JP2004303434A - 低融点ガラスのパターンニング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】研磨材を繰り返し用いた場合でも歩どまりの悪化を抑制する低融点ガラスのパターニング方法を提供する。
【解決手段】基板上に低融点ガラスペースト4aを塗布して乾燥させ、乾燥させる温度より高く低融点ガラスの転移温度より低い温度で低融点ガラスペースト4aを焼成する前焼成を行い、レジスト膜5の形成されていない部分の低融点ガラスペースト4aをサンドブラスト法により研削してパターンニングし、低融点ガラスの転移点以上で当該パターニングされた低融点ガラスペーストを焼成する後焼成をしているので、前焼成により低融点ガラスペースト4を構成する有機物質のうち主にバインダーが減少若しくは完全になくなり、直接低融点ガラスペースト4とに衝突して研削した研磨材6の表面に有機物質が付着することが少なくなり、安定した隔壁を形成することができる。
【選択図】 図4
【解決手段】基板上に低融点ガラスペースト4aを塗布して乾燥させ、乾燥させる温度より高く低融点ガラスの転移温度より低い温度で低融点ガラスペースト4aを焼成する前焼成を行い、レジスト膜5の形成されていない部分の低融点ガラスペースト4aをサンドブラスト法により研削してパターンニングし、低融点ガラスの転移点以上で当該パターニングされた低融点ガラスペーストを焼成する後焼成をしているので、前焼成により低融点ガラスペースト4を構成する有機物質のうち主にバインダーが減少若しくは完全になくなり、直接低融点ガラスペースト4とに衝突して研削した研磨材6の表面に有機物質が付着することが少なくなり、安定した隔壁を形成することができる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サンドブラスト法による低融点ガラスのパターニング方法に関し、特にサンドブラストする前に焼成を行う低融点ガラスのパターニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のサンドブラスト法による低融点ガラスのパターニング方法としては、特開平2−301934号公報に記載されるものがあり、以下図13に基づいて説明する。この第1の従来技術は、パネル外囲器となるガラス基板101の表面上に硬質絶縁性の透明緩衝層103とその緩衝層103上に隔壁形成用の絶縁層104を塗着形成する第1の工程と、この絶縁層104上に放電セル画定用のマスクパターン105を形成する第2の工程と、このマスクパターン105を介して露出する前記絶縁層部分104のみをサンドブラストにより研削除去して前記緩衝層103上に個々の放電セルを画定する隔壁104cを形成する第3の工程とを含み構成されるものである。詳細には、第1の工程において透明緩衝層103がペースト状の絶縁材料を塗布し、乾燥後、600[℃]程度で熱処理を行って形成され、この形成された透明緩衝層103は研削のストッパー層として機能させるために隔壁形成用の絶縁層よりも約1.5〜2.0倍程度の硬度を有する。また、同工程において隔壁形成用の絶縁層104を塗布し、乾燥及び600[℃]程度の焼成温度で熱処理を行って形成され、この形成された隔壁形成用の絶縁層104は20〜100[μm]の膜厚となる。このように第1の従来の低融点ガラスのパターニング方法は、研削する前にすでに低融点ガラスに対する焼成は完了しているので、研削する場合に既に焼成され形成された隔壁形成用の絶縁層104が固く、研削の効率が悪い。
【0003】
この第1の従来技術に対してもう一つの特開平3−294180号公報に記載された図14に示す第2の従来技術は、基板201上に全面的に低融点ガラス層を形成し、この低融点ガラス層表面を所定パターンを有するレジスト膜で被覆保護した上でサンドブラスト装置でこの低融点ガラスに所定パターンを形成させ焼成を行うものである。詳細には、低融点ガラス層の形成は、基材表面に低融点ガラスペーストを塗布し乾燥固化させることで行っている。したがって、第2の従来技術は低融点ガラスペーストを塗布し乾燥固化した後にパターン形成し焼成を行っており、焼成する前に乾燥のみ行い焼成は行っていなく、低融点ガラスペースト層はパターン形成中においてさほど硬くなく、研削の効率もよい。
【0004】
【特許文献1】特開平2−301934号公報
【0005】
【特許文献2】特開平3−294180号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記第2の従来技術は、以上のように構成され、前述したように第1の従来技術と比べても切削の効率はよいが、研磨材で研削する前に低融点ガラスペーストに対しては乾燥させるのみであり、乾燥させたても表面部分のみ乾燥され内部の低融点ガラスペーストは依然エチルセルロース、有機バインダー及び有機溶剤(乾燥により有機溶剤は略消失しているが少なからず残存している可能性がある。)からなる有機物質が残留しており、この状態の低融点ガラスペーストに対してパターン形成するために研磨材を射出すると低融点ガラスペーストに衝突した研磨材に有機物質が付着し、研磨材を繰り返し用いた場合には、この有機物質を介して研磨材同士が凝集し巨大な凝集粒子を形成していき、射出する研磨材として想定していない巨大な凝集粒子が研磨材として射出され、レジスト膜を破壊して所定のパターン形成をすることができず、研磨材の使用時間が長くなればなるほど歩どまりが悪くなるという課題を有する。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、研磨材を繰り返し用いた場合でも研磨材に有機物質を付着させることを抑制し巨大な凝集粒子を生じないようにし、長時間の研磨材の使用による歩どまりの悪化を抑制する低融点ガラスのパターニング方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る低融点ガラスのパターンニング方法は、基板上に低融点ガラスペーストを塗布して当該低融点ガラスペーストの有機溶媒を蒸発させるための乾燥を行い、当該乾燥の温度より高く低融点ガラスの転移温度より低い温度で低融点ガラスペーストを焼成する前焼成を行い、焼成した低融点ガラスペースト上に所定のパターン形状に対応したサンドブラスト用マスクを形成し、当該マスクの形成されていない部分の低融点ガラスペーストをサンドブラスト法により研削してパターンニングし、低融点ガラスの転移点以上で当該パターニングされた低融点ガラスペーストを焼成する後焼成を行うものである。このように本発明においては、基板上に低融点ガラスペーストを塗布して乾燥させ、乾燥させる温度より高く低融点ガラスの転移温度より低い温度で低融点ガラスペーストを焼成する前焼成を行い、焼成した低融点ガラスペースト上に所定のパターン形状に対応したサンドブラスト用マスクを形成し、当該マスクの形成されていない部分の低融点ガラスペーストをサンドブラスト法により研削してパターンニングし、低融点ガラスの転移点以上で当該パターニングされた低融点ガラスペーストを焼成する後焼成をしているので、乾燥により低融点ガラスペーストを構成する有機溶媒が消失し、前焼成により低融点ガラスペーストを構成する有機物質のうち主にバインダーが減少若しくは完全になくなり、このバインダーが減少した状態の低融点ガラスペーストに対して研磨材を射出して研削しており、直接低融点ガラスペーストとに衝突して研削した研磨材の表面に有機物質が付着することが少なくなり、特に、有機物質が完全になくなった場合には全く研磨材に有機物質が付着することがなく、このように有機物質の付着が少なくなり金属研磨材を再使用することができ、前記サンドブラスト加工装置等で繰り返し循環させて研磨材を使用した場合でも安定した隔壁を形成することができ、PDPの歩どまりをよくすることができる。ただし、有機物質が完全になくなった、すなわち、バインダーがない状態では、低融点ガラス相互間を結合するものがなくなり結合が著しく弱くなるため、不安定になることに留意する必要がある。したがって、バインダーの残存に係るもの例えば残存率を指標として前焼成を終了させることで最適な前焼成をすることもできる。バインダーとしてはエチルセルロース等の樹脂が該当し、有機溶媒としてはアルコール類が該当する。また、乾燥と前焼成とを一連の工程として例えば同一炉ですることも可能であるが、有機溶媒を消失させる乾燥段階で前焼成レベルの温度にすると、有機溶媒の気化する場合に低融点ガラスペーストに気泡を形成することがあるので留意しなければならない。
【0009】
また、本発明に係る低融点ガラスのパターンニング方法は必要に応じて、サンドブラスト法が50度以下の安息角の研磨材を用いて研削するものである。このように本発明においては、研磨材の安息角が50度以下であるので、粒子自体の流動性が良いため有機物質が付着した場合においても、この有機物質が介在して研磨材同士を結合させることも減少し欠陥が生じ難い安定したPDPを生産することができる。
【0010】
また、本発明に係る低融点ガラスの低融点ガラスのパターンニング方法は必要に応じて、有機溶媒を乾燥させるための乾燥と前焼成を同一装置で行うものである。このように本発明においては、有機溶媒を乾燥させるための乾燥と前焼成を同一装置で行うので、乾燥後から前焼成前までに基板を移動させる必要がなく、迅速に乾燥から前焼成を行えると共に、基板の移動がないため移動中の基板温度の低下がなくなり前焼成にかかる時間をも短縮することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
(本発明の第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る低融点ガラスペーストのパターニング方法について、図1ないし図7に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る低融点ガラスペースト塗布後の背面基板の一部断面図及び低融点ガラスペーストの積層状態のモデル図、図2は本実施形態に係る前焼成後の背面基板の一部断面図及び低融点ガラスペーストの積層状態のモデル図、図3は本実施形態に係るサンドブラスト加工装置の概念図、図4は本実施形態に係る研削時の背面基板の一部断面図、図5は本実施形態に係る研削後の背面基板の一部断面図、図6は本実施形態に係る後焼成後の背面基板の一部断面図、図7は本実施形態に係る欠陥発生率と前焼成相対温度との関係を示すグラフを示す。
【0012】
本実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法は、基板上に低融点ガラスペーストを塗布し、低融点ガラスの転移点以下で低融点ガラスペーストを焼成する前焼成を行い、焼成した低融点ガラスペースト上にパターン形状に対応したマスクを形成し、マスクを形成した状態で低融点ガラスペーストに対して研摩材を射出しパターン形状とし、低融点ガラスの転移点以上で低融点ガラスペーストを焼成する後焼成を行うものである。
【0013】
低融点ガラスペーストは、Pb2O3からなる酸化鉛ガラスと、構造体を強固にするためにアルミナ、ジルコニア等の強固材料とをエチルセルロース、有機バインダー、有機溶剤等からなる有機物質に分散材を加えて混合したものである。すなわち、低融点ガラスとしては酸化鉛ガラスが該当する。分散材を加えているのは、酸化鉛ガラスの大きさが5[μm]以下の粒子であり、沈殿や凝集を防ぐため分散材を多く含んでいる。この低融点ガラスの構成比率は、酸化鉛ガラスが60ないし80[%]を占め、残りの構成比のほとんどを有機物質が占め、若干強固材料と分散材が占める比率である。
【0014】
本実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法を、プラズマディスプレイパネル(以下、PDP)の背面基板の隔壁の形成に適用した場合について説明する。PDPの背面基板は、ガラス体1に複数本の電極2が並行に形成され、この電極2を覆うように電極保護膜3が形成され、この電極保護膜3の上に隔壁が形成される。低融点ガラスペースト4のパターニングする前の背面基板は、ガラス体1上に電極2及び電極保護膜3が形成されている状態である。この状態の背面基板に対して、前記低融点ガラスペースト4を塗布して乾燥させる。この塗布した状態の背面基板の断面図を示すのが図1(a)であり、図1(b)は厚さd1で低融点ガラスペースト4を塗布された場合の低融点ガラスペースト4の積層状態のモデル図である。図1(b)に示されているように、前記酸化鉛ガラス及びアルミナ等の粒子固形体4dはエチルセルロース、有機バインダー及び有機溶剤からなる有機物質4eに取り囲まれて結合している。
【0015】
前焼成の温度を、前記第1の従来技術の焼成と同程度の酸化鉛ガラスの転移点を越えて高温とすれば、酸化鉛ガラスの表面が融解し隣接する酸化鉛ガラスと接着し、結合状態は強固となるが、過剰に強固になると硬くなって前焼成後の研磨材での加工が困難となる。一方で、前焼成の温度を、前記第2の従来の技術の乾燥と同程度の低温とすれば、有機溶媒のみが揮発し、有機バインダーは低温では分解されないためガラスペースト膜内に残留する。したがって、前焼成の温度は、少なくとも隣接する酸化鉛ガラスが接着し始める酸化鉛ガラスの転移点より低く、乾燥させる温度より高くないといけない。乾燥では有機物質4eの内有機溶剤のみ消失し、バインダーは消失しない。なお、バインダーの消失は、樹脂の分解により生じ、ポリマーがモノマーの形態若しくは水や炭酸ガスとなって気化する。
【0016】
かかる温度範囲内で前焼成を行うことで、図2(a)に示す背面基板の断面図となり、図2(b)は厚さd2に低融点ガラスペースト4が焼成された場合の低融点ガラスペースト4の積層状態のモデル図である。前焼成をすることで厚さd1から厚さd2の厚さになるまで有機物質4eが除去され、低融点ガラスペースト4が焼き固められる。具体的には、42[inch]PDP生産において、有機物質4eが25[%]、粒子固形体4dが75[%]の低融点ガラスペースト4の重量が550[gr]に対し、前焼成後には400[gr]となる。厚さd1は315[μm]に対し、前焼成には厚さd2は185[μm]となり、体積縮小率にすると58[%]となり、有機物質4eの含有量より更に大きな数値となる。なお、後述する後焼成の厚さd3は135[μm]であって、体積縮小率は72[%]に過ぎない。
【0017】
前焼成が終了すると、前焼成された低融点ガラスペースト4上に、レジスト膜5を隔壁パターンに対応したパターンに形成する。レジスト膜5の形成は、低融点ガラスペースト4全面にレジスト膜5を貼着し、隔壁パターンのマスクを介して紫外線を露光して行う。露光後には、隔壁パターンに対応したパターンにレジスト膜5が形成されている。
【0018】
このレジスト膜5が形成された低融点ガラスペースト4に対して、研磨材6を射出する。研磨材6を射出して低融点ガラスペースト4を研削し、研削した低融点ガラスペースト4を回収し、射出した研磨材6を回収し再び循環させて使用させるサンドブラスト加工装置を、図3に示す。このサンドブラスト加工装置は、低融点ガラスペースト4に対して研磨材6を射出させるサンドブラストガン14と、このサンドブラストガン14及び低融点ガラスペースト4が一面に成形された背面基板が投入される加工室10と、サンドブラストガン14から射出される研磨材6により研削された低融点ガラスペースト4が送り出され、これら研磨材6及び低融点ガラスペースト4を遠心力を用いて分級するサイクロン16と、このサイクロン16とサンドブラストガン14との間に配設されるメッシュフィルター17と、加工室10とサイクロン16の間に介在し研磨剤6を一時保持する研磨剤タンク11とからなる構成である。このように繰り返し使用する研磨材6としては、ステンレス研磨材等の金属研磨材がある。かかる金属研磨材を繰り返し使用するのは、金属研磨材が研削効率がよいという長所を有するがコストが金属研磨材以外の研磨材と比べ高くつくためである。
【0019】
このサンドブラスト加工装置の動作は、まず、加工室11に背面基板が投入され、サンドブラストガン14が研磨材6を射出して低融点ガラスペースト4を所定形状に研削する。この研削と同時に、研磨材6とこの研磨材6により研削された低融点ガラスペースト4とが研磨材タンク11を介してサイクロン16に送り出され、遠心力により軽い微粉はサイクロンの上方の排出口16Aから排出され、同様に遠心力により重い粗粉はサイクロンの下方の排出口16Bから排出される。サイクロンの下方の排出口16Bから排出された粗粉はメッシュフィルター17で濾過されてメッシュフィルター17のメッシュ孔より小さなものだけがサンドブラストガン14に落下していき、再び研磨材6として用いられる。以上のような動作を繰り返すことで、メッシュフィルター17に濾過されるまで繰り返し研磨材6は循環して使用される。また、サイクロンの上方の排出口16Aから排出された微粉は廃棄する。ここで、粗粉は主に研磨材6からなり、微粉は主に切削された低融点ガラスペースト4からなる。
このようにサンドブラスト加工装置を用いた研削時に(切削時の背面基板の断面図を示す図4である)、研削前に前焼成を行っていたので、研磨材6表面に有機物質4eの過剰な付着を抑制し、循環して再び射出された場合でも安定した加工処理を行うことができる。研削後の背面基板は、図5に示すようになる。
【0020】
サンドブラスト加工装置で研削が終了した後に、低融点ガラスペースト4上のレジスト膜5を除去し、後焼成を行う。後焼成が行われると、低融点ガラスペースト4に有機物質4eが残存している場合には有機物質4eが除去され、さらに、酸化鉛ガラスの表面が融解し隣接する酸化鉛ガラスと接着し強固な結合となって焼き固められる。以上の工程を経てPDPの隔壁が形成される。後焼成後の背面基板は、図6に示すようになる。
このように本実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法によれば、基板上に低融点ガラスペースト4を塗布して乾燥させ、乾燥させる温度より高く酸化鉛ガラスの転移温度より低い温度で低融点ガラスペースト4を焼成する前焼成を行い、焼成した低融点ガラスペースト4上にパターン形状に対応したマスクを形成し、マスクを形成した状態で低融点ガラスペースト4に対して研摩材6を射出しパターン形状とし、酸化鉛ガラスの転移点以上で低融点ガラスペースト4を焼成する後焼成をしているので、乾燥により低融点ガラスペースト4を構成する有機溶媒が消失し、前焼成により低融点ガラスペースト4を構成する有機物質4eのうち主にバインダーが減少若しくは完全になくなり、この有機物質4eが減少した状態の低融点ガラスペースト4に対して研磨材6を射出して研削しており、実際に低融点ガラスペース4とに衝突して研削した研磨材6の表面に有機物質4eが付着することが少なくなり、特に、有機物質4eが完全になくなった場合には全く研磨材6に有機物質4eが付着することがなく、前記サンドブラスト加工装置等で繰り返し循環させて研磨材6を使用した場合でも安定した隔壁を形成することができ、PDPの歩どまりをよくすることができる。ただし、有機物質4eが完全になくなった、すなわち、バインダーがない状態では、酸化鉛ガラス相互間を結合するものがなくなり結合が著しく弱くなるため、不安定になることに留意する必要がある。
【0021】
なお、以下、前焼成の体積縮小率と後焼成の体積縮小率に関して歩どまりの観点から説明する。前焼成の体積縮小率と後焼成の体積縮小率とが略同一である場合には、図5に示す様に底部角7が大きくなり不安定な形状の切削加工となり、図6に示す後焼成後の底部角7が極めて変動し、リブトップ幅はレジスト膜5により安定するが、トップ幅の安定に反して、底部幅のバラつきが多くなって安定した性能のパネル放電現象を得ることができない等の品質問題が発生する。後焼成は、前焼成で除去できなかった有機物質4eの除去及び酸化鉛ガラスの焼き固めを行うものであるから、前焼成に依存するものである。したがって、前焼成が品質問題すなわち欠陥発生率と極めて重要な関係を有する。図7は横軸に前焼成の相対温度、縦軸に欠陥発生率を調査したものである。同図において、サンドブラスト加工時の連続使用時間をパラメータに取って欠陥発生率との関係を読み取ると、第1に前焼成温度が低い程欠陥発生率が高い、第2に前焼成温度には欠陥発生率を少なくできる最適な範囲が存在する、第3に前焼成温度が高すぎると再度欠陥発生率は高くなるということが分かる。このように前焼成の温度を調整して、欠陥発生率等の製品の品質を定める基準を調査することで、最適温度を定めることができる。この最適温度は、低融点ガラスペースト4の構成比率、構成要素に大きく依存するためそれぞれの環境で定める必要がある。たとえば、図6の場合、横軸(X軸)を除いて下から一番目の横軸以下の欠陥発生率に該当する定義域である前焼成相対温度80[%]ないし120[%]を、最適な前焼成温度と決定することができる。
【0022】
図7に示すグラフでは連続使用時間48時間までの検討データであるが、48時間以上を経過すると欠陥発生率は更に上昇し、更には隔壁形状も安定した形状とならず、歩どまりが得られない。この現象の解明のため、研磨材6表面に付着する酸化鉛ガラスの量をSEM−EDXで分析し、有機物質4eの種類については赤外吸光分析(FT−IR)で同定し、更には研磨材6のどの部分に有機物質4eが多く付着するかについてはTOF−SIMSで分析を行った。この分析により、第1に前焼成温度が低いほど、研磨材6に付着する有機物質4eが多く、この有機物質4eがバインダーとなって被加工体の中に存在する酸化鉛ガラスを研磨材6表面に多く付着したまま加工が進んでいく、第2に前焼成温度の最適範囲では有機物質4eの付着は認められるものの、酸化鉛ガラスの付着量は所定量で飽和し、この飽和量は時間軸と共に増大していく、第3に前焼成温度が高すぎると低融点ガラスペースト4の硬度が高くなり、研磨材6の衝突エネルギーによりレジスト膜5が破壊され隔壁トップ幅の部分欠けが生じてくるということが判明した。
【0023】
また、本実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法において、乾燥と前焼成を連続した工程ですることもできる。例えば、低融点ガラスペースト4を乾燥させる乾燥炉と、低融点ガラスペースト4を前焼成する焼成炉とに分かれていた場合に、乾燥炉にも焼成炉にも対応可能な炉を作成し、この炉により乾燥及び前焼成を一連ですることもできる。また、通常、乾燥からレジスト膜5の形成の工程に進むために製造ラインを変更し、乾燥とレジスト膜の形成工程の間に前焼成の工程を組み入れることで本実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法を用いることができる。
【0024】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法について図に基づいて説明する。図8は本実施形態に係るガスアトマイズ法で製造した研磨材を用いた研削における凝集粒子の変化状態図、図9は本実施形態に係るガスアトマイズ法で製造した研磨材を用いた研削における凝集粒子の変化状態図、図10は本実施形態に係る複数種類の研磨材を用いたサンドブラスト加工における欠陥発生率と経過時間との関係を示す対比グラフ、図11は本実施形態に係る複数種類の研磨材の各測定時点での測定項目の値を示す表、図12は本実施形態に係る欠陥発生率と安息角との関係を示すグラフである。
【0025】
本実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法は、前記第1の実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法と同様になされ、50度以下の安息角の研磨材を用いて研削することを異にするものである。ここで、安息角とは、粉体を水平な面に漏斗のようなもので静かに落下させた時に生ずる円錐体の母線と水平面のなす角度をいう。50度以下の安息角の研磨材を用いる以外は、第1の実施形態と異なる部分はないため、以下では50度以下に限定した理由を説明していく。
【0026】
前焼成相対温度を80[%]として前記第1の実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法を用いた場合の研磨材表面をモニターし分析した。図8はステンレス研磨材の形状を示しており、ここで用いた研磨材6はガスアトマイズ法で製造した球状研磨材8(形状係数は0.82)であり、球換算直径20[μm]の単一粒子である。図8(a)が使用前のステンレス研磨材を示す。このステンレス研磨材を24時間使用すると、図8(b)に示すように研磨材粒子同士が有機物質4eを介して結合して凝集粒子が生じる場合がある。研磨材粒子と研磨材粒子との間にはSEM−EDXでの分析結果、前記した酸化鉛ガラスやアルミナが付着しているが、研磨材粒子と研磨材粒子、及び、研磨材粒子と酸化鉛ガラスとの間にはTOF−SIMS分析の結果有機物質4eの付着が多く観察された。
【0027】
更に、48時間使用後の研摩材の表面には、図8(c)に示すように、24時間使用後の研磨材より多量の粒子固形体4dと有機物質4eが観測されると同時に、SEM観察では24時間使用後の研磨材6に観察された様な粒子2個分の凝集粒子や同図(c)の様な3個凝集した凝集粒子の存在確率が増えて行き、経時的変化により凝集粒子の直径が増大していく事も分った。
この経時時間と共に変化する酸化鉛ガラスの量をPb/Feの相対値で測定すると、処理開始前の研磨材6で0[%]、処理開始24時間後の研磨材6で3[%]、48時間後の研磨材6で約6[%]と観測された。
【0028】
サンドブラスト加工装置には研摩材6に付着していく酸化鉛ガラスを除去するため、気流で分級し、小さい粒子を除去するサイクロン16が装置されているが、このサイクロン16はあくまで比重の軽いものや、比重は大きくても直径の小さいすなわち、質量の小さい物質を除去する働きがあるが、このようにサンドブラスト加工処理の間に研摩材6の凝集により質量が大きくなる物については除去や排出能力はなく、一旦、凝集が起る環境下では、凝集粒子の存在確率が時間と共に増加していく事になる。
【0029】
この様な現象が起りやすい研摩材6について更に形状係数との関連を調べた。図9は水アトマイズ法で製造したステンレス研摩材9である。除冷製法の違いにより水アトマイズは形状が悪化し、前記ガスアトマイズの研摩材8と比較すると、形状係数のファクターである、円形度(断面面積/周辺長)はガスアトマイズの研摩材8が0.82に対し水アトマイズの研摩材9は0.7といびつな形状となる。楕円率(最大幅/最小幅比)でも同様に、ガスアトマイズの研摩材8が1.2に対し、水アトマイズの研摩材9は1.5以上となる。
この様ないびつな形状の研摩材6を24時間、48時間使用していくと、鉛ガラスの付着量と研摩材の凝集は更に大きくなることが判った。図9(a)、図9(b)、図9(c)が、それぞれ使用前の研磨材、24時間使用後の研磨材、48時間使用後の研磨材を示す。
【0030】
図10に、前記円形度0.7、安息角50度の研摩材、円形度0.82、安息角45度の研摩材及び円形度0.85、安息角40度の研摩材の3種類の研磨材を用いたサンドブラスト加工後、それぞれの後焼成後のパターン欠陥率の推移を示す。円形度0.7、安息角50度の水アトマイズの研摩材9については初期の欠陥発生率は15[%]前後であるが、加工処理の時間が進むにつれ10時間後は欠陥発生率40[%]、24時間後は55[%]、48時間後には65[%]に及び更にはその発生率の変動も大きくなることが判った。
【0031】
次に、円形度0.82、安息角45度の研摩材を使用した場合、初期の欠陥発生率は10[%]と円形度0.7の研摩材より5[%]程低い発生率を示し、10時間後は20[%]、24時間後30[%]、48時間後38[%]といずれも円形度0.7の研摩材より低い欠陥発生率であり、その変動率も低い事が分る。また24時間以降は欠陥の発生率も約30〜35[%]前後で飽和しており60時間経過時での調査結果でも、円形度0.7の経時時間10時間目とほぼ同等の40[%]前後で推移した。
更には、円形度0.85、安息角40度の研摩材使用時では、使用前の研磨材が5[%]、24時間使用後の研磨材が10[%]、48時間使用後の研磨材が12[%]とこの3種類の研摩材のなかでは最も低い欠陥発生率で推移し、60時間経過後も比較的安定な挙動を示す事がわかった。
この様な現象を起すメカニズムについて、3種類の各経時時間ごとの研摩材表面付着の低融点ガラス量研摩材の凝集度、平均粒度分布、安息角を調査すると図11となる。
【0032】
すなわち、形状係数の悪い研摩材程初期の安息角が悪く、経時的変化により、より多くの酸化鉛ガラスを表面付着することにより更に安息角が悪化(すなわち粉の流動性が悪化)し、図9で説明した様に、凝集粒子の比率が増大することで凝集粒子が巨大化していき、サイクロン16での気流分級では分級質量が増大することで外部にも排出されぬまま装置内でその比率が高まる事で、巨大化した凝集粒子が欠陥を招いていると想定される。
この観点から、形状係数すなわち、円形度が高く、安息角が低い程欠陥を発生させる確率が低い事が想定された。これらの関係から、初期の安息角と欠陥発生率との関係を全て調査し欠陥の発生率として纏めると図12となる。
【0033】
同図より、安息角30度から35度近辺に最も低い欠陥発生率を示す極小点があり、前述した様に安息角が40度、45度、50度と大きくなる程、初期の欠点発生率も高く、されには経時的な劣化が加速され経時時間特性も悪化することになる。したがって、グラフの欠陥発生率から、繰り返し研磨材を用いる場合には、研磨材の安息角が50度以下であることが望ましい、欠陥発生率が50[%]を超えるとコストの面から実施することができなくなる。
【0034】
このように本実施形態に係る低融点ガラスペーストのパターニング方法によれば、研磨材の安息角が50度以下であるので、粒子自体の流動性が良いため有機物質が付着した場合においても、この有機物質4eをバインダーとして研磨材同士も結合しにくくなり欠陥が生じ難い安定したPDPを生産することができる。なお、グラフからわかるようにより好ましくは、安息角が40度以下であることがよい。
【0035】
なお、本実施形態に係る低融点ガラスペーストのパターニング方法においては、前記第1の実施形態に係る低融点ガラスペーストのパターニング方法を適用して安息角50度以下の研磨材を用いているが、前記第1の実施形態に係る低融点ガラスペーストのパターニング方法を用いずに安息角50度以下の研磨材を用いることもできる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明においては、基板上に低融点ガラスペーストを塗布して乾燥させ、乾燥させる温度より高く低融点ガラスの転移温度より低い温度で低融点ガラスペーストを焼成する前焼成を行い、焼成した低融点ガラスペースト上に所定のパターン形状に対応したサンドブラスト用マスクを形成し、当該マスクの形成されていない部分の低融点ガラスペーストをサンドブラスト法により研削してパターンニングし、低融点ガラスの転移点以上で当該パターニングされた低融点ガラスペーストを焼成する後焼成をしているので、乾燥により低融点ガラスペーストを構成する有機溶媒が消失し、前焼成により低融点ガラスペーストを構成する有機物質のうち主にバインダーが減少若しくは完全になくなり、このバインダーが減少した状態の低融点ガラスペーストに対して研磨材を射出して研削しており、直接低融点ガラスペーストとに衝突して研削した研磨材の表面に有機物質が付着することが少なくなり、特に、有機物質が完全になくなった場合には全く研磨材に有機物質が付着することがなく、このように有機物質の付着が少なくなり金属研磨材を再使用することができ、前記サンドブラスト加工装置等で繰り返し循環させて研磨材を使用した場合でも安定した隔壁を形成することができ、PDPの歩どまりをよくすることができるという効果を奏する。
【0037】
また、本発明においては、研磨材の安息角が50度以下であるので、粒子自体の流動性が良いため有機物質が付着した場合においても、この有機物質が介在して研磨材同士を結合させることも減少し欠陥が生じ難い安定したPDPを生産することができるという効果を有する。
【0038】
また、本発明においては、有機溶媒を乾燥させるための乾燥と前焼成を同一装置で行うので、乾燥後から前焼成前までに基板を移動させる必要がなく、迅速に乾燥から前焼成を行えると共に、基板の移動がないため移動中の基板温度の低下がなくなり前焼成にかかる時間をも短縮することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る低融点ガラスペースト塗布後の背面基板の一部断面図及び低融点ガラスペーストの積層状態のモデル図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る前焼成後の背面基板の一部断面図及び低融点ガラスペーストの積層状態のモデル図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るサンドブラスト加工装置の概念図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る研削時の背面基板の一部断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る研削後の背面基板の一部断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る後焼成後の背面基板の一部断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る欠陥発生率と前焼成相対温度との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るガスアトマイズ法で製造した研磨材を用いた研削における凝集粒子の変化状態図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るガスアトマイズ法で製造した研磨材を用いた研削における凝集粒子の変化状態図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る複数種類の研磨材を用いたサンドブラスト加工における欠陥発生率と経過時間との関係を示す対比グラフである。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る複数種類の研磨材の各測定時点での測定項目の値を示す表である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る欠陥発生率と安息角との関係を示すグラフである。
【図13】従来の低融点ガラスのパターン方法のガラス基板の断面図の状態変化図である。
【図14】従来の低融点ガラスのパターン方法のガラス基板の断面図の状態変化図である。
【符号の説明】
1 ガラス体
2 電極
3 電極保護膜
4、4a、4b 低融点ガラスペースト
4c 隔壁
4d 粒子固形体
4e 有機物質
5 レジスト膜
6 研磨材
7 底部角
8 ガスアトマイズの研磨材
9 水アトマイズの研磨材
10 加工室
11 研磨材タンク
14 サンドブラストガン
16 サイクロン
16A サイクロンの上方の排出口
16B サイクロンの下方の排出口
17 メッシュフィルター
101 ガラス基板
103 透明緩衝層
104 隔壁形成用の絶縁層
104c 隔壁
105 マスクパターン
201 基板
204 低融点ガラス層
205 レジスト膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、サンドブラスト法による低融点ガラスのパターニング方法に関し、特にサンドブラストする前に焼成を行う低融点ガラスのパターニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のサンドブラスト法による低融点ガラスのパターニング方法としては、特開平2−301934号公報に記載されるものがあり、以下図13に基づいて説明する。この第1の従来技術は、パネル外囲器となるガラス基板101の表面上に硬質絶縁性の透明緩衝層103とその緩衝層103上に隔壁形成用の絶縁層104を塗着形成する第1の工程と、この絶縁層104上に放電セル画定用のマスクパターン105を形成する第2の工程と、このマスクパターン105を介して露出する前記絶縁層部分104のみをサンドブラストにより研削除去して前記緩衝層103上に個々の放電セルを画定する隔壁104cを形成する第3の工程とを含み構成されるものである。詳細には、第1の工程において透明緩衝層103がペースト状の絶縁材料を塗布し、乾燥後、600[℃]程度で熱処理を行って形成され、この形成された透明緩衝層103は研削のストッパー層として機能させるために隔壁形成用の絶縁層よりも約1.5〜2.0倍程度の硬度を有する。また、同工程において隔壁形成用の絶縁層104を塗布し、乾燥及び600[℃]程度の焼成温度で熱処理を行って形成され、この形成された隔壁形成用の絶縁層104は20〜100[μm]の膜厚となる。このように第1の従来の低融点ガラスのパターニング方法は、研削する前にすでに低融点ガラスに対する焼成は完了しているので、研削する場合に既に焼成され形成された隔壁形成用の絶縁層104が固く、研削の効率が悪い。
【0003】
この第1の従来技術に対してもう一つの特開平3−294180号公報に記載された図14に示す第2の従来技術は、基板201上に全面的に低融点ガラス層を形成し、この低融点ガラス層表面を所定パターンを有するレジスト膜で被覆保護した上でサンドブラスト装置でこの低融点ガラスに所定パターンを形成させ焼成を行うものである。詳細には、低融点ガラス層の形成は、基材表面に低融点ガラスペーストを塗布し乾燥固化させることで行っている。したがって、第2の従来技術は低融点ガラスペーストを塗布し乾燥固化した後にパターン形成し焼成を行っており、焼成する前に乾燥のみ行い焼成は行っていなく、低融点ガラスペースト層はパターン形成中においてさほど硬くなく、研削の効率もよい。
【0004】
【特許文献1】特開平2−301934号公報
【0005】
【特許文献2】特開平3−294180号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記第2の従来技術は、以上のように構成され、前述したように第1の従来技術と比べても切削の効率はよいが、研磨材で研削する前に低融点ガラスペーストに対しては乾燥させるのみであり、乾燥させたても表面部分のみ乾燥され内部の低融点ガラスペーストは依然エチルセルロース、有機バインダー及び有機溶剤(乾燥により有機溶剤は略消失しているが少なからず残存している可能性がある。)からなる有機物質が残留しており、この状態の低融点ガラスペーストに対してパターン形成するために研磨材を射出すると低融点ガラスペーストに衝突した研磨材に有機物質が付着し、研磨材を繰り返し用いた場合には、この有機物質を介して研磨材同士が凝集し巨大な凝集粒子を形成していき、射出する研磨材として想定していない巨大な凝集粒子が研磨材として射出され、レジスト膜を破壊して所定のパターン形成をすることができず、研磨材の使用時間が長くなればなるほど歩どまりが悪くなるという課題を有する。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、研磨材を繰り返し用いた場合でも研磨材に有機物質を付着させることを抑制し巨大な凝集粒子を生じないようにし、長時間の研磨材の使用による歩どまりの悪化を抑制する低融点ガラスのパターニング方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る低融点ガラスのパターンニング方法は、基板上に低融点ガラスペーストを塗布して当該低融点ガラスペーストの有機溶媒を蒸発させるための乾燥を行い、当該乾燥の温度より高く低融点ガラスの転移温度より低い温度で低融点ガラスペーストを焼成する前焼成を行い、焼成した低融点ガラスペースト上に所定のパターン形状に対応したサンドブラスト用マスクを形成し、当該マスクの形成されていない部分の低融点ガラスペーストをサンドブラスト法により研削してパターンニングし、低融点ガラスの転移点以上で当該パターニングされた低融点ガラスペーストを焼成する後焼成を行うものである。このように本発明においては、基板上に低融点ガラスペーストを塗布して乾燥させ、乾燥させる温度より高く低融点ガラスの転移温度より低い温度で低融点ガラスペーストを焼成する前焼成を行い、焼成した低融点ガラスペースト上に所定のパターン形状に対応したサンドブラスト用マスクを形成し、当該マスクの形成されていない部分の低融点ガラスペーストをサンドブラスト法により研削してパターンニングし、低融点ガラスの転移点以上で当該パターニングされた低融点ガラスペーストを焼成する後焼成をしているので、乾燥により低融点ガラスペーストを構成する有機溶媒が消失し、前焼成により低融点ガラスペーストを構成する有機物質のうち主にバインダーが減少若しくは完全になくなり、このバインダーが減少した状態の低融点ガラスペーストに対して研磨材を射出して研削しており、直接低融点ガラスペーストとに衝突して研削した研磨材の表面に有機物質が付着することが少なくなり、特に、有機物質が完全になくなった場合には全く研磨材に有機物質が付着することがなく、このように有機物質の付着が少なくなり金属研磨材を再使用することができ、前記サンドブラスト加工装置等で繰り返し循環させて研磨材を使用した場合でも安定した隔壁を形成することができ、PDPの歩どまりをよくすることができる。ただし、有機物質が完全になくなった、すなわち、バインダーがない状態では、低融点ガラス相互間を結合するものがなくなり結合が著しく弱くなるため、不安定になることに留意する必要がある。したがって、バインダーの残存に係るもの例えば残存率を指標として前焼成を終了させることで最適な前焼成をすることもできる。バインダーとしてはエチルセルロース等の樹脂が該当し、有機溶媒としてはアルコール類が該当する。また、乾燥と前焼成とを一連の工程として例えば同一炉ですることも可能であるが、有機溶媒を消失させる乾燥段階で前焼成レベルの温度にすると、有機溶媒の気化する場合に低融点ガラスペーストに気泡を形成することがあるので留意しなければならない。
【0009】
また、本発明に係る低融点ガラスのパターンニング方法は必要に応じて、サンドブラスト法が50度以下の安息角の研磨材を用いて研削するものである。このように本発明においては、研磨材の安息角が50度以下であるので、粒子自体の流動性が良いため有機物質が付着した場合においても、この有機物質が介在して研磨材同士を結合させることも減少し欠陥が生じ難い安定したPDPを生産することができる。
【0010】
また、本発明に係る低融点ガラスの低融点ガラスのパターンニング方法は必要に応じて、有機溶媒を乾燥させるための乾燥と前焼成を同一装置で行うものである。このように本発明においては、有機溶媒を乾燥させるための乾燥と前焼成を同一装置で行うので、乾燥後から前焼成前までに基板を移動させる必要がなく、迅速に乾燥から前焼成を行えると共に、基板の移動がないため移動中の基板温度の低下がなくなり前焼成にかかる時間をも短縮することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
(本発明の第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る低融点ガラスペーストのパターニング方法について、図1ないし図7に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る低融点ガラスペースト塗布後の背面基板の一部断面図及び低融点ガラスペーストの積層状態のモデル図、図2は本実施形態に係る前焼成後の背面基板の一部断面図及び低融点ガラスペーストの積層状態のモデル図、図3は本実施形態に係るサンドブラスト加工装置の概念図、図4は本実施形態に係る研削時の背面基板の一部断面図、図5は本実施形態に係る研削後の背面基板の一部断面図、図6は本実施形態に係る後焼成後の背面基板の一部断面図、図7は本実施形態に係る欠陥発生率と前焼成相対温度との関係を示すグラフを示す。
【0012】
本実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法は、基板上に低融点ガラスペーストを塗布し、低融点ガラスの転移点以下で低融点ガラスペーストを焼成する前焼成を行い、焼成した低融点ガラスペースト上にパターン形状に対応したマスクを形成し、マスクを形成した状態で低融点ガラスペーストに対して研摩材を射出しパターン形状とし、低融点ガラスの転移点以上で低融点ガラスペーストを焼成する後焼成を行うものである。
【0013】
低融点ガラスペーストは、Pb2O3からなる酸化鉛ガラスと、構造体を強固にするためにアルミナ、ジルコニア等の強固材料とをエチルセルロース、有機バインダー、有機溶剤等からなる有機物質に分散材を加えて混合したものである。すなわち、低融点ガラスとしては酸化鉛ガラスが該当する。分散材を加えているのは、酸化鉛ガラスの大きさが5[μm]以下の粒子であり、沈殿や凝集を防ぐため分散材を多く含んでいる。この低融点ガラスの構成比率は、酸化鉛ガラスが60ないし80[%]を占め、残りの構成比のほとんどを有機物質が占め、若干強固材料と分散材が占める比率である。
【0014】
本実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法を、プラズマディスプレイパネル(以下、PDP)の背面基板の隔壁の形成に適用した場合について説明する。PDPの背面基板は、ガラス体1に複数本の電極2が並行に形成され、この電極2を覆うように電極保護膜3が形成され、この電極保護膜3の上に隔壁が形成される。低融点ガラスペースト4のパターニングする前の背面基板は、ガラス体1上に電極2及び電極保護膜3が形成されている状態である。この状態の背面基板に対して、前記低融点ガラスペースト4を塗布して乾燥させる。この塗布した状態の背面基板の断面図を示すのが図1(a)であり、図1(b)は厚さd1で低融点ガラスペースト4を塗布された場合の低融点ガラスペースト4の積層状態のモデル図である。図1(b)に示されているように、前記酸化鉛ガラス及びアルミナ等の粒子固形体4dはエチルセルロース、有機バインダー及び有機溶剤からなる有機物質4eに取り囲まれて結合している。
【0015】
前焼成の温度を、前記第1の従来技術の焼成と同程度の酸化鉛ガラスの転移点を越えて高温とすれば、酸化鉛ガラスの表面が融解し隣接する酸化鉛ガラスと接着し、結合状態は強固となるが、過剰に強固になると硬くなって前焼成後の研磨材での加工が困難となる。一方で、前焼成の温度を、前記第2の従来の技術の乾燥と同程度の低温とすれば、有機溶媒のみが揮発し、有機バインダーは低温では分解されないためガラスペースト膜内に残留する。したがって、前焼成の温度は、少なくとも隣接する酸化鉛ガラスが接着し始める酸化鉛ガラスの転移点より低く、乾燥させる温度より高くないといけない。乾燥では有機物質4eの内有機溶剤のみ消失し、バインダーは消失しない。なお、バインダーの消失は、樹脂の分解により生じ、ポリマーがモノマーの形態若しくは水や炭酸ガスとなって気化する。
【0016】
かかる温度範囲内で前焼成を行うことで、図2(a)に示す背面基板の断面図となり、図2(b)は厚さd2に低融点ガラスペースト4が焼成された場合の低融点ガラスペースト4の積層状態のモデル図である。前焼成をすることで厚さd1から厚さd2の厚さになるまで有機物質4eが除去され、低融点ガラスペースト4が焼き固められる。具体的には、42[inch]PDP生産において、有機物質4eが25[%]、粒子固形体4dが75[%]の低融点ガラスペースト4の重量が550[gr]に対し、前焼成後には400[gr]となる。厚さd1は315[μm]に対し、前焼成には厚さd2は185[μm]となり、体積縮小率にすると58[%]となり、有機物質4eの含有量より更に大きな数値となる。なお、後述する後焼成の厚さd3は135[μm]であって、体積縮小率は72[%]に過ぎない。
【0017】
前焼成が終了すると、前焼成された低融点ガラスペースト4上に、レジスト膜5を隔壁パターンに対応したパターンに形成する。レジスト膜5の形成は、低融点ガラスペースト4全面にレジスト膜5を貼着し、隔壁パターンのマスクを介して紫外線を露光して行う。露光後には、隔壁パターンに対応したパターンにレジスト膜5が形成されている。
【0018】
このレジスト膜5が形成された低融点ガラスペースト4に対して、研磨材6を射出する。研磨材6を射出して低融点ガラスペースト4を研削し、研削した低融点ガラスペースト4を回収し、射出した研磨材6を回収し再び循環させて使用させるサンドブラスト加工装置を、図3に示す。このサンドブラスト加工装置は、低融点ガラスペースト4に対して研磨材6を射出させるサンドブラストガン14と、このサンドブラストガン14及び低融点ガラスペースト4が一面に成形された背面基板が投入される加工室10と、サンドブラストガン14から射出される研磨材6により研削された低融点ガラスペースト4が送り出され、これら研磨材6及び低融点ガラスペースト4を遠心力を用いて分級するサイクロン16と、このサイクロン16とサンドブラストガン14との間に配設されるメッシュフィルター17と、加工室10とサイクロン16の間に介在し研磨剤6を一時保持する研磨剤タンク11とからなる構成である。このように繰り返し使用する研磨材6としては、ステンレス研磨材等の金属研磨材がある。かかる金属研磨材を繰り返し使用するのは、金属研磨材が研削効率がよいという長所を有するがコストが金属研磨材以外の研磨材と比べ高くつくためである。
【0019】
このサンドブラスト加工装置の動作は、まず、加工室11に背面基板が投入され、サンドブラストガン14が研磨材6を射出して低融点ガラスペースト4を所定形状に研削する。この研削と同時に、研磨材6とこの研磨材6により研削された低融点ガラスペースト4とが研磨材タンク11を介してサイクロン16に送り出され、遠心力により軽い微粉はサイクロンの上方の排出口16Aから排出され、同様に遠心力により重い粗粉はサイクロンの下方の排出口16Bから排出される。サイクロンの下方の排出口16Bから排出された粗粉はメッシュフィルター17で濾過されてメッシュフィルター17のメッシュ孔より小さなものだけがサンドブラストガン14に落下していき、再び研磨材6として用いられる。以上のような動作を繰り返すことで、メッシュフィルター17に濾過されるまで繰り返し研磨材6は循環して使用される。また、サイクロンの上方の排出口16Aから排出された微粉は廃棄する。ここで、粗粉は主に研磨材6からなり、微粉は主に切削された低融点ガラスペースト4からなる。
このようにサンドブラスト加工装置を用いた研削時に(切削時の背面基板の断面図を示す図4である)、研削前に前焼成を行っていたので、研磨材6表面に有機物質4eの過剰な付着を抑制し、循環して再び射出された場合でも安定した加工処理を行うことができる。研削後の背面基板は、図5に示すようになる。
【0020】
サンドブラスト加工装置で研削が終了した後に、低融点ガラスペースト4上のレジスト膜5を除去し、後焼成を行う。後焼成が行われると、低融点ガラスペースト4に有機物質4eが残存している場合には有機物質4eが除去され、さらに、酸化鉛ガラスの表面が融解し隣接する酸化鉛ガラスと接着し強固な結合となって焼き固められる。以上の工程を経てPDPの隔壁が形成される。後焼成後の背面基板は、図6に示すようになる。
このように本実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法によれば、基板上に低融点ガラスペースト4を塗布して乾燥させ、乾燥させる温度より高く酸化鉛ガラスの転移温度より低い温度で低融点ガラスペースト4を焼成する前焼成を行い、焼成した低融点ガラスペースト4上にパターン形状に対応したマスクを形成し、マスクを形成した状態で低融点ガラスペースト4に対して研摩材6を射出しパターン形状とし、酸化鉛ガラスの転移点以上で低融点ガラスペースト4を焼成する後焼成をしているので、乾燥により低融点ガラスペースト4を構成する有機溶媒が消失し、前焼成により低融点ガラスペースト4を構成する有機物質4eのうち主にバインダーが減少若しくは完全になくなり、この有機物質4eが減少した状態の低融点ガラスペースト4に対して研磨材6を射出して研削しており、実際に低融点ガラスペース4とに衝突して研削した研磨材6の表面に有機物質4eが付着することが少なくなり、特に、有機物質4eが完全になくなった場合には全く研磨材6に有機物質4eが付着することがなく、前記サンドブラスト加工装置等で繰り返し循環させて研磨材6を使用した場合でも安定した隔壁を形成することができ、PDPの歩どまりをよくすることができる。ただし、有機物質4eが完全になくなった、すなわち、バインダーがない状態では、酸化鉛ガラス相互間を結合するものがなくなり結合が著しく弱くなるため、不安定になることに留意する必要がある。
【0021】
なお、以下、前焼成の体積縮小率と後焼成の体積縮小率に関して歩どまりの観点から説明する。前焼成の体積縮小率と後焼成の体積縮小率とが略同一である場合には、図5に示す様に底部角7が大きくなり不安定な形状の切削加工となり、図6に示す後焼成後の底部角7が極めて変動し、リブトップ幅はレジスト膜5により安定するが、トップ幅の安定に反して、底部幅のバラつきが多くなって安定した性能のパネル放電現象を得ることができない等の品質問題が発生する。後焼成は、前焼成で除去できなかった有機物質4eの除去及び酸化鉛ガラスの焼き固めを行うものであるから、前焼成に依存するものである。したがって、前焼成が品質問題すなわち欠陥発生率と極めて重要な関係を有する。図7は横軸に前焼成の相対温度、縦軸に欠陥発生率を調査したものである。同図において、サンドブラスト加工時の連続使用時間をパラメータに取って欠陥発生率との関係を読み取ると、第1に前焼成温度が低い程欠陥発生率が高い、第2に前焼成温度には欠陥発生率を少なくできる最適な範囲が存在する、第3に前焼成温度が高すぎると再度欠陥発生率は高くなるということが分かる。このように前焼成の温度を調整して、欠陥発生率等の製品の品質を定める基準を調査することで、最適温度を定めることができる。この最適温度は、低融点ガラスペースト4の構成比率、構成要素に大きく依存するためそれぞれの環境で定める必要がある。たとえば、図6の場合、横軸(X軸)を除いて下から一番目の横軸以下の欠陥発生率に該当する定義域である前焼成相対温度80[%]ないし120[%]を、最適な前焼成温度と決定することができる。
【0022】
図7に示すグラフでは連続使用時間48時間までの検討データであるが、48時間以上を経過すると欠陥発生率は更に上昇し、更には隔壁形状も安定した形状とならず、歩どまりが得られない。この現象の解明のため、研磨材6表面に付着する酸化鉛ガラスの量をSEM−EDXで分析し、有機物質4eの種類については赤外吸光分析(FT−IR)で同定し、更には研磨材6のどの部分に有機物質4eが多く付着するかについてはTOF−SIMSで分析を行った。この分析により、第1に前焼成温度が低いほど、研磨材6に付着する有機物質4eが多く、この有機物質4eがバインダーとなって被加工体の中に存在する酸化鉛ガラスを研磨材6表面に多く付着したまま加工が進んでいく、第2に前焼成温度の最適範囲では有機物質4eの付着は認められるものの、酸化鉛ガラスの付着量は所定量で飽和し、この飽和量は時間軸と共に増大していく、第3に前焼成温度が高すぎると低融点ガラスペースト4の硬度が高くなり、研磨材6の衝突エネルギーによりレジスト膜5が破壊され隔壁トップ幅の部分欠けが生じてくるということが判明した。
【0023】
また、本実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法において、乾燥と前焼成を連続した工程ですることもできる。例えば、低融点ガラスペースト4を乾燥させる乾燥炉と、低融点ガラスペースト4を前焼成する焼成炉とに分かれていた場合に、乾燥炉にも焼成炉にも対応可能な炉を作成し、この炉により乾燥及び前焼成を一連ですることもできる。また、通常、乾燥からレジスト膜5の形成の工程に進むために製造ラインを変更し、乾燥とレジスト膜の形成工程の間に前焼成の工程を組み入れることで本実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法を用いることができる。
【0024】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法について図に基づいて説明する。図8は本実施形態に係るガスアトマイズ法で製造した研磨材を用いた研削における凝集粒子の変化状態図、図9は本実施形態に係るガスアトマイズ法で製造した研磨材を用いた研削における凝集粒子の変化状態図、図10は本実施形態に係る複数種類の研磨材を用いたサンドブラスト加工における欠陥発生率と経過時間との関係を示す対比グラフ、図11は本実施形態に係る複数種類の研磨材の各測定時点での測定項目の値を示す表、図12は本実施形態に係る欠陥発生率と安息角との関係を示すグラフである。
【0025】
本実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法は、前記第1の実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法と同様になされ、50度以下の安息角の研磨材を用いて研削することを異にするものである。ここで、安息角とは、粉体を水平な面に漏斗のようなもので静かに落下させた時に生ずる円錐体の母線と水平面のなす角度をいう。50度以下の安息角の研磨材を用いる以外は、第1の実施形態と異なる部分はないため、以下では50度以下に限定した理由を説明していく。
【0026】
前焼成相対温度を80[%]として前記第1の実施形態に係る低融点ガラスのパターニング方法を用いた場合の研磨材表面をモニターし分析した。図8はステンレス研磨材の形状を示しており、ここで用いた研磨材6はガスアトマイズ法で製造した球状研磨材8(形状係数は0.82)であり、球換算直径20[μm]の単一粒子である。図8(a)が使用前のステンレス研磨材を示す。このステンレス研磨材を24時間使用すると、図8(b)に示すように研磨材粒子同士が有機物質4eを介して結合して凝集粒子が生じる場合がある。研磨材粒子と研磨材粒子との間にはSEM−EDXでの分析結果、前記した酸化鉛ガラスやアルミナが付着しているが、研磨材粒子と研磨材粒子、及び、研磨材粒子と酸化鉛ガラスとの間にはTOF−SIMS分析の結果有機物質4eの付着が多く観察された。
【0027】
更に、48時間使用後の研摩材の表面には、図8(c)に示すように、24時間使用後の研磨材より多量の粒子固形体4dと有機物質4eが観測されると同時に、SEM観察では24時間使用後の研磨材6に観察された様な粒子2個分の凝集粒子や同図(c)の様な3個凝集した凝集粒子の存在確率が増えて行き、経時的変化により凝集粒子の直径が増大していく事も分った。
この経時時間と共に変化する酸化鉛ガラスの量をPb/Feの相対値で測定すると、処理開始前の研磨材6で0[%]、処理開始24時間後の研磨材6で3[%]、48時間後の研磨材6で約6[%]と観測された。
【0028】
サンドブラスト加工装置には研摩材6に付着していく酸化鉛ガラスを除去するため、気流で分級し、小さい粒子を除去するサイクロン16が装置されているが、このサイクロン16はあくまで比重の軽いものや、比重は大きくても直径の小さいすなわち、質量の小さい物質を除去する働きがあるが、このようにサンドブラスト加工処理の間に研摩材6の凝集により質量が大きくなる物については除去や排出能力はなく、一旦、凝集が起る環境下では、凝集粒子の存在確率が時間と共に増加していく事になる。
【0029】
この様な現象が起りやすい研摩材6について更に形状係数との関連を調べた。図9は水アトマイズ法で製造したステンレス研摩材9である。除冷製法の違いにより水アトマイズは形状が悪化し、前記ガスアトマイズの研摩材8と比較すると、形状係数のファクターである、円形度(断面面積/周辺長)はガスアトマイズの研摩材8が0.82に対し水アトマイズの研摩材9は0.7といびつな形状となる。楕円率(最大幅/最小幅比)でも同様に、ガスアトマイズの研摩材8が1.2に対し、水アトマイズの研摩材9は1.5以上となる。
この様ないびつな形状の研摩材6を24時間、48時間使用していくと、鉛ガラスの付着量と研摩材の凝集は更に大きくなることが判った。図9(a)、図9(b)、図9(c)が、それぞれ使用前の研磨材、24時間使用後の研磨材、48時間使用後の研磨材を示す。
【0030】
図10に、前記円形度0.7、安息角50度の研摩材、円形度0.82、安息角45度の研摩材及び円形度0.85、安息角40度の研摩材の3種類の研磨材を用いたサンドブラスト加工後、それぞれの後焼成後のパターン欠陥率の推移を示す。円形度0.7、安息角50度の水アトマイズの研摩材9については初期の欠陥発生率は15[%]前後であるが、加工処理の時間が進むにつれ10時間後は欠陥発生率40[%]、24時間後は55[%]、48時間後には65[%]に及び更にはその発生率の変動も大きくなることが判った。
【0031】
次に、円形度0.82、安息角45度の研摩材を使用した場合、初期の欠陥発生率は10[%]と円形度0.7の研摩材より5[%]程低い発生率を示し、10時間後は20[%]、24時間後30[%]、48時間後38[%]といずれも円形度0.7の研摩材より低い欠陥発生率であり、その変動率も低い事が分る。また24時間以降は欠陥の発生率も約30〜35[%]前後で飽和しており60時間経過時での調査結果でも、円形度0.7の経時時間10時間目とほぼ同等の40[%]前後で推移した。
更には、円形度0.85、安息角40度の研摩材使用時では、使用前の研磨材が5[%]、24時間使用後の研磨材が10[%]、48時間使用後の研磨材が12[%]とこの3種類の研摩材のなかでは最も低い欠陥発生率で推移し、60時間経過後も比較的安定な挙動を示す事がわかった。
この様な現象を起すメカニズムについて、3種類の各経時時間ごとの研摩材表面付着の低融点ガラス量研摩材の凝集度、平均粒度分布、安息角を調査すると図11となる。
【0032】
すなわち、形状係数の悪い研摩材程初期の安息角が悪く、経時的変化により、より多くの酸化鉛ガラスを表面付着することにより更に安息角が悪化(すなわち粉の流動性が悪化)し、図9で説明した様に、凝集粒子の比率が増大することで凝集粒子が巨大化していき、サイクロン16での気流分級では分級質量が増大することで外部にも排出されぬまま装置内でその比率が高まる事で、巨大化した凝集粒子が欠陥を招いていると想定される。
この観点から、形状係数すなわち、円形度が高く、安息角が低い程欠陥を発生させる確率が低い事が想定された。これらの関係から、初期の安息角と欠陥発生率との関係を全て調査し欠陥の発生率として纏めると図12となる。
【0033】
同図より、安息角30度から35度近辺に最も低い欠陥発生率を示す極小点があり、前述した様に安息角が40度、45度、50度と大きくなる程、初期の欠点発生率も高く、されには経時的な劣化が加速され経時時間特性も悪化することになる。したがって、グラフの欠陥発生率から、繰り返し研磨材を用いる場合には、研磨材の安息角が50度以下であることが望ましい、欠陥発生率が50[%]を超えるとコストの面から実施することができなくなる。
【0034】
このように本実施形態に係る低融点ガラスペーストのパターニング方法によれば、研磨材の安息角が50度以下であるので、粒子自体の流動性が良いため有機物質が付着した場合においても、この有機物質4eをバインダーとして研磨材同士も結合しにくくなり欠陥が生じ難い安定したPDPを生産することができる。なお、グラフからわかるようにより好ましくは、安息角が40度以下であることがよい。
【0035】
なお、本実施形態に係る低融点ガラスペーストのパターニング方法においては、前記第1の実施形態に係る低融点ガラスペーストのパターニング方法を適用して安息角50度以下の研磨材を用いているが、前記第1の実施形態に係る低融点ガラスペーストのパターニング方法を用いずに安息角50度以下の研磨材を用いることもできる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明においては、基板上に低融点ガラスペーストを塗布して乾燥させ、乾燥させる温度より高く低融点ガラスの転移温度より低い温度で低融点ガラスペーストを焼成する前焼成を行い、焼成した低融点ガラスペースト上に所定のパターン形状に対応したサンドブラスト用マスクを形成し、当該マスクの形成されていない部分の低融点ガラスペーストをサンドブラスト法により研削してパターンニングし、低融点ガラスの転移点以上で当該パターニングされた低融点ガラスペーストを焼成する後焼成をしているので、乾燥により低融点ガラスペーストを構成する有機溶媒が消失し、前焼成により低融点ガラスペーストを構成する有機物質のうち主にバインダーが減少若しくは完全になくなり、このバインダーが減少した状態の低融点ガラスペーストに対して研磨材を射出して研削しており、直接低融点ガラスペーストとに衝突して研削した研磨材の表面に有機物質が付着することが少なくなり、特に、有機物質が完全になくなった場合には全く研磨材に有機物質が付着することがなく、このように有機物質の付着が少なくなり金属研磨材を再使用することができ、前記サンドブラスト加工装置等で繰り返し循環させて研磨材を使用した場合でも安定した隔壁を形成することができ、PDPの歩どまりをよくすることができるという効果を奏する。
【0037】
また、本発明においては、研磨材の安息角が50度以下であるので、粒子自体の流動性が良いため有機物質が付着した場合においても、この有機物質が介在して研磨材同士を結合させることも減少し欠陥が生じ難い安定したPDPを生産することができるという効果を有する。
【0038】
また、本発明においては、有機溶媒を乾燥させるための乾燥と前焼成を同一装置で行うので、乾燥後から前焼成前までに基板を移動させる必要がなく、迅速に乾燥から前焼成を行えると共に、基板の移動がないため移動中の基板温度の低下がなくなり前焼成にかかる時間をも短縮することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る低融点ガラスペースト塗布後の背面基板の一部断面図及び低融点ガラスペーストの積層状態のモデル図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る前焼成後の背面基板の一部断面図及び低融点ガラスペーストの積層状態のモデル図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るサンドブラスト加工装置の概念図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る研削時の背面基板の一部断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る研削後の背面基板の一部断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る後焼成後の背面基板の一部断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る欠陥発生率と前焼成相対温度との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るガスアトマイズ法で製造した研磨材を用いた研削における凝集粒子の変化状態図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るガスアトマイズ法で製造した研磨材を用いた研削における凝集粒子の変化状態図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る複数種類の研磨材を用いたサンドブラスト加工における欠陥発生率と経過時間との関係を示す対比グラフである。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る複数種類の研磨材の各測定時点での測定項目の値を示す表である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る欠陥発生率と安息角との関係を示すグラフである。
【図13】従来の低融点ガラスのパターン方法のガラス基板の断面図の状態変化図である。
【図14】従来の低融点ガラスのパターン方法のガラス基板の断面図の状態変化図である。
【符号の説明】
1 ガラス体
2 電極
3 電極保護膜
4、4a、4b 低融点ガラスペースト
4c 隔壁
4d 粒子固形体
4e 有機物質
5 レジスト膜
6 研磨材
7 底部角
8 ガスアトマイズの研磨材
9 水アトマイズの研磨材
10 加工室
11 研磨材タンク
14 サンドブラストガン
16 サイクロン
16A サイクロンの上方の排出口
16B サイクロンの下方の排出口
17 メッシュフィルター
101 ガラス基板
103 透明緩衝層
104 隔壁形成用の絶縁層
104c 隔壁
105 マスクパターン
201 基板
204 低融点ガラス層
205 レジスト膜
Claims (3)
- 基板上に低融点ガラスペーストを塗布して当該低融点ガラスペーストの有機溶媒を蒸発させるための乾燥を行い、当該乾燥の温度より高く低融点ガラスの転移温度より低い温度で低融点ガラスペーストを焼成する前焼成を行い、焼成した低融点ガラスペースト上に所定のパターン形状に対応したサンドブラスト用マスクを形成し、当該マスクの形成されていない部分の低融点ガラスペーストをサンドブラスト法により研削してパターンニングし、低融点ガラスの転移点以上で当該パターニングされた低融点ガラスペーストを焼成する後焼成を行うことを
特徴とする低融点ガラスのパターンニング方法。 - 前記請求項1に記載の低融点ガラスのパターンニング方法において、
サンドブラスト法が50度以下の安息角の研磨材を用いて研削することを
特徴とする低融点ガラスのパターンニング方法。 - 前記請求項1または2に記載の低融点ガラスのパターンニング方法において、
有機溶媒を乾燥させるための乾燥と前焼成を同一装置で行うことを
特徴とする低融点ガラスのパターンニング方法。
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