JP2004298562A - 刃物の表面処理方法とその刃物 - Google Patents
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Abstract
【課題】ステンレス、チタン等の刃物の表層にプラズマイオン窒化法で表面に金属間化合物を形成する硬質層、あるいは表面にダイヤモンド状炭素膜を形成し、鋼並みに硬度を高めることにより、磨耗を抑え、切れ味の低下を防ぐことが出来る。
【解決手段】鋼製あるいは、プラズマイオン窒化法で表面に金属間化合物を形成する金属素地で作られた刃物にプラズマ−イオン窒化表面処理を行い、素地の硬化から刃物の切れ味持続性を高める方法。更に、ダイヤモンド状炭素膜を施し、刃物の切れ味持続性を高める方法。加えて、高周波マグネトロンによりテフロン膜を施し、刃物の切断特性を変える方法。及び、前記方法で片面を処理された刃物。
【選択図】 図5
【解決手段】鋼製あるいは、プラズマイオン窒化法で表面に金属間化合物を形成する金属素地で作られた刃物にプラズマ−イオン窒化表面処理を行い、素地の硬化から刃物の切れ味持続性を高める方法。更に、ダイヤモンド状炭素膜を施し、刃物の切れ味持続性を高める方法。加えて、高周波マグネトロンによりテフロン膜を施し、刃物の切断特性を変える方法。及び、前記方法で片面を処理された刃物。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属製の刃物表面に表面処理を施し、切れ味を向上させる製造方法及び処理された刃物に関する。
【0002】
【従来の技術】
刃物の材料は近年、鋼、ステンレス、チタンなど様々な種類の金属が用いられている。このうち、鋼は、磨耗は少ないが耐食性が低い。ステンレス、チタンは耐食性は高いが硬度が低く磨耗しやすいなど、いずれの材料にも一長一短があり、耐食性と対磨耗性を両立するにはいたっていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ステンレス、チタン等の刃物の表層にプラズマイオン窒化法で表面に金属間化合物を形成する硬質層、あるいは表面にダイヤモンド状炭素膜を形成し、鋼並みに硬度を高めることにより、磨耗を抑え、切れ味の低下を防ぐことが出来る。
【0004】
【課題を解決するための手段】
窒素プラズマ中にて刃物表層に、窒素系金属間化合物を形成する窒化処理を行い、硬化層を形成する。この時に、窒化処理温度が刃物の熱処理温度を超えて、焼き戻し効果により、硬度が低下することに注意しなくてはならない。その後、ダイヤモンド状炭素膜装置により、表面にダイヤモンド状炭素膜を付加することも有効である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態について説明する。市販の刃物(材質はステンレス鋼−愛知記号AUS6M)を用意し、プラズマイオン窒化処理を行い、切れ味試験を実施した。切れ味試験は紙付箋を縦に並べ切れ味試験の回数を繰り返すのにしたがって、切断深さの低下を測定していく試験であり、以降の表面処理方法のすべてに採用した。表面処理の効果を確認するために、なんらの表面処理をしないものを比較基礎とした。表面処理は、プラズマイオン窒化に引き続いてその上からダイヤモンド状炭素膜をさらに表面処理したもの、また、プラズマイオン窒化、ダイヤモンド状炭素膜の後、際外層にポリ四フッ化エチレン膜、例えば、テフロン(登録商標)膜を処理した3種類について実施した。図1、図2、図3はそれぞれ本発明の実施形態に係わるプラズマイオン窒化装置、ダイヤモンド状炭素膜装置、高周波マグネトロン装置の模式図である。
【0006】
図1において、符号1はチャンバー、2はホローカソード、3はフィラメント、4はガス導入口、5は放電用電源、6は熱電対、7はホルダー、8はマニュピレーター、9aはバイアス電圧陽極、9bはバイアス電圧陰極を示している。
チャンバー1の内部圧力を5.0×10−2Pa程度まで真空ポンプにて排泄して、ガス導入口4より、窒素ガスを導入する。この時のチャンバー1の内部圧力は7.5×10−1Pa程度である。フィラメント3に170Aの電流を流し、ホローカソード2の内部にグロー放電を発生させる。これにより、チャンバー1内の窒素ガスがプラズマ状態になり、内部全体を覆う。刃物はホルダー7に固定されていて、さらにホルダー7はマニュピレーター8に固定されている。マニュピレーター8は回転して、さらにホルダー7を自転させる機構を有している。ホルダー7には熱電対6が接続してあり、窒化処理中の温度を知ることが出来る。チャンバー1にはバイアス電圧陽極9a、マニュピレーター8にはバイアス電圧陰極9bが接続してあり、この間に直流電圧を印加する。これにより、プラズマ状態の窒素原子が刃物表面に衝突して、表層に窒素系金属間化合物を形成する。
【0007】
さらに材質が純チタン2種およびTi15−3−3−3製の市販の刃物に同様のプラズマイオン窒化処理を行った。
【0008】
また、図2は本発明の実施形態例に係わるダイヤモンド状炭素膜装置の模式図である。図2おいて、符号10はチャンバー、11は回転機構、12はイオンソース、13はチタンソース、14はカーボンソース、15は真空ポンプ、16はガス導入装置を示している。
【0009】
まず、チャンバー10内部を真空ポンプ15にて排泄し、3.7×10−3Paの真空度に設定する。 ダイヤモンド状炭素膜成膜は、大きく分けて3段階で行なわれる。 最初は、ガス導入装置16より、アルゴンガスを注入し真空度2.1×10−2Pa環境下でイオンソース12を作用させる。 これにより、刃物表面の洗浄を行なうと共に、微細な凹凸を作り出して成膜のアンカー効果を持たせる。 この際の加速電圧は、2000V〜3000Vである。これより低い加速電圧ではアンカー効果が薄くなり、また高い加速電圧では刃物表面がダメージを受けてしまう。 あわせてバイアス電圧1500Vを印加することで、その効果を確実にする。
【0010】
次に、アルゴンガスを停止してチタンソース13を電圧35V、電流75〜90Aで作用させる。これにより、刃物表面へのダイヤモンド状炭素膜の密着性を向上させる。これより低い電流では密着性が確保できず、また高い電流ではチタン消耗が激しくなってしまう。 刃物表面に均一に作用させるため、左右2ヶ所を同時に使用する。最後に、チタンソース13と重複しながらカーボンソース14をパルス状のDC300Vで作用させる。 カーボンソース14の放電周波数を1.2Hzから12.5Hzまで段階的に変化させて傾斜層を作る。 チタンソース13を終了、カーボンソース14にてダイヤモンド状炭素膜層を積み重ねてゆく。 この結果、ステンレス製刃物の表面は、黒光りするダイヤモンド状炭素膜に覆われる。
【0011】
図3は本発明の実施形態例にかかわる高周波マグネトロン装置の模式図である。
図3において、符号17は被成膜材ホルダー、18は被成膜材(刃物)、19はテフロン薄膜、20はテフロンターゲット、21は真空計、22は永久磁石ブロック、23はワーキングガス、24は高周波電源、25は真空チャンバー、26 は空ポンプを示す。
真空チャンバー25を真空ポンプ26により、高真空にした後、ワーキングガス23を導入し、1.0Pa程度の真空圧で高周波電源24より1kV以上の高周波を印加すると、真空チャンバー25内はプラズマ状態となる。ワーキングガス23のイオンがテフロンターゲット20をスパッタリングしてターゲット原子が飛出し被成膜材である刃物18の表面に撥水性に優れ低摩擦係数を有するテフロン薄膜19が得られる。
【0012】
【実施例】
実施例1
ステンレス製の片刃刃物を刃の付いていない面が見えるように、金属製のホルダー7に固定し、さらにマニュピレーター8に固定した。刃物がホルダー7と接している面は処理されず、片面のみ処理がおこなわれるようにした。チャンバー1とマニュピレーター8の間にバイアス電圧を印加して、電圧値、放電電流値を変えて8時間窒化処理をおこなった。バイアス電圧値100V以上で刃物表面の硬度が上昇した。しかし、バイアス電圧値400V以上では逆に硬度が低下した。硬度上昇の結果を図4に示す。
図4において、符号27は窒化8時間処理したもの、28は窒化10時間処理したもの、29は窒化12時間処理したもの、30は未処理のものを示す。
このとき、刃物の表層に金属間化合物が形成されていることが断層を走査型電子顕微鏡で観察された。窒化処理を8時間おこなった刃物と、処理をしていない刃物を比較するために切れ味試験をおこなった。その結果を図5に示す。
図5において、符号31は窒化・ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(1)、32は窒化・ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(2)、33は未処理のもの(2)、34は未処理のもの(3)、35は窒化処理したもの(1)、36は窒化処理したもの(2)、37は窒化・ダイヤモンド状炭素膜・テフロン膜処理したもの(1)、 38は窒化・ダイヤモンド状炭素膜・テフロン膜処理したもの(2)を示す。
図5に示すとおり、窒化処理をおこなった刃物は、処理していない刃物に対して、切断回数30回以下の初期切断においても、30回以降の切断においても、表面処理なしのステンレス鋼刃物より切断深さが深く、優れた結果を示した。
【0013】
実施例2
予め片面窒化処理が上記実施例1に基づいて施された、ステンレス製の刃物の片面に、ダイヤモンド状炭素膜成膜を試みた。裏面にダイヤモンド状炭素膜が廻り込まないよう専用ホルダーに取り付けた後、チャンバー10内部に置いた。 チャンバー10内部には回転機構11があり、成膜ムラを防ぐ役割を有している。ガス導入装置16より、 アルゴンガスを注入し真空度2.1×10−2Pa環境下でイオンソース12を作用させる。この際の加速電圧は、2000〜3000Vである。あわせてバイアス電圧1500Vを印加することで、その効果を確実にする。次に、アルゴンガスを停止してチタンソース13を35V、75〜90Aで作用させる。最後に、チタンソース13と重複しながらカーボンソース14をパルス状のDC300Vで作用させる。 チタンソース13を終了、カーボンソース14にてダイヤモンド状炭素膜層を積み重ねてゆく。この結果、ステンレス製刃物の片面は、黒光りするダイヤモンド状炭素膜に覆われる。表面処理をしていない刃物と比較するために、切れ味試験をおこなった。その結果を図5に示す。その結果、図5に示すとおり、処理をおこなった刃物は、処理していない刃物に対して、成膜条件によっては切断回数30回以下の初期切断においても、30回以降の切断においても、表面処理なしのステンレス鋼刃物より切断深さが深く、優れた結果を示した。
【0014】
実施例3
予め片面窒化処理および、ダイヤモンド状炭素膜処理が上記実施例1及び2に基づいて施されたステンレス製の刃物の片面にテフロン成膜を試みた。図3に示す高周波マグネトロンの被成膜材ホルダー17に被成膜材である刃物18を、永久磁石ブロック22にテフロンターゲット20を取付け、真空チャンバー25の中を真空ポンプ26により、高真空にした後、ワーキングガスであるアルゴンガス23を導入し、真空計21の値を1.0Paとした。次いで、周波数13.56MHz、デュティー比0.5、電圧4.5kVに設定した高周波電源24より高周波を印加して、プラズマ状態にして被成膜材である刃物18に膜厚が2μmのテフロン薄膜19を成膜した。表面処理していない刃物と比較するために、切れ味試験をおこなった。その結果を図5に示す。その結果、図5に示すとおり、処理をおこなった刃物は、処理していない刃物に対して、切断回数30回以下の初期切断においても、30回以降の切断においても、表面処理なしのステンレス鋼刃物より切断深さが深く、優れた結果を示した。
【0015】
実施例4
上記実施例1,2,3に基づいて刃物の両面を処理し、同様の切れ味試験を実施した。切れ味試験の結果を図6に示す。
図6において、符号39は窒化・ダイヤモンド状炭素膜・テフロン膜処理したもの(1)、40は窒化・ダイヤモンド状炭素膜・テフロン膜処理したもの(2)、41は窒化・ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(1)、42は窒化・ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(2)、43は窒化処理したもの(1)、44は窒化処理したもの(2)、45は未処理のもの(2)、46は未処理のもの(3)を示す。
30回以降の切断においては、表面処理なしのステンレス鋼刃物より切断深さが深く、優れた結果を示した。
【0016】
実施例5
上記実施例に基づく刃物、すなわち、なんらの表面処理を施さないもの、窒化処理を施したもの、窒化処理とダイヤモンド状炭素膜処理したもの、及び、さらにテフロン膜処理したものに、通常の片面研ぎを行った。その後、同様の切れ味試験を実施し、切れ味試験の結果を図7に示す。
図7において、符号47は未処理のもの(2)、48は未処理のもの(3)、49は窒化・ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(1)、50は窒化・ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(2)、51は窒化処理したもの(1)、52は窒化処理したもの(2)、53は窒化・ダイヤモンド状炭素膜・テフロン膜処理したもの(1)、 54は窒化・ダイヤモンド状炭素膜・テフロン膜処理したもの(2)を示す。
図7に示すとおり、処理をおこなった刃物は、処理していない刃物に対して、片面研ぎ後も切断回数30回以下の初期切断においても、30回以降の切断においても、表面処理なしのステンレス鋼刃物より切断深さが深く、優れた結果を示した。
【0017】
実施例6
市販の純チタン2種刃物およびTi15−3−3−3刃物に実施例1と同じ表面処理を行い、切れ味試験をおこなった。その結果を図8に示す。
図8において、符号55は純チタン2種未処理のもの、56は純チタン2種窒化処理したもの、57はTi15−3−3−3未処理のもの、58はTi15−3−3−3窒化処理したもの、59は鋼製刃物を示す。
切断回数の増加とともに切断枚数の低下は見られるが、未処理品に対して、効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマイオン窒化装置
【図2】ダイヤモンド状炭素膜装置
【図3】高周波マグネトロン装置
【図4】プラズマイオン窒化による硬度上昇
【図5】片面表面処理した刃物の切れ味試験結果
【図6】両面表面処理した刃物の切れ味試験結果
【図7】表面処理後片面研ぎした刃物の切れ味試験結果
【図8】窒化処理したチタン刃物の切れ味試験結果
【符号の説明】
31 窒化、ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(1)
32 窒化、ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(2)
33 未処理のもの(2)
34 未処理のもの(3)
35 窒化処理したもの(1)
36 窒化処理したもの(2)
37 窒化、ダイヤモンド状炭素膜、テフロン膜処理したもの(1)
38 窒化、ダイヤモンド状炭素膜、テフロン膜処理したもの(2)
【発明の属する技術分野】
本発明は金属製の刃物表面に表面処理を施し、切れ味を向上させる製造方法及び処理された刃物に関する。
【0002】
【従来の技術】
刃物の材料は近年、鋼、ステンレス、チタンなど様々な種類の金属が用いられている。このうち、鋼は、磨耗は少ないが耐食性が低い。ステンレス、チタンは耐食性は高いが硬度が低く磨耗しやすいなど、いずれの材料にも一長一短があり、耐食性と対磨耗性を両立するにはいたっていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ステンレス、チタン等の刃物の表層にプラズマイオン窒化法で表面に金属間化合物を形成する硬質層、あるいは表面にダイヤモンド状炭素膜を形成し、鋼並みに硬度を高めることにより、磨耗を抑え、切れ味の低下を防ぐことが出来る。
【0004】
【課題を解決するための手段】
窒素プラズマ中にて刃物表層に、窒素系金属間化合物を形成する窒化処理を行い、硬化層を形成する。この時に、窒化処理温度が刃物の熱処理温度を超えて、焼き戻し効果により、硬度が低下することに注意しなくてはならない。その後、ダイヤモンド状炭素膜装置により、表面にダイヤモンド状炭素膜を付加することも有効である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態について説明する。市販の刃物(材質はステンレス鋼−愛知記号AUS6M)を用意し、プラズマイオン窒化処理を行い、切れ味試験を実施した。切れ味試験は紙付箋を縦に並べ切れ味試験の回数を繰り返すのにしたがって、切断深さの低下を測定していく試験であり、以降の表面処理方法のすべてに採用した。表面処理の効果を確認するために、なんらの表面処理をしないものを比較基礎とした。表面処理は、プラズマイオン窒化に引き続いてその上からダイヤモンド状炭素膜をさらに表面処理したもの、また、プラズマイオン窒化、ダイヤモンド状炭素膜の後、際外層にポリ四フッ化エチレン膜、例えば、テフロン(登録商標)膜を処理した3種類について実施した。図1、図2、図3はそれぞれ本発明の実施形態に係わるプラズマイオン窒化装置、ダイヤモンド状炭素膜装置、高周波マグネトロン装置の模式図である。
【0006】
図1において、符号1はチャンバー、2はホローカソード、3はフィラメント、4はガス導入口、5は放電用電源、6は熱電対、7はホルダー、8はマニュピレーター、9aはバイアス電圧陽極、9bはバイアス電圧陰極を示している。
チャンバー1の内部圧力を5.0×10−2Pa程度まで真空ポンプにて排泄して、ガス導入口4より、窒素ガスを導入する。この時のチャンバー1の内部圧力は7.5×10−1Pa程度である。フィラメント3に170Aの電流を流し、ホローカソード2の内部にグロー放電を発生させる。これにより、チャンバー1内の窒素ガスがプラズマ状態になり、内部全体を覆う。刃物はホルダー7に固定されていて、さらにホルダー7はマニュピレーター8に固定されている。マニュピレーター8は回転して、さらにホルダー7を自転させる機構を有している。ホルダー7には熱電対6が接続してあり、窒化処理中の温度を知ることが出来る。チャンバー1にはバイアス電圧陽極9a、マニュピレーター8にはバイアス電圧陰極9bが接続してあり、この間に直流電圧を印加する。これにより、プラズマ状態の窒素原子が刃物表面に衝突して、表層に窒素系金属間化合物を形成する。
【0007】
さらに材質が純チタン2種およびTi15−3−3−3製の市販の刃物に同様のプラズマイオン窒化処理を行った。
【0008】
また、図2は本発明の実施形態例に係わるダイヤモンド状炭素膜装置の模式図である。図2おいて、符号10はチャンバー、11は回転機構、12はイオンソース、13はチタンソース、14はカーボンソース、15は真空ポンプ、16はガス導入装置を示している。
【0009】
まず、チャンバー10内部を真空ポンプ15にて排泄し、3.7×10−3Paの真空度に設定する。 ダイヤモンド状炭素膜成膜は、大きく分けて3段階で行なわれる。 最初は、ガス導入装置16より、アルゴンガスを注入し真空度2.1×10−2Pa環境下でイオンソース12を作用させる。 これにより、刃物表面の洗浄を行なうと共に、微細な凹凸を作り出して成膜のアンカー効果を持たせる。 この際の加速電圧は、2000V〜3000Vである。これより低い加速電圧ではアンカー効果が薄くなり、また高い加速電圧では刃物表面がダメージを受けてしまう。 あわせてバイアス電圧1500Vを印加することで、その効果を確実にする。
【0010】
次に、アルゴンガスを停止してチタンソース13を電圧35V、電流75〜90Aで作用させる。これにより、刃物表面へのダイヤモンド状炭素膜の密着性を向上させる。これより低い電流では密着性が確保できず、また高い電流ではチタン消耗が激しくなってしまう。 刃物表面に均一に作用させるため、左右2ヶ所を同時に使用する。最後に、チタンソース13と重複しながらカーボンソース14をパルス状のDC300Vで作用させる。 カーボンソース14の放電周波数を1.2Hzから12.5Hzまで段階的に変化させて傾斜層を作る。 チタンソース13を終了、カーボンソース14にてダイヤモンド状炭素膜層を積み重ねてゆく。 この結果、ステンレス製刃物の表面は、黒光りするダイヤモンド状炭素膜に覆われる。
【0011】
図3は本発明の実施形態例にかかわる高周波マグネトロン装置の模式図である。
図3において、符号17は被成膜材ホルダー、18は被成膜材(刃物)、19はテフロン薄膜、20はテフロンターゲット、21は真空計、22は永久磁石ブロック、23はワーキングガス、24は高周波電源、25は真空チャンバー、26 は空ポンプを示す。
真空チャンバー25を真空ポンプ26により、高真空にした後、ワーキングガス23を導入し、1.0Pa程度の真空圧で高周波電源24より1kV以上の高周波を印加すると、真空チャンバー25内はプラズマ状態となる。ワーキングガス23のイオンがテフロンターゲット20をスパッタリングしてターゲット原子が飛出し被成膜材である刃物18の表面に撥水性に優れ低摩擦係数を有するテフロン薄膜19が得られる。
【0012】
【実施例】
実施例1
ステンレス製の片刃刃物を刃の付いていない面が見えるように、金属製のホルダー7に固定し、さらにマニュピレーター8に固定した。刃物がホルダー7と接している面は処理されず、片面のみ処理がおこなわれるようにした。チャンバー1とマニュピレーター8の間にバイアス電圧を印加して、電圧値、放電電流値を変えて8時間窒化処理をおこなった。バイアス電圧値100V以上で刃物表面の硬度が上昇した。しかし、バイアス電圧値400V以上では逆に硬度が低下した。硬度上昇の結果を図4に示す。
図4において、符号27は窒化8時間処理したもの、28は窒化10時間処理したもの、29は窒化12時間処理したもの、30は未処理のものを示す。
このとき、刃物の表層に金属間化合物が形成されていることが断層を走査型電子顕微鏡で観察された。窒化処理を8時間おこなった刃物と、処理をしていない刃物を比較するために切れ味試験をおこなった。その結果を図5に示す。
図5において、符号31は窒化・ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(1)、32は窒化・ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(2)、33は未処理のもの(2)、34は未処理のもの(3)、35は窒化処理したもの(1)、36は窒化処理したもの(2)、37は窒化・ダイヤモンド状炭素膜・テフロン膜処理したもの(1)、 38は窒化・ダイヤモンド状炭素膜・テフロン膜処理したもの(2)を示す。
図5に示すとおり、窒化処理をおこなった刃物は、処理していない刃物に対して、切断回数30回以下の初期切断においても、30回以降の切断においても、表面処理なしのステンレス鋼刃物より切断深さが深く、優れた結果を示した。
【0013】
実施例2
予め片面窒化処理が上記実施例1に基づいて施された、ステンレス製の刃物の片面に、ダイヤモンド状炭素膜成膜を試みた。裏面にダイヤモンド状炭素膜が廻り込まないよう専用ホルダーに取り付けた後、チャンバー10内部に置いた。 チャンバー10内部には回転機構11があり、成膜ムラを防ぐ役割を有している。ガス導入装置16より、 アルゴンガスを注入し真空度2.1×10−2Pa環境下でイオンソース12を作用させる。この際の加速電圧は、2000〜3000Vである。あわせてバイアス電圧1500Vを印加することで、その効果を確実にする。次に、アルゴンガスを停止してチタンソース13を35V、75〜90Aで作用させる。最後に、チタンソース13と重複しながらカーボンソース14をパルス状のDC300Vで作用させる。 チタンソース13を終了、カーボンソース14にてダイヤモンド状炭素膜層を積み重ねてゆく。この結果、ステンレス製刃物の片面は、黒光りするダイヤモンド状炭素膜に覆われる。表面処理をしていない刃物と比較するために、切れ味試験をおこなった。その結果を図5に示す。その結果、図5に示すとおり、処理をおこなった刃物は、処理していない刃物に対して、成膜条件によっては切断回数30回以下の初期切断においても、30回以降の切断においても、表面処理なしのステンレス鋼刃物より切断深さが深く、優れた結果を示した。
【0014】
実施例3
予め片面窒化処理および、ダイヤモンド状炭素膜処理が上記実施例1及び2に基づいて施されたステンレス製の刃物の片面にテフロン成膜を試みた。図3に示す高周波マグネトロンの被成膜材ホルダー17に被成膜材である刃物18を、永久磁石ブロック22にテフロンターゲット20を取付け、真空チャンバー25の中を真空ポンプ26により、高真空にした後、ワーキングガスであるアルゴンガス23を導入し、真空計21の値を1.0Paとした。次いで、周波数13.56MHz、デュティー比0.5、電圧4.5kVに設定した高周波電源24より高周波を印加して、プラズマ状態にして被成膜材である刃物18に膜厚が2μmのテフロン薄膜19を成膜した。表面処理していない刃物と比較するために、切れ味試験をおこなった。その結果を図5に示す。その結果、図5に示すとおり、処理をおこなった刃物は、処理していない刃物に対して、切断回数30回以下の初期切断においても、30回以降の切断においても、表面処理なしのステンレス鋼刃物より切断深さが深く、優れた結果を示した。
【0015】
実施例4
上記実施例1,2,3に基づいて刃物の両面を処理し、同様の切れ味試験を実施した。切れ味試験の結果を図6に示す。
図6において、符号39は窒化・ダイヤモンド状炭素膜・テフロン膜処理したもの(1)、40は窒化・ダイヤモンド状炭素膜・テフロン膜処理したもの(2)、41は窒化・ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(1)、42は窒化・ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(2)、43は窒化処理したもの(1)、44は窒化処理したもの(2)、45は未処理のもの(2)、46は未処理のもの(3)を示す。
30回以降の切断においては、表面処理なしのステンレス鋼刃物より切断深さが深く、優れた結果を示した。
【0016】
実施例5
上記実施例に基づく刃物、すなわち、なんらの表面処理を施さないもの、窒化処理を施したもの、窒化処理とダイヤモンド状炭素膜処理したもの、及び、さらにテフロン膜処理したものに、通常の片面研ぎを行った。その後、同様の切れ味試験を実施し、切れ味試験の結果を図7に示す。
図7において、符号47は未処理のもの(2)、48は未処理のもの(3)、49は窒化・ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(1)、50は窒化・ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(2)、51は窒化処理したもの(1)、52は窒化処理したもの(2)、53は窒化・ダイヤモンド状炭素膜・テフロン膜処理したもの(1)、 54は窒化・ダイヤモンド状炭素膜・テフロン膜処理したもの(2)を示す。
図7に示すとおり、処理をおこなった刃物は、処理していない刃物に対して、片面研ぎ後も切断回数30回以下の初期切断においても、30回以降の切断においても、表面処理なしのステンレス鋼刃物より切断深さが深く、優れた結果を示した。
【0017】
実施例6
市販の純チタン2種刃物およびTi15−3−3−3刃物に実施例1と同じ表面処理を行い、切れ味試験をおこなった。その結果を図8に示す。
図8において、符号55は純チタン2種未処理のもの、56は純チタン2種窒化処理したもの、57はTi15−3−3−3未処理のもの、58はTi15−3−3−3窒化処理したもの、59は鋼製刃物を示す。
切断回数の増加とともに切断枚数の低下は見られるが、未処理品に対して、効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマイオン窒化装置
【図2】ダイヤモンド状炭素膜装置
【図3】高周波マグネトロン装置
【図4】プラズマイオン窒化による硬度上昇
【図5】片面表面処理した刃物の切れ味試験結果
【図6】両面表面処理した刃物の切れ味試験結果
【図7】表面処理後片面研ぎした刃物の切れ味試験結果
【図8】窒化処理したチタン刃物の切れ味試験結果
【符号の説明】
31 窒化、ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(1)
32 窒化、ダイヤモンド状炭素膜処理したもの(2)
33 未処理のもの(2)
34 未処理のもの(3)
35 窒化処理したもの(1)
36 窒化処理したもの(2)
37 窒化、ダイヤモンド状炭素膜、テフロン膜処理したもの(1)
38 窒化、ダイヤモンド状炭素膜、テフロン膜処理したもの(2)
Claims (7)
- 鋼製あるいは、プラズマイオン窒化法で表面に金属間化合物を形成する金属素地で作られた刃物にプラズマ−イオン窒化表面処理を行い、素地の硬化から刃物の切れ味持続性を高める方法。
- 請求項1によって処理された刃物にダイヤモンド状炭素膜を施し、刃物の切れ味持続性を高める方法。
- 請求項1,2によって処理された刃物に高周波マグネトロンによりポリ四フッ化エチレン膜を施し、刃物の切断特性を変える方法。
- 上記請求項に基づく方法で片面を処理された刃物。
- 上記請求項に基づく方法で両面を処理された刃物。
- 請求項1において、イオン加速のために製品にかけるバイアス電圧は100V以上、400V以下である製造方法。
- 請求項2において真空度が3.7×10−3Paに設定されたチャンバー内にて、イオンソース加速電圧を2000V以上、3000V未満、バイアス電圧を1500V、チタンソース電流を75Aまたは90A、カーボンソースをパルス状DC300Vで、その周波数を1.2Hzから12.5Hzに変化させ、ダイヤモンド状炭素膜成膜をおこなう製造方法。
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