JP2004290098A - 転写活性化複合体及びその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】本転写調節因子(NXF)の活性調節剤のターゲットとして使用する、本転写調節因子(NXF)と他のタンパク質因子との複合体等を提供すること。
【解決手段】DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)と下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子との複合体等。<アミノ酸配列群>(a)ヒト由来のDEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547のアミノ酸配列、(b)上記アミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、上記helicaseの塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列。
【選択図】 なし
【解決手段】DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)と下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子との複合体等。<アミノ酸配列群>(a)ヒト由来のDEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547のアミノ酸配列、(b)上記アミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、上記helicaseの塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、転写活性化複合体及びその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダウン症は、常染色体異常のなかで最も多い疾患である。ダウン症の患者では、体細胞中の染色体21番が正常の2本ではなく、トリソミー(三本)になっており、これが原因で精神遅滞、成長の異常、心臓病、白血病、早期に発症するアルツハイマー症等を生じる。
今までに当該疾患原因遺伝子の単離同定及び機能解析等に関連する多くの研究がなされた結果、(1)中枢神経系細胞の発生、分化において重要な働きをする転写調節因子として知られる Single−minded 2 (以下、Sim2と記す。)の遺伝子が、ヒト染色体21番上のダウン症候群のクリティカル領域(q22.2)に存在しており、(2)この狭いクリティカル領域のみがトリソミーになってもダウン症の症状が発現することから、Sim2遺伝子の発現産物の細胞中での量が増えることがダウン症候群の病因となる要素であることが示唆されている。また(3)ARNT1又はARNT2等のARNTファミリーに属する転写共役因子(以下、ARNTファミリー属転写共役因子と記すこともある。)とSim2とが結合してなる転写抑制化複合体が、CME配列(5’−ACGTG−3’:中枢神経系の正中線における転写に必要なエレメントのコア配列であって、当該転写共役因子とSim2との蛋白質複合体が結合し得るDNAの塩基配列)に対して抑制的に働くこと、詳細には、Sim2の働きに関して、CME配列を含むプロモーターを機能可能な形で結合しているレポーター遺伝子の転写に対する活性を検討したところ、Sim2がその結合パートナーである補助因子(即ち、転写共役因子)であるARNTファミリー属転写共役因子の転写活性までも強く抑制し、そのSim2/ARNTファミリー属転写共役因子ヘテロダイマーコンプレックス(即ち、ARNTファミリー属転写共役因子とSim2とが結合してなる転写抑制化複合体)がCME配列に対して抑制的に働くこと等が明らかにされており、当該転写抑制化複合体による、転写抑制の亢進がダウン症候群の原因の一つであると現在考えられている。
【0003】
上記の知見に基づき、転写調節因子/ARNTファミリー属転写共役因子とのヘテロダイマーコンプレックスとして、CME配列に対して促進的に働くような転写活性化複合体NXF/ARNTファミリー属転写共役因子ヘテロダイマーコンプレックスが見いだされ報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−355071
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下において、上記の知見に基づき、CME配列に対して促進的に働くような転写活性化複合体NXF/ARNTファミリー属転写共役因子ヘテロダイマーコンプレックスに相互作用することによりその転写活性を調節するような因子を見出し、その因子と上記ヘテロダイマーコンプレッスクスとの高次の複合体を、例えば、低分子化合物により制御することにより、ダウン症など、本転写調節因子(NXF)が関与すると考えられる、例えば、神経疾患等の疾患の治療等に応用することが期待されている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる状況の下、鋭意検討した結果、当該転写調節因子NXFに対して特異的に相互作用しその転写活性を調節する能力を持つ因子としてDEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)を見いだし、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1. DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)と下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子との複合体(以下、本発明複合体と記すこともある。)
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列;
2. DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)と下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子との複合体であって、この転写調節因子の転写活性が複合体形成により調節されることを特徴とする複合体
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列;
3. 前記1または2記載の複合体を産生する能力を有する一つ又は複数からなるベクターが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体;
4. 下記の両DNAを同時に有する一つのベクター又は別々に有する複数からなるベクターが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体
<DNA>
(1)DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA。
(2)下記のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列;
5. 物質が有する、前記1または2記載の複合体が有する遺伝子転写調節能力を調節する能力の評価方法であって、
(1)前記3または4記載の形質転換体と被験物質とを接触させる第一工程、
(2)前記第一工程後に、前記形質転換体が有するレポーター遺伝子の発現量又はその量と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び
(3)前記第二工程により測定された発現量又はその量と相関関係を有する指標値に基づき前記物質の前記複合体が有する転写調節能力を調節する能力を評価する第三工程、
を有することを特徴とする評価方法;
6. 前記5記載の評価方法により評価された調節能力に基づき前記複合体が有する転写調節能力を調節する能力を有する物質を選抜する工程、
を有することを特徴とする探索方法;
7. 前記6記載の探索方法により選抜された物質又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする治療剤;
8. ツーハイブリッドアッセイのための、前記1または2記載の複合体の使用;
9. ツーハイブリッドアッセイのための、前記3または4記載の形質転換体の使用;
等を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
ARNT1〜3のいずれかの転写共役因子(以下、本ARNT属転写共役因子と記すこともある。)と、下記のいずれかのアミノ酸配列(即ち、本アミノ酸配列)を有する転写調節因子(以下、本転写調節因子と記すこともある。)との複合体は、前記転写共役因子と転写調節因子であるSim2との転写抑制化複合体が結合し得るDNA領域(5’−ACGTG−3’)に結合する能力を有し、前記DNA領域の下流に位置する遺伝子の転写を促進する能力を有することを特徴とする転写活性化複合体である。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列(ここで、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する転写調節因子は、ヒト由来の本転写調節因子であり、以下、h本転写調節因子と記すこともある。また、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する転写調節因子は、マウス由来の本転写調節因子であり、以下、m本転写調節因子と記すこともある。また、配列番号3で示されるアミノ酸配列を有する転写調節因子は、ラット由来の本転写調節因子であり、以下、r本転写調節因子と記すこともある。)、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列
【0008】
本転写調節因子(NXF)転写活性化複合体を構成する一つの蛋白質、即ち、ARNT1〜3のいずれかの転写共役因子とは、ARNT1、ARNT2又はARNT3(BMAL1と呼ばれるものと同一なものである)等のいずれかのARNTファミリー属転写共役因子である。これら転写共役因子は、相互比較において高い配列同一性を有する転写共役因子である。このような転写共役因子は、転写調節因子であるSim2と転写抑制化複合体を形成することにより、 5’−ACGTG−3’ で示されるDNA領域に結合する能力を有し、前記DNA領域の下流に位置する遺伝子の転写を抑制する能力を有する。これらの転写共役因子のうち、ARNT1又はARNT2を好ましいものとしてあげることができる。
【0009】
また、上記の「ストリンジェントな条件下にハイブリダイズするDNA」としては、例えば、高イオン濃度下[例えば、6XSSC(900mM塩化ナトリウム、90mMクエン酸ナトリウム)などが用いられる。]に、65℃の温度条件でハイブリダイズさせることによりDNA−DNAハイブリッドを形成し、低イオン濃度下[例えば、0.1 X SSC(15mM塩化ナトリウム、1.5mMクエン酸ナトリウム)などが用いられる。]に、65℃の温度条件で30分間洗浄した後でも該ハイブリッドが維持されうるDNAをあげることができる。
【0010】
本発明における転写調節能は、例えば、下記のレポーター遺伝子を用いたアッセイ等に基づき評価することができる。まず、本ARNT属転写共役因子と転写調節因子であるSim2との転写抑制化複合体が結合し得るDNA領域5’−ACGTG−3’、:以下、本応答性DNA領域と記すこともある。)を含む転写制御DNAの下流に連結されたレポーター遺伝子と被験転写調節因子のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子とが宿主細胞に導入されてなる形質転換体を作製し、次に前記形質転換体が有する前記レポーター遺伝子の発現量又はその量と相関関係を有する指標値を測定し、さらに測定された発現量又はその量と相関関係を有する指標値に基づき前記被験転写調節因子が有する転写調節能を評価すればよい。上記の転写調節能としては、前記DNA領域の下流に位置する遺伝子(上記のレポーター遺伝子を用いたアッセイの場合には、レポーター遺伝子を意味する。)の転写を促進する能力又は転写を抑制する能力等があげられる。
【0011】
上記の評価方法におけるレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子、分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、成長ホルモン遺伝子などを利用することができ、宿主細胞における安定性が比較的高いレポーター蛋白質をコードする遺伝子が好ましい。
【0012】
まず、本ARNT属転写共役因子と本応答性DNA領域を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子と被験転写調節因子のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(以下、被験転写調節因子の遺伝子と記すこともある。)とを、宿主細胞(例えば、HeLa細胞、CV−1細胞、Hepa1細胞、NIH3T3細胞、HepG2細胞、COS1細胞、BF−2細胞、CHH−1細胞等)に導入することによって形質転換体を作製する。ここで、被験転写調節因子の遺伝子は、例えば、上述のように、宿主細胞で機能可能なプロモーターと機能可能な形で結合された基本ベクターに組み込まれた形で宿主細胞へ導入するとよい。本応答性DNA領域を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子も、基本ベクターに組み込まれた形で用いるとよい。また例えば、本応答性DNA領域を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子が組み込まれたベクターと、宿主細胞で機能可能なプロモーターと機能可能な形で結合された被験転写調節因子の遺伝子を保有するベクターとを、マーカー遺伝子を有するベクターとともに宿主細胞に導入する。次いで当該細胞を通常数週間培養した後、導入されたマーカー遺伝子の発現量に基づき目的とする形質転換体を選抜することにより、本応答性DNA領域を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子及び宿主細胞で機能可能なプロモーターと機能可能な形で結合された被験転写調節因子の遺伝子とが宿主細胞に導入されてなる形質転換体を取得することができる。ここで「宿主細胞で機能可能なプロモーター」としては、例えば、宿主細胞が出芽酵母細胞である場合には、GAL1プロモーターのような誘導型プロモーターや、ADHプロモーター(尚、ADH1プロモーターは、例えば、ADH1プロモーター及び同ターミネーターを保持する酵母発現ベクターpAAH5 〔Washington Research Fundation から入手可能、Ammerer ら、Method in Enzymology、101 part(p.192−201)〕から通常の遺伝子工学的方法により調製することができる。ADH1プロモーターは、Washington Research Fundation の米国特許出願第299,733 に含まれており、米国において、工業的、商業目的で使用する場合は、権利者からの権利許諾を必要とする。)のような恒常的に発現するプロモーター等を使用することができる。宿主細胞が動物細胞である場合には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター等をあげることができる。また、転写制御領域としては、例えば、宿主細胞で機能可能な最小プロモーターである、宿主細胞で発現可能な遺伝子由来の最小TATAボックス配列からなるDNAをあげることができ、具体的には、TATAボックス及び転写開始点近傍の約50塩基程度からなる塩基配列を有するDNAがあげられる。
【0013】
上述のように作製された形質転換体を、例えば、数時間から数日間培養した後、当該形質転換体が有する前記レポーター遺伝子の発現量又はその量と相関関係を有する指標値を測定する。本応答性DNA領域により当該被験転写調節因子が活性化された場合には、レポーター遺伝子の転写が促進され、当該レポーター遺伝子にコードされるレポーター蛋白質が前記形質転換体の細胞内等に蓄積されるかもしくは培地中に分泌される。このレポーター蛋白質の量又はその量と相関関係を有する指標値を測定することにより、当該形質転換体の細胞あたりのレポーター遺伝子の発現量又はその量に相関関係を有する指標値を測定する。具体的には、例えば、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を用いた場合には、前記形質転換体から調製された細胞粗抽出物にルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを加えると、当該細胞粗抽出物中のルシフェラーゼ量に比例した強度で発光する。従って、この発光強度をルミノメーター等の測定装置で測定することにより、ルシフェラーゼ量、ひいては、ルシフェラーゼ遺伝子の発現量を知ることができる。同様にして、本応答性DNA領域を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子を含むが、被験転写調節因子の遺伝子を含まない形質転換体(即ち、対照形質転換体)におけるレポーター遺伝子の発現量又はその量に相関関係を有する指標値を測定し、当該測定値と上記のレポーター遺伝子の発現量又はその量に相関関係を有する指標値とを比較することにより、被験転写因子の遺伝子が有する転写調節能を評価することができる。
【0014】
本発明複合体は、DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)と本アミノ酸配列を有する転写調節因子(即ち、本転写調節因子)との複合体であり、例えば、本転写調節因子(NXF)とARNT属転写共役因子との複合体の本転写調節因子(NXF)部分に対してさらに DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)が相互作用して形成された高次複合体、または、本転写調節因子(NXF)とDEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)との複合体を含むものである。これらの複合体は、必要に応じて通常の方法等を利用してARNT属転写共役因子を存在させながら、例えば、本転写調節因子(NXF)が存在するところ、または、存在させたところへ、同時にDEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)を存在させた転換体を培養し、産生された複合体を培養物から回収することにより取得することができるが、多くの場合には、当該複合体を発現する形質転換体の形態で本発明複合体を利用するとよい。
【0015】
本発明複合体は、本発明複合体を産生する能力を有する一つ又は複数からなるベクターを宿主細胞に導入することにより作製することができる。具体的には、(1)DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)のアミノ酸配列(配列番号7で示される公知のアミノ酸配列)をコードする塩基配列(配列番号8で示される公知の塩基配列)を有するDNA、及び、(2)本転写調節因子(NXF)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA、の両DNAを同時に有する一つのベクター又は別々に有する複数からなるベクターを宿主細胞に導入して作製すればよい。
【0016】
このベクターを宿主細胞へ導入する方法としては、宿主細胞に応じた通常の導入方法を適用することができる。例えば、大腸菌を宿主細胞とする場合には、J.Sambrook, E.F.Frisch, T.Maniatis著;「 モレキュラー・クローニング 第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory発行、1989年)等に記載される塩化カルシウム法やエレクトロポレーション法等の通常の方法を用いることができる。また、哺乳類動物細胞又は昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合には、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法又はリポフェクション法等の一般的な遺伝子導入法に準じて前記細胞に導入することができる。酵母を宿主細胞とする場合には、例えば、リチウム法を基にしたYeast transformation kit(Clontech社製)などを用いて導入することができる。
【0017】
尚、ウイルスをベクターとして用いる場合には、上述のように一般的な遺伝子導入法によりウイルスのゲノムを宿主細胞に導入できるほか、前記両DNAの挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を、宿主細胞へ感染させることによっても、当該ウイルスのゲノムを宿主細胞に導入することができる。
本発明形質転換体を選抜するには、例えば、本ベクターと同時にマーカー遺伝子が導入された宿主細胞を、マーカー遺伝子の性質に応じた方法によって培養すればよい。例えば、マーカー遺伝子が、宿主細胞に致死活性を示す選抜薬剤に対する薬剤耐性を付与する遺伝子である場合には、当該選抜薬剤が添加された培地を用いて、本ベクターが導入された宿主細胞を培養すればよい。薬剤耐性を付与する遺伝子と選抜薬剤との組み合わせとしては、例えば、ネオマイシン耐性付与遺伝子とネオマイシンとの組み合わせ、ハイグロマイシン耐性付与遺伝子とハイグロマイシンとの組み合わせ、ブラストサイジンS耐性付与遺伝子とブラストサイジンSとの組み合わせ等をあげることができる。また、マーカー遺伝子が宿主細胞の栄養要求性を相補する遺伝子である場合には、当該栄養要求性に対応する栄養素を含まない最少培地を用いて、本ベクターが導入された細胞を培養すればよい。
【0018】
前記両DNAが宿主細胞の染色体内に位置する本発明形質転換体を取得するには、例えば、まず本ベクターとマーカー遺伝子を有するベクターとを制限酵素等で消化することにより直鎖状にした後、これらを前述の方法で宿主細胞に導入する。次いで当該細胞を通常数週間培養した後、導入されたマーカー遺伝子の発現量に基づき目的とする形質転換体を選抜し取得すればよい。また、例えば、まず上記のような選抜薬剤を付与する遺伝子をマーカー遺伝子として有する本ベクターを前述の継代培養した後、コロニー状に生き残った選抜薬剤耐性クローンを純化培養する方法によって宿主細胞に導入する。次いで当該細胞を選抜薬剤が添加された培地で数週間以上ことにより、前記両DNAが宿主細胞の染色体に導入されてなる本発明形質転換体を選抜し取得することもできる。導入された本発明遺伝子が宿主細胞の染色体に組み込まれたことを確認するには、当該細胞のゲノムDNAを通常の遺伝子工学的方法に準じて調製し、調製されたゲノムDNAから、導入された前記両DNAの部分塩基配列を有するDNAをプライマーやプローブとしたPCR、サザンハイブリダイゼーション等の方法を利用して、前記両DNAの存在を検出すればよい。当該形質転換体は、凍結保存が可能であり必要に応じて起眠して使用することができるので、実験毎の形質転換体作製の手間を省くことができ、また、あらかじめ性質や取扱い条件の確認された形質転換体を用いて試験を実施することが可能となる。
【0019】
上述のようにして得られた形質転換体を培養し、産生された本発明複合体を培養物から回収することにより本発明複合体を製造することができる。
例えば、形質転換体が微生物である場合には、当該形質転換体は、一般微生物における通常の培養に使用される炭素源や窒素源、有機ないし無機塩等を適宜含む各種の培地を用いて培養することができる。培養は、一般微生物における通常の方法に準じて行い、固体培養、液体培養(旋回式振とう培養、往復式振とう培養、ジャーファーメンター(JarFermenter)培養、タンク培養等)等が可能である。培養温度及び培地のpHは、微生物が生育する範囲から適宜選ぶことができ、例えば、約15℃〜約40℃の培養温度にて、pHが約6〜約8の培地で培養するのが一般的である。培養時間は、種々の培養条件によって異なるが、通常約1日間〜約5日間である。温度シフト型やIPTG誘導型等の誘導型のプロモーターを有する発現ベクターを用いた場合には、誘導時間は1日間以内が好ましく、通常数時間である。
【0020】
また、上記形質転換体が哺乳類、昆虫類等の動物細胞である場合には、当該形質転換体は一般の培養細胞における通常の培養に使用される培地を用いて培養することができる。選抜薬剤を利用して当該形質転換体を作製した場合には、当該選抜薬剤の存在下に培養することが好ましい。哺乳類動物細胞の場合には、例えば、終濃度が10%となるようFBSが添加されたDMEM培地(ニッスイ社製等)を用いて37℃、5%CO2存在下等の条件で数日毎に新しい培養液に交換しながら培養すればよい。細胞がコンフルエントになるまで増殖したら、例えば、0.25%(w/v)程度となるようトリプシンが添加されたPBS溶液を加えて個々の細胞に分散させ、数倍に希釈して新しいシャーレに播種し培養を続ける。昆虫類動物細胞の場合も同様に、例えば、10%(v/v)FBS及び2%(w/v)Yeastlateを含むGrace’s medium等の昆虫細胞用培養液を用いて培養温度25℃から35℃で培養すればよい。この際、Sf21細胞等のシャーレからはがれやすい細胞の場合には、トリプシン液を用いずピペッテイングにより分散させ継代培養を行なうことができる。また、バキュロウイルス等のウイルスベクターを含む形質転換体の場合には、培養時間は細胞質効果が現れて細胞が死滅する前、例えば、ウイルス感染後72時間までとすることが好ましい。
【0021】
培養物から、本発明形質転換体により産生された本発明複合体の回収は、適宜、通常の単離、精製の方法を組み合わせて行えばよく、例えば、まず培養終了後、形質転換体の細胞を遠心分離等で集め、集められた細胞を通常のバッファー、例えば、20mM HEPES pH7,1mM EDTA,1mM DTT,0.5mM PMSFからなるバッファーに懸濁した後、ポリトロン、超音波処理、ダウンスホモジナイザー等で破砕する。得られた破砕液を数万xgで数十分間から1時間程度超遠心分離し、上清画分を回収することにより、本発明複合体を含む画分を得ることができる。さらに、前記上清画分をイオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティ等の各種クロマトグラフィーに供することにより、より精製された本発明複合体を回収することもできる。
【0022】
本発明複合体を構成する因子をコードするDNAは、例えば、ヒト、マウス、ラットなどの動物の組織から、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory発行、1989年)等に記載の遺伝子工学的方法に準じて取得することができる。
【0023】
具体的には、まず、ヒト、マウス、ラットなどの動物の組織由来の全RNAを調製する。例えば、脳の組織を塩酸グアニジンやグアニジンチオシアネート等の蛋白質変性剤を含む溶液中で粉砕し、さらに該粉砕物にフェノール、クロロホルム等を加えることにより蛋白質を変性させる。変性蛋白質を遠心分離等により除去した後、回収された上清画分から塩酸グアニジン/フェノール法、SDS−フェノール法、グアニジンチオシアネート/CsCl法等の方法により全RNAを抽出する。なお、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えばISOGEN(ニッポンジーン製)がある。得られた全RNAを鋳型としてオリゴdTプライマーをRNAのポリA配列にアニールさせ、逆転写酵素により一本鎖cDNAを合成する。次いで、合成された一本鎖cDNAを鋳型とし、かつ大腸菌RNaseHを用いてRNA鎖にニックとギャップを入れることにより得られるRNAをプライマーとして大腸菌のDNAポリメラーゼIを用いて二本鎖のcDNAを合成する。更に、合成された二本鎖cDNAの両末端をT4 DNAポリメラーゼにより平滑化する。末端が平滑化された二本鎖cDNAは、フェノール−クロロホルム抽出、エタノール沈殿等の通常の方法により精製、回収する。なお、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えばcDNA合成システムプラス(アマシャムファルマシアバイオテク社製)やTimeSaver cDNA合成キット(アマシャムファルマシアバイオテク社製)等があげられる。次に、得られた二本鎖cDNAを例えば、プラスミドpUC118やファージλgt10などのベクターとリガーゼを用いて連結することによりcDNAライブラリーを作製する。尚、cDNAライブラリーとしては、市販のcDNAライブラリー(GIBCO−BRL社製やClontech社製等)を用いることも可能である。
【0024】
上記のようなcDNAライブラリーから、着目する因子の増幅したい部分の塩基配列をはさみこむように常法により設計したPCRフォワードプライマーとPCRリバースプライマーを用いるPCRポリメラーゼチェイン反応(以下、PCRと記す。)や、着目因子の得たい部分の塩基配列又は該塩基配列の部分塩基配列を有するDNAをプローブとして用いるハイブリダイゼーション法により、着目因子DNAを取得することができる。
【0025】
尚、以上のPCRのプライマーは市販のソフトウエアGenetyxSV/R(ソフトウエア開発社製)などで設計することができる。PCRの条件としては、例えば、反応液50μl中に、LA−Taqポリメラーゼ用10倍濃緩衝液(宝酒造社製)5μl、2.5mM dNTP混合液(各2.5mMのdATP,dGTP,dCTP及びdTTPを含む。)5μl(dATP,dGTP,dCTP及びdTTP各々の終濃度が0.25mM)、20μMプライマー 各0.25〜1.25μl(終濃度が0.1〜0.5μM)、鋳型cDNA 0.1〜0.5μg、LA−Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)1.25ユニットを含む組成の反応液にて、95℃で1分間次いで68℃で3分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行う等の条件が挙げられる。
【0026】
ハイブリダイゼーション法に用いられるプローブとしては、100bpから1000bp程度、好ましくは約500bp前後のcDNA断片を用いればよい。同cDNA断片を例えば32P放射能ラベルを行うための市販のラベリングキット例えばアマシャムファルマシア社製ランダムプライマーラベリングキットなどを用いて放射能ラベル等をすることによりスクリーニング用プローブとすればよい。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、6×SSC(0.9M塩化ナトリウム、0.09Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液(0.1(w/v)フィコール400、0.1(w/v)ポリビニルピロリドン、0.1(w/v)BSA)、0.5(w/v)SDS及び100μg/ml変性サケ精子DNA存在下に、65℃で保温し、次いで1×SSC(0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5(w/v)SDS存在下に、室温で15分間の保温を2回行い、さらに0.1×SSC(0.015M 塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5(w/v)SDS存在下に、68℃で30分間保温する条件等をあげることができる。また、例えば、5xSSC、50mM HEPES pH7.0、10xデンハルト溶液及び20μg/ml変性サケ精子DNA存在下に65℃にて保温し、次いで2xSSC中で室温にて30分間の保温を行い、さらに0.1xSSC中で65℃にて40分間の保温を2回行う条件をあげることもできる。このようにして得られた本発明複合体を構成する因子をコードするDNAは、例えば、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等に記載の遺伝子工学的方法に準じてベクターにクローニングすることができる。具体的には例えば、TAクローニングキット(Invitrogen社)やpBluescriptII(Stratagene社)などの市販のプラスミドベクターを用いてクローニングすることができる。
【0027】
得られた本発明複合体を構成する因子をコードするDNAの塩基配列は、Maxam Gilbert法 (例えば、Maxam,A.M & W.Gilbert,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,560,1977等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F. & A.R.Coulson,J.Mol.Biol.,94,441,1975、Sanger,F,& Nicklen and A.R.Coulson.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,5463,1977等に記載される)等により確認することができる。
【0028】
本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを、当該遺伝子が導入される宿主細胞において利用可能なベクター(以下、基本ベクターと記す。)、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖でき、宿主細胞からの単離、精製が可能であり、検出可能なマーカーをもつベクターに、通常の遺伝子工学的手法に準じて組み込むことにより該因子の因子DNAベクターを構築することができる。
【0029】
同ベクターの構築に用いることができる基本ベクターとしては、具体的には大腸菌を宿主細胞とする場合には、例えば、プラスミドpUC119(宝酒造社製)やファージミドpBluescriptII(Stratagene社製)等をあげることができる。出芽酵母を宿主細胞とする場合には、プラスミドpGBT9、pGAD424、pACT2(Clontech社製)等をあげることができる。また、哺乳類動物細胞を宿主細胞とする場合には、pRc/RSV、pRc/CMV(Invitrogen社製)等のプラスミド、ウシパピローマウイルスプラスミドpBPV(アマシャムファルマシアバイオテク社製)もしくはEBウイルスプラスミドpCEP4(Invitrogen社製)等のウイルス由来の自律複製起点を含むベクター、ワクシニアウイルス等のウイルス等をあげることができる。さらに、昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合には、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスをあげることができる。自律複製起点を含むベクター、例えば、上記の酵母用プラスミドpACT2や、ウシパピローマウイルスプラスミドpBPV、EBウイルスプラスミドpCEP4等を用いて該ベクターを構築すると、そのベクターは宿主細胞に導入された際にエピソームとして細胞内に保持される。
【0030】
バキュロウイルスやワクシニアウイルス等のウイルスに本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを組み込むには、使用しようとするウイルスのゲノムと相同な塩基配列を含有するトランスファーベクターを用いればよい。このようなトランスファーベクターとしては、例えば、Pharmingen社から市販されているpVL1392,pVL1393(Smith,G.E.,Summers M.D.et al.:Mol.Cell.Biol.,3,2156−2165(1983))、pSFB5(Funahashi,S.et al.:J.Virol.,65,5584−5588(1991))等のプラスミドをあげることができる。本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを前記のようなトランスファーベクターに挿入し、当該トランスファーベクターとウイルスのゲノムとを同時に宿主細胞に導入すると、トランスファーベクターとウイルスのゲノムとの間で相同組換えが起こり、本転写調節因子DNAがゲノム上に組み込まれたウイルスを得ることができる。ウイルスのゲノムとしては、Baculovirus,Adenovirus,Vacciniavirusなどのゲノムを用いることができる。
【0031】
より具体的には、例えば、バキュロウイルスに本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを組み込む場合には、まずトランスファーベクターpVL1393,pVL1392等のマルチクローニング部位に当該DNAを挿入した後、該トランスファーベクターのDNAとBaculovirus genome DNA(Baculogold;Pharmingen社製)とを昆虫細胞Sf21株(ATCCから入手可能)にリン酸カルシウム法等によって導入することにより、得られる細胞を培養する。次いで培養液から遠心分離等により、本発明複合体を構成する因子をコードするDNAが挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を回収し、回収されたウィルス粒子をフェノール等で除蛋白処理することにより、本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを含有するウイルスのゲノムを得ることができる。さらに、得られたウイルスのゲノムを、昆虫細胞Sf21株等のウイルス粒子形成能力を有する宿主細胞にリン酸カルシウム法等によって導入することにより、得られる細胞を培養する。このようにして本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを含有するウイルス粒子を増やすことができる。
【0032】
一方、マウス白血病レトロウイルス等の比較的小さなゲノムに本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを組み込むには、トランスファーベクターを利用せずに、当該DNAを直接組み込むこともできる。例えば、ウイルスベクタ−DC(X)(Eli Gilboa et al.,BioTechniques,4,504−512(1986))等は、当該ベクター上のクローニング部位に本因子DNAを組み込む。得られた本発明複合体を構成する因子をコードするDNAの組み込れたウイルスベクターを、例えば、Ampli−GPE(J.Virol.,66,3755(1992))等のパッケージング細胞に導入することにより、当該DNAの挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を得ることができる。
【0033】
本発明複合体を構成する因子をコードするDNAの上流に、宿主細胞で機能可能なプロモーターを機能可能な形で結合させ、これを上述のような基本ベクターに組み込むことにより、本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを宿主細胞で発現させることの可能なDNAを構築することができる。ここで、「機能可能な形で結合させる」とは、本発明複合体を構成する因子をコードするDNAが導入される宿主細胞において、プロモーターの制御下に当該DNAが発現されるように、当該プロモーターと本発明複合体を構成する因子をコードするDNAとを結合させることを意味する。宿主細胞で機能可能なプロモーターとしては、導入される宿主細胞内でプロモーター活性を示すDNAをあげることができる。例えば、宿主細胞が大腸菌である場合には、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター(lacP)、トリプトファンオペロンのプロモーター(trpP)、アルギニンオペロンのプロモーター(argP)、ガラクトースオペロンのプロモーター(galP)、tacプロモーター、T7プロモーター、T3プロモーター、λファージのプロモーター(λ−pL、λ−pR)等をあげることができ、宿主細胞が動物細胞や分裂酵母である場合には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス(SV40)の初期又は後期プロモーター、マウス乳頭腫ウイルス(MMTV)プロモーター等をあげることができる。宿主細胞が出芽酵母である場合には、ADH1プロモーター等あげることができる。
また、宿主細胞において機能するプロモーターをあらかじめ保有する基本ベクターを使用する場合には、前記プロモーターと本発明複合体を構成する因子をコードするDNAとが機能可能な形で結合するように、前記プロモーターの下流に当該DNAを挿入すればよい。
【0034】
例えば、前述のプラスミドpRc/RSV、pRc/CMV等には、動物細胞で機能可能なプロモーターの下流にクローニング部位が設けられている。当該クローニング部位に本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを挿入することによって得られるベクターを動物細胞へ導入することにより、当該動物細胞において本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを発現させることができる。これらのプラスミドにはあらかじめSV40の自律複製起点(ori)が組み込まれているため、oriを欠失したSV40ゲノムで形質転換された培養細胞、例えば、COS細胞等に当該プラスミドを導入すると、細胞内でプラスミドのコピー数が非常に増大し、結果として当該プラスミドに組み込まれた本転写調節因子DNAを大量発現させることもできる。また前述の酵母用プラスミドpACT2はADH1プロモーターを有しており、当該プラスミド又はその誘導体のADH1プロモーターの下流に本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを挿入すれば、本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを、例えば、CG1945(Clontech社製)等の出芽酵母内で大量発現させることが可能なDNAベクターが構築できる。
【0035】
本発明形質転換体は、本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを発現するベクターのほかに、同複合体により活性化されうるプロモーターを機能可能な形で結合しているレポーター遺伝子のDNAをも含有するような形質転換体であってもよい。
【0036】
このような形質転換体は、物質が有する、本発明複合体が有する転写調節能力を調節する能力(即ち、本調節能力)の評価方法等に利用することができる。例えば、物質が有する本調節能力の評価方法であって、
(1)上記の形質転換体と被験物質とを接触させる第一工程、
(2)前記第一工程後に、前記形質転換体が有するレポーター遺伝子の発現量又はその量と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び
(3)前記第二工程により測定された発現量又はその量と相関関係を有する指標値に基づき前記物質の前記転写活性化複合体が有する転写促進能力を調節する能力を評価する第三工程;
を有することを特徴とする評価方法(即ち、本発明評価方法)をあげることができる。
【0037】
さらに当該評価方法により評価された調節能力に基づき前記複合体が有する転写調節能力を調節する能力を有する物質を選抜する工程を有することを特徴とする探索方法、当該探索方法により選抜された物質又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする、例えば、ダウン症改善剤等の治療剤(即ち、本発明治療剤)等にも応用することが考えられる。
【0038】
本発明探索方法により選抜される物質またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする治療剤(即ち、本発明治療剤)は、その有効量を経口的または非経口的にヒト等の哺乳動物に対し投与することができる。例えば、経口的に投与する場合には、本発明治療剤は錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の通常の形態で使用することができる。また、非経口的に投与する場合には、本発明治療剤を溶液、乳剤、懸濁液等の通常の液剤の形態で使用することができる。前記形態の本発明治療剤を非経口的に投与する方法としては、例えば注射する方法、坐剤の形で直腸に投与する方法等を挙げることができる。
【0039】
前記の適当な投与剤型は許容される通常の担体、賦型剤、結合剤、安定剤、希釈剤等に本発明探索方法により選抜される物質またはその薬学的に許容される塩を配合することにより製造することができる。また注射剤型で用いる場合には、許容される緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等を添加することもできる。
【0040】
投与量は、投与される哺乳動物の年令、性別、体重、疾患の程度、本発明治療剤の種類、投与形態等によって異なるが、通常は経口の場合には成人で1日あたり有効成分量として約1mg〜約2g、好ましくは有効成分量として約5mg〜約1gを投与すればよく、注射の場合には成人で有効成分量として約0.1mg〜約500mgを投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回または数回に分けて投与することができる。
【0041】
本発明では、ツーハイブリッドアッセイ用のための本発明複合体や形質転換体等をも提供している。
即ち、本発明は、ツーハイブリッドアッセイのための、(1)本発明複合体の使用に関する発明、(2)ツーハイブリッドアッセイのための、本発明形質転換体及びその使用に関する発明を含んでいる。ここで、ツーハイブリッドアッセイのためのシステムを調製するには、市販のキット、例えば、Matchmaker Two−hybrid System(Clontech社製)、CheckMate Mammalian Two−Hybrid System(Promega)等を利用すればよい。
【0042】
ツーハイブリッドに用いられる本発明複合体は、下記の構成要素Iのうち、いずれか一方の構成要素(A又はB)及び下記の構成要素IIのうち、いずれか一方の構成要素(X又はY)を有する蛋白質と、下記の構成要素Iのうち、他方の構成要素(B又はA)及び下記の構成要素IIのうち、他方の構成要素(Y又はX)を有する蛋白質とを含有してなり、両者の蛋白質により形成される複合体である。ここで、例えば、当該両者の蛋白質がリガンドによる制御下において形成してなる複合体であってもよい。
<構成要素I>
(A)DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)、又は
(B)本転写調節因子(NXF)
<構成要素II>
(X)宿主細胞内で機能可能な転写調節因子のDNA結合領域、又は
(Y)宿主細胞内で機能可能な転写調節因子の転写活性化領域
【0043】
尚、この場合には、本転写調節因子(NXF)は、リガンドとの複合体を形成するために、前記リガンドが結合する領域を有していてもよい。このような領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAとしては、本転写調節因子(NXF)の部分塩基配列であり、例えば、配列番号4で示される塩基配列のうち、塩基番号132〜2507で示される塩基配列を含む塩基配列等をあげることができる。
【0044】
構成要素IIの(X)を有する転写調節因子としては、例えば、Gal4蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−CGGAGGACTGTCCTCCG−3’)、Lex蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−TACTGTATGTACATACAGTA−3’)、Lac I受容体蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−GAATTGTGAGCGCGCACAATTC−3’)、テトラサイクリン受容体蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−TCGAGTTTACCACTCCCTATCAGTGATAGAGAAAAGTGAAAG−3’)、ZFHD−1蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−TAATGATGGGCG−3’)、ARNT1〜3のいずれかの転写共役因子と転写調節因子であるSim2との転写抑制化複合体が結合し得るDNAの塩基配列(5’−ACGTG−3’)等のいずれかの塩基配列からなるDNAに結合する転写調節因子であって、かつ宿主細胞内で機能可能な転写調節因子をあげることができる。一方、構成要素IIの(Y)を有する転写調節因子としては、例えば、Gal4蛋白質、Lex蛋白質、Lac I受容体蛋白質、テトラサイクリン受容体蛋白質、ZFHD−1蛋白質、B42蛋白質、本ARNT属転写共役因子である蛋白質、VP16蛋白質等の宿主細胞内で機能可能な転写調節因子をあげることができる。
【0045】
このような各構成要素からなる複合体は、例えば、本発明形質転換体等により産生される。ツーハイブリッドに用いられるために、通常その形質転換体は、本発明複合体とともに上述構成要素IIの(X)を有する転写調節因子の応答配列をプロモーター部分に持つレポーター遺伝子を有するのが望ましい。尚、宿主細胞が、利用可能な内在性のレポーター遺伝子を有する場合には、それを利用してもよく、この場合にはレポーター遺伝子の導入を省略することができる。
ここでレポーター遺伝子とは、ルシフェラーゼ遺伝子、分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、成長ホルモン遺伝子等の通常のレポーターアッセイに用いられるレポーター遺伝子であって、宿主細胞における安定性が比較的高いレポーター蛋白質をコードする遺伝子であることが好ましい。構成要素IIの(X)結合可能なDNAとしては、例えば、Gal4蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−CGGAGGACTGTCCTCCG−3’)、Lex蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−TACTGTATGTACATACAGTA−3’)、Lac I受容体蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−GAATTGTGAGCGCGCACAATTC−3’)、テトラサイクリン受容体蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−TCGAGTTTACCACTCCCTATCAGTGATAGAGAAAAGTGAAAG−3’)、ZFHD−1蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−TAATGATGGGCG−3’)、ARNT1〜3のいずれかの転写共役因子と転写調節因子であるSim2との転写抑制化複合体が結合し得るDNA領域(5’−ACGTG−3’)等のいずれかの塩基配列からなるDNAをあげることができる。
【0046】
例えばClontech社製のTwo−hybridアッセイキットを用いる場合は同キット(PT3247−1;Clontech社製)等の添付説明書を参考に、このような各構成要素を組み合わせながら本発明複合体が発現するように適切にかつ塩基配列の読み枠を合わせて連結させることによりベクターに挿入し、通常の遺伝子工学的手法を用いて同一の宿主細胞に導入することにより、当該形質転換体を作製することができる。
【0047】
本発明形質転換体を作製するために使用される宿主細胞としては、例えば、出芽酵母細胞、HeLa細胞等の哺乳類動物細胞等があげられる
【0048】
【実施例】
実施例1 (本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)断片相互作用因子の探索)
出芽酵母内でGal4のDNA結合ドメインのC末端に任意の蛋白質断片を融合させたものを発現させるためのプラスミドpGBKT7ベクター(Clontech社より購入)に対し、以下のようにしてmouse 本転写調節因子(NXF)のEcoRV−StuI断片を導入してGal4−m本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)融合蛋白発現プラスミドを構築した。
まず、mouse 本転写調節因子(NXF)cDNAは以下のようにして得た。
5’−aagcacggag gaggaagccg ccggtgcgtc gggac−3’
5’−ggagagcggc tccacgtctt gatgacaata tgcca−3’
の配列を持つポリヌクレオチドをそれぞれDNA合成機(アプライドバイオシステムズ社製モデル394)を用いて合成した。このように合成されたポリヌクレオチドをプライマーとして、かつ、マウスBrain cDNAライブラリー(#10655−017ギブコBRL社製)10 ngを鋳型として、反応液50μl当たり上記のポリヌクレオチド10pmolを添加し、LA−Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)及び当該酵素を含むキットに添付されたバッファーを用いてPCRを行った。当該PCRにおける反応条件は、PCRsystem9700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、かつ、95℃1分間、次いで68℃3分間を1サイクルとして35サイクルであった。
得られたPCR反応液の全量を、低融点アガロース電気泳動(アガロースL:ニッポンジーン)に供することにより、増幅DNA断片(約2.5kb)を精製・回収した。
次に、pGBKT7ベクターをNcoIで37℃2時間インキュベートして切断後、アルカリフォスファターゼ処理を65℃1時間行い切断末端を脱リン酸化し、更にBlunting kit(タカラ製)で末端を平滑末端化したものをインサート断片導入用ベクターとした。このベクターに結合させるためのインサート断片として、上述のmouse本転写調節因子(NXF)cDNAをEcoRVとStuIで37℃2時間切断してアガロースゲル電気泳動で860bpのバンドを回収したものを準備し、上述のベクターに対してT4Ligaseで結合した。正しく結合されGal4 DNA結合ドメインとの融合蛋白質を発現できるものをABI3700自動シークエンサーで塩基配列を決定することで選び出し、pGBKT7−m本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)を完成した。
以上のようにして作製した、Gal4のDNA結合ドメインのC末端に着目因子の断片が融合した蛋白質を発現するプラスミドを以下のようにして酵母に導入した。すなわち、酢酸リチウム法をベースにしたYeast Transformation system2(K1606−1;クロンテック社製)のキットを用いて、キットの取扱説明書の方法に従って出芽酵母株AH109(PT3183−1;クロンテック社製Pretransformed Libraryに付属)に対してプラスミドDNAを導入し、(−Trp)のSD培地上に形質転換AH109として酵母コロニーを単離分離した。同組換え酵母コロニーのおのおのの組換え酵母クローンは、ADH1プロモーターの制御下に、Gal4のDNA結合ドメインのC末端に着目因子の断片が融合した蛋白質を発現している。
次に、Library host酵母株であるY187にpACT2−ヒトBrain cDNA ライブラリーがあらかじめ導入されているcDNAライブラリー(HY4004AH;Pretransformed cDNA Library;Clontech社製)2x107cellsに対して、上述のGal4のDNA結合ドメインのC末端に着目因子の断片が融合した蛋白質を発現している組換えAH109酵母株5x109を混合し、50mlのYPDA完全液体培地(Clontech社より購入)中30℃で30rpmで24時間インキュベートし、Matingを完了させた。このようなMatingの結果、1つの酵母細胞中に、Gal4のDNA結合ドメインのC末端に着目因子の断片が融合した蛋白質と、pACT2由来のGal4の転写活性化領域と任意の因子の蛋白断片の融合蛋白質の両者が同時に発現する組換え体が作製できた。このMating完了酵母培養液を五十等分してそれぞれをSD(−Ade/−His/−Leu/−Trp/+X−alpha−Gal)プレートに塗り広げ、30℃で2週間培養した。その結果、Gal4のDNA結合ドメインのC末端に着目因子の断片が融合した蛋白質と、pACT2由来のGal4の転写活性化領域と任意の因子の蛋白断片の融合蛋白質の両者が酵母細胞中で相互作用した結果としてAH109がもともと保持していたレポーター遺伝子が活性化し、Ade非要求性、His非要求性及びX−alpha−Gal代謝活性獲得というフェノタイプを獲得したクローンのコロニーがプレート上に青い3mm程度のコロニーとして出現した。このコロニーの一部をかきとり、以下のプライマー対を利用したコロニーPCRで、pACT2ベクタ−のインサート断片である任意の因子のDNAを増幅した。プライマー対の配列は、5’−tatctattcgatgatgaagataccccaccaaaccc−3’, 5’−gaagtgaacttgcggggtttttcagtatctacgat−3’であった。
PCRの条件は、LA−Taqポリメラーゼ(タカラ製)及び付属バッファーを用いて、95℃5分の熱変性後、(95℃1分68℃3分)を1サイクルとして35サイクルであった。得られた特異的PCR産物をABI社製3700オートシークエンサーで塩基配列を決定した。その結果、本転写調節因子(NXF)に相互作用するこの任意の因子の断片は、Genbank accession No. NM_145646のHomo sapiens DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957) ( Lin,S., Ying,K., Wang,Z., Xie,Y. and Mao,Y. TITLE Molecular cloning of a new member of DEAH−box RNA/DNA helicase
gene Family Genbank direct submission) であることが判明した。
【0049】
実施例2 (動物培養細胞内Two−hybridアッセイ)
上述の酵母のTwo−hybrid assayの陽性クローンのインサート断片をもつpACT2プラスミドをYeast plasmid isolation kit(K1611−1;Clontech社製)で、同キットの説明書に従って酵母から回収後、同プラスミドをEcoRIとXhoIで切断し次にBlunting kit(タカラ製)で平滑末端化後、約560bpのインサート断片をアガロース電気泳動で回収した。この断片を次に、動物細胞内Two−hybrid assay用ベクターpVP16ベクター(Clontech社より購入)をBamHIで37℃2時間切断後アルカリフォスファターゼで65℃1時間処理して末端を脱リン酸化し、更にBlunting kit(タカラ製)で平滑末端化したベクターに対して、T4Ligaseで結合させた。得られたプラスミドは動物培養細胞中で、VP16の転写活性化ドメインのC末端に着目遺伝子が融合した蛋白質を発現することができる。VP16の転写活性化ドメインと着目遺伝子の翻訳枠が合っていることはABI社製3700DNAシークエンサーで塩基配列を決定することで確認した。
一方、pMベクター(市販キットK1602−1に含まれる;Clontech社より購入した)をBamHIで37℃2時間切断後アルカリフォスファターゼで65℃1時間処理して末端を脱リン酸化し、更にBlunting kit(タカラ製)で平滑末端化したベクターに対して、mouse本転写調節因子(NXF)cDNAをEcoRVとStuIで37℃2時間切断してアガロースゲル電気泳動で860bpのバンドを回収したものをT4Ligaseで結合させた。得られたプラスミドは、動物培養細胞中で、Gal4のDNA結合ドメインのC末端に着目遺伝子が融合した蛋白質を発現することができる。Gal4のDNA結合ドメインと着目遺伝子の翻訳枠が合っていることはABIモデル3700型オートシークエンサーを用いたダイターミネーター法で塩基配列を決定することで確認した。
このようにして、Yeast two−hybridアッセイ用のプラスミドからインサート断片を、動物培養細胞中でTwo−hybridアッセイを行うためのプラスミドベクターへと移動することで、動物培養細胞中でTwo−hybridアッセイを行うためのプラスミドの準備ができた。
同アッセイに用いるレポータープラスミドはGal4応答配列をもつpGL3−TATA−Galx4を用いた。本プラスミドは、TATA最小プロモーターを有するルシフェラーゼ遺伝子の上流にGal4のDNA結合領域が結合可能なDNAがタンデムに4コピー導入されたものである。本プラスミドは以下のようにして作製した。まず、GAL4のDNA結合領域が結合可能なDNAを有する2種のオリゴヌクレオチド(5´−cgcgtcgagc tcgggtcgga ggactgtcct ccgactgctc gagtcgagct cgggtcggag gactgtcctc cgactgctcg aga−3´、5´−cgcgtctcga gcagtcggag gacagtcctc cgacccgagc tcgactcgag cagtcggagg acagtcctcc gacccgagct cga−3´)をハイブリダイズした後にT4 Kinaseで5´末端をリン酸化し、これをT4 Ligaseでタンデムに結合させた。得られた二本鎖オリゴヌクレオチドを、低融点アガロース(NuseiveGTG;FMCbio社製)を用いた電気泳動に供することにより、当該二本鎖オリゴヌクレオチドがタンデムに2つ結合してなるDNA断片を回収した。これをインサート断片とし、pGL3−TATAベクターをMluIで切断した後アルカリフォスファターゼ(BAP C75;宝酒造製)処理したもの0.1μgに、T4 Ligase(宝酒造製)で16℃16時間反応させることにより結合させた。このようにして、TATA最小プロモーターを有するルシフェラーゼ遺伝子の上流に、GAL4のDNA結合領域が結合可能なDNAが4コピー導入されたレポーター遺伝子プラスミドであるpGL3−TATA−Galx4を得た。
実施例3 (動物培養細胞内Two−hybridアッセイ)
約5x106のHeLa細胞を、10%FBSを含むDMEM培地(日水製薬社製)を用いて37℃にて5%CO2存在下に、直径約10cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて培養した。翌日、培養された細胞をトリプシン処理により分散し、FBSを含まないDMEM培地で2回洗浄した後、再度5x106に細胞密度がなるようにFBSを含まないDMEM培地に分散させた。この細胞分散液0.4mlに対して、前記のように調製されたレポーター遺伝子プラスミド(pGL3−TATA−Galx4)(例えば3μg)と前記のように調製されたキメラ蛋白質を発現するプラスミド(例えばそれぞれ3μg)を混合した後、この混合物をエレクトロポレーション用キュベットに移し、Geneパルサー(BIORAD社製)を用いたエレクトロポレーション法により220V、950μFの条件でトランスフェクションを行った。トランスフェクション後、培地を10%FBSを含むDMEM培地に置換してさらに6穴プレート内で約24時間培養した。次いで、ウェルから培地を除き、器壁に接着している細胞をPBS(−)で2回洗浄した後、5倍に希釈したPGC50(東洋インキ社製)をウェルあたり200μlずつ加えてさらに室温に30分間放置した。この細胞液20μlずつオペークプレート(コーニングコースター社製)上に分注し、当該プレートを酵素基質自動インジェクター付きルミノメーターLB96P(ベルトールド社製)にセットし、50μlの基質液PGL100(東洋インキ社製)を自動分注した後、各ウェル内のルシフェラーゼ活性をそれぞれ測定した。
その結果、図1から明らかなように、Gal4−DNA結合ドメイン−本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)融合蛋白質およびVP16転写活性化ドメイン−DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)融合蛋白質の両者が存在するときのみにGal4応答レポーター遺伝子の強い活性化が観察された。Gal4−DNA結合ドメイン−本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)融合蛋白質のみ、またはVP16転写活性化ドメイン−DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)融合蛋白質のみではこのようなGal4応答レポーター遺伝子の活性化は観察されなかった。このことから、本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)断片とDEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)との間の特異的相互作用が存在することが明らかとなった。
本アッセイ系において、プラスミドを細胞に導入後、培養液中に調べたい因子、または化合物を共存させることにより、それらの因子または化合物が本発明複合体の活性を調節するかどうか検討することができる。
具体的には、約5x106のHeLa細胞を、10%FBSを含むDMEM培地(日水製薬社製)を用いて37℃にて5%CO2存在下に、直径約10cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて培養する。翌日、培養された細胞をトリプシン処理により分散し、FBSを含まないDMEM培地で2回洗浄した後、再度5x106に細胞密度がなるようにFBSを含まないDMEM培地に分散させる。この細胞分散液0.4mlに対して、前記のように調製されたレポーター遺伝子プラスミド(pGL3−TATA−Galx4)(例えば3μg)と前記のように調製されたキメラ蛋白質を発現するプラスミド(例えばそれぞれ3μg)を混合した後、この混合物をエレクトロポレーション用キュベットに移し、Geneパルサー(BIORAD社製)を用いたエレクトロポレーション法により220V、950μFの条件でトランスフェクションを行う。トランスフェクション後、培地を披験物質を含むまたは含まないDMEM培地(10%FCS入り)に置換してさらに6穴プレート内で約24時間培養する。次いで、ウェルから培地を除き、器壁に接着している細胞をPBS(−)で2回洗浄した後、5倍に希釈したPGC50(東洋インキ社製)をウェルあたり200μlずつ加えてさらに室温に30分間放置する。この細胞液20μlずつオペークプレート(コーニングコースター社製)上に分注し、当該プレートを酵素基質自動インジェクター付きルミノメーターLB96P(ベルトールド社製)にセットし、50μlの基質液PGL100(東洋インキ社製)を自動分注した後、各ウェル内のルシフェラーゼ活性をそれぞれ測定する。測定結果を、披験物質を含む場合と含まない場合で比較検討する。
この評価方法により評価された披験物質の調節能力に基づき、前記複合体が有する転写調節能力を調節する能力を有する物質を選抜する。
【0050】
【発明の効果】
本発明により、本転写調節因子(NXF)の活性調節剤のターゲットとして使用する、DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)と本転写調節因子(NXF)との複合体等が提供可能となった。例えば、低分子化合物により制御することにより、ダウン症など、本転写調節因子(NXF)が関与すると考えられる、例えば、神経疾患等の疾患の治療等に応用することが期待されている。
【0051】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)断片とDEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)の複合体形成を確認するための動物培養細胞ツーハイブリッドアッセイの結果を示す図である。レポーター遺伝子プラスミドとしてpGL3−TATA−Galx4を全部のレーンで用いている。各レーンの下の表示は、レポーター遺伝子プラスミドに作用させた因子を示す。レーン1は、レポータープラスミドのみ。レーン2は、Gal4DNA結合ドメイン−本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)融合蛋白質のみ。レーン3はVP16転写活性化ドメイン−DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)融合蛋白質のみ。レーン4は、Gal4DNA結合ドメイン−本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)融合蛋白質に加えてVP16転写活性化ドメイン−DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)融合蛋白質を加えた。レーン5は、Gal4DNA結合ドメインのみを発現するpMベクターに加えてVP16の転写活性化ドメインのみを発現するpVP16ベクターを加えた。このレーンは陰性対照に相当する。縦軸は、ルシフェラーゼ活性値を示しており、これはレポーター遺伝子の転写に対する活性を表す指標値である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、転写活性化複合体及びその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダウン症は、常染色体異常のなかで最も多い疾患である。ダウン症の患者では、体細胞中の染色体21番が正常の2本ではなく、トリソミー(三本)になっており、これが原因で精神遅滞、成長の異常、心臓病、白血病、早期に発症するアルツハイマー症等を生じる。
今までに当該疾患原因遺伝子の単離同定及び機能解析等に関連する多くの研究がなされた結果、(1)中枢神経系細胞の発生、分化において重要な働きをする転写調節因子として知られる Single−minded 2 (以下、Sim2と記す。)の遺伝子が、ヒト染色体21番上のダウン症候群のクリティカル領域(q22.2)に存在しており、(2)この狭いクリティカル領域のみがトリソミーになってもダウン症の症状が発現することから、Sim2遺伝子の発現産物の細胞中での量が増えることがダウン症候群の病因となる要素であることが示唆されている。また(3)ARNT1又はARNT2等のARNTファミリーに属する転写共役因子(以下、ARNTファミリー属転写共役因子と記すこともある。)とSim2とが結合してなる転写抑制化複合体が、CME配列(5’−ACGTG−3’:中枢神経系の正中線における転写に必要なエレメントのコア配列であって、当該転写共役因子とSim2との蛋白質複合体が結合し得るDNAの塩基配列)に対して抑制的に働くこと、詳細には、Sim2の働きに関して、CME配列を含むプロモーターを機能可能な形で結合しているレポーター遺伝子の転写に対する活性を検討したところ、Sim2がその結合パートナーである補助因子(即ち、転写共役因子)であるARNTファミリー属転写共役因子の転写活性までも強く抑制し、そのSim2/ARNTファミリー属転写共役因子ヘテロダイマーコンプレックス(即ち、ARNTファミリー属転写共役因子とSim2とが結合してなる転写抑制化複合体)がCME配列に対して抑制的に働くこと等が明らかにされており、当該転写抑制化複合体による、転写抑制の亢進がダウン症候群の原因の一つであると現在考えられている。
【0003】
上記の知見に基づき、転写調節因子/ARNTファミリー属転写共役因子とのヘテロダイマーコンプレックスとして、CME配列に対して促進的に働くような転写活性化複合体NXF/ARNTファミリー属転写共役因子ヘテロダイマーコンプレックスが見いだされ報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−355071
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下において、上記の知見に基づき、CME配列に対して促進的に働くような転写活性化複合体NXF/ARNTファミリー属転写共役因子ヘテロダイマーコンプレックスに相互作用することによりその転写活性を調節するような因子を見出し、その因子と上記ヘテロダイマーコンプレッスクスとの高次の複合体を、例えば、低分子化合物により制御することにより、ダウン症など、本転写調節因子(NXF)が関与すると考えられる、例えば、神経疾患等の疾患の治療等に応用することが期待されている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる状況の下、鋭意検討した結果、当該転写調節因子NXFに対して特異的に相互作用しその転写活性を調節する能力を持つ因子としてDEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)を見いだし、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1. DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)と下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子との複合体(以下、本発明複合体と記すこともある。)
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列;
2. DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)と下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子との複合体であって、この転写調節因子の転写活性が複合体形成により調節されることを特徴とする複合体
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列;
3. 前記1または2記載の複合体を産生する能力を有する一つ又は複数からなるベクターが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体;
4. 下記の両DNAを同時に有する一つのベクター又は別々に有する複数からなるベクターが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体
<DNA>
(1)DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA。
(2)下記のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列;
5. 物質が有する、前記1または2記載の複合体が有する遺伝子転写調節能力を調節する能力の評価方法であって、
(1)前記3または4記載の形質転換体と被験物質とを接触させる第一工程、
(2)前記第一工程後に、前記形質転換体が有するレポーター遺伝子の発現量又はその量と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び
(3)前記第二工程により測定された発現量又はその量と相関関係を有する指標値に基づき前記物質の前記複合体が有する転写調節能力を調節する能力を評価する第三工程、
を有することを特徴とする評価方法;
6. 前記5記載の評価方法により評価された調節能力に基づき前記複合体が有する転写調節能力を調節する能力を有する物質を選抜する工程、
を有することを特徴とする探索方法;
7. 前記6記載の探索方法により選抜された物質又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする治療剤;
8. ツーハイブリッドアッセイのための、前記1または2記載の複合体の使用;
9. ツーハイブリッドアッセイのための、前記3または4記載の形質転換体の使用;
等を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
ARNT1〜3のいずれかの転写共役因子(以下、本ARNT属転写共役因子と記すこともある。)と、下記のいずれかのアミノ酸配列(即ち、本アミノ酸配列)を有する転写調節因子(以下、本転写調節因子と記すこともある。)との複合体は、前記転写共役因子と転写調節因子であるSim2との転写抑制化複合体が結合し得るDNA領域(5’−ACGTG−3’)に結合する能力を有し、前記DNA領域の下流に位置する遺伝子の転写を促進する能力を有することを特徴とする転写活性化複合体である。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列(ここで、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する転写調節因子は、ヒト由来の本転写調節因子であり、以下、h本転写調節因子と記すこともある。また、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する転写調節因子は、マウス由来の本転写調節因子であり、以下、m本転写調節因子と記すこともある。また、配列番号3で示されるアミノ酸配列を有する転写調節因子は、ラット由来の本転写調節因子であり、以下、r本転写調節因子と記すこともある。)、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列
【0008】
本転写調節因子(NXF)転写活性化複合体を構成する一つの蛋白質、即ち、ARNT1〜3のいずれかの転写共役因子とは、ARNT1、ARNT2又はARNT3(BMAL1と呼ばれるものと同一なものである)等のいずれかのARNTファミリー属転写共役因子である。これら転写共役因子は、相互比較において高い配列同一性を有する転写共役因子である。このような転写共役因子は、転写調節因子であるSim2と転写抑制化複合体を形成することにより、 5’−ACGTG−3’ で示されるDNA領域に結合する能力を有し、前記DNA領域の下流に位置する遺伝子の転写を抑制する能力を有する。これらの転写共役因子のうち、ARNT1又はARNT2を好ましいものとしてあげることができる。
【0009】
また、上記の「ストリンジェントな条件下にハイブリダイズするDNA」としては、例えば、高イオン濃度下[例えば、6XSSC(900mM塩化ナトリウム、90mMクエン酸ナトリウム)などが用いられる。]に、65℃の温度条件でハイブリダイズさせることによりDNA−DNAハイブリッドを形成し、低イオン濃度下[例えば、0.1 X SSC(15mM塩化ナトリウム、1.5mMクエン酸ナトリウム)などが用いられる。]に、65℃の温度条件で30分間洗浄した後でも該ハイブリッドが維持されうるDNAをあげることができる。
【0010】
本発明における転写調節能は、例えば、下記のレポーター遺伝子を用いたアッセイ等に基づき評価することができる。まず、本ARNT属転写共役因子と転写調節因子であるSim2との転写抑制化複合体が結合し得るDNA領域5’−ACGTG−3’、:以下、本応答性DNA領域と記すこともある。)を含む転写制御DNAの下流に連結されたレポーター遺伝子と被験転写調節因子のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子とが宿主細胞に導入されてなる形質転換体を作製し、次に前記形質転換体が有する前記レポーター遺伝子の発現量又はその量と相関関係を有する指標値を測定し、さらに測定された発現量又はその量と相関関係を有する指標値に基づき前記被験転写調節因子が有する転写調節能を評価すればよい。上記の転写調節能としては、前記DNA領域の下流に位置する遺伝子(上記のレポーター遺伝子を用いたアッセイの場合には、レポーター遺伝子を意味する。)の転写を促進する能力又は転写を抑制する能力等があげられる。
【0011】
上記の評価方法におけるレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子、分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、成長ホルモン遺伝子などを利用することができ、宿主細胞における安定性が比較的高いレポーター蛋白質をコードする遺伝子が好ましい。
【0012】
まず、本ARNT属転写共役因子と本応答性DNA領域を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子と被験転写調節因子のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(以下、被験転写調節因子の遺伝子と記すこともある。)とを、宿主細胞(例えば、HeLa細胞、CV−1細胞、Hepa1細胞、NIH3T3細胞、HepG2細胞、COS1細胞、BF−2細胞、CHH−1細胞等)に導入することによって形質転換体を作製する。ここで、被験転写調節因子の遺伝子は、例えば、上述のように、宿主細胞で機能可能なプロモーターと機能可能な形で結合された基本ベクターに組み込まれた形で宿主細胞へ導入するとよい。本応答性DNA領域を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子も、基本ベクターに組み込まれた形で用いるとよい。また例えば、本応答性DNA領域を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子が組み込まれたベクターと、宿主細胞で機能可能なプロモーターと機能可能な形で結合された被験転写調節因子の遺伝子を保有するベクターとを、マーカー遺伝子を有するベクターとともに宿主細胞に導入する。次いで当該細胞を通常数週間培養した後、導入されたマーカー遺伝子の発現量に基づき目的とする形質転換体を選抜することにより、本応答性DNA領域を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子及び宿主細胞で機能可能なプロモーターと機能可能な形で結合された被験転写調節因子の遺伝子とが宿主細胞に導入されてなる形質転換体を取得することができる。ここで「宿主細胞で機能可能なプロモーター」としては、例えば、宿主細胞が出芽酵母細胞である場合には、GAL1プロモーターのような誘導型プロモーターや、ADHプロモーター(尚、ADH1プロモーターは、例えば、ADH1プロモーター及び同ターミネーターを保持する酵母発現ベクターpAAH5 〔Washington Research Fundation から入手可能、Ammerer ら、Method in Enzymology、101 part(p.192−201)〕から通常の遺伝子工学的方法により調製することができる。ADH1プロモーターは、Washington Research Fundation の米国特許出願第299,733 に含まれており、米国において、工業的、商業目的で使用する場合は、権利者からの権利許諾を必要とする。)のような恒常的に発現するプロモーター等を使用することができる。宿主細胞が動物細胞である場合には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター等をあげることができる。また、転写制御領域としては、例えば、宿主細胞で機能可能な最小プロモーターである、宿主細胞で発現可能な遺伝子由来の最小TATAボックス配列からなるDNAをあげることができ、具体的には、TATAボックス及び転写開始点近傍の約50塩基程度からなる塩基配列を有するDNAがあげられる。
【0013】
上述のように作製された形質転換体を、例えば、数時間から数日間培養した後、当該形質転換体が有する前記レポーター遺伝子の発現量又はその量と相関関係を有する指標値を測定する。本応答性DNA領域により当該被験転写調節因子が活性化された場合には、レポーター遺伝子の転写が促進され、当該レポーター遺伝子にコードされるレポーター蛋白質が前記形質転換体の細胞内等に蓄積されるかもしくは培地中に分泌される。このレポーター蛋白質の量又はその量と相関関係を有する指標値を測定することにより、当該形質転換体の細胞あたりのレポーター遺伝子の発現量又はその量に相関関係を有する指標値を測定する。具体的には、例えば、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を用いた場合には、前記形質転換体から調製された細胞粗抽出物にルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを加えると、当該細胞粗抽出物中のルシフェラーゼ量に比例した強度で発光する。従って、この発光強度をルミノメーター等の測定装置で測定することにより、ルシフェラーゼ量、ひいては、ルシフェラーゼ遺伝子の発現量を知ることができる。同様にして、本応答性DNA領域を含む転写制御領域の下流に連結されたレポーター遺伝子を含むが、被験転写調節因子の遺伝子を含まない形質転換体(即ち、対照形質転換体)におけるレポーター遺伝子の発現量又はその量に相関関係を有する指標値を測定し、当該測定値と上記のレポーター遺伝子の発現量又はその量に相関関係を有する指標値とを比較することにより、被験転写因子の遺伝子が有する転写調節能を評価することができる。
【0014】
本発明複合体は、DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)と本アミノ酸配列を有する転写調節因子(即ち、本転写調節因子)との複合体であり、例えば、本転写調節因子(NXF)とARNT属転写共役因子との複合体の本転写調節因子(NXF)部分に対してさらに DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)が相互作用して形成された高次複合体、または、本転写調節因子(NXF)とDEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)との複合体を含むものである。これらの複合体は、必要に応じて通常の方法等を利用してARNT属転写共役因子を存在させながら、例えば、本転写調節因子(NXF)が存在するところ、または、存在させたところへ、同時にDEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)を存在させた転換体を培養し、産生された複合体を培養物から回収することにより取得することができるが、多くの場合には、当該複合体を発現する形質転換体の形態で本発明複合体を利用するとよい。
【0015】
本発明複合体は、本発明複合体を産生する能力を有する一つ又は複数からなるベクターを宿主細胞に導入することにより作製することができる。具体的には、(1)DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)のアミノ酸配列(配列番号7で示される公知のアミノ酸配列)をコードする塩基配列(配列番号8で示される公知の塩基配列)を有するDNA、及び、(2)本転写調節因子(NXF)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA、の両DNAを同時に有する一つのベクター又は別々に有する複数からなるベクターを宿主細胞に導入して作製すればよい。
【0016】
このベクターを宿主細胞へ導入する方法としては、宿主細胞に応じた通常の導入方法を適用することができる。例えば、大腸菌を宿主細胞とする場合には、J.Sambrook, E.F.Frisch, T.Maniatis著;「 モレキュラー・クローニング 第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory発行、1989年)等に記載される塩化カルシウム法やエレクトロポレーション法等の通常の方法を用いることができる。また、哺乳類動物細胞又は昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合には、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法又はリポフェクション法等の一般的な遺伝子導入法に準じて前記細胞に導入することができる。酵母を宿主細胞とする場合には、例えば、リチウム法を基にしたYeast transformation kit(Clontech社製)などを用いて導入することができる。
【0017】
尚、ウイルスをベクターとして用いる場合には、上述のように一般的な遺伝子導入法によりウイルスのゲノムを宿主細胞に導入できるほか、前記両DNAの挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を、宿主細胞へ感染させることによっても、当該ウイルスのゲノムを宿主細胞に導入することができる。
本発明形質転換体を選抜するには、例えば、本ベクターと同時にマーカー遺伝子が導入された宿主細胞を、マーカー遺伝子の性質に応じた方法によって培養すればよい。例えば、マーカー遺伝子が、宿主細胞に致死活性を示す選抜薬剤に対する薬剤耐性を付与する遺伝子である場合には、当該選抜薬剤が添加された培地を用いて、本ベクターが導入された宿主細胞を培養すればよい。薬剤耐性を付与する遺伝子と選抜薬剤との組み合わせとしては、例えば、ネオマイシン耐性付与遺伝子とネオマイシンとの組み合わせ、ハイグロマイシン耐性付与遺伝子とハイグロマイシンとの組み合わせ、ブラストサイジンS耐性付与遺伝子とブラストサイジンSとの組み合わせ等をあげることができる。また、マーカー遺伝子が宿主細胞の栄養要求性を相補する遺伝子である場合には、当該栄養要求性に対応する栄養素を含まない最少培地を用いて、本ベクターが導入された細胞を培養すればよい。
【0018】
前記両DNAが宿主細胞の染色体内に位置する本発明形質転換体を取得するには、例えば、まず本ベクターとマーカー遺伝子を有するベクターとを制限酵素等で消化することにより直鎖状にした後、これらを前述の方法で宿主細胞に導入する。次いで当該細胞を通常数週間培養した後、導入されたマーカー遺伝子の発現量に基づき目的とする形質転換体を選抜し取得すればよい。また、例えば、まず上記のような選抜薬剤を付与する遺伝子をマーカー遺伝子として有する本ベクターを前述の継代培養した後、コロニー状に生き残った選抜薬剤耐性クローンを純化培養する方法によって宿主細胞に導入する。次いで当該細胞を選抜薬剤が添加された培地で数週間以上ことにより、前記両DNAが宿主細胞の染色体に導入されてなる本発明形質転換体を選抜し取得することもできる。導入された本発明遺伝子が宿主細胞の染色体に組み込まれたことを確認するには、当該細胞のゲノムDNAを通常の遺伝子工学的方法に準じて調製し、調製されたゲノムDNAから、導入された前記両DNAの部分塩基配列を有するDNAをプライマーやプローブとしたPCR、サザンハイブリダイゼーション等の方法を利用して、前記両DNAの存在を検出すればよい。当該形質転換体は、凍結保存が可能であり必要に応じて起眠して使用することができるので、実験毎の形質転換体作製の手間を省くことができ、また、あらかじめ性質や取扱い条件の確認された形質転換体を用いて試験を実施することが可能となる。
【0019】
上述のようにして得られた形質転換体を培養し、産生された本発明複合体を培養物から回収することにより本発明複合体を製造することができる。
例えば、形質転換体が微生物である場合には、当該形質転換体は、一般微生物における通常の培養に使用される炭素源や窒素源、有機ないし無機塩等を適宜含む各種の培地を用いて培養することができる。培養は、一般微生物における通常の方法に準じて行い、固体培養、液体培養(旋回式振とう培養、往復式振とう培養、ジャーファーメンター(JarFermenter)培養、タンク培養等)等が可能である。培養温度及び培地のpHは、微生物が生育する範囲から適宜選ぶことができ、例えば、約15℃〜約40℃の培養温度にて、pHが約6〜約8の培地で培養するのが一般的である。培養時間は、種々の培養条件によって異なるが、通常約1日間〜約5日間である。温度シフト型やIPTG誘導型等の誘導型のプロモーターを有する発現ベクターを用いた場合には、誘導時間は1日間以内が好ましく、通常数時間である。
【0020】
また、上記形質転換体が哺乳類、昆虫類等の動物細胞である場合には、当該形質転換体は一般の培養細胞における通常の培養に使用される培地を用いて培養することができる。選抜薬剤を利用して当該形質転換体を作製した場合には、当該選抜薬剤の存在下に培養することが好ましい。哺乳類動物細胞の場合には、例えば、終濃度が10%となるようFBSが添加されたDMEM培地(ニッスイ社製等)を用いて37℃、5%CO2存在下等の条件で数日毎に新しい培養液に交換しながら培養すればよい。細胞がコンフルエントになるまで増殖したら、例えば、0.25%(w/v)程度となるようトリプシンが添加されたPBS溶液を加えて個々の細胞に分散させ、数倍に希釈して新しいシャーレに播種し培養を続ける。昆虫類動物細胞の場合も同様に、例えば、10%(v/v)FBS及び2%(w/v)Yeastlateを含むGrace’s medium等の昆虫細胞用培養液を用いて培養温度25℃から35℃で培養すればよい。この際、Sf21細胞等のシャーレからはがれやすい細胞の場合には、トリプシン液を用いずピペッテイングにより分散させ継代培養を行なうことができる。また、バキュロウイルス等のウイルスベクターを含む形質転換体の場合には、培養時間は細胞質効果が現れて細胞が死滅する前、例えば、ウイルス感染後72時間までとすることが好ましい。
【0021】
培養物から、本発明形質転換体により産生された本発明複合体の回収は、適宜、通常の単離、精製の方法を組み合わせて行えばよく、例えば、まず培養終了後、形質転換体の細胞を遠心分離等で集め、集められた細胞を通常のバッファー、例えば、20mM HEPES pH7,1mM EDTA,1mM DTT,0.5mM PMSFからなるバッファーに懸濁した後、ポリトロン、超音波処理、ダウンスホモジナイザー等で破砕する。得られた破砕液を数万xgで数十分間から1時間程度超遠心分離し、上清画分を回収することにより、本発明複合体を含む画分を得ることができる。さらに、前記上清画分をイオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティ等の各種クロマトグラフィーに供することにより、より精製された本発明複合体を回収することもできる。
【0022】
本発明複合体を構成する因子をコードするDNAは、例えば、ヒト、マウス、ラットなどの動物の組織から、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory発行、1989年)等に記載の遺伝子工学的方法に準じて取得することができる。
【0023】
具体的には、まず、ヒト、マウス、ラットなどの動物の組織由来の全RNAを調製する。例えば、脳の組織を塩酸グアニジンやグアニジンチオシアネート等の蛋白質変性剤を含む溶液中で粉砕し、さらに該粉砕物にフェノール、クロロホルム等を加えることにより蛋白質を変性させる。変性蛋白質を遠心分離等により除去した後、回収された上清画分から塩酸グアニジン/フェノール法、SDS−フェノール法、グアニジンチオシアネート/CsCl法等の方法により全RNAを抽出する。なお、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えばISOGEN(ニッポンジーン製)がある。得られた全RNAを鋳型としてオリゴdTプライマーをRNAのポリA配列にアニールさせ、逆転写酵素により一本鎖cDNAを合成する。次いで、合成された一本鎖cDNAを鋳型とし、かつ大腸菌RNaseHを用いてRNA鎖にニックとギャップを入れることにより得られるRNAをプライマーとして大腸菌のDNAポリメラーゼIを用いて二本鎖のcDNAを合成する。更に、合成された二本鎖cDNAの両末端をT4 DNAポリメラーゼにより平滑化する。末端が平滑化された二本鎖cDNAは、フェノール−クロロホルム抽出、エタノール沈殿等の通常の方法により精製、回収する。なお、これらの方法に基づいた市販のキットとしては、例えばcDNA合成システムプラス(アマシャムファルマシアバイオテク社製)やTimeSaver cDNA合成キット(アマシャムファルマシアバイオテク社製)等があげられる。次に、得られた二本鎖cDNAを例えば、プラスミドpUC118やファージλgt10などのベクターとリガーゼを用いて連結することによりcDNAライブラリーを作製する。尚、cDNAライブラリーとしては、市販のcDNAライブラリー(GIBCO−BRL社製やClontech社製等)を用いることも可能である。
【0024】
上記のようなcDNAライブラリーから、着目する因子の増幅したい部分の塩基配列をはさみこむように常法により設計したPCRフォワードプライマーとPCRリバースプライマーを用いるPCRポリメラーゼチェイン反応(以下、PCRと記す。)や、着目因子の得たい部分の塩基配列又は該塩基配列の部分塩基配列を有するDNAをプローブとして用いるハイブリダイゼーション法により、着目因子DNAを取得することができる。
【0025】
尚、以上のPCRのプライマーは市販のソフトウエアGenetyxSV/R(ソフトウエア開発社製)などで設計することができる。PCRの条件としては、例えば、反応液50μl中に、LA−Taqポリメラーゼ用10倍濃緩衝液(宝酒造社製)5μl、2.5mM dNTP混合液(各2.5mMのdATP,dGTP,dCTP及びdTTPを含む。)5μl(dATP,dGTP,dCTP及びdTTP各々の終濃度が0.25mM)、20μMプライマー 各0.25〜1.25μl(終濃度が0.1〜0.5μM)、鋳型cDNA 0.1〜0.5μg、LA−Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)1.25ユニットを含む組成の反応液にて、95℃で1分間次いで68℃で3分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行う等の条件が挙げられる。
【0026】
ハイブリダイゼーション法に用いられるプローブとしては、100bpから1000bp程度、好ましくは約500bp前後のcDNA断片を用いればよい。同cDNA断片を例えば32P放射能ラベルを行うための市販のラベリングキット例えばアマシャムファルマシア社製ランダムプライマーラベリングキットなどを用いて放射能ラベル等をすることによりスクリーニング用プローブとすればよい。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、6×SSC(0.9M塩化ナトリウム、0.09Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液(0.1(w/v)フィコール400、0.1(w/v)ポリビニルピロリドン、0.1(w/v)BSA)、0.5(w/v)SDS及び100μg/ml変性サケ精子DNA存在下に、65℃で保温し、次いで1×SSC(0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5(w/v)SDS存在下に、室温で15分間の保温を2回行い、さらに0.1×SSC(0.015M 塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5(w/v)SDS存在下に、68℃で30分間保温する条件等をあげることができる。また、例えば、5xSSC、50mM HEPES pH7.0、10xデンハルト溶液及び20μg/ml変性サケ精子DNA存在下に65℃にて保温し、次いで2xSSC中で室温にて30分間の保温を行い、さらに0.1xSSC中で65℃にて40分間の保温を2回行う条件をあげることもできる。このようにして得られた本発明複合体を構成する因子をコードするDNAは、例えば、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等に記載の遺伝子工学的方法に準じてベクターにクローニングすることができる。具体的には例えば、TAクローニングキット(Invitrogen社)やpBluescriptII(Stratagene社)などの市販のプラスミドベクターを用いてクローニングすることができる。
【0027】
得られた本発明複合体を構成する因子をコードするDNAの塩基配列は、Maxam Gilbert法 (例えば、Maxam,A.M & W.Gilbert,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,560,1977等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F. & A.R.Coulson,J.Mol.Biol.,94,441,1975、Sanger,F,& Nicklen and A.R.Coulson.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,5463,1977等に記載される)等により確認することができる。
【0028】
本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを、当該遺伝子が導入される宿主細胞において利用可能なベクター(以下、基本ベクターと記す。)、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖でき、宿主細胞からの単離、精製が可能であり、検出可能なマーカーをもつベクターに、通常の遺伝子工学的手法に準じて組み込むことにより該因子の因子DNAベクターを構築することができる。
【0029】
同ベクターの構築に用いることができる基本ベクターとしては、具体的には大腸菌を宿主細胞とする場合には、例えば、プラスミドpUC119(宝酒造社製)やファージミドpBluescriptII(Stratagene社製)等をあげることができる。出芽酵母を宿主細胞とする場合には、プラスミドpGBT9、pGAD424、pACT2(Clontech社製)等をあげることができる。また、哺乳類動物細胞を宿主細胞とする場合には、pRc/RSV、pRc/CMV(Invitrogen社製)等のプラスミド、ウシパピローマウイルスプラスミドpBPV(アマシャムファルマシアバイオテク社製)もしくはEBウイルスプラスミドpCEP4(Invitrogen社製)等のウイルス由来の自律複製起点を含むベクター、ワクシニアウイルス等のウイルス等をあげることができる。さらに、昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合には、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスをあげることができる。自律複製起点を含むベクター、例えば、上記の酵母用プラスミドpACT2や、ウシパピローマウイルスプラスミドpBPV、EBウイルスプラスミドpCEP4等を用いて該ベクターを構築すると、そのベクターは宿主細胞に導入された際にエピソームとして細胞内に保持される。
【0030】
バキュロウイルスやワクシニアウイルス等のウイルスに本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを組み込むには、使用しようとするウイルスのゲノムと相同な塩基配列を含有するトランスファーベクターを用いればよい。このようなトランスファーベクターとしては、例えば、Pharmingen社から市販されているpVL1392,pVL1393(Smith,G.E.,Summers M.D.et al.:Mol.Cell.Biol.,3,2156−2165(1983))、pSFB5(Funahashi,S.et al.:J.Virol.,65,5584−5588(1991))等のプラスミドをあげることができる。本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを前記のようなトランスファーベクターに挿入し、当該トランスファーベクターとウイルスのゲノムとを同時に宿主細胞に導入すると、トランスファーベクターとウイルスのゲノムとの間で相同組換えが起こり、本転写調節因子DNAがゲノム上に組み込まれたウイルスを得ることができる。ウイルスのゲノムとしては、Baculovirus,Adenovirus,Vacciniavirusなどのゲノムを用いることができる。
【0031】
より具体的には、例えば、バキュロウイルスに本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを組み込む場合には、まずトランスファーベクターpVL1393,pVL1392等のマルチクローニング部位に当該DNAを挿入した後、該トランスファーベクターのDNAとBaculovirus genome DNA(Baculogold;Pharmingen社製)とを昆虫細胞Sf21株(ATCCから入手可能)にリン酸カルシウム法等によって導入することにより、得られる細胞を培養する。次いで培養液から遠心分離等により、本発明複合体を構成する因子をコードするDNAが挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を回収し、回収されたウィルス粒子をフェノール等で除蛋白処理することにより、本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを含有するウイルスのゲノムを得ることができる。さらに、得られたウイルスのゲノムを、昆虫細胞Sf21株等のウイルス粒子形成能力を有する宿主細胞にリン酸カルシウム法等によって導入することにより、得られる細胞を培養する。このようにして本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを含有するウイルス粒子を増やすことができる。
【0032】
一方、マウス白血病レトロウイルス等の比較的小さなゲノムに本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを組み込むには、トランスファーベクターを利用せずに、当該DNAを直接組み込むこともできる。例えば、ウイルスベクタ−DC(X)(Eli Gilboa et al.,BioTechniques,4,504−512(1986))等は、当該ベクター上のクローニング部位に本因子DNAを組み込む。得られた本発明複合体を構成する因子をコードするDNAの組み込れたウイルスベクターを、例えば、Ampli−GPE(J.Virol.,66,3755(1992))等のパッケージング細胞に導入することにより、当該DNAの挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を得ることができる。
【0033】
本発明複合体を構成する因子をコードするDNAの上流に、宿主細胞で機能可能なプロモーターを機能可能な形で結合させ、これを上述のような基本ベクターに組み込むことにより、本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを宿主細胞で発現させることの可能なDNAを構築することができる。ここで、「機能可能な形で結合させる」とは、本発明複合体を構成する因子をコードするDNAが導入される宿主細胞において、プロモーターの制御下に当該DNAが発現されるように、当該プロモーターと本発明複合体を構成する因子をコードするDNAとを結合させることを意味する。宿主細胞で機能可能なプロモーターとしては、導入される宿主細胞内でプロモーター活性を示すDNAをあげることができる。例えば、宿主細胞が大腸菌である場合には、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター(lacP)、トリプトファンオペロンのプロモーター(trpP)、アルギニンオペロンのプロモーター(argP)、ガラクトースオペロンのプロモーター(galP)、tacプロモーター、T7プロモーター、T3プロモーター、λファージのプロモーター(λ−pL、λ−pR)等をあげることができ、宿主細胞が動物細胞や分裂酵母である場合には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス(SV40)の初期又は後期プロモーター、マウス乳頭腫ウイルス(MMTV)プロモーター等をあげることができる。宿主細胞が出芽酵母である場合には、ADH1プロモーター等あげることができる。
また、宿主細胞において機能するプロモーターをあらかじめ保有する基本ベクターを使用する場合には、前記プロモーターと本発明複合体を構成する因子をコードするDNAとが機能可能な形で結合するように、前記プロモーターの下流に当該DNAを挿入すればよい。
【0034】
例えば、前述のプラスミドpRc/RSV、pRc/CMV等には、動物細胞で機能可能なプロモーターの下流にクローニング部位が設けられている。当該クローニング部位に本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを挿入することによって得られるベクターを動物細胞へ導入することにより、当該動物細胞において本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを発現させることができる。これらのプラスミドにはあらかじめSV40の自律複製起点(ori)が組み込まれているため、oriを欠失したSV40ゲノムで形質転換された培養細胞、例えば、COS細胞等に当該プラスミドを導入すると、細胞内でプラスミドのコピー数が非常に増大し、結果として当該プラスミドに組み込まれた本転写調節因子DNAを大量発現させることもできる。また前述の酵母用プラスミドpACT2はADH1プロモーターを有しており、当該プラスミド又はその誘導体のADH1プロモーターの下流に本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを挿入すれば、本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを、例えば、CG1945(Clontech社製)等の出芽酵母内で大量発現させることが可能なDNAベクターが構築できる。
【0035】
本発明形質転換体は、本発明複合体を構成する因子をコードするDNAを発現するベクターのほかに、同複合体により活性化されうるプロモーターを機能可能な形で結合しているレポーター遺伝子のDNAをも含有するような形質転換体であってもよい。
【0036】
このような形質転換体は、物質が有する、本発明複合体が有する転写調節能力を調節する能力(即ち、本調節能力)の評価方法等に利用することができる。例えば、物質が有する本調節能力の評価方法であって、
(1)上記の形質転換体と被験物質とを接触させる第一工程、
(2)前記第一工程後に、前記形質転換体が有するレポーター遺伝子の発現量又はその量と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び
(3)前記第二工程により測定された発現量又はその量と相関関係を有する指標値に基づき前記物質の前記転写活性化複合体が有する転写促進能力を調節する能力を評価する第三工程;
を有することを特徴とする評価方法(即ち、本発明評価方法)をあげることができる。
【0037】
さらに当該評価方法により評価された調節能力に基づき前記複合体が有する転写調節能力を調節する能力を有する物質を選抜する工程を有することを特徴とする探索方法、当該探索方法により選抜された物質又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする、例えば、ダウン症改善剤等の治療剤(即ち、本発明治療剤)等にも応用することが考えられる。
【0038】
本発明探索方法により選抜される物質またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする治療剤(即ち、本発明治療剤)は、その有効量を経口的または非経口的にヒト等の哺乳動物に対し投与することができる。例えば、経口的に投与する場合には、本発明治療剤は錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の通常の形態で使用することができる。また、非経口的に投与する場合には、本発明治療剤を溶液、乳剤、懸濁液等の通常の液剤の形態で使用することができる。前記形態の本発明治療剤を非経口的に投与する方法としては、例えば注射する方法、坐剤の形で直腸に投与する方法等を挙げることができる。
【0039】
前記の適当な投与剤型は許容される通常の担体、賦型剤、結合剤、安定剤、希釈剤等に本発明探索方法により選抜される物質またはその薬学的に許容される塩を配合することにより製造することができる。また注射剤型で用いる場合には、許容される緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等を添加することもできる。
【0040】
投与量は、投与される哺乳動物の年令、性別、体重、疾患の程度、本発明治療剤の種類、投与形態等によって異なるが、通常は経口の場合には成人で1日あたり有効成分量として約1mg〜約2g、好ましくは有効成分量として約5mg〜約1gを投与すればよく、注射の場合には成人で有効成分量として約0.1mg〜約500mgを投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回または数回に分けて投与することができる。
【0041】
本発明では、ツーハイブリッドアッセイ用のための本発明複合体や形質転換体等をも提供している。
即ち、本発明は、ツーハイブリッドアッセイのための、(1)本発明複合体の使用に関する発明、(2)ツーハイブリッドアッセイのための、本発明形質転換体及びその使用に関する発明を含んでいる。ここで、ツーハイブリッドアッセイのためのシステムを調製するには、市販のキット、例えば、Matchmaker Two−hybrid System(Clontech社製)、CheckMate Mammalian Two−Hybrid System(Promega)等を利用すればよい。
【0042】
ツーハイブリッドに用いられる本発明複合体は、下記の構成要素Iのうち、いずれか一方の構成要素(A又はB)及び下記の構成要素IIのうち、いずれか一方の構成要素(X又はY)を有する蛋白質と、下記の構成要素Iのうち、他方の構成要素(B又はA)及び下記の構成要素IIのうち、他方の構成要素(Y又はX)を有する蛋白質とを含有してなり、両者の蛋白質により形成される複合体である。ここで、例えば、当該両者の蛋白質がリガンドによる制御下において形成してなる複合体であってもよい。
<構成要素I>
(A)DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)、又は
(B)本転写調節因子(NXF)
<構成要素II>
(X)宿主細胞内で機能可能な転写調節因子のDNA結合領域、又は
(Y)宿主細胞内で機能可能な転写調節因子の転写活性化領域
【0043】
尚、この場合には、本転写調節因子(NXF)は、リガンドとの複合体を形成するために、前記リガンドが結合する領域を有していてもよい。このような領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAとしては、本転写調節因子(NXF)の部分塩基配列であり、例えば、配列番号4で示される塩基配列のうち、塩基番号132〜2507で示される塩基配列を含む塩基配列等をあげることができる。
【0044】
構成要素IIの(X)を有する転写調節因子としては、例えば、Gal4蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−CGGAGGACTGTCCTCCG−3’)、Lex蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−TACTGTATGTACATACAGTA−3’)、Lac I受容体蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−GAATTGTGAGCGCGCACAATTC−3’)、テトラサイクリン受容体蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−TCGAGTTTACCACTCCCTATCAGTGATAGAGAAAAGTGAAAG−3’)、ZFHD−1蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−TAATGATGGGCG−3’)、ARNT1〜3のいずれかの転写共役因子と転写調節因子であるSim2との転写抑制化複合体が結合し得るDNAの塩基配列(5’−ACGTG−3’)等のいずれかの塩基配列からなるDNAに結合する転写調節因子であって、かつ宿主細胞内で機能可能な転写調節因子をあげることができる。一方、構成要素IIの(Y)を有する転写調節因子としては、例えば、Gal4蛋白質、Lex蛋白質、Lac I受容体蛋白質、テトラサイクリン受容体蛋白質、ZFHD−1蛋白質、B42蛋白質、本ARNT属転写共役因子である蛋白質、VP16蛋白質等の宿主細胞内で機能可能な転写調節因子をあげることができる。
【0045】
このような各構成要素からなる複合体は、例えば、本発明形質転換体等により産生される。ツーハイブリッドに用いられるために、通常その形質転換体は、本発明複合体とともに上述構成要素IIの(X)を有する転写調節因子の応答配列をプロモーター部分に持つレポーター遺伝子を有するのが望ましい。尚、宿主細胞が、利用可能な内在性のレポーター遺伝子を有する場合には、それを利用してもよく、この場合にはレポーター遺伝子の導入を省略することができる。
ここでレポーター遺伝子とは、ルシフェラーゼ遺伝子、分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、成長ホルモン遺伝子等の通常のレポーターアッセイに用いられるレポーター遺伝子であって、宿主細胞における安定性が比較的高いレポーター蛋白質をコードする遺伝子であることが好ましい。構成要素IIの(X)結合可能なDNAとしては、例えば、Gal4蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−CGGAGGACTGTCCTCCG−3’)、Lex蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−TACTGTATGTACATACAGTA−3’)、Lac I受容体蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−GAATTGTGAGCGCGCACAATTC−3’)、テトラサイクリン受容体蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−TCGAGTTTACCACTCCCTATCAGTGATAGAGAAAAGTGAAAG−3’)、ZFHD−1蛋白質が結合するDNAの塩基配列(5’−TAATGATGGGCG−3’)、ARNT1〜3のいずれかの転写共役因子と転写調節因子であるSim2との転写抑制化複合体が結合し得るDNA領域(5’−ACGTG−3’)等のいずれかの塩基配列からなるDNAをあげることができる。
【0046】
例えばClontech社製のTwo−hybridアッセイキットを用いる場合は同キット(PT3247−1;Clontech社製)等の添付説明書を参考に、このような各構成要素を組み合わせながら本発明複合体が発現するように適切にかつ塩基配列の読み枠を合わせて連結させることによりベクターに挿入し、通常の遺伝子工学的手法を用いて同一の宿主細胞に導入することにより、当該形質転換体を作製することができる。
【0047】
本発明形質転換体を作製するために使用される宿主細胞としては、例えば、出芽酵母細胞、HeLa細胞等の哺乳類動物細胞等があげられる
【0048】
【実施例】
実施例1 (本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)断片相互作用因子の探索)
出芽酵母内でGal4のDNA結合ドメインのC末端に任意の蛋白質断片を融合させたものを発現させるためのプラスミドpGBKT7ベクター(Clontech社より購入)に対し、以下のようにしてmouse 本転写調節因子(NXF)のEcoRV−StuI断片を導入してGal4−m本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)融合蛋白発現プラスミドを構築した。
まず、mouse 本転写調節因子(NXF)cDNAは以下のようにして得た。
5’−aagcacggag gaggaagccg ccggtgcgtc gggac−3’
5’−ggagagcggc tccacgtctt gatgacaata tgcca−3’
の配列を持つポリヌクレオチドをそれぞれDNA合成機(アプライドバイオシステムズ社製モデル394)を用いて合成した。このように合成されたポリヌクレオチドをプライマーとして、かつ、マウスBrain cDNAライブラリー(#10655−017ギブコBRL社製)10 ngを鋳型として、反応液50μl当たり上記のポリヌクレオチド10pmolを添加し、LA−Taqポリメラーゼ(宝酒造社製)及び当該酵素を含むキットに添付されたバッファーを用いてPCRを行った。当該PCRにおける反応条件は、PCRsystem9700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、かつ、95℃1分間、次いで68℃3分間を1サイクルとして35サイクルであった。
得られたPCR反応液の全量を、低融点アガロース電気泳動(アガロースL:ニッポンジーン)に供することにより、増幅DNA断片(約2.5kb)を精製・回収した。
次に、pGBKT7ベクターをNcoIで37℃2時間インキュベートして切断後、アルカリフォスファターゼ処理を65℃1時間行い切断末端を脱リン酸化し、更にBlunting kit(タカラ製)で末端を平滑末端化したものをインサート断片導入用ベクターとした。このベクターに結合させるためのインサート断片として、上述のmouse本転写調節因子(NXF)cDNAをEcoRVとStuIで37℃2時間切断してアガロースゲル電気泳動で860bpのバンドを回収したものを準備し、上述のベクターに対してT4Ligaseで結合した。正しく結合されGal4 DNA結合ドメインとの融合蛋白質を発現できるものをABI3700自動シークエンサーで塩基配列を決定することで選び出し、pGBKT7−m本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)を完成した。
以上のようにして作製した、Gal4のDNA結合ドメインのC末端に着目因子の断片が融合した蛋白質を発現するプラスミドを以下のようにして酵母に導入した。すなわち、酢酸リチウム法をベースにしたYeast Transformation system2(K1606−1;クロンテック社製)のキットを用いて、キットの取扱説明書の方法に従って出芽酵母株AH109(PT3183−1;クロンテック社製Pretransformed Libraryに付属)に対してプラスミドDNAを導入し、(−Trp)のSD培地上に形質転換AH109として酵母コロニーを単離分離した。同組換え酵母コロニーのおのおのの組換え酵母クローンは、ADH1プロモーターの制御下に、Gal4のDNA結合ドメインのC末端に着目因子の断片が融合した蛋白質を発現している。
次に、Library host酵母株であるY187にpACT2−ヒトBrain cDNA ライブラリーがあらかじめ導入されているcDNAライブラリー(HY4004AH;Pretransformed cDNA Library;Clontech社製)2x107cellsに対して、上述のGal4のDNA結合ドメインのC末端に着目因子の断片が融合した蛋白質を発現している組換えAH109酵母株5x109を混合し、50mlのYPDA完全液体培地(Clontech社より購入)中30℃で30rpmで24時間インキュベートし、Matingを完了させた。このようなMatingの結果、1つの酵母細胞中に、Gal4のDNA結合ドメインのC末端に着目因子の断片が融合した蛋白質と、pACT2由来のGal4の転写活性化領域と任意の因子の蛋白断片の融合蛋白質の両者が同時に発現する組換え体が作製できた。このMating完了酵母培養液を五十等分してそれぞれをSD(−Ade/−His/−Leu/−Trp/+X−alpha−Gal)プレートに塗り広げ、30℃で2週間培養した。その結果、Gal4のDNA結合ドメインのC末端に着目因子の断片が融合した蛋白質と、pACT2由来のGal4の転写活性化領域と任意の因子の蛋白断片の融合蛋白質の両者が酵母細胞中で相互作用した結果としてAH109がもともと保持していたレポーター遺伝子が活性化し、Ade非要求性、His非要求性及びX−alpha−Gal代謝活性獲得というフェノタイプを獲得したクローンのコロニーがプレート上に青い3mm程度のコロニーとして出現した。このコロニーの一部をかきとり、以下のプライマー対を利用したコロニーPCRで、pACT2ベクタ−のインサート断片である任意の因子のDNAを増幅した。プライマー対の配列は、5’−tatctattcgatgatgaagataccccaccaaaccc−3’, 5’−gaagtgaacttgcggggtttttcagtatctacgat−3’であった。
PCRの条件は、LA−Taqポリメラーゼ(タカラ製)及び付属バッファーを用いて、95℃5分の熱変性後、(95℃1分68℃3分)を1サイクルとして35サイクルであった。得られた特異的PCR産物をABI社製3700オートシークエンサーで塩基配列を決定した。その結果、本転写調節因子(NXF)に相互作用するこの任意の因子の断片は、Genbank accession No. NM_145646のHomo sapiens DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957) ( Lin,S., Ying,K., Wang,Z., Xie,Y. and Mao,Y. TITLE Molecular cloning of a new member of DEAH−box RNA/DNA helicase
gene Family Genbank direct submission) であることが判明した。
【0049】
実施例2 (動物培養細胞内Two−hybridアッセイ)
上述の酵母のTwo−hybrid assayの陽性クローンのインサート断片をもつpACT2プラスミドをYeast plasmid isolation kit(K1611−1;Clontech社製)で、同キットの説明書に従って酵母から回収後、同プラスミドをEcoRIとXhoIで切断し次にBlunting kit(タカラ製)で平滑末端化後、約560bpのインサート断片をアガロース電気泳動で回収した。この断片を次に、動物細胞内Two−hybrid assay用ベクターpVP16ベクター(Clontech社より購入)をBamHIで37℃2時間切断後アルカリフォスファターゼで65℃1時間処理して末端を脱リン酸化し、更にBlunting kit(タカラ製)で平滑末端化したベクターに対して、T4Ligaseで結合させた。得られたプラスミドは動物培養細胞中で、VP16の転写活性化ドメインのC末端に着目遺伝子が融合した蛋白質を発現することができる。VP16の転写活性化ドメインと着目遺伝子の翻訳枠が合っていることはABI社製3700DNAシークエンサーで塩基配列を決定することで確認した。
一方、pMベクター(市販キットK1602−1に含まれる;Clontech社より購入した)をBamHIで37℃2時間切断後アルカリフォスファターゼで65℃1時間処理して末端を脱リン酸化し、更にBlunting kit(タカラ製)で平滑末端化したベクターに対して、mouse本転写調節因子(NXF)cDNAをEcoRVとStuIで37℃2時間切断してアガロースゲル電気泳動で860bpのバンドを回収したものをT4Ligaseで結合させた。得られたプラスミドは、動物培養細胞中で、Gal4のDNA結合ドメインのC末端に着目遺伝子が融合した蛋白質を発現することができる。Gal4のDNA結合ドメインと着目遺伝子の翻訳枠が合っていることはABIモデル3700型オートシークエンサーを用いたダイターミネーター法で塩基配列を決定することで確認した。
このようにして、Yeast two−hybridアッセイ用のプラスミドからインサート断片を、動物培養細胞中でTwo−hybridアッセイを行うためのプラスミドベクターへと移動することで、動物培養細胞中でTwo−hybridアッセイを行うためのプラスミドの準備ができた。
同アッセイに用いるレポータープラスミドはGal4応答配列をもつpGL3−TATA−Galx4を用いた。本プラスミドは、TATA最小プロモーターを有するルシフェラーゼ遺伝子の上流にGal4のDNA結合領域が結合可能なDNAがタンデムに4コピー導入されたものである。本プラスミドは以下のようにして作製した。まず、GAL4のDNA結合領域が結合可能なDNAを有する2種のオリゴヌクレオチド(5´−cgcgtcgagc tcgggtcgga ggactgtcct ccgactgctc gagtcgagct cgggtcggag gactgtcctc cgactgctcg aga−3´、5´−cgcgtctcga gcagtcggag gacagtcctc cgacccgagc tcgactcgag cagtcggagg acagtcctcc gacccgagct cga−3´)をハイブリダイズした後にT4 Kinaseで5´末端をリン酸化し、これをT4 Ligaseでタンデムに結合させた。得られた二本鎖オリゴヌクレオチドを、低融点アガロース(NuseiveGTG;FMCbio社製)を用いた電気泳動に供することにより、当該二本鎖オリゴヌクレオチドがタンデムに2つ結合してなるDNA断片を回収した。これをインサート断片とし、pGL3−TATAベクターをMluIで切断した後アルカリフォスファターゼ(BAP C75;宝酒造製)処理したもの0.1μgに、T4 Ligase(宝酒造製)で16℃16時間反応させることにより結合させた。このようにして、TATA最小プロモーターを有するルシフェラーゼ遺伝子の上流に、GAL4のDNA結合領域が結合可能なDNAが4コピー導入されたレポーター遺伝子プラスミドであるpGL3−TATA−Galx4を得た。
実施例3 (動物培養細胞内Two−hybridアッセイ)
約5x106のHeLa細胞を、10%FBSを含むDMEM培地(日水製薬社製)を用いて37℃にて5%CO2存在下に、直径約10cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて培養した。翌日、培養された細胞をトリプシン処理により分散し、FBSを含まないDMEM培地で2回洗浄した後、再度5x106に細胞密度がなるようにFBSを含まないDMEM培地に分散させた。この細胞分散液0.4mlに対して、前記のように調製されたレポーター遺伝子プラスミド(pGL3−TATA−Galx4)(例えば3μg)と前記のように調製されたキメラ蛋白質を発現するプラスミド(例えばそれぞれ3μg)を混合した後、この混合物をエレクトロポレーション用キュベットに移し、Geneパルサー(BIORAD社製)を用いたエレクトロポレーション法により220V、950μFの条件でトランスフェクションを行った。トランスフェクション後、培地を10%FBSを含むDMEM培地に置換してさらに6穴プレート内で約24時間培養した。次いで、ウェルから培地を除き、器壁に接着している細胞をPBS(−)で2回洗浄した後、5倍に希釈したPGC50(東洋インキ社製)をウェルあたり200μlずつ加えてさらに室温に30分間放置した。この細胞液20μlずつオペークプレート(コーニングコースター社製)上に分注し、当該プレートを酵素基質自動インジェクター付きルミノメーターLB96P(ベルトールド社製)にセットし、50μlの基質液PGL100(東洋インキ社製)を自動分注した後、各ウェル内のルシフェラーゼ活性をそれぞれ測定した。
その結果、図1から明らかなように、Gal4−DNA結合ドメイン−本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)融合蛋白質およびVP16転写活性化ドメイン−DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)融合蛋白質の両者が存在するときのみにGal4応答レポーター遺伝子の強い活性化が観察された。Gal4−DNA結合ドメイン−本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)融合蛋白質のみ、またはVP16転写活性化ドメイン−DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)融合蛋白質のみではこのようなGal4応答レポーター遺伝子の活性化は観察されなかった。このことから、本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)断片とDEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)との間の特異的相互作用が存在することが明らかとなった。
本アッセイ系において、プラスミドを細胞に導入後、培養液中に調べたい因子、または化合物を共存させることにより、それらの因子または化合物が本発明複合体の活性を調節するかどうか検討することができる。
具体的には、約5x106のHeLa細胞を、10%FBSを含むDMEM培地(日水製薬社製)を用いて37℃にて5%CO2存在下に、直径約10cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて培養する。翌日、培養された細胞をトリプシン処理により分散し、FBSを含まないDMEM培地で2回洗浄した後、再度5x106に細胞密度がなるようにFBSを含まないDMEM培地に分散させる。この細胞分散液0.4mlに対して、前記のように調製されたレポーター遺伝子プラスミド(pGL3−TATA−Galx4)(例えば3μg)と前記のように調製されたキメラ蛋白質を発現するプラスミド(例えばそれぞれ3μg)を混合した後、この混合物をエレクトロポレーション用キュベットに移し、Geneパルサー(BIORAD社製)を用いたエレクトロポレーション法により220V、950μFの条件でトランスフェクションを行う。トランスフェクション後、培地を披験物質を含むまたは含まないDMEM培地(10%FCS入り)に置換してさらに6穴プレート内で約24時間培養する。次いで、ウェルから培地を除き、器壁に接着している細胞をPBS(−)で2回洗浄した後、5倍に希釈したPGC50(東洋インキ社製)をウェルあたり200μlずつ加えてさらに室温に30分間放置する。この細胞液20μlずつオペークプレート(コーニングコースター社製)上に分注し、当該プレートを酵素基質自動インジェクター付きルミノメーターLB96P(ベルトールド社製)にセットし、50μlの基質液PGL100(東洋インキ社製)を自動分注した後、各ウェル内のルシフェラーゼ活性をそれぞれ測定する。測定結果を、披験物質を含む場合と含まない場合で比較検討する。
この評価方法により評価された披験物質の調節能力に基づき、前記複合体が有する転写調節能力を調節する能力を有する物質を選抜する。
【0050】
【発明の効果】
本発明により、本転写調節因子(NXF)の活性調節剤のターゲットとして使用する、DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)と本転写調節因子(NXF)との複合体等が提供可能となった。例えば、低分子化合物により制御することにより、ダウン症など、本転写調節因子(NXF)が関与すると考えられる、例えば、神経疾患等の疾患の治療等に応用することが期待されている。
【0051】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)断片とDEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)の複合体形成を確認するための動物培養細胞ツーハイブリッドアッセイの結果を示す図である。レポーター遺伝子プラスミドとしてpGL3−TATA−Galx4を全部のレーンで用いている。各レーンの下の表示は、レポーター遺伝子プラスミドに作用させた因子を示す。レーン1は、レポータープラスミドのみ。レーン2は、Gal4DNA結合ドメイン−本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)融合蛋白質のみ。レーン3はVP16転写活性化ドメイン−DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)融合蛋白質のみ。レーン4は、Gal4DNA結合ドメイン−本転写調節因子(NXF)(EcoRV−StuI)融合蛋白質に加えてVP16転写活性化ドメイン−DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)融合蛋白質を加えた。レーン5は、Gal4DNA結合ドメインのみを発現するpMベクターに加えてVP16の転写活性化ドメインのみを発現するpVP16ベクターを加えた。このレーンは陰性対照に相当する。縦軸は、ルシフェラーゼ活性値を示しており、これはレポーター遺伝子の転写に対する活性を表す指標値である。
Claims (9)
- DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)と下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子との複合体。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列 - DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)と下記のいずれかのアミノ酸配列を有する転写調節因子との複合体であって、この転写調節因子の転写活性が複合体形成により調節されることを特徴とする複合体
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列 - 請求項1または2記載の複合体を産生する能力を有する一つ又は複数からなるベクターが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体。
- 下記の両DNAを同時に有する一つのベクター又は別々に有する複数からなるベクターが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体。
<DNA>
(1)DEAH−box RNA/DNA helicase AAM73547 (LOC90957)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA。
(2)下記のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(c)配列番号4で示される塩基配列の塩基番号102〜2507で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示される塩基配列の塩基番号51〜2456で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列、
(e)配列番号6で示される塩基配列の塩基番号35〜2440で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるアミノ酸配列を有し、かつ転写調節能を有する蛋白質のアミノ酸配列 - 物質が有する、請求項1または2記載の複合体が有する遺伝子転写調節能力を調節する能力の評価方法であって、
(1)請求項3または4記載の形質転換体と被験物質とを接触させる第一工程、
(2)前記第一工程後に、前記形質転換体が有するレポーター遺伝子の発現量又はその量と相関関係を有する指標値を測定する第二工程、及び
(3)前記第二工程により測定された発現量又はその量と相関関係を有する指標値に基づき前記物質の前記複合体が有する転写調節能力を調節する能力を評価する第三工程、
を有することを特徴とする評価方法。 - 請求項5記載の評価方法により評価された調節能力に基づき前記複合体が有する転写調節能力を調節する能力を有する物質を選抜する工程、
を有することを特徴とする探索方法。 - 請求項6記載の探索方法により選抜された物質又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする治療剤。
- ツーハイブリッドアッセイのための、請求項1または2記載の複合体の使用。
- ツーハイブリッドアッセイのための、請求項3または4記載の形質転換体の使用。
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