JP2004294720A - 高分子光導波路及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信分野、光情報処理分野において使用される光デバイスを構成するための光導波路型光学素子等における高分子光導波路及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
平面型光導波路であるスプリッタ等の製造方法は、材料として、透明性に優れ、光学異方性が小さく、耐熱性の高い石英ガラスや誘電体結晶等を用いる場合が多く、その製造方法は、フォトリソグラフィー、ドライエッチングプロセスの組み合わせが中心であるが、この方法ではプロセスが複雑で、装置コストも高価であるために、大量生産には適さない工程であり、材料コストも高価であった。
【0003】
その後、高分子系材料を用いた光導波路(高分子光導波路)が注目され始め、低コスト化が期待されている。この高分子光導波路を製造するにあたっては、コア、クラッド基板にポリイミド系、エポキシ系材料等を用いて、半導体プロセスと同様にフォトリソグラフィーや反応性イオンエッチングを行う方法が採られている。しかしこの方法は、石英ガラス導波路と同様の製造方法であるために、低コストとはならない。
【0004】
そこで、低コスト化を実現するために、近年、光導波路のコアパターンが表面に形成された金型を用い、この金型に溶融状態の熱可塑性樹脂を流し込んで射出成形することによって、コアパターンの形状に対応するコア溝が形成されたクラッド基板を作製する方法や、あるいは上記の金型を溶融状態の熱可塑性樹脂に押し当てることによって、コアパターンの形状に対応するコア溝が形成されたクラッド基板をホットエンボス法により作製する方法が検討されている。いずれの作製方法も量産性に優れており、これらの方法によって作製したクラッド基板を用いることによって、高分子光導波路の製造コストを削減することができるものである。
【0005】
図2は高分子光導波路の一例を示す断面図であり、この高分子光導波路は、上記のようにクラッド材料1を用いて作製したクラッド基板3のコア溝2にコア材料4を充填してコア5を形成すると共に、この面にクラッド基板3と同じ材料(クラッド材料1)で形成されたフィルム6を接合することによって製造される。
【0006】
そして上記のような方法で高分子光導波路を製造する技術としては、具体的には、特開昭58−95305号公報(特許文献1)、特開平6−3545号公報(特許文献2)、特開平10−90532号公報(特許文献3)に記載された技術を挙げることができる。これらの公報で使用されている材料について、クラッド基板3を作製するためのクラッド材料1としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が例示されている(例えば、特許文献2の段落番号[0042]、特許文献3の段落番号[0034])。また、コア5を形成するためのコア材料4としては、ジュウテリウム置換メタクリレートやフッ素置換メタクリレートが例示されており(例えば、特許文献2の段落番号[0043])、このようなコア材料4を用いることにより光の吸収を低減しているのが一般的である。
【0007】
しかし、上記のようなクラッド材料1やコア材料4を用いる場合には、以下に列挙するような問題が生じる。
【0008】
(問題点1)
光導波路は、コア5部分に入射した光を屈折率の小さいクラッド基板3間(コア溝2の内壁など)で繰り返し反射させながら伝播させるものであるが、クラッド基板3へのいわゆるしみだしによりクラッド基板3部分を伝播する光もある。特に、コア5の径が小さいシングルモードの光導波路においては、この影響が顕著となる。そのためクラッド材料1としては、PMMAよりも光吸収の小さい材料を用いる必要がある。すなわち、PMMAは吸収損失が大きいため、クラッド材料1としてPMMAを用いると、光通信に使用する1550nm付近の波長の光が吸収され、光導波路の損失が大きくなるという問題がある。
【0009】
(問題点2)
また、PMMAは、耐熱性が低いことから、高分子光導波路が使用される環境によっては、その特性が悪化するという問題もある。
【0010】
(問題点3)
また、コア材料4として特許文献2(段落番号[0043])に例示されているジュウテリウム置換PMMA−d8とテトラフルオロプロピルメタクリレート(TFPMA)からなるコポリマーは、ジュウテリウムやフッ素を含有する材料より構成されているため材料が高価となる。
【0011】
(問題点4)
さらに、上記のようにコア材料4にフッ素を含有させる場合には、クラッド基板3に対する密着性が低下するという問題もある。
【0012】
(問題点5)
また、熱可塑性樹脂で作製されるクラッド基板3のコア溝2にコア材料4を充填してコア5を形成する際に、このコア材料4によってクラッド基板3が溶解し、初期に設計したコア5の形状とは異なるコア5が形成されたり、クラッド基板3の溶解によりクラッド基板3とコア5との界面の屈折率差がぼやけ、コア5に光を十分に閉じ込めることができなかったりするという問題がある。
【0013】
(問題点6)
また、従来のコア材料4は、硬化時の収縮率が大きいため、所定の形状を有するコア5を得るのが難しいという問題や、収縮時の応力によりクラッド基板3とコア5との界面の剥離の問題もあった。
【0014】
【特許文献1】
特開昭58−95305号公報
【特許文献2】
特開平6−3545号公報
【特許文献3】
特開平10−90532号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題点1は、例えば、クラッド材料1として、芳香族を含むポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアリレート樹脂等の熱可塑性樹脂からなる材料を用いることによって解消することができる。その理由は、上記の樹脂からなる材料は、PMMAに比べて光吸収が小さいためである。
【0016】
しかし、上記のような材料をクラッド材料1として用いても、それに適したコア材料4はこれまでに提供された例がない。そのため、上記の問題点2〜6は依然として解消されていない。
【0017】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、量産性に優れ、低コストであり、各種特性に優れた高分子光導波路及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る高分子光導波路は、クラッド基板3に形成されたコア溝2にコア材料4を充填してコア5を形成することによって製造される高分子光導波路において、クラッド基板3を作製するためのクラッド材料1として、芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料を用いると共に、コア材料4として、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと下記一般式[化3]で表されるものとからなる材料を用いることを特徴とするものである。
【0019】
【化3】
【0020】
また請求項2の発明は、請求項1において、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を1個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものとを併用することを特徴とするものである。
【0021】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、脂肪族メタクリレート系化合物及び脂肪族アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いることを特徴とするものである。
【0022】
また請求項4の発明は、請求項3において、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、さらに、チオエーテル類メタクリレート系化合物及びチオエーテル類アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いることを特徴とするものである。
【0023】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、上記一般式[化3]で表されるものとして、下記一般式[化4]で表されるビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートを用いることを特徴とするものである。
【0024】
【化4】
【0025】
また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、芳香族を含む熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂から選ばれるものを用いることを特徴とするものである。
【0026】
また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、コア材料4にラジカル重合開始剤である光重合開始剤を配合することを特徴とするものである。
【0027】
また請求項8の発明は、請求項7において、光重合開始剤として、クラッド基板3を透過する光の波長以上の波長を有する光により分解するものを用いることを特徴とするものである。
【0028】
本発明の請求項9に係る高分子光導波路の製造方法は、光導波路のコアパターンが表面に形成された金型をクラッド材料1に押し付けることによって、コアパターンの形状に対応するコア溝2が転写により形成されたクラッド基板3を作製し、このクラッド基板3のコア溝2にコア材料4を充填してコア5を形成することによって高分子光導波路を製造する方法において、クラッド材料1及びコア材料4としてそれぞれ請求項1乃至8のいずれかに記載のクラッド材料1及びコア材料4を用いると共に、クラッド基板3とコア材料4のいずれか一方又は両方を加熱した状態でクラッド基板3にコア材料4を塗布することによって、クラッド基板3のコア溝2にコア材料4を充填することを特徴とするものである。
【0029】
また請求項10の発明は、請求項9において、クラッド基板3にコア材料4を塗布した後に脱泡することを特徴とするものである。
【0030】
本発明の請求項11に係る高分子光導波路は、請求項1乃至8のいずれかにおいて、コア5の形状がシングルモードに対応する形状であることを特徴とするものである。
【0031】
本発明の請求項12に係る高分子光導波路は、請求項1乃至8のいずれかにおいて、コア5の形状がマルチモードに対応する形状であることを特徴とするものである。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0033】
本発明においてクラッド材料1としては、芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料を用いるものである。芳香族を含む熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂等の非晶性の熱可塑性樹脂を用いることができる。ここで、例えば、ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールAタイプのもの、ビスフェノールZタイプのもの、フルオレン構造を有するタイプのもの等を用いることができる。ポリカーボネート樹脂以外の樹脂としても、上記と同様のものを用いることができる。
【0034】
芳香族を含む熱可塑性樹脂は、光通信に使用される領域(通信帯域)や近赤外領域の光を吸収するCHが、芳香族を含まない熱可塑性樹脂(例えば、PMMA)と比較して少ないため、透明性に優れている。よって、芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料をクラッド材料1として用いると、上記領域における光の吸収損失が小さいクラッド基板3を作製することができ、このクラッド基板3を用いることによって、低損失の高分子光導波路を製造することができるものである。
【0035】
ここで、芳香族を含む熱可塑性樹脂の中でも特に、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂から選ばれるものを用いるのが好ましい(請求項6の発明)。これらの樹脂からなる材料をクラッド材料1として用いると、これらの樹脂以外の樹脂からなる材料をクラッド材料1として用いるよりも、さらに吸収損失が小さいクラッド基板3を作製することができ、さらに低損失の高分子光導波路を製造することができるものである。
【0036】
図1(a)はクラッド基板3を示すものであり、このようなクラッド基板3を作製するにあたっては、例えば、エンボス加工、射出成形等を利用することができる。エンボス加工を利用する場合は、所定の光導波路のコアパターンが凸部として表面に形成された金型を加熱し、あらかじめ平板状に成形しておいたクラッド材料1の表面に上記の金型を押し付け、所定時間経過後、金型を冷却した後に離型することによって、上記のコアパターンの形状に対応するコア溝2が転写により凹部として形成されたクラッド基板3を得ることができる。ここで、コア溝2の本数や形状は、高分子光導波路の用途に応じて適宜に設計されるものであり、1本のコア溝2を形成しても複数本のコア溝2を形成してもよく、1つ又は複数の分岐を有するスプリット状のコア溝2を形成してもよい。一方、射出成形を利用する場合は、所定の光導波路のコアパターンが凸部としてキャビティの内面に形成された金型に、加熱溶融したクラッド材料1を射出充填し、金型を冷却した後に離型することによって、上記のコアパターンの形状に対応するコア溝2が転写により凹部として形成されたクラッド基板3を得ることができる。
【0037】
上記のエンボス加工、射出成形等の成形法は量産性に優れているため、これらの方法を利用する方が、従来のようにフォトリソグラフィーやドライエッチングプロセスを組み合わせるよりも、量産性に優れ、低コストな高分子光導波路を安定して製造することができるものである。
【0038】
一方、コア材料4としては、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと、上記一般式[化1]([化3])で表されるものとからなる材料を用いるものである。ここで、メタクリレート系化合物やアクリレート系化合物を1種類のものに限定していないのは、これらを組み合わせて配合することによって、伝播させる光の波長帯域におけるコア5の屈折率がクラッド基板3の屈折率よりも所定の割合高くなるようにするためである。また、製造時における収縮率や流動性、クラッド基板3との密着性や線膨張係数のマッチング等を改善するためである。なお、上記一般式[化1]([化3])で表されるものの配合量は、コア材料4全量に対して30〜70重量%であることが好ましい。また、コア材料4にはビニル系化合物を配合することも可能であるが、反応性が乏しいため望ましくない。
【0039】
1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、単官能メタクリレート、多官能メタクリレート、単官能アクリレート、多官能アクリレート等を用いることができる。なお、単官能とは、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を1個有していることを意味しており、多官能とは、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を2個以上有していることを意味している。
【0040】
単官能メタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、テトラブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルシクロヘキシルメタクリレート、2−エチルシクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、1−ナフチルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、ブロモフェニルメタクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、メトキシフェニルメタクリレート、シアノフェニルメタクリレート、フェニルチオメタクリレート等を用いることができる。
【0041】
多官能メタクリレートとしては、2官能メタクリレート及び3官能メタクリレートのほか、4官能以上のメタクリレートも用いることができる。
【0042】
2官能メタクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートトリメチロールプロパントリジメタクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジメタクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジメタクリレート、ビス[(2−メタクリロイルチオ)エチル]スルフィド(化学名:S,S’−(チオジエチレン)ビス(チオメタクリレート))、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド(化学名:S,S’−(チオジ−4,1−フェニレン)チオメタクリレート)等を用いることができる。
【0043】
3官能メタクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリメタクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリメタクリレート等を用いることができる。
【0044】
一方、単官能アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、テトラブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルシクロヘキシルアクリレート、2−エチルシクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、ブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、メトキシフェニルアクリレート、シアノフェニルアクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性アクリレート等を用いることができる。
【0045】
多官能アクリレートとしては、2官能アクリレート及び3官能アクリレートのほか、4官能以上のアクリレートも用いることができる。
【0046】
2官能アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートトリメチロールプロパントリジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジアクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジアクリレート等を用いることができる。
【0047】
3官能アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート等を用いることができる。
【0048】
ここで、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物としては、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を1個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものとを併用するのが好ましい(請求項2の発明)。このように、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、多官能のものと単官能のものとを併用すると、屈折率を容易に調整することができると共に、コア材料4の低粘度化を図ることができるものである。そしてコア材料4の粘度が低下すると、クラッド基板3に形成されたコア溝2にコア材料4を充填する作業を簡便に行うことができると共に、気泡の巻き込みがさらに抑制され、コア材料4のコア溝2への充填性をさらに高く得ることができるものである。
【0049】
上記のように、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、多官能のものと単官能のものとを併用する場合において、単官能のものの配合量はコア材料4全量に対して5〜50重量%であることが望ましく、5〜25重量%であることがより望ましく、5〜15重量%であることが最も望ましい。単官能のものの配合量が5重量%より少ないと、コア材料4の低粘度化の効果を十分に得ることができないおそれがある。逆に単官能のものの配合量が50重量%より多いと、コア5の収縮率が増加することによって高分子光導波路の製造が困難となるおそれがあり、また、コア5の線膨張係数が増加することによってクラッド基板3との線膨張係数の差が大きくなり、高分子光導波路を高温下に放置したときに上記の差に起因して応力が生じ、この応力によりクラッド基板3とコア5との界面に剥離が発生するおそれがある。
【0050】
また、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物としては、脂肪族メタクリレート系化合物及び脂肪族アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いるのが好ましい(請求項3の発明)。脂肪族メタクリレート系化合物としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレートやジエチレングリコールジメタクリレート等を用いることができ、また脂肪族アクリレート系化合物としては、エチレングリコールジアクリレートやジエチレングリコールジアクリレート等を用いることができる。このような脂肪族のものを用いると、芳香族メタクリレート系化合物及び芳香族アクリレート系化合物のみを用いる場合よりも、コア材料4の低粘度化を図ることができると共に、コア5とクラッド基板3との線膨張係数の差を小さくすることができるものである。そして上記のようにコア材料4の粘度が低下すると、クラッド基板3に形成されたコア溝2にコア材料4を充填する際に気泡の巻き込みがさらに抑制され、コア材料4のコア溝2への充填性をさらに高く得ることができるものであり、また、コア5とクラッド基板3との線膨張係数の差が小さくなると、高分子光導波路を高温下に放置してもコア5とクラッド基板3との界面に剥離が発生しにくくなり、低損失を長期にわたって維持することができ、信頼性を向上させることができるものである。
【0051】
また上記のように、脂肪族メタクリレート系化合物及び脂肪族アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いる場合においては、さらに、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、チオエーテル類メタクリレート系化合物及びチオエーテル類アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いるのが好ましい(請求項4の発明)。チオエーテル類メタクリレート系化合物としては、例えば、ビス[(2−メタクリロイルチオ)エチル]スルフィド、フェニルチオメタクリレート等を用いることができ、また、チオエーテル類アクリレート系化合物としては、例えば、ビス[(2−アクリロイルチオ)エチル]スルフィド、フェニルチオアクリレート等を用いることができる。このようなチオエーテル類のものを脂肪族のものと併用すると、脂肪族のもののみを用いる場合よりも、コア材料4の低粘度化を図ることができ、クラッド基板3に形成されたコア溝2にコア材料4を充填する際に気泡の巻き込みがさらに抑制され、コア材料4のコア溝2への充填性をさらに高く得ることができるものである。
【0052】
また、コア材料4の配合成分である上記一般式[化1]([化3])は、フルオレン環にベンゼン環が直交配置するスピロ構造を有するものであるが、これを用いることによって、以下のような効果を得ることができる。すなわち、コア5の光学異方性を小さくすることができる。また、コア5の耐熱性を高めることができる。また、通信帯域や近赤外領域の光の吸収損失を小さくすることができる。また、コア材料4の熱硬化時の収縮率を小さくすることができ、これにより硬化後のコア材料4はコアパターンの形状に対応するコア5を正確に形成することができる。また、コア5の線膨張係数を小さくすることができ、これにより高分子光導波路の使用時において熱負荷がかかっても、コア5とクラッド基板3との膨張差が小さいためこれらの界面に剥離が発生せず、信頼性を高めることができる。また、コア材料4の浸透性を小さくすることができ、コア材料4をクラッド基板3に形成されたコア溝2に充填する際に、クラッド材料1(芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料)がコア材料4によって溶解されにくく、初期に設計したコア5の形状とほぼ同一のコア5を形成することができ、コア5に光を十分に閉じ込め、低損失の高分子光導波路を製造することができる。また、コア材料4とクラッド材料1(芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料)との接着性を高めることができ、高分子光導波路の長期安定性を高く得ることができる。
【0053】
ここで、上記一般式[化1]([化3])で表されるものとしては、上記一般式[化2]([化4])で表されるビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートを用いるのが好ましい(請求項5の発明)。ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートは[化1]([化3])においてR1を水素原子、n及びmをいずれも1としたものであるが、これは、上記一般式[化1]([化3])で表されるものの中で、最も分子内のCHが少ないものであるため、通信帯域や近赤外領域の光の吸収損失をさらに小さくすることができ、さらに低損失の高分子光導波路を製造することができるものである。
【0054】
ここで、コア材料4には、ラジカル重合開始剤である光重合開始剤を配合するのが好ましい(請求項7の発明)。光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフェンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等を用いることができる。これらの光重合開始剤のうち1種のものを単独で用いてもよいし、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0055】
また、ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤を用いてもよい。熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、ジシソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を用いることができる。ただ、ラジカル重合開始剤として熱重合開始剤を用いる場合には、コア材料4を硬化させるために熱を付与する必要があり、この熱によりクラッド基板3が膨張した状態でコア材料4が硬化することとなる。そうすると、コア材料4が硬化した後の冷却工程においてクラッド基板3とコア5との膨張率の違いによりクラッド基板3とコア5との界面に応力が発生し、この応力によりクラッド基板3とコア5との界面に剥離が発生するおそれがある。しかし、ラジカル重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合には、コア材料4を硬化させるために熱を付与する必要はなく、紫外線等の光の照射により低温度でコア材料4を重合させて硬化させることが可能となる。そうすると、上記のような応力が発生しにくくなるので、クラッド基板3とコア5との界面に剥離が発生しにくくなり、また上記界面における残留応力が低減することによって、高分子光導波路の初期特性が維持されると共に環境負荷による特性低下を防止することが可能となるものである。よって、ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤よりも光重合開始剤を用いるのが好ましい。
【0056】
また、光重合開始剤としては、クラッド基板3を透過する光の波長以上の波長を有する光により分解するものを用いるのが好ましい(請求項8の発明)。光重合開始剤を配合したコア材料4を用いる場合には、このコア材料4をクラッド基板3に形成されたコア溝2に充填した後に、上記コア材料4に紫外線等の光を照射して硬化させる必要がある。このとき、紫外線照射装置を用いて、図1(d)に示すようにクラッド基板3を介してコア材料4に紫外線Lを照射すると、クラッド基板3を作製しているクラッド材料1は芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料であるため、紫外線Lの多くがクラッド基板3に吸収されることとなり、コア材料4の硬化に長時間を要したり、あるいはコア材料4の硬化が不十分となって、後工程における熱履歴や使用環境下での熱履歴によって硬化反応がさらに進行してコア5の硬化収縮が発生したりすることとなる。しかし上記のように、光重合開始剤として、クラッド基板3を透過する光の波長以上の波長を有する光により分解するものを用いると、クラッド基板3に吸収される光の一部によって光重合開始剤が分解されるのではなく、当初からクラッド基板3を透過する光によって光重合開始剤を分解することができ、これによりコア材料4の硬化を速め、コア材料4の硬化に要する時間を短縮することができるものである。そしてこのようにしてコア材料4を十分に硬化させることができるため、後工程における熱履歴や使用環境下での熱履歴によってコア5の硬化収縮が発生するようなことがなくなり、高分子光導波路の特性変化を十分に抑えることが可能となるものである。
【0057】
なお、例えば、クラッド材料1がポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂からなる材料である場合には、このクラッド材料1で作製されるクラッド基板3を透過する光の波長以上の波長を有する光により分解する光重合開始剤としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のように、400nm以上の波長の光で分解されるものを用いることができる。このような光重合開始剤を用いることによって、コア材料4の硬化を短時間で十分に行うことが可能となるものである。
【0058】
また、光重合開始剤等のラジカル重合開始剤の配合量は、コア材料4全量に対して0.1〜5重量%の範囲であることが好ましい。上記配合量が0.1重量%未満であると、コア材料4を重合させて硬化させるのに長時間を要するおそれがある。逆に、上記配合量が5重量%を超えると、コア材料4が硬化するときにヒビが発生したり割れたりするおそれがあり、また、コア材料4の硬化収縮により部分的にクラッド基板3とコア5との界面に剥離が発生するおそれがある。
【0059】
コア材料4は、既述の1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと、上記一般式[化1]([化3])で表されるものとを混合した後に、必要に応じてラジカル重合開始剤を添加して混合することによって、調製することができる。
【0060】
そして、高分子光導波路を製造するにあたっては、基本的には、以下のようにして行うことができる。
【0061】
まず、既述のエンボス加工等によって、コア溝2が形成されたクラッド基板3を作製する。次に、クラッド基板3のコア溝2が形成された側の面にコア材料4を滴下するなどして塗布することによって、コア溝2にコア材料4を充填する。次に、この面にクラッド材料1等で作製されたフィルムを被せ、このフィルムをクラッド基板3に向けてプレスした後に、コア溝2に充填されたコア材料4を硬化させて、このコア材料4でコア5を形成することによって、高分子光導波路を製造することができるものである。
【0062】
また、以下のような製造方法を採用してもよい。すなわち、上記と同様に既述のエンボス加工等によって、コア溝2が形成されたクラッド基板3を作製する。次に、クラッド基板3のコア溝2が形成された側の面にコア材料4を滴下するなどして塗布することによって、コア溝2にコア材料4を充填する。そしてコア溝2に充填されていない余分なコア材料4を除去した後に、まずコア材料4を硬化させてコア5を形成し、次いで、クラッド基板3においてコア5を形成した側の面に、クラッド基板3と略同一の屈折率を有する材料(例えば、光硬化性材料、熱硬化性材料等)を滴下するなどして塗布し、これを硬化させることによって、高分子光導波路を製造することができるものである。
【0063】
なお、クラッド基板3の作製、コア材料4の調製、高分子光導波路の製造においては、特にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の溶剤を使用する必要がないので、環境負荷を低減することができるものである。
【0064】
ここで、クラッド基板3へのコア材料4の塗布は、クラッド基板3とコア材料4のいずれか一方又は両方を所定温度に加熱した状態で行うのが好ましい(請求項9の発明)。これは、コア5の形状が小さいシングルモードの高分子光導波路を製造する場合に特に有効である。すなわち、シングルモードの高分子光導波路におけるコア5の形状は通常、数μmであり、非常に微細なものであるため、このようなコア5が形成されるコア溝2も非常に微細なものとなり、コア溝2へのコア材料4の充填性を高く得ることが課題となる。しかし、コア材料4の配合によっては粘度が高くなり、コア溝2への充填が困難となることがある。また、コア材料4をコア溝2へ充填する過程において気泡を巻き込むおそれがあり、この気泡を除去する必要が生じる。このような問題を解消するには、上述のとおり、クラッド基板3とコア材料4のいずれか一方又は両方を所定温度に加熱した状態でクラッド基板3にコア材料4を塗布すればよく、加熱によりコア材料4の粘度が低下することによって、容易かつ短時間にコア材料4をコア溝2に充填することができ、充填時にコア材料4が気泡を巻き込みにくくなると共に、高分子光導波路の製造に要する時間も短縮化することができるものである。
【0065】
なお、クラッド基板3やコア材料4を加熱するときの温度の上限は、例えば、クラッド基板3に形成したコア溝2の形状を維持することができる温度あるいはコア材料4に配合された成分が揮発し、コア材料4が硬化したときの屈折率変化が所定範囲となる温度のうち、どちらか低い方の温度に設定することができる。ただし、加熱温度は、充填の途中でコア材料4が硬化しない温度である必要がある。また、クラッド基板3やコア材料4(光重合開始剤を配合したもの)を加熱した状態で、紫外線L等の光を照射してコア材料4を硬化させることもできるが、コア材料4の硬化後、冷却する際にコア5とクラッド基板3との界面に剥離や残留応力が発生するおそれがあるため、紫外線L等の光を照射するのは、コア材料4をクラッド基板3のコア溝2に充填した後、一旦冷却して常温に戻してから行うのが望ましい。
【0066】
また、クラッド基板3にコア材料4を塗布した後に、これを100Pa程度の減圧雰囲気下に置くなどして、脱泡するのが好ましい(請求項10の発明)。このようにすると、コア溝2へのコア材料4の充填をより短時間で行うことができると共に、コア材料4の内部の微細な気泡をも除去することができ、光の散乱損失を低減することが可能となる。なお、クラッド基板3とコア材料4のいずれか一方又は両方を加熱しながら脱泡するようにすると、高分子光導波路を製造するのに要する時間をより短縮化することができる。
【0067】
また、光重合開始剤を配合したコア材料4を用いて高分子光導波路を製造するにあたっては、以下のようにして行うことができる。まず、既述のエンボス加工等によって、図1(a)に示すようなコア溝2が形成されたクラッド基板3を作製する。次に、図1(b)に示すように、クラッド基板3のコア溝2が形成された側の面にコア材料4を滴下するなどして塗布することによって、コア溝2にコア材料4を充填する。次に、図1(c)に示すように、クラッド基板3においてコア材料4を塗布した側の面に、クラッド基板3と略同一の屈折率を有するフィルム又はクラッド材料1で作製されたフィルム6を被せ、このフィルム6をプレス治具7によってクラッド基板3に押圧することによって、余分なコア材料4をクラッド基板3とフィルム6との間から排除する。そして紫外線照射装置を用いて、図1(d)に示すようにクラッド基板3(又はフィルム6)を介してコア溝2に充填されたコア材料4に紫外線Lを照射し、コア材料4を硬化させてこのコア材料4でコア5を形成することによって、高分子光導波路を製造することができるものである。
【0068】
なお、クラッド基板3にコア材料4を塗布し、コア溝2に充填されていない余分なコア材料4を除去した後に、紫外線Lを照射することによって、まずコア材料4を硬化させてコア5を形成し、次いで、クラッド基板3においてコア5を形成した側の面に、クラッド基板3と略同一の屈折率を有する光硬化性材料を塗布し、これを紫外線Lにより硬化させることによって、高分子光導波路を製造してもよい。
【0069】
また、熱重合開始剤を配合したコア材料4を用いて高分子光導波路を製造するにあたっては、以下のようにして行うことができる。まず、既述のエンボス加工等によって、図1(a)に示すようなコア溝2が形成されたクラッド基板3を作製する。次に、図1(b)に示すように、クラッド基板3のコア溝2が形成された側の面にコア材料4を滴下するなどして塗布することによって、コア溝2にコア材料4を充填する。次に、図1(c)に示すように、クラッド基板3においてコア材料4を塗布した側の面に、クラッド基板3と略同一の屈折率を有するフィルム又はクラッド材料1で作製されたフィルム6を被せ、このフィルム6をプレス治具7によってクラッド基板3に押圧することによって、余分なコア材料4をクラッド基板とフィルムとの間から排除する。そしてこの状態でコア材料4が硬化する温度まで加熱し、コア材料4を硬化させてこのコア材料4でコア5を形成することによって、高分子光導波路を製造することができるものである。
【0070】
なお、クラッド基板3にコア材料4を塗布し、コア溝2に充填されていない余分なコア材料4を除去した後に、加熱することによって、まずコア材料4を硬化させてコア5を形成し、次いで、クラッド基板3においてコア5を形成した側の面に、クラッド基板3と略同一の屈折率を有する光硬化性材料又は熱硬化性材料を塗布し、これを紫外線照射により又は加熱することにより硬化させることによって、高分子光導波路を製造してもよい。
【0071】
そして既述の方法を用いて、シングルモードやマルチモードの高分子光導波路(請求項11、12の発明)を製造することができる。すなわち、クラッド基板3を作製する際に、シングルモードに対応する形状(例えば、10×10μm)を有するコア溝2を形成しておき、このコア溝2にコア材料4を充填してこれを硬化させることによって、シングルモードに対応する形状を有するコア5が形成された高分子光導波路を製造することができるものである。一方、クラッド基板3を作製する際に、マルチモードに対応する形状(例えば、50×50μm)を有するコア溝2を形成しておき、このコア溝2にコア材料4を充填してこれを硬化させることによって、マルチモードに対応する形状を有するコア5が形成された高分子光導波路を製造することができるものである。
【0072】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0073】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂からなる材料を用いた。
【0074】
また、上記一般式[化1]([化3])で表されるものとして、A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートを用いると共に、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、B:エチレングリコールジメタクリレート(2官能、脂肪族)、C:ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジアクリレート(2官能、芳香族)、D:ビスフェノールFエチレンオキサイド変性アクリレート(単官能、芳香族)、E:ビス[(2−メタクリロイルチオ)エチル]スルフィド(2官能、チオエーテル類)、F:フェニルチオメタクリレート(単官能、チオエーテル類)を用いた。そしてこれらのものを表1に示す配合割合で配合することによって、7種類のコア材料を調製した。このようにして得たコア材料の屈折率はいずれも硬化後においてクラッド基板の屈折率より0.005高い。以下においてさらに詳細に説明する。
【0075】
(実施例1)
請求項1、3、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0076】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレートをそれぞれ67.6wt%、32.4wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+Bに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0077】
吸収損失は、以下のようにして測定した。まずコア材料に紫外線を照射することによって、厚み(光路長)の異なる成形品を成形した。次に各成形品に波長1310nm、1550nmの近赤外領域の光を透過させ、各光の透過率を分光光度計を用いて測定した。そして、上記の厚みと透過率の関係より傾きを計算し、この傾きを吸収損失とした。結果は1310nmで0.18dB/cm、1550nmで0.58dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0078】
また粘度は、上記のコア材料の溶液から光重合開始剤を除いたものを対象とし、E型粘度計を用いて25℃の雰囲気において測定した。結果は500mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0079】
また線膨張係数は、コア材料に紫外線を照射することによって成形した成形品を対象とし、TMAを用いて30〜85℃における値として測定した。結果は72×10−6/℃であった。
【0080】
また収縮率は、体積既知の容器に硬化前のコア材料を充填し、これに紫外線を照射してコア材料を硬化させ、硬化後のコア材料の体積を水中置換法によって測定し、硬化前後の体積より計算することによって測定した。結果は9vol%であった。クラッド材料がポリメチルメタクリレート(PMMA)である場合に使用される従来のコア材料(エチレングリコールジメタクリレートとテトラフルオロメタクリレートを9:1の重量比で配合したもの)の収縮率が20vol%であるから、本実施例のコア材料は従来のコア材料に比べて硬化収縮を半分以下に抑えられることが判明した。
【0081】
また密着性は、碁盤目テープ剥離試験(JIS K 5400に準拠)を行うことによって測定した。すなわち、まず既述のクラッド材料(ポリカーボネート樹脂からなる材料)を用いてクラッド基板を作製し、次にこのクラッド基板の表面にコア材料の溶液を塗布して、これに紫外線を照射することにより、厚み20μm程度のコア材料の硬化被膜を形成した。そして、この硬化被膜に碁盤目状に切れ目を入れ、テープを張り付けた後に剥がして、硬化被膜が剥離するか否かを観察した。結果は良好であった。
【0082】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0083】
(実施例2)
請求項1、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0084】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、C:ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジアクリレートをそれぞれ41wt%、59wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+Cに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、実施例1と同様にして、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0085】
吸収損失は1310nmで0.21dB/cm、1550nmでは0.66dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0086】
また粘度は1000mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0087】
また線膨張係数は100×10−6/℃であった。
【0088】
また収縮率は8vol%であり、本実施例のコア材料も従来のコア材料に比べて硬化収縮を半分以下に抑えられることが判明した。
【0089】
また密着性は良好であった。
【0090】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0091】
(実施例3)
請求項1、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0092】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、D:ビスフェノールFエチレンオキサイド変性アクリレートをそれぞれ55.5wt%、44.5wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+Dに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、実施例1と同様にして、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0093】
吸収損失は1310nmで0.20dB/cm、1550nmで0.58dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0094】
また粘度の結果は300mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0095】
また線膨張係数は170×10−6/℃であった。
【0096】
また収縮率は12vol%であり、本実施例のコア材料は従来のコア材料に比べて硬化収縮を約半分に抑えられることが判明した。
【0097】
また密着性は良好であった。
【0098】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0099】
(実施例4)
請求項1、3、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0100】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレート、C:ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジアクリレートをそれぞれ58.2wt%、20.9wt%、20.9wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+B+Cに対して1wt%配合することによって、コア材料を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、実施例1と同様にして、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0101】
吸収損失は、1310nmで0.17dB/cm、1550nmで0.57dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0102】
また粘度は700mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0103】
また線膨張係数は78×10−6/℃であった。
【0104】
また収縮率は9vol%であり、本実施例のコア材料も従来のコア材料に比べて硬化収縮を半分以下に抑えられることが判明した。
【0105】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0106】
また密着性は良好であった。
【0107】
(実施例5)
請求項1、3、4〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0108】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレート、E:ビス[(2−メタクリロイルチオ)エチル]スルフィドをそれぞれ33wt%、34wt%、33wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+B+Eに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、実施例1と同様にして、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0109】
吸収損失は1310nmで0.14dB/cm、1550nmで0.65dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0110】
また粘度は100mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0111】
また線膨張係数は70×10−6/℃であった。
【0112】
また収縮率は10vol%であり、本実施例のコア材料は従来のコア材料に比べて硬化収縮を約半分に抑えられることが判明した。
【0113】
また密着性は良好であった。
【0114】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0115】
(実施例6)
請求項1〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0116】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレート、F:フェニルチオメタクリレートをそれぞれ33wt%、34wt%、33wt%の比率でビーカーに混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+B+Fに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、実施例1と同様にして、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0117】
吸収損失は1310nmで0.17dB/cm、1550nmで0.56dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0118】
また粘度は75mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0119】
また線膨張係数は75×10−6/℃であった。
【0120】
また収縮率は9vol%であり、本実施例のコア材料は従来のコア材料に比べて硬化収縮を約半分に抑えられることが判明した。
【0121】
また密着性は良好であった。
【0122】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0123】
(実施例7)
請求項1〜3、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0124】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレート、D:ビスフェノールFエチレンオキサイド変性アクリレートをそれぞれ60wt%、11.6wt%、28.4wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+B+Dに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、実施例1と同様にして、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0125】
吸収損失は1310nmで0.20dB/cm、1550nmで0.60dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0126】
また粘度は200mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0127】
また線膨張係数は85×10−6/℃であった。
【0128】
また収縮率は10vol%であり、本実施例のコア材料は従来のコア材料に比べて硬化収縮を約半分に抑えられることが判明した。
【0129】
また密着性は良好であった。
【0130】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0131】
【表1】
【0132】
次に、実施例1におけるクラッド材料(ポリカーボネート樹脂からなる材料)の吸収損失(伝播損失)を以下のようにして測定した。まず上記のクラッド材料を用いて、厚み(光路長)の異なる成形品を成形した。次に各成形品に波長1310nm、1550nmの近赤外領域の光を透過させ、各光の透過率を分光光度計を用いて測定した。そして、上記の厚みと透過率の関係より傾きを計算し、この傾きを吸収損失とした。結果を表2に示す。
【0133】
(実施例8)
請求項1、3、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0134】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリアリレート樹脂からなる材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、高分子光導波路を製造した。そして、本実施例におけるクラッド材料の吸収損失(伝播損失)を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0135】
(実施例9)
請求項1、3、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0136】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂(フルオレン構造を有するタイプのもの)からなる材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、高分子光導波路を製造した。そして、本実施例におけるクラッド材料の吸収損失(伝播損失)を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0137】
(比較例)
クラッド材料として、芳香族を含まない熱可塑性樹脂であるポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)からなる材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、高分子光導波路を製造した。そして、本比較例におけるクラッド材料の吸収損失(伝播損失)を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
表2にみられるように、芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料を用いた実施例1、8、9は、芳香族を含まない熱可塑性樹脂からなる材料を用いた比較例に比べて、波長1550nmの光についての吸収損失が特に小さいことが確認される。
【0140】
(実施例10)
請求項1、3、5〜7の発明に対応する実施例を示す。
【0141】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂からなる材料を用いて、エンボス加工により、コア溝が形成された厚み2mmのクラッド基板を作製した。
【0142】
また、A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレートをそれぞれ68wt%、32wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを上記A+Bに対して3wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。
【0143】
そして、クラッド基板のコア溝が形成された側の面にコア材料の溶液を塗布した後に、上記と反対側の面から7mW/cm2の強度の紫外線を照射するようにして、紫外線の照射時間とコア材料の重合度との関係を調べた。ここで、紫外線の強度はウシオ電機(株)製の紫外線強度測定器を用いて測定し、コア材料の重合度はFT−IRを用いてC=Cの二重結合の吸収ピークの変化より求めた。その結果、紫外線を30分間照射した後のコア材料の重合度は65%であった。
【0144】
(実施例11)
請求項1、3、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0145】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂からなる材料を用いて、エンボス加工により、コア溝が形成された厚み2mmのクラッド基板を作製した。
【0146】
また、A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレートをそれぞれ68wt%、32wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+Bに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。
【0147】
そして、クラッド基板のコア溝が形成された側の面にコア材料の溶液を塗布した後に、上記と反対側の面から7mW/cm2の強度の紫外線を照射するようにして、紫外線の照射時間とコア材料の重合度との関係を調べた。ここで、紫外線の強度は実施例9と同様にして測定し、コア材料の重合度も実施例9と同様にして求めた。その結果、紫外線を5分間照射した後のコア材料の重合度は80%であった。
【0148】
なお、実施例10、11においてクラッド基板を作製するのに用いたポリカーボネート樹脂の紫外線透過率を分光光度計で測定した結果、波長365nm、405nmにおいて透過率はそれぞれ5%、80%であった。
【0149】
また、実施例10において光重合開始剤として用いた2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの吸光係数を測定すると、波長365nmにおいて74ml/gcm(メタノール溶液)、波長405nmにおいて吸収はほとんどなかった。
【0150】
また、実施例11において光重合開始剤として用いた2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1の吸光係数を測定すると、波長365nmにおいて7900ml/gcm(メタノール溶液)、波長405nmにおいて93ml/gcm(メタノール溶液)であった。
【0151】
既述のように、実施例10においては紫外線を30分間照射した後のコア材料の重合度は65%であるのに対し、実施例11においては紫外線を5分間照射した後のコア材料の重合度は80%であることから、光重合開始剤として、クラッド基板を透過する光の波長以上の波長を有する光により分解するものを用いた実施例11の方が、実施例10よりも、高分子光導波路の製造に要する時間を短縮できることが確認される。
【0152】
(実施例12)
請求項1、3、5〜11の発明に対応する実施例を示す。
【0153】
本実施例においてはシングルモードの高分子光導波路を以下のようにして製造した。
【0154】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂からなる材料を用いた。
【0155】
また、A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレートをそれぞれ68wt%、32wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+Bに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。このコア材料の屈折率をプリズムカップリング法により測定すると、波長1310nmで1.568、波長1550nmで1.566であった。
【0156】
まず、断面の大きさが6μm×6μmのコアパターンが表面に形成された金型を加熱し、あらかじめ平板状に成形しておいたクラッド材料の表面に上記の金型を押し付けることによって、上記のコアパターンの形状に対応するコア溝が転写により形成されたクラッド基板を作製した。このクラッド基板の屈折率をプリズムカップリング法により測定すると、波長1310nmで1.563、波長1550nmで1.561であった。
【0157】
次に、クラッド基板のコア溝が形成された側の面にコア材料を滴下し、100Pa程度の減圧雰囲気下において、温度60℃に加熱して脱泡を行うことによってコア溝にコア材料を充填した後、常温まで冷却した。
【0158】
そして、クラッド基板のコア材料を充填した側の面に厚み100μmのポリカーボネート樹脂製フィルムを配置し、このフィルムをクラッド基板に押圧しながら上記と反対側の面から波長405nm、強度10mW/cm2の紫外線を紫外線照射装置により照射してコアを形成することによって、シングルモードの高分子光導波路を製造した。このようにして得たシングルモードの高分子光導波路の吸収損失は波長1310nmで0.3dB/cm、波長1550nmで0.6dB/cmであった。
【0159】
(実施例13)
請求項1、3、4〜10、12の発明に対応する実施例を示す。
【0160】
本実施例においてはマルチモードの高分子光導波路を以下のようにして製造した。
【0161】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂からなる材料を用いた。
【0162】
また、A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレート、E:ビス[(2−メタクリロイルチオ)エチル]スルフィドをそれぞれ60.3wt%、13.9wt%、25.8wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+B+Eに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。このコア材料の屈折率をプリズムカップリング法(測定装置:メトリコン社製モデル2010屈折率測定装置)により測定すると、波長850nmで1.600であった。
【0163】
まず、断面の大きさが65μm×65μmのコアパターンが表面に形成された金型を加熱し、あらかじめ平板状に成形しておいたクラッド材料の表面に上記の金型を押し付けることによって、上記のコアパターンの形状に対応するコア溝が転写により形成されたクラッド基板を作製した。このクラッド基板の屈折率をプリズムカップリング法により測定すると、波長850nmで1.573であった。
【0164】
次に、クラッド基板のコア溝が形成された側の面にコア材料を滴下し、100Pa程度の減圧雰囲気下において、温度60℃に加熱して脱泡を行うことによってコア溝にコア材料を充填した後、常温まで冷却した。
【0165】
そして、クラッド基板のコア材料を充填した側と反対側の面から紫外線を数秒間照射することによってコア材料を半硬化させた後、クラッド基板のコア材料を充填した側の面に厚み100μmのポリカーボネート樹脂製フィルムを配置し、このフィルムをクラッド基板に押圧しながらクラッド基板のコア材料を充填した側と反対側の面から波長405nm、強度10mW/cm2の紫外線を紫外線照射装置により照射してコアを形成することによって、マルチモードの高分子光導波路を製造した。このようにして得たマルチモードの高分子光導波路の吸収損失は波長850nmで0.1dB/cmであった。
【0166】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係る高分子光導波路は、クラッド基板に形成されたコア溝にコア材料を充填してコアを形成することによって製造される高分子光導波路において、クラッド基板を作製するためのクラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料を用いるので、光通信に使用される領域(通信帯域)や近赤外領域における光の吸収損失が小さいクラッド基板を作製することができ、このクラッド基板を用いることによって、低損失の高分子光導波路を製造することができるものである。また、コア材料として、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと上記一般式[化1]([化3])で表されるものとからなる材料を用いるので、以下のような効果を得ることができる。すなわち、クラッド基板に形成されたコア溝への充填性を高く得ることができ、コア溝に形成されたコアの内部に気泡が残りにくくなり、不良品の発生を低減することができる。また、コアの光学異方性を小さくすることができる。また、コアの耐熱性を高めることができる。また、通信帯域や近赤外領域の光の吸収損失を小さくすることができる。また、コア材料の熱硬化時の収縮率を小さくすることができ、これにより硬化後のコア材料はコアパターンの形状に対応するコアを正確に形成することができる。また、コアの線膨張係数を小さくすることができ、これにより高分子光導波路の使用時において熱負荷がかかっても、コアとクラッド基板との膨張差が小さいためこれらの界面に剥離が発生せず、信頼性を高めることができる。また、コア材料の浸透性を小さくすることができ、コア材料をクラッド基板に形成されたコア溝に充填する際に、クラッド材料(芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料)がコア材料によって溶解されにくく、初期に設計したコアの形状とほぼ同一のコアを形成することができ、コアに光を十分に閉じ込め、低損失の高分子光導波路を製造することができる。また、コア材料と芳香族を含む熱可塑性樹脂との接着性を高めることができ、高分子光導波路の長期安定性を高く得ることができる。
【0167】
また請求項2の発明は、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を1個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものとを併用するので、屈折率を容易に調整することができると共に、コア材料の低粘度化を図ることができるものである。そしてコア材料の粘度が低下すると、クラッド基板に形成されたコア溝にコア材料を充填する作業を簡便に行うことができると共に、気泡の巻き込みがさらに抑制され、コア材料のコア溝への充填性をさらに高く得ることができるものである。
【0168】
また請求項3の発明は、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、脂肪族メタクリレート系化合物及び脂肪族アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いるので、芳香族メタクリレート系化合物及び芳香族アクリレート系化合物のみを用いる場合よりも、コア材料の低粘度化を図ることができると共に、コアとクラッド基板との線膨張係数の差を小さくすることができるものである。そして上記のようにコア材料の粘度が低下すると、クラッド基板に形成されたコア溝にコア材料を充填する際に気泡の巻き込みがさらに抑制され、コア材料のコア溝への充填性をさらに高く得ることができるものであり、また、コアとクラッド基板との線膨張係数の差が小さくなると、高分子光導波路を高温下に放置してもコアとクラッド基板との界面に剥離が発生しにくくなり、低損失を長期にわたって維持することができ、信頼性を向上させることができるものである。
【0169】
また請求項4の発明は、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、さらに、チオエーテル類メタクリレート系化合物及びチオエーテル類アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いるので、脂肪族のもののみを用いる場合よりも、コア材料の低粘度化を図ることができ、クラッド基板に形成されたコア溝にコア材料を充填する際に気泡の巻き込みがさらに抑制され、コア材料のコア溝への充填性をさらに高く得ることができるものである。
【0170】
また請求項5の発明は、上記一般式[化1]([化3])で表されるものとして、上記一般式[化2]([化4])で表されるビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートを用いるので、通信帯域や近赤外領域の光の吸収損失をさらに小さくすることができ、さらに低損失の高分子光導波路を製造することができるものである。
【0171】
また請求項6の発明は、芳香族を含む熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂から選ばれるものを用いるので、これらの樹脂以外の樹脂からなる材料をクラッド材料として用いるよりも、吸収損失が小さいクラッド基板を作製することができ、低損失の高分子光導波路を製造することができるものである。
【0172】
また請求項7の発明は、コア材料にラジカル重合開始剤である光重合開始剤を配合するので、コア材料を硬化させるために熱を付与する必要はなく、紫外線等の光の照射により低温度でコア材料を重合させて硬化させることが可能となる。そうすると、クラッド基板とコアとの界面に応力が発生しにくくなるので、クラッド基板とコアとの界面に剥離が発生しにくくなり、また上記界面における残留応力が低減することによって、高分子光導波路の初期特性が維持されると共に環境負荷による特性低下を防止することが可能となるものである。
【0173】
また請求項8の発明は、光重合開始剤として、クラッド基板を透過する光の波長以上の波長を有する光により分解するものを用いるので、クラッド基板を透過する光によって光重合開始剤を分解することができ、これによりコア材料の硬化を速め、コア材料の硬化に要する時間を短縮することができるものである。そしてこのようにしてコア材料を十分に硬化させることができるため、後工程における熱履歴や使用環境下での熱履歴によってコアの硬化収縮が発生するようなことがなくなり、高分子光導波路の特性変化を十分に抑えることが可能となるものである。
【0174】
本発明の請求項9に係る高分子光導波路の製造方法は、光導波路のコアパターンが表面に形成された金型をクラッド材料に押し付けることによって、コアパターンの形状に対応するコア溝が転写により形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝にコア材料を充填してコアを形成することによって高分子光導波路を製造する方法において、クラッド材料及びコア材料としてそれぞれ請求項1乃至8のいずれかに記載のクラッド材料及びコア材料を用いると共に、クラッド基板とコア材料のいずれか一方又は両方を加熱した状態でクラッド基板にコア材料を塗布するので、加熱によりコア材料の粘度が低下することによって、容易かつ短時間にコア材料をコア溝に充填することができ、充填時にコア材料が気泡を巻き込みにくくなると共に、高分子光導波路の製造に要する時間も短縮化することができるものである。
【0175】
また請求項10の発明は、クラッド基板にコア材料を塗布した後に脱泡するので、コア溝へのコア材料の充填をより短時間で行うことができると共に、コア材料の内部の微細な気泡をも除去することができ、光の散乱損失を低減することが可能となる。
【0176】
また請求項11の発明は、コアの形状がシングルモードに対応する形状であるので、量産性に優れ、低コストであり、各種特性に優れたシングルモードの高分子光導波路を製造することができるものである。
【0177】
また請求項12の発明は、コアの形状がマルチモードに対応する形状であるので、量産性に優れ、低コストであり、各種特性に優れたマルチモードの高分子光導波路を製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)〜(d)は断面図である。
【図2】高分子光導波路の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 クラッド材料
2 コア溝
3 クラッド基板
4 コア材料
5 コア
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信分野、光情報処理分野において使用される光デバイスを構成するための光導波路型光学素子等における高分子光導波路及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
平面型光導波路であるスプリッタ等の製造方法は、材料として、透明性に優れ、光学異方性が小さく、耐熱性の高い石英ガラスや誘電体結晶等を用いる場合が多く、その製造方法は、フォトリソグラフィー、ドライエッチングプロセスの組み合わせが中心であるが、この方法ではプロセスが複雑で、装置コストも高価であるために、大量生産には適さない工程であり、材料コストも高価であった。
【0003】
その後、高分子系材料を用いた光導波路(高分子光導波路)が注目され始め、低コスト化が期待されている。この高分子光導波路を製造するにあたっては、コア、クラッド基板にポリイミド系、エポキシ系材料等を用いて、半導体プロセスと同様にフォトリソグラフィーや反応性イオンエッチングを行う方法が採られている。しかしこの方法は、石英ガラス導波路と同様の製造方法であるために、低コストとはならない。
【0004】
そこで、低コスト化を実現するために、近年、光導波路のコアパターンが表面に形成された金型を用い、この金型に溶融状態の熱可塑性樹脂を流し込んで射出成形することによって、コアパターンの形状に対応するコア溝が形成されたクラッド基板を作製する方法や、あるいは上記の金型を溶融状態の熱可塑性樹脂に押し当てることによって、コアパターンの形状に対応するコア溝が形成されたクラッド基板をホットエンボス法により作製する方法が検討されている。いずれの作製方法も量産性に優れており、これらの方法によって作製したクラッド基板を用いることによって、高分子光導波路の製造コストを削減することができるものである。
【0005】
図2は高分子光導波路の一例を示す断面図であり、この高分子光導波路は、上記のようにクラッド材料1を用いて作製したクラッド基板3のコア溝2にコア材料4を充填してコア5を形成すると共に、この面にクラッド基板3と同じ材料(クラッド材料1)で形成されたフィルム6を接合することによって製造される。
【0006】
そして上記のような方法で高分子光導波路を製造する技術としては、具体的には、特開昭58−95305号公報(特許文献1)、特開平6−3545号公報(特許文献2)、特開平10−90532号公報(特許文献3)に記載された技術を挙げることができる。これらの公報で使用されている材料について、クラッド基板3を作製するためのクラッド材料1としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が例示されている(例えば、特許文献2の段落番号[0042]、特許文献3の段落番号[0034])。また、コア5を形成するためのコア材料4としては、ジュウテリウム置換メタクリレートやフッ素置換メタクリレートが例示されており(例えば、特許文献2の段落番号[0043])、このようなコア材料4を用いることにより光の吸収を低減しているのが一般的である。
【0007】
しかし、上記のようなクラッド材料1やコア材料4を用いる場合には、以下に列挙するような問題が生じる。
【0008】
(問題点1)
光導波路は、コア5部分に入射した光を屈折率の小さいクラッド基板3間(コア溝2の内壁など)で繰り返し反射させながら伝播させるものであるが、クラッド基板3へのいわゆるしみだしによりクラッド基板3部分を伝播する光もある。特に、コア5の径が小さいシングルモードの光導波路においては、この影響が顕著となる。そのためクラッド材料1としては、PMMAよりも光吸収の小さい材料を用いる必要がある。すなわち、PMMAは吸収損失が大きいため、クラッド材料1としてPMMAを用いると、光通信に使用する1550nm付近の波長の光が吸収され、光導波路の損失が大きくなるという問題がある。
【0009】
(問題点2)
また、PMMAは、耐熱性が低いことから、高分子光導波路が使用される環境によっては、その特性が悪化するという問題もある。
【0010】
(問題点3)
また、コア材料4として特許文献2(段落番号[0043])に例示されているジュウテリウム置換PMMA−d8とテトラフルオロプロピルメタクリレート(TFPMA)からなるコポリマーは、ジュウテリウムやフッ素を含有する材料より構成されているため材料が高価となる。
【0011】
(問題点4)
さらに、上記のようにコア材料4にフッ素を含有させる場合には、クラッド基板3に対する密着性が低下するという問題もある。
【0012】
(問題点5)
また、熱可塑性樹脂で作製されるクラッド基板3のコア溝2にコア材料4を充填してコア5を形成する際に、このコア材料4によってクラッド基板3が溶解し、初期に設計したコア5の形状とは異なるコア5が形成されたり、クラッド基板3の溶解によりクラッド基板3とコア5との界面の屈折率差がぼやけ、コア5に光を十分に閉じ込めることができなかったりするという問題がある。
【0013】
(問題点6)
また、従来のコア材料4は、硬化時の収縮率が大きいため、所定の形状を有するコア5を得るのが難しいという問題や、収縮時の応力によりクラッド基板3とコア5との界面の剥離の問題もあった。
【0014】
【特許文献1】
特開昭58−95305号公報
【特許文献2】
特開平6−3545号公報
【特許文献3】
特開平10−90532号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題点1は、例えば、クラッド材料1として、芳香族を含むポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアリレート樹脂等の熱可塑性樹脂からなる材料を用いることによって解消することができる。その理由は、上記の樹脂からなる材料は、PMMAに比べて光吸収が小さいためである。
【0016】
しかし、上記のような材料をクラッド材料1として用いても、それに適したコア材料4はこれまでに提供された例がない。そのため、上記の問題点2〜6は依然として解消されていない。
【0017】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、量産性に優れ、低コストであり、各種特性に優れた高分子光導波路及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る高分子光導波路は、クラッド基板3に形成されたコア溝2にコア材料4を充填してコア5を形成することによって製造される高分子光導波路において、クラッド基板3を作製するためのクラッド材料1として、芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料を用いると共に、コア材料4として、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと下記一般式[化3]で表されるものとからなる材料を用いることを特徴とするものである。
【0019】
【化3】
【0020】
また請求項2の発明は、請求項1において、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を1個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものとを併用することを特徴とするものである。
【0021】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、脂肪族メタクリレート系化合物及び脂肪族アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いることを特徴とするものである。
【0022】
また請求項4の発明は、請求項3において、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、さらに、チオエーテル類メタクリレート系化合物及びチオエーテル類アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いることを特徴とするものである。
【0023】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、上記一般式[化3]で表されるものとして、下記一般式[化4]で表されるビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートを用いることを特徴とするものである。
【0024】
【化4】
【0025】
また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、芳香族を含む熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂から選ばれるものを用いることを特徴とするものである。
【0026】
また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、コア材料4にラジカル重合開始剤である光重合開始剤を配合することを特徴とするものである。
【0027】
また請求項8の発明は、請求項7において、光重合開始剤として、クラッド基板3を透過する光の波長以上の波長を有する光により分解するものを用いることを特徴とするものである。
【0028】
本発明の請求項9に係る高分子光導波路の製造方法は、光導波路のコアパターンが表面に形成された金型をクラッド材料1に押し付けることによって、コアパターンの形状に対応するコア溝2が転写により形成されたクラッド基板3を作製し、このクラッド基板3のコア溝2にコア材料4を充填してコア5を形成することによって高分子光導波路を製造する方法において、クラッド材料1及びコア材料4としてそれぞれ請求項1乃至8のいずれかに記載のクラッド材料1及びコア材料4を用いると共に、クラッド基板3とコア材料4のいずれか一方又は両方を加熱した状態でクラッド基板3にコア材料4を塗布することによって、クラッド基板3のコア溝2にコア材料4を充填することを特徴とするものである。
【0029】
また請求項10の発明は、請求項9において、クラッド基板3にコア材料4を塗布した後に脱泡することを特徴とするものである。
【0030】
本発明の請求項11に係る高分子光導波路は、請求項1乃至8のいずれかにおいて、コア5の形状がシングルモードに対応する形状であることを特徴とするものである。
【0031】
本発明の請求項12に係る高分子光導波路は、請求項1乃至8のいずれかにおいて、コア5の形状がマルチモードに対応する形状であることを特徴とするものである。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0033】
本発明においてクラッド材料1としては、芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料を用いるものである。芳香族を含む熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂等の非晶性の熱可塑性樹脂を用いることができる。ここで、例えば、ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールAタイプのもの、ビスフェノールZタイプのもの、フルオレン構造を有するタイプのもの等を用いることができる。ポリカーボネート樹脂以外の樹脂としても、上記と同様のものを用いることができる。
【0034】
芳香族を含む熱可塑性樹脂は、光通信に使用される領域(通信帯域)や近赤外領域の光を吸収するCHが、芳香族を含まない熱可塑性樹脂(例えば、PMMA)と比較して少ないため、透明性に優れている。よって、芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料をクラッド材料1として用いると、上記領域における光の吸収損失が小さいクラッド基板3を作製することができ、このクラッド基板3を用いることによって、低損失の高分子光導波路を製造することができるものである。
【0035】
ここで、芳香族を含む熱可塑性樹脂の中でも特に、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂から選ばれるものを用いるのが好ましい(請求項6の発明)。これらの樹脂からなる材料をクラッド材料1として用いると、これらの樹脂以外の樹脂からなる材料をクラッド材料1として用いるよりも、さらに吸収損失が小さいクラッド基板3を作製することができ、さらに低損失の高分子光導波路を製造することができるものである。
【0036】
図1(a)はクラッド基板3を示すものであり、このようなクラッド基板3を作製するにあたっては、例えば、エンボス加工、射出成形等を利用することができる。エンボス加工を利用する場合は、所定の光導波路のコアパターンが凸部として表面に形成された金型を加熱し、あらかじめ平板状に成形しておいたクラッド材料1の表面に上記の金型を押し付け、所定時間経過後、金型を冷却した後に離型することによって、上記のコアパターンの形状に対応するコア溝2が転写により凹部として形成されたクラッド基板3を得ることができる。ここで、コア溝2の本数や形状は、高分子光導波路の用途に応じて適宜に設計されるものであり、1本のコア溝2を形成しても複数本のコア溝2を形成してもよく、1つ又は複数の分岐を有するスプリット状のコア溝2を形成してもよい。一方、射出成形を利用する場合は、所定の光導波路のコアパターンが凸部としてキャビティの内面に形成された金型に、加熱溶融したクラッド材料1を射出充填し、金型を冷却した後に離型することによって、上記のコアパターンの形状に対応するコア溝2が転写により凹部として形成されたクラッド基板3を得ることができる。
【0037】
上記のエンボス加工、射出成形等の成形法は量産性に優れているため、これらの方法を利用する方が、従来のようにフォトリソグラフィーやドライエッチングプロセスを組み合わせるよりも、量産性に優れ、低コストな高分子光導波路を安定して製造することができるものである。
【0038】
一方、コア材料4としては、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと、上記一般式[化1]([化3])で表されるものとからなる材料を用いるものである。ここで、メタクリレート系化合物やアクリレート系化合物を1種類のものに限定していないのは、これらを組み合わせて配合することによって、伝播させる光の波長帯域におけるコア5の屈折率がクラッド基板3の屈折率よりも所定の割合高くなるようにするためである。また、製造時における収縮率や流動性、クラッド基板3との密着性や線膨張係数のマッチング等を改善するためである。なお、上記一般式[化1]([化3])で表されるものの配合量は、コア材料4全量に対して30〜70重量%であることが好ましい。また、コア材料4にはビニル系化合物を配合することも可能であるが、反応性が乏しいため望ましくない。
【0039】
1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、単官能メタクリレート、多官能メタクリレート、単官能アクリレート、多官能アクリレート等を用いることができる。なお、単官能とは、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を1個有していることを意味しており、多官能とは、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を2個以上有していることを意味している。
【0040】
単官能メタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、テトラブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルシクロヘキシルメタクリレート、2−エチルシクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、1−ナフチルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、ブロモフェニルメタクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、メトキシフェニルメタクリレート、シアノフェニルメタクリレート、フェニルチオメタクリレート等を用いることができる。
【0041】
多官能メタクリレートとしては、2官能メタクリレート及び3官能メタクリレートのほか、4官能以上のメタクリレートも用いることができる。
【0042】
2官能メタクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートトリメチロールプロパントリジメタクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジメタクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジメタクリレート、ビス[(2−メタクリロイルチオ)エチル]スルフィド(化学名:S,S’−(チオジエチレン)ビス(チオメタクリレート))、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド(化学名:S,S’−(チオジ−4,1−フェニレン)チオメタクリレート)等を用いることができる。
【0043】
3官能メタクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリメタクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリメタクリレート等を用いることができる。
【0044】
一方、単官能アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、テトラブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルシクロヘキシルアクリレート、2−エチルシクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、ブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、メトキシフェニルアクリレート、シアノフェニルアクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性アクリレート等を用いることができる。
【0045】
多官能アクリレートとしては、2官能アクリレート及び3官能アクリレートのほか、4官能以上のアクリレートも用いることができる。
【0046】
2官能アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートトリメチロールプロパントリジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジアクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジアクリレート等を用いることができる。
【0047】
3官能アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート等を用いることができる。
【0048】
ここで、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物としては、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を1個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものとを併用するのが好ましい(請求項2の発明)。このように、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、多官能のものと単官能のものとを併用すると、屈折率を容易に調整することができると共に、コア材料4の低粘度化を図ることができるものである。そしてコア材料4の粘度が低下すると、クラッド基板3に形成されたコア溝2にコア材料4を充填する作業を簡便に行うことができると共に、気泡の巻き込みがさらに抑制され、コア材料4のコア溝2への充填性をさらに高く得ることができるものである。
【0049】
上記のように、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、多官能のものと単官能のものとを併用する場合において、単官能のものの配合量はコア材料4全量に対して5〜50重量%であることが望ましく、5〜25重量%であることがより望ましく、5〜15重量%であることが最も望ましい。単官能のものの配合量が5重量%より少ないと、コア材料4の低粘度化の効果を十分に得ることができないおそれがある。逆に単官能のものの配合量が50重量%より多いと、コア5の収縮率が増加することによって高分子光導波路の製造が困難となるおそれがあり、また、コア5の線膨張係数が増加することによってクラッド基板3との線膨張係数の差が大きくなり、高分子光導波路を高温下に放置したときに上記の差に起因して応力が生じ、この応力によりクラッド基板3とコア5との界面に剥離が発生するおそれがある。
【0050】
また、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物としては、脂肪族メタクリレート系化合物及び脂肪族アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いるのが好ましい(請求項3の発明)。脂肪族メタクリレート系化合物としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレートやジエチレングリコールジメタクリレート等を用いることができ、また脂肪族アクリレート系化合物としては、エチレングリコールジアクリレートやジエチレングリコールジアクリレート等を用いることができる。このような脂肪族のものを用いると、芳香族メタクリレート系化合物及び芳香族アクリレート系化合物のみを用いる場合よりも、コア材料4の低粘度化を図ることができると共に、コア5とクラッド基板3との線膨張係数の差を小さくすることができるものである。そして上記のようにコア材料4の粘度が低下すると、クラッド基板3に形成されたコア溝2にコア材料4を充填する際に気泡の巻き込みがさらに抑制され、コア材料4のコア溝2への充填性をさらに高く得ることができるものであり、また、コア5とクラッド基板3との線膨張係数の差が小さくなると、高分子光導波路を高温下に放置してもコア5とクラッド基板3との界面に剥離が発生しにくくなり、低損失を長期にわたって維持することができ、信頼性を向上させることができるものである。
【0051】
また上記のように、脂肪族メタクリレート系化合物及び脂肪族アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いる場合においては、さらに、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、チオエーテル類メタクリレート系化合物及びチオエーテル類アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いるのが好ましい(請求項4の発明)。チオエーテル類メタクリレート系化合物としては、例えば、ビス[(2−メタクリロイルチオ)エチル]スルフィド、フェニルチオメタクリレート等を用いることができ、また、チオエーテル類アクリレート系化合物としては、例えば、ビス[(2−アクリロイルチオ)エチル]スルフィド、フェニルチオアクリレート等を用いることができる。このようなチオエーテル類のものを脂肪族のものと併用すると、脂肪族のもののみを用いる場合よりも、コア材料4の低粘度化を図ることができ、クラッド基板3に形成されたコア溝2にコア材料4を充填する際に気泡の巻き込みがさらに抑制され、コア材料4のコア溝2への充填性をさらに高く得ることができるものである。
【0052】
また、コア材料4の配合成分である上記一般式[化1]([化3])は、フルオレン環にベンゼン環が直交配置するスピロ構造を有するものであるが、これを用いることによって、以下のような効果を得ることができる。すなわち、コア5の光学異方性を小さくすることができる。また、コア5の耐熱性を高めることができる。また、通信帯域や近赤外領域の光の吸収損失を小さくすることができる。また、コア材料4の熱硬化時の収縮率を小さくすることができ、これにより硬化後のコア材料4はコアパターンの形状に対応するコア5を正確に形成することができる。また、コア5の線膨張係数を小さくすることができ、これにより高分子光導波路の使用時において熱負荷がかかっても、コア5とクラッド基板3との膨張差が小さいためこれらの界面に剥離が発生せず、信頼性を高めることができる。また、コア材料4の浸透性を小さくすることができ、コア材料4をクラッド基板3に形成されたコア溝2に充填する際に、クラッド材料1(芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料)がコア材料4によって溶解されにくく、初期に設計したコア5の形状とほぼ同一のコア5を形成することができ、コア5に光を十分に閉じ込め、低損失の高分子光導波路を製造することができる。また、コア材料4とクラッド材料1(芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料)との接着性を高めることができ、高分子光導波路の長期安定性を高く得ることができる。
【0053】
ここで、上記一般式[化1]([化3])で表されるものとしては、上記一般式[化2]([化4])で表されるビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートを用いるのが好ましい(請求項5の発明)。ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートは[化1]([化3])においてR1を水素原子、n及びmをいずれも1としたものであるが、これは、上記一般式[化1]([化3])で表されるものの中で、最も分子内のCHが少ないものであるため、通信帯域や近赤外領域の光の吸収損失をさらに小さくすることができ、さらに低損失の高分子光導波路を製造することができるものである。
【0054】
ここで、コア材料4には、ラジカル重合開始剤である光重合開始剤を配合するのが好ましい(請求項7の発明)。光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフェンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等を用いることができる。これらの光重合開始剤のうち1種のものを単独で用いてもよいし、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0055】
また、ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤を用いてもよい。熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、ジシソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を用いることができる。ただ、ラジカル重合開始剤として熱重合開始剤を用いる場合には、コア材料4を硬化させるために熱を付与する必要があり、この熱によりクラッド基板3が膨張した状態でコア材料4が硬化することとなる。そうすると、コア材料4が硬化した後の冷却工程においてクラッド基板3とコア5との膨張率の違いによりクラッド基板3とコア5との界面に応力が発生し、この応力によりクラッド基板3とコア5との界面に剥離が発生するおそれがある。しかし、ラジカル重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合には、コア材料4を硬化させるために熱を付与する必要はなく、紫外線等の光の照射により低温度でコア材料4を重合させて硬化させることが可能となる。そうすると、上記のような応力が発生しにくくなるので、クラッド基板3とコア5との界面に剥離が発生しにくくなり、また上記界面における残留応力が低減することによって、高分子光導波路の初期特性が維持されると共に環境負荷による特性低下を防止することが可能となるものである。よって、ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤よりも光重合開始剤を用いるのが好ましい。
【0056】
また、光重合開始剤としては、クラッド基板3を透過する光の波長以上の波長を有する光により分解するものを用いるのが好ましい(請求項8の発明)。光重合開始剤を配合したコア材料4を用いる場合には、このコア材料4をクラッド基板3に形成されたコア溝2に充填した後に、上記コア材料4に紫外線等の光を照射して硬化させる必要がある。このとき、紫外線照射装置を用いて、図1(d)に示すようにクラッド基板3を介してコア材料4に紫外線Lを照射すると、クラッド基板3を作製しているクラッド材料1は芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料であるため、紫外線Lの多くがクラッド基板3に吸収されることとなり、コア材料4の硬化に長時間を要したり、あるいはコア材料4の硬化が不十分となって、後工程における熱履歴や使用環境下での熱履歴によって硬化反応がさらに進行してコア5の硬化収縮が発生したりすることとなる。しかし上記のように、光重合開始剤として、クラッド基板3を透過する光の波長以上の波長を有する光により分解するものを用いると、クラッド基板3に吸収される光の一部によって光重合開始剤が分解されるのではなく、当初からクラッド基板3を透過する光によって光重合開始剤を分解することができ、これによりコア材料4の硬化を速め、コア材料4の硬化に要する時間を短縮することができるものである。そしてこのようにしてコア材料4を十分に硬化させることができるため、後工程における熱履歴や使用環境下での熱履歴によってコア5の硬化収縮が発生するようなことがなくなり、高分子光導波路の特性変化を十分に抑えることが可能となるものである。
【0057】
なお、例えば、クラッド材料1がポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂からなる材料である場合には、このクラッド材料1で作製されるクラッド基板3を透過する光の波長以上の波長を有する光により分解する光重合開始剤としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のように、400nm以上の波長の光で分解されるものを用いることができる。このような光重合開始剤を用いることによって、コア材料4の硬化を短時間で十分に行うことが可能となるものである。
【0058】
また、光重合開始剤等のラジカル重合開始剤の配合量は、コア材料4全量に対して0.1〜5重量%の範囲であることが好ましい。上記配合量が0.1重量%未満であると、コア材料4を重合させて硬化させるのに長時間を要するおそれがある。逆に、上記配合量が5重量%を超えると、コア材料4が硬化するときにヒビが発生したり割れたりするおそれがあり、また、コア材料4の硬化収縮により部分的にクラッド基板3とコア5との界面に剥離が発生するおそれがある。
【0059】
コア材料4は、既述の1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと、上記一般式[化1]([化3])で表されるものとを混合した後に、必要に応じてラジカル重合開始剤を添加して混合することによって、調製することができる。
【0060】
そして、高分子光導波路を製造するにあたっては、基本的には、以下のようにして行うことができる。
【0061】
まず、既述のエンボス加工等によって、コア溝2が形成されたクラッド基板3を作製する。次に、クラッド基板3のコア溝2が形成された側の面にコア材料4を滴下するなどして塗布することによって、コア溝2にコア材料4を充填する。次に、この面にクラッド材料1等で作製されたフィルムを被せ、このフィルムをクラッド基板3に向けてプレスした後に、コア溝2に充填されたコア材料4を硬化させて、このコア材料4でコア5を形成することによって、高分子光導波路を製造することができるものである。
【0062】
また、以下のような製造方法を採用してもよい。すなわち、上記と同様に既述のエンボス加工等によって、コア溝2が形成されたクラッド基板3を作製する。次に、クラッド基板3のコア溝2が形成された側の面にコア材料4を滴下するなどして塗布することによって、コア溝2にコア材料4を充填する。そしてコア溝2に充填されていない余分なコア材料4を除去した後に、まずコア材料4を硬化させてコア5を形成し、次いで、クラッド基板3においてコア5を形成した側の面に、クラッド基板3と略同一の屈折率を有する材料(例えば、光硬化性材料、熱硬化性材料等)を滴下するなどして塗布し、これを硬化させることによって、高分子光導波路を製造することができるものである。
【0063】
なお、クラッド基板3の作製、コア材料4の調製、高分子光導波路の製造においては、特にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の溶剤を使用する必要がないので、環境負荷を低減することができるものである。
【0064】
ここで、クラッド基板3へのコア材料4の塗布は、クラッド基板3とコア材料4のいずれか一方又は両方を所定温度に加熱した状態で行うのが好ましい(請求項9の発明)。これは、コア5の形状が小さいシングルモードの高分子光導波路を製造する場合に特に有効である。すなわち、シングルモードの高分子光導波路におけるコア5の形状は通常、数μmであり、非常に微細なものであるため、このようなコア5が形成されるコア溝2も非常に微細なものとなり、コア溝2へのコア材料4の充填性を高く得ることが課題となる。しかし、コア材料4の配合によっては粘度が高くなり、コア溝2への充填が困難となることがある。また、コア材料4をコア溝2へ充填する過程において気泡を巻き込むおそれがあり、この気泡を除去する必要が生じる。このような問題を解消するには、上述のとおり、クラッド基板3とコア材料4のいずれか一方又は両方を所定温度に加熱した状態でクラッド基板3にコア材料4を塗布すればよく、加熱によりコア材料4の粘度が低下することによって、容易かつ短時間にコア材料4をコア溝2に充填することができ、充填時にコア材料4が気泡を巻き込みにくくなると共に、高分子光導波路の製造に要する時間も短縮化することができるものである。
【0065】
なお、クラッド基板3やコア材料4を加熱するときの温度の上限は、例えば、クラッド基板3に形成したコア溝2の形状を維持することができる温度あるいはコア材料4に配合された成分が揮発し、コア材料4が硬化したときの屈折率変化が所定範囲となる温度のうち、どちらか低い方の温度に設定することができる。ただし、加熱温度は、充填の途中でコア材料4が硬化しない温度である必要がある。また、クラッド基板3やコア材料4(光重合開始剤を配合したもの)を加熱した状態で、紫外線L等の光を照射してコア材料4を硬化させることもできるが、コア材料4の硬化後、冷却する際にコア5とクラッド基板3との界面に剥離や残留応力が発生するおそれがあるため、紫外線L等の光を照射するのは、コア材料4をクラッド基板3のコア溝2に充填した後、一旦冷却して常温に戻してから行うのが望ましい。
【0066】
また、クラッド基板3にコア材料4を塗布した後に、これを100Pa程度の減圧雰囲気下に置くなどして、脱泡するのが好ましい(請求項10の発明)。このようにすると、コア溝2へのコア材料4の充填をより短時間で行うことができると共に、コア材料4の内部の微細な気泡をも除去することができ、光の散乱損失を低減することが可能となる。なお、クラッド基板3とコア材料4のいずれか一方又は両方を加熱しながら脱泡するようにすると、高分子光導波路を製造するのに要する時間をより短縮化することができる。
【0067】
また、光重合開始剤を配合したコア材料4を用いて高分子光導波路を製造するにあたっては、以下のようにして行うことができる。まず、既述のエンボス加工等によって、図1(a)に示すようなコア溝2が形成されたクラッド基板3を作製する。次に、図1(b)に示すように、クラッド基板3のコア溝2が形成された側の面にコア材料4を滴下するなどして塗布することによって、コア溝2にコア材料4を充填する。次に、図1(c)に示すように、クラッド基板3においてコア材料4を塗布した側の面に、クラッド基板3と略同一の屈折率を有するフィルム又はクラッド材料1で作製されたフィルム6を被せ、このフィルム6をプレス治具7によってクラッド基板3に押圧することによって、余分なコア材料4をクラッド基板3とフィルム6との間から排除する。そして紫外線照射装置を用いて、図1(d)に示すようにクラッド基板3(又はフィルム6)を介してコア溝2に充填されたコア材料4に紫外線Lを照射し、コア材料4を硬化させてこのコア材料4でコア5を形成することによって、高分子光導波路を製造することができるものである。
【0068】
なお、クラッド基板3にコア材料4を塗布し、コア溝2に充填されていない余分なコア材料4を除去した後に、紫外線Lを照射することによって、まずコア材料4を硬化させてコア5を形成し、次いで、クラッド基板3においてコア5を形成した側の面に、クラッド基板3と略同一の屈折率を有する光硬化性材料を塗布し、これを紫外線Lにより硬化させることによって、高分子光導波路を製造してもよい。
【0069】
また、熱重合開始剤を配合したコア材料4を用いて高分子光導波路を製造するにあたっては、以下のようにして行うことができる。まず、既述のエンボス加工等によって、図1(a)に示すようなコア溝2が形成されたクラッド基板3を作製する。次に、図1(b)に示すように、クラッド基板3のコア溝2が形成された側の面にコア材料4を滴下するなどして塗布することによって、コア溝2にコア材料4を充填する。次に、図1(c)に示すように、クラッド基板3においてコア材料4を塗布した側の面に、クラッド基板3と略同一の屈折率を有するフィルム又はクラッド材料1で作製されたフィルム6を被せ、このフィルム6をプレス治具7によってクラッド基板3に押圧することによって、余分なコア材料4をクラッド基板とフィルムとの間から排除する。そしてこの状態でコア材料4が硬化する温度まで加熱し、コア材料4を硬化させてこのコア材料4でコア5を形成することによって、高分子光導波路を製造することができるものである。
【0070】
なお、クラッド基板3にコア材料4を塗布し、コア溝2に充填されていない余分なコア材料4を除去した後に、加熱することによって、まずコア材料4を硬化させてコア5を形成し、次いで、クラッド基板3においてコア5を形成した側の面に、クラッド基板3と略同一の屈折率を有する光硬化性材料又は熱硬化性材料を塗布し、これを紫外線照射により又は加熱することにより硬化させることによって、高分子光導波路を製造してもよい。
【0071】
そして既述の方法を用いて、シングルモードやマルチモードの高分子光導波路(請求項11、12の発明)を製造することができる。すなわち、クラッド基板3を作製する際に、シングルモードに対応する形状(例えば、10×10μm)を有するコア溝2を形成しておき、このコア溝2にコア材料4を充填してこれを硬化させることによって、シングルモードに対応する形状を有するコア5が形成された高分子光導波路を製造することができるものである。一方、クラッド基板3を作製する際に、マルチモードに対応する形状(例えば、50×50μm)を有するコア溝2を形成しておき、このコア溝2にコア材料4を充填してこれを硬化させることによって、マルチモードに対応する形状を有するコア5が形成された高分子光導波路を製造することができるものである。
【0072】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0073】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂からなる材料を用いた。
【0074】
また、上記一般式[化1]([化3])で表されるものとして、A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートを用いると共に、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、B:エチレングリコールジメタクリレート(2官能、脂肪族)、C:ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジアクリレート(2官能、芳香族)、D:ビスフェノールFエチレンオキサイド変性アクリレート(単官能、芳香族)、E:ビス[(2−メタクリロイルチオ)エチル]スルフィド(2官能、チオエーテル類)、F:フェニルチオメタクリレート(単官能、チオエーテル類)を用いた。そしてこれらのものを表1に示す配合割合で配合することによって、7種類のコア材料を調製した。このようにして得たコア材料の屈折率はいずれも硬化後においてクラッド基板の屈折率より0.005高い。以下においてさらに詳細に説明する。
【0075】
(実施例1)
請求項1、3、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0076】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレートをそれぞれ67.6wt%、32.4wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+Bに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0077】
吸収損失は、以下のようにして測定した。まずコア材料に紫外線を照射することによって、厚み(光路長)の異なる成形品を成形した。次に各成形品に波長1310nm、1550nmの近赤外領域の光を透過させ、各光の透過率を分光光度計を用いて測定した。そして、上記の厚みと透過率の関係より傾きを計算し、この傾きを吸収損失とした。結果は1310nmで0.18dB/cm、1550nmで0.58dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0078】
また粘度は、上記のコア材料の溶液から光重合開始剤を除いたものを対象とし、E型粘度計を用いて25℃の雰囲気において測定した。結果は500mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0079】
また線膨張係数は、コア材料に紫外線を照射することによって成形した成形品を対象とし、TMAを用いて30〜85℃における値として測定した。結果は72×10−6/℃であった。
【0080】
また収縮率は、体積既知の容器に硬化前のコア材料を充填し、これに紫外線を照射してコア材料を硬化させ、硬化後のコア材料の体積を水中置換法によって測定し、硬化前後の体積より計算することによって測定した。結果は9vol%であった。クラッド材料がポリメチルメタクリレート(PMMA)である場合に使用される従来のコア材料(エチレングリコールジメタクリレートとテトラフルオロメタクリレートを9:1の重量比で配合したもの)の収縮率が20vol%であるから、本実施例のコア材料は従来のコア材料に比べて硬化収縮を半分以下に抑えられることが判明した。
【0081】
また密着性は、碁盤目テープ剥離試験(JIS K 5400に準拠)を行うことによって測定した。すなわち、まず既述のクラッド材料(ポリカーボネート樹脂からなる材料)を用いてクラッド基板を作製し、次にこのクラッド基板の表面にコア材料の溶液を塗布して、これに紫外線を照射することにより、厚み20μm程度のコア材料の硬化被膜を形成した。そして、この硬化被膜に碁盤目状に切れ目を入れ、テープを張り付けた後に剥がして、硬化被膜が剥離するか否かを観察した。結果は良好であった。
【0082】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0083】
(実施例2)
請求項1、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0084】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、C:ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジアクリレートをそれぞれ41wt%、59wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+Cに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、実施例1と同様にして、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0085】
吸収損失は1310nmで0.21dB/cm、1550nmでは0.66dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0086】
また粘度は1000mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0087】
また線膨張係数は100×10−6/℃であった。
【0088】
また収縮率は8vol%であり、本実施例のコア材料も従来のコア材料に比べて硬化収縮を半分以下に抑えられることが判明した。
【0089】
また密着性は良好であった。
【0090】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0091】
(実施例3)
請求項1、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0092】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、D:ビスフェノールFエチレンオキサイド変性アクリレートをそれぞれ55.5wt%、44.5wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+Dに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、実施例1と同様にして、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0093】
吸収損失は1310nmで0.20dB/cm、1550nmで0.58dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0094】
また粘度の結果は300mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0095】
また線膨張係数は170×10−6/℃であった。
【0096】
また収縮率は12vol%であり、本実施例のコア材料は従来のコア材料に比べて硬化収縮を約半分に抑えられることが判明した。
【0097】
また密着性は良好であった。
【0098】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0099】
(実施例4)
請求項1、3、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0100】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレート、C:ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジアクリレートをそれぞれ58.2wt%、20.9wt%、20.9wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+B+Cに対して1wt%配合することによって、コア材料を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、実施例1と同様にして、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0101】
吸収損失は、1310nmで0.17dB/cm、1550nmで0.57dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0102】
また粘度は700mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0103】
また線膨張係数は78×10−6/℃であった。
【0104】
また収縮率は9vol%であり、本実施例のコア材料も従来のコア材料に比べて硬化収縮を半分以下に抑えられることが判明した。
【0105】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0106】
また密着性は良好であった。
【0107】
(実施例5)
請求項1、3、4〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0108】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレート、E:ビス[(2−メタクリロイルチオ)エチル]スルフィドをそれぞれ33wt%、34wt%、33wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+B+Eに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、実施例1と同様にして、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0109】
吸収損失は1310nmで0.14dB/cm、1550nmで0.65dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0110】
また粘度は100mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0111】
また線膨張係数は70×10−6/℃であった。
【0112】
また収縮率は10vol%であり、本実施例のコア材料は従来のコア材料に比べて硬化収縮を約半分に抑えられることが判明した。
【0113】
また密着性は良好であった。
【0114】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0115】
(実施例6)
請求項1〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0116】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレート、F:フェニルチオメタクリレートをそれぞれ33wt%、34wt%、33wt%の比率でビーカーに混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+B+Fに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、実施例1と同様にして、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0117】
吸収損失は1310nmで0.17dB/cm、1550nmで0.56dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0118】
また粘度は75mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0119】
また線膨張係数は75×10−6/℃であった。
【0120】
また収縮率は9vol%であり、本実施例のコア材料は従来のコア材料に比べて硬化収縮を約半分に抑えられることが判明した。
【0121】
また密着性は良好であった。
【0122】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0123】
(実施例7)
請求項1〜3、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0124】
A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレート、D:ビスフェノールFエチレンオキサイド変性アクリレートをそれぞれ60wt%、11.6wt%、28.4wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+B+Dに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。そして、このようにして得たコア材料について、実施例1と同様にして、吸収損失(伝播損失)、粘度、線膨張係数、収縮率、密着性を測定した。
【0125】
吸収損失は1310nmで0.20dB/cm、1550nmで0.60dB/cmであり、高分子光導波路の製造に使用するのに十分な特性であった。
【0126】
また粘度は200mPa・sであり、コア溝へ充填するのに十分な特性であった。
【0127】
また線膨張係数は85×10−6/℃であった。
【0128】
また収縮率は10vol%であり、本実施例のコア材料は従来のコア材料に比べて硬化収縮を約半分に抑えられることが判明した。
【0129】
また密着性は良好であった。
【0130】
そして、上記のクラッド材料を用いてエンボス加工により、コア溝が形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝に上記のコア材料を充填してコアを形成すると、低損失の高分子光導波路を製造することができた。
【0131】
【表1】
【0132】
次に、実施例1におけるクラッド材料(ポリカーボネート樹脂からなる材料)の吸収損失(伝播損失)を以下のようにして測定した。まず上記のクラッド材料を用いて、厚み(光路長)の異なる成形品を成形した。次に各成形品に波長1310nm、1550nmの近赤外領域の光を透過させ、各光の透過率を分光光度計を用いて測定した。そして、上記の厚みと透過率の関係より傾きを計算し、この傾きを吸収損失とした。結果を表2に示す。
【0133】
(実施例8)
請求項1、3、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0134】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリアリレート樹脂からなる材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、高分子光導波路を製造した。そして、本実施例におけるクラッド材料の吸収損失(伝播損失)を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0135】
(実施例9)
請求項1、3、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0136】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂(フルオレン構造を有するタイプのもの)からなる材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、高分子光導波路を製造した。そして、本実施例におけるクラッド材料の吸収損失(伝播損失)を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0137】
(比較例)
クラッド材料として、芳香族を含まない熱可塑性樹脂であるポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)からなる材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、高分子光導波路を製造した。そして、本比較例におけるクラッド材料の吸収損失(伝播損失)を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
表2にみられるように、芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料を用いた実施例1、8、9は、芳香族を含まない熱可塑性樹脂からなる材料を用いた比較例に比べて、波長1550nmの光についての吸収損失が特に小さいことが確認される。
【0140】
(実施例10)
請求項1、3、5〜7の発明に対応する実施例を示す。
【0141】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂からなる材料を用いて、エンボス加工により、コア溝が形成された厚み2mmのクラッド基板を作製した。
【0142】
また、A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレートをそれぞれ68wt%、32wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを上記A+Bに対して3wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。
【0143】
そして、クラッド基板のコア溝が形成された側の面にコア材料の溶液を塗布した後に、上記と反対側の面から7mW/cm2の強度の紫外線を照射するようにして、紫外線の照射時間とコア材料の重合度との関係を調べた。ここで、紫外線の強度はウシオ電機(株)製の紫外線強度測定器を用いて測定し、コア材料の重合度はFT−IRを用いてC=Cの二重結合の吸収ピークの変化より求めた。その結果、紫外線を30分間照射した後のコア材料の重合度は65%であった。
【0144】
(実施例11)
請求項1、3、5〜8の発明に対応する実施例を示す。
【0145】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂からなる材料を用いて、エンボス加工により、コア溝が形成された厚み2mmのクラッド基板を作製した。
【0146】
また、A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレートをそれぞれ68wt%、32wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+Bに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。
【0147】
そして、クラッド基板のコア溝が形成された側の面にコア材料の溶液を塗布した後に、上記と反対側の面から7mW/cm2の強度の紫外線を照射するようにして、紫外線の照射時間とコア材料の重合度との関係を調べた。ここで、紫外線の強度は実施例9と同様にして測定し、コア材料の重合度も実施例9と同様にして求めた。その結果、紫外線を5分間照射した後のコア材料の重合度は80%であった。
【0148】
なお、実施例10、11においてクラッド基板を作製するのに用いたポリカーボネート樹脂の紫外線透過率を分光光度計で測定した結果、波長365nm、405nmにおいて透過率はそれぞれ5%、80%であった。
【0149】
また、実施例10において光重合開始剤として用いた2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの吸光係数を測定すると、波長365nmにおいて74ml/gcm(メタノール溶液)、波長405nmにおいて吸収はほとんどなかった。
【0150】
また、実施例11において光重合開始剤として用いた2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1の吸光係数を測定すると、波長365nmにおいて7900ml/gcm(メタノール溶液)、波長405nmにおいて93ml/gcm(メタノール溶液)であった。
【0151】
既述のように、実施例10においては紫外線を30分間照射した後のコア材料の重合度は65%であるのに対し、実施例11においては紫外線を5分間照射した後のコア材料の重合度は80%であることから、光重合開始剤として、クラッド基板を透過する光の波長以上の波長を有する光により分解するものを用いた実施例11の方が、実施例10よりも、高分子光導波路の製造に要する時間を短縮できることが確認される。
【0152】
(実施例12)
請求項1、3、5〜11の発明に対応する実施例を示す。
【0153】
本実施例においてはシングルモードの高分子光導波路を以下のようにして製造した。
【0154】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂からなる材料を用いた。
【0155】
また、A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレートをそれぞれ68wt%、32wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+Bに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。このコア材料の屈折率をプリズムカップリング法により測定すると、波長1310nmで1.568、波長1550nmで1.566であった。
【0156】
まず、断面の大きさが6μm×6μmのコアパターンが表面に形成された金型を加熱し、あらかじめ平板状に成形しておいたクラッド材料の表面に上記の金型を押し付けることによって、上記のコアパターンの形状に対応するコア溝が転写により形成されたクラッド基板を作製した。このクラッド基板の屈折率をプリズムカップリング法により測定すると、波長1310nmで1.563、波長1550nmで1.561であった。
【0157】
次に、クラッド基板のコア溝が形成された側の面にコア材料を滴下し、100Pa程度の減圧雰囲気下において、温度60℃に加熱して脱泡を行うことによってコア溝にコア材料を充填した後、常温まで冷却した。
【0158】
そして、クラッド基板のコア材料を充填した側の面に厚み100μmのポリカーボネート樹脂製フィルムを配置し、このフィルムをクラッド基板に押圧しながら上記と反対側の面から波長405nm、強度10mW/cm2の紫外線を紫外線照射装置により照射してコアを形成することによって、シングルモードの高分子光導波路を製造した。このようにして得たシングルモードの高分子光導波路の吸収損失は波長1310nmで0.3dB/cm、波長1550nmで0.6dB/cmであった。
【0159】
(実施例13)
請求項1、3、4〜10、12の発明に対応する実施例を示す。
【0160】
本実施例においてはマルチモードの高分子光導波路を以下のようにして製造した。
【0161】
クラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂からなる材料を用いた。
【0162】
また、A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、B:エチレングリコールジメタクリレート、E:ビス[(2−メタクリロイルチオ)エチル]スルフィドをそれぞれ60.3wt%、13.9wt%、25.8wt%の比率でビーカーに採取し、これを混合した後に、光重合開始剤である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を上記A+B+Eに対して1wt%配合することによって、コア材料の溶液を調製した。このコア材料の屈折率をプリズムカップリング法(測定装置:メトリコン社製モデル2010屈折率測定装置)により測定すると、波長850nmで1.600であった。
【0163】
まず、断面の大きさが65μm×65μmのコアパターンが表面に形成された金型を加熱し、あらかじめ平板状に成形しておいたクラッド材料の表面に上記の金型を押し付けることによって、上記のコアパターンの形状に対応するコア溝が転写により形成されたクラッド基板を作製した。このクラッド基板の屈折率をプリズムカップリング法により測定すると、波長850nmで1.573であった。
【0164】
次に、クラッド基板のコア溝が形成された側の面にコア材料を滴下し、100Pa程度の減圧雰囲気下において、温度60℃に加熱して脱泡を行うことによってコア溝にコア材料を充填した後、常温まで冷却した。
【0165】
そして、クラッド基板のコア材料を充填した側と反対側の面から紫外線を数秒間照射することによってコア材料を半硬化させた後、クラッド基板のコア材料を充填した側の面に厚み100μmのポリカーボネート樹脂製フィルムを配置し、このフィルムをクラッド基板に押圧しながらクラッド基板のコア材料を充填した側と反対側の面から波長405nm、強度10mW/cm2の紫外線を紫外線照射装置により照射してコアを形成することによって、マルチモードの高分子光導波路を製造した。このようにして得たマルチモードの高分子光導波路の吸収損失は波長850nmで0.1dB/cmであった。
【0166】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係る高分子光導波路は、クラッド基板に形成されたコア溝にコア材料を充填してコアを形成することによって製造される高分子光導波路において、クラッド基板を作製するためのクラッド材料として、芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料を用いるので、光通信に使用される領域(通信帯域)や近赤外領域における光の吸収損失が小さいクラッド基板を作製することができ、このクラッド基板を用いることによって、低損失の高分子光導波路を製造することができるものである。また、コア材料として、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと上記一般式[化1]([化3])で表されるものとからなる材料を用いるので、以下のような効果を得ることができる。すなわち、クラッド基板に形成されたコア溝への充填性を高く得ることができ、コア溝に形成されたコアの内部に気泡が残りにくくなり、不良品の発生を低減することができる。また、コアの光学異方性を小さくすることができる。また、コアの耐熱性を高めることができる。また、通信帯域や近赤外領域の光の吸収損失を小さくすることができる。また、コア材料の熱硬化時の収縮率を小さくすることができ、これにより硬化後のコア材料はコアパターンの形状に対応するコアを正確に形成することができる。また、コアの線膨張係数を小さくすることができ、これにより高分子光導波路の使用時において熱負荷がかかっても、コアとクラッド基板との膨張差が小さいためこれらの界面に剥離が発生せず、信頼性を高めることができる。また、コア材料の浸透性を小さくすることができ、コア材料をクラッド基板に形成されたコア溝に充填する際に、クラッド材料(芳香族を含む熱可塑性樹脂からなる材料)がコア材料によって溶解されにくく、初期に設計したコアの形状とほぼ同一のコアを形成することができ、コアに光を十分に閉じ込め、低損失の高分子光導波路を製造することができる。また、コア材料と芳香族を含む熱可塑性樹脂との接着性を高めることができ、高分子光導波路の長期安定性を高く得ることができる。
【0167】
また請求項2の発明は、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を1個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものとを併用するので、屈折率を容易に調整することができると共に、コア材料の低粘度化を図ることができるものである。そしてコア材料の粘度が低下すると、クラッド基板に形成されたコア溝にコア材料を充填する作業を簡便に行うことができると共に、気泡の巻き込みがさらに抑制され、コア材料のコア溝への充填性をさらに高く得ることができるものである。
【0168】
また請求項3の発明は、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、脂肪族メタクリレート系化合物及び脂肪族アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いるので、芳香族メタクリレート系化合物及び芳香族アクリレート系化合物のみを用いる場合よりも、コア材料の低粘度化を図ることができると共に、コアとクラッド基板との線膨張係数の差を小さくすることができるものである。そして上記のようにコア材料の粘度が低下すると、クラッド基板に形成されたコア溝にコア材料を充填する際に気泡の巻き込みがさらに抑制され、コア材料のコア溝への充填性をさらに高く得ることができるものであり、また、コアとクラッド基板との線膨張係数の差が小さくなると、高分子光導波路を高温下に放置してもコアとクラッド基板との界面に剥離が発生しにくくなり、低損失を長期にわたって維持することができ、信頼性を向上させることができるものである。
【0169】
また請求項4の発明は、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、さらに、チオエーテル類メタクリレート系化合物及びチオエーテル類アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いるので、脂肪族のもののみを用いる場合よりも、コア材料の低粘度化を図ることができ、クラッド基板に形成されたコア溝にコア材料を充填する際に気泡の巻き込みがさらに抑制され、コア材料のコア溝への充填性をさらに高く得ることができるものである。
【0170】
また請求項5の発明は、上記一般式[化1]([化3])で表されるものとして、上記一般式[化2]([化4])で表されるビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートを用いるので、通信帯域や近赤外領域の光の吸収損失をさらに小さくすることができ、さらに低損失の高分子光導波路を製造することができるものである。
【0171】
また請求項6の発明は、芳香族を含む熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂から選ばれるものを用いるので、これらの樹脂以外の樹脂からなる材料をクラッド材料として用いるよりも、吸収損失が小さいクラッド基板を作製することができ、低損失の高分子光導波路を製造することができるものである。
【0172】
また請求項7の発明は、コア材料にラジカル重合開始剤である光重合開始剤を配合するので、コア材料を硬化させるために熱を付与する必要はなく、紫外線等の光の照射により低温度でコア材料を重合させて硬化させることが可能となる。そうすると、クラッド基板とコアとの界面に応力が発生しにくくなるので、クラッド基板とコアとの界面に剥離が発生しにくくなり、また上記界面における残留応力が低減することによって、高分子光導波路の初期特性が維持されると共に環境負荷による特性低下を防止することが可能となるものである。
【0173】
また請求項8の発明は、光重合開始剤として、クラッド基板を透過する光の波長以上の波長を有する光により分解するものを用いるので、クラッド基板を透過する光によって光重合開始剤を分解することができ、これによりコア材料の硬化を速め、コア材料の硬化に要する時間を短縮することができるものである。そしてこのようにしてコア材料を十分に硬化させることができるため、後工程における熱履歴や使用環境下での熱履歴によってコアの硬化収縮が発生するようなことがなくなり、高分子光導波路の特性変化を十分に抑えることが可能となるものである。
【0174】
本発明の請求項9に係る高分子光導波路の製造方法は、光導波路のコアパターンが表面に形成された金型をクラッド材料に押し付けることによって、コアパターンの形状に対応するコア溝が転写により形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝にコア材料を充填してコアを形成することによって高分子光導波路を製造する方法において、クラッド材料及びコア材料としてそれぞれ請求項1乃至8のいずれかに記載のクラッド材料及びコア材料を用いると共に、クラッド基板とコア材料のいずれか一方又は両方を加熱した状態でクラッド基板にコア材料を塗布するので、加熱によりコア材料の粘度が低下することによって、容易かつ短時間にコア材料をコア溝に充填することができ、充填時にコア材料が気泡を巻き込みにくくなると共に、高分子光導波路の製造に要する時間も短縮化することができるものである。
【0175】
また請求項10の発明は、クラッド基板にコア材料を塗布した後に脱泡するので、コア溝へのコア材料の充填をより短時間で行うことができると共に、コア材料の内部の微細な気泡をも除去することができ、光の散乱損失を低減することが可能となる。
【0176】
また請求項11の発明は、コアの形状がシングルモードに対応する形状であるので、量産性に優れ、低コストであり、各種特性に優れたシングルモードの高分子光導波路を製造することができるものである。
【0177】
また請求項12の発明は、コアの形状がマルチモードに対応する形状であるので、量産性に優れ、低コストであり、各種特性に優れたマルチモードの高分子光導波路を製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)〜(d)は断面図である。
【図2】高分子光導波路の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 クラッド材料
2 コア溝
3 クラッド基板
4 コア材料
5 コア
Claims (12)
- 1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものと、1分子内にラジカル重合可能な二重結合を1個有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものとを併用することを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路。
- 1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、脂肪族メタクリレート系化合物及び脂肪族アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子光導波路。
- 1分子内にラジカル重合可能な二重結合を有するメタクリレート系化合物及びアクリレート系化合物として、さらに、チオエーテル類メタクリレート系化合物及びチオエーテル類アクリレート系化合物のうち少なくとも1種類のものを用いることを特徴とする請求項3に記載の高分子光導波路。
- 芳香族を含む熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂から選ばれるものを用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の高分子光導波路。
- コア材料にラジカル重合開始剤である光重合開始剤を配合することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の高分子光導波路。
- 光重合開始剤として、クラッド基板を透過する光の波長以上の波長を有する光により分解するものを用いることを特徴とする請求項7に記載の高分子光導波路。
- 光導波路のコアパターンが表面に形成された金型をクラッド材料に押し付けることによって、コアパターンの形状に対応するコア溝が転写により形成されたクラッド基板を作製し、このクラッド基板のコア溝にコア材料を充填してコアを形成することによって高分子光導波路を製造する方法において、クラッド材料及びコア材料としてそれぞれ請求項1乃至8のいずれかに記載のクラッド材料及びコア材料を用いると共に、クラッド基板とコア材料のいずれか一方又は両方を加熱した状態でクラッド基板にコア材料を塗布することによって、クラッド基板のコア溝にコア材料を充填することを特徴とする高分子光導波路の製造方法。
- クラッド基板にコア材料を塗布した後に脱泡することを特徴とする請求項9に記載の高分子光導波路の製造方法。
- コアの形状がシングルモードに対応する形状であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の高分子光導波路。
- コアの形状がマルチモードに対応する形状であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の高分子光導波路。
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