JP2004295019A - 光導波回路部品及びその製造方法 - Google Patents

光導波回路部品及びその製造方法 Download PDF

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文隆 吉野
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Abstract

【課題】偏波依存性損失を抑制した光導波回路部品及びその製造方法を提供するにある。
【解決手段】光導波回路部品においては、石英基板構造5上に選択的にドープ剤が添加された石英が堆積されてコアが形成される。この基板表面及びコア上には、石英が堆積されてこのコアがクラッド層で覆われる。このクラッド層上に加熱されたリッドが圧着されて両者が加熱圧着されて両者が結合される。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光導波回路が組み込まれた光導波回路部品及びその製造方法に係り、特に、偏波依存性損失が小さいPLC部品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光導波回路部品としてPLC部品(平板型光導波回路:Planer Light wave Circuit)が知られている。このPLC部品として、特許文献1には、導波路型光ディバイスが開示されている。このディバイスでは、シリコン基板上に光導波回路のパターンが形成され、この光導波回路が形成された基板上にリッドと称せられるカバー層(特許文献1では、補正基板と称せられている。)が固定されている。光導波回路は、基板をエッチング等によって処理して基板上に形成され、一般的には、下部クラッド層としての石英ガラス等の基板上にコアが設けられ、このコアが上部クラッド層によって覆われる構造を備えている。また、基板上に設けられるリッドは、この基板を保護すると共にPLC部品に光学的に接続される入出力コネクタとの接続面を確保し、その接続を容易にする役割を有している。
【0003】
また、特許文献2には、弾性接着剤を利用してホルダに光導波回路基板を固定する構造が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−43272
【0005】
【特許文献2】
特開2001−74972
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来、この光導波回路が設けられた光回路基板には、特許文献1及び2に記載されるようにリッド等の補助部材が接着剤を用いて固定されている。接着剤は、通常、軟化した状態で基板或いはリッドの接着面に塗布され、この接着剤が硬化して両者が接合される。接着剤は、それ自体が硬化して収縮し、その内部で応力が発生する。この内部応力は、リッドのみならず、光回路基板に伝達され、光回路基板中に同様の内部応力を発生させることとなる。その結果、光導波回路中を伝播する光ビームの縦モード(TEモード)及び横モード(TMモード)の一方が大きく減衰し、その比率が変化する。即ち、偏波依存性損失が大きくなる。
特に、光分配器、例えば、1入力2出力を有する光方向性結合器においては、入力された光ビームがその分配器内において分配される際に伝播される光ビームの偏波依存性損失が大きなってしまう。
【0007】
また、光導波回路部品が設けられる雰囲気の温度が変化すると、基板及び接着剤の熱膨張率が異なることから、熱膨張に基づいて内部応力が基板に発生し、上記と同様に光導波回路中を伝播する光ビームに偏波依存性損失が生ずることとなる。
【0008】
上述した課題は、光分配器に関して説明しているが、光分配器に限るものでなく、光導波回路を備えた他の光学部品、例えば、光分岐回路を備えた分岐器にあっても同様の問題がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記事情に鑑みなされたものであって、偏波依存性損失を抑制した光導波回路部品及びその製造方法を提供するにある。
【0010】
この発明によれば、
基板を含む基板構造と、
この基板構造中に設けられた光導波回路と、及び
前記基板構造上に固定されたリッドと、から構成される光導波回路部品において、
前記基板構造と前記リッドとは、前記リッドの組成とこのリッドが直接接触する前記基板構造の組成とから成る境界領域によって両者が結合されていることを特徴とする光導波回路部品が提供される。
【0011】
この光導波回路部品では、接着剤が用いられずに、前記リッドの組成とこのリッドが直接接触する前記基板構造の組成とから成る境界領域を介して前記基板構造と前記リッドとが結合されている。従って、両者を結合する境界領域には、接着剤が介在することによって生じる内部応力が少なく、従って、その応力が基板構造中に伝達されることがなく、光導波回路を伝播する光ビームに偏波依存性損失が生ずることが抑止される。
【0012】
上述した光導波回路部品においては、前記境界領域は、前記基板構造と前記リッドとが加熱融着或いは加熱圧着されて形成される。接着剤を用いない加熱融着或いは加熱圧着によって、前記リッドの組成とこのリッドが直接接触する前記基板構造の組成とから成る境界領域が前記基板構造と前記リッドとの接触面に形成される。前記基板構造と前記リッドとがその接触面において部分的に接触されていても加熱融着或いは加熱圧着によって、その接触が広がり、より確実に両者が結合される。
【0013】
上述した光導波回路部品においては、前記基板構造と前記リッドとは、実質的に同一の熱膨張率を有している。加熱時にあっても、また、光導波回路が置かれた雰囲気の温度が変化しても、前記基板構造と前記リッドとが同一の熱膨張率で膨張されることから、その内部に応力が発生されることが抑止される。
【0014】
この発明によれば、
基板を含む基板構造と、
この基板構造中に設けられた光導波回路と、及び
前記基板構造上に固定され、前記基板構造と実質的に同一の材料で作られているリッドと、から構成される光導波回路部品において、
前記基板構造と前記リッドとは、直接接触して両者が結合されていることを特徴とする光導波回路部品が提供される。
【0015】
この光導波回路部品においては、接着剤を用いずに加熱融着或いは加熱圧着によって、実質的に同一の材料でできた前記基板構造と前記リッドとがその接触面で直接結合されている。従って、両者を結合する接触面には、内部応力が生ずることが少なく、応力が基板構造中に伝達されることがなく、光導波回路を伝播する光ビームに偏波依存性損失が生ずることが抑止される。
【0016】
この光導波回路部品においては、前記基板構造と前記リッドとは、実質的に同一のガラス材料で作られている。従って、前記基板構造と前記リッドとの結合面の組成が変化すること無く、確実に両者が結合され、内部応力が生ずることもない。
【0017】
この光導波回路部品において、前記基板構造は、前記基板及びこの基板上に設けたクラッド層から構成され、前記光導波回路としてのコアが前記クラッド層に埋め込まれている。このような構造の光導波回路部品にあっても、前記基板構造と前記リッドとの境界面或いは結合面で前記基板構造と前記リッドとが確実に結合され、また、その内に内部応力が発生することが抑止される。
【0018】
上述した光導波回路部品において、前記基板構造は、前記基板、この基板に設けられた第1のクラッド層及びこの第1のクラッド層上に設けられた第2のクラッド層から構成され、前記光導波回路としてのコアが前記第1及び第2のクラッド層の少なくとも一方に埋め込まれている。第1のクラッド層としての所謂アンダークラッド層が設けられている基板構造にあっても、前記基板構造と前記リッドとの境界面或いは結合面で前記基板構造と前記リッドとが確実に結合され、また、その内に内部応力が発生することが抑止される。
【0019】
上述した光導波回路部品において、前記光導波回路としてのコアが前記基板内に形成されている。このような構造の光導波回路部品にあっても、前記基板構造と前記リッドとの境界面或いは結合面で前記基板構造と前記リッドとが確実に結合され、また、その内に内部応力が発生することが抑止される。
【0020】
また、この発明によれば、
基板及びリッドを用意する工程と、
この基板上にコアを形成する工程と、
前記基板表面及びコアをクラッド層で覆って基板構造を作成する工程と、及び
前記クラッド層上にリッドを直接加熱融着或いは加熱圧着する工程と、から構成されることを特徴とする光導波回路部品の製造方法が提供される。
【0021】
この光導波回路部品の製造方法によれば、接着剤が用いられずに、前記リッドの組成とこのリッドが直接接触する前記基板構造の組成とから成る境界領域或いは接触領域を介して前記基板構造と前記リッドとが結合される。従って、両者を結合する境界領域には、内部応力が生ずることが少なく、応力が基板構造中に伝達されることがなく、光導波回路を伝播する光ビームに偏波依存性損失が生ずることが抑止される。
【0022】
上述した光導波回路部品の製造方法において、前記コアを形成する工程は、コア材を堆積する工程を含み、前記クラッド層で覆う工程は、クラッド材を堆積する工程を含む。この光導波回路部品の製造方法によれば、前記基板構造と前記リッドとを結合するに際して内部応力が生ずることが少ない基板構造を提供することができる。
【0023】
上述した光導波回路部品の製造方法において、前記コアを形成する工程は、前記基板の所定領域をイオン交換法でコア領域とする工程を含む。同様に、この光導波回路部品の製造方法によれば、前記基板構造と前記リッドとを結合するに際して内部応力が生ずることが少ない基板構造を提供することができる。
【0024】
上述した光導波回路部品の製造方法において、前記基板を用意する工程は、この基板上に第1のクラッド層を設ける工程を含む。第1のクラッド層を備えた基板構造にあっても、内部応力が生ずることが少ない基板構造を提供することができる。
【0025】
上述した光導波回路部品の製造方法において、前記基板構造と前記リッドとは、実質的に同一の熱膨張率を有する。加熱時にあっても、また、光導波回路部品が置かれた雰囲気の温度が変化しても、前記基板構造と前記リッドとが同一の熱膨張率で膨張するため、内部応力の発生が抑止される。
【0026】
上述した光導波回路部品の製造方法において、前記基板構造と前記リッドとは、実質的に同一の材料で作られ、或いは、前記基板と前記リッドとは、実質的に同一の材料で作られている。従って、前記基板と前記リッドとは、同一の熱膨張率を有すこととなり、内部応力が生ずることも抑止される。
【0027】
上述した光導波回路部品の製造方法において、前記基板構造と前記リッドとは、実質的に同一のガラス材料で作られている。従って、前記基板構造と前記リッドとの結合面の組成が変化すること無く、確実に両者が結合され、内部応力が生ずることもない。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の光導波回路部品及びその製造方法の実施の形態を説明する。
【0029】
図1は、光導波回路部品として代表的な光分配器を示している。図1に示す光分配器は、2入力ポートの一方から入力され、2出力ポートから光ビームが出力される所謂1入力2出力を有する光方向性結合器2に相当する。この光方向性結合器2は、基板4上のクラッド層8中に光導波回路としての1対のコア6−1,6−2が埋め込まれている基板構造5を有している。図1に示す基板構造5では、基板4自体がクラッド層8として機能する構造を示しているが、後に述べるように基板4上に別途クラッド層8が設けられ、このクラッド層8中に一対のコア6−1,6−2が埋め込まれる構造をも採用することができる。
【0030】
一対のコア6−1,6−2は、光方向性結合器2の入力ポート側2Aからその出力ポート側2Bまでクラッド層8中を延出され、その延出経路中において、各コア6−1,6−2は、次第に互いに近接するように延出されて近接部7−1,7−2において近接状態に維持され、再び離間するように延出される。従って、入力ポート2Aにおいて、コア6−1,6−2の一方に入力された光ビームは、その一方のコア6−1,6−2の近接部7−1,7−2から他方のコア6−1,6−2の近接部7−1,7−2に伝播され、出力ポート2Bにおいて、夫々のコア6−1,6−2から出力される。
【0031】
一対のコア6−1,6−2が埋め込まれている基板構造5上には、後に述べるように接着剤を用いずに加熱融着或いは加熱圧着されて接合された基板構造5のカバーとしてのリッド10が設けられている。この光方向性結合器2の入力ポート側2A及び出力ポート側2Bには、入力側コネクタ12及び出力側コネクタ14が設けられ、入力側コネクタ12に固定されている光ファイバ16−1、16−2の出力ポートがコア6−1,6−2に光学的に連結され、さらに、出力側のコネクタ14の光ファイバ18−1、18−2の入力ポートがコア6−1,6−2に光学的に連結される。光ファイバ16−1、16−2の一方に入力された光ビームは、光方向性結合器2を介して光ファイバ18−1、18−2に分配される。
【0032】
入力側コネクタ12及び出力側コネクタ14は、夫々カバー22及びV溝基板20にV字型の溝が形成され、この溝内に夫々対応する光ファイバ16−1、16−2、18−1、18−2が位置され、カバー22及びV溝基板20間に光ファイバ16−1、16−2、18−1、18−2が挟み込まれるように配置されている。V溝基板20、カバー22及び光ファイバ16−1、16−2、18−1、18−2は、接着剤(図示せず)等の接合部を介して互いに固定されている。
【0033】
入力側コネクタ12及び出力側コネクタ14と光方向性結合器2は、その入出力ポートがアラインされて図示せぬ連結機構によって互いに脱着自在に光学的並びに機械的に連結され、或いは、接着剤等を用いて互いに光学的に連結すると共に機械的に固定される。
【0034】
図1に示す光方向性結合器2においては、コア6−1,6−2がクラッド層8中に埋め込まれている基板構造5には、加熱圧着或いは加熱融着によってリッド10が接合されているが、基板4上のクラッド層8とリッド10の材質が全く同じであればその境界の接合層の領域は、クラッド層8及びリッド10の材質となり、その材質が異なる場合には、クラッド層8の材質の組成とリッド10の材質の組成とが融合された混合層、即ち、境界層が形成される。加熱圧着或いは加熱融着によって、基板構造4とリッド10とは、接着剤等が介在されずに接合されていることから、その接合層には、内部応力が発生することが少なく、従って、光ビームに対して偏波依存性損失が生ずることを抑止することができる。特に、クラッド層8とリッド10の材質が実質的に同じであるか、熱膨張係数が実質的に同じであれば、さらに好ましくは、基板4とリッド10の材質も実質的に同じであるか、或いは、熱膨張係数が実質的に同じであれば光方向性結合器2が置かれた雰囲気の温度が変化した場合にあっても、その内に応力が発生することが少なく、同様に、偏波依存性損失が生ずることを抑止することができる。ここで、実質的に同一の熱膨張係数とは、両者の比率が6倍以内、好ましくは、2倍以内であることを意味する。
【0035】
ここで、圧着とは、リッド10を加熱しながら基板構造5に押し付けて(圧接して)両者を接合すること意味する。また、融着とは、リッド10の所定の融着部を融点以上に加熱してその接合面を溶融してリッド10と基板構造5とを接合すること意味する。ここで、融点は、圧力依存性を有し、融着を施す雰囲気の圧力が高められ、或いは、接合面に高圧が印加されている場合には、その融点は、常温時に比して低下されることに注意されたい。
【0036】
また、圧着の場合、加熱する温度に関しては、ガラスの粘性流動の起こり得る歪点以上の温度に設定されることが好ましい。また、圧着の際に加える圧力は、リッド10の自重以上の圧力であって、加熱されたリッド10が基板構造5に接合される程度の圧力であれば良い。
【0037】
下記の実施例で記述されるようにリッド10及び基板構造5が石英或いはバイコールであれば、リッド10及び基板構造5が1000°C以上、好ましくは、1100°〜1200°にその接合面が加熱されて両者間に荷重が付加されて所定時間、例えば、1時間或いはそれ以上圧接状態に維持されて両者が接合される。
【0038】
図1に示される光方向性結合器2においては、説明を簡略にするために、光導波回路として一対のコア6−1,6−2が基板4上に設けられる構造について説明したが、図2に平面的に示されるように基板4上に複数対のコア6−1,6−2が基板4上に設けられても良いことは明らかである。
【0039】
下記実施例を参照して図1に示す光方向性結合器2の製造方法を説明する。
【0040】
実施例1
図3(a)に示されるように基板構造5が用意される。この基板構造5には、酸化シリコンを主成分とする石英ガラス平板を基板4として石英ガラス基板4よりも屈折率の大きいコア6−1、6−2が形成されている。このコア6−1、6−2は、CVD法(chemical vapor deposition method)によって酸化シリコン(SiO2)を堆積したものであり、屈折率を高めるために、ドープ剤としてリン、チタン、ゲルマニューム(Ge)或いはアルミニュームが用いられている。この堆積層は、さらにエッチング工程によって余分な箇所を削除し、適当な形に成形されている。このコア6−1、6−2は、石英製のクラッド層8に覆われているが、このクラッド層8は、同様にCVD法によって酸化シリコン(SiO2)が堆積される。このクラッド層8には、ドープ剤としてホウ素或いはフッ素がドープされて屈折率が低下されても良い。
【0041】
ここで、コア6−1、6−2及びクラッド層8は、CVD法に限らず、火炎堆積法(FHD法)によって形成されても良く、その製法は、特に特定の製法に限定されるものでは無いことは明らかである。
【0042】
また、基板4は、石英ガラス平板に限られず、酸化シリコンを主成分とする熱膨張率が約1.0×10 以下の材料であれば良い。
【0043】
この図3(a)に示す基板構造体においては、堆積されたクラッド層8の表面に、予めコア6−1、6−2を形成したことに伴い、緩やかな凹凸が生ずる場合があるが、この凹凸は、微細研磨によって平坦に加工しても良く、或いは、図4に示すように凹凸の凹部は、そのまま空洞の空間30として残しても良い。
【0044】
次に、リッド10として酸化シリコンを主成分とする材料である石英ガラス平板が用意される。リッド10及び基板構造5は、大気圧或いは大気圧以上の等方圧を与える雰囲気中に置かれ、クラッド層8の表面及びリッド10の接合面が、歪み点以上の所定温度、例えば、約1175°Cとなるように加熱されてその表面に粘性流動が生ずる。その粘性流動が生じた面が重ね合わされてリッド10及び基板4との間に圧力、即ち、所定の荷重、例えば、163.3g/cm2が与えられる。このリッド10とクラッド層8は、リッド10とクラッド層8とに圧力が付加された状態に所定時間、例えば、1時間程、維持される。リッド10とクラッド層8とに圧力が付加された状態においては、その接触面でその組成物である酸化シリコンの流動が生じ、その結果、図3(b)に示すようにリッド10がクラッド層8に接合層を介して確実に接合される。この接合層は、リッド10が石英であり、クラッド層8がドープ剤を含む酸化シリコンであれば、酸化シリコンにクラッド層8よりも濃度が低くドープ剤が拡散されている領域となる。尚、ドープ剤が添加されたクラッド層8は、流動性が高く、従って、リッド10をクラッド層8の表面に接合するに際してその接合面の密着性を高くすることができ、また、密着面積を大きくすることができる。従って、リッド10とクラッド層8との間の接合を強固にすることができ、また、その間に空隙等が生じることを少なくすることができる。
【0045】
ここで、リッド10は、石英ガラス平板に限られず、酸化シリコンを主成分とする熱膨張率が約3.5×10−6以下の材料であれば良い。例えば、基板に熱膨張率0.58×10−6の石英を用いた場合、リッドの材料としては、熱膨張率0.58×10−6の石英、熱膨張率0.8×10−6のバイコールガラス、熱膨張率3.25×10−6のパイレックスガラス等を用いることができるが、熱膨張率5×10−6を超える多成分ガラスでは、リッド或いは基板に破壊が起こり使用することができない。
【0046】
この実施例1に係る光方向性結合器2においては、基板4,クラッド層8とリッド10の材質が実質的に同一であり、従って、熱膨張率が等しく、光方向性結合器2が置かれた雰囲気の温度が変化してもその内に応力が発生することを少なくし、偏波依存性損失を抑止することができる。
【0047】
尚、図4に示される光方向性結合器2においては、同一基板4上に複数対のコア6−1,6−2が形成される実施形態を示し、符号32は、ダミーコアを示し、各対のコア6−1,6−2は、このダミーコア32によって区画されている。
【0048】
上記基板構造5は、図3(a)に示すものに限定されず、図5に示す基板構造5であっても良い。図5に示される基板構造5では、基板4上に第1のクラッド層としてのアンダークラッド層34がCVD法或いは火炎堆積法によって形成されている。この第1のクラッド層34上に既に説明したようにコア6−1、6−2及びクラッド層8が形成されている。このような基板構造5であっても、同様にリッド10を直接基板構造5上に上述した方法によって接合することができる。このような光方向性結合器2においても、光方向性結合器2が置かれた雰囲気の温度が変化してもその内に応力が発生することが少なく、偏波依存性損失を抑止することができる。
【0049】
尚、図5に示される実施例においては、基板4として加工性の良いSi基板を用いることができるので、その下面等に容易にV字溝等を設けて他の部材とのアライメントを容易に取ることができる。
【0050】
実施例2
上述した実施例1においては、コア6−1、6−2は、基板4上に形成されているが、コア6−1、6−2が基板4中に形成されても良い。このような基板4中にコア6−1、6−2が形成され、基板4自体がクラッド層8として働く基板構造5にあっても上述した製造方法を適用することができる。
【0051】
図6に示される基板構造4は、酸化シリコンを主成分とするナトリュームイオンを含む多成分ガラス平板、例えば、BK7のガラス平板が基板4として用意され、その基板4の所定領域がマスクされてイオン交換溶液中に浸して所定領域のみをイオン交換することによって形成される。即ち、ナトリュームイオンが他のイオン、例えば、Ag等に置き換えられて屈折率の高い領域としてコア6−1、6−2がクラッド層8としての基板4中に形成される。
【0052】
次に、多成分ガラスでできたリッド10及び基板構造5は、大気圧或いは大気圧以上の等方圧を与える雰囲気中に置かれ、基板構造5の表面及びリッド10の接合面が、歪み点以上の所定温度、例えば、約570°Cとなるように加熱されてその表面に粘性流動が生じる。重ね合わされた面に粘性流動が生じ、リッド10及び基板4との間に圧力、即ち、所定の荷重、例えば、163.3g/cm2が与えられる。このリッド10と基板構造5は、リッド10と基板構造5とに圧力が付加された状態に所定時間、例えば、1時間程、維持される。リッド10と基板4とに圧力が付加された状態においては、その接触面でその組成物である酸化シリコンの流動が生じ、その結果、図6に示すようにリッド10が基板4に直接に接合される。
【0053】
尚、BK7等の多成分ガラスは、比較的安価であることから、比較的低コストで光方向性結合器2を提供することができる。
【0054】
図7及び図8を参照して、実施例1に記載の方法で、基板4、クラッド層8,リッド10にいずれも石英を用い、リッド10とクラッド層8とを加熱圧着して作った光方向性結合器2と、それと同様の材料構成で、かつ、リッド10とクラッド層8とを有機系接着剤で接着した比較例としての光方向性結合器2との偏波依存性損失の違いを説明する。
【0055】
図7及び図8は、光方向性結合器2の2つの入力ポートA、Bの一方(入力ポートA)から入力された光ビームがその内部で分配されて2つの出力ポートB、Dから出力される場合における出力ポートにおける偏波依存性損失(dB)(PDL:Polarization Dependent Loss)を示している。図7及び図8においては、図2に示されるように複数対の光導波回路、即ち、基板構造5(11対の導波路)が形成され、その各対における入力ポートAに対する出力ポートB及び入力ポートAに対する出力ポートDにおけるPDL(dB)をプロットしている。図7に示される曲線▲1▼及び▲2▼は、基板構造5上にリッド10が設けられていない場合における出力ポートB及びDからのPDL(dB)を示し、図7に示される曲線▲3▼及び▲4▼は、リッド10が基板構造5に接着剤によって接合された場合における出力ポートB及びDからのPDL(dB)を示している。また、図8に示される曲線▲5▼及び▲6▼は、基板構造5上にリッド10が設けられていない場合における出力ポートB及びDからのPDL(dB)を示し、図8に示される曲線▲7▼及び▲8▼は、リッド10が基板構造5に加熱圧着によって接合された場合における出力ポートB及びDからのPDL(dB)を示している。
【0056】
図7の曲線▲1▼及び▲2▼に示すようにリッド10が設けられていない場合には、入力ポートAに対する出力ポートB及び出力ポートDのPDL(dB)が0.1〜0.2dBの範囲にあったが、曲線▲3▼及び▲4▼に示すようにリッド10が基板構造5に接着剤によって接合されることにより、入力ポートAに対する出力ポートB及び出力ポートDのPDL(dB)が大きくなっている。この図7に対して図8の▲5▼及び▲6▼に示されるようにリッド10が設けられていない場合に入力ポートAに対する出力ポートB及び出力ポートDのPDL(dB)が0.1〜0.2dBの範囲にあり、図8の▲7▼及び▲8▼に示されるようにリッド10が基板構造5に加熱圧着によって接合されてもやはり入力ポートAに対する出力ポートB及び出力ポートDのPDL(dB)が0.1〜0.2dBの範囲に維持される。
【0057】
図7及び図8の比較から明らかなように、リッド10が基板構造5に加熱圧着によって接合される構造であれば、光導波回路中を伝播する光ビームの偏波依存性損失が小さいことが判明する。
【0058】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、偏波依存性損失を抑制した光導波回路部品及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態に係る光導波回路部品としての光方向性結合器を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す光方向性結合器を概略的に示す平面図である。
【図3】(a)及び(b)は、図1に示す光方向性結合器の製造工程の一実施例を概略的に示す断面図である。
【図4】図3に示す工程とは異なる工程で作られた光方向性結合器を概略的に示す断面図である。
【図5】図3に示す工程とは異なる工程で作られた光方向性結合器を概略的に示す断面図である。
【図6】図3に示す工程とは異なる工程で作られた光方向性結合器を概略的に示す断面図である。
【図7】従来の光方向性結合器における分配特性を示すグラフである。
【図8】図1に示される光方向性結合器における分配特性を示すグラフである。
【符号の説明】
2...光方向性結合器
4...基板
6−1,6−2...コア
8...クラッド層
10...リッド
12、14...コネクタ
16−1、16−2...光ファイバ
18−1、18−2...光ファイバ
20...V溝基板
22...カバー

Claims (16)

  1. 基板を含む基板構造と、
    この基板構造中に設けられた光導波回路と、及び
    前記基板構造上に固定されたリッドと、から構成される光導波回路部品において、
    前記基板構造と前記リッドとは、前記リッドの組成とこのリッドが直接接触する前記基板構造の組成とから成る境界領域によって両者が結合されていることを特徴とする光導波回路部品。
  2. 前記境界領域は、前記基板構造と前記リッドとが加熱融着或いは加熱圧着されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の光導波回路部品。
  3. 前記基板構造と前記リッドとは、実質的に同一の熱膨張率を有することを特徴とする請求項1に記載の光導波回路部品。
  4. 基板を含む基板構造と、
    この基板構造中に設けられた光導波回路と、及び
    前記基板構造上に固定され、前記基板構造と実質的に同一の材料で作られているリッドと、から構成される光導波回路部品において、
    前記基板構造と前記リッドとは、直接接触して両者が結合されていることを特徴とする光導波回路部品。
  5. 前記基板構造と前記リッドとは、実質的に同一のガラス材料で作られていることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の光導波回路部品。
  6. 前記基板構造は、前記基板及びこの基板上に設けたクラッド層から構成され、
    前記光導波回路としてのコアが前記クラッド層に埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の光導波回路部品。
  7. 前記基板構造は、前記基板、この基板に設けられた第1のクラッド層及びこの第1のクラッド層上に設けられた第2のクラッド層から構成され、
    前記光導波回路としてのコアが前記第1及び第2のクラッド層の少なくとも一方に埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の光導波回路部品。
  8. 前記光導波回路としてのコアが前記基板内に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の光導波回路部品。
  9. 基板及びリッドを用意する工程と、
    この基板上にコアを形成する工程と、
    前記基板表面及びコアをクラッド層で覆って基板構造を作成する工程と、及び
    前記クラッド層上にリッドを直接加熱融着或いは加熱圧着する工程と、から構成されることを特徴とする光導波回路部品の製造方法。
  10. 前記コアを形成する工程は、コア材を堆積する工程を含み、前記クラッド層で覆う工程は、クラッド材を堆積する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の光導波回路部品の製造方法。
  11. 前記コアを形成する工程は、前記基板の所定領域をイオン交換法でコア領域とする工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の光導波回路部品の製造方法。
  12. 前記基板を用意する工程は、この基板上に第1のクラッド層を設ける工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の光導波回路部品の製造方法。
  13. 前記基板構造と前記リッドとは、実質的に同一の熱膨張率を有することを特徴とする請求項9に記載の光導波回路部品の製造方法。
  14. 前記基板構造と前記リッドとは、実質的に同一の材料で作られていることを特徴とする請求項9に記載の光導波回路部品の製造方法。
  15. 前記基板と前記リッドとは、実質的に同一の材料で作られていることを特徴とする請求項9に記載の光導波回路部品の製造方法。
  16. 前記基板構造と前記リッドとは、実質的に同一のガラス材料で作られていることを特徴とする請求項9に記載の光導波回路部品の製造方法。
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