JP2004291340A

JP2004291340A - インクジェット記録媒体及びこれを用いた葉書

Info

Publication number: JP2004291340A
Application number: JP2003085573A
Authority: JP
Inventors: Takayuki Fujimoto; 貴之藤本; Koichi Yanagiuchi; 晃一柳内; Daisuke Imai; 大介今井; Kinya Tamura; 金也田村; Ayano Takagi; 綾乃高木
Original assignee: Nippon Paper Industries Co Ltd; Jujo Paper Co Ltd
Current assignee: Nippon Paper Industries Co Ltd; Jujo Paper Co Ltd
Priority date: 2003-03-26
Filing date: 2003-03-26
Publication date: 2004-10-21

Abstract

【課題】反対面からの圧力による凹凸がインク受理層側の面に浮き出しにくいとともに、インク受理層における像鮮明度を向上させたインクジェット記録媒体及びこれを用いた葉書を提供する。
【解決手段】紙支持体の少なくとも片方の面に、顔料と結着剤とを含有するインク受理層を設けたインクジェット記録媒体であって、ＪＡＰＡＮＴＡＰＰＩの紙パルプ試験法Ｎｏ．１８−１に規定するＺ軸方向引張強さを７００ｋＰａ以上であり、かつ前記インク受理層の表面の像鮮明度が５０％以上である。
【選択図】なし

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録媒体及びこれを用いた葉書に関し、特に高い光沢感を有し、くじ付き葉書等、インク受理層側の面の反対面に印刷などを施す場合に好適なインクジェット記録媒体及びこれを用いた葉書に関する。
【０００２】
【従来技術】
インクジェット記録方式は、種々の機構によりインクの小滴を吐出し、記録用紙上に付着させることによりドットを形成し、記録を行うものであるが、ドットインパクトタイプの記録方式に比べて騒音がなく、またフルカラー化が容易である上、高速印字が可能であるなどの利点がある。
【０００３】
このインクジェット記録方式に用いられるインクジェット記録媒体に対し要求される特性としては、インク乾燥速度が速いこと、印字濃度が高いこと、インクの溢れや滲みがないこと、更に、インクを吸収することにより用紙が波打ちしないこと等が挙げられる。そして、これらの特性を満たし、さらに記録紙の光沢性を向上させる技術として、キャストコート法を適用した技術が報告されている（例えば、特許文献１〜３参照）。特に、特許文献３には、アルミナ水和物層を設け、６０度鏡面光沢度が２０％以上という高い光沢を有する記録紙が開示されている。
【０００４】
【特許文献１】
特開平５−５９６９４号公報（第２頁）
【特許文献２】
特開平６−５５８２９号公報（第２頁）
【特許文献３】
特開２００２−２８３６９７号公報（第２頁）
【０００５】
ここで、キャストコート法とは、湿潤状態にあるインク受理層に対し、加熱された鏡面ドラムを圧接することにより、インク受理層表面を光沢仕上げする方法である。そして、このような光沢仕上げを行うことにより、インクジェット記録面に銀塩写真並の光沢感を付与することができる。その結果、高画質のインクジェット記録画像を得られるようになり、様々な用途にインクジェット記録方式が普及しつつある。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般的な紙表面の光沢感を表す指標として、ＪＩＳ−Ｚ８７４１で定める２０度鏡面光沢、７５度鏡面光沢が用いられている。しかしながら、インク受理層表面を目視したときの光沢感や微細な凹凸感と、上記指標とが必ずしも相関しないことが多々あった。そのため、インクジェット記録媒体の光沢感を一定範囲に管理することが困難であった。
一方で、像鮮明度という指標が知られている。この像鮮明度は、表面に映った反射像の鮮明さを示し、ひいては表面の平滑さを表す指標であるが、上記した光沢感の目視評価にこの指標を用いる技術は報告されていない。又、プラスチック製で表面が平坦なフィルム支持体ではインク受理層の像鮮明度の改善は容易であるという経緯がある。しかしながら、紙支持体を用いても像鮮明度に優れるインクジェット記録媒体は未だ実現されていない。
【０００７】
像鮮明度の高い記録媒体を紙支持体を用いて実現しようとすると、次のような新たな問題も生じる。つまり、像鮮明度の高い記録紙は記録面が極めて平滑であるため、反対面からの圧力により記録面に凹凸が生じると、その凹凸が陰影となって目立ち易いという問題がある。特に、この記録紙を葉書に用いると、宛名面にボールペン等で記載した宛名が反対面である記録面にエンボス状に浮き出てしまう。又、年賀状等のくじ付き葉書の場合は、宛名面下欄のくじ番号が凸版印刷で印字されるため、この印字部分の凹凸が記録面に浮き出る。
【０００８】
なお、インクジェット記録媒体の支持体は、環境に対する配慮の高まりから、再利用の難しいフィルムよりも、再生紙として再利用可能な紙の需要が高まっており、紙支持体を用いたインクジェット記録媒体における像鮮明度の向上、凹凸の浮出し抑制が是非とも必要となる。従って、本発明の目的は、紙支持体を用いた場合に像鮮明度に優れると共に、反対面からの圧力による凹凸がインク受理層側の面に浮き出しにくいインクジェット記録媒体及びこれを用いた葉書を提供することにある。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために種々検討した結果、インクジェット記録層の光沢度を像鮮明度で評価することで、銀塩写真に類する鏡面様の光沢感を適切に評価でき、光沢感を一定範囲に管理できることを見出した。又、本発明者等は、インクジェット記録媒体の厚み方向の強度を高くすることで、インク受理層の凹凸を緩和するとともに、像鮮明度を向上することもできることを見いだした。
従って、本発明の上記の目的は、紙支持体の少なくとも片方の面に、顔料と結着剤とを含有するインク受理層を設けたインクジェット記録媒体であって、ＪＡＰＡＮＴＡＰＰＩの紙パルプ試験法Ｎｏ．１８−１に規定するＺ軸方向引張強さが７００ｋＰａ以上であり、かつ前記インク受理層の表面の像鮮明度が５０％以上であることを特徴とするインクジェット記録媒体によって達成された。
特に、前記インク受理層が少なくともアルミナとポリビニルアルコールとを含有する場合や、前記インク受理層が湿潤状態にある間に該インク受理層を加熱した鏡面仕上げ面に圧着して乾燥することにより、該インク受理層表面に光沢を付与した場合に、インク受理層の光沢が向上し像鮮明度にも優れる。
また、上記の目的は、本発明のインクジェット記録媒体を用いた葉書によっても達成された。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下に述べるＺ軸方向引張強さを７００ｋＰａ以上とすることにより、インク受理層表面の高い像鮮明度を維持しつつ、反対面からの圧力による凹凸がインク受理層面へ浮き出すのを抑制したものである。そして、本発明のインクジェット記録媒体は、紙支持体の少なくとも片方の面にインク受理層を設けて構成されるが、記録媒体全体のＺ軸方向引張強さが上記範囲にあることが必要である。
【００１１】
ここで、Ｚ軸方向引張強さは、ＪＡＰＡＮＴＡＰＰＩの紙パルプ試験法（２０００年版）Ｎｏ．１８−１に規定されたものであり、試験片を厚み方向へ引き離す力を負荷したときの強度を示す指標である。そして、本発明者らが研究したところ、インクジェット記録媒体においては、厚み方向へ引き離す力を付加した際に、紙支持体側で紙片が分離することが多く、従って、紙支持体の厚み方向の強度（Ｚ軸方向引張り強さ）を向上させることが紙支持体の強度向上につながることを突き止めた。
【００１２】
そこで、本発明においてはインクジェット記録媒体のＺ軸方向引張強さを７００ｋＰａ以上とし、好ましくは７３０ｋＰａ以上に規定する。Ｚ軸方向引張強さが７００ｋＰａ未満であると、インク受理層面への凹凸の浮き出しを抑制できないからである。Ｚ軸方向引張強さを大きくするとインク受理層面の凹凸を抑制できる理由は明らかではないが、Ｚ軸方向引張強さの大きい記録媒体は紙支持体のパルプ繊維間結合強度が高く、上記した層間強度が高くなるため、紙支持体の一の面から圧力が負荷されても他の面が変形しにくいことが考えられる。
【００１３】
但し、Ｚ軸方向引張強さが高くなり過ぎると、インクジェット記録媒体の製造がしにくくなったり、インクジェット記録媒体の製品が硬くなって使用上の問題が生じることがあるので、Ｚ軸方向引張強さは９００ｋＰａ以下とするのが好ましく、より好ましくは８３０ｋＰａ以下とするのがよい。
【００１４】
なお、本発明においてＺ軸方向引張強さが７００ｋＰａ以上という場合、インクジェット記録媒体を構成する紙支持体、インク受理層、及び他の層のいずれのＺ軸方向引張強さも７００ｋＰａ以上である場合はいうまでもないが、インク受理層あるいは他のアンダーコート層等を塗工する前の原紙のＺ軸方向引張強さ自体は７００ｋＰａ以上でなくともよい。つまり、７００ｋＰａ未満の原紙に塗工層を設けることにより、原紙を強化してそのＺ軸方向引張強さを７００ｋＰａ以上に高めてもよい。但し、製造管理の観点からは、Ｚ軸方向引張強さが７００ｋＰａ以上に管理された原紙を用いた方が安定した製造ができるので、原紙のＺ軸方向引張強さも７００ｋＰａ以上であるのが好ましい。なお、本発明における原紙とは、インク受理層を塗工する前の状態を示し、サイズプレス等を行う前の紙支持体の他、紙支持体に表面サイズを施した後のものも含む。
【００１５】
Ｚ軸方向引張強さを７００ｋＰａ以上とする方法としては、以下がある。
１）パルプの濾水度を下げる方法
原紙の層間密度を高めるべく、パルプの濾水度を３５０ｍｌＣ．Ｓ．Ｆ．（カナダ標準ろ水度）以下、好ましくは、３００ｍｌＣ．Ｓ．Ｆ．以下とする。濾水度が３５０ｍｌＣ．Ｓ．Ｆ．を超えると、内部結合強さを高くすることができない。但し、ろ水度を下げると原紙の地合が悪くなり、又原紙の寸法安定性が悪化するため、２５０ｍｌＣ．Ｓ．Ｆ．以上とすることが好ましい。
２）紙中填料の量を下げる方法
紙支持体中の内添填料の量を灰分が２〜１０重量％とする。填料の量が少ないほど紙の強度は高くなるが、填料の量が２重量％未満であると、原紙の平滑性が失われ、原紙の凹凸がインク受理層表面に現れて像鮮明度を低下させる。
３）原紙中の紙力増強剤の量を増やす方法
原紙に内添する紙力増強剤の量を、パルプに対して０．０５〜０．３重量％とする。紙力増強剤の量が多いほどは高くなるが、０．３重量％を超えるとパルプにフロック（凝集）が発生し、原紙の平滑性を損なう問題が生じるので上記範囲とする。
４）原紙抄造時のサイズプレス液に紙力増強剤を配合する方法
サイズプレス液に紙力増強剤を片面当り０．０１〜０．１ｇ／ｍ^２配合する。紙力増強剤の配合量が０．１ｇ／ｍ^２を超えると、原紙のこわさが増し、インク受理層への光沢付与時にキャストドラムへの圧着性が低下し、光沢が得られなくなって像鮮明度が悪化する。
５）抄紙時のウェットプレス圧を上げる方法
操業に差し支えない範囲でウェットプレス圧を上げる。
さらに、これらの方法を適宜組み合わせてもよい。
【００１６】
次に、像鮮明度について説明する。本発明の像鮮明度は、ＪＩＳ−Ｋ７１０５に規定される方法（反射法による像鮮明度の測定）に従うが、測定光の入射方向を原紙の抄造方向（ＭＤ方向、ｍａｃｈｉｎｅｄｏｒｅｃｔｉｏｎ）と平行にし、反射角６０度、光学くし幅を２ｍｍとして測定したものである。
【００１７】
そして、本発明においては像鮮明度を５０％以上、好ましくは６０％以上とする。像鮮明度が５０％未満であると、光沢感が低下し、銀塩写真に匹敵する画像品質が得られない。又、像鮮明度の上限は１００％であり、この値に近いほどよいが、９０％を超えるとインク受理層の変形が目立ち易くなる。
【００１８】
次に、本発明を構成する支持体や塗工層について説明する。
本発明において使用する支持体は、主として木材パルプに填料を内添したものを抄紙してなる。木材パルプとしては、ＬＢＫＰ、ＮＢＫＰ等の化学パルプ、ＧＰ、ＰＧＷ、ＲＭＰ、ＴＭＰ、ＣＴＭＰ、ＣＭＰ、ＣＧＰ等の機械パルプ、ＤＩＰ等の古紙パルプ等を用いることができる。さらに、必要に応じて他の植物性繊維、合成繊維、又は無機繊維を上記木材パルプに配合してもよい。又、これらの各種パルプを単独または任意の割合で混合して使用することが可能である。なお、上記各パルプの種類を示す略記号は、ＪＩＳ紙パルプ用語に準拠したものである。又、支持体（紙）のｐＨは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでも良い。
【００１９】
パルプに填料を加えると、紙の不透明度を高め、かつ地合いをよくすることができるので好ましい。水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カルシウム・マグネシウム炭酸塩、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト等の天然珪酸塩や、合成珪酸アルミニウム、合成珪酸カルシウム等の合成珪酸塩、珪藻土や合成シリカ等の珪酸、水酸化アルミニウムや擬ベーマイト等のアルミニウム水和物、合成樹脂填料、又は、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛等の公知の填料を用いることができる。特に、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタンを用いることが好ましい。
【００２０】
填料の配合量は、特に制限されないが、配合量が少ないと支持体の地合いが悪化することに起因してインク受理層（インク受理層）表面の光沢感や像鮮明度が低下する。又、配合量が多いと、支持体の強度が低下してＺ軸方向引張強さが低くなる他、インク受理層を形成する際に断紙する可能性が高くなり、生産性を低下させる。従って、上記問題が生じない範に配合量を設定する必要がある。
【００２１】
さらに、支持体に必要に応じてポリアクリルアミド等の紙力増強剤を添加することもでき、紙力増強剤は支持体の原料に予め添加してもよく、抄紙後の支持体の表面に塗布してもよい。
【００２２】
紙支持体を抄造する方法は、通常の抄紙法を適用でき、上記パルプを叩解して填料を配合し、さらに必要に応じて公知のサイズ剤、定着剤、歩留向上剤、紙力増強剤等の各種添加剤を加えた後、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等で抄紙すればよい。
【００２３】
インク受理層は、顔料と結着剤とを含有する。このインク受理層は、単層又は複数の層から形成されている。顔料は公知の顔料の中から適宜選択することが出来る。具体例としては、シリカ、アルミナ、シリカゾル、アルミナゾル、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、酸化亜鉛等が挙げられ、これらは単独で又は複数混合して用いてもよい。このうち、アルミナは、水酸化アルミニウムを焼成すること等によって得られるアルミニウムの酸化物であり、インク受理層の光沢度ひいては像鮮明度を向上させる効果がある。アルミナの結晶形態は数多く知られており、例えばα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ等をあげることができる。インク受理層の光沢をより一層向上させる点で、アルミナ、特にγ−アルミナを用いると好ましい。アルミナの粒子径やＢＥＴ比表面積は必要に応じて適宜選択することが出来るが、インク受理層の光沢及び像鮮明度を向上させる点で、平均粒径（レーザー回折法で測定）が１．０〜４．０μｍのアルミナ（特にγ−アルミナ）を用いることが好ましく、特に１．５〜３．３μｍのものが好ましい。
【００２４】
結着剤としては、皮膜を形成することができる高分子化合物であればいずれのものでも使用することができる。具体的にはポリビニルアルコール、カルボン酸変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール、アセトアルデヒド基変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール樹脂、酸化澱粉、エステル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、スチレン−アクリル樹脂及びその誘導体、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、塩化ビニルエマルジョン、ウレタンエマルジョン、尿素エマルジョン、アルキッドエマルジョン及びこれらの誘導体等を単独で使用しても複数を併用してもよい。本発明においてはインク受理層表面に銀塩写真並の光沢感を付与し像鮮明度を向上させる点において、ポリビニルアルコール（変成物を含む）を用いることが好ましい。
【００２５】
インク受理層中の結着剤の配合量は、必要なインク受理層強度が得られる限り特に限定されるものではないが、顔料１００重量部に対して５重量部〜３０重量部であることが好ましく、２０重量部以下であることがより好ましい。結着剤の配合量が少ないとインク受理層の強度が低下しやすく、配合量が多いとインク吸収性が低下しやすい。また、結着剤中にポリビニルアルコールを配合する場合、配合量が少ないと白紙光沢（インクジェット印字前のインク受理層の光沢）が向上しない傾向にあるため、結着剤成分中のポリビニルアルコールを３０重量％以上とすることが好ましく、より好ましくは５０重量％以上とする。
【００２６】
本発明において、インク受理層の顔料としてγ−アルミナとシリカ、又はγ−アルミナとシリカゾルが全顔料中に５０重量％以上含まれるように併用し、結着剤としてポリビニルアルコールをした場合に、特にインク受理層表面の光沢感を向上させ、銀塩写真並みの光沢感を付与し、像鮮明度を向上させることができる。
【００２７】
又、本発明においては、前述支持体に顔料と結着剤からなるインク受理層を設け、該インク受理層が湿潤状態にある間に、該インク受理層を加熱した鏡面仕上げ面に圧着して乾燥することにより、該インク受理層表面に光沢を付与し像鮮明度を向上させることができる。この加工法はキャストコート法と称され、具体的には、基紙表面に設けられた湿潤状態の塗工層に鏡面加工された円筒外面を有する加熱されたドラムを圧接させて紙表面を光沢状に仕上げるウエットキャストコーティング法、後述する凝固（ゲル化）キャストコーティング法、及び基紙表面に設けられた湿潤状態の塗工層を一旦乾燥させた後、再湿潤液を塗布することによって可塑化させられた塗工層に、上記ドラムを圧接させて紙表面を光沢状に仕上げるリウエットキャストコーティング法があるが、何れの方法を用いてもよい。
【００２８】
特に、本発明においては、凝固キャストコート法を用いることが好ましい。この方法は、インク受理層中の結着剤を凝固（ゲル化）可能な処理液をこのインク受理層に塗布した後、そのインク受理層が湿潤状態にある間に加熱した鏡面仕上げ面（上記ドラム）にプレスロールを介してインク受理層を圧着し、乾燥させてインク受理層表面に光沢を付与するものである（例えば紙パルプ製造技術シリーズ８コーティング（１９９３年８月１７日発行、紙パルプ技術協会編集発行）参照）。さらに、インク受理層に処理液を塗布する際、インク受理層が湿潤状態にあることが好ましい。このようにすると、ドラムの鏡面仕上げ面がインク受理層に転写され易くなりインク受理層表面の微小な凹凸を少なくすることができるので、銀塩写真並の光沢感を得やすく像鮮明度を向上できる。
【００２９】
又、凝固キャストコート法を用いる際、結着剤としてポリビニルアルコールを使用する場合は、これを凝固させる機能を有する処理液として、例えば、ほう酸及びほう酸塩を用いることができる。但し、ほう酸塩又は、ほう酸を単独で使用すると以下の問題が生じる場合があるので、ほう酸塩とほう酸とを混合した処理液を用いることが好ましい。
【００３０】
つまり、ほう酸塩を単独で用いた場合には、ほう酸塩とインク受理層中のポリビニルアルコールとの凝固作用が強いためインク受理層が硬くなり、ドラムの鏡面仕上げ面のインク受理層への転写が充分行えず、良好な光沢面を得難い場合がある。一方、ほう酸を単独で用いた場合には、ほう酸とインク受理層中のポリビニルアルコールとの凝固作用が充分でないため、処理液をインク受理層に塗布するロールに軟凝固状態のインク受理層が付着することがあり、インク受理層が良好な凝固状態になり難い。この場合、処理液中のほう酸濃度を上げてポリビニルアルコールの凝固作用を強くしようとしても、ほう酸の溶解度が低いことから、処理液中ほう酸濃度には上限があるため、インク受理層を所望の硬さに凝固させることが難しい。
【００３１】
以上のことから、ほう酸塩とほう酸を混合して使用することで、ポリビニルアルコールの凝固状態が調整しやすくなり、良好な光沢感を有するインクジェット記録媒体が得られる。処理液中のほう酸塩とほう酸の配合比は、無水物換算後の重量比として、ほう酸塩／ほう酸＝１／４〜２／１の間であることが好ましい。ほう酸塩とほう酸の配合比が１／４未満では、ほう酸の割合が多くなりすぎてインク受理層中のポリビニルアルコールの凝固が不充分になり、処理液塗布ロールに軟凝固のインク受理層が付着し、インク受理層が良好な湿潤状態とならない場合がある。一方、上記配合比が２／１を越える場合には、インク受理層中のポリビニルアルコールが硬く凝固しすぎ、インク受理層が硬くなるので、ドラムの鏡面仕上げ面のインク受理層への転写が充分行えず、良好な光沢面を得難い。
【００３２】
本発明で用いられるほう酸塩としては、ほう砂、オルトほう酸塩、二ほう酸塩、メタほう酸塩、五ほう酸塩、および八ほう酸塩等を挙げることができる。なお、ほう酸塩は特にこれらに限定されるものではないが、コスト、入手性等の観点からは、ほう砂を用いることが好ましい。処理液中のほう酸塩及びほう酸の濃度は必要に応じて適宜調整することができるが、処理液中のほう酸塩とほう酸の濃度の合計が、無水物換算で１〜８重量％の範囲であることが好ましい。ほう酸塩及びほう酸の濃度、特にほう酸塩の濃度が高すぎるとポリビニルアルコールの凝固が強くなりすぎ、白紙光沢度が低下する傾向にある。また、ほう酸の濃度が高いと処理液中にほう酸が析出しやすくなるので、処理液の安定性が悪くなる。
【００３３】
インク受理層用塗工液および処理液には、必要に応じて剥離剤を添加することが出来る。添加する剥離剤の融点は９０〜１５０℃であることが好ましく、特に９５〜１２０℃であることが好ましい。上記の範囲であれば剥離剤の融点がドラムの鏡面仕上げ面の表面温度とほぼ同等であるため、剥離剤としての能力が最大限に発揮される。剥離剤は、上記特性を有している限り特に限定されるものではない。
【００３４】
また、本発明で使用するインク受理層用塗工液及び処理液には、本発明の効果を損なわない程度に顔料分散剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、着色剤、耐水化剤、湿潤剤、蛍光染料、紫外線吸収剤、カチオン性高分子電解質等を適宜添加することができる。
【００３５】
そして、支持体上にインク受理層を設ける方法は、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、スクイズコーター、カーテンコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター等の公知の塗工機を用いた方法の中から適宜選択すれば良い。処理液を塗布する方法は、インク受理層に塗布できる限り特に制限されず、公知の方法（例えばロール方式、スプレー方式、カーテン方式等）の中から適宜選択して用いることができる。
【００３６】
インク受理層の塗工量は、支持体（原紙）の表面を覆い、かつ十分なインク吸収性が得られる範囲で任意に調整することができるが、インクジェットの印字濃度を高くしつつインク吸収性を向上させる観点から、片面当たり、固形分換算で５〜３０ｇ／ｍ^２であることが好ましく、生産性を加味すると１０〜２５ｇ／ｍ^２であることが特に好ましい。３０ｇ／ｍ^２を超えると鏡面ドラムからの剥離性が低下し、塗工したインク受理層が鏡面ドラムに付着するなどの問題を生じる場合がある。特に、インクジェット記録媒体としてインク吸収性が大きく要求される場合は、インク受理層の塗工量を大きくする必要があるが、この場合、支持体とインク受理層の間にアンダーコート層を設けても良い。また、インクジェット記録面と反対側の面に、種々の機能を有するバックコート層を設けてもよい。
【００３７】
アンダーコート層は、インク吸収性の他、記録媒体からインク受理層が剥離しないための強度を有することが必要である。アンダーコート層は顔料と結着剤を含有し、これらは前述のインク受理層について説明した顔料や結着剤の中から適宜選択して使用することができる。具体的には、顔料としてシリカと炭酸カルシウムを用い、結着剤としてポリビニルアルコールを用いると、インク吸収性に優れ、インク受理層の剥離のない強度を有するアンダーコート層を形成することができる。アンダーコート層用の塗工液としては、本発明の効果を損なわない程度に顔料分散剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、着色剤、耐水化剤、湿潤剤、蛍光染料、紫外線吸収剤、カチオン性高分子電解質等を適宜添加することができる。又、支持体上にアンダーコート層を設ける方法は、インク受理層の形成方法について既に説明したのと同様であるので説明を省略する。
【００３８】
以上のように、Ｚ軸方向引張強さを７００ｋＰａ以上とすることで、紙支持体の層間強度が高くなり、紙支持体の一の面から圧力が負荷されても他の面が変形しにくくなると考えられるので、インク受理層面への凹凸の浮き出しを抑制できるとともに、像鮮明度が向上する。
【００３９】
特に、高い光沢感及び像鮮明度を有するインク受理層を有するインクジェット記録媒体の場合、光沢感が低いマットタイプのインクジェット記録媒体に比べて裏面の影響を受けやすく、上記した浮き出しが生じやすいので、本発明の有用性が高い。とりわけ、インク受理層にアルミナとポリビニルアルコールを含有させる場合は、インク受理層の光沢が顕著に向上し上記欠陥が生じやすくなるので、本発明の有用性が大である。
【００４０】
なお、インクジェット記録媒体のインク受理層側の面に裏面の凹凸が浮き出る問題は、インクジェット記録媒体を用いた葉書の場合により顕著となる。つまり、葉書の場合、インク受理層面を通信面（文面）とすると、反対面である宛名面に文字等を記載する必要上、この文字等をボールペン等で記載した場合に押圧による凹凸がインク受理層面に浮き出る。又、年賀状等のくじ番号付き葉書の場合、宛名面下欄のくじ番号が凸版印刷で印字されているため、反対面であるインク受理層面に印字部分がエンボス状に浮き出る。従って、インクジェット記録媒体を用いた葉書において、本発明の有用性がとりわけ大となる。
【００４１】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例によって更に詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。又、特に断らない限り、以下に記載する「部」及び「％」は、それぞれ「重量部」及び「重量％」を表す。
【００４２】
実施例１．
ろ水度２６０ｍｌＣ．Ｓ．Ｆ．の広葉樹晒クラフトパルプ１００部からなるパルプに、二酸化チタン４．０部、タルク５．０部、バンド剤（硫酸アルミニウム）１．０部、合成サイズ剤０．６７部、および歩留まり向上剤０．０２部を添加してパルプスラリーを調製し、このスラリーから抄紙機を用いて抄紙して紙支持体を得た。この紙支持体の両面に、サイズプレス装置によって片面当たりの乾燥塗工量が１．５ｇ／ｍ^２となるように酸化デンプン（５％溶液）を塗工すると同時に、一方の面に、アンダーコート層となる下記塗工液Ａをその乾燥塗工量が７ｇ／ｍ^２となるようブレード方式で塗工し、坪量１７０ｇのインクジェット記録媒体用紙を得た。
塗工液Ａ：顔料として、合成シリカ（ファインシールＸ３７：株式会社トクヤマの製品名）１００部、結着剤として、完全ケン化ポリビニルアルコール（ＰＶＡ１１７：株式会社クラレの製品名）を２０部、及びサイズ剤（ポリマロン３６０：荒川化学工業株式会社製の製品名）５部配合して、固形分濃度２０％の塗工液を調製した。
【００４３】
上記原紙の前記アンダーコート層上に、下記塗工液Ｂを乾燥塗工量が１８ｇ／ｍ^２となるようロールコーターで塗工し、インク受理層とした。このインク受理層が湿潤状態にあるうちに下記凝固液Ｃを用いて凝固させ、次いでプレスロールを介して１０５℃に加熱された鏡面ドラム表面に２０秒間圧着して鏡面を写し取り、坪量１９８ｇのインクジェット記録媒体を得た。
塗工液Ｂ：顔料として高純度アルミナ６０部（ＡＫＰ−Ｇ０１５：住友化学株式会社の製品名）と合成シリカ４０部（ファインシールＸ３７：株式会社トクヤマの製品名）、結着剤として、部分ケン化ポリビニルアルコール（ＰＶＡ２２４：株式会社クラレの製品名）２０部、インク定着剤（４級アンモニウム塩）３．０部、および消泡剤０．２部を配合して、固形分濃度２８％の塗工液を調製した。
凝固液Ｃ：水中にホウ砂（無水物換算）１．５部とホウ酸３部、および剥離剤（メイカテックスＨＰ−５０：明成化学工業株式会社の製品名）０．２５部（固形分換算）を配合し、固形分濃度６％の凝固液を調製した。
【００４４】
実施例２．
パルプのろ水度を２７０ｍｌとし、内添剤として紙力増強剤（ポリストロン６７８−２０：荒川化学工業株式会社製の製品名）０．２部を添加したこと以外は、実施例１と全く同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【００４５】
実施例３．
内添剤としてタルクを添加しなかったこと以外は、実施例２と全く同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【００４６】
実施例４．
インク受理層を形成する塗工液として、下記塗工液Ｄを用いたこと以外は、実施例２と全く同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
塗工液Ｄ：顔料として高純度アルミナ１００部（ＡＫＰ−Ｇ０１５：住友化学株式会社の製品名）、結着剤として、部分ケン化ポリビニルアルコール（ＰＶＡ２２４：株式会社クラレの製品名）２０部、インク定着剤（４級アンモニウム塩）３．０部、および消泡剤０．２部を配合して、固形分濃度２８％の塗工液を調製した。
【００４７】
実施例５．
内添剤として紙力増強剤（ポリストロン６７８−２０：荒川化学工業株式会社製の製品名）０．３部を添加し、又、サイズプレス液として紙力増強剤（ポリマセットＨＰ−７１０：荒川化学工業株式会社製の製品名）を２％含む酸化デンプン（５％溶液）を用いたこと以外は、実施例１と全く同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【００４８】
比較例１．
パルプのろ水度を３００ｍｌとし、紙力増強剤の添加量を０．１部とし、さらにインク受理層を形成する塗工液として、塗工液Ｄを用いたこと以外は、実施例２と全く同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【００４９】
比較例２．
パルプのろ水度を２７０ｍｌとしたこと以外は、実施例１と全く同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【００５０】
比較例３．
パルプのろ水度を３６０ｍｌとしたこと以外は、実施例２と全く同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【００５１】
比較例４．
湿潤状態にあるインク受理層の凝固液として、下記凝固液Ｆを用いたこと以外は、実施例１と全く同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
凝固液Ｆ：水中にホウ砂（無水物換算）４．５部、及び剥離剤（メイカテックスＨＰ−５０：明成化学工業の製品名）０．２５部（固形分換算）を配合し、固形分濃度６％の凝固液を調製した。
【００５２】
各実施例及び比較例における組成、製造条件を表１に示す。
【００５３】
【表１】

【００５４】
各実施例及び比較例について、Ｚ軸方向引張り強さ、インク受理層の像鮮明度、インク受理層の光沢感、及びインク受理層の耐変形性を以下の方法で評価した。
１）Ｚ軸方向引張り強さ
ＪＡＰＡＮＴＡＰＰＩＮｏ．１８−１に準じて原紙及びインクジェット記録媒体のＺ軸方向引張り強さを測定した。
２）像鮮明度
インク受理層表面の像鮮明度を、測定光の入射方向を原紙の抄造方向（ＭＤ方向）に平行とし、反射角を６０度、光学くし幅２ｍｍとした他は、ＪＩＳＫ７１０５の方法に示された像鮮明度の反射法の測定条件に準じて測定した。像鮮明度が６０％以上であれば、銀塩写真並みの光沢感を有するものとなる。
３）インク受理層の光沢感
インク受理層表面から２ｍ程離れた蛍光灯の光をインク受理層表面に映した際、その像を目視評価し、◎、○、△、×の４段階に分類した。
◎：蛍光灯の形が明確に判別できる
○：蛍光灯の輪郭はぼやけているが、蛍光灯の形を判別できる
△：蛍光灯の形は判別できず、その位置のみ判別できる
×：蛍光灯の形も位置も判別できず
評価記号が◎、○である場合は、銀塩写真並の光沢感を有しているといえる。
４）インク受理層の耐変形性
プリューフバウ凸版印刷機を用い、インク受理層の反対面に引圧５０Ｎ／ｃｍの凸版印刷を施した際の、インク受理層に生じた変形を目視で評価した。
◎：変形がほとんど見られない状態
○：変形がわずかに認められる状態
×：変形が認められる状態
評価記号が◎、○である場合は、インク受理層の変形による画質の低下は殆ど認められず、銀塩写真に匹敵する高画質のインクジェット記録画像を得ることができる。得られた結果を表２に示す。
【００５５】
【表２】

【００５６】
表２から明らかなように、本発明の実施例１〜５では、像鮮明度、耐変形性がともに優れていることが実証された。一方、パルプのろ水度が高い比較例３の場合、原紙及び記録媒体のＺ軸方向引張り強さが７００ｋＰａ未満となって耐変形性が悪化した。又、紙力増強剤を内添しなかった又は添加量の少ない比較例１、２の場合も、原紙及び記録媒体のＺ軸方向引張り強さが７００ｋＰａ未満となって耐変形性が悪化した。このようなことから、原紙又は記録媒体のＺ軸方向引張り強さを７００ｋＰａ以上とすることが必要なことがわかる。
【００５７】
また、インク受理層の鏡面仕上げが不充分な比較例４の場合は、像鮮明度が６０％未満となって光沢感が悪化した。このようなことから、インク受理層の像鮮明度を６０％以上とすることが必要なことがわかる。なお、比較例４では、そもそも光沢感が低いため、変形が目立たず、見かけ上耐変形性が優れているように見える。
【００５８】
なお、各実施例について、所定のインクジェットプリンタで所定枚数印字した場合の給紙状態を評価したところ、実施例５の場合、給紙がスムーズに行われない不都合が若干生じた。このようなことから、原紙及び記録媒体のＺ軸方向引張り強さを８３０ｋＰａ以下とすると好ましいことがわかる。
【００５９】
【発明の効果】
本発明においては、Ｚ軸方向引張り強さを７００ｋＰａ以上とすることで、紙支持体の層間強度が高くなり、反対面からの圧力による凹凸がインク受理層側の面に浮き出しにくいとともに、インク受理層の像鮮明度を６０％以上に管理することで、光沢感の高いインクジェット記録媒体を得ることができる。特に、記録媒体の裏側に筆記したり、お年玉くじつき年賀葉書のように凸版印刷を施す用途に有用となる。

Claims

紙支持体の少なくとも片方の面に、顔料と結着剤とを含有するインク受理層を設けたインクジェット記録媒体であって、ＪＡＰＡＮＴＡＰＰＩの紙パルプ試験法Ｎｏ．１８−１に規定するＺ軸方向引張強さが７００ｋＰａ以上であり、かつ前記インク受理層の表面の像鮮明度が５０％以上であることを特徴とするインクジェット記録媒体。
前記インク受理層が、少なくともアルミナとポリビニルアルコールとを含有することを特徴とする請求項１に記載されたインクジェット記録媒体。
前記インク受理層が湿潤状態にある間に該インク受理層を加熱した鏡面仕上げ面に圧着して乾燥することにより、該インク受理層表面に光沢を付与してなることを特徴とする請求項１または２に記載されたインクジェット記録媒体。
請求項１ないし３のいずれかに記載されたインクジェット記録媒体を用いたことを特徴とする葉書。