JP2004287230A - 着色パターン用硬化性樹脂組成物、カラーフィルター、及び、液晶パネル - Google Patents
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Abstract
【課題】感度が高く、現像性が良好で、高濃度の微細な着色パターンを良好なエッジ形状、テーパー形状で形成できる硬化性樹脂組成物、当該硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した、高画質、高精彩のカラーフィルター、及び、当該カラーフィルターを用いた表示品質に優れた液晶パネルを提供する。
【解決手段】少なくとも、着色剤(a)と、3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)と、1つ以上の酸性官能基と3つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(c)と、バインダー(d)を含有する、着色パターン用硬化性樹脂組成物である。カラーフィルター(103)は、透明基板と、当該透明基板上に設けられた画素とを備え、さらにブラックマトリックス層を備えていてもよいカラーフィルターであって、画素及び/又はブラックマトリックス層が本発明に係る硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものである。また、液晶パネルを構成する表示側基板が上記カラーフィルターである。
【選択図】 図2
【解決手段】少なくとも、着色剤(a)と、3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)と、1つ以上の酸性官能基と3つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(c)と、バインダー(d)を含有する、着色パターン用硬化性樹脂組成物である。カラーフィルター(103)は、透明基板と、当該透明基板上に設けられた画素とを備え、さらにブラックマトリックス層を備えていてもよいカラーフィルターであって、画素及び/又はブラックマトリックス層が本発明に係る硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものである。また、液晶パネルを構成する表示側基板が上記カラーフィルターである。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、感度が高く現像性が良好な着色パターン用硬化性樹脂組成物、当該着色パターン用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した、高画質、高精彩のカラーフィルター、及び、当該カラーフィルターを用いた表示品質に優れた液晶パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶パネルは、表示側基板と液晶駆動側基板とを対向させ、両者の間に液晶化合物を封入して薄い液晶層を形成し、液晶駆動側基板により液晶層内の液晶配列を電気的に制御して表示側基板の透過光又は反射光の量を選択的に変化させることによって表示を行う。
【0003】
液晶パネルには、スタティック駆動方式、単純マトリックス方式、アクティブマトリックス方式など種々の駆動方式があるが、近年、パーソナルコンピューターや携帯情報端末などのフラットディスプレーとして、アクティブマトリックス方式又は単純マトリックス方式の液晶パネルを用いたカラー液晶表示装置が急速に普及してきている。
【0004】
図1は、アクティブマトリックス方式の液晶パネルの一構成例である。液晶パネル101は、表示側基板であるカラーフィルター1と液晶駆動側基板であるTFTアレイ基板2とを対向させて1〜10μm程度の間隙部3を設け、当該間隙部3内に液晶Lを充填し、その周囲をシール材4で密封した構造をとっている。カラーフィルター1は、透明基板5上に、画素間の境界部を遮光するために所定のパターンに形成されたブラックマトリックス層6と、複数の色(通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色)を所定順序に配列した画素7又は最近ではホログラムを利用した画素と、保護膜8と、透明電極膜9とが、透明基板に近い側からこの順に積層された構造をとっている。一方、TFTアレイ基板2は、透明基板上にTFT素子を配列し、透明電極膜を設けた構造をとっている(図示せず)。また、カラーフィルター1及びこれと対向するTFTアレイ基板2の内面側には配向膜10が設けられる。さらに間隙部3には、カラーフィルター1と電極基板2の間のセルギャップを一定且つ均一に維持するために、スペーサーとしてガラス、アルミナ又はプラスチック等からなる一定サイズの球状又は棒状粒子11が分散されている。そして、各色に着色された画素それぞれ又はカラーフィルターの背後にある液晶層の光透過率を制御することによってカラー画像が得られる。
【0005】
カラーフィルターに形成される保護膜8は、画素の保護とカラーフィルターの平坦化の役割を果たしている。カラー液晶表示装置では、カラーフィルターの透明基板表面のうねりに起因するギャップムラ、R、G及びBの各画素間でのギャップムラ、或いは各画素内でのギャップムラなどの存在により透明電極膜9の平坦性が損なわれると、色ムラ或いはコントラストムラを生じ、その結果、画像品質の低下を来たすと言う問題がある。従って、保護膜には高い平坦性が求められる。
【0006】
スペーサーとして図1に示したような微粒子11を分散させる場合には、当該微粒子11は、ブラックマトリックス層6の背後であるか画素の背後であるかは関係なく、ランダムに分散する。微粒子11が表示領域すなわち画素の上に配置された場合、微粒子11の部分をバックライトの光が透過し、また、微粒子11周辺の液晶の配向が乱れ、表示画像の品位を著しく低下させる。そこで図2に示すように、微粒子11を分散させるかわりに、カラーフィルターの内面側であってブラックマトリックス層6が形成されている位置と重り合う領域(非表示領域)に、セルギャップに対応する高さを有する柱状スペーサー12を形成することが行われるようになってきた。
【0007】
前記の画素7、保護膜8及び柱状スペーサー12は、樹脂を用いて形成することができる。画素7は、各色ごとに所定のパターンに形成する必要がある。保護膜8は、シール部の密着性や密閉性を考慮すると、透明基板上の画素が形成された領域のみ被覆できるものであることが好ましい。また、柱状スペーサー12は、ブラックマトリックス層の形成領域内すなわち非表示領域に正確に設ける必要がある。
【0008】
このようなカラーフィルターの細部は、光硬化性樹脂の塗膜を基材上に形成し、硬化させたい領域を選択的に露光した後にアルカリ現像することによって形成できる。アルカリ現像可能な光硬化性樹脂としては、アルカリ可溶性バインダーに多官能のアクリルモノマーと光重合開始剤を配合した組成物を用いることができる。特許文献1には、アルカリ可溶性のカルボキシル基と、ラジカル重合性の(メタ)アクリル基をもつ光硬化性樹脂が記載されており、アルカリ可溶性バインダーとして用いることができる。
【0009】
アルカリ現像可能な光硬化性樹脂を用いて画素やブラックマトリックス等の着色層を形成する場合には、着色剤の配合割合を多くすることにより高い着色濃度が得られる。着色剤として顔料を用いる場合には、顔料分散剤の配合割合も多くなる。また、光硬化性樹脂は、光重合開始剤の配合割合を多くすると感度が上がり、少ない露光量で速やかに硬化できるようになる。しかしながら、着色剤、分散剤及び/又は光重合開始剤等の配合割合が高いと、アルカリ可溶性バインダーの配合割合が少なくなるため、樹脂の硬化性、アルカリ現像性、現像後の形状等が悪くなる。
【0010】
光硬化性樹脂に、着色剤等の増量に合わせて多官能モノマーを配合すると硬化性が向上し、着色パターンの感度、硬度、強度、密着性等が改善される。しかしながら、多官能モノマーの配合又は増量によってアルカリ可溶性バインダーの配合割合がさらに少なくなるので、光硬化性樹脂の現像性はさらに悪くなってしまう。光硬化性樹脂のアルカリ現像性が悪化すると、パターンのエッジ形状の悪化、逆テーパー形状の発生、現像時間の延長、基材の現像による露出面の残渣等の問題が顕著になる。
【0011】
一方、特許文献2には、樹脂、特定構造をもつ2種の多官能アクリルモノマー、光重合開始剤、溶剤を主成分とする感光性組成物からなる柱状スペーサー用感光性組成物が記載されている。
【0012】
しかしながら、上記特許文献2に記載された感光性組成物は、着色パターンを形成するものではない。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−105456号公報
【特許文献2】
特開2001−91954号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
現像性が良好で、高濃度で、エッジ形状及びテーパー形状も良好な、微細パターンの着色層を形成でき、且つ露光感度が高い着色パターン用硬化性樹脂組成物、当該硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した、高画質、高精彩のカラーフィルター、及び、当該カラーフィルターを用いた表示品質に優れた液晶パネルを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明において提供される硬化性樹脂組成物は、少なくとも、着色剤(a)と、3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)と、1つ以上の酸性官能基と3つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(c)と、バインダー(d)を含有する。
【0016】
本発明の硬化性樹脂組成物は、酸素クエンチャーである3級アミン構造を分子内に有する光重合開始剤(b)を多量に配合し、さらに着色剤及び分散剤を多量に配合しても、光硬化性化合物(c)を配合することによって架橋密度とアルカリ可溶性を高くできることから、硬化性とアルカリ現像性に優れ、露光時には感度が高く、現像時には現像速度が高い。また、着色濃度が高く、順テーパー形状で、精度が高い微細な着色パターンを形成することができ、露出部の残渣も少ない。
【0017】
上記硬化性樹脂組成物は、更に、2つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(e)を含有してもよい。光硬化性化合物(c)は酸性基を有しているので架橋密度とアルカリ可溶性の両方を増大させるのに対し、光硬化性化合物(e)は架橋密度のみ増大させるので、これらを組み合わせることにより、架橋密度とアルカリ可溶性を調節することができる。
【0018】
上記硬化性樹脂組成物は、架橋密度とアルカリ可溶性を充分に上げるために、固形分で、前記光硬化性化合物(c)を3〜30重量%含有することが好ましい。
【0019】
上記硬化性樹脂組成物は、感度を充分に上げるために、固形分で、前記光重合開始剤(b)を5重量%以上含有することが好ましい。
【0020】
上記バインダー(d)は、架橋密度を充分に上げるために、光硬化性官能基を有する重合体であることが好ましい。また、バインダー(d)の分子量は、3,000〜1,000,000であることが好ましい。
【0021】
本発明の着色パターン用硬化性樹脂組成物は、液晶パネル用基板の製造に用いられるのに適しており、特に、カラーフィルターの画素やブラックマトリックス層等の着色層を形成するのに適している。すなわち、本発明の着色パターン用硬化性樹脂組成物を用いると、高感度により生産性が高く、高濃度の微細な着色パターンを良好なエッジ形状、テーパー形状で形成することができる。
【0022】
本発明において提供されるカラーフィルターは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた画素とを備え、さらにブラックマトリックス層を備えていてもよいカラーフィルターであって、前記着色層及び/又は前記ブラックマトリックス層が、前記本発明に係る着色パターン用硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものであり、高画質、高精彩である。
【0023】
また、本発明の液晶パネルは、表示側基板と液晶駆動側基板とを対向させ、両者の間に液晶を封入してなる液晶パネルであって、前記表示側基板が前記請求項8に記載のカラーフィルターであり、画像品質に優れている。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明により提供される着色パターン用硬化性樹脂組成物は、少なくとも、着色剤(a)と、3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)と、1つ以上の酸性官能基と3つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(c)(以下、「酸性多官能光硬化性化合物(c)」という)と、バインダー(d)を含有するものである。
【0025】
本発明の硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤、着色剤、分散剤等の硬化反応性をもたず且つアルカリ可溶性がない成分を多量に含有しても、酸性多官能光硬化性化合物(c)を配合することにより架橋密度及びアルカリ可溶性を高くできることから、優れた硬化性とアルカリ現像性が得られる。
【0026】
以下において本発明を詳しく説明する。なお、本発明において(メタ)アクリルとはアクリル基又はメタクリル基のいずれかであることを意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル基又はメタクリロイル基のいずれかであることを意味する。
【0027】
また、硬化性樹脂組成物中の各成分の固形分比は、総固形分を基準とした時の割合である。ここで総固形分とは、溶剤以外の全ての成分の合計量であり、液状のモノマー成分も含まれる。
【0028】
(着色剤(a))
本発明に係る着色パターン用硬化性樹脂組成物には、顔料や染料等の着色剤(a)を含有する。着色剤としては、ブラックマトリックス層、及び着色層のR、G、B等の求める色に合わせて、有機着色剤及び無機着色剤の中からカラーフィルターの加熱プロセスに耐え得る耐熱性があり、且つ、良好に分散し得る微粒子のものを選んで使用することができる。
【0029】
有機着色剤としては、例えば、染料、有機顔料、天然色素等を用いることができる。また、無機着色剤としては、例えば、無機顔料、体質顔料等を用いることができる。
【0030】
有機顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行) においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、すなわち、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等のイエロー系ピグメント;C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド177等のレッド系ピグメント;及び、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等のブルー系ピグメント;C.I.ピグメントバイオレット23:19;C.I.ピグメントグリーン36.
また、前記無機顔料あるいは体質顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。本発明において色材は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
着色剤は、充分な着色濃度を得るために、本発明の硬化性樹脂組成物中に固形分比で、通常20〜80重量%、好ましくは25〜60重量%の割合で配合する。本発明の硬化性樹脂組成物は、着色剤を多量に配合しても、後述する酸性多官能光硬化性化合物(c)を配合することにより架橋密度及びアルカリ可溶性を上げることができるので、優れた硬化性とアルカリ現像性が得られる。
【0032】
(光重合開始剤(b))
本発明の硬化性樹脂組成物は、必須成分として3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)を含有する。光重合開始剤(b)は、分子内に酸素クエンチャーである3級アミン構造を有するため、開始剤から発生したラジカルが酸素により失活し難く、硬化性樹脂組成物の感度を向上させるためには適切な重合開始剤である。
【0033】
3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メチル−4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジプロピルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジイソプロピルアミノ)ベンゾフェノン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’─テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−シアノフェニル)−4,4’,5.5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−シアノフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−エチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−エチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−エチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−フェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−フェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−フェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’─テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−シアノフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジシアノフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリシアノフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−エチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジエチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリエチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−フェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジフェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリフェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、4−ジアゾジフェニルアミン、4−ジアゾ−4’−メトキシジフェニルアミン、4−ジアゾ−3−メトキシジフェニルアミンが挙げられ、溶剤溶解性、製版性の点から2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メチル−4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジエチルアミノベンゾフェノンを用いることが好ましい。
【0034】
市販品としては、例えば、イルガキュア907、イルガキュア369(以上、チバ・スペシャルティケミカルズ製)、ハイキュアABP(川口薬品製)、ビイミダゾール(黒金化成製)などが挙げられる。
【0035】
重合開始剤(b)としては、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を併用する場合には、吸収分光特性を阻害しないようにするのがよい。
【0036】
重合開始剤(b)は、硬化性樹脂組成物中に通常、固形分比で、5〜25重量%の範囲で配合するが、感度を充分に上げるためには10重量%以上、特に13重量%以上とすることが好ましい。本発明においては、後述する酸性多官能光硬化性化合物(c)を含有するため、硬化性樹脂組成物の架橋密度及びアルカリ可溶性を悪化させることなく、重合開始剤(b)を10重量%以上に増量し感度を上げることが可能であり、優れた硬化性とアルカリ現像性が得られる。
【0037】
なお、硬化性樹脂組成物を調製するにあたって、光重合開始剤(b)は、前記重合体(a)に最初から添加しておいてもよいが、比較的長期間保存する場合には、使用直前に硬化性樹脂組成物中に分散或いは溶解することが好ましい。
【0038】
(酸性多官能光硬化性化合物(c))
本発明の硬化性樹脂組成物は、必須成分として1つ以上の酸性官能基と3つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(c)を含有する。
【0039】
酸性多官能光硬化性化合物(c)は、1分子内に1つ以上の酸性基と3つ以上の光硬化性官能基を有し、分子サイズが比較的小さい化合物である。当該化合物(c)のポリスチレン換算重量平均分子量は、通常3,000未満である。
【0040】
酸性多官能光硬化性化合物(c)を光硬化性樹脂組成物に配合すると、当該化合物(c)の光重合性基により架橋密度が上がり、当該化合物(c)の酸性基によりアルカリ可溶性が大きくなる。そのため、光硬化性樹脂組成物の着色剤、分散剤、光重合開始剤等の硬化反応性をもたず、且つ、アルカリ可溶性のない成分を増量しても、酸性多官能光硬化性化合物(c)を添加することによって架橋密度及びアルカリ可溶性が上がるので、優れた硬化性とアルカリ現像性が得られる。
【0041】
酸性多官能光硬化性化合物(c)の酸性官能基は、アルカリ現像が可能なものであればよく、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられるが、アルカリ現像性及び樹脂組成物の取り扱い性の点からカルボキシル基が好ましい。
【0042】
光硬化性官能基の反応形式は限定されず、光ラジカル反応、光カチオン反応、光アニオン反応のいずれであってもよいが、3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)が光ラジカル重合開始剤である点から、光ラジカル重合や光ラジカル二量化等の光ラジカル反応性基であることが好ましく、特に、(メタ)アクリル基等のエチレン性不飽和結合を含有する基であることが好ましい。
【0043】
上記したような酸性多官能光硬化性化合物(c)としては、(1)水酸基と共に3つ以上の光硬化性官能基を有するモノマー又はオリゴマーを二塩基酸無水物で変性することによりカルボキシル基を導入したもの、或いは、(2)3つ以上の光硬化性官能基を有する芳香族化合物を濃硫酸や発煙硫酸で変性することによりスルホン酸基を導入したもの等を用いることができる。また、酸性多官能光硬化性化合物(c)そのものであるモノマーを繰返し単位として含むオリゴマーを、酸性多官能光硬化性化合物(c)として用いてもよい。
【0044】
酸性多官能光硬化性化合物(c)としては、下記一般式(1)、(2)で表されるものが好ましい。なお、一般式(1)、(2)において、T又はGがオキシアルキレン基の場合には、炭素原子側の末端がR、X及びWに結合する。
【0045】
【化1】
【0046】
(式(1)中、nは0〜14であり、mは1〜8である。式(2)中、Wは式(1)と同様のR又はXであり、6個のWのうち、3個以上のWがRである。pは0〜14であり、qは1〜8である。一分子内に複数存在するR、X、T、Gは、各々同一であっても、異なっていても良い。)
式(1)、(2)で表される酸性多官能光硬化性化合物(c)として、具体的には、下記式(3)〜(8)で表されるものが挙げられ、中でも式(3)及び式(4)が好ましい。
【0047】
【化2】
【0048】
【化3】
【0049】
式(1)、(2)で表される酸性多官能光硬化性化合物(c)の市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のカルボキシル基含有3官能アクリレートであるTO−756、及びカルボキシル基含有5官能アクリレートであるTO−1382が挙げられる。
【0050】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、酸性多官能光硬化性化合物(c)を固形分比で、3〜30重量%、更に10〜30重量%含有することが好ましい。上記範囲内の含有量であれば、塗布適性を悪化することなく、樹脂組成物の硬化時の架橋密度を向上させると共に、アルカリ現像性を向上させることができる。
【0051】
(バインダー(d))
本発明の硬化性樹脂組成物は、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与するために、必須成分としてバインダー(d)を含有する。
【0052】
バインダー(d)としては、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与する目的から重合体が用いられ、非反応性重合体及び反応性重合体のいずれも用いることができる。本発明においては、酸性多官能光硬化性化合物(c)とも架橋結合を形成して、更に優れた硬化性を得る点から、反応性重合体、特に光硬化性官能基を有する重合体を用いることが好ましい。
【0053】
バインダー(d)として用いることができる非反応性重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−ビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレン−メタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、オポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等を例示することができる。
【0054】
さらに、重合可能なモノマーであるメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレートの中から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸、アクリル酸の二量体(例えば、東亞合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの無水物の中から選ばれる1種以上からなる重合体又は共重合体も例示できる。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いることができる反応性重合体としては、上記のコポリマーに例えば硬化反応性の官能基を導入した重合体等が挙げられるが、中でも酸性多官能光硬化性化合物(c)とも架橋結合を形成して、更に優れた硬化性を得る点から、光硬化性官能基を有する重合体であることが好ましい。
【0056】
光硬化性官能基としては、光ラジカル反応、光カチオン反応、光アニオン反応等の様々な反応形式のものを利用できるが、酸性多官能光硬化性化合物(c)の光硬化性官能基と同様の反応形式であることが互いに重合して架橋密度を高くする点から好ましい。3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)が光ラジカル重合開始剤である点から、光ラジカル重合や光ラジカル二量化等の光ラジカル反応性基であることが好ましく、特に、(メタ)アクリル基等のエチレン性不飽和結合を含有する基であることが好ましい。
【0057】
光硬化性官能基は、重合体の主鎖連結を形成した後で、適切な官能基を介して重合体の主鎖中に導入することができる。すなわち、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基等の付加又は縮合反応性の官能基をもつアクリル系モノマーを他のアクリル系モノマーと重合して中間体ポリマーを合成した後、中間体ポリマーの官能基と反応できる官能基を持つアクリル系モノマーを反応させることで、エチレン性不飽和結合をもつペンダント構造を重合体に導入することができる。
【0058】
バインダー(d)は、更に、アルカリ可溶性に寄与する酸性官能基を有することが好ましい。この場合、酸性多官能光硬化性化合物(c)と組み合わせることにより、本発明の硬化性樹脂組成物は更に硬化性及びアルカリ可溶性が良好となり、高濃度の微細な画素を良好なエッジ形状、テーパー形状で形成することができるようになる。
【0059】
酸性官能基の含有割合は、酸性多官能光硬化性化合物(c)と共に硬化性樹脂組成物に要求されるアルカリ可溶性の程度により調整される。酸性官能基を有する構成単位を重合体の主鎖へと導入するために使用される単量体としては、エチレン性不飽和結合と酸性官能基を有する化合物、例えばアクリル酸やメタクリル酸を使用することができる。酸性官能基は、アルカリ現像が可能なものであればよく、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられるが、アルカリ現像性及び樹脂組成物の取り扱い性の点からカルボキシル基が好ましい。
【0060】
バインダー(d)として好ましく用いられる共重合体の例としては、少なくとも、酸性官能基としてカルボキシル基を備えた下記式(9)で表される構成単位と、ラジカル重合性基を備えた下記式(10)及び/又は(11)で表される構成単位を含む共重合体を挙げることができる。
【0061】
【化4】
【0062】
(式中、R1は水素または炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
式(9)及び後述する他の式中に含まれるR1は、水素、または炭素数1〜5のアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等が例示される。式(9)の構成単位を導入するために使用される単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、2−カルボキシ−1−ブテン、2−カルボキシ−1−ペンテン、2−カルボキシ−1−ヘキセン、2−カルボキシ−1−へプテン等が例示される。
【0063】
【化5】
【0064】
(式中、R1は上記と同じであり、R2は水素原子又はメチル基を示す。)
式(10)の構成単位は、カルボキシル基を含有する上記式(9)で表される構成単位の一部に、グルシジル(メタ)アクリレートを反応させることにより形成できる。
【0065】
【化6】
【0066】
(式中、R1は上記と同じであり、R3は炭素数2乃至4のアルキレン基であり、R4はアルキレン基である。R5は水素原子又はメチル基である。)
式(11)に含まれるR3(炭素数2乃至4のアルキレン基)は、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等であり、R4(アルキレン基)は、好ましくは炭素数2乃至6のアルキレン基である。
【0067】
式(11)の構成単位を共重合体に導入するためには、先ず、他のモノマーと共に下記式(12)で表されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを共重合して共重合体の主鎖部分を形成する。
【0068】
【化7】
【0069】
(式中、R1及びR3は式(11)と同じである。)
式(12)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が例示される。
【0070】
その後、前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の水酸基に下記式(13)で表される(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート化合物を反応させればよい。
【0071】
【化8】
【0072】
(式中、R4及びR5は上記と同じである。)
式(13)で表されるイソシアネート化合物のなかでは、(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜6のアルキレン基を介してイソシアネート基(−NCO)と結合したものを使用するのが好ましい。具体的には、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルエチルイソシアネート等が例示される。2−メタクリロイルエチルイソシアネートは、例えば、昭和電工(株)製「カレンズMOI」等の商品名で市販されている。
【0073】
上記共重合体は、さらにアルコール性水酸基を備えた構成単位(アルコール性水酸基含有単位)を含んでいてもよい。アルコール性水酸基は硬化性樹脂の現像性を調整する成分である。
【0074】
アルコール性水酸基を有する構成単位を重合体の主鎖へと導入するために使用される単量体としては、エチレン性不飽和結合とアルコール性水酸基を有する化合物を使用することができる。
【0075】
アルコール性水酸基含有単位としては、下記式(14)で表される構成単位が好ましい。
【0076】
【化9】
【0077】
(式中、R1及びR3は上記と同じである。)
式(14)の構成単位を導入するために使用される単量体としては、前記式(12)で表されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0078】
上記共重合体は、さらに芳香族炭素環を備えた構成単位(芳香族炭素環含有単位)を含んでいてもよい。芳香族炭素環含有単位は、硬化性樹脂組成物に塗膜性を付与する成分である。芳香族炭素環含有単位としては、下記式(15)で表されるものが好ましい。
【0079】
【化10】
【0080】
(式中、R1は上記と同じであり、R12は芳香族炭素環を示す。)
式(15)中に含まれるR12(芳香族炭素環)は、例えば、フェニル基、ナフチル基等である。式(15)の構成単位を導入するために使用される単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンを例示でき、また、その芳香族環は、塩素、臭素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基、ジアルキルアミノ基等のアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、スルフォン酸基、燐酸機等で置換されていてもよい。
【0081】
上記共重合体は、さらにエステル基を備えた構成単位(エステル基含有単位)を含んでいてもよい。エステル基含有単位は、硬化性樹脂のアルカリ可溶性を抑制する成分である。エステル基含有単位としては、下記式(16)で表されるものが好ましい。
【0082】
【化11】
【0083】
(式中、R1は上記と同じであり、R13はアルキル基またはアラルキル基を示す。)
式(16)中に含まれるR13(アルキル基またはアラルキル基)は、例えば、炭素数1乃至12のアルキル基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基である。式(16)の構成単位を導入するために使用される単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が例示される。
【0084】
各構成単位を重合体の主鎖へと導入するために使用される単量体は、各構成単位ごとに、それぞれ例示したものを単独でも、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
上記共重合体は、ランダム共重合体およびブロック共重合体のいずれであってよい。上記共重合体に含まれる各構成単位の含有割合は適宜調節される。
【0086】
光硬化性官能基を含有する場合には、光硬化性官能基含有単位の含有割合は、要求される光重合性の程度(感度)に応えるべく調節され、主鎖を形成するための単量体と例えばグリシジル(メタ)アクリレートやイソシアネート化合物のような光重合性基含有化合物の総使用量(総仕込み量)を全量とした時の仕込み量の割合で表した時に、5モル%〜95モル%、更に14モル%〜50モル%とすることが好ましい。
【0087】
酸性官能基を含有する場合には、酸性官能基含有単位の含有割合は、上述したように要求されるアルカリ可溶性の程度と溶剤溶解性に応えるべく調節され、上記と同様の仕込み量で表した時に、5モル%〜55モル%、更に10モル%〜30モル%とすることが好ましい。
【0088】
芳香族炭素環含有単位を含有する場合の含有割合は、塗膜性を調節するために、仕込み量で表した時に、通常は0モル%〜75モル%、好ましくは5モル%〜50モル%とされる。
【0089】
エステル基含有単位の含有する場合の含有割合は、アルカリ現像性を必要に応じて抑制するために、仕込み量で表した時に、通常は0モル%〜75モル%、好ましくは5モル%〜50モル%とされる。
【0090】
光硬化性官能基を有する重合体を製造するには、先ず、酸性官能基を備えた構成単位と共に、必要に応じて、光硬化性官能基を有するペンダント構造を後から導入できる官能基を備えた構成単位、環状イミド基を備えた構成単位、及び、その他の構成単位を含む主鎖を有する重合体(原料重合体)を製造し、それから当該原料重合体にエチレン性不飽和結合のような光硬化性官能基と共に何らかの別の官能基を有する化合物を反応させて、光硬化性官能基のペンダント構造を導入すればよい。
【0091】
バインダー(d)として用いられる重合体は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が3,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜1000,000、さらに好ましくは5,000〜100,000の範囲に調節するのが好ましい。重量平均分子量が3,000より小さいとアルカリ可溶性が高すぎてパターン露光時のパターン形状を制御しにくく、また、パターンを作製できる場合でも最終的な膜厚が減る(膜減り)等の問題がある。一方、重量平均分子量がl,000,000より大きいと、レジスト化した時の粘度が高くなりすぎて塗工適性が低下したり、現像性が悪くなりパターンが抜けにくくなるなどの問題がある。
【0092】
バインダー(d)に用いられる重合体の酸価は5mgKOH/g〜400mgKOH/g、更に、10mgKOH/g〜200mgKOH/gとするのが好ましい。
【0093】
本発明において硬化性樹脂組成物には、バインダー(d)を固形分比で、通常5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%含有させることが好ましい。着色剤量20重量%以上の高濃度着色レジストの場合、バインダー(d)の含有量が25重量%を超えると、塗膜の硬化性が低下し、基板密着性が悪くなる。一方、バインダー(d)の含有量が5重量%未満では、塗膜の製版性が低下し、現像ムラ、残渣の発生などの問題を生じる場合がある。
【0094】
(光硬化性化合物(e))
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記酸性多官能光硬化性化合物(c)と共に、2つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(e)(以下、「多官能光硬化性化合物(e)」と称する)を配合してもよい。酸性多官能光硬化性化合物(c)は、架橋密度とアルカリ可溶性の両方を増大させるのに対し、光硬化性化合物(e)は架橋密度のみ増大させるので、これらを組み合わせることにより、架橋密度とアルカリ可溶性を調節することができる。
【0095】
本発明において多官能光硬化性化合物(e)は、光硬化性官能基を一分子中に2つ以上、好ましくは3つ以上有し、分子サイズが比較的小さい化合物である。当該化合物(e)のポリスチレン換算重量平均分子量は、通常3000未満である。
【0096】
多官能光硬化性化合物(e)の反応形式は上記酸性多官能光硬化性化合物(c)の場合と同様限定されず、光ラジカル反応、光カチオン反応、光アニオン反応のいずれであってもよいが、酸性多官能光硬化性化合物(c)の光硬化性官能基、更にバインダー(d)に光硬化性官能基を含有する場合の光硬化性官能基と同様の反応形式であることが、互いに重合して架橋密度を高くする点から好ましい。3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)が光ラジカル重合開始剤である点から、光ラジカル重合や光ラジカル二量化等の光ラジカル反応性基であることが好ましく、特に、(メタ)アクリル基等のエチレン性不飽和結合を含有する基であることが好ましい。
【0097】
エチレン性不飽和結合を一分子中に2つ以上有する化合物としては、多官能アクリレート系のモノマー又はオリゴマーが好ましく用いられ、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンテトラ(メタ)アクリレート、テトラトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを例示することができる。これらの成分は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0098】
多官能光硬化性化合物(e)を含有する場合に、その含有量は、硬化性樹脂組成物中に固形分比で通常は27重量%以下、好ましくは20重量%以下とする。酸性多官能光硬化性化合物(c)と多官能光硬化性化合物(e)の含有割合の関係は、塗膜の硬化性及び製版性の調整のし易さから、固形分で、前記酸性多官能光硬化性化合物(c)と前記多官能光硬化性化合物(e)の和に対する前記酸性多官能光硬化性化合物(c)の重量比((c)/{(c)+(e)})が0.1〜1の範囲に入ることが好ましい。
【0099】
また、前記バインダー(d)と、前記酸性多官能光硬化性化合物(c)と前記多官能光硬化性化合物(e)の含有割合の関係は、固形分で、前記バインダー(d)と、前記酸性多官能光硬化性化合物(c)と前記多官能光硬化性化合物(e)の和の重量比((d)/{(c)+(e)})が1.5以下であることが好ましい。重量比((d)/{(c)+(e)})を1.5以下とすることにより、形成される塗膜の硬化性が充分となり、更に密着強度、耐熱性等の各種物理強度が適切となるというメリットがある。
【0100】
本発明の硬化性樹脂組成物には、反応希釈剤としてメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドンなどの単官能性モノマーを添加してもよい。
【0101】
本発明に係る着色パターン用硬化性樹脂組成物には、着色剤(a)が必須成分として配合されるため、着色剤を均一且つ安定して分散させるために、当該硬化性樹脂組成物中に分散剤を配合することが好ましい。分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
【0102】
すなわち、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類などの高分子界面活性剤が好ましく用いられる。
【0103】
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記光重合開始剤(b)以外の光重合開始剤を含有しても良い。
【0104】
上記光重合開始剤(b)以外の光重合開始剤としては、例えば紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体又はそれらのエステルなどの誘導体;キサントン並びにチオキサントン誘導体;クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物などがある。好ましくは、イルガキュア184、イルガキュア651、ダロキュアー1173(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)などのケトン系及びビイミダゾール系化合物等を挙げることができる。これらの開始剤を1種のみ又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を併用する場合には、吸収分光特性を阻害しないようにするのがよい。
【0105】
なお、硬化性樹脂組成物を調製するにあたって、上記光重合開始剤(b)以外の光重合開始剤も、前記バインダー(d)に最初から添加しておいてもよいが、比較的長期間保存する場合には、使用直前に硬化性樹脂組成物中に分散或いは溶解することが好ましい。
【0106】
光感度の向上を更に期待したい場合には、増感剤を添加してもよい。用いる増感剤としては、スチリル系化合物或いはクマリン系化合物が好ましい。具体的には、2−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、2−(p−ジエチルアミノスチリル)キノリン、4−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、4−(p−ジエチルアミノスチリル)キノリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−3,3−3H−インドール、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−3,3−3H−インドール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズイミダゾール、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−ベンズイミダゾールなどが挙げられる。
【0107】
また、クマリン系化合物としては、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−エチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、4,6−ジエチルアミノ−7−エチルアミノクマリン、3−(2−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノシクロペンタ(c)クマリン、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、1,2,3,4,5,3H,6H,10H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチル(1)ベンゾピラノ−(9,9a,1−gh)−キノリジン−10−オン、7−エチルアミノ−6−メチル−4−トリフルオロメチルクマリン、1,2,3,4,5,3H,6H,10H−テトラヒドロ−9−カルベトキシ(1)ベンゾピラノ−(9,9a,1−gh)−キノリジン−10−オンなどが挙げられる。
【0108】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物の中には、耐熱性、密着性、耐薬品性(特に耐アルカリ性)の向上を図る目的で、必要に応じて、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物(エポキシ樹脂)を配合することができる。エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としてエピコート1001、1002、1003、1004、1007、1009、1010(ジャパンエポキシレジン製)など、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としてエピコート807(ジャパンエポキシレジン製)など、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としてEPPN201、202(日本化薬製)、エピコート154(ジャパンエポキシレジン製)など、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としてEOCN102、103S、104S、1020、1025、1027(日本化薬製)、エピコート180S(ジャパンエポキシレジン製)などを例示できる。さらに、環式脂肪族エポキシ樹脂や脂肪族ポリグリシジルエーテルを例示することもできる。
【0109】
これらの中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を分子内に2個以上有する化合物の多くは高分子量体であるが、ビスフェノールAやビスフェノールFのグリシジルエーテルは低分子量体であり、そのような低分子量体は特に好ましい。また、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート等を樹脂骨格中に含むアクリル共重合体等も有効である。
【0110】
このようなエポキシ樹脂は、硬化性樹脂組成物中に固形分比で、通常は0〜60重量%、好ましくは5〜40重量%含有される。エポキシ樹脂の含有量が5重量%未満では、保護膜に充分な耐アルカリ性を付与できない場合がある。一方、エポキシ樹脂の含有量が60重量%を超えると、エポキシ樹脂量が多くなりすぎ、硬化性樹脂組成物の保存安定性、現像適性が低下するので好ましくない。また、エポキシ樹脂は、硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜のタックを除去するためにも有効であり、添加量3重量%程度で充分な効果が発現する。エポキシ樹脂は、露光・アルカリ現像後においても反応することなく塗膜中に残存している酸性基と、加熱処理によって反応し、塗膜に優れた耐アルカリ性を付与することになる。
【0111】
上述の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて前記の成分以外にも、界面活性剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を配合することができる。
【0112】
本発明の硬化性樹脂組成物には、塗料化及び塗布適性を考慮して、着色剤(a)、光重合開始剤(b)、酸性多官能光硬化性化合物(c)、バインダー(d)等に対する溶解性が良好で、且つ、スピンコーティング性が良好となるように沸点が比較的高い溶剤が含有される。使用可能な溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、i−プロピルアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのセロソルブ系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテートなどのカルビトールアセテート系溶剤;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N−ヘプタン、N−ヘキサン、N−オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤などの有機溶剤を例示することができる。これらの溶剤の中では、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテートなどのカルビトールアセテート系溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤が特に好適に用いられる。特に好ましくは、MBA(酢酸−3−メトキシブチル、CH3CH(OCH3)CH2CH2OCOCH3)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、CH3OCH2CH(CH3)OCOCH3)、DMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル、H3COC2H4OCH3)又はこれらを混合したものを使用することができ、これらを用いて固形分濃度を5〜50重量%に調製する。
【0113】
本発明の硬化性樹脂組成物を製造するには、前記着色剤(a)、光重合開始剤(b)、酸性多官能光硬化性化合物(c)、バインダー(d)、及び、その他の成分を適切な溶剤に投入し、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、2本ロールミル、3本ロールミルなどの一般的な方法で溶解、分散させればよい。なお、メインポリマーである硬化性樹脂としては、合成反応後に有効成分である重合体を単離精製したものを用いるほか、合成反応により得られた反応液、その乾燥物などをそのまま用いてもよい。
【0114】
このようにして得られる硬化性樹脂組成物を何らかの支持体に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜に紫外線、電離放射線等の活性化エネルギー線を照射すると、酸性多官能光硬化性化合物(c)、及び必要に応じてバインダー(d)の光硬化性官能基及び/又は多官能光硬化性化合物(e)が光重合反応を起こすと共に、環状イミド基を含有する場合には環状イミド基同士で二量化反応を起こすことにより、光硬化性化合物(c)及びバインダー(d)及び/又は多官能光硬化性化合物(e)の分子間に架橋結合を形成し、硬化する。硬化した塗膜は、水酸化ナトリウム等のアルカリ現像液により現像することができる。
【0115】
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤(b)の配合割合を高くすることができ、しかも、酸性多官能光硬化性化合物(c)を配合することにより架橋密度を高くできることから、硬化性に優れている。すなわち、露光時には感度が高く、少ない露光量で速やかに硬化し、硬化後の塗膜に硬度、強度、密着性等の諸点で優れた物性を付与することができる。
【0116】
本発明においては、次のような方法によって、硬化性樹脂組成物の露光感度を評価することができる。先ず、基板上に硬化性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて乾燥させて塗膜を形成する。ここで、基板としては、透明ガラス基板のように露光、現像等の一連のパターン形成工程に支障を来たさないものであれば、特に問題なく使用できる。塗膜の厚さも特に制限はないが、通常は、1〜10μm程度の厚さとする。この塗膜を、適切な条件で、例えば70〜150℃で、1〜10分間、プリベークする。プリベーク後、既知の照射強度で塗膜を露光し、膜厚を測定する。この段階で測定した膜厚を「現像前膜厚」とする。
【0117】
次に、プリベークした塗膜を適切な現像剤に接触させて未露光部を溶解、除去し、残った露光部を必要に応じて洗浄することによって、塗膜を現像する。ここで、現像剤の組成及び現像の条件は、試験される硬化性樹脂組成物に合わせて適切に選択する。現像剤としては、硬化性樹脂組成物の露光部(硬化した部分)はほとんど溶解せず、未露光部を完全に溶解できるものが好ましいことは言うまでもない。そして、現像された塗膜を、適切な条件で、例えば180〜280℃で、20〜80分間、ポストベークする。ポストベーク後、塗膜の厚さを測定し、「最終硬化後膜厚」とする。
【0118】
このようにして測定された現像前膜厚と最終硬化後膜厚とから次式に従って、残膜率を計算する。
【0119】
残膜率(%)=(最終硬化後膜厚(μm)÷現像前膜厚(μm))×100
一方、同じ硬化性樹脂組成物を前記と同様にして基板上に塗布、乾燥し、プリベークし、リファレンス用の塗膜を形成する。このリファレンス用塗膜を、当該塗膜が完全に硬化する照射強度で露光し、膜厚を測定する。この段階で測定した膜厚を「完全露光膜厚」とする。次に、完全露光した塗膜を現像はせずに、サンプルと同じ方法でポストベークした後、得られた膜の膜厚を前述したのと同じ方法で測定し、「現像工程無しの最終膜厚」とする。そして、測定された完全露光膜厚と現像工程無しの最終膜厚とから次式に従って、リファレンス残膜率を計算する。
【0120】
リファレンス残膜率(%)=(現像工程無しの最終膜厚(μm)÷完全露光膜厚(μm))×100
このようにして残膜率とリファレンス残膜率を算出し、残膜率が誤差範囲1%としてリファレンス残膜率と等しくなった最も小さい露光量を、硬化性樹脂組成物の最低露光量と決定する。この最低露光量が小さいほど感度が高いと評価できる。
【0121】
本発明によれば、このようにして決定される最低露光量が100mJ/cm2以下、好ましくは50mJ/cm2以下、さらに好ましくは35mJ/cm2以下、さらに好ましくは25mJ/cm2以下であるような非常に高感度の硬化性樹脂組成物を得ることが可能である。
【0122】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、着色剤及び分散剤を多量に含有しても、酸性多官能光硬化性化合物(c)を配合することによりアルカリ可溶性を高くできることから、着色濃度及びアルカリ現像性に優れている。すなわち、現像時には現像速度が高く、現像後の着色層は、着色濃度が高く、順テーパー形状(上面部の面積S2/底面部の面積S1で表される面積比が1以下の形状)とすることができるために強度に優れ、パターンエッジが正確であるため精度が高く、また、着色層の周囲は残渣(現像残り)が少ない。
【0123】
本発明の硬化性樹脂組成物は、カラーフィルターのブラックマトリックス層及び着色層を形成するのに特に適している。
【0124】
本発明に係るカラーフィルターは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた画素とを備え、さらにブラックマトリックス層や保護膜を備えていてもよいカラーフィルターであって、前記画素及び/又は前記ブラックマトリックス層が、前記本発明に係る着色パターン用硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものであることを特徴とする。
【0125】
また、本発明に係る液晶パネルは、表示側基板と液晶駆動側基板とを対向させ、両者の間に液晶を封入してなる液晶パネルであって、前記表示側基板が前記本発明に係るカラーフィルターであることを特徴とする。
【0126】
図3は、本発明に係るカラーフィルターの一例(カラーフィルター103)を示す平面図であり、図4は、同じカラーフィルター103のA−A線における縦断面図である。
【0127】
このカラーフィルター103は、透明基板5に所定のパターンで形成されたブラックマトリックス6と、当該ブラックマトリックス上に所定のパターンで形成した画素7(7R,7G,7B)と、当該画素を覆うように形成された保護膜8を備えている。保護膜上に必要に応じて液晶駆動用の透明電極9が形成される場合もある。カラーフィルター103の最内面、この場合には透明電極上には、配向膜10が形成される。
【0128】
柱状スペーサー12は凸状スペーサーの一形状であり、ブラックマトリックス層6が形成された領域(非表示領域)に合わせて、透明電極9上の所定の複数箇所(図3では5箇所)に形成されている。柱状スペーサー12は、透明電極9上若しくは画素7上若しくは保護膜8上に形成される。カラーフィルター101においては、保護膜8上に透明電極9を介して柱状スペーサーが海島状に形成されているが、保護膜8と柱状スペーサー12を一体的に形成し、その上を覆うように透明電極の層を形成しても良い。また、カラーフィルターがブラックマトリックス層を備えていない場合には、画素を形成していない領域に柱状スペーサーを形成することができる。
【0129】
カラーフィルター101の透明基板5としては、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、或いは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。この中で特にコーニング社製1737ガラスは、熱膨張率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、アクティブマトリックス方式によるカラー液晶表示装置用のカラーフィルターに適している。
【0130】
ブラックマトリックス層6は、表示画像のコントラストを向上させるために、画素7R,7G,7Bの間及び画素形成領域の外側を取り囲むように設けられる。ブラックマトリックス層6は、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0131】
先ず、透明基板5上に、着色剤としてカーボンブラックや金属酸化物等の遮光性粒子を含有させた硬化性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて乾燥させて感光性塗膜を形成し、当該塗膜をブラックマトリックス用のフォトマスクを介して露光、現像し、必要に応じて加熱処理を施すことによって、ブラックマトリックス層6を形成することができる。
【0132】
ブラックマトリックス層の厚さは、金属薄膜の場合は1000〜2000Å程度とし、遮光性樹脂層の場合は、0.5〜2.5μm程度とする。
【0133】
画素7は、赤色パターン、緑色パターン及び青色パターンがモザイク型、ストライプ型、トライアングル型、4画素配置型等の所望の形態で配列されてなり、表示領域を形成する。画素は、顔料分散法、染色法、印刷法、電着法等の公知の方法により形成することができるが、その中でも、顔料等の着色剤を含有した本発明の硬化性樹脂組成物を用いる顔料分散法により形成するのが好ましい。
【0134】
顔料分散法による場合には、先ず、硬化性樹脂組成物に顔料等の着色剤を分散させて、赤色用、緑色用、及び、青色用の光硬化性着色樹脂組成物を夫々調製する。次に、透明基板5上に、ブラックマトリックス層6を覆うように、ある色、例えば光硬化性赤色樹脂組成物をスピンコート等の公知の方法で塗布して光硬化性赤色樹脂層を形成し、赤色パターン用フォトマスクを介して露光を行い、アルカリ現像後、クリーンオーブン等で加熱硬化することにより赤色画素7Rを形成する。その後、緑色用、及び、青色用の光硬化性着色樹脂組成物を順次用いて同様にして各色をパターニングして、緑色画素7G及び青色画素7Bを形成する。
【0135】
着色剤としては、上述したような着色剤を適切に選んで使用することができる。本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いる場合には、高濃度の微細な画素を良好なエッジ形状、テーパー形状で形成することができる。
【0136】
画素の厚さは、通常0.5〜2.5μm程度とする。また、赤色画素7Rが最も薄く、緑色画素7G、青色画素7Bの順に厚くなるというように各色の画素の厚さを変えて、各色ごとに最適な液晶層厚みに設定してもよい。
【0137】
保護膜8は、カラーフィルターの表面を平坦化すると共に、画素7に含有される成分が液晶層に溶出するのを防止するために設けられる。保護膜8は、公知のネガ型の光硬化性透明樹脂組成物又は熱硬化性透明樹脂組成物を、スピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷等の方法により、ブラックマトリックス層6及び画素7を覆うように塗布し、光又は熱によって硬化させることによって形成できる。
【0138】
保護膜の厚さは、樹脂組成物の光透過率、カラーフィルターの表面状態等を考慮して設定し、例えば、0.1〜2.0μm程度とする。スピンコーターを使用する場合、回転数は500〜1500回転/分の範囲内で設定する。
【0139】
保護膜上の透明電極膜9は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等、およびそれらの合金等を用いて、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等の一般的な方法により形成され、必要に応じてフォトレジストを用いたエッチング又は治具の使用により所定のパターンとしたものである。この透明電極の厚みは20〜500nm程度、好ましくは100〜300nm程度とすることできる。
【0140】
凸状スペーサーは、カラーフィルター103をTFTアレイ基板等の液晶駆動側基板と貼り合わせた時にセルギャップを維持するために、基板上の非表示領域に複数設けられる。凸状スペーサーの形状及び寸法は、基板上の非表示領域に選択的に設けることができ、所定のセルギャップを基板全体に渡って維持することが可能であれば特に限定されない。凸状スペーサーとして図示したような柱状スペーサー12を形成する場合には、2〜10μm程度の範囲で一定の高さを持つものであり、突出高さ(パターンの厚み)は液晶層に要求される厚み等から適宜設定することができる。また、柱状スペーサー12の太さは5〜20μm程度の範囲で適宜設定することができる。また、柱状スペーサー12の形成密度(密集度)は、液晶層の厚みムラ、開口率、柱状スペーサーの形状、材質等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、赤色、緑色及び青色の各画素の1組に1個の割合で必要充分なスペーサー機能を発現する。このような柱状スペーサーの形状は柱状であればよく、例えば、円柱状、角柱状、截頭錐体形状等であっても良い。
【0141】
凸状スペーサーを形成するには、まず、硬化性樹脂組成物の塗工液をスピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷等の方法により透明基板上に直接、又は、透明電極等の他の層を介して塗布し、乾燥して、光硬化性樹脂層を形成する。スピンコーターの回転数は、保護膜を形成する場合と同様に500〜1500回転/分の範囲内で設定すればよい。次に、この樹脂層を凸状スペーサー用フォトマスクを介して露光し、アルカリ液のような現像液により現像して所定の凸状パターンを形成し、この凸状パターンを必要に応じてクリーンオーブン等で加熱処理(ポストベーク)することによって凸状スペーサーが形成される。
【0142】
凸状スペーサーは、カラーフィルター上に直接又は他の層を介して間接的に設けることができる。例えば、カラーフィルター上にITO等の透明電極又は保護膜を形成し、その上に凸状スペーサーを形成しても良いし、カラーフィルター上に保護膜と透明電極をこの順に形成し、さらに透明電極上に凸状スペーサーを形成しても良い。
【0143】
配向膜10は、カラーフィルターの内面側に、画素7を備える表示部及びブラックマトリックス層6や柱状スペーサー12を備える非表示部を覆うように設けられる。配向膜は、ポリイミド樹脂等の樹脂を含有する塗工液をスピンコート等の公知の方法で塗布し、乾燥し、必要に応じて熱や光により硬化させた後、ラビングすることによって形成できる。
【0144】
以上、本発明のカラーフィルターを通常のカラーフィルターを用いて説明したが、本発明の硬化性樹脂組成物はモノクロのカラーフィルターのような表示側基板にも適用することができる。
【0145】
このようにして本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いてブラックマトリックス層及び/又は画素等の着色層を形成したカラーフィルターは、高画質、高精彩のカラーフィルターである。
【0146】
得られたカラーフィルター103(表示側基板)と、TFTアレイ基板(液晶駆動側基板)を対向させ、両基板の内面側周縁部をシール剤により接合すると、両基板は所定距離のセルギャップを保持した状態で貼り合わされる。そして、基板間の間隙部に液晶を満たして密封することにより、本発明に係る液晶パネルに属する、アクティブマトリックス方式のカラー液晶表示装置が得られる。このようにして得られる本発明に係る液晶パネルは、表示品質に優れる。
【0147】
【実施例】
(製造例1)重合体1の合成
重合槽中にベンジルメタクリレートを15.6重量部、スチレンを37.0重量部、アクリル酸を30.5重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを16.9重量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を200重量部、仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)を0.8重量部、添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下で、85℃で2時間攪拌し、さらに100℃で1時間反応させた。さらに得られた溶液に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9重量部、トリエチルアミンを0.5重量部、及び、ハイドロキノンを0.1重量部、添加し、100℃で5時間攪拌し、目的とする重合体1(固形分37.2%)を得た。
【0148】
(実施例1、比較例1)ブラックマトリックス用樹脂組成物の調製
分散液組成物(顔料、分散剤、及び溶剤)にビーズを加え、ペイントシェーカーで3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、クリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤、及び溶剤)とを混合して、第1表に示す割合の組成物を調製した。
【0149】
【表1】
【0150】
(実施例2、比較例2)赤色パターン用樹脂組成物の調製
分散液組成物(顔料、分散剤、及び溶剤)にビーズを加え、ペイントシェーカーで3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、クリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤、及び溶剤)とを混合して、第2表に示す割合の組成物を調製した。
【0151】
【表2】
【0152】
(実施例3、比較例3)緑色パターン用樹脂組成物の調製
分散液組成物(顔料、分散剤、及び溶剤)にビーズを加え、ペイントシェーカーで3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、クリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤、及び溶剤)とを混合して、第3表に示す割合の組成物を調製した。
【0153】
【表3】
【0154】
(実施例4、比較例4)青色パターン用樹脂組成物の調製
分散液組成物(顔料、分散剤、及び溶剤)にビーズを加え、ペイントシェーカーで3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、クリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤、及び溶剤)とを混合して、第4表に示す割合の組成物を調製した。
【0155】
【表4】
【0156】
(現像性の評価)
10cm画のガラス基板上に、スピンコーター(MIKASA製、形式1H−DX2)により、ブラックマトリックス用、着色剤用樹脂組成物について1.5μmの厚さに塗布した。この塗膜をホットプレート上で100℃、3分間プリベークした。所定の形状、大きさ、及び間隔を有する露光パターンを形成できるように設計されたフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより紫外線を100mJ/cm2で照射した基板を0.05重量%KOH水溶液を用いてスプレー現像した時に、現像に要する時間、残渣、及び端面残り、密着性を評価した。ここで、端面残りとは、スピンコートした際に厚くなった外周部の溶け残りの有無をいい、樹脂組成物の現像性が良好か否かを判断することができる。
【0157】
各実施例1〜4、及び比較例1〜4についての結果を第5表に示す。
【0158】
【表5】
【0159】
実施例1〜4は、いずれも現像性が良く、端面残りも無かったが、実施例に用いた酸性多官能光硬化性化合物(c)の代わりに、同量の通常用いられる多官能光硬化性化合物のみを用いた比較例1〜4は、いずれも端面残りを生じ、現像性が悪かった。
(実施例5、比較例5)
分散液組成物(顔料、分散剤、及び溶剤)にビーズを加え、ペイントシェーカーで3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、クリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤、及び溶剤)とを混合して、第6表に示す割合の組成物を調製した。
【0160】
【表6】
【0161】
(感度の評価)
10cm画のガラス基板上に、実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物をスピンコーター(MIKASA製、形式1H−DX2)により、塗布、乾燥し、乾燥膜厚2μmの塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で90℃、3分間加熱した。加熱後、塗膜から100μmの距離にフォトマスクを配置して2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナー(大日本スクリーン製、形式MA 1200)によって、同一塗膜を4等分した各領域のそれぞれに、25、35、50、100mJ/cm2の強度(405nm照度換算)で紫外線を照射した。
【0162】
紫外線の照射後、これら4つの各領域から、寸法が約1mm×3mmの矩形状に塗膜を削り取ってガラス基板を部分的に露出させ、触針式表面粗度測定装置(日本アネルバ(株)製、Dektak 1600)により各照射領域の膜厚を測定し、現像前膜厚とした。
【0163】
次いで、塗膜の露光部に0.05wt%の水酸化カリウム水溶液をスピン現像機(Applied Process Technology,INK、MODEL:915)にて60秒間散布し、未露光部を溶解、除去し、残った露光部を純水で60秒間水洗することにより現像した。現像後、露光部の膜をクリーンオーブン(忍足研究所(株)製、SCOV−250 Hy−So)により、200℃で30分間加熱した。そして、得られた膜の各領域の膜厚を、前述したのと同じ方法で測定し、最終硬化後膜厚とした。
【0164】
このようにして測定された現像前膜厚と最終硬化後膜厚とから次式に従って、残膜率を計算した。
【0165】
残膜率(%)=(最終硬化後膜厚(μm)÷現像前膜厚(μm))×100
一方、リファレンス残膜率を、次のようにして決定した。先ず、塗膜の全面に100mJ/cm2の強度で露光したこと以外はサンプルと同じ方法で、硬化性樹脂組成物の完全露光膜厚を測定した。次に、100mJ/cm2露光した塗膜を現像はせずに、サンプルと同じ方法で加熱だけした後、得られた膜の膜厚を前述したのと同じ方法で測定し、現像工程無しの最終膜厚とした。そして、測定された完全露光膜厚と現像工程無しの最終膜厚とから次式に従って、リファレンス残膜率を計算した。
【0166】
リファレンス残膜率(%)=(現像工程無しの最終膜厚(μm)÷完全露光膜厚(μm))×100
このようにして算出された残膜率が誤差範囲1%としてリファレンス残膜率と等しくなった最も小さい露光量を、硬化性樹脂組成物の最低露光量と決定した。
【0167】
各実施例5、及び比較例5について最低露光量を決定した。
【0168】
更に、実施例5及び比較例5について、実施例1と同様に現像性も評価した。結果を第7表に示す。
【0169】
【表7】
【0170】
3級アミン構造光重合開始剤(b)を固形分比で20%以上含む実施例5は、3級アミン構造光重合開始剤(b)が固形分比で10%以下で、酸性多官能光硬化性化合物(c)を含まない比較例5に比べて、感度が向上し、現像性も優れることが明らかになった。
【0171】
(実施例6:カラーフィルターの作製)
(1)ブラックマトリックスの形成
厚み1.1mmのガラス基板(旭硝子(株)製AL材)上に実施例1のブラックマトリックス用樹脂組成物をスピンコーターで塗布し、100℃で3分間乾燥させ、膜厚約1μmの遮光層を形成した。当該遮光層を、超高圧水銀ランプで遮光パターンに露光した後、0.05%水酸化カリウム水溶液で現像し、その後、基板を180℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して遮光部を形成すべき領域にブラックマトリックスを形成した。
【0172】
(2)着色層の形成
前記のようにしてブラックマトリックスを形成した基板上に、実施例2の赤色パターン用樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布(塗布厚み1.5μm)し、その後、70℃のオーブン中で30分間乾燥した。
【0173】
次いで、赤色パターン用樹脂組成物の塗膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて着色層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、赤色パターン用樹脂組成物の塗膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を180℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して赤色画素を形成すべき領域に赤色のレリーフパターンを形成した。
【0174】
次に、実施例3の緑色パターン用樹脂組成物を用いて、赤色のレリーフパターン形成と同様の工程で、緑色画素を形成すべき領域に緑色のレリーフパターンを形成した。
【0175】
さらに、実施例4の青色硬化性樹脂組成物を用いて、赤色のレリーフパターン形成と同様の工程で、青色画素を形成すべき領域に青色のレリーフパターンを形成し、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色からなる着色層を形成した。
【0176】
(3)保護膜の形成
着色層を形成したガラス基板上に、第8表に示す保護層用樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布、乾燥し、乾燥膜厚2μmの塗膜を形成した。
【0177】
【表8】
【0178】
保護層用樹脂組成物の塗膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて着色層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、保護層用樹脂組成物の塗膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して保護膜を形成した。
【0179】
(4)スペーサーの形成
着色層を形成したガラス基板上に、第9表に示す柱状スペーサー用樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布、乾燥し、乾燥膜厚5μmの塗膜を形成した。
【0180】
【表9】
【0181】
柱状スペーサー用樹脂組成物の塗膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて、ブラックマトリックス上のスペーサーの形成領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、柱状スペーサー用樹脂組成物の塗膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して固定スペーサーを形成し、本発明のカラーフィルターを得た。
【0182】
(実施例7:液晶パネルの作製)
実施例6で得られたカラーフィルターの固定スペーサーを含む表面に、基板温度200℃でアルゴンと酸素を放電ガスとし、DCマグネトロンスパッタリング法によってITOをターゲットとして透明電極膜を形成した。その後、更に透明電極膜上にポリイミドよりなる配向膜を形成した。
【0183】
次いで、前記カラーフィルターと、TFTを形成したガラス基板とを、エポキシ樹脂をシール材として用い、150℃で0.3kg/cm2の圧力をかけて接合してセル組みし、TN液晶を封入して、本発明の液晶表示装置を作製した。
【0184】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の硬化性樹脂組成物は、酸素クエンチャーである3級アミン構造を分子内に有する光重合開始剤(b)を多量に配合し、さらに着色剤及び分散剤を多量に配合しても、酸性多官能光硬化性化合物(c)を配合することによって架橋密度とアルカリ可溶性を高くできることから、硬化性とアルカリ現像性に優れ、露光時には感度が高く、現像時には現像速度が高い。また、着色濃度が高く、順テーパー形状で、精度が高い微細な着色パターンを形成することができ、露出部の残渣も少ない。
【0185】
そして、本発明の硬化性樹脂組成物は、カラーフィルターを形成するために用いられるのに適しており、特に、カラーフィルターの画素やブラックマトリックス層等の着色層を形成するためのコーティング材料として適している。すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物を用いると、高感度により生産性が高く、優れた現像性により正確で寸法安定性に優れた着色パターンを形成することができる。
【0186】
本発明のカラーフィルターは、上記本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いて高濃度で且つ良好なエッジ形状、テーパー形状を有するブラックマトリックス層及び/又は着色層が形成されているので、高画質、高精彩のカラーフィルターである。
【0187】
また、高画質、高精彩の本発明に係るカラーフィルターを用いて形成した本発明に係る液晶パネルは、画像品質に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の液晶パネルの一例についての模式的断面図である。
【図2】従来の液晶パネルの別の例についての模式的断面図である。
【図3】本発明に係る液晶パネル用基板の一例についての平面図である。
【図4】本発明に係る液晶パネル用基板の一例についての断面図である。
【符号の説明】
1…カラーフィルター
103…カラーフィルター
2…TFTアレイ基板
3…間隙部
4…シール材
5…透明基板
6…ブラックマトリックス層
7(7R、7G、7B)…画素
8…保護膜
9…透明電極膜
10…配向膜
11…粒子状スペーサー
12…柱状スペーサー
【発明の属する技術分野】
本発明は、感度が高く現像性が良好な着色パターン用硬化性樹脂組成物、当該着色パターン用硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した、高画質、高精彩のカラーフィルター、及び、当該カラーフィルターを用いた表示品質に優れた液晶パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶パネルは、表示側基板と液晶駆動側基板とを対向させ、両者の間に液晶化合物を封入して薄い液晶層を形成し、液晶駆動側基板により液晶層内の液晶配列を電気的に制御して表示側基板の透過光又は反射光の量を選択的に変化させることによって表示を行う。
【0003】
液晶パネルには、スタティック駆動方式、単純マトリックス方式、アクティブマトリックス方式など種々の駆動方式があるが、近年、パーソナルコンピューターや携帯情報端末などのフラットディスプレーとして、アクティブマトリックス方式又は単純マトリックス方式の液晶パネルを用いたカラー液晶表示装置が急速に普及してきている。
【0004】
図1は、アクティブマトリックス方式の液晶パネルの一構成例である。液晶パネル101は、表示側基板であるカラーフィルター1と液晶駆動側基板であるTFTアレイ基板2とを対向させて1〜10μm程度の間隙部3を設け、当該間隙部3内に液晶Lを充填し、その周囲をシール材4で密封した構造をとっている。カラーフィルター1は、透明基板5上に、画素間の境界部を遮光するために所定のパターンに形成されたブラックマトリックス層6と、複数の色(通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色)を所定順序に配列した画素7又は最近ではホログラムを利用した画素と、保護膜8と、透明電極膜9とが、透明基板に近い側からこの順に積層された構造をとっている。一方、TFTアレイ基板2は、透明基板上にTFT素子を配列し、透明電極膜を設けた構造をとっている(図示せず)。また、カラーフィルター1及びこれと対向するTFTアレイ基板2の内面側には配向膜10が設けられる。さらに間隙部3には、カラーフィルター1と電極基板2の間のセルギャップを一定且つ均一に維持するために、スペーサーとしてガラス、アルミナ又はプラスチック等からなる一定サイズの球状又は棒状粒子11が分散されている。そして、各色に着色された画素それぞれ又はカラーフィルターの背後にある液晶層の光透過率を制御することによってカラー画像が得られる。
【0005】
カラーフィルターに形成される保護膜8は、画素の保護とカラーフィルターの平坦化の役割を果たしている。カラー液晶表示装置では、カラーフィルターの透明基板表面のうねりに起因するギャップムラ、R、G及びBの各画素間でのギャップムラ、或いは各画素内でのギャップムラなどの存在により透明電極膜9の平坦性が損なわれると、色ムラ或いはコントラストムラを生じ、その結果、画像品質の低下を来たすと言う問題がある。従って、保護膜には高い平坦性が求められる。
【0006】
スペーサーとして図1に示したような微粒子11を分散させる場合には、当該微粒子11は、ブラックマトリックス層6の背後であるか画素の背後であるかは関係なく、ランダムに分散する。微粒子11が表示領域すなわち画素の上に配置された場合、微粒子11の部分をバックライトの光が透過し、また、微粒子11周辺の液晶の配向が乱れ、表示画像の品位を著しく低下させる。そこで図2に示すように、微粒子11を分散させるかわりに、カラーフィルターの内面側であってブラックマトリックス層6が形成されている位置と重り合う領域(非表示領域)に、セルギャップに対応する高さを有する柱状スペーサー12を形成することが行われるようになってきた。
【0007】
前記の画素7、保護膜8及び柱状スペーサー12は、樹脂を用いて形成することができる。画素7は、各色ごとに所定のパターンに形成する必要がある。保護膜8は、シール部の密着性や密閉性を考慮すると、透明基板上の画素が形成された領域のみ被覆できるものであることが好ましい。また、柱状スペーサー12は、ブラックマトリックス層の形成領域内すなわち非表示領域に正確に設ける必要がある。
【0008】
このようなカラーフィルターの細部は、光硬化性樹脂の塗膜を基材上に形成し、硬化させたい領域を選択的に露光した後にアルカリ現像することによって形成できる。アルカリ現像可能な光硬化性樹脂としては、アルカリ可溶性バインダーに多官能のアクリルモノマーと光重合開始剤を配合した組成物を用いることができる。特許文献1には、アルカリ可溶性のカルボキシル基と、ラジカル重合性の(メタ)アクリル基をもつ光硬化性樹脂が記載されており、アルカリ可溶性バインダーとして用いることができる。
【0009】
アルカリ現像可能な光硬化性樹脂を用いて画素やブラックマトリックス等の着色層を形成する場合には、着色剤の配合割合を多くすることにより高い着色濃度が得られる。着色剤として顔料を用いる場合には、顔料分散剤の配合割合も多くなる。また、光硬化性樹脂は、光重合開始剤の配合割合を多くすると感度が上がり、少ない露光量で速やかに硬化できるようになる。しかしながら、着色剤、分散剤及び/又は光重合開始剤等の配合割合が高いと、アルカリ可溶性バインダーの配合割合が少なくなるため、樹脂の硬化性、アルカリ現像性、現像後の形状等が悪くなる。
【0010】
光硬化性樹脂に、着色剤等の増量に合わせて多官能モノマーを配合すると硬化性が向上し、着色パターンの感度、硬度、強度、密着性等が改善される。しかしながら、多官能モノマーの配合又は増量によってアルカリ可溶性バインダーの配合割合がさらに少なくなるので、光硬化性樹脂の現像性はさらに悪くなってしまう。光硬化性樹脂のアルカリ現像性が悪化すると、パターンのエッジ形状の悪化、逆テーパー形状の発生、現像時間の延長、基材の現像による露出面の残渣等の問題が顕著になる。
【0011】
一方、特許文献2には、樹脂、特定構造をもつ2種の多官能アクリルモノマー、光重合開始剤、溶剤を主成分とする感光性組成物からなる柱状スペーサー用感光性組成物が記載されている。
【0012】
しかしながら、上記特許文献2に記載された感光性組成物は、着色パターンを形成するものではない。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−105456号公報
【特許文献2】
特開2001−91954号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
現像性が良好で、高濃度で、エッジ形状及びテーパー形状も良好な、微細パターンの着色層を形成でき、且つ露光感度が高い着色パターン用硬化性樹脂組成物、当該硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成した、高画質、高精彩のカラーフィルター、及び、当該カラーフィルターを用いた表示品質に優れた液晶パネルを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明において提供される硬化性樹脂組成物は、少なくとも、着色剤(a)と、3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)と、1つ以上の酸性官能基と3つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(c)と、バインダー(d)を含有する。
【0016】
本発明の硬化性樹脂組成物は、酸素クエンチャーである3級アミン構造を分子内に有する光重合開始剤(b)を多量に配合し、さらに着色剤及び分散剤を多量に配合しても、光硬化性化合物(c)を配合することによって架橋密度とアルカリ可溶性を高くできることから、硬化性とアルカリ現像性に優れ、露光時には感度が高く、現像時には現像速度が高い。また、着色濃度が高く、順テーパー形状で、精度が高い微細な着色パターンを形成することができ、露出部の残渣も少ない。
【0017】
上記硬化性樹脂組成物は、更に、2つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(e)を含有してもよい。光硬化性化合物(c)は酸性基を有しているので架橋密度とアルカリ可溶性の両方を増大させるのに対し、光硬化性化合物(e)は架橋密度のみ増大させるので、これらを組み合わせることにより、架橋密度とアルカリ可溶性を調節することができる。
【0018】
上記硬化性樹脂組成物は、架橋密度とアルカリ可溶性を充分に上げるために、固形分で、前記光硬化性化合物(c)を3〜30重量%含有することが好ましい。
【0019】
上記硬化性樹脂組成物は、感度を充分に上げるために、固形分で、前記光重合開始剤(b)を5重量%以上含有することが好ましい。
【0020】
上記バインダー(d)は、架橋密度を充分に上げるために、光硬化性官能基を有する重合体であることが好ましい。また、バインダー(d)の分子量は、3,000〜1,000,000であることが好ましい。
【0021】
本発明の着色パターン用硬化性樹脂組成物は、液晶パネル用基板の製造に用いられるのに適しており、特に、カラーフィルターの画素やブラックマトリックス層等の着色層を形成するのに適している。すなわち、本発明の着色パターン用硬化性樹脂組成物を用いると、高感度により生産性が高く、高濃度の微細な着色パターンを良好なエッジ形状、テーパー形状で形成することができる。
【0022】
本発明において提供されるカラーフィルターは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた画素とを備え、さらにブラックマトリックス層を備えていてもよいカラーフィルターであって、前記着色層及び/又は前記ブラックマトリックス層が、前記本発明に係る着色パターン用硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものであり、高画質、高精彩である。
【0023】
また、本発明の液晶パネルは、表示側基板と液晶駆動側基板とを対向させ、両者の間に液晶を封入してなる液晶パネルであって、前記表示側基板が前記請求項8に記載のカラーフィルターであり、画像品質に優れている。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明により提供される着色パターン用硬化性樹脂組成物は、少なくとも、着色剤(a)と、3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)と、1つ以上の酸性官能基と3つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(c)(以下、「酸性多官能光硬化性化合物(c)」という)と、バインダー(d)を含有するものである。
【0025】
本発明の硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤、着色剤、分散剤等の硬化反応性をもたず且つアルカリ可溶性がない成分を多量に含有しても、酸性多官能光硬化性化合物(c)を配合することにより架橋密度及びアルカリ可溶性を高くできることから、優れた硬化性とアルカリ現像性が得られる。
【0026】
以下において本発明を詳しく説明する。なお、本発明において(メタ)アクリルとはアクリル基又はメタクリル基のいずれかであることを意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル基又はメタクリロイル基のいずれかであることを意味する。
【0027】
また、硬化性樹脂組成物中の各成分の固形分比は、総固形分を基準とした時の割合である。ここで総固形分とは、溶剤以外の全ての成分の合計量であり、液状のモノマー成分も含まれる。
【0028】
(着色剤(a))
本発明に係る着色パターン用硬化性樹脂組成物には、顔料や染料等の着色剤(a)を含有する。着色剤としては、ブラックマトリックス層、及び着色層のR、G、B等の求める色に合わせて、有機着色剤及び無機着色剤の中からカラーフィルターの加熱プロセスに耐え得る耐熱性があり、且つ、良好に分散し得る微粒子のものを選んで使用することができる。
【0029】
有機着色剤としては、例えば、染料、有機顔料、天然色素等を用いることができる。また、無機着色剤としては、例えば、無機顔料、体質顔料等を用いることができる。
【0030】
有機顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行) においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、すなわち、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等のイエロー系ピグメント;C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド177等のレッド系ピグメント;及び、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等のブルー系ピグメント;C.I.ピグメントバイオレット23:19;C.I.ピグメントグリーン36.
また、前記無機顔料あるいは体質顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。本発明において色材は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
着色剤は、充分な着色濃度を得るために、本発明の硬化性樹脂組成物中に固形分比で、通常20〜80重量%、好ましくは25〜60重量%の割合で配合する。本発明の硬化性樹脂組成物は、着色剤を多量に配合しても、後述する酸性多官能光硬化性化合物(c)を配合することにより架橋密度及びアルカリ可溶性を上げることができるので、優れた硬化性とアルカリ現像性が得られる。
【0032】
(光重合開始剤(b))
本発明の硬化性樹脂組成物は、必須成分として3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)を含有する。光重合開始剤(b)は、分子内に酸素クエンチャーである3級アミン構造を有するため、開始剤から発生したラジカルが酸素により失活し難く、硬化性樹脂組成物の感度を向上させるためには適切な重合開始剤である。
【0033】
3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メチル−4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジプロピルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジイソプロピルアミノ)ベンゾフェノン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’─テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−シアノフェニル)−4,4’,5.5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−シアノフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−エチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−エチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−エチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−フェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−フェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−フェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’─テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−シアノフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジシアノフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリシアノフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−エチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジエチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリエチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−フェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジフェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリフェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、4−ジアゾジフェニルアミン、4−ジアゾ−4’−メトキシジフェニルアミン、4−ジアゾ−3−メトキシジフェニルアミンが挙げられ、溶剤溶解性、製版性の点から2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メチル−4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジエチルアミノベンゾフェノンを用いることが好ましい。
【0034】
市販品としては、例えば、イルガキュア907、イルガキュア369(以上、チバ・スペシャルティケミカルズ製)、ハイキュアABP(川口薬品製)、ビイミダゾール(黒金化成製)などが挙げられる。
【0035】
重合開始剤(b)としては、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を併用する場合には、吸収分光特性を阻害しないようにするのがよい。
【0036】
重合開始剤(b)は、硬化性樹脂組成物中に通常、固形分比で、5〜25重量%の範囲で配合するが、感度を充分に上げるためには10重量%以上、特に13重量%以上とすることが好ましい。本発明においては、後述する酸性多官能光硬化性化合物(c)を含有するため、硬化性樹脂組成物の架橋密度及びアルカリ可溶性を悪化させることなく、重合開始剤(b)を10重量%以上に増量し感度を上げることが可能であり、優れた硬化性とアルカリ現像性が得られる。
【0037】
なお、硬化性樹脂組成物を調製するにあたって、光重合開始剤(b)は、前記重合体(a)に最初から添加しておいてもよいが、比較的長期間保存する場合には、使用直前に硬化性樹脂組成物中に分散或いは溶解することが好ましい。
【0038】
(酸性多官能光硬化性化合物(c))
本発明の硬化性樹脂組成物は、必須成分として1つ以上の酸性官能基と3つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(c)を含有する。
【0039】
酸性多官能光硬化性化合物(c)は、1分子内に1つ以上の酸性基と3つ以上の光硬化性官能基を有し、分子サイズが比較的小さい化合物である。当該化合物(c)のポリスチレン換算重量平均分子量は、通常3,000未満である。
【0040】
酸性多官能光硬化性化合物(c)を光硬化性樹脂組成物に配合すると、当該化合物(c)の光重合性基により架橋密度が上がり、当該化合物(c)の酸性基によりアルカリ可溶性が大きくなる。そのため、光硬化性樹脂組成物の着色剤、分散剤、光重合開始剤等の硬化反応性をもたず、且つ、アルカリ可溶性のない成分を増量しても、酸性多官能光硬化性化合物(c)を添加することによって架橋密度及びアルカリ可溶性が上がるので、優れた硬化性とアルカリ現像性が得られる。
【0041】
酸性多官能光硬化性化合物(c)の酸性官能基は、アルカリ現像が可能なものであればよく、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられるが、アルカリ現像性及び樹脂組成物の取り扱い性の点からカルボキシル基が好ましい。
【0042】
光硬化性官能基の反応形式は限定されず、光ラジカル反応、光カチオン反応、光アニオン反応のいずれであってもよいが、3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)が光ラジカル重合開始剤である点から、光ラジカル重合や光ラジカル二量化等の光ラジカル反応性基であることが好ましく、特に、(メタ)アクリル基等のエチレン性不飽和結合を含有する基であることが好ましい。
【0043】
上記したような酸性多官能光硬化性化合物(c)としては、(1)水酸基と共に3つ以上の光硬化性官能基を有するモノマー又はオリゴマーを二塩基酸無水物で変性することによりカルボキシル基を導入したもの、或いは、(2)3つ以上の光硬化性官能基を有する芳香族化合物を濃硫酸や発煙硫酸で変性することによりスルホン酸基を導入したもの等を用いることができる。また、酸性多官能光硬化性化合物(c)そのものであるモノマーを繰返し単位として含むオリゴマーを、酸性多官能光硬化性化合物(c)として用いてもよい。
【0044】
酸性多官能光硬化性化合物(c)としては、下記一般式(1)、(2)で表されるものが好ましい。なお、一般式(1)、(2)において、T又はGがオキシアルキレン基の場合には、炭素原子側の末端がR、X及びWに結合する。
【0045】
【化1】
【0046】
(式(1)中、nは0〜14であり、mは1〜8である。式(2)中、Wは式(1)と同様のR又はXであり、6個のWのうち、3個以上のWがRである。pは0〜14であり、qは1〜8である。一分子内に複数存在するR、X、T、Gは、各々同一であっても、異なっていても良い。)
式(1)、(2)で表される酸性多官能光硬化性化合物(c)として、具体的には、下記式(3)〜(8)で表されるものが挙げられ、中でも式(3)及び式(4)が好ましい。
【0047】
【化2】
【0048】
【化3】
【0049】
式(1)、(2)で表される酸性多官能光硬化性化合物(c)の市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のカルボキシル基含有3官能アクリレートであるTO−756、及びカルボキシル基含有5官能アクリレートであるTO−1382が挙げられる。
【0050】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、酸性多官能光硬化性化合物(c)を固形分比で、3〜30重量%、更に10〜30重量%含有することが好ましい。上記範囲内の含有量であれば、塗布適性を悪化することなく、樹脂組成物の硬化時の架橋密度を向上させると共に、アルカリ現像性を向上させることができる。
【0051】
(バインダー(d))
本発明の硬化性樹脂組成物は、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与するために、必須成分としてバインダー(d)を含有する。
【0052】
バインダー(d)としては、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与する目的から重合体が用いられ、非反応性重合体及び反応性重合体のいずれも用いることができる。本発明においては、酸性多官能光硬化性化合物(c)とも架橋結合を形成して、更に優れた硬化性を得る点から、反応性重合体、特に光硬化性官能基を有する重合体を用いることが好ましい。
【0053】
バインダー(d)として用いることができる非反応性重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−ビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレン−メタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、オポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等を例示することができる。
【0054】
さらに、重合可能なモノマーであるメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレートの中から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸、アクリル酸の二量体(例えば、東亞合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの無水物の中から選ばれる1種以上からなる重合体又は共重合体も例示できる。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いることができる反応性重合体としては、上記のコポリマーに例えば硬化反応性の官能基を導入した重合体等が挙げられるが、中でも酸性多官能光硬化性化合物(c)とも架橋結合を形成して、更に優れた硬化性を得る点から、光硬化性官能基を有する重合体であることが好ましい。
【0056】
光硬化性官能基としては、光ラジカル反応、光カチオン反応、光アニオン反応等の様々な反応形式のものを利用できるが、酸性多官能光硬化性化合物(c)の光硬化性官能基と同様の反応形式であることが互いに重合して架橋密度を高くする点から好ましい。3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)が光ラジカル重合開始剤である点から、光ラジカル重合や光ラジカル二量化等の光ラジカル反応性基であることが好ましく、特に、(メタ)アクリル基等のエチレン性不飽和結合を含有する基であることが好ましい。
【0057】
光硬化性官能基は、重合体の主鎖連結を形成した後で、適切な官能基を介して重合体の主鎖中に導入することができる。すなわち、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基等の付加又は縮合反応性の官能基をもつアクリル系モノマーを他のアクリル系モノマーと重合して中間体ポリマーを合成した後、中間体ポリマーの官能基と反応できる官能基を持つアクリル系モノマーを反応させることで、エチレン性不飽和結合をもつペンダント構造を重合体に導入することができる。
【0058】
バインダー(d)は、更に、アルカリ可溶性に寄与する酸性官能基を有することが好ましい。この場合、酸性多官能光硬化性化合物(c)と組み合わせることにより、本発明の硬化性樹脂組成物は更に硬化性及びアルカリ可溶性が良好となり、高濃度の微細な画素を良好なエッジ形状、テーパー形状で形成することができるようになる。
【0059】
酸性官能基の含有割合は、酸性多官能光硬化性化合物(c)と共に硬化性樹脂組成物に要求されるアルカリ可溶性の程度により調整される。酸性官能基を有する構成単位を重合体の主鎖へと導入するために使用される単量体としては、エチレン性不飽和結合と酸性官能基を有する化合物、例えばアクリル酸やメタクリル酸を使用することができる。酸性官能基は、アルカリ現像が可能なものであればよく、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられるが、アルカリ現像性及び樹脂組成物の取り扱い性の点からカルボキシル基が好ましい。
【0060】
バインダー(d)として好ましく用いられる共重合体の例としては、少なくとも、酸性官能基としてカルボキシル基を備えた下記式(9)で表される構成単位と、ラジカル重合性基を備えた下記式(10)及び/又は(11)で表される構成単位を含む共重合体を挙げることができる。
【0061】
【化4】
【0062】
(式中、R1は水素または炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
式(9)及び後述する他の式中に含まれるR1は、水素、または炭素数1〜5のアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等が例示される。式(9)の構成単位を導入するために使用される単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、2−カルボキシ−1−ブテン、2−カルボキシ−1−ペンテン、2−カルボキシ−1−ヘキセン、2−カルボキシ−1−へプテン等が例示される。
【0063】
【化5】
【0064】
(式中、R1は上記と同じであり、R2は水素原子又はメチル基を示す。)
式(10)の構成単位は、カルボキシル基を含有する上記式(9)で表される構成単位の一部に、グルシジル(メタ)アクリレートを反応させることにより形成できる。
【0065】
【化6】
【0066】
(式中、R1は上記と同じであり、R3は炭素数2乃至4のアルキレン基であり、R4はアルキレン基である。R5は水素原子又はメチル基である。)
式(11)に含まれるR3(炭素数2乃至4のアルキレン基)は、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等であり、R4(アルキレン基)は、好ましくは炭素数2乃至6のアルキレン基である。
【0067】
式(11)の構成単位を共重合体に導入するためには、先ず、他のモノマーと共に下記式(12)で表されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを共重合して共重合体の主鎖部分を形成する。
【0068】
【化7】
【0069】
(式中、R1及びR3は式(11)と同じである。)
式(12)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が例示される。
【0070】
その後、前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の水酸基に下記式(13)で表される(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート化合物を反応させればよい。
【0071】
【化8】
【0072】
(式中、R4及びR5は上記と同じである。)
式(13)で表されるイソシアネート化合物のなかでは、(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜6のアルキレン基を介してイソシアネート基(−NCO)と結合したものを使用するのが好ましい。具体的には、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルエチルイソシアネート等が例示される。2−メタクリロイルエチルイソシアネートは、例えば、昭和電工(株)製「カレンズMOI」等の商品名で市販されている。
【0073】
上記共重合体は、さらにアルコール性水酸基を備えた構成単位(アルコール性水酸基含有単位)を含んでいてもよい。アルコール性水酸基は硬化性樹脂の現像性を調整する成分である。
【0074】
アルコール性水酸基を有する構成単位を重合体の主鎖へと導入するために使用される単量体としては、エチレン性不飽和結合とアルコール性水酸基を有する化合物を使用することができる。
【0075】
アルコール性水酸基含有単位としては、下記式(14)で表される構成単位が好ましい。
【0076】
【化9】
【0077】
(式中、R1及びR3は上記と同じである。)
式(14)の構成単位を導入するために使用される単量体としては、前記式(12)で表されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0078】
上記共重合体は、さらに芳香族炭素環を備えた構成単位(芳香族炭素環含有単位)を含んでいてもよい。芳香族炭素環含有単位は、硬化性樹脂組成物に塗膜性を付与する成分である。芳香族炭素環含有単位としては、下記式(15)で表されるものが好ましい。
【0079】
【化10】
【0080】
(式中、R1は上記と同じであり、R12は芳香族炭素環を示す。)
式(15)中に含まれるR12(芳香族炭素環)は、例えば、フェニル基、ナフチル基等である。式(15)の構成単位を導入するために使用される単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンを例示でき、また、その芳香族環は、塩素、臭素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基、ジアルキルアミノ基等のアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、スルフォン酸基、燐酸機等で置換されていてもよい。
【0081】
上記共重合体は、さらにエステル基を備えた構成単位(エステル基含有単位)を含んでいてもよい。エステル基含有単位は、硬化性樹脂のアルカリ可溶性を抑制する成分である。エステル基含有単位としては、下記式(16)で表されるものが好ましい。
【0082】
【化11】
【0083】
(式中、R1は上記と同じであり、R13はアルキル基またはアラルキル基を示す。)
式(16)中に含まれるR13(アルキル基またはアラルキル基)は、例えば、炭素数1乃至12のアルキル基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基である。式(16)の構成単位を導入するために使用される単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が例示される。
【0084】
各構成単位を重合体の主鎖へと導入するために使用される単量体は、各構成単位ごとに、それぞれ例示したものを単独でも、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
上記共重合体は、ランダム共重合体およびブロック共重合体のいずれであってよい。上記共重合体に含まれる各構成単位の含有割合は適宜調節される。
【0086】
光硬化性官能基を含有する場合には、光硬化性官能基含有単位の含有割合は、要求される光重合性の程度(感度)に応えるべく調節され、主鎖を形成するための単量体と例えばグリシジル(メタ)アクリレートやイソシアネート化合物のような光重合性基含有化合物の総使用量(総仕込み量)を全量とした時の仕込み量の割合で表した時に、5モル%〜95モル%、更に14モル%〜50モル%とすることが好ましい。
【0087】
酸性官能基を含有する場合には、酸性官能基含有単位の含有割合は、上述したように要求されるアルカリ可溶性の程度と溶剤溶解性に応えるべく調節され、上記と同様の仕込み量で表した時に、5モル%〜55モル%、更に10モル%〜30モル%とすることが好ましい。
【0088】
芳香族炭素環含有単位を含有する場合の含有割合は、塗膜性を調節するために、仕込み量で表した時に、通常は0モル%〜75モル%、好ましくは5モル%〜50モル%とされる。
【0089】
エステル基含有単位の含有する場合の含有割合は、アルカリ現像性を必要に応じて抑制するために、仕込み量で表した時に、通常は0モル%〜75モル%、好ましくは5モル%〜50モル%とされる。
【0090】
光硬化性官能基を有する重合体を製造するには、先ず、酸性官能基を備えた構成単位と共に、必要に応じて、光硬化性官能基を有するペンダント構造を後から導入できる官能基を備えた構成単位、環状イミド基を備えた構成単位、及び、その他の構成単位を含む主鎖を有する重合体(原料重合体)を製造し、それから当該原料重合体にエチレン性不飽和結合のような光硬化性官能基と共に何らかの別の官能基を有する化合物を反応させて、光硬化性官能基のペンダント構造を導入すればよい。
【0091】
バインダー(d)として用いられる重合体は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が3,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜1000,000、さらに好ましくは5,000〜100,000の範囲に調節するのが好ましい。重量平均分子量が3,000より小さいとアルカリ可溶性が高すぎてパターン露光時のパターン形状を制御しにくく、また、パターンを作製できる場合でも最終的な膜厚が減る(膜減り)等の問題がある。一方、重量平均分子量がl,000,000より大きいと、レジスト化した時の粘度が高くなりすぎて塗工適性が低下したり、現像性が悪くなりパターンが抜けにくくなるなどの問題がある。
【0092】
バインダー(d)に用いられる重合体の酸価は5mgKOH/g〜400mgKOH/g、更に、10mgKOH/g〜200mgKOH/gとするのが好ましい。
【0093】
本発明において硬化性樹脂組成物には、バインダー(d)を固形分比で、通常5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%含有させることが好ましい。着色剤量20重量%以上の高濃度着色レジストの場合、バインダー(d)の含有量が25重量%を超えると、塗膜の硬化性が低下し、基板密着性が悪くなる。一方、バインダー(d)の含有量が5重量%未満では、塗膜の製版性が低下し、現像ムラ、残渣の発生などの問題を生じる場合がある。
【0094】
(光硬化性化合物(e))
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記酸性多官能光硬化性化合物(c)と共に、2つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(e)(以下、「多官能光硬化性化合物(e)」と称する)を配合してもよい。酸性多官能光硬化性化合物(c)は、架橋密度とアルカリ可溶性の両方を増大させるのに対し、光硬化性化合物(e)は架橋密度のみ増大させるので、これらを組み合わせることにより、架橋密度とアルカリ可溶性を調節することができる。
【0095】
本発明において多官能光硬化性化合物(e)は、光硬化性官能基を一分子中に2つ以上、好ましくは3つ以上有し、分子サイズが比較的小さい化合物である。当該化合物(e)のポリスチレン換算重量平均分子量は、通常3000未満である。
【0096】
多官能光硬化性化合物(e)の反応形式は上記酸性多官能光硬化性化合物(c)の場合と同様限定されず、光ラジカル反応、光カチオン反応、光アニオン反応のいずれであってもよいが、酸性多官能光硬化性化合物(c)の光硬化性官能基、更にバインダー(d)に光硬化性官能基を含有する場合の光硬化性官能基と同様の反応形式であることが、互いに重合して架橋密度を高くする点から好ましい。3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)が光ラジカル重合開始剤である点から、光ラジカル重合や光ラジカル二量化等の光ラジカル反応性基であることが好ましく、特に、(メタ)アクリル基等のエチレン性不飽和結合を含有する基であることが好ましい。
【0097】
エチレン性不飽和結合を一分子中に2つ以上有する化合物としては、多官能アクリレート系のモノマー又はオリゴマーが好ましく用いられ、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンテトラ(メタ)アクリレート、テトラトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを例示することができる。これらの成分は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0098】
多官能光硬化性化合物(e)を含有する場合に、その含有量は、硬化性樹脂組成物中に固形分比で通常は27重量%以下、好ましくは20重量%以下とする。酸性多官能光硬化性化合物(c)と多官能光硬化性化合物(e)の含有割合の関係は、塗膜の硬化性及び製版性の調整のし易さから、固形分で、前記酸性多官能光硬化性化合物(c)と前記多官能光硬化性化合物(e)の和に対する前記酸性多官能光硬化性化合物(c)の重量比((c)/{(c)+(e)})が0.1〜1の範囲に入ることが好ましい。
【0099】
また、前記バインダー(d)と、前記酸性多官能光硬化性化合物(c)と前記多官能光硬化性化合物(e)の含有割合の関係は、固形分で、前記バインダー(d)と、前記酸性多官能光硬化性化合物(c)と前記多官能光硬化性化合物(e)の和の重量比((d)/{(c)+(e)})が1.5以下であることが好ましい。重量比((d)/{(c)+(e)})を1.5以下とすることにより、形成される塗膜の硬化性が充分となり、更に密着強度、耐熱性等の各種物理強度が適切となるというメリットがある。
【0100】
本発明の硬化性樹脂組成物には、反応希釈剤としてメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドンなどの単官能性モノマーを添加してもよい。
【0101】
本発明に係る着色パターン用硬化性樹脂組成物には、着色剤(a)が必須成分として配合されるため、着色剤を均一且つ安定して分散させるために、当該硬化性樹脂組成物中に分散剤を配合することが好ましい。分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
【0102】
すなわち、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類などの高分子界面活性剤が好ましく用いられる。
【0103】
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記光重合開始剤(b)以外の光重合開始剤を含有しても良い。
【0104】
上記光重合開始剤(b)以外の光重合開始剤としては、例えば紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体又はそれらのエステルなどの誘導体;キサントン並びにチオキサントン誘導体;クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物などがある。好ましくは、イルガキュア184、イルガキュア651、ダロキュアー1173(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)などのケトン系及びビイミダゾール系化合物等を挙げることができる。これらの開始剤を1種のみ又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を併用する場合には、吸収分光特性を阻害しないようにするのがよい。
【0105】
なお、硬化性樹脂組成物を調製するにあたって、上記光重合開始剤(b)以外の光重合開始剤も、前記バインダー(d)に最初から添加しておいてもよいが、比較的長期間保存する場合には、使用直前に硬化性樹脂組成物中に分散或いは溶解することが好ましい。
【0106】
光感度の向上を更に期待したい場合には、増感剤を添加してもよい。用いる増感剤としては、スチリル系化合物或いはクマリン系化合物が好ましい。具体的には、2−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、2−(p−ジエチルアミノスチリル)キノリン、4−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、4−(p−ジエチルアミノスチリル)キノリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−3,3−3H−インドール、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−3,3−3H−インドール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズイミダゾール、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−ベンズイミダゾールなどが挙げられる。
【0107】
また、クマリン系化合物としては、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−エチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、4,6−ジエチルアミノ−7−エチルアミノクマリン、3−(2−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノシクロペンタ(c)クマリン、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、1,2,3,4,5,3H,6H,10H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチル(1)ベンゾピラノ−(9,9a,1−gh)−キノリジン−10−オン、7−エチルアミノ−6−メチル−4−トリフルオロメチルクマリン、1,2,3,4,5,3H,6H,10H−テトラヒドロ−9−カルベトキシ(1)ベンゾピラノ−(9,9a,1−gh)−キノリジン−10−オンなどが挙げられる。
【0108】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物の中には、耐熱性、密着性、耐薬品性(特に耐アルカリ性)の向上を図る目的で、必要に応じて、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物(エポキシ樹脂)を配合することができる。エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としてエピコート1001、1002、1003、1004、1007、1009、1010(ジャパンエポキシレジン製)など、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としてエピコート807(ジャパンエポキシレジン製)など、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としてEPPN201、202(日本化薬製)、エピコート154(ジャパンエポキシレジン製)など、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としてEOCN102、103S、104S、1020、1025、1027(日本化薬製)、エピコート180S(ジャパンエポキシレジン製)などを例示できる。さらに、環式脂肪族エポキシ樹脂や脂肪族ポリグリシジルエーテルを例示することもできる。
【0109】
これらの中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を分子内に2個以上有する化合物の多くは高分子量体であるが、ビスフェノールAやビスフェノールFのグリシジルエーテルは低分子量体であり、そのような低分子量体は特に好ましい。また、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート等を樹脂骨格中に含むアクリル共重合体等も有効である。
【0110】
このようなエポキシ樹脂は、硬化性樹脂組成物中に固形分比で、通常は0〜60重量%、好ましくは5〜40重量%含有される。エポキシ樹脂の含有量が5重量%未満では、保護膜に充分な耐アルカリ性を付与できない場合がある。一方、エポキシ樹脂の含有量が60重量%を超えると、エポキシ樹脂量が多くなりすぎ、硬化性樹脂組成物の保存安定性、現像適性が低下するので好ましくない。また、エポキシ樹脂は、硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜のタックを除去するためにも有効であり、添加量3重量%程度で充分な効果が発現する。エポキシ樹脂は、露光・アルカリ現像後においても反応することなく塗膜中に残存している酸性基と、加熱処理によって反応し、塗膜に優れた耐アルカリ性を付与することになる。
【0111】
上述の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて前記の成分以外にも、界面活性剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を配合することができる。
【0112】
本発明の硬化性樹脂組成物には、塗料化及び塗布適性を考慮して、着色剤(a)、光重合開始剤(b)、酸性多官能光硬化性化合物(c)、バインダー(d)等に対する溶解性が良好で、且つ、スピンコーティング性が良好となるように沸点が比較的高い溶剤が含有される。使用可能な溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、i−プロピルアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのセロソルブ系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテートなどのカルビトールアセテート系溶剤;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N−ヘプタン、N−ヘキサン、N−オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤などの有機溶剤を例示することができる。これらの溶剤の中では、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテートなどのカルビトールアセテート系溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤が特に好適に用いられる。特に好ましくは、MBA(酢酸−3−メトキシブチル、CH3CH(OCH3)CH2CH2OCOCH3)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、CH3OCH2CH(CH3)OCOCH3)、DMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル、H3COC2H4OCH3)又はこれらを混合したものを使用することができ、これらを用いて固形分濃度を5〜50重量%に調製する。
【0113】
本発明の硬化性樹脂組成物を製造するには、前記着色剤(a)、光重合開始剤(b)、酸性多官能光硬化性化合物(c)、バインダー(d)、及び、その他の成分を適切な溶剤に投入し、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、2本ロールミル、3本ロールミルなどの一般的な方法で溶解、分散させればよい。なお、メインポリマーである硬化性樹脂としては、合成反応後に有効成分である重合体を単離精製したものを用いるほか、合成反応により得られた反応液、その乾燥物などをそのまま用いてもよい。
【0114】
このようにして得られる硬化性樹脂組成物を何らかの支持体に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜に紫外線、電離放射線等の活性化エネルギー線を照射すると、酸性多官能光硬化性化合物(c)、及び必要に応じてバインダー(d)の光硬化性官能基及び/又は多官能光硬化性化合物(e)が光重合反応を起こすと共に、環状イミド基を含有する場合には環状イミド基同士で二量化反応を起こすことにより、光硬化性化合物(c)及びバインダー(d)及び/又は多官能光硬化性化合物(e)の分子間に架橋結合を形成し、硬化する。硬化した塗膜は、水酸化ナトリウム等のアルカリ現像液により現像することができる。
【0115】
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤(b)の配合割合を高くすることができ、しかも、酸性多官能光硬化性化合物(c)を配合することにより架橋密度を高くできることから、硬化性に優れている。すなわち、露光時には感度が高く、少ない露光量で速やかに硬化し、硬化後の塗膜に硬度、強度、密着性等の諸点で優れた物性を付与することができる。
【0116】
本発明においては、次のような方法によって、硬化性樹脂組成物の露光感度を評価することができる。先ず、基板上に硬化性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて乾燥させて塗膜を形成する。ここで、基板としては、透明ガラス基板のように露光、現像等の一連のパターン形成工程に支障を来たさないものであれば、特に問題なく使用できる。塗膜の厚さも特に制限はないが、通常は、1〜10μm程度の厚さとする。この塗膜を、適切な条件で、例えば70〜150℃で、1〜10分間、プリベークする。プリベーク後、既知の照射強度で塗膜を露光し、膜厚を測定する。この段階で測定した膜厚を「現像前膜厚」とする。
【0117】
次に、プリベークした塗膜を適切な現像剤に接触させて未露光部を溶解、除去し、残った露光部を必要に応じて洗浄することによって、塗膜を現像する。ここで、現像剤の組成及び現像の条件は、試験される硬化性樹脂組成物に合わせて適切に選択する。現像剤としては、硬化性樹脂組成物の露光部(硬化した部分)はほとんど溶解せず、未露光部を完全に溶解できるものが好ましいことは言うまでもない。そして、現像された塗膜を、適切な条件で、例えば180〜280℃で、20〜80分間、ポストベークする。ポストベーク後、塗膜の厚さを測定し、「最終硬化後膜厚」とする。
【0118】
このようにして測定された現像前膜厚と最終硬化後膜厚とから次式に従って、残膜率を計算する。
【0119】
残膜率(%)=(最終硬化後膜厚(μm)÷現像前膜厚(μm))×100
一方、同じ硬化性樹脂組成物を前記と同様にして基板上に塗布、乾燥し、プリベークし、リファレンス用の塗膜を形成する。このリファレンス用塗膜を、当該塗膜が完全に硬化する照射強度で露光し、膜厚を測定する。この段階で測定した膜厚を「完全露光膜厚」とする。次に、完全露光した塗膜を現像はせずに、サンプルと同じ方法でポストベークした後、得られた膜の膜厚を前述したのと同じ方法で測定し、「現像工程無しの最終膜厚」とする。そして、測定された完全露光膜厚と現像工程無しの最終膜厚とから次式に従って、リファレンス残膜率を計算する。
【0120】
リファレンス残膜率(%)=(現像工程無しの最終膜厚(μm)÷完全露光膜厚(μm))×100
このようにして残膜率とリファレンス残膜率を算出し、残膜率が誤差範囲1%としてリファレンス残膜率と等しくなった最も小さい露光量を、硬化性樹脂組成物の最低露光量と決定する。この最低露光量が小さいほど感度が高いと評価できる。
【0121】
本発明によれば、このようにして決定される最低露光量が100mJ/cm2以下、好ましくは50mJ/cm2以下、さらに好ましくは35mJ/cm2以下、さらに好ましくは25mJ/cm2以下であるような非常に高感度の硬化性樹脂組成物を得ることが可能である。
【0122】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、着色剤及び分散剤を多量に含有しても、酸性多官能光硬化性化合物(c)を配合することによりアルカリ可溶性を高くできることから、着色濃度及びアルカリ現像性に優れている。すなわち、現像時には現像速度が高く、現像後の着色層は、着色濃度が高く、順テーパー形状(上面部の面積S2/底面部の面積S1で表される面積比が1以下の形状)とすることができるために強度に優れ、パターンエッジが正確であるため精度が高く、また、着色層の周囲は残渣(現像残り)が少ない。
【0123】
本発明の硬化性樹脂組成物は、カラーフィルターのブラックマトリックス層及び着色層を形成するのに特に適している。
【0124】
本発明に係るカラーフィルターは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた画素とを備え、さらにブラックマトリックス層や保護膜を備えていてもよいカラーフィルターであって、前記画素及び/又は前記ブラックマトリックス層が、前記本発明に係る着色パターン用硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものであることを特徴とする。
【0125】
また、本発明に係る液晶パネルは、表示側基板と液晶駆動側基板とを対向させ、両者の間に液晶を封入してなる液晶パネルであって、前記表示側基板が前記本発明に係るカラーフィルターであることを特徴とする。
【0126】
図3は、本発明に係るカラーフィルターの一例(カラーフィルター103)を示す平面図であり、図4は、同じカラーフィルター103のA−A線における縦断面図である。
【0127】
このカラーフィルター103は、透明基板5に所定のパターンで形成されたブラックマトリックス6と、当該ブラックマトリックス上に所定のパターンで形成した画素7(7R,7G,7B)と、当該画素を覆うように形成された保護膜8を備えている。保護膜上に必要に応じて液晶駆動用の透明電極9が形成される場合もある。カラーフィルター103の最内面、この場合には透明電極上には、配向膜10が形成される。
【0128】
柱状スペーサー12は凸状スペーサーの一形状であり、ブラックマトリックス層6が形成された領域(非表示領域)に合わせて、透明電極9上の所定の複数箇所(図3では5箇所)に形成されている。柱状スペーサー12は、透明電極9上若しくは画素7上若しくは保護膜8上に形成される。カラーフィルター101においては、保護膜8上に透明電極9を介して柱状スペーサーが海島状に形成されているが、保護膜8と柱状スペーサー12を一体的に形成し、その上を覆うように透明電極の層を形成しても良い。また、カラーフィルターがブラックマトリックス層を備えていない場合には、画素を形成していない領域に柱状スペーサーを形成することができる。
【0129】
カラーフィルター101の透明基板5としては、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、或いは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。この中で特にコーニング社製1737ガラスは、熱膨張率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、アクティブマトリックス方式によるカラー液晶表示装置用のカラーフィルターに適している。
【0130】
ブラックマトリックス層6は、表示画像のコントラストを向上させるために、画素7R,7G,7Bの間及び画素形成領域の外側を取り囲むように設けられる。ブラックマトリックス層6は、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0131】
先ず、透明基板5上に、着色剤としてカーボンブラックや金属酸化物等の遮光性粒子を含有させた硬化性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて乾燥させて感光性塗膜を形成し、当該塗膜をブラックマトリックス用のフォトマスクを介して露光、現像し、必要に応じて加熱処理を施すことによって、ブラックマトリックス層6を形成することができる。
【0132】
ブラックマトリックス層の厚さは、金属薄膜の場合は1000〜2000Å程度とし、遮光性樹脂層の場合は、0.5〜2.5μm程度とする。
【0133】
画素7は、赤色パターン、緑色パターン及び青色パターンがモザイク型、ストライプ型、トライアングル型、4画素配置型等の所望の形態で配列されてなり、表示領域を形成する。画素は、顔料分散法、染色法、印刷法、電着法等の公知の方法により形成することができるが、その中でも、顔料等の着色剤を含有した本発明の硬化性樹脂組成物を用いる顔料分散法により形成するのが好ましい。
【0134】
顔料分散法による場合には、先ず、硬化性樹脂組成物に顔料等の着色剤を分散させて、赤色用、緑色用、及び、青色用の光硬化性着色樹脂組成物を夫々調製する。次に、透明基板5上に、ブラックマトリックス層6を覆うように、ある色、例えば光硬化性赤色樹脂組成物をスピンコート等の公知の方法で塗布して光硬化性赤色樹脂層を形成し、赤色パターン用フォトマスクを介して露光を行い、アルカリ現像後、クリーンオーブン等で加熱硬化することにより赤色画素7Rを形成する。その後、緑色用、及び、青色用の光硬化性着色樹脂組成物を順次用いて同様にして各色をパターニングして、緑色画素7G及び青色画素7Bを形成する。
【0135】
着色剤としては、上述したような着色剤を適切に選んで使用することができる。本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いる場合には、高濃度の微細な画素を良好なエッジ形状、テーパー形状で形成することができる。
【0136】
画素の厚さは、通常0.5〜2.5μm程度とする。また、赤色画素7Rが最も薄く、緑色画素7G、青色画素7Bの順に厚くなるというように各色の画素の厚さを変えて、各色ごとに最適な液晶層厚みに設定してもよい。
【0137】
保護膜8は、カラーフィルターの表面を平坦化すると共に、画素7に含有される成分が液晶層に溶出するのを防止するために設けられる。保護膜8は、公知のネガ型の光硬化性透明樹脂組成物又は熱硬化性透明樹脂組成物を、スピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷等の方法により、ブラックマトリックス層6及び画素7を覆うように塗布し、光又は熱によって硬化させることによって形成できる。
【0138】
保護膜の厚さは、樹脂組成物の光透過率、カラーフィルターの表面状態等を考慮して設定し、例えば、0.1〜2.0μm程度とする。スピンコーターを使用する場合、回転数は500〜1500回転/分の範囲内で設定する。
【0139】
保護膜上の透明電極膜9は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等、およびそれらの合金等を用いて、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等の一般的な方法により形成され、必要に応じてフォトレジストを用いたエッチング又は治具の使用により所定のパターンとしたものである。この透明電極の厚みは20〜500nm程度、好ましくは100〜300nm程度とすることできる。
【0140】
凸状スペーサーは、カラーフィルター103をTFTアレイ基板等の液晶駆動側基板と貼り合わせた時にセルギャップを維持するために、基板上の非表示領域に複数設けられる。凸状スペーサーの形状及び寸法は、基板上の非表示領域に選択的に設けることができ、所定のセルギャップを基板全体に渡って維持することが可能であれば特に限定されない。凸状スペーサーとして図示したような柱状スペーサー12を形成する場合には、2〜10μm程度の範囲で一定の高さを持つものであり、突出高さ(パターンの厚み)は液晶層に要求される厚み等から適宜設定することができる。また、柱状スペーサー12の太さは5〜20μm程度の範囲で適宜設定することができる。また、柱状スペーサー12の形成密度(密集度)は、液晶層の厚みムラ、開口率、柱状スペーサーの形状、材質等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、赤色、緑色及び青色の各画素の1組に1個の割合で必要充分なスペーサー機能を発現する。このような柱状スペーサーの形状は柱状であればよく、例えば、円柱状、角柱状、截頭錐体形状等であっても良い。
【0141】
凸状スペーサーを形成するには、まず、硬化性樹脂組成物の塗工液をスピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷等の方法により透明基板上に直接、又は、透明電極等の他の層を介して塗布し、乾燥して、光硬化性樹脂層を形成する。スピンコーターの回転数は、保護膜を形成する場合と同様に500〜1500回転/分の範囲内で設定すればよい。次に、この樹脂層を凸状スペーサー用フォトマスクを介して露光し、アルカリ液のような現像液により現像して所定の凸状パターンを形成し、この凸状パターンを必要に応じてクリーンオーブン等で加熱処理(ポストベーク)することによって凸状スペーサーが形成される。
【0142】
凸状スペーサーは、カラーフィルター上に直接又は他の層を介して間接的に設けることができる。例えば、カラーフィルター上にITO等の透明電極又は保護膜を形成し、その上に凸状スペーサーを形成しても良いし、カラーフィルター上に保護膜と透明電極をこの順に形成し、さらに透明電極上に凸状スペーサーを形成しても良い。
【0143】
配向膜10は、カラーフィルターの内面側に、画素7を備える表示部及びブラックマトリックス層6や柱状スペーサー12を備える非表示部を覆うように設けられる。配向膜は、ポリイミド樹脂等の樹脂を含有する塗工液をスピンコート等の公知の方法で塗布し、乾燥し、必要に応じて熱や光により硬化させた後、ラビングすることによって形成できる。
【0144】
以上、本発明のカラーフィルターを通常のカラーフィルターを用いて説明したが、本発明の硬化性樹脂組成物はモノクロのカラーフィルターのような表示側基板にも適用することができる。
【0145】
このようにして本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いてブラックマトリックス層及び/又は画素等の着色層を形成したカラーフィルターは、高画質、高精彩のカラーフィルターである。
【0146】
得られたカラーフィルター103(表示側基板)と、TFTアレイ基板(液晶駆動側基板)を対向させ、両基板の内面側周縁部をシール剤により接合すると、両基板は所定距離のセルギャップを保持した状態で貼り合わされる。そして、基板間の間隙部に液晶を満たして密封することにより、本発明に係る液晶パネルに属する、アクティブマトリックス方式のカラー液晶表示装置が得られる。このようにして得られる本発明に係る液晶パネルは、表示品質に優れる。
【0147】
【実施例】
(製造例1)重合体1の合成
重合槽中にベンジルメタクリレートを15.6重量部、スチレンを37.0重量部、アクリル酸を30.5重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを16.9重量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を200重量部、仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)を0.8重量部、添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下で、85℃で2時間攪拌し、さらに100℃で1時間反応させた。さらに得られた溶液に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9重量部、トリエチルアミンを0.5重量部、及び、ハイドロキノンを0.1重量部、添加し、100℃で5時間攪拌し、目的とする重合体1(固形分37.2%)を得た。
【0148】
(実施例1、比較例1)ブラックマトリックス用樹脂組成物の調製
分散液組成物(顔料、分散剤、及び溶剤)にビーズを加え、ペイントシェーカーで3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、クリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤、及び溶剤)とを混合して、第1表に示す割合の組成物を調製した。
【0149】
【表1】
【0150】
(実施例2、比較例2)赤色パターン用樹脂組成物の調製
分散液組成物(顔料、分散剤、及び溶剤)にビーズを加え、ペイントシェーカーで3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、クリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤、及び溶剤)とを混合して、第2表に示す割合の組成物を調製した。
【0151】
【表2】
【0152】
(実施例3、比較例3)緑色パターン用樹脂組成物の調製
分散液組成物(顔料、分散剤、及び溶剤)にビーズを加え、ペイントシェーカーで3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、クリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤、及び溶剤)とを混合して、第3表に示す割合の組成物を調製した。
【0153】
【表3】
【0154】
(実施例4、比較例4)青色パターン用樹脂組成物の調製
分散液組成物(顔料、分散剤、及び溶剤)にビーズを加え、ペイントシェーカーで3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、クリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤、及び溶剤)とを混合して、第4表に示す割合の組成物を調製した。
【0155】
【表4】
【0156】
(現像性の評価)
10cm画のガラス基板上に、スピンコーター(MIKASA製、形式1H−DX2)により、ブラックマトリックス用、着色剤用樹脂組成物について1.5μmの厚さに塗布した。この塗膜をホットプレート上で100℃、3分間プリベークした。所定の形状、大きさ、及び間隔を有する露光パターンを形成できるように設計されたフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより紫外線を100mJ/cm2で照射した基板を0.05重量%KOH水溶液を用いてスプレー現像した時に、現像に要する時間、残渣、及び端面残り、密着性を評価した。ここで、端面残りとは、スピンコートした際に厚くなった外周部の溶け残りの有無をいい、樹脂組成物の現像性が良好か否かを判断することができる。
【0157】
各実施例1〜4、及び比較例1〜4についての結果を第5表に示す。
【0158】
【表5】
【0159】
実施例1〜4は、いずれも現像性が良く、端面残りも無かったが、実施例に用いた酸性多官能光硬化性化合物(c)の代わりに、同量の通常用いられる多官能光硬化性化合物のみを用いた比較例1〜4は、いずれも端面残りを生じ、現像性が悪かった。
(実施例5、比較例5)
分散液組成物(顔料、分散剤、及び溶剤)にビーズを加え、ペイントシェーカーで3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、クリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤、及び溶剤)とを混合して、第6表に示す割合の組成物を調製した。
【0160】
【表6】
【0161】
(感度の評価)
10cm画のガラス基板上に、実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物をスピンコーター(MIKASA製、形式1H−DX2)により、塗布、乾燥し、乾燥膜厚2μmの塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で90℃、3分間加熱した。加熱後、塗膜から100μmの距離にフォトマスクを配置して2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナー(大日本スクリーン製、形式MA 1200)によって、同一塗膜を4等分した各領域のそれぞれに、25、35、50、100mJ/cm2の強度(405nm照度換算)で紫外線を照射した。
【0162】
紫外線の照射後、これら4つの各領域から、寸法が約1mm×3mmの矩形状に塗膜を削り取ってガラス基板を部分的に露出させ、触針式表面粗度測定装置(日本アネルバ(株)製、Dektak 1600)により各照射領域の膜厚を測定し、現像前膜厚とした。
【0163】
次いで、塗膜の露光部に0.05wt%の水酸化カリウム水溶液をスピン現像機(Applied Process Technology,INK、MODEL:915)にて60秒間散布し、未露光部を溶解、除去し、残った露光部を純水で60秒間水洗することにより現像した。現像後、露光部の膜をクリーンオーブン(忍足研究所(株)製、SCOV−250 Hy−So)により、200℃で30分間加熱した。そして、得られた膜の各領域の膜厚を、前述したのと同じ方法で測定し、最終硬化後膜厚とした。
【0164】
このようにして測定された現像前膜厚と最終硬化後膜厚とから次式に従って、残膜率を計算した。
【0165】
残膜率(%)=(最終硬化後膜厚(μm)÷現像前膜厚(μm))×100
一方、リファレンス残膜率を、次のようにして決定した。先ず、塗膜の全面に100mJ/cm2の強度で露光したこと以外はサンプルと同じ方法で、硬化性樹脂組成物の完全露光膜厚を測定した。次に、100mJ/cm2露光した塗膜を現像はせずに、サンプルと同じ方法で加熱だけした後、得られた膜の膜厚を前述したのと同じ方法で測定し、現像工程無しの最終膜厚とした。そして、測定された完全露光膜厚と現像工程無しの最終膜厚とから次式に従って、リファレンス残膜率を計算した。
【0166】
リファレンス残膜率(%)=(現像工程無しの最終膜厚(μm)÷完全露光膜厚(μm))×100
このようにして算出された残膜率が誤差範囲1%としてリファレンス残膜率と等しくなった最も小さい露光量を、硬化性樹脂組成物の最低露光量と決定した。
【0167】
各実施例5、及び比較例5について最低露光量を決定した。
【0168】
更に、実施例5及び比較例5について、実施例1と同様に現像性も評価した。結果を第7表に示す。
【0169】
【表7】
【0170】
3級アミン構造光重合開始剤(b)を固形分比で20%以上含む実施例5は、3級アミン構造光重合開始剤(b)が固形分比で10%以下で、酸性多官能光硬化性化合物(c)を含まない比較例5に比べて、感度が向上し、現像性も優れることが明らかになった。
【0171】
(実施例6:カラーフィルターの作製)
(1)ブラックマトリックスの形成
厚み1.1mmのガラス基板(旭硝子(株)製AL材)上に実施例1のブラックマトリックス用樹脂組成物をスピンコーターで塗布し、100℃で3分間乾燥させ、膜厚約1μmの遮光層を形成した。当該遮光層を、超高圧水銀ランプで遮光パターンに露光した後、0.05%水酸化カリウム水溶液で現像し、その後、基板を180℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して遮光部を形成すべき領域にブラックマトリックスを形成した。
【0172】
(2)着色層の形成
前記のようにしてブラックマトリックスを形成した基板上に、実施例2の赤色パターン用樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布(塗布厚み1.5μm)し、その後、70℃のオーブン中で30分間乾燥した。
【0173】
次いで、赤色パターン用樹脂組成物の塗膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて着色層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、赤色パターン用樹脂組成物の塗膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を180℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して赤色画素を形成すべき領域に赤色のレリーフパターンを形成した。
【0174】
次に、実施例3の緑色パターン用樹脂組成物を用いて、赤色のレリーフパターン形成と同様の工程で、緑色画素を形成すべき領域に緑色のレリーフパターンを形成した。
【0175】
さらに、実施例4の青色硬化性樹脂組成物を用いて、赤色のレリーフパターン形成と同様の工程で、青色画素を形成すべき領域に青色のレリーフパターンを形成し、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色からなる着色層を形成した。
【0176】
(3)保護膜の形成
着色層を形成したガラス基板上に、第8表に示す保護層用樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布、乾燥し、乾燥膜厚2μmの塗膜を形成した。
【0177】
【表8】
【0178】
保護層用樹脂組成物の塗膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて着色層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、保護層用樹脂組成物の塗膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して保護膜を形成した。
【0179】
(4)スペーサーの形成
着色層を形成したガラス基板上に、第9表に示す柱状スペーサー用樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布、乾燥し、乾燥膜厚5μmの塗膜を形成した。
【0180】
【表9】
【0181】
柱状スペーサー用樹脂組成物の塗膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて、ブラックマトリックス上のスペーサーの形成領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、柱状スペーサー用樹脂組成物の塗膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して固定スペーサーを形成し、本発明のカラーフィルターを得た。
【0182】
(実施例7:液晶パネルの作製)
実施例6で得られたカラーフィルターの固定スペーサーを含む表面に、基板温度200℃でアルゴンと酸素を放電ガスとし、DCマグネトロンスパッタリング法によってITOをターゲットとして透明電極膜を形成した。その後、更に透明電極膜上にポリイミドよりなる配向膜を形成した。
【0183】
次いで、前記カラーフィルターと、TFTを形成したガラス基板とを、エポキシ樹脂をシール材として用い、150℃で0.3kg/cm2の圧力をかけて接合してセル組みし、TN液晶を封入して、本発明の液晶表示装置を作製した。
【0184】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の硬化性樹脂組成物は、酸素クエンチャーである3級アミン構造を分子内に有する光重合開始剤(b)を多量に配合し、さらに着色剤及び分散剤を多量に配合しても、酸性多官能光硬化性化合物(c)を配合することによって架橋密度とアルカリ可溶性を高くできることから、硬化性とアルカリ現像性に優れ、露光時には感度が高く、現像時には現像速度が高い。また、着色濃度が高く、順テーパー形状で、精度が高い微細な着色パターンを形成することができ、露出部の残渣も少ない。
【0185】
そして、本発明の硬化性樹脂組成物は、カラーフィルターを形成するために用いられるのに適しており、特に、カラーフィルターの画素やブラックマトリックス層等の着色層を形成するためのコーティング材料として適している。すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物を用いると、高感度により生産性が高く、優れた現像性により正確で寸法安定性に優れた着色パターンを形成することができる。
【0186】
本発明のカラーフィルターは、上記本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いて高濃度で且つ良好なエッジ形状、テーパー形状を有するブラックマトリックス層及び/又は着色層が形成されているので、高画質、高精彩のカラーフィルターである。
【0187】
また、高画質、高精彩の本発明に係るカラーフィルターを用いて形成した本発明に係る液晶パネルは、画像品質に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の液晶パネルの一例についての模式的断面図である。
【図2】従来の液晶パネルの別の例についての模式的断面図である。
【図3】本発明に係る液晶パネル用基板の一例についての平面図である。
【図4】本発明に係る液晶パネル用基板の一例についての断面図である。
【符号の説明】
1…カラーフィルター
103…カラーフィルター
2…TFTアレイ基板
3…間隙部
4…シール材
5…透明基板
6…ブラックマトリックス層
7(7R、7G、7B)…画素
8…保護膜
9…透明電極膜
10…配向膜
11…粒子状スペーサー
12…柱状スペーサー
Claims (9)
- 少なくとも、着色剤(a)と、3級アミン構造を有する光重合開始剤(b)と、1つ以上の酸性官能基と3つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(c)と、バインダー(d)を含有する、着色パターン用硬化性樹脂組成物。
- 更に、2つ以上の光硬化性官能基を有する光硬化性化合物(e)を含有する、請求項1に記載の着色パターン用硬化性樹脂組成物。
- 固形分で、前記光硬化性化合物(c)を3〜30重量%含有する請求項1又は2に記載の着色パターン用硬化性樹脂組成物。
- 固形分で、前記光重合開始剤(b)を5重量%以上含有する、請求項1乃至3いずれかに記載の着色パターン用硬化性樹脂組成物。
- 前記バインダー(d)が、光硬化性官能基を有する重合体である、請求項1乃至4いずれかに記載の着色パターン用硬化性樹脂組成物。
- 前記バインダー(d)の分子量が3,000〜1,000,000である、請求項1乃至5いずれかに記載の着色パターン用硬化性樹脂組成物。
- カラーフィルターの着色パターンの形成に用いられる前記請求項1乃至6いずれかに記載の着色パターン用硬化性樹脂組成物。
- 透明基板と、当該透明基板上に設けられた画素とを備え、さらにブラックマトリックス層を備えていてもよいカラーフィルターであって、前記画素及び/又は前記ブラックマトリックス層が、前記請求項1乃至7いずれかに記載の着色パターン用硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものであることを特徴とする、カラーフィルター。
- 表示側基板と液晶駆動側基板とを対向させ、両者の間に液晶を封入してなる液晶パネルであって、前記表示側基板が前記請求項8に記載のカラーフィルターであることを特徴とする、液晶パネル。
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