JP2004291846A - 車両用操舵装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】転舵軸駆動モータへ専用電源からモータ駆動用電力を安定して供給でき、仮にその専用電源に電圧降下等の異常が発生した場合でも、十分なバックアップ機能を有する車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】車両(車両用操舵装置1)には複数の電源を有する電源部40が備えられている。電源部40は、転舵軸駆動モータ6にモータ駆動用電力を常時供給する操舵装置用電源41と、転舵軸駆動モータ6を除く車両用電装品(例えばランプ、メータ類等)に電力を常時供給する車両用電源42とを有している。操舵制御部20において、操舵装置用電源41とバックアップ用電源としての車両用電源42とは、転舵軸駆動モータ6を回転駆動するモータ駆動回路Pに対して択一的にモータ駆動用電力を供給できるように並列配置されている。
【選択図】 図2
【解決手段】車両(車両用操舵装置1)には複数の電源を有する電源部40が備えられている。電源部40は、転舵軸駆動モータ6にモータ駆動用電力を常時供給する操舵装置用電源41と、転舵軸駆動モータ6を除く車両用電装品(例えばランプ、メータ類等)に電力を常時供給する車両用電源42とを有している。操舵制御部20において、操舵装置用電源41とバックアップ用電源としての車両用電源42とは、転舵軸駆動モータ6を回転駆動するモータ駆動回路Pに対して択一的にモータ駆動用電力を供給できるように並列配置されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車等の車両用操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用操舵装置、特に自動車の操舵装置において、パワーステアリング装置が広く一般に普及している(特許文献1,2参照)。また、車両用操舵装置の他の例として、ハンドル軸と車輪転舵軸とが機械的に連結されず操舵制御部を介して電気的に接続されたステアバイワイヤ(Steer By Wire)方式が知られている(特許文献3参照)。これら車両用操舵装置の操舵制御部においては、操舵用のハンドル軸に与えられる操舵トルクや操舵角といった操舵入力に応じて車輪転舵軸に与えるべきアシストトルクや転舵角といった転舵出力を決定し、その転舵出力が車輪転舵軸に与えられるように転舵軸駆動モータの回転を制御する方式が採用されている。
【0003】
ところで、上記したような車両用操舵装置において、従来では、転舵軸駆動モータへのモータ駆動用電力の供給と、転舵軸駆動モータを除く車両用電装品等への電力の供給とは共通の電源から行われ、その共通の電源の電圧降下に備えて共通の予備電源(バックアップ用電源)が設けられていた。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−168597号公報
【特許文献2】
特開2001−341656号公報
【特許文献3】
特開2001−88727号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一般に転舵軸駆動モータの電力消費量は大きいため、共通電源の電圧降下が発生しやすく、その際共通予備電源に切り換えられて一旦は電力の供給が回復したとしても再び共通予備電源での電圧降下を発生する可能性が高い。このような事態を回避するには、共通電源及び共通予備電源を大容量に構成しなければならず、車両重量の増加や車体の大型化を招来し、省エネルギーにも逆行することになる。そして、共通予備電源でも電圧降下を発生した場合には、共通電源・共通予備電源ともに転舵軸駆動モータ及び車両用電装品等への電力の供給ができなくなるおそれがある。特に、上記したステアバイワイヤ方式では、ハンドル軸と車輪転舵軸とが機械的に連結されていないため、転舵軸駆動モータへの電力の供給が途絶えると操舵制御不能の状態を惹き起こすおそれがある。また、電源の異常としては上述した電圧降下の他に、断線等がある。
【0006】
本発明の課題は、転舵軸駆動モータへ専用電源からモータ駆動用電力を安定して供給でき、仮にその専用電源に電圧降下等の異常が発生した場合でも、十分なバックアップ機能を有する車両用操舵装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記の課題を解決するために、本発明の車両用操舵装置は、
操舵用のハンドル軸に与えられる操舵入力に応じて車輪転舵軸に与えるべき転舵出力を決定し、その転舵出力が得られるように転舵軸駆動モータの回転を制御して前記車輪転舵軸を移動させる操舵制御部を有する車両用操舵装置において、
前記車両には複数の電源が装備され、
それら複数の電源には、前記転舵軸駆動モータにモータ駆動用電力を供給する操舵装置用電源と、前記転舵軸駆動モータを除く車両用電装品に電力を供給する車両用電源とを少なくとも含むことを特徴とする。
【0008】
この車両用操舵装置によれば、通常時、転舵軸駆動モータは操舵装置用電源を専用電源としてモータ駆動用電力を供給される。したがって、操舵装置用電源の容量を転舵軸駆動モータに合わせて選定でき、モータ駆動用電力を安定して供給できる。また、その結果、車両用電装品等への電力供給も安定し、いずれの電源においても電圧降下を発生しにくくなる。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、本発明の車両用操舵装置は、
操舵用のハンドル軸に与えられる操舵入力に応じて車輪転舵軸に与えるべき転舵出力を決定し、その転舵出力が得られるように転舵軸駆動モータの回転を制御して前記車輪転舵軸を移動させる操舵制御部を有する車両用操舵装置において、
前記車両には複数の電源が装備され、
それら複数の電源には、前記転舵軸駆動モータにモータ駆動用電力を供給する操舵装置用電源と、前記転舵軸駆動モータを除く車両用電装品に電力を供給する車両用電源とを少なくとも含み、
前記操舵装置用電源と前記車両用電源とは、いずれか一方の電源に異常が生じた際、他方の電源が一方の電源に代わって電力供給を受け持つバックアップ機能を相互に有することを特徴とする。
【0010】
このような車両用操舵装置においても、上記したと同様に、転舵軸駆動モータへのモータ駆動用電力の供給、車両用電装品等への電力供給ともに安定して行なえる。さらに、操舵装置用電源と車両用電源とによるこれらの電力供給の際、仮にいずれか一方の電源に異常が生じても、他方の電源をバックアップ用電源として使用できるので、転舵軸駆動モータ・車両用電装品等への電力供給を途絶えさせることがない。したがって、ステアバイワイヤ方式の車両用操舵装置においても、操舵不能状態を回避することができる。
【0011】
例えば、操舵装置用電源と車両用電源とを、転舵軸駆動モータを回転駆動するモータ駆動回路に対して択一的にモータ駆動用電力を供給できるように並列配置し、モータ駆動回路に接続された操舵装置用電源が所定値以下に電圧降下したとき、モータ駆動回路の電源を操舵装置用電源から車両用電源に切り換えればよい。このように、所定の閾値を設定しておくだけで上記したバックアップ機能を比較的簡単に付与することができる。なお、電源切換手段として電磁リレーの接点切換等を用いることができる。
【0012】
そして、モータ駆動回路に接続された操舵装置用電源に異常が生じた際モータ駆動回路と切断され、車両用電源が地絡及び電圧降下していないことを確認した後に、モータ駆動回路の電源を操舵装置用電源から車両用電源に切り換えることができる。これによって、操舵装置用電源に異常が生じた際、バックアップ用電源としての車両用電源が地絡及び電圧降下していないことの確認後に操舵装置用電源から車両用電源に切り換えられるので、電源ショートにより両電源ともに電圧低下を起こす事態が避けられる。なお、地絡及び電圧降下していないことの確認方法として、操舵装置用電源から車両用電源への切り換えまでにタイムラグを設ける方法や、車両用電源の電圧値(及び/又は電流値)の変化を監視する方法等を採用できる。
【0013】
ところで、これらの車両用操舵装置において、操舵制御部が各々にCPUを搭載した少なくとも一つの制御ユニットを有し、制御ユニットには、転舵軸駆動モータの回転を制御するモータ制御用電力が複数の電源のいずれからでも供給可能とされていることが望ましい。モータ制御用電力は操舵制御部での信号処理に関するものであり、一般的にモータ駆動用電力に比較して低電力(低電圧)でよい(例えば、モータ駆動用電力のDC12Vに対してモータ制御用電力はDC5V)が、電力の供給が一時的にでも途絶えると操舵制御が不安定となったり、地絡を確認できなくなるといった事態を招くおそれがある。操舵制御部の制御ユニットの電源を複数の電源のいずれからでも供給可能としておくことにより、このような事態を防止できる。
【0014】
さらに、操舵制御部を複数有するとともに、各操舵制御部毎に車輪転舵軸を移動する転舵軸駆動モータが装備される場合にも、各操舵制御部の制御ユニットには、転舵軸駆動モータの回転を制御するモータ制御用電力が複数の電源のいずれからでも供給可能とされていることが望ましい。操舵制御部が複数の制御ユニットと複数の転舵軸駆動モータとを有する場合でも、上記の場合と同様に各制御系の電源を複数の電源のいずれからでも供給可能としておくことにより、安定した操舵制御が保障される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
図1は、本発明が適用される車両用操舵装置の一例としてのステアバイワイヤ方式操舵装置の全体構成を模式的に示したものである(なお、本実施形態において「車両」は自動車とするが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない)。この車両用操舵装置1は、操舵用ハンドル2に直結されたハンドル軸3と、車輪転舵軸11とが機械的に分離されたステアバイワイヤ方式に構成されている。車輪転舵軸11には、転舵軸駆動モータ(以下、単にモータともいう)6及び減速機構12が同軸状に組み付けられている。これにより、モータ6の回転が減速機構12を介して車輪転舵軸11に伝達され、車輪転舵軸11が軸線方向に往復動し、車輪13,13の転舵角が変化する。
【0016】
ハンドル軸3の角度位置φは、ロータリエンコーダ等の周知の角度検出部からなるハンドル軸角度検出部14により操舵角(操舵入力)として検出される。一方、同じくロータリエンコーダ等からなるモータ角度位置検出部15によりモータ6の回転角度位置θが転舵角(転舵出力)として検出される。そして、操舵制御部20が、検出されたハンドル軸3の角度位置φに基づいて、モータ6の目標回転角度位置θ’を決定し、モータ6の回転角度位置θが目標回転角度位置θ’に近づくように、モータ6の動作を制御する。
【0017】
図2は、車両用操舵装置1のブロック図である。車両(車両用操舵装置1)には複数の電源を有する電源部40が備えられている。この実施例では、電源部40は、モータ6にモータ駆動用電力を常時供給する操舵装置用電源41と、モータ6を除く車両用電装品(例えばランプ、メータ類等)に電力を常時供給する車両用電源42とを有している。操舵制御部20において、操舵装置用電源41とバックアップ用電源としての車両用電源42とは、モータ6を回転駆動するモータ駆動回路Pに対して択一的にモータ駆動用電力を供給できるように並列配置されている。
【0018】
具体的には、操舵装置用電源41と車両用電源42とは操舵制御部20の切換手段5(切換回路)を介してモータ駆動回路Pに択一的に接続されるとともに、モータ駆動回路Pは電源フィルタ22を経てモータ6のドライバ18に接続されている。切換手段5は、モータ駆動回路Pに常時接続された操舵装置用電源41が所定値(閾値)以下に電圧降下したとき、操舵装置用電源41をモータ駆動回路Pと切断し、車両用電源42が地絡していないことを確認した後に、モータ駆動回路Pの電源を操舵装置用電源41から車両用電源42に切り換えるものである。
【0019】
同様に、操舵装置用電源41と車両用電源42とは車両用供給部30の切換手段5’を介して車両駆動回路P’に択一的に接続されるとともに、車両駆動回路P’は電源フィルタ32を経てランプ、メータ類等の車両用電装品(図示せず)に接続されている。切換手段5’は、車両駆動回路P’に常時接続された車両用電源42が所定値(閾値)以下に電圧降下したとき、車両用電源42を、車両駆動回路P’と切断し、操舵装置用電源41が地絡していないことを確認した後に、車両駆動回路P’の電源を車両用電源42から操舵装置用電源41に切り換えるものである。
【0020】
この他、操舵制御部20には、CPU23、RAM24、ROM25、入出力インターフェース26等を有し、これらをバス27により送受信可能に接続した制御ユニット200を備えている。また、操舵装置用電源41と車両用電源42とは各々常閉スイッチ29,29及び逆流防止用ダイオード21,21を介して点Aで接続されて電圧調整手段28に入力される。その後、電圧調整手段28によって電圧コントロール(例えば、DC+12V→DC+5Vに変換)された電圧がモータ制御回路Cを通り、制御ユニット200に入力される。そして、操舵装置用電源41と車両用電源42とは、操舵軸駆動モータ6の回転を制御するモータ制御回路Cに対して常時モータ制御用電力を供給できるように並列接続されている。
【0021】
なお、入出力インターフェース26には、ハンドル軸角度検出部14の角度位置φ、モータ角度位置検出部15の回転角度位置θ、切換手段5(モータ駆動回路P)の電圧値V(後述)等が入力される。一方、入出力インターフェース26からは、ドライバ18に対するモータ6の回転制御指令、切換手段5に対する切換制御指令(後述)等が出力される。
【0022】
図3により、切換手段5によるモータ駆動回路Pに接続する電源回路の切換方法について詳述する。モータ駆動回路Pに接続された操舵装置用電源41が所定値(閾値;図3(c)参照)以下に電圧降下したとき、切換手段5は、操舵装置用電源41をモータ駆動回路Pと切断し、その所定時間(遅延時間;図3(c)参照)経過後に、モータ駆動回路Pの電源を操舵装置用電源41から車両用電源42に切り換える。
【0023】
具体的には、切換手段5(切換回路)は、モータ駆動回路Pの電圧を監視する電圧モニタ5aと、電磁リレー5b(R;リレー)とリレードライバ5xとの直列回路及びタイマリレー5c(TLR;限時リレー;オンディレイタイマ)とタイマリレードライバ5yとの直列回路とを有している。電磁リレー5b(R)及びタイマリレー5c(TLR)には、モータ制御回路Cの電圧調整前の電位(例えばDC+12V)が上記した接続点A(図2参照)より与えられている。電磁リレー5b(R)に連動する常閉接点5d(R−b)が操舵装置用電源41に接続された回路に設けられる。一方、タイマリレー5c(TLR)に連動する常開接点5e(TLR−a)が車両用電源42に接続された回路に設けられる。これによって、モータ駆動回路Pに接続された操舵装置用電源41が所定値以下に電圧降下したとき、電磁リレー5b(R)の常閉接点5d(R−b)が開状態に切り換えられて、操舵装置用電源41はモータ駆動回路Pと切断される。その所定時間(タイマリレー5cで設定された遅延時間)経過後に、タイマリレー5c(TLR)の常開接点5e(TLR−a)が閉状態に切り換えられて、モータ駆動回路Pの電源が操舵装置用電源41から車両用電源42に切り換えられる。
【0024】
なお、図2に示す車両用供給部30の切換手段5’では、図3(a)の常閉接点5d(R−b)と常開接点5e(TLR−a)との接続位置を入れ換えて使用される。
【0025】
次に、図4のフローチャートに沿って、CPU23が主体となって実施される電源切換プログラムの内容を説明する。電圧モニタ5a(図3(a)参照)により、モータ駆動回路P(操舵装置用電源41)の電圧値を監視し(S1)、電圧が設定された閾値以下に低下していないかをチェックする(S2)。電圧が閾値以下に低下している場合には(S2でYES)、リレードライバ5xとタイマリレードライバ5yとを介して電磁リレー5b(R)とタイマリレー5c(TLR)とが作動される(S3)。電磁リレー5b(R)の励磁により、常閉接点5d(R−b)が開き、操舵装置用電源41がモータ駆動回路Pから切断される(S4;図3(b)(c)参照)。遅延時間経過後にタイマリレー5c(TLR)の励磁により、常開接点5e(TLR−a)が閉じられて、車両用電源42がモータ駆動回路Pに接続される(S5;図3(b)(c)参照)。
【0026】
再び、電圧モニタ5a(図3(a)参照)により、モータ駆動回路P(車両用電源42)の電圧値を監視し(S6)、電圧が設定された閾値以下に低下していないかをチェックする(S7)。電圧が閾値以下に低下している場合には(S7でYES)、操舵装置用電源41・車両用電源42ともにモータ6を回転駆動させる充分な駆動用電力をモータ駆動回路Pに供給できない旨を警報出力するとともに、リレードライバ5xとタイマリレードライバ5yとを介して電磁リレー5b(R)とタイマリレー5c(TLR)とを非作動とする(S8)。これによって、瞬時に常閉接点5d(R−b)が閉じ、常開接点5e(TLR−a)が開くので、再び操舵装置用電源41がモータ駆動回路Pに接続される(図3(a)参照)。操舵装置用電源41は電圧モニタ5aにより電圧低下していることを検知されているが、その電圧の余力で操舵が行なわれ操舵不能になるのを回避する。
【0027】
このように、操舵装置用電源41の電圧降下時に車両用電源42がバックアップ用電源として機能するので、本実施例のようなステアバイワイヤ方式の車両用操舵装置1においても、操舵不能状態を回避することができる。また、本実施例では、モータ駆動回路Pに接続された操舵装置用電源41が所定値(閾値)以下に電圧降下したときモータ駆動回路Pと切断され、その所定時間(遅延時間)経過後に、モータ駆動回路Pの電源を操舵装置用電源41から車両用電源42に切り換える。これによって、操舵装置用電源41の電圧降下の際に、バックアップ用電源としての車両用電源42が地絡していた場合でも、切り換えまでにタイムラグを設けてあるので、電源ショートにより両電源41,42ともに電圧低下を起こすことが避けられる。なお、切換回路5において、電磁リレー5bとタイマリレー5cとを用いる代わりに2つの電磁リレーを用い、第一電磁リレーの切り換え後所定時間(予め設定され、CPU23からのクロック信号に基づく遅延時間)経過後に、第二電磁リレーを切り換えてもよい。
【0028】
さらに、操舵装置用電源41と車両用電源42とは、モータ6の回転を制御する制御ユニット200に対して常時モータ制御用電力を供給するように並列接続されているので、モータ制御用電力を常時供給でき、操舵制御が不安定となったり、地絡を確認できなくなるといった事態を防止できる。
【0029】
(実施例2)
図5は、本発明が適用される車両用操舵装置の他の例としてのステアバイワイヤ方式操舵装置の全体構成を模式的に示したものである。この車両用操舵装置101も、操舵用ハンドル2に直結されたハンドル軸3と、車輪転舵軸11とが機械的に分離されたステアバイワイヤ方式に構成されている。車輪転舵軸11には、転舵軸駆動モータ(以下、単にモータともいう)6A,6B及び減速機構12A,12Bが同軸状に組み付けられている。これにより、モータ6A,6Bの回転が減速機構12A,12Bを介して車輪転舵軸11に伝達され、車輪転舵軸11が軸線方向に往復動し、車輪13,13の転舵角が変化する。
【0030】
ハンドル軸3の角度位置φは、ロータリエンコーダ等の周知の角度検出部からなるハンドル軸角度検出部14により操舵角(操舵入力)として検出される。一方、同じくロータリエンコーダ等からなるモータ角度位置検出部15A,15Bによりモータ6A,6Bの回転角度位置θA,θBが転舵角(転舵出力)として検出される。そして、操舵制御部20が、検出されたハンドル軸3の角度位置φに基づいて、モータ6A,6Bの目標回転角度位置θA’,θB’を決定し、モータ6A,6Bの回転角度位置θA,θBが目標回転角度位置θA’,θB’に近づくように、モータ6A,6Bの動作を制御する。
【0031】
図6は、車両用操舵装置101のブロック図である。この車両用操舵装置101の操舵制御部は、各々にCPU23A,23Bを搭載した複数(図では2基)の操舵制御部20A,20Bから構成されるとともに、各操舵制御部20A,20B毎にモータ6A,6Bが装備されている。各操舵制御部20A,20Bには、各別のモータ6A,6Bを回転駆動するモータ駆動回路Pに対して択一的にモータ駆動用電力を供給できるように操舵装置用電源41とバックアップ用電源としての車両用電源42とが並列配置されている。
【0032】
第一操舵制御部20A及び第二操舵制御部20Bには、それぞれ実施例1とほぼ同様の構造が備えられている。そこで、両者を代表して第一操舵制御部20Aについて説明し、第二操舵制御部20Bの説明を省略する。第一操舵制御部20Aは、CPU23A、RAM24A、ROM25A、入出力インターフェース26A等を有し、これらをバス27Aにより送受信可能に接続した制御ユニット200Aを備えている。また、操舵装置用電源41と車両用電源42とは各々常閉スイッチ29A,29A及び逆流防止用ダイオード21A,21Aを介して電圧調整手段28Aによって電圧コントロール(例えば、DC+12V→DC+5Vに変換)され、コントロールされた電圧がモータ制御回路Cを通り、制御ユニット200Aに入力される。そして、操舵装置用電源41と車両用電源42とは、モータ6Aの回転を制御する制御ユニット200A(モータ制御回路C)に対して常時モータ制御用電力を供給できるように並列接続されている。
【0033】
なお、入出力インターフェース26Aには、ハンドル軸角度検出部14の角度位置φ、モータ角度位置検出部15Aの回転角度位置θA、切換手段5(モータ駆動回路P)の電圧値V(後述)等が入力される。一方、入出力インターフェース26Aからは、ドライバ18Aに対するモータ6Aの回転制御指令、切換手段5に対する切換制御指令(後述)等が出力される。
【0034】
各操舵制御部20A,20Bの具体的構造は実施例1の操舵制御部20と同様に表わされるので、図6において図2と同一機能を表わす部分にはそれぞれ添え字A,Bを付して説明を省略する。
【0035】
また、各操舵制御部20A,20Bには、各別のモータ6A,6Bの回転を制御するモータ制御回路Cに対して常時モータ制御用電力を供給できるように操舵装置用電源41と車両用電源42とが並列接続されている。なお、各操舵制御部20A,20Bに設けられる切換手段5として、図3(実施例1)に示すものがそのまま使用できる。また、図4(実施例1)に示すフローチャートも本実施例でそのまま使用できる。
【0036】
実施例2(図5及び図6)の記述において、実施例1(図1〜図4)と同一機能を有する部分には同一符号を付して説明を省略したものがある。
【0037】
以上の説明は、ステアバイワイヤ方式操舵装置についてのみ行なったが、パワーステアリング装置にも適用できる。なお、これらの車両用操舵装置には、電動式、電動油圧式、速度感応型・回転数感応型等の転舵出力可変式等、種々のタイプが含まれる。なお、電源部40に設ける電源は複数であればよく、操舵制御部及びモータの数は、1又は複数のいずれでもよい。また、これらの数は適宜組合せることができる。例えば、2基の操舵制御部と1個のモータ、1基の操舵制御部と2個のモータ等の組合せを選択できる。さらに、図5に示す2個のモータで▲1▼左右の車輪13,13を同時に同方向へ同じ転舵角で転舵する方式、▲2▼左右の車輪13,13を各別に転舵する方式(車輪転舵軸11がモータ6A,6B間で連結されていない構成)、等を選択できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される車両用操舵装置の一例としてのステアバイワイヤ方式操舵装置の全体構成を示す模式図。
【図2】図1の車両用操舵装置のブロック図。
【図3】切換手段の回路構成図、そのタイミングチャート及びモータ駆動回路の電圧変化を表わすグラフ。
【図4】電源切換プログラムの内容を示すフローチャート。
【図5】本発明が適用される車両用操舵装置の他の例としてのステアバイワイヤ方式操舵装置の全体構成を示す模式図。
【図6】図5の車両用操舵装置のブロック図。
【符号の説明】
1 車両用操舵装置(ステアバイワイヤ方式操舵装置)
3 ハンドル軸
5 切換手段(切換回路)
6 モータ(転舵軸駆動モータ)
11 車輪転舵軸
20 操舵制御部
200 制御ユニット
40 電源部
41 操舵装置用電源
42 車両用電源
C モータ制御回路
P モータ駆動回路
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車等の車両用操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用操舵装置、特に自動車の操舵装置において、パワーステアリング装置が広く一般に普及している(特許文献1,2参照)。また、車両用操舵装置の他の例として、ハンドル軸と車輪転舵軸とが機械的に連結されず操舵制御部を介して電気的に接続されたステアバイワイヤ(Steer By Wire)方式が知られている(特許文献3参照)。これら車両用操舵装置の操舵制御部においては、操舵用のハンドル軸に与えられる操舵トルクや操舵角といった操舵入力に応じて車輪転舵軸に与えるべきアシストトルクや転舵角といった転舵出力を決定し、その転舵出力が車輪転舵軸に与えられるように転舵軸駆動モータの回転を制御する方式が採用されている。
【0003】
ところで、上記したような車両用操舵装置において、従来では、転舵軸駆動モータへのモータ駆動用電力の供給と、転舵軸駆動モータを除く車両用電装品等への電力の供給とは共通の電源から行われ、その共通の電源の電圧降下に備えて共通の予備電源(バックアップ用電源)が設けられていた。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−168597号公報
【特許文献2】
特開2001−341656号公報
【特許文献3】
特開2001−88727号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一般に転舵軸駆動モータの電力消費量は大きいため、共通電源の電圧降下が発生しやすく、その際共通予備電源に切り換えられて一旦は電力の供給が回復したとしても再び共通予備電源での電圧降下を発生する可能性が高い。このような事態を回避するには、共通電源及び共通予備電源を大容量に構成しなければならず、車両重量の増加や車体の大型化を招来し、省エネルギーにも逆行することになる。そして、共通予備電源でも電圧降下を発生した場合には、共通電源・共通予備電源ともに転舵軸駆動モータ及び車両用電装品等への電力の供給ができなくなるおそれがある。特に、上記したステアバイワイヤ方式では、ハンドル軸と車輪転舵軸とが機械的に連結されていないため、転舵軸駆動モータへの電力の供給が途絶えると操舵制御不能の状態を惹き起こすおそれがある。また、電源の異常としては上述した電圧降下の他に、断線等がある。
【0006】
本発明の課題は、転舵軸駆動モータへ専用電源からモータ駆動用電力を安定して供給でき、仮にその専用電源に電圧降下等の異常が発生した場合でも、十分なバックアップ機能を有する車両用操舵装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記の課題を解決するために、本発明の車両用操舵装置は、
操舵用のハンドル軸に与えられる操舵入力に応じて車輪転舵軸に与えるべき転舵出力を決定し、その転舵出力が得られるように転舵軸駆動モータの回転を制御して前記車輪転舵軸を移動させる操舵制御部を有する車両用操舵装置において、
前記車両には複数の電源が装備され、
それら複数の電源には、前記転舵軸駆動モータにモータ駆動用電力を供給する操舵装置用電源と、前記転舵軸駆動モータを除く車両用電装品に電力を供給する車両用電源とを少なくとも含むことを特徴とする。
【0008】
この車両用操舵装置によれば、通常時、転舵軸駆動モータは操舵装置用電源を専用電源としてモータ駆動用電力を供給される。したがって、操舵装置用電源の容量を転舵軸駆動モータに合わせて選定でき、モータ駆動用電力を安定して供給できる。また、その結果、車両用電装品等への電力供給も安定し、いずれの電源においても電圧降下を発生しにくくなる。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、本発明の車両用操舵装置は、
操舵用のハンドル軸に与えられる操舵入力に応じて車輪転舵軸に与えるべき転舵出力を決定し、その転舵出力が得られるように転舵軸駆動モータの回転を制御して前記車輪転舵軸を移動させる操舵制御部を有する車両用操舵装置において、
前記車両には複数の電源が装備され、
それら複数の電源には、前記転舵軸駆動モータにモータ駆動用電力を供給する操舵装置用電源と、前記転舵軸駆動モータを除く車両用電装品に電力を供給する車両用電源とを少なくとも含み、
前記操舵装置用電源と前記車両用電源とは、いずれか一方の電源に異常が生じた際、他方の電源が一方の電源に代わって電力供給を受け持つバックアップ機能を相互に有することを特徴とする。
【0010】
このような車両用操舵装置においても、上記したと同様に、転舵軸駆動モータへのモータ駆動用電力の供給、車両用電装品等への電力供給ともに安定して行なえる。さらに、操舵装置用電源と車両用電源とによるこれらの電力供給の際、仮にいずれか一方の電源に異常が生じても、他方の電源をバックアップ用電源として使用できるので、転舵軸駆動モータ・車両用電装品等への電力供給を途絶えさせることがない。したがって、ステアバイワイヤ方式の車両用操舵装置においても、操舵不能状態を回避することができる。
【0011】
例えば、操舵装置用電源と車両用電源とを、転舵軸駆動モータを回転駆動するモータ駆動回路に対して択一的にモータ駆動用電力を供給できるように並列配置し、モータ駆動回路に接続された操舵装置用電源が所定値以下に電圧降下したとき、モータ駆動回路の電源を操舵装置用電源から車両用電源に切り換えればよい。このように、所定の閾値を設定しておくだけで上記したバックアップ機能を比較的簡単に付与することができる。なお、電源切換手段として電磁リレーの接点切換等を用いることができる。
【0012】
そして、モータ駆動回路に接続された操舵装置用電源に異常が生じた際モータ駆動回路と切断され、車両用電源が地絡及び電圧降下していないことを確認した後に、モータ駆動回路の電源を操舵装置用電源から車両用電源に切り換えることができる。これによって、操舵装置用電源に異常が生じた際、バックアップ用電源としての車両用電源が地絡及び電圧降下していないことの確認後に操舵装置用電源から車両用電源に切り換えられるので、電源ショートにより両電源ともに電圧低下を起こす事態が避けられる。なお、地絡及び電圧降下していないことの確認方法として、操舵装置用電源から車両用電源への切り換えまでにタイムラグを設ける方法や、車両用電源の電圧値(及び/又は電流値)の変化を監視する方法等を採用できる。
【0013】
ところで、これらの車両用操舵装置において、操舵制御部が各々にCPUを搭載した少なくとも一つの制御ユニットを有し、制御ユニットには、転舵軸駆動モータの回転を制御するモータ制御用電力が複数の電源のいずれからでも供給可能とされていることが望ましい。モータ制御用電力は操舵制御部での信号処理に関するものであり、一般的にモータ駆動用電力に比較して低電力(低電圧)でよい(例えば、モータ駆動用電力のDC12Vに対してモータ制御用電力はDC5V)が、電力の供給が一時的にでも途絶えると操舵制御が不安定となったり、地絡を確認できなくなるといった事態を招くおそれがある。操舵制御部の制御ユニットの電源を複数の電源のいずれからでも供給可能としておくことにより、このような事態を防止できる。
【0014】
さらに、操舵制御部を複数有するとともに、各操舵制御部毎に車輪転舵軸を移動する転舵軸駆動モータが装備される場合にも、各操舵制御部の制御ユニットには、転舵軸駆動モータの回転を制御するモータ制御用電力が複数の電源のいずれからでも供給可能とされていることが望ましい。操舵制御部が複数の制御ユニットと複数の転舵軸駆動モータとを有する場合でも、上記の場合と同様に各制御系の電源を複数の電源のいずれからでも供給可能としておくことにより、安定した操舵制御が保障される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
図1は、本発明が適用される車両用操舵装置の一例としてのステアバイワイヤ方式操舵装置の全体構成を模式的に示したものである(なお、本実施形態において「車両」は自動車とするが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない)。この車両用操舵装置1は、操舵用ハンドル2に直結されたハンドル軸3と、車輪転舵軸11とが機械的に分離されたステアバイワイヤ方式に構成されている。車輪転舵軸11には、転舵軸駆動モータ(以下、単にモータともいう)6及び減速機構12が同軸状に組み付けられている。これにより、モータ6の回転が減速機構12を介して車輪転舵軸11に伝達され、車輪転舵軸11が軸線方向に往復動し、車輪13,13の転舵角が変化する。
【0016】
ハンドル軸3の角度位置φは、ロータリエンコーダ等の周知の角度検出部からなるハンドル軸角度検出部14により操舵角(操舵入力)として検出される。一方、同じくロータリエンコーダ等からなるモータ角度位置検出部15によりモータ6の回転角度位置θが転舵角(転舵出力)として検出される。そして、操舵制御部20が、検出されたハンドル軸3の角度位置φに基づいて、モータ6の目標回転角度位置θ’を決定し、モータ6の回転角度位置θが目標回転角度位置θ’に近づくように、モータ6の動作を制御する。
【0017】
図2は、車両用操舵装置1のブロック図である。車両(車両用操舵装置1)には複数の電源を有する電源部40が備えられている。この実施例では、電源部40は、モータ6にモータ駆動用電力を常時供給する操舵装置用電源41と、モータ6を除く車両用電装品(例えばランプ、メータ類等)に電力を常時供給する車両用電源42とを有している。操舵制御部20において、操舵装置用電源41とバックアップ用電源としての車両用電源42とは、モータ6を回転駆動するモータ駆動回路Pに対して択一的にモータ駆動用電力を供給できるように並列配置されている。
【0018】
具体的には、操舵装置用電源41と車両用電源42とは操舵制御部20の切換手段5(切換回路)を介してモータ駆動回路Pに択一的に接続されるとともに、モータ駆動回路Pは電源フィルタ22を経てモータ6のドライバ18に接続されている。切換手段5は、モータ駆動回路Pに常時接続された操舵装置用電源41が所定値(閾値)以下に電圧降下したとき、操舵装置用電源41をモータ駆動回路Pと切断し、車両用電源42が地絡していないことを確認した後に、モータ駆動回路Pの電源を操舵装置用電源41から車両用電源42に切り換えるものである。
【0019】
同様に、操舵装置用電源41と車両用電源42とは車両用供給部30の切換手段5’を介して車両駆動回路P’に択一的に接続されるとともに、車両駆動回路P’は電源フィルタ32を経てランプ、メータ類等の車両用電装品(図示せず)に接続されている。切換手段5’は、車両駆動回路P’に常時接続された車両用電源42が所定値(閾値)以下に電圧降下したとき、車両用電源42を、車両駆動回路P’と切断し、操舵装置用電源41が地絡していないことを確認した後に、車両駆動回路P’の電源を車両用電源42から操舵装置用電源41に切り換えるものである。
【0020】
この他、操舵制御部20には、CPU23、RAM24、ROM25、入出力インターフェース26等を有し、これらをバス27により送受信可能に接続した制御ユニット200を備えている。また、操舵装置用電源41と車両用電源42とは各々常閉スイッチ29,29及び逆流防止用ダイオード21,21を介して点Aで接続されて電圧調整手段28に入力される。その後、電圧調整手段28によって電圧コントロール(例えば、DC+12V→DC+5Vに変換)された電圧がモータ制御回路Cを通り、制御ユニット200に入力される。そして、操舵装置用電源41と車両用電源42とは、操舵軸駆動モータ6の回転を制御するモータ制御回路Cに対して常時モータ制御用電力を供給できるように並列接続されている。
【0021】
なお、入出力インターフェース26には、ハンドル軸角度検出部14の角度位置φ、モータ角度位置検出部15の回転角度位置θ、切換手段5(モータ駆動回路P)の電圧値V(後述)等が入力される。一方、入出力インターフェース26からは、ドライバ18に対するモータ6の回転制御指令、切換手段5に対する切換制御指令(後述)等が出力される。
【0022】
図3により、切換手段5によるモータ駆動回路Pに接続する電源回路の切換方法について詳述する。モータ駆動回路Pに接続された操舵装置用電源41が所定値(閾値;図3(c)参照)以下に電圧降下したとき、切換手段5は、操舵装置用電源41をモータ駆動回路Pと切断し、その所定時間(遅延時間;図3(c)参照)経過後に、モータ駆動回路Pの電源を操舵装置用電源41から車両用電源42に切り換える。
【0023】
具体的には、切換手段5(切換回路)は、モータ駆動回路Pの電圧を監視する電圧モニタ5aと、電磁リレー5b(R;リレー)とリレードライバ5xとの直列回路及びタイマリレー5c(TLR;限時リレー;オンディレイタイマ)とタイマリレードライバ5yとの直列回路とを有している。電磁リレー5b(R)及びタイマリレー5c(TLR)には、モータ制御回路Cの電圧調整前の電位(例えばDC+12V)が上記した接続点A(図2参照)より与えられている。電磁リレー5b(R)に連動する常閉接点5d(R−b)が操舵装置用電源41に接続された回路に設けられる。一方、タイマリレー5c(TLR)に連動する常開接点5e(TLR−a)が車両用電源42に接続された回路に設けられる。これによって、モータ駆動回路Pに接続された操舵装置用電源41が所定値以下に電圧降下したとき、電磁リレー5b(R)の常閉接点5d(R−b)が開状態に切り換えられて、操舵装置用電源41はモータ駆動回路Pと切断される。その所定時間(タイマリレー5cで設定された遅延時間)経過後に、タイマリレー5c(TLR)の常開接点5e(TLR−a)が閉状態に切り換えられて、モータ駆動回路Pの電源が操舵装置用電源41から車両用電源42に切り換えられる。
【0024】
なお、図2に示す車両用供給部30の切換手段5’では、図3(a)の常閉接点5d(R−b)と常開接点5e(TLR−a)との接続位置を入れ換えて使用される。
【0025】
次に、図4のフローチャートに沿って、CPU23が主体となって実施される電源切換プログラムの内容を説明する。電圧モニタ5a(図3(a)参照)により、モータ駆動回路P(操舵装置用電源41)の電圧値を監視し(S1)、電圧が設定された閾値以下に低下していないかをチェックする(S2)。電圧が閾値以下に低下している場合には(S2でYES)、リレードライバ5xとタイマリレードライバ5yとを介して電磁リレー5b(R)とタイマリレー5c(TLR)とが作動される(S3)。電磁リレー5b(R)の励磁により、常閉接点5d(R−b)が開き、操舵装置用電源41がモータ駆動回路Pから切断される(S4;図3(b)(c)参照)。遅延時間経過後にタイマリレー5c(TLR)の励磁により、常開接点5e(TLR−a)が閉じられて、車両用電源42がモータ駆動回路Pに接続される(S5;図3(b)(c)参照)。
【0026】
再び、電圧モニタ5a(図3(a)参照)により、モータ駆動回路P(車両用電源42)の電圧値を監視し(S6)、電圧が設定された閾値以下に低下していないかをチェックする(S7)。電圧が閾値以下に低下している場合には(S7でYES)、操舵装置用電源41・車両用電源42ともにモータ6を回転駆動させる充分な駆動用電力をモータ駆動回路Pに供給できない旨を警報出力するとともに、リレードライバ5xとタイマリレードライバ5yとを介して電磁リレー5b(R)とタイマリレー5c(TLR)とを非作動とする(S8)。これによって、瞬時に常閉接点5d(R−b)が閉じ、常開接点5e(TLR−a)が開くので、再び操舵装置用電源41がモータ駆動回路Pに接続される(図3(a)参照)。操舵装置用電源41は電圧モニタ5aにより電圧低下していることを検知されているが、その電圧の余力で操舵が行なわれ操舵不能になるのを回避する。
【0027】
このように、操舵装置用電源41の電圧降下時に車両用電源42がバックアップ用電源として機能するので、本実施例のようなステアバイワイヤ方式の車両用操舵装置1においても、操舵不能状態を回避することができる。また、本実施例では、モータ駆動回路Pに接続された操舵装置用電源41が所定値(閾値)以下に電圧降下したときモータ駆動回路Pと切断され、その所定時間(遅延時間)経過後に、モータ駆動回路Pの電源を操舵装置用電源41から車両用電源42に切り換える。これによって、操舵装置用電源41の電圧降下の際に、バックアップ用電源としての車両用電源42が地絡していた場合でも、切り換えまでにタイムラグを設けてあるので、電源ショートにより両電源41,42ともに電圧低下を起こすことが避けられる。なお、切換回路5において、電磁リレー5bとタイマリレー5cとを用いる代わりに2つの電磁リレーを用い、第一電磁リレーの切り換え後所定時間(予め設定され、CPU23からのクロック信号に基づく遅延時間)経過後に、第二電磁リレーを切り換えてもよい。
【0028】
さらに、操舵装置用電源41と車両用電源42とは、モータ6の回転を制御する制御ユニット200に対して常時モータ制御用電力を供給するように並列接続されているので、モータ制御用電力を常時供給でき、操舵制御が不安定となったり、地絡を確認できなくなるといった事態を防止できる。
【0029】
(実施例2)
図5は、本発明が適用される車両用操舵装置の他の例としてのステアバイワイヤ方式操舵装置の全体構成を模式的に示したものである。この車両用操舵装置101も、操舵用ハンドル2に直結されたハンドル軸3と、車輪転舵軸11とが機械的に分離されたステアバイワイヤ方式に構成されている。車輪転舵軸11には、転舵軸駆動モータ(以下、単にモータともいう)6A,6B及び減速機構12A,12Bが同軸状に組み付けられている。これにより、モータ6A,6Bの回転が減速機構12A,12Bを介して車輪転舵軸11に伝達され、車輪転舵軸11が軸線方向に往復動し、車輪13,13の転舵角が変化する。
【0030】
ハンドル軸3の角度位置φは、ロータリエンコーダ等の周知の角度検出部からなるハンドル軸角度検出部14により操舵角(操舵入力)として検出される。一方、同じくロータリエンコーダ等からなるモータ角度位置検出部15A,15Bによりモータ6A,6Bの回転角度位置θA,θBが転舵角(転舵出力)として検出される。そして、操舵制御部20が、検出されたハンドル軸3の角度位置φに基づいて、モータ6A,6Bの目標回転角度位置θA’,θB’を決定し、モータ6A,6Bの回転角度位置θA,θBが目標回転角度位置θA’,θB’に近づくように、モータ6A,6Bの動作を制御する。
【0031】
図6は、車両用操舵装置101のブロック図である。この車両用操舵装置101の操舵制御部は、各々にCPU23A,23Bを搭載した複数(図では2基)の操舵制御部20A,20Bから構成されるとともに、各操舵制御部20A,20B毎にモータ6A,6Bが装備されている。各操舵制御部20A,20Bには、各別のモータ6A,6Bを回転駆動するモータ駆動回路Pに対して択一的にモータ駆動用電力を供給できるように操舵装置用電源41とバックアップ用電源としての車両用電源42とが並列配置されている。
【0032】
第一操舵制御部20A及び第二操舵制御部20Bには、それぞれ実施例1とほぼ同様の構造が備えられている。そこで、両者を代表して第一操舵制御部20Aについて説明し、第二操舵制御部20Bの説明を省略する。第一操舵制御部20Aは、CPU23A、RAM24A、ROM25A、入出力インターフェース26A等を有し、これらをバス27Aにより送受信可能に接続した制御ユニット200Aを備えている。また、操舵装置用電源41と車両用電源42とは各々常閉スイッチ29A,29A及び逆流防止用ダイオード21A,21Aを介して電圧調整手段28Aによって電圧コントロール(例えば、DC+12V→DC+5Vに変換)され、コントロールされた電圧がモータ制御回路Cを通り、制御ユニット200Aに入力される。そして、操舵装置用電源41と車両用電源42とは、モータ6Aの回転を制御する制御ユニット200A(モータ制御回路C)に対して常時モータ制御用電力を供給できるように並列接続されている。
【0033】
なお、入出力インターフェース26Aには、ハンドル軸角度検出部14の角度位置φ、モータ角度位置検出部15Aの回転角度位置θA、切換手段5(モータ駆動回路P)の電圧値V(後述)等が入力される。一方、入出力インターフェース26Aからは、ドライバ18Aに対するモータ6Aの回転制御指令、切換手段5に対する切換制御指令(後述)等が出力される。
【0034】
各操舵制御部20A,20Bの具体的構造は実施例1の操舵制御部20と同様に表わされるので、図6において図2と同一機能を表わす部分にはそれぞれ添え字A,Bを付して説明を省略する。
【0035】
また、各操舵制御部20A,20Bには、各別のモータ6A,6Bの回転を制御するモータ制御回路Cに対して常時モータ制御用電力を供給できるように操舵装置用電源41と車両用電源42とが並列接続されている。なお、各操舵制御部20A,20Bに設けられる切換手段5として、図3(実施例1)に示すものがそのまま使用できる。また、図4(実施例1)に示すフローチャートも本実施例でそのまま使用できる。
【0036】
実施例2(図5及び図6)の記述において、実施例1(図1〜図4)と同一機能を有する部分には同一符号を付して説明を省略したものがある。
【0037】
以上の説明は、ステアバイワイヤ方式操舵装置についてのみ行なったが、パワーステアリング装置にも適用できる。なお、これらの車両用操舵装置には、電動式、電動油圧式、速度感応型・回転数感応型等の転舵出力可変式等、種々のタイプが含まれる。なお、電源部40に設ける電源は複数であればよく、操舵制御部及びモータの数は、1又は複数のいずれでもよい。また、これらの数は適宜組合せることができる。例えば、2基の操舵制御部と1個のモータ、1基の操舵制御部と2個のモータ等の組合せを選択できる。さらに、図5に示す2個のモータで▲1▼左右の車輪13,13を同時に同方向へ同じ転舵角で転舵する方式、▲2▼左右の車輪13,13を各別に転舵する方式(車輪転舵軸11がモータ6A,6B間で連結されていない構成)、等を選択できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される車両用操舵装置の一例としてのステアバイワイヤ方式操舵装置の全体構成を示す模式図。
【図2】図1の車両用操舵装置のブロック図。
【図3】切換手段の回路構成図、そのタイミングチャート及びモータ駆動回路の電圧変化を表わすグラフ。
【図4】電源切換プログラムの内容を示すフローチャート。
【図5】本発明が適用される車両用操舵装置の他の例としてのステアバイワイヤ方式操舵装置の全体構成を示す模式図。
【図6】図5の車両用操舵装置のブロック図。
【符号の説明】
1 車両用操舵装置(ステアバイワイヤ方式操舵装置)
3 ハンドル軸
5 切換手段(切換回路)
6 モータ(転舵軸駆動モータ)
11 車輪転舵軸
20 操舵制御部
200 制御ユニット
40 電源部
41 操舵装置用電源
42 車両用電源
C モータ制御回路
P モータ駆動回路
Claims (6)
- 操舵用のハンドル軸に与えられる操舵入力に応じて車輪転舵軸に与えるべき転舵出力を決定し、その転舵出力が得られるように転舵軸駆動モータの回転を制御して前記車輪転舵軸を移動させる操舵制御部を有する車両用操舵装置において、
前記車両には複数の電源が装備され、
それら複数の電源には、前記転舵軸駆動モータにモータ駆動用電力を供給する操舵装置用電源と、前記転舵軸駆動モータを除く車両用電装品に電力を供給する車両用電源とを少なくとも含むことを特徴とする車両用操舵装置。 - 操舵用のハンドル軸に与えられる操舵入力に応じて車輪転舵軸に与えるべき転舵出力を決定し、その転舵出力が得られるように転舵軸駆動モータの回転を制御して前記車輪転舵軸を移動させる操舵制御部を有する車両用操舵装置において、
前記車両には複数の電源が装備され、
それら複数の電源には、前記転舵軸駆動モータにモータ駆動用電力を供給する操舵装置用電源と、前記転舵軸駆動モータを除く車両用電装品に電力を供給する車両用電源とを少なくとも含み、
前記操舵装置用電源と前記車両用電源とは、いずれか一方の電源に異常が生じた際、他方の電源が一方の電源に代わって電力供給を受け持つバックアップ機能を相互に有することを特徴とする車両用操舵装置。 - 前記操舵装置用電源と前記車両用電源とは、前記転舵軸駆動モータを回転駆動するモータ駆動回路に対して択一的にモータ駆動用電力を供給できるように並列配置され、
前記モータ駆動回路に接続された前記操舵装置用電源に異常が生じた際、当該モータ駆動回路の電源が前記操舵装置用電源から前記車両用電源に切り換えられる請求項1又は2に記載の車両用操舵装置。 - 前記モータ駆動回路に接続された前記操舵装置用電源に異常が生じた際当該モータ駆動回路と切断され、前記車両用電源が地絡及び電圧降下していないことを確認した後に、前記モータ駆動回路の電源が前記操舵装置用電源から前記車両用電源に切り換えられる請求項3に記載の車両用操舵装置。
- 前記操舵制御部は各々にCPUを搭載した少なくとも一つの制御ユニットを有し、
その制御ユニットには、前記転舵軸駆動モータの回転を制御するモータ制御用電力が前記複数の電源のいずれからでも供給可能とされている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両用操舵装置。 - 前記操舵制御部を複数有するとともに、各操舵制御部毎に前記車輪転舵軸を移動する前記転舵軸駆動モータが装備され、
それら各操舵制御部の制御ユニットには、前記転舵軸駆動モータの回転を制御するモータ制御用電力が前記複数の電源のいずれからでも供給可能とされている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用操舵装置。
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A711 | Notification of change in applicant |
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