JP2004301915A - 重合性組成物及びそれを用いた平版印刷版原版 - Google Patents

重合性組成物及びそれを用いた平版印刷版原版 Download PDF

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Kazuto Shimada
和人 嶋田
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Abstract

【課題】赤外領域の高出力レーザーを用いた場合に、高耐刷性を維持したまま、網点の太りを抑制し、高画質を達成することが可能である重合性組成物、及び、その組成物を用いたネガ型記録層を有する平版印刷版原版を提供すること。
【解決手段】(A)700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物と、(B)700〜1200nmに吸収極大波長を有し、かつ、750〜1300nmにおける発光強度が前記(A)の化合物とは異なる化合物と、(C)ラジカル重合開始剤と、(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、を含有することを特徴とする重合性組成物、及び該重合性組成物を含む記録層を備えてなる平版印刷版原版。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合性組成物、及び該重合性組成物を記録層として用いた赤外線レーザによる高感度で書き込み可能な平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年におけるレーザーの発展は目ざましく、特に、近赤外線から赤外線領域に発光領域を持つ個体レーザーや半導体レーザーでは、高出力・小型化が進んでいる。したがって、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
このようなレーザーを露光光源として使用する画像記録媒体としては、光熱変換物質と、ラジカルを発生する熱重合開始剤と、熱重合性樹脂とを含む熱重合性記録層が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
通常、このような熱重合性記録層を構成するネガ型の画像形成材料は、光又は熱により発生したラジカルを開始剤として重合反応を生起させ、露光部を硬化させて画像部を形成する記録方式を利用している。
このようなネガ型の画像形成材料において、赤外領域の高出力レーザーの露光を行った場合には、ラジカル重合開始剤を分解させて、重合反応を生起させる活性種を発生させるための少なくとも2つの開始剤分解機構が存在すると考えられる。1つ目は、ヒートモードによる熱的なラジカル重合開始剤の分解である。2つ目は、レーザー露光により励起された状態の色素(光熱変換剤)からの電子移動、又は、励起状態から更にもう一段或いはそれ以上の段階の励起状態を経た状態の色素からの電子移動若しくはエネルギー移動等を利用した、フォトンモードによるラジカル重合開始剤の分解である。
【0004】
このような開始剤分解機構において、光熱変換剤として発光強度の低い色素を用いる場合、高い光熱変換効率が得られることから、ヒートモードでの画像形成性が有効になる。但し、ヒートモードによる画像形成では、アルミニウム支持体など熱伝導度の高い支持体を用いると、その支持体近傍において、熱拡散が生じ、熱によるラジカル重合開始剤の分解が十分に行なわれずに、硬化反応が進行し難かった。その結果、画像形成材料の画像部強度が低下し、耐刷性が低下するという問題を抱えていた。
この問題に対して、光熱変換剤として発光強度の高い色素を用い、フォトンモードでの画像形成を行うことで、熱拡散に起因する問題を解決することができる。しかしながら、フォトンモードのみを用いた画像形成では、その色素の発光によるラジカル重合開始剤の分解が起こり、露光部周辺の所望されない領域においても重合反応が生起してしまい、例えば、網点の形成を行う際に、網点の太りを引き起こすといった問題を有していた。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−108621号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、赤外領域の高出力レーザーを用いた場合に、高耐刷性を維持したまま、網点の太りを抑制し、高画質を達成することが可能である重合性組成物、及び、その組成物を用いたネガ型記録層を有する平版印刷版原版を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ヒートモードとフォトンモードとを組み合せることで、高照度レーザー露光のエネルギーを、光及び熱として効果的に画像形成に用い得ることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明の重合性組成物は、(A)700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物と、(B)700〜1200nmに吸収極大波長を有し、かつ、750〜1300nmにおける発光強度が前記(A)の化合物とは異なる化合物と、(C)ラジカル重合開始剤と、(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、を含有することを特徴とする。
また、前記重合性組成物において、前記(A)成分が、750〜1300nmにおける相対発光強度が1.0より大きい化合物であり、かつ、前記(B)成分が、750〜1300nmにおける相対発光強度が1.0以下である化合物であることが好ましい。
また、本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、請求項1又は2に記載の重合性組成物を含む記録層を備えてなることを特徴とする。
【0009】
本発明の作用は明確ではないが、以下のことが推測される。本発明の重合性組成物は、(A)成分と(B)成分とに特定波長領域における発光強度がそれぞれ異なった化合物を用いることにより、ヒートモードによる熱を用いた画像形成と、フォトンモードによる電子移動若しくはエネルギー移動を用いた画像形成と、を組み合せて行うことができる。これにより、アルミニウム支持体などを用いた場合であっても、かかる支持体近傍では、フォトンモードにより重合反応が進行するため、画像部強度が低下することなく、結果的に、高耐刷性を達成することができると推測される。また、露光面近傍においては、レーザーによる高エネルギー露光によるヒートモードの画像形成が主となり、フォトンモードのみによる画像形成時に生じる如き、露光部領域近傍における所望されないラジカル重合開始剤の分解が生じないことから、網点の太りを抑制するでき、高画質を達成することができると推測される。
【0010】
なお、本発明におけるフォトンモードによる画像形成、ヒートモードによる画像形成の定義について詳述する。Hans−Joachim Timpe,IS&Ts NIP 15:1999 International Conference on Digital Printing Technologies.P.209に記載されているように、感光体材料において光吸収物質(例えば、色素)を光励起させ、化学的或いは物理的変化を経て、画像を形成するその光吸収物質の光励起から化学的或いは物理的変化までのプロセスには大きく分けて二つのモードが存在することが知られている。1つは光励起された光吸収物質が感光材料中の他の反応物質と何らかの光化学的相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動)をすることで失活し、その結果として活性化した反応物質が上述の画像形成に必要な化学的或いは物理変化を引き起こすいわゆるフォトンモードであり、もう1つは光励起された光吸収物質が熱を発生し失活し、その熱を利用して反応物質が上述の画像形成に必要な化学的或いは物理変化を引き起こすいわゆるヒートモードである。
上述の各モードを利用した露光プロセスをフォントモード露光及びヒートモード露光と呼ぶ。フォントモード露光とヒートモード露光の技術的な違いは、目的とする反応のエネルギー量に対し露光する数個の光子のエネルギー量を加算して使用できるかどうかで区別されるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の重合性組成物及びそれを用いた平版印刷版原版について詳細に説明する。
〔重合性組成物〕
本発明の重合性組成物は、(A)700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物(以下、適宜、特定色素Aと称する。)と、(B)700〜1200nmに吸収極大波長を有し、かつ、750〜1300nmにおける発光強度が前記(A)の化合物とは異なる化合物(以下、適宜、特定色素Bと称する。)と、(C)ラジカル重合開始剤と、(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、を含有することを特徴とする。
各構成要素について、以下に、詳細に記載する。
【0012】
[(A)700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物(特定色素A)]
本発明において、(A)成分としての特定色素Aは、700〜1200nmの範囲に吸収極大波長を有していれば、特に限定されないが、好ましくは、シアニン色素、オキソノール色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、アミニウム色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素等が挙げられる。その中でも、特に、750〜1300nmにおける相対発光強度が1.0より大きい化合物であることが好ましい。
【0013】
本発明において、「相対発光強度」とは、下記構造を有する、日本シイベルヘグナー(株)社製、S 0094、2−[2−[2−Chloro−3−[2−(1,3−dihydro−1,1,3−trimethyl−2H−benzo[e]−indol−2−ylidene)−ethylidene]−1−cyclohexene−1−ly]−ethenyl]−1,1,3−trimethyl−1H−benzo[e]indolium 4−methylbenzenesulfonateの発光強度を1とし、それに対する相対強度を表す。
【0014】
【化1】
Figure 2004301915
【0015】
また、ここで測定する発光は、蛍光及び燐光を指し、浜松ホトニクス社製、安定型ピコ秒ライトパルサ、ピコ秒蛍光寿命測定装置C4780を用いて、膜状態或いは溶液状態にて測定することが可能である。
色素の発光を溶液にて測定する際には、メタノール、エタノール、プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ブタノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン等の一般的に用いられる溶媒を使用することができる。
【0016】
本発明における特定色素Aとしては、特に、下記一般式(a)で表されるシアニン色素が好ましい。
【0017】
【化2】
Figure 2004301915
【0018】
上記一般式(a)中、Xは、ハロゲン原子、−X−L、及び以下に示す2つの基のいずれかを表す。ここで、Xは、酸素原子、又は硫黄原子を表し、Lは、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。また、Xは、窒素原子を表し、L及びLは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜12の炭化水素基、炭素原子数6〜14の芳香族基、ヘテロ原子を有する芳香族環、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。L及びLは、互いに結合して、環構造を形成してもよい。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを表す。Xaは後述するZaと同様に定義され、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0019】
【化3】
Figure 2004301915
【0020】
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。感光層塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、RとRとは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0021】
Ar、Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y、Yは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を表す。R、Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を表す。RとR、RとRは、互いに結合して、5員環又は6員環を形成していることが好ましい。また、Zaは、対アニオンを示す。但し、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZaは必要ない。好ましいZaは、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0022】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638号公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360号公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものであって、所望の物性を有する化合物を選択して使用することができる。
【0023】
このような上記一般式(a)で示されるシアニン色素としては、特に、発光の観点から、Xは、−X−L、又は以下に示す基であることが好ましい。
【0024】
【化4】
Figure 2004301915
【0025】
更に、L、L、及びLが、脂環基、ヘテロ環基、ナフチル基、アントラニル基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されたフェニル基であることがより好ましい。加えて、RとRが互いに結合して、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
また、RとR、RとRが、それぞれ互いに結合して、5員環又は6員環を形成していることが好ましい。
以下に、本発明において、(A)特定色素Aとして好適なシアニン色素の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
【化5】
Figure 2004301915
【0027】
【化6】
Figure 2004301915
【0028】
【化7】
Figure 2004301915
【0029】
【化8】
Figure 2004301915
【0030】
【化9】
Figure 2004301915
【0031】
【化10】
Figure 2004301915
【0032】
【化11】
Figure 2004301915
【0033】
【化12】
Figure 2004301915
【0034】
また、本発明において、(A)特定色素Aとして好適に用いられる他の例としては、電荷を有さない色素や、インドレニン骨格上に電荷を有さない色素が挙げられる。その具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
【化13】
Figure 2004301915
【0036】
更に、本発明において、(A)特定色素Aとして好適に用いられる更に他の例としては、ピリリウム色素やチオピリリウム色素が挙げられ、その中でも、脂環構造を2つ以上、好ましくは3つ以上有するものが特に好適である。その具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
【化14】
Figure 2004301915
【0038】
本発明における(A)特定色素Aとして最も好ましいものとしては、反応性、安定性、製造適正の面から、上記一般式(a)で表されるシアニン色素であって、特に、Xがジフェニルアミノ基であり、Ar、Arが電子吸引性基を有することが好ましい。
【0039】
本発明の重合性組成物には、(A)特定色素Aは、組成物を構成する全固形分中、0.5〜15質量%含有されることが好ましく、1〜8質量%含有されることが更に好ましい。
【0040】
[(B)700〜1200nmに吸収極大波長を有し、かつ、750〜1300nmにおける発光強度が前記(A)の化合物とは異なる化合物(特定色素B)]
本発明において、(B)成分としての特定色素Bは、700〜1200nmの範囲に吸収極大波長を有し、750〜1300nmにおける発光強度が前記特定色素Aと異なっていれば、特に限定されないが、好ましくは、シアニン色素、オキソノール色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、アミニウム色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素等が挙げられる。その中でも、特に、750〜1300nmにおける相対発光強度が(A)特定色素Aと0.3以上差があることが好ましく、特に、750〜1300nmにおける相対発光強度が1.0以下である化合物であることが好ましい。
【0041】
本発明における(B)特定色素Bとしては、特に、下記一般式(b)〜一般式(f)で示される染料が好ましい。
【0042】
【化15】
Figure 2004301915
【0043】
一般式(b)中、Xは、水素原子、又はハロゲン原子を表す。ここで、Arは、炭素原子数6〜18の芳香族炭化水素基を示し、かかる芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、アミノ基で置換されていてもよい。また、Xは酸素原子又は、硫黄原子を示し、Lは、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0044】
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、RとRとは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0045】
Ar、Arは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y、Yは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R、Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R、R、R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Zaは、対アニオンを示す。但し、一般式(b)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZaは必要ない。好ましいZaは、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0046】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638号公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360号公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものであって、所望の物性を有する化合物を選択して使用することができる。
【0047】
【化16】
Figure 2004301915
【0048】
【化17】
Figure 2004301915
【0049】
【化18】
Figure 2004301915
【0050】
一般式(c)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zbは対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni、K、Li)などが挙げられる。R〜R14及びR15〜R20は互いに独立に水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(c)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0051】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0052】
【化19】
Figure 2004301915
【0053】
【化20】
Figure 2004301915
【0054】
一般式(d)中、Y及びYは、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Zaは対アニオンを表し、前記一般式(b)におけるZaと同義である。
【0055】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0056】
【化21】
Figure 2004301915
【0057】
【化22】
Figure 2004301915
【0058】
一般式(e)中、R29ないしR31は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。R33及びR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、又はハロゲン原子を示す。n及びmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、又はR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29及び/又はR30はR33と、またR31及び/又はR32はR34と結合して環を形成してもよく、更に、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士或いはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X及びXは各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、X及びXの少なくとも一方は水素原子又はアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基又はペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zcは対アニオンを示し、前記一般式(b)におけるZaと同義である。
【0059】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0060】
【化23】
Figure 2004301915
【0061】
【化24】
Figure 2004301915
【0062】
一般式(f)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0063】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(f)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0064】
【化25】
Figure 2004301915
【0065】
本発明の重合性組成物には、(B)特定色素Bは、組成物を構成する全固形分中、0.5〜15質量%含有されることが好ましく、1〜7質量%含有されることが更に好ましい。
【0066】
なお、本発明の重合性組成物においては、本発明の効果を損なわない程度の範囲において、必要に応じ、上記(A)特定色素A及び(B)特定色素B以外に、従来公知の赤外線吸収剤を含有させることが可能である。
【0067】
[(C)ラジカル重合開始剤]
(C)ラジカル重合開始剤は、光、熱、或いはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、後述する(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物の重合を開始、促進させる化合物を指す。本発明に係るラジカル発生剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを選択して使用することができる。
そのようなラジカル発生剤としては、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オニウム塩化合物等が挙げられる。
【0068】
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」筆に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が挙げられる。
【0069】
より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2―n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ナトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0070】
上記カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチルー(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
【0071】
上記アゾ化合物としては例えば、特開平8−108621に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
【0072】
上記有機過酸化化合物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0073】
上記メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0074】
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各公報記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0075】
上記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837、特開2002−107916、特許第2764769号、特願2000−310808号、等の各公報、及び、Kunz,Martin“Rad Tech”98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体或いは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0076】
上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号、特願2001−132318公報等記載される化合物が挙げられる。
【0077】
上記オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第5、041,358号、同第4,491,628号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同4,933,373号、同4,491,628号、同5,041,358号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、
【0078】
J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。特に反応性、安定性の面からジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩はイオン性のラジカル重合開始剤として機能する。
本発明において好適に用いられる(C)ラジカル重合開始剤はオニウム塩であり、感度、安定性の面から、下記一般式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩がより好ましい。
【0079】
【化26】
Figure 2004301915
【0080】
式(RI−I)中、Ar11は置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。
11−は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオンが好ましい。
【0081】
式(RI−II)中、Ar21、Ar22は各々独立に置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。
21−は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
【0082】
式(RI−III)中、R31、R32、R33は各々独立に置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、好ましくは反応性、安定性の面から、アリール基であることが望ましい。好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。
31−は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましく、特に、特願2000−160323のカルボン酸イオン、ハロゲンイオン、更に好ましくは特願2001−177150、特願2000−266797のカルボン酸イオン又はハロゲンイオンが好ましい。
【0083】
本発明において特に好適に用いることができるオニウム塩構造は、特に、反応性の面から上記一般式(RI−III)において、R31、R32及びR33がいずれもアリール基であることが好ましく、更に、これらのうち、2つ以上のアリール基が電子吸引性基により置換されていることがより好ましく、最も好ましくは、R31、R32及びR33がいずれもハロゲン原子により置換されたアリール基であることである。
【0084】
以下に、本発明の重合性組成物に好適に用いられる(C)ラジカル重合開始剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
【化27】
Figure 2004301915
【0086】
【化28】
Figure 2004301915
【0087】
【化29】
Figure 2004301915
【0088】
【化30】
Figure 2004301915
【0089】
【化31】
Figure 2004301915
【0090】
【化32】
Figure 2004301915
【0091】
【化33】
Figure 2004301915
【0092】
本発明において用いられる(C)ラジカル重合開始剤は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、重合性組成物の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0093】
これらの(C)ラジカル重合開始剤は、重合性組成物全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で重合性組成物中に添加することができる。添加量が0.1質量%未満であると感度が低くなり、また50質量%を越えると平版印刷版原版の記録層に含有させた場合に、印刷時の非画像部に汚れが発生する。
これらの(C)ラジカル重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
[(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物]
本発明に使用される(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物(以下、適宜、重合性化合物と称する。)は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくはま2個以上有する化合物から選ばれることが好ましい。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものを包含する。
【0095】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能若しくは多官能イソシアナート類、エポキシ類との付加反応物、単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
【0096】
また、イソシアナート基や、エポキシ基、等の親電子性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、ハロゲン基や、トシルオキシ基、等の脱離性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0097】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレー卜、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビト一ルペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0098】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0099】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0100】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0101】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0102】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0103】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0104】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(g)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0105】
【化34】
Figure 2004301915
【0106】
前記一般式(g)中、R及びR’は、各々独立に、H原子又はCHを表す。
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417、特公昭62−39418号の各公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0107】
更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号の各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に硬化反応速度に優れた重合性組成物を得ることができる。
【0108】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号の各公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0109】
これらの、(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物としての重合性化合物について、どのような構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な感材の性能設計にあわせて、任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と、強度を両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や、疎水性の高い化合物は感光スピードや、膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。
【0110】
(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じたり、組成物の粘着性による製造工程上の問題(例えば、感材成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、平版印刷版原版とした場合、現像液からの析出が生じる等の問題を生じ得る。これらの観点から、本発明の重合性組成物における(C)成分は、これを平版印刷版原版の記録層に用いる場合も同様に、重合性組成物全固形分に対して、20〜70質量%が好ましく、25〜50質量%がより好ましい。
また、(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0111】
また、平版印刷版原版に用いる場合、記録層中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させ得ることがある。
【0112】
[(E)バインダーポリマー]
本発明の重合性組成物は、上記(A)〜(C)成分に加えて、(E)バインダーポリマーを含有することが好ましい。(E)バインダーポリマーとしては線状有機高分子重合体を含有させることが好ましい。このような「線状有機高分子重合体」としては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とする水或いは弱アルカリ水可溶性又は膨潤性である線状有機高分子重合体が選択される。線状有機高分子重合体は、組成物の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或いは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているもの、及び、本願出願人が先に提案した特願2002−287920号明細書に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸共重合体、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0113】
中でも、現像液によるダメージ抑制の観点から、(E)バインダーポリマーとして、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸共重合体、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸共重合体等の特願2002−287920号明細書に記載されている、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーを含有することが好ましい。
【0114】
【化35】
Figure 2004301915
【0115】
(一般式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から構成され、置換基を除いた原子数2〜30である連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR−を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。)
上記一般式(I)において、Rで表される連結基が、アルキレン構造を有すること、又は、アルキレン構造がエステル結合を介して連結された構造を有することがより好ましい。
【0116】
以下、この一般式(I)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
一般式(I)におけるRは、水素原子又はメチル基を表すが、特にメチル基が好ましい。
一般式(I)におけるRで表される連結基は、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から構成されるもので、その置換基を除いた原子数は2〜30である。具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレンなどが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有していてもよい。
鎖状構造の連結基としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。また、これらのアルキレンがエステル結合を介して連結されている構造もまた好ましいものとして例示することができる。
【0117】
この中でも、一般式(I)におけるRで表される連結基は、炭素原子数3から30までの脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。より具体的には、任意の置換基によって一個以上置換されていてもよいシクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、ターシクロヘキシル、ノルボルナン等の脂肪族環状構造を有する化合物を構成する任意の炭素原子上の水素原子を(n+1)個除き、(n+1)価の炭化水素基としたものを挙げることができる。また、Rは、置換基を含めて炭素数3から30であることが好ましい。
【0118】
脂肪族環状構造を構成する化合物の任意の炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で、一個以上置き換えられていてもよい。耐刷性の点で、Rは縮合多環脂肪族炭化水素、橋架け環脂肪族炭化水素、スピロ脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環集合(複数の環が結合又は連結基でつながったもの)等、2個以上の環を含有してなる炭素原子数5から30までの置換基を有していてもよい脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。この場合も炭素数は置換基が有する炭素原子を含めてのものである。
【0119】
で表される連結基としては、更に、原子数が5〜10のものが好ましく、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、前記の如き環状構造を有するものが好ましい。
【0120】
で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl))、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl))、ヒドロキシシリル基(−Si(OH))及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルボリル基(−B(alkyl))、ジアリールボリル基(−B(aryl))、アルキルアリールボリル基(−B(alkyl)(aryl))、ジヒドロキシボリル基(−B(OH))及びその共役塩基基、アルキルヒドロキシボリル基(−B(alkyl)(OH))及びその共役塩基基、アリールヒドロキシボリル基(−B(aryl)(OH))及びその共役塩基基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0121】
記録層の設計にもよるが、水素結合可能な水素原子を有する置換基や、特に、カルボン酸よりも酸解離定数(pKa)が小さい酸性を有する置換基は、耐刷性を下げる傾向にあるので好ましくない。一方、ハロゲン原子や、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基などの疎水性置換基は、耐刷を向上する傾向にあるのでより好ましく、特に、環状構造がシクロペンタンやシクロヘキサン等の6員環以下の単環脂肪族炭化水素である場合には、このような疎水性の置換基を有していることが好ましい。これら置換基は可能であるならば、置換基同士、又は置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよく、置換基は更に置換されていてもよい。
【0122】
一般式(I)におけるAがNR−である場合のRは、水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。このRで表される炭素数1〜10までの一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。Rが有してもよい置換基としては、Rが導入し得る置換基として挙げたものと同様である。但し、Rの炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。
一般式(I)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。
【0123】
一般式(I)におけるnは、1〜5の整数を表し、耐刷の点で好ましくは1である。
【0124】
以下に、本発明に特に好適なバインダーポリマーを構成する、一般式(I)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0125】
【化36】
Figure 2004301915
【0126】
【化37】
Figure 2004301915
【0127】
【化38】
Figure 2004301915
【0128】
【化39】
Figure 2004301915
【0129】
【化40】
Figure 2004301915
【0130】
【化41】
Figure 2004301915
【0131】
【化42】
Figure 2004301915
【0132】
【化43】
Figure 2004301915
【0133】
【化44】
Figure 2004301915
【0134】
【化45】
Figure 2004301915
【0135】
一般式(I)で表される繰り返し単位は、バインダーポリマー中に1種類のみを有していてもよいし、異なる2種類以上を有していてもよい。即ち、本発明における好ましいバインダーポリマーとしては、一般式(I)で表される繰り返し単位のみからなるポリマーであってもよいが、他の共重合成分と組み合わされたコポリマーとして使用されることが一般的である。コポリマーにおける一般式(I)で表される繰り返し単位の総含有量は、その構造や、重合性組成物の設計等によって適宜決められるが、好ましくはポリマー成分の総モル量に対し、1〜99モル%、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは5〜20モル%の範囲で含有される。
【0136】
コポリマーとして用いる場合の共重合成分としては、ラジカル重合可能なモノマーであれば従来公知のものを制限なく使用できる。具体的には、「高分子データハンドブック−基礎編−(高分子学会編、培風館、1986)」記載のモノマー類が挙げられる。このような共重合成分は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0137】
前記各バインダーポリマーの中でも、特に、〔アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体、特開2000−131837公報、同2002−62648公報、同2000−187322公報、或いは、前記特願2002−287920号明細書に記載されているようなアクリル基、メタクリル基、アリル基を含有するポリマー等が、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
中でも特に、前記一般式(I)で表される繰り返し単位と、下記一般式(II)〜(IV)で表される構造のラジカル重合性基(炭素−炭素二重結合)と、を有するポリマーが最も好ましい。
【0138】
【化46】
Figure 2004301915
【0139】
一般式(II)〜(IV)中、R〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。X、Yは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又はN−R15を表し、Zは、酸素原子、硫黄原子、−N−R15又はフェニレン基を表す。ここで、R15は、水素原子、又は1価の有機基を表す。
【0140】
前記一般式(II)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表すが、Rとしては、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基など有機基が挙げられ、中でも具体的には、水素原子、メチル基、メチルアルコキシ基、メチルエステル基が好ましい。また、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、中でも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
ここで、これらの基に導入し得る置換基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピオキシカルボニル基、メチル基、エチル基、フェニル基等が挙げられる。
Xは、酸素原子、硫黄原子、又は、−N−R15を表し、ここで、R15としては、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられる。
【0141】
前記一般式(III)において、R〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表すが、R〜R11は、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、中でも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
ここで、これらの基に導入し得る置換基としては、一般式(II)において導入し得る置換基として挙げたものが例示される。
Yは、酸素原子、硫黄原子、又は−N−R15を表す。R15としては、一般式(II)におけるのと同様のものが挙げられる。
【0142】
前記一般式(IV)において、R12〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表すが、具体的には例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、中でも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
ここで、これらの基に導入し得る置換基としては、これらの基に導入し得る置換基としては、一般式(II)において導入し得る置換基として挙げたものが例示される。
Zは、酸素原子、硫黄原子、−N−R15又はフェニレン基を表す。R15としては、一般式(II)におけるのと同様のものが挙げられる。
【0143】
これらのラジカル重合性基の中でも、前記一般式(II)及び(III)で表される構造を有するラジカル重合性基であることが好ましい。
【0144】
また、その他のバインダーポリマーとして、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特願平10−116232号等の各公報に記載される、酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
また、特開平11−171907号公報に記載のアミド基を有するバインダーポリマーは優れた現像性と膜強度をあわせもっており、このバインダーポリマーもまた、本発明に適用することができる。
【0145】
更に、この他に水溶性線状有機高分子として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また、硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。これらの線状有機高分子重合体は全組成物中に任意な量を混和させることができる。しかし、その混和量が90質量%を超える場合には形成される画像強度等の点で好ましい結果を与えない。好ましくは30〜85質量%である。また、上述した(C)重合性化合物と線状有機高分子重合体は、質量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。
【0146】
このような、各バインダーポリマーは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0147】
本発明における(E)バインダーポリマーの分子量は、画像形成性や耐刷性の観点から適宜決定されるが、通常、好ましい分子量としては、2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜200,000の範囲である。
【0148】
本発明における(E)バインダーポリマーとしては、実質的に水に不溶でアルカリ水溶液に可溶なものが用いられる。このため、現像液として、環境上好ましくない有機溶剤を用いないか若しくは非常に少ない使用量に制限できる。このような(E)バインダーポリマーの酸価(ポリマーlgあたりの酸含率を化学等量数で表したもの)と分子量は画像強度と現像性の観点から適宜選択される。好ましい酸価は、0.4〜3.0meq/gであり、好ましい分子量は2000から50万の範囲で、より好ましくは、酸価が0.6〜2.0、分子量が1万から30万の範囲である。
【0149】
本発明において、重合性組成物に対する露光光源としては、好ましくは1000〜10000W/cmであり、より好ましくは2000〜10000W/cmであり、最も好ましくは5000〜10000W/cmの範囲の照度を有する800〜830nmの赤外線レーザーダイオードを用いることが好ましい。
また、本発明の重合性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いる場合、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの酸素遮断層(保護層)が無くとも画像形成能を発現することはできるが、記録層を1000W/cm以上の出力レーザーで露光する場合、アブレーションを防止するためにも、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの保護層が設けられていることが好ましく、また、感度の点からも、かかる保護層が設けられていることが好ましい。
【0150】
〔平版印刷版原版〕
次に、前記の重合性組成物を用いた本発明の平版印刷版原版について説明する。本発明の平版印刷版原版では、記録層に前記重合性組成物を用いる。
(記録層)
まず、本発明の平版印刷版原版において画像形成機能を有する記録層について説明する。本発明の平版印刷版原版の記録層には、(A)特定色素Aと、(B)特定色素Bと、(C)ラジカル重合開始剤と、(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、更に好ましくは、(E)バインダーポリマーと、を含有する重合性組成物が用いられる。この記録層は、赤外線レーザの照射により、(A)特定色素A及び(B)特定色素Bが、発光(フォトンモード)及び発熱(ヒートモード)し、その発生した光等により(C)ラジカル重合開始剤が分解してラジカルを発生し、(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物の硬化反応を促進し、露光部が硬化して画像部となるネガ型の画像を形成する。
【0151】
本発明の平版印刷版原版の記録層を形成するにあたって、(C)ラジカル重合開始剤は、記録層を構成する全固形分中、0.5〜20質量%含有されることが好ましい。この(C)ラジカル重合開始剤は、(A)特定色素A及び(B)特定色素Bと組み合わさることで、赤外線レーザを照射した際に、(A)特定色素A及び(B)特定色素Bから発生する光又は熱或いはその双方のエネルギーによりラジカルを発生し、(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物の重合を開始、促進させる機能を有する。
【0152】
平版印刷版用原版の記録層に用いる(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物は、該化合物の説明において詳述したとおりの化合物を用いるが、どのような化合物を用いるかは、前記した要件の他、後述の支持体、オーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。記録層中の(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じたり、記録層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、感材成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、平版印刷版原版とした場合、現像液からの析出が生じる等の問題を生じ得る。これらの観点から、好ましい配合比は、多くの場合、記録層を構成する組成物全固形分に対して5〜80質量%、好ましくは25〜75質量%である。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し得る。
【0153】
なお、本発明の前記重合性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いる場合には、前記した(A)特定色素A及び(B)特定色素Bは、記録層に用いられる重合性組成物中に他の成分と同一の層に添加してもよいし、記録層以外の層を設けそこへ添加することもできる。また、(C)ラジカル重合開始剤も同様に、記録層以外の層へ添加することもできる。
ネガ型の平版印刷版原版の記録層を作成(製膜)した際に、記録層の波長760nm〜1200nmの範囲における吸収極大波長での光学濃度が、0.1〜3.0の間にあることが好ましい。この範囲をはずれた場合、感度が低くなる傾向がある。光学濃度は前記(A)特定色素Aの添加量と記録層の厚みとにより決定されるため、所定の光学濃度は両者の条件を制御することにより得られる。記録層の光学濃度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、或いは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの記録層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に記録層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
【0154】
(F)その他の成分
本発明の平版印刷版原版の記録層を構成する組成物中には、更に、その用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤について説明する。
【0155】
(F−1)共増感剤
重合性組成物にある種の添加剤を用いることで、感度を更に向上させることができる。このような化合物を以後、共増感剤という。これらの作用機構は、明確ではないが、多くは次のような化学プロセスに基づくものと考えられる。即ち、熱重合開始剤により開始される光反応、と、それに引き続く付加重合反応の過程で生じる様々な中間活性種(ラジカル、カチオン)と、共増感剤が反応し、新たな活性ラジカルを生成するものと推定される。これらは、大きくは、(i)還元されて活性ラジカルを生成し得るもの、(ii)酸化されて活性ラジカルを生成し得るもの、(iii)活性の低いラジカルと反応し、より活性の高いラジカルに変換するか、若しくは連鎖移動剤として作用するもの、に分類できるが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては、通説がない場合も多い。
【0156】
(i)還元されて活性ラジカルを生成する化合物
炭素−ハロゲン結合結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、トリハロメチル−s−トリアジン類や、トリハロメチルオキサジアゾール類等が好適に使用できる。
窒素−窒素結合を有する化合物:還元的に窒素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的にはヘキサアリールビイミダゾール類等が好適に使用される。
酸素−酸素結合を有する化合物:還元的に酸素−酸素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、有機過酸化物類等が好適に使用される。
オニウム化合物:還元的に炭素−ヘテロ結合や、酸素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、N−アルコキシピリジニウム(アジニウム)塩類等が好適に使用される。
フエロセン、鉄アレーン錯体類:還元的に活性ラジカルを生成し得る。
【0157】
(ii)酸化されて活性ラジカルを生成する化合物
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
アルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、ベンジル基等が好適である。具体的には、例えば、エタノールアミン類、N−フェニルグリシン類、N−トリメチルシリルメチルアニリン類等が挙げられる。
含硫黄、含錫化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子、錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。また、S−S結合を有する化合物もS−S解裂による増感が知られる。
【0158】
α−置換メチルカルボニル化合物:酸化により、カルボニル−α炭素間の結合解裂により、活性ラジカルを生成し得る。また、カルボニルをオキシムエーテルに変換したものも同様の作用を示す。具体的には、2−アルキル−1−[4−(アルキルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロノン−1類、並びに、これらと、ヒドロキシアミン類とを反応したのち、N−OHをエーテル化したオキシムエーテル類を挙げることができる。
スルフィン酸塩類:還元的に活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン駿ナトリウム等を挙げることができる。
【0159】
(iii)ラジカルと反応し高活性ラジカルに変換、若しくは連鎖移動剤として作用する化合物:例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、若しくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成し得る。具体的には、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類等が挙げられる。
【0160】
これらの(F−1)共増感剤のより具体的な例は、例えば、特開昭9−236913号公報中に、感度向上を目的とした添加剤として、多く記載されており、それらを本発明においても適用することができる。
これらの(F−1)共増感剤は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。使用量は前記(C)重合性化合物100質量部に対し、0.05〜100質量部、好ましくは1〜80質量部、更に好ましくは3〜50質量部の範囲が適当である。
【0161】
(F−2)重合禁止剤
また、本発明においては、記録層を構成する重合性組成物の製造中又は保存中において(C)重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、(F−2)重合禁止剤として、少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t―ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t―ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、平版印刷版原版とする場合、支持体等への塗布後の乾燥の過程でその記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0162】
(F−3)着色剤等
更に、本発明の平版印刷版原版においては、その記録層の着色を目的として染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、多くの染料は光重合系記録層の感度の低下を生じるので、着色剤としては、特に顔料の使用が好ましい。具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。染料及び顔料の添加量は全組成物の約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
【0163】
(F−4)その他の添加剤
更に、本発明の重合性組成物を平版印刷版用原版に用いる場合、硬化皮膜の物性を改良するために無機充填剤や、その他可塑剤、記録層表面のインク着肉性を向上させ得る感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0164】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と結合剤との合計質量に対し10質量%以下添加することができる。
【0165】
また、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するための、UV開始剤や、熟架橋剤等の添加もできる。
その他、記録層と支持体との密着性向上や、未露光記録層の現像除去性を高めるための添加剤、中間層を設けることを可能である。例えば、ジアゾニウム構造を有する化合物や、ホスホン化合物、等、基板と比較的強い相互作用を有する化合物の添加や下塗りにより、密着性が向上し、耐刷性を高めることが可能であり、一方ポリアクリル酸や、ポリスルホン酸のような親水性ポリマーの添加や下塗りにより、非画像部の現像性が向上し、汚れ性の向上が可能となる。
【0166】
〔平版印刷版原版の製造〕
本発明の平版印刷版原版は、記録層塗布液や、保護層等の所望の層の塗布液用成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより製造することができる。
ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N―ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ―ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
【0167】
前記記録層の支持体への塗布量は、記録層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性等の影響を考慮し、用途に応じ適宜選択することが望ましい。塗布量が少なすぎる場合には、耐刷性が十分でなくなる。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要するため好ましくない。本発明の平版印刷版原版における塗布量は、一般的には、乾燥後の質量で約0.lg/m〜約10g/mの範囲が適当である。より好ましくは0.5〜5g/mである。
【0168】
(保護層)
本発明の平版印刷版原版では、重合性化合物を含む記録層の上に、必要に応じて保護層を設けることができる。このような平版印刷版原版は、通常、露光を大気中で行うが、保護層は、記録層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の記録層への混入を防止し、大気中での露光による画像形成反応の阻害を防止する。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いる光の透過性が良好で、記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。
【0169】
このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3、458、311号、特公昭55−49729号に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては、例えば、比較的、結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることがよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られていが、これらのうち、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。
【0170】
ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100%加水分解され、分子量が300から2400の範囲のものをあげることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
【0171】
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。しかしながら、極端に酸素遮断性を高めると、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。また、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。即ち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を新油性の重合層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。
【0172】
これに対し、これら2層間の接着性を改すべく種々の提案がなされている。例えば、特開昭49−70702号、英国公開第1,303,578号には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジヨン又は水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、重合層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば、米国特許第3,458,311号、特公昭55−49729号に詳しく記載されている。
【0173】
更に、保護層に他の機能を付与することもできる。例えば、露光に使う光(例えば、赤外線レーザならば波長760〜1200nm)の透過性に優れ、かつ露光に係わらない波長の光を効率良く吸収し得る、着色剤(水溶性染料等)の添加により、感度低下を起こすことなく、セーフライト適性を更に高めることができる。
【0174】
(樹脂中間層)
本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、記録層と支持体の間にアルカリ可溶性高分子からなる樹脂中間層を設けることができる。露光によりアルカリ現像液への溶解性が低下する赤外線感応層である光重合性の化合物を含む記録層が、露光面或いはその近傍に設けられることで赤外線レーザに対する感度が良好であるとともに、支持体と該赤外線感応性の記録層との間にこの樹脂中間層が存在し、断熱層として機能することで、赤外線レーザの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率良く使用されることからの高感度化が図れる。また、露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性となった感光層がこの樹脂中間層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、かつ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、未露光部においては、未硬化のバインダー成分が速やかに現像液に溶解、分散し、更には、支持体に隣接して存在するこの樹脂中間層がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解するため、現像性に優れるものと考えられる。
【0175】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)等が挙げられる。これらは、樹脂フィルムや金属板などの単一成分のシートであっても、2以上の材料の積層体であってもよく、例えば、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙やプラスチックフィルム、異種のプラスチックフィルム同志の積層シート等が含まれる。
【0176】
前記支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。
前記アルミニウム板の厚みは、およそ0.1〜0.6mm程度、好ましくは0.15〜0.4mm、特に好ましくは0.2〜0.3mmである。
【0177】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための、例えば、界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
この様に粗面化されたアルミニウム板は、所望により、アルカリエッチング処理、中和処理を経て、表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施すことができる。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0178】
陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m以上が好適であるが、より好ましくは2.0〜6.0g/mの範囲である。陽極酸化被膜が1.0g/m未満であると耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
尚、このような陽極酸化処理は平板印刷版の支持体の印刷に用いる面に施されるが、電気力線の裏回りにより、裏面にも0.01〜3g/mの陽極酸化被膜が形成されるのが一般的である。
【0179】
支持体表面の親水化処理は、上記陽極酸化処理の後に施されるものであり、従来より知られている処理法が用いられる。このような親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号公報に開示されているようなアルカリ金属珪酸塩(例えば、珪酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体が珪酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号公報に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が用いられる。
これらの中で、本発明において特に好ましい親水化処理は珪酸塩処理である。珪酸塩処理について、以下に説明する。
【0180】
上述の如き処理を施したアルミニウム板の陽極酸化皮膜を、アルカリ金属珪酸塩が0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜10質量%であり、25℃でのpHが10〜13である水溶液に、例えば、15〜80℃で0.5〜120秒浸漬する。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHが10より低いと液はゲル化し13.0より高いと酸化皮膜が溶解されてしまう。本発明に用いられるアルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、燐酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩として、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、蓚酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。アルカリ土類金属塩若しくは、第IVB族金属塩は単独又は2以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10質量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0質量%である。
珪酸塩処理により、アルミニウム板表面上の親水性が一層改善されるため、印刷の際、インクが非画像部に付着しにくくなり、汚れ性能が向上する。
【0181】
(バックコート層)
支持体の裏面には、必要に応じて、バックコート層が設けられてもよい。かかるバックコートとしては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OCなどの珪素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから与られる金属酸化物の被覆層が耐現像性に優れており特に好ましい。
【0182】
〔露光〕
以上のようにして、本発明の平版印刷版原版を作成することができる。この平版印刷版原版は、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光される。本発明においては、レーザ照射後すぐに現像処理を行ってもよいが、レーザ照射工程と現像工程の間に加熱処理を行ってもよい。加熱処理の条件は、80℃〜150℃の範囲内で10秒〜5分間行うことが好ましい。この加熱処理により、レーザ照射時、記録に必要なレーザエネルギーを減少させることができる。
【0183】
〔現像〕
本発明の平版印刷版原版は、通常、赤外線レーザにより画像露光したのち、好ましくは、水又はアルカリ性水溶液にて現像される。
本発明においては、レーザー照射後直ちに現像処理を行ってもよいが、レーザー照射工程と現像工程との間に加熱処理工程を設けることもできる。加熱処理条件は、80℃〜150℃の範囲で、10秒〜5分間行うことが好ましい。この加熱処理により、レーザー照射時、記録に必要なレーザーエネルギーを減少させることができる。
現像液としては、アルカリ性水溶液が好ましく、好ましいpH領域としては、pH10.5〜12.5の範囲が挙げられ、pHll.0〜12.5の範囲のアルカリ性水溶液により現像処理することが更に好ましい。アルカリ性水溶液としてpH10.5未満のものを用いると非画像部に汚れが生じやすくなる傾向があり、pH12.5を超える水溶液により現像処理すると画像部の強度が低下するおそれがある。
【0184】
現像液として、アルカリ性水溶液を用いる場合、本発明の平版印刷版原版の現像液及び補充液としては、従来公知のアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0185】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液と同じもの又は、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られている。本発明においても、この補充方式が好ましく適用される。
【0186】
現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤等を添加できる。
現像液中には界面活性剤を1〜20質量%加えることが好ましく、より好ましくは、3〜10質量%の範囲である。界面活性剤の添加量が1質量%未満であると現像性向上効果が充分に得られず、20質量%を超えて添加すると画像の耐摩耗性など強度が低下するなどの弊害が出やすくなる。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。具体的には、例えば、ラウリルアルコールサルフェートのナトリウム塩、ラウリルアルコールサルフェートのアンモニウム塩、オクチルアルコールサルフェートのナトリウム塩、例えば、イソプロピルナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、イソブチルナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、ポリオキシエチレングリコールモノナフチルエチル硫酸エステルのナトリウム塩、ドデンルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、メタニトロベンゼンスルホン酸のナトリウム塩などのようなアルキルアリールスルホン酸塩、第2ナトリウムアルキルサルフェートなどの炭素数8〜22の高級アルコール硫酸エステル類、セチルアルコールリン酸エステルのナトリウム塩などのような脂肪族アルコールリン酸エステル塩類、例えば、C1733CON(CH)CHCHSONaなどのようなアルキルアミドのスルホン酸塩類、例えば、ナトリウムスルホコハク酸ジオクチルエステル、ナトリウムスルホコハク酸ジヘキシルエステルなどの二塩基性脂肪族エステルのスルホン酸塩類、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムメトサルフェートなどのアンモニウム塩類、例えば、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩などのアミン塩、例えば、グリセロールの脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸モノエステルなどの多価アルコール類、例えば、ポリエチレングリコールモノナフチルエチル、ポリエチレングリコールモノ(ノエルフェノール)エチルなどのポリエチレングリコールエチル類などが含まれる。
【0187】
好ましい有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10質量%以下のものが挙げられ、更に好ましくは水に対する溶解度が5質量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニルプロパノール、1,4−フェニルブタノール、2,2−フェニルブタノール、1,2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m―メトキシベンジルアルコール、p―メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール及び3−メチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。有機溶媒の含有量は、使用時の現像液の総質量に対して1〜5質量%が好適である。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶媒の量が増すにつれ、界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これは界面活性剤の量が少ない状態で、有機溶媒の量を多く用いると有機溶媒が溶解せず、従って良好な現像性の確保が期待できなくなるからである。
【0188】
更に、現像液及び補充液には必要に応じて、消泡剤、硬水軟化剤のような添加剤を含有させることもできる。硬水軟化剤としては、例えば、Na、Na、Na、NaP(NaOP)ΡONa、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、アミノポリカルボン酸類(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩)、他のポリカルボン酸類(例えば、2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2一ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩など)、有機ホスホン酸類(例えば、1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩など)を挙げることができる。このような硬水軟化剤の最適量は、使用される硬水の硬度及びその使用量に応じて変化するが、一般的には、使用時の現像液中に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲で含有させ得る。
【0189】
更に、自動現像機を用いて、該平版印刷版を現像する場合には、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。この場合、米国特許第4,882,246号に記載されている方法で補充することが好ましい。
【0190】
このような界面活性剤、有機溶剤及び還元剤等を含有する現像液としては、例えば、特開昭51−77401号に記載されている、ベンジルアルコール、アニオン性界面活性剤、アルカリ剤及び水からなる現像液組成物、特開昭53−44202号に記載されている、ベンジルアルコール、アニオン性界面活性剤、及び水溶性亜硫酸塩を含む水性溶液からなる現像液組成物、特開昭55−155355号に記載されている、水に対する溶解度が常温において10質量%以下である有機溶剤、アルカリ剤、及び水を含有する現像液組成物等が挙げられ、本発明においても好適に使用される。
【0191】
以上記述した現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の平版印刷版の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0192】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷版原版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、電気伝導度をセンサーにて感知し、自動的に補充することもできる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0193】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスクィージ、或いは、スクィージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0194】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0195】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0196】
(実施例1〜12、比較例1、2)
[基板の作製]
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレンで洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミス−水懸濁液を用いこの表面を砂目立て表面のエッチングを行い、水洗後、更に20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
次に、この板を7%硫酸を電解液として電流密度15A/dmで3g/mの直流電極酸化被膜を設けた後、水洗し、乾燥して基板[A]を作成した。
基板[A]を珪酸ナトリウム2質量%水溶液で25℃で15秒処理し、水洗して基板[B]を作成した。
【0197】
[中間層の形成]
次に下記の手順によりSG法の液状組成物(ゾル液)を調整した。
(ゾル液組成)
・メタノール 130g
・水 20g
・85質量%リン酸 16g
・テトラエトキシシラン 50g
・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 60g
【0198】
上記の各化合物を混合し、撹拌した。約5分で発熱が認められた。60分間反応させた後、内容物を別の容器へ移し、メタノール3000gを加えることにより、ゾル液を得た。
このゾル液をメタノール/エチレングリコール=9/1(質量比)で希釈して、上述の様に作製された基板[A]上に、基板上のSiの量が3mg/mとなるように塗布し、100℃にて1分間乾燥させ、基板[C]を得た。
【0199】
[平版印刷版原版の作製]
上述のように作製された基板[A]乃至基板[C]のいずれかを支持体とし、その表面に下記組成の記録層塗布液〔I〕又は〔II〕を塗布し、125℃で1分乾燥し、1.4g/mの記録層を形成した。使用する基板、(A)特定色素A、(B)特定色素B、(C)ラジカル重合開始剤、(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物(表1中では重合性化合物と表記)、及び(E)バインダーポリマーは下記表1に示す通りである。なお、(A)特定色素A、(B)特定色素B、及び(C)ラジカル重合開始剤は、それぞれ、上記の具体例として挙げられたものを用いており、表中にはその具体例を示す数字又は数字とアルファベットの組み合わせが記載されている。
【0200】
Figure 2004301915
【0201】
Figure 2004301915
【0202】
【表1】
Figure 2004301915
【0203】
〔表1中のラジカル重合性化合物〕
表1中に記載の(C)成分であるラジカル重合開始剤〔(R−1)〜(R−5)〕の構造を以下に示す。
【0204】
【化47】
Figure 2004301915
【0205】
〔表1中の重合性化合物〕
(M−1)
プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(D310、日本化薬社製)
(M−2)
官能ウレタンアクリレート(U−410、新中村社製)
【0206】
〔表1中のバインダーポリマー〕
(B−1)
アリルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/ライトエステルHO−MS(共栄社化学社製)
(共重合モル比:60/20/20、Mw=100,000)
(B−2)
下記ジイソシアネートとジオールの縮合物であるポリウレタン樹脂
(a)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
(b)ヘキサメチレンジイソシアネート
(c)ポリプロピレングルコール(重量平均分子量:500)
(d)2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸
(共重合モル比:(a)/(b)/(c)/(d)=35/15/18/32、重量平均分子量(Mw)=50,000)
【0207】
〔(A)特定色素A及び(B)特定色素Bの相対発光強度〕
820nmにおける吸光度を0.5となるようにエタノールにて希釈した(A)特定色素A及び(B)特定色素Bのぞれぞれの溶液に、浜松ホトニクス社製安定型ピコ秒ライトパルサ、及び、レーザーダイオードSLDH078を用い、繰り返し周波数2MHz、パルス幅50ps、ピークパワー70mWで発振した820±20nmのレーザ光を照射し、浜松ホトニクス社製ピコ秒蛍光寿命測定装置C4780を用いて発光強度を測定した。そして、日本シイベルヘグナー(株)製、S 0094、2−[2−[2−Chloro−3−[2−(1,3−dihydro−1,1,3−trimethyl−2H−benzo[e]−indol−2−ylidene)−ethylidene]−1−cyclohexene−1−ly]−ethenyl]−1,1,3−trimethyl−1H−benzo[e]indolium 4−methylbenzenesulfonateについても上記と同条件にて発光強度を測定し、その発光強度を1とし、それに対する相対強度を求めた。得られた(A)特定色素A及び(B)特定色素Bの相対発光強度を表1に記載した。
【0208】
[保護層の形成]
上述のように形成された記録層上に、ポリビニルアルコール(ケン化度:98モル%、重合度:550)の3質量%水溶液を、乾燥後の塗布量が2g/mとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して保護層を設けた。
以上のようにして、実施例1〜12、比較例1、2の平版印刷版原版を得た。
【0209】
(露光・現像処理)
得られた実施例1〜12、比較例1、2の平版印刷版用原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力6Wで、外面ドラムの回転数を150回転として露光した。次いで、35℃の現像液(富士写真フイルム社製DV−2現像液/水=1/4)に、30秒浸漬して現像し、平版印刷版を得た。
【0210】
[評価]
〔耐刷性(網点画像領域)の評価〕
小森コーポレーション(株)製リスロン40印刷機を使用し、インキとして大日本インキ化学工業(株)製のValues・G墨N、湿し水成分として富士写真フイルム(株)製IF−102を4%使用して印刷を行った。
耐刷性の評価は、比較例1において、面積率2%の網点画像を形成し、その画像が正常な状態が得られた印刷物の枚数を100とし、この値との相対値により評価した。結果を表1に併記する。
【0211】
〔画質の評価〕
富士写真フイルム(株)製刷版LH−N12を使用し、そこに50%網点の画像を形成した。同様の条件で、得られた実施例1〜12、比較例1、2の平版印刷版用原版にも50%網点の画像を形成した。これらの網点を光学顕微鏡により観測し、面積を計算した。LH−N12に対する網点の太りの割合を網点の面積比により算出した。4%以内であれば、高画質性を維持していることを表す。
【0212】
表1の結果より、本発明の平版印刷版原版(実施例1〜12)は、比較例1、2に比べ、耐刷性に優れ、かつ、画質(網点の太り)にも優れていることが分かる。一方、相対発光強度が1.0の色素のみを用いた比較例1の平版印刷版原版は、網点の太りは抑制され画質は優れているものの、耐刷性が低いことが判明した。また、相対発光強度が1.3の色素のみを用いた比較例2の平版印刷版原版は、耐刷性は実施例1〜12と同程度であるものの、網点の太りが顕著に見られ、画質が劣っていることが判明した。
【0213】
【発明の効果】
本発明によれば、赤外領域の高出力レーザーを用いた場合に、高耐刷性を維持したまま、網点の太りを抑制し、高画質を達成することが可能である重合性組成物、及び、その組成物を用いたネガ型記録層を有する平版印刷版原版を提供することができる。

Claims (3)

  1. (A)700〜1200nmに吸収極大波長を有する化合物と、(B)700〜1200nmに吸収極大波長を有し、かつ、750〜1300nmにおける発光強度が前記(A)の化合物とは異なる化合物と、(C)ラジカル重合開始剤と、(D)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、を含有することを特徴とする重合性組成物。
  2. 前記(A)成分が、750〜1300nmにおける相対発光強度が1.0より大きい化合物であり、かつ、前記(B)成分が、750〜1300nmにおける相対発光強度が1.0以下である化合物であることを特徴とする請求項1に記載の重合性組成物。
  3. 支持体上に、請求項1又は2に記載の重合性組成物を含む記録層を備えてなることを特徴とする平版印刷版原版。
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