JP2004305336A - ゴルフクラブヘッド - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フェース部3の少なくとも一部に、平均粒子径が0.5〜5μmの微細結晶組織を有する金属材料を用いたことを特徴とするゴルフクラブヘッド1である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性に優れかつ高反発化が容易なゴルフクラブヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
金属製のゴルフクラブヘッドでは、フェース部を薄肉化することによってボールとの反発性を高めたものが知られている。しかし、フェース部の薄肉化は、フェース部の強度低下を招き、耐久性を悪化させる。このためフェース部に用いられる材料としては、高い引張強度が要求され、例えば近年ではα+β系又はβ系のチタン合金の採用率が高まっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
発明者らは、さらに高強度の金属材料をフェース部に用いるために、金属材料の結晶粒子径に着目した。ホール・ペッチの法則では、金属材料の引張強度、靱性及び疲労強度は、結晶組織の粒子径が小さくなるほど向上する。市販されている金属製ゴルフクラブヘッドのフェース部について、その結晶粒子径を調べたところ、小さいものでもせいぜい10μmであり、さらに微細化しうる余地があることを発明者らは知見した。
【0004】
以上のように、本発明は、フェース部の少なくとも一部に、平均粒子径が0.5〜5μmの微細結晶組織を有する金属材料を用いることを基本として、フェース強度を大幅に向上して耐久性を向上でき、例えばフェース部の薄肉化により反発性を向上させるのに役立つゴルフクラブヘッドを提供することを目的としている。
【0005】
なお金属材料の結晶組織を微細化することに着目した先行技術として、次の特許文献1ないし3がある。特許文献1ないし2では、微細化した組織を有する金属材料の製法に関するもので、ゴルフクラブヘッドのフェース材への適用については具体的な示唆は開示がない。また特許文献3では、ゴルフクラブヘッドのクラウン部やフェース部材に微細な結晶金属を用いることを示唆しているが、その結晶サイズは50μm程度と大きく、本願発明のものとは異なる。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−262224号公報
【特許文献2】
特公平7−116503号公報
【特許文献3】
特開平9−103522号公報
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、フェース部の少なくとも一部が、平均粒子径が0.5〜5μmの微細結晶組織を有する金属材料からなることを特徴とするゴルフクラブヘッドである。なお本明細書において、平均粒子径は、200μm×200μmの対象部分を電子顕微鏡で観察し、その中で粒子径をそれぞれ測定してこれを平均して計算される。
【0008】
また請求項2記載の発明は、前記金属材料からなるフェース板と、該フェース板を前面に配するヘッド本体とが固着されてなる請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。
【0009】
また請求項3記載の発明は、前記固着は、レーザ溶接であることを特徴とする請求項2記載のゴルフクラブヘッドである。
【0010】
また請求項4記載の発明は、前記金属材料は、Fe系合金でありかつ前記平均粒子径が0.5〜3μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0011】
また請求項5記載の発明は、前記金属材料は、熱間又は温間で強ひずみ加工されることにより形成されてなる請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0012】
また請求項6記載の発明は、前記金属材料は、Fe系合金であり、かつ強磁場中の相変態により結晶を配向させる工程と、前記配向方向に沿って圧延する工程とを含んで製造されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態のゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)1の全体斜視図、図2はその分解斜視図、図3はフェース面と直角なヘッドの断面図をそれぞれ示す。
【0014】
図において、本実施形態のヘッド1は、ボールを打球する面であるフェース面2を有するフェース部3と、前記フェース面2の上縁2aに連なりヘッド上面をなすクラウン部4と、フェース面2の下縁2bに連なりヘッド底面をなすソール部5と、クラウン部4とソール部5との間を継ぎフェース面2のトウ側縁2cからバックフェースを通りフェース面2のヒール側縁2dにのびて側壁部分をなすサイド部6と、フェース部2とクラウン部3とサイド部5とのヒール側の交わり部近傍に配されかつ図示しないシャフトの一端が装着される差し込み孔8を有するネック部7とを具えたウッド型のものが例示される。
【0015】
また図2に示すように、該ヘッド1は、フェース部3の主要部を形成するフェース板1Aと、このフェース板1Aを前面に配するヘッド本体1Bとからなる2ピース構造のものが例示される。ヘッド本体1Bは、クラウン部4、ソール部5、サイド部6及びネック部7を一体に具える。またヘッド本体1Bは、内部に中空部iが形成される殻構造体であり、その前面には、フェース面2の輪郭にほぼ沿った形の開口部Oが設けられる。この開口部Oには、後に嵌め込まれるフェース板1Aの背面と当接することにより該フェース板1Aとヘッド本体1Bとを位置決めしうる1以上の係止片9が設けられる。本例では係止片9が、隔設された小片からなるものを示すが、開口部Oに沿って連続してのびるものでも良い。
【0016】
本実施形態のヘッド本体1Bは、好ましくは金属材料からなり、例えば鋳造によって各部が一体に形成される。金属材料としては、例えばアルミニウム合金、チタン合金、ステンレスなどの各種のものが採用できる。特に好ましくは、フェース板1Aと溶接可能な金属材料とすることが望ましく、本例ではステンレスを採用している。またヘッド本体1Bは、例示の形態に限定されるものではなく、例えば鍛造及び/又はプレスなどで成形された2以上の部品を溶接等することによって形成したものでも良い。さらにヘッド本体1Bは、必要により繊維強化樹脂などを一部ないし全体に用いることができる。
【0017】
本実施形態のフェース板1Aは、ヘッド本体1Bの前記開口部Oよりも僅かに小さい輪郭形状を持つ板状のものが例示される。これにより、フェース板1Aは、該開口部Oに嵌め込むことができる。該フェース板1Aは、平均粒子径が0.5〜5μmの微細結晶組織を有する金属材料から形成される。これにより、本実施形態のヘッド1は、フェース部3の少なくとも一部、本例では実質的に全部が、平均粒子径が0.5〜5μmの微細結晶組織を有する金属材料から構成されることとなる。
【0018】
金属材料の結晶粒子径を微細化すると、金属材料の引張強度、靱性及び疲労強度を著しく向上する。本発明のヘッド1では、かかる金属材料がフェース部3の少なくとも一部を構成することにより、フェース部の強度、靱性、疲労強度などが向上しうる。従って、該ヘッド1は、フェース部3をより一層薄肉化することができ、ひいては高い反発性能を発揮することが可能である。
【0019】
金属材料の結晶組織を微細化する方法としては、特に限定はされないが、例えば強ひずみ加工法や、強磁場中の相変態と圧延とを組み合わせた加工法が挙げられる。なお本明細書では、微細な結晶組織の中には、微細な結晶組織を有した粉末を焼結することによって形成されたものは含まないものとする。性能的に気孔などの欠陥導入の可能性が高いためである。
【0020】
強ひずみ加工では、被加工材に塑性加工を繰り返し行って大きな歪、より好ましくは500%以上の歪を与える。このような加工は、例えば鉄鋼材料(Fe系合金)からなる被加工材を温間ないし熱間(好ましくは500〜750℃の熱間)で圧延を複数回繰り返し、歪(圧下率)が500〜700%程度となるまで加工する。その後、再結晶温度又は所望の組成を得るための温度で相変態させることにより、歪が緩和(原子の拡散運動)され、超微細結晶粒を有する金属組織を得ることができる。この方法では、圧下率が大きいので、被加工材には、予め圧下率を見込んだ大きな断面積のものものが採用される。
【0021】
また強ひずみ加工は、図5(A)に示すように、屈曲(この例では直角である)した通路aを有するダイスbを使用して行うこともできる。この方法は、アクチュエータ等により、被加工材mをダイスbの通路aの中に押し込む。押し込まれた被加工材aは、通路bの屈曲部を通過する際に大きなせん断力τを受けて塑性変形する。また押し出された被加工材mは、繰り返してダイスbの通路aを通される。この方法では、被加工材mの横断面積を実質的に変化させることなく大きな単純せん断ひずみを被加工材mに与えることができる点で好ましい方法である。
【0022】
なお図5(A)に示す方法では、被加工材の厚さが小さいと、被加工材mを通路aに押し込む際に座屈などが生じやすくなる。このため、図5(B)に示すように、主ローラd1と、その外周面に沿って配された複数個のサブローラd2とを用いることにより、被加工材mを座屈させることなくダイスbの屈曲した通路aに案内しながら押し込むこともできる。なお主ローラd1とサブローラd2との間では、被加工材mは実質的に圧延を受けないようにローラ間距離などが適宜定められる。
【0023】
また、強ひずみ加工には、大きな塑性加工しうるものであれば特に限定されることなく種々の材料を使用することができる。例えば、チタン、チタン合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、ステンレスなどのFe系合金が好ましく採用でき、リサイクル性とコストを考慮するとFeを主成分としたFe系合金が特に好ましい。
【0024】
また図6(A)に示すように、微細結晶組織を有する金属材料は、強磁場中の相変態により結晶を一定の方向へ配向させる工程と、図6(B)に示すように、前記配向方向に沿って圧延する工程とを含んで製造することもできる。図6(A)では、炉fのチャンバー中に磁性を有する例えばFe系合金からなる被加工材mを設置し、これを相変態温度までヒータhを用いて加熱する。相変態温度は、被加工材によって異なる。また、被加工材mを相変態温度まで加熱すると、強磁場発生装置rにより、この例では上下方向n1の磁場を被加工材mに印加する。磁場が小さすぎると、結晶組織を配向させることができず、逆に大きすぎても、生産性やコスト面で不利となる傾向があるため好ましくない。このような観点より、磁場の大きさは例えば3〜15テスラ、より好ましくは5〜10テスラ程度が望ましい。
【0025】
被加工材mをこのような強磁場の中で変態させると、磁場の印加方向n1に沿った方向n2に結晶組織が配向される。そして、図6(B)に示すように、このような配向組織を有する被加工材mを一対のロールR、R間に通して圧延方向Sで圧延する。このとき、圧延方向Sと、被加工材mの結晶組織の配向方向n2とは実質的に平行に設定される。圧延温度は、好ましくは、室温よりも高くかつ再結晶温度よりも低い温度(温間圧延)、あるいは再結晶温度以上(熱間圧延)とするのが好ましい。これは、被加工材に応じて適宜定められる。圧延に際しては、圧下率を400〜700%、より好ましくは500〜600%とするのが望ましい。圧下率が小さいと、被加工材mの結晶を微細化するのが困難な傾向があり、逆に大きすぎると加工に困難を伴う。
【0026】
磁場で組織を配向させた後、被加工材mは急冷するか、又は変態温度よりも低い温度に下がるまで磁場を印加させておくのが望ましい。これにより結晶の配向がくずれるのを防止できる。また、フェース板1Aは、上述の各種の方法により製造された被加工材mから、例えばプレス等で所定の形状に打ち抜かれ、かつ必要によりフェースバルジ、フェースロールなどの曲げ加工を施されることにより形成しうる。また必要に応じて熱処理が行われる。
【0027】
被加工材mを急冷した場合、通常、結晶内部に歪が残っている。また、強ひずみ加工後は、非常に大きな歪が残っているため、焼鈍といった熱処理を施すことにより歪の除去(再結晶化)を行って靭性の向上などを図ることができる。なお熱処理は、微細化し得た結晶粒が肥大化しない範囲で行うことが望ましい。
【0028】
また、フェース板1Aの平均粒子径は0.5〜5μmであるが、好ましくは0.5〜3μm、より好ましくは0.5〜2μmであるのが好ましい。このような結晶組織のより一層の微細化は、強ひずみ加工ではひずみ量をさらに増大させることにより、また強磁場を用いた方法では、圧延工程での圧下率を大とすることによって、それぞれ実現することができる。特に、平均粒子径が2μm以下、より好ましくは1μm以下になると、強度の向上率が大巾に増大しうる。
【0029】
図7には、上述の種々の加工方法によって得られたSUS304(質量%でC:0.05%、Si:0.56%、Mn:0.85%、P:0.026%、Ni:0.86%、Cr:18.47%、N:0.037%、残部Fe及び不可避不純物)の被加工材から引張試験片を切り出し、これをインストロン試験機で引張試験を行った結果を示す。このグラフから明らかなように、金属材料の結晶組織の平均粒子径dが小さくなると、降伏強度、引張強度がともに増大していることが確認できる。
【0030】
本実施形態のフェース板1Aは、前記の通り、フェース部3の実質的な全域を形成するものが示されている。好ましくは、図2、図3に示すように、フェース板1Aは、厚さが大きくかつフェース面2の中央部に位置する中央厚肉部10と、この中央厚肉部10を囲む周囲に形成されかつ厚さが小さい周辺薄肉部11とを含むことが望ましい。中央厚肉部11は、例えば1.8〜2.5mm、より好ましくは2.0〜2.4mmの最大厚さTcを有することが望ましく、他方、周辺薄肉部11は、例えば1.5〜1.9mm、より好ましくは1.6〜1.8mmの最小厚さTpを有することが望ましい。特に好ましくは、(Tc−Tp)が0.3〜0.6mm程度が好ましい。このようなフェース板1Aは、ボールと直接衝突しやすいフェース中央部の強度をより一層高めることができ、またフェース周辺部においては剛性を小とすることで弾性変形を容易化しフェース板を大きく撓ませることが可能となる。従って、フェース板1Aの全体的な薄肉化との相乗作用によって、ヘッドの反発性能をより一層向上しうる。
【0031】
なお、このような厚さが異なるフェース板1Aを、実質的に厚さが一定の圧延材から形成する場合、特に限定はされないが、周辺薄肉部11を例えばエンドミルなどを用いて機械加工、より好ましくはNC機械加工することが望ましい。これにより、微細な結晶組織を損ねることなく、部分的に厚さが異なるフェース板1Aを形成できる。またNC加工とするときには、フェース板1Aの厚さなどをより精度良く加工できるため、寸法のバラツキなどを低減しうる。
【0032】
また本実施形態のフェース板1Aには、図4(A)に示すように、ヘッド本体1Bに設けられた前記各係止片9が嵌め込まれる小深さの凹部13が形成されたものが例示される。本実施形態の凹部13は、係止片9と嵌合しうる小凹みであって、該嵌合により、フェース板1Aとヘッド本体1bとの相対位置を一義的に定め、両部材を仮固定できる。従って、後の溶接工程などに際して、フェース板1Aとヘッド本体1Bとが、確実に位置合わせできるため、精度良く両部材を溶接するのに役立つ。
【0033】
また本実施形態のヘッド1では、前記仮固定状態において、ヘッド本体1Bの開口部前縁4eが、フェース面2よりも前方に突出して位置するものが例示される。クラウン部前縁部4eは、本例では前方に向かって厚さが漸減する先細状で形成される。また本実施形態では、フェース板1Aと、ヘッド本体1Bとの間には、小隙間kが形成される。この小隙間kは、本例では、フェース板1Aとの外周面と、ヘッド本体1Bの開口部Oの内周面との間で形成されているが、これに限定される訳ではない。そして、本実施形態では、溶接により、前記小隙間kを溶融金属で埋めることによって、フェース部材1Aとヘッド本体1Bとが一体に固着される。
【0034】
また本実施形態のヘッド1は、フェース板1Aと、ヘッド本体1Bとが、レーザ溶接によって固着される。図4(A)、(B)には、レーザ溶接工程の一例を示す。レーザ加工機15からのレーザビームは、フェース板1Aの外周面やヘッド本体1Bの開口部前縁部4eの近傍に照射される。レーザビームの種類は特に問わないが、例えばCO2 レーザやYAGレーザなどが好適である。また、レーザビームの出力数やビーム巾などは、溶接する金属材料の厚さなどに応じて適宜定めることができる。フェース板1Aの外周面とヘッド本体1Bの開口部前縁部4eは、それぞれ発熱によって互いに溶け出すとともに、とりわけ長さを大とした開口部前縁部4eから溶け出した溶融金属は、抵抗の少ない前記小隙間kへと流れ込み、該小隙間kを十分に満たすことができる。そして、図4(B)に示す如く、フェース板1Aとヘッド本体1Bとは、それらの境界部付近に溶融金属が盛られた肉盛部16が形成される。
【0035】
このように、レーザ溶接工程では、開口部前縁部4eの少なくとも一部を前記小隙間kに溶け込ませて溶接できる。従って、溶加材などを用いないレーザ溶接であっても、フェース面2から突出した開口部前縁部4eを小隙間kに溶け込ませることで、溶接時におけるクラウン部の「ひけ」(厚さが小さいクラウン部が溶け出すことでさらに厚さが小となること)が発生するのを抑制できる。特に開口部前縁部4eを先細状とした場合には、レーザの照射によって、この開口部前縁部4eの先端部だけを集中的に発熱させることができるから、早期に溶融化して小隙間を埋めることができ、ひけの発生をより一層防止できる。
【0036】
またレーザ溶接では、TIG溶接などに比して、周囲への溶接熱の影響を最小限に抑えうる。このため、溶接によって、フェース板1Aに形成された微細な結晶組織が粗大化することや、組織変態などを抑制し、向上し得た材料強度を損ねることなくヘッド本体1Bに固着できる。なおレーザ溶接後、溶接部の肉盛部16は、研磨等によって除去され、平滑化される。
【0037】
以上、本発明の実施形態について、ウッド型のゴルフクラブヘッドを例に挙げ説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、アイアン型やユーティリティ型などについても適用することが可能である。また微細な結晶組織を有する前記金属材料は、フェース部以外にも用いることができる。この場合、ヘッド各部をさらに薄肉化でき、ヘッド全体を低剛性化してさらに反発性能の向上を図ることが可能になる。
【0038】
【実施例】
表1の仕様に基づきウッド型のゴルフクラブヘッドを試作し、反発係数と耐久性とについてテストを行い性能を比較した。実施例のヘッドは、SUS304(質量%でC:0.05%、Si:0.56%、Mn:0.85%、P:0.026%、Ni:0.86%、Cr:18.47%、N:0.037%、残部Fe及び不可避不純物)を500℃まで加熱後、汎用圧延機で最大荷重400tにて温間圧延するとともに、圧延材をプレスで打ち抜いてフェース板材を製造した。熱処理は行っていない。フェース板は、フェース板材を、中央厚肉部が2.0mm、周辺薄肉部を1.6mmとなるようNC加工を行って製造した。また周辺薄肉部は、フェース板の外端面から5mm幅で形成した。また圧下率を変えて材料の平均粒子径を種々異ならせた。またヘッド本体は、SUS630をロストワックス精密鋳造法により図2の形状に一体形成した。そしてフェース板とヘッド本体とをレーザ溶接により固着しウッド型のヘッドを製造した。ヘッド体積は、300cm3 、ヘッド質量は190gである。またレーザ溶接は、出力450W、速度250mm/分、パルス数30ppsの条件とした。
【0039】
比較例のヘッドは、SUS304(組成は実施例と同一)を冷間(室温)で圧延するとともに、圧延材をプレスで打ち抜いてフェース板を製造した。この圧下率は70%であり、またこれにより得られた材料の平均粒子径は20.0μmであった。またヘッド本体は、実施例と同一とした。そしてフェース板とヘッド本体とをTIG溶接(比較例1)又はレーザ溶接(比較例2)により固着した。ヘッド体積、ヘッド質量、フェース板の厚さは実施例と同じである。
テスト方法は、次の通りである。
【0040】
<ヘッドの反発係数>
U.S.G.A.の Procedure for Measureing the Velocity Ratio of a Club Head for Conformance to Rule 4−1e, Revision 2 (February 8, 1999) に基づき行った。0.840以上を「○」、0.830以上かつ0.840未満を「△」、0.830未満を「×」として評価した。
【0041】
<ヘッドの耐久性>
各供試ヘッドにFRP製の同一のシャフト(ダンロップ社製V−24 フレックスX)を装着して45インチのウッド型ゴルフクラブを試作するとともに、該クラブをミヤマエ社製のスイングロボットに取り付け、ヘッドスピード54m/sでゴルフボールを各クラブ毎に3000球づつ打撃し、フェース面の凹みを測定した。なお打点の位置は、スイート面の中心(面積重心)とした。評価は、3000発打撃後のフェース面の凹みが0.10mm未満を「○」、同0.10mm以上を「△」、3000発未満でフェースが損傷したものを「×」とした。テストの結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
テストの結果、実施例のものは、比較例と比べ耐久性を損ねることなしに反発性を向上していることが確認できる。特に実施例3、4のように、平均粒子径が2μm以下のものが、特に優れた効果を発揮していることが確認できる。
【0044】
【発明の効果】
上述したように、請求項1ないし2記載の発明では、微細な結晶組織を有する金属材料をフェース部に用いているため、フェース強度を高めることができる。従って、従来に比してさらなる薄肉化が可能となるため、耐久性を損ねることなく反発性能の向上を図ることができる。
【0045】
また請求項3記載の発明のように、フェース板とヘッド本体とをレーザ溶接で固着したときには、TIG溶接などに比べてフェース板の加熱部分が小さな範囲で足りるため、微細結晶組織の変態などを防止し、強度特性などの劣化を防止できる。
【0046】
また請求項4記載の発明のように、前記金属材料は、Fe系合金でありかつ前記平均粒子径が0.5〜3μmであるときには、コストを低減でき、しかもより一層フェース強度を向上できる。
【0047】
また請求項5ないし6記載の発明によって、微細な結晶組織を有する金属材料を確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すヘッドの斜視図である。
【図2】その分解図である。
【図3】ヘッドのフェース面と直角な断面図である。
【図4】(A)、(B)は、フェース板とヘッド本体との接合方法を説明する部分断面図である。
【図5】(A)、(B)は、強ひずみ加工の一例を示す略図である。
【図6】(A)、(B)は、フェース板を製造する工程を説明する略図である。
【図7】引張強度、降伏強度と平均粒子径との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ゴルフクラブヘッド
1A フェース板
1B ヘッド本体
2 フェース面
3 フェース部
4 クラウン部
5 ソール部
6 サイド部
Claims (6)
- フェース部の少なくとも一部が、平均粒子径が0.5〜5μmの微細結晶組織を有する金属材料からなることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
- 前記金属材料からなるフェース板と、該フェース板を前面に配するヘッド本体とが固着されてなる請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記固着は、レーザ溶接であることを特徴とする請求項2記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記金属材料は、Fe系合金でありかつ前記平均粒子径が0.5〜3μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記金属材料は、熱間又は温間で強ひずみ加工されることにより形成されてなる請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記金属材料は、Fe系合金であり、かつ強磁場中の相変態により結晶を配向させる工程と、
前記配向方向に沿って圧延する工程とを含んで製造されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
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