JP2004309617A - ロール状位相差フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、視野角特性の劣化を引き起こさず、表示品質が良好で、ロール幅方向に遅相軸を有するロール状位相差フィルムを提供することにある。
【解決手段】正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とから構成されるポリマーからなるロール状位相差フィルムであって、該ロール状位相差フィルムは、全体として正の複屈折異方性を示し、下記式(1)を満たし、かつロール幅方向に遅相軸を有するロール状位相差フィルム。
1.00≦Nz<1.35 (1)
(上記式(1)中のNzは下記式(2)によって表される。
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (2)
(上記式(2)中のnx、ny、nzはそれぞれロール状位相差フィルムの三次元屈折率であり、nxは面内遅相軸方向(x軸)の屈折率、nyは面内方向においてx軸と直行する方向(y軸)の屈折率、nzはx軸及びy軸を含む面に垂直な方向(z軸)の屈折率である。))
【選択図】 なし
【解決手段】正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とから構成されるポリマーからなるロール状位相差フィルムであって、該ロール状位相差フィルムは、全体として正の複屈折異方性を示し、下記式(1)を満たし、かつロール幅方向に遅相軸を有するロール状位相差フィルム。
1.00≦Nz<1.35 (1)
(上記式(1)中のNzは下記式(2)によって表される。
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (2)
(上記式(2)中のnx、ny、nzはそれぞれロール状位相差フィルムの三次元屈折率であり、nxは面内遅相軸方向(x軸)の屈折率、nyは面内方向においてx軸と直行する方向(y軸)の屈折率、nzはx軸及びy軸を含む面に垂直な方向(z軸)の屈折率である。))
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロール状位相差フィルムに関する。さらに詳しくは、主として表示素子の視野角やコントラストなどの表示品位を改善するに好適なロール状位相差フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
表示素子の視野角拡大やコントラストの向上が求められる中、液晶パネルの複屈折を補償する目的や、反射モードでの外光反射を低減する目的などにより位相差フィルムが求められている。
【0003】
位相差フィルムはしばしば溶融押出し法あるいは溶液流延法により連続的に製造されたフィルムに延伸処理をすることにより連続的に製膜され、最終的にロール状に巻き取られる。このように位相差フィルムは連続プロセスにより生産性よく工業的に製造されるのが通常である(下記特許文献1参照)。
【0004】
上記位相差フィルムを得るための延伸手段としては、公知の縦延伸法、あるいは横延伸法が知られている。縦延伸法では破断した場合に再スタートまでのロスが大きい、あるいは、延伸時のネックインによりフィルム幅が狭くなるなどの問題がある。
【0005】
一方、縦延伸に対して横延伸法で得られるロール状位相差フィルムは遅相軸をロール幅方向に有するものであるが、フィルム幅を広くできるため比較的大型の大きい位相差フィルムを得ることができる。しかしながら、この方法により作製した位相差フィルムを表示素子に用いた場合、縦延伸により製造した位相差フィルムに比べて一般に視野角が狭く視野角特性が十分でないことがわかった。
【0006】
一方、下記特許文献2,3には、熱可塑性樹脂フィルムをテンター延伸機で延伸した後、特定の処理を行うことにより、一軸性の高い位相差板を製造する方法が記載されている。本発明者らの検討によれば、これらの方法を用いれば、ロール幅方向に遅相軸を有し、フィルム厚み方向の屈折率であるnzの値が、フィルム幅方向の屈折率であるnyに比較的近いものが得られる。しかしながら、これらの横延伸を用いた方法は非常に煩雑であり、長尺のフィルムを製造できなかったり、製造装置が複雑になり経済性も含めて工業的生産には不向きである。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−296422号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平5−11111号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平5−11113号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ロール幅方向に遅相軸を有する視野角特性に優れたロール状位相差フィルムを提供することを目的とする。かかるフィルムを用いることにより表示品質が良好な表示素子を提供できる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、工業的連続製造工程に横延伸技術を採用し、広幅の位相差フィルムを得る方法を検討するにあたって、この横延伸に着目したところ、フィルム厚み方向の屈折率であるnzが小さくなることにより、位相差の視野角依存が大きくなってしまうために視野角特性が悪くなる傾向があり、下記式(2)
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (2)
(上記式(2)中のnx、ny、nzはそれぞれロール状位相差フィルムの三次元屈折率であり、nxは面内遅相軸方向(x軸)の屈折率、nyは面内方向においてx軸と直行する方向(y軸)の屈折率、nzはx軸及びy軸に垂直な方向(z軸)の屈折率である。)
により表されるNz係数が1.35未満であれば視野角特性には大きな影響を与えないことを見出した。
【0012】
nzの低下は従来、横延伸ゆえに発生する現象であると考えられていた。縦延伸の場合にはフィルムの幅は自由に収縮できる状態にあるために、延伸方向に直交する方向(縦延伸ではフィルム幅方向)の屈折率が小さくなるのでnzはそれほど小さくならないが、横延伸の場合には、フィルムが流れ方向(縦方向)に連続であり、フィルムの流れ方向の寸法が規制されているために、フィルム幅方向だけでなく流れ方向にも応力が発生し、その方向の配向が促進されるためにnzは小さくなってしまうと考えられる。
【0013】
さらに本発明者らは鋭意検討の末、ある特定のポリマー材料を用いることが重要であるという知見を見出し、これらに基づいて本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
1. 正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とから構成されるポリマーからなるロール状位相差フィルムであって、該ロール状位相差フィルムは、全体として正の複屈折異方性を示し、下記式(1)を満たし、かつロール幅方向に遅相軸を有するロール状位相差フィルム。
【0015】
1.00≦Nz<1.35 (1)
(上記式(1)中のNzは下記式(2)によって表される。
【0016】
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (2)
(上記式(2)中のnx、ny、nzはそれぞれロール状位相差フィルムの三次元屈折率であり、nxは面内遅相軸方向(x軸)の屈折率、nyは面内方向においてx軸と直行する方向(y軸)の屈折率、nzはx軸及びy軸を含む面に垂直な方向(z軸)の屈折率である。))
【0017】
2. 上記ポリマーが、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と、負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とを有する共重合体であるか、または正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位から実質的になるポリマーと、負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とから実質的になるポリマーとのブレンドである請求項1に記載のロール状位相差フィルム。
3. 上記ポリマーのTgが120℃以上であり、光弾性係数が70×10−12Pa−1以下であり、吸水率が0.1重量%以下であり、かつ透明性が80%以上である上記1〜2のロール状位相差フィルム。
4. 上記ポリマーがポリカーボネートである、上記1〜3のロール状位相差フィルム。
5. ポリカーボネートがフルオレン骨格を有する後述の式(A)及び(B)で表される繰り返し単位を含むものである、上記1〜4の位相差フィルム。
6. 上記1〜5のロール状位相差フィルムと偏光板とが積層されてなるロール状積層偏光板。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のロール状位相差フィルムは、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とから構成されるポリマー材料から主としてなるものである。
【0019】
すなわち、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負のそれとを含むポリマー材料からなる。
【0020】
かかるポリマーとしては、(1)正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と、負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とを有する共重合体、(2)正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位から実質的になるポリマーと、負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とから実質的になるポリマーとのブレンド(混合物)が挙げられる。(1)の場合、2種類以上の共重合体を併用してもよい。(2)の場合も2種類以上のブレンド体を併用してもよい。また、(1)の共重合体と正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位から実質的になるポリマーとのブレンドを併用してもよい。
【0021】
具体的なポリマー材料としては、耐熱性に優れ、吸湿性が低く、透明性に優れたフィルムにでき、延伸により複屈折性に優れる材料が好ましい。
【0022】
例えば、光弾性定数は70×10−12Pa−1以下、好ましくは60×10−12Pa−1以下、さらに好ましくは50×10−12Pa−1であることが好ましい。70×10−12Pa−1を越えると、位相差フィルムを貼り合わせる際の張力によって位相差が発現したり、他の材料との寸法安定性のミスマッチから生じる応力によって位相差が発現したりすることにより表示斑の問題が発生する場合がある。
【0023】
また、ガラス転移点温度が120℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは180℃以上であることが好ましい。120℃未満では、表示素子の使用条件にもよるが、配向緩和などの問題が発生する場合がある。
【0024】
吸水率は1重量%以下であることが好ましい。高分子材料の吸水率が1重量%未満では位相差フィルムとして実用する上で光学特性変化や寸法変化などの問題がある場合があり、フィルム材料はフィルム吸水率が1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下の条件を満たすように選択することが良い。
【0025】
透明性は表示素子の品位の点で非常に重要であり、80%以上、好ましくは85%以上である。
【0026】
また本発明のロール状位相差フィルムは、フィルム全体として正の複屈折異方性を有することも特徴のひとつである。すなわち、フィルムの流れ方向よりもそれに対して直交するフィルムのロールの幅方向の屈折率の方が大きい。
【0027】
本発明のロール状位相差フィルムを構成するポリマー材料としては前記したように正負2種のモノマーを含むもので、かつ全体として複屈折異方性が正であれば特に限定されない。例えばポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリスルフィン系共重合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどの熱可塑性ポリマーが好適である。この熱可塑性ポリマーを用いた場合、モノマーを適宜選択することで、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位からなる共重合体や、正の屈折率異方性を有する高分子と負の屈折率異方性を有する高分子とからなるブレンド体を得ることができる。それらは2種類以上併用してもよく、また1種類以上のブレンド高分子と1種類以上の共重合体とを組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ブレンド体(高分子組成物)であれば、光学的に透明である必要があることから相溶ブレンドの場合には、各々の高分子の屈折率が略等しいことが好ましい。ブレンド高分子の具体的な組み合わせとしては、例えば負の光学異方性(屈折率異方性ともいう)を有する高分子としてポリ(メチルメタクリレート)と、正の光学異方性を有する高分子としてポリ(ビニリデンフロライド)、ポリ(エチレンオキサイド)及びポリ(ビニリデンフロライド−コ−トリフルオロエチレン)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーとの組み合わせ、正の光学異方性を有する高分子としてポリ(フェニレンオキサイド)と負の光学異方性を有する高分子としてポリスチレン、ポリ(スチレン−コ−ラウロイルマレイミド)、ポリ(スチレン−コ−シクロヘキシルマレイミド)及びポリ(スチレン−コ−フェニルマレイミド)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーとの組み合わせ、負の光学異方性を有するポリ(スチレン−コ−マレイン酸無水物)と正の光学異方性を有するポリカーボネートとの組み合わせ、正の光学異方性を有するポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン)と負の光学異方性を有するポリ(アクリロニトリル−コ−スチレン)との組み合わせ、正の光学異方性を有するポリカーボネートと負の光学異方性を有するポリカーボネートとの組み合わせを好適に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。特に透明性の観点から、ポリスチレンとポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)等のポリ(フェニレンオキサイド)とを組み合わせたブレンドポリマー、正の光学異方性を有するポリカーボネートと負の光学異方性を有するポリカーボネートとを組み合わせたブレンド体が好ましい。
【0029】
また、共重合体としては例えばポリ(ブタジエン−コ−ポリスチレン)、ポリ(エチレン−コ−ポリスチレン)、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン−コ−スチレン)、ポリカーボネート共重合体、ポリエステル共重合体、ポリエステルカーボネート共重合体、ポリアリレート共重合体等を用いることが出来る。特に、フルオレン骨格を有するセグメントは負の光学異方性となり得るため、フルオレン骨格を有するポリカーボネート共重合体、ポリエステル共重合体、ポリエステルカーボネート共重合体、ポリアリレート共重合体等はより好ましく用いられる。
【0030】
ビスフェノール類とホスゲンあるいは炭酸ジフェニルなどの炭酸エステル形成性化合物と反応させて製造されるポリカーボネートは透明性、耐熱性、生産性に優れており特に好ましく用いることが出来る。ポリカーボネートとしては、フルオレン骨格を有する構造を含むものであることが好ましく、具体的には下記式(A)
【0031】
【化7】
【0032】
で示される繰り返し単位および下記式(B)
【0033】
【化8】
【0034】
で示される繰り返し単位からなり、かつ上記式(A)で表される繰り返し単位が全体(上記式(A)で表される繰り返し単位と上記式(B)で表される繰り返し単位の合計を基準として)の40〜80mol%を占めるポリカーボネートである。該ポリカーボネートは、共重合体、2種類以上のポリマー(共重合体を含む)のブレンド体、またはこれらの混合物である。
【0035】
上記式(A)において、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれる。かかる炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。この中で、水素原子、メチル基が好ましい。
【0036】
Xは下記式(X)
【0037】
【化9】
【0038】
で表されるフルオレン環であり、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基である。
【0039】
上記式(B)において、R11〜R18はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる。かかる炭素数1〜22の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜9のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基が挙げられる。この中で、水素原子、メチル基が好ましい。
【0040】
Yは下記式群
【0041】
【化10】
【0042】
からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であり、R19〜R21、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基である。かかる炭化水素基については、上記したものと同じものを挙げることができる。R22及びR25はそれぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基から選ばれ、かかる炭化水素基については、上記したものと同じものを挙げることができる。Ar1〜Ar3としてはフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基を挙げられる。
【0043】
なお、上記ポリカーボネートの場合、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位としては、上記式(A)で表される繰り返し単位中のビスフェノール成分とカーボネート成分との和であり、負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位としては、上記式(B)で表される繰り返し単位中のビスフェノール成分とカーボネート成分との和である。
【0044】
上記ポリカーボネートの中でも、製膜製、透明性、耐熱性、耐久性、生産性などのバランスの点で、下記式(C)
【0045】
【化11】
【0046】
で示される繰り返し単位と、下記式(D)
【0047】
【化12】
【0048】
で示される繰り返し単位からなり、上記式(C)で表される繰り返し単位が全体(上記式(C)で表される繰り返し単位と上記式(D)で表される繰り返し単位の合計を基準として)の45〜75mol%を占めるフルオレン骨格を有するポリカーボネート共重合体および/またはブレンド体が特に好適である。
【0049】
さらに好ましくは上記式(C)で示される繰り返し単位が全体(上記式(C)で表される繰り返し単位と上記式(D)で表される繰り返し単位の合計を基準として)の50〜70mol%を占めるポリカーボネート共重合体、ブレンド体、これらの混合物である。
【0050】
上記式(C)においてR26〜R27はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、取り扱い性の点から好ましくは両者ともメチル基である。
【0051】
上記式(D)においてR28〜R29はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、経済性、フィルム特性等から両者とも水素原子が好ましい。
【0052】
本発明における位相差フィルムは、上記したようにフルオレン骨格を有するポリカーボネートを用いたものが好ましい。このフルオレン骨格を有するポリカーボネートとしては、例えば上記式(A)で表わされる繰り返し単位と上記式(B)で表わされる繰り返し単位とからなる、異なる組成比のポリカーボネート共重合体のブレンド体がよく、最終的なブレンド体における上記式(A)の含有率はポリカーボネート全体の40〜80mol%が好ましく、より好ましくは45〜75mol%であり、さらに好ましくは50〜70mol%である。
【0053】
上記共重合体は、上記式(A)および(B)で表わされる繰り返し単位をそれぞれ2種類以上組み合わせたものでもよく、ブレンド体の場合も、上記繰り返し単位はそれぞれ2種類以上組み合わせてもよい。
【0054】
ここで上記モル比は共重合体、ブレンド体に関わらず、高分子配向フィルムを構成するポリカーボネートバルク全体で、例えば核磁気共鳴(NMR)装置により求めることができる。
【0055】
上記した共重合体および/またはブレンド体は公知の方法によって製造し得る。ポリカーボネートはジヒドロキシ化合物とホスゲンとの重縮合による方法、溶融重縮合法等が好適に用いられる。ブレンド体の場合は、相溶性ブレンドが好ましいが、完全に相溶しなくても成分間の屈折率を合わせれば成分間の光散乱を抑え、透明性を向上させることが可能である。
【0056】
上記ポリカーボネートの極限粘度は0.3〜2.0dl/gであることが好ましい。0.3未満では脆くなり機械的強度が保てないといった問題があり、2.0を超えると溶液粘度が上がりすぎるため溶液製膜においてダイラインの発生等の問題や、重合終了時の精製が困難になるといった問題がある。
【0057】
かかる位相差フィルム中には、さらに、フェニルサリチル酸、2−ヒドロキシベンゾフェノン、トリフェニルフォスフェート等の紫外線吸収剤や、色味を変えるためのブルーイング剤、酸化防止剤等が含有されていてもよい。
【0058】
本発明のロール状位相差フィルムは上記ポリカーボネートなどの未延伸フィルムを横方向(フィルム幅方向)に延伸等を行い、高分子鎖を主として幅方向に配向させた高分子配向フィルムからなるものである。かかるフィルムの製造方法としては、公知の溶融押出し法、溶液流延法等が用いられる。溶液流延法における溶剤としては、ポリカーボネートの場合、メチレンクロライド、ジオキソラン等が好適に用いられる。
【0059】
本発明のロール状位相差フィルムは、上記で述べたように、溶融押出し法あるいは溶液流延法等により製造したフィルムを、ガラス転移点温度付近の温度で加熱し、フィルムの搬送方向に対して直交方向(横方向、フィルムの幅方向)に延伸する。延伸倍率としては、所望の位相差値を与えるように適宜決定すればよいが、例えば1.5倍以上、好ましくは1.8倍以上、より好ましくは2.0倍以上である。
【0060】
かくして延伸されたフィルムは延伸前に比べて縦方向の長さは実質的に変わらず、フィルムをつかむクリップの間隔は基本的に延伸前と変わらない。
【0061】
このようにして延伸されたフィルムは連続的に製造されて、例えば、長さにして50mかそれ以上が連続的に生産されて最終的にロール状に巻き取られる。このときのロール状位相差フィルムの厚さとしては、例えば10〜300μmである。またロールの幅としては、通常100〜3000mm程度である。さらにロールの径としては、通常100〜1500mm程度である。
【0062】
かくして得られた本発明のロール状位相差フィルムは、下記式(1)
1.00≦Nz<1.35 (1)
を満たし、かつフィルムの搬送方向(流れ方向)に直行する方向が遅相軸方向であり、ロール幅方向である。ここで、上記式(1)中のNzは下記式(2)によって表される。
【0063】
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (2)
(上記式(2)中のnx、ny、nzはそれぞれロール状位相差フィルムの三次元屈折率であり、nxは面内遅相軸方向(x軸)の屈折率、nyは面内方向においてx軸と直行する方向(y軸)の屈折率、nzはx軸及びy軸に垂直な方向(z軸)の屈折率である。)
このようなロール状位相差フィルムは、例えばIPS、TN、VA、STNモード等の液晶表示素子に用いた場合でも、特に視野角が狭くなることもなく優れた視野角特性を与える。好ましくは下記式(11)
1.00≦Nz<1.30 (11)
を満たすことであり、より好ましくは下記式(12)
1.00≦Nz<1.20 (12)
を満たすことである。
【0064】
本発明のロール状位相差フィルムのリターデーションとしては、特に制限はなく、目的用途に応じて決定すればよい。例えば偏光板の視野角補償に使う場合には、通常10〜300nmの範囲で所望の値のものを選べばよい。
【0065】
本発明のロール状位相差フィルムは、例えば偏光板の視野角補償に使う場合には、かかるロール状位相差フィルムの遅相軸を通常ロール状である偏光板の透過軸と揃えていわゆるロールトゥロール貼合してロール状積層偏光板とすることができる。一般的に、偏光板の透過軸は偏光層を形成するポリビニルアルコールの延伸軸に対して直交方向である。
【0066】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
(評価法)
本明細書中に記載の材料特性値等は以下の評価法によって得られたものである。
【0068】
(1)面内位相差R値、厚み方向位相差K値、Nz値の測定
面内位相差R値および厚み方向位相差K値は、分光エリプソメータ『M150』(日本分光(株)製)により測定した。R値は入射光線とフィルム表面が直交する状態で測定した。また、K値およびNz値は入射光線とフィルム表面の角度を変えることにより、各角度での位相差値を測定し、公知の屈折率楕円体の式でカーブフィッチングすることにより得た三次元屈折率であるnx、ny、nzから求めた。なお、その際、別のパラメータとして平均屈折率nが必要になるが、これはアッベ屈折計((株)アタゴ社製の商品名『アッベ屈折計2−T』により測定した。なおK値およびNz値は以下の式により求めた。
K=((nx+ny)/2−nz)×d
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (2)
(上記式(2)中のnx、ny、nzはそれぞれロール状位相差フィルムの三次元屈折率であり、nxは面内遅相軸方向(x軸)の屈折率、nyは面内方向においてx軸と直行する方向(y軸)の屈折率、nzはx軸及びy軸に垂直な方向(z軸)の屈折率である。)
【0069】
(2)高分子のガラス転移点温度(Tg)の測定
『DSC2920 Modulated DSC』(TA Instruments社製)により測定した。フィルム成形後ではなく、樹脂重合後、フレークスまたはチップの状態で測定した。
【0070】
(3)視野角特性の評価
市販のヨウ素系偏光板である(株)サンリッツ製『HLC2−5618』と上記位相差フィルムを偏光板の透過軸と位相差フィルムの遅相軸が45°となるように粘着材を介して貼り合せた。図1に示す構成となるように粘着剤を用いて積層させ、円偏光板を作製した。この円偏光板をメルク社製ZLI−4792により作製した反射型TNセル上に配置して、目視にて観察した。
【0071】
(4)フィルム膜厚測定
アンリツ社製の電子マイクロで測定した。
【0072】
(5)高分子共重合比の測定
『JNM−alpha600』(日本電子社製)のプロトンNMRにより測定した。特にビスフェノールAとビスクレゾールフルオレンの共重合体の場合には、溶媒として重ベンゼンを用い、それぞれのメチル基のプロトン強度比から算出した。
【0073】
(6)共重合体の重合法
実施例で用いたポリカーボネート(E)及び(F)のモノマー構造を以下に示す。
【0074】
【化13】
【0075】
【化14】
【0076】
攪拌機、温度計および環流冷却器を備えた反応槽に水酸化ナトリウム水溶液およびイオン交換水を仕込み、これに上記構造を有するモノマー[E]、[F]をa:bのモル比で溶解させ、少量のハイドロサルフィトを加えた。次にこれに塩化メチレンを加え、20℃でホスゲンを約60分かけて吹き込んだ。さらに、p−tert−ブチフェノールを加えて乳化させた後、トリエチルアミンを加えて30℃で約3時間攪拌して反応を終了させた。反応終了後有機相を分取し、塩化メチレンを蒸発させてポリカーボネート共重合体を得た。得られた共重合体の組成比はモノマー仕込み量比とほぼ同等であった。
【0077】
[実施例1]
a:b=67:33とした上記方法により共重合させたポリカーボネート共重合体を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、235℃にて、テンター横延伸機に1.8倍に横延伸することにより表1に示すようなロール状位相差フィルム1を得た。このロール状位相差フィルムはロール幅方向に遅相軸を有しており、Nz=1.08であった。視野角特性は良好であった。
【0078】
[実施例2]
a:b=50:50とした上記方法により共重合させたポリカーボネート共重合体を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、225℃にてテンター横延伸機に1.7倍に横延伸することにより表1に示すようなロール状位相差フィルム2を得た。このロール状位相差フィルムはロール幅方向に遅相軸を有しており、Nz=1.29であった。視野角特性は良好であった。
【0079】
[比較例1]
a:b=30:70とした上記方法により共重合させたポリカーボネート共重合体を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、215℃にてテンター横延伸機に1.7倍に横延伸することにより表1に示すようなロール状位相差フィルム3を得た。このロール状位相差フィルムはロール幅方向に遅相軸を有しており、Nz=1.41であった。視野角特性は悪かった。
【0080】
[比較例2]
JSR(株)製ARTONを塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、180℃にてテンター横延伸機に1.7倍に横延伸することにより表1に示すようなロール状位相差フィルム4を得た。このロール状位相差フィルムはロール幅方向に遅相軸を有しており、Nz=1.40であった。視野角特性は悪かった。
【0081】
[比較例3]
帝人化成(株)製C1400を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、175℃にてテンター横延伸機に1.3倍に横延伸することにより表1に示すようなロール状位相差フィルム5を得た。このロール状位相差フィルムはロール幅方向に遅相軸を有しており、Nz=1.43であった。視野角特性は悪かった。
【0082】
【表1】
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、ある特定の高分子樹脂材料を用いることにより、一軸性の高い、すなわちnzの値がnyの値に比較的近く、Nzが特定範囲のロール状位相差フィルムが提供される。そのため、表示品位が良好であり視野角が広いという特性に優れた液晶表示素子等の表示素子を提供することができる。
【0084】
本発明のロール状位相差フィルムは、生産性に優れ工業的に有用な、単純な横延伸方法により得られるので極めてその意義は大きい。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロール状位相差フィルムに関する。さらに詳しくは、主として表示素子の視野角やコントラストなどの表示品位を改善するに好適なロール状位相差フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
表示素子の視野角拡大やコントラストの向上が求められる中、液晶パネルの複屈折を補償する目的や、反射モードでの外光反射を低減する目的などにより位相差フィルムが求められている。
【0003】
位相差フィルムはしばしば溶融押出し法あるいは溶液流延法により連続的に製造されたフィルムに延伸処理をすることにより連続的に製膜され、最終的にロール状に巻き取られる。このように位相差フィルムは連続プロセスにより生産性よく工業的に製造されるのが通常である(下記特許文献1参照)。
【0004】
上記位相差フィルムを得るための延伸手段としては、公知の縦延伸法、あるいは横延伸法が知られている。縦延伸法では破断した場合に再スタートまでのロスが大きい、あるいは、延伸時のネックインによりフィルム幅が狭くなるなどの問題がある。
【0005】
一方、縦延伸に対して横延伸法で得られるロール状位相差フィルムは遅相軸をロール幅方向に有するものであるが、フィルム幅を広くできるため比較的大型の大きい位相差フィルムを得ることができる。しかしながら、この方法により作製した位相差フィルムを表示素子に用いた場合、縦延伸により製造した位相差フィルムに比べて一般に視野角が狭く視野角特性が十分でないことがわかった。
【0006】
一方、下記特許文献2,3には、熱可塑性樹脂フィルムをテンター延伸機で延伸した後、特定の処理を行うことにより、一軸性の高い位相差板を製造する方法が記載されている。本発明者らの検討によれば、これらの方法を用いれば、ロール幅方向に遅相軸を有し、フィルム厚み方向の屈折率であるnzの値が、フィルム幅方向の屈折率であるnyに比較的近いものが得られる。しかしながら、これらの横延伸を用いた方法は非常に煩雑であり、長尺のフィルムを製造できなかったり、製造装置が複雑になり経済性も含めて工業的生産には不向きである。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−296422号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平5−11111号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平5−11113号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ロール幅方向に遅相軸を有する視野角特性に優れたロール状位相差フィルムを提供することを目的とする。かかるフィルムを用いることにより表示品質が良好な表示素子を提供できる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、工業的連続製造工程に横延伸技術を採用し、広幅の位相差フィルムを得る方法を検討するにあたって、この横延伸に着目したところ、フィルム厚み方向の屈折率であるnzが小さくなることにより、位相差の視野角依存が大きくなってしまうために視野角特性が悪くなる傾向があり、下記式(2)
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (2)
(上記式(2)中のnx、ny、nzはそれぞれロール状位相差フィルムの三次元屈折率であり、nxは面内遅相軸方向(x軸)の屈折率、nyは面内方向においてx軸と直行する方向(y軸)の屈折率、nzはx軸及びy軸に垂直な方向(z軸)の屈折率である。)
により表されるNz係数が1.35未満であれば視野角特性には大きな影響を与えないことを見出した。
【0012】
nzの低下は従来、横延伸ゆえに発生する現象であると考えられていた。縦延伸の場合にはフィルムの幅は自由に収縮できる状態にあるために、延伸方向に直交する方向(縦延伸ではフィルム幅方向)の屈折率が小さくなるのでnzはそれほど小さくならないが、横延伸の場合には、フィルムが流れ方向(縦方向)に連続であり、フィルムの流れ方向の寸法が規制されているために、フィルム幅方向だけでなく流れ方向にも応力が発生し、その方向の配向が促進されるためにnzは小さくなってしまうと考えられる。
【0013】
さらに本発明者らは鋭意検討の末、ある特定のポリマー材料を用いることが重要であるという知見を見出し、これらに基づいて本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
1. 正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とから構成されるポリマーからなるロール状位相差フィルムであって、該ロール状位相差フィルムは、全体として正の複屈折異方性を示し、下記式(1)を満たし、かつロール幅方向に遅相軸を有するロール状位相差フィルム。
【0015】
1.00≦Nz<1.35 (1)
(上記式(1)中のNzは下記式(2)によって表される。
【0016】
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (2)
(上記式(2)中のnx、ny、nzはそれぞれロール状位相差フィルムの三次元屈折率であり、nxは面内遅相軸方向(x軸)の屈折率、nyは面内方向においてx軸と直行する方向(y軸)の屈折率、nzはx軸及びy軸を含む面に垂直な方向(z軸)の屈折率である。))
【0017】
2. 上記ポリマーが、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と、負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とを有する共重合体であるか、または正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位から実質的になるポリマーと、負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とから実質的になるポリマーとのブレンドである請求項1に記載のロール状位相差フィルム。
3. 上記ポリマーのTgが120℃以上であり、光弾性係数が70×10−12Pa−1以下であり、吸水率が0.1重量%以下であり、かつ透明性が80%以上である上記1〜2のロール状位相差フィルム。
4. 上記ポリマーがポリカーボネートである、上記1〜3のロール状位相差フィルム。
5. ポリカーボネートがフルオレン骨格を有する後述の式(A)及び(B)で表される繰り返し単位を含むものである、上記1〜4の位相差フィルム。
6. 上記1〜5のロール状位相差フィルムと偏光板とが積層されてなるロール状積層偏光板。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のロール状位相差フィルムは、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とから構成されるポリマー材料から主としてなるものである。
【0019】
すなわち、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負のそれとを含むポリマー材料からなる。
【0020】
かかるポリマーとしては、(1)正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と、負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とを有する共重合体、(2)正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位から実質的になるポリマーと、負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とから実質的になるポリマーとのブレンド(混合物)が挙げられる。(1)の場合、2種類以上の共重合体を併用してもよい。(2)の場合も2種類以上のブレンド体を併用してもよい。また、(1)の共重合体と正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位から実質的になるポリマーとのブレンドを併用してもよい。
【0021】
具体的なポリマー材料としては、耐熱性に優れ、吸湿性が低く、透明性に優れたフィルムにでき、延伸により複屈折性に優れる材料が好ましい。
【0022】
例えば、光弾性定数は70×10−12Pa−1以下、好ましくは60×10−12Pa−1以下、さらに好ましくは50×10−12Pa−1であることが好ましい。70×10−12Pa−1を越えると、位相差フィルムを貼り合わせる際の張力によって位相差が発現したり、他の材料との寸法安定性のミスマッチから生じる応力によって位相差が発現したりすることにより表示斑の問題が発生する場合がある。
【0023】
また、ガラス転移点温度が120℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは180℃以上であることが好ましい。120℃未満では、表示素子の使用条件にもよるが、配向緩和などの問題が発生する場合がある。
【0024】
吸水率は1重量%以下であることが好ましい。高分子材料の吸水率が1重量%未満では位相差フィルムとして実用する上で光学特性変化や寸法変化などの問題がある場合があり、フィルム材料はフィルム吸水率が1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下の条件を満たすように選択することが良い。
【0025】
透明性は表示素子の品位の点で非常に重要であり、80%以上、好ましくは85%以上である。
【0026】
また本発明のロール状位相差フィルムは、フィルム全体として正の複屈折異方性を有することも特徴のひとつである。すなわち、フィルムの流れ方向よりもそれに対して直交するフィルムのロールの幅方向の屈折率の方が大きい。
【0027】
本発明のロール状位相差フィルムを構成するポリマー材料としては前記したように正負2種のモノマーを含むもので、かつ全体として複屈折異方性が正であれば特に限定されない。例えばポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリスルフィン系共重合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどの熱可塑性ポリマーが好適である。この熱可塑性ポリマーを用いた場合、モノマーを適宜選択することで、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位からなる共重合体や、正の屈折率異方性を有する高分子と負の屈折率異方性を有する高分子とからなるブレンド体を得ることができる。それらは2種類以上併用してもよく、また1種類以上のブレンド高分子と1種類以上の共重合体とを組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ブレンド体(高分子組成物)であれば、光学的に透明である必要があることから相溶ブレンドの場合には、各々の高分子の屈折率が略等しいことが好ましい。ブレンド高分子の具体的な組み合わせとしては、例えば負の光学異方性(屈折率異方性ともいう)を有する高分子としてポリ(メチルメタクリレート)と、正の光学異方性を有する高分子としてポリ(ビニリデンフロライド)、ポリ(エチレンオキサイド)及びポリ(ビニリデンフロライド−コ−トリフルオロエチレン)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーとの組み合わせ、正の光学異方性を有する高分子としてポリ(フェニレンオキサイド)と負の光学異方性を有する高分子としてポリスチレン、ポリ(スチレン−コ−ラウロイルマレイミド)、ポリ(スチレン−コ−シクロヘキシルマレイミド)及びポリ(スチレン−コ−フェニルマレイミド)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーとの組み合わせ、負の光学異方性を有するポリ(スチレン−コ−マレイン酸無水物)と正の光学異方性を有するポリカーボネートとの組み合わせ、正の光学異方性を有するポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン)と負の光学異方性を有するポリ(アクリロニトリル−コ−スチレン)との組み合わせ、正の光学異方性を有するポリカーボネートと負の光学異方性を有するポリカーボネートとの組み合わせを好適に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。特に透明性の観点から、ポリスチレンとポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)等のポリ(フェニレンオキサイド)とを組み合わせたブレンドポリマー、正の光学異方性を有するポリカーボネートと負の光学異方性を有するポリカーボネートとを組み合わせたブレンド体が好ましい。
【0029】
また、共重合体としては例えばポリ(ブタジエン−コ−ポリスチレン)、ポリ(エチレン−コ−ポリスチレン)、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン−コ−スチレン)、ポリカーボネート共重合体、ポリエステル共重合体、ポリエステルカーボネート共重合体、ポリアリレート共重合体等を用いることが出来る。特に、フルオレン骨格を有するセグメントは負の光学異方性となり得るため、フルオレン骨格を有するポリカーボネート共重合体、ポリエステル共重合体、ポリエステルカーボネート共重合体、ポリアリレート共重合体等はより好ましく用いられる。
【0030】
ビスフェノール類とホスゲンあるいは炭酸ジフェニルなどの炭酸エステル形成性化合物と反応させて製造されるポリカーボネートは透明性、耐熱性、生産性に優れており特に好ましく用いることが出来る。ポリカーボネートとしては、フルオレン骨格を有する構造を含むものであることが好ましく、具体的には下記式(A)
【0031】
【化7】
【0032】
で示される繰り返し単位および下記式(B)
【0033】
【化8】
【0034】
で示される繰り返し単位からなり、かつ上記式(A)で表される繰り返し単位が全体(上記式(A)で表される繰り返し単位と上記式(B)で表される繰り返し単位の合計を基準として)の40〜80mol%を占めるポリカーボネートである。該ポリカーボネートは、共重合体、2種類以上のポリマー(共重合体を含む)のブレンド体、またはこれらの混合物である。
【0035】
上記式(A)において、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれる。かかる炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。この中で、水素原子、メチル基が好ましい。
【0036】
Xは下記式(X)
【0037】
【化9】
【0038】
で表されるフルオレン環であり、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基である。
【0039】
上記式(B)において、R11〜R18はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる。かかる炭素数1〜22の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜9のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基が挙げられる。この中で、水素原子、メチル基が好ましい。
【0040】
Yは下記式群
【0041】
【化10】
【0042】
からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であり、R19〜R21、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基である。かかる炭化水素基については、上記したものと同じものを挙げることができる。R22及びR25はそれぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基から選ばれ、かかる炭化水素基については、上記したものと同じものを挙げることができる。Ar1〜Ar3としてはフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基を挙げられる。
【0043】
なお、上記ポリカーボネートの場合、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位としては、上記式(A)で表される繰り返し単位中のビスフェノール成分とカーボネート成分との和であり、負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位としては、上記式(B)で表される繰り返し単位中のビスフェノール成分とカーボネート成分との和である。
【0044】
上記ポリカーボネートの中でも、製膜製、透明性、耐熱性、耐久性、生産性などのバランスの点で、下記式(C)
【0045】
【化11】
【0046】
で示される繰り返し単位と、下記式(D)
【0047】
【化12】
【0048】
で示される繰り返し単位からなり、上記式(C)で表される繰り返し単位が全体(上記式(C)で表される繰り返し単位と上記式(D)で表される繰り返し単位の合計を基準として)の45〜75mol%を占めるフルオレン骨格を有するポリカーボネート共重合体および/またはブレンド体が特に好適である。
【0049】
さらに好ましくは上記式(C)で示される繰り返し単位が全体(上記式(C)で表される繰り返し単位と上記式(D)で表される繰り返し単位の合計を基準として)の50〜70mol%を占めるポリカーボネート共重合体、ブレンド体、これらの混合物である。
【0050】
上記式(C)においてR26〜R27はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、取り扱い性の点から好ましくは両者ともメチル基である。
【0051】
上記式(D)においてR28〜R29はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、経済性、フィルム特性等から両者とも水素原子が好ましい。
【0052】
本発明における位相差フィルムは、上記したようにフルオレン骨格を有するポリカーボネートを用いたものが好ましい。このフルオレン骨格を有するポリカーボネートとしては、例えば上記式(A)で表わされる繰り返し単位と上記式(B)で表わされる繰り返し単位とからなる、異なる組成比のポリカーボネート共重合体のブレンド体がよく、最終的なブレンド体における上記式(A)の含有率はポリカーボネート全体の40〜80mol%が好ましく、より好ましくは45〜75mol%であり、さらに好ましくは50〜70mol%である。
【0053】
上記共重合体は、上記式(A)および(B)で表わされる繰り返し単位をそれぞれ2種類以上組み合わせたものでもよく、ブレンド体の場合も、上記繰り返し単位はそれぞれ2種類以上組み合わせてもよい。
【0054】
ここで上記モル比は共重合体、ブレンド体に関わらず、高分子配向フィルムを構成するポリカーボネートバルク全体で、例えば核磁気共鳴(NMR)装置により求めることができる。
【0055】
上記した共重合体および/またはブレンド体は公知の方法によって製造し得る。ポリカーボネートはジヒドロキシ化合物とホスゲンとの重縮合による方法、溶融重縮合法等が好適に用いられる。ブレンド体の場合は、相溶性ブレンドが好ましいが、完全に相溶しなくても成分間の屈折率を合わせれば成分間の光散乱を抑え、透明性を向上させることが可能である。
【0056】
上記ポリカーボネートの極限粘度は0.3〜2.0dl/gであることが好ましい。0.3未満では脆くなり機械的強度が保てないといった問題があり、2.0を超えると溶液粘度が上がりすぎるため溶液製膜においてダイラインの発生等の問題や、重合終了時の精製が困難になるといった問題がある。
【0057】
かかる位相差フィルム中には、さらに、フェニルサリチル酸、2−ヒドロキシベンゾフェノン、トリフェニルフォスフェート等の紫外線吸収剤や、色味を変えるためのブルーイング剤、酸化防止剤等が含有されていてもよい。
【0058】
本発明のロール状位相差フィルムは上記ポリカーボネートなどの未延伸フィルムを横方向(フィルム幅方向)に延伸等を行い、高分子鎖を主として幅方向に配向させた高分子配向フィルムからなるものである。かかるフィルムの製造方法としては、公知の溶融押出し法、溶液流延法等が用いられる。溶液流延法における溶剤としては、ポリカーボネートの場合、メチレンクロライド、ジオキソラン等が好適に用いられる。
【0059】
本発明のロール状位相差フィルムは、上記で述べたように、溶融押出し法あるいは溶液流延法等により製造したフィルムを、ガラス転移点温度付近の温度で加熱し、フィルムの搬送方向に対して直交方向(横方向、フィルムの幅方向)に延伸する。延伸倍率としては、所望の位相差値を与えるように適宜決定すればよいが、例えば1.5倍以上、好ましくは1.8倍以上、より好ましくは2.0倍以上である。
【0060】
かくして延伸されたフィルムは延伸前に比べて縦方向の長さは実質的に変わらず、フィルムをつかむクリップの間隔は基本的に延伸前と変わらない。
【0061】
このようにして延伸されたフィルムは連続的に製造されて、例えば、長さにして50mかそれ以上が連続的に生産されて最終的にロール状に巻き取られる。このときのロール状位相差フィルムの厚さとしては、例えば10〜300μmである。またロールの幅としては、通常100〜3000mm程度である。さらにロールの径としては、通常100〜1500mm程度である。
【0062】
かくして得られた本発明のロール状位相差フィルムは、下記式(1)
1.00≦Nz<1.35 (1)
を満たし、かつフィルムの搬送方向(流れ方向)に直行する方向が遅相軸方向であり、ロール幅方向である。ここで、上記式(1)中のNzは下記式(2)によって表される。
【0063】
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (2)
(上記式(2)中のnx、ny、nzはそれぞれロール状位相差フィルムの三次元屈折率であり、nxは面内遅相軸方向(x軸)の屈折率、nyは面内方向においてx軸と直行する方向(y軸)の屈折率、nzはx軸及びy軸に垂直な方向(z軸)の屈折率である。)
このようなロール状位相差フィルムは、例えばIPS、TN、VA、STNモード等の液晶表示素子に用いた場合でも、特に視野角が狭くなることもなく優れた視野角特性を与える。好ましくは下記式(11)
1.00≦Nz<1.30 (11)
を満たすことであり、より好ましくは下記式(12)
1.00≦Nz<1.20 (12)
を満たすことである。
【0064】
本発明のロール状位相差フィルムのリターデーションとしては、特に制限はなく、目的用途に応じて決定すればよい。例えば偏光板の視野角補償に使う場合には、通常10〜300nmの範囲で所望の値のものを選べばよい。
【0065】
本発明のロール状位相差フィルムは、例えば偏光板の視野角補償に使う場合には、かかるロール状位相差フィルムの遅相軸を通常ロール状である偏光板の透過軸と揃えていわゆるロールトゥロール貼合してロール状積層偏光板とすることができる。一般的に、偏光板の透過軸は偏光層を形成するポリビニルアルコールの延伸軸に対して直交方向である。
【0066】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
(評価法)
本明細書中に記載の材料特性値等は以下の評価法によって得られたものである。
【0068】
(1)面内位相差R値、厚み方向位相差K値、Nz値の測定
面内位相差R値および厚み方向位相差K値は、分光エリプソメータ『M150』(日本分光(株)製)により測定した。R値は入射光線とフィルム表面が直交する状態で測定した。また、K値およびNz値は入射光線とフィルム表面の角度を変えることにより、各角度での位相差値を測定し、公知の屈折率楕円体の式でカーブフィッチングすることにより得た三次元屈折率であるnx、ny、nzから求めた。なお、その際、別のパラメータとして平均屈折率nが必要になるが、これはアッベ屈折計((株)アタゴ社製の商品名『アッベ屈折計2−T』により測定した。なおK値およびNz値は以下の式により求めた。
K=((nx+ny)/2−nz)×d
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (2)
(上記式(2)中のnx、ny、nzはそれぞれロール状位相差フィルムの三次元屈折率であり、nxは面内遅相軸方向(x軸)の屈折率、nyは面内方向においてx軸と直行する方向(y軸)の屈折率、nzはx軸及びy軸に垂直な方向(z軸)の屈折率である。)
【0069】
(2)高分子のガラス転移点温度(Tg)の測定
『DSC2920 Modulated DSC』(TA Instruments社製)により測定した。フィルム成形後ではなく、樹脂重合後、フレークスまたはチップの状態で測定した。
【0070】
(3)視野角特性の評価
市販のヨウ素系偏光板である(株)サンリッツ製『HLC2−5618』と上記位相差フィルムを偏光板の透過軸と位相差フィルムの遅相軸が45°となるように粘着材を介して貼り合せた。図1に示す構成となるように粘着剤を用いて積層させ、円偏光板を作製した。この円偏光板をメルク社製ZLI−4792により作製した反射型TNセル上に配置して、目視にて観察した。
【0071】
(4)フィルム膜厚測定
アンリツ社製の電子マイクロで測定した。
【0072】
(5)高分子共重合比の測定
『JNM−alpha600』(日本電子社製)のプロトンNMRにより測定した。特にビスフェノールAとビスクレゾールフルオレンの共重合体の場合には、溶媒として重ベンゼンを用い、それぞれのメチル基のプロトン強度比から算出した。
【0073】
(6)共重合体の重合法
実施例で用いたポリカーボネート(E)及び(F)のモノマー構造を以下に示す。
【0074】
【化13】
【0075】
【化14】
【0076】
攪拌機、温度計および環流冷却器を備えた反応槽に水酸化ナトリウム水溶液およびイオン交換水を仕込み、これに上記構造を有するモノマー[E]、[F]をa:bのモル比で溶解させ、少量のハイドロサルフィトを加えた。次にこれに塩化メチレンを加え、20℃でホスゲンを約60分かけて吹き込んだ。さらに、p−tert−ブチフェノールを加えて乳化させた後、トリエチルアミンを加えて30℃で約3時間攪拌して反応を終了させた。反応終了後有機相を分取し、塩化メチレンを蒸発させてポリカーボネート共重合体を得た。得られた共重合体の組成比はモノマー仕込み量比とほぼ同等であった。
【0077】
[実施例1]
a:b=67:33とした上記方法により共重合させたポリカーボネート共重合体を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、235℃にて、テンター横延伸機に1.8倍に横延伸することにより表1に示すようなロール状位相差フィルム1を得た。このロール状位相差フィルムはロール幅方向に遅相軸を有しており、Nz=1.08であった。視野角特性は良好であった。
【0078】
[実施例2]
a:b=50:50とした上記方法により共重合させたポリカーボネート共重合体を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、225℃にてテンター横延伸機に1.7倍に横延伸することにより表1に示すようなロール状位相差フィルム2を得た。このロール状位相差フィルムはロール幅方向に遅相軸を有しており、Nz=1.29であった。視野角特性は良好であった。
【0079】
[比較例1]
a:b=30:70とした上記方法により共重合させたポリカーボネート共重合体を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、215℃にてテンター横延伸機に1.7倍に横延伸することにより表1に示すようなロール状位相差フィルム3を得た。このロール状位相差フィルムはロール幅方向に遅相軸を有しており、Nz=1.41であった。視野角特性は悪かった。
【0080】
[比較例2]
JSR(株)製ARTONを塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、180℃にてテンター横延伸機に1.7倍に横延伸することにより表1に示すようなロール状位相差フィルム4を得た。このロール状位相差フィルムはロール幅方向に遅相軸を有しており、Nz=1.40であった。視野角特性は悪かった。
【0081】
[比較例3]
帝人化成(株)製C1400を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、175℃にてテンター横延伸機に1.3倍に横延伸することにより表1に示すようなロール状位相差フィルム5を得た。このロール状位相差フィルムはロール幅方向に遅相軸を有しており、Nz=1.43であった。視野角特性は悪かった。
【0082】
【表1】
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、ある特定の高分子樹脂材料を用いることにより、一軸性の高い、すなわちnzの値がnyの値に比較的近く、Nzが特定範囲のロール状位相差フィルムが提供される。そのため、表示品位が良好であり視野角が広いという特性に優れた液晶表示素子等の表示素子を提供することができる。
【0084】
本発明のロール状位相差フィルムは、生産性に優れ工業的に有用な、単純な横延伸方法により得られるので極めてその意義は大きい。
Claims (7)
- 正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とから構成されるポリマーからなるロール状位相差フィルムであって、該ロール状位相差フィルムは、全体として正の複屈折異方性を示し、下記式(1)を満たし、かつロール幅方向に遅相軸を有するロール状位相差フィルム。
1.00≦Nz<1.35 (1)
(上記式(1)中のNzは下記式(2)によって表される。
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (2)
(上記式(2)中のnx、ny、nzはそれぞれロール状位相差フィルムの三次元屈折率であり、nxは面内遅相軸方向(x軸)の屈折率、nyは面内方向においてx軸と直行する方向(y軸)の屈折率、nzはx軸及びy軸を含む面に垂直な方向(z軸)の屈折率である。)) - 上記ポリマーが、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と、負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とを有する共重合体であるか、または正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位から実質的になるポリマーと、負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とから実質的になるポリマーとのブレンドである請求項1に記載のロール状位相差フィルム。
- 上記ポリマーのTgが120℃以上であり、光弾性係数が70×10−12Pa−1以下であり、吸水率が0.1重量%以下であり、かつ透明性が80%以上である請求項1〜2のいずれかに記載のロール状位相差フィルム。
- 上記ポリマーがポリカーボネートである、請求項1〜3のいずれかに記載のロール状位相差フィルム。
- ポリカーボネートが下記式(A)
で示される繰り返し単位および下記式(B)
で示される繰り返し単位からなり、上記式(A)で表される繰り返し単位が全体(上記式(A)で表される繰り返し単位と上記式(B)で表される繰り返し単位の合計を基準として)の40〜80mol%を占める請求項4に記載のロール状位相差フィルム。 - 上記請求項1〜6のいずれかに記載のロール状位相差フィルムと偏光板とが積層されてなるロール状積層偏光板。
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- 2003-04-03 JP JP2003100154A patent/JP2004309617A/ja active Pending
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