JP2004304969A - 電線把持器 - Google Patents

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Kiyoshi Miyata
清 宮田
Masaya Ishimoto
雅也 石本
Koichi Tanigawa
幸一 谷川
Kazunori Tamaoki
員規 玉置
Hiromoto Yuda
浩基 湯田
Shinya Wada
臣哉 和田
Kouji Tsubooka
光司 坪岡
Hideo Nouchi
秀男 野内
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Kansai Electric Power Co Inc
Nagaki Seiki Co Ltd
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Kansai Electric Power Co Inc
Nagaki Seiki Co Ltd
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Abstract

【課題】芯線に殆どダメージを与えることなく、且つ細い電線であっても芯線を効果的に抜け止めして把持でき、小形化しながらも電線に対して大きな把持力を作用させることのできる電線把持器を提供する。
【解決手段】嵌合溝14,17の少なくとも一方に形成された係止小片19は、電線54の径よりも小さい長さを有する長方形のチップ状の上端部に先鋭形状の歯部19aが形成され、且つ歯部19aが電線54の芯線54aに対応した曲率半径の弧状に凹んだ形状を有しているとともに、嵌合溝14,17の溝長さ方向に対し直交する配置で、嵌合溝14,17の溝面からの突出長が電線54の絶縁被覆層54bの厚みよりも僅かに大きく設定して設けられている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、活線振分装置や張線装置などに好適に適用されて、活線や電線などの電線を把持する用途に使用される電線把持器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電線の振り分け工事などを行うに際しては、伸縮自在の棒状となった装置本体の両端部に電線把持器を固定した活線振分装置を用いて、両側の電線把持器によって電線の2箇所をそれぞれ把持したのち、装置本体を縮小させて両電線把持器を互いに近接させることにより、電線を両電線把持器で両側から引き寄せて両電線把持器の間で弛ませている。このように、電線を2箇所で把持してその間の部分を弛ませることにより、その後の作業、例えば電線の弛ませた箇所を切断したのちに振り分ける作業を容易に行えるようにしている。また、電線振り分け工事などを無停電で行うために、電線は通電状態の活線のまま切断して振り分けられる。
【0003】
ところで、現在において一般的に使用されている電線は、銅線などの複数本の素線を撚った撚線からなる芯線をビニールなどの絶縁被覆層で覆った形態となっているが、各素線と絶縁被覆層との密着度は差ほど高いものではない。そのため、上記従来の電線把持器の一対の掴線部で電線を把持して引っ張った状態のまま2〜3日放置しておくような場合に、例えばトラックが電柱に衝突するなどの何らかの原因で電線把持器に衝撃力が加わると、電線が落下するといったトラブルが発生することがあった。すなわち、電線把持器は、一対の掴線部の各々の嵌合溝における鋸歯状となった溝面を上記絶縁被覆層に食い込ませて電線を強固に把持しているで、上述のような衝撃力を受けたときに、電線の絶縁被覆層には各素線に比較して格段に大きなショックが加わるために、絶縁被覆層が恰も剥ぎ取られるように引き千切られてしまい、電線が各素線から抜け出てしまい、一対の掴線部から外れて落下する。
【0004】
そこで、上記のようなトラブルを防止するために、従来では、電線を引っ張った状態で2〜3日放置しておくような場合には、電線における電線把持器で把持する箇所の絶縁被覆層を剥ぎ取り、電線把持部の一対の掴線部で素線を直接把持させるようにしていた。しかし、電線振分装置には上述のように両側にそれぞれ電線把持器を備えているので、電線の把持すべき2箇所の絶縁被覆層に対し寸法を測って所要長さだけ剥ぎ取る煩雑な作業を必要としていた。さらに、電線の振り分け工事の終了後には、電線の絶縁被覆層を剥ぎ取った箇所を丁寧に修復する必要があり、非常に面倒である。しかも、長時間において雨風にさらされると、修復箇所から雨水が浸入して漏電するおそれもある。
【0005】
そこで、従来では、絶縁被覆層を剥ぎ取る作業を不要としながらも、電線の把持状態で保持できる電線把持器が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。この電線把持器は、電線への取付状態および電線を把持した状態の正面図をそれぞれ示した図6および図7のような構成を有している。すなわち、この電線把持器は、引っ張り手段に連結されて図示矢印の一方向への引っ張り力を付与される連結部材50と、所定の間隔で並設されて各々の一端部を連結部材50の基端部に回動自在に連結された略く字形状の一対の作動部材51A,51Bと、この両作動部材51A,51Bの他端部に対し跨がる配置でそれぞれ回動自在に連結された固定側掴線部52と、両作動部材51A,51Bの各々の折曲部位に対し跨がる配置でそれぞれ回動自在に連結された可動側掴線部53とを主構成要素として構成されている。
【0006】
両掴線部52,53の対向面には、それぞれ被覆電線のような電線54を嵌まり込ませることのできる断面半円形状の嵌合溝(図示せず)が凹設されており、下方側の可動側掴線部53の溝面には、先端部が鋭利な円錐形状となったピンからなる2本の係止部57が固定側掴線部52の嵌合溝に向けて突出する配置で固定されている。
【0007】
上記電線把持器により電線54を把持するに際しては、先ず、図6に示すように、固定側掴線部52の嵌合溝に電線54の上面部分を嵌まり込ませる状態で電線54上に載置して、電線54に吊り下げ状態に取り付ける。つぎに、連結部材50が引っ張り手段によって図の矢印方向に引っ張られることにより、図7に示すように、両作動部材51A,51Bが固定側掴線部52の支軸58を支点として回動され、この両作動部材51A,51Bの折曲部位に跨がって枢着されている可動側掴線部53が図の左斜め上方に向け押し上げられて、この可動側掴線部53の嵌合溝から突出した係止部57が、電線54の絶縁被覆層を貫通して芯線に食い込んでいくとともに、両掴線部52,53が電線54を上下から挟み付けて把持する。
【0008】
図7の電線54の把持状態において、引っ張り手段が矢印で示す方向に電線把持器を引っ張ると、両掴線部52,53で把持された電線54が図の左方に引っ張られる。この電線54を引っ張った状態で2〜3日の間放置しておくときに、何らかの原因で電線把持器に対し衝撃力が加わった場合には、係止部57が絶縁被覆層を貫通して一部の素線に食い込んでいるため、両掴線部52,53の間から電線54が抜け出るといったトラブルの発生を防止する。また、この電線把持器では、電線54の絶縁被覆層を剥ぎ取り、且つ工事終了後に丁寧に修復するといった従来の煩雑な作業を解消できる。
【0009】
【特許文献1】
特許第2948786号公報
【0010】
【特許文献2】
特許第3015352号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記電線把持器には、さらなる改善を必要とする課題が残存している。すなわち、上記電線把持器では、両掴線部52,53の間からの電線54の抜け止め手段として、先端部が鋭利な円錐形状となったピンからなる2本の係止部57を電線54の絶縁被覆層を貫通して素線に食い込ませており、この抜け止め手段では、係止部57を素線に対しその径の1/3程度まで食い込ませないと、所期の効果を得られない。一般に、素線は径の1/2以内の深さの傷であれば、安全に使用できることが知られているが、素線に対し損傷による比較的大きなダメージを与えることから、好ましい抜け止め手段とは言い難い。しかも、素線が細い場合には、係止部を素線に確実に食い込ませることが難しくなり、ピンからなる係止部が複数本の素線の間に入り込んで十分な抜け止め力を得られないおそれがある。
【0012】
一方、上記電線把持器では、可動側掴線部53が、一対の作動部材51A,51Bの各一端部と連結部材50とを回動自在に連結する枢軸59が両作動部材51A,51Bの力点となり、両作動部材51A,51Bの各他端部と固定側掴線部52とを回動自在に連結する支軸58が両作動部材51A,51Bの回動支点となり、可動側掴線部53と両作動部材51A,51Bとを回動自在に連結する枢軸60が作用点となり、両作動部材51A,51Bにおける力点と作用点との中間位置に作用点が設けられた構造になっている。
【0013】
したがって、可動側掴線部52を斜め上方へ押し上げるモーメントは、連結部材50に対する引っ張り力よりも低くなる、つまり連結部材50に付与する入力側トルクと可動側掴線部53に発生する出力側トルクとのトルク比が「1」以下となり、両掴線部52,53による電線54に対する把持力は比較的小さい。この電線54に対する把持力を大きく設定すれば、電線把持器の全体形状が大型化して取り扱いが悪くなり、作業性が低下する。また、上記電線把持器では、その構造上、図7に示すように力点(枢軸59)と作用点(枢軸60)とが鉛直線上に位置する状態になると、これから以降は、連結部材50の引っ張り力が可動側掴線部53の押し上げ力として効果的に作用しないので、電線54が細いものである場合には、この電線54を確実に把持することができない。
【0014】
そこで、本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、芯線に殆どダメージを与えることなく、且つ細い電線であっても芯線を効果的に抜け止めして把持でき、小形化しながらも電線に対して大きな把持力を作用させることのできる電線把持器を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、一発明に係る電線把持器は、先端部が引っ張り手段に連結される連結部材と、この連結部材の基端部に作動可能に連結された作動部材と、この作動部材の前記連結部材に対する一方向への作動により互いに近接して電線を把持するとともに前記作動部材の前記連結部材に対する他方向への作動により互いに離間する一対の掴線部と、前記両掴線部の対向面にそれぞれ形成されて電線を両側から挟み付ける嵌合溝と、前記両嵌合溝の少なくとも一方に形成された係止小片とを備えてなり、前記係止小片は、前記電線の径よりも小さい長さを有する長方形のチップ状の上端部に先鋭形状の歯部が形成され、且つ前記歯部が電線の芯線に対応した曲率半径の弧状に凹んだ形状を有しているとともに、前記嵌合溝の溝長さ方向に対し直交する配置で、前記嵌合溝の溝面からの突出長が前記電線の絶縁被覆層の厚みよりも僅かに大きく設定して設けられていることを特徴としている。
【0016】
この電線把持器では、係止小片は、芯線の外周面に対応した曲率半径で湾曲した直線状の歯部が芯線の軸線に対し直交方向に食い込んでいることから、従来の電線把持器に設けられている円錐形状のピンからなる係止部に比較して格段に大きな抑止力が芯線に対し作用するので、電線を引っ張った状態で2〜3日の間放置しておくときに、何らかの原因で電線把持器に対し衝撃力が加わった場合には、芯線に僅かに食い込んでいる各係止小片が両掴線部から電線が抜け出るのを確実に防止することができるから、両掴線部の間から電線が抜け出るといったトラブルが発生するおそれがない。また、係止小片は、その歯部を芯線に僅かに食い込ませるだけで大きな抑止力を発揮するので、ピンからなる係止部のように芯線の素線に対し径の1/3程度まで食い込ませる場合に比較して、芯線に与えるダメージを軽減できる。さらに、この電線把持器を用いる場合には、電線の絶縁被覆層を剥ぎ取り、且つ工事終了後に丁寧に修復するといった煩雑な作業が不要となる。
【0017】
他の発明に係る電線把持器は、先端部が引っ張り手段に連結された連結部材と、所定の間隔で並設されて、各々の一端部が前記連結部材の基端部に回動自在に連結された略く字形状の一対の作動部材と、前記両作動部材の各々の中間の折曲部位が支軸を介して回動自在に連結された取付部材と、前記取付部材が固着された固定側掴線部と、前記固定側掴線部に相対向するよう配置されて、両端部が前記両作動部材の各々の他端部に回動自在に取り付けられた可動側掴線部とを備えてなり、前記両掴線部の対向面に、電線の両側部分をそれぞれ嵌まり込ませる嵌合溝が形成されていることを特徴としている。
【0018】
この電線把持器では、支軸を支点として回動するレバーである両作動部材が、これの上端に枢着された可動側掴線部を押し上げるように作用するので、両作動部材のレバー比を大きく設定すれば、連結部材に作用する引っ張り力の数倍の作動が可動側掴線部に発生し、両掴線部によって電線を極めて高い把持力で挟み付けることができる。しかも、連結部材の移動量に対する可動側掴線部の運動量は、従来の電線掴持器の可動側掴線部よりも小さいので、小形化しながらも大きな掴持力を得ることができる。しかも、両作動部材は、電線を掴持した状態において、連結部材の引っ張り力を受けて作用点が支点である支軸に対し鉛直線上に位置するまで回動付勢力を受ける余力があるので、径の小さな電線であっても、確実に掴持できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1および図2はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る電線把持器を示す正面図で、図1は電線へ吊り下げて仮取り付けした状態、図2は電線を把持した状態をそれぞれ示す。この電線把持器1は、後述の引っ張り手段への連結部3を先端部に有する連結部材2と、所定の間隔で並設されて各々の一端部が連結部材2の基端部に回動自在に連結された略く字形状の一対の作動部材4A,4Bと、この両作動部材4A,4Bの各々の他端部に対し跨がる配置でそれぞれ回動自在に連結された可動側掴線部7と、略U字形状の取付部材9が固着された固定側掴線部8とを主構成要素として構成されている。
【0020】
両作動部材4A,4Bは、略く字形状における折曲部位が支軸10を介して取付部材9に回動自在に取り付けられており、支軸10を支点に回動するレバーとして機能するものである。したがって、上記電線把持器1は、両作動部材4A,4Bの各一端部と連結部材2とを回動自在に連結する枢軸11が力点となり、可動側掴線部7と両作動部材4A,4Bの各他端部とを回動自在に連結する枢軸12が作用点となる構成を有している。なお、取付部材9は両端部を固定ねじ13によって固定側掴線部8に固着されている。
【0021】
図4は図2の状態における左側面図である。同図において、両掴線部7,8の対向面には、それぞれ電線54の外周面に対応した曲率半径の弧形状の断面形状を有する嵌合溝14,17が凹設されており、両掴線部7,8は電線54を両嵌合溝14,17間に嵌め込んで上下から挟み付けるように把持する。固定側掴線部8の嵌合溝17の溝面は、図示していないが、従来の電線把持器と同様に鋸歯状に形成されて、電線54の絶縁被覆層54bに食い込むようになっている。
【0022】
可動側掴線部7の嵌合溝14の溝面には、図3の斜視図に示すように、4個の係止小片19を平行に配設してなる3つの係止ユニット18が溝長さ方向に間隔を存して設けられている。各係止小片19は、電線54の径よりも小さい長さを有する長方形のチップ状の上端部に先鋭形状の歯部19aが形成され、その歯部19aが電線54の芯線54aに対応した曲率半径の弧状に凹んだ形状になっている。この係止小片19は、嵌合溝14の溝長さ方向に対し直交する配置で、嵌合溝14の溝面からの突出長が電線54の絶縁被覆層54bの厚みよりも僅かに大きく設定して設けられている。なお、両掴線部7,8の各々の嵌合溝14,17の一端部(図1および図2の左端)には、電線54を容易に嵌入するために、外方へ向け弧状に湾曲した導入ガイド部14a,17aが設けられている。
【0023】
また、図1および図2に示すように、固定側掴線部8における取付部材9の取付面とは反対側の面(図の手前側の面)には、脱落防止カバー20が枢ピンを支点として回動自在に取り付けられている。この脱落防止カバー20のガイド孔22には、固定側掴線部8に固設されたガイドピン23が摺接自在に挿通されている。したがって、脱落防止カバー20は図1の状態において操作片24を押し下げ操作されると、ガイド孔22の孔縁部がガイドピン23に摺接してガイドされながら枢ピン21を支点に下方に回動する。
【0024】
つぎに、上記電線把持器1の作用について説明する。先ず、電線把持器1を、図1に示すように、把持すべき電線54に吊り下げ状態に取り付ける。その場合、電線把持器1は、連結部材2を固定側掴線部8に対し図示矢印と反対方向に移動させて、両掴線部7,8を離間させた状態としておく。この状態において、両掴線部7,8間に電線54を挿通させるよう位置させたのち、この電線54の上面部分を固定側掴線部8の嵌合溝17内に嵌入させて、固定側掴線部8を電線54上に載置し、電線把持器1を電線54に吊り下げ状態に取り付ける。
【0025】
続いて、図2に示すように、操作片24を押し下げ操作することにより、脱落防止カバー20を下方に回動させて両掴線部7,8の間に跨がるように位置させる。これにより、上下に位置する両掴線部7,8と、前後に位置する脱落防止カバー20および取付部材9とにより、電線54の周囲を取り囲む状態となるので、電線把持器1は、以後の作業時に電線54から脱落することのない状態に取り付けられたことになる。
【0026】
つぎに、連結部材2の連結部3に連結した引っ張り手段を作動させて連結部材2を図2の矢印方向に引っ張る。この連結部材2が引っ張られていくのに伴って両作動部材4A,4Bが固定側掴線部8に固定の取付部材9の支軸10を支点として図の時計方向回りに回動されていく。このとき、両作動部材4A,4Bの折曲部位に跨がって枢着されている可動側掴線部7は、斜め上方に押し上げられていき、この可動側掴線部7の嵌合溝14から突出している計12本の係止小片19の歯部19aは、図4に示すように、電線54の絶縁被覆層を貫通して、芯線54aにおける最も下方に位置する素線に対して僅かに食い込むとともに、両掴線部7,8が電線54を上下から挟み付けて掴持する。
【0027】
上記の電線54の掴持状態において、引っ張り手段が電線把持器1をさらに図の左方に引っ張ると、両掴線部7,8で掴持された電線54が図の左方に引っ張られる。
【0028】
上記の電線54を引っ張った状態で2〜3日の間放置しておくときに、何らかの原因で電線把持器1に対し衝撃力が加わった場合には、芯線に僅かに食い込んでいる各係止小片19が両掴線部7,8から電線54が抜け出るのを防止する。すなわち、各係止小片19は、芯線の外周面に対応した曲率半径で湾曲した直線状の歯部19aが芯線の軸線に対し直交方向に食い込んでいることから、従来の電線把持器に設けられている円錐形状のピンからなる係止部に比較して格段に大きな抑止力が芯線に対し作用するので、両掴線部7,8の間から電線54が抜け出るといったトラブルを一層確実に防止することができる。また、係止小片19は、その歯部19aを芯線に僅かに食い込ませるだけで大きな抑止力を発揮するので、ピンからなる係止部のように芯線の素線に対し径の1/3程度まで食い込ませる場合に比較して、芯線に与えるダメージを軽減できる。さらに、この電線把持器1を用いる場合には、電線54の絶縁被覆層54bを剥ぎ取り、且つ工事終了後に丁寧に修復するといった煩雑な作業が不要となる。
【0029】
さらに、上記電線把持器1では、支軸10を支点として回動するレバーである両作動部材4A,4Bが、これの上端に枢着された可動側掴線部7を押し上げるように作用するので、両作動部材4A,4Bのレバー比を大きく、つまり支軸10から力点である枢軸11までの長さと支軸10から作用点となる枢軸12までの長さとの比を大きく設定すれば、連結部材2に作用する引っ張り力の数倍の押し上げ力が可動側掴線部7に発生し、両掴線部7,8によって電線54を極めて高い把持力で挟み付けることができる。しかも、連結部材2の移動量に対する可動側掴線部7の運動量は、図6および図7に示した従来の電線掴持器の可動側掴線部53よりも小さいので、小形化しながらも大きな掴持力を得ることができる。
【0030】
しかも、図2に示す電線54を掴持した状態において、両作動部材4A,4Bは、連結部材2の引っ張り力を受けて作用点である枢軸12が支点である支軸10に対し鉛直線上に位置するまで回動付勢力を受ける余力があるので、径の小さな電線54であっても、確実に掴持できる。これに対し、図6および図7に示す従来の電線把持器では、図7に示す電線54を掴持した状態において、作用点である枢軸60が支点である支軸58に対し連結部材50の引っ張り方向側に位置しているため、連結部材50の引っ張り力が可動側掴線部53の押し上げ力として殆ど作用しない。
【0031】
図5は上記電線把持器1を適用して構成した電線振分装置27を示す正面図である。この電線振分装置27は、棒状の装置本体28の両端部に連結具を介在して本発明の電線把持器1をそれぞれ取り付けて構成されている。なお、右側用の電線把持器1は上述の実施の形態のものと同一であり、左側用の電線把持器1は、連結部材2、作動部材4A,4Bおよび両掴線部7,8の位置関係を右側用に対し前後入れ換えて左右対称に配置替えしたものであって、実質的に右側用のものと同一である。装置本体28には、中央部に把持部30が設けられ、この把持部30の両側に絶縁部材31を介して絶縁鍔部32が形成されている。
【0032】
さらに、装置本体28には、各絶縁鍔部32の外方箇所に電線54を挿通させて支持するための棒状の電線支持具33が取り付けられている。装置本体28の内部には、図示していないが、送りねじなどからなる伸縮機構が装備されており、この伸縮機構にはハンドル軸から傘歯車を介して駆動力が与えられるようになっている。装置本体28における図の左側の電線支持具33の外方箇所には、上記のハンドル軸に外部から回転力を伝達するための動力接続部が設けられている。
【0033】
上記の電線振分装置27は、電線54を通電した活線の状態で工事を行う場合に、配線作業用マニピュレータ(ロボット)の一対の爪部材からなるチャッキング部により把持部30を掴ませて、両側の電線把持器1を電線54に吊り下げ状態に取り付ける。そののちに、上述した電線把持器1の操作と同様にして、脱落防止カバー20を下方に回動させて電線54から脱落しない状態とし、マニピュレータが動力接続部34のハンドル軸に動力源を接続すると、この動力が装置本体28に内装された傘歯車を介して送りねじに伝達され、装置本体28が縮小する。それにより、両側の電線把持器1が電線54を両側から引き寄せながら互いに近接方向に移動されるので、電線54は両電線支持具33の間で弛ませられ、この電線54の弛ませた箇所を切断して振り分け工事などが行われる。
【0034】
【発明の効果】
以上のように一発明に係る電線把持器によれば、係止小片は、芯線の外周面に対応した曲率半径で湾曲した直線状の歯部が芯線の軸線に対し直交方向に食い込んでいることから、従来の電線把持器に設けられている円錐形状のピンからなる係止部に比較して格段に大きな抑止力が芯線に対し作用するので、電線を引っ張った状態で2〜3日の間放置しておくときに、何らかの原因で電線把持器に対し衝撃力が加わった場合には、芯線に僅かに食い込んでいる各係止小片が両掴線部から電線が抜け出るのを確実に防止することができるから、両掴線部の間から電線が抜け出るといったトラブルが発生するおそれがない。また、係止小片は、その歯部を芯線に僅かに食い込ませるだけで大きな抑止力を発揮するので、ピンからなる係止部のように芯線の素線に対し径の1/3程度まで食い込ませる場合に比較して、芯線に与えるダメージを軽減できる。さらに、この電線把持器を用いる場合には、電線の絶縁被覆層を剥ぎ取り、且つ工事終了後に丁寧に修復するといった煩雑な作業が不要となる。
【0035】
また、他の発明に係る電線把持器によれば、支軸を支点として回動するレバーである両作動部材が、これの上端に枢着された可動側掴線部を押し上げるように作用するので、両作動部材のレバー比を大きく設定すれば、連結部材に作用する引っ張り力の数倍の作動が可動側掴線部に発生し、両掴線部によって電線を極めて高い把持力で挟み付けることができる。しかも、連結部材の移動量に対する可動側掴線部の運動量は、従来の電線掴持器の可動側掴線部よりも小さいので、小形化しながらも大きな掴持力を得ることができる。しかも、両作動部材は、電線を掴持した状態において、連結部材の引っ張り力を受けて作用点が支点である支軸に対し鉛直線上に位置するまで回動付勢力を受ける余力があるので、径の小さな電線であっても、確実に掴持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電線把持器を示す電線への仮取り付け態の正面図。
【図2】同上の電線把持器の電線を把持した状態の正面図。
【図3】同上の電線把持器における可動側掴線部を示す斜視図。
【図4】図2の状態における拡大左側面図。
【図5】上記電線把持器を適用した電線振分装置を示す正面図。
【図6】従来の電線把持器を示す電線への仮取り付け態の正面図。
【図7】同上の電線把持器の電線を把持した状態の正面図。
【符号の説明】
1 電線把持器
2 連結部材
4A,4B 作動部材
7 可動側掴線部
8 固定側掴線部
9 取付部材
10 支軸
14,17 嵌合溝
19 係止小片
19a 歯部
54 電線
54a 芯線
54b 絶縁被覆層

Claims (2)

  1. 先端部が引っ張り手段に連結される連結部材と、
    この連結部材の基端部に作動可能に連結された作動部材と、
    この作動部材の前記連結部材に対する一方向への作動により互いに近接して電線を把持するとともに前記作動部材の前記連結部材に対する他方向への作動により互いに離間する一対の掴線部と、
    前記両掴線部の対向面にそれぞれ形成されて電線を両側から挟み付ける嵌合溝と、
    前記両嵌合溝の少なくとも一方に形成された係止小片とを備えてなり、
    前記係止小片は、前記電線の径よりも小さい長さを有する長方形のチップ状の上端部に先鋭形状の歯部が形成され、且つ前記歯部が電線の芯線に対応した曲率半径の弧状に凹んだ形状を有しているとともに、前記嵌合溝の溝長さ方向に対し直交する配置で、前記嵌合溝の溝面からの突出長が前記電線の絶縁被覆層の厚みよりも僅かに大きく設定して設けられていることを特徴とする電線把持器。
  2. 先端部が引っ張り手段に連結された連結部材と、
    所定の間隔で並設されて、各々の一端部が前記連結部材の基端部に回動自在に連結された略く字形状の一対の作動部材と、
    前記両作動部材の各々の中間の折曲部位が支軸を介して回動自在に連結された取付部材と、
    前記取付部材が固着された固定側掴線部と、
    前記固定側掴線部に相対向するよう配置されて、両端部が前記両作動部材の各々の他端部に回動自在に取り付けられた可動側掴線部とを備えてなり、
    前記両掴線部の対向面に、電線の両側部分をそれぞれ嵌まり込ませる嵌合溝が形成されていることを特徴とする電線把持器。
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