JP2004286279A - 空調機の故障診断装置及びその診断方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】空調機(2)の各種運転状態データを一定時間(N)保存する監視手段(3)と、監視手段(3)から送られた運転状態データに基いて構築された標準値のデータベース(7)及び運転状態データのデータベース(8)を備えた制御手段(4)とを有し、前記監視手段(3)は前記一定時間(N)を計測する第1の計時手段(32)を有し、一定時間(N)が経過した際に所定のデータ選択ルールによって選択された運転状態データのみを制御手段(4)へ送出する様に構成されており、前記制御手段(4)は、前記監視手段(3)から送出された運転状態データとデータベース(7)から読み込んだ標準値とを比較することにより故障の原因及び故障発生の有無を判定する様に構成されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空調機の故障診断技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
空調機に付属したコンピュータがモータの回転数等の運転状態のデータを測定し、そのデータを運転条件別に分類してデータベース化し保存する。そして、現在の運転状況データと、前記データベースに登録されている同一の運転状況における過去の運転状況データを比較して、運転状況データの悪化量、すなわち制御目標との差分の変化量が閾値を超えた場合には、故障の発生を予知し、当該空調機器と公衆回線で接続されているメンテナンス会社のコンピュータに対して、その予知結果を送信する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、空調機の運転状況データを継続的に測定し、例えば、冷媒不足と言う故障現象の兆候を診断する場合には、空調機に備え付けられている低圧圧力センサの出力値、及び吐出管温度センサの出力値の両方が、当該機種固有の閾値を超えたときに、機器に接続されたコンピュータが、これを故障の兆候と判定する。
同様に室内機の熱交換器やフィルターの汚れという故障現象に対しても、低圧圧力センサの出力値、高圧圧力センサの出力値、及び吐出管保護制御の発生率の全てが、当該機種固有の閾値を超えた時に、機器に接続されたコンピュータがこれを故障の兆候と判定する技術も開示されており、不具合項目の各々について、チェックするべきパラメータを具体的に定め、故障原因を具体的に診断する技術がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−91121号公報
【特許文献2】
特許第3119046号公報
【0005】
しかしながら、空調機は様々なメーカーから様々な機種が発売されており、従来技術における閾値は、機種の使用によって異なるので、診断対象となる全ての機種の使用を熟知した上で、個々に閾値を定めなくてはならず、多量の機種の診断を行う場合には適さない。更に、同一機種でも設置環境によっては、運転状況データの標準的な値が異なる場合もあるが、従来技術では全ての設置環境に対して、単一の閾値で診断を行ってしまい、一律な故障判断を下していた。
さらに、従来技術は、空調機器に付属するコンピュータに運転状態データのデータベースを構築して必要な情報の処理を行っているので、既存の空調機器であってコンピュータが付属していない機器には、従来技術では故障診断が出来ないと言う問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、空調機器の機種、設置環境、稼動条件に応じて適切な判断基準を設定することが出来て、しかも、コンピュータが付属していない機器についても、故障診断を行うことが可能な空調機の故障診断装置及びその診断方法の提供を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の空調機の故障診断装置(1)は、空調機(2)の各種運転状態データを計測する監視手段(遠隔監視アダプタ3)と、監視手段(遠隔監視アダプタ3)から送られた運転状態データに基づいて構築された標準値のデータベース(7)及び運転状態データのデータベース(8)を備えた制御手段(サーバコンピュータ4)とを有し、前記制御手段(4)は、前記監視手段(遠隔監視アダプタ3)から送出された運転状態データと標準値のデータベース(7)から読み込んだ標準値とを比較することにより故障の原因(例えば、空気熱交換器の汚れ、冷媒漏れ等)及び故障発生の有無を判定する様に構成されていることを特徴としている(請求項1)。
【0008】
或いは、本発明の空調機の故障診断装置(1A)は、空調機(2)に遠隔監視アダプタ(3A)を取り付け、該アダプタ(3A)は、各種運転状態データを計測する監視手段(60)と、監視手段(60)から送られた運転状態データに基づいて構築された標準値のデータベース(7)及び運転状態データのデータベース(8)を備えた制御手段(4A)とを有し、前記制御手段(4A)は、前記監視手段(60)から送出された運転状態データと標準値のデータベース(7)から読み込んだ標準値とを比較することにより故障の原因(例えば、空気熱交換器の汚れ、冷媒漏れ等)及び故障発生の有無を判定する様に構成されていることを特徴としている(請求項2)。
【0009】
本発明の空調機の故障診断方法は、監視手段(3、60)により空調機(2)の各種運転状態データを計測する工程(S11)と、前記制御手段(4、4A)により、前記監視手段(3、60)から送出された運転状態データと標準値のデータベース(7)から読み込んだ標準値とを比較して、故障の原因(例えば、空気熱交換器の汚れ、冷媒漏れ等)及び故障発生の有無を判定する工程(S13〜S20)、とを備えていることを特徴としている(請求項7)。
【0010】
前記空調機(2)の故障診断装置(1)において、前記監視手段(3、60)は各種運転状態データを所定期間(例えば期間N:時間以外のパラメータで決定される場合もある)保存し、所定期間(期間N)が経過した際に所定のデータ選択ルール(期間Nの間、監視手段3に保存された運転状態データから制御手段4又は4A側に送り出すべきデータを選択するための規則:例えば、期間Nにおける最大値、最小値、或いは平均値等)によって選択された運転状態データのみを制御手段(4、4A)へ送出する様に構成されているのが好ましい(請求項3)。
【0011】
また、前記空調機の故障診断方法において、前記監視手段(3、60)により各種運転状態のデータを所定期間(期間N:時間以外のパラメータで決定される場合もある)保存する工程(S11)と、所定期間(期間N)が経過した際に所定のデータ選択ルール(期間Nの間、監視手段3に保存された運転状態データから制御手段4又は4A側に送り出すべきデータを選択するための規則:例えば、期間Nにおける最大値、最小値、或いは平均値等)によって選択された運転状態データのみを前記監視手段(3、60)から制御手段(4、4A)へ送出する工程(S12)とを含むのが好ましい(請求項7)。
【0012】
係る構成を具備する本発明によれば、空調機にコンピュータが付加されていなくても、前記監視手段(遠隔監視アダプタ3)を空調機(2)に設置すれば良い。
すなわち、前記監視手段が遠隔監視アダプタ(3)であり、該アダプタ(3)は制御手段(4)を有していない場合には(請求項1の場合)、当該監視手段(遠隔監視アダプタ3)と前記制御手段(4)とを、信号伝達系統(インターネット、ローカルエリアネットワークLAN等の各種ネットワークシステムN、専用ライン、その他)を介して連結することにより、本発明を適用することが出来る。
勿論、空調機(2)に遠隔監視アダプタ(3A)を取り付け、該アダプタ(3A)は、各種運転状態データを計測する監視手段(60)と制御手段(4A)とを有する様に構成しても(請求項2の場合)、本発明を適用可能である。
【0013】
前記空調機(2)の故障診断装置(1)において、前記制御手段(4、4A)は、運転状態データを標準値のデータベース(7)に読み込む期間(例えば、空調機器稼動開始からの累積時間、空調機の運転回数、アラーム発生回数等が所定の数値となるまでの期間)を計測する期間計測手段(5)と、前記監視手段(3、60)からの運転状態データを標準値のデータベース(7)或いは運転状態データのデータベース(8)に割り振る分類手段(運転条件分類ブロック6)とを備え、該分類手段(運転条件分類ブロック8)は、期間計測手段(5)で計測される期間が所定値(例えば、計測される期間が累積時間であれば期間L)に到達するまでは前記監視手段(3、60)からの運転状態データを標準値のデータベース(7)へ割り振り、所定値に到達した後(例えば、計測される期間が累積時間であれば期間L経過後)は運転状態データのデータベース(8)へ割り振る様に構成されているのが好ましい(請求項4)。
【0014】
また、前記空調機の故障診断方法において、期間計測手段(例えば、タイマ5)により運転状態データを標準値のデータベース(7)に読み込む期間(例えば、空調機器稼動開始からの累積時間、空調機の運転回数、アラーム発生回数等が所定の数値となるまでの期間)を計測し、期間計測手段(5)で計測される期間(例えば、空調機器稼動開始からの累積時間、空調機の運転回数、アラーム発生回数等)が所定値(例えば、計測される期間が累積時間であれば期間L)に到達するまでは前記監視手段(3、60)からの運転状態データを分類手段(運転条件分類ブロック6)により標準値のデータベース(7)へ割り振り、以って、前記期間が所定値に到達する以前(例えば、計測される期間が累積時間であれば期間L経過以前)における運転状態データのみにより標準値のデータベース(例えば図5)を構築し、所定値に到達した後(例えば、計測される期間が累積時間であれば期間L経過後)は運転状態データのデータベース(8)へ割り振るのが好ましい(請求項9)。
【0015】
上述したように、運転状態データの閾値(標準値)を空調機1台毎に設定できるので、機種による運転特性の相違、設置環境や稼動条件による差異を反映した制御が出来る。
【0016】
所定の期間(期間L)経過後は、空調機が劣化する可能性が有るが、従来技術では、劣化した空調機の運転状態データを取り込んでデータベースを更新してしまう可能性がある。
これに対して、本発明では、所定の期間(期間L)経過後は標準値のデータベースを更新しないので、標準値は劣化していない状態のデータのみで構築される。すなわち、劣化したデータで標準値を書き換えてしまう可能性を、完全に排除することが出来る。
【0017】
本発明に係る空調機の故障診断装置の実施に際して、前記制御手段(4、4A)は、運転状態データと標準値のデータベース(7)から読み込んだ標準値とを比較して、故障原因(例えば、空気熱交換器の汚れ、冷媒漏れ等)毎に全ての機種の空調機器に共通する事項(必須的比較項目)の全項目について該当し、且つ、特定の機種の空調機器のみに共通する事項(選択的比較項目)については一定数以上の項目が該当した場合には、当該故障原因による故障が発生していると診断する様に構成されているのが好ましい(請求項5)。
【0018】
本発明に係る空調機の故障診断方法の実施に際して、故障の原因(例えば、空気熱交換器の汚れ、冷媒漏れ等)及び故障発生の有無を判定する前記工程(S13〜S20)では、故障原因(例えば、空気熱交換器の汚れ、冷媒漏れ等)毎に全ての機種の空調機器に共通する事項(必須的比較項目:例えば、図6、図7参照)と、特定の機種の空調機器のみに共通する事項(選択的比較項目:例えば、図6、図7参照)とについて、運転状態データと標準値のデータベース(7)から読み込んだ標準値とを比較し、全ての機種の空調機器に共通する事項(必須的比較項目)の全項目について当該運転状態データが該当し且つ特定の機種の空調機器のみに共通する事項(選択的比較項目)について当該運転状態データが一定数以上の項目が該当する場合には、当該故障原因による故障が発生していると診断するのが好ましい(請求項10)。
【0019】
上述したような診断方法によれば、市場に多数提供されている様々な空調機について、故障の発生のみならず、その原因までも特定することが出来、従って、的確な保全措置、予防措置を講じることが出来る。
【0020】
ここで、標準値のデータベース(7)と、運転状態データのデータベース(8)とは、運転条件別(例えば、外気温度別、その他)に分けた形式で構築されるのが好ましい(請求項6、請求項11)。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1において、全体を符号1で示す故障診断装置は、空調機2と、その空調機2の各種運転状態データを所定期間(期間N:時間以外のパラメータで計測される場合を含む)保存する遠隔監視アダプタ3と、その遠隔監視用アダプタ3に保存された前記各種データをネットワークNで受け、前記各種の運転状態データに基づいて、当該空調機2の故障の有無を判断するサーバコンピュータ(以降サーバコンピュータを単にサーバと略記する)4と、そのサーバ4で「故障」と診断された場合に対策を講じるための保全・予防作業ブロック20、とで構成されている。
【0023】
前記サーバコンピュータ4は、期間Lを計測するタイマ5を有し、期間L毎に前記隔監視アダプタ3からネットワークNを介して送られる運転状態データを受信し更に後述する方法によって運転条件を分類する運転条件分類ブロック6と、その運転状態データに基づいて構築された標準値のデータベース7と、都度の運転状態のデータを記憶する運転状態のデータベース8と、その運転状態データから現在値を演算する現在値演算ブロック9と、前記標準値のデータベース7のデータ及び前記演算ブロック9で演算された現在値とを比較する比較ブロック10と、比較ブロック10で比較され故障の有無を判断する判定ブロック11とから構成されている。
【0024】
運転条件を分類する方法としては、例えば、図5のマトリックスに示す様に外気温を5度毎に0℃未満から45℃以上までを10ブロックの温度域に割り振り、その10に割り振った温度域で更に室内機の運転率を0から50%、50から100%に2分して、合計20パターンに分け、計測したケースが上記20のパターンの何れであるかを分類する方法がある。
【0025】
前記遠隔監視アダプタ3は、詳細には図2に示すように、データ選択のルール部分31aを含む運転状態データ保存用データベース31と、所定期間(期間N)を計測する期間N計測用タイマ32と、データ選択手段33とを有しており、所定期間(期間N)が経過した際に所定のデータ選択ルール(例えば、期間Nにおける最大値、最小値、或いは平均値等)によって選択された運転状態データのみを前記サーバ4へ送出する様に構成されている。
換言すれば、遠隔監視のアダプタ3は空調機2に設けられた各種センサ(図示せず)により計測された各種運転状態データを一時的に記憶して、期間N経過毎に、所定のデータ選択ルールに従って選択されたデータのみをサーバ4側へ送る。
【0026】
サーバ4はメンテナンス会社(或いは故障診断に関するサービス会社)に存在し、遠隔監視アダプタ3から送出された運転状態データと標準値のデータベース7から読み込んだ標準値とを比較することにより故障の原因(例えば、空気熱交換器の汚れ、冷媒漏れ等)及び故障発生の有無を判定する様に構成されている。
【0027】
次に図3のフローチャートを参照して標準値のデータベースを構築する手順を説明する。
先ず、期間N計測用タイマを作動させ(ステップS1)、当該空調機2側の各種のパラメータを計測し(ステップS2)、計測した計測値を当該空調機(GHP;ガスエンジンヒートポンプ)2側の前記遠隔監視アダプタ3の運転状態データ保存用データベース31(図2参照)で記憶する(ステップS3)。
【0028】
次にサーバ4は期間N(例えば24時間)が経過するまでステップS2〜ステップS4を繰返し、期間Nが経過して(ステップS4のYES)、所定のデータ選択ルールに従って選択された計測値をサーバ4側に送付して、標準値のデータベースを構築する。そしてGHP側の選択されなかったデータを消去する(ステップS5)。
【0029】
ここで、前記所定のデータ選択ルールとは、期間Nの間に所定の条件の数値(最大値なら最大値で統一、最小値なら最小値で統一、平均値で有れば平均値で統一して、ある時点では最大値をとり、ある時点では最小値を取るようなことはしない)をサービス会社のサーバ側で吸い上げる。そして、予め定められたルールに沿って選択された代表値(例:最大値、最小値、平均値など)をサンプリングして、サンプリング値間のばらつきを押さえる。
【0030】
ここで、構築されるべき標準値のデータベースの1例として図8で示す様な、各外気温度域に対する室外熱交換器のファンの回転ステップ、コンプレッサー回転数・・・凝縮機出口の過冷却度等の1次マトリックスがある。
【0031】
次にサーバ4は空調機2が使用開始から期間Lが経過したか否かを判断し(ステップS6)経過していなければ(ステップS6のNO)前記時間N計測用タイマをリセットし(ステップS7)、再度ステップS2以降を繰り返す。また、期間Lが経過したなら(ステップS6のYES)、サーバ4側で標準値のデータベースを完成させ(ステップS8)、制御は終了する。
【0032】
なお、図示の実施形態において、期間N経過毎に遠隔監視アダプタ3で選択されてサーバ4へ送られる運転状態データを、標準値のデータベース7に読み込む期間は、タイマ5で計測される、空調機器稼動開始からの累積時間となっている。しかし、図示はされていないが、運転状態データを標準値のデータベース7に読み込む期間は、空調機の運転回数(回転積算計で計測)、アラーム発生回数等が所定の数値となるまでの期間としても良い。
【0033】
特開2002−277032号の場合、GHPの各種パラメータの計測データは、遠隔監視装置内に記憶される。
遠隔監視装置も「空調機;GHP側」と考えれば、「GHPの各種パラメータの計測データは、GHP側で貯蔵され、期間N経過時に又は期間N経過以前に、所定のデータ選択ルールに従って選択されたデータ以外は全て消去される。」ということになる。
また、数値Nは任意の数であり必ずしも整数を意味するものではなく、所定のサンプリング期間(時間以外のパラメータを用いて決定する期間の場合を含む)毎と言う意味で用いている。
【0034】
標準値のデータベースを構築するための運転状態データは、遠隔監視開始(或いは、空調機器の使用開始)から所定期間L(例えば12ヶ月)経過するまでに取得されたデータに限定される。
期間L経過以降は、空調機が劣化している可能性が有るので、標準値とはしない。標準値として記憶しない期間L経過後は、標準値のデータベースは構築しない。この点で、従来技術と相違する。
【0035】
すなわち、従来技術では、標準値のデータベースに相当するものも、常に更新してしまう。また、従来技術では、運転データを選択的に取りこんで、標準値を更新しているので処理が大変ややこしい。
これに対して図示の実施形態では、所定の期間(期間L)経過後は標準値のデータベースを更新しないので、標準値は劣化していない状態のデータのみで構築される。したがって劣化したデータで標準値を書き換えてしまう可能性を、完全に排除することが出来る。
また、運転状態データの閾値(標準値)を空調機1台毎に設定できるので、機種による運転特性の相違、設置環境や稼動条件による差異を反映した制御が出来る。
【0036】
運転状態データの保存は、従来技術では、コンピュータを有しないものには対応出来なかったが、図示の実施形態では、空調機に附属したコンピュータではなく、サービス会社等に設置するサーバコンピュータを有しない機種にも対応出来る。
【0037】
次に、図4のフローチャートを参照して故障診断の手順を説明する。
先ず、空調機器2側で各種パラメータを計測し、空調機(GHP)2側の遠隔監視アダプタ3で計測結果のデータを保存する(ステップS11)。そして、期間N(例えば24時間)経過毎に、所定のデータ選択ルールに従って選択された計測値をサーバ4に送信し、選択されなかった計測値を消去する(ステップS12)。
ここで、各種パラメータとは、例えば「空気熱交換器の汚れの診断」では図6の左列に列記した運転状態データの項目であり、また「冷媒漏れの診断」では図7の左列に列記した運転状態データの項目である。
【0038】
次にサーバ4は診断を開始するか否かを判断し(ステップS13)、開始しないのであれば(ステップS13のNO)、再びステップS11以降を繰返し、診断を開始するのであれば(ステップS13のYES)、診断対象(例えば、冷媒の漏れ等)を特定する。そして、直近のデータをM個だけ抽出し、そのM個の平均値を現在値とする(ステップS15)。
【0039】
次に、現在値と必須的比較項目の標準値とを比較し(ステップS16)、サーバ4は必須的比較項目全てに該当するか否かを判断する(ステップS17)。必須的比較項目全てには該当しないのであれば(ステップS17のNO)、故障無しと判断し(ステップS21)、ステップS22まで進む。一方、必須的比較項目全てに一つでも該当すれば(ステップS17のYES)、次のステップS18に進み、現在値と選択的比較項目の標準値とを比較し、該当する項目数が所定値以上あるか否かを判断する(ステップS19)。
【0040】
該当する項目が所定数以上であれば(ステップS19のYES)、「故障」と判定し、保全・予防作業ブロック20において保全・予防措置ルーチン(人間による手作業を含む)を開始する(ステップS20)。一方、該当項目数が所定数を下回れば(ステップS19のNO)、故障無しと判定する(ステップS21)。
尚、ステップS21において故障無しと判定されても表示はされない。
【0041】
ステップS22ではサーバ4は、診断を終了してよいか否かを判断しており、終了してよければ(ステップS22のYES)、制御を終了してよいか判断する(ステップS23)。一方、診断を終了しない場合は(ステップS22のNO)、他の故障要因に付いて診断する場合が有るので、再びステップS13以降を繰り返す。
【0042】
制御を終了してよければ(ステップS23のYES)、そのまま制御を終了させ、制御を続けたいなら(ステップS23のNO)、ステップS11まで戻り再びステップS11以降を繰り返す。
【0043】
ここで、前記「必須的比較項目」とは、現在値と必須的比較項目の基準値とを比較し、一つでもNGの判断がなされれば、故障であるとの必要条件となる項目(具体的には空調機であれば、どんな空調機でも該当してしまう現象)、であり、一方、「選択的比較項目」とは、現在値と選択的比較項目の基準とを比較し、NG項目が所定値以上であれば故障であると判断される項目(具体的には空調機のメーカー、機種により、該当しない場合がある現象)、で、「必須的比較項目」での判断と、「選択的比較項目」での判断とをあわせて故障しているか否かを判断するものである。
【0044】
図6は、「空気熱交換器の汚れの診断」に際して、必須的比較項目と選択的比較項目の例と、その判定基準とを、表形式で示した図であり、図7は、「冷媒漏れの診断」に際して、必須的比較項目と選択的比較項目の例と、その判定基準とを、表形式で示した図である。
なお、図6及び図7で示す故障判定基準は、予め設定されており、変更されない。すなわち、予め設定されている種類のデータ以外は見る必要がなくこの発明の利点となっている。
【0045】
図10は本発明の第2実施形態を示している。
図1で示す第1実施形態では、遠隔監視アダプタ3とサーバコンピュータ(制御手段)4とは別体であり、ネットワークNを介して情報的に接続されている。
これに対して、図10の第2実施形態では、遠隔監視アダプタ3A内に制御手段4Aが包含されている。
【0046】
図10において、空調機2に取り付けられた遠隔監視アダプタ3A内には、運転状態データの監視手段60と、制御手段4Aとが設けられている。
制御手段4Aの構成自体は、図1で示すサーバ4の構成と同様である。
なお、図10において、サーバ4Aの判定ブロック11の判定結果は、ネットワークNを介して保全・予防ブロック20に送られる。
【0047】
図10の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、第1実施形態と同様である。
【0048】
【実施例】
以下、図3、図4、図6、図8、図9を参照して、第1実施形態を例にして、本発明の「空気熱交換器の汚れの診断」に関する実施例を説明する。
この実施例では、空気熱交換器が汚れていないか否かの診断を、上述した実施形態に従って行う場合を示している。
【0049】
標準値のデータベースの構築において、時間N(=24時間)毎に選択されるデータは、空調機2の負荷が最も高くなったとき(或いは、コンプレッサー吐出圧力が最大になったとき)の運手条件データを選択して、サーバ4側で取得する。
その場合の期間Lは3ヶ月とする。
図3のフローチャートに従って、運転条件別(この場合は、外気温度帯別:図5を参照)に平均化して、作成した標準値のデータベースを図8で示す
【0050】
図示の実施例では、データベース作成後、外気温が20〜25℃となったことが多かった時期に、空気熱交換器が汚れていないか否かの診断が行われている。
そのために直近7回(M=7)の運転状態データを抽出し、これを平均したものが図9に示す現在値である。一方、標準値は、図8の外気温度が「20〜25℃」の欄の数値を採用する。
【0051】
そして、図9の現在値と、図8の標準値(外気温度が「20〜25℃」の欄の数値)とを図6の判定表に従って、比較、判定を行う。
【0052】
判定結果は、必須的比較項目が全て該当し、選択的比較項目はエンジン冷却水温度のみが該当しないが、この場合の該当の所定数は例えば2項目であるので、故障と判断される。
【0053】
図示の実施形態及び実施例は、あくまでも例示である。本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【0054】
【発明の効果】
本発明の作用効果を以下に列記する。
(1) 空調機にコンピュータが付加されていなくても、監視手段を空調機に設置して、監視手段と制御手段とを、信号伝達系統を介して連結することにより、本発明を適用することが可能である。
(2) 運転状態データの閾値(標準値)を空調機1台毎に設定できるので、機種による運転特性の相違、設置環境や稼動条件による差異を反映した制御が出来る。
(3) 所定の期間経過後は標準値のデータベースを更新しないので、標準値は劣化していない状態のデータのみで構築される。すなわち、劣化したデータで標準値を書き換えてしまう可能性を、完全に排除することが出来る。
(4) 故障原因毎に全ての機種の空調機器に共通する事項と、特定の機種の空調機器のみに共通する事項とについて、運転状態データとデータベースから読み込んだ標準値とを比較し、全ての機種の空調機器に共通する事項の全項目について当該運転状態データが該当し且つ特定の機種の空調機器のみに共通する事項について当該運転状態データが一定数以上の項目が該当する場合には、当該故障原因による故障が発生していると診断するので、市場に多数提供されている様々な空調機について、故障の発生のみならず、その原因までも特定することが出来て、的確な保全措置、予防措置を講じることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態における全体構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1実施形態の1構成である遠隔監視アダプタの内部構成を示すブロック図。
【図3】標準値のデータベースを構築する手順を示すフローチャート。
【図4】故障診断の手順を示すフローチャート
【図5】標準値のデータベースの1例を表形式で示した図。
【図6】「空気熱交換器の汚れの診断」に際して、必須的比較項目と選択的比較項目の例と、その判断基準とを表形式で示した図。
【図7】「冷媒漏れの診断」に際して、必須的比較項目と選択的比較項目の例と、その判断基準とを表形式で示した図。
【図8】外気温度別の「空気熱交換器の汚れの診断」に関する標準値を表形式で示した図。
【図9】特定温度(20〜25℃)域の「空気熱交換器の汚れの診断」に関する現在値を表形式で示した図。
【図10】本発明の第2実施形態における全体構成を示すブロック図。
【符号の説明】
1・・・空調機の故障診断装置
2・・・空調機
3・・・遠隔監視アダプタ
4・・・サーバコンピュータ
5・・・タイマ
6・・・運転条件分類ブロック
7・・・標準値のデータベース
8・・・運転状態データベース
9・・・現在値演算ブロック
10・・・比較ブロック
11・・・判定ブロック
31・・・運転状態データ保存用データベース
32・・・時間N計測用タイマ
33・・・データ選択手段
Claims (11)
- 空調機の各種運転状態データを計測する監視手段と、監視手段から送られた運転状態データに基づいて構築された標準値のデータベース及び運転状態データのデータベースを備えた制御手段とを有し、前記制御手段は、前記監視手段から送出された運転状態データと標準値のデータベースから読み込んだ標準値とを比較することにより故障の原因及び故障発生の有無を判定する様に構成されていることを特徴とする空調機の故障診断装置。
- 空調機に遠隔監視アダプタを取り付け、該アダプタは、各種運転状態データを計測する監視手段と、監視手段から送られた運転状態データに基づいて構築された標準値のデータベース及び運転状態データのデータベースを備えた制御手段とを有し、前記制御手段は、前記監視手段から送出された運転状態データと標準値のデータベースから読み込んだ標準値とを比較することにより故障の原因及び故障発生の有無を判定する様に構成されていることを特徴とする空調機の故障診断装置。
- 前記監視手段は各種運転状態データを所定期間保存し、所定期間が経過した際に所定のデータ選択ルールによって選択された運転状態データのみを制御手段へ送出する様に構成されている請求項1、2の何れかの空調機の故障診断装置。
- 前記制御手段は、運転状態データを標準値のデータベースに読み込む期間を計測する期間計測手段と、前記監視手段からの運転状態データを標準値のデータベース或いは運転状態データのデータベースに割り振る分類手段とを備え、該分類手段は、期間計測手段で計測される所定期間が経過するまでは前記監視手段からの運転状態データを標準値のデータベースへ割り振り、所定期間経過後は運転状態データのデータベースへ割り振る様に構成されている請求項1〜3の何れか1項の空調機の故障診断装置。
- 前記制御手段は、運転状態データと標準値のデータベースから読み込んだ標準値とを比較して、故障原因毎に全ての機種の空調機器に共通する事項の全項目について該当し、且つ、特定の機種の空調機器のみに共通する事項については一定数以上の項目が該当した場合には、当該故障原因による故障が発生していると診断する様に構成されている請求項1〜4の何れか1項の空調機の故障診断装置。
- 標準値のデータベースと、運転状態データのデータベースとは、運転条件別に分けた形式で構築される請求項1〜5の何れか1項の空調機の故障診断装置。
- 監視手段により空調機の各種運転状態データを計測する工程と、制御手段により、前記監視手段から送出された運転状態データとデータベースから読み込んだ標準値とを比較して、故障の原因及び故障発生の有無を判定する工程、とを備えていることを特徴とする空調機の故障診断方法。
- 前記監視手段により各種運転状態のデータを所定期間保存する工程と、所定期間が経過した際に所定のデータ選択ルールによって選択された運転状態データのみを前記監視手段から制御手段へ送出する工程、とを含む請求項7の空調機の故障診断方法。
- 期間計測手段により運転状態データを標準値のデータベースに読み込む期間を計測し、期間計測手段で計測される期間が所定値に到達するまでは前記監視手段からの運転状態データを分類手段により標準値のデータベースへ割り振り、以って、前記期間が所定値に到達する以前における運転状態データのみにより標準値のデータベースを構築し、所定値に到達した後は運転状態データのデータベースへ割り振る請求項7、8の何れかの空調機の故障診断方法。
- 故障の原因及び故障発生の有無を判定する前記工程では、故障原因毎に全ての機種の空調機器に共通する事項と、特定の機種の空調機器のみに共通する事項とについて、運転状態データと標準値のデータベースから読み込んだ標準値とを比較し、全ての機種の空調機器に共通する事項の全項目について当該運転状態データが該当し且つ特定の機種の空調機器のみに共通する事項について当該運転状態データが一定数以上の項目が該当する場合には、当該故障原因による故障が発生していると診断する請求項7〜9の何れか1項の空調機の故障診断方法。
- 標準値のデータベースと、運転状態データのデータベースとは、運転条件別に分けた形式で構築される請求項7〜10の何れか1項の空調機の故障診断方法。
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