JP2004308022A - 糸条パッケージの製造方法および製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、ポリマー流に前記ポリマー流の走行方向に沿った流体流を付与して流体処理をする際、巻き取り前に、流体処理後のポリマー流が切れたときの接触物への堆積を防止することや複数本のポリマー流を複数の群に容易に分割することができる糸条パッケージの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】液状ポリマーを紡糸口金から押し出してポリマー流となし、前記ポリマー流の走行方向に沿った流体流を付与して流体処理する。その後、巻き取って糸条パッケージとなすが、巻き取りを開始する前に、流体処理後のポリマー流の走行方向を非接触的に偏向させる。
【選択図】 図5
【解決手段】液状ポリマーを紡糸口金から押し出してポリマー流となし、前記ポリマー流の走行方向に沿った流体流を付与して流体処理する。その後、巻き取って糸条パッケージとなすが、巻き取りを開始する前に、流体処理後のポリマー流の走行方向を非接触的に偏向させる。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、糸条パッケージの製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成繊維の製造工程では、溶融ポリマーを紡糸口金から押出してできるポリマー流の冷却や加熱などを目的に流体流を付与する流体処理が行われる。
【0003】
例えば、紡糸直後の冷却工程における流体処理には、一方の側からポリマー流の走行方向に交差するよう冷却媒体である流体流を付与する方法とポリマー流の周囲または両側から流体流を導入し、ポリマー流の走行方向に沿って付与する方法とがある。
【0004】
前者は、流体処理装置において冷却媒体である流体流を付与する側のポリマー流を挟んで対面側が開放できるため、作業性がよい。しかし、特に複数本のポリマー流を冷却処理する場合は、複数のポリマー流間に流体流を付与する側からの距離が近いものと遠いもので、流体流の付与程度に差ができ、これが原因で冷却斑が生じやすい。また、ポリマー流の走行速度を高速化したり、流体流の流速を増大させると冷却中のポリマー流に揺れが生じやすい。したがって、多フィラメント化のためにポリマー流の本数を増やしたり、生産性向上のためにポリマー流の走行速度の高速化すると、糸条パッケージとなしたときに複数のポリマー流間に長手方向の太さ斑などを発生するおそれがある。
【0005】
さらに、ポリマー流を引き取ることによって、ポリマー流に周辺の雰囲気との摩擦が生じ、ポリマー流内の分子配向が促進される。したがって、生産性向上をねらい巻取速度を上げてポリマー流の走行速度を高速化すると、糸条パッケージとしたときに糸の物性値である伸度が低下する。このため、上記の方法では伸度を維持したまま高速化を行うことは困難であった。
【0006】
一方、後者は冷却媒体である流体流が周囲または両側から導入されるため、複数のポリマー流間に流体流の付与程度が差ができにくく冷却に斑が生じにくい。また、ポリマー流の走行方向に沿って流体流が付与されるため、ポリマー流の走行速度を高速化したり流体流の流速を増大させても冷却中のポリマー流に揺れが生じにくい。このため、ポリマー流の本数が多く、ポリマー流間に冷却斑の生じやすい多フィラメント品種やポリマー流の径が比較的小さく、走行中に揺れが生じやすい細デニール品種などの流体処理に用いられるようになっている。
【0007】
さらに、ポリマー流の走行方向に付与する流体流を適当な速度で与えることによって、引き取りの際にポリマー流にかかる張力を低減することも可能であり、高速化に伴う伸度の低下を抑制することができる。かかる技術については、たとえば、特許文献1〜4に開示されている。
【0008】
しかしながら、巻き取り前に流体処理後のポリマー流を下流側で吸引手段により吸引しながら、給油や集束や引取、巻取などを行う装置を通過させるいわゆる糸かけ作業を行うとき、後者の方法では以下の問題が生じてしまう。
【0009】
すなわち、図1は、前者の方法であるポリマー流に対し交差するよう流体流を付与する場合の糸条パッケージの製造装置の一部を示した略式縦断面図であるが、図1においてスピンブロック1に組み込まれた紡糸口金2から押し出されたポリマー流Fが、流体処理手段3を通過後、下流側に配置された給油や集束を行うために通過する接触物4aなどで切れると、ポリマー流Fが流体処理装置3からの流体流Gによって対向側に押し出され、ポリマー流の走行方向Dからはずれるため接触物4aに衝突しにくい。
【0010】
これに対し、図2は、後者の方法であるポリマー流Fに対しポリマー流の走行方向Dに沿って流体流Gを付与する場合の糸条パッケージの製造装置の一部を示した略式縦断面図であるが、図2において図1と同様に紡糸口金2から押し出されたポリマー流Fが、流体処理手段3を通過後、下流側に配置された接触物(給油ガイド)4aなどで切れると、流体処理手段3から下流側に排出される流体流Gによって、流体処理後のポリマー流Fが下流側に押し出されるため接触物4aに衝突する恐れがある。
【0011】
ポリマー流Fが接触物4aに衝突し堆積すると、これらを除去する作業は手間がかかる。特に流体流Gの速度を高速化すると、糸かけ作業時にポリマー流が切れやすく、さらにポリマー流Fが接触物4aに衝突してからの堆積も速いため、作業負担がより大きくなるという問題がある。
【0012】
また、生産性向上のために、1つの紡糸口金から押し出された複数本のポリマー流を複数の群に分割し、下流側の巻取手段で各群をそれぞれ別の糸条パッケージとして巻き取るときは、後者の方法では以下の問題が生じてしまう。
【0013】
すなわち、図3は、紡糸口金2から押し出された複数本のポリマー流Fを下流側で2つの群に分割して各群をそれぞれ給油や集束の手段である接触物4bと4cとに通過させ、引取手段であるロール5を経て、巻取手段であるワインダ6でそれぞれ糸条パッケージPとなす場合の糸条パッケージの製造装置を示した略式縦断面図であるが、図3における糸かけ作業において、流体処理後の複数本のポリマー流Fを接触物4bと4cとにかけるために、下流側で吸引しながら2つに分けようとすると、ポリマー流の走行方向Dに付与された流体流Gがポリマー流Fを下流側へ排出するため、ポリマー流が走行方向Dへ進む力がつよく、無理に左右に分割しようとするとポリマー流Fが切れやすいという問題がある。
【0014】
【特許文献1】
特表平8−506393号公報
【0015】
【特許文献2】
特開2001−262427号公報
【0016】
【特許文献3】
特開2001−336023号公報
【0017】
【特許文献4】
特表2002−510754号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリマー流に前記ポリマー流の走行方向に沿った流体流を付与して流体処理をする際、巻き取り前に流体処理後のポリマー流が切れたとき、給油手段などの接触物へのポリマー流の堆積を防止することや複数本のポリマー流を複数の群に容易に分割することができる糸条パッケージの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、液状ポリマーを紡糸口金から押し出してポリマー流となし、前記ポリマー流に前記ポリマー流の走行方向に沿った流体流を付与して流体処理し、その後巻き取って糸条パッケージとなす糸条パッケージの製造方法であって、少なくとも前記巻き取りを開始する前に、前記流体処理後の前記ポリマー流の走行方向を非接触的に偏向させる糸条パッケージの製造方法を特徴とするものである。
【0020】
ここで言う巻き取りを開始する前というのは、流体処理後のポリマー流を下流側で吸引を開始してから巻取手段で糸条パッケージの巻き取りを開始する前までのことを指す。
【0021】
また、ここでいう偏向とは、次の2つのいずれかをいう。
(1)ポリマー流全体としての平均的な走行方向を、流体処理中の走行方向と異なる方向に変化させること(たとえば、図5に記載の形態)
(2)ポリマー流を複数の群に区分し、流体処理後に少なくともしばらくの間相互に別の取り扱いを受けられるよう、それぞれの群の走行経路が互いに異なるように、少なくとも1群の走行方向が流体処理中の走行方向と異なる方向に変化させること(たとえば、図11に記載の形態)
したがって、ポリマー流1本1本としては流体処理後に走行方向が変化する場合であっても、ポリマー流全体としての走行方向が流体処理中の方向と実質的に一致し、全体を1群としてとりあつかわれるか、後で別の手段(たとえば、糸分け用のガイド等)により複数の群に区分する場合は、上記の意味での偏向には含まれない。たとえば、紡糸口金から液状ポリマーが押出されて形成されたポリマー流の1本1本が流体処理手段から排出される流体流の拡散や加減速の影響を受けて放射状に広がったり、逆に集束したりしても、全体としての平均的な走行方向が流体処理中の走行方向と実質的に一致する場合には、本発明にいう偏向には含まれない。このようなポリマー流の走行方向の変化では、上記目的を達成できないからである。
【0022】
また、ポリマー流とは、口金から押出された直後の液状のポリマーで形成される流れおよびその後これが固化して単糸となったものをいう。
【0023】
本発明においては、前記ポリマー流が前記のとおり偏向されなかった場合に走行する方向の延長線上の前記流体処理の終点から巻き取り位置までの範囲内の位置に、紡糸工程が定常状態に至ったときに前記流体処理後のポリマー流が通過すべき部材を配置されている形態が好ましい適用対象である。
【0024】
また、液状ポリマーを複数の吐出孔から押し出す紡糸口金を用い、前記複数の吐出孔から押し出された複数のポリマー流を前記流体処理後に複数の群に区分し各群のうち少なくとも1群の走行方向を偏向させることも好ましい態様である。
【0025】
さらに、前記流体処理後の複数のポリマー流に列をなさせ、前記列の方向に沿って各ポリマー流を前記複数の群に区分することも好ましい態様である。
【0026】
ここで、ポリマー流の走行方向の偏向は前記流体流の流動方向の変化によって行うことが好ましく、さらには、前記流体処理後に、前記流体処理中の前記ポリマー流の走行方向から離れる方向に沿った壁面に沿って前記流体流を流すことも好ましい。
【0027】
そして、前記流体流の走行方向と交差する方向に、別の流体流を付与して前記流体処理後の前記ポリマー流を偏向することも好ましい態様である。
【0028】
また、本発明は、液状ポリマーを押し出しポリマー流とするための紡糸口金と、前記ポリマー流に前記ポリマー流の走行方向に沿った流体流を付与して流体処理するための流体処理手段と、前記ポリマー流を巻き取って糸条パッケージとなすための巻取手段と、を備えた糸条パッケージの製造装置であって、少なくとも前記巻き取りを開始する前に、前記流体処理後の前記ポリマー流の走行方向を非接触的に偏向させるための偏向手段を有している糸条パッケージの製造装置を特徴とするものである。
【0029】
ここで、前記偏向手段は壁面を有し、該壁面に近づくまでの前記流体流の流れの方向よりも前記壁面に近づく向きに前記流体流を偏向させるよう構成されていることが好ましく、さらには、前記偏向手段が、前記流体処理中の前記ポリマー流の走行方向から離れる方向に沿った壁面を1つ以上備えていることも好ましい態様である。
【0030】
また、前記偏向手段が流体噴射ノズルを1つ以上備えていることも好ましい態様である。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の糸条パッケージの製造方法および製造装置の詳細について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図4は、ポリマー流に対しポリマー流の走行方向に沿った流体流を付与する方法を用いた糸条パッケージの製造装置の略式縦断面図である。ここで図4は、スピンブロック1に組み込まれた紡糸口金2から押し出された複数本のポリマー流Fを、ポリマー流の走行方向Dに沿って冷却媒体である流体流Gを付与する流体処理手段3によって流体処理し、給油や集束を行う接触物4を通過させた後、引取手段であるロール5により引き取り、巻取手段であるワインダ6により巻き取って糸条パッケージPとなすような装置である。
【0033】
図4の糸条パッケージの製造装置において糸かけを行う場合について、図5に本発明の一実施態様を示して説明する。
【0034】
図5のように、流体処理後のポリマー流Fを下流側にある吸引手段であるサクションガン7で吸引した後、流体処理手段3の下方に設置された偏向手段8aによりポリマー流を非接触で偏向方向Daに偏向し、接触物4aやロール5、ワインダ6に糸かけを行う。ここでは上記接触物4aはポリマー流Fの給油ガイドであり、図示の通り、流体処理中のポリマー流Fの全体としての走行経路をそのまま延長した先に存在している。ここで、偏向手段8aによるポリマー流Fの偏向方向Daをポリマー流Fが切れたときに接触物4aを避けるようにあらかじめ調整しておけば、接触物4a、ロール5、ワインダ6のいずれかでポリマー流Fが切れても、ポリマー流Fは偏向方向Daへ排出されるため、接触物4aに衝突したり堆積することを防止できる。
【0035】
また、偏向手段8aはポリマー流Fを非接触で偏向させるため、ポリマー流Fを摩擦擦過させることもないので、巻き取りが始まった後も偏向手段8aによってポリマー流Fの偏向を行ってもよいし、取り外すなどして偏向を行わなくしてもよい。また、偏向手段8aによる偏向は、サクションガン7による吸引前から行なわれていてもよい。
【0036】
ここで、ポリマー流Fを非接触的に偏向する原理についてより詳細に説明する。図6は、図5における流体処理手段3の一部と偏向手段8aの略式縦断面図である。流体処理手段3から排出された流体流Gは、コアンダー効果によって偏向手段8aの偏向を行う壁面10に沿って偏向方向Daへ流れるため、流体流Gとともに排出されたポリマー流Fもこれにならい偏向される。すなわち、この実施形態において、ポリマー流Fを非接触で偏向させるポイントは、偏向手段8aの偏向を行う壁面10がポリマー流と接触することなく、流体処理手段3から排出された流体流Gの流動方向をポリマー流の走行方向Dから離れる方向へ変えることである。
【0037】
これは、たとえば、図6における流体処理手段3の流路壁面9の延長線から壁面10の上端までの最短距離Tが、ポリマー流の走行方向Dから離れる方向へ0以上であり、壁面10の延長線と流路壁面9とのなす角度θが0より大きければ、満たすことができる。
【0038】
ここで、上記のTが0で、θが45°以下であれば、流体流Gの流動方向をスムーズに変えることができるため好適である。また、上記のθが0でもTが0より大きければ、流体流Gの流動方向を偏向できるため好適である。
【0039】
また、偏向手段8aのポリマー流Fを挟んで対面側の偏向手段8aに対応する部位は、図6のように開放されていても良いし、偏向手段8aによる流体流の流動方向の変化を妨げるものでなければどんな形状をしていてもよい。このように、流体処理中のポリマー流の全体としての平均的走行経路の軸(図6の場合、一点鎖線で表示されている)を軸として、これに対して対称の位置に同様の壁面は存在しない方がよい場合が多い。このような対称の壁面が存在すると、コアンダー効果が相殺されて、全体としてのポリマー流Fの走行方向が流体処理中と変わりなくなることがあるからである。このように、コアンダー効果による偏向の効果が発揮されるように非対称な構造を有する壁面を本明細書においては、非対称的壁面と呼ぶ。
【0040】
流体流としては、空気、スチーム、不活性ガスなど流体であれば使用することができる。また、流体処理の目的は、紡糸直下のポリマー流の冷却に限定されず、ポリマー流に加熱を施す場合やポリマー流に流体流を用いて加工を施す場合などポリマー流の走行方向に沿った流体流を用いる糸条パッケージの製造工程に関わるどの工程でも適用可能である。
【0041】
また、流体処理装置3の形態は、ポリマー流の走行方向Daに沿って流体流を流す流路区間をもてば、上部がスピンブロック1に接続されているような構成でもよく、流路の断面形状は、スリット形や矩形でも円筒形でもよい。例えば、流体処理装置3および偏向手段8aの形態は、流体処理装置3の流路がスリット形や矩形の場合は図7の略式斜視図のような構成とすることができ、また流体処理装置3が円筒形の場合は図8の略式斜視図のような構成とすることができる。これらはいずれも壁面10が非対称的壁面であるということになる。
【0042】
また、偏向手段8aは、図6で示した流体処理装置3の下部に接続された形態に限定されず、例えば、図9のように流体処理装置3と離れた下方に板状の部材を設置して行ってもよい。この場合も、上記のθとTの条件を満たせば使用することができる。
【0043】
さらに、偏向手段8aとして、図10のように流体処理手段3から排出される流体流Gとは別の流体流G’をポリマー流Fに交差させるよう流体噴射ノズルなどから噴射して行うことができる。こうすれば、ポリマー流Fと接触することなくポリマー流Fを偏向することができるため好適である。また、流体噴射ノズルは、上記流体流をポリマー流Fに交差するよう噴射できるものなら使用可能である。
【0044】
また、上記の偏向手段8aを複数組み合わせて、ポリマー流の偏向を行ってもよい。
【0045】
さらに、巻き取り中であっても、偏向手段8aにより流体処理後のポリマー流Fを偏向させたまま巻き取ってもよい。こうすれば、ポリマー流が切れても流体処理後のポリマー流Fが接触物4aに堆積するのを防止でき好適である。また、偏向手段8aに設けられた流体流Gを偏向させる壁面10を可動式にして必要なときに偏向を行ってもよいし、巻き取り中にポリマー流Fが切れたことをセンサーなどで感知し、これに連動させてポリマー流Fを偏向するよう壁面10を動作させることや流体噴射ノズル13から別の流体流G’を噴射させることで接触物4aへ堆積を避けるよう偏向を行うことも可能である。
【0046】
次に、別の実施の一形態として、図11の略式縦断面図に設けられた流体処理装置3の、A−A’断面が、図12の略式断面図のような矩形の流路をもつ流体処理装置3内で列状に配列したポリマー流Fを図中の一点鎖線を境界として2つに分割してそれぞれを巻き取る場合について、糸かけの手順を説明する。
【0047】
図11のように、流体処理手段3によって流体処理されたポリマー流Fを、下流側でサクションガン7で吸引を行いながら、偏向手段8bと8cとを図13の流体処理手段3の一部概略斜視図に示したように配置し、偏向手段8aと8bにより流体流Gの流動方向を2方向に偏向させることで、非接触で複数本のポリマー流Fを偏向方向DbとDcにそれぞれ偏向させることができる。このとき、偏向手段8bと8cの境界を図12で示した複数本のポリマー流を2等分する一点鎖線の位置に設ければ、ここを境界として、複数本のポリマー流を2方向に偏向できる。偏向したポリマー流Fは、下流側に配置された2つの接触物4bと4cとに容易に糸かけすることができ、その後、それぞれロール5、ワインダ6に糸かけを行い糸条パッケージPとして巻き取れば、一つの紡糸口金と一つの流体処理手段3から、ポリマー流の本数が同じ2つの糸条パッケージPを得ることができ、設備スペースに対する生産性の向上を図ることができる。なお、上記の流体処理手段3としては、本出願人による特願2003−73260号明細書に記載されたものを用いるのが好ましい。
【0048】
複数本のポリマー流Fは、2つ以上の群に分割してもよく、偏向方向も2つ以上でもあってもよい。また、これらをそれぞれ巻き取ってもよいし、偏向手段によって一旦分割したポリマー流Fを複数配置した接触物である給油ガイドで油剤を付与した後、下流側で再び合糸して一つの糸条パッケージPとして巻き取ってもよい。こうすれば、油剤の付着斑が起こりやすい多フィラメント品種などにおいて油剤の均一付与を行うことができ、ガイドなどでの摩擦擦過による毛羽やタルミの発生を防止することができる。
【0049】
また、偏向手段8bおよび8cは、先に述べた偏向手段8aと同様の機能を有するものならば適用可能である。さらに、糸かけの際、ポリマー流が接触物4bや4cを避けるようにポリマー流Fを偏向させれば、接触物4bや4cにポリマー流Fが衝突して堆積することを防止することも好適である。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくとも前記巻き取りを開始する前に、流体処理後のポリマー流の走行方向を非接触的に偏向させるので、流体処理後のポリマー流が巻き取りまでの間にはじめに接触するものとの接触を避けることができ作業負担を軽減できる。
【0051】
また、複数のポリマー流を流体処理後に複数の群に区分し各群をそれぞれ異なる方向に偏向させれば、流体処理後のポリマー流を複数の群にわけることが容易にでき、さらに、流体処理後の複数のポリマー流を列をなさせ、列の方向に沿って所定の本数毎に各ポリマー流を複数の群に区分することで、1つの紡糸口金から複数の糸条パッケージを巻き取ることができる。
【0052】
そして、ポリマー流の走行方向の偏向を流体流の流動方向の変化によって行い、また、ポリマー流の走行方向から離れる方向に沿った壁面に沿って流体流を流すので、ポリマー流が壁面に衝突することなく非接触でポリマー流を偏向することができ、ポリマー流に摩擦擦過などのダメージを与えることがなく良好な糸条パッケージを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリマー流に対し交差するよう流体流を付与する流体処理手段3を用いた糸条パッケージの製造装置の一部を示した略式縦断面図である。
【図2】ポリマー流に対しポリマー流の走行方向に沿って流体流を付与する流体処理手段3を用いた糸条パッケージの製造装置の一部を示した略式縦断面図である。
【図3】1つの紡糸口金から押し出されたポリマー流から2つの糸条パッケージを巻き取る糸条パッケージの製造装置を示した略式縦断面図である。
【図4】従来の糸条パッケージの製造装置の略式縦断面図である。
【図5】本発明の一実施態様を示す糸条パッケージの製造装置の略式縦断面図である。
【図6】図5における流体処理手段3の一部と偏向手段8aを示す略式縦断面図である。
【図7】矩形の流路形状を持つ流体処理手段3に偏向手段8aを設けた態様を示した一部略式斜視図である。
【図8】円筒形の流路形状を持つ流体処理手段3に偏向手段8aを設けた態様を示した一部略式斜視図である。
【図9】図6において本発明の別の態様を示す偏向手段8aの略式縦断面図である。
【図10】図6において本発明の別の態様を示す偏向手段8aの略式縦断面図である。
【図11】本発明の別の一実施態様を示す糸条パッケージの製造装置の略式縦断面図である。
【図12】図11における流体処理手段3をA−A’方向から見た略式断面図である。
【図13】図11の流体処理手段3に偏向手段8を設けた態様の一部略式斜視図である。
【符号の説明】
1 : スピンブロック
2 : 紡糸口金
3 : 流体処理手段
4a,4b,4c : 接触物(給油ガイド)
5 : ロール
6 : ワインダ
7 : サクションガン
8a,8b,8c : 偏向手段
9 : 流路壁面
10: 壁面
F : ポリマー流
D : ポリマー流の走行方向
Da,Db,Dc: ポリマー流の偏向方向
P : 糸条パッケージ
T : 壁面10の始点の流路壁面9の延長線からの最短距離
θ : 壁面10の延長線と流路壁面9のなす角度
【発明の属する技術分野】
本発明は、糸条パッケージの製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成繊維の製造工程では、溶融ポリマーを紡糸口金から押出してできるポリマー流の冷却や加熱などを目的に流体流を付与する流体処理が行われる。
【0003】
例えば、紡糸直後の冷却工程における流体処理には、一方の側からポリマー流の走行方向に交差するよう冷却媒体である流体流を付与する方法とポリマー流の周囲または両側から流体流を導入し、ポリマー流の走行方向に沿って付与する方法とがある。
【0004】
前者は、流体処理装置において冷却媒体である流体流を付与する側のポリマー流を挟んで対面側が開放できるため、作業性がよい。しかし、特に複数本のポリマー流を冷却処理する場合は、複数のポリマー流間に流体流を付与する側からの距離が近いものと遠いもので、流体流の付与程度に差ができ、これが原因で冷却斑が生じやすい。また、ポリマー流の走行速度を高速化したり、流体流の流速を増大させると冷却中のポリマー流に揺れが生じやすい。したがって、多フィラメント化のためにポリマー流の本数を増やしたり、生産性向上のためにポリマー流の走行速度の高速化すると、糸条パッケージとなしたときに複数のポリマー流間に長手方向の太さ斑などを発生するおそれがある。
【0005】
さらに、ポリマー流を引き取ることによって、ポリマー流に周辺の雰囲気との摩擦が生じ、ポリマー流内の分子配向が促進される。したがって、生産性向上をねらい巻取速度を上げてポリマー流の走行速度を高速化すると、糸条パッケージとしたときに糸の物性値である伸度が低下する。このため、上記の方法では伸度を維持したまま高速化を行うことは困難であった。
【0006】
一方、後者は冷却媒体である流体流が周囲または両側から導入されるため、複数のポリマー流間に流体流の付与程度が差ができにくく冷却に斑が生じにくい。また、ポリマー流の走行方向に沿って流体流が付与されるため、ポリマー流の走行速度を高速化したり流体流の流速を増大させても冷却中のポリマー流に揺れが生じにくい。このため、ポリマー流の本数が多く、ポリマー流間に冷却斑の生じやすい多フィラメント品種やポリマー流の径が比較的小さく、走行中に揺れが生じやすい細デニール品種などの流体処理に用いられるようになっている。
【0007】
さらに、ポリマー流の走行方向に付与する流体流を適当な速度で与えることによって、引き取りの際にポリマー流にかかる張力を低減することも可能であり、高速化に伴う伸度の低下を抑制することができる。かかる技術については、たとえば、特許文献1〜4に開示されている。
【0008】
しかしながら、巻き取り前に流体処理後のポリマー流を下流側で吸引手段により吸引しながら、給油や集束や引取、巻取などを行う装置を通過させるいわゆる糸かけ作業を行うとき、後者の方法では以下の問題が生じてしまう。
【0009】
すなわち、図1は、前者の方法であるポリマー流に対し交差するよう流体流を付与する場合の糸条パッケージの製造装置の一部を示した略式縦断面図であるが、図1においてスピンブロック1に組み込まれた紡糸口金2から押し出されたポリマー流Fが、流体処理手段3を通過後、下流側に配置された給油や集束を行うために通過する接触物4aなどで切れると、ポリマー流Fが流体処理装置3からの流体流Gによって対向側に押し出され、ポリマー流の走行方向Dからはずれるため接触物4aに衝突しにくい。
【0010】
これに対し、図2は、後者の方法であるポリマー流Fに対しポリマー流の走行方向Dに沿って流体流Gを付与する場合の糸条パッケージの製造装置の一部を示した略式縦断面図であるが、図2において図1と同様に紡糸口金2から押し出されたポリマー流Fが、流体処理手段3を通過後、下流側に配置された接触物(給油ガイド)4aなどで切れると、流体処理手段3から下流側に排出される流体流Gによって、流体処理後のポリマー流Fが下流側に押し出されるため接触物4aに衝突する恐れがある。
【0011】
ポリマー流Fが接触物4aに衝突し堆積すると、これらを除去する作業は手間がかかる。特に流体流Gの速度を高速化すると、糸かけ作業時にポリマー流が切れやすく、さらにポリマー流Fが接触物4aに衝突してからの堆積も速いため、作業負担がより大きくなるという問題がある。
【0012】
また、生産性向上のために、1つの紡糸口金から押し出された複数本のポリマー流を複数の群に分割し、下流側の巻取手段で各群をそれぞれ別の糸条パッケージとして巻き取るときは、後者の方法では以下の問題が生じてしまう。
【0013】
すなわち、図3は、紡糸口金2から押し出された複数本のポリマー流Fを下流側で2つの群に分割して各群をそれぞれ給油や集束の手段である接触物4bと4cとに通過させ、引取手段であるロール5を経て、巻取手段であるワインダ6でそれぞれ糸条パッケージPとなす場合の糸条パッケージの製造装置を示した略式縦断面図であるが、図3における糸かけ作業において、流体処理後の複数本のポリマー流Fを接触物4bと4cとにかけるために、下流側で吸引しながら2つに分けようとすると、ポリマー流の走行方向Dに付与された流体流Gがポリマー流Fを下流側へ排出するため、ポリマー流が走行方向Dへ進む力がつよく、無理に左右に分割しようとするとポリマー流Fが切れやすいという問題がある。
【0014】
【特許文献1】
特表平8−506393号公報
【0015】
【特許文献2】
特開2001−262427号公報
【0016】
【特許文献3】
特開2001−336023号公報
【0017】
【特許文献4】
特表2002−510754号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリマー流に前記ポリマー流の走行方向に沿った流体流を付与して流体処理をする際、巻き取り前に流体処理後のポリマー流が切れたとき、給油手段などの接触物へのポリマー流の堆積を防止することや複数本のポリマー流を複数の群に容易に分割することができる糸条パッケージの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、液状ポリマーを紡糸口金から押し出してポリマー流となし、前記ポリマー流に前記ポリマー流の走行方向に沿った流体流を付与して流体処理し、その後巻き取って糸条パッケージとなす糸条パッケージの製造方法であって、少なくとも前記巻き取りを開始する前に、前記流体処理後の前記ポリマー流の走行方向を非接触的に偏向させる糸条パッケージの製造方法を特徴とするものである。
【0020】
ここで言う巻き取りを開始する前というのは、流体処理後のポリマー流を下流側で吸引を開始してから巻取手段で糸条パッケージの巻き取りを開始する前までのことを指す。
【0021】
また、ここでいう偏向とは、次の2つのいずれかをいう。
(1)ポリマー流全体としての平均的な走行方向を、流体処理中の走行方向と異なる方向に変化させること(たとえば、図5に記載の形態)
(2)ポリマー流を複数の群に区分し、流体処理後に少なくともしばらくの間相互に別の取り扱いを受けられるよう、それぞれの群の走行経路が互いに異なるように、少なくとも1群の走行方向が流体処理中の走行方向と異なる方向に変化させること(たとえば、図11に記載の形態)
したがって、ポリマー流1本1本としては流体処理後に走行方向が変化する場合であっても、ポリマー流全体としての走行方向が流体処理中の方向と実質的に一致し、全体を1群としてとりあつかわれるか、後で別の手段(たとえば、糸分け用のガイド等)により複数の群に区分する場合は、上記の意味での偏向には含まれない。たとえば、紡糸口金から液状ポリマーが押出されて形成されたポリマー流の1本1本が流体処理手段から排出される流体流の拡散や加減速の影響を受けて放射状に広がったり、逆に集束したりしても、全体としての平均的な走行方向が流体処理中の走行方向と実質的に一致する場合には、本発明にいう偏向には含まれない。このようなポリマー流の走行方向の変化では、上記目的を達成できないからである。
【0022】
また、ポリマー流とは、口金から押出された直後の液状のポリマーで形成される流れおよびその後これが固化して単糸となったものをいう。
【0023】
本発明においては、前記ポリマー流が前記のとおり偏向されなかった場合に走行する方向の延長線上の前記流体処理の終点から巻き取り位置までの範囲内の位置に、紡糸工程が定常状態に至ったときに前記流体処理後のポリマー流が通過すべき部材を配置されている形態が好ましい適用対象である。
【0024】
また、液状ポリマーを複数の吐出孔から押し出す紡糸口金を用い、前記複数の吐出孔から押し出された複数のポリマー流を前記流体処理後に複数の群に区分し各群のうち少なくとも1群の走行方向を偏向させることも好ましい態様である。
【0025】
さらに、前記流体処理後の複数のポリマー流に列をなさせ、前記列の方向に沿って各ポリマー流を前記複数の群に区分することも好ましい態様である。
【0026】
ここで、ポリマー流の走行方向の偏向は前記流体流の流動方向の変化によって行うことが好ましく、さらには、前記流体処理後に、前記流体処理中の前記ポリマー流の走行方向から離れる方向に沿った壁面に沿って前記流体流を流すことも好ましい。
【0027】
そして、前記流体流の走行方向と交差する方向に、別の流体流を付与して前記流体処理後の前記ポリマー流を偏向することも好ましい態様である。
【0028】
また、本発明は、液状ポリマーを押し出しポリマー流とするための紡糸口金と、前記ポリマー流に前記ポリマー流の走行方向に沿った流体流を付与して流体処理するための流体処理手段と、前記ポリマー流を巻き取って糸条パッケージとなすための巻取手段と、を備えた糸条パッケージの製造装置であって、少なくとも前記巻き取りを開始する前に、前記流体処理後の前記ポリマー流の走行方向を非接触的に偏向させるための偏向手段を有している糸条パッケージの製造装置を特徴とするものである。
【0029】
ここで、前記偏向手段は壁面を有し、該壁面に近づくまでの前記流体流の流れの方向よりも前記壁面に近づく向きに前記流体流を偏向させるよう構成されていることが好ましく、さらには、前記偏向手段が、前記流体処理中の前記ポリマー流の走行方向から離れる方向に沿った壁面を1つ以上備えていることも好ましい態様である。
【0030】
また、前記偏向手段が流体噴射ノズルを1つ以上備えていることも好ましい態様である。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の糸条パッケージの製造方法および製造装置の詳細について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図4は、ポリマー流に対しポリマー流の走行方向に沿った流体流を付与する方法を用いた糸条パッケージの製造装置の略式縦断面図である。ここで図4は、スピンブロック1に組み込まれた紡糸口金2から押し出された複数本のポリマー流Fを、ポリマー流の走行方向Dに沿って冷却媒体である流体流Gを付与する流体処理手段3によって流体処理し、給油や集束を行う接触物4を通過させた後、引取手段であるロール5により引き取り、巻取手段であるワインダ6により巻き取って糸条パッケージPとなすような装置である。
【0033】
図4の糸条パッケージの製造装置において糸かけを行う場合について、図5に本発明の一実施態様を示して説明する。
【0034】
図5のように、流体処理後のポリマー流Fを下流側にある吸引手段であるサクションガン7で吸引した後、流体処理手段3の下方に設置された偏向手段8aによりポリマー流を非接触で偏向方向Daに偏向し、接触物4aやロール5、ワインダ6に糸かけを行う。ここでは上記接触物4aはポリマー流Fの給油ガイドであり、図示の通り、流体処理中のポリマー流Fの全体としての走行経路をそのまま延長した先に存在している。ここで、偏向手段8aによるポリマー流Fの偏向方向Daをポリマー流Fが切れたときに接触物4aを避けるようにあらかじめ調整しておけば、接触物4a、ロール5、ワインダ6のいずれかでポリマー流Fが切れても、ポリマー流Fは偏向方向Daへ排出されるため、接触物4aに衝突したり堆積することを防止できる。
【0035】
また、偏向手段8aはポリマー流Fを非接触で偏向させるため、ポリマー流Fを摩擦擦過させることもないので、巻き取りが始まった後も偏向手段8aによってポリマー流Fの偏向を行ってもよいし、取り外すなどして偏向を行わなくしてもよい。また、偏向手段8aによる偏向は、サクションガン7による吸引前から行なわれていてもよい。
【0036】
ここで、ポリマー流Fを非接触的に偏向する原理についてより詳細に説明する。図6は、図5における流体処理手段3の一部と偏向手段8aの略式縦断面図である。流体処理手段3から排出された流体流Gは、コアンダー効果によって偏向手段8aの偏向を行う壁面10に沿って偏向方向Daへ流れるため、流体流Gとともに排出されたポリマー流Fもこれにならい偏向される。すなわち、この実施形態において、ポリマー流Fを非接触で偏向させるポイントは、偏向手段8aの偏向を行う壁面10がポリマー流と接触することなく、流体処理手段3から排出された流体流Gの流動方向をポリマー流の走行方向Dから離れる方向へ変えることである。
【0037】
これは、たとえば、図6における流体処理手段3の流路壁面9の延長線から壁面10の上端までの最短距離Tが、ポリマー流の走行方向Dから離れる方向へ0以上であり、壁面10の延長線と流路壁面9とのなす角度θが0より大きければ、満たすことができる。
【0038】
ここで、上記のTが0で、θが45°以下であれば、流体流Gの流動方向をスムーズに変えることができるため好適である。また、上記のθが0でもTが0より大きければ、流体流Gの流動方向を偏向できるため好適である。
【0039】
また、偏向手段8aのポリマー流Fを挟んで対面側の偏向手段8aに対応する部位は、図6のように開放されていても良いし、偏向手段8aによる流体流の流動方向の変化を妨げるものでなければどんな形状をしていてもよい。このように、流体処理中のポリマー流の全体としての平均的走行経路の軸(図6の場合、一点鎖線で表示されている)を軸として、これに対して対称の位置に同様の壁面は存在しない方がよい場合が多い。このような対称の壁面が存在すると、コアンダー効果が相殺されて、全体としてのポリマー流Fの走行方向が流体処理中と変わりなくなることがあるからである。このように、コアンダー効果による偏向の効果が発揮されるように非対称な構造を有する壁面を本明細書においては、非対称的壁面と呼ぶ。
【0040】
流体流としては、空気、スチーム、不活性ガスなど流体であれば使用することができる。また、流体処理の目的は、紡糸直下のポリマー流の冷却に限定されず、ポリマー流に加熱を施す場合やポリマー流に流体流を用いて加工を施す場合などポリマー流の走行方向に沿った流体流を用いる糸条パッケージの製造工程に関わるどの工程でも適用可能である。
【0041】
また、流体処理装置3の形態は、ポリマー流の走行方向Daに沿って流体流を流す流路区間をもてば、上部がスピンブロック1に接続されているような構成でもよく、流路の断面形状は、スリット形や矩形でも円筒形でもよい。例えば、流体処理装置3および偏向手段8aの形態は、流体処理装置3の流路がスリット形や矩形の場合は図7の略式斜視図のような構成とすることができ、また流体処理装置3が円筒形の場合は図8の略式斜視図のような構成とすることができる。これらはいずれも壁面10が非対称的壁面であるということになる。
【0042】
また、偏向手段8aは、図6で示した流体処理装置3の下部に接続された形態に限定されず、例えば、図9のように流体処理装置3と離れた下方に板状の部材を設置して行ってもよい。この場合も、上記のθとTの条件を満たせば使用することができる。
【0043】
さらに、偏向手段8aとして、図10のように流体処理手段3から排出される流体流Gとは別の流体流G’をポリマー流Fに交差させるよう流体噴射ノズルなどから噴射して行うことができる。こうすれば、ポリマー流Fと接触することなくポリマー流Fを偏向することができるため好適である。また、流体噴射ノズルは、上記流体流をポリマー流Fに交差するよう噴射できるものなら使用可能である。
【0044】
また、上記の偏向手段8aを複数組み合わせて、ポリマー流の偏向を行ってもよい。
【0045】
さらに、巻き取り中であっても、偏向手段8aにより流体処理後のポリマー流Fを偏向させたまま巻き取ってもよい。こうすれば、ポリマー流が切れても流体処理後のポリマー流Fが接触物4aに堆積するのを防止でき好適である。また、偏向手段8aに設けられた流体流Gを偏向させる壁面10を可動式にして必要なときに偏向を行ってもよいし、巻き取り中にポリマー流Fが切れたことをセンサーなどで感知し、これに連動させてポリマー流Fを偏向するよう壁面10を動作させることや流体噴射ノズル13から別の流体流G’を噴射させることで接触物4aへ堆積を避けるよう偏向を行うことも可能である。
【0046】
次に、別の実施の一形態として、図11の略式縦断面図に設けられた流体処理装置3の、A−A’断面が、図12の略式断面図のような矩形の流路をもつ流体処理装置3内で列状に配列したポリマー流Fを図中の一点鎖線を境界として2つに分割してそれぞれを巻き取る場合について、糸かけの手順を説明する。
【0047】
図11のように、流体処理手段3によって流体処理されたポリマー流Fを、下流側でサクションガン7で吸引を行いながら、偏向手段8bと8cとを図13の流体処理手段3の一部概略斜視図に示したように配置し、偏向手段8aと8bにより流体流Gの流動方向を2方向に偏向させることで、非接触で複数本のポリマー流Fを偏向方向DbとDcにそれぞれ偏向させることができる。このとき、偏向手段8bと8cの境界を図12で示した複数本のポリマー流を2等分する一点鎖線の位置に設ければ、ここを境界として、複数本のポリマー流を2方向に偏向できる。偏向したポリマー流Fは、下流側に配置された2つの接触物4bと4cとに容易に糸かけすることができ、その後、それぞれロール5、ワインダ6に糸かけを行い糸条パッケージPとして巻き取れば、一つの紡糸口金と一つの流体処理手段3から、ポリマー流の本数が同じ2つの糸条パッケージPを得ることができ、設備スペースに対する生産性の向上を図ることができる。なお、上記の流体処理手段3としては、本出願人による特願2003−73260号明細書に記載されたものを用いるのが好ましい。
【0048】
複数本のポリマー流Fは、2つ以上の群に分割してもよく、偏向方向も2つ以上でもあってもよい。また、これらをそれぞれ巻き取ってもよいし、偏向手段によって一旦分割したポリマー流Fを複数配置した接触物である給油ガイドで油剤を付与した後、下流側で再び合糸して一つの糸条パッケージPとして巻き取ってもよい。こうすれば、油剤の付着斑が起こりやすい多フィラメント品種などにおいて油剤の均一付与を行うことができ、ガイドなどでの摩擦擦過による毛羽やタルミの発生を防止することができる。
【0049】
また、偏向手段8bおよび8cは、先に述べた偏向手段8aと同様の機能を有するものならば適用可能である。さらに、糸かけの際、ポリマー流が接触物4bや4cを避けるようにポリマー流Fを偏向させれば、接触物4bや4cにポリマー流Fが衝突して堆積することを防止することも好適である。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくとも前記巻き取りを開始する前に、流体処理後のポリマー流の走行方向を非接触的に偏向させるので、流体処理後のポリマー流が巻き取りまでの間にはじめに接触するものとの接触を避けることができ作業負担を軽減できる。
【0051】
また、複数のポリマー流を流体処理後に複数の群に区分し各群をそれぞれ異なる方向に偏向させれば、流体処理後のポリマー流を複数の群にわけることが容易にでき、さらに、流体処理後の複数のポリマー流を列をなさせ、列の方向に沿って所定の本数毎に各ポリマー流を複数の群に区分することで、1つの紡糸口金から複数の糸条パッケージを巻き取ることができる。
【0052】
そして、ポリマー流の走行方向の偏向を流体流の流動方向の変化によって行い、また、ポリマー流の走行方向から離れる方向に沿った壁面に沿って流体流を流すので、ポリマー流が壁面に衝突することなく非接触でポリマー流を偏向することができ、ポリマー流に摩擦擦過などのダメージを与えることがなく良好な糸条パッケージを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリマー流に対し交差するよう流体流を付与する流体処理手段3を用いた糸条パッケージの製造装置の一部を示した略式縦断面図である。
【図2】ポリマー流に対しポリマー流の走行方向に沿って流体流を付与する流体処理手段3を用いた糸条パッケージの製造装置の一部を示した略式縦断面図である。
【図3】1つの紡糸口金から押し出されたポリマー流から2つの糸条パッケージを巻き取る糸条パッケージの製造装置を示した略式縦断面図である。
【図4】従来の糸条パッケージの製造装置の略式縦断面図である。
【図5】本発明の一実施態様を示す糸条パッケージの製造装置の略式縦断面図である。
【図6】図5における流体処理手段3の一部と偏向手段8aを示す略式縦断面図である。
【図7】矩形の流路形状を持つ流体処理手段3に偏向手段8aを設けた態様を示した一部略式斜視図である。
【図8】円筒形の流路形状を持つ流体処理手段3に偏向手段8aを設けた態様を示した一部略式斜視図である。
【図9】図6において本発明の別の態様を示す偏向手段8aの略式縦断面図である。
【図10】図6において本発明の別の態様を示す偏向手段8aの略式縦断面図である。
【図11】本発明の別の一実施態様を示す糸条パッケージの製造装置の略式縦断面図である。
【図12】図11における流体処理手段3をA−A’方向から見た略式断面図である。
【図13】図11の流体処理手段3に偏向手段8を設けた態様の一部略式斜視図である。
【符号の説明】
1 : スピンブロック
2 : 紡糸口金
3 : 流体処理手段
4a,4b,4c : 接触物(給油ガイド)
5 : ロール
6 : ワインダ
7 : サクションガン
8a,8b,8c : 偏向手段
9 : 流路壁面
10: 壁面
F : ポリマー流
D : ポリマー流の走行方向
Da,Db,Dc: ポリマー流の偏向方向
P : 糸条パッケージ
T : 壁面10の始点の流路壁面9の延長線からの最短距離
θ : 壁面10の延長線と流路壁面9のなす角度
Claims (11)
- 液状ポリマーを紡糸口金から押し出してポリマー流となし、前記ポリマー流に前記ポリマー流の走行方向に沿った流体流を付与して流体処理し、その後巻き取って糸条パッケージとなす糸条パッケージの製造方法であって、少なくとも前記巻き取りを開始する前に、前記流体処理後の前記ポリマー流の走行方向を非接触的に偏向させることを特徴とする糸条パッケージの製造方法。
- 前記ポリマー流が前記のとおり偏向されなかった場合に走行する方向の延長線上の前記流体処理の終点から巻き取り位置までの範囲内の位置に、紡糸工程が定常状態に至ったときに前記流体処理後のポリマー流が通過すべき部材を配置することを特徴とする請求項1に記載の糸条パッケージの製造方法。
- 液状ポリマーを複数の吐出孔から押し出す紡糸口金を用い、前記複数の吐出孔から押し出された複数のポリマー流を前記流体処理後に複数の群に区分し各群のうち少なくとも1群の走行方向を偏向させることを特徴とする請求項1または2に記載の糸条パッケージの製造方法。
- 前記流体処理後の複数のポリマー流に列をなさせ、前記列の方向に沿って各ポリマー流を前記複数の群に区分することを特徴とする請求項3に記載の糸条パッケージの製造方法。
- 前記ポリマー流の走行方向の偏向を前記流体流の流動方向の変化によって行うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の糸条パッケージの製造方法。
- 前記流体処理後に、前記流体処理中の前記ポリマー流の走行方向から離れる方向に沿った壁面に沿って前記流体流を流すことを特徴とする請求項5に記載の糸条パッケージの製造方法。
- 前記流体流の走行方向と交差する方向に、別の流体流を付与して前記流体処理後の前記ポリマー流を偏向することを特徴とする請求項5または6に記載の糸条パッケージの製造方法。
- 液状ポリマーを押し出してポリマー流とするための紡糸口金と、前記ポリマー流に前記ポリマー流の走行方向に沿った流体流を付与して流体処理するための流体処理手段と、前記ポリマー流を巻き取って糸条パッケージとなすための巻取手段と、を備えた糸条パッケージの製造装置であって、少なくとも前記巻き取りを開始する前に、前記流体処理後の前記ポリマー流の走行方向を非接触的に偏向させるための偏向手段を有することを特徴とする糸条パッケージの製造装置。
- 前記偏向手段は壁面を有し、該壁面に近づくまでの前記流体流の流れの方向よりも前記壁面に近づく向きに前記流体流を偏向させるよう構成されていることを特徴とする、請求項8に記載の糸条パッケージの製造装置。
- 前記偏向手段が、前記流体処理中の前記ポリマー流の走行方向から離れる方向に沿った壁面を1つ以上備えている、請求項9に記載の糸条パッケージの製造装置。
- 前記偏向手段が流体噴射ノズルを1つ以上備えている、請求項8または9に記載の糸条パッケージの製造装置。
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