JP2004288515A - 円筒形電池の検査方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電池のエージング前の端子電圧V1とエージング後の端子電圧V2との端子電圧差ΔVにより良否判定を行う電池の検査方法において、微小短絡に起因する不良を識別して精度良く排出する円筒形二次電池の検査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】エージング前の端子電圧を放電状態の電位とし、検査のロット単位毎に変動するΔVの平均値ΔVAに対して、微小内部短絡した不良電池の端子電圧降下量を想定した基準値ΔVBを絶対値として設定し、ΔVA−ΔVBの値より小さいΔVの電池を不良品と判定する検査方法である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池の検査方法に関し、特に円筒形二次電池の微小短絡に起因する不良を判定して排出する検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話、携帯情報端末等の携帯電子機器の性能は、搭載される半導体素子、電子回路だけでなく、充放電可能な二次電池の性能に大きく依存しており、搭載される二次電池の容量アップと共に、軽量・コンパクト化も同時に実現することが望まれている。これらの要望に応える二次電池として、ニッケルカドミウム蓄電池の約2倍のエネルギー密度を有するニッケル水素蓄電池が開発され、次いで、これを上回るリチウムイオン電池が開発され、使用機器の用途に応じて使い分けされている。
【0003】
これらの電池は、正極板と負極板とをセパレータを介して渦巻状に巻回や積層した極板群を電池ケースに収納し、電解液を注液し、かしめ封口やレーザー封口することによって作製されている。
【0004】
このようにして作製した電池の中に混在する不良電池を識別して排出するための検査方法としては、所定のエージング時間を経過した後、一定の母数から抜き取った電池の開回路電圧、閉回路電圧、内部抵抗などの電気特性を測定して、その電気特性分布から統計的手法を用い、平均値と標準偏差値σを算出し、前記電池特性分布から外れている電池を不良電池と識別して排出する方法を採用していた。
【0005】
したがって、検査する電池の中に不良電池が混在しないように、平均値と標準偏差値から算出される検査基準を厳しくしたり、エージング時間を長くしたりして精度を高める必要があった。
【0006】
しかしながら、このような方法では、統計的に合理性を十分持っているが、生産ロットの大きさやロット間バラツキなどから、不良電池を良品電池の中に混入させないように平均値と標準偏差値σから計算される検査基準を厳しくすると、不良品と識別して排出した電池中には多くの良品電池が含まれていることになる。
【0007】
また、エージング期間を長くすると、電池をエージングする設備の確保や仕掛り在庫を持つことになり好ましくない。
【0008】
そこで、電池のエージング前後の端子電圧を2回測定し、その端子電圧差から良否判定する検査方法があり、エージング前後の端子電圧の変化量を全数測定し、変化量がある一定基準以上の電池を不良と判定する検査方法や平均値と標準偏差値σを算出して検査精度を高め、電池の良否判定を行う検査方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0009】
しかしながら、これらの方法は端子電圧測定時の環境温度による誤差や電池材料・工程等のロット間変動による誤差が大きく、特に充電状態では放電状態と比較して端子電圧の変化量が小さいため、検査精度が低く、排出中に良品が含まれたり、良品中に不良品が含まれる為、信頼性が十分ではなかった。
【0010】
そして、平均値と標準偏差値σから検査基準を設定する方法の場合、例えば平均値±3σで検査すると約0.3%が不良品と識別されて排出され、良品電池が含まれていることに変わりない。
【0011】
ところで、エージングには充電状態でエージングする方法と放電状態でエージングする方法があり、放電状態や充電深度が低い状態でエージングすると、エージング前後における電気特性値の差が大きくなるので、検査精度は向上するが、微小短絡が解消されている場合があるため、このような本来不良であるべき電池を排出することが困難であった。逆に、充電状態でエージングすると正負極間の極間距離が狭くなり、微小短絡を生じやすくなり検査精度が向上するので、充電最大電圧よりも高い過充電状態でエージングする方法が開示されているが(例えば、特許文献4参照)、安全機構が誤動作して電池を不良品にしてしまう危険性があり好ましくない。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−250929号公報
【特許文献2】
特開2001−228224号公報
【特許文献3】
特開2001−266956号公報
【特許文献4】
特開平5−343101号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような電池の検査方法の課題を解決し、環境温度等の影響を受けず微小短絡に起因する不良を識別して精度良く排出する円筒形電池の検査方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の円筒形電池の検査方法は、エージング前の端子電圧V1とエージング後の端子電圧V2との端子電圧差ΔVにより良否判定を行う電池の検査方法において、前記エージング前の端子電圧を放電状態の電位とし、検査のロット単位毎に変動するΔVの平均値ΔVAに対して、微小内部短絡した不良電池の端子電圧降下量を想定した基準値ΔVBを絶対値として設定し、ΔVA−ΔVBの値より小さいΔVの電池を不良品と判定することを特徴とする円筒形電池の検査方法であり、前記電池は、正極板と負極板とをセパレータを介して絶縁した極板群を電池ケースに収納してなる電池であり、前記電池ケースの内断面積に対する前記極板群の断面積の占める緊縛度が、91%〜98%であることが好ましく、前記検査のロット単位は、充電設備単位毎であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、正極板と負極板とをセパレータを介して渦巻状に巻回や積層した極板群を電池ケースに収納、電解液を注液し、かしめ封口することによって作製した円筒形電池を初期充電した後、図1に示す本発明の電池の検査方法の流れを示す図に基づいて行う。
【0016】
まず、検査する電池のロット単位毎に、放電状態にした後、エージング前端子電圧V1を測定して記録する。次に、所定の時間エージングした後に、エージング後端子電圧V2を測定し、エージング前後における端子電圧差ΔV(V2−V1)を算出して記録し、全数について実施する。全数の端子電圧差ΔVの平均値ΔVAを算出して記録する。さらに、不良電池を想定した基準値ΔVBを設定し、ΔVA−ΔVBの値より小さいΔVの電池を不良品と識別して排出する電池の検査方法である。
【0017】
ΔVAは良品電池の端子電圧変化量を想定しており、端子電圧測定時の環境温度や各種ロット間バラツキにより変動する。ΔVBは微小内部短絡した電池の端子電圧降下量を想定しており、これは測定時の環境温度の影響を受けない一定の基準値である。
【0018】
この不良電池を想定した基準値ΔVBとしては、良品電池と微小内部短絡した不良電池のそれぞれのエージング前の端子電圧、エージング後の時間経過毎の端子電圧から、(不良電池のΔV)−(良品電池のΔV)により微小短絡の降下量を算出しておき、前記基準値ΔVBとする。端子電圧のΔVB値は常に負の値であり、上記ΔVA−ΔVBの計算式においては、絶対値として用いる。
【0019】
ところで、負極に炭素材料を用い、電池ケースにアルミニウム合金を用いた角形リチウム二次電池の場合、充電によって角形電池の長辺面が膨れやすい為に、検査精度が向上する満充電状態で端子電圧を測定するのが好ましいが、本発明の円筒形電池の場合、充電状態と放電状態で正負極板間の極間距離が変化しにくいので、エージング前後における端子電圧の変化量が大きくなる放電状態の電位とする必要がある。
【0020】
この放電状態の電位の値としては、3.0V〜3.5Vの範囲が好ましい。放電状態の電位が3.0V未満の場合は、過放電になり電池を不良品にしてしまう危険性があり好ましくない。放電状態の電位が3.5Vを超える場合は、エージング前後における端子電圧の変化量が小さくなるので、検査精度が低下する。
【0021】
ところで、放電状態の電位が3.0V〜3.5Vになるように放電するときの電流値としては0.02ItA〜0.2ItAの範囲が好ましく、多段階的に電流値を下げることにより放電状態の電位の精度をより高めることができる。電流値が大きすぎると、ロット内のV1値のばらつきが無視できなくなり、電流値が小さすぎると放電時間が長くなり好ましくない。
【0022】
また、上記放電電流値にて2.5V〜3.1Vの放電終止電圧まで放電することにより、端子電圧が回復し、エージング前の放電状態の電位を3.0V〜3.5Vの範囲にすることができる。
【0023】
そして、電池ケースの内断面積に対する正極板と負極板とをセパレータを介して絶縁した状態の極板群の断面積の占める緊縛率を91%〜98%の範囲とすることが好ましい。
【0024】
この緊縛率が91%未満の場合、正負極間の極間距離が広く、充放電サイクルによって正負極板が膨張して極間距離が狭くなり、微小短絡に至る不良電池を製造工程で検出し、排出することが困難である。逆に、緊縛率が98%を超える場合、極板群を電池ケースに収納するときのかじり、巻きずれ、リーク不良等の不良が発生しやすくなる。
【0025】
検査をするロット単位としては、通常その日の生産数量である数千個から数十万個単位であるが、充放電設備の置かれている環境、検査するまでの時間差によって端子電圧が微妙に異なり、放電状態の電位3.0V〜3.5Vにてエージングした場合のエージングの前後における端子電圧差に無視できない影響を与えるので、充放電設備単位のロットで検査することが好ましく、この場合約100個〜200個単位となる。
【0026】
端子電圧差ΔVの平均値ΔVAとしては、測定したロットの全数の中央値を用いるか、上下一定数をカットして残数の平均値を算出して用いることができる。
【0027】
エージングの温度と期間としては、特に限定されず、一定温度で行っても良いが、電池特性を安定させるための第1エージングと端子電圧V1、V2を測定する第2エージングから構成するのがより好ましい。
【0028】
第1エージングの温度が低い場合や時間が短い場合には、電池特性を安定化させる効果が少なく、温度が高い場合や期間が長い場合には電池が劣化するので好ましくない。したがって、第1エージングの条件としては、45℃〜60℃の温度で、2日〜1週間の期間が好ましい。
【0029】
また、第2エージングの期間が短い場合には端子電圧差ΔVが小さくなり検査精度が悪く、期間が長い場合には電池をエージングする設備の確保や仕掛り在庫を持つことになり、温度が高い場合にはΔVのバラツキが大きくなるので好ましくない。したがって、第2エージングの条件としては、15℃〜30℃の温度で、2日〜2週間の期間が好ましい。
【0030】
【実施例】
以下、実施例および比較例を用いて詳細に説明するが、これらは、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0031】
(実施例1)
正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いた正極板と負極活物質としてリチウムを吸蔵、放出可能な鱗片状黒鉛を用いた負極板とを微多孔性ポリエチレン樹脂の両側に微多孔性ポリプロピレン樹脂からなる三層セパレータを介して絶縁した状態で渦巻状に巻回した極板群を電池ケースに収納したときの電池ケースの内断面積に対する極板群の断面積の占める緊縛度は、91.0%であった。
【0032】
次に、非水電解液を所定量注入した後、封口板をかしめ封口することによって、電池の直径18.0mm、総高65.0mmで電池容量2000mAhの円筒形リチウムイオン二次電池を作製し、個々の電池を識別できるように電池の種類、作製日、充放電設備番号、シリアル番号をインクジェットにて電池の側面に印刷した。
【0033】
このようにして得られた電池を充放電設備番号1の充放電設備に100個セットし、端子電圧が4.1Vに達するまで電池容量の0.1ItA(200mA)の定電流で充電した後、0.2ItA(400mA)の定電流で2.5Vの端子電圧まで放電したところ端子電圧が3.0Vまで回復した電池を得た後、60±3℃の環境下で2日間第1エージングを行った。
【0034】
次に、図1に示す電池の検査方法を用いて検査を行った。すなわち、20±5℃の環境下で、第2エージング前の端子電圧V1を測定して記録し、2日間の第2エージングを行った後の端子電圧V2を測定して記録した。100個の第2エージング前後の端子電圧差ΔV(V2−V1)を算出し、その中央値を平均値ΔVAとした。
【0035】
同様にして、充放電設備番号2〜10の充放電設備に100個づつセットした端子電圧差ΔVの平均値ΔVAを算出した。
【0036】
不良電池を想定した基準値(ΔVB)は、あらかじめ算出しておいた2日間エージングした場合の端子電圧の降下量を基準値(ΔVB)とした。
【0037】
このようにして得られたΔVA、ΔVBを用いて、(ΔVA)−(ΔVB)により算出される値より小さいΔVの電池を不良品と判定する検査を行ったときの母数1000個当たりの排出率、排出中に含まれる良品率、良品中に含まれる不良率の結果を表1に示す。
【0038】
なお、排出中に含まれる良品率は、さらに20±5℃で3週間エージングしたときに、有意差検定により良品と有意差がないものとし、良品中に含まれる不良率は、同様にさらに20±5℃で3週間エージングしたときに、有意差検定により良品と有意差があるものとした。
【0039】
【表1】
Figure 2004288515
【0040】
(実施例2)
電池ケースに収納したときの電池ケースの内断面積に対する極板群の断面積の占める緊縛度が98.0%であった以外は、実施例1と同様にして電池を得た。
【0041】
得られた電池を充放電設備番号1の充放電設備に100個セットし、実施例1と同様に充電した後、0.1ItA(200mA)の定電流で3.1Vの端子電圧まで放電したところ端子電圧が3.5Vまで回復した。
【0042】
次に、第1エージングを行わずに、15℃〜20℃の環境下で、端子電圧V1を測定して記録し、15℃〜30℃の環境下で2週間の第2エージングを行った後、25℃〜30℃の環境下で端子電圧V2を測定して記録した。100個の第2エージング前後の端子電圧差ΔV(V2−V1)を算出し、上下10個をカットし、残り80個の平均値を平均値ΔVAとした。
【0043】
同様にして、充放電設備番号2〜10の充放電設備に100個づつセットした端子電圧差ΔVの平均値ΔVAを算出した以外は、実施例1と同様にして検査を行ったときの排出率、排出中に含まれる良品率、良品中に含まれる不良率の結果を表1に示す。
【0044】
(実施例3)
実施例1と同様にして得られた電池を充放電設備番号1〜10の充放電設備にそれぞれ100個づつセットし、端子電圧が4.1Vに達するまで電池容量の0.1ItA(200mA)の定電流で充電した後、0.2ItA(400mA)の定電流で2.5Vの端子電圧まで放電したところ端子電圧が3.0Vまで回復した電池を得た後、45±3℃の環境下で7日間第1エージングを行った。
【0045】
次に、20±5℃の環境下で、第2エージング前の端子電圧V1を測定して記録し、5日間のエージングを行った後の端子電圧V2を測定して記録した。
【0046】
充放電設備番号1〜10にセットした合計1000個の第2エージング前後の端子電圧差ΔV(V2−V1)を算出し、その中央値を平均値ΔVAとした以外は、実施例1と同様にして検査を行ったときの排出率、排出中に含まれる良品率、良品中に含まれる不良率の結果を表1に示す。
【0047】
(実施例4)
実施例2と同様にして、3.1Vの端子電圧まで放電したところ端子電圧が3.5Vまで回復した電池を得た後、45±3℃の環境下で3日間第1エージングを行った。
【0048】
次に、20±5℃の環境下で、V1測定、5日間の第2エージング、V2測定を行った以外は実施例2と同様にして、電池の検査を行ったときの排出率、排出中に含まれる良品率、良品中に含まれる不良率の結果を表1に示す。
【0049】
(実施例5)
電池ケースに収納したときの電池ケースの内断面積に対する極板群の断面積の占める緊縛度を93.5%とし、3.2Vの端子電圧まで電池容量の0.2ItA(400mA)の定電流で放電し、2.6Vの端子電圧まで電池容量の0.02ItA(40mA)の定電流で放電したところ端子電圧が3.0Vまで回復した電池を用いた以外は、実施例4と同様にして、電池の検査を行ったときの排出率、排出中に含まれる良品率、良品中に含まれる不良率の結果を表1に示す。
【0050】
(実施例6)
電池ケースに収納したときの電池ケースの内断面積に対する極板群の断面積の占める緊縛度を96.0%とし、3.2Vの端子電圧まで電池容量の0.2ItA(400mA)の定電流で放電したところ端子電圧が3.65Vまで回復した電池を用いた以外は、実施例4と同様にして、電池の検査を行ったときの排出率、排出中に含まれる良品率、良品中に含まれる不良率の結果を表1に示す。
【0051】
(実施例7)
負極板の充填量を同じとし圧延条件を強くし、負極板の厚みを薄くすることによって、電池ケースに収納したときの電池ケースの内断面積に対する極板群の断面積の占める緊縛度が90.0%になるようにした以外は、実施例3と同様にして電池の検査を行ったときの排出率、排出中に含まれる良品率、良品中に含まれる不良率の結果を表1に示す。
【0052】
(実施例8)
負極板の充填量を同じとし圧延条件を弱くし、負極板の厚みを厚くすることによって、電池ケースに収納したときの電池ケースの内断面積に対する極板群の断面積の占める緊縛度が99.0%になるようにした以外は、実施例3と同様にして電池の検査を行ったときの排出率、排出中に含まれる良品率、良品中に含まれる不良率の結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
実施例1と同様にして得られた電池を充放電設備番号1〜10の充放電設備にそれぞれ100個づつセットし、端子電圧が4.1Vに達するまで電池容量の0.1ItA(200mA)の定電流で充電した後、0.2ItA(400mA)の定電流で2.5Vの端子電圧まで放電したところ端子電圧が3.0Vまで回復した電池を得た後、60±3℃の環境下で2日間第1エージングを行った。
【0054】
次に、図2に示す電池の検査方法を用いて検査を行った。すなわち、20±3℃の環境下で、第2エージング前の端子電圧V1を測定して記録し、5日間の第2エージングを行った後の端子電圧V2を測定して記録した。充放電設備番号1〜10にセットした端子電圧が3.0V〜3.5Vの電池を用いて算出した合計1000個の第2エージング前後の端子電圧差ΔV(V2−V1)を算出し、その平均値ΔVAと標準偏差σを算出し、ΔVA±3σの検査基準にて検査を行った以外は、実施例1と同様にして検査を行ったときの排出率、排出中に含まれる良品率、良品中に含まれる不良率の結果を表1に示す。
【0055】
(比較例2)
実施例2と同様にして得られた電池を充放電設備番号1〜10の充放電設備にそれぞれ100個づつセットし、3.1Vの端子電圧まで放電したところ端子電圧が3.5Vまで回復した電池を得た後、45±3℃の環境下で7日間第1エージングを行い、20±3℃の環境下で、V1測定、5日間の第2エージング、V2測定を行った以外は比較例1と同様にして、端子電圧差ΔVの平均値ΔVAと標準偏差σを算出し、ΔVA±3σの検査基準にて検査を行ったときの排出率、排出中に含まれる良品率、良品中に含まれる不良率の結果を表1に示す。
【0056】
(比較例3)
端子電圧差ΔVの平均値ΔVAと標準偏差σを算出し、ΔVA±3σの検査基準にて検査を行った以外は、実施例5と同様にしたときの電池の排出率、排出中に含まれる良品率、良品中に含まれる不良率の結果を表1に示す。
【0057】
(比較例4)
端子電圧差ΔVの平均値ΔVAと標準偏差σを算出し、ΔVA±3σの検査基準にて検査を行った以外は、実施例6と同様にしたときの電池の排出率、排出中に含まれる良品率、良品中に含まれる不良率の結果を表1に示す。
【0058】
(比較例5)
比較例1と同様にして得られた電池を充放電設備番号1〜10の充放電設備にそれぞれ100個づつセットし、3.1Vの端子電圧まで放電したところ端子電圧が3.5Vまで回復した電池を得た後、45±3℃の環境下で7日間第1エージングを行った後、図3に示す電池の検査方法を用いて検査を行った。
【0059】
すなわち、20±5℃の環境下で、第2エージング前の端子電圧V1を測定して記録し、5日間のエージングを行った後の端子電圧V2を測定して記録し、充放電設備番号1〜10にセットした合計1000個の第2エージング前後の端子電圧差ΔV(V2−V1)を算出する方法は比較例1と同様であるが、端子電圧差ΔVの平均値ΔVAを算出する方法ではなく、良品電池と不良電池の電圧降下を加味してあらかじめ算出した基準値ΔVCを−24.4mVに設定し、ΔVがこのΔVCより小さい電池を不良として識別した以外は比較例1と同様にして検査を行ったときの排出率、排出中に含まれる良品率、良品中に含まれる不良率の結果を表1に示す。
【0060】
このようにして得られた実施例1〜実施例8と比較例1〜比較例5の電池各20個について、充放電サイクル試験を実施した。試験条件としては、20℃の環境下において、0.7C(1400mA)の定電流充電を行い、電池電圧が4.2Vに到達した後は、4.2Vの電圧を維持したまま、電流値が減衰して0.05C(100mA)となるまで定電圧充電を行った後、20℃の環境下において、1ItA(2000mA)の定電流にて、3.0Vの放電終始電圧まで放電した場合の電池容量を初期容量とした。このような充放電サイクルを100サイクル繰り返し、初期容量に対する100サイクル目の容量比率を算出し、60%未満の電池は、検査で排出することができなかった微小短絡による不良電池とし、その結果を表1に示す。
【0061】
表1から明らかなように、実施例1〜実施例8と比較例1〜比較例5の比較から、電池のエージング前の端子電圧V1とエージング後の端子電圧V2との端子電圧差ΔVの平均値ΔVAに対して、不良電池を想定した基準値ΔVBを設定し、ΔVA−ΔVBの値より小さいΔVの電池を不良品と判定する本発明の検査方法は、従来の平均値ΔVAと標準偏差σを用いた検査方法や平均値ΔVAを算出する方法でなくΔVの降下量が一定基準以上の電池を不良として識別する検査方法と比較して、不良品として排出した電池中に含まれる良品率を大幅に低減でき、精度良く微小短絡に起因する不良を排出できる電池の検査方法であることがわかった。
【0062】
尚、実施例2の場合、ΔVAがプラスの値になったのは、V1、V2測定時の環境温度の影響を受けた為である。
【0063】
また、比較例5の誤排出率が高い理由は、端子電圧測定時の環境温度影響を受けない本実施例と異なり、V1、V2測定時の温度差による測定誤差のためと推測できる。温度差が全くない環境下(例えば20±0℃)であれば改善されると考えられるが、現実的ではない。温度補正する方法もあるが、この場合、補正の誤差が生じるので、検査精度が低く、信頼性が低いことがわかった。
【0064】
放電状態の電位を3.0V〜3.5Vに設定してエージングすることにより、エージング前後における端子電圧の変化量が小さく、検査精度が低下するといった課題や、過放電になり電池を不良品にしてしまう危険性がなく、より精度良く微小短絡に起因する不良を排出できることもわかった。
【0065】
また、実施例3、4、7、8の比較から、電池ケースの内断面積に対する極板群の断面積の占める緊縛率を91%〜98%の範囲とすることにより、より精度良く微小短絡に起因する不良を排出できることもわかった。
【0066】
そして、実施例1と実施例3の比較から充放電設備後毎に検査することにより、さらに微小短絡に起因する不良を識別して精度良く排出できることもわかった。
【0067】
【発明の効果】
以上のように、本発明の電池の検査方法によれば微小短絡に起因する不良を識別して精度良く排出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電池の検査方法の流れを示す図
【図2】従来の電池の検査方法の流れを示す図
【図3】別の従来の電池の検査方法の流れを示す図

Claims (3)

  1. 円筒形電池のエージング前の端子電圧V1とエージング後の端子電圧V2との端子電圧差ΔVにより良否判定を行う電池の検査方法において、前記エージング前の端子電圧を放電状態の電位とし、検査のロット単位毎に変動するΔVの平均値ΔVAに対して、微小内部短絡した不良電池の端子電圧降下量を想定した基準値ΔVBを絶対値として設定し、ΔVA−ΔVBの値より小さいΔVの電池を不良品と判定することを特徴とする円筒形電池の検査方法。
  2. 前記電池は、正極板と負極板とをセパレータを介して絶縁した極板群を電池ケースに収納してなる電池であり、前記電池ケースの内断面積に対する前記極板群の断面積の占める緊縛度が、91%〜98%であることを特徴とする請求項1に記載の円筒形電池の検査方法。
  3. 前記検査のロット単位が充電設備単位毎であることを特徴とする請求項1に記載の電池の検査方法。
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