JP2006046762A - Ghp故障予知診断方法及びその装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】GHPに最適な故障予知診断方法および装置を提供すること。
【解決手段】GHPにおける故障予知診断方法であって、GHPの故障予知診断を行うための監視を開始した後の所定期間に、GHPの運転状態を示す1又は複数の運転データをサンプリングして、GHPを構成する機器の異常又は性能低下を判断する基礎となる基準値を、複数の異なる基準運転域にそれぞれ対応するよう複数作成する初期監視モードS100と、初期監視モードS100を行った後に、運転データをサンプリングして当該運転データ又はこれを加工した加工データの現在値を得ると共に、そのサンプリング時の運転条件が合致する基準運転域に関する基準値と現在値とを基にして、機器の異常又は性能低下の兆候の有無を判断する予知モードS190とを行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガスヒートポンプ型空調装置の故障や性能低下等に未然に対応するための故障予知診断方法およびその装置に関する。
ガスエンジンヒートポンプ型空調装置(以下、適宜GHPという)は、省エネルギー化に有利な空調装置として脚光を浴び、その普及率も高まってきている。GHPは、都市ガス等によって駆動する内燃機関であるガスエンジンを備えるなど機械系機器を多く含む。そのため、それらの故障を未然に防ぐメンテナンス体制の充実が望まれている。
現在は、GHPが故障した後、あるいは不調となった後に、事後的に保全が行われることが主流である。
一方、GHPが故障又は不調となる前にそれを事前に予知する故障予知診断システムの開発も急がれている。例えば、電気式空調機の監視装置として、下記の特許文献1に示されているものがある。
特許第3119046号公報
しかしながら、従来においては、GHPの特性に合致した予知方法が開発されておらず、その開発が待たれている。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、GHPに最適な故障予知診断方法および装置を提供しようとするものである。
第1の発明は、室内機と室外機とを有し、該室外機にガスエンジンを備えてなるガスヒートポンプ型空調装置(以下GHPという)における故障予知診断方法であって、
上記GHPの故障予知診断を行うための監視を開始した後の所定期間に、上記GHPの運転状態を示す1又は複数の運転データをサンプリングすることにより、又は、予め設定した値を用いることにより、上記GHPを構成する機器の異常又は性能低下を判断する基礎となる基準値を、一つの基準運転域に対応するよう一つ作成する又は複数の異なる基準運転域にそれぞれ対応するよう複数作成する初期監視モードと、
該初期監視モードを行った後に、上記運転データをサンプリングして当該運転データ又はこれを加工した加工データの現在値を得ると共に、そのサンプリング時の運転条件が合致する上記基準運転域に関する上記基準値と上記現在値とを基にして、上記機器の異常又は性能低下の兆候の有無を判断する予知モードとを行うことを特徴とするGHP故障予知診断方法にある(請求項1)。
本発明のGHP故障予知診断方法においては、上記初期監視モードを行った後に上記予知モードを実施する。
ここで、注目すべき第1の点は、上記初期監視モードを実施して、機器の異常又は性能低下の兆候の有無を判断する基礎となる基準値を作成する点である。特に、サンプリングした運転データにより上記基準値を作成する場合には、監視しようとするGHPが有する機器の性能を、この初期監視モードの実行によって初めて詳細に把握し、そして、この初期監視モードの実行によって初めて上記基準値を作成する。そのため、監視しようとするGHPの個体差、設置環境、運転時間等に影響されにくい、それぞれのGHPに最適な基準値を得ることができる。そのため、その後の予知モードにおける予知判断の精度を高めることができる。
なお、また、監視しようとするGHPの設置環境、運転時間等が予め把握できている場合は、上記初期監視モードで作成する1又は複数の基準値として予め設定された値を用いることが好ましい。これにより、初期監視モードのサンプリングデータ量を低減でき、通信費を低減できる。
注目すべき第2の点は、上記初期監視モードでは、上記基準値として、特定の基準運転域に対応させて作成することである。すなわち、特定の基準運転域が1つの場合には1つの基準値を作成し、複数の異なる基準運転域を持つ場合には、それぞれ対応するよう複数作成することである。すなわち、実際のGHPの運転は、様々な環境の変化によって、運転条件が変動するのが通常である。運転条件が変われば、予知判断に用いる基準値の値も変更すべきである。
ここで、本発明では、上記のように、基準運転運転条件ごとに基準値を作成するので、その後の予知モードでは、基準値の作成されている基準運転域のうち、現在値を採取した実際の運転条件が最も合致する基準運転域を選択し、これに対応する基準値を用いて予知判断を行うことが可能となる。それ故、さらに予知判断の精度を高めることができる。
第2の発明は、室内機と室外機とを有し、該室外機にガスエンジンを備えてなるガスヒートポンプ型空調装置における故障予知診断を行う装置であって、上記GHPに直接的又は通信機器を介して間接的に接続された監視用コンピュータを有し、該監視用コンピュータが、上記第1又は第2の発明のGHP故障予知診断方法を自動的に実行するよう構成されていることを特徴とするGHP故障予知診断装置にある(請求項14)。
本発明のGHP故障予知診断装置は、上記初期監視モード及び上記予知モードを実行することができる上記監視用コンピュータを備えることにより、上述した優れたGHP故障予知診断方法を無人で自動的に実施することができる。
上記第1及び第2の発明におけるGHPが有する室内機と室外機は、それぞれ1台ずつの構成でもいいし、それぞれ複数台の構成でもよい。室外機又は室内機が複数台の構成の場合には、同じ種類の運転データが複数得られる。この場合には、上記故障予知診断方法は、室外機の台数分ごと、あるいは室内機の台数分ごとに実行し、各室外機又は各室内機毎に個別に判断することが好ましい。また、複数台の室内機、あるいは室外機の同種類の運転データをまとめて1種類の運転データとして取り扱うことも可能である。この場合には、複数台の室内機または室外機のいずれかが異常又は性能低下の兆候が有ると判断することができる。
また、上記第1の発明における上記運転データとしては、直接的に判断に用いられるデータだけでなく、これを補正するか否か、正常データであるか否か、選別するか否か等の判断を行うための参考用の運転データを合わせてサンプリングすることもできる。この場合には、この参考用の運転データに対する基準値を上記初期監視モードにおいて作成してその基準値との比較によって様々な判断をしても良いし、予め決めた基準値との比較によって様々な判断をしても良い。また、上記参考用運転データについては基準値と特に比較することなく、他の運転データを加工する際に用いてもよい。また、基準値とは別に、故障を明確に示す基準値の一種である故障値等を予め記憶しておき、これを上記基準値と現在値との比較の際に考慮して判断する方法を採ることもできる。
また、上記初期監視モードは、上記GHPの故障予知診断を行うための監視を開始した後の所定期間において行う。従って、新品のGHPにおいてこの故障予知診断方法を実行する場合には、GHPの運転開始から所定の期間上記初期監視モードを実行する。また、既存のGHPにあらたにこの故障予知診断方法を適用する場合には、その適用を開始すべく監視を始めてから所定期間上記初期監視モードを実行する。
また、上記所定期間の具体的な期間は、GHPの種類ごと、用いる運転データの種類ごと、あるいはGHPの運転履歴に応じて設定することができる。
また、上記運転データは、サンプリングするごとにそのまま用いることもできるし、一定期間の複数のデータを平均化したり、ある一定の基準で有効でないデータを切り捨てる選別処理などを行うというような加工を行った加工データとして用いることができる。
また、上記基準値の作成方法としては、様々な方法を用いることができる。例えば、上記運転データあるいは加工データを複数集め、これらの平均値をとる、あるいは最大値または最小値をとる、あるいは分布を求めて統計的に処理する、その他の方法がある。
また、上記基準値としては、異常又は性能低下を示すもの、完全に故障であることを示すものなど、判定する機器に応じて様々な状態の基準に置き換えることができる。
また、上記基準運転域としては、例えば、起こりうる運転条件を複数の領域に区分して、その領域内にある場合を1つの同じ基準運転域とすることができる。また、その他の様々な決め方で上記基準運転域を決定することができる。
また、上記基準運転域は、上記初期モード中における任意の運転条件から採用することもできるし、強制的に特定の運転条件でGHPを運転し、その条件を上記基準運転域としすることもできる。
いずれにしても、上記初期モードでは、一又は複数の異なる基準運転域においてそれぞれ上記基準値を作成する。
また、上記予知モードにおける判断は、サンプリングした運転データ又はこれを加工した加工データの現在値と上記基準値とを基にして行う。この場合の判断方法としては、単純に差を求めて、ある値より大きいか小さいかによって判断する方法、あるいは何らかの特殊な関係式を予め作っておいて、これを満たすか否かによって判断する方法など、様々な方法をとることができる。
また、運転データをサンプリングすることにより基準値を作成する上記初期監視モード、又は、上記予知モードを行う際には、上記複数の基準運転域のいずれかに合致する運転条件で運転するよう強制的に上記GHPを制御することが好ましい(請求項2)。このような強制的に所定の運転条件に設定して予知判断を行う方法はこれまでになかった。この方法を適用することにより、非常に精度の高い予知判断を可能とすることができる。
また、上記初期監視モードでは、上記基準運転域と合致した運転条件を含む運転が行われる時刻をサンプリング時刻として記憶しておき、上記予知モードは、上記サンプリング時刻に合致した時刻において実行することが好ましい。GHPの運転条件は概ね一日の間のパターンがある程度決まってくる場合が多い。そのため、上記サンプリング時刻に合致した時刻に上記予知モードを実行することにより、実際の運転条件が複数の上記基準運転域のいずれかに合致する確率を高めることができる。それ故、さらに予知精度を高めることができる。
また、上記予知モードは、所定量の上記運転データをサンプリングして、該運転データ又はこれを加工した加工データの現在値と、当該運転データのサンプリング時の運転条件が合致する上記基準運転域に関する上記基準値とを基にして、上記機器の異常又は性能低下の兆候の有無を判断する第1予知判断を行う通常監視モードと、該通常監視モードの上記第1予知判断において上記機器の異常又は性能低下の兆候が有ると判断された場合に、上記通常監視モードの場合よりも多くの量の運転データをサンプリングして、該運転データ又はこれを加工した加工データの現在値と、当該運転データのサンプリング時の運転条件が合致する上記基準運転域に対応する上記基準値とを基にして、上記機器の異常又は性能低下の兆候の有無を再度判断する第2予知判断を行う集中監視モードとを行うことが好ましい(請求項3)。
この場合の上記通常監視モードは、上記初期監視モード完了後に実行を始める。このモードは、異常又は性能低下の兆候がない限り常時又は定期的に実行され続ける。この場合の運転データのサンプリングは、この後に行われる集中監視モードの場合よりもサンプリング量を少なくする。これにより、最も長時間、定常的に行われる通常監視モードを実行するための通信費等のコストを低減することができる。
また、上記集中監視モードは、上記のごとく、通常監視モードの第1予知判断によって異常又は性能低下の兆候があると判断されて初めて実行する。この場合の運転データのサンプリングは、上記通常監視モードの場合よりもサンプリング量を多くし、これにより第2予知判断の判断精度を高めることができる。
また、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記GHPが各予知診断ごとに最適な運転状態となる時間帯である診断最適時間帯を判断する診断最適時間帯判断手段を有していると共に、上記基準値の少なくとも1つを当該診断最適運転状態において作成し、上記予知モードは、少なくとも上記診断最適時間帯において行うことが好ましい(請求項4)。この場合には、上記初期監視モードにおいて、少なくとも、上記診断最適時間帯を判断する。そして、上記予知モードは、その診断最適時間帯を含む時間に実施する。GHPが各故障対象ごとに予知診断に最適な運転状態にある運転データを得ることが重要である。また、予知診断に最適な運転状態が生じるのは、一日のうち特定の時間帯に集中することが多い。そのため、上記初期監視モードに判断した上記診断最適時間帯を中心に上記予知モードを実施することによって、予知判断精度の向上および全体のサンプリング頻度を低くすることができる。
ここで、上記GHPの診断最適運転状態を判断する手段としては、例えば、上記ガスエンジンのエンジン回転数、室内機の運転容量、室外機の圧縮機とガスエンジンとの間に配設されたクラッチのON/OFFデータ等により算出されるGHPの負荷状態を指標として判断することが可能である。
また、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記GHPが冷房運転状態にある際の上記ガスエンジンの冷却水温度とスロットル弁開度との比率に関する上記基準値を作成し、上記予知モードでは、上記GHPが冷房運転状態にある際の上記ガスエンジンの冷却水温度とスロットル弁開度との比率の現在値と上記基準値とを基にして、上記室外機が有する熱交換器の異常又は性能低下を判定することが好ましい(請求項5)。
スロットル弁開度はエンジン出力すなわち排熱量に比例するため、一般的にはスロットル弁開度に比例して冷却水温度は高くなるが、室外機熱交換器の汚れにより、スロットル弁開度が低くても冷却水温度が高くなる。そのため、上記比率を用いることにより、冷却水温度データのみの判定に比べ、室外機熱交換器の汚れという異常又は性能低下診断精度が向上する。また、汚れによる回避制御運転時にも回避制御情報を必要とせず判定ができる。
ここで、上記比率は、これを算出して比較データとすることができるが、さらに、比率を算出することなく、比率を算出可能な個々のデータ、すなわち、例えば上記冷却水温度とスロットル弁開度のデータそのもの等にそれぞれ基準値を設けて、比較する方法をとることもできる。これは以下の他の比率を用いる場合にも同様である。
また、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記GHPが冷房運転状態にある際の上記室外機の圧縮機の吐出圧力と上記ガスエンジンのエンジン回転数との比率に関する上記基準値を作成し、上記予知モードでは、上記GHPが冷房運転状態にある際の上記圧縮機の吐出圧力と上記ガスエンジンのエンジン回転数との比率の現在値と上記基準値とを基にして、上記室外機が有する熱交換器の異常又は性能低下を判定することが好ましい(請求項6)。
室外機の熱交換器の場合、伝熱面積が一定であるため、一般的にエンジン回転数(冷媒循環量)が低いほど圧縮機の吐出圧力(いわゆる高圧)は低下するが、室外機熱交換器の汚れにより、回転数が低くても上記吐出圧力が高くなる。よって、上記比率を用いることにより、吐出圧力データのみの判定に比べ、上記室外機熱交換器の汚れという異常又は性能低下の診断精度が向上する。また、汚れによる回避制御運転時にも回避制御情報を必要とせず判定ができる。
また、上記初期監視モードでは、少なくとも、ガスエンジンのエンジン回転数および上記室外機の冷媒系の運転データにより算出されるエンジン出力と上記ガスエンジンの運転データから算出されるエンジン入力との比率に関する上記基準値を作成し、上記予知モードでは、上記エンジン出力と上記エンジン入力との比率あるいは当該比率を算出可能な複数の運転データの現在値と上記基準値とを基にして、上記ガスエンジンの異常又は性能低下を判定することが好ましい(請求項7)。
ここで、上記エンジン出力は、冷媒系の運転データである、例えば圧縮機の吐出圧力、吸込圧力、クラッチのON/OFFデータとエンジン回転数とから算出することができ、上記エンジン入力は、例えばスロットル弁開度と燃料弁開度から算出することができる。
GHPでは、出力不足を補うためスロットル弁開度、及び空気比を濃くするよう燃料弁開度が開く。このようにエンジン入力(スロットル弁開度×燃料弁開度)とエンジン出力に相関にあることに着目し、エンジン出力をGHP室外機の冷媒系データで算出して比較判定することでガスエンジンの出力不足という異常又は性能低下に対する判定精度が向上する。
また、クラッチがONとOFFとの間で生じるエンジン出力の差を補正する係数を予め設定しておき、クラッチのON/OFFデータから、例えばクラッチがOFFの時にエンジン出力に上記係数を掛けることで、クラッチのON/OFFの状態によらない判定が可能となる。
また、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記ガスエンジンにおけるスロットル弁開度と燃料弁開度との比率に関する上記基準値を作成し、上記予知モードでは、上記ガスエンジンにおけるスロットル弁開度と燃料弁開度との比率の現在値と上記基準値とを基にして、上記ガスエンジンのエアフィルタの異常又は性能低下を判定することが好ましい(請求項8)。
この場合には、汚れにより燃料リッチとなった空気比を正常に戻そうと燃料弁開度が閉じる方向に働くことを検知することによりガスエンジンにおけるエアフィルタの汚れという異常又は性能低下診断が可能となる。
また、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記室内機の冷媒要求量と熱交換器の冷媒温度と膨張弁開度の三者の比率に関する上記基準値を作成し、上記予知モードでは、上記室内機の冷媒要求量と熱交換器の冷媒温度と膨張弁開度の三者の比率の現在値と上記基準値とを基にして、上記室内機のフィルタの異常又は性能低下を判定することが好ましい(請求項9)。
この場合には、運転データである冷媒要求量あるいは室内機の設定温度と吸込温度から算出される冷媒要求量から各室内機が室外機に要求する冷媒量がわかり、この冷媒要求量が大きいほど冷媒量が大きいので、例えば冷房運転時において、通常は室内機の熱交換器の冷媒温度、膨張弁開度は大きくなる。しかし、室内機のフィルタに汚れがある場合、冷媒要求量が大きくても室内機の能力が制限されるため、室内機の熱交換器の冷媒温度、膨張弁開度は逆に小さくなる。したがって、上記三者の比率を用いることにより、各室内機毎に精度よくフィルタの汚れという異常又は性能低下の診断を行うことができる。
また、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記GHPが冷房運転状態にある際の上記室外機の圧縮機の吐出圧力と上記ガスエンジンのエンジン回転数との比率に関する上記基準値を作成し、上記予知モードでは、上記GHPが冷房運転状態にある際の上記圧縮機の吐出圧力と上記ガスエンジンのエンジン回転数との比率の現在値と上記基準値とを基にして、冷媒の異常又は性能低下を判定することが好ましい(請求項10)。
一般的に回転数(冷媒循環量)が高いほど圧縮機の吐出圧力(高圧)は上昇傾向となるが、冷媒不足では回転数が高くても吐出圧力が低いままである。よって、吐出圧力データのみの判定に比べ、回転数との比率で判定することで冷媒不足という異常又は性能低下の判定精度が向上する。また、冷媒不足ではリキッド弁効果で吐出温度回避制御に入りにくいが、回避制御情報なしでも判定が可能となる。
また、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記ガスエンジンのエンジントルクに関する上記基準値を作成し、上記予知モードでは、上記ガスエンジンのエンジントルクに関する現在値と上記基準値とを基にして、冷媒の異常又は性能低下を判定することが好ましい(請求項11)。
GHPにおいては、冷媒不足になると同一回転数でも圧縮する冷媒量が減少し、エンジントルクが低下する。このことを利用したGHP独自の新しい判定方法により冷媒の不足という異常又は性能低下を診断する精度が向上する。
なお、上記エンジントルクに関する基準値及び現在値は、例えば、ガスエンジンのスロットル弁開度とエンジン回転数、又は圧縮機における高低圧差(吐出圧力と吸入圧力との差)から算出することができる。
また、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記GHPが暖房運転状態にある際の冷却水三方弁又は冷却水温度の変動に関する上記基準値を作成し、上記予知モードでは、上記GHPが暖房運転状態にある際の上記冷却水三方弁又は冷却水温度の変動に関する現在値と上記基準値とを基にして、冷媒の異常又は性能低下を判断することが好ましい(請求項12)。
GHPでは、暖房での排熱回収時に冷媒不足になると、冷媒へ熱交換できる熱量が減少するため冷却水温度が上昇し、ラジエータへ放熱させようと冷却水三方弁がハンチング(変動)する。またこの動作に伴い冷却水温度もハンチング(変動)する。この現象を利用したGHP独自の新しい判定により冷媒不足という冷媒の異常又は性能低下を診断する精度が向上する。
また、上記第1及び第2の発明において、上記予知モードでは、上記室内機を設置する環境に応じて決定された環境係数によって、上記室内機の運転時間を補正して補正運転時間を算出し、該補正運転時間と予め定めた室内機基準運転時間とを基にして、上記室内機のフィルタの異常又は性能低下を判断することが好ましい(請求項13)。
従来一般的に利用されている運転時間のみの簡易判定に比べ、室内機フィルタの汚れという異常又は性能低下を診断する精度が向上する。
ここで、上記環境係数としては、例えば、非常に汚れの少ない環境の場合には、1よりも小さい数値とし、汚れの多い環境の場合には、1よりも大きい数値とすることが好ましい。
(実施例1)
本発明の実施例に係るGHP故障予知診断方法およびその装置につき、図1〜図8を用いて説明する。
本例のGHP故障予知診断装置1は、図2に示すごとく、室内機21と室外機31とを有し、該室外機31にガスエンジン39(図3)を備えてなるガスヒートポンプ型空調装置(GHP)における故障予知診断装置である。そして、このGHP故障予知診断装置1は、図2に示すごとく、GHPに直接的に接続された監視用コンピュータ10を有する。
監視用コンピュータ10は、後述する初期監視モード実行手段と、予知モード実行手段(通常監視モード実行手段及び集中監視モード実行手段)とを有している。
以下、この内容を詳説する。
上記GHP故障予知診断装置1は、図2に示すごとく、1台の室外機31を有し、さらに、室外機31に複数の室内機21を接続してなるGHPの故障予知診断装置である。
図3に示すごとく、室外機31は、ガスエンジン39を内蔵し、これによってクラッチ385を介して圧縮機38を駆動するように構成されている。また、室外機31内には、室外機側熱交換器35(以下、単に熱交換器35という)が配設されており、この熱交換器35に室外機側冷媒経路41(以下、単に冷媒経路41という)と冷却水経路49とが接続されている。また、熱交換器35に対面して室外機側ファン36を配設してある。
冷媒経路41には四方弁410が配設されており、その第1のポートは、圧縮機38の出側に接続されている。また、四方弁410の第2のポートは、室内機側冷媒経路42(以下、単に冷媒経路42という)に接続され、第3のポートは、サブエバポレータ413およびアキュームレータ414を介して圧縮機38の入側に接続されている。さらに、四方弁410の第4のポートは熱交換器35を介して、冷媒経路41に接続されている。
また、冷媒経路41には、各種センサとして、吐出温度センサ451、高圧センサ452、吸込温度センサ453、低圧センサ454、温度センサ455が配置され、さらに、電動弁456が配設されている。
また、室外機31内の冷却水経路49には、上記のごとく熱交換器35を通過する経路と、サブエバポレータ413を通過する経路とが設けられ、いずれもガスエンジン39に接続されている。そして、冷却水経路49には、電動弁461、三方弁462、冷却水ポンプ463、冷却水温度センサ464が配設されている。
また、各室内機21には、それぞれ、室内機側熱交換器25(以下、単に熱交換器25という)とこれに対面するように配設された室内ファン26および空気フィルタ27が配設されている。また、熱交換器25には冷媒経路42が接続され、この冷媒経路42には電動弁425が配設されている。そして、複数の室内機21は、共通の冷媒経路42を冷媒経路413に接続することによって一つの室外機31に接続されている。
また、図2に示すごとく、各室内機21は、室外機31に電送線51を介して電気的に接続され、さらに、室外機31は、電送線55を介して監視用コンピュータ10に接続されている。
上記監視用コンピュータ10は、図1に示すごとく、初期監視モードS100を実行する初期監視モード実行手段と、予知モードS190を実行する予知モード実行手段とを有している。予知モード実行手段は、後述するごとく、通常監視モードS200を実行する通常監視モード実行手段、および集中監視モードS300を実行する集中監視モード実行手段を有している。
同図に示すごとく、初期監視モードS100は、GHPの故障予知診断を行うための監視を開始した後の所定期間に、上記GHPの運転状態を示す1又は複数の運転データをサンプリングして、上記GHPを構成する機器の異常又は性能低下を判断する基礎となる基準値を、複数の異なる基準運転域にそれぞれ対応するよう複数作成するモードである。
すなわち、基準値作成用と基準運転域作成用の運転データをサンプリングするステップ(S120)と、複数の基準運転域に対する基準値を作成するステップ(S130)とを有している。
採取すべき基準値及び基準運転域としては、予知判断すべき内容その他の状況等から任意に決定することができる。また、上記基準運転域は、例えば、エンジン回転数、外気温、室内機の運転容量、クラッチON/OFFデータ等の各運転データが特定の範囲内にある場合を高負荷運転域、別の特定の範囲内にある場合を中負荷運転域、さらに別の特定の範囲内にある場合を低負荷運転域とし、このような3種類の基準運転域を定めることができる。なお、基準運転域の数、定め方は様々な方法をとることができ、上記の定め方は一例に過ぎない。
また、1つの基準運転域において複数の種類の基準値を求めることもできる。
次に、すべての基準運転域に対応するすべての基準値が得られた後には、初期監視モードS100を終えて予知モードS190へと移行する。
予知モードS190は、運転データをサンプリングして当該運転データ又はこれを加工した加工データの現在値を得ると共に、そのサンプリング時の運転条件が合致する上記基準運転域に対応する上記基準値と上記現在値とを基にして、上記機器の異常又は性能低下の兆候の有無を判断するモードである。本例では、予知モードS190における実際の判定を、通常監視モードS200と集中監視モードS300の2段階にして、精度の向上と通信コストダウンを図っている。
まず、通常監視モードS200は、所定の割合で運転データをサンプリングして、該運転データ又はこれを加工した加工データの現在値と、当該運転データのサンプリング時の運転条件が合致する上記基準運転域に対応する上記基準値とを基にして、上記機器の異常又は性能低下の兆候の有無を判断する第1予知判断を行うモードである。すなわち、図1に示すごとく、通常監視モードS200は、運転データのサンプリングを行うステップ(S210)と、この運転データを採取した運転条件がいずれの基準運転域に合致するかを判断して、合致した基準運転域に対応する基準値を選択した後、上記運転データ又はこれを加工したデータの現在値と上記の基準値とを比較する第1予知判断を行うステップ(S260)を行う。
また、集中監視モードS300は、通常監視モードS200の第1予知判断(S260)において上記機器の異常又は性能低下の兆候が有ると判断された場合に、通常監視モードS200の場合よりもサンプリング頻度を高めて運転データをサンプリングして、該運転データ又はこれを加工した加工データの現在値と、当該運転データのサンプリング時の運転条件が合致する上記基準運転域に対応する上記基準値とを基にして、上記機器の異常又は性能低下の兆候の有無を再度判断する第2予知判断を行うモードである。すなわち、図1に示すごとく、集中監視モードS300は、運転データのサンプリングを行うステップ(S310)と、この運転データを採取した運転条件がいずれの基準運転域に合致するかを判断して、合致した基準運転域に対応する基準値を選択した後、上記運転データ又はこれを加工したデータの現在値と上記の基準値とを比較する第2予知判断を行うステップ(S360)を行う。
ここで、本例のGHP故障予知診断装置1は、複数の機器について異常又は性能低下の兆候を判断するように構成され、それぞれの機器に対して上記GHP故障予知診断方法を実行できるようにしてある。そのため、判定しようとする機器ごとに対応する運転データをそれぞれ採取する。
まず、一例として、図4〜図6を用いて、室内機21〜23が有する空気フィルタ27の異常又は性能低下を冷媒供給率によって判断するGHP故障予知診断方法について詳しく説明する。ここでいう空気フィルタの異常又は性能低下としては、主に空気フィルタの汚れによる性能低下がある。
図4に示すごとく、まず初期監視モードS100では、まずS110において、最初に設定しておく情報、例えば各運転データの変化率がその値を超えていれば100%故障であると判断できる故障判定変化率等の設定値を読み込み保存する。実際には、監視用コンピュータに対してオペレータによって入力されたデータを読み込み保存する。本例では、この故障判定変化率は、後述する判断に用いる予知確率を算出する際に使用する。
次に、運転データのサンプリングを行うステップ(S120)では、以降、S121〜S123、S126、S127の5つのステップを使って冷媒供給率データを得る。また、S121〜S124、S127の5つのステップを使って冷媒供給率データ算出時の運転状態データを得る。また、S121〜S125、S127の6つのステップを使って最大負荷発生時刻を得る。運転データのサンプリング間隔は、本例では、この初期監視モードS100だけでなく、通常監視モードS200及び集中監視モードS300を含む3つのモードで基本的に同じとし、1分間隔とした(時間変更は可能である)。
この例では、上記運転データとして、室内機21〜23が室外機に要求する冷媒量を示す冷媒要求量と室内機21〜23の熱交温度あるいは膨張弁開度を用いる。上記冷媒供給率は、運転中の熱交温度あるいは膨張弁開度と、室内機21〜23が室外機に要求する冷媒量を示す冷媒要求データを採取し、冷房時には(熱交温度×膨張弁開度)/冷媒要求量を算出することにより求めることができる。冷媒要求量がないGHPの場合は、室内機21〜23の吸込温度と設定温度を採取して冷媒要求量を作成する。従って、本例では、運転データとして熱交温度と膨張弁開度と冷媒要求量を採取し、これを演算して得られる冷媒供給率を実際に用いる診断データ、すなわち、基準値及び現在値とする。
具体的には、まず、アダプタ5を介して、運転データ(熱交温度、膨張弁開度、および冷媒要求量)を監視用コンピュータ10内に転送する、運転データのサンプリング(S121)を、例えばS127の繰り返し数が5回という頻度で行う。そして、そのデータが有効であるか否かを判断して有効データだけを残す有効データの選別(S122)を行い、これを保存する。有効データか否かは、例えば、運転データをサンプリングしたタイミングが、室内機21〜23が運転中である、エンジン回転数の変動がある一定範囲内である、あるいは運転開始からある一定時間後である場合を有効データとするという方法で行う。次に、有効データ数が所定数に達したか否かを判断し(S123)、所定数を超えていない場合には、再びステップS121に戻る。
有効データ数が所定値を超えた場合には、全ての有効データ数から冷媒供給率を算出し、さらに、算出された冷媒供給率を、例えば、室内機の設定温度、風速等のデータを用いて補正し、診断データとしての冷媒供給率(以下、適宜、補正冷媒供給率という)を得る(S126)。
また、冷媒供給率を算出するのと同じルーチンで冷媒供給率算出時の上記運転状態データを得る。この例では、運転データとして、室外機のエンジン回転数、クラッチON/OFF、外気温度、室内機の運転容量等を用いる。運転状態データは、室外機のエンジン回転数、クラッチON/OFF、外気温度、室内機の運転容量等を採取し、その平均により求めることができる。従って、本例では、運転データとして室外機のエンジン回転数、クラッチON/OFF、外気温度、室内機の運転容量を採取し、これを演算して得られる値を、それぞれの冷媒供給率に対応する運転状態データとする。
また、運転状態データを算出するのと同じルーチンで最大負荷発生時の時刻データを得る。冷媒供給率を用いた予知診断は空調負荷が大きい時のデータほど予知精度が向上するため、空調負荷が大きい運転データをサンプリングすることが有効である。しかしながら、1日のうちの空調負荷のトレンドは物件毎に異なるため、初期監視モード以降の監視モードで物件毎の最適なサンプリング時刻を決めるために、初期監視モードで最大負荷発生時刻を判断している。例えば、負荷を判断する運転データとして、室外機のエンジン回転数、クラッチON/OFF、室内機の運転容量等の上記運転状態データを用いる。従って、本例では、運転データとして室外機のエンジン回転数、クラッチON/OFF、室内機の運転容量を採取し、これらが最大となる時刻を、その物件の最大負荷発生時刻とし、以降の監視モードでのサンプリング時刻とする。
次に、基準値を作成するステップ(S130)に移る。
このステップでは、冷媒供給率とそれに対応する運転状態データにより、例えば、ステップS120で算出された冷媒供給率を高負荷運転、中負荷運転、低負荷運転の3つの基準運転域での冷媒供給率に振り分ける。冷媒供給率がどの基準運転域に入るかは、例えば、エンジン回転数がある範囲内である、かつクラッチON/OFFがONである、かつ室内機の運転容量がある範囲内である、という条件に合致した運転状態データに対応する冷媒供給率をピックアップする。そして、基準運転域ごとに冷媒供給率を平均することで基準値、すなわち、高負荷基準値、中負荷基準値、及び低負荷基準値を算出する(S131〜S133)。
そして、本例では、得られた基準値およびサンプリング時刻を、監視用コンピュータ10が有するトレンドメモリ(図示略)に転送し(S140)、記憶させる。
次に、図5に示すごとく、通常監視モードS200に移行する。
通常監視モードS200では、運転データのサンプリングを行うステップ(S210)、各基準運転域ごとの現在値を算出するステップ(S220)、各基準運転域ごとの暫定的な予知確率、つまり高負荷暫定予知確率、中負荷暫定予知確率、低負荷暫定予知確率の少なくとも1つを算出するステップ(S230)と、これらを基にして実際の判断に用いる第1予知確率を算出するステップ(S240)とを行い、その後、第1予知確率を用いて第1予知判断を行うステップ(S260)を行う。
まず、S211〜S216のステップは、初期監視モードS100における運転データをサンプリングするステップ(S120)を構成するS121〜S124、S126、S127と同様のステップであるが、最初のステップS211で行うアダプタ5からの運転データ(熱交温度と膨張弁開度と冷媒要求量)のサンプリングは、その頻度を低くし、例えば、S216の繰り返し数を1回とし、通常監視モードを行うのは2日に一度という頻度にする。また、通常監視モードS200の実施は、その実施日に当たる1日の間で、上記初期監視モードS100において得られたサンプリング時刻にのみ行う。もちろんこれらのサンプリング日、時刻等を任意に設定変更することは可能である。
そして、S220のステップでは、初期監視モードS100における基準値を作成するステップ(S130)のS131〜S133と同様の処理を行って、各基準運転域ごとの補正冷媒供給率の現在値を算出する。各基準運転域ごとの現在値の算出方法は、基準値の算出方法と同様に、例えば各基準運転域ごとの補正冷媒供給率の平均値を現在値、すなわち、高負荷現在値、中負荷現在値、低負荷現在値とする。なお、所定のサンプリング時刻内に採取した現在値が属する基準運転域が無い場合には、その基準運転域における現在値は得られない。従って、上記現在値の算出時に、上記3つの基準運転域すべてにおける現在値が得られる場合と、いずれか1つ又は2つの基準運転域のみにおける現在値が得られる場合と、1つの現在値も得られない場合も生じうる。
次に、S230のステップでは、算出した各基準運転域ごとの補正冷媒供給率(現在値)から各基準運転域ごとの暫定的な予知確率を算出する。様々な式を用いることができるが、ここでは、初期監視モードS100において求めた、ある基準運転域での基準値(補正冷媒供給率の基準値)をA1、基準値の基準運転域に合致する現在値(補正冷媒供給率の現在値)をB1、S110で読み込んだ設定値である故障判定変化率をC1として、暫定予知確率D1=(A1−B1)/A1/C1×100を算出する。このとき、高負荷現在値に対しては高負荷暫定予知確率を、中負荷現在値に対しては中負荷暫定予知確率を、低負荷現在値に対しては低負荷暫定予知確率を算出する。
次に、S240にて、例えば、算出した各基準運転域の暫定予知確率の平均値から最終的な第1予知確率E1を算出する。このとき、上記暫定予知確率が1種類のみしかない場合には、その暫定予知確率がそのまま第1予知確率となる。そして、この第1予知確率をトレンドメモリへ転送(S250)して記憶させると共に、第1予知判断を行うステップ(S260)に移る。
ここでは、S240で算出した予知確率E1が、予め定めたαよりも大きいか、つまりE1>αを満たすか否かによって判断する。上記の式を満たさない場合には、再び運転データをサンプリングするステップS210の最初のステップS211に戻り、通常監視モードS200を続ける。上記の式を満たす場合には、室内機21〜23が有する空気フィルタ27の異常又は性能低下の兆候が有ると判断し、集中監視モードS300に移行する。
図6に示すごとく、集中監視モードS300では、運転データのサンプリングを行うステップ(S310)と、各基準運転域ごとの現在値を算出するステップ(S320)と、各基準運転域ごとの暫定的な予知確率を算出するステップ(S330)と、判断に用いる第2予知確率を算出するステップ(S340)とを行い、その後、第2予知確率をお用いて第2予知判断を行うステップ(S360)を行う。
ここで、集中監視モードS300を行うのは、上記通常監視モードS200を行った次の日の上記と同じサンプリング時刻近傍において、このサンプリング時刻よりも長い時間、つまり、サンプリング量を多くして実施する。
まず、S311〜S316のステップは、初期監視モードS100における運転データをサンプリングするステップを構成するS121〜S124、S126、S127と同様のステップであるが、最初のステップS311で行うアダプタ5からの運転データ(熱交温度と膨張弁開度と冷媒要求量)のサンプリングは、その頻度を、通常監視モードS200の場合よりも高くし、例えば、S316の繰り返し数を5回という頻度にする。
そして、S321〜S323のステップでは、初期監視モードS100における基準値を作成するステップ(S130)のS131〜S133と同様の処理を行って、補正冷媒供給率の現在値を算出する。この場合の算出方法は、上記通常監視モードS200の場合と同様とする。また、この場合も、所定のサンプリング時刻に採取した現在値が属する基準運転域が無い場合には、その基準運転域における現在値は得られない。従って、上記現在値の算出時に、上記3つの基準運転域すべてにおける現在値が得られる場合と、いずれか1つ又は2つの基準運転域のみにおける現在値が得られる場合と、1つの現在値も得られない場合も生じうる。
次に、S330にて、算出した各基準運転域ごとの補正冷媒供給率から各基準運転域ごとの暫定的な予知確率を算出する。様々な式を用いることができるが、ここでは、初期監視モードS100において求めた、ある基準運転域での基準値(補正冷媒供給率の基準値)をA1、基準値の基準運転域に合致する現在値(補正冷媒供給率の現在値)をB1、S110で読み込んだ設定値である故障判定変化率をC1として、通常監視モードの場合と同様に、各基準運転域ごとの暫定予知確率D2=(A1−B1)/A1/C1×100を算出する。
次に、S340にて、例えば、S330で算出した各基準運転域の暫定予知確率D2の平均値から最終的な第2予知確率E2を算出し、トレンドメモリへ転送(S350)して記憶させると共に、第2予知判断を行うステップ(S360)に移る。ここでは、S340で算出した予知確率E2が、予め定めたβよりも大きいか否か、すなわち、E2>βを満たすか否かによって判断する。
上記の式を満たさない場合には、室内機21〜23が有する空気フィルタ27の異常又は性能低下の兆候が無いと判断し、通常監視モードS200に再び戻り、上記の一連の処理を繰り返す。
上記の式を満足する場合には、室内機21〜23が有する空気フィルタ27の異常又は性能低下の兆候が有ると確定的に判断し、通常監視モードに戻ることなく、次の使用限界時期の算出のステップ(S410、S420)に移行する。
このステップ(S410、S420)では、まず、第1予知確率E1と第2予知確率E2とを含めた予知確率の変化率の算出を行うステップ(S410)に移る。ここでは、監視用コンピュータ10のトレンドメモリに記憶されている第1、第2予知確率E1、E2を用いて、その変化率を算出する。そして、次の使用限界時期の算出ステップ(S420)において、上記の変化率から、いつ頃、室内機21〜23が有する空気フィルタ27の洗浄をすべきかを予め定めた算出式によって算出する。この算出式としても、様々な式を用いることができるが、本例では、例えば、現在から過去n個の予知確率のトレンドデータから最小2乗法によりトレンドデータの近似式を算出し、使用限界を示す確率に達する時間を算出するという方法を用いた。なお、2つのレベルの判定確率を用いて使用限界時期と洗浄推奨時期を算出できる。
監視用コンピュータ10は、上記一連の処理の結果を適宜出力する機能を有している。例えば、監視用コンピュータ10およびこれに繋がるクライアントコンピュータ11の画面への出力や、接続されたプリンタへの出力や、ブザー等の機器、ポケットベル、携帯電話等への通信など、様々な情報伝達手段を使って、故障予知診断結果を出力するようにできる。
以上のように、本例の故障予知診断方法においては、少なくとも、上記3つのモード、すなわち初期監視モードS100、通常監視モードS200、集中監視モードS300を行う。そして、故障予知診断を行うための監視を開始した直後の所定期間に、必ず上記初期監視モードS100を実施する。そして、この初期監視モードS100において、GHPを構成する空気フィルタの異常又は性能低下を判断する基礎となる基準値を作成する。そのため、監視しようとするGHP全体が新品であっても、既に有る程度運転を行っているGHPであっても、それぞれのGHPに最適な基準値を得ることができる。なお、上記空気フィルタ27は、これそのものが消耗品で交換を前提としているので、この監視を始める際には、空気フィルタ27を新品に交換してから上記初期監視モードS100を行うことが好ましい。
また、本例では、上記基準値を基に上記機器の異常又は性能低下の兆候の有無を判断する行為を、上記通常監視モードS200における第1予知判断S260と、上記集中監視モードS300における第2予知判断S360の2段階で行う。これにより、通常監視モードS200では異常又は性能低下の兆候の有無の初期判断を簡易に行い、集中監視モードS300でより正確に、詳細に判断するというように、両モードにそれぞれ異なる役割分担を担わすことができる。これにより、平常的に行う上記通常監視モードS200では、判断に用いる運転データのサンプリング頻度を少なくすることができ、通信コストを必要最低限に抑えることができる。それ故、GHP故障予知診断装置1のランニングコストの低減を図ることができる。また、コスト的にさらに少ないサンプリング頻度が必要な場合は、集中監視モードS300を省くこともできる。この場合、S410、S420は通常監視モードS200に追加される。
なお、上述した運転データのサンプリング方法、加工方法については、適宜変更することができ、また、第1予知判断、第2予知判断の方法等についても具体的な方法は適宜変更することができる。
(実施例2)
本例では、図7に示すごとく、実施例1における方法をさらに簡略化して、初期監視モードS100における基準値の作成を省略した。一方、初期監視モードS100においては、上記GHPの運転状態を示す1又は複数の運転データをサンプリングして、上記GHPが予知診断に最適な運転状態となる時間帯である診断最適時間帯を判断し、その後の予知モード(通常監視モード及び集中監視モード)では、上記診断最適時間帯を含む時間帯において、上記運転データをサンプリングして当該運転データ又はこれを加工した加工データの現在値を得ると共に、該現在値を基にして、上記機器の異常又は性能低下の兆候の有無を判断する方法とした。
また、通常監視モード及び集中監視モードにおける第1予知判断及び第2予知判断方法も実施例1とは変更した。
より具体的に説明すると、まず、図7に示すごとく、上記初期監視モードS100では、実施例1の場合と同様に、まずS110において、最初に設定しておく情報、例えば各運転データがその値を超えていれば100%故障であると判断できる故障値等の設定値を読み込み保存する。実際には、監視用コンピュータに対してオペレータによって入力されたデータを読み込み保存する。本例では、この故障値は、後述する判断に用いる予知確率を算出する際に使用する。
そして、実施例1の場合と同様のルーチンで、運転データのサンプリングを行うS121〜S125、S127の6つのステップを使ってGHPの予知診断に最適な時刻(ここでは最大負荷発生時刻とした)を得る。本例では、運転データとして室外機のエンジン回転数、クラッチON/OFF、室内機の運転容量を採取し、これらが最大となる時刻を、その物件の最大負荷発生時刻とし、以降の通常監視モード及び集中監視モードでのサンプリング時刻とし、設定する(S139)。
また、上記通常監視モード及び通常監視モード(図示略)では、それぞれ、予知確率F1、F2を作成すると共に、これが予め定めた値を上回るか否かにより機器の異常又は性能低下の兆候の有無を判断する。
ここで、様々な式を用いることができるが、本例では、上記故障値をC2、現在値をB2とした場合、異常になるにつれて値が小さくなるため、予知確率F1、F2=(C2/B2)×100により算出する。逆に、異常になるにつれて値が大きくなる場合は、予知確率F1、F2=(B2/C2)×100により算出する。
本例の場合には、上記診断最適時間帯として最大負荷発生時刻を初期監視モードS100において求め、その後の予知モードでは、この時刻を含む時間帯において運転データのサンプリングを行う。
これにより、故障予知判断に適した運転データを得やすい診断最適時間帯において効率よく有効なデータサンプリングを行うことができ、予知判断精度の向上および全体のサンプリング頻度を低くすることができる。
そして、例えば、監視開始当初から異常状態であるGHP、例えば、冷媒不足のようなGHP導入時の冷媒充填不足が異常原因であるGHPへの対応や、通信コスト低減のためのさらなるサンプリングデータ量を低減が可能となる。
(実施例3)
本例は、図8に示すごとく、複数の室外機31、32とこれに複数の室内機21、22をそれぞれ接続してなるGHPの遠隔による故障予知診断装置102の例である。本例では、監視用コンピュータ10が、有線又は無線の電話回線6を介して室外機31、32と通信できるようにし、室外機31、32から遠隔で運転データのサンプリングを行うように構成した。
本例のGHP故障予知診断装置102においても、上記と同様の3つのモード、初期監視モード、通常監視モード、および集中監視モードを行うことによって、実施例1又は2と同様の作用効果を得ることができる。
また、平常的に行う上記通常監視モードS200では、判断に用いる運転データのサンプリング頻度を少なくすることができるため、上記の有線又は無線の電話回線6における通信コストを必要最低限に抑えることができる。それ故、GHP故障予知診断装置1のランニングコストの低減を図ることができる。
実施例1における、GHP故障予知診断方法のフローを示す説明図。 実施例1における、GHP故障予知診断装置の構成を示す説明図。 実施例1における、GHPの室外機および室内機の構成を示す説明図。 実施例1における、初期監視モードの詳細なフローを示す説明図。 実施例1における、通常監視モードの詳細なフローを示す説明図。 実施例1における、初期監視モードの詳細なフローを示す説明図。 実施例2における、初期監視モードの詳細なフローを示す説明図。 実施例3における、GHP故障予知診断装置の構成を示す説明図。
符号の説明
1、102 GHP故障予知診断装置
10 監視用コンピュータ
21〜23 室内機
25 熱交換器
27 空気フィルタ
31〜33 室外機
35 熱交換器
39 ガスエンジン
6 有線又は無線電話回線

Claims (14)

  1. 室内機と室外機とを有し、該室外機にガスエンジンを備えてなるガスヒートポンプ型空調装置(以下GHPという)における故障予知診断方法であって、
    上記GHPの故障予知診断を行うための監視を開始した後の所定期間に、上記GHPの運転状態を示す1又は複数の運転データをサンプリングすることにより、又は、予め設定した値を用いることにより、上記GHPを構成する機器の異常又は性能低下を判断する基礎となる基準値を、一つの基準運転域に対応するよう一つ作成する又は複数の異なる基準運転域にそれぞれ対応するよう複数作成する初期監視モードと、
    該初期監視モードを行った後に、上記運転データをサンプリングして当該運転データ又はこれを加工した加工データの現在値を得ると共に、そのサンプリング時の運転条件が合致する上記基準運転域に関する上記基準値と上記現在値とを基にして、上記機器の異常又は性能低下の兆候の有無を判断する予知モードとを行うことを特徴とするGHP故障予知診断方法。
  2. 請求項1において、運転データをサンプリングすることにより基準値を作成する上記初期監視モード、又は、上記予知モードを行う際には、上記複数の基準運転域のいずれかに合致する運転条件で運転するよう強制的に上記GHPを制御することを特徴とするGHP故障予知診断方法。
  3. 請求項1又は2において、上記予知モードは、所定量の上記運転データをサンプリングして、該運転データ又はこれを加工した加工データの現在値と、当該運転データのサンプリング時の運転条件が合致する上記基準運転域に関する上記基準値とを基にして、上記機器の異常又は性能低下の兆候の有無を判断する第1予知判断を行う通常監視モードと、
    該通常監視モードの上記第1予知判断において上記機器の異常又は性能低下の兆候が有ると判断された場合に、上記通常監視モードの場合よりも多くの量の運転データをサンプリングして、該運転データ又はこれを加工した加工データの現在値と、当該運転データのサンプリング時の運転条件が合致する上記基準運転域に対応する上記基準値とを基にして、上記機器の異常又は性能低下の兆候の有無を再度判断する第2予知判断を行う集中監視モードとを行うことを特徴とするGHP故障予知診断方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記GHPが予知診断に最適な運転状態となる時間帯である診断最適時間帯を判断する診断最適時間帯判断手段を有していると共に、上記基準値の少なくとも1つを当該最適運転状態において作成し、
    上記予知モードは、少なくとも上記診断最適時間帯において行うことを特徴とするGHP故障予知診断方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記GHPが冷房運転状態にある際の上記ガスエンジンの冷却水温度とスロットル弁開度との比率に関する上記基準値を作成又は上記基準値として設定済みの値を代入し、
    上記予知モードでは、上記GHPが冷房運転状態にある際の上記ガスエンジンの冷却水温度とスロットル弁開度との比率の現在値と上記基準値とを基にして、上記室外機が有する熱交換器の異常又は性能低下を判定することを特徴とするGHP故障予知診断方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項において、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記GHPが冷房運転状態にある際の上記室外機の圧縮機の吐出圧力と上記ガスエンジンのエンジン回転数との比率に関する上記基準値を作成又は上記基準値として設定済みの値を代入し、
    上記予知モードでは、上記GHPが冷房運転状態にある際の上記圧縮機の吐出圧力と上記ガスエンジンのエンジン回転数との比率の現在値と上記基準値とを基にして、上記室外機が有する熱交換器の異常又は性能低下を判定することを特徴とするGHP故障予知診断方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項において、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記ガスエンジンのエンジン回転数および上記室外機の冷媒系の運転データにより算出されるエンジン出力と上記ガスエンジンの運転データから算出されるエンジン入力との比率に関する上記基準値を作成又は上記基準値として設定済みの値を代入し、
    上記予知モードでは、上記エンジン出力と上記エンジン入力との比率あるいは当該比率を算出可能な複数の運転データの現在値と上記基準値とを基にして、上記ガスエンジンの異常又は性能低下を判定することを特徴とするGHP故障予知診断方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項において、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記ガスエンジンにおけるスロットル弁開度と燃料弁開度との比率に関する上記基準値を作成又は上記基準値として設定済みの値を代入し、
    上記予知モードでは、上記ガスエンジンにおけるスロットル弁開度と燃料弁開度との比率の現在値と上記基準値とを基にして、上記ガスエンジンのエアフィルタの異常又は性能低下を判定することを特徴とするGHP故障予知診断方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項において、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記室内機の冷媒要求量と熱交換器の冷媒温度と膨張弁開度の三者の比率に関する上記基準値を作成又は上記基準値として設定済みの値を代入し、
    上記予知モードでは、上記室内機の冷媒要求量と熱交換器の冷媒温度と膨張弁開度の三者の比率の現在値と上記基準値とを基にして、上記室内機のフィルタの異常又は性能低下を判定することを特徴とするGHP故障予知診断方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項において、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記GHPが冷房運転状態にある際の上記室外機の圧縮機の吐出圧力と上記ガスエンジンのエンジン回転数との比率に関する上記基準値を作成又は上記基準値として設定済みの値を代入し、
    上記予知モードでは、上記GHPが冷房運転状態にある際の上記圧縮機の吐出圧力と上記ガスエンジンのエンジン回転数との比率の現在値と上記基準値とを基にして、冷媒充填量の異常又は低下を判定することを特徴とするGHP故障予知診断方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項において、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記ガスエンジンのエンジントルクと相関のある上記ガスエンジンにおけるスロットル弁開度とエンジン回転数との比率に関する上記基準値を作成又は上記基準値として設定済みの値を代入し、
    上記予知モードでは、上記ガスエンジンのスロットル弁開度とエンジン回転数との比率に関する現在値と上記基準値とを基にして、冷媒充填量の異常又は低下を判定することを特徴とするGHP故障予知診断方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項において、上記初期監視モードでは、少なくとも、上記GHPが暖房運転状態にある際の冷却水三方弁又は冷却水温度の変動に関する上記基準値を作成又は上記基準値として設定済みの値を代入し、
    上記予知モードでは、上記GHPが暖房運転状態にある際の上記冷却水三方弁又は冷却水温度の変動に関する現在値と上記基準値とを基にして、冷媒充填量の異常又は低下を判断することを特徴とするGHP故障予知診断方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項において、上記予知モードでは、上記室内機を設置する環境に応じて決定された環境係数によって、上記室内機の運転時間を補正して補正運転時間を算出し、該補正運転時間と予め定めた室内機基準運転時間とを基にして、上記室内機のフィルタの異常又は性能低下を判断することを特徴とするGHP故障予知診断方法。
  14. 室内機と室外機とを有し、該室外機にガスエンジンを備えてなるガスヒートポンプ型空調装置における故障予知診断を行う装置であって、
    上記GHPに直接的又は通信機器を介して間接的に接続された監視用コンピュータを有し、該監視用コンピュータが、請求項1〜13のいずれか1項に記載のGHP故障予知診断方法を自動的に実行するよう構成されていることを特徴とするGHP故障予知診断装置。
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