JP2004307912A - 金属粉末の製造方法および導電性ペースト - Google Patents

金属粉末の製造方法および導電性ペースト Download PDF

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Kiyoshi Nakano
清 中野
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Abstract

【課題】第1の金属からなる金属粒子に対して酸化抑制および焼結抑制の効果を与えるため、第1の金属とは異なる第2の金属を含む金属化合物によって金属粒子の表面を被覆した、金属粉末であって、金属化合物による酸化抑制および焼結抑制の効果を十分に発揮させ得る、金属粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】凝集体12の状態にある金属粒子11を、最大粒径が6μm以下、好ましくは3μm以下となるように解砕した後、金属粒子11が分散する溶媒中で、金属粒子11の表面を酸化抑制および焼結抑制のための金属化合物13によって被覆するようにする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、金属粉末の製造方法およびこの製造方法によって得られた金属粉末を含有する導電性ペーストに関するもので、特に、積層セラミック電子部品に備える内部電極の形成のために有利に用いられる導電性ペーストおよびそれに含有される金属粉末の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この発明にとって興味ある積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサであって、たとえばニッケルを主成分とする内部電極を備えるものは、一般的に、次のような工程を経て製造されている。
【0003】
すなわち、セラミックグリーンシート上に、内部電極となるニッケル粉末を導電成分として含む導電性ペーストからなる膜を印刷により形成し、このように導電性ペースト膜が形成されたセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートを積み重ね、圧着することによって、生の積層体を作製し、この生の積層体を、樹脂成分を除去する脱バインダ処理の目的で、大気中において300℃付近の温度で熱処理した後、還元性雰囲気中において1200℃から1300℃の高温で焼成することが行なわれる。
【0004】
このような積層セラミックコンデンサにおいて、その小型化かつ大容量化が進み、内部電極間に位置する誘電体セラミック層の厚みが3μm以下であったり、内部電極の積層数が300を超えたりするものも製造されるようになっている。この小型化かつ大容量化の傾向は、さらに進むものと考えられる。
【0005】
このように、小型化かつ大容量化が進んだ場合、内部電極は、より平滑で薄いものであることが要求され、この要求を満たすため、ニッケル粉末としては、粒径0.1〜1μmといった微粉末が主として用いられるようになっている。
【0006】
しかし、微粉化されたニッケルは酸化されやすく、このことが原因となって、脱バインダ工程において構造欠陥を生じさせることがある。
【0007】
また、ニッケル粉末は、セラミックが焼結する温度より低い700℃近辺の温度で焼結かつ収縮するため、セラミックとの間で焼結時の収縮挙動にミスマッチが生じ、このことも、構造欠陥を招く原因となることがある。
【0008】
また、セラミックが焼結する1200℃から1300℃の温度において、内部電極に含まれるニッケル粉末は、過焼結による玉化が生じ、電極切れを引き起こし、このことが原因となって、容量低下がもたらされることがある。
【0009】
上述のような問題を解決するため、金属ニッケル微粒子の表面に、特定の金属酸化物および/または複合酸化物を固着させた、ニッケル粉末が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の技術によれば、液中において、ニッケル微粒子に金属酸化物および/または複合酸化物を固着させ、それによって、ニッケル微粒子の表面が金属酸化物および/または複合酸化物によって覆われた状態とされる。なお、特許文献1では、ニッケル微粒子の表面上に不飽和脂肪酸がさらに担持され、それによって、ニッケル微粒子の充填密度の向上を図っている。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−131601号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載される方法に従ってニッケル微粒子を液中に分散させたとき、図2(1)に示すように、ニッケル微粒子1は、凝集体2の状態になっている。したがって、この状態で、図2(2)に示すように、金属酸化物および/または複合酸化物3の被覆を行なっても、金属酸化物および/または複合酸化物3は、凝集体2の表面を覆うにすぎない。
【0012】
そのため、このようなニッケル微粒子1を、図2(3)に示すように、有機ビヒクル4中に分散させることによって、導電性ペースト5を作製したとき、金属酸化物および/または複合酸化物3は、1次粒子としてのニッケル微粒子1の各々を完全に被覆した状態とはなっていない。その結果、金属酸化物および/または複合酸化物3による酸化抑制および焼結抑制の効果を十分に発揮させることができない。
【0013】
このような問題は、金属粒子がニッケルからなる場合に限らず、他の金属からなる場合にも同様に遭遇し得る。
【0014】
そこで、この発明の目的は、上述した問題を解決し得る、金属粉末の製造方法およびこの製造方法によって得られた金属粉末を含有する導電性ペーストを提供しようとすることである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明は、第1の金属からなる金属粒子の表面が第1の金属とは異なる第2の金属を含む金属化合物によって被覆された、金属粉末を製造する方法にまず向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、凝集した金属粒子を、最大粒径が6μm以下となるように、好ましくは3μm以下となるように解砕する工程と、解砕後の金属粒子が分散する溶媒中で、金属粒子の表面を金属化合物によって被覆する工程とを備えることを特徴としている。
【0016】
上述のように、金属粒子の表面を金属化合物によって被覆するため、たとえば、金属化合物を含む溶液から沈殿反応により金属粒子の表面に金属化合物を析出させたり、金属化合物を含む溶液から溶媒を除去することにより金属粒子の表面に金属化合物を析出させたりすることが行なわれる。
【0017】
この発明に係る金属粉末の製造方法において、金属粒子を構成する第1の金属としては、好ましくは、ニッケルまたは銅が用いられる。
【0018】
この発明は、また、上述したような製造方法によって得られた金属粉末と有機ビヒクルとを含有する、導電性ペーストにも向けられる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、図2に相当する図であって、この発明の一実施形態による金属粉末の製造方法を説明するためのものである。
【0020】
まず、図1(1)に示すように、金属粒子11が用意される。金属粒子11は、たとえば液相法によって製造される。製造後の金属粒子11は、凝集体12を形成した状態となっている。
【0021】
次に、図1(2)に示すように、凝集した金属粒子11が、最大粒径6μm以下、好ましくは3μm以下となるように解砕される。この解砕工程では、解砕力の強い解砕装置を用いることが好ましい。好適に用いられる解砕装置としては、分散機のような湿式解砕を行なうものとして、たとえば、媒体攪拌型ミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、攪拌式ホモジナイザーまたはコロイドミル等が挙げられ、乾式解砕を行なうものとして、たとえばジェットミル等が挙げられる。
【0022】
上述の媒体攪拌型ミルとしては、円筒容器中に球状の媒体と解砕されるべき粒子とを液体とともに加え、円筒容器を回転させることにより、容器中の粒子を解砕させるボールミルと、円筒容器中に備えた攪拌機によって、球状の媒体と粒子とを液体中で攪拌することによって、粒子を解砕するビーズミルとがある。
【0023】
高圧ホモジナイザーは、解砕されるべき粒子を含む液体を加圧し、狭い隙間から放出させることにより、高速ジェット流を発生させ、この高速ジェット流内で粒子同士あるいは装置内壁に設けられた衝突板との衝突により、粒子を解砕する分散機であり、たとえば、「ナノマイザー」、「マイクロフルイタイザー」、「アルティマイザー」などの名称で市販されている。
【0024】
超音波ホモジナイザーは、解砕されるべき粒子を含む液体中に円筒状の振動子を配置し、この振動子を振動させることにより発生する液中のキャビテーションによって、粒子を解砕するものである。
【0025】
攪拌式ホモジナイザーは、高速回転するロータにより運動エネルギーを与えられた、解砕されるべき粒子を含む液体が、近接して設置されているスクリーンを通過することにより、せん断力を受けて、粒子を解砕する分散機であって、たとえば、「クレアミックス」、「ディスパミル」、「T.K.フィルミックス」などの名称で市販されている。
【0026】
コロイドミルは、解砕されるべき粒子を含む液体を、高速で回転している外筒と内筒との隙間に流し、その間で発生するせん断、衝突およびキャビテーションによって粒子を解砕する分散機である。
【0027】
ジェットミルは、高圧のノズルから出る気流に、解砕されるべき粒子を吸引させ、粒子間の衝突によって解砕を行なうものである。
【0028】
次に、上述のようにして解砕された金属粒子11が溶媒中に分散され、このような溶媒中で、図1(3)に示すように、金属粒子11の表面が金属化合物13によって被覆される。このようにして、1次粒子としての金属粒子11の各々の全表面が実質的に均一に金属化合物13によって覆われた状態にある金属粉末14を得ることができる。
【0029】
上述のように、金属粒子11の表面を金属化合物13によって被覆した状態を得るため、より具体的には、金属化合物13を含む溶液から沈殿反応により金属粒子11の表面に金属化合物13を析出させる工程が実施されたり、金属化合物13を含む溶液から溶媒を除去することにより金属粒子11の表面に金属化合物13を析出させる工程が実施されたりする。
【0030】
次に、金属化合物13によって被覆された金属粒子11からなる金属粉末14は、有機ビヒクル15中に分散されることにより、図1(4)に示すような導電性ペースト16が得られる。この導電性ペースト16中において、金属粒子11は金属化合物13によって覆われた状態を維持しており、したがって、金属化合物13による、たとえば酸化抑制および焼結抑制といった効果を十分に発揮させることができる。
【0031】
以下に、この発明による効果を確認するために実施したいくつかの実験例について説明する。これら実験例では、金属粒子を構成する金属として、積層セラミック電子部品の製造において内部電極の導電成分として広く用いられているニッケルまたは銅を用い、また、酸化抑制および焼結抑制の効果を発揮させることを目的として、金属粒子の表面を所定の金属化合物によって被覆した。
【0032】
(実験例1)
1.ニッケル粒子の作製
60℃の温度で攪拌しながら、硫酸ニッケル水溶液をアルカリと反応させ、水酸化ニッケルを生成させ、これにヒドラジン水溶液を加えることによって還元させ、ニッケル粒子を得た。洗浄後、ニッケル粒子の1次粒子の平均粒径を測定するため、SEMにて500個の粒子の直径を測定した。得られた1次粒子の平均粒径は0.2μmであった。また、得られたニッケル粒子の水中での粒径を、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置「マイクロトラック HRA 9320−X100型」(Leeds & Northrup社製)で測定した。その最大粒径は37μmであった。
【0033】
2.ニッケル粒子の解砕
洗浄後のニッケル粒子を、直径0.1mmのジルコニアビーズを用いた縦型ビーズミルによって、ロータの周速1.5m/秒の条件で解砕した。ここで、解砕時間を変えることによって、表1に示すように、最大粒径の異なるいくつかの試料を作製した。表1に示した最大粒径は、前述したレーザ回折散乱式粒度分布測定装置によって測定されたものである。なお、試料1については、このような解砕を行なわなかった。
【0034】
3.ニッケル粒子への被覆
表1に示した最大粒径を有する各ニッケル粒子をそれぞれ水中に分散させ、これを攪拌しながら、1モル/リットルのBaClとTiOClとの混合水溶液と1モル/リットルの炭酸ナトリウム水溶液とを、1:2.2の比率でチューブポンプを使って所定量加えることによって、ニッケル1モルに対して、0.01モルのBaCOと0.01モルのTiO(OH)とをニッケル粒子上に付着させた各試料に係るニッケル粉末を得た。得られたニッケル粉末は、水で洗浄した後、120℃の温度で減圧乾燥した。
【0035】
4.評価
このようにして得られた各試料に係るニッケル粉末について、次のような評価を行なった。
【0036】
(1)酸化抑制効果
酸化抑制効果を評価するため、各試料に係るニッケル粉末の大気中でのTG−DTAを測定し、酸化開始温度を求めた。酸化抑制効果が大きいほど、酸化開始温度が上昇する。酸化開始温度は、TG曲線で酸化重量増加前の曲線の接線と重量増加曲線の接線との交点とした。TG−DTA測定は、試料量10mgについて昇温速度10℃/分で室温から800℃の温度まで行なった。このようにして求められた酸化開始温度が表1に示されている。
【0037】
(2)焼結抑制効果
焼結抑制効果を評価するため、各試料に係るニッケル粉末を金型で固め、直径4mmおよび高さ2mmの円筒状の圧粉体を作製し、この圧粉体について、還元性雰囲気中においてTMAを測定し、その焼結開始温度を求めた。焼結抑制効果が高いほど、焼結開始温度が上昇する。焼結開始温度は、TMA曲線で焼結収縮開始前の曲線の接線と焼結収縮曲線の接線との交点とした。TMA測定条件は、3%H/97%Nの雰囲気中において、昇温速度10℃/分で室温から1250℃の温度まで測定した。このようにして求められた焼結開始温度が表1に示されている。
【0038】
(3)積層セラミックコンデンサによる評価
まず、還元性雰囲気中で焼結可能なチタン酸バリウム系の誘電体材料であって、JIS規格のB特性を満足するものを用いて、焼成後の厚みが3μmになるセラミックグリーンシートを作製した。他方、前述した各試料に係るニッケル粉末を、テルピネオールでエチルセルロースを溶解させた有機ビヒクル中に3本ロールで分散させることによって、導電性ペーストを作製した。
【0039】
次に、前述したセラミックグリーンシート上に、内部電極を形成するため、上述の導電性ペーストからなる膜を印刷により形成し、このようなセラミックグリーンシートを350層積み重ね、圧着した後、焼成後において3.2mm×1.6mmの平面寸法になるように切断した。
【0040】
次に、上述のように切断して得られた生チップを、大気中において300℃の温度で2時間保持し、脱バインダ処理した。その後、N−H−HO雰囲気中において、1250℃の温度で2時間保持し、生チップを焼結させた。
【0041】
このようにして得られた焼結後の50個のチップについて、デラミネーションまたはクラックのような構造欠陥の有無を倍率20倍の実体顕微鏡で観察した。この構造欠陥についての不良数が表1に示されている。
【0042】
また、焼成後の内部電極の連続性を調べるため、焼結後のチップを破壊して内部電極部分を露出させ、電極被覆率を測定した。電極が完全にニッケルで覆われている場合、電極被覆率が100%であり、電極にニッケルが全く存在しない場合、電極被覆率が0%である。この電極被覆率が表1に示されている。なお、試料1および2については、構造欠陥が発生したため、電極被覆率を測定しなかった。
【0043】
【表1】
Figure 2004307912
【0044】
表1において、表面がBaCOとTiO(OH)とで被覆されるべきニッケル粒子に関して、試料1および2では、最大粒径が6μmを超え、試料3〜6では、最大粒径が6μm以下である。特に、試料5および6では、ニッケル粒子の最大粒径が3μm以下である。
【0045】
試料1および2のように、最大粒径が6μmを超える大きさのニッケル粒子の凝集体が被覆時において存在すると、酸化開始温度および焼結開始温度が比較的低く、それゆえ、酸化抑制効果および焼結抑制効果が不十分であるため、構造欠陥が発生している。
【0046】
これに対して、試料3〜6のように、最大粒径が6μm以下にまで解砕されたニッケル粒子を用いると、酸化開始温度および焼結開始温度が比較的高くなり、酸化抑制効果および焼結抑制効果が十分に得られ、構造欠陥のない積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0047】
特に、最大粒径が3μm以下にまで解砕されたニッケル粒子を用いた試料5および6によれば、酸化開始温度および焼結開始温度がより高くなり、酸化抑制効果および焼結抑制効果がより高められ、その結果、内部電極における玉化が抑制され、より高い電極被覆率を得ることができる。
【0048】
(実験例2)
1.ニッケル粒子の作製
錯化剤としてのクエン酸を加えた硫酸ニッケル水溶液にアルカリを反応させることによって、水酸化ニッケルを生成させ、次いで、攪拌しながら60℃の温度にまで加熱し、これをヒドラジン水溶液で還元することにより、ニッケル粒子を得た。このニッケル粒子の1次粒子の平均粒径を、実験例1の場合と同様の方法で求めたところ、0.6μmであった。また、このニッケル粒子の水中での粒径を、実験例1の場合と同様のレーザ回折散乱式粒度分布測定装置にて測定したところ、最大粒径が37μmであった。
【0049】
2.ニッケル粒子の解砕
洗浄後のニッケル粒子を、直径0.3mmのガラスビーズを用いた縦型ビーズミルによって、ロータの周速1.5m/秒の条件で解砕した。ここで、解砕時間を変えることによって、表2に示すように、最大粒径の異なるいくつかの試料を作製した。表2に示した最大粒径は、実験例1の場合と同様、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置によって測定されたものである。なお、試料11については、このような解砕を行なわなかった。
【0050】
3.ニッケル粒子への被覆
表2に示した最大粒径を有するニッケル粒子をそれぞれ水中に分散させ、これを攪拌しながら、CaCOとZr(OH)とのコロイド水溶液を、ニッケル1モルに対してCaCOが0.01モルおよびZr(OH)が0.01モルとなるように加え、さらに十分に攪拌混合した後、70℃の温度に設定された温水中でロータリエバポレータにより乾燥させることによって溶媒を除去して、ニッケル1モルに対して、0.01モルのCaCOと0.01モルのZr(OH)とによって被覆されたニッケル粒子からなる各試料に係るニッケル粉末を得た。これらニッケル粉末は、150メッシュのスクリーンで選別し、評価用のニッケル粉末とした。
【0051】
4.評価
このようにして得られた各試料に係るニッケル粉末について、次のような評価を行なった。
【0052】
(1)酸化抑制効果
実験例1の場合と同様の方法によって、酸化開始温度を求めた。求められた酸化開始温度が表2に示されている。
【0053】
(2)焼結抑制効果
実験例1の場合と同様の方法によって、焼結開始温度を求めた。求められた焼結開始温度が表2に示されている。
【0054】
(3)積層セラミックコンデンサによる評価
まず、還元性雰囲気中で焼結可能なジルコン酸カルシウム系の誘電体材料であって、JIS規格のCG特性を満足するものを用いて、焼成後の厚みが3μmになるセラミックグリーンシートを作製した。他方、前述した各試料に係るニッケル粉末を、テルピネオールでエチルセルロースを溶解させた有機ビヒクル中に3本ロールで分散させることによって、導電性ペーストを作製した。
【0055】
次に、前述したセラミックグリーンシート上に、内部電極を形成するため、上述の導電性ペーストからなる膜を印刷により形成し、このようなセラミックグリーンシートを50層積み重ね、圧着した後、焼成後において2mm×1.2mmの平面寸法になるように切断した。
【0056】
次に、上述のように切断して得られた生チップを、大気中において350℃の温度で12時間保持し、脱バインダ処理した。その後、N−H−HO雰囲気中において、1250℃の温度で2時間保持し、生チップを焼結させた。
【0057】
このようにして得られた焼結後のチップについて、実験例1の場合と同様の方法により、構造欠陥についての不良数および電極被覆率を求めた。これら構造欠陥についての不良数および電極被覆率が表2に示されている。なお、試料11および12については、構造欠陥が発生したため、電極被覆率を測定しなかった。
【0058】
【表2】
Figure 2004307912
【0059】
表2において、表面がCaCOとZr(OH)とで被覆されるべきニッケル粒子に関して、試料11および12では、最大粒径が6μmを超え、試料13〜15では、最大粒径が6μm以下である。特に、試料15では、ニッケル粒子の最大粒径が3μm以下である。
【0060】
試料11および12のように、最大粒径が6μmを超える大きさのニッケル粒子の凝集体が被覆時において存在すると、酸化開始温度および焼結開始温度が比較的低く、それゆえ、酸化抑制効果および焼結抑制効果が不十分であるため、構造欠陥が発生している。
【0061】
これに対して、試料13〜15のように、最大粒径が6μm以下にまで解砕されたニッケル粒子を用いると、酸化開始温度および焼結開始温度が比較的高くなり、酸化抑制効果および焼結抑制効果が十分に得られ、構造欠陥のない積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0062】
特に、最大粒径が3μm以下にまで解砕されたニッケル粒子を用いた試料15によれば、酸化開始温度および焼結開始温度がより高くなり、酸化抑制効果および焼結抑制効果がより高められ、その結果、内部電極における玉化が抑制され、より高い電極被覆率を得ることができる。
【0063】
(実験例3)
1.銅粒子の作製
50℃の温度に加熱したピロリン酸銅水溶液を攪拌しながら、ヒドラジン水溶液を加えることによって還元反応を生じさせ、実験例1の場合と同様の測定方法による数値で、1次粒子の平均粒径が1.0μmである銅粒子を得た。洗浄後、銅粒子を吸引ろ過により脱水し、その後、エタノールで洗浄かつ置換し、エタノール中に銅粒子を分散させ、実験例1の場合と同様のレーザ回折散乱式粒度分布測定装置にて銅粒子の粒径を測定したところ、その最大粒径は37μmであった。
【0064】
2.銅粒子の解砕
上述のように、エタノール中に分散した銅粒子を、攪拌式ホモジナイザー[クレアミックス」(エム・テクニック社製)によって、回転数10000rpmの条件で解砕した。ここで、解砕時間を変えることによって、表3に示すように、最大粒径の異なるいくつかの試料を作製した。表3に示した最大粒径は、実験例1の場合と同様、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置によって測定されたものである。なお、試料21については、このような解砕を行なわなかった。
【0065】
3.銅粒子への被覆
上述のように、銅粒子を分散させたエタノール中にテトラブトキシジルコニウムを加え、加水分解によって、銅1モルに対して、0.005モルのZrOを銅粒子上に付着させた各試料に係る銅粉末を得た。
【0066】
4.評価
このようにして得られた各試料に係る銅粉末について、次のような評価を行なった。
【0067】
(1)酸化抑制効果
実験例1の場合と同様の方法によって、酸化開始温度を求めた。求められた酸化開始温度が表3に示されている。
【0068】
(2)焼結抑制効果
実験例1の場合と同様の方法によって、焼結開始温度を求めた。求められた焼結開始温度が表3に示されている。
【0069】
(3)積層セラミックコンデンサによる評価
まず、還元性雰囲気中で焼結可能なガラス成分を含む低温焼成用ジルコン酸カルシウム系の誘電体材料であって、JIS規格のCG特性を満足するものを用いて、焼成後の厚みが10μmになるセラミックグリーンシートを作製した。他方、前述した各試料に係る銅粉末を、テルピネオールでエチルセルロースを溶解させた有機ビヒクル中に3本ロールで分散させることによって、導電性ペーストを作製した。
【0070】
次に、前述したセラミックグリーンシート上に、内部電極を形成するため、上述の導電性ペーストからなる膜を印刷により形成し、このようなセラミックグリーンシートを5層積み重ね、圧着した後、焼成後において2mm×1.2mmの平面寸法になるように切断した。
【0071】
次に、上述のように切断して得られた生チップを、窒素雰囲気中において300℃の温度で12時間保持し、脱バインダ処理した。その後、N−H−HO雰囲気中において950℃の温度で2時間保持し、生チップを焼結させた。
【0072】
このようにして得られた焼結後のチップについて、実験例1の場合と同様の方法によって、構造欠陥についての不良数および電極被覆率を求めた。これら構造欠陥についての不良数および電極被覆率が表3に示されている。なお、試料21および22については、構造欠陥が発生したため、電極被覆率を測定しなかった。
【0073】
【表3】
Figure 2004307912
【0074】
表3において、表面がZrOで被覆されるべき銅粒子に関して、試料21および22では、最大粒径が6μmを超え、試料23〜25では、最大粒径が6μm以下である。特に、試料25では、銅粒子の最大粒径が3μm以下である。
【0075】
試料21および22のように、最大粒径が6μmを超える大きさの銅粒子の凝集体が被覆時において存在すると、酸化開始温度および焼結開始温度が比較的低く、それゆえ、酸化抑制効果および焼結抑制効果が不十分であるため、構造欠陥が発生している。
【0076】
これに対して、試料23〜25のように、最大粒径が6μm以下にまで解砕された銅粒子を用いると、酸化開始温度および焼結開始温度が比較的高くなり、酸化抑制効果および焼結抑制効果が十分に得られ、構造欠陥のない積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0077】
特に、最大粒径が3μm以下にまで解砕された銅粒子を用いた試料25によれば、酸化開始温度および焼結開始温度がより高くなり、酸化抑制効果および焼結抑制効果がより高められ、その結果、内部電極における玉化が抑制され、より高い電極被覆率を得ることができる。
【0078】
以上の3つの実験例1〜3では、金属粒子として、ニッケル粒子または銅粒子を用いたが、これら以外に、たとえば銀またはパラジウムなどの導電性ペーストにおける導電成分として用いられている金属からなる粒子であれば、同様に適用することができ、被覆によって酸化抑制効果および焼結抑制効果の少なくとも一方がもたらされることを期待できる。
【0079】
また、金属粒子の表面を被覆する金属化合物についても、実験例1〜3のように、BaCO、TiO(OH)、Zr(OH)、CaCOまたはZrOに限らず、たとえば液相からの沈殿生成または溶媒除去によって析出させ得るものであれば、どのような金属化合物であっても用いることができる。たとえば、金属塩のアルカリ添加による水酸化物生成が可能なものとして、Dyなどのランタノイド元素、Sc、Y、Ti、Zr、Mn、Alなどがある。シュウ酸による沈殿生成が可能なものとして、Ba、Tiなどのシュウ酸塩がある。炭酸塩としては、Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属があり、アルコキシドの加水分解を利用した沈殿生成が可能なものとしては、Al、Si、Ti、Zr、Baなどの酸化物を挙げることができる。
【0080】
【発明の効果】
以上のように、この発明に係る金属粉末の製造方法によれば、第1の金属からなる金属粒子についてのたとえば酸化抑制および焼結抑制の効果を生じさせるため、第1の金属とは異なる第2の金属を含む金属化合物によって金属粒子の表面を被覆した、金属粉末を製造するにあたって、凝集した金属粒子を、最大粒径が6μm以下となるように、好ましくは3μm以下となるように解砕してから、金属粒子が分散する溶媒中で、金属粒子の表面を金属化合物によって被覆するようにしているので、金属化合物を、金属粒子の各々の表面をすべて覆うように実質的に均一に付着させることができる。その結果、金属化合物によるたとえば酸化抑制効果および焼結抑制効果を十分に発揮させることができる。
【0081】
したがって、上述のようにして得られた金属粉末を含有する導電性ペーストを作製し、この導電性ペーストを積層セラミック電子部品の内部電極の形成のために用いると、得られた積層セラミック電子部品において構造欠陥が生じにくくなり、また、内部電極の被覆率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態による金属粉末の製造方法に備える典型的な工程を示す図である。
【図2】この発明にとって興味ある従来の金属粉末の製造方法に備える典型的な工程を示す図である。
【符号の説明】
11 金属粒子
12 凝集体
13 金属化合物
14 金属粉末
15 有機ビヒクル
16 導電性ペースト

Claims (5)

  1. 第1の金属からなる金属粒子の表面が前記第1の金属とは異なる第2の金属を含む金属化合物によって被覆された、金属粉末を製造する方法であって、
    凝集した前記金属粒子を、最大粒径が6μm以下となるように解砕する工程と、
    解砕後の前記金属粒子が分散する溶媒中で、前記金属粒子の表面を前記金属化合物によって被覆する工程と
    を備える、金属粉末の製造方法。
  2. 前記被覆する工程は、前記金属化合物を含む溶液から沈殿反応により前記金属粒子の表面に前記金属化合物を析出させる工程を備える、請求項1に記載の金属粉末の製造方法。
  3. 前記被覆する工程は、前記金属化合物を含む溶液から溶媒を除去することにより前記金属粒子の表面に前記金属化合物を析出させる工程を備える、請求項1に記載の金属粉末の製造方法。
  4. 前記第1の金属は、ニッケルまたは銅である、請求項1ないし3のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の製造方法によって得られた金属粉末と有機ビヒクルとを含有する、導電性ペースト。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012226830A (ja) * 2011-04-14 2012-11-15 Sony Corp 色素増感太陽電池および色素増感太陽電池の製造方法
JP2013219009A (ja) * 2012-10-29 2013-10-24 Nippon Chemicon Corp 反応方法及びこの方法で得られた金属酸化物ナノ粒子、またはこの金属酸化物ナノ粒子を担持したカーボン及びこのカーボンを含有する電極、並びにこれを用いた電気化学素子
KR101383253B1 (ko) 2012-04-19 2014-04-10 삼화콘덴서공업주식회사 적층세라믹커패시터의 내부전극용 금속페이스트 제조방법

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