JP2004297990A - 永久磁石型同期電動機 - Google Patents
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Abstract
【課題】外部にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスが従来と比較して格段に大きく、高周波鉄損の小さい永久磁石型同期電動機を提供する。
【解決手段】周方向ティース部ごとに分割された積層鉄心から構成された固定子鉄心3を有する固定子1と、永久磁石17が装着された回転子16により構成された永久磁石型同期電動機において、固定子鉄心3は、回転子の永久磁石17と対向する固定子鉄心中央部4と、永久磁石17と対向しない固定子鉄心端部5を持ち、固定子鉄心中央部4のティース先端部の形状は隣接するティース先端部との間に空隙を有し、固定子鉄心端部5のティース先端部の形状は隣接するティース先端部と密着させる。固定子鉄心中央部4は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部5では、巻線9が作る磁束が密着したティース先端部のところで短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。
【選択図】 図3
【解決手段】周方向ティース部ごとに分割された積層鉄心から構成された固定子鉄心3を有する固定子1と、永久磁石17が装着された回転子16により構成された永久磁石型同期電動機において、固定子鉄心3は、回転子の永久磁石17と対向する固定子鉄心中央部4と、永久磁石17と対向しない固定子鉄心端部5を持ち、固定子鉄心中央部4のティース先端部の形状は隣接するティース先端部との間に空隙を有し、固定子鉄心端部5のティース先端部の形状は隣接するティース先端部と密着させる。固定子鉄心中央部4は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部5では、巻線9が作る磁束が密着したティース先端部のところで短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、永久磁石型同期電動機に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業用に使用される電動機として、図8,9に示すような永久磁石型同期電動機がよく知られている(例えば非特許文献1参照)。図8は永久磁石型同期電動機の横断面図を、図9は縦断面図を示している。
図8,9において、1は固定子、2はフレーム、3は固定子鉄心、8は絶縁材、9は電機子巻線、10はティース、11はティース先端部、13はスロット、14はブラケット、15は軸受である。16は回転子、17は永久磁石、18はシャフトである。
【0003】
固定子鉄心3は電磁鋼板などの薄板材を多数枚積層して形成され、通常金属製のフレーム2内に収められる。固定子鉄心3の内側は放射状のティース10となっている。ティース10とティース10の間の空間をスロット13と称し、そのスロット13の内周面は、絶縁材8で覆われている。スロット13内に絶縁被覆電線を用いて巻装された電機子巻線9が収められている。
一方、固定子1の内側には、シャフト18の外周表面に永久磁石17が装着された回転子16が設置される。回転子16は、軸受15を装着したブラケット14により、両側から支えられている。
前記の電機子巻線9に三相交流電流を流すことにより固定子1の内側に回転磁界が発生し、この回転磁界と永久磁石17が発生する磁界との相互作用により回転子16を回転させる。
【0004】
近年、固定子鉄心の構造として、分割鉄心構造が使われることが多い(例えば特開平9−182342号公報(特許文献1)参照)。図8,9も分割鉄心構造による固定子鉄心の一例である。図8は、周方向ティースごとに分割する方法である。分割鉄心構造を採用する理由は、スロット13内における巻線占積率を高めるためである。永久磁石型同期電動機の性能を上げるには、巻線占積率を高くすることが特に有効であるからである。図8において、ほぼT字形をした積層分割鉄心に、予め絶縁材を介して、絶縁被覆電線を巻装し、その後、各分割鉄心を組み合わせて、円筒状の固定子鉄心3を形成する。このように分割鉄心構造により形成された固定子1は、分割をしていない一体型の固定子鉄心のままで電機子巻線を巻装する場合と比較して、巻線占積率を極めて高くすることができる。
ここで、ティース先端部11の形状について説明する。ティース先端部11の形状は、通常、鳩の尻尾のような形状とすることが多い。これは、磁石の発生する磁束を有効に集めるためである。ただし、隣接するティース先端部11同士は通常密着させず、すこし隙間を持たせることが多い。これは、完全に密着させてしまうと、その部分が、磁束の短絡経路となり、磁石で発生した磁束が固定子鉄心3と鎖交せずに、隣の磁極に直接短絡する磁束が多くなるためである。
【0005】
図10は、永久磁石型同期電動機の従来の技術の他の例を示す横断面図である。図中の番号は、図8とほぼ共通であるために、同一のものは同一の符号を付して説明を省略し、異なるもののみについて説明する。図10において、6はティース部鉄心、7は外周部鉄心、12はティース連結部である。
図10も分割鉄心構造による固定子鉄心の一例であるが、図8とは異なる方式の分割である。即ち、図10の固定子鉄心3は、内周側にティース連結部12を持つ放射状のティース部鉄心6と円筒状の外周部鉄心7の2つに分割する方式である。ティース連結部12はティースがバラバラにならないようにするために設けるものであるが、通常この連結部の厚みは必要とする機械強度を満たす最低限の厚みとする。なぜならば、このティース連結部12の厚みが必要以上に厚すぎると、前述したことと同様に、この部分が磁束の短絡経路となり、磁石の磁束が隣の磁極に短絡してしまうからである。
【0006】
図10に示す永久磁石型同期電動機の製造手順は以下のようになる。
予め、絶縁材に絶縁被覆電線を巻装してなる空芯コイルを、放射状のティース部鉄心6の外側から順次挿入していく。すべてのティースの空芯コイルを挿入し終わった後、ティース部鉄心6の外側に、円筒状の外周部鉄心7を焼きバメ、または圧入する。以上のようにして形成された固定子鉄心3を、フレーム2内に装着して固定子1を構成する。このように、空芯コイルをティース部鉄心6の外側から装着していくために、スロット内の巻線占積率を極めて高くすることができる。
次に、固定子鉄心の積層厚みと磁石の長さの関係について説明する。図9に示すように従来の技術では通常、固定子鉄心3の積層厚みと永久磁石17の長さとはほぼ同じ長さとしていることが多い。これは、固定子鉄心3の積層厚みより永久磁石17の長さが短いと、永久磁石17の対向していない固定子鉄心3の部分が無駄となるからである。一方、固定子鉄心3の積層厚みより永久磁石17の長さが長いと、固定子鉄心3と対向しない部分の永久磁石17の部分が無駄になるからである。
【0007】
最後に、分割鉄心を構成するそれぞれの電磁鋼板の形状について説明する。通常、固定子鉄心3の鉄心はプレス加工にて製作するために、鉄心の積厚方向に対してすべて同じ形状の電磁鋼板で構成されている。これは図8の周方向ティースごとの分割方式でも、図10の2分割方式でもどちらに対しても当てはまることである。
このように、従来の永久磁石型同期電動機では、固定子鉄心の積層厚みと磁石の長さとはほぼ同じ長さとしている。また、固定子鉄心は、鉄心の積層方向に対してすべて同じ形状の電磁鋼板で構成されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−182342号公報
【非特許文献1】
雑誌「日経メカニカル」、1994年3月21日号、p.36−49
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術による永久磁石型同期電動機では、固定子鉄心の積層厚みと磁石の長さとはほぼ同じ長さとしている。また、固定子鉄心は、鉄心の積層方向に対してすべて同じ形状の電磁鋼板で構成されている。そのために次に述べるような問題があった。
すなわち、一般的に電動機が大容量化すると、巻線を構成する絶縁被覆電線の線径を太くし、巻回数を減らすために電機子巻線のインダクタンスが小さくなり、この巻線インダクタンスが小さいことが電動機を駆動する際に障害となる。通常、永久磁石型同期電動機は、PWM駆動されるドライバ装置により駆動される。この際、巻線インダクタンスが小さいと電気的時定数が小さいために電流リップルが大きくなり、その結果として、電流リップルに起因する高周波鉄損が大きくなる。そのことにより、電動機の定格出力が低く抑えられるという問題があった。また、高周波鉄損は主として永久磁石に発生するために、永久磁石の温度が異常に高くなるために磁石が減磁しやすいという問題もあった。
巻線インダクタンスを大きくするためには、電動機とは別個に外部にリアクトルを追加することがもっとも簡単な方法である。しかしながら、リアクトルを設置するための空間が必要になるとともに、電動機との接続も煩雑なものとなる。そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、外部にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスが従来と比較して格段に大きく、高周波鉄損の小さい永久磁石型同期電動機を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1に記載の発明は、周方向ティース部ごとに分割された積層鉄心から構成された固定子鉄心を有する固定子と、永久磁石が装着された回転子により構成された永久磁石型同期電動機において、前記固定子鉄心は、前記回転子の永久磁石と対向する固定子鉄心中央部と、永久磁石と対向しない固定子鉄心端部を持ち、前記固定子鉄心中央部のティース先端部の形状は隣接するティース先端部との間に空隙を有し、前記固定子鉄心端部のティース先端部の形状は隣接するティース先端部と密着していることを特徴とするものである。
請求項1に係る発明においては、以上のような構成になっているため、固定子鉄心中央部は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部では、巻線が作る磁束が上記の密着したティース先端部のところで短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
巻線インダクタンスが大きくなることにより、電流リップルを小さく抑えることができ、電流リップルに起因する高周波鉄損を大幅に低減でき、電動機の定格出力を上げることができる。また、高周波鉄損による磁石の発熱が抑えられ、磁石の耐減磁性能も向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、内周側が薄肉連結部にて連結された放射状のティース部鉄心と円筒状の外周部鉄心の2分割鉄心構造から構成された固定子鉄心を有する固定子と、永久磁石が装着された回転子により構成された永久磁石型同期電動機において、前記固定子鉄心は、前記回転子の永久磁石と対向する固定子鉄心中央部と、永久磁石と対向しない固定子鉄心端部を持ち、前記固定子鉄心端部のティース部鉄心の薄肉連結部の厚みが、前記固定子鉄心中央部のティース部鉄心の薄肉連結部の厚みよりも厚いことを特徴とするものである。
請求項2に係る発明においては、以上のような構成になっているため、固定子鉄心中央部は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部では、巻線が作る磁束が上記の厚くしたティース連結部のところで短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
巻線インダクタンスが大きくなることにより、電流リップルを小さく抑えることができ、電流リップルに起因する高周波鉄損を大幅に低減でき、電動機の定格出力を上げることができる。また、高周波鉄損による磁石の発熱が抑えられ、磁石の耐減磁性能も向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の永久磁石型同期電動機において、前記固定子鉄心端部のティースの内周面にくぼみを有することを特徴とするものである。
請求項3に係る発明においては、以上のような構成になっているため、くぼみを有していない場合と比較して、永久磁石端部からの漏れ磁束を格段に小さくできる。したがって、巻線と鎖交する有効磁束の減少を抑えることができ、トルクの低下を抑えることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の永久磁石型同期電動機の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
最初に、本発明の永久磁石型同期電動機の第1実施形態について説明する。
図1,2,3は、第1実施形態に係る永久磁石型同期電動機を示すもので、図1は固定子鉄心中央部での横断面図を、図2は固定子鉄心端部での横断面図を、図3は縦断面図を示す。
図1,2,3において、1は固定子、2はフレーム、3は固定子鉄心、4は固定子鉄心中央部、5は固定子鉄心端部、8は絶縁材、9は電機子巻線、10はティース、11はティース先端部、13はスロット、14はブラケット、15は軸受、16は回転子、17は永久磁石、18はシャフト、20は短絡磁束の流れ、21は有効磁束、22は漏れ磁束である。
【0014】
以下、図にしたがって具体的に各部の働きについて説明する。
固定子鉄心3は周方向ティースごとに分割された構造となっており、各分割鉄心は、電磁鋼板などの薄板材を多数枚積層して形成されている。各分割鉄心はほぼT字形をしており、予め絶縁材8を介して、絶縁被覆電線を巻装し、その後、各分割鉄心を組み合わせて、円筒状の固定子鉄心3を形成する。その後、固定子鉄心3は、フレーム2内に収められる。
一方、固定子1の内側には、シャフト18の外周表面に永久磁石17が装着された回転子16が設置される。回転子16は、軸受15を装着したブラケット14により、両側から支えられている。
【0015】
前記の電機子巻線9に三相交流電流を流すことにより固定子1の内側に回転磁界が発生し、この回転磁界と永久磁石17が発生する磁界との相互作用により回転子16を回転させる。
永久磁石17の長さは、固定子鉄心3の積層厚みよりも端部を短くする。すなわち、固定子鉄心中央部4は永久磁石17と対向しているが、固定子鉄心端部5は永久磁石17と対向していない。
ティース先端部11の形状については、図1に示すように、固定子鉄心中央部4におけるティース先端部11の形状は、隣接するティース先端部11間で、空隙を持たせている。一方、図2に示すように、固定子鉄心端部5におけるティース先端部11の形状は、隣接ティース先端部11同士が完全に密着するようにしている。
【0016】
本第1実施形態は、以上のような構成をしているので、固定子鉄心中央部4は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部5では、巻線が作る磁束が上記の密着したティース先端部11のところで、短絡磁束の流れ20のように短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
【0017】
(第2実施形態)
次に、本発明の永久磁石型同期電動機の第2実施形態について説明する。
図4,5は、第2実施形態に係る永久磁石型同期電動機の構成を示すもので、図4は固定子鉄心中央部での横断面図を、図5は固定子鉄心端部での横断面図を示す。
図4,5において、1は固定子、2はフレーム、3は固定子鉄心、6はティース部鉄心、7は外周部鉄心、8は絶縁材、9は電機子巻線、12はティース連結部、13はスロット、14はブラケット、15は軸受、16は回転子、17は永久磁石、18はシャフト、20は短絡磁束の流れである。
【0018】
以下、図にしたがって具体的に各部の働きについて説明する。
固定子鉄心3は内周側に連結部を持つ放射状のティース部鉄心6と円筒状の外周部鉄心7の二つに分割されている。固定子1の製造手順は以下のようになる。予め、絶縁材に絶縁被覆電線を巻装してなる空芯コイルを、放射状のティース部鉄心6の外側から、順次挿入していく。すべてのティースの空芯コイルを挿入し終わった後、ティース部鉄心6の外側に、円筒状の外周部鉄心7を焼きバメ、または圧入する。以上のようにして形成された固定子鉄心3を、フレーム2内に装着して固定子1を構成する。
一方、固定子1の内側には、シャフト18の外周表面に永久磁石17が装着された回転子16が設置される。回転子16は、軸受15を装着した、ブラケット14により、両側から支えられている。
【0019】
前記の電機子巻線9に三相交流電流を流すことにより固定子1の内側に回転磁界が発生し、この回転磁界と永久磁石17が発生する磁界との相互作用により回転子16を回転させる。
永久磁石17の長さは、固定子鉄心3の積層厚みよりも端部を短くする。すなわち、第1実施形態の図3と同様に、図4に示した構成の固定子鉄心中央部4は永久磁石17と対向しているが、図5に示した構成の固定子鉄心端部5は永久磁石17と対向していない。
ティース先端部の形状については、図4に示すように、固定子鉄心中央部4におけるティース連結部の厚みは、必要とする機械強度を満たす最低限の厚みとしている。一方、図5に示すように、固定子鉄心端部5におけるティース連結部の形状は、上記の固定子鉄心中央部4におけるティース連結部の厚みよりも厚くしている。
【0020】
本第2実施形態は、以上のような構成をしているので、第1実施形態の永久磁石型同期電動機と同様に、固定子鉄心中央部は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部では、巻線が作る磁束が上記の厚くしたティース連結部のところで、短絡磁束の流れ20のように短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
【0021】
(第3実施形態)
次に、本発明の永久磁石型同期電動機の第3実施形態について説明する。
図6,7は、第3実施形態に係る永久磁石型同期電動機の構成を示すもので、図6は固定子鉄心端部での横断面図を、図7は縦断面図を示す。固定子鉄心中央部での横断面図は、図1と同じであるため省略する。
図6,7において、1は固定子、2はフレーム、3は固定子鉄心、4は固定子鉄心中央部、5は固定子鉄心端部、8は絶縁材、9は電機子巻線、10はティース、11はティース先端部、13はスロット、14はブラケット、15は軸受である。16は回転子、17は永久磁石、18はシャフト、19はくぼみ、20は短絡磁束の流れ、21は有効磁束、22は漏れ磁束である。
第3実施形態は、固定子鉄心端部のティースの内周面にくぼみ19を有していること以外は、第1実施形態と全く同じである。
【0022】
この第3実施形態は、第1実施形態と同様に、固定子鉄心中央部4は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部5では、巻線が作る磁束が上記の密着したティース先端部11のところで、短絡磁束の流れ20のように短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
さらに、固定子鉄心端部5のティースの内周面にくぼみ19を有しているため、くぼみ19を有していない第1実施形態と比較して、固定子鉄心端部5のパーミアンスが小さくなり、永久磁石17端部からの漏れ磁束22を格段に小さくできる。このくぼみ19は、前述の短絡磁束の流れ20の経路には影響を与えないため、リアクトルの効果には悪影響を与えない。
なお、第3実施形態は、第1実施形態と同様の周方向ティース部ごとの分割方式について説明したが、第2実施形態の2分割方式に対しても実施できることは勿論である。
【0023】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1に記載の永久磁石型同期電動機よれば、周方向ティース部ごとに分割された積層鉄心から構成された固定子鉄心を有する固定子と、永久磁石が装着された回転子により構成された永久磁石型同期電動機において、前記固定子鉄心は、前記回転子の永久磁石と対向する固定子鉄心中央部と、前記永久磁石と対向しない固定子鉄心端部を持ち、前記固定子鉄心中央部のティース先端部の形状は隣接するティース先端部との間に空隙を有し、前記固定子鉄心端部のティース先端部の形状は隣接するティース先端部と密着している構成としたことにより、固定子鉄心中央部は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部では、巻線が作る磁束が上記の密着したティース先端部のところで短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
また、巻線インダクタンスが大きくなることにより、電流リップルを小さく抑えることができ、電流リップルに起因する高周波鉄損を大幅に低減でき、電動機の定格出力を上げることができるという効果がある。また、高周波鉄損による磁石の発熱が抑えられ、磁石の耐減磁性能が向上する。
【0024】
請求項2に記載の永久磁石型同期電動機によれば、内周側が薄肉連結部にて連結された放射状のティース部鉄心と円筒状の外周部鉄心の2分割鉄心構造から構成された固定子鉄心を有する固定子と、永久磁石が装着された回転子により構成された永久磁石型同期電動機において、前記固定子鉄心は、前記回転子の永久磁石と対向する固定子鉄心中央部と、前記永久磁石と対向しない固定子鉄心端部を持ち、前記固定子鉄心端部のティース部鉄心の薄肉連結部の厚みが、前記固定子鉄心中央部のティース部鉄心の薄肉連結部の厚みよりも厚くなるように構成したので、固定子鉄心中央部は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部では、巻線が作る磁束が上記の厚くしたティース連結部のところで短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
また、巻線インダクタンスが大きくなることにより、電流リップルを小さく抑えることができ、電流リップルに起因する高周波鉄損を大幅に低減でき、電動機の定格出力を上げることができるという効果がある。また、高周波鉄損による磁石の発熱が抑えられ、磁石の耐減磁性能が向上する。
【0025】
請求項3に記載の永久磁石型同期電動機によれば、請求項1または2に記載の発明による効果に加えて、固定子鉄心端部のティースの内周面にくぼみを有しているため、くぼみを有していない場合と比較して、永久磁石端部からの漏れ磁束を格段に小さくできるという効果がある。したがって、巻線と鎖交する有効磁束の減少を抑えることができ、トルクの低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す固定子鉄心中央部での横断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示す固定子鉄心端部での横断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示す固定子鉄心中央部での横断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す固定子鉄心端部での横断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示す固定子鉄心端部での横断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図8】従来の永久磁石型同期電動機を示す横断面図である。
【図9】従来の永久磁石型同期電動機を示す縦断面図である。
【図10】他の従来の永久磁石型同期電動機を示す横断面図である。
【符号の説明】
1:固定子
2:フレーム
3:固定子鉄心
4:固定子鉄心中央部
5:固定子鉄心端部
6:ティース部鉄心
7:外周部鉄心
8:絶縁材
9:電機子巻線
10:ティース
11:ティース先端部
12:ティース連結部
13:スロット
14:ブラケット
15:軸受
16:回転子
17:永久磁石
18:シャフト
19:くぼみ
20:短絡磁束の流れ
21:有効磁束
22:漏れ磁束
【発明の属する技術分野】
本発明は、永久磁石型同期電動機に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業用に使用される電動機として、図8,9に示すような永久磁石型同期電動機がよく知られている(例えば非特許文献1参照)。図8は永久磁石型同期電動機の横断面図を、図9は縦断面図を示している。
図8,9において、1は固定子、2はフレーム、3は固定子鉄心、8は絶縁材、9は電機子巻線、10はティース、11はティース先端部、13はスロット、14はブラケット、15は軸受である。16は回転子、17は永久磁石、18はシャフトである。
【0003】
固定子鉄心3は電磁鋼板などの薄板材を多数枚積層して形成され、通常金属製のフレーム2内に収められる。固定子鉄心3の内側は放射状のティース10となっている。ティース10とティース10の間の空間をスロット13と称し、そのスロット13の内周面は、絶縁材8で覆われている。スロット13内に絶縁被覆電線を用いて巻装された電機子巻線9が収められている。
一方、固定子1の内側には、シャフト18の外周表面に永久磁石17が装着された回転子16が設置される。回転子16は、軸受15を装着したブラケット14により、両側から支えられている。
前記の電機子巻線9に三相交流電流を流すことにより固定子1の内側に回転磁界が発生し、この回転磁界と永久磁石17が発生する磁界との相互作用により回転子16を回転させる。
【0004】
近年、固定子鉄心の構造として、分割鉄心構造が使われることが多い(例えば特開平9−182342号公報(特許文献1)参照)。図8,9も分割鉄心構造による固定子鉄心の一例である。図8は、周方向ティースごとに分割する方法である。分割鉄心構造を採用する理由は、スロット13内における巻線占積率を高めるためである。永久磁石型同期電動機の性能を上げるには、巻線占積率を高くすることが特に有効であるからである。図8において、ほぼT字形をした積層分割鉄心に、予め絶縁材を介して、絶縁被覆電線を巻装し、その後、各分割鉄心を組み合わせて、円筒状の固定子鉄心3を形成する。このように分割鉄心構造により形成された固定子1は、分割をしていない一体型の固定子鉄心のままで電機子巻線を巻装する場合と比較して、巻線占積率を極めて高くすることができる。
ここで、ティース先端部11の形状について説明する。ティース先端部11の形状は、通常、鳩の尻尾のような形状とすることが多い。これは、磁石の発生する磁束を有効に集めるためである。ただし、隣接するティース先端部11同士は通常密着させず、すこし隙間を持たせることが多い。これは、完全に密着させてしまうと、その部分が、磁束の短絡経路となり、磁石で発生した磁束が固定子鉄心3と鎖交せずに、隣の磁極に直接短絡する磁束が多くなるためである。
【0005】
図10は、永久磁石型同期電動機の従来の技術の他の例を示す横断面図である。図中の番号は、図8とほぼ共通であるために、同一のものは同一の符号を付して説明を省略し、異なるもののみについて説明する。図10において、6はティース部鉄心、7は外周部鉄心、12はティース連結部である。
図10も分割鉄心構造による固定子鉄心の一例であるが、図8とは異なる方式の分割である。即ち、図10の固定子鉄心3は、内周側にティース連結部12を持つ放射状のティース部鉄心6と円筒状の外周部鉄心7の2つに分割する方式である。ティース連結部12はティースがバラバラにならないようにするために設けるものであるが、通常この連結部の厚みは必要とする機械強度を満たす最低限の厚みとする。なぜならば、このティース連結部12の厚みが必要以上に厚すぎると、前述したことと同様に、この部分が磁束の短絡経路となり、磁石の磁束が隣の磁極に短絡してしまうからである。
【0006】
図10に示す永久磁石型同期電動機の製造手順は以下のようになる。
予め、絶縁材に絶縁被覆電線を巻装してなる空芯コイルを、放射状のティース部鉄心6の外側から順次挿入していく。すべてのティースの空芯コイルを挿入し終わった後、ティース部鉄心6の外側に、円筒状の外周部鉄心7を焼きバメ、または圧入する。以上のようにして形成された固定子鉄心3を、フレーム2内に装着して固定子1を構成する。このように、空芯コイルをティース部鉄心6の外側から装着していくために、スロット内の巻線占積率を極めて高くすることができる。
次に、固定子鉄心の積層厚みと磁石の長さの関係について説明する。図9に示すように従来の技術では通常、固定子鉄心3の積層厚みと永久磁石17の長さとはほぼ同じ長さとしていることが多い。これは、固定子鉄心3の積層厚みより永久磁石17の長さが短いと、永久磁石17の対向していない固定子鉄心3の部分が無駄となるからである。一方、固定子鉄心3の積層厚みより永久磁石17の長さが長いと、固定子鉄心3と対向しない部分の永久磁石17の部分が無駄になるからである。
【0007】
最後に、分割鉄心を構成するそれぞれの電磁鋼板の形状について説明する。通常、固定子鉄心3の鉄心はプレス加工にて製作するために、鉄心の積厚方向に対してすべて同じ形状の電磁鋼板で構成されている。これは図8の周方向ティースごとの分割方式でも、図10の2分割方式でもどちらに対しても当てはまることである。
このように、従来の永久磁石型同期電動機では、固定子鉄心の積層厚みと磁石の長さとはほぼ同じ長さとしている。また、固定子鉄心は、鉄心の積層方向に対してすべて同じ形状の電磁鋼板で構成されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−182342号公報
【非特許文献1】
雑誌「日経メカニカル」、1994年3月21日号、p.36−49
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術による永久磁石型同期電動機では、固定子鉄心の積層厚みと磁石の長さとはほぼ同じ長さとしている。また、固定子鉄心は、鉄心の積層方向に対してすべて同じ形状の電磁鋼板で構成されている。そのために次に述べるような問題があった。
すなわち、一般的に電動機が大容量化すると、巻線を構成する絶縁被覆電線の線径を太くし、巻回数を減らすために電機子巻線のインダクタンスが小さくなり、この巻線インダクタンスが小さいことが電動機を駆動する際に障害となる。通常、永久磁石型同期電動機は、PWM駆動されるドライバ装置により駆動される。この際、巻線インダクタンスが小さいと電気的時定数が小さいために電流リップルが大きくなり、その結果として、電流リップルに起因する高周波鉄損が大きくなる。そのことにより、電動機の定格出力が低く抑えられるという問題があった。また、高周波鉄損は主として永久磁石に発生するために、永久磁石の温度が異常に高くなるために磁石が減磁しやすいという問題もあった。
巻線インダクタンスを大きくするためには、電動機とは別個に外部にリアクトルを追加することがもっとも簡単な方法である。しかしながら、リアクトルを設置するための空間が必要になるとともに、電動機との接続も煩雑なものとなる。そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、外部にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスが従来と比較して格段に大きく、高周波鉄損の小さい永久磁石型同期電動機を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1に記載の発明は、周方向ティース部ごとに分割された積層鉄心から構成された固定子鉄心を有する固定子と、永久磁石が装着された回転子により構成された永久磁石型同期電動機において、前記固定子鉄心は、前記回転子の永久磁石と対向する固定子鉄心中央部と、永久磁石と対向しない固定子鉄心端部を持ち、前記固定子鉄心中央部のティース先端部の形状は隣接するティース先端部との間に空隙を有し、前記固定子鉄心端部のティース先端部の形状は隣接するティース先端部と密着していることを特徴とするものである。
請求項1に係る発明においては、以上のような構成になっているため、固定子鉄心中央部は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部では、巻線が作る磁束が上記の密着したティース先端部のところで短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
巻線インダクタンスが大きくなることにより、電流リップルを小さく抑えることができ、電流リップルに起因する高周波鉄損を大幅に低減でき、電動機の定格出力を上げることができる。また、高周波鉄損による磁石の発熱が抑えられ、磁石の耐減磁性能も向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、内周側が薄肉連結部にて連結された放射状のティース部鉄心と円筒状の外周部鉄心の2分割鉄心構造から構成された固定子鉄心を有する固定子と、永久磁石が装着された回転子により構成された永久磁石型同期電動機において、前記固定子鉄心は、前記回転子の永久磁石と対向する固定子鉄心中央部と、永久磁石と対向しない固定子鉄心端部を持ち、前記固定子鉄心端部のティース部鉄心の薄肉連結部の厚みが、前記固定子鉄心中央部のティース部鉄心の薄肉連結部の厚みよりも厚いことを特徴とするものである。
請求項2に係る発明においては、以上のような構成になっているため、固定子鉄心中央部は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部では、巻線が作る磁束が上記の厚くしたティース連結部のところで短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
巻線インダクタンスが大きくなることにより、電流リップルを小さく抑えることができ、電流リップルに起因する高周波鉄損を大幅に低減でき、電動機の定格出力を上げることができる。また、高周波鉄損による磁石の発熱が抑えられ、磁石の耐減磁性能も向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の永久磁石型同期電動機において、前記固定子鉄心端部のティースの内周面にくぼみを有することを特徴とするものである。
請求項3に係る発明においては、以上のような構成になっているため、くぼみを有していない場合と比較して、永久磁石端部からの漏れ磁束を格段に小さくできる。したがって、巻線と鎖交する有効磁束の減少を抑えることができ、トルクの低下を抑えることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の永久磁石型同期電動機の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
最初に、本発明の永久磁石型同期電動機の第1実施形態について説明する。
図1,2,3は、第1実施形態に係る永久磁石型同期電動機を示すもので、図1は固定子鉄心中央部での横断面図を、図2は固定子鉄心端部での横断面図を、図3は縦断面図を示す。
図1,2,3において、1は固定子、2はフレーム、3は固定子鉄心、4は固定子鉄心中央部、5は固定子鉄心端部、8は絶縁材、9は電機子巻線、10はティース、11はティース先端部、13はスロット、14はブラケット、15は軸受、16は回転子、17は永久磁石、18はシャフト、20は短絡磁束の流れ、21は有効磁束、22は漏れ磁束である。
【0014】
以下、図にしたがって具体的に各部の働きについて説明する。
固定子鉄心3は周方向ティースごとに分割された構造となっており、各分割鉄心は、電磁鋼板などの薄板材を多数枚積層して形成されている。各分割鉄心はほぼT字形をしており、予め絶縁材8を介して、絶縁被覆電線を巻装し、その後、各分割鉄心を組み合わせて、円筒状の固定子鉄心3を形成する。その後、固定子鉄心3は、フレーム2内に収められる。
一方、固定子1の内側には、シャフト18の外周表面に永久磁石17が装着された回転子16が設置される。回転子16は、軸受15を装着したブラケット14により、両側から支えられている。
【0015】
前記の電機子巻線9に三相交流電流を流すことにより固定子1の内側に回転磁界が発生し、この回転磁界と永久磁石17が発生する磁界との相互作用により回転子16を回転させる。
永久磁石17の長さは、固定子鉄心3の積層厚みよりも端部を短くする。すなわち、固定子鉄心中央部4は永久磁石17と対向しているが、固定子鉄心端部5は永久磁石17と対向していない。
ティース先端部11の形状については、図1に示すように、固定子鉄心中央部4におけるティース先端部11の形状は、隣接するティース先端部11間で、空隙を持たせている。一方、図2に示すように、固定子鉄心端部5におけるティース先端部11の形状は、隣接ティース先端部11同士が完全に密着するようにしている。
【0016】
本第1実施形態は、以上のような構成をしているので、固定子鉄心中央部4は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部5では、巻線が作る磁束が上記の密着したティース先端部11のところで、短絡磁束の流れ20のように短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
【0017】
(第2実施形態)
次に、本発明の永久磁石型同期電動機の第2実施形態について説明する。
図4,5は、第2実施形態に係る永久磁石型同期電動機の構成を示すもので、図4は固定子鉄心中央部での横断面図を、図5は固定子鉄心端部での横断面図を示す。
図4,5において、1は固定子、2はフレーム、3は固定子鉄心、6はティース部鉄心、7は外周部鉄心、8は絶縁材、9は電機子巻線、12はティース連結部、13はスロット、14はブラケット、15は軸受、16は回転子、17は永久磁石、18はシャフト、20は短絡磁束の流れである。
【0018】
以下、図にしたがって具体的に各部の働きについて説明する。
固定子鉄心3は内周側に連結部を持つ放射状のティース部鉄心6と円筒状の外周部鉄心7の二つに分割されている。固定子1の製造手順は以下のようになる。予め、絶縁材に絶縁被覆電線を巻装してなる空芯コイルを、放射状のティース部鉄心6の外側から、順次挿入していく。すべてのティースの空芯コイルを挿入し終わった後、ティース部鉄心6の外側に、円筒状の外周部鉄心7を焼きバメ、または圧入する。以上のようにして形成された固定子鉄心3を、フレーム2内に装着して固定子1を構成する。
一方、固定子1の内側には、シャフト18の外周表面に永久磁石17が装着された回転子16が設置される。回転子16は、軸受15を装着した、ブラケット14により、両側から支えられている。
【0019】
前記の電機子巻線9に三相交流電流を流すことにより固定子1の内側に回転磁界が発生し、この回転磁界と永久磁石17が発生する磁界との相互作用により回転子16を回転させる。
永久磁石17の長さは、固定子鉄心3の積層厚みよりも端部を短くする。すなわち、第1実施形態の図3と同様に、図4に示した構成の固定子鉄心中央部4は永久磁石17と対向しているが、図5に示した構成の固定子鉄心端部5は永久磁石17と対向していない。
ティース先端部の形状については、図4に示すように、固定子鉄心中央部4におけるティース連結部の厚みは、必要とする機械強度を満たす最低限の厚みとしている。一方、図5に示すように、固定子鉄心端部5におけるティース連結部の形状は、上記の固定子鉄心中央部4におけるティース連結部の厚みよりも厚くしている。
【0020】
本第2実施形態は、以上のような構成をしているので、第1実施形態の永久磁石型同期電動機と同様に、固定子鉄心中央部は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部では、巻線が作る磁束が上記の厚くしたティース連結部のところで、短絡磁束の流れ20のように短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
【0021】
(第3実施形態)
次に、本発明の永久磁石型同期電動機の第3実施形態について説明する。
図6,7は、第3実施形態に係る永久磁石型同期電動機の構成を示すもので、図6は固定子鉄心端部での横断面図を、図7は縦断面図を示す。固定子鉄心中央部での横断面図は、図1と同じであるため省略する。
図6,7において、1は固定子、2はフレーム、3は固定子鉄心、4は固定子鉄心中央部、5は固定子鉄心端部、8は絶縁材、9は電機子巻線、10はティース、11はティース先端部、13はスロット、14はブラケット、15は軸受である。16は回転子、17は永久磁石、18はシャフト、19はくぼみ、20は短絡磁束の流れ、21は有効磁束、22は漏れ磁束である。
第3実施形態は、固定子鉄心端部のティースの内周面にくぼみ19を有していること以外は、第1実施形態と全く同じである。
【0022】
この第3実施形態は、第1実施形態と同様に、固定子鉄心中央部4は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部5では、巻線が作る磁束が上記の密着したティース先端部11のところで、短絡磁束の流れ20のように短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
さらに、固定子鉄心端部5のティースの内周面にくぼみ19を有しているため、くぼみ19を有していない第1実施形態と比較して、固定子鉄心端部5のパーミアンスが小さくなり、永久磁石17端部からの漏れ磁束22を格段に小さくできる。このくぼみ19は、前述の短絡磁束の流れ20の経路には影響を与えないため、リアクトルの効果には悪影響を与えない。
なお、第3実施形態は、第1実施形態と同様の周方向ティース部ごとの分割方式について説明したが、第2実施形態の2分割方式に対しても実施できることは勿論である。
【0023】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1に記載の永久磁石型同期電動機よれば、周方向ティース部ごとに分割された積層鉄心から構成された固定子鉄心を有する固定子と、永久磁石が装着された回転子により構成された永久磁石型同期電動機において、前記固定子鉄心は、前記回転子の永久磁石と対向する固定子鉄心中央部と、前記永久磁石と対向しない固定子鉄心端部を持ち、前記固定子鉄心中央部のティース先端部の形状は隣接するティース先端部との間に空隙を有し、前記固定子鉄心端部のティース先端部の形状は隣接するティース先端部と密着している構成としたことにより、固定子鉄心中央部は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部では、巻線が作る磁束が上記の密着したティース先端部のところで短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
また、巻線インダクタンスが大きくなることにより、電流リップルを小さく抑えることができ、電流リップルに起因する高周波鉄損を大幅に低減でき、電動機の定格出力を上げることができるという効果がある。また、高周波鉄損による磁石の発熱が抑えられ、磁石の耐減磁性能が向上する。
【0024】
請求項2に記載の永久磁石型同期電動機によれば、内周側が薄肉連結部にて連結された放射状のティース部鉄心と円筒状の外周部鉄心の2分割鉄心構造から構成された固定子鉄心を有する固定子と、永久磁石が装着された回転子により構成された永久磁石型同期電動機において、前記固定子鉄心は、前記回転子の永久磁石と対向する固定子鉄心中央部と、前記永久磁石と対向しない固定子鉄心端部を持ち、前記固定子鉄心端部のティース部鉄心の薄肉連結部の厚みが、前記固定子鉄心中央部のティース部鉄心の薄肉連結部の厚みよりも厚くなるように構成したので、固定子鉄心中央部は本来の電動機特性を発揮することになり、固定子鉄心端部では、巻線が作る磁束が上記の厚くしたティース連結部のところで短絡するために、この部分はリアクトルとして動作することになる。したがって、電動機の外部に別途にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを格段に大きくすることができる。
また、巻線インダクタンスが大きくなることにより、電流リップルを小さく抑えることができ、電流リップルに起因する高周波鉄損を大幅に低減でき、電動機の定格出力を上げることができるという効果がある。また、高周波鉄損による磁石の発熱が抑えられ、磁石の耐減磁性能が向上する。
【0025】
請求項3に記載の永久磁石型同期電動機によれば、請求項1または2に記載の発明による効果に加えて、固定子鉄心端部のティースの内周面にくぼみを有しているため、くぼみを有していない場合と比較して、永久磁石端部からの漏れ磁束を格段に小さくできるという効果がある。したがって、巻線と鎖交する有効磁束の減少を抑えることができ、トルクの低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す固定子鉄心中央部での横断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示す固定子鉄心端部での横断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示す固定子鉄心中央部での横断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す固定子鉄心端部での横断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示す固定子鉄心端部での横断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図8】従来の永久磁石型同期電動機を示す横断面図である。
【図9】従来の永久磁石型同期電動機を示す縦断面図である。
【図10】他の従来の永久磁石型同期電動機を示す横断面図である。
【符号の説明】
1:固定子
2:フレーム
3:固定子鉄心
4:固定子鉄心中央部
5:固定子鉄心端部
6:ティース部鉄心
7:外周部鉄心
8:絶縁材
9:電機子巻線
10:ティース
11:ティース先端部
12:ティース連結部
13:スロット
14:ブラケット
15:軸受
16:回転子
17:永久磁石
18:シャフト
19:くぼみ
20:短絡磁束の流れ
21:有効磁束
22:漏れ磁束
Claims (3)
- 周方向ティース部ごとに分割された積層鉄心から構成された固定子鉄心を有する固定子と、永久磁石が装着された回転子により構成された永久磁石型同期電動機において、
前記固定子鉄心は、前記回転子の永久磁石と対向する固定子鉄心中央部と、前記永久磁石と対向しない固定子鉄心端部を持ち、
前記固定子鉄心中央部のティース先端部の形状は隣接するティース先端部との間に空隙を有し、
前記固定子鉄心端部のティース先端部の形状は隣接するティース先端部と密着していることを特徴とする永久磁石型同期電動機。 - 内周側が薄肉連結部にて連結された放射状のティース部鉄心と円筒状の外周部鉄心の2分割鉄心構造から構成された固定子鉄心を有する固定子と、永久磁石が装着された回転子により構成された永久磁石型同期電動機において、
前記固定子鉄心は、前記回転子の永久磁石と対向する固定子鉄心中央部と、前記永久磁石と対向しない固定子鉄心端部を持ち、
前記固定子鉄心端部のティース部鉄心の薄肉連結部の厚みが、前記固定子鉄心中央部のティース部鉄心の薄肉連結部の厚みよりも厚いことを特徴とする永久磁石型同期電動機。 - 前記固定子鉄心端部のティースの内周面にくぼみを有することを特徴とする請求項1または2に記載の永久磁石型同期電動機。
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CN106374647A (zh) * | 2016-11-02 | 2017-02-01 | 无锡岚凌卓维动力科技有限公司 | 三相永磁发电机的定子结构 |
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