JP2004299917A - 金属酸化物固溶酸水酸化セリウム及びそれを配合した樹脂組成物又は化粧料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Ce4+ 1−X/4−YMn+ Y□X/4O2−X−(4−n)Y/2(OH)X(但し、式中、Ce4+は4価のセリウムイオン、Mn+は4価のセリウムイオンより大きなイオン半径を持つ金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオン、□は格子欠陥、0<X≦0.5、0<Y<1、nは固溶した金属イオンのイオン価数)の化学構造を有する金属酸化物固溶酸水酸化セリウムである。樹脂組成物又は化粧料に配合できる。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属イオンを固溶(ドープ)した金属酸化物固溶酸水酸化セリウムに関する。更にこの金属酸化物固溶酸水酸化セリウムを配合した樹脂組成物又は化粧料に関する。
【0002】
【従来技術】
紫外線はプラスチックを劣化させるので、この劣化を防止するためにいろいろな対策が取られてきた。その一つとして、有機系紫外線吸収剤や無機系紫外線散乱剤と言われる種々の紫外線遮断剤が開発され、これらをプラスチックに添加することで紫外線の影響を低減させることが行われてきた。有機系紫外線吸収剤には、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系などがあるが、最近では、耐熱性や耐候性の不足や、その分解生成物の安全性などが問題にされている。これらの問題を解決する目的で、無機系紫外線散乱剤の微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛が開発されてきたが、これについても新たに分散性や触媒作用等の問題も生じている。特に近年、酸化チタンについては光触媒作用による一重項酸素の発生が問題を引き起す場合があることが指摘されている。
【0003】
また、紫外線は生体に対しても悪影響を及ぼすことが知られており、波長が280〜320nmのUV−B領域の紫外線は、皮膚の紅斑水泡等の炎症を引き起こし、波長が320〜400nmのUV−A領域の紫外線は、メラニン生成を促して、皮膚の褐色化を生じさせることが知られている。このような紫外線の悪影響の対策として、従来より多種多様な日焼け止め化粧料が知られている。これらの化粧料に用いられてきた紫外線遮断剤としては、大別すると、ケイ皮酸系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系等の紫外線吸収剤と、酸化亜鉛、酸化チタン等の紫外線散乱剤との2種類に分けられる。しかしこれらの紫外線吸収剤は、紫外線に対する吸収性が不充分であったり、大量に配合すると安全性の面から好ましくない等の問題がある。更に、従来の紫外線散乱剤については分散性を向上させても透明性を高くすることは困難であったため、使用感の悪化を来すだけでなく不自然な化粧仕上がりとなる等の問題があった。
【0004】
近年、酸化セリウム等の不溶性セリウム化合物を紫外線散乱剤として利用する技術が提案されている(特許文献1〜2)。ところが酸化セリウムは、高い触媒活性を持ち、樹脂や油脂の酸化分解を促進し、化粧品や樹脂中に配合した場合に変色や変臭の原因となるという問題が生じ、また透明性が劣り、白色度が劣るという問題点もある。この要請に応えるべく、シリカ等の金属酸化物と酸化セリウムとの複合粒子が提案されている(特許文献3〜4)が、この金属酸化物・酸化セリウム複合粒子は透明性、白色度は改良されているものの、触媒活性の低減は見られない。また、白色度の高い酸化セリウムが提案されている(特許文献5)が、微粒子を得ることは難しく紫外線遮断材としての効果が不十分でり、また触媒活性の低減効果がない。
【0005】
そこで、最近、触媒活性を持たない、良好な紫外線散乱剤作用を有するセリウム化合物として金属酸化物固溶酸化セリウムが提案された(特許文献6、特許文献7)。また、これらの文献には、白色度の高い金属酸化物固溶酸化セリウムも記載されており、この白色度の高い金属酸化物固溶酸化セリウムは,生成反応時の反応条件を制御することによって得られることが開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−145645号公報
【特許文献2】
特開平7−207251号公報
【特許文献3】
特開平9−118610号公報
【特許文献4】
特開2000−203835号公報
【特許文献5】
特開平10−226518号公報
【特許文献6】
特開2000−327328号公報
【特許文献7】
特開2002−160920号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、高い紫外線遮断能力を持ち、触媒活性が低減され、透明性がよく、白色度が高い金属酸化物固溶酸水酸化セリウムを提供することを目的とする。更に本発明は金属酸化物固溶酸水酸化セリウムを配合した樹脂組成物や化粧料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、4価のセリウムイオンより大きなイオン半径を持つ金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオンを固溶させた4価のセリウムの化合物であって、該化合物がCe4+ 1−X/4−YMn+ Y□X/4O2−X−(4−n)Y/2(OH)X(但し、式中、Ce4+は4価のセリウムイオン、Mn+は4価のセリウムイオンより大きなイオン半径を持つ金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオン、□は格子欠陥、0<X≦0.5、0<Y<1、nは固溶した金属イオンのイオン価数)の化学構造を有することを特徴とする金属酸化物固溶酸水酸化セリウムである。この金属酸化物固溶酸水酸化セリウムは、白色度が、L*a*b*系で評価したときに、L*値が80以上、a*値が絶対値で4以下、b*値が絶対値で10以下であるものが好ましい。また、本発明は、上記の金属酸化物固溶酸水酸化セリウムを配合した樹脂組成物又は化粧料である。
【0009】
上記の金属酸化物固溶酸水酸化セリウムは、セリウム塩水溶液と、4価のセリウムイオンよりイオン半径の大きな金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオンの金属塩の水溶液と、アルカリとを反応させて水酸化物を生成させ、更に酸化剤を添加した後、水洗、ろ過、乾燥して中間体を製造し、その後この中間体を650〜800℃で焼成して製造することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、4価のセリウムに固溶させる金属イオンは、4価のセリウムイオンより大きなイオン半径(4価のセリウムイオンのイオン半径は0.97オングストロームである)を持つ金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオンである。この金属イオンは、例えばCa2+、Zn2+,Y 3+、La3+、Nd3+、Eu3+、Tb3+、Sm3+、Mg2+、Sr2+、Ba2+、Ce3+のうちから選ばれる一種又は二種以上である。そして、本発明においては、上記の金属イオンを固溶した4価のセリウムは、Ce4+ 1−X/4−YMn+ Y□X/4O2−X−(4−n)Y/2(OH)X(但し、式中、Ce4+は4価のセリウムイオン、Mn+は4価のセリウムイオンより大きなイオン半径を持つ金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオン、□は格子欠陥、0<X≦0.5、0<Y<1、nは固溶した金属イオンのイオン価数)の化学構造の形態をとっている。
【0011】
本発明は次の事項の発見に基づいてなされたものである。すなわち、種々実験の結果、4価のセリウムに、4価のセリウムイオンより大きなイオン半径を持つ金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオンを固溶させ、その後酸化する反応において、この反応過程中に水を存在させるか或は水酸化物が生成する反応過程を経由すると、金属イオンを固溶させた4価のセリウムは、Ce4+ 1−X/4−YMn+ Y□X/4O2−X−(4−n)Y/2(OH)X(但し、式中、Ce4+は4価のセリウムイオン、Mn+は4価のセリウムイオンより大きなイオン半径を持つ金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオン、□は格子欠陥、0<X≦0.5、0<Y<1、nは固溶した金属イオンのイオン価数)の化学構造の酸水酸化物を形成する(水酸基の導入によって結晶格子中に格子欠陥が導入される)こと、そしてこの酸水酸化物の水酸基の割合Xの値を0.5以下(すなわち、0<X≦0.5)、好ましくは0.4以下となるようにする(格子欠陥を減少させる)ことで白色度が高い金属酸化物固溶酸水酸化セリウムを得ることができること、またこの水酸基の割合Xの値は、上式の化学構造の酸水酸化物を焼成することによって調整できること、の発見に基づくものである。
【0012】
上記の如く水を存在させるか或は水酸化物が生成する反応過程を経由して製造した金属イオン固溶4価セリウムを熱重量分析したところ、200℃から700℃の間に重量減少が観察された。この重量減少の現象を構造水の脱離(結晶中のOHがH2Oとして脱離)と考えると、この金属イオン固溶4価セリウムが上式の格子欠陥型の化学構造を有することが示唆された。そして、上式の化学構造から計算して得られる理論密度と、200℃から700℃まで加熱したものの実測密度とが良く一致した。
【0013】
上記の焼成は650〜800℃で行う。焼成温度を650℃以上にすると生成物は白色となる。しかし、800℃以上で焼成すると粒成長がおこり粒子径が増大し紫外線遮断効果が低下する。焼成時間は1時間程度が好ましい。斯くして、4価のセリウムに上記の金属イオンを固溶することによって4価のセリウムの触媒活性を低減させることができ、また固溶した4価のセリウムを上記化学構造の酸水酸化の物形態にすることによってその白色度を向上させることができる。固溶体中の酸水酸化セリウムの濃度は40〜98モル%が好ましい。
【0014】
上記の金属酸化物固溶酸水酸化セリウムは白色度が良く、白色度がL*a*b*系で評価したときに、L*値が80以上、a*値が絶対値で4以下、b*値が絶対値で10以下であるものを得ることができる。また、中間体は、後述するように、製造方法によって平均粒径2〜4nmの超微粉末として得られるが、焼成によって粒子径が増大し平均粒径10〜20nmの微粒子の金属酸化物固溶酸水酸化セリウムになる。なお、金属酸化物を固溶していない酸水酸化セリウムの場合は、同じ焼成温度で焼成しても、焼成によって粒子径が100〜300nmに増大してしまう。そして、金属酸化物固溶酸水酸化セリウム微粒子は、可視光線域での透明性に優れまた分散性に優れ、更に紫外線遮断効果が高い。また、この金属酸化物固溶酸水酸化セリウムの触媒活性は低いものであった。
【0015】
上記のL*a*b*は、1976年にCIE(国際照明委員会)により定められたCIE1976L*a*b*色空間により定義される。この色空間は次式で定める量L*、a*、b*を直交座標系に持つ色空間である。
L*=116(Y/Y0)1/3−16
a*=500[(X/X0)1/3−(Y/Y0)1/3]
b*=200[(Y/Y0)1/3−(Z/Z0)1/3]
(ただし、X/X0,Y/Y0,Z/Z0>0.008856、X,Y,Zは物体色の三刺激値、X0,Y0,Z0は物体色を照明する光源の三刺激値で、Y0=100に基準化されている。)。その測定は色差計(日本電色工業社製)を用いて行なう。
【0016】
本発明の金属酸化物固溶酸水酸化セリウムは、例えばセリウム塩水溶液と、4価のセリウムイオンよりイオン半径の大きな金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオンの金属塩(固溶させる金属の塩)の水溶液と、アルカリとを反応させて水酸化物を生成させた後、酸化剤を加え、水洗、ろ過、乾燥して中間体を製造し、その後この中間体を650〜800℃で焼成、冷却し粉砕して製造することができる。
【0017】
この金属酸化物固溶酸水酸化セリウムの製造方法を更に具体的に述べる。すなわち、温度60℃以下、pH5以上の条件下で、セリウム塩水溶液と、4価のセリウムイオンよりイオン半径の大きな金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオンの金属塩の水溶液と、アルカリとを反応させて水酸化セリウムと金属水酸化物の固溶体を生成させた後、温度60℃以下の条件下で酸化剤を加え、水洗、ろ過、乾燥して中間体を製造する。上記の水酸化セリウムと金属水酸化物の固溶体を生成させる態様としては、(1)容器にアルカリ水溶液を入れ、これにセリウム塩水溶液と固溶させる金属の塩の水溶液とを同時に滴下する方法、(2)容器に水を入れ、これにセリウム塩水溶液とアルカリ水溶液と固溶させる金属の塩の水溶液とを同時に滴下する方法などがある。
【0018】
また、温度60℃以下、pH5以上の条件下でセリウム塩水溶液と、4価のセリウムイオンよりイオン半径の大きな金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオンの金属塩の水溶液と、アルカリと、酸化剤とを同時に滴下混合することによって中間体を製造することができる。例えば温度60℃以下、pH5以上の条件下で、容器に入れた水中に、セリウム塩水溶液と、固溶させる金属の塩の水溶液と、アルカリ水溶液と、酸化剤である過酸化水素とを同時に滴下して製造する。その後に水洗、ろ過、乾燥して中間体を製造する。上記のいずれの態様の反応を採用した場合においても、酸化剤を滴下中に、液の温度を60℃以下好ましくは40℃以下、pHを5以上にすることによって、平均粒径2〜4nmの超微粒子の中間体を得ることができる。
【0019】
上記の反応に用いるセリウム塩水溶液は、例えば炭酸セリウムを塩酸や硝酸などの酸水溶液で溶解するか、或は塩化セリウム、硝酸セリウム、硫酸セリウム、酢酸セリウムなどを水に溶解して調製する。またアルカリは、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液又はアンモニア水を用いることができる。また、上記の固溶させる金属の塩は例えば塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩などである。酸化剤としては過酸化水素、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、オゾン等を用いることができる。上記では固溶体の形成を水系で行なっているが、これに限られるものではない。
【0020】
本発明の前記した金属酸化物固溶酸水酸化セリウムは、更に酸化物で被覆した複合体の形態にして使用することができる(以下、この複合体を「酸化物被覆・金属酸化物固溶酸水酸化セリウム複合体」ということがある)。この酸化物被覆・金属酸化物固溶酸水酸化セリウム複合体の製造に用いる酸化物は酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、アルミナ、酸化鉄、酸化チタンから選ばれる一種又は二種以上である。金属酸化物固溶酸化セリウムを更に酸化物で被覆して複合体にすることによって、触媒活性を更に低下させ、また分散性を向上させることができる。
【0021】
酸化物被覆・金属酸化物固溶酸水酸化セリウム複合体は、前述の製造方法で製造した中間体を上記した酸化物で更に処理することによって製造する。例えば、液温60℃以下でpH9以上に保った水に、セリウム塩水溶液と固溶させる金属の塩(例えばカルシウム塩)の水溶液とアルカリ水溶液とを滴下し、これに過酸化水素等の酸化剤を滴下し、焼成して酸水酸化物を得る。この酸水酸化物を水に投入し温度を80℃以上に維持して、pHを9以上に保ちながら3号ケイ酸ナトリウム水溶液と塩酸、硝酸、硫酸などの鉱酸水溶液とを滴下し、水洗、ろ過、乾燥する。これによって、酸化ケイ素が被覆された、酸化カルシウム固溶酸水酸化セリウムCe4+ 1−X/4−YCa2+ Y□X/4O2−X−Y(OH)X(但し、式中、Ce4+は4価のセリウムイオン、Ca2+は2価のカルシウムイオン、□は格子欠陥、0<X≦0.5、0<Y<1)が得られる。この場合、滴下するケイ酸ナトリウムの量は、SiO2として固溶体被覆物の2〜60%が適当である。
【0022】
また、金属酸化物固溶酸水酸化セリウム或は酸化物被覆・金属酸化物固溶酸水酸化セリウム複合体を樹脂組成物や化粧料等の組成物に配合する場合、これらを更に表面処理して用いてもよい。表面処理剤としては、一般油剤、金属石鹸処理、シリコーン処理、ジアルキルリン酸処理、パーフルオロアルキル基を有する化合物処理、アミノ酸処理、レシチン処理、コラーゲン処理等が挙げられる。
【0023】
次に本発明に係わる樹脂組成物及び化粧料について説明する。一般に樹脂組成物は、太陽光線の紫外線領域の光を吸収することで劣化を起こす。そのための紫外線対策として、本発明の金属酸化物固溶酸水酸化セリウムを樹脂組成物に配合することで耐光性が向上し、光劣化を防止ないし低減できる。また、透明な樹脂組成物に覆われた内容物の紫外線による光劣化を防止ないし低減できる。また、本発明の金属酸化物固溶酸水酸化セリウムは、酸化セリウムに比し触媒活性が極めて小さいので、酸化セリウムに基づく樹脂組成物の酸化劣化を低減することができる。ここでいう樹脂組成物とは、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートなどの合成樹脂や天然樹脂の成形品、これら樹脂を配合した塗料など樹脂組成物全般をいう。
【0024】
次に本発明に係わる化粧料について説明する。本発明の化粧料は、上述した金属酸化物固溶酸水酸化セリウムを配合することによって透明感を有し、紫外線遮断効果に優れたものを得ることができる。また、本発明の金属酸化物固溶酸水酸化セリウムは、酸化セリウムに比し触媒活性が極めて小さいので、酸化セリウムに基づく化粧料中の油脂などの配合成分の劣化を低減することができる。化粧料の剤型としては、乳液、化粧水等のスキンケア化粧料、ファンデーション、口紅等のメイクアップ化粧料、頭髪化粧料等に用いることができ、就中、日焼け止め化粧料が好ましい。配合量は特に限定されないが、好ましくは0.1〜70質量%である。
【0025】
本発明に係わる化粧料においては、紫外線防御剤である紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤とを組み合わせると効果が顕著なものとなる。紫外線吸収剤としては、オキシベンゾン、メトキシケイ皮酸オクチル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンから選ばれる一種又は二種以上が好ましい。紫外線吸収剤の配合量は特に限定されないが、好ましくは0.1〜40質量%である。紫外線散乱剤としては、酸化チタン及び/又は酸化亜鉛が好ましく、より好ましくは、平均粒子径が0.05μm以下の微粒子酸化チタン及び/又は酸化亜鉛である。紫外線散乱剤の配合量としては、0.1〜50質量%が好ましい。
【0026】
さらに、本発明の化粧料には通常化粧料に用いられる成分、例えば、粉体、界面活性剤、油剤、ゲル化剤、高分子、美容成分、保湿剤、色素、防腐剤、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0027】
【実施例】
実施例1
塩化セリウムCeCl339g、塩化カルシウムCaCl24.5g及び30%過酸化水素水11.8gを水に溶解した混合溶液330mL(リットル)を調製する。また、塩化セリウムと塩化カルシウムを中和するのに必要な量の1.7倍のモル数となるアンモニア水60.6gを水に溶解してアルカリ溶液330mLを調製する。水850mLに、撹拌しながら上記の塩化セリウム、塩化カルシウム、過酸化水素の混合溶液、及びアンモニア水を、同時に滴下し酸化セリウムを含むゲルを沈殿させた。次にこの沈殿ゲルを、オートクレーブにて、150℃で24時間加熱処理してスラリー2Lを得た。これを純水で5回濾過洗浄し、攪拌、濾過、乾燥することにより平均粒子径0.1μmの粉末を得た。この粉末をアルミナるつぼに入れ、電気炉を用い空気中で5℃/minの昇温速度で昇温し、700℃で1時間保持することにより、焼成し、酸化カルシウム固溶酸水酸化セリウム粉末を得た。得られた粉末の白色度はL*値95.0、a*値−1.6、b*値5.2であった。なお、L*値、a*値、b*値は直径6cmの金皿に試料20gをプレス成形し、色差計(日本電色工業社製)で測定した。得られた酸化カルシウム固溶酸水酸化セリウム微粒子は、可視光線域での透明性に優れまた分散性に優れ、紫外線遮断効果が高く、触媒活性が低いものであった。
【0028】
実施例2
塩化セリウムCeCl339gを水に溶解し、塩化セリウム水溶液0.3Lを調製した。塩化カルシウムCaCl24.5gを水に溶解し、塩化カルシウム水溶液0.3Lを調製した。また、水酸化ナトリウムNaOH23.7gを水に溶解して水酸化ナトリウム水溶液0.3Lを調製した。さらに、30%過酸化水素水11.8gを水に溶解して過酸化水素溶液0.3Lを調製した。水8Lに、撹拌しながら上記の塩化セリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液及び過酸化水素水溶液を、反応液のpHを11以上、温度を40℃で同時に滴下した。反応終了後30分撹拌した後、生成物を水洗、ろ過、乾燥し、700℃で1時間焼成、粉砕しCe4+とCa2+がモル比で8:2である超微粒子酸化カルシウム固溶酸水酸化セリウムを得た。この固溶体の平均粒径は10nmであった。なお、粒子径は透過型電子顕微鏡(JEOL製)を用いて測定した。すなわち、粒子100個について目視で粒子径を計測し、その平均値を求めた。得られた酸化カルシウム固溶酸水酸化セリウム微粒子は、可視光線域での透明性に優れまた分散性に優れ、紫外線遮断効果が高く、触媒活性が低いものであった。
【0029】
実施例3
塩化セリウムCeCl339gを水に溶解し、塩化セリウム水溶液0.3Lを調製した。塩化亜鉛ZnCl25.5gを水に溶解し、塩化亜鉛水溶液0.3Lを調製した。また、水酸化ナトリウムNaOH23.7gを水に溶解して水酸化ナトリウム水溶液0.3Lを調製した。さらに、30%過酸化水素水11.8gを水に溶解して過酸化水素溶液0.3Lを調製した。水8Lに、撹拌しながら上記の塩化セリウム水溶液、塩化亜鉛水溶液、水酸化ナトリウム水溶液及び過酸化水素水溶液を、反応液のpHを11以上、温度を40℃で同時に滴下した。反応終了後30分撹拌した後、生成物を水洗、ろ過、乾燥し、800℃で1時間焼成、粉砕しCe4+とZn2+がモル比で8:2である超微粒子酸化亜鉛固溶酸水酸化セリウムを得た。この固溶体の平均粒径は15nmであった。なお、粒子径は透過型電子顕微鏡(JEOL製)を用いて測定した。すなわち、粒子100個について目視で粒子径を計測し、その平均値を求めた。得られた酸化亜鉛固溶酸水酸化セリウム微粒子は、可視光線域での透明性に優れまた分散性に優れ、紫外線遮断効果が高く、触媒活性が低いものであった。
【0030】
実施例4
実施例1で得られた酸化カルシウム固溶酸水酸化セリウム粉末を軟質ポリ塩化ビニルに0、0.5、1、2.0質量%配合し、これらをそれぞれ加熱ロールを用いてシートに成形した。これらのシートの光透過率を分光光度計(島津製作所製UV−2200)で測定したところ、上記の酸化カルシウム固溶酸水酸化セリウム粉末無添加のものに比べ、上記の酸化カルシウム固溶酸水酸化セリウム粉末を添加したものは、配合率を高めるほど紫外線領域での遮断効果が高まるが、可視領域では高い透明性を維持することが分かった。
【0031】
実施例5
実施例1〜3で得られた微粒子金属酸化物固溶酸水酸化セリウムを用いて、下記組成と調製方法によりクリームファンデーションを製造した。
【0032】
調製方法:
イ.(12)〜(14)と(16)〜(18)をよく混合する。
ロ.80℃の(8)に、(15)を加えてよく膨潤させる。次に、(9)〜(11)を加えて溶解させる。このものにイの混合物を加え80℃で溶解する(水相)。
ハ.(1)〜(7)を80℃で溶解する(油相)。
ニ.(水相)に(油相)を加えて乳化する。その後冷却し35℃まで撹拌冷却する。
上記のようにして得られたクリームファンデーションは、透明感があり、延びもよく、紫外線遮断効果が優れていた。
【0033】
実施例6
実施例1〜3で得られた微粒子金属酸化物固溶酸水酸化セリウムを用いて、下記組成と調製方法により日焼け止め乳液を製造した。
*1:KP−545(信越化学工業株式会社製)
*2:KF−6017(信越化学工業株式会社製)
【0034】
調製方法:
イ.(2)〜(9)を溶解し、これに(1)を添加してよく混練した。
ロ.(10)〜(12)を溶解し、これをイに添加して乳化混合した。
ハ.ロに(13)を添加混合して日焼け止め乳液を得た。
上記のようにして得られた日焼け止め乳液は、透明感があり、化粧持ちがよく、紫外線遮断効果が優れていた。
【0035】
比較例1
焼成を700℃に代えて1000℃で行った以外は、実施例1と同じ条件で酸化カルシウム固溶酸水酸化セリウムを製造した。
得られた酸化カルシウム固溶酸水酸化セリウムを用いて実施例5の処方にしたがってクリームファンデーションを調製したところ、透明感におとり、自然な仕上がりが得られず、紫外線遮断効果も充分ではなかった。
【0036】
比較例2
焼成を700℃に代えて500℃で行った以外は、実施例2と同じ条件で酸化カルシウム固溶酸水酸化セリウムを製造した。
得られた酸化カルシウム固溶酸水酸化セリウムを用いて実施例6の処方にしたがって日焼け止め乳液を調製したところ、紫外線遮断効果は優れていたが、乳液の色調が黄色で、自然な仕上がりが得られなかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の金属酸化物固溶酸水酸化セリウムは、優れた紫外線遮断性を有し、白色でかつ透明性をも併せ持っており、また酸化セシウムが有する触媒活性が低減されている。そのため、樹脂組成物や化粧料に配合して、それらの色調を変化させることなく、優れた紫外線遮断効果を付与することができる。
Claims (5)
- 4価のセリウムイオンより大きなイオン半径を持つ金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオンを固溶させた4価のセリウムの化合物であって、該化合物がCe4+ 1−X/4−YMn+ Y□X/4O2−X−(4− n )Y/2(OH)X(但し、式中、Ce4+は4価のセリウムイオン、Mn+は4価のセリウムイオンより大きなイオン半径を持つ金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオン、□は格子欠陥、0<X≦0.5、0<Y<1、nは固溶した金属イオンのイオン価数)の化学構造を有することを特徴とする金属酸化物固溶酸水酸化セリウム。
- 白色度が、L*a*b*系で評価したときに、L*値が80以上、a*値が絶対値で4以下、b*値が絶対値で10以下であることを特徴とする請求項1記載の金属酸化物固溶酸水酸化セリウム。
- 請求項1又は2記載の金属酸化物固溶酸水酸化セリウムを配合してなる樹脂組成物。
- 請求項1又は2記載の金属酸化物固溶酸水酸化セリウムを配合してなる化粧料。
- セリウム塩水溶液と、4価のセリウムイオンよりイオン半径の大きな金属イオン及び/又は4価のセリウムイオンより低原子価の金属イオンの金属塩の水溶液と、アルカリとを反応させて水酸化物を生成させ、更に酸化剤を添加した後、水洗、ろ過、乾燥して中間体を製造し、その後この中間体を650〜800℃で焼成することを特徴とする請求項1記載の金属酸化物固溶酸水酸化セリウムの製造方法。
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