JP2004300031A - (メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤 - Google Patents
(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤 Download PDFInfo
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- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は化学的に安定で高沸点を有する、ピペリジン−1−オキシル誘導体を含む(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤、これを添加する重合防止方法、および組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法は、一般にアルコールと(メタ)アクリル酸エステルからのエステル交換反応や、アルコールと(メタ)アクリル酸からの直接エステル化反応などが採用されている。また(メタ)アクリル酸エステル類の精製は一般に蒸留精製が採用されている。これらの工程において(メタ)アクリル酸エステル類の重合を防止する方法が大きな課題となっている。また、重合防止の性能だけでなく、反応中に安定であり、かつ蒸留操作で製品の(メタ)アクリル酸エステル類と容易に分離できることが望まれている。
【0003】
(メタ)アクリル酸エステル類の製造時に用いられる重合防止剤としては、N−オキシルラジカル構造を有する化合物が公知である。例えば(a)2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシルや2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾイルオキシピペリジン−N−オキシル(特許文献1)、(b)4−アセチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(特許文献2)、(c)1,3,8−トリアザ−7,7−ジイソブチル−9,9−ジメチル−2,4−ジオキソ−スピロ[4,5]デカン−8−オキシド(特許文献3)、(d)ビス(2,2,6,6−テトラメチル−N−オキシルピペリジル)スクシネート(特許文献4)などが公知である。
【0004】
【特許文献1】
特開昭56−38301号公報
【特許文献2】
特開平8−59524号公報
【特許文献3】
特公昭45−25293号公報
【特許文献4】
特許第3209607号公報
【0005】
しかし、(a)の重合防止剤は、分子内に水酸基やエステル基を有するため、エステル化反応条件で一部が分解したり、副反応を起こし4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのような不純物を生成し(メタ)アクリル酸エステル類の蒸留製品に混入してしまう。また構造を保持した場合でも分子量が比較的小さいため(メタ)アクリル酸エステル類の蒸留製品に混入してしまう。(b)の重合防止剤は、エステル化条件では安定であるが、分子量が比較的小さいため(メタ)アクリル酸エステル類の蒸留製品に混入してしまう。(c)の重合防止剤は、エステル化条件では安定で、かつ比較的分子量が大きく蒸留による精製で製品の(メタ)アクリル酸エステル類と分離可能であるが、重合防止能を有するN−オキシルラジカルを1個しか含まないため分子量あたりのN−オキシルラジカル含有率が低く、充分に重合を防止するためには使用量の増大を招きコスト的に不利である。(d)の重合防止剤は、分子量が比較的大きく蒸留により分離するのに適しており、分子中に2個のN−オキシル基を有するため重合防止に必要な使用量の点で優位であるが、(メタ)アクリル酸エステル類の生成反応工程で使用すると、エステル基を含有するため(メタ)アクリル酸エステル類の生成反応条件下でエステル交換反応を起こし不純物の生成を招く。
【0006】
このように、従来の重合防止剤で(メタ)アクリル酸エステル類の製造におけるエステル化反応工程および蒸留工程の両工程に適した化学的に安定で蒸留時に釜残として除去可能で、使用量の増大を招かない重合防止剤は見出されていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、化学的および熱的に安定で、高沸点を有することで蒸留時に除去可能な、反応工程から蒸留工程までの工程において、また製品に添加して使用可能な重合防止剤、これを添加する重合防止方法および組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記本発明の目的は、以下の本発明により達成される。
〔1〕 一般式(1)で表される化合物を含む(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤。
【0009】
【化7】
(式中、Aは、脂肪族、芳香族または脂環式の4価カルボン酸残基を示す。)
〔2〕 前記一般式(1)で表される化合物が、下記式(2)ないし(6)のいずれかで表される化合物である前記〔1〕記載の重合防止剤。
【0010】
【化8】
【0011】
【化9】
【0012】
【化10】
【0013】
【化11】
【0014】
【化12】
〔3〕 (メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法であって、前記(メタ)アクリル酸エステル類に〔1〕記載の重合防止剤を添加することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法。
〔4〕 (メタ)アクリル酸エステル類100質量部に対し、〔1〕記載の重合防止剤を0.0001〜5質量部含む、重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明によれば、一般式(1)で表される化合物を含む重合防止剤は(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤として、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類の生成反応工程、(メタ)アクリル酸エステル類の蒸留工程、(メタ)アクリル酸エステル類を保存する際などの重合防止剤として用いることができる。
なお、本発明において、前記(メタ)アクリル酸エステル類における、「(メタ)アクリル酸エステル」のような表記は、「アクリル酸エステル」または「(メタ)アクリル酸エステル」を表す。
【0016】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤に含まれる、一般式(1)で表される化合物の例を以下に示す。
【0017】
【化13】
【0018】
【化14】
【0019】
【化15】
【0020】
【化16】
【0021】
【化17】
【0022】
一般式(1)で表される化合物のなかでは、原料の入手が容易であるところから、上記(2)〜(6)式で表される化合物が好ましい。
【0023】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤に含まれる一般式(1)で表される化合物は、例えば、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと4価のカルボン酸、4価のカルボン酸のエステルまたは4価のカルボン酸の二無水物を反応させてビスアミドを経てビスイミドを合成し、次いでこれを酸化反応によってN−オキシル化合物へと誘導することにより容易に得ることができる。
【0024】
4価のカルボン酸、その無水物およびそのエステルとしては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1−メチル−3−(1’,2’−ジカルボキシエチル)−1−シクロヘキセン5,6−ジカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、その無水物およびそれらのアルキルエステルなどがあげられる。
【0025】
次に、前記式(2)の化合物を例にとり本発明の重合防止剤に含まれる化合物の製造方法について説明する。
原料に4価のカルボン酸のエステルを用いる場合は、次のように反応させて目的とする前記式(2)で表される化合物を得ることができる。
【0026】
【化18】
【0027】
すなわち上記式(7)で表される化合物と4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを例えば室温で両原料が溶解する溶媒中で反応させて上記式(8)で表される化合物を得、次いで硫酸などの触媒存在下にトルエンやキシレンなどの共沸溶媒中で加熱脱アルコール反応により上記式(9)で表される化合物を得、次いでクロロホルムや塩化メチレンなどの溶媒中、室温でメタクロロ過安息香酸や過酸化水素などを用いた酸化反応によって前記式(2)で表されるN−オキシル化合物へ誘導することができる。
一方、原料に4価のカルボン酸の二無水物を用いる場合は、次のように反応させて目的とする前記式(2)で表される化合物を得ることができる。
【0028】
【化19】
【0029】
すなわち上記式(10)で表される化合物と4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを例えば室温で両原料が溶解する溶媒中で反応させて上記式(11)で表される化合物を得、次いで硫酸などの触媒存在下にトルエンやキシレンなどの共沸溶媒中で加熱脱水反応により上記式(9)で表される化合物を得、次いでクロロホルムや塩化メチレンなどの溶媒中、室温でメタクロロ過安息香酸や過酸化水素などを用いた酸化反応によって前記式(2)で表されるN−オキシル化合物へ誘導することができる。
【0030】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤は、一般式(1)で表される化合物単独で重合防止剤としてもよく、他の重合防止剤をこれに配合して重合防止剤としてもよい。配合の形式は特に限定されないが、配合する他の重合防止剤は、(メタ)アクリル酸エステル類を生成する反応条件下で安定であり、この(メタ)アクリル酸エステル類を蒸留する条件下で熱的に安定であり、かつ、蒸留による精製工程で製品側に留出しない高沸点を有する重合防止剤が好ましい。
【0031】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤に配合することのできる他の重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノールなどのフェノール系化合物、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、フェノチアジンなどのアミン系化合物、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのN−オキシル系化合物などが挙げられる。重合防止剤は単独、あるいは2種類以上を併用してもよい。これら他の重合防止剤の配合量は、本発明の目的を達成することのできる範囲の量であれば、特に限定されるものではないが、一般的には、他の重合防止剤の配合量は、上記一般式(1)で表される化合物100質量部に対し、10000〜0.01質量部、好ましくは8000〜0.02質量部、より好ましくは7000〜0.03質量部とすることができる。また、重合防止剤の添加に加えてエアーバブリングを行うと重合防止効果が向上することがある。
【0032】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法としては、(メタ)アクリル酸エステル類または(メタ)アクリル酸エステル類を含有する系に本発明の重合防止剤を添加する方法を挙げることができる。
【0033】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法を適用することのできる(メタ)アクリル酸エステル類は、特に限定されない。本発明の重合防止方法を適用することのできる(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等を挙げることができる。
【0034】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において、または、製品に適用することができる。
例えば、本発明の重合防止剤を(メタ)アクリル酸エステル類の生成反応工程における原料フィードに添加し、反応中に反応器に導入し、反応生成物に添加し、蒸留等の精製工程におけるフィードに添加し、または、精製した製品に添加することにより重合を防止することができる。
【0035】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法においては、重合防止剤の添加方法については、特に限定されず、公知の方法の中から、適用する製品、適用する製造工程等に適した添加方法を選択すればよい。例えば、固体のまま添加したり、溶媒に溶解させて添加したり、使用する原料で溶解させて添加する等の方法を挙げることができる。
【0036】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法における重合防止剤の添加量は、対象とする製品、適用する条件等に依存するが、一般的には、(メタ)アクリル酸エステル類100質量部に対し0.0001〜5質量部、好ましくは0.0002〜4質量部、より好ましくは0.0003〜3質量部である。
例えば、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において(メタ)アクリル酸エステル類を含む反応原料に添加する場合、反応中に反応器に導入する場合、蒸留工程において添加する場合、さらに、精製製品に添加する場合においては、上記の添加量を添加すればよい。
【0037】
本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物は、(メタ)アクリル酸エステル類100質量部に対し、請求項1記載の重合防止剤を0.0001〜5質量部含み、上記本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法を実施することにより得ることができる。
【0038】
例えば、本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物は、本発明の重合防止剤を(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において、または、製品に適用することにより得ることができる。具体的には、例えば、本発明の重合防止剤を(メタ)アクリル酸エステル類を含む原料フィードに添加し、反応中に反応器に導入し、反応生成物に添加し、蒸留等の精製工程におけるフィードに添加し、または、精製した製品に添加することにより本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物を得ることができる。
【0039】
本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物における重合防止剤の含有量は、対象とする製品、適用する条件等に依存するが、一般的には、(メタ)アクリル酸エステル類100質量部に対し0.0001〜5質量部、好ましくは0.0002〜4質量部、より好ましくは0.0003〜3質量部とすることができる。例えば、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において、(メタ)アクリル酸エステル類を含む反応原料に添加する場合、反応中に反応器に導入する場合、蒸留工程において添加する場合、精製製品に添加する場合においては、上記の添加量を添加することにより、本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物を得ることができる。
【0040】
本発明の重合防止剤は、少量で重合防止効果が得られるので、(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤として極めて有効である。
また本発明の重合防止剤は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造におけるエステル交換反応や脱水エステル化反応の条件において安定であるため、これらの製品の製造工程において重合防止剤として用いた場合に製品の純度を低下させる虞のある副生成物を生成しないので、高純度の製品が得られる。さらに本発明の重合防止剤は、極めて高沸点であるため、反応で得られた(メタ)アクリル酸エステル類を蒸留する場合には留出されず、(メタ)アクリル酸エステル類と完全に分離することができる。従って、蒸留により精製することにより高純度の(メタ)アクリル酸エステル類を容易に得ることができる。
以上のように、本発明の重合防止剤は、(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤として好適である。(メタ)アクリル酸エステル類の製造においては、反応時から蒸留まで使用可能な重合防止剤として好適である。
【0041】
また、本発明の重合防止方法は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において、または、製品に適用することができる。これにより、優れた品質を有する製品を提供することができる。
【0042】
さらに本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において活用され、これにより製造工程における(メタ)アクリル酸エステル類の安定化を図ることを可能とし、精製した製品等を用いて本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物を調製すると、長期に渡り重合防止能を有する製品とすることができる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例における分析は、NMR法、IR法、MS法およびESR法によって行った。
【0044】
(合成例1)
前記式(4)で表される化合物を次のように反応させて製造した。
【0045】
【化20】
すなわち、1L三ツ口丸底フラスコにピロメリット酸二無水物21.81g(0.1モル)、無水THF200mLを仕込み、室温攪拌下に2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン31.25g(0.2モル)を無水THF100mLで希釈した溶液を30分で滴下し反応させたところ結晶が析出した。結晶をろ取し、減圧乾燥し、ビスアミド52.48g(98.9ミリモル)(ピロメリット酸二無水物基準収率98.9%)を得た。
得られたビスアミドの構造は、上記式(14)であることをIRおよび1H−NMRで確認した。
【0046】
次いで、ディーンスターク脱水装置と冷却管を付した1L三ツ口丸底フラスコに上記ビスアミド33g(62.2ミリモル)、キシレン620mL、パラトルエンスルホン酸1水物0.7g(3.8ミリモル)を仕込み、還流下に72時間反応させた。冷却後に反応液をエバポレーターで減圧濃縮し、クロロホルム200mLを加えて再度減圧濃縮した。得られた濃縮物をクロロホルム5Lに溶解し、不溶物を加圧ろ過で除去後、有機層を1wt%Na2CO3水溶液500mLで洗浄し、さらに水500mLで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過後に減圧濃縮し、ビスイミド19.65g(39.7ミリモル)(ビスアミド基準収率63.8%)を得た。
得られたビスイミドの構造は、上記式(15)であることをIR、1H−NMRおよびCI−MSで確認した。
【0047】
次いで50mL三ッ口丸底フラスコに上記ビスイミド2.48g(5ミリモル)、ジクロロメタン20mLを仕込み、攪拌下に30℃で69%メタクロロ過安息香酸5g(20ミリモル)を20分かけて添加し、次いで30℃で18時間反応させた。反応液をジクロロメタン200mLで希釈し、5wt%Na2CO3水溶液100mLで洗浄した。水層をジクロロメタン100mLで2回抽出した。得られた有機層を合わせ、1wt%硫酸水溶液100mLで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後に減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的のN−オキシル体1.41g(2.69モル)(ビスイミド基準収率53.8%)を得た。
得られたN−オキシル体の構造は、上記式(4)であることをFAB−MS、ESRで確認した。
【0048】
(実施例1)
合成例1の化合物を300ppm添加した2−エチルヘキシルメタクリレートを試験管に10g量り取り、120℃のオイルバス中で振とう加熱処理を行い重合するまでの時間を目視で計測したところ、524時間で重合した。
【0049】
(比較例1)
重合防止剤としてパラメトキシフェノールを300ppm添加した2−エチルヘキシルメタクリレートを用い、実施例1と同様にして重合するまでの時間を計測したところ、50時間で重合した。
【0050】
(実施例2)
20段オルダーショウ蒸留塔を備えた還流装置を用い、2L容の側管付き四つ口フラスコに、メチルメタクリレート(MMAと表すことがある)902g(9モル)、2−エチルヘキサノール677g(5.2モル)、テトラメトキシチタン0.45g(0.0026モル)および重合防止剤として合成例1の化合物0.18g(200ppm対MMA)をフラスコ内に仕込み、空気気流下に攪拌して5時間エステル交換反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーによって分析したところ、転化率は98.9%であった。
このとき反応が進むに従い反応温度が上昇したが、反応温度が130℃を越えないように減圧しながら反応を行い、反応で生成したメタノールはMMAとの共沸で系外に除去した。
得られた反応液を分析した結果、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルは検出されなかった。
次に、この反応液から常圧にて触媒を濾別した後、減圧下で蒸留し、純度99.0%のメタクリル酸2−エチルヘキシル907gを得た。得られたメタクリル酸2−エチルヘキシルを分析した結果、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルは検出されず、釜および塔には重合物の残渣、付着も全くなかった。
【0051】
(比較例2)
重合防止剤として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルを用いた以外は実施例2と同様に反応液を得た。得られた反応液を分析した結果、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルが45ppm検出された。さらに実施例2と同様に蒸留し、得られたメタクリル酸2−エチルヘキシルを分析した結果、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルが50ppm検出された。
【0052】
【発明の効果】
本発明の重合防止剤は、少量で重合防止効果が得られ、(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤として極めて有効である。また、本発明によれば、(メタ)アクリル酸エステル類の製造において化学的および熱的に安定で、高沸点を有することで蒸留時に除去可能な、反応時から蒸留時まで使用可能な重合防止剤を提供することことができる。
また、本発明の重合防止方法は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において、または、製品に適用することができる。これにより、優れた品質を有する製品を提供することが可能となった。
さらに本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において活用され、これにより製造工程における(メタ)アクリル酸エステル類の安定化を図ることを可能とし、精製した製品等を用いて本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物を調製すると、長期に渡り重合防止能を有する製品とすることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は化学的に安定で高沸点を有する、ピペリジン−1−オキシル誘導体を含む(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤、これを添加する重合防止方法、および組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法は、一般にアルコールと(メタ)アクリル酸エステルからのエステル交換反応や、アルコールと(メタ)アクリル酸からの直接エステル化反応などが採用されている。また(メタ)アクリル酸エステル類の精製は一般に蒸留精製が採用されている。これらの工程において(メタ)アクリル酸エステル類の重合を防止する方法が大きな課題となっている。また、重合防止の性能だけでなく、反応中に安定であり、かつ蒸留操作で製品の(メタ)アクリル酸エステル類と容易に分離できることが望まれている。
【0003】
(メタ)アクリル酸エステル類の製造時に用いられる重合防止剤としては、N−オキシルラジカル構造を有する化合物が公知である。例えば(a)2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシルや2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾイルオキシピペリジン−N−オキシル(特許文献1)、(b)4−アセチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(特許文献2)、(c)1,3,8−トリアザ−7,7−ジイソブチル−9,9−ジメチル−2,4−ジオキソ−スピロ[4,5]デカン−8−オキシド(特許文献3)、(d)ビス(2,2,6,6−テトラメチル−N−オキシルピペリジル)スクシネート(特許文献4)などが公知である。
【0004】
【特許文献1】
特開昭56−38301号公報
【特許文献2】
特開平8−59524号公報
【特許文献3】
特公昭45−25293号公報
【特許文献4】
特許第3209607号公報
【0005】
しかし、(a)の重合防止剤は、分子内に水酸基やエステル基を有するため、エステル化反応条件で一部が分解したり、副反応を起こし4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのような不純物を生成し(メタ)アクリル酸エステル類の蒸留製品に混入してしまう。また構造を保持した場合でも分子量が比較的小さいため(メタ)アクリル酸エステル類の蒸留製品に混入してしまう。(b)の重合防止剤は、エステル化条件では安定であるが、分子量が比較的小さいため(メタ)アクリル酸エステル類の蒸留製品に混入してしまう。(c)の重合防止剤は、エステル化条件では安定で、かつ比較的分子量が大きく蒸留による精製で製品の(メタ)アクリル酸エステル類と分離可能であるが、重合防止能を有するN−オキシルラジカルを1個しか含まないため分子量あたりのN−オキシルラジカル含有率が低く、充分に重合を防止するためには使用量の増大を招きコスト的に不利である。(d)の重合防止剤は、分子量が比較的大きく蒸留により分離するのに適しており、分子中に2個のN−オキシル基を有するため重合防止に必要な使用量の点で優位であるが、(メタ)アクリル酸エステル類の生成反応工程で使用すると、エステル基を含有するため(メタ)アクリル酸エステル類の生成反応条件下でエステル交換反応を起こし不純物の生成を招く。
【0006】
このように、従来の重合防止剤で(メタ)アクリル酸エステル類の製造におけるエステル化反応工程および蒸留工程の両工程に適した化学的に安定で蒸留時に釜残として除去可能で、使用量の増大を招かない重合防止剤は見出されていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、化学的および熱的に安定で、高沸点を有することで蒸留時に除去可能な、反応工程から蒸留工程までの工程において、また製品に添加して使用可能な重合防止剤、これを添加する重合防止方法および組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記本発明の目的は、以下の本発明により達成される。
〔1〕 一般式(1)で表される化合物を含む(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤。
【0009】
【化7】
(式中、Aは、脂肪族、芳香族または脂環式の4価カルボン酸残基を示す。)
〔2〕 前記一般式(1)で表される化合物が、下記式(2)ないし(6)のいずれかで表される化合物である前記〔1〕記載の重合防止剤。
【0010】
【化8】
【0011】
【化9】
【0012】
【化10】
【0013】
【化11】
【0014】
【化12】
〔3〕 (メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法であって、前記(メタ)アクリル酸エステル類に〔1〕記載の重合防止剤を添加することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法。
〔4〕 (メタ)アクリル酸エステル類100質量部に対し、〔1〕記載の重合防止剤を0.0001〜5質量部含む、重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明によれば、一般式(1)で表される化合物を含む重合防止剤は(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤として、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類の生成反応工程、(メタ)アクリル酸エステル類の蒸留工程、(メタ)アクリル酸エステル類を保存する際などの重合防止剤として用いることができる。
なお、本発明において、前記(メタ)アクリル酸エステル類における、「(メタ)アクリル酸エステル」のような表記は、「アクリル酸エステル」または「(メタ)アクリル酸エステル」を表す。
【0016】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤に含まれる、一般式(1)で表される化合物の例を以下に示す。
【0017】
【化13】
【0018】
【化14】
【0019】
【化15】
【0020】
【化16】
【0021】
【化17】
【0022】
一般式(1)で表される化合物のなかでは、原料の入手が容易であるところから、上記(2)〜(6)式で表される化合物が好ましい。
【0023】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤に含まれる一般式(1)で表される化合物は、例えば、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと4価のカルボン酸、4価のカルボン酸のエステルまたは4価のカルボン酸の二無水物を反応させてビスアミドを経てビスイミドを合成し、次いでこれを酸化反応によってN−オキシル化合物へと誘導することにより容易に得ることができる。
【0024】
4価のカルボン酸、その無水物およびそのエステルとしては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1−メチル−3−(1’,2’−ジカルボキシエチル)−1−シクロヘキセン5,6−ジカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、その無水物およびそれらのアルキルエステルなどがあげられる。
【0025】
次に、前記式(2)の化合物を例にとり本発明の重合防止剤に含まれる化合物の製造方法について説明する。
原料に4価のカルボン酸のエステルを用いる場合は、次のように反応させて目的とする前記式(2)で表される化合物を得ることができる。
【0026】
【化18】
【0027】
すなわち上記式(7)で表される化合物と4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを例えば室温で両原料が溶解する溶媒中で反応させて上記式(8)で表される化合物を得、次いで硫酸などの触媒存在下にトルエンやキシレンなどの共沸溶媒中で加熱脱アルコール反応により上記式(9)で表される化合物を得、次いでクロロホルムや塩化メチレンなどの溶媒中、室温でメタクロロ過安息香酸や過酸化水素などを用いた酸化反応によって前記式(2)で表されるN−オキシル化合物へ誘導することができる。
一方、原料に4価のカルボン酸の二無水物を用いる場合は、次のように反応させて目的とする前記式(2)で表される化合物を得ることができる。
【0028】
【化19】
【0029】
すなわち上記式(10)で表される化合物と4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを例えば室温で両原料が溶解する溶媒中で反応させて上記式(11)で表される化合物を得、次いで硫酸などの触媒存在下にトルエンやキシレンなどの共沸溶媒中で加熱脱水反応により上記式(9)で表される化合物を得、次いでクロロホルムや塩化メチレンなどの溶媒中、室温でメタクロロ過安息香酸や過酸化水素などを用いた酸化反応によって前記式(2)で表されるN−オキシル化合物へ誘導することができる。
【0030】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤は、一般式(1)で表される化合物単独で重合防止剤としてもよく、他の重合防止剤をこれに配合して重合防止剤としてもよい。配合の形式は特に限定されないが、配合する他の重合防止剤は、(メタ)アクリル酸エステル類を生成する反応条件下で安定であり、この(メタ)アクリル酸エステル類を蒸留する条件下で熱的に安定であり、かつ、蒸留による精製工程で製品側に留出しない高沸点を有する重合防止剤が好ましい。
【0031】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤に配合することのできる他の重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノールなどのフェノール系化合物、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、フェノチアジンなどのアミン系化合物、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのN−オキシル系化合物などが挙げられる。重合防止剤は単独、あるいは2種類以上を併用してもよい。これら他の重合防止剤の配合量は、本発明の目的を達成することのできる範囲の量であれば、特に限定されるものではないが、一般的には、他の重合防止剤の配合量は、上記一般式(1)で表される化合物100質量部に対し、10000〜0.01質量部、好ましくは8000〜0.02質量部、より好ましくは7000〜0.03質量部とすることができる。また、重合防止剤の添加に加えてエアーバブリングを行うと重合防止効果が向上することがある。
【0032】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法としては、(メタ)アクリル酸エステル類または(メタ)アクリル酸エステル類を含有する系に本発明の重合防止剤を添加する方法を挙げることができる。
【0033】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法を適用することのできる(メタ)アクリル酸エステル類は、特に限定されない。本発明の重合防止方法を適用することのできる(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等を挙げることができる。
【0034】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において、または、製品に適用することができる。
例えば、本発明の重合防止剤を(メタ)アクリル酸エステル類の生成反応工程における原料フィードに添加し、反応中に反応器に導入し、反応生成物に添加し、蒸留等の精製工程におけるフィードに添加し、または、精製した製品に添加することにより重合を防止することができる。
【0035】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法においては、重合防止剤の添加方法については、特に限定されず、公知の方法の中から、適用する製品、適用する製造工程等に適した添加方法を選択すればよい。例えば、固体のまま添加したり、溶媒に溶解させて添加したり、使用する原料で溶解させて添加する等の方法を挙げることができる。
【0036】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法における重合防止剤の添加量は、対象とする製品、適用する条件等に依存するが、一般的には、(メタ)アクリル酸エステル類100質量部に対し0.0001〜5質量部、好ましくは0.0002〜4質量部、より好ましくは0.0003〜3質量部である。
例えば、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において(メタ)アクリル酸エステル類を含む反応原料に添加する場合、反応中に反応器に導入する場合、蒸留工程において添加する場合、さらに、精製製品に添加する場合においては、上記の添加量を添加すればよい。
【0037】
本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物は、(メタ)アクリル酸エステル類100質量部に対し、請求項1記載の重合防止剤を0.0001〜5質量部含み、上記本発明の(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法を実施することにより得ることができる。
【0038】
例えば、本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物は、本発明の重合防止剤を(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において、または、製品に適用することにより得ることができる。具体的には、例えば、本発明の重合防止剤を(メタ)アクリル酸エステル類を含む原料フィードに添加し、反応中に反応器に導入し、反応生成物に添加し、蒸留等の精製工程におけるフィードに添加し、または、精製した製品に添加することにより本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物を得ることができる。
【0039】
本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物における重合防止剤の含有量は、対象とする製品、適用する条件等に依存するが、一般的には、(メタ)アクリル酸エステル類100質量部に対し0.0001〜5質量部、好ましくは0.0002〜4質量部、より好ましくは0.0003〜3質量部とすることができる。例えば、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において、(メタ)アクリル酸エステル類を含む反応原料に添加する場合、反応中に反応器に導入する場合、蒸留工程において添加する場合、精製製品に添加する場合においては、上記の添加量を添加することにより、本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物を得ることができる。
【0040】
本発明の重合防止剤は、少量で重合防止効果が得られるので、(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤として極めて有効である。
また本発明の重合防止剤は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造におけるエステル交換反応や脱水エステル化反応の条件において安定であるため、これらの製品の製造工程において重合防止剤として用いた場合に製品の純度を低下させる虞のある副生成物を生成しないので、高純度の製品が得られる。さらに本発明の重合防止剤は、極めて高沸点であるため、反応で得られた(メタ)アクリル酸エステル類を蒸留する場合には留出されず、(メタ)アクリル酸エステル類と完全に分離することができる。従って、蒸留により精製することにより高純度の(メタ)アクリル酸エステル類を容易に得ることができる。
以上のように、本発明の重合防止剤は、(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤として好適である。(メタ)アクリル酸エステル類の製造においては、反応時から蒸留まで使用可能な重合防止剤として好適である。
【0041】
また、本発明の重合防止方法は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において、または、製品に適用することができる。これにより、優れた品質を有する製品を提供することができる。
【0042】
さらに本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において活用され、これにより製造工程における(メタ)アクリル酸エステル類の安定化を図ることを可能とし、精製した製品等を用いて本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物を調製すると、長期に渡り重合防止能を有する製品とすることができる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例における分析は、NMR法、IR法、MS法およびESR法によって行った。
【0044】
(合成例1)
前記式(4)で表される化合物を次のように反応させて製造した。
【0045】
【化20】
すなわち、1L三ツ口丸底フラスコにピロメリット酸二無水物21.81g(0.1モル)、無水THF200mLを仕込み、室温攪拌下に2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン31.25g(0.2モル)を無水THF100mLで希釈した溶液を30分で滴下し反応させたところ結晶が析出した。結晶をろ取し、減圧乾燥し、ビスアミド52.48g(98.9ミリモル)(ピロメリット酸二無水物基準収率98.9%)を得た。
得られたビスアミドの構造は、上記式(14)であることをIRおよび1H−NMRで確認した。
【0046】
次いで、ディーンスターク脱水装置と冷却管を付した1L三ツ口丸底フラスコに上記ビスアミド33g(62.2ミリモル)、キシレン620mL、パラトルエンスルホン酸1水物0.7g(3.8ミリモル)を仕込み、還流下に72時間反応させた。冷却後に反応液をエバポレーターで減圧濃縮し、クロロホルム200mLを加えて再度減圧濃縮した。得られた濃縮物をクロロホルム5Lに溶解し、不溶物を加圧ろ過で除去後、有機層を1wt%Na2CO3水溶液500mLで洗浄し、さらに水500mLで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過後に減圧濃縮し、ビスイミド19.65g(39.7ミリモル)(ビスアミド基準収率63.8%)を得た。
得られたビスイミドの構造は、上記式(15)であることをIR、1H−NMRおよびCI−MSで確認した。
【0047】
次いで50mL三ッ口丸底フラスコに上記ビスイミド2.48g(5ミリモル)、ジクロロメタン20mLを仕込み、攪拌下に30℃で69%メタクロロ過安息香酸5g(20ミリモル)を20分かけて添加し、次いで30℃で18時間反応させた。反応液をジクロロメタン200mLで希釈し、5wt%Na2CO3水溶液100mLで洗浄した。水層をジクロロメタン100mLで2回抽出した。得られた有機層を合わせ、1wt%硫酸水溶液100mLで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後に減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的のN−オキシル体1.41g(2.69モル)(ビスイミド基準収率53.8%)を得た。
得られたN−オキシル体の構造は、上記式(4)であることをFAB−MS、ESRで確認した。
【0048】
(実施例1)
合成例1の化合物を300ppm添加した2−エチルヘキシルメタクリレートを試験管に10g量り取り、120℃のオイルバス中で振とう加熱処理を行い重合するまでの時間を目視で計測したところ、524時間で重合した。
【0049】
(比較例1)
重合防止剤としてパラメトキシフェノールを300ppm添加した2−エチルヘキシルメタクリレートを用い、実施例1と同様にして重合するまでの時間を計測したところ、50時間で重合した。
【0050】
(実施例2)
20段オルダーショウ蒸留塔を備えた還流装置を用い、2L容の側管付き四つ口フラスコに、メチルメタクリレート(MMAと表すことがある)902g(9モル)、2−エチルヘキサノール677g(5.2モル)、テトラメトキシチタン0.45g(0.0026モル)および重合防止剤として合成例1の化合物0.18g(200ppm対MMA)をフラスコ内に仕込み、空気気流下に攪拌して5時間エステル交換反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーによって分析したところ、転化率は98.9%であった。
このとき反応が進むに従い反応温度が上昇したが、反応温度が130℃を越えないように減圧しながら反応を行い、反応で生成したメタノールはMMAとの共沸で系外に除去した。
得られた反応液を分析した結果、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルは検出されなかった。
次に、この反応液から常圧にて触媒を濾別した後、減圧下で蒸留し、純度99.0%のメタクリル酸2−エチルヘキシル907gを得た。得られたメタクリル酸2−エチルヘキシルを分析した結果、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルは検出されず、釜および塔には重合物の残渣、付着も全くなかった。
【0051】
(比較例2)
重合防止剤として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルを用いた以外は実施例2と同様に反応液を得た。得られた反応液を分析した結果、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルが45ppm検出された。さらに実施例2と同様に蒸留し、得られたメタクリル酸2−エチルヘキシルを分析した結果、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルが50ppm検出された。
【0052】
【発明の効果】
本発明の重合防止剤は、少量で重合防止効果が得られ、(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止剤として極めて有効である。また、本発明によれば、(メタ)アクリル酸エステル類の製造において化学的および熱的に安定で、高沸点を有することで蒸留時に除去可能な、反応時から蒸留時まで使用可能な重合防止剤を提供することことができる。
また、本発明の重合防止方法は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において、または、製品に適用することができる。これにより、優れた品質を有する製品を提供することが可能となった。
さらに本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物は、(メタ)アクリル酸エステル類の製造工程において活用され、これにより製造工程における(メタ)アクリル酸エステル類の安定化を図ることを可能とし、精製した製品等を用いて本発明の重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物を調製すると、長期に渡り重合防止能を有する製品とすることができる。
Claims (4)
- (メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法であって、前記(メタ)アクリル酸エステル類に請求項1記載の重合防止剤を添加することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステル類の重合防止方法。
- (メタ)アクリル酸エステル類100質量部に対し、請求項1記載の重合防止剤を0.0001〜5質量部含む、重合防止された(メタ)アクリル酸エステル類含有組成物。
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