用いる。
また本発明では、1枚の基板上に2層の記録再生可能な層を形成した媒体とすることもできる。その構成は、1枚の基板に2層の記録層及び記録補助層を形成し、基板側或いは基板と反対側からレーザ光を入射し、両方の記録層に対して情報の記録及び再生を行うものである。
これらの場合において、記録再生用のレーザ光が入射する側の基板に形成された記録層及び記録補助層を第一層、反対側の層を第二層とすると、第二層に情報を記録したり、第二層の情報を再生するためには、第一層は記録再生用レーザ光の少なくとも一部を透過しなければならない。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を、実施例及び参考例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、参考例で得られた色素化合物1〜8の構造(部分構造)を、後記表1に示す。
【0047】
参考例1(化合物1の合成)
(a)ベンジルアルコール誘導体の合成
冷却管をつけた反応フラスコに2,2,2−トリフルオロアセトフェノン5.0g、アルミニウムトリイソプロポキシド11.8g、イソプロピルアルコール100mlを仕込み、撹拌しながら還流温度まで昇温し、更に同温度で1.5時間撹拌した。加熱を止めて放冷した後、反応液を氷水1000ml中に排出し、20%塩酸でpH3にした後、トルエン200mlで抽出した。トルエン層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエンを留去し5.1gの目的化合物を得た。マススペクトルにより分子量ピーク(176)を、IRスペクトルよりνOH=3500cm−1、νCF=1120〜1170cm−1の吸収ピークを確認した。
(b)フタロニトリル誘導体の合成
反応フラスコに、(a)で得たアルコール5g、無水炭酸カリウム7.9g、ジメチルスルホキシド30ml、3−ニトロフタロニトリル4.5gを仕込み、窒素気流下70℃で4時間撹拌した後、反応物を水1000mlに注加し、析出した結晶を瀘集、乾燥して、6gの目的化合物を得た。この化合物の分析データは下記の通りであった。
・IRスペクトル(KBr):2230cm−1(νCN)、1140〜1180cm−1(νCF)
・マススペクトル:302(M+)
・融点:165〜167℃
・1H−NMR(CDC13):δ(ppm from TMS)5.6(1H,q),7.1(1H,d),7.4〜7.6(7H,m)
(c)環化反応
反応フラスコに、(b)で得たフタロニトリル誘導体5g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(以下、DBUと略称)3.8g、n−ペンタール(2−メチル−2−ブテン)40ml、三塩化バナジウム0.87gを仕込み、窒素気流下110℃で18時間撹拌した。反応液をメタノール500mlに注加し、更に水500mlを加え、析出した結晶を瀘集、乾燥して5.4gの粗製品を得た。この粗製品3gをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=20:1)により分取精製し、1.4gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物はIRスペクトル(KBr)において1140〜1180cm−1にνCFの特性吸収を持ち、溶解度は1,2−ジクロルエタン、トルエンの何れに対しても室温で2%以上であった。また、DSC分析において300℃付近に発熱ピークが見られ(Ti293℃、Tp310℃)、TG分析において250℃付近から減量が観測された。また、元素分析値は次のようであった。
【0048】
参考例2(化合物2の合成)
(a)アセトフェノン誘導体の合成
冷却器を付けた反応フラスコに無水塩化アルミニウム40g、二硫化炭素40mlを仕込み、撹拌しながら−10℃まで冷却し、メシチレン24gを30分かけて滴下した。次に、同温度で無水トリフルオロ酢酸21gを40分かけて滴下した。その後、−12〜−8℃で2.5時間撹拌した。反応液を氷水1000mlに注加し、トルエン300mlで抽出した。抽出液を3%炭酸ナトリウム水溶液1000mlで、次いで水1000mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、トルエン、メシチレンを留去して淡黄色オイル状物質13gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(216)を、IRスペクトルでνCO(1740cm−1)、νCF(1150〜1200cm−1)の吸収ピークを確認した。
(b)ベンジルアルコール誘導体の合成
反応フラスコに、(a)で得たアセトフェノン誘導体13g、イソプロピルアルコール150mlを仕込み撹拌しながら40℃で水素化ホウ素ナトリウム7.5gを加えた。40℃で2時間撹拌した後、室温まで放冷した反応液を水2000mlに加えトルエンで抽出した。抽出液を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮して淡黄色のオイル状物質12gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(218)を、IRスペクトルでνCOの吸収のないことと、νOH(3500cm−1)、νCF(1120〜1170cm−1)の吸収ピークを確認した。
(c)フタロニトリル誘導体の合成
反応フラスコに、(b)の生成物12g、無水炭酸カリウム15g、ジメチルスルホキシド50mlを仕込み、撹拌しながら8−ニトロフタロニトリル8.3gをジメチルスルホキシド50mlに溶かした溶液を60℃で90分かけて滴下した。その後、60℃で3時間撹拌した後、反応物を水1000mlに注加し、析出した結晶を濾集、乾燥して、16gの淡黄色固体を得た。この化合物の分析デー夕は下記の通りであった。
・IRスペクトル(KBr):2240cm−1(νCN)、1140〜1180cm−1(νCF)
・マススペクトル:344(M+)
・融点:170〜175℃
(d)環化反応
反応フラスコに、(c)で得たフタロニトリル誘導体4g、DBU2.7g、n−ペンタール40mlを仕込み、撹拌しながら窒素気流下で90℃に昇温し、三塩化バナジウム0.6gを投入した後、100℃で6時間撹拌した。加熱を止め、反応液をメタノール300mlに注加し、更に水100mlを加えて析出物を濾集、乾燥し、3.3gの粗製品を得た。この粗製品をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=50:1)により精製し、1.5gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物は、IRスペクトルにおいて1130〜1180cm−1にνCFの、2920cm−1にνCH(メチル基)の特性吸収を持ち、溶解度は室温で1,2−ジクロルエタンに2%以上、トルエンに2%以上、2−エトキシエタノールに1%以上であった。また、DSC分析において350℃付近に発熱ピークが見られ(Ti344℃、Tp355℃)、TG分析において250℃付近から減量が見られた。
【0049】
参考例3(化合物3の合成)
(a)フタロニトリル誘導体の合成
反応フラスコに、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−フェニル−2−プロパノール10g、無水炭酸カリウム16g、N,N−ジメチルホルムアミド25mlを仕込み撹拌しながら、50〜60℃で3−ニトロフタロニトリル4.8gを40分かけて仕込んだ。その後、70℃で6時間撹拌した後、反応物を水600mlに注加し、析出した結晶を濾集、乾燥して、5.2gの固体を得た。この化合物は、融点150〜152℃であり、マススペクトルで分子量ピーク(370)が確認された。
(b)環化反応
反応フラスコに、(a)で得たフタロニトリル誘導体5.2g、DBU5.1g、n−ペンタール30ml、三塩化バナジウム0.73gを仕込み、窒素気流下90〜95℃で8時間撹拌した。反応液をメタノール600mlに注加し、水80mlを加え析出物を濾集、乾燥して、2.4gの粗製品を得た。この粗製品をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=80:1)により精製し、1.1gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物は、室温で1,2−ジクロルエタンに2%以上溶解した。また、DSC分析において300℃付近に発熱ピークが見られ(Ti296℃、Tp311℃)、TG分析において250℃付近から減量が観測された。
【0050】
参考例4(化合物4の合成)
参考例3の(b)の反応操作において、三塩化バナジウム0.73gの代りに四塩化チタン0.5gを用い、他の操作は参考例3と同様にしてフタロシアニン化合物0.8gを得た。この化合物は室温で1,2−ジクロルエタンに2%以上溶解した。また、DSC分析において300℃付近に発熱ピークが見られ(Ti288℃、Tp315℃)、TG分析において250℃付近から減量が観測された。
【0051】
参考例5(化合物5の合成)
(a)アセトフェノン誘導体の合成
冷却器を付けた反応フラスコに、無水塩化アルミニウム20g、二硫化炭素20mlを仕込み、撹拌しながら−15℃まで冷却し、メシチレン12gを30分かけて摘下した。次に、同温度で無水ペンタフルオロプロピオン酸15.5gを30分かけて滴下した。その後、−10〜−18℃で3.5時間撹拌した。反応液を氷水500mlに注加し、トルエン200mlで抽出した。トルエン層を3%炭酸ナトリウム水溶液500mlで、次いで水1000mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、トルエン層のトルエン、メシチレンを留去し微黄色の油状物質5.8gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(266)を、IRスペクトルでνCO(1740cm−1)、νCF(1140〜1260cm−1)のピークを確認した。
(b)ベンジルアルコール誘導体の合成
反応フラスコに、(a)で得たアセトフェノン誘導体5.3g、イソプロピルアルコール50mlを仕込み、撹拌しながら40〜50℃で水素化ホウ素ナトリウム2.6gを加えた。次いで40℃で2時間撹拌した後、反応液を水700mlに注加し、トルエンで抽出した。トルエン層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮して淡黄色の液体5.4gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(268)、IRスペクトルでνCOの吸収のないことと、νOH(3500cm−1)、νCF(1130〜1210cm−1)の吸収ピークを確認した。
(c)フタロニトリル誘導体の合成
反応フラスコに、(b)で得たアルコール5.3g、無水炭酸カリウム5.5g、3−ニトロフタロニトリル3.5g、ジメチルスルホキシド50mlを混合し、60℃で2時間撹拌した後、加熱を止め、反応混合物を水500mlに注加し、析出した結晶を濾集、乾燥して、7.8gの白色固体を得た。この化合物の分析デー夕は、下記の通りであった。
・IRスペクトル(KBr):2250cm−1(νCN)、1140〜1210cm−1(νCF)
・マススペクトル:394(M+)
・融点:155〜158℃
(d)環化反応
反応フラスコに、(c)で得たフタロニトリル誘導体7.2g、DBU3.5g、n−ペンタール30ml、三塩化バナジウム1.6gを仕込み、撹拌しながら昇温し、窒素気流下100℃で20時間撹拌した。加熱を止め、反応液をメタノール400mlに注加し、不溶物を濾別した後、濾液に水100mlを加え、析出物を濾集、乾燥して、5.4gの粗製品を得た。この粗製品3gをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン)により分取精製し、0.4gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物は、室温で1,2−ジクロルエタンに5%以上溶解した。また、DSC分析において250〜300℃付近に発熱ピークが見られ(Ti224℃、Tp248℃,294℃)、TG分析において200℃付近から減量が観測された。
【0052】
参考例6(化合物6の合成)
(a)アセトフェノン誘導体の合成
参考例2の(a)の反応繰作において、メシチレン24gの代りに2,5−ジイソプロピルベンゼン32gを用いた点以外は、参考例2の(a)と同様にして目的とするケトン8.5gを得た。マススペクトルにより分子量ピーク(258)を、IRスペクトルでνCO(1720cm−1)、νCF(1150〜1200cm−1)のピークを確認した。
(b)ベンジルアルコール誘導体の合成
上記(a)で得たケトン4.0gを原料として、参考例2の(b)と同様にして還元反応を行ない、目的とするアルコール2.2gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(260)を、IRスペクトルでνOH(3500cm−1)、νCF(1130〜1170cm−1)のピークを確認した。
(c)フタロニトリル誘導体の合成
上記(b)で得たアルコール2.2gを、参考例2の(c)と同様にして3−ニトロフタロニトリルと反応させ、オイル状の目的化合物2.4gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(386)、νCN(2240cm−1)、νCF(1150〜1180cm−1)のピークを確認した。
(d)環化反応
上記(c)で得たフタロニトリル誘導体2.4gを、参考例2の(d)と同様にして三塩化バナジウムと反応させ粗製品1.0gを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン)により精製し、0.2gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物は室温で1,2−ジクロルエタンに5%以上溶解した。
【0053】
参考例7(化合物7の合成)
(a)アセトフェノン誘導体の合成
参考例2の(a)の反応操作において、メシチレン24gの代りに2,5−ジ−tert−ブチルベンゼン38gを用いた点以外は参考例2の(a)と同様にして、目的とするケトン13gを得た。マススペクトルにより分子量ピーク(286)を、IRスペクトルでνCO(1720cm−1)、νCF(1150〜1200cm−1)のピークを確認した。
(b)ベンジルアルコール誘導体の合成
上記(a)で得たケトン13gを原料として、参考例2の(b)と同様にして還元反応を行ない、目的とするアルコール7.3gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(288)を、IRスペクトルでνOH(3400〜3550cm−1)、νCF(1130〜1170cm−1)のピークを確認した。
(c)フタロニトリル誘導体の合成
上記(b)で得たベンジルアルコール誘導体7.3gを、参考例2の(c)と同様にして3−ニトロフタロニトリルと反応させ、7.5gの目的化合物を得た。マススペクトルで分子量ピーク(414)、IRスペクトルでνCN(2250cm−1)、νCF(1150〜1180cm−1)を確認した。
(d)環化反応
上記(c)で得たフタロニトリル誘導体4.0gを、参考例2の(d)と同様にして三塩化バナジウムと反応させ、粗製品0.87gを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン)により精製し、0.11gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物は室温で1,2−ジクロルエタンに5%以上溶解した。
【0054】
参考例8(化合物8の合成)
(a)アセトフェノン誘導体の合成
反応容器に塩化ベンゾイル14g、ジメチルホルムアミド50ml、粉砕したフッ化カリウム23gを仕込み、−40℃に冷却してヘキサフルオロプロペン0.22モルを加え、容器を密閉して室温に戻した。オートクレーブ中で撹拌しながら120℃に昇温し、6時間加熱した。加熱を止めて放冷した後、反応液を水1000mlに注加し、生成物をジエチルエーテルで抽出した。抽出層を炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を除いた後、真空蒸留(80〜82℃/40mmHg)により目的物15gを得た。マススペクトルにより分子量ピーク(274)を、IRスペクトルでνCO(1700cm−1)、νCF(1140〜1200cm−1)のピークを確認した。
(b)ベンジルアルコール誘導体の合成
反応容器に、(a)で得たケトン15g、イソプロピルアルコール150mlを仕込み、撹拌しながら40℃に昇温し、水素化ホウ素ナトリウム8.5gを加えた。40℃で3時間撹拌した後、反応液を水2000mlに加え、トルエンで抽出した。抽出層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去して油状の目的物14gを得た。マススペクトルで分子量ピーク(276)を、IRスペクトルでνOH(3500cm−1)、νCF(1120〜1200cm−1)のピークを確認した。
(c)フタロニトリル誘導体の合成
反応フラスコに、(b)で得たアルコール14g、無水炭酸カリウム17g、ジメチルスルホキシド40mlを仕込み、撹拌しながら、3−ニトロフタロニトリル7.3gを50〜60℃で90分かけて仕込んだ。次いで、60℃で5時間撹拌した後、反応物を水1000mlに注加し、生成物をトルエンで抽出した。抽出層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮して11gの目的化合物を得た。マススペクトルにより分子量ピーク(402)、νCN(2240cm−1)、νCF(1140〜1210cm−1)のピークを確認した。
(d)環化反応
反応フラスコに、(c)で得たフタロニトリル誘導体4g、DBU2.3g、n−ペンタール20mlを仕込み、撹拌しながら窒素気流下90℃に昇温し、次いで三塩化バナジウム0.52gを投入して90〜100℃で10時間撹拌した。加熱を止め、反応液をメタノール300mlに注加し、更に水20mlを加え、析出物を濾集、乾燥して粗製品2.3gを得た。この粗製品をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=60:1)により精製し、1.2gの精製品を得た。このフタロシアニン化合物は、室温で1,2−ジクロルエタンに5%以上溶解した。また、DSC分析において発熱ピーク(Ti240℃、Tp285℃)が見られ、TG分析において220℃付近から減量が観測された。
【0055】
表1に参考例1〜8の各フタロシアニン化合物(色素)の置換基と中心金属、及び四塩化炭素溶液中の吸収スペクトルの極大波長λmax(nm)を示したが、これらは400nm付近にも吸収能を有し本発明においても有効である。
【表1】
【0056】
実施例1〜8
トラックピッチ0.43μm、溝底幅0.14μm、溝深さ50nmの案内溝を有するポリカーボネート基板上に、記録層として、参考例1〜8で合成したフタロシアニン色素をそれぞれスピンコートにより塗布し、その上に反射層としてAgを厚さ1000Åスパッタし、その上に、保護層として大日本インキ化学工業社製のSD1700を膜厚5μm積層して、図1に示す層構成の実施例1〜8の光記録媒体を得た。
これらの光記録媒体に対し、パルステック工業社製の光ディスク評価装置DDU−1000(波長:405nm、NA:0.65)を用いて、下記の記録条件で記録再生を行った。
図4に、代表例として実施例3の光記録媒体のアイパターンを示す。
これまで色素のみからなる記録層では青色領域のレーザによる記録再生は非常に困難であるとされてきたが、本発明の光記録媒体は非常にきれいなアイが開いており、波形の滲みなども確認できず、ジッタも7.8%と非常に良好な値を示した。その他の実施例についても同様のアイパターンが得られた。
図5に、代表例として実施例1、3のパワー依存性を示す。
どちらも似たようなジッタとパワー依存性を示し、良好な媒体特性を有していることが分る。その他の実施例についても同様のパワー依存性が得られた。
図6〜図8に、実施例3の光記録媒体のAFM観察による記録ピット部の基板変形の様子を示す。図6は斜視図、図7は上視図、図8はマークの断面図(図7のX−X断面図)である。このAFM観察は、テープによって銀反射膜側を銀反射膜とフタロシアニン色素との界面において剥がし、更に基板上のフタロシアニン色素をエタノールで洗い流した後、基板表面の観察を行ったものである。
7.8%という良好なジッタを示した実施例3の光記録媒体のマークの基板変形は、50nmの基板溝深さよりも大きい(約67.75nm)ことが分る。
下記表2に、各実施例の光記録媒体の最適ジッタとその時のマークの最大基板変形高さ、変調度、反射率、パワーマージンを纏めて示す。最大変形高さは何れもAFM断面図測定結果から割り出したものである。
【0057】
【表2】
表2から分るように、全ての光記録媒体においてジッタ9%以下、反射率20%以上、変調度30%以上と良好な結果を示した。これらの実施例において記録された記録マーク部の変形の最大高さは何れも50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとの関係が1≦H/D≦2.5という式で表される場合において非常に良好な媒体特性を示すことが分った。
また、記録層色素としてポルフィラジンを用いても同様に好適な結果が得られた。
【0058】
実施例9〜16
反射層を設けなかった点以外は実施例1〜8と同様にして、図2に示す層構成の実施例9〜16の光記録媒体を作成し、実施例1〜8と同様にして記録再生を行った結果、何れの媒体についても、ジッタ9%以下、反射率5%以上、変調度30%以上という良好な結果を示した。
【0059】
実施例17〜24
実施例1〜8と同じポリカーボネート基板上に、反射層としてAgを厚さ1000Åスパッタし、その上に、記録層として、参考例1〜8で合成したフタロシアニン色素をそれぞれスピンコートにより塗布し、その上に、厚さ0.1mmのカバー層を紫外線硬化樹脂により貼り合わせて、図3に示す層構成の実施例17〜24の光記録媒体を得た。
これらの光記録媒体に対し、実施例1〜8と同様にして記録再生を行った結果、何れの媒体についても、ジッタ9%以下、反射率20%以上、変調度30%以上という良好な結果を示した。
【0060】
比較例1−8
実施例1〜8に対し、最大基板変形高さが120nm以上になるように記録パワーを調整し、ストラテジを最適化して記録を行ったが、どれもジッタで12%以上となり、隣のマークへ干渉していることが分った。
【0061】
比較例9−16
実施例1〜8に対し、最大基板変形高さが30〜50nmになるように記録パワーを調整し、ストラテジを最適化して記録を行ったが、どれもジッタは10%以下にならず、特に変調度は全て45%以下となった。
【0062】
なお、上記実施例においては、ディスク状光記録媒体を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばカード状、スティック状、テープ状などの、他の形態の追記型光記録媒体にも応用できることは勿論である。
以上の実施例から、本発明の光記録媒体の層構成と記録原理が、青色レーザ波長対応の有機材料からなる追記型光記録媒体、更には高変調度が確保できる追記型光記録媒体の実現に非常に有効であることが確認できた。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、450nm以下の波長領域で高密度の2値レベルによるランダムパターンの記録再生を行っても、また、転写性のよい浅溝基板を用いた場合でも容易に記録再生でき、記録感度、変調度、ジッタといったような記録特性や、パワーマージンの改善を実現できる追記型光記録媒体とその記録方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の追記型光記録媒体の層構成の一例を示す要部拡大断面図。
【図2】本発明の追記型光記録媒体の層構成の他の例を示す要部拡大断面図。
【図3】本発明の追記型光記録媒体の層構成の更に他の例を示す要部拡大断面図。
【図4】実施例3の光記録媒体のアイパターンを示す図。
【図5】実施例1、3のパワー依存性を示す図。
【図6】実施例3の光記録媒体のAFM観察による記録ピット部の基板変形の様子を示す斜視図。
【図7】実施例3の光記録媒体のAFM観察による記録ピット部の基板変形の様子を示す上視図。
【図8】図7のX−X断面図。
【符号の説明】
1 基板
2 記録層
3 反射層
4 保護層
5 カバー層
Claims (9)
- 案内溝を有する基板上に直接又は無機層を介して記録層を有し、2値レベルのランダム記録を行った場合の記録マーク部の変形の最大高さHが50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、1≦H/D≦2.5という関係を満足し、450nm以下の波長の光により記録再生可能であることを特徴とする追記型光記録媒体。
- 案内溝のトラックピッチが0.25〜0.5μm、深さが20〜150nm、溝底幅が0.10〜0.25μmであり、未記録状態の反射率が2〜50%であることを特徴とする請求項1記載の追記型光記録媒体。
- 案内溝の深さが30〜50nm、溝底幅が0.10〜0.22μmである請求項2記載の光学的情報記録用媒体。
- 記録層が有機色素からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の追記型光記録媒体。
- 有機色素がテトラアザポルフィリンを主成分とすることを特徴とする請求項4記載の追記型光記録媒体。
- テトラアザポルフィリンがフタロシアニンであることを特徴とする請求項5記載の追記型光記録媒体。
- 基板の記録層側の面から入射するレーザにより記録・再生が行われることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の追記型光記録媒体。
- 2値レベルのランダム記録を行った場合の記録マーク部の変形の最大高さHが50〜120nmの範囲にあり、該変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、1≦H/D≦2.5という関係を満足するような記録パワー又は記録ストラテジで記録を行うことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の追記型光記録媒体の記録方法。
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---|---|---|---|
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Cited By (2)
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US7778145B2 (en) | 2004-07-16 | 2010-08-17 | Mitsubishi Kagaku Media Co., Ltd. | Optical recording medium and optical recording method of the same |
US8310913B2 (en) | 2007-09-26 | 2012-11-13 | Kabushiki Kaisha Toshiba | Optical recording medium capable of using wide ranges of linear velocity recording |
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2003
- 2003-04-03 JP JP2003100863A patent/JP2004310843A/ja active Pending
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