JP2004285944A - 内燃機関用のピストン - Google Patents

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啓 野村
Shinichiro Nokawa
真一郎 能川
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Abstract

【課題】ピストン上壁面の温度を効率良く制御する。
【解決手段】内燃機関のシリンダボア3内に配置され、該シリンダボア内に燃料室13を画成し、該燃料室を画成する壁面にキャビティ15を備える。流体を流すための流体通路16を燃焼室を画成する壁面に近接して当該ピストン内部に具備する。流体通路を画成する壁面近傍の部分のうちキャビティに近接する部分21を、流体通路を画成する壁面近傍の部分のうち上記キャビティに近接する部分以外の部分22を構成する材料の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料で構成した。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関用のピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関のシリンダボア内に配置され、内燃機関の運転中に該シリンダボア内で往復動せしめられるピストンが特許文献1に開示されている。こうしたピストンはシリンダボア内に燃焼室を画成し、この燃焼室を画成するピストンの壁面(以下「ピストン上壁面」と称す)は燃焼室内での燃料の燃焼によって生じる熱(以下「燃焼熱」と称す)にさらされるので高温になる。ここで、ピストン上壁面の温度が高くなり過ぎると、ピストンが熱膨張する等してピストンがシリンダボア壁で焼き付いてしまう。そこで、特許文献1(図2参照)では、ピストン内部に流路を形成し、この流路内に冷却用オイルを流すことによって、ピストン上壁面を冷却するようにしている。
【0003】
そして、特許文献1では、ピストン上壁面のうち特に燃焼熱の影響を受けやすい部分の冷却を促進するために、流路を画成するピストン壁部分を熱伝導率の高い材料で構成すると共に、この熱伝導率の高いピストン壁部分(以下「高熱伝導部分」とも称す)を上記燃焼熱の影響を受けやすい部分近くまで延在させている。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−232758号公報
【特許文献2】
特開平2001−132447号公報
【特許文献3】
実開平4−4432号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、特許文献1では、ピストン上壁面のうち特に燃焼熱の影響を受けやすい部分の冷却を促進するために、ピストン壁部分を熱伝導率の高い材料で構成している。ところが、この高熱伝導部分のみによって流路が画成されていることから、冷却用オイルによる冷却効果は高熱伝導部分周りのピストン壁部分に略等しく分配されてしまうので、冷却用オイルによる冷却効果を、ピストン上壁面のうち特に燃焼熱の影響を受けやすい部分を冷却するために最大限に利用しているとは言えない。したがって、ピストン上壁面のうち特に燃焼熱の影響を受けやすい部分をできるだけ効率よく冷却するという観点では、特許文献1記載のピストンにも、さらに改良の余地がある。
【0006】
また、特許文献1は、ピストン上壁面を冷却することのみをその目的としているが、ピストン上壁面を加熱する必要が生じる場合もある。すなわち、内燃機関用のピストンの分野では、要求に応じて、ピストン上壁面の温度を制御する必要がある。そこで、本発明の目的は、ピストン上壁面の温度を効率良く制御することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、1番目の発明では、内燃機関のシリンダボア内に配置され、該シリンダボア内に燃料室を画成し、該燃料室を画成する壁面にキャビティを備えたピストンにおいて、流体を流すための流体通路を上記燃焼室を画成する壁面に近接して当該ピストン内部に具備し、該流体通路を画成する壁面近傍の部分のうち上記キャビティに近接する部分を、流体通路を画成する壁面近傍の部分のうち上記キャビティに近接する部分以外の部分を構成する材料の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料で構成した。
2番目の発明では、1番目の発明において、流体からの熱の放出を抑制しつつ流体を貯留可能な流体貯留手段を具備し、内燃機関が始動されたときに該流体貯留手段に貯留されていた流体を上記流体通路内に流す。
3番目の発明では、1または2番目の発明において、上記キャビティ内に燃料が噴射されるように燃焼室内に燃料を直接噴射する構成の内燃機関に使用される。
4番目の発明では、1〜3番目の発明のいずれか1つにおいて、上記流体通路を画成する壁面近傍の部分以外の部分の熱伝導率が、流体通路を画成する壁面近傍の部分のうち上記キャビティに近接する部分の熱伝導率よりも低い。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1を参照すると、1はシリンダヘッド、2はシリンダブロック、3はシリンダボア、4は吸気管、5は吸気ポート、6は吸気弁、7は排気管、8は排気ポート、9は排気弁、10は点火栓、11は燃料噴射弁をそれぞれ示している。シリンダボア3内にはピストン12が配置され、燃焼室13が形成される。図1から分かるように、燃料は燃料噴射弁11から燃焼室13内に直接噴射され、燃料は点火栓10によって点火される。
【0009】
また、ピストン12の縦断面図である図2を参照すると、燃焼室13を画成するピストン12の壁面(以下「ピストン上壁面」とも称す)14には、キャビティ15が形成されている。ピストン上壁面14側から見たピストン12の平面図である図3を参照すると、キャビティ15はピストン上壁面14の略半分の領域に形成されている。上述では、燃料噴射弁11から燃焼室13内に燃料が直接噴射されると説明したが、詳細には、燃料はこのキャビティ15内に入り込むように燃料噴射弁11から燃焼室13内に直接噴射される。そして、本実施形態のキャビティ15には、燃料噴射弁11から噴射された燃料を点火栓10近傍へと導くという作用がある。
【0010】
このようにキャビティ15内に燃料が噴射され、ピストン12が圧縮上死点近傍に到達したときにキャビティ15内の燃料が点火栓10によって点火されて燃焼せしめられるので、キャビティ15を画成するピストン上壁面14(広くは、キャビティ15を画成するピストン壁の部分(以下「ピストン上壁部分」とも称す))は燃料の燃焼熱にさらされる。したがって、キャビティ15を画成するピストン上壁面14の温度はその他のピストン上壁面14の温度よりも高くなる傾向にある。
【0011】
ところで、図2に示したように、ピストン内部には、流体を流すための通路(本実施形態では、この通路内に流される流体はオイルであるので、以下、この通路を「オイル通路」と称す)16が形成されている。図3から分かるように、オイル通路16は、ピストン上壁面14下方のピストン部分全体に広がるように形成されている。また、図2から分かるように、ピストン12には、オイル通路16にオイルを取り込むためのオイル入口17と、オイル通路16からオイルを排出するためのオイル出口18とが形成されている。
【0012】
オイル入口17には、オイルを噴射するためのオイル噴射ノズル19から噴射されたオイルが取り込まれる。オイル入口17を介してオイル通路16内を流れたオイルはオイル出口18からピストン12下方にあるオイルパン(図示せず)へと排出される。オイルパン内のオイルはオイルポンプ(図示せず)等によって汲み出され、本実施形態では、図2に示した容器20を介してオイル噴射ノズル19へと供給される。容器20は断熱材から構成され、後述するように、内燃機関の運転が停止されたときにオイルからの熱の放出を抑制しつつオイルを貯留しておくためのオイル貯留手段として利用される。なお、図2において、オイルの流れる方向は矢印で示されている。
【0013】
ところで、オイル通路16を画成する部分(これは、ピストン12の一部であってもよいし、ピストン12とは別の部分であってもよい)のうち、キャビティ15に近接し且つキャビティ15の直ぐ下方に位置する部分21は、その他の部分22の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料からなる。そして、これらキャビティ15に近接し且つキャビティ15の直ぐ下方に位置する部分(以下「高熱伝導率部分」と称す)21およびその他の部分(以下「低熱伝導率部分」と称す)22の厚みは略一定である。付言すると、オイル通路16は、オイル入口17とオイル出口18の領域を除いて、これら高熱伝導率部分21と低熱伝導率部分22とによって完全に包囲されている。また、オイル通路16を画成する部分を除いたピストン12を構成する材料の熱伝導率(以下「ピストン本体部分の熱伝導率」と称す)は、高熱伝導率部分21の熱伝導率よりも低く且つ低熱伝導率部分22の熱伝導率よりも高く、あるいは、高熱伝導率部分21の熱伝導率よりも低く且つ低熱伝導率部分22の熱伝導率に等しく、あるいは、高熱伝導率部分21の熱伝導率よりも低く且つ低熱伝導率部分22の熱伝導率よりも低い。なお、各部分を構成する材料を挙げるとすれば、例えば、高熱伝導率部分21には銅が用いられ、低熱伝導率部分22にはチタン(Ti)またはチタン合金(Ti−4Al−6V等)が用いられ、ピストン本体部分にはアルミニウム(Al)が用いられる。
【0014】
本実施形態では、内燃機関の運転中は、通常、オイル通路16内にオイルが供給され続ける。そして、内燃機関の運転が停止されると、オイル通路16内へのオイルの供給も停止され、一部のオイルが容器20内に貯留される。上述したように、容器20は断熱性を有するので、内燃機関の運転の停止後、容器20に貯留されたオイルの温度は比較的高く維持される。そして、内燃機関が始動されると、オイル通路16内にはこの容器20に貯留されている比較的温度の高いオイルが供給される。
【0015】
さて、上述したように、ピストン12が構成され且つピストン12のオイル通路16内にオイルが供給されることによって、以下のような効果がある。
【0016】
すなわち、内燃機関の運転中、ピストン上壁面14の温度は全体的に高くなり、ピストン12の膨張によるシリンダボア3内での焼き付き等を回避するためには、ピストン12を冷却する必要がある。そして、上述したように、キャビティ15を画成するピストン上壁面14の温度が特に高くなる傾向にあるので、ピストン12の熱膨張によるシリンダボア3内での焼き付き等を効率よく回避するためには、キャビティ15を画成するピストン上壁面14を特に冷却すべきである。本実施形態によれば、オイル通路16を画成する部分のうち、キャビティ15を画成するピストン上壁面14に近接した部分21の熱伝導率がその他のピストン上壁面14に近接した部分22の熱伝導率よりも高いので、オイル通路16内を流れるオイルの冷却効果は、ピストン12全体に発揮されるのではなく、キャビティ15を画成するピストン上壁面14に集中して発揮される。すなわち、本実施形態によれば、キャビティ15を画成するピストン上壁面14が効率よく素早く冷却される。
【0017】
また、内燃機関が始動されたときには、燃焼室13内の温度が低いので、燃料が燃焼しにくく、スモークの発生の原因ともなる。ここで、燃料を良好に燃焼させるため、すなわち、燃料の燃焼を改善するためには、燃焼室13内の温度を上昇させればよく、特に、燃料が噴射される部位にあたるキャビティ15内の温度を上昇させることが好ましい。本実施形態によれば、内燃機関が始動されたときには、容器20内に貯留された比較的高温のオイルがオイル通路16内に供給され、しかも、キャビティ15を画成するピストン上壁面14に近接した部分21の熱伝導率がその他のピストン上壁面14に近接した部分22の熱伝導率よりも高いので、オイル通路16内を流れるオイルの加熱効果は、ピストン12全体に発揮されるのではなく、キャビティ15を画成するピストン上壁面14に集中して発揮される。すなわち、本実施形態によれば、キャビティ15を画成するピストン上壁面14が効率よく素早く加熱される。
【0018】
なお、キャビティ15を画成するピストン上壁面14をできるだけ効率良く集中的に冷却し或いは加熱するという観点では、低熱伝導率部分22を断熱性を有する材料から構成し、これにより、低熱伝導率部分22の熱伝導率を、高熱伝導率部分21の熱伝導率よりも大幅に低くすると共に、ピストン本体部分の熱伝導率よりも大幅に低くすることが好ましい。
【0019】
また、上述したように、低熱伝導率部分22の熱伝導率はピストン本体部分の熱伝導率に等しくてもよいが、この場合、キャビティ15を画成するピストン上壁面14を集中的に冷却し或いは加熱する程度は、低熱伝導率部分22の熱伝導率がピストン本体部分の熱伝導率よりも低い場合に比べて小さい。しかしながら、それでもなお、キャビティ15を画成するピストン上壁面14をその他の部分に比べて集中的に冷却し或いは加熱することができるし、別の観点からすれば、この場合においては、例えば、低熱伝導部分22の材料とピストン本体部分の材料とを同じ材料で構成可能であるのでピストンの製造コストを安く抑えられるという別の利点が得られる。
【0020】
また、上述したように、ピストン本体部分の熱伝導率が低熱伝導率部分22の熱伝導率よりも低くてもよいが、この場合、少なくとも、キャビティ15を画成するピストン上壁面14をその他の部分に比べて集中的に冷却し或いは加熱することはできるが、このキャビティ15を画成するピストン上壁面14を集中的に冷却し或いは加熱する効率は、ピストン本体部分の熱伝導率が低熱伝導部分22の熱伝導率よりも高く或いはそれに等しい場合に比べて低い。
【0021】
また、上述では、ピストンのキャビティ内に燃料を直接噴射し、この燃料を点火栓によって点火して燃焼させる内燃機関(すなわち、火花点火式の内燃機関)に搭載されるピストンを例として本発明を説明したが、燃料を点火栓によって点火して燃焼させるタイプの内燃機関ではなくても、ピストンのキャビティ内に燃料を直接噴射し、この燃料を自己着火させて燃焼させる内燃機関(すなわち、圧縮点火式の内燃機関)に搭載されるピストンにも本発明を適用可能である。また、ピストンのキャビティ内に燃料を直接噴射するタイプの内燃機関ではなくても、ピストンのキャビティを画成するピストン壁部分の温度を制御する要求が最も高いような火花点火式の内燃機関または圧縮点火式の内燃機関にも本発明を適用可能である。
【0022】
また、上述では、通路内に流される流体としてオイルを例として説明したが、流体がオイル以外の流体であってもよい(もちろん、流体の種類によっては、この流体による浸食を防止するために、この流体が接する部位をコーティング処理したり、この流体が接する部位の材料の種類を選択したりする必要が生じる場合がある)。
【0023】
また、上述では、ピストンを冷却すべきときにもオイル貯留容器を介してピストンにオイルが供給される場合を例として本発明を説明したが、ピストンを加熱すべきときにのみオイル貯留容器を介してピストンにオイルが供給され、ピストンを冷却すべきときにはオイル貯留容器を介さずにピストンにオイルが供給される場合にも本発明を適用可能である。
【0024】
【発明の効果】
ピストンのキャビティに近接するピストン壁部分は特に燃焼熱の影響を受けやすい。ここで、本発明によれば、流体通路を画成するピストン壁部分のうち、キャビティに近接するピストン壁部分が熱伝導率の高い材料で構成され、その他のピストン壁部分が熱伝導率の低い材料で構成されているので、流体通路内に流されている流体に冷却効果がある場合、この冷却効果はキャビティに近接するピストン壁部分に集中して発揮されるので、ピストンは効率よく冷却されることになる。一方、流体通路内に流されている流体に加熱効果がある場合には、この加熱効果はキャビティに近接するピストン壁部分に集中して発揮されるので、ピストンは効率よく加熱されることになる。まとめると、本発明によれば、キャビティに近接するピストン壁部分の温度に対する要求に応じて、冷却効果のある流体または加熱効果のある流体を流体通路に流すことによって、キャビティに近接するピストン壁部分の温度に対する要求を良好に満たし、結果として、燃焼室を画成するピストン壁面(すなわち、ピストン上壁面)の温度が効率よく制御されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1つの実施形態のピストンを搭載した内燃機関を示す図である。
【図2】本発明の1つの実施形態のピストンの縦断面図であって、図3のII−II線に沿った縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿って見たピストンの平面図である。
【符号の説明】
12…ピストン
13…燃焼室
14…ピストン上壁面
15…キャビティ
16…オイル通路(流体通路)
17…オイル入口
18…オイル出口
19…オイル噴射ノズル
20…容器(オイル貯留手段)
21…高熱伝導率部分
22…低熱伝導率部分

Claims (4)

  1. 内燃機関のシリンダボア内に配置され、該シリンダボア内に燃焼室を画成し、該燃焼室を画成する壁面にキャビティを備えたピストンにおいて、流体を流すための流体通路を上記燃焼室を画成する壁面に近接して当該ピストン内部に具備し、該流体通路を画成する壁面近傍の部分のうち上記キャビティに近接する部分を、流体通路を画成する壁面近傍の部分のうち上記キャビティに近接する部分以外の部分を構成する材料の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料で構成したことを特徴とするピストン。
  2. 流体からの熱の放出を抑制しつつ流体を貯留可能な流体貯留手段を具備し、内燃機関が始動されたときに該流体貯留手段に貯留されていた流体を上記流体通路内に流すことを特徴とする請求項1に記載のピストン。
  3. 上記キャビティ内に燃料が噴射されるように燃焼室内に燃料を直接噴射する構成の内燃機関に使用されることを特徴とする請求項1または2に記載のピストン。
  4. 上記流体通路を画成する壁面近傍の部分以外の部分の熱伝導率が、流体通路を画成する壁面近傍の部分のうち上記キャビティに近接する部分の熱伝導率よりも低いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のピストン。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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