JP2004308488A - 空燃比センサの擬似劣化信号発生装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】空燃比センサが劣化した状態を考慮した制御変数の適合作業を、低コストかつ高精度に行えるようにする。
【解決手段】新品の空燃比センサを機関に装着した状態で空燃比フィードバック制御を行わせ、燃料噴射弁から空燃比センサまでのプラントモデルを同定する。一方、機関負荷・回転速度毎に基準の空燃比センサを用いたときの同定パラメータを記憶しておき、実際の空燃比センサについて求めた同定パラメータと基準の空燃比センサにおける同定パラメータとの比から、劣化特性を擬似的に与えるための補正特性を修正する。そして、前記修正された補正特性で空燃比センサの検出信号を補正して、要求の劣化度合いに見合う応答遅れを生じさせる。
【選択図】 図4
【解決手段】新品の空燃比センサを機関に装着した状態で空燃比フィードバック制御を行わせ、燃料噴射弁から空燃比センサまでのプラントモデルを同定する。一方、機関負荷・回転速度毎に基準の空燃比センサを用いたときの同定パラメータを記憶しておき、実際の空燃比センサについて求めた同定パラメータと基準の空燃比センサにおける同定パラメータとの比から、劣化特性を擬似的に与えるための補正特性を修正する。そして、前記修正された補正特性で空燃比センサの検出信号を補正して、要求の劣化度合いに見合う応答遅れを生じさせる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空燃比センサが劣化した状態での検出信号を擬似的に発生させる擬似劣化信号発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、内燃機関の排気中の酸素濃度に基づいて燃焼混合気の空燃比を検出する空燃比センサを排気管に設け、該空燃比センサで検出される実際の空燃比と目標空燃比との偏差に基づいて、機関への燃料供給量をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御が知られている。
【0003】
また、特許文献1に開示される空燃比フィードバック制御においては、空燃比センサの劣化による時定数の変化を検出し、該時定数の変化に対応して目標空燃比を変更する構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平08−128347号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のように空燃比センサの劣化時に対応する処理を最適に行わせるには、空燃比センサが劣化した状態での運転を実験的に行わせ、種々のパラメータを予め適合させる必要が生じる。
【0006】
そこで、従来では、前記適合作業のために、劣化した状態の出力特性を示す空燃比センサを製造し、該劣化空燃比センサを機関に装着して空燃比検出を行わせるようにしていた。
【0007】
しかし、劣化特性の空燃比センサを要求通りに製造することが難しく、劣化空燃比センサの製造コストが高くなってしまうという問題があった。
また、劣化空燃比センサを機関に装着して実験を行っている最中に、劣化空燃比センサの劣化度合いが進んでしまい、一定の劣化条件で適合作業を行わせることが困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、空燃比センサが劣化した状態に対応する適合作業を、低コストにかつ精度良く行えるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そのため、請求項1記載の発明では、要求の劣化度合い毎に空燃比センサの検出信号の補正特性を予め記憶する一方、空燃比センサの過渡応答と基準の空燃比センサの過渡応答との比較結果に基づいて前記補正特性を修正し、該修正され補正特性で前記空燃比センサの検出信号を補正することで、前記要求の劣化度合いに対応する過渡遅れを強制的に生じさせる構成とした。
【0010】
かかる構成によると、新品の空燃比センサの検出信号を補正することで、擬似的に劣化した検出信号を発生させるが、補正特性は基準の空燃比センサで適合されるため、空燃比センサの応答特性にばらつきがあると、補正後の検出信号にもばらつきが生じ、要求の劣化度合いに対して一定の過渡遅れを示す擬似劣化信号を発生させることができなくなる。
【0011】
そこで、実際に機関に装着されている空燃比センサの過渡応答と、基準の補正特性を適合させた基準の空燃比センサの過渡応答とを比較し、過渡応答の違いに応じて基準の補正特性を修正する。
【0012】
これにより、空燃比センサのばらつきの影響を排除して、要求の劣化度合いに対して一定の過渡遅れを示す擬似劣化信号を発生させることができる。
請求項2記載の発明では、基準の空燃比センサの過渡応答が、機関負荷及び機関回転速度を変数として予め記憶される構成とした。
【0013】
かかる構成によると、機関の負荷・回転速度毎に基準の過渡応答が記憶され、そのときの負荷・回転速度に対応して記憶されている過渡応答と、実際に機関に装着されている空燃比センサのそのときの過渡応答とを比較することで、負荷・回転速度の影響を除いて、空燃比センサの過渡応答のばらつきを検出する。
【0014】
請求項3記載の発明では、空燃比センサの過渡応答を、機関に燃料を噴射する燃料噴射弁から前記空燃比センサまでを制御対象としたプラントモデルを、空燃比制御信号と前記空燃比センサの検出信号に基づいて同定することで求める構成とした。
【0015】
かかる構成によると、機関に燃料を噴射する燃料噴射弁から空燃比センサまでを制御対象としたプラントモデルを、入力としての空燃比制御信号と出力としての空燃比センサの検出信号とに基づいて同定することで、実際の空燃比センサの過渡応答を検出する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る擬似劣化信号発生装置が適用される内燃機関のシステム構成図である。
【0017】
この図1において、内燃機関11の吸気管12には、吸入空気流量Qaを計測するエアフローメータ13及び吸入空気流量Qaを制御する吸気絞り弁14が設けられる。
【0018】
前記吸気絞り弁14下流のマニホールド部分には、気筒毎に電磁式の燃料噴射弁15が設けられる。
前記燃料噴射弁15は、後述するようにしてコントロールユニット50において設定される駆動パルス信号によって開弁駆動され、所定圧力に制御された燃料を噴射する。
【0019】
更に、機関11の冷却ジャケット内の冷却水温度Twを検出する水温センサ16が設けられる。
一方、排気マニホールド17の集合部近傍に、排気中の酸素濃度に基づいて吸入混合気の空燃比を検出する空燃比センサ18が設けられる。
【0020】
前記空燃比センサ18の下流側には、理論空燃比近傍において排気中のCO,HCの酸化とNOxの還元を良好に行って排気を浄化する三元触媒19が介装されている。
【0021】
ここで、前記空燃比センサ18の構造及び空燃比検出原理について説明する。
図2に前記空燃比センサ18の構造を示す。
前記空燃比センサ18の本体1は、例えば酸素イオン伝導性を有するジルコニアZr2O3等の耐熱性多孔質絶縁材料等で形成され、該本体1には、ヒータ部2が設けられる。
【0022】
また、前記本体1には、大気(標準ガス)と連通する大気導入孔3、及び、ガス導入孔4及び保護層5を介して機関排気側と連通するガス拡散層6が設けられている。
【0023】
センシング部電極7A,7Bは、大気導入孔3とガス拡散層6とに臨んで設けられると共に、酸素ポンプ電極8A,8Bは、ガス拡散層6とこれに対応する本体1の周囲とに設けられる。
【0024】
前記センシング部電極7A,7Bの間には、ガス拡散層6内の酸素イオン濃度(酸素分圧)と大気中の酸素イオン濃度との比に応じた電圧が発生し、該電圧に基づいてガス拡散層6内の空燃比の理論空燃比に対するリッチ・リーンが検出される。
【0025】
一方、酸素ポンプ電極8A,8Bには、センシング部電極7A,7Bの間に発生する電圧、つまり、ガス拡散層6内のリッチ・リーンに応じて電圧が印加されるようになっている。
【0026】
前記酸素ポンプ電極部8A,8Bにおいては、所定の電圧が印加されると、これに応じてガス拡散層6内の酸素イオンが移動され、酸素ポンプ電極部8A,8B間に電流が流れる。
【0027】
ここで、酸素ポンプ電極部8A,8B間に、所定電圧を印加したときに該電極間を流れる電流値(限界電流)Ipは、排気中の酸素イオン濃度に影響されるので、電流値(限界電流)Ipを検出することで空燃比を検出できることになる。
【0028】
即ち、図3のテーブル(A)に示すように、酸素ポンプ電極間の電流・電圧と、空燃比との相関関係が得られ、センシング部電極7A,7Bのリッチ・リーン出力に基づいて酸素ポンプ電極部8A,8Bに対する電圧の印加方向を反転させることで、リーン領域とリッチ領域との両方の空燃比領域において、酸素ポンプ電極部8A,8B間を流れる電流値(限界電流)Ipに基づき、空燃比を検出できる。
【0029】
以上のような空燃比検出原理により、酸素ポンプ電極部間の電流値Ipを検出して、例えば図3のテーブル(B)を参照すれば、空燃比を広範囲に検出することができる。
【0030】
但し、空燃比センサ18の構造及び空燃比検出原理を上記のものに限定するものではなく、理論空燃比に対するリッチ・リーンのみを検出する所謂ストイキセンサであっても良い。
【0031】
ここで、前記図1の説明に戻る。
前記機関11には、クランク軸の角度を検出するクランク角センサ20が設けられており、コントロールユニット50では、該クランク角センサ20から機関回転と同期して出力されるクランク単位角信号を一定時間カウントして、又は、クランク基準角信号の周期を計測して機関回転速度Neを検出する。
【0032】
前記コントロールユニット50は、CPU,ROM,RAM,A/D変換器及び入出力インタフェイス等から構成されるマイクロコンピュータを含んでなり、前述の空燃比センサ18、エアフローメータ13、水温センサ16、クランク角センサ20等からの入力信号を受け、以下のようにして燃料噴射弁15の燃料噴射量を制御する。
【0033】
前記コントロールユニット50は、エアフローメータ13で検出される吸入空気流量Qaと、クランク角センサ20の信号から求められる機関回転速度Neとから基本燃料噴射パルス幅Tp=k×Qa/Ne(kは定数)を演算すると共に、低水温時に強制的にリッチ側に補正する水温補正係数Kw、始動及び始動後増量補正係数Kas、空燃比フィードバック補正係数LAMBDA、電圧補正分Ts、目標空燃比に対応する目標当量比Z等により、最終的な燃料噴射パルス幅Ti=Tp×(1+Kw+Kas+・・・)×LAMBDA×Z+Tsを演算する。
【0034】
そして、この燃料噴射パルス幅Tiが駆動パルス信号として前記燃料噴射弁15に送られて、前記燃料噴射パルス幅Tiから電圧補正分Tsを除いた有効噴射パルス幅Teに比例する量の燃料が噴射される。
【0035】
上記空燃比フィードバック補正係数LAMBDAは、空燃比センサ18が検出する実際の空燃比の目標空燃比からのズレを補正するための係数であり、これによって基本燃料パルス幅Tpを補正することで、実際の空燃比を目標空燃比(例えば理論空燃比)に一致させる。
【0036】
前記空燃比フィードバック補正係数LAMBDAは、空燃比センサ18で検出される実際の空燃比と目標空燃比との偏差に基づく比例・積分・微分制御によって設定される。
【0037】
ここで、前記コントロールユニット50には、本発明に係る空燃比センサの擬似劣化信号発生装置が内蔵されており、該擬似劣化信号発生装置を選択的に機能させることができるようになっている。
【0038】
即ち、前記空燃比センサ18の検出信号をそのまま用いて通常に空燃比フィードバック制御を行わせる状態と、機関制御仕様の開発・設計時において各種の制御変数を適合する作業のために、前記空燃比センサ18の検出信号を擬似劣化信号発生装置で処理して空燃比フィードバック制御を行わせる状態とに切り換えられるようになっている。
【0039】
また、空燃比センサ18の擬似劣化信号を発生させるに当たって、コントロールユニット50に対して外部から劣化度合いの要求を指示できるようになっている。
【0040】
尚、前記劣化度合いは、例えば、走行距離10万km相当,走行距離20万km相当などの車両走行距離で指定される。
また、擬似劣化信号発生装置を機能させる場合の空燃比センサ18は、新品の空燃比センサであり、劣化した状態の出力特性を示す劣化空燃比センサは用いない。
【0041】
図4の制御ブロック図は、前記擬似劣化信号発生装置の処理内容を示す。
図4において、同定機構部101では、空燃比センサ(A/Fセンサ)18の検出信号と空燃比フィードバック補正係数LAMBDA(空燃比制御信号)とを入力して、燃料噴射弁15から空燃比センサ18までを制御対象としたプラントモデルの同定を行い、空燃比センサ18の過渡応答を示す同定パラメータを出力する。
【0042】
前記同定は、空燃比センサ(A/Fセンサ)18の検出信号を、擬似劣化させることなくそのまま用いて空燃比フィードバック制御している状態で行われる。
また、前記同定においては、燃料噴射弁15から空燃比センサ18までのプラントモデルを、例えば、ARXモデル(Auto−Regressive eXogeneous モデル)で記述し、該モデルの同定パラメータを、逐次最小2乗法(recursive least−squares method)で推定する。
【0043】
より具体的には、燃料噴射弁15から空燃比センサ18までのプラントモデルを、以下のように、2次のARXモデルとする。
【0044】
【数1】
ここで、
【0045】
【数2】
となる。
【0046】
前記ARXモデルは、排気輸送に因るむだ時間が補償されたモデル、換言すれば、排気輸送時間がない場合のモデルであり、空燃比フィードバック補正係数LAMBDAの変化(空燃比変化)に対する空燃比センサ18の検出応答を示す。
【0047】
ここで、前記むだ時間(排気輸送時間)は、吸入空気量,機関回転速度で変化するので、そのときの吸入空気量,機関回転速度に応じて設定する。
そして、前記同定パラメータa1,a2,b0を、逐次最小2乗法を用いて調整するが、前記同定機構101部は、前記同定パラメータの中で空燃比センサ18の過渡応答を端的に表す同定パラメータb0のみを出力する。
【0048】
一方、基準空燃比センサ応答特性部102には、予め機関11の負荷Tpと回転速度Neとを変数として、基準の空燃比センサ(基準の応答特性を示す新品センサ)を用いたときの前記同定パラメータb0が記憶されており、そのときの負荷Tpと回転速度Neとに対応する同定パラメータb0を、bkとして出力する。
【0049】
尚、本実施形態では、機関負荷を代表するパラメータとして、基本燃料噴射パルス幅Tpを用いるが、スロットル開度やシリンダ吸入空気量や吸入負圧などを用いる構成としても良い。
【0050】
パラメータ補正係数算出部103では、同定機構部101から出力される、そのときに装着されている空燃比センサ18の過渡応答を示す同定パラメータb0と、基準空燃比センサ応答特性部102から出力される、現在の運転条件(負荷・回転速度)で基準空燃比センサを用いたときの過渡応答を示す同定パラメータbkとの比として、パラメータ補正係数(=b0/bk)を算出する。
【0051】
一方、劣化M定数マップ104には、要求劣化度合い(走行距離10万km相当,走行距離20万km相当など)毎に劣化モジュール定数bMが記憶されており、そのときの要求の劣化度合いに応じて対応する劣化モジュール定数bMを出力する。
【0052】
前記劣化モジュール定数bMは、前記基準空燃比センサが所定の劣化度合いになった場合における前記同定パラメータb0に相当する。
劣化M定数補正部105では、前記パラメータ補正係数b0/bkで前記劣化モジュール定数bMを補正することで、空燃比センサ18のばらつきによる空燃比センサ18と基準空燃比センサとの過渡応答の違いを補償する。
【0053】
そして、前記劣化M定数補正部105から出力される補正後の劣化モジュール定数bMに基づいて、空燃比センサ18の検出信号を補正することで、要求の劣化度合いに見合う応答遅れを示す擬似劣化信号を発生させる。
【0054】
基準の空燃比センサと実際に機関に取り付けた空燃比センサ18とが同じ過渡応答を示す場合には、前記パラメータ補正係数b0/bkは1になって、前記劣化モジュール定数bMが補正されることなくそのまま用いられることになるが、空燃比センサ18にばらつきがあると、該ばらつき分だけ前記劣化モジュール定数bMが修正される。
【0055】
例えば、実際に機関1に取り付けた空燃比センサ18が、基準の空燃比センサよりも過渡応答が遅いセンサであると、前記劣化モジュール定数bMを補正せずにそのまま用いて空燃比センサ18の検出信号を補正すると、要求の劣化度合いよりも劣化度合いが進んだ、換言すれば、要求の劣化状態よりも遅れが大きな擬似劣化信号を発生させることになる。
【0056】
逆に、実際に機関1の取り付けた空燃比センサ18が、基準の空燃比センサよりも過渡応答が速いセンサであると、前記劣化モジュール定数bMを補正せずにそのまま用いて空燃比センサ18の検出信号を補正すると、要求の劣化度合いよりも劣化度合いが小さい、換言すれば、要求の劣化状態よりも遅れが小さな擬似劣化信号を発生させることになる。
【0057】
そこで、前記同定機構部101では、実際に機関1に取り付けた空燃比センサ18の過渡応答を検出し、基準空燃比センサ応答特性部102では、同じ運転条件(負荷・回転)での基準空燃比センサの過渡応答を設定し、この過渡応答の違いに基づいて劣化モジュール定数bM(補正特性)を修正することで、機関1に取り付けた空燃比センサ18の過渡応答にばらつきがあっても、要求の劣化度合いに見合う一定の応答遅れを示す擬似劣化信号を発生させることができるようにしてある。
【0058】
図5のフローチャートは、前記同定機構部101,基準空燃比センサ応答特性部102,パラメータ補正係数算出部103,劣化M定数マップ104による処理の流れを示すものである。
【0059】
ステップS1では、空燃比センサ18の検出信号をそのまま用いて空燃比フィードバック制御が行われている状態であるか否かを判別し、空燃比フィードバック制御中であれば、ステップS2へ進む。
【0060】
ステップS2では、そのときの空燃比フィードバック補正係数と空燃比センサ18の検出信号とから同定パラメータb0の算出を行わせる。
ステップS3では、機関負荷Tpと機関回転速度Neとに基づいてマップを参照して、基準の空燃比センサ18を用いたときの同定パラメータb0であるbkを検索する。
【0061】
ステップS4では、前記同定パラメータb0と同定パラメータbkとの比b0/bk、即ち、実際の空燃比センサ18の過渡応答と、基準の空燃比センサの過渡応答との比を、補正係数として算出する。
【0062】
ステップS5では、劣化度合いの要求に基づいて劣化モジュール定数bM(補正特性)を算出する。
ステップS6では、前記劣化モジュール定数bMに前記補正係数b0/bkを乗算して、補正後の劣化モジュール定数bMを求める。
【0063】
前記劣化M定数補正部105で補正された劣化モジュール定数bMは、空燃比センサ18の検出信号を入力する擬似劣化信号生成部106に出力され、擬似劣化信号生成部106では、前記劣化モジュール定数bMに基づいて、空燃比センサ18の検出信号を補正することで、要求の劣化度合いに対応する過渡遅れを強制的に生じさせる。
【0064】
前記補正は、検出信号に遅れ(一次遅れ)を生じさせる補正であり、例えば時定数の異なる複数のローパスフィルタ(アナログ遅延回路)を備え、これらの中から空燃比センサ18の検出信号を通過させるローパスフィルタを前記劣化モジュール定数bMに応じて選択する構成や、検出信号の加重平均演算を前記劣化モジュール定数bMに応じた加重重みで行わせる。
【0065】
前記擬似劣化信号生成部106から出力される擬似劣化信号、即ち、要求の劣化度合いに見合う過渡遅れを示す検出信号は、空燃比フィードバック制御に用いられる。
【0066】
これにより、新品の空燃比センサ18を用いながら、空燃比センサ18が劣化した状態での空燃比フィードバック制御状態がシミュレーションされる。
そして、このときの機関運転状態(排気性状など)から、劣化状態を考慮した各種制御パラメータの適合を行わせる。
【0067】
上記のように、新品の空燃比センサ18の検出信号を擬似的に劣化させる構成であれば、劣化特性の空燃比センサを製造する必要がなく、要求の応答劣化度合いでの空燃比検出を行わせることができ、空燃比センサが劣化した状態での適合作業を、低コストにかつ精度良く行える。
【0068】
更に、上記のように、機関11に装着した空燃比センサ18と基準空燃比センサとの過渡応答の違いに応じた修正を遅れ補正に加える構成としたことで、機関11に装着する空燃比センサ18に過渡応答のばらつきがあっても、要求の劣化度合いに対して、一定の過渡遅れを示す擬似劣化信号を発生させることができる。
【0069】
尚、上記実施形態では、擬似劣化信号発生装置を前記コントロールユニット50に内蔵させる構成としたが、空燃比センサ18とコントロールユニット50との間に別体の擬似劣化信号発生装置を介装させる構成としても良い。
【0070】
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術思想について、以下にその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜3記載の空燃比センサの擬似劣化信号発生装置において、
前記補正特性としての加重重みで前記空燃比センサの検出信号を加重平均することで、前記要求の劣化度合いに対応する過渡遅れを強制的に生じさせることを特徴とする空燃比センサの擬似劣化信号発生装置。
【0071】
かかる構成によると、空燃比センサの検出信号を加重平均することで、要求の劣化度合いに対応する過渡遅れを生じさせる。
従って、演算処理のみによって、要求の劣化度合いに対応する過渡遅れを強制的に生じさせることができる。
(ロ)請求項1〜3記載の空燃比センサの擬似劣化信号発生装置において、
相互に時定数の異なる複数のアナログ遅延回路を備え、前記補正特性としての時定数に応じて選択されるアナログ遅延回路に前記空燃比センサの検出信号を通過させることで、前記要求の劣化度合いに対応する過渡遅れを強制的に生じさせることを特徴とする空燃比センサの擬似劣化信号発生装置。
【0072】
かかる構成によると、複数のアナログ遅延回路(例えばローパスフィルタ)の中から、要求の劣化度合いに対応する時定数の回路を選択し、該選択した回路に空燃比センサの検出信号を通過させることで、要求の劣化度合いに見合う過渡応答の遅れを生じさせる。
【0073】
従って、CPU等を用いない簡便な構成で、擬似劣化信号発生装置を構成することができる。
(ハ)請求項1〜3のいずれか1つに記載の空燃比センサの擬似劣化信号発生装置において、
前記要求の劣化度合いが、走行距離に基づいて指定されることを特徴とする空燃比センサの擬似劣化信号発生装置。
【0074】
かかる構成によると、センサの劣化度合いが、例えば10万km相当や20万km相当などの走行距離に基づいて指定され、該走行距離での標準的なセンサ劣化に見合う過渡遅れを強制的に生じさせる。
【0075】
従って、ある走行距離を走行した状態でのセンサの劣化状態をシミュレーションでき、走行距離を基準とする適合作業を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態における内燃機関のシステム構成図。
【図2】空燃比センサの構造図。
【図3】空燃比センサの空燃比検出原理を説明するための図。
【図4】実施形態における擬似劣化信号発生装置の制御ブロック図。
【図5】実施形態における擬似劣化信号発生制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
11…内燃機関、13…エアフローメータ、15…燃料噴射弁、17…排気マニホールド、18…空燃比センサ、20…クランク角センサ、50…コントロールユニット
【発明の属する技術分野】
本発明は、空燃比センサが劣化した状態での検出信号を擬似的に発生させる擬似劣化信号発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、内燃機関の排気中の酸素濃度に基づいて燃焼混合気の空燃比を検出する空燃比センサを排気管に設け、該空燃比センサで検出される実際の空燃比と目標空燃比との偏差に基づいて、機関への燃料供給量をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御が知られている。
【0003】
また、特許文献1に開示される空燃比フィードバック制御においては、空燃比センサの劣化による時定数の変化を検出し、該時定数の変化に対応して目標空燃比を変更する構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平08−128347号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のように空燃比センサの劣化時に対応する処理を最適に行わせるには、空燃比センサが劣化した状態での運転を実験的に行わせ、種々のパラメータを予め適合させる必要が生じる。
【0006】
そこで、従来では、前記適合作業のために、劣化した状態の出力特性を示す空燃比センサを製造し、該劣化空燃比センサを機関に装着して空燃比検出を行わせるようにしていた。
【0007】
しかし、劣化特性の空燃比センサを要求通りに製造することが難しく、劣化空燃比センサの製造コストが高くなってしまうという問題があった。
また、劣化空燃比センサを機関に装着して実験を行っている最中に、劣化空燃比センサの劣化度合いが進んでしまい、一定の劣化条件で適合作業を行わせることが困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、空燃比センサが劣化した状態に対応する適合作業を、低コストにかつ精度良く行えるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そのため、請求項1記載の発明では、要求の劣化度合い毎に空燃比センサの検出信号の補正特性を予め記憶する一方、空燃比センサの過渡応答と基準の空燃比センサの過渡応答との比較結果に基づいて前記補正特性を修正し、該修正され補正特性で前記空燃比センサの検出信号を補正することで、前記要求の劣化度合いに対応する過渡遅れを強制的に生じさせる構成とした。
【0010】
かかる構成によると、新品の空燃比センサの検出信号を補正することで、擬似的に劣化した検出信号を発生させるが、補正特性は基準の空燃比センサで適合されるため、空燃比センサの応答特性にばらつきがあると、補正後の検出信号にもばらつきが生じ、要求の劣化度合いに対して一定の過渡遅れを示す擬似劣化信号を発生させることができなくなる。
【0011】
そこで、実際に機関に装着されている空燃比センサの過渡応答と、基準の補正特性を適合させた基準の空燃比センサの過渡応答とを比較し、過渡応答の違いに応じて基準の補正特性を修正する。
【0012】
これにより、空燃比センサのばらつきの影響を排除して、要求の劣化度合いに対して一定の過渡遅れを示す擬似劣化信号を発生させることができる。
請求項2記載の発明では、基準の空燃比センサの過渡応答が、機関負荷及び機関回転速度を変数として予め記憶される構成とした。
【0013】
かかる構成によると、機関の負荷・回転速度毎に基準の過渡応答が記憶され、そのときの負荷・回転速度に対応して記憶されている過渡応答と、実際に機関に装着されている空燃比センサのそのときの過渡応答とを比較することで、負荷・回転速度の影響を除いて、空燃比センサの過渡応答のばらつきを検出する。
【0014】
請求項3記載の発明では、空燃比センサの過渡応答を、機関に燃料を噴射する燃料噴射弁から前記空燃比センサまでを制御対象としたプラントモデルを、空燃比制御信号と前記空燃比センサの検出信号に基づいて同定することで求める構成とした。
【0015】
かかる構成によると、機関に燃料を噴射する燃料噴射弁から空燃比センサまでを制御対象としたプラントモデルを、入力としての空燃比制御信号と出力としての空燃比センサの検出信号とに基づいて同定することで、実際の空燃比センサの過渡応答を検出する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る擬似劣化信号発生装置が適用される内燃機関のシステム構成図である。
【0017】
この図1において、内燃機関11の吸気管12には、吸入空気流量Qaを計測するエアフローメータ13及び吸入空気流量Qaを制御する吸気絞り弁14が設けられる。
【0018】
前記吸気絞り弁14下流のマニホールド部分には、気筒毎に電磁式の燃料噴射弁15が設けられる。
前記燃料噴射弁15は、後述するようにしてコントロールユニット50において設定される駆動パルス信号によって開弁駆動され、所定圧力に制御された燃料を噴射する。
【0019】
更に、機関11の冷却ジャケット内の冷却水温度Twを検出する水温センサ16が設けられる。
一方、排気マニホールド17の集合部近傍に、排気中の酸素濃度に基づいて吸入混合気の空燃比を検出する空燃比センサ18が設けられる。
【0020】
前記空燃比センサ18の下流側には、理論空燃比近傍において排気中のCO,HCの酸化とNOxの還元を良好に行って排気を浄化する三元触媒19が介装されている。
【0021】
ここで、前記空燃比センサ18の構造及び空燃比検出原理について説明する。
図2に前記空燃比センサ18の構造を示す。
前記空燃比センサ18の本体1は、例えば酸素イオン伝導性を有するジルコニアZr2O3等の耐熱性多孔質絶縁材料等で形成され、該本体1には、ヒータ部2が設けられる。
【0022】
また、前記本体1には、大気(標準ガス)と連通する大気導入孔3、及び、ガス導入孔4及び保護層5を介して機関排気側と連通するガス拡散層6が設けられている。
【0023】
センシング部電極7A,7Bは、大気導入孔3とガス拡散層6とに臨んで設けられると共に、酸素ポンプ電極8A,8Bは、ガス拡散層6とこれに対応する本体1の周囲とに設けられる。
【0024】
前記センシング部電極7A,7Bの間には、ガス拡散層6内の酸素イオン濃度(酸素分圧)と大気中の酸素イオン濃度との比に応じた電圧が発生し、該電圧に基づいてガス拡散層6内の空燃比の理論空燃比に対するリッチ・リーンが検出される。
【0025】
一方、酸素ポンプ電極8A,8Bには、センシング部電極7A,7Bの間に発生する電圧、つまり、ガス拡散層6内のリッチ・リーンに応じて電圧が印加されるようになっている。
【0026】
前記酸素ポンプ電極部8A,8Bにおいては、所定の電圧が印加されると、これに応じてガス拡散層6内の酸素イオンが移動され、酸素ポンプ電極部8A,8B間に電流が流れる。
【0027】
ここで、酸素ポンプ電極部8A,8B間に、所定電圧を印加したときに該電極間を流れる電流値(限界電流)Ipは、排気中の酸素イオン濃度に影響されるので、電流値(限界電流)Ipを検出することで空燃比を検出できることになる。
【0028】
即ち、図3のテーブル(A)に示すように、酸素ポンプ電極間の電流・電圧と、空燃比との相関関係が得られ、センシング部電極7A,7Bのリッチ・リーン出力に基づいて酸素ポンプ電極部8A,8Bに対する電圧の印加方向を反転させることで、リーン領域とリッチ領域との両方の空燃比領域において、酸素ポンプ電極部8A,8B間を流れる電流値(限界電流)Ipに基づき、空燃比を検出できる。
【0029】
以上のような空燃比検出原理により、酸素ポンプ電極部間の電流値Ipを検出して、例えば図3のテーブル(B)を参照すれば、空燃比を広範囲に検出することができる。
【0030】
但し、空燃比センサ18の構造及び空燃比検出原理を上記のものに限定するものではなく、理論空燃比に対するリッチ・リーンのみを検出する所謂ストイキセンサであっても良い。
【0031】
ここで、前記図1の説明に戻る。
前記機関11には、クランク軸の角度を検出するクランク角センサ20が設けられており、コントロールユニット50では、該クランク角センサ20から機関回転と同期して出力されるクランク単位角信号を一定時間カウントして、又は、クランク基準角信号の周期を計測して機関回転速度Neを検出する。
【0032】
前記コントロールユニット50は、CPU,ROM,RAM,A/D変換器及び入出力インタフェイス等から構成されるマイクロコンピュータを含んでなり、前述の空燃比センサ18、エアフローメータ13、水温センサ16、クランク角センサ20等からの入力信号を受け、以下のようにして燃料噴射弁15の燃料噴射量を制御する。
【0033】
前記コントロールユニット50は、エアフローメータ13で検出される吸入空気流量Qaと、クランク角センサ20の信号から求められる機関回転速度Neとから基本燃料噴射パルス幅Tp=k×Qa/Ne(kは定数)を演算すると共に、低水温時に強制的にリッチ側に補正する水温補正係数Kw、始動及び始動後増量補正係数Kas、空燃比フィードバック補正係数LAMBDA、電圧補正分Ts、目標空燃比に対応する目標当量比Z等により、最終的な燃料噴射パルス幅Ti=Tp×(1+Kw+Kas+・・・)×LAMBDA×Z+Tsを演算する。
【0034】
そして、この燃料噴射パルス幅Tiが駆動パルス信号として前記燃料噴射弁15に送られて、前記燃料噴射パルス幅Tiから電圧補正分Tsを除いた有効噴射パルス幅Teに比例する量の燃料が噴射される。
【0035】
上記空燃比フィードバック補正係数LAMBDAは、空燃比センサ18が検出する実際の空燃比の目標空燃比からのズレを補正するための係数であり、これによって基本燃料パルス幅Tpを補正することで、実際の空燃比を目標空燃比(例えば理論空燃比)に一致させる。
【0036】
前記空燃比フィードバック補正係数LAMBDAは、空燃比センサ18で検出される実際の空燃比と目標空燃比との偏差に基づく比例・積分・微分制御によって設定される。
【0037】
ここで、前記コントロールユニット50には、本発明に係る空燃比センサの擬似劣化信号発生装置が内蔵されており、該擬似劣化信号発生装置を選択的に機能させることができるようになっている。
【0038】
即ち、前記空燃比センサ18の検出信号をそのまま用いて通常に空燃比フィードバック制御を行わせる状態と、機関制御仕様の開発・設計時において各種の制御変数を適合する作業のために、前記空燃比センサ18の検出信号を擬似劣化信号発生装置で処理して空燃比フィードバック制御を行わせる状態とに切り換えられるようになっている。
【0039】
また、空燃比センサ18の擬似劣化信号を発生させるに当たって、コントロールユニット50に対して外部から劣化度合いの要求を指示できるようになっている。
【0040】
尚、前記劣化度合いは、例えば、走行距離10万km相当,走行距離20万km相当などの車両走行距離で指定される。
また、擬似劣化信号発生装置を機能させる場合の空燃比センサ18は、新品の空燃比センサであり、劣化した状態の出力特性を示す劣化空燃比センサは用いない。
【0041】
図4の制御ブロック図は、前記擬似劣化信号発生装置の処理内容を示す。
図4において、同定機構部101では、空燃比センサ(A/Fセンサ)18の検出信号と空燃比フィードバック補正係数LAMBDA(空燃比制御信号)とを入力して、燃料噴射弁15から空燃比センサ18までを制御対象としたプラントモデルの同定を行い、空燃比センサ18の過渡応答を示す同定パラメータを出力する。
【0042】
前記同定は、空燃比センサ(A/Fセンサ)18の検出信号を、擬似劣化させることなくそのまま用いて空燃比フィードバック制御している状態で行われる。
また、前記同定においては、燃料噴射弁15から空燃比センサ18までのプラントモデルを、例えば、ARXモデル(Auto−Regressive eXogeneous モデル)で記述し、該モデルの同定パラメータを、逐次最小2乗法(recursive least−squares method)で推定する。
【0043】
より具体的には、燃料噴射弁15から空燃比センサ18までのプラントモデルを、以下のように、2次のARXモデルとする。
【0044】
【数1】
ここで、
【0045】
【数2】
となる。
【0046】
前記ARXモデルは、排気輸送に因るむだ時間が補償されたモデル、換言すれば、排気輸送時間がない場合のモデルであり、空燃比フィードバック補正係数LAMBDAの変化(空燃比変化)に対する空燃比センサ18の検出応答を示す。
【0047】
ここで、前記むだ時間(排気輸送時間)は、吸入空気量,機関回転速度で変化するので、そのときの吸入空気量,機関回転速度に応じて設定する。
そして、前記同定パラメータa1,a2,b0を、逐次最小2乗法を用いて調整するが、前記同定機構101部は、前記同定パラメータの中で空燃比センサ18の過渡応答を端的に表す同定パラメータb0のみを出力する。
【0048】
一方、基準空燃比センサ応答特性部102には、予め機関11の負荷Tpと回転速度Neとを変数として、基準の空燃比センサ(基準の応答特性を示す新品センサ)を用いたときの前記同定パラメータb0が記憶されており、そのときの負荷Tpと回転速度Neとに対応する同定パラメータb0を、bkとして出力する。
【0049】
尚、本実施形態では、機関負荷を代表するパラメータとして、基本燃料噴射パルス幅Tpを用いるが、スロットル開度やシリンダ吸入空気量や吸入負圧などを用いる構成としても良い。
【0050】
パラメータ補正係数算出部103では、同定機構部101から出力される、そのときに装着されている空燃比センサ18の過渡応答を示す同定パラメータb0と、基準空燃比センサ応答特性部102から出力される、現在の運転条件(負荷・回転速度)で基準空燃比センサを用いたときの過渡応答を示す同定パラメータbkとの比として、パラメータ補正係数(=b0/bk)を算出する。
【0051】
一方、劣化M定数マップ104には、要求劣化度合い(走行距離10万km相当,走行距離20万km相当など)毎に劣化モジュール定数bMが記憶されており、そのときの要求の劣化度合いに応じて対応する劣化モジュール定数bMを出力する。
【0052】
前記劣化モジュール定数bMは、前記基準空燃比センサが所定の劣化度合いになった場合における前記同定パラメータb0に相当する。
劣化M定数補正部105では、前記パラメータ補正係数b0/bkで前記劣化モジュール定数bMを補正することで、空燃比センサ18のばらつきによる空燃比センサ18と基準空燃比センサとの過渡応答の違いを補償する。
【0053】
そして、前記劣化M定数補正部105から出力される補正後の劣化モジュール定数bMに基づいて、空燃比センサ18の検出信号を補正することで、要求の劣化度合いに見合う応答遅れを示す擬似劣化信号を発生させる。
【0054】
基準の空燃比センサと実際に機関に取り付けた空燃比センサ18とが同じ過渡応答を示す場合には、前記パラメータ補正係数b0/bkは1になって、前記劣化モジュール定数bMが補正されることなくそのまま用いられることになるが、空燃比センサ18にばらつきがあると、該ばらつき分だけ前記劣化モジュール定数bMが修正される。
【0055】
例えば、実際に機関1に取り付けた空燃比センサ18が、基準の空燃比センサよりも過渡応答が遅いセンサであると、前記劣化モジュール定数bMを補正せずにそのまま用いて空燃比センサ18の検出信号を補正すると、要求の劣化度合いよりも劣化度合いが進んだ、換言すれば、要求の劣化状態よりも遅れが大きな擬似劣化信号を発生させることになる。
【0056】
逆に、実際に機関1の取り付けた空燃比センサ18が、基準の空燃比センサよりも過渡応答が速いセンサであると、前記劣化モジュール定数bMを補正せずにそのまま用いて空燃比センサ18の検出信号を補正すると、要求の劣化度合いよりも劣化度合いが小さい、換言すれば、要求の劣化状態よりも遅れが小さな擬似劣化信号を発生させることになる。
【0057】
そこで、前記同定機構部101では、実際に機関1に取り付けた空燃比センサ18の過渡応答を検出し、基準空燃比センサ応答特性部102では、同じ運転条件(負荷・回転)での基準空燃比センサの過渡応答を設定し、この過渡応答の違いに基づいて劣化モジュール定数bM(補正特性)を修正することで、機関1に取り付けた空燃比センサ18の過渡応答にばらつきがあっても、要求の劣化度合いに見合う一定の応答遅れを示す擬似劣化信号を発生させることができるようにしてある。
【0058】
図5のフローチャートは、前記同定機構部101,基準空燃比センサ応答特性部102,パラメータ補正係数算出部103,劣化M定数マップ104による処理の流れを示すものである。
【0059】
ステップS1では、空燃比センサ18の検出信号をそのまま用いて空燃比フィードバック制御が行われている状態であるか否かを判別し、空燃比フィードバック制御中であれば、ステップS2へ進む。
【0060】
ステップS2では、そのときの空燃比フィードバック補正係数と空燃比センサ18の検出信号とから同定パラメータb0の算出を行わせる。
ステップS3では、機関負荷Tpと機関回転速度Neとに基づいてマップを参照して、基準の空燃比センサ18を用いたときの同定パラメータb0であるbkを検索する。
【0061】
ステップS4では、前記同定パラメータb0と同定パラメータbkとの比b0/bk、即ち、実際の空燃比センサ18の過渡応答と、基準の空燃比センサの過渡応答との比を、補正係数として算出する。
【0062】
ステップS5では、劣化度合いの要求に基づいて劣化モジュール定数bM(補正特性)を算出する。
ステップS6では、前記劣化モジュール定数bMに前記補正係数b0/bkを乗算して、補正後の劣化モジュール定数bMを求める。
【0063】
前記劣化M定数補正部105で補正された劣化モジュール定数bMは、空燃比センサ18の検出信号を入力する擬似劣化信号生成部106に出力され、擬似劣化信号生成部106では、前記劣化モジュール定数bMに基づいて、空燃比センサ18の検出信号を補正することで、要求の劣化度合いに対応する過渡遅れを強制的に生じさせる。
【0064】
前記補正は、検出信号に遅れ(一次遅れ)を生じさせる補正であり、例えば時定数の異なる複数のローパスフィルタ(アナログ遅延回路)を備え、これらの中から空燃比センサ18の検出信号を通過させるローパスフィルタを前記劣化モジュール定数bMに応じて選択する構成や、検出信号の加重平均演算を前記劣化モジュール定数bMに応じた加重重みで行わせる。
【0065】
前記擬似劣化信号生成部106から出力される擬似劣化信号、即ち、要求の劣化度合いに見合う過渡遅れを示す検出信号は、空燃比フィードバック制御に用いられる。
【0066】
これにより、新品の空燃比センサ18を用いながら、空燃比センサ18が劣化した状態での空燃比フィードバック制御状態がシミュレーションされる。
そして、このときの機関運転状態(排気性状など)から、劣化状態を考慮した各種制御パラメータの適合を行わせる。
【0067】
上記のように、新品の空燃比センサ18の検出信号を擬似的に劣化させる構成であれば、劣化特性の空燃比センサを製造する必要がなく、要求の応答劣化度合いでの空燃比検出を行わせることができ、空燃比センサが劣化した状態での適合作業を、低コストにかつ精度良く行える。
【0068】
更に、上記のように、機関11に装着した空燃比センサ18と基準空燃比センサとの過渡応答の違いに応じた修正を遅れ補正に加える構成としたことで、機関11に装着する空燃比センサ18に過渡応答のばらつきがあっても、要求の劣化度合いに対して、一定の過渡遅れを示す擬似劣化信号を発生させることができる。
【0069】
尚、上記実施形態では、擬似劣化信号発生装置を前記コントロールユニット50に内蔵させる構成としたが、空燃比センサ18とコントロールユニット50との間に別体の擬似劣化信号発生装置を介装させる構成としても良い。
【0070】
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術思想について、以下にその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜3記載の空燃比センサの擬似劣化信号発生装置において、
前記補正特性としての加重重みで前記空燃比センサの検出信号を加重平均することで、前記要求の劣化度合いに対応する過渡遅れを強制的に生じさせることを特徴とする空燃比センサの擬似劣化信号発生装置。
【0071】
かかる構成によると、空燃比センサの検出信号を加重平均することで、要求の劣化度合いに対応する過渡遅れを生じさせる。
従って、演算処理のみによって、要求の劣化度合いに対応する過渡遅れを強制的に生じさせることができる。
(ロ)請求項1〜3記載の空燃比センサの擬似劣化信号発生装置において、
相互に時定数の異なる複数のアナログ遅延回路を備え、前記補正特性としての時定数に応じて選択されるアナログ遅延回路に前記空燃比センサの検出信号を通過させることで、前記要求の劣化度合いに対応する過渡遅れを強制的に生じさせることを特徴とする空燃比センサの擬似劣化信号発生装置。
【0072】
かかる構成によると、複数のアナログ遅延回路(例えばローパスフィルタ)の中から、要求の劣化度合いに対応する時定数の回路を選択し、該選択した回路に空燃比センサの検出信号を通過させることで、要求の劣化度合いに見合う過渡応答の遅れを生じさせる。
【0073】
従って、CPU等を用いない簡便な構成で、擬似劣化信号発生装置を構成することができる。
(ハ)請求項1〜3のいずれか1つに記載の空燃比センサの擬似劣化信号発生装置において、
前記要求の劣化度合いが、走行距離に基づいて指定されることを特徴とする空燃比センサの擬似劣化信号発生装置。
【0074】
かかる構成によると、センサの劣化度合いが、例えば10万km相当や20万km相当などの走行距離に基づいて指定され、該走行距離での標準的なセンサ劣化に見合う過渡遅れを強制的に生じさせる。
【0075】
従って、ある走行距離を走行した状態でのセンサの劣化状態をシミュレーションでき、走行距離を基準とする適合作業を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態における内燃機関のシステム構成図。
【図2】空燃比センサの構造図。
【図3】空燃比センサの空燃比検出原理を説明するための図。
【図4】実施形態における擬似劣化信号発生装置の制御ブロック図。
【図5】実施形態における擬似劣化信号発生制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
11…内燃機関、13…エアフローメータ、15…燃料噴射弁、17…排気マニホールド、18…空燃比センサ、20…クランク角センサ、50…コントロールユニット
Claims (3)
- 内燃機関の排気通路に備えられる空燃比センサの擬似劣化信号発生装置であって、
要求の劣化度合い毎に前記空燃比センサの検出信号の補正特性を予め記憶する一方、前記空燃比センサの過渡応答と基準の空燃比センサの過渡応答との比較結果に基づいて前記補正特性を修正し、該修正され補正特性で前記空燃比センサの検出信号を補正することで、前記要求の劣化度合いに対応する過渡遅れを強制的に生じさせることを特徴とする空燃比センサの擬似劣化信号発生装置。 - 前記基準の空燃比センサの過渡応答が、機関負荷及び機関回転速度を変数として予め記憶されることを特徴とする請求項1記載の空燃比センサの擬似劣化信号発生装置。
- 前記空燃比センサの過渡応答を、機関に燃料を噴射する燃料噴射弁から前記空燃比センサまでを制御対象としたプラントモデルを、空燃比制御信号と前記空燃比センサの検出信号に基づいて同定することで求めることを特徴とする請求項1又は2記載の空燃比センサの擬似劣化信号発生装置。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20041217 |