JP2010270678A - 内燃機関の酸素センサ診断装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】内燃機関に取り付けられた触媒前酸素センサのスイッチング特性の理論空燃比に対するずれを的確に検出する。
【解決手段】内燃機関の触媒206の上流側と下流側に触媒前酸素センサ205と触媒後酸素センサ215を設けて、空燃比補正係数を算出し、空燃比フィードバック制御を行う場合に、触媒後酸素センサ信号に基づき、触媒前のリッチ判定とリーン判定に対する空燃比補正係数の遅延操作を行う。このときのリッチ判定の遅延時間DRとリーン判定の遅延時間DLの差分遅延時間DBNと、その差分遅延時間DBNとリッチ時間TRとの比率である差分遅延率RBNにより、触媒前酸素センサ205の理論空燃比に対するスイッチング特性ずれの有無を診断する。
【選択図】図15

Description

本発明は、内燃機関の空燃比制御装置において、内燃機関の排気系に設けられ、排気ガスの酸素濃度に応じて信号を出力する酸素センサの診断に関する。
自動車の有害排気ガスを減少させ、かつ燃費や運転性を向上させるための手段として、エンジン等内燃機関の排気ガス成分に関する情報によって、空燃比を制御するフィードバック方式の空燃比制御装置が実用化されている。
上記の空燃比制御装置において、排気ガス成分の異常や、制御システム上での異常は、使用されるセンサ、例えば酸素センサ自身の故障や劣化により、制御を適正に行うことができない場合が生じる。
特に、上記の酸素センサは、エンジン排気直後に設置されて、高温、高圧や振動の影響、粗悪燃料等の影響を受けるため、劣化し易い傾向がある。また、多気筒エンジンの場合には、他のサイクルの影響を受けることから、極めて正確な検出精度を備えている必要がある。
特に北米向けの自動車は、OBDII規制(車載自己診断装置の装着を義務付けた法律)に対応する必要があり、上記酸素センサに排気規制値の1.5倍を超えるような故障が発生した場合、速やかに運転者の異常を警告し、修理を促す必要がある。
したがって、酸素センサの検出精度が何らかの原因で低下した時には、センサの交換等の適切な処置を施す必要があり、従来においては、適切な酸素センサの劣化状態を容易にかつ適切に検出する手段がなかった。
酸素センサの劣化検出方法として、特許文献1に示す方法があり、かかる方法においては、触媒前の酸素センサ信号よって判定されるリッチ、リーン判定を、触媒後の酸素のセンサ信号によって遅延させることで、触媒前酸素センサの2つの劣化モード(後述)を触媒前酸素センサの周波数から検出し、異常状態を判定している。
特開特開平4−350345号公報
上記の特許文献1の酸素センサ劣化診断は、酸素センサの応答性の悪化と、スイッチング特性のずれという2つの劣化モード(図3および図4を参照)を区別することなく、診断を実行している。
これは、触媒前酸素センサ信号よって判定されるリッチ、リーン判定を、触媒後酸素センサ信号によって遅延させることで、両タイプの劣化を酸素センサの周波数から一挙に判定するというものである。
図3は、空燃比変動に伴う酸素センサの応答性が劣化した劣化モードを説明する図であり、図4は、スイッチング特性ずれの劣化モードを説明する図である。
酸素センサの応答性が劣化すると、図3に示すように、制御信号がリーン指令、またリッチ指令を出しても、応答良く酸素センサ信号が反応せず、その周期が長くなる(周波数が低くなる)。従って、周期時間を計測することで酸素センサの応答劣化の状態を判定することができる。
一方、図4に示すスイッチング特性ずれの劣化モードは、酸素センサの周期に影響を及ぼさない。例えば、空燃比=14.7(λ=1.0)において切り替わるスイッチングポイントがリーン側にずれている場合には、リッチ指令の時間が長くなり、リーン指令の時間が短くなるだけで、リッチ、リーントータルの時間(周期時間)は正常に対し変わらない。
また、スイッチングポイントがリッチ側にずれている場合には、リーン指令の時間が長くなり、リッチ指令の時間が短くなるだけで、リッチ、リーントータルの時間(周期時間)は正常に対し変わらない。
特許文献1に示す技術では、触媒前酸素センサ信号よって判定されるリッチ、リーン判定を、触媒後酸素センサ信号によって遅延させることで、図4に示すスイッチング特性ずれの劣化モードも酸素センサの周期に現れるようにして、診断を実行している。
ところで、図4に示すスッチング特性ずれの劣化モードは、触媒後酸素センサ信号による遅延操作によって制御される空燃比フィードバック制御の異常そのものと考え、燃料系診断として扱われることが多い。これは、診断のために触媒前酸素センサ信号によるリッチ/リーン判定に遅延操作をすること自体が、燃料制御の一部と考えられるからである。
燃料系診断の故障コードと酸素センサ診断の故障コードは区別する必要があり、図3と図4に示す2つの劣化モードを分離して検出する必要がある。本発明は、図4の劣化モードのみを検出する診断方法を提案するものである。
なお、故障コードとは、診断項目毎に設定してある数値であり、通常4桁の数から構成される。特定の部品が故障した場合、故障診断テスタを車輌に装着し、故障コードをモニタすることで、故障部位を特定することができる。
上記課題を解決する本発明の内燃機関の酸素センサ診断装置は、触媒前酸素センサの信号に基づいて触媒前の空燃比がリッチ状態であるか否かを判定し、リッチ状態のリッチ時間を計測する。そして、触媒後酸素センサの信号に応じて、リーン状態からリッチ状態に切り換わってからの遅延時間である第1の遅延時間と、リッチ状態からリーン状態に切り換わってからの遅延時間である第2の遅延時間を演算する。
そして、第1の遅延時間と第2の遅延時間に基づいて差分遅延時間を演算し、差分遅延時間とリッチ時間に基づいて差分遅延率を演算する。そして、差分遅延時間と差分遅延率に基づいて、理論空燃比に対する触媒前酸素センサのスイッチング特性ずれの有無を判定する。
本発明によれば、触媒前空燃比のリッチ時間、リッチ判定遅延時間、リーン判定遅延時間によって、理論空燃比に対する触媒前酸素センサのスイッチング特性ずれを的確に検出することができる。従って、酸素センサ診断の故障コードと燃料系診断の故障コードとを区別することができる。
本実施の形態に係わる内燃機関の酸素センサ診断装置の機能ブロック図。 本実施の形態に係わる内燃機関システムの一例を示す図。 触媒前酸素センサの応答性が劣化している故障モードを説明する図。 触媒前酸素センサのスイッチング特性がずれている故障モードを説明する図。 本実施の形態に係わる空燃比フィードバック制御のブロック線図。 図5のブロック線図の動作説明図。 第1の遅延時間DR、第2の遅延時間DLの演算方法を示すブロック線図。 触媒前酸素センサのスイッチング特性ずれと空燃比補正係数の関係を示す図。 触媒前酸素センサのスイッチング特性ずれを検出する方法を示す図。 酸素センサ診断装置の動作例を示すタイムチャート。 診断領域判定方法を示すフローチャート。 触媒前酸素センサ信号によるリッチ/リーン判定方法を示すフローチャート。 空燃比フィードバック制御方法を示すフローチャート。 第1の遅延時間および第2の遅延時間の演算方法を示すフローチャート。 触媒前酸素センサの診断方法を示すフローチャート。
以下、本実施の形態における内燃機関の酸素センサ診断装置及びそれによる診断方法について説明する。
図1は、本実施の形態に係わる内燃機関の酸素センサ診断装置の機能ブロック図である。
触媒前酸素センサ信号計測手段101は、触媒前酸素センサ205(図2を参照)により、触媒前の酸素濃度を計測する。触媒後酸素センサ信号計測手段102は、触媒後酸素センサ215(図2を参照)により、触媒後の酸素濃度を計測する。
リッチ/リーン判定手段103は、触媒前の空燃比がリッチまたはリーンであるかを判定する。リッチ時間計測手段104は、リッチ判定中のリッチ時間を計測する。第1の遅延時間演算手段105は、リッチ/リーン判定手段103の出力がリーンからリッチに切り換ってからの遅延時間(第1の遅延時間DR)を、触媒後酸素センサ215の信号に基づいて演算する。第2の遅延時間演算手段106は、リッチ/リーン判定手段103の出力がリッチからリーンに切り換ってからの遅延時間(第2の遅延時間)DLを、触媒後酸素センサ215の信号に基づいて演算する。
差分遅延時間演算手段107は、第1の遅延時間演算手段105によって算出された第1の遅延時間DRと、第2の遅延時間演算手段106によって算出された第2の遅延時間DLとの差分遅延時間DBNを演算する。
差分遅延率演算手段108は、リッチ時間計測手段104によって計測されたリッチ時間TRと、差分遅延時間演算手段107によって演算された差分遅延時間DBNとの比率である差分遅延率RBNを演算する。診断領域判定手段109は、内燃機関の状態等に基づいて、触媒前酸素センサ205の診断が可能な診断領域内であるか否かを判定する。
スイッチング特性ずれ判定手段110は、診断領域判定手段109から診断領域内であるとの信号を受け取った場合に、差分遅延時間演算手段107により演算された差分遅延時間DBNと、差分遅延率演算手段108により演算された差分遅延率RBNとに基づいて、触媒前酸素センサ205のスイッチング特性ずれの有無を判定する処理を行う。
以上が、本発明の概要であり、以下、本発明の対象となる内燃機関システムから説明する。図2は、本実施の形態に係わる内燃機関システムの一例を示す図である。
内燃機関システムは、図2に示すように、内燃機関と、吸気系と、排気系を有しており、内燃機関には、点火装置201、燃料噴射装置202および回転数検出装置203が取り付けられている。
エアークリーナ200から流入される空気は、スロットルバルブ213で流量を調節された後、流量検出手段204で流量を計り、燃料噴射装置202から所定の角度で噴射される燃料と混合されて各気筒214に供給される。また、排気系には空燃比センサ205、三元触媒206が取り付けられており、排気ガスは三元触媒206で浄化された後に、大気に排出される。
内燃機関制御装置207は、流量検出手段204の出力信号Qaと回転数検出装置203によってリングギアまたはプレート208の回転数Neを取り込み、燃料噴射量Tiを計算し、燃料噴射装置の噴射量を制御する。
また、内燃機関制御装置207は、内燃機関内の空燃比を触媒前酸素センサ205から検出し、内燃機関内の空燃比が理論空燃比になるように燃料噴射量Tiを補正する空燃比フィードバック制御を行う。また、触媒後の空燃比を酸素センサ215で検出する。
一方、燃料タンク209内の燃料は、燃料ポンプ210によって、吸引・加圧された後、プレッシャーレギュレータ211を備えた燃料管212を通って燃料噴射装置202の燃料入口に導かれ、余分な燃料は、燃料タンク209に戻される。以上が、対象となる内燃機関システムである。
では、本発明を具体的に説明する。
まず、対象とする触媒前酸素センサ205の劣化モードを、図3、図4に示す。図3は、触媒前酸素センサの応答性が劣化している故障モードを説明する図、図4は、触媒前酸素センサのスイッチング特性がずれている故障モードを説明する図である。
図3に示すように、触媒前酸素センサ205のスイッチング特性は正常だが、実空燃比に対する感度がにぶくなった劣化状態になると、実空燃比に対する応答性が遅くなる。従って、空燃比フィードバック制御を実行した時に、リッチ、リーンの反転の検出自体が遅れ、長い周期でフィードバックがかかることとなる。従って、三元触媒206の転換効率が良いストイキ(空燃比=14.7)に制御することが困難になり、排気が悪化するおそれがある。
従って、触媒前酸素センサ205の応答性が劣化する劣化モードを検出する必要がある。触媒前酸素センサ205の応答性の劣化は、上述したように、触媒前酸素センサ205のセンサ信号の周期に、その劣化の度合いが現れる。従って、触媒前酸素センサ205のセンサ信号の周期(リッチから次のリッチになるまでの時間、またはリーンから次のリーンになるまでの時間)を直接検出し、NG判定時間と比較することで、劣化状態を検出することができる。
一方、図4に示す劣化モードは、触媒前酸素センサ205の周期に直接、影響を及ぼさない。触媒前酸素センサ205のスイッチングポイントがリーン側にずれていれば、リッチ指令の時間が長くなり、リーン指令の時間が短くなるだけで、リッチ、リーントータルの時間(周期時間)は正常に対し変わらない。
また、逆に、触媒前酸素センサ205のスイッチングポイントがリッチ側にずれていれば、リーン指令の時間が長くなり、リッチ指令の時間が短くなるだけで、リッチ、リーントータルの時間(周期時間)は正常に対し変わらない。この劣化モードの検出方法について、以下記述する。
図5に本発明を含めた空燃比フィードバック制御のブロック線図を示す。通常、三元触媒206による排気浄化システムは、触媒前酸素センサ205の信号により、触媒前の空燃比を理論空燃比に制御している。
本診断は、図4の触媒前酸素センサ205の劣化モードを検出するために、図5に示す点線で囲まれた部分を追加する。触媒後酸素センサ215の信号によるリッチ/リーン判定を遅延する点は、特開平4−350345号公報と同等であり、それゆえに、図3と図4の劣化モードを分離する必要になる。
図6は、図5のブロック線図の動作説明図である。触媒後の空燃比がリーンの場合、PI制御により、第1の遅延時間DRは増加、第2遅延時間DLは減少する。したがって、触媒前酸素センサ205の信号によるリッチ判定が遅れる方向に変化(リーンと見せかける)する。よって、空燃比補正係数は徐々に大きくなり、触媒206を通じて、やがて、触媒後の空燃比がリッチに変化する。
触媒後の空燃比がリッチになると、PI制御により、第1の遅延時間DRは減少、第2遅延時間DLは増加する。したがって、触媒前酸素センサ205の信号によるリーン判定が遅れる方向に変化(リッチと見せかける)する。よって、空燃比補正係数は徐々に小さくなり、触媒206を通じて、やがて、触媒後の空燃比がリーンに変化する。これを繰り返すことにより、空燃比フィードバック制御が実行される。
図7は、第1の遅延時間DRと、第2の遅延時間DLの演算方法を示すブロック線図である。第1の遅延時間DRと、第2の遅延時間DLは、上述したPI制御方法で算出され、触媒後酸素センサ215のストイキ点(S/L)に対する偏差eを基に演算する。
偏差eに係数1を乗算した値を比例分(P分)とする。偏差eに係数2を乗算し、過去に積算した値(初期値はゼロ)に加算した値を積分分(I分)とする。この比例分(P分)と積分分(I分)を加算し、瞬時演算の遅延時間DLYを演算する。
瞬時演算の遅延時間DLYは、触媒後酸素センサ215がリーンの時、減算され、負側に増加していく。そして、逆に、触媒後酸素センサ215がリッチの時は、加算され、正側に増加していく。この瞬時演算の遅延時間DLYを、触媒前酸素センサ205の信号がリーンからリッチに反転した時(フラグ#FRLセット)に、第1の遅延時間DRに代入し、この時を起点に第1の遅延時間DR分だけ待ってから、フラグ#FRICHをセットする。
また、この瞬時演算の遅延時間DLYを、触媒前酸素センサ205の信号がリッチからリーンに反転した時(フラグ#FRLリセット)に、第2の遅延時間DLに代入し、この時を起点に第2の遅延時間DL分だけ待ってから、フラグ#FRICHをリセットする。そして、このフラグ#FRICHの状態を参照して、空燃比補正係数を演算し、基準燃料供給量を補正する空燃比フィードバック制御を行う。
図5に示すブロック線図の動作を図6、図7で説明してきたが、この制御の効果を考えると、図8に示すような理解ができる。触媒前酸素センサ205に、図4に示すような、スイッチング特性ずれの劣化モードが発生すると、そのスイッチング特性のずれ分を吸収するように空燃比補正係数が変化する。
つまり、触媒前酸素センサ205のスイッチングポイントがリーン側にずれていると、空燃比補正係数は、リッチ方向に変化する。従って、空燃比補正係数が全体的に正の傾きをもって変化することになる。
また、触媒前酸素センサ205のスイッチングポイントがリッチ側にずれていると、空燃比補正係数は、リーン方向に変化する。従って、空燃比補正係数が全体的に負の傾きをもって変化することになる。
この効果は、触媒前酸素センサ205のスイッチング特性ずれが、触媒206を介して、触媒後酸素センサ215に現れることによって発生する。そこで、図4の劣化モードを検出すべく、図9に示す方法をとる。上述した空燃比補正係数の変化を検出することができれば、スイッチング特性ずれを検出できる。従って、空燃比補正係数の変化を検出すべく、差分遅延時間、差分遅延率を式(1)、(2)より演算する。
差分遅延時間DBN=(DR−DL) ・・・(1)
差分遅延率RBN=(DR−DL)/TR ・・・(2)
DR:第1の遅延時間
DL:第2の遅延時間
TR:リッチ時間
上記式(1)の差分遅延時間DBNは、第1の遅延時間DRと第1の遅延時間DLの差分であり、リッチ方向への補正(リッチ補正)とリーン方向への補正(リーン補正)のバランス値を現すことになる。そして、式(2)の差分遅延率RBNは、式(1)のバランス値を触媒前酸素センサ205のリッチ時間で除算した値であり、触媒前酸素センサ205の信号のみの空燃比フィードバック量に対する触媒後酸素センサ215による影響度(触媒後酸素センサ215で補正したときの影響度)を現しており、上述した傾きになる(空燃比補正係数の全体的な傾きに現れる)。したがって、これらの値(DBN、RBN)が極端に大きいとき、または極端に小さいとき(負側に大)に、触媒前酸素センサ205のスイッチング特性ずれが有ると判断することができる。
上記の差分遅延時間DBN、差分遅延率RBNを式(1)、式(2)により演算し、触媒前酸素センサ205のスイッチング特性ずれの有無を検出する。ここで、差分遅延時間DBNが時間上限値1よりも大きく、かつ、差分遅延率RBNが遅延率上限値3よりも大きい場合には、空燃比補正係数の全体的な傾きが正側に大となっていることを示しており、リッチ補正をかけすぎていると考え、これは、触媒前酸素センサ205のスイッチングポイントがストイキ(空燃比=14.7)よりもリーン側にずれている(リーンNG)と判断し、スイッチング特性ずれが発生していると判断する。
また、差分遅延時間DBNが時間下限値2よりも小さく、かつ差分遅延率RBNが遅延率下限値4より小さい場合には、空燃比補正係数の全体的な傾きが負側に大となっていることを示しており、リーン補正をかけすぎていると考え、これは、触媒前酸素センサ205のスイッチングポイントがストイキ(空燃比=14.7)よりもリッチ側にずれている(リッチNG)と判断し、同様にスイッチング特性ずれが発生していると判断する。
但し、図7に示した第1の遅延時間DRと、第2の遅延時間DLの演算は、触媒前酸素センサ205のスイッチング特性ずれが、触媒206を介して、触媒後酸素センサ215に現れることを利用して演算しているため、触媒206の影響を受けることになる。
そこで、本診断の実行前に、触媒206の劣化度(触媒の伝達感度特性等)を予め求めておく必要がある。触媒206の劣化度は、触媒前酸素センサ205の信号と触媒後酸素センサ215の信号の周波数応答から求める。触媒206の劣化度は、触媒前酸素センサ205のスイッチング特性ずれに影響しない。
触媒前酸素センサ205にスイッチング特性ずれが発生しても、そのずれを明らかに超えるリッチ、リーン化の指令値(触媒前酸素センサ205の制御のP分を大きく振る)を与えれば、スイッチング特性ずれに影響せずに、周波数応答により、触媒206の劣化度を求めることができる。
なお、触媒206の劣化度の他、空間速度(吸入空気量)も、選択した診断領域によっては、補正量として使用することができる。
上述した方法により、触媒206の劣化度または吸入空気量を求め、上記した時間上限値1、時間下限値2、遅延率上限値3、遅延率下限値4、または、差分遅延時間DBNと差分遅延率RBNを補正することにより、正確なスイッチング特性ずれを判定することができる。
以上より、前述した式(1)は、式(3)になり、式(2)は、式(4)になる。
DBN=(DR−DL)×KHOS ・・・(3)
RBN=DBN/TR ・・・(4)
DR:第1の遅延時間
DL:第2の遅延時間
TR:リッチ時間
KHOS:触媒劣化補正係数 または 吸入空気量補正係数
DBN:差分遅延時間
RBN:差分遅延率
なお、図7の触媒前酸素センサ205のリッチ/リーン判定に遅延操作する制御自体に、排気を低減する効果もある。
図10は、酸素センサ診断装置の動作例を示すタイムチャートである。例えば、触媒前酸素センサ205にスイッチング特性ずれ(リーン側)が発生すると、空燃比補正係数は、図10のような挙動となる。このとき、演算した差分遅延時間DBN、差分遅延率RBNも、図10に示すような挙動となり、触媒前酸素センサ205のスイッチングポイントがリーン側に大きくずれると、差分遅延時間DBNは時間上限値1よりも大になり、差分遅延率RBNも遅延率上限値3よりも大になる。これより、触媒前酸素センサ205のスイッチング特性ずれ(リーン側)の異常を検出することができる。
また、触媒前酸素センサ205のスイッチングポイントがリッチ側に大きくずれると、差分遅延時間DBNは時間下限値2より小になり、差分遅延率RBNも遅延率下限値4よりも小になる。これより、触媒前酸素センサ205のスイッチング特性ずれ(リッチ側)の異常を検出することができる。本例は、差分遅延時間DBN、差分遅延率RBNに、触媒206の劣化補正係数または吸入空気量補正係数を乗じた例である。
以降、本実施の形態における触媒前酸素センサ205の診断方法について図11から図15のフローチャートを用いて説明する。
図11は、診断領域判定方法を示すフローチャートである。ステップ1101からステップ1112では、触媒前酸素センサ205のスイッチング特性ずれの診断が可能な状態であるか否かが判定される。
ステップ1101では、内燃機関の回転数が所定範囲内にあるかチェックする。ステップ1102では、内燃機関の負荷が所定範囲内であるか否かをチェックする。ステップ1103では、水温が所定値以上か否かをチェックする。ステップ1104では、車速が所定範囲内であるか否かをチェックする。ステップ1105では、吸気温が所定範囲内か否かをチェックする。ステップ1106では、大気圧が所定値以上か否かをチェックする。ステップ1107では、バッテリ電圧が所定範囲内か否かをチェックする。ステップ1108では、燃料カット中でないかをチェックする。
ステップ1109では、空燃比制御フィードバック中か否かをチェックする。ステップ1110では、本制御に用いられる各種センサに故障がないか否かをチェックする。ステップ1111では、ステップ1101〜1110の条件が全て成立していれば、診断領域内と判定する。そして、ステップ1112では、ステップ1101〜1110の条件のうち一つでも外れていれば、診断領域外と判定する。
図12は、触媒前酸素センサの信号によるリッチ/リーン判定方法を示すフローチャートである。ステップ1201では、触媒前酸素センサ205の信号が、判定値S/L以上か否かを判定する。ここで、判定値S/L以上であれば(YES)、ステップ1202に移行し、フラグ#FRL=1にセットする。一方、判定値S/L未満であれば(NO)、ステップ1203に移行して、フラグ#FRL=0にリセットする。そして、ステップ1204で、前回値のフラグ#FRLを記憶しておくために、フラグ#FRL(前回値)に今回のフラグ#FRLを代入する。
図13は、本発明の遅延操作による空燃比フィードバック制御のフローチャートである。ステップ1301では、触媒前の空燃比がリーンからリッチに変化したか否かをチェックする。
そして、リーンからリッチに変化したタイミングであれば(ステップ1301でYES)、ステップ1302に移行し、第1の遅延時間DRをダウンタイマの初期値にセットする。
一方、ステップ1301でリーンからリッチに変化したタイミングではないと判定された場合には、ステップ1303に移行し、触媒前の空燃比がリッチ状態であるか否かが判定される。そして、ステップ1303で触媒前の空燃比がリッチ状態であると判定された場合には(ステップ1303でYES)、ステップ1304に移行し、ダウンタイマのデクリメントが行われ(この時の初期値はDR)、次いで、ステップ1305に移行し、リッチタイマのインクリメントが行われる。そして、ステップ1306に移行し、ダウンタイマ=0になったか否かが判定される。
ステップ1306でダウンタイマ=0であれば(YES)、ステップ1307に移行して、フラグ#FRICH=1にセットする。一方、ステップ1306でダウンタイマ=0でなければ、ステップ1308に移行して、フラグ#FRICHを保持する。
また、ステップ1303で触媒前の空燃比がリッチ状態ではないと判定された場合には(ステップ1303でNO)、ステップ1309に移行し、ステップ1309で、触媒前の空燃比がリッチからリーンに変化したか否かをチェックする。
そして、リッチからリーンに変化したタイミングであれば(ステップ1309でYES)、ステップ1310に移行し、リッチ時間TRにリッチタイマ値を代入する。そして、ステップ1311に移行して第2の遅延時間DLをダウンタイマの初期値にセットし、ステップ1312で、触媒前酸素センサ205のスイッチング特性ずれの診断判定(図15に詳細を記述する)を実行する。
また、ステップ1309で、触媒前の空燃比がリッチからリーンに変化したタイミングではないと判定された場合は(ステップ1309でNO)、ステップ1313に移行し、ステップ1313で、リッチタイマを0(リッチタイマ=0)にする。
そして、ステップ1314に移行し、ダウンタイマをデクリメントし(この時の初期値はDL)、ステップ1315に移行する。そして、ステップ1315では、ダウンタイマ=0になったか否かが判定される。
ステップ1315でダウンタイマ=0であれば(YES)、ステップ1316に移行して、フラグ#FRICH=0にリセットする。一方、ステップ1315でダウンタイマ=0でなければ(NO)、ステップ1317に移行して、フラグ#FRICHを保持する。
そして、ステップ1318で、フラグ#FRCIHの値から空燃比補正係数を演算し、ステップ1319で、燃料噴射量を演算する。
図14は、第1の遅延時間DRおよび第2の遅延時間DLの演算方法を示すフローチャートである。
まず、ステップ1401で、触媒後酸素センサ215の信号から、S/Lとの偏差eを演算する。そして、ステップ1402では、比例分(P分)PBUNを演算する。比例分PBUNは、偏差eに比例分(P分)のゲイン係数K1を乗算することによって算出される。それから、ステップ1403では、積分分(I分)IBUNを演算する。積分分IBUNは、偏差eに積分分(I分)のゲイン係数K2を乗算し、積分分IBUNの前回値を加算することによって算出される。次いで、ステップ1404では、比例分PBUNと積分分IBUNを加算して、瞬時演算の遅延時間DLYを演算する。
ステップ1405では、触媒前の空燃比がリーンからリッチに変化したか否かをチェックする。ここで、リーンからリッチに変化したタイミングであれば(ステップ1405でYES)、ステップ1406に移行し、ステップ1404で演算した瞬時演算の遅延時間DLYを第1の遅延時間DRに代入する(DLY自体が負の値になっているので、負号を付けてDRを正とする)。一方、ステップ1405で、リーンからリッチに変化したタイミングではない(NO)と判断された場合には、ステップ1407に移行する。
次に、ステップ1407で、触媒前の空燃比がリッチからリーンに変化したか否かをチェックする。ここで、リッチからリーンに変化したタイミングであれば(ステップ1407でYES)、ステップ1408に移行し、ステップ1404で演算した瞬時演算の遅延時間DLYを第2の遅延時間DLに代入する。そして、ステップ1407で、リッチからリーンに変化したタイミングではない(NO)と判断された場合には、RTSに移行する。
図15は、図13のステップ1312の詳細であり、触媒前酸素のセンサの診断方法を示すフローチャートである。
ステップ1501では、触媒前酸素センサ205の診断が可能な診断領域かどうか判定する(詳細は図11参照)。ここで、診断領域内(YES)であれば、ステップ1502に移行し、触媒劣化度補正係数KHOSを演算しているか、チェックする。触媒劣化度補正係数KHOSを演算していれば(YES)、ステップ1503に移行し、第1の遅延時間DR、第2の遅延時間DL、触媒劣化度補正係数KHOSより、差分遅延時間DBNを演算する。
次に、ステップ1504で、差分遅延時間DBNとリッチ時間TRから、差分遅延率RBNを演算する。そして、ステップ1505に移行し、ステップ1503で求めた差分遅延時間DBNが時間上限値1より大で、かつ差分遅延率RBNが遅延率上限値3より大であるか否かを判定する。そして、ステップ1505の条件を満たす場合、すなわち、ステップ1503で求めた差分遅延時間DBNが時間上限値1より大で、かつ差分遅延率RBNが遅延率上限値3より大である場合には、ステップ1506に移行して、触媒前酸素センサ205のスイッチングポイントがリーン側にずれているリーンNGと判定する。
一方、ステップ1505の条件を満たさない場合には、ステップ1507に移行し、差分遅延時間DBNが時間下限値2よりも小で、かつ差分遅延率RBNが遅延率下限値4よりも小であるか否かを判定する。そして、差分遅延時間DBNが時間下限値2より小で、かつ差分遅延率RBNが遅延率下限値4より小である場合には、ステップ1508に移行して、触媒前酸素センサ205のスイッチングポイントがリッチ側にずれているリッチNGと判定する。
そして、ステップ1505およびステップ1507の条件をいずれも満たさない場合には、ステップ1509に移行し、差分遅延時間DBNが時間上限値1以下で時間下限値2以上であり、かつ差分遅延率RBNが遅延率上限値3以下で遅延率下限値4以上であるか否かを判定する。そして、ステップ1509の条件を満たす場合(YES)、すなわち、差分遅延時間DBNが時間上限値1以下で時間下限値2以上であり、かつ差分遅延率RBNが遅延率上限値3以下で遅延率下限値4以上である場合には、ステップ1510に移行して、触媒前酸素センサ205のスイッチング特性ずれはないとする、OK判定を行う。そして、ステップ1509の条件を満たさない場合(NO)は、そのままRTSに移行する。
なお、触媒劣化度補正係数KHOSではなく、吸入空気量で補正する場合は、診断領域内の負荷を高負荷領域に限定し、図15のステップ1502で、吸入空気量から補正係数KHOSを演算する。他のフローチャートは同一である。
上記した内燃機関の酸素センサ診断装置および診断方法によれば、触媒前の空燃比のリッチ時間TR、リッチ判定遅延時間DR、リーン判定遅延時間DLによって、理論空燃比に対する触媒前酸素センサ205のスイッチング特性ずれを的確に検出することができる。従って、触媒前酸素センサ診断の故障コードと燃料系診断の故障コードとを区別することができる。
101:触媒前酸素センサ信号計測手段、102:触媒後酸素センサ信号計測手段
103:触媒前リッチ/リーン判定手段、104:リッチ時間計測手段
105:第1の遅延時間演算手段、106:第2の遅延時間演算手段
107:差分遅延時間演算手段、108:差分遅延率演算手段
109:診断領域判定手段、110:スイッチング特性ずれ判定手段
200:エアークリーナ、201:点火装置、202:燃料噴射装置
203:回転数検出装置、204:流量検出装置
205:触媒前酸素センサ、206:触媒、207:内燃機関制御装置
208:プレートまたはリングギア、209:燃料タンク、210:燃料ポンプ
211:プレッシャーレギュレータ、212:燃料管、213:スロットルバルブ
214:気筒、215:触媒後酸素センサ

Claims (16)

  1. 内燃機関の排気系に設けられた触媒の上流側に設けられた触媒前酸素センサと、触媒の下流側に設けられた触媒後酸素センサの信号に基づいて空燃比フィードバック制御を行う内燃機関の酸素センサ診断装置であって、
    前記触媒前酸素センサの信号に基づき、触媒前の空燃比がリッチ状態またはリーン状態のいずれかであることを検出する触媒前リッチ/リーン判定手段と、
    該触媒前リッチ/リーン判定手段によって検出されるリッチ状態のリッチ時間を計測するリッチ時間計測手段と、
    前記触媒後酸素センサの信号に応じて、前記触媒前リッチ/リーン判定手段の出力がリーンからリッチに切り換ってからの遅延時間である第1の遅延時間を演算する第1の遅延時間演算手段と、
    前記触媒後酸素センサの信号に応じて、前記触媒前リッチ/リーン判定手段の出力がリッチからリーンに切り換ってからの遅延時間である第2の遅延時間を演算する第2の遅延時間演算手段と、
    前記第1の遅延時間と前記第2の遅延時間に基づいて差分遅延時間を演算する差分遅延時間演算手段と、
    該差分遅延時間と前記リッチ時間に基づいて差分遅延率を演算する差分遅延率演算手段と、
    前記差分遅延時間と前記差分遅延率に基づいて、前記触媒前酸素センサの理論空燃比に対するスイッチング特性ずれの有無を判定するスイッチング特性ずれ判定手段と、
    を有することを特徴とする内燃機関の酸素センサ診断装置。
  2. 前記触媒前リッチ/リーン判定手段は、前記触媒前酸素センサの信号と予め設定された判定値とを比較して、該判定値よりも大きいときはリッチ状態と判定し、前記判定値よりも小さいときはリーン状態と判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  3. 前記リッチ時間計測手段は、リッチ状態の継続時間を計測することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  4. 前記第1の遅延時間演算手段は、前記触媒前リッチ/リーン判定手段の信号がリーンからリッチに切り換ってからの遅延時間を、前記触媒後酸素センサの信号に基づいたPI制御により演算することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  5. 前記第2の遅延時間演算手段は、前記触媒前リッチ/リーン判定手段の信号がリッチからリーンに切り換ってからの遅延時間を、前記触媒後酸素センサの信号に基づいたPI制御により演算することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  6. 前記差分遅延時間演算手段は、前記第1の遅延時間と前記第2の遅延時間の差分を差分遅延時間とすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  7. 前記差分遅延率演算手段は、前記差分遅延時間と前記リッチ時間との比率を差分遅延率とすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  8. 前記スイッチング特性ずれ判定手段は、前記差分遅延時間が予め設定された時間下限値よりも小さく、かつ、前記差分遅延率が予め設定された遅延率下限値よりも小さいときに、前記触媒前酸素センサのスイッチングポイントがリッチ側にずれていると判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  9. 前記スイッチング特性ずれ判定手段は、前記差分遅延時間が予め設定された時間上限値より大きく、かつ、前記差分遅延率が予め設定された遅延率上限値より大きいときに、前記触媒前酸素センサのスイッチングポイントがリーン側にずれていると判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  10. 前記差分遅延時間演算手段は、前記差分遅延時間を前記触媒の劣化度または吸入空気量に基づいて補正することを特徴とする請求項6に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  11. 前記差分遅延率演算手段は、前記差分遅延率を前記触媒の劣化度または吸入空気量に基づいて補正することを特徴とする請求項7に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  12. 前記時間下限値は、前記触媒の劣化度または吸入空気量に基づいて補正されることを特徴とする請求項8に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  13. 前記時間上限値は、前記触媒の劣化度または吸入空気量に基づいて補正されることを特徴とする請求項9に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  14. 前記遅延率下限値は、前記触媒の劣化度または吸入空気量に基づいて補正されることを特徴とする請求項8に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  15. 前記遅延率上限値は、前記触媒の劣化度または吸入空気量に基づいて補正されることを特徴とする請求項9に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
  16. 前記触媒前酸素センサの診断実行を許可するか否かを判定する診断領域判定手段を備え、
    該診断領域判定手段は、内燃機関の回転数が所定範囲内、負荷が所定範囲内、エンジン水温が所定範囲内、車速が所定範囲内、吸入空気温度が所定範囲内、大気圧が所定値以上、バッテリ電圧が所定範囲内、非燃料カット状態、空燃比フィードバック制御中、用いられるセンサが故障していないときの全ての条件を満たす場合に、前記触媒前酸素センサの診断実行を許可することを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の内燃機関の酸素センサ診断装置。
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