JP2004292667A - ゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】押出物の寸法安定性に優れ硬度が高く反発弾性の大きいゴルフボールに好適なゴム組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】コバルト系触媒を用いて合成されたムーニー粘度30〜42で且つ分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が2.5〜3.8のハイシスポリブタジエンを含むベースポリマー100重量部に対し、共架橋剤を10〜50重量部を配合してなることを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、適度な硬度で高反発性を維持しつつ加工性に優れたゴルフボール用ゴム組成物に関するもので、タイヤにおけるトレッド・サイドウォール等のタイヤ外部部材やカーカス・ベルト・ビード等のタイヤ内部部材および防振ゴム・ベルト・ホース・免震ゴム等の工業用品や紳士靴、婦人靴、スポーツシューズ等の履物などにも用いる事ができる。
【0002】
【従来の技術】
ポリブタジエンは、いわゆるミクロ構造として、1,4−位での重合で生成した結合部分(1,4−構造)と1,2−位での重合で生成した結合部分(1,2−構造)とが分子鎖中に共存する。1,4−構造は、更にシス構造とトランス構造の二種に分けられる。一方、1,2−構造は、ビニル基を側鎖とする構造をとる。
【0003】
重合触媒や重合条件によって、上記のミクロ構造が異なったポリブタジエンが製造されることが知られており、それらの特性によって種々の用途に使用されている。
【0004】
特に、分子量分布が比較的狭く、分子のリニアリティ(線状性)の高いハイシスポリブタジエンは、耐摩耗性、耐発熱性、反発弾性の優れた特性を有する。分子量分布が同程度であるハイシスポリブタジエンのリニアリティの指標としては、Tcp/ML が用いられる。Tcpは、濃厚溶液中での分子の絡合いの程度を示し、Tcp/ML が大きい程、分岐度は小さく線状性は大きい。
【0005】
ゴルフボールは糸巻きとソリッドに分類され、糸巻きボールのソリッドセンターやソリッドボールでは従来ポリブタジエン等の基材ゴムに不飽和カルボン酸金属塩などの不飽和結合を有するモノマーを共架橋剤として配合し、過酸化物および金属酸化物を配合したものが用いられている。
ゴルフボールの基材ゴムとして使用されるポリブタジエンゴムは、一般に高反発性と共に加工性の優れたものが要求されているが、ムーニー粘度を高くすると反発性は向上するが加工性が悪化し、分子量分布を広げると加工性は向上するが反発性が低下するという二律背反の関係にある。
【0006】
加工性と反発性とを両立させることを目的として、ポリブタジエンゴムの改良が試みられ種々の提案がなされている。例えば特開昭63−275356号公報(特許文献1)、特開平2−177973号公報(特許文献2)などには、高ムーニー粘度で分子量分布の広いNi系触媒等で合成されたポリブタジエンゴムが開示されている。特公平6−80123号公報(特許文献3)には、低ムーニー粘度のポリブタジエンゴムと高ムーニー粘度のポリブタジエンゴムをブレンド使用する方法等が開示されている。しかしながら更に高反発性を有し且つ加工性に優れたものが要望されている。
【0007】
また、ゴルフボール用のゴム基材として、シス含量が97%以上のポリブタジエンゴムを錫化合物で変性したものを用いることが、特開平7−268132号公報(特許文献4)に開示されている。
しかしながら、従来のハイシスポリブタジエンに較べて、架橋密度において変わらない、さらに耐久性の改良が望まれるところがあった。
【0008】
また、本発明者らによる特開平2001−40040号公報(特許文献5)には、1,2−含量を適度に含有するポリブタジエンが飛行距離が大きいゴルフボールとして開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開昭63−275356号公報
【特許文献2】
特開平2−177973号公報
【特許文献3】
特公平6−80123号公報
【特許文献4】
特開平7−268132号公報
【特許文献5】
特開平2001−40040号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
硬度や高反発性を維持しつつロール加工性に優れたゴルフボールに好適なゴム組成物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、コバルト系触媒を用いて合成されたムーニー粘度30〜42で且つ分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が2.5〜3.8のハイシスポリブタジエンを含むベースポリマー100重量部に対し、共架橋剤を10〜50重量部を配合してなることを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物に関する。
【0012】
また、該ハイシスポリブタジエンの5%トルエン溶液粘度(Tcp)とムーニー粘度(ML)の比(Tcp/ML)が2.0〜5.0であることが好ましい。
【0013】
該ハイシスポリブタジエンの重量平均分子量(Mw)が40万〜54万、数平均分子量(Mn)が10万〜25万であることが好ましい。
【0014】
該ハイシスポリブタジエンのシス1.4含有量が95%以上であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のポリブタジエンは、下記の特性を有する。
ムーニー粘度は、30〜42、好ましくは35〜40である。ムーニー粘度が上記範囲より大きいと、ロール加工性が低下し、上記範囲より小さいと反発弾性が低くなる場合があり好ましくない。
【0016】
分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、2.5〜3.8、好ましくは、2.6〜3.5である、より好ましくは 2.6〜3.2である。分子量分布が上記範囲より大きいと、反発弾性が低下し、上記範囲より小さいとロール加工性が悪くなる場合があり好ましくない。
【0017】
5%トルエン溶液粘度(Tcp)とムーニー粘度(ML)の比(Tcp/ML)が2.0〜5.0で好ましくは、2.0〜4.0である、より好ましくは2.1〜3.5である。
Tcp/ML比が上記範囲より大きいと、素ゴムのコールドフロー性が大きくなり、上記範囲より小さいと反発弾性が低くなり好ましくない。
【0018】
シス1.4含有量が95%以上であることが好ましく、97%以上が特に好ましい。シス1.4含有量が上記以下であると反発弾性が低下するので好ましくない。
【0019】
上記のポリブタジエンは、コバルト系触媒により製造することができる。コバルト系触媒組成物としては、(A)コバルト化合物、(B)ハロゲン含有有機アルミニウム化合物、及び(C)水からなる触媒系をあげることができる。
【0020】
コバルト化合物としては、コバルトの塩や錯体が好ましく用いられる。特に好ましいものは、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、オクチル酸(エチルヘキサン酸)コバルト、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト、マロン酸コバルト等のコバルト塩や、コバルトのビスアセチルアセトネートやトリスアセチルアセトネート、アセト酢酸エチルエステルコバルト、コバルト塩のピリジン錯体やピコリン錯体等の有機塩基錯体、もしくはエチルアルコール錯体などが挙げられる。
【0021】
ハロゲン含有機アルミニウムとしては、トリアルキルアルミニウムやジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイド、アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイド、アルキルアルミニウムジクロライド等をあげることができる。
【0022】
具体的な化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムを挙げることができる。
【0023】
さらに、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのような有機アルミニウムハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドのような水素化有機アルミニウム化合物も含まれる。これらの有機アルミニウム化合物は、二種類以上併用することができる。
【0024】
(A)成分と(B)成分とのモル比(B)/(A)は、好ましくは0.1〜5000、より好ましくは1〜2000である。
【0025】
(B)成分と(C)成分とのモル比(B)/(C)は、好ましくは0.7〜5であり、特に好ましくは0.8〜4であり、さらに特に好ましくは1〜3である。
【0026】
ブタジエンモノマ−以外にイソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3− ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン、2,4−ヘキサジエンなどの共役ジエン、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ブテン−2、イソブテン、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等の非環状モノオレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状モノオレフィン、及び/又はスチレンやα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,5−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン等を少量含んでいてもよい。
【0027】
重合方法は、特に制限はなく、1,3−ブタジエンなどの共役ジエン化合物モノマ−そのものを重合溶媒とする塊状重合(バルク重合)、又は溶液重合などを適用できる。溶液重合での溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、上記のオレフィン化合物やシス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素系溶媒、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0028】
中でも、トルエン、シクロヘキサン、あるいは、シス−2−ブテンとトランス−2−ブテンとの混合物などが好適に用いられる。
【0029】
重合温度は−30〜150℃の範囲が好ましく、30〜100℃の範囲が特に好ましい。重合時間は1分〜12時間の範囲が好ましく、5分〜5時間が特に好ましい。
【0030】
所定時間重合を行った後、重合槽内部を必要に応じて放圧し、洗浄、乾燥工程等の後処理を行う。
【0031】
ゴム組成物に配合される共架橋剤は、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の1価または2価の金属塩であることが好ましく、その具体例としては、たとえばジアクリル酸亜鉛、塩基性メタクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛などが挙げられる。これらのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩は、そのままで基材ゴムなどと混合する通常の方法以外に、あらかじめ酸化亜鉛などの金属酸化物を練り混んだゴム組成物中にアクリル酸、メタクリル酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸を添加し練り混んでゴム組成物中でα,β−エチレン性不飽和カルボン酸と金属酸化物とを反応させて、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩としたものであってもよい。
【0032】
上記共架橋剤の配合量は、基材ゴム100重量部に対して10〜50重量部であることが好ましい。共架橋剤の配合量が上記範囲より少ない場合は、架橋が充分に進行せず、その結果、反撥性能が低下して、飛距離が小さくなり、耐久性も悪くなる。また、共架橋剤の配合量が上記範囲より多くなると、コンプレッションが大きくなりすぎるため打球感が悪くなる。
【0033】
本発明において、ゴム質部分を構成することになるゴム組成物には、上記の共架橋剤以外にも、パーオキサイド類が必須成分として配合されることが好ましい。
【0034】
このパーオキサイド類は、ゴムおよび共架橋剤の架橋、グラフト、重合などの開始剤として作用する。このパーオキサイド類の好適な具体例としては、たとえばジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0035】
このパーオキサイド類の配合量は、基材ゴム100重量部に対して0.2〜5重量部が好ましい。ハーオキサイド類の配合量が上記範囲より少ない場合は、架橋などを充分に進行させることができず、その結果、反撥性能が低下して、飛距離が小さくなり、耐久性も悪くなる。また、パーオキサイド類の配合量が上記範囲より多くなると、オーバーキュアー(過架橋)となって脆くなるため、耐久性が悪くなる。
【0036】
上記ゴム組成物には、共架橋剤がジアクリル酸亜鉛やジメタクリル酸亜鉛の場合に架橋助剤としても作用する酸化亜鉛を配合してもよいし、さらに必要に応じて、硫酸バリウムなどの充填剤、酸化防止剤、ステアリン酸亜鉛などの添加剤などを配合しても良い。
【0037】
【実施例】
以下に本発明に基づく実施例について具体的に記載する。
【0038】
ミクロ構造は赤外吸収スペクトル分析によって行った。シス740cm−1、トランス967cm−1、ビニル910cm−1の吸収強度比からミクロ構造を算出した。
【0039】
分子量(Mw,Mn)は、GPC法:HLC−8220(東ソー社製)で測定し、標準ポリスチレン換算により算出した。
【0040】
トルエン溶液粘度(Tcp)は、ポリマー2.28gをトルエン50mlに溶解した後、標準液として粘度計校正用標準液(JIS Z8809)を用い、キャノンフェンスケ粘度計No.400を使用して、25℃で測定した。
【0041】
素ゴム、配合物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、JIS6300に準拠して測定した。
【0042】
ロール加工性は、50℃の6インチロールに配合物を巻付け、その巻付き状態を目視で観察して判定した。
【0043】
硬度は、JIS−K6253に規定されている測定法に従って、デュロメーター式(タイプD)で測定した。
【0044】
引張強度は、JIS−K6251に規定されている測定法に従って、3号ダンベルで引張速度500mm/minで測定した。
【0045】
反発弾性は、JIS−K6251に規定されている測定法に従って、トリプソ式で測定した。
【0046】
(実施例1〜2、比較例1〜3)
表1に示すポリブタジエンを用いて、ゴム組成物を製造した。表2に条件及び結果を示した。
【0047】
【表1】
Figure 2004292667
【0048】
【表2】
Figure 2004292667
【0049】
【発明の効果】
本発明におけるゴム組成物は、特定のハイシスポリブタジエン及び共架橋剤で構成されており、適度な硬度で高反発性を維持しつつ加工性に優れたゴルフボールに好適なゴム組成物が提供される。

Claims (4)

  1. コバルト系触媒を用いて合成されたムーニー粘度30〜42で且つ分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が2.5〜3.8のハイシスポリブタジエンを含むベースポリマー100重量部に対し、共架橋剤を10〜50重量部を配合してなることを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物。
  2. 該ハイシスポリブタジエンの5%トルエン溶液粘度(Tcp)とムーニー粘度(ML)の比(Tcp/ML)が2.0〜5.0であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール用ゴム組成物。
  3. 該ハイシスポリブタジエンの重量平均分子量(Mw)が40万〜54万、数平均分子量(Mn)が10万〜25万であることを特徴とする請求項1〜2に記載のゴルフボール用ゴム組成物。
  4. 該ハイシスポリブタジエンのシス1.4含有量が95%以上であることを特徴とする請求項1〜3に記載のゴルフボール用ゴム組成物。
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